(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177920
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】蓄電制御装置、蓄電装置、充電残時間算出方法、及び充電残時間算出プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231207BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20231207BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231207BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H02J7/00 U
H02J7/02 U
H01M10/48 Z
H01M10/48 301
H01M10/44 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090892
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉森 駿一郎
(72)【発明者】
【氏名】玉木 克彦
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA02
5G503CA20
5G503CC02
5G503DA07
5G503DA16
5G503DA18
5G503EA01
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS03
5H030AS06
5H030BB03
5H030FF22
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】充電残時間の推定精度を向上させること。
【解決手段】蓄電制御装置は、外部電源からの給電により動作する負荷装置に対し、外部電源の給電状態の非常時に給電する蓄電装置の充電残時間を算出する処理部を有し、処理部は、蓄電装置の充電残時間を、蓄電装置の使用環境と蓄電装置の充電中断時間を包含する充電時間との間の、直線近似された相関に基づいて、算出する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の充電残時間を、前記蓄電装置の使用環境と前記蓄電装置の充電中断時間を包含する充電時間との間の、直線近似された相関に基づいて算出する処理部を有する、
蓄電制御装置。
【請求項2】
前記処理部は、記憶部に予め記憶されている相関データを読み出し、読み出した相関データを用いて前記充電残時間を算出し、前記記憶部における前記相関データを、前記充電時間の実測値に基づいて更新する、
請求項1に記載の蓄電制御装置。
【請求項3】
前記相関データは、前記蓄電装置の電池温度の基準値毎に設定された電池温度別データを含み、
前記処理部は、前記電池温度別データのうち、充電開始時の前記電池温度に対応する特定の電池温度別データを用いて、前記充電残時間を算出する、
請求項2に記載の蓄電制御装置。
【請求項4】
前記電池温度別データは、前記蓄電装置のフル充電時間の基準値と、外部電源から前記蓄電装置への入力電圧の基準値と、を含み、
前記処理部は、
前記フル充電時間の基準値を、充電開始時の前記入力電圧と前記入力電圧の基準値との差分に基づいて調整して、前記フル充電時間の推定値を取得し、
取得された前記フル充電時間の推定値を、充電開始時の前記蓄電装置の充電状態に基づいて調整して、前記充電残時間の推定値を取得する、
請求項3に記載の蓄電制御装置。
【請求項5】
前記相関データは、前記相関を表す近似式の定数を含み、
前記処理部は、前記フル充電時間の基準値の調整に、前記電池温度に依存しない定数を使用し、前記フル充電時間の推定値の調整に、前記電池温度に依存する定数を使用する、
請求項4に記載の蓄電制御装置。
【請求項6】
前記相関データは、前記蓄電装置の電池温度の基準値毎に夫々設定された、前記蓄電装置のフル充電時間の基準値と、外部電源から前記蓄電装置への入力電圧の基準値と、を含み、
前記処理部は、
前記充電時間の実測値を換算して、前記フル充電時間の換算値を取得し、
充電開始時の電池温度に対応する前記フル充電時間の基準値を、取得された前記フル充電時間の換算値に基づいて更新し、
充電開始時の電池温度に対応する前記入力電圧の基準値を、充電開始時の前記入力電圧に基づいて更新する、
請求項2に記載の蓄電制御装置。
【請求項7】
外部電源からの給電により動作する負荷装置に対し、前記外部電源の給電状態の非常時に給電する蓄電装置であって、
請求項1に記載の蓄電制御装置を有する、
蓄電装置。
【請求項8】
処理部により、蓄電装置の充電残時間を、前記蓄電装置の使用環境と前記蓄電装置の充電中断時間を包含する充電時間との間の、直線近似された相関に基づいて算出する、充電残時間算出方法。
【請求項9】
請求項8に記載の充電残時間算出方法をコンピュータに実行させるための、充電残時間算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電制御装置、蓄電装置、充電残時間算出方法、及び充電残時間算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
外部電源からの給電により動作する負荷装置に対し、主に外部電源の給電状態の非常時に(例えば停電時)、外部電源に代わって給電を行うよう放電する蓄電装置(「バッテリバンクユニット」とも称される)が、従来から知られている(例えば特許文献1参照)。蓄電装置は一般に、複数の蓄電デバイス(「バッテリバンク」或いは「バッテリパック」とも称される)を有し、複数の蓄電デバイスは夫々、平時に外部電源からの給電により充電可能な複数の二次電池により構成され、互いに並列に接続されている。
【0003】
複数の蓄電デバイスは夫々、対応して設けられた出力スイッチのオンオフにより放電可否を制御可能である。いずれかの蓄電デバイスを充電のため放電不能とするよう、対応する出力スイッチがオフされ、同時に、他の蓄電デバイスを給電のため放電可能とするよう、対応する出力スイッチがオンされる。このような充電方式は、「バンク切替方式」と称されることがある。バンク切替方式では、必要時には途切れることなく負荷装置への給電を行うことができ、不要時には負荷装置に対する無駄な給電を抑制することができる。
【0004】
ところで、例えば負荷装置の管理目的等で、蓄電装置の充電に要する時間、特に充電中の場合は充電に要する残りの時間(充電残時間)を把握したいという要望がある。
【0005】
充電残時間を推定するための充電残時間算出方法としては、例えば特許文献2に記載されたものがある。特許文献2に記載された従来の充電残時間算出方法は、充電電流を積算して得るSOC(State Of Charge)と充電中の充電電流とから充電残時間の推定値を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-10250号公報
【特許文献2】特開平9-322420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、蓄電装置においては、内蔵する蓄電デバイスへの充電が一時的に行われない充電中断時間が存在する場合がある。例えば上述したバンク切替方式を採用する蓄電装置では、いずれかの蓄電デバイスの充電を終えた後、他の蓄電デバイスの充電を始めるまでの間に、一時的にいずれの蓄電デバイスにも充電が行われない期間が発生する場合がある。
【0008】
上記従来の充電残時間算出方法では、充電中断時間が存在する場合を想定していない。よって、充電残時間の推定精度向上に一定の限界がある。
【0009】
本開示は、充電残時間の推定精度を向上させることができる蓄電制御装置、蓄電装置、充電残時間算出方法、及び充電残時間算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る蓄電制御装置の一態様は、
蓄電装置の充電残時間を、蓄電装置の使用環境と蓄電装置の充電中断時間を包含する充電時間との間の、直線近似された相関に基づいて、算出する処理部を有する。
【0011】
本開示に係る蓄電装置の一態様は、
外部電源からの給電により動作する負荷装置に対し、外部電源の給電状態の非常時に給電する蓄電装置であって、
上記の蓄電制御装置を有する。
【0012】
本開示に係る充電残時間算出方法の一態様は、
処理部により、蓄電装置の充電残時間を、蓄電装置の使用環境と蓄電装置の充電中断時間を包含する充電時間との間の、直線近似された相関に基づいて、算出する。
【0013】
本開示に係る充電残時間算出プログラムの一態様は、
上記の充電残時間算出方法をコンピュータに実現させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、充電残時間の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施の形態に係るバッテリバンクユニットの構成を模式的に示す図
【
図3】
図2に示す記憶部に記憶されるテーブルの一例を示す図
【
図4】本実施の形態に係るバッテリバンクユニットの充電処理を示すフローチャート
【
図5】本実施の形態に係るバッテリバンクユニットの充電処理を示すタイムチャート
【
図6】本実施の形態に係るバッテリバンクユニットの充電残時間算出方法を示すフローチャート
【
図7A】入力電圧と充電時間との相関関係の説明に供する図
【
図7B】SOCと充電時間との相関関係の説明に供する図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一実施の形態に係るバッテリバンクユニット(BBU)ついて、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るBBU1の概要図である。BBU1は、外部電源2が停電になったときに、外部電源2に接続された負荷装置3に電力を供給する。また、BBU1は、外部電源2の電力によって充電される。
【0018】
外部電源2は、例えば商用の交流電力を直流電力に変換して出力する装置である。負荷装置3は、直流電力で動作する装置(例えばサーバ装置)である。
【0019】
BBU1は、入出力端子10、制御装置20、蓄電部30及び充放電回路40を有する。BBU1は、蓄電装置の一例である。
【0020】
入出力端子10は、外部電源2から負荷装置3へ電力を供給する電源ライン4に接続されている。入出力端子10が電源ライン4に接続されることで、BBU1は、外部電源2の給電状態の非常時(主に停電時)に負荷装置3へ給電可能となる。
【0021】
蓄電部30は、第1バッテリバンク(BB)31及び第2BB32を有する。第1BB31及び第2BB32は夫々、蓄電デバイスの一例であり、これらは互いに同様に構成されている。例えば、第1BB31及び第2BB32は夫々、複数の二次電池が直列に接続された構成を有する。二次電池の種類は、本実施の形態では、ニッケル水素二次電池である。なお、二次電池の種類は、リチウムイオン二次電池等、ニッケル水素二次電池以外の二次電池であってもよい。第1BB31及び第2BB32は、互いに並列に接続されている。
【0022】
充放電回路40は、入出力端子10を介して第1BB31及び第2BB32の充電及び放電(充放電)をする回路として機能する。充放電回路40は、昇圧DC/DCコンバータ41、切替スイッチ42、第1充電スイッチ43、第1放電スイッチ44、第2充電スイッチ45、第2放電スイッチ46、第1定電流回路48及び第2定電流回路49を有する。充放電回路40は、後述する充電処理において、第1BB31及び第2BB32を順次(又は交互に)充電する。つまり、BBU1は、充電方式としてバンク切替方式を採用している。
【0023】
昇圧DC/DCコンバータ41は、外部電源2から供給された電力を昇圧して出力する電源変換装置である。
【0024】
切替スイッチ42は、第1BB31及び第2BB32に印加される電圧値を切り替える。切替スイッチ42において、第1端子42aが昇圧DC/DCコンバータ41の出力端子に接続され、第2端子42bが入出力端子10に接続されている。また、第3端子42cは、第1充電スイッチ43及び第1定電流回路48を介して第1BB31に接続され、第2充電スイッチ45及び第2定電流回路49を介して第2BB32に接続されている。
【0025】
切替スイッチ42がオン状態である場合、第1端子42aと第3端子42cとが接続される。この場合、外部電源から出力された電力は、昇圧DC/DCコンバータ41を経由して出力される。すなわち、昇圧DC/DCコンバータ41から出力された電力が第1充電スイッチ43及び第2充電スイッチ45を介して第1BB31及び第2BB32に供給される。一方、切替スイッチ42がオフ状態である場合、第2端子42bと第3端子42cとが接続され、外部電源2から出力された電力が昇圧DC/DCコンバータ41を経由せずに、第1充電スイッチ43及び第2充電スイッチ45を介して第1BB31及び第2BB32に供給される。
【0026】
第1充電スイッチ43は、オン状態である場合に第1BB31の充電を許容し、オフ状態である場合に第1BB31の充電を許容しない。第1充電スイッチ43において、第1端子43aが切替スイッチ42の第3端子42cに接続され、第2端子43bが第1BB31の正極に接続されている。なお、第1BB31の負極はグランドに接続されている。
【0027】
第1放電スイッチ44は、オン状態である場合に第1BB31の放電を許容し、オフ状態である場合に第1BB31の放電を許容しない。第1放電スイッチ44において、第1端子44aが第1BB31の正極に接続され、第2端子44bが入出力端子10に接続されている。
【0028】
第2充電スイッチ45は、オン状態である場合に第2BB32の充電を許容し、オフ状態である場合に第2BB32の充電を許容しない。第2充電スイッチ45において、第1端子45aが切替スイッチ42の第3端子42cに接続され、第2端子45bが第2BB32の正極に接続されている。なお、第2BB32の負極はグランドに接続されている。
【0029】
第2放電スイッチ46は、オン状態である場合に第2BB32の放電を許容し、オフ状態である場合に第2BB32の放電を許容しない。第2放電スイッチ46において、第1端子46aが第2BB32の正極に接続され、第2端子46bが入出力端子10に接続されている。
【0030】
図2は、BBU1のブロック図である。
図2に示されるように、BBU1は、入出力電圧センサ61、入出力電流センサ62、第1電池電圧センサ63、第1電池温度センサ64、第2電池電圧センサ65及び第2電池温度センサ66をさらに有する。
【0031】
入出力電圧センサ61は、入出力端子10を介して外部電源2からBBU1に入力され、又は、入出力端子10を介してBBU1から負荷装置3に出力される、電圧値を検出する。入出力電圧センサ61は、具体的には、入出力端子10と充放電回路40の接続点40aとの間の電圧値を検出する。入出力電圧センサ61により検出される外部電源2からBBU1への入力電圧値(電源電圧値)に基づいて、外部電源2の停電を検出することができる。
【0032】
入出力電流センサ62は、入出力端子10を介して、電源ライン4から流入し又は電源ライン4に流出する、電流値を検出する。入出力電流センサ62は、具体的には、入出力端子10と充放電回路40の接続点40aとの間の電流値を検出する。
【0033】
第1電池電圧センサ63は、第1BB31の電圧値を検出する。第1電池温度センサ64は、第1BB31の温度を検出する。
【0034】
第2電池電圧センサ65は、第2BB32の電圧値を検出する。第2電池温度センサ66は、第2BB32の温度を検出する。入出力電圧センサ61、入出力電流センサ62、第1電池電圧センサ63、第1電池温度センサ64、第2電池電圧センサ65、及び第2電池温度センサ66は夫々、検出値を制御装置20に送信する。
【0035】
第1定電流回路48及び第2定電流回路49は夫々、第1BB31及び第2BB32に対応して設けられている。第1定電流回路48及び第2定電流回路49は、外部電源2から(昇圧DC/DCコンバータ41を経由して又は経由せずに)入力される電圧とは関係なく一定の電流を、対応する第1BB31及び第2BB32に出力する。
【0036】
なお、第1定電流回路48及び第2定電流回路49は、本実施の形態で使用するニッケル水素二次電池のように、定電流充電を行うことが望ましい種類の二次電池が使用される場合に、夫々の二次電池に対応して設ければよい。
【0037】
制御装置20は、記憶部21と処理部22とを有し、例えばコンピュータ等により実現される。処理部22は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により実現される。記憶部21は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等により実現されるストレージ装置と例えばRAM(Random Access Memory)等により実現されるメモリ装置とを含む。
【0038】
処理部22は、BBU1の各機能を実現させるための各種制御用のプログラム又は指示、及び当該プログラム又は指示に関連するデータ等(以下、単に「プログラム等」ともいう)を、ストレージ装置から読み出してメモリ装置に記憶させ、データ等を使用しつつ各種制御用のプログラム又は指示を実行する。本実施の形態では、データ等は、後述するテーブルT及び数式を含む。
【0039】
プログラム等は、フラッシュメモリ等の着脱可能な記憶媒体に記憶されてもよい。この場合、制御装置20は、着脱可能な記憶媒体を着脱可能に構成され、記憶媒体からプログラム等を読み出す。なお、制御装置20を外部と通信可能に構成して、プログラム等が通信ネットワークを介して外部から制御装置20にダウンロードされるようにしてもよい。
【0040】
上述したストレージ装置、メモリ装置及び着脱可能な記憶媒体は、非一時的な記憶媒体の一例である。
【0041】
制御装置20は、各スイッチ42~46夫々の状態を制御する。また、制御装置20は、昇圧DC/DCコンバータ41の駆動を制御する。制御装置20によるBBU1内各部の制御により、BBU1の充放電が制御され、BBU1の例えば無停電電源装置としての機能が実現される。制御装置20は、蓄電装置であるBBU1を制御する蓄電制御装置の一例である。
【0042】
テーブルTは、制御装置20が充電残時間を算出する際に参照されるデータ群である。充電残時間の算出は、BBU1の充電開始時に実行される。充電残時間とは、BBU1の充電開始から充電完了までに要する時間である。
【0043】
図3は、テーブルTの一例を示す図である。テーブルTでは、電池温度と、フル充電時間の基準値(フル充電時間基準値FTR)と、入力電圧の基準値(入力電圧基準値VR)とが、電池温度の基準値(本実施の形態では、温度帯)毎に互いに対応付けられている。
【0044】
テーブルTは、BBU1の使用環境とBBU1の充電時間との相関を表す相関データの一例である。フル充電時間基準値FTRと入力電圧基準値VRとの組合せは、BBU1の電池温度基準値毎に設定された電池温度別データの一例である。なお、本実施の形態において「使用環境」は、例えば、充電開始時の電池温度、充電開始時の入力電圧、及び充電開始時のSOCを含む。
【0045】
テーブルTにおいて、電池温度は、全部で6つの温度帯に区分けされており、ニッケル水素二次電池の一般的な動作温度帯である0℃から40℃の間では、10℃ずつ6つに区分けされている。なお、電池温度の区分けの個数が、
図3に示す例に限定されないことは言うまでもない。
【0046】
図3に示す例では、例えば電池温度「0℃未満」に対しては、フル充電時間基準値FTRとして「A0」及び入力電圧基準値として「B0」が保存されている。フル充電時間基準値FTRとしての「A0」、「A1」、「A2」、「A3」、「A4」、「A5」及び入力電圧基準値としての「B0」、「B1」、「B2」、「B3」、「B4」、「B5」はいずれも、便宜上記号として例示されているが実際は数値であり、これらの数値は、充電完了後に更新される場合がある。テーブルTの使い方(充電残時間算出方法)については後述する。
【0047】
以上、本実施の形態に係るBBU1の構成について説明した。
【0048】
次いで、制御装置20が実行するBBU1の充電処理の一例について、
図4のフローチャート及び
図5のタイムチャートを用いて説明する。
【0049】
なお、
図5の上側部分に示すグラフにおいて、実線の電圧値は、第1BB31の電圧値を示し、一点鎖線の電圧値は、第2BB32の電圧値を示している。本例では、一括充電処理の開始前、及び、一括充電処理中において、第1BB31及び第2BB32の電圧値は、略等しいものとする。つまり、第1BB31及び第2BB32の電圧値を示す線は重なっており、そのため実線で示されている。また、
図5に示す「電源電圧値」とは、外部電源2から平時に負荷装置3及びBBU1に入力される電圧の値である。よって、以下の説明では、特に言及しない限り、電源電圧値は平時の電源電圧値である。言うまでもなく、停電時等の非常時では、外部電源2の実際の電源電圧値は平時の電源電圧値に比べて著しく低くなる。
【0050】
充電処理が開始されていない状態では、切替スイッチ42、第1充電スイッチ43及び第2充電スイッチ45夫々がオフ状態であり、且つ、第1放電スイッチ44及び第2放電スイッチ46夫々がオン状態である。これにより、第1BB31及び第2BB32夫々の放電が許容されている。本例では、充電処理の開始前、第1BB31及び第2BB32の電圧値及び充電量は略等しいものとする。したがって、第1BB31のSOC及び第2BB32のSOCとの平均であるBBU1のSOCは、第1BB31及び第2BB32夫々のSOCと略等しい。ちなみに、第1BB31及び第2BB32夫々のSOCは、例えば夫々の電池電圧の測定値から算出することができる。
【0051】
制御装置20は、入出力電圧センサ61の検出値に基づいて外部電源2との接続を検出したとき、又は、外部電源2の停電の終了を検出したときに、充電処理を開始する。制御装置20は、BBU1のSOCが所定値以下まで低下したときに、充電処理を開始してもよい。
【0052】
制御装置20は、ステップS101にて、一括充電処理を開始する。一括充電処理は、第1BB31及び第2BB32を一括で充電する処理である。制御装置20は、具体的には、
図5に示されるように、切替スイッチ42、第1充電スイッチ43及び第2充電スイッチ45夫々がオフ状態であり、且つ、第1放電スイッチ44及び第2放電スイッチ46夫々がオン状態である状態から、切替スイッチ42、第1充電スイッチ43及び第2充電スイッチ45夫々をオン状態に切り替える(時刻t0)。
【0053】
第1放電スイッチ44及び第2放電スイッチは夫々、オン状態のままである。これにより、一括充電処理中に外部電源2が停電しても、第1BB31及び第2BB32のうち少なくともいずれか一方の電池電圧値が外部電源2の電源電圧値(停電時)を上回れば、放電が行われてBBU1から負荷装置3への給電を行うことができる。
【0054】
一括充電処理が開始されると(時刻t0)、昇圧DC/DCコンバータ41から電力が第1BB31及び第2のBB32に供給され、第1BB31及び第2BB32の電圧値が上昇する。
【0055】
続けて、制御装置20は、ステップS102にて、BBU1の電圧値であるバンク電圧値が電源電圧値以上であるか否かを判定する。バンク電圧値は、具体的には、第1BB31の電圧値と第2BB32の電圧値との平均値である。なお、バンク電圧値は、第1BB31及び第2BB32のうち一方の電圧値でもよい。バンク電圧値が電源電圧値より低い場合(S102にてNO)、一括充電処理を継続する。
【0056】
一方、第1BB31及び第2BB32の電圧値が上昇し、バンク電圧値が電源電圧値以上となった場合(時刻t1;S102にてYES)、制御装置20は、ステップS103にて、一括充電処理を終了し、第1バンク充電処理を開始する。
【0057】
第1バンク充電処理は、第1BB31のみを充電する処理である。第1バンク充電処理において、第1BB31は、満充電状態まで充電される。満充電状態の電池電圧値は、電源電圧値よりも十分に高い電圧値である。第1バンク充電処理では、第2BB32は充電されない。
【0058】
制御装置20は、具体的には、第2充電スイッチ45をオフ状態に切り替え、且つ、第1放電スイッチ44をオフ状態に切り替える(時刻t1)。これにより、昇圧DC/DCコンバータ41の電力が第1BB31のみに供給され、第1BB32の電圧値が電源電圧値からさらに上昇する。第1バンク充電処理において、第1放電スイッチ44はオフ状態であり、第1BB31の放電は行われない。よって、電源電圧値より高い電圧が負荷装置3に印加されることを未然に防止することができ、ひいては、負荷装置3の故障等を防止できる。
【0059】
一方、第2BB32の充電は停止され、第2BB32の電圧値が自己放電によって徐々に低下する。第1バンク充電処理において、第2放電スイッチ46はオン状態である。よって、仮に第1バンク充電処理中に外部電源2が停電して、電源電圧値が平時の電源電圧値よりも著しく低下した場合、第2BB32の放電が開始され、BBU1から負荷装置3への給電が行われる。
【0060】
続けて、制御装置20は、ステップS104にて、第1BB31が満充電状態となったか否かを判定する。制御装置20は、具体的には、第1電池温度センサ64の検出値が所定の第1温度となったか否かを判定する。第1温度は、第1BB31が満充電状態となるときの温度である。第1電池温度センサ64の検出値が第1温度より低い場合(S104にてNO)、制御装置20は、第1BB31のみを充電する第1バンク充電処理を継続する。
【0061】
一方、第1BB31が満充電状態になり、第1電池温度センサ64の検出値が第1温度に到達した場合(時刻t2;S104にてYES)、制御装置20は、ステップS105にて、第1BB31のみを充電する第1バンク充電処理を停止する。
【0062】
制御装置20は、具体的には、第1充電スイッチ43をオフ状態に切り替える(時刻t2)。これにより、第1BB31の充電が停止され、第1BB31の電圧値が自己放電によって徐々に低下する。このとき、第1BB31の温度は、第2BB32の温度より高い。よって、第1BB31の電圧値の単位時間あたりの降下量は、第2BB32の電圧値の単位時間あたりの降下量より大きい。
【0063】
続けて、制御装置20は、ステップS106にて、第1BB31の電圧値が電源電圧値以下となったか否かを判定する。第1BB31の電圧値が電源電圧値より高い場合(S106にてNO)、制御装置20は、第1BB31及び第2BB32の充電がいずれも停止されている状態を継続する。この期間(時刻t2から時刻t3までの期間)は、充電中断時間である。
【0064】
一方、第1BB31の電圧値が電源電圧値以下となった場合(時刻t3;S106にてYES)、制御装置20は、ステップS107にて、第1バンク充電処理を終了し、第2バンク充電処理を開始する。
【0065】
第2バンク充電処理は、第2BB32のみを充電する処理である。第2バンク充電処理において、第2BB32は、満充電状態まで充電される。第2バンク充電処理では、第1BB31は充電されない。
【0066】
制御装置20は、具体的には、第2充電スイッチ45をオン状態に切り替え、第1放電スイッチ44をオン状態に切り替え、第2放電スイッチ46をオフ状態に切り替える(時刻t3)。これにより、昇圧DC/DCコンバータ41から電力が第2BB32のみに供給され、第2BB32の電圧値が上昇し、やがて電源電圧値を超える。第2バンク充電処理において、第2放電スイッチ46はオフ状態であり、第2BB32の放電は行われない。よって、電源電圧値より高い電圧値が負荷装置3に印加されることを未然に防止することができ、ひいては、負荷装置3の故障等を防止できる。
【0067】
一方、第1BB31の充電は停止されたままであり、第1BB31の電圧値が自己放電によって徐々に低下する。第2バンク充電処理において、第1放電スイッチ44はオン状態である。よって、仮に第2バンク充電処理中に外部電源2が停電して、電源電圧値が平時の電源電圧値よりも著しく低下した場合、第1BB31の放電が開始され、BBU1から負荷装置3への給電が行われる。
【0068】
続けて、制御装置20は、ステップS108にて、第2BB32が満充電状態となったか否かを判定する。制御装置20は、具体的には、第2電池温度センサ66の検出値が所定の第2温度となったか否かを判定する。第2温度は、第2BB32が満充電状態となるときの温度である。第2温度は、第1温度と同じであってもよい。第2電池温度センサ66の検出値が第2温度より低い場合(S108にてNO)、制御装置20は、第2BB32のみを充電する第2バンク充電処理を継続する。
【0069】
一方、第2BB32が満充電状態になり、第2電池温度センサ66の検出値が第2温度に到達した場合(時刻t4;S108にてYES)、制御装置20は、ステップS109にて、第2BB32のみを充電する第2バンク充電処理を停止する。
【0070】
制御装置20は、具体的には、第2充電スイッチ45をオフ状態に切り替える(時刻t4)。これにより、第2BB32の充電が停止され、第2BB32の電圧値が自己放電によって徐々に低下する。このとき、第2BB32の温度は、第1BB31の温度より高い。よって、第2BB32の電圧値の単位時間あたりの降下量は、第1BB31の電圧値の単位時間あたりの降下量より大きい。
【0071】
続けて、制御装置20は、ステップS110にて、第2BB32の電圧値が電源電圧値以下となったか否かを判定する。第2BB32の電圧値が電源電圧値より高い場合(S110にてNO)、制御装置20は、第1BB31及び第2BB32の充電が停止されている状態を継続する。
【0072】
一方、第2BB32の電圧値が電源電圧値以下となった場合(時刻t5;S110にてYES)、制御装置20は、ステップS111にて、第2バンク充電処理を終了する。制御装置20は、具体的には、切替スイッチ42をオフ状態に、且つ、第2放電スイッチ46をオン状態に切り替える(時刻t5)。これにより、BBU1の充電を終了し、一連の充電処理を終了する。制御装置20は、BBU1の充電を終了した時点におけるBBU1のSOCを100%と定める。
【0073】
なお、BBU1は、3つ以上のバッテリバンクを有してもよい。バッテリバンクの個数がN個(Nは3以上の整数)である場合、一括充電処理では、N個のバッテリバンクが一括に充電される。また、一括充電処理が終了すると、上記の第1、第2バンク充電処理と同様に、N個のバッテリバンク夫々に対する第nバンク充電処理(nは1からNまでの整数)が順次実行される。また、バッテリバンクの個数が多数である場合、N個のバッテリバンクをM個(Mは2以上の整数)のバッテリバンク群に分け、M個のバッテリバンク群夫々に対する第mバンク充電処理(mは1からMまでの整数)を順次実行するようにしてもよい。第mバンク充電処理では、同じバッテリバンク群に属する複数個のバッテリバンクが同時に充電される。
【0074】
次いで、制御装置20の処理部22が実行する、BBU1の充電残時間算出方法について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0075】
充電処理が開始されると(ステップS201)、処理部22は、充電開始時の電池温度、入力電圧及びSOCを取得する(ステップS202)。充電処理の開始条件としては、上述した通り、BBU1と外部電源2との接続、外部電源2の停電の終了、又は、BBU1のSOCの低下等が挙げられる。処理部22は、充電処理の開始時に夫々取得される第1電池温度センサ64の検出値と第2電池温度センサ66の検出値との平均値を、充電開始時電池温度として算出する。また、処理部22は、充電処理の開始時に、入出力電圧センサ61の検出値を充電開始時の入力電圧(充電開始時入力電圧VM)として取得する。また、処理部22は、充電処理の開始時に夫々取得される第1電池電圧センサ63の検出値及び第2電池電圧センサ65の検出値、並びに、予め定められているBBU1のSOC100%に相当する電圧値から、充電開始時SOC(以下、「充電開始時充電状態SOCS」という)を取得する。
【0076】
そして、処理部22は、テーブルTを参照する(ステップS203)。このとき、処理部22は、テーブルTにおいて、充電開始時電池温度が該当する温度帯に対応付けられている入力電圧(入力電圧基準値VR)及びフル充電時間(フル充電時間基準値FTR)を読み出す。
【0077】
そして、処理部22は、充電残時間の推定処理を行う(ステップS204)。具体的には、処理部22は、フル充電時間の推定値を算出して、充電残時間の推定値を算出する。
【0078】
フル充電時間の推定値の算出は、次の式(1)を用いて行われる。式(1)は、予め記憶部21に記憶されている。
【数1】
【0079】
式(1)において、kは定数である。式(1)及び定数kの具体的な数値は、予め記憶部21に記憶されている。定数kは相関データの一例である。
【0080】
式(1)では、充電開始時入力電圧VMと入力電圧基準値VRとの差分に定数kを乗算した値で、フル充電時間基準値FTRを調整することにより、フル充電時間推定値FTEを求めることができる。
【0081】
充電残時間の算出は、次の式(2)を用いて行われる。
【数2】
【0082】
式(2)において、ktempはテーブルTにおいて区分けされている温度帯毎に設定された定数である。式(2)及び定数ktempの具体的な数値は、予め記憶部21に記憶されている。定数ktempは相関データの一例である。
【0083】
式(2)では、式(1)で算出されたフル充電時間推定値FTEを、充電開始時充電状態SOCSを定数ktempで乗算した値で調整することにより、充電残時間推定値RTEを求めることができる。「充電開始時充電状態SOCSを定数ktempで乗算した値」は、充電開始時充電状態SOCSに応じて充電時間が短縮されると推定される時間の長さであり、換言すれば、SOCが0%から充電開始時充電状態SOCSまで充電する場合に要するであろうと推定される時間の長さである。
【0084】
算出された充電残時間推定値RTEは、負荷装置3或いはBBU1の管理者用端末の表示部(不図示)に表示させる等して、適宜利用することができる。
【0085】
ここで、定数k及び定数k
tempについて、
図7A及び
図7Bを参照して説明する。
図7Aは、充電開始時入力電圧と充電時間との相関関係を示す図であり、
図7Bは、充電開始時SOCと充電時間との相関関係を示す図である。
【0086】
図7Aは、BBU1が電源ライン4に接続される前の段階で、BBU1又はBBU1と同一構成のBBUを用いて予め行われる実験等により収集されたデータをプロットしたグラフである。
図7Aのグラフは、異なる入力電圧(電源電圧値)でのフル充電時間が、異なる電池温度の下で複数回測定された、測定結果をプロットしたものである。なお、バンク切替方式のBBUを用いた測定結果であることから、フル充電時間は、いずれかのBBが充電されている時間だけでなくいずれのBBも充電されない充電中断時間を包含して測定されたものである。
【0087】
図7Aのグラフには、同じ電池温度での測定結果の相関関係を直線近似した近似直線ALa25、ALa35が示されている。すなわち、入力電圧とフル充電時間との間には、直線近似できる相関関係があることが分かる。
図7Aに示されるように、この実験結果によれば、これらの直線ALa25、ALa35の傾き(一次近似式の定数)は、電池温度にかかわらず一定である。よって、入力電圧とフル充電時間との相関関係は、電池温度に依存しない。したがって、既知の入力電圧とこれに対応する既知のフル充電時間との組合せが存在することを前提に、新規の入力電圧から新規のフル充電時間を求める場合は、これら2つの入力電圧の差分に、電池温度に依存せず一定の定数kを乗算した値に基づいて、既知のフル充電時間を調整すればよい。フル充電時間推定値FTEを算出する際に上記式(1)を使用する理由は、以上の通りである。
【0088】
図7Bは、BBU1が電源ライン4に接続される前の段階で、BBU1又はBBU1と同一構成のBBUを用いて予め行われる実験等により収集されたデータをプロットしたグラフである。
図7Bのグラフは、異なる充電開始時SOCから満充電状態に到達するまでに要する所要充電時間が、異なる電池温度の下で複数回測定された、測定結果をプロットしたものである。なお、バンク切替方式のBBUを用いた測定結果であることから、所要充電時間は、いずれかのBBが充電されている時間だけでなくいずれのBBも充電されない充電中断時間を包含して測定されたものである。
【0089】
図7Bのグラフには、同じ電池温度での測定結果の相関関係を直線近似した近似直線ALb25、ALb35が示されている。すなわち、充電開始時SOCと所要充電時間との間には、直線近似できる相関関係があることが分かる。
図7Bに示されるように、この実験結果によれば、これらの直線ALb25、ALb35の傾き(一次近似式の定数)は、電池温度によって異なる。よって、充電開始時SOCと所要充電時間との相関関係は、電池温度に依存する。したがって、特定電池温度でのフル充電時間推定値が存在することを前提に、新規の充電開始時SOCから新規の所要充電時間(つまり充電残時間)を求める場合は、この新規の充電開始時SOCに、その特定電池温度に対応する定数k
tempを乗算した値に基づいて、既存のフル充電時間推定値を調整すればよい。充電残時間推定値RTEを算出する際に上記式(2)を使用する理由は、以上の通りである。
【0090】
ステップS205では、処理部22は、充電処理の終了まで待機する(S205にてNO)、処理部22は、充電処理が終了したとき(S205にてYES)、充電時間の実測値(充電時間実測値TM)を取得する(ステップS206)。充電時間実測値TMは、例えば、処理部22が、制御装置20内のタイマー(不図示)を用いて充電開始から充電完了までの経過時間を計時することにより、取得することができる。なお、言うまでもないが、充電処理中に充電中断が発生した場合、この充電時間実測値TMには、充電中断時間が包含される。
【0091】
処理部22は、取得された充電時間実測値TMを正規化する(ステップS207)。具体的には、処理部22は、充電時間実測値TMを換算して、フル充電時間の推定値(フル充電時間換算値FTC)を取得する。
【0092】
フル充電時間換算値FTCの算出は、次の式(3)を用いて行われる。
【数3】
【0093】
上記式(3)では、充電時間実測値TMを、SOCが0%から充電開始時充電状態SOCSまで充電する場合に要するであろうと推定される時間の長さに加算することにより、フル充電時間換算値FTCを求めることができる。
【0094】
このフル充電時間換算値FTCは、直近の充電時間実測値TMを一成分として含む。そして、充電処理において充電中断時間が発生していれば、充電時間実測値TMにはその充電中断時間が包含される。そのため、フル充電時間換算値FTCは、上記式(1)で求めたフル充電時間推定値FTEに比べて、現在の使用環境でフル充電(SOCが0%から100%となるまで行う充電)に要する時間の推定値として、精度が高い。
【0095】
処理部22は、ステップS207で算出されたフル充電時間換算値FTCと、ステップS201で取得された充電開始時入力電圧TMとを用いて、テーブルTにおいて、フル充電時間基準値FTRと、入力電圧基準値VRとを更新する(ステップS208)。例えば、充電開始時電池温度が15℃であれば、テーブルTにおいて、電池温度「10℃以上20度未満」に対応付けられているフル充電時間基準値FTR「A2」及び入力電圧基準値VR「B2」が、更新対象となる。更新後の新しいフル充電時間基準値FTR及び入力電圧基準値VRは、次回以降の充電残時間算出において利用される。次回以降の充電残時間算出では、直近の使用環境に合わせて学習した相関データを利用することになるため、より高精度な充電残時間の推定を実現することができる。
【0096】
以上、説明した通り、本実施の形態によれば、制御装置20において、BBU1の充電残時間を算出する処理部22は、BBU1の充電残時間を、BBU1の使用環境とBBU1の充電中断時間を包含する充電時間との間の、直線近似された相関に基づいて算出する。これにより、例えばバンク切替方式で発生する充電中断時間を加味した充電残時間の推定を行うことができるため、充電残時間の推定精度を向上させることができる。
【0097】
また、処理部22は、記憶部21に予め記憶されている相関データを読み出し、読み出した相関データを用いて充電残時間を算出し、記憶部21における相関データを、充電時間の実測値に基づいて更新する。これにより、BBU1の直近の使用環境に合わせて学習した相関データを、次回以降の充電残時間の推定に利用することができるため、推定精度の持続的な向上を図ることができる。推定を繰り返し実施することで、推定誤差の最小化を図ることができる。
【0098】
また、処理部22は、BBU1の電池温度の基準値毎に設定された電池温度別データのうち、充電開始時電池温度に対応する特定の電池温度別データを用いて、充電残時間を算出する。これにより、電池温度に応じて異なる相関データを充電残時間の算出に反映させることができるため、如何なる電池温度に対しても、高精度な充電残時間の推定を行うことができる。
【0099】
また、電池温度別データは、フル充電時間基準値FTRと、入力電圧基準値VRと、を含み、処理部22は、フル充電時間基準値FTRを、充電開始時入力電圧VMと入力電圧基準値VRとの差分に基づいて調整して、フル充電時間推定値FTEを取得し、取得されたフル充電時間推定値FTEを、充電開始時充電状態SOCSに基づいて調整して、充電残時間推定値RTEを取得する。これにより、既知のフル充電時間基準値FTR及び入力電圧基準値VRに基づく高精度な充電残時間の推定を行うことができる。
【0100】
また、相関データは、相関を表す近似式の定数k及びk
tempを含み、処理部22は、フル充電時間基準値FTRの調整に、電池温度に依存しない定数kを使用し、フル充電時間推定値FTEの調整に、電池温度に依存する定数k
tempを使用する。これにより、電池温度に依存しない入力電圧とフル充電時間との相関関係(
図7A参照)、及び、電池温度に依存する充電開始時SOCと所要充電時間との相関関係(
図7B参照)を、充電残時間の算出に反映させることができるため、高精度な充電残時間の推定をより確実に行うことができる。
【0101】
また、処理部22は、充電時間実測値TMを換算して、フル充電時間換算値FTCを取得し、充電開始時電池温度に対応するフル充電時間基準値FTRを、取得されたフル充電時間換算値FTCに基づいて更新し、充電開始時電池温度に対応する入力電圧基準値VRを、充電開始時入力電圧VMに基づいて更新する。充電時間実測値TMを、次回以降の推定に利用しやすい値(フル充電時間換算値FTC)に正規化することで、相関データの更新を容易に行うことができる。
【0102】
以上、本開示の実施の形態を具体的に説明したが、本開示は上述した特定の実施の形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内で、上記実施の形態に記載された具体例に対する種々の変形及び変更が可能である。
【0103】
例えば、制御装置20とは別の蓄電制御装置をBBU1外部に配置し、BBU1内部の制御装置20とBBU1外部の蓄電制御装置とが通信により連携して、外部の蓄電制御装置において上記実施の形態で説明した充電残時間算出方法を実行するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示は、外部電源からの給電により動作する負荷装置に対し、外部電源の給電状態の非常時に給電する蓄電装置の制御装置として、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 バッテリバンクユニット
2 外部電源
3 負荷装置
4 電源ライン
10 入出力端子
20 制御装置
21 記憶部
22 処理部
30 蓄電部
31 第1バッテリバンク
32 第2バッテリバンク
40 充放電回路
41 昇圧DC/DCコンバータ
42 切替スイッチ
42a 第1端子
42b 第2端子
42c 第3端子
43 第1充電スイッチ
43a 第1端子
43b 第2端子
44 第1放電スイッチ
44a 第1端子
44b 第2端子
45 第2充電スイッチ
45a 第1端子
45b 第2端子
46 第2放電スイッチ
46a 第1端子
46b 第2端子
48 第1定電流回路
49 第2定電流回路
61 入出力電圧センサ
62 入出力電流センサ
63 第1電池電圧センサ
64 第1電池温度センサ
65 第2電池電圧センサ
66 第2電池温度センサ
T テーブル
ALa25、ALa35、ALb25、ALb35 近似直線