(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177933
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】会員管理支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20231207BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090906
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】星 一平
(72)【発明者】
【氏名】小川 真也
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】所属する会員に仕事を紹介する団体における会員の定着率向上を支援する技術を提供する。
【解決手段】会員管理支援システム10は、モデル記憶部20とスコア導出装置28を備える。モデル記憶部20は、シルバー人材センターに過去の時点で所属していた複数の会員のそれぞれとシルバー人材センターとの過去の時点での関わりを示す情報と、複数の会員のそれぞれがシルバー人材センターを退会したか否かを示す情報とを含む学習データに基づき作成された関数近似器のデータを記憶する。スコア導出装置28は、シルバー人材センターに現在所属している分析対象の会員とシルバー人材センターとの現在時点での関わりを示す情報を上記関数近似器に入力し、分析対象の会員が今後、シルバー人材センターを退会するか否かに関する指標値を導出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所属する会員に対して仕事を紹介する団体に過去の時点で所属していた複数の会員のそれぞれと前記団体との前記過去の時点での関わりを示す情報と、前記複数の会員のそれぞれが前記団体を退会したか否かを示す情報とを含む学習データに基づき作成された関数近似器のデータを記憶する記憶部と、
前記団体に現在所属している分析対象の会員と前記団体との現在時点での関わりを示す情報を前記関数近似器に入力し、前記分析対象の会員が今後、前記団体を退会するか否かに関する指標値を導出する推定部と、
を備える会員管理支援システム。
【請求項2】
前記団体に過去の時点で所属していた複数の会員のそれぞれと前記団体との前記過去の時点での関わりを示す情報と、前記複数の会員のそれぞれが前記団体を退会したか否かを示す情報とを含む学習データに基づいて、前記関数近似器を生成する生成部をさらに備える、
請求項1に記載の会員管理支援システム。
【請求項3】
前記団体の複数の会員それぞれの前記指標値の時系列での推移に基づく、指標値帯ごとの会員数の時系列での推移を示す情報をユーザに提供する情報提供部をさらに備える、
請求項1または2に記載の会員管理支援システム。
【請求項4】
情報提供部は、前記団体の複数の会員それぞれの前記指標値を示すスコア情報をユーザに提供する情報提供部をさらに備え、
前記情報提供部は、前記スコア情報の中から特定の会員が前記ユーザにより選択された場合、前記団体における前記特定の会員の就業実績を示す情報を前記ユーザにさらに提供する、
請求項1または2に記載の会員管理支援システム。
【請求項5】
前記関わりを示す情報は、前記団体に所属した期間、前記団体への入会動機、前記団体における就業実績、前記団体との連絡実績のうち少なくとも1つを含む、
請求項1または2に記載の会員管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はデータ処理技術に関し、特に会員管理支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
定年退職者等の高齢者の希望に応じた臨時的、短期的な就業またはその他の軽易な業務に係る就業を援助するための団体であるシルバー人材センターが地域ごとに設置されている。以下の特許文献1では、シルバー人材センターと、仕事を実施する会員(高齢者)、仕事を発注する発注者との間で、それぞれ必要となる多くの手続を、会員端末および発注者端末を利用して実施できるようにし、業務管理を効率化する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
日本社会の高齢化が加速している一方で、シルバー人材センターの会員数は、維持または微減の傾向が続いている。シルバー人材センターには、会員の定着率向上が求められている。
【0005】
本開示の技術はこうした課題に鑑みてなされたものであり、1つの目的は、所属する会員に仕事を紹介する団体における会員の定着率向上を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の会員管理支援システムは、所属する会員に対して仕事を紹介する団体に過去の時点で所属していた複数の会員のそれぞれと団体との過去の時点での関わりを示す情報と、複数の会員のそれぞれが団体を退会したか否かを示す情報とを含む学習データに基づき作成された関数近似器のデータを記憶する記憶部と、団体に現在所属している分析対象の会員と団体との現在時点での関わりを示す情報を関数近似器に入力し、分析対象の会員が今後、団体を退会するか否かに関する指標値を導出する推定部とを備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を、装置、方法、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、所属する会員に仕事を紹介する団体における会員の定着率向上を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例の会員管理支援システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1のスコア導出装置が備える機能ブロックを示すブロック図である。
【
図3】スコア導出装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】エンゲージメントモデル作成のための学習データの例を示す図である。
【
図5】スコア導出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施例の概要を説明する。地域ごとにシルバー人材センターが設けられており、シルバー人材センターは、所属する会員(高齢者)に対して仕事を紹介し、会員の就業をサポートする。シルバー人材センターには、典型的には、数百人から数千人の会員が所属する。日本社会の高齢化が加速している一方で、シルバー人材センターの会員数は、1年間で会員の1割程度が入れ替わりつつ、維持または微減の傾向が続いている。シルバー人材センターには、会員の定着率向上が求められている。
【0011】
これまで、シルバー人材センターは、各会員に一律のアプローチを行っており、言い換えれば、会員ごとの状況に応じたアプローチができていなかった。実施例では、シルバー人材センターから会員に対して、会員ごとの状況に応じたアプローチができるよう支援する会員管理支援システムを提案する。実施例の会員管理支援システムは、シルバー人材センターと各会員との関係の強さを示す指標値(以下「エンゲージメントスコア」とも呼ぶ。)を導出して、シルバー人材センターの職員に提供する。エンゲージメントスコアは、会員が今後、シルバー人材センターを退会する可能性の高低を示す指標値とも言える。
【0012】
図1は、実施例の会員管理支援システム10の構成を示す。会員管理支援システム10は、複数のユーザ端末12、基幹業務システム14、共通DB(Database)18、シルバー人材センターDB22、スコア導出装置28を備える情報処理システムである。これらの装置およびシステムは、LAN・WAN・インターネット等を含み得る通信網を介して接続される。なお、会員管理支援システム10を構成する各要素(例えば装置やシステム)の物理的なハードウェアの台数に制限はない。例えば、会員管理支援システム10を構成する各要素は、1台のコンピュータにより実現されてもよく、複数台のコンピュータが連携することにより実現されてもよい。
【0013】
基幹業務システム14は、シルバー人材センターの基幹業務(例えば会員管理業務等)を支援するための情報処理を実行する。基幹業務システム14は、シルバー人材センターに対する業務支援処理の中で、シルバー人材センターの職員の操作に応じて、または自律的に、後述の会員データ記憶部24に記憶される会員データの値を更新する。すなわち、基幹業務システム14は、シルバー人材センターの職員の操作に応じて、または自律的に、会員データ記憶部24に記憶される会員データを最新の状態に更新する。
【0014】
複数のユーザ端末12のそれぞれは、基幹業務システム14を利用するシルバー人材センターの職員(以下「ユーザ」とも呼ぶ。)により操作される情報処理端末である。複数のユーザ端末12は、複数の異なるユーザにより操作される、ユーザ端末12a、ユーザ端末12b、ユーザ端末12c、ユーザ端末12dを含む。複数の異なるユーザは、同じシルバー人材センターの職員であってもよく、異なるシルバー人材センターの職員であってもよい。複数のユーザ端末12のそれぞれは、コンピュータ、スマートフォン、タブレット端末であってもよい。
【0015】
共通DB18は、複数のシルバー人材センターに関するデータを一括して記憶するデータベースサーバである。シルバー人材センターDB22は、各地域のシルバー人材センターごとに設けられ、各地域のシルバー人材センターに関するデータを記憶するデータベースサーバである。
図1では、シルバー人材センターDB22を1つ描いているが、実際には、複数のシルバー人材センターに対応する複数のシルバー人材センターDB22が設けられる。
【0016】
スコア導出装置28は、シルバー人材センターに所属する各会員のエンゲージメントスコアを導出する情報処理装置である。スコア導出装置28の機能の詳細は後述する。
【0017】
図1は、基幹業務システム14、共通DB18、シルバー人材センターDB22それぞれの機能ブロックを示すブロック図を含む。本明細書のブロック図で示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0018】
共通DB18は、モデル記憶部20を備える。モデル記憶部20は、シルバー人材センターに所属する各会員のエンゲージメントスコアを導出する関数近似器(以下「エンゲージメントモデル」とも呼ぶ。)のデータを記憶する。詳細は後述するが、エンゲージメントモデルは、シルバー人材センターに過去の時点で所属していた複数の会員のそれぞれとシルバー人材センターとの過去の時点での関わりを示す情報と、複数の会員のそれぞれがシルバー人材センターを退会したか否かを示す情報とを含む学習データに基づく機械学習により作成された数理モデル(実施例ではニューラルネットワーク)である。
【0019】
シルバー人材センターDB22は、会員データ記憶部24と会員スコア記憶部26を備える。会員データ記憶部24は、シルバー人材センターに所属する複数の会員のそれぞれに関する様々なデータ(属性情報等)を記憶する。会員データ記憶部24に記憶されるデータは、
図4に関連して後述する複数項目のデータを含む。会員スコア記憶部26は、エンゲージメントモデルを用いて導出された複数の会員それぞれのエンゲージメントスコアを記憶する。実施例では、各会員のエンゲージメントスコアは、1か月に一度導出され、会員スコア記憶部26は、各会員の月ごとのエンゲージメントスコアを記憶する。
【0020】
基幹業務システム14は、管理画面生成部15と管理画面提供部16を備える。これら複数の機能ブロックの機能を実装したコンピュータプログラムが基幹業務システム14のストレージにインストールされてもよい。基幹業務システム14のコンピュータのプロセッサ(CPU等)は、このコンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することによりこれら複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0021】
管理画面生成部15は、シルバー人材センターにおける会員の管理を支援するための画面(以下「管理画面」とも呼ぶ。)のデータを生成する。管理画面提供部16は、管理画面生成部15により生成された管理画面のデータをユーザ端末12へ送信して、管理画面をユーザ端末12に表示させる。
【0022】
図2は、
図1のスコア導出装置28が備える機能ブロックを示すブロック図である。スコア導出装置28は、処理部30と通信部32を備える。処理部30は、シルバー人材センターに所属する会員のエンゲージメントスコアの導出に関わる各種データ処理を実行する。通信部32は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。処理部30は、通信部32を介して、共通DB18およびシルバー人材センターDB22とデータを送受信する。
【0023】
処理部30は、会員データ取得部34、モデル生成部36、モデル保存部38、モデル取得部40、推定部42、スコア保存部44を含む。これら複数の機能ブロックの機能を実装したコンピュータプログラムである分析支援プログラムがスコア導出装置28のストレージにインストールされてもよい。スコア導出装置28のプロセッサ(CPU等)は、分析支援プログラムをメインメモリに読み出して実行することにより処理部30に含まれる複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0024】
以上の構成による実施例の会員管理支援システム10の動作を説明する。
図3は、スコア導出装置28の動作を示すフローチャートである。
図3は、1つのシルバー人材センターの会員に関するエンゲージメントモデルを作成する処理を示している。スコア導出装置28は、シルバー人材センターごとに
図3に示す処理を実行し、複数のシルバー人材センターに対応する複数のエンゲージメントモデルを作成する。スコア導出装置28は、複数のシルバー人材センターに対応する複数のエンゲージメントモデルを定期的に更新してもよく、例えば、1年に一度更新してもよい。
【0025】
以下、エンゲージメントモデルを作成するシルバー人材センターを「対象センター」とも呼ぶ。また、エンゲージメントモデルを作成する基準の年度を「基準年度」とも呼び、エンゲージメントモデルを作成する基準の年度および月を「基準年月」とも呼ぶ。
【0026】
スコア導出装置28の会員データ取得部34は、対象センターに対応するシルバー人材センターDB22から、会員データ記憶部24に記憶された対象センターの過去の会員データを取得する(S10)。過去の会員データは、エンゲージメントモデルを作成するための学習データ(言い換えれば教師データ)として使用される。また、過去の会員データは、対象センターに過去の時点で所属していた複数の会員のそれぞれと対象センターとの過去の時点での関わりを示す情報と、複数の会員のそれぞれが対象センターを退会したか否かを示す情報とを含む。
【0027】
対象センターに過去の時点で所属していた会員は、エンゲージメントモデル作成時点(すなわち現在時点)より過去の時点で所属していた会員を意味し、エンゲージメントモデル作成時点(すなわち現在時点)において対象センターに所属しているか否かは問わない。例えば、2021年4月1日を基準とするエンゲージメントモデルを作成する場合、会員データ取得部34は、2020年4月1日の時点でシルバー人材センターに所属していた複数の会員に関する、2020年4月1日から2021年3月31日までの会員データ(すなわち過去1年分の会員データ)を取得してもよい。
【0028】
図4は、エンゲージメントモデル作成のための学習データの例を示す。学習データは、会員に関する属性情報を含む入力データと、シルバー人材センターと会員との関係の強度に関する正解を示す出力データとを含む。具体的には、入力データは、対象センターに過去の時点で所属していた複数の会員のそれぞれと対象センターとの過去の時点での関わりを示す情報を含む。出力データは、複数の会員のそれぞれが対象センターを退会したか否かの事実を示すデータである。
【0029】
例えば、2021年4月1日を基準とするエンゲージメントモデルを作成する場合、会員データ取得部34は、2020年4月1日の時点でシルバー人材センターに所属していたAさんとBさんそれぞれの入力データと出力データの組を取得してもよい。この入力データは、2020年4月1日から2021年3月31日までの集計データであってもよい。この出力データは、2020年3月31日までにシルバー人材センターを退会したか否かを示すデータであってもよい。
【0030】
入力データは、対象センターに所属した期間(在会期間)、対象センターへの入会動機、対象センターにおける就業実績、カルテ数、研修回数、役員有無、アプリ利用実績、年齢を含む。会員データ取得部34は、基準年月から過去1年分の対象センターにおける就業実績を取得し、3か月を単位期間として単位期間ごとの就業実績(就業件数)を取得する。カルテ数は、対象センターと会員との連絡実績を示すデータであり、コンタクトの回数とも言える。会員データ取得部34は、警告なし分(警告フラグが未設定の通常連絡等)のカルテ数と、警告あり分(警告フラグが設定された重要連絡、苦情対応等)のカルテ数とを取得する。
【0031】
研修回数は、対象センターでの研修を会員が受講した回数である。役員有無は、基準年月において会員が役員に就任したか否かを示すデータである。アプリ利用有無は、シルバー人材センターと会員とのコミュニケーションを支援するアプリケーション(例えば仕事のお知らせや配分金明細等を表示するもの)を基準年月において利用したか否かを示すデータである。
【0032】
出力データは、基準年月または基準年度末までに対象センターから退会したか否かを示すデータである。実施例では、会員データ取得部34は、ある会員の出力データについて、基準年度末までに当該会員が退会した場合、出力データの値を「0」に設定する。一方、基準年度末までに当該会員が退会しない場合、言い換えれば、基準年月以降も当該会員が在会を継続する場合、出力データの値を「100」に設定する。
【0033】
図3に戻り、スコア導出装置28のモデル生成部36は、
図4に示した入力データと出力データとを含む学習データに基づいて、エンゲージメントモデルを生成する(S11)。モデル生成部36は、機械学習の公知のソフトウェアライブラリが提供する関数やコードを利用するプログラムモジュールとして実装されてもよい。
【0034】
実施例のエンゲージメントモデルは、入力層、1つ以上の中間層、出力層を有するニューラルネットワークである。実施例のエンゲージメントモデルは、
図4に示した入力データを入力層で受け付け、
図4に示した出力データを出力層で出力する。出力データは、0~100の値である。出力データが0に近いほど、会員がシルバー人材センターを退会する可能性が高いことを意味する。逆に、出力データが100に近いほど、会員がシルバー人材センターを退会する可能性が低いことを意味し、言い換えれば、シルバー人材センターへの所属を継続する可能性が高いことを意味する。
【0035】
スコア導出装置28のモデル保存部38は、モデル生成部36により生成されたエンゲージメントモデルのデータを共通DB18へ送信してモデル記憶部20に記憶させる(S12)。共通DB18のモデル記憶部20には、複数のシルバー人材センターに対応する複数のエンゲージメントモデルが記憶され、各エンゲージメントモデルは1年に1度更新される。
【0036】
図5も、スコア導出装置28の動作を示すフローチャートである。
図5は、1つのシルバー人材センターの会員に関するエンゲージメントスコアを導出する処理を示している。スコア導出装置28は、シルバー人材センターごとに
図5に示す処理を実行し、各シルバー人材センターに所属する会員のエンゲージメントスコアを導出する。以下、会員のエンゲージメントスコアを導出すべきシルバー人材センターを「対象センター」とも呼ぶ。
【0037】
スコア導出装置28のモデル取得部40は、モデル記憶部20に予め記憶された対象センターのエンゲージメントモデルのデータを共通DB18から取得する(S20)。スコア導出装置28の会員データ取得部34は、対象センターに対応するシルバー人材センターDB22から、会員データ記憶部24に記憶された対象センターの現在の会員データを取得する(S21)。現在の会員データは、会員のエンゲージメントスコアを導出するために使用される。
【0038】
現在の会員データは、現在時点(言い換えればエンゲージメントスコア導出時点)において対象センターに所属している分析対象の会員と対象センターとの現在時点での関わりを示す情報を含む。分析対象の会員は、対象センターに所属している全会員でもよく、対象センターの職員等により指定された一部の会員でもよい。会員データ取得部34は、現在の会員データとして、
図4に示した複数項目の入力データを取得する。
【0039】
例えば、現在時点において対象センターに所属している会員の中から分析対象の会員としてAさんとBさんが指定された場合、会員データ取得部34は、Aさんの入力データとBさんの入力データを取得する。また、例えば、2021年度の3月を対象として、会員のエンゲージメントスコアを求める場合、2021年度を対象年度とし、2021年度3月(すなわち2022年3月)を対象年月として、
図4に示した複数項目の入力データを取得する。
【0040】
スコア導出装置28の推定部42は、現在時点(言い換えればエンゲージメントスコア導出時点)において対象センターに所属している分析対象の会員と対象センターとの現在時点での関わりを示す情報をエンゲージメントモデルに入力する。推定部42は、エンゲージメントモデルから出力された値に基づいて、分析対象の会員が今後、対象センターを退会するか否かに関する指標値を導出する(S22)。
【0041】
具体的には、推定部42は、分析対象の複数の会員それぞれの入力データをエンゲージメントモデルに入力する。推定部42は、分析対象の各会員の入力データに対応するエンゲージメントモデルの出力値(0~100の値)を、分析対象の各会員のエンゲージメントスコアとして取得する。例えば、現在時点において対象センターに所属している会員の中から分析対象の会員としてAさんとBさんが指定された場合、推定部42は、AさんとBさんそれぞれのエンゲージメントスコアを導出する。
【0042】
スコア導出装置28のスコア保存部44は、スコア出力部として、推定部42により導出された、対象センターに所属する分析対象の各会員のエンゲージメントスコアを外部へ出力する。実施例では、スコア保存部44は、分析対象の各会員のエンゲージメントスコアを対象センターに対応するシルバー人材センターDB22へ送信し、会員スコア記憶部26に記憶させる(S23)。実施例では、スコア導出装置28は、各会員のエンゲージメントスコアを1か月に一度、導出して記録するが、エンゲージメントスコアの導出頻度は任意の期間でよく、例えば3か月に一度であってもよい。
【0043】
変形例として、スコア保存部44は、分析対象の各会員のエンゲージメントスコアをローカルの記憶装置に記憶させてもよい。また、スコア導出装置28は、スコア出力部として、スコア保存部44に代えてスコア提示部を備えてもよい。スコア提示部は、分析対象の各会員のエンゲージメントスコアを所定の表示装置(例えばユーザ端末12)へ送信して表示させてもよい。
【0044】
次に、エンゲージメントスコアをユーザに提示するユーザインタフェースについて説明する。
【0045】
基幹業務システム14の管理画面生成部15は、管理画面の1つとして、会員のエンゲージメントスコアの分析を支援する画面(後述のスコア分析画面50、スコア分析画面60)のデータを生成する。以下、スコア分析画面50またはスコア分析画面60を要求したユーザが所属するシルバー人材センターを「対象センター」とも呼ぶ。管理画面生成部15は、対象センターに対応するシルバー人材センターDB22の会員スコア記憶部26に記憶された各会員のエンゲージメントスコア、言い換えれば、対象センターに所属する各会員のエンゲージメントスコアを読み出す。管理画面生成部15は、対象センターに所属する各会員のエンゲージメントスコアに基づいて、スコア分析画面50またはスコア分析画面60を生成する。
【0046】
基幹業務システム14の管理画面提供部16は、情報提供部として、管理画面生成部15により生成されたスコア分析画面50のデータをユーザ端末12へ送信して、スコア分析画面50をユーザ端末12に表示させる。また、管理画面提供部16は、管理画面生成部15により生成されたスコア分析画面60のデータをユーザ端末12へ送信して、スコア分析画面60をユーザ端末12に表示させる。
【0047】
図6は、スコア分析画面50の例を示す。管理画面生成部15は、ユーザにより対象年度および対象月(すなわち対象年月)が指定された場合、対象センターに所属する複数の会員の対象年月のエンゲージメントスコアをシルバー人材センターDB22から取得し、各会員の対象年月のエンゲージメントスコアに基づいてスコア分析画面50を生成する。
【0048】
スコア分析画面50は、会員スコアリスト52とスコア分布情報54を含む。会員スコアリスト52は、対象センターに所属する各会員の会員番号、氏名、対象年月のエンゲージメントスコアを示す。スコア分布情報54は、対象センターに所属する各会員のエンゲージメントスコアを集計した結果を示す情報であり、スコア帯ごとの会員数を示す棒グラフと表を含む。スコア分析画面50によると、対象年月における各会員のエンゲージメントスコアおよびシルバー人材センター全体でのエンゲージメントスコアの分布を分かり易くユーザに提示できる。
【0049】
図7は、スコア分析画面60の例を示す。管理画面生成部15は、ユーザにより対象年度のみ指定され、対象月が未指定の場合、対象センターに所属する複数の会員の対象年度のエンゲージメントスコアをシルバー人材センターDB22から取得する。管理画面生成部15は、対象年度のエンゲージメントスコアとして、対象年度の4月から3月までの各月のエンゲージメントスコアを取得する。管理画面生成部15は、各会員の対象年度のエンゲージメントスコアに基づいてスコア分析画面60を生成する。
【0050】
スコア分析画面60は、会員スコアリスト62とスコア分布情報64を含む。会員スコアリスト62は、対象センターに所属する各会員の会員番号、氏名、エンゲージメントスコアを示す。会員スコアリスト62は、対象年度における各会員のエンゲージメントスコアの時系列での推移を示す。実施例では、1つの単位期間を3か月として、管理画面生成部15は、各単位期間におけるエンゲージメントスコアの平均値を会員スコアリスト62に設定する。例えば、会員AAAAの4月、5、6月それぞれのエンゲージメントスコアの平均値(
図7での値は91)を、4月~6月のエンゲージメントスコアとして会員スコアリスト62に設定する。なお、
図7の会員スコアリスト62における空白のセルは、シルバー人材センターへの入会タイミングや退会タイミングによりエンゲージメントスコアが導出できない期間を示している。
【0051】
管理画面生成部15は、対象年度におけるシルバー人材センターの複数の会員それぞれのエンゲージメントスコアの時系列での推移に基づいて、対象年度におけるエンゲージメントスコア帯ごとの会員数の時系列での推移を示すスコア分布情報64を生成する。管理画面生成部15は、対象年度内の複数の単位期間における各会員のエンゲージメントスコアに基づいて、対象年度におけるエンゲージメントスコア帯ごとの会員数の時系列での推移を導出してもよい。スコア分布情報64は、エンゲージメントスコア帯ごとの会員数の時系列での推移を示すバブルチャートと表を含む。スコア分析画面60によると、各会員のエンゲージメントスコアの時系列での推移、および、シルバー人材センター全体でのエンゲージメントスコアの時系列での推移をユーザに分かり易く提示できる。
【0052】
図6に戻り、スコア分析画面50は、管理選択ボタン56をさらに含む。スコア分析画面50においてユーザが特定の会員(典型的にはエンゲージメントスコアが低い会員、以下「対象会員」とも呼ぶ。)を選択して管理選択ボタン56に対する選択操作を入力した場合、管理画面生成部15は、対象センターに対応するシルバー人材センターDB22から、会員データ記憶部24に記憶された対象会員に関する詳細情報(例えば属性情報や就業実績情報)を取得する。管理画面生成部15は、管理画面の1つとして、対象会員に関する詳細情報を表示する会員管理画面70のデータを生成する。管理画面提供部16は、管理画面生成部15により生成された会員管理画面70のデータをユーザ端末12へ送信して、会員管理画面70をユーザ端末12に表示させる。
【0053】
図8は、会員管理画面70の例を示す。会員管理画面70は、会員情報リスト72、就業履歴74、会員名簿ボタン76、メッセージ送信ボタン78を含む。会員情報リスト72は、対象会員を含む複数の会員それぞれの属性情報を示す。管理画面生成部15は、会員情報リスト72を対象会員の情報が選択された状態に設定する。例えば、管理画面生成部15は、対象会員の情報を他の会員の情報より強調した態様で表示させてもよく、対象会員の情報だけをハイライト表示させてもよい。
【0054】
また、管理画面生成部15は、シルバー人材センターDB22から取得した対象会員の就業実績情報を就業履歴74に設定する。就業実績情報は、対象センターから紹介された仕事に対象会員が就業したこれまでの実績を示す情報である。就業実績情報は、発注者名、仕事の内容、就業期間を含む。このように、スコア分析画面50にてユーザが選択した会員の属性情報や就業実績を示す会員管理画面70をユーザに提供することにより、会員それぞれの状況に応じたアプローチができるようユーザを支援できる。
【0055】
対象会員が選択された会員管理画面70にて会員名簿ボタン76に対する選択操作が入力されると、管理画面生成部15は、対象会員の詳細情報(連絡先や希望職種等)を含む会員名簿の画面を生成する。管理画面提供部16は、その会員名簿の画面をユーザ端末12に表示させる。これにより、電話や手紙等を用いて対象会員に就業案内を容易に行えるようユーザを支援できる。
【0056】
また、対象会員が選択された会員管理画面70にてメッセージ送信ボタン78に対する選択操作が入力されると、管理画面生成部15は、ショートメッセージ・サービスまたは電子メールを利用して、対象会員の情報端末(スマートフォン等)にメッセージを送信するための送信画面を生成する。管理画面提供部16は、その送信画面をユーザ端末12に表示させる。これにより、最新の就業募集等のメッセージを対象会員に容易に提供できるようユーザを支援できる。
【0057】
実施例の会員管理支援システム10によると、個々の会員のエンゲージメントスコアを可視化することにより、個々の会員とシルバー人材センターとの関係性(すなわち関係の強さや退会可能性の高低等)に応じて個々の会員に適切にアプローチできるようシルバー人材センターの職員等を支援できる。これにより、シルバー人材センターにおける会員の定着率向上を支援できる。
【0058】
また、実施例の会員管理支援システム10によると、個々の会員とシルバー人材センターとの関わりを示す情報と、個々の会員がシルバー人材センターを退会したか否かを示す情報を含む学習データに基づいてエンゲージメントモデルを生成・更新することにより、各会員のエンゲージメントスコアを精度よく導出できる。また、個々の会員とシルバー人材センターとの関わりを示す情報として、在会期間、入会同期、就業実績、連絡実績のうち少なくとも1つを用いることで、有用なエンゲージメントスコアを得やすくなる。
【0059】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。実施例に記載の内容は例示であり、実施例の構成要素や処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0060】
実施例に記載の技術思想は、シルバー人材センターに所属する会員のエンゲージメントスコアを求めることに制限されない。例えば、所属する会員に対して仕事を紹介する団体と、その団体に所属する分析対象の会員との関係の強度(エンゲージメントスコア)を求める場合に広く適用できる。
【0061】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0062】
10 会員管理支援システム、 12 ユーザ端末、 14 基幹業務システム、 15 管理画面生成部、 16 管理画面提供部、 20 モデル記憶部、 28 スコア導出装置、 36 モデル生成部、 42 推定部。