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特開2023-177937個別認証用のシート乃至物品、装置、システム、方法、プログラム及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177937
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】個別認証用のシート乃至物品、装置、システム、方法、プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/30 20140101AFI20231207BHJP
   G07D 7/00 20160101ALI20231207BHJP
   G07D 7/12 20160101ALI20231207BHJP
   B42D 25/29 20140101ALI20231207BHJP
【FI】
B42D25/30
G07D7/00 D
G07D7/12
B42D25/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090910
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】507369811
【氏名又は名称】特種東海製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智規
(72)【発明者】
【氏名】永田 暁洋
(72)【発明者】
【氏名】根本 聡
【テーマコード(参考)】
2C005
3E041
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005JB21
2C005JB31
2C005KA03
3E041AA01
3E041BA07
3E041BA08
3E041BA11
3E041BA12
3E041BA17
3E041BB03
3E041BB04
3E041BB05
3E041BB06
3E041BC01
3E041CA01
3E041DB01
(57)【要約】
【課題】偽造防止効果に優れており、正確且つ迅速に個体識別を行うことが可能なシート、並びに、当該シートの個別認証を正確且つ迅速に行うことが可能な装置等を提供すること。
【解決手段】少なくとも基材層を備える1対1個別認証用シートであって、識別可能な繊維を備えており、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる特定の識別情報が表面に付与された1対1個別認証用シート及び当該シートを備える物品、並びに、当該1対1個別認証用シートを使用する1対1個別認証のための装置、システム、方法、プログラム及び記録媒体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層を備える1対1個別認証用シートであって、
識別可能な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる特定の識別情報を備えており、
前記特定の識別情報が表面から認識可能である、1対1個別認証用シート。
【請求項2】
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面の光学読み取りにより認識可能である、請求項1記載の1対1個別認証用シート。
【請求項3】
前記基材層が紙からなる、請求項1又は2記載の1対1個別認証用シート。
【請求項4】
前記識別可能な繊維が紙を構成する識別不能な繊維とは異なる色及び/又は形状を有する、請求項3記載の1対1個別認証用シート。
【請求項5】
表面の限定された領域における前記識別可能な繊維の分散のパターンが認証に使用される、請求項1乃至4のいずれかに記載の1対1個別認証用シート。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の1対1個別認証用シートを備える物品。
【請求項7】
パッケージング用材料である、請求項6記載の物品。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の1対1個別認証用シートの個別認証装置であって、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、
識別可能な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、
前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶するメモリ、
並びに、
前記複数の平面繊維分散基準パターンから、認証対象となる1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合し、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う
プロセッサ
を備える個別認証装置。
【請求項9】
前記平面繊維分散基準パターン及び前記基準識別情報を読み取る読取デバイスを更に備える、請求項8記載の個別認証装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載の個別認証装置、並びに、
前記個別認証装置に1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を提供する携帯端末
からなる1対1個別認証用シートの個別認証システム。
【請求項11】
前記携帯端末が前記平面繊維分散パターン及び前記特定の識別情報を読み取る読取デバイスを備える、請求項10記載の個別認証システム。
【請求項12】
前記携帯端末が前記真贋判定の結果を受領可能である、請求項10又は11記載の個別認証システム。
【請求項13】
請求項1乃至5のいずれかに記載の1対1個別認証用シートの個別認証方法であって、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、
識別可能な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、
前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンから、認証対象となる1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択する工程、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する工程、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う工程
を備える個別認証方法。
【請求項14】
請求項1乃至5のいずれかに記載の1対1個別認証用シートの個別認証プログラムであって、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、
識別可能な繊維な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、
前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンから、認証対象となる1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択する工程、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する工程、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う工程
を含む処理をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項15】
請求項14記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面上の繊維のランダムな分散を利用したシートの1対1個別認証に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品券等の印刷物の偽造防止技術として、透かしが知られている。透かしは、それが施されている紙を透かして見たときに現れる模様であり、模様部分が透けて見える「白透かし」と、模様部分が周辺部に比して黒ずんで見える「黒透かし」とが知られている。また、透かし模様の一種として、疑似透かし(ケミカル透かし)などと呼ばれるものが知られている。疑似透かしは、紙等のシートに浸透して光透過率を高める物質、例えば、透明合成樹脂を溶剤に溶解したインキを用いてシートに印刷を施すことによって形成されるものであり、そのインキが付与されてなる印刷部が透かし模様となり、白透かしと同様の視覚効果を有する。しかし、透かしでは、個々の紙シートに同一の透かしが形成されるので、個々の紙シートについて個別の認証を行うことはできない。
【0003】
個々の紙シートについて個別の認証を行うために、紙シートにシリアル番号、バーコード等の識別情報を印刷することが行われている。しかし、印刷された番号、バーコード等はコピーによって容易に複製可能であるので、偽造防止効果の点で不都合が存在する。
【0004】
そこで、特許文献1には、感磁性素子をランダムに混入したシート状基材が提案されており、基材を一方向に沿って磁気的に走査することで生じる誘導電圧強度のパターンに基づいて同一性を判定することが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、紫外線照射により蛍光を発するパルプが支持体上にランダムに存在するシートが提案されており、シートの一方向に沿った蛍光強度のランダムパターンに基づいて同一性を判定することが提案されている。
【0006】
一方、特許文献3には、1μm程度のサイズの微小粒子を対象物の表面にランダムに分布させて、当該表面上の各微小粒子の形状、位置、色、回転角度等の情報を用いて個体識別を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2843743号公報
【特許文献2】特許第3138064号公報
【特許文献3】特許第5747753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1及び2記載の方法では、基材乃至シートを一方向に走査して得られた誘導電圧又は蛍光強度のパターンを真贋判定に使用するために、走査位置がずれると、真の基材又はシートであっても、得られる誘導電圧又は蛍光強度のパターンが変動し、偽物と判定されるおそれがある。なお、走査数を増加することにより、偽判定のおそれを低減することは一応可能であるが、走査数を増加させると、真贋判定に時間を要することになる。また、一次元の走査スキャナとして比較的大型の特別な装置を用いることになり、使用性に劣る。
【0009】
また、特許文献3記載の方法では、1μm程度のサイズの微小粒子を使用して個別識別を行うので、外部からの微小粒子の認識が困難であり、拡大レンズ等の補助装置の使用が必要となってしまい、個体識別を簡便に行うことが困難である。
【0010】
本発明は、偽造防止効果に優れており、正確且つ迅速、そして、簡便に個体識別を行うことが可能なシート、並びに、当該シートの個別認証を正確且つ迅速、そして簡便に行うことが可能なシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
鋭意検討の結果、本発明者は、シートの表面から認識可能な繊維の分布を利用し、且つ、シートの表面から認識可能な、繊維(の分布)とは異なる識別情報を用いて1対1認証を実施することで、上記目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の第1の態様は、
少なくとも基材層を備える1対1個別認証用シートであって、
識別可能な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる特定の識別情報を備えており、
前記特定の識別情報が表面から認識可能である、1対1個別認証用シートである。
【0013】
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面の光学読み取りにより認識可能であることが好ましい。
【0014】
前記基材層が紙からなることが好ましい。
【0015】
前記識別可能な繊維が紙を構成する識別不能な繊維とは異なる色及び/又は形状を有することが好ましい。
【0016】
表面の限定された領域における前記識別可能な繊維の分散のパターンが認証に使用されることが好ましい。
【0017】
本発明は、第1の態様の1対1個別認証用シートを備える物品にも関する。前記物品はパッケージング用材料であることが好ましい。
【0018】
本発明の第2の態様は、
本発明の第1の態様の1対1個別認証用シートの個別認証装置であって、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、
識別可能な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、
前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶するメモリ、
並びに、
前記複数の平面繊維分散基準パターンから、認証対象となる1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合し、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う
プロセッサ
を備える個別認証装置である。
【0019】
本発明の個別認証装置は、前記平面繊維分散基準パターン及び前記基準識別情報を読み取る読取デバイスを更に備えてもよい。
【0020】
本発明の第3の態様は、
本発明の第2の態様の個別認証装置、並びに、
前記個別認証装置に1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を提供する携帯端末
からなる1対1個別認証用シートの個別認証システムである。
【0021】
前記携帯端末が前記平面繊維分散パターン及び前記特定の識別情報を読み取る読取デバイスを備えることが好ましい。
【0022】
前記携帯端末が前記真贋判定の結果を受領可能であることが好ましい。
【0023】
本発明の第4の態様は、
本発明の第1の態様の1対1個別認証用シートの個別認証方法であって、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、
識別可能な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、
前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンから、認証対象となる1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択する工程、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する工程、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う工程
を備える個別認証方法である。
【0024】
本発明の第5の態様は、
本発明の第1の態様の1対1個別認証用シートの個別認証プログラムであって、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、
識別可能な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、
前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンから、認証対象となる1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択する工程、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する工程、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う工程
を含む処理をコンピュータに実行させる、プログラムである。
【0025】
また、本発明の第5の態様は、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体にも関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の1対1個別認証用シートは、偽造防止効果に優れており、また、正確且つ迅速、そして簡便な認証に使用可能である。
【0027】
本発明の装置、システム、方法、プログラム及び記録媒体を用いることにより、本発明の1対1個別認証用シートの個別認証を、正確且つ迅速、そして簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の1対1個別認証用シートの一例を示す正面図
図2】本発明の個別認証装置の一例
図3】データベース及びその作製の一例を示す概念図
図4】繊維の分散パターンのデータベースの一例を示す概念図
図5図1に示す1対1個別認証用シートを用いた個別認証の流れの一例を示す概念図
図6図4に示すデータベースを用いる個別認証の流れの一例を示す概念図
図7】本発明の個別認証システムの一例
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明では、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能なシートについて1対1個別認証を行う。表面から認識可能な「パターン」とはシートの平面方向のパターンであり、シートの断面におけるパターンではない。したがって、シートの表面から認識可能なパターンはシートの厚み方向のパターンではない。
【0030】
認証には、1対1認証と1対N認証の2種類が存在する。1対1認証では、登録された多数のデータから特定の単一のデータを選択して、選択された当該特定の単一のデータとの照合を行うことで認証を実施する。一方、1対N認証では、登録された多数のデータから特定の単一のデータを選択せず、当該多数のデータとの照合を行うことで認証を実施する。本発明では1対1認証を実施する。
【0031】
識別可能な繊維の分散パターンはランダムであり、同一のパターンは存在しない。したがって、シートの表面から認識される、識別可能な繊維の分散パターンによって当該シートを正確に特定することができる。そこで、本発明では、識別可能な繊維の分散パターンを用いてシートを特定することにより、当該シートが真正のものであるか否かを判定し、認証を実施することができる。
【0032】
例えば、予め、真正品である多数のシートについて、各シートの表面における識別可能な繊維の分散パターンのデータベースを作成しておき、認証対象となるシートの表面における識別可能な繊維の分散パターンと一致する分散パターンが当該データベースに登録されていれば、当該シートは真正であると判定することができる。
【0033】
但し、認証対象となるシートの表面における識別可能な繊維の分散パターンをデータベースに登録されている多数の分散パターンと逐一照合することは時間を要し、その結果、認証に時間がかかることになるので、本発明では、データベース中の多数の分散パターンのそれぞれに繊維とは異なる識別情報を紐付けて登録しておき、認証対象となるシートに付与された特定の識別情報と一致する識別情報に対応する単一の分散パターンを選択し、当該選択された単一の分散パターンと、認証対象となるシートの表面における識別可能な繊維の分散パターンが一致するか否かを照合する1対1認証を行う。これにより、本発明では認証時間を短縮することができる。
【0034】
本発明で使用する繊維は、アスペクト比の高い細長い形状であるため、高い認識性を有する一方で、コピー等の複製での分散パターンの再現が困難である。したがって、本発明の1対1個別認証用シートは、耐複製性能が高く、偽造防止効果に優れている。
【0035】
本発明では識別可能な繊維の二次元の分散パターンを認証に使用するので、一次元の走査により得られるパターンを認証に使用する場合に比べて正確に個体識別を行うことができ、また、微小粒子を使用する場合に比べて、外部からの認識が容易であり、拡大レンズ等の補助装置の使用が不要である。したがって、本発明により、個別認証を簡便に行うことができる。
【0036】
以下、本発明の1対1個別認証用のシート乃至物品、装置、方法、システム、プログラム及び記録媒体について説明する。
【0037】
[個別認証用シート]
本発明の1対1個別認証用シート(以下、単に、「本発明のシート」と称する場合がある)は、少なくとも基材層及び識別可能な繊維を備えており、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる特定の識別情報を備えており、特定の識別情報が表面から認識可能であるシートである。
【0038】
本発明の上記「識別可能な繊維」として、各種の材質のものを使用することができる。
【0039】
例えば、上記「識別可能な繊維」は、無機繊維、有機繊維、或いは、これらの複合物であることができる。
【0040】
無機繊維としては、例えば、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。炭素繊維、ガラス繊維等の非金属繊維が好ましい。
【0041】
有機繊維としては、例えば、合成繊維が挙げられる。合成繊維の材質としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の各種の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
上記合成繊維は光不透過性であることが好ましく、不透明であることがより好ましい。
【0043】
有機繊維は天然繊維でもよく、セルロース繊維が好ましい。セルロース繊維に限定はなく公知のものを使用可能であるが、例えば、セルロース繊維として、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材漂白化学パルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の木材未漂白パルプを用いることが可能であり、必要に応じて、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミカルサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ;麻、竹、藁、ケナフ、三椏、楮、木綿等の非木材パルプ;古紙パルプ等を用いることができる。セルロース繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
上記「識別可能な繊維」の形状は特には限定されるものではないが、分散パターンの解析の容易性の点で、繊維長は短繊維が好ましいが、逆に複製での再現を困難にするためには長いほうが好ましい。繊維長は、例えば、0.4mm以上とすることができる。また、繊維長は、例えば、6.0mm以下とすることができる。したがって、繊維長は、例えば、0.4mm~6.0mmとすることができる。そして、繊維幅は、識別の容易さの点で太いほうが好ましいが、逆に複製での再現を困難にするためには細いほうが好ましい。繊維幅は、例えば、4μm以上とすることができる。また、繊維幅は、例えば、60μm以下とすることができる。したがって、繊維幅は、例えば、4μm~60μmとすることができる。
【0045】
繊維長は、平均繊維長であり、数平均繊維長を意味する。
【0046】
数平均繊維長は、例えば、シート表面の画像を拡大観察し、光学顕微鏡画像中から所定数の繊維を無作為に選別し、選別された当該繊維の長さを測定し平均することにより得ることができる。選別される繊維の数は10以上であり、50以上が好ましく、100以上がより好ましい。
【0047】
繊維幅は、平均繊維幅であり、数平均繊維幅を意味する。
【0048】
数平均繊維幅は、例えば、シート表面の画像を拡大観察し、光学顕微鏡画像中から所定数の繊維を無作為に選別し、選別された当該繊維の幅を測定し平均することにより得ることができる。選別される繊維の数は10以上であり、50以上が好ましく、100以上がより好ましい。
【0049】
繊維断面が円形の場合は、繊維幅は繊維径を意味する。一方、繊維断面が非円形の場合は、繊維幅は投影径を意味する。
【0050】
繊維のアスペクト比は特に限定されるものではないが、6以上が好ましい。また、アスペクト比の上限は1000以下が好ましい。
【0051】
本発明のシートは少なくとも基材層を備える。本発明のシートの基材層の形態及び材質は特に限定されるものではない。
【0052】
例えば、基材層は多孔性又は非多孔性のいずれでもよく、また、フィルム、不織布、織布又は紙のいずれの形態でもよい。
【0053】
特に、基材層がフィルムの形態である場合、基材層の材質としては合成高分子が挙げられる。合成高分子としては各種の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することができ、例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等のポリアミド樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系樹脂;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂;アクリル樹脂及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
基材層は紙からなることが好ましい。
【0055】
基材層が紙の形態である場合、上記「識別可能な繊維」以外の、紙を構成する繊維としては、セルロース繊維が好ましい。セルロース繊維に限定はなく公知のものを使用可能であるが、例えば、セルロース繊維として、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材漂白化学パルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の木材未漂白パルプを用いることが可能であり、必要に応じて、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミカルサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ;麻、竹、藁、ケナフ、三椏、楮、木綿等の非木材パルプ;古紙パルプ等を用いることができる。セルロース繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、上記の合成繊維を含んでもよい。
【0056】
本発明のシートは基材層のみから構成されていてもよく、基材層以外の他の層を備える積層体であってもよい。例えば、本発明のシートが塗工紙である場合は、紙である基材層と塗工層とから本発明のシートが構成されてもよい。積層体の場合、基材層以外の他の層の数は特には限定されないが、1又は2が好ましい。基材層以外の他の層は基材層の一方の面上に存在してもよく、基材層の両面に存在してもよい。
【0057】
上記「識別可能な繊維」が『識別可能』とは、本発明のシートを構成する「識別可能な繊維」以外の材質から「識別可能な繊維」を何らかの手段によって識別可能であればよく、例えば、基材層の地の色とは異なる色を有する繊維を使用することで基材層の表面又は基材層の中に存在する繊維を可視光下で目視により識別可能としたり、基材層を非蛍光性とする一方で繊維として紫外線照射により蛍光を発する蛍光繊維を使用することにより、ブラックライト等を用いた紫外線照射下で目視により蛍光発色繊維を識別可能としたり、基材層を非磁性とする一方で繊維として磁性繊維を使用することで、磁気検出により識別可能としたりすることができる。更に、「識別可能な繊維」は赤外線を吸収又は反射してもよい。
【0058】
本発明のシートでは、上記「識別可能な繊維」の分散のパターンが表面から認識可能である。そして、当該シートの表面における上記「識別可能な繊維」の分散パターンにより、シートの真贋判定用の画像を形成することができる。
【0059】
「識別可能な繊維」は目視で識別可能であることが好ましい。また、「識別可能な繊維」はシート表面に光を照射した際の反射光により識別可能であることが好ましい。シート表面に照射される光は可視光であることが好ましい。そして、識別可能な繊維の分散のパターンが表面の光学読み取りにより認識可能であることがより好ましい。
【0060】
上記「識別可能な繊維」はセキュリティデバイスとしての機能を有するので、着色物質及び/又は蛍光物質及び/又は赤外線吸収性物質及び/又は赤外前反射性物質により着色処理及び/又は発色処理及び/又は赤外線吸収処理及び/又は赤外線反射処理をされていることが好ましい。「セキュリティデバイス」とは、偽造防止用途で使用される真偽判定用の物体を意味する。着色物質としては、任意の染料、顔料等を使用することができる。蛍光物質としては、例えば、紫外線照射により蛍光を発する物質を使用することができる。赤外線吸収性物質としては、例えば、グラファイトが挙げられ、また、赤外線反射性物質としては、例えば、各種の金属が挙げられる。
【0061】
上記「識別可能な繊維」は、本発明のシートを構成する「識別可能な繊維」以外の材質とは異なる色を有する有色繊維であることが好ましい。有色繊維の色は特には限定されるものではないが、赤色等の、可視光下で目視により認識可能な色が好ましい。そのような有色繊維を使用することにより、例えば、紫外線又は赤外線を発する光源のような特殊な光源が不要となり、認証を簡易に行うことができる。
【0062】
基材層が紙の場合、識別を容易とするために、上記「識別可能な繊維」は紙を構成する識別不能な繊維とは異なる色及び/又は形状を有することが好ましい。
【0063】
上記「識別可能な繊維」は基材層上及び/又は基材層中に存在してもよい。
【0064】
例えば、「識別可能な繊維」の一部が基材層の表面に存在する一方で、残部が基材層中に存在してもよい。一方、「識別可能な繊維」が基材層上にのみ存在し、基材層中には存在しなくてもよい。或いは、「識別可能な繊維」が基材層中にのみ存在し、基材層上には存在しなくてもよい。なお、「識別可能な繊維」が基材層中及び基材層上の両方に存在してもよい。本発明のシートが基材層以外の他の層を備える場合は、「識別可能な繊維」が他の層中に存在し、基材層中には存在しなくてもよく、また、「識別可能な繊維」が基材層中に存在し、他の層中には存在しなくてもよい。なお、「識別可能な繊維」が基材層中及び他の層中の両方に存在してもよい。
【0065】
本発明のシートの製造方法は特には制限されるものではなく、例えば、シートの原料となる合成樹脂に繊維を混合してTダイ付押出機等でシート化する、シート状の基材層の表面に接着剤を塗布後、上記「識別可能な繊維」を散布して固定する等して製造することができる。前者の場合、押出機等中での混合・混練により、上記「識別可能な繊維」がシート中にランダムに分散して存在することができる。また、後者の場合、散布により、上記「識別可能な繊維」がシートの表面にランダムに分散して存在することができる。
【0066】
本発明のシートが非塗工紙の形態の場合、例えば、上記「識別可能な繊維」を、紙を構成する識別不能な繊維と共に混抄して基材層とすることにより、本発明のシートを製造することができる。混抄には公知の抄紙法を使用することができ、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜短網抄紙機又はこれらの組み合わせ等の抄紙機を用いることができる。混抄により、上記「識別可能な繊維」が紙中に分散して表面から認識可能なパターンを形成することができる。
【0067】
一方、本発明のシートが塗工紙の場合、例えば、識別不能な繊維の抄紙により製造した紙の基材層の表面に上記「識別可能な繊維」を含む塗料を塗工し、乾燥して塗工層を形成することにより、本発明のシートを製造することができる。塗料には公知のバインダー等を含むことができる。塗工により、上記「識別可能な繊維」が塗工層中に分散して表面から認識可能なパターンを形成することができる。
【0068】
本発明のシートにおける、上記「識別可能な繊維」の含有量は特には限定されるものではないが、例えば、基材層の総質量の5質量%以下、3質量%以下、若しくは、1質量%以下とすることができる。なお、上記「識別可能な繊維」の含有量の下限は、例えば、基材層の総質量の0.001質量%以上とすることができ、0.01質量%以上が好ましい。
【0069】
本発明のシートの基材層が紙からなる場合、基材層中の上記「識別可能な繊維」以外の、紙を構成する繊維、好ましくはセルロース繊維、の含有量は特には限定されるものではないが、例えば、基材層の総質量の50質量%以上、60質量%以上、若しくは、70質量%以上とすることができ、また、基材層の総質量の99.99質量%以下、99.9質量%以下、若しくは、99質量%以下とすることができる。したがって、前記セルロース繊維の含有量は基材層の総質量の50質量%~99.99質量%、60質量%~99.9質量%、若しくは、70質量%~99質量%とすることができる。
【0070】
本発明のシートは、更に、繊維以外の、細片又は粒子の形態のセキュリティデバイスを備えていてもよい。
【0071】
細片の形態のセキュリティデバイスは本発明のシートに比較して小さいサイズを有する平面状の部材であり、その厚さは特に限定されるものではないが、例えば、0.03~1mmが好ましく、0.05~0.1mmがより好ましい。細片の平面形状は、任意であり、例えば、長方形、菱形、正方形、円形、楕円形、星形等の様々な形状とすることができる。細片の大きさは、通常、短辺、長辺、直径等が1~10mm程度である。例えば、平面形状が長方形の細片の場合、短辺は、1~10mm、長辺は10~100mmとすることができる。
【0072】
細片の材質は特には限定されるものではなく、例えば、樹脂フィルム、金属箔又は紙とすることができる。細片は光不透過性であることが好ましく、不透明であることがより好ましい。
【0073】
細片の製造方法としては、任意の公知の方法を使用することができ、例えば、シュレッダーを使用して長方形や正方形の細片を製造する方法、マイクロスリッターによりスリットしてから切断して細片を製造する方法、長方形、菱形、正方形、円形、楕円形、星形等の細片に打ち抜く方法等を採用できる。
【0074】
細片には印刷、ホログラム等の視覚的加工が施されていてもよい。細片として、所謂スレッドを使用してもよい。スレッドは幅1~10mm程度の紐状又は帯状のフィルム又はシートであり、例えば、ホログラムパターンを有するもの、磁気的情報を記録したもの、特定の波長の光によって発色するもの、微小な文字を記載したもの、等の様々なスレッドが用途に応じて使用されている。スレッドとしては汎用のものを使用可能である。
【0075】
細片の色は、例えば、細片に含まれる蛍光物質及び/又は着色物質の種類・量等によって適宜調整することができる。
【0076】
粒子の形態のセキュリティデバイスの粒径は特には限定されるものではなく、例えば、1μm~1cm、10μm~5mm、又は、100μm~1mmの範囲とすることができるが、視認可能なサイズであることが好ましい。なお、粒子自体が視認不能であっても当該粒子の集合体が視認可能であればよい。粒子が非球形の場合は球体積相当径を粒径とすることができ、例えば、レーザー回折・散乱法によって測定することができる。
【0077】
粒子のアスペクト比は5未満であり、3未満が好ましく、2未満がより好ましく、1.5未満が更により好ましく、1.2未満が更により好ましい。
【0078】
粒子を構成する物質には限定はなく、各種の有機物質又は無機物質を使用することができる。これらの有機物質又は無機物質は光不透過性であることが好ましく、不透明であることがより好ましい。
【0079】
有機物質としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の各種合成高分子が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
有機物質として、非合成高分子又はその誘導体を使用してもよい。非合成高分子又はその誘導体としては、例えば、澱粉が挙げられる。具体的には馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、アマランサス澱粉、サトイモ澱粉、道鑑草澱粉等の天然澱粉、それらの化工澱粉(デキストリン、酸分解澱粉、酸化澱粉、アルファー化澱粉、エーテル化、エステル化、架橋等の澱粉誘導体、グラフト化澱粉、湿熱処理澱粉等)が挙げられる。また、小麦粉、米粉、コーンフラワー等の穀粉;粉末セルロース、バクテリアセルロース、微小繊維状セルロース、結晶セルロース、等の水不溶性の粉状セルロース;木粉;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、4級カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;アルギン酸、寒天、ふのり、カラギーナン、ファーセレラン、ペクチン、キチン、キトサン、グアガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、タラガム、コンニャク、トロロアオイ、プルラン、デキストラン等の多糖類及びこれらの誘導体;ブドウ糖、ショ糖、乳糖等の粉末糖類;高重合度かつ高鹸化度のポリビニルアルコール等の粉状有機物質も使用できる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
無機物質としては、例えば、二酸化チタン、珪酸塩(カオリン、クレイ、ベントナイト、タルク、合成珪酸アルミ、合成珪酸カルシウム等)、珪酸(珪藻土、珪石粉、含水微粉珪酸、無水微粉珪酸)、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム・マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、酸化鉄等の各種の塩、水酸化物、酸化物等、並びに、各種の金属が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
粒子の色は、例えば、粒子に含まれる蛍光物質及び/又は着色物質の種類・量等によって適宜調整することができる。
【0083】
本発明のシートは、上記「識別可能な繊維」とは異なる特定の識別情報を備える。
【0084】
上記「特定の識別情報」の形態は特には制限されるものではないが、例えば、シリアル番号、1次元バーコード、2次元バーコード等とすることができる。
【0085】
上記「特定の識別情報」は本発明のシートの表面から認識可能であればよく、表面に付与されることが好ましく、例えば、表面に印刷されることができる。なお、上記「特定の識別情報」が本発明のシートの表面から認識可能である限り、当該「特定の識別情報」は本発明のシート中に存在してもよく、例えば、基材層中に存在してもよい。
【0086】
本発明では、表面の限定された領域における上記「識別可能な繊維」の分散のパターンが認証に使用されることが好ましい。
【0087】
前記限定された領域は本発明のシートの表面の任意の一部とすることができる。前記限定された領域は任意の手法により特定することができ、例えば、当該領域の境界線に沿って不連続に配置されたドット等のマークのパターンにより特定することができる(より具体的には、限定された領域が矩形の場合は、矩形の各頂点にドットを存在させてもよい)。前記限定された領域の形状は特には限定されず、任意の形状の閉領域とすることができる。
【0088】
ある態様では、前記限定された領域を特定するために、本発明のシートの表面に枠を形成することができる。前記枠はシートの表面に存在することが好ましく、例えば、表面に印刷されることができる。前記枠の形態は特には限定されるものではなく、正方形、矩形、円形等の任意の形状とすることができるが、矩形が好ましい。
【0089】
本発明の1対1個別認証用シートは、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、識別可能な繊維を備えており、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別繊維とは異なる基準識別情報を備えており、基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンから、認証対象となる1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合し、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う
ことを含む1対1個別認証に使用することができる。
【0090】
図1は、本発明の1対1個別認証用シートの一例を示す正面図である。
【0091】
図1に示す1対1個別認証用のシート1は、赤色に着色したセルロース繊維からなる着色繊維2と無地面3を構成する赤色以外のセルロース繊維とを混抄して得られた紙からなり、着色繊維2が可視光下で目視により識別可能である。
【0092】
着色繊維2はシート1の少なくとも表面においてランダムに分散しており、シート1の表面における二次元の着色繊維2の分散のパターン(平面繊維分散パターン)が真贋判定用の画像を形成する。
【0093】
そして、図1に示す例では、矩形の枠4がシート1の表面に印刷されており、枠4内の着色繊維2の平面繊維分散パターンが認証に使用される。
【0094】
また、図1に示す例では、着色繊維2とは異なる特定の識別情報として、シリアル番号5(123456)がシート1の表面に印刷されている。
【0095】
図1に示す本発明のシートは1対1個別認証に好適に使用することができる。具体的な認証の態様については後述する。
【0096】
本発明は、本発明のシートを備える任意の物品にも関する。物品の種類乃至形態に特に限定はなく、例えば、ラベル、包装用シート、包装紙、封筒、有価証券、各種証明書等の各種の平面状物、或いは、箱等の容器、被包装物を包装した包装体等の各種の立体状物であり得る。前記物品は、ラベル、包装用シート、段ボールを含む包装紙、箱等の容器等のパッケージング用材料(パッケージングに使用する物体)であることが好ましい。
【0097】
[個別認証装置]
本発明の個別認証装置は、本発明のシートの1対1個別認証を実施するための装置であって、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、識別可能な繊維を備えており、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶するメモリ、
並びに、
前記複数の平面繊維分散基準パターンから、認証対象となる1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合し、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う
プロセッサ
を備える。
【0098】
以下、本発明の個別認証装置について説明する。
【0099】
図2は、本発明の個別認証装置の一例である。図2に示す例では、コンピュータ12と読取デバイスとしてのカメラ13とから個別認証装置11が構成されている。
【0100】
コンピュータ12は、ハードウェア構成として、制御部121、記憶部122、入力部123、表示部124、入出力インターフェース(I/F)125、通信インターフェース(I/F)126を備えており、これらが、バス127を介して接続されている。
【0101】
制御部121はプロセッサであり、プログラムを実行するCPU、プログラムの実行時にワークメモリとして使用されるRAM等を備えており、記憶部122に記憶されている所定のプログラムを実行してバス127に接続された各部を制御する。
【0102】
記憶部122はメモリであり、制御部121が実行するプログラム等が格納されている。記憶部122に格納されているプログラムは制御部121より読み出されてRAMに移され、CPUによって実行される。
【0103】
入力部123は、キーボード、マウス等の入力装置であり、入力された情報を制御部121へ伝達する。
【0104】
表示部124は、例えば、液晶パネル等のディスプレイ装置であり、制御部121の制御により、各種の情報をディスプレイ装置上に表示することができる。なお、入力部123及び表示部124は一体となってタッチパネル式の入出力部とされてもよい。
【0105】
入出力インターフェース125にはカメラ13が接続されている。カメラ13は二次元画像を読み取り可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、各種の撮像素子を備えるものとすることができる。
【0106】
通信インターフェース126は、インターネット等を介してコンピュータ12を外部機器と接続するためのものであり、コンピュータ12は、通信インターフェース126を介して外部機器とデータを送受信可能とされている。
【0107】
コンピュータ12の記憶部122には、制御部121が実行するプログラムの他に、少なくとも基材層を備える基準シートであって、識別可能な繊維を備えており、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンが記憶されている。
【0108】
図2に示す例では、各平面繊維分散基準パターンには、各基準シートに付与された、繊維とは異なる基準識別情報が紐付けされて記憶部122に記憶されている。そして、各基準シートについて、1組の平面繊維分散基準パターン及び基準識別情報のデータが登録されており、これらのデータが多数集合することによってデータベースを構成している。
【0109】
図3はそのようなデータベース及びその作製の一例を示す概念図である。
【0110】
図3に示す例では、繊維とは異なる基準識別情報としてシリアル番号(123456)が基準シートに付与されている。そして、基準シート及びシリアル番号は1対1に対応している。したがって、各シリアル番号は各基準シートに固有の識別可能な繊維の平面繊維分散基準パターンに対応する。そして、識別可能な繊維の平面繊維分散基準パターンとシリアル番号の組が多数集合することによってデータベースが構成されている。
【0111】
図3に示すデータベースは、例えば、図2に示すカメラ13を使用して多数の基準シートの表面の二次元画像を撮影により取得し、当該二次元画像中の識別可能な繊維の分散パターン及びシリアル番号を認識して、これらのデータを登録する作業を繰り返し行うことにより作製することができる。
【0112】
シリアル番号は、当該番号を認識後、当該番号を表すバイナリデータとして保存することが好ましい。
【0113】
基準シートの二次元画像には、必要に応じて、予備的な画像処理を行うことができる。
【0114】
例えば、基準シート表面の二次元画像について二値化の画像処理を行うと繊維と背景の区別がより容易となり識別可能な繊維の分散パターンの認識をより正確に行うことができるので好ましい。
【0115】
また、基準シート表面の二次元画像についてコントラスト調整などの画像処理を行うとコントラストの高い画像となるので好ましい。
【0116】
更に、背景のノイズ除去を行うことが好ましい。
【0117】
基準シートとして図1に示す形態のシートを使用する場合は、矩形の枠4内の二次元画像を取得して、着色繊維2の分散パターンを認識することが好ましい。これにより、基準シートがたわみ等の理由により変形していても、矩形の枠4の変形の程度に基づき、分散パターンに対して台形補正等の補正を行い、基準シートの表面における着色繊維の平面繊維分散基準パターンを正確に認識することができる。
【0118】
平面繊維分散基準パターンのデータの具体的な形態は特には限定されるものではないが、例えば、各繊維を構成する特徴的な要素の幾つかのXY平面座標の組とすることができる。
【0119】
例えば、公知の画像処理により、基準シート表面の二次元画像中の各繊維の輪郭線を検出し、繊維を構成する特徴的な要素として、繊維の端点(始点、終点)等を特定し、それらのXY平面座標を求めて、平面繊維分散基準パターンのデータとすることができる。
【0120】
すなわち、図4に示すように、多数の基準シートの表面の繊維について、画像処理を行い、繊維の始点、終点等の、繊維を構成する特徴的な要素の情報を抽出して、それらのXY平面座標を決定し、当該XY平面座標の組をシリアル番号と共にデータベースに登録することができる。
【0121】
ある繊維の特徴的な要素を他の繊維の特徴的な要素と混同することを避けるために、同一繊維に属する特徴量はグループ化されていることが好ましい。グループ化の方法は特には限定されるものではないが、例えば、XY平面座標のデータセットに、同一の繊維であることを示す情報を追加することができる。
【0122】
なお、カメラ13を使用せずとも、例えば、外部機器からデータベースを取り込むことにより、記憶部122に、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶してもよい。この場合、コンピュータ12のみで本発明の個別認証装置を構成することができる。
【0123】
図2に示す個別認証装置11を使用する個別認証の流れを説明する。
【0124】
少なくとも基材層を備える1対1個別認証用シートであって、識別可能な繊維を備えており、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる特定の識別情報を備えており、特定の識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる1対1個別認証用シートに基づいて認証を行う場合、まず、認証の対象であるシートの平面繊維分散パターン及び特定の識別情報が個別認証装置11のコンピュータ12に提供される。
【0125】
認証の対象となるシートの二次元画像には、必要に応じて、上記の予備的な画像処理を行うことができる。
【0126】
コンピュータ12の制御部121は、記憶部122に保存されている多数の基準シートのデータベースから、上記特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択する。
【0127】
次に、制御部121は、認証の対象であるシートの平面繊維分散パターンと、選択された平面繊維分散基準パターンとを照合する。
【0128】
そして、制御部121は、上記照合の結果に基づいて、認証の対象であるシートの真贋判定を行う。
【0129】
図5は、図1に示す1対1個別認証用シートを用いた上記の個別認証の流れの一例を示す概念図である。
【0130】
まず、1対1個別認証の対象となる図1に示すシートの平面繊維分散パターン及び特定の識別情報としてのシリアル番号123456を含む二次元画像が撮影されて図2のコンピュータ12に提供される。
【0131】
図2のコンピュータ12の制御部121は、上記二次元画像中の識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及びシリアル番号を認識する。シリアル番号は、当該番号を認識後、当該番号を表すバイナリデータとして保存することが好ましい。なお、上記二次元画像には、必要に応じて、上記の予備的な画像処理を行うことができる。
【0132】
そして、制御部121は、図2の記憶部122に保存されている多数の基準シートのデータベースから、シリアル番号123456と同一のシリアル番号に対応する平面繊維分散基準パターンを選択する。
【0133】
次に、制御部121は、認証対象であるシリアル番号123456のシートの平面繊維分散パターンと、データベースから選択されたシリアル番号123456の平面繊維分散基準パターンとを照合する。
【0134】
そして、制御部121は、上記照合の結果に基づいて、シリアル番号123456のシートの真贋判定を行う。真贋判定の結果は、制御部121から、図2の入出力インターフェース125を経て所定の出力先に出力される。
【0135】
上記の流れの一例として、図4に示すデータベースを用いる個別認証の例を図6に示す。
【0136】
多数の基準シートの表面から認識される各繊維について、繊維の始点、終点等の、繊維を構成する特徴的な要素の情報を抽出して、それらのXY平面座標を決定し、当該XY平面座標の組を特徴量としてシリアル番号と共にデータベースに登録している場合は、まず、図6に示すように、データベースから、シリアル番号123456と同一のシリアル番号に対応するXY平面座標群のデータを選択する。
【0137】
一方、認証の対象であるシリアル番号123456のシートについても、同様に、利用者から提供された二次元画像中の各繊維について、繊維の始点、終点等の、繊維を構成する特徴的な要素の情報を抽出して、XY平面座標群を決定する。
【0138】
次に、認証の対象であるシリアル番号123456のシートについて得られた、繊維を構成する特徴的な要素のXY平面座標群と、データベースから選択された同一のシリアル番号に対応する、繊維を構成する特徴的な要素のXY平面座標群とを照合する。照合の態様は特には限定されるものではないが、例えば、認証対象であるシリアル番号123456のシートの、平面繊維分散パターンに対応する、繊維を構成する特徴的な要素のXY平面座標と、データベースから選択された同一のシリアル番号のシートの、平面繊維分散基準パターンに対応する、繊維を構成する特徴的な要素のXY平面座標とが所定の閾値内に存在すれば一致と判定し、当該閾値内に存在しなければ不一致と判定することができる。
【0139】
そして、図2に示す制御部121は、上記照合の結果に基づいて、シリアル番号123456のシートの真贋判定を行う。例えば、上記一致と判定されたXY座標数が所定値以上であれば、真と判定し、所定値未満の場合は偽と判定する。
【0140】
真贋判定の結果は所定の出力先に出力され、利用者に通知される。
【0141】
このように、本発明の個別認証装置では、認証対象となるシート上の識別可能な繊維の分散パターンをデータベースに登録されている多数の分散パターンと逐一照合することは行わず、認証対象となるシートに付与された特定の識別情報と一致する識別情報に対応する単一の分散パターンを選択し、当該選択された単一の分散パターンと、認証対象となるシート上の識別可能な繊維の分散パターンが一致するか否かを照合する1対1認証を行う。したがって、本発明の個別認証装置を使用することにより、認証時間を短縮することができる。
【0142】
次に、本発明の個別認証方法を説明する。
【0143】
本発明の個別認証方法は、本発明のシートの個別認証方法であって、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、識別可能な繊維を備えており、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンから、認証対象となる1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択する工程、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する工程、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う工程
を備える。
【0144】
本発明の個別認証方法では、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンは予め作製されている。作製の態様は特には限定されるものではなく、例えば、本発明の個別認証装置に関して説明したように作製することができる。
【0145】
そして、本発明の個別認証方法では、上記の複数の平面繊維分散基準パターンから、認証の対象である1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択する。選択の態様は特には限定されるものではなく、例えば、本発明の個別認証装置に関して説明したように選択することができる。
【0146】
次に、選択された平面繊維分散基準パターンと認証の対象である1対1個別認証用シートの表面から識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する。照合の態様は特には限定されるものではなく、例えば、本発明の個別認証装置に関して説明したように照合することができる。
【0147】
そして、前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う。真贋判定の態様は特には限定されるものではなく、例えば、本発明の個別認証装置に関して説明したように判定することができる。
【0148】
本発明の個別認証方法では、認証対象となるシートの表面から識別可能な繊維の分散パターンを複数の平面繊維分散基準パターンと逐一照合することは行わず、認証対象となるシートに付与された特定の識別情報と一致する識別情報に対応する単一の分散パターンを選択し、当該選択された単一の分散パターンと、認証対象となるシートの表面から識別可能な繊維の分散パターンが一致するか否かを照合する1対1認証を行う。したがって、本発明の個別認証方法を使用することにより、認証時間を短縮することができる。
【0149】
[個別認証システム]
本発明の個別認証システムは、
本発明の個別認証装置、並びに、
前記個別認証装置に1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を提供する携帯端末
からなる、本発明のシート用の個別認証システムである。
【0150】
図7は、本発明の個別認証システムの一例である。
【0151】
図7に示す個別認証システムの例では、個別認証装置11の通信インターフェース126を介して、個別認証装置11のコンピュータ12がスマートフォン等の携帯端末14と接続可能とされており、携帯端末14と送受信可能とされている。
【0152】
そして、図7の個別認証システムでは、携帯端末14が認証の対象である1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を個別認証装置11に提供可能である。
【0153】
携帯端末14は認証の対象である1対1個別認証用シートの表面から識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を読み取る読取デバイスを備えることが好ましい。二次元画像を読み取り可能であれば読取デバイスの種類は特には限定されるものではなく、例えば、各種の撮像素子を備えたカメラを使用することができる。
【0154】
携帯端末14がカメラを備える場合には、カメラを用いて認証の対象である1対1個別認証用シートの表面の二次元画像を撮影することにより、当該シート上の識別可能な繊維の平面分散パターン及び特定の識別情報をその場で取得することができる。
【0155】
なお、携帯端末14はメモリを備えてもよく、携帯端末14がメモリを備える場合は、認証の対象である1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を、その場で取得する必要はない。例えば、個別認証装置11に提供するための、認証の対象である1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報としては、携帯端末14のメモリ中のものを使用することができる。
【0156】
また、図7の個別認証システムでは、携帯端末14が個別認証装置11により行われる真贋判定の結果を受領可能であり、これにより、認証の対象である1対1個別認証用シートの真偽を携帯端末14にて確認することができる。
【0157】
図7に示す個別認証システムを使用する個別認証の流れを説明する。
【0158】
図7に示す個別認証システムにおいて、個別認証装置11の構成及び作用については既述のとおりであるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0159】
一方、図7の個別認証システムでは、携帯端末14が、認証の対象である1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターン及び特定の識別情報を個別認証装置11に提供する。
【0160】
そして、図7の個別認証システムでは、携帯端末14が個別認証装置11により行われる真贋判定の結果を受領する。
【0161】
本発明の個別認証システムでは、携帯端末は1対1個別認証に必要な情報を提供するに留まり、認証作業自体は携帯端末とは別個の個別認証装置が実施する。したがって、本発明の個別認証システムでは、携帯端末で認証を実施する必要がないので、認証を容易に行うことができる。
【0162】
また、本発明の個別認証システムでは、1対1個別認証に必要な情報を携帯端末が提供するので、認証の対象である1対1個別認証用シートを個別認証装置に物理的に直接提供する必要がない。したがって、本発明の個別認証システムでは、1対1個別認証用シートの認証作業を簡便に実施することができる。
【0163】
[個別認証プログラム及び記録媒体]
本発明の個別認証プログラムは、本発明のシートの個別認証用であって、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、識別可能な繊維を備えており、識別可能な繊維が基材層上及び/又は基材層中に分散して存在し、識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、且つ、識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンから、認証対象となる1対1個別認証用シートの特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択する工程、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記1対1個別認証用シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合する工程、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記1対1個別認証用シートの真贋判定を行う工程
を含む処理をコンピュータに実行させる、プログラムである。
【0164】
本発明の個別認証プログラムはコンピュータにより読み取り可能な形式で記述されており、これにより、本発明の個別認証プログラムは本発明の個別認証方法をコンピュータに高速で実行させることができる。
【0165】
本発明の個別認証プログラムはコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することができる。記録媒体の種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、ハードディスク等の磁気ディスク;磁気テープ;CD-ROM、DVD等の光ディスク;光磁気ディスク;フラッシュメモリを使用することができる。
【0166】
[使用]
本発明は、シートの1対1個別認証のための繊維の使用にも関し、特に、シートの1対1個別認証のための当該シートの表面から認識可能な繊維の分散パターンの使用にも関する。
【0167】
更に、本発明は、
少なくとも基材層を備えるシートであって、
識別可能な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる特定の識別情報を備えており、
前記特定の識別情報が表面から認識可能である、シートの1対1個別認証のための使用に関する。
【0168】
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面の光学読み取りにより認識可能であることが好ましい。
【0169】
前記基材層が紙からなることが好ましい。
【0170】
前記識別可能な繊維が紙を構成する識別不能な繊維とは異なる色及び/又は形状を有することが好ましい。
【0171】
表面の限定された領域における前記識別可能な繊維の分散のパターンが認証に使用されることが好ましい。
【0172】
前記繊維等の前記シートの構成要素については既述のとおりである。
【0173】
また、本発明は、少なくとも基材層を備えるシートであって、
識別可能な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる特定の識別情報を備えており、
前記特定の識別情報が表面から認識可能である、認証対象シートの1対1認証のための装置の使用であって、
前記装置はメモリ及びプロセッサを備えており、
前記メモリは、
少なくとも基材層を備える基準シートであって、
識別可能な繊維を備えており、
前記識別可能な繊維が前記基材層上及び/又は前記基材層中に分散して存在し、
前記識別可能な繊維の分散のパターンが表面から認識可能であり、
且つ、
前記識別可能な繊維とは異なる基準識別情報を備えており、
前記基準識別情報が表面から認識可能である基準シートからなる、複数の基準シートの各基準識別情報に対応する複数の平面繊維分散基準パターンを記憶しており、
並びに、
前記プロセッサは、
前記複数の平面繊維分散基準パターンから、前記認証対象シートの前記特定の識別情報と一致する基準識別情報に対応する平面繊維分散基準パターンを選択し、
選択された前記平面繊維分散基準パターンと前記認証対象シートの識別可能な繊維の平面繊維分散パターンとを照合し、及び、
前記照合の結果に基づいて、前記認証対象シートの真贋判定を行う
装置の使用にも関する。
【0174】
前記繊維等の前記シートの構成要素並びに前記メモリ、前記プロセッサ等の前記装置の構成要素については既述の説明があてはまる。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の1対1個別認証用シートは偽造防止用途に好適に使用することができる。したがって、本発明の1対1個別認証用シートは、例えば、有価証券、各種証明書等向けの偽造防止用シートとして使用することができる。
【0176】
本発明の個別認証装置、システム、方法、プログラム及び記録媒体によって、本発明の1対1個別認証用シートの個別認証を正確且つ迅速に行うことができる。特に、本発明の個別認証システムにおいて携帯端末としてスマートフォンを用いる場合には、スマートフォンユーザーは特別な装置を使用することなく、1対1個別認証を容易に実施することができる。
【符号の説明】
【0177】
1 1対1個別認証用シート、2 着色繊維、3 無地面、4 枠、5 シリアル番号
11 個別認証装置、12 コンピュータ、13 カメラ、14 携帯端末
121 制御部、122 記憶部、123 入力部、124 表示部、125 入出力インターフェース、126 通信インターフェース、127 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7