(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177913
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】植物由来材料の使用方法、植物由来材料を用いた農業用培地、および植物由来材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/32 20060101AFI20231207BHJP
C05F 11/00 20060101ALI20231207BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20231207BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20231207BHJP
B09B 101/85 20220101ALN20231207BHJP
【FI】
C09K17/32 H ZAB
C05F11/00
B09B3/35
B09B5/00 Z
B09B101:85
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090883
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】517101780
【氏名又は名称】寺本 京史
(71)【出願人】
【識別番号】507360302
【氏名又は名称】里見 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】寺本 京史
(72)【発明者】
【氏名】里見 仁
【テーマコード(参考)】
4D004
4H026
4H061
【Fターム(参考)】
4D004AA12
4D004BA04
4D004BA10
4D004CA04
4D004CA10
4D004CB01
4D004CB13
4H026AA10
4H026AA18
4H026AB03
4H026AB04
4H061AA10
4H061CC55
4H061EE64
4H061FF06
4H061GG13
4H061GG43
4H061HH44
4H061KK09
(57)【要約】
【課題】剪定や間伐による枝葉を用いて有機汚濁物質を農業用培地として再資源化する。
【解決手段】剪定や間伐による枝葉Pを粉砕して微細化し、微細化された枝葉を、木材チップCと、微細化された樹皮および葉BLとに分離した後、分離された木材チップCを粉砕して極微細化し凝集材32を生成し、分離された微細化された樹皮および葉BLを集めて植物由来材料である抗菌消臭剤30を生成し、有機汚濁物質34と凝集材32と抗菌消臭剤30とを混合して水分を絞り農業用培地40を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪定や間伐による枝葉を粉砕して微細化する微細化工程と、
微細化された枝葉を、木材チップと、微細化された樹皮および葉とに分離する分離工程と、
分離された前記木材チップを粉砕して極微細化し、凝集材を生成する凝集材生成工程と、
分離された前記微細化された樹皮および葉を集めて植物由来材料である抗菌消臭剤を生成する抗菌消臭剤生成工程と、
有機汚濁物質と前記凝集材と前記抗菌消臭剤とを混合して水分を絞り農業用培地を生成する培地生成工程と、
を含むことを特徴とする植物由来材料の使用方法。
【請求項2】
前記分離工程は、前記微細化された枝葉を水を溜めた容器に投入し、水面に浮遊した前記木材チップと、水底に沈殿した前記微細化された樹皮および葉とに分離し、
前記凝集材生成工程は、浮遊した前記木材チップを粉砕して極微細化し、前記凝集材を生成し、
前記抗菌消臭剤生成工程は、沈殿した前記微細化された樹皮および葉を集めて前記抗菌消臭剤を生成する、
ことを特徴とする請求項1記載の植物由来材料の使用方法。
【請求項3】
前記抗菌消臭剤により培地用容器を形成し、前記農業用培地を形成された前記培地用容器に収容する収容工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1記載の植物由来材料の使用方法。
【請求項4】
前記凝集材生成工程は、分離された前記木材チップ、および木の幹から加工された木材チップを粉砕して極微細化し、前記凝集材を生成する、
ことを特徴とする請求項1記載の植物由来材料の使用方法。
【請求項5】
農作物を栽培する農業用培地であって、
有機汚濁物質と、
剪定や間伐による枝葉を微細化し、微細化された枝葉から分離された木材チップを粉砕して極微細化した凝集材と、
剪定や間伐による枝葉を微細化し、微細化された枝葉から分離された微細化された樹皮および葉を集めた植物由来材料である抗菌消臭剤と、を備え、
前記有機汚濁物質と、前記凝集材と、前記抗菌消臭剤とが混合されている、
ことを特徴とする植物由来材料を用いた農業用培地。
【請求項6】
剪定や間伐による枝葉を粉砕して微細化する微細化工程と、
微細化された枝葉を、木材チップと、微細化された樹皮および葉とに分離する分離工程と、
分離された前記微細化された樹皮および葉を集めて植物由来材料を生成する植物由来材料生成工程と、
を含むことを特徴とする植物由来材料の製造方法。
【請求項7】
前記植物由来材料は抗菌消臭剤である、
ことを特徴とする請求項6記載の植物由来材料の製造方法。
【請求項8】
前記植物由来材料は飼料の増量材である、
ことを特徴とする請求項6記載の植物由来材料の製造方法。
【請求項9】
前記植物由来材料は健康補助食品の原料である、
ことを特徴とする請求項6記載の植物由来材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来材料の使用方法、植物由来材料を用いた農業用培地、および植物由来材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
剪定や間伐による枝葉は利用されることなく焼却されることが多いが、焼却によって燃焼ガス(二酸化炭素や一酸化二窒素など)を生産するため、温室効果ガスを排出させてしまい、環境への負担が大きい。
そこで、チップ材などの木質資源に対して叩いて引きちぎる解繊操作を行うことで繊維状にセルロースミクロフィブリルを破壊した後、リファイナにより繊維特性を維持したまま極微細化加工を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
このように木質資源を極微細化加工することで、様々な分野において有効利用が可能となり、生産、廃棄に関する環境負荷を小さいものにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生活排水などに含まれる有機汚濁物質を減容する場合には生物処理が行われるが、生物処理によってもメタンや二酸化炭素を生産するため、剪定などによる枝葉の焼却と同様に、温室効果ガスを排出させてしまう。
また、有機汚濁物質には、強い悪臭を放つ原因となるアンモニア、硫化水素等が含まれているため、再資源化を妨げるとともに人体への影響も懸念されている。
一方、農作物を栽培する農地は、農薬、化学肥料の利用により現在世界の農地の30%が劣化しており、2050年には世界の農地の90%が劣化するとも言われている。したがって、農作物を栽培するための良好な農地を確保することが今後の課題として挙げられている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、剪定や間伐による枝葉を用いて有機汚濁物質を農業用培地として再資源化する上で有利な植物由来材料の使用方法、植物由来材料を用いた農業用培地、および植物由来材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するため本発明の一実施形態は、剪定や間伐による枝葉を粉砕して微細化する微細化工程と、微細化された枝葉を、木材チップと、微細化された樹皮および葉とに分離する分離工程と、分離された前記木材チップを粉砕して極微細化し、凝集材を生成する凝集材生成工程と、分離された前記微細化された樹皮および葉を集めて植物由来材料である抗菌消臭剤を生成する抗菌消臭剤生成工程と、有機汚濁物質と前記凝集材と前記抗菌消臭剤とを混合して水分を絞り農業用培地を生成する培地生成工程とを含むことを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記分離工程は、前記微細化された枝葉を水を溜めた容器に投入し、水面に浮遊した前記木材チップと、水底に沈殿した前記微細化された樹皮および葉とに分離し、前記凝集材生成工程は、浮遊した前記木材チップを粉砕して極微細化し、前記凝集材を生成し、前記抗菌消臭剤生成工程は、沈殿した前記微細化された樹皮および葉を集めて前記抗菌消臭剤を生成することを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記抗菌消臭剤により培地用容器を形成し、前記農業用培地を形成された前記培地用容器に収容する収容工程をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記凝集材生成工程は、分離された前記木材チップ、および木の幹から加工された木材チップを粉砕して極微細化し、前記凝集材を生成することを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、農作物を栽培する農業用培地であって、有機汚濁物質と、剪定や間伐による枝葉を微細化し、微細化された枝葉から分離された木材チップを粉砕して極微細化した凝集材と、剪定や間伐による枝葉を微細化し、微細化された枝葉から分離された微細化された樹皮および葉を集めた植物由来材料である抗菌消臭剤と、を備え、前記有機汚濁物質と、前記凝集材と、前記抗菌消臭剤とが混合されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、剪定や間伐による枝葉を粉砕して微細化する微細化工程と、微細化された枝葉を、木材チップと、微細化された樹皮および葉とに分離する分離工程と、分離された前記微細化された樹皮および葉を集めて植物由来材料を生成する植物由来材料生成工程とを含むことを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記植物由来材料は抗菌消臭剤であることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記植物由来材料は飼料の増量材であることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記植物由来材料は健康補助食品の原料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、剪定や間伐による枝葉を粉砕して微細化し、微細化された枝葉を、木材チップと、微細化された樹皮および葉とに分離した後、分離された木材チップを粉砕して極微細化し凝集材を生成し、分離された微細化された樹皮および葉を集めて植物由来材料である抗菌消臭剤を生成し、有機汚濁物質と凝集材と抗菌消臭剤とを混合して水分を絞り農業用培地を生成するため、剪定や間伐による枝葉を用いて有機汚濁物質を農業用培地として再資源化する上で有利となる。
すなわち、樹皮および葉からなる抗菌消臭剤のアレロパシー効果により有機汚濁物質に含まれる悪臭の原因となるアンモニア等を低減して抗菌消臭を行い、雑草を育ちにくくするため、農薬を軽減させる農業用培地を製造する上で有利となる。また、有機汚濁物質と木材チップからなる凝集材と抗菌消臭剤とを混合して生成された中間相(ゲル状の高濃度流体)は、農作物の栽培に必要な水分を含むとともに、有機汚濁物質に含まれるリンが農作物の栽培に必要な肥料となるため、水分および化学肥料を軽減させる農業用培地を製造する上で有利となる。さらに、有機汚濁物質や剪定等された枝葉などのゴミを減少させるため、生物処理や焼却による温室効果ガスの発生を低減して環境への負担を軽減する上で有利となる。
また、微細化された枝葉を水を溜めた容器に投入し、水面に浮遊した木材チップと、水底に沈殿した微細化された樹皮および葉とを分離させる構成とすれば、木材チップと微細化された樹皮および葉とを容易に分離する上で有利となる。
また、抗菌消臭剤により培地用容器を形成し、農業用培地を形成された培地用容器に収容する構成とすれば、生分解する容器に農業用培地を収容できるため、農業用培地を容易に所望の位置に配置にできるとともに、時間が経過して培地用容器および農業用培地が分解されて土壌となっても、農薬や化学肥料を利用していないため農地の劣化を抑制させる上で有利となる。
また、微細化された枝葉から分離された木材チップ、および木の幹から加工された木材チップを粉砕して極微細化して凝集材を生成する構成とすれば、より多くの凝集材を生成でき、多くの農業用培地を生成する上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、有機汚濁物質と、微細化された枝葉から分離された木材チップを粉砕して極微細化した凝集材と、微細化された枝葉から分離された微細化された樹皮および葉を集めた植物由来材料である抗菌消臭剤とを混合して植物由来材料を用いた農業用培地とするため、剪定や間伐による枝葉を用いて有機汚濁物質を農業用培地として再資源化する上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、剪定や間伐による枝葉を粉砕して微細化し、微細化された枝葉を、木材チップと微細化された樹皮および葉とに分離した後、分離された微細化された樹皮および葉を集めて植物由来材料を生成するため、この植物由来材料を所定の物質に混合して用いた場合、枝葉に含まれる成分により所定の物質の質を向上させる上で有利となる。
すなわち、生成された植物由来材料を抗菌消臭剤として農業用培地に用いれば、農業用培地の抗菌消臭を行い、雑草を育ちにくくするため、農薬を軽減させる農業用培地を製造する上で有利となる。
また、生成された植物由来材料を飼料の増量材として用いれば、家畜の飼料に、飼料として適している枝葉から生成された植物由来材料を加えることによって、飼料の嵩増しをすることができ、飼料のコストを削減する上で有利となる。
また、生成された植物由来材料を健康補助食品の原料として用いれば、健康補助食品として適した所定の効能を有する枝葉から生成された植物由来材料を、他の成分と合わせることで、所定の効能を有する健康補助食品を生成する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の農業用培地の製造システムを示す模式図である。
【
図2】本実施形態の農業用培地の製造方法の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、剪定や間伐による枝葉を用いた農業用培地を生成する場合について説明する。
本実施形態の農業用培地の製造システムでは、剪定や間伐による枝葉を細分化し、木材チップと微細化された樹皮および葉とに分離した後、木材チップをさらに極微細化して凝集材を生成し、微細化された樹皮および葉を集めた植物由来材料として抗菌消臭剤を生成する。そして、有機汚濁物質に凝集材、抗菌消臭剤を混合して、農作物を栽培する農業用培地を製造する。
ここで、本発明において、植物由来材料とは植物を原料として生成したものをいう。
また、本実施形態では、微細化された樹皮および葉を集めた植物由来材料を抗菌消臭剤として用いた場合について説明するが、植物由来材料は様々な用途に利用できる。
図1に示すように、本実施形態の農業用培地の製造システム10は、特殊ロッドミル12、タンク14、パルパー16、コニカルリファイナー18、ドラム型濃縮機20、撹拌機22、マシンチェスト24、デッカーマシン26とを主に備えて構成されており、本実施形態では、剪定された枝葉Pを用いて農業用培地40を製造する場合について説明する。
【0009】
特殊ロッドミル12は、剪定された枝葉Pを粉砕して微細化する。枝葉が微細化されると、枝は木材チップおよび微細化された樹皮となり、葉は微細化された葉となる。微細化された枝葉は、タンク14に搬送される。
また、特殊ロッドミル12は、微細化された枝葉から分離された木材チップCをさらに粉砕して微細化する。このとき、分離された木材チップCだけでなく、木の幹から加工された木材チップC´も粉砕して微細化してもよい。微細化された木材チップC、すなわち繊維状木質資源は、パルパー16に搬送される。
【0010】
特殊ロッドミル12は、例えば、原料を投入する投入口と、排出口と、円筒容器と、円筒容器内に設置されるロッドとから構成される。ロッドは、その中心軸が円筒容器の中心軸から偏心した状態で設置されており、これを回転することで円筒容器の内壁に叩きつけられ、投入された原料を粉砕して繊維状に微細化する。
また、投入口の近傍には送風機が設けられており、投入された原料は、送風機からの風によって投入口から円筒容器内へと供給され、また円筒容器内を排出口側へ向かって移動される。
風力により原料の供給及び円筒容器内の移送を行うと、繊維状木質資源のうち比較的サイズの大きいものが排出口の近くに落下し、サイズの小さなものは遠くまで飛ばされる。これを利用して、繊維状木質資源のうちのサイズの小さいものをパルパー16に搬送し、サイズの大きいものは特殊ロッドミル12に搬送して再度微細化できる。したがって風力を用いると、繊維状木質資源を分級する上で有利となる。
【0011】
タンク14は、特殊ロッドミル12によって粉砕され微細化された枝葉が投入され、微細化された枝葉を、木材チップCと、微細化された樹皮および葉BLとに分離する。
タンク14は、水を溜めた容器であって、微細化された枝葉が投入されると、水面に浮遊した木材チップCと、水底に沈殿した微細化された樹皮および葉BLとに分離される。
水面に浮遊した木材チップCは、再度特殊ロッドミル12に搬送される。
水底に沈殿した微細化された樹皮および葉BLを集めることで抗菌消臭剤30を生成する。
樹皮および葉からなる抗菌消臭剤は、アレロパシー効果の中のフィトンチッドにより有機汚濁物質に含まれる悪臭の原因となるアンモニア等を低減して抗菌消臭を行う。
【0012】
パルパー16は、例えば、底面に渦巻き状の回流を発生させるロータと、ロータの下方にストレーナが配置されており、特殊ロッドミル12から搬送された、繊維状木質資源(微細化された木材チップ)を水和、離解して排出し、水和等が行われた繊維状木質資源はコニカルリファイナー18に搬送される。
【0013】
コニカルリファイナー18は、繊維状木質資源を水の存在下で機械的に叩き、磨砕する。コニカルリファイナー18で繊維状木質資源を処理することにより、繊維が離解され、切断、水和、膨潤、絡み合い等が行われ、繊維特性を残したままマイクロレベルまで極微細化される。極微細化された木質資源は、ドラム型濃縮機20に搬送される。
【0014】
ドラム型濃縮機20は、極微細化された木質資源を脱水する。
撹拌機22は、脱水された極微細化された木質資源を離解して、凝集材32を生成する。なお、ドラム型濃縮機20において固形分(木質資源微粉末)から分離された水相は回収され、パルパー16に戻される。
【0015】
このように微細化された枝葉から分離された木材チップCは、特殊ロッドミル12において、叩いて引きちぎることにより繊維状にセルロースミクロフィブリルが破壊された上で、コニカルリファイナー18において、繊維特性を残したままマイクロレベルまで極微細加工され木質資源粉末となり、これが凝集材32となる。つまり、凝集材32(ナノセルロース凝集材)は、「毛羽立った繊維状」のセルロースミクロフィブリルから構成されており、極微細化し毛羽立った形状の凝集材は、凝集効果に優れている。
【0016】
有機汚濁物質34は、生活排水などに含まれ、農業用培地40に利用されるものである。ここで用いられる有機汚濁物質34は、安全性が確保された含水率の高いものである。有機汚濁物質34には、例えば、農作物の肥料となるリンや、強い悪臭を放つ原因となるアンモニア、硫化水素等が含まれている。
【0017】
マシンチェスト24は、投入された原料の濃度を一定に保持するように撹拌を行うとともに、原料をストックするものであり、本実施形態では、有機汚濁物質34と、凝集材32と、抗菌消臭剤30とが投入され、これらが撹拌され混合される。混合されたものは、デッカーマシン26に搬送される。
【0018】
デッカーマシン26は、濃縮処理を行う脱水機であり、混合された有機汚濁物質34、凝集材32、および抗菌消臭剤30から水分を絞り中間相を生成する。この生成された中間相が、農業用培地40となる。
【0019】
このように、本実施形態で製造される農業用培地40は、有機汚濁物質34と、剪定された枝葉Pを微細化し、微細化された枝葉から分離された木材チップCを粉砕して極微細化した凝集材32と、剪定された枝葉Pを微細化し、微細化された枝葉から分離された微細化された樹皮および葉BLを集めた抗菌消臭剤30とが混合されて製造される。
【0020】
以下では、
図2を参照して農業用培地40の製造方法の流れについて説明する。
まず、剪定された枝葉Pを特殊ロッドミル12により粉砕して微細化する(ステップS10:微細化工程)。
特殊ロッドミル12により微細化された枝葉を、水を溜めたタンク14に投入する(ステップS12)。
【0021】
微細化された枝葉がタンク14に投入されると、木材チップCは浮き、微細化された樹皮および葉BLは沈む。したがって、タンク14により、微細化された枝葉を、水面に浮遊した木材チップCと、水底に沈殿した微細化された樹皮および葉BLとに分離する(ステップS14:分離工程)。
タンク14において分離された木材チップCは、再度特殊ロッドミル12に搬送される。
【0022】
次に、特殊ロッドミル12、パルパー16、コニカルリファイナー18、ドラム型濃縮機20、および撹拌機22は、分離された木材チップC(繊維状木質資源)を粉砕して極微細化し、凝集材32を生成する(ステップS16:凝集材生成工程)。
このとき、分離された木材チップCだけでなく、木の幹から加工された木材チップC´も粉砕して微細化し、凝集材32を生成してもよい。
一方、タンク14において分離された微細化された樹皮および葉BLを集めて脱水することで、抗菌消臭剤30を生成する(ステップS18:抗菌消臭剤生成工程)。
【0023】
次に、有機汚濁物質34と、凝集材32と、抗菌消臭剤30とをマシンチェスト24により混合して、デッカーマシン26により水分を絞ることで中間相(ゲル状の高濃度流体)を生成し、この中間相が農業用培地40となる(ステップS20:培地生成工程)。
中間相である農業用培地40は、農作物の栽培に必要な水分を含むとともに、有機汚濁物質34に含まれるリンが農作物の栽培に必要な肥料となっている。
抗菌消臭剤30を混合していることで、樹皮および葉のアレロパシー効果により有機汚濁物質34に含まれるアンモニア等を低減して抗菌消臭を行い、雑草を育ちにくくする。
【0024】
さらに、抗菌消臭剤30により培地用容器42を形成する(ステップS22)。
具体的には、例えば、紙などの生分解性を有する材料に、抗菌消臭剤30を入れて培地用容器42を形成する。この場合、抗菌消臭剤30が繊維状であるため(微細化された樹皮および葉BLを含むため)、培地容器42の加工性が容易となり、また、培地用容器42の強度を確保する上で有利となる。
形成された培地用容器42に、生成した農業用培地40を収容する(ステップS24:収容工程)。
農業用培地40を培地用容器42に収容することで、農業用培地40を所望の位置に並べて配置でき、また、時間が経過すると農業用培地40および培地用容器42が分解され土壌になる。
【0025】
このように、本実施形態の農業用培地40の製造方法によれば、剪定や間伐による枝葉Pを粉砕して微細化し、微細化された枝葉を、木材チップCと、微細化された樹皮および葉BLとに分離した後、分離された木材チップCを粉砕して極微細化し凝集材32を生成し、分離された微細化された樹皮および葉BLを集めて植物由来材料である抗菌消臭剤30を生成し、有機汚濁物質34と凝集材32と抗菌消臭剤30とを混合して水分を絞り農業用培地40を生成するため、剪定や間伐による枝葉Pを用いて有機汚濁物質34を農業用培地40として再資源化する上で有利となる。
すなわち、樹皮および葉からなる抗菌消臭剤30のアレロパシー効果により有機汚濁物質34に含まれる悪臭の原因となるアンモニア等を低減して抗菌消臭を行い、雑草を育ちにくくするため、農薬を軽減させる農業用培地40を製造する上で有利となる。また、有機汚濁物質34と木材チップCからなる凝集材32と抗菌消臭剤30とを混合して生成された中間相(ゲル状の高濃度流体)は、農作物の栽培に必要な水分を含むとともに、有機汚濁物質34に含まれるリンが農作物の栽培に必要な肥料となるため、水分および化学肥料を軽減させる農業用培地40を製造する上で有利となる。さらに、有機汚濁物質34や剪定等された枝葉Pなどのゴミを減少させるため、生物処理や焼却による温室効果ガスの発生を低減して環境への負担を軽減する上で有利となる。
また、微細化された枝葉を水を溜めたタンク14に投入し、水面に浮遊した木材チップCと、水底に沈殿した微細化された樹皮および葉BLとを分離させるため、木材チップCと微細化された樹皮および葉BLとを容易に分離する上で有利となる。
また、抗菌消臭剤30により培地用容器42を形成し、農業用培地40を形成された培地用容器42に収容することで、生分解する容器に農業用培地40を収容できるため、農業用培地40を容易に所望の位置に配置にできるとともに、時間が経過して培地用容器42および農業用培地40が分解されて土壌となっても、農薬や化学肥料などを利用していないため農地の劣化を抑制させる上で有利となる。
また、微細化された枝葉から分離された木材チップC、および木の幹から加工された木材チップC´を粉砕して極微細化して凝集材32を生成すれば、より多くの凝集材32を生成でき、多くの農業用培地40を生成する上で有利となる。
また、本実施形態の農業用培地40が、有機汚濁物質34と、剪定や間伐による枝葉Pを微細化し、微細化された枝葉から分離された木材チップCを粉砕して極微細化した凝集材32と、微細化された枝葉から分離された微細化された樹皮および葉BLを集めた植物由来材料である抗菌消臭剤30とを混合して構成されているため、剪定や間伐による枝葉を用いて有機汚濁物質34を農業用培地40として再資源化する上で有利となる。
また、本実施形態の農業用培地40は、セミセルロース、リグニンを取り除くための薬剤を用いていないため、農業用培地40として使用した後に分解される場合、自然の木質が朽ち果てる状況と同じ状況となり、環境への負担が軽減される。
また、剪定や間伐による枝葉Pを粉砕して微細化し、微細化された枝葉を、木材チップCと微細化された樹皮および葉BLとに分離した後、分離された微細化された樹皮および葉BLを集めて植物由来材料を生成するため、この植物由来材料を所定の物質に混合して用いた場合、枝葉Pに含まれる成分により所定の物質の質を向上させる上で有利となる。
すなわち、本実施形態のように、生成された植物由来材料を抗菌消臭剤として農業用培地に用いれば、農業用培地の抗菌消臭を行い、雑草を育ちにくくするため、農薬を軽減させる農業用培地を製造する上で有利となる。
【0026】
上述した実施形態では、剪定された枝葉を微細化し、微細化された枝葉から分離された微細化された樹皮および葉を集めた植物由来材料を、農業用培地の抗菌消臭剤として用いたが、他の用途に用いることもできる。
なお、以下に他の用途について説明するが、記載した用途以外であっても、枝葉に含まれている成分が適している様々なものに適用可能である。
【0027】
(1)飼料の増量材
剪定された枝葉を微細化し、微細化された枝葉から分離された微細化された樹皮および葉を集めた植物由来材料を、飼料の増量材として用いる。この場合、上述した消臭抗菌剤と同様の手順により飼料の増量材を生成する。
すなわち、飼料に適している枝葉Pを特殊ロッドミル12により粉砕して微細化する(微細化工程)。
微細化された枝葉がタンク14に投入されると、木材チップCは浮き、微細化された樹皮および葉BLは沈む。したがって、タンク14により、微細化された枝葉を、水面に浮遊した木材チップCと、水底に沈殿した微細化された樹皮および葉BLとに分離する(分離工程)。
タンク14において分離された微細化された樹皮および葉BLを集めて脱水することで、植物由来材料である飼料の増量材を生成する(増量材生成工程)。
生成された飼料の増量材は、家畜の飼料などに加えられる。
このように、家畜の飼料、例えばトウモロコシ、大麦や小麦などに、飼料として適している枝葉から生成された植物由来材料を加えることによって、飼料の嵩増しをすることができ、飼料のコストを削減する上で有利となる。
【0028】
(2)健康補助食品(サプリメント)の原料
剪定された枝葉を微細化し、微細化された枝葉から分離された微細化された樹皮および葉を集めた植物由来材料を、健康補助食品の原料として用いる。この場合、上述した消臭抗菌剤と同様の手順により健康補助食品の原料を生成する。
すなわち、健康補助食品に適している枝葉Pを特殊ロッドミル12により粉砕して微細化する(微細化工程)。
微細化された枝葉がタンク14に投入されると、木材チップCは浮き、微細化された樹皮および葉BLは沈む。したがって、タンク14により、微細化された枝葉を、水面に浮遊した木材チップCと、水底に沈殿した微細化された樹皮および葉BLとに分離する(分離工程)。
タンク14において分離された微細化された樹皮および葉BLを集めて脱水することで、植物由来材料である健康補助食品の原料を生成する(健康補助食品の原料生成工程)。
生成された健康補助食品の原料は、他の成分と合わせられ、健康補助食品が生成される。
このように、健康補助食品として適した効能を有する枝葉から生成された植物由来材料を、他の成分と合わせることで、所定の効能を有する健康補助食品を生成することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 農業用培地の製造システム
12 特殊ロッドミル
14 タンク
16 パルパー
18 コニカルリファイナー
20 ドラム型濃縮機
22 撹拌機
24 マシンチェスト
26 デッカーマシン
30 抗菌消臭剤
32 凝集材
34 有機汚濁物質
40 農業用培地
42 培地用容器
P 剪定された枝葉
C 木材チップ
BL 微細化された樹皮および葉