(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017794
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】複数の信号におけるパターン認識のための方法
(51)【国際特許分類】
G06N 20/10 20190101AFI20230131BHJP
【FI】
G06N20/10
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168637
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2019513319の分割
【原出願日】2017-09-08
(31)【優先権主張番号】1658424
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VERILOG
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケヴァン・ゲール
(72)【発明者】
【氏名】ジェルマン・エッシグ
(72)【発明者】
【氏名】リャド・ベノスマン
(72)【発明者】
【氏名】シオ・ホイ・エン
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ-アラン・サエル
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・シュネグロ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・リベール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異なるタイプの複数の受信された時間信号におけるパターンを認識する、法及びプログラムを提供する。
【解決手段】方法は、複数の時間信号を受信するステップ501と、複数の時間信号の各受信された信号について、イベントを含む非同期時間信号を生成するステップ502と、各生成された非同期時間信号について、各生成された非同期時間信号のアクティビティプロファイルを生成するステップ503と、所与の時間について、コンテキストを決定するステップ504と、1組の所定の標準コンテキストの中から標準コンテキストを決定するステップ506と、決定された標準コンテキストの関数としてパターンを決定するステップ508と、を含む。
【選択図】
図5b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるタイプの複数の時間信号におけるパターン認識のために、コンピュータによって実装される方法であって、
/a/ 前記複数の時間信号(101、104)を受信するステップ(501)と、
/b/ 前記複数の時間信号の各受信された信号について、イベントを含む非同期時間信号(102、103、105、106)を生成するステップ(502)と、
/c/ 各生成された非同期時間信号(102、103、105、106)について、前記各生成された非同期時間信号のアクティビティプロファイル(S(p1)、S(p2)、S(p3)、S(p4))を生成するステップ(503)であり、前記アクティビティプロファイル(S(p1)、S(p2)、S(p3)、S(p4))が、前記各生成された非同期時間信号の連続するイベントの中の最も最近のイベント(210、212、213、214、220、221、222)から経過した時間の関数として減少する少なくとも1つのアクティビティ値を含む、ステップと、
/d/ 所与の時間(t0)について、
/d1/ コンテキストを決定するステップ(504)であり、前記コンテキストが、前記所与の時間(t0)に、前記生成された非同期時間信号の前記アクティビティプロファイルのセットとして定義される、ステップと、
/d2/ 1組の所定の標準コンテキスト(505、401、402、403、404)の中から標準コンテキストを決定するステップ(506)であり、前記決定された標準コンテキストが、前記1組の標準コンテキストの中で、ステップ/d1/で決定された前記コンテキストまでの最小距離を有する、ステップと、
/d3/ 前記決定された標準コンテキストの関数としてパターン(509)を決定するステップ(508)と
を含む方法。
【請求項2】
異なるタイプの複数の時間信号におけるパターン認識のために、コンピュータによって実装される方法であって、標準コンテキストの階層モデルが定義され、各標準コンテキストが、前記階層モデルのそれぞれのレベルに関連付けられており、前記方法が、
/a/ 前記複数の時間信号(101、104)を受信するステップ(501)と、
/b/ 前記複数の時間信号の各受信された信号について、イベントを含む非同期時間信号(102、103、105、106)を生成するステップ(502)と、
/b'/ 各生成された非同期時間信号の前記イベントを現在のイベントとして使用し、前記階層モデルの第1のレベルの前記標準コンテキストを現在の標準コンテキストとして使用するステップと、
/c/ 各生成された非同期時間信号(102、103、105、106)について、前記各生成された非同期時間信号のアクティビティプロファイル(S(p1)、S(p2)、S(p3)、S(p4))を生成するステップ(503)であり、前記アクティビティプロファイル(S(p1)、S(p2)、S(p3)、S(p4))が、前記各生成された非同期時間信号の連続するイベントの中の最も最近のイベント(210、212、213、214、220、221、222)から経過した時間の関数として減少する少なくとも1つのアクティビティ値を含む、ステップと、
/d/ 複数の所与の時間の中の各所与の時間について、
/d1/ コンテキストを決定するステップ(504)であり、前記コンテキストが、前記所与の時間における、前記生成された非同期時間信号の前記アクティビティプロファイルの値のセットとして定義される、ステップと、
/d2/ 前記現在の標準コンテキスト(511)の中から標準コンテキストを決定するステップ(506)であり、前記決定された標準コンテキストが、1組の現在の標準コンテキストの中で、ステップ/d1/で決定された前記コンテキストまでの最小距離を有する、ステップと、
/d3/ あるレベルの前記階層モデルが使用されていない場合、ステップ/d2/で識別された前記現在の標準コンテキストの関数として、前記生成された非同期時間信号の非同期時間信号についてのイベントを生成するステップ(512)と、
/e/ あるレベルの前記階層モデルが使用されていない場合、
・ステップ/d3/で生成された前記イベントを現在のイベントとして使用する(513)ステップと、
・まだ使用されていないあるレベルの前記階層モデルの前記標準コンテキストを現在の標準コンテキストとして使用する(513)ステップと、
・/c/から/f/までの前記ステップを実行または再実行するステップと、
/f/ 前記階層モデルの前記レベルのすべてが使用されている場合、
・前記ステップ/d2/の最後の実行時に決定された前記標準コンテキストと標準シグネチャ(510)のベースとの比較(507)を介して、前記受信された複数の時間信号中のパターンを決定するステップ(508)と
を含む方法。
【請求項3】
前記ステップ/f/の前記比較が、バッタチャリヤ距離の計算を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ/f/の前記比較が、標準化された距離の計算を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ/f/の前記比較が、前記ステップ/d2/の最後の実行時に標準コンテキストを決定する発生の回数と、標準シグネチャのベースとの間の比較である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記アクティビティプロファイルの前記減少が、前記現在の階層モデルの前記レベルの関数である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
ステップ/b/において、前記イベントが、前記複数の時間信号の前記各受信信号の特性を表す前記生成された非同期時間信号の同じ形式のものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
プログラムがプロセッサによって実行されると、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、異なるタイプの信号中のいくつかの特定のパターンを検出するための複雑な信号分析の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
センサーの製造コストの低減およびその小型化のおかげで、ヘルスデータの監視(たとえば、心拍数、血圧、血流速度、体温、睡眠の質などを測定するスマートウォッチなど)のためであろうと、産業用データ(機械室の温度、CO2の存在、通気速度など)のためであろうと、センサーは、今日どこにでも存在する。
【0003】
これらのセンサーから来るデータを評価することができるようにするために、このデータを分析することは、真の課題である。
【0004】
この分析は、ほとんどの場合、既知の数学的ツール(たとえば、導関数の計算、変動分析など)を用いた曲線の処理に戻るので、単一の信号を分析することは、それ自体、問題を生じない。
【0005】
しかしながら、分析が、同じスケール/大きさなどを持たない複数の信号を把握しようとするとき、いくつかのパターンを検出するためにこれらの信号を組み合わせることは困難であり得る。単に参考までに、これらのパターンは以下とすることができる。
・心拍数、動脈血流量、および心拍数の規則性信号による、患者の発作の警告サインの検出
・温度、CO2の割合、および消費信号による、産業用エンジンの汚れの問題の検出。
【0006】
実際、単一の信号を分析することによって、誤った結果が生じる可能性がある。
・心拍数の増加は、単独では、患者が走っている、または心臓疾患であることを意味し得る。
・産業用機械の消費量の増加は、エンジンの炭化が十分に機能していない、またはオペレータが生産速度の増加を要求したことを意味する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
異なるタイプの信号を分析するための特定の解決策は、ケースバイケースで(すなわち、当該の信号のタイプに従って)見つけることができるが、これらの複雑な信号中のパターンを検出するための一般的な方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この状況を改善する。
【0009】
この趣旨で、本発明は、複雑な信号の単純化された分析を可能にする一般的な方法を提案する。
【0010】
そこで、本発明は、異なるタイプの複数の時間信号におけるパターン認識のための方法に関し、方法は、
/a/ 複数の時間信号を受信するステップと、
/b/ 複数の信号の各受信された信号について、イベントを含む非同期時間信号を作成するステップであり、前記イベントが、受信信号の特性を表す非同期信号の同じ形式のものである、ステップと、
/c/ 各作成された非同期信号について、前記非同期信号のアクティビティプロファイルを作成するステップであり、アクティビティプロファイルが、前記非同期信号の連続するイベントの中の最も最近のイベントから経過した時間の関数として減少する少なくとも1つのアクティビティ値を含む、ステップと、
/d/ 所与の時間の間に、
/d1/ コンテキストを決定するステップであり、前記コンテキストが、所与の時間における、作成された非同期信号のアクティビティプロファイルのセットとして定義される、ステップと、
/d2/ 1組の所定の標準コンテキストの中から標準コンテキストを決定するステップであり、決定された標準コンテキストが、1組の標準コンテキストの中で、ステップ/d1/で決定されたコンテキストまでの最小距離を有する、ステップと、
/d3/ 前記所定の標準コンテキストの関数としてパターンを決定するステップと
を含む。
【0011】
距離は、数学的な意味での距離とすることができる。したがって、距離は、ユークリッド距離、マンハッタン距離、ミンコフスキー距離、チェビシェフ距離、または他の任意の距離とすることができる。
【0012】
別の実施形態では、使用される標準コンテキストについて階層モデルを考慮することが可能である。
【0013】
また、本発明は、代替的に、異なるタイプの複数の時間信号におけるパターン認識のための方法に関し、標準コンテキストの階層モデルが定義され、各標準コンテキストは、階層モデルのそれぞれのレベルに関連付けられており、方法は、
/a/ 複数の時間信号を受信するステップと、
/b/ 複数の信号の各受信された信号について、イベントを含む非同期時間信号を作成するステップであり、前記イベントが、受信信号の特性を表す非同期信号の同じ形式のものである、ステップと、
/b'/ 各非同期信号のイベントを現在のイベントとして使用し、階層モデルの第1のレベルの標準コンテキストを現在の標準コンテキストとして使用するステップと、
/c/ 各作成された非同期信号について、前記非同期信号のアクティビティプロファイルを作成するステップであり、アクティビティプロファイルが、前記非同期信号の連続するイベントの中の最も最近のイベントから経過した時間の関数として減少する少なくとも1つのアクティビティ値を含む、ステップと、
/d/ 複数の所与の時間の中の各所与の時間について、
/d1/ コンテキストを決定するステップであり、前記コンテキストが、所与の時間における、作成された非同期信号のアクティビティプロファイルの値のセットとして定義される、ステップと、
/d2/ 現在の標準コンテキストの中から標準コンテキストを決定するステップであり、決定された標準コンテキストが、1組の現在の標準コンテキストの中で、ステップ/d1/で決定されたコンテキストまでの最小距離を有する、ステップと、
/d3/ あるレベルの階層モデルが使用されていない場合、ステップ/d2/で識別された現在の標準コンテキストの関数として、非同期信号についてのイベントを生成するステップと、
/e/ あるレベルの階層モデルが使用されていない場合、
・ステップ/d3/で生成されたイベントを現在のイベントとして使用するステップと、
・まだ使用されていないあるレベルの階層モデルの標準コンテキストを現在の標準コンテキストとして使用するステップと、
・/c/から/f/までのステップを再実行するステップと、
/f/ 階層モデルのレベルのすべてが使用されている場合、
・ステップ/d2/の最後の発生時に決定された標準コンテキストと標準シグネチャのベースとの比較を介して、複数の受信信号中のパターンを決定するステップと
を含む。
【0014】
これらの階層レベルは、段階的な認識を進めることを可能にし、第1の階層レベルは、非常に基本的なフォームを識別することを可能にし、より高次の階層レベルは、より低いレベルからより複雑な形状を識別することを可能にする。
【0015】
一実施形態では、ステップ/f/の比較は、バッタチャリヤ距離の計算を含むことができる。
【0016】
実際、この距離がより良い品質の認識を可能にしたことが実験的に観察されている。
【0017】
さらに、ステップ/f/の比較は、標準化された距離の計算を含むことができる。
【0018】
別の代替的な、または累積的な実施形態では、ステップ/f/の比較は、ステップ/d2/の最後の発生時に標準コンテキストを決定する発生の回数と、標準シグネチャのベースとの間の比較であり得る。
【0019】
アクティビティプロファイルの減少は、現在の階層モデルのレベルの関数として生じ得る。
【0020】
この適応は、これらのより低いレベルに対する反応性を有するために、より高い階層レベルに対してより遅い減少速度を与えることを可能にすることができる。逆に、より低いレベルの階層レベル(すなわち最初に使用されたもの)は、より高い反応性を有することができる。
【0021】
既存の機器にインストールされた、上記の方法の全部または一部を実施するコンピュータプログラムは、それが複数の信号中のパターン認識を可能にするとき、それ自体有利である。
【0022】
したがって、本発明は、このプログラムがプロセッサによって実行されると、上記で説明した方法を実施するための命令を含むコンピュータプログラムにも関する。
【0023】
このプログラムは、任意のプログラミング言語(たとえば、オブジェクト指向言語など)を使用することができ、解釈可能なソースコード、部分的にコンパイルされたコード、または完全にコンパイルされたコードの形式であり得る。
【0024】
以下に詳細に説明される
図5aおよび
図5bは、そのようなコンピュータプログラムの一般的なアルゴリズムのフローチャートを形成し得る。
【0025】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明を読むと、さらに明らかになるであろう。後者は情報目的のものにすぎず、添付の図面とともに読むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1a】心拍数を表す信号からのイベントの生成を示す図である。
【
図1b】呼吸数を表す信号からのイベントの生成を示す図である。
【
図2a】受信信号から来るイベントの「アクティビティプロファイル」例である。
【
図2b】受信信号から来るイベントの「アクティビティプロファイル」例である。
【
図3a】3つの受信信号から決定されたコンテキストの表現の例である。
【
図3b】3つの受信信号から決定されたコンテキストの表現の例である。
【
図4e】
図4a~
図4dの標準コンテキストの信号における認識から4つのイベントフローを生成する一例である。
【
図4f】4つのイベントフローについてのシグネチャを決定する一例である。
【
図5a】本発明の可能な実施形態による方法のフローチャートの一例である(すなわち、標準コンテキストの階層モデルを使用しない)。
【
図5b】本発明の別の可能な実施形態による方法のフローチャートの一例である(すなわち、標準コンテキストの階層モデルを使用する)。
【
図6】本発明による一実施形態を実施するためのデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1aは、心拍数を表す信号からのイベントの生成を示す。
【0028】
この例では、曲線101は、心拍数を表す。この曲線は、連続データ(たとえば、アナログ信号)の形で、またはサンプリングされたデータ(たとえばデジタル信号)の形で受け取ることができる。
【0029】
信号を受信している間に、その信号に固有のいくつかの特性を決定することが可能である。これらの特徴は、非限定的に、以下とすることができる。
・信号中の特定のパターンの出現(たとえば、心電図におけるR波(またはQRS複合)の出現、または工作機械のエンジンサイクルの終わり)。
・信号のパターンの変動(たとえば、心電図におけるR波の反復周期の変動、または工作機械のエンジンサイクルタイムの変動)。
・いくつかのパターンの時間幅(たとえば、心電図における間隔QTの幅、または工作機械のエンジンサイクルタイム)。
・信号の振幅の最大値
・その他。
【0030】
当然、これらの特性は、(たとえば、信号の導関数または信号の任意の数学的変換など)信号の関数を表すことができる。
【0031】
信号のこれらの特性によれば、(たとえば曲線102または103など)マーカーまたはイベントを含むいわゆる「非同期」信号を生成することが可能である。これらのイベントは、その生成が簡単なので、非同期信号では、ほとんどの場合ディラックである。しかしながら、これらのイベントは、任意のパターン(たとえば、三角形、矩形、正弦波部分、交流信号の部分などの信号)とすることができる。前記非同期信号の各イベントは、有利には、同じパターンまたは類似のパターンである(しかしながら、それらの振幅または極性(すなわち値0に対する方向)は、あるイベントから他のイベントへと変化し得る)。
【0032】
参考までに、曲線102は、曲線101の心電図におけるQRS複合の出現中にイベントが生成される、非同期信号である。
【0033】
また、参考までに、曲線103は、曲線101の心電図のQRS複合の幅が目標値(たとえば、x分前の平均)を超えると、イベントが生成される、非同期信号である。
【0034】
図1bは、呼吸数を表す信号104からのイベントの生成を示す。
【0035】
この例は、
図1aの例と実質的に同一であり、したがって、これまでの開発は、それに適用される。
【0036】
参考までに、曲線105は、呼吸数が曲線104における所定のしきい値(すなわち点線の横線)を超えると、イベントが生成される、非同期信号である。
【0037】
また、参考までに、曲線106は、呼吸数の導関数が曲線104における目標値を超えると、イベントが生成される、非同期信号である。
【0038】
イベントの生成に使用される特性にかかわらず、この生成によって、異なるタイプの信号(たとえば、同じタイプのセンサーおよび/もしくは同じソースの情報を使用して生成されていない、および/または異なる物理的概念を表す曲線101および104)を、比較できる非同期信号(たとえば、102および106)に変換することが可能である。その場合、パターンの識別の作業が簡略化される。
【0039】
図2aおよび
図2bは、3つの受信信号p
1、p
2、およびp
3から来るイベントについての3つの<<アクティビティプロファイル>>t→Sの例である。
【0040】
この例では、イベントがない場合、S(p1,t)、S(p2,t)、またはS(p3,t)の値はゼロである。
【0041】
しかしながら、信号p1におけるイベントの発生中(たとえば210)、S(p1,t)は、所定のしきい値をとる(ここではhであり、この値hは、ユニタリとすることができる)。
【0042】
アクティビティプロファイルS(p1,t)の値は、次いで、このイベントの後に徐々に減少して0に近づく。
【0043】
信号p1でのイベント211、信号p2でのイベント212、または信号p3でのイベント213/214についても同様である。
【0044】
信号/アクティビティプロファイルSの減少は、ここでは直線的であるが、指数関数的減少など、任意のタイプの減少を提供することが可能である。
【0045】
【0046】
この指数関数的減少を、
図2bに示すことができる(たとえば、イベント220参照)。この減少の性質およびパラメータは、分析される信号ごとに選択され、異なり得る。
【0047】
さらに、当該の信号(たとえば、ここではp4)でのイベントの発生中、関数Sの値がhの値に対して無視できないことがあり得る(たとえば、イベント221がイベント222に時間的に近い)。
【0048】
一実施形態では、後のイベント222の発生中、アクティビティプロファイルSの値は、イベント222の直前のSの現在値(すなわちh0)とhの合計(随意に、重み付けされる)に設定することができる。したがって、曲線Sの減少は、
図2bに示されるように、値h+h
0から始まる。さらに、h+h
0の値が所定の値h
1で制限される(すなわち、min(h
1,h+h
0))ことを提供することが可能である。
【0049】
別の実施形態では、後のイベント222の発生中、曲線Sの値は、h0の値に関係なく値hに設定される(すなわち、最後のイベント(すなわち、後のイベント)より前のイベントは無視される)。この他の実施形態では、以下のように定義される「最後のイベント時間」と呼ばれる時間を定義することが可能である。
T(p,i)=max(tj)|j<i
または
T(p,t)=max(tj)|tj<t
ここで、tjは、信号pについて発生するイベントの回数である。
【0050】
概念的には、p→T(p,t)は、基準時間(すなわちt)の直前に時間的に発生した最後のイベントの時間のマップを定義する。
【0051】
次いで、この他の実施形態では、p→S(p,t)を、このマップp→T(p,t)の関数として定義することが可能である。
【0052】
たとえば、p→S(p,t):
【0053】
【0054】
であり、τおよびhは、所定の時定数である(Sは、下限T(p,t)を含む間隔にわたって、時間tにわたって減少する任意の関数とすることができる)。
【0055】
関数p→S(p,t)は、所与の時間tでの入力信号の「コンテキスト」と呼ばれる。
【0056】
上記で説明したようなコンテキストp→S(p,t)の作成は、不連続な概念(すなわちイベント)の連続的で単純な表現を可能にするので有利である。この作成されたプロファイルは、理解しやすいドメインにイベントの表現を変換することを可能にする。
【0057】
次いで、その作成は、イベントの処理および比較を単純化する。
【0058】
入力信号のコンテキストは、
図2aで簡単に読むことができる。したがって、信号p
1、p
2、p
3について、時間t
0でのコンテキストを、点線上で垂直に読み取ることができ、以下のベクトルの形で表すことができる。
【0059】
【0060】
このベクトルは、「スパイダー」グラフ(たとえば、
図3a)の形、またはヒストグラム(たとえば、
図3b)の形で図示することができる。当然、任意の形態のグラフィック表現を考えることができる。
【0061】
ベクトルの成分の順序は多数の状況において任意であり得るが、信号の空間的および/または時間的なダイナミクスに従って、これらの成分間の順序を確立することが可能である。したがって、所与のコンテキストにおける2つの連続する成分は、密接な空間的および/または時間的ダイナミクスを有する信号を表すことができる。
【0062】
図4aから
図4dは、4つの標準コンテキストの表現の例である。
【0063】
信号中のパターンを検出するために、以前に定義されたコンテキストSと比較される標準コンテキストを定義することが可能である。
【0064】
たとえば、
図3aのコンテキストを、標準コンテキスト401、402、403、および404の各々と比較することができる。
【0065】
当然、コンテキストに関しては、標準コンテキストは、複数の同等の表現(グラフィックスであろうとなかろうと)を有することができ、ここで使用されるグラフィカル表現は、後者が獲得する視覚的な単純さのためだけに保持される。
【0066】
したがって、これらの標準コンテキストを、信号内の決定されたコンテキストと比較することができる。次いで、決定されたコンテキストに最も近い標準コンテキストが保持される。(ベクトルとして見られる)2つのコンテキスト間の近接性を測定するために、これら2つのベクトル間に(数学的意味で)任意の距離を使用することが可能である。
【0067】
当然、各標準コンテキストを、所与のパターンに関連付けることができ、たとえば、標準コンテキスト402は、エンジンの機械的故障に対応することができ、標準コンテキスト401は、前記エンジンの通常の動作に対応する。
【0068】
コンテキストの成分が、信号の空間的および/または時間的ダイナミクスの関数としての順序を有する実施形態では、コンテキストと標準コンテキストとの間の距離の最小化に使用される距離は、この順序を考慮に入れることができる。
【0069】
補足として、または代替として、標準コンテキストが保持/認識されたときに、新しい非同期信号のイベントを生成することも可能である(
図4e)。
・受信信号p
1、p
2、およびp
3において所与の瞬間に標準コンテキスト401が認識されると、信号411においてイベントが生成される。
・受信信号p
1、p
2、およびp
3において所与の瞬間に標準コンテキスト402が認識されると、信号412においてイベントが生成される。
・受信信号p
1、p
2、およびp
3において所与の瞬間に標準コンテキスト403が認識されると、信号413においてイベントが生成される。
・受信信号p
1、p
2、およびp
3において所与の瞬間に標準コンテキスト404が認識されると、信号414においてイベントが生成される。
【0070】
この例では、このようにして4つの新しい非同期信号が生成され、これらは、標準コンテキストの新しいベース(しばしば「より高い階層レベルの標準コンテキスト」と呼ばれる)を用いた、以前と同じ分析の対象となり得る。これらの新しい標準タイプの各々は、4つの次元(分析される非同期信号の数に等しい)を有する。
【0071】
したがって、この方法(すなわち分析)は、再帰的とすることができ、標準コンテキストに対して定義された階層レベルの数と同じ回数繰り返され得る。
【0072】
たとえば、
図2aおよび
図2bのアクティビティプロファイルの減少に関しては、階層モデル内で反復が行われるにつれて、それらの減少がますます少なくなることを提供することが可能である。減少の速度のこの低減は、標準コンテキストの階層モデルのレベル(したがって、より良いパターン認識)の関数として、異なる反応性を考慮に入れることを可能にする。
【0073】
ひとたび、すべての階層レベルが使用され/通過すると(階層モデルは、特定の場合、単一のレベルのみを含むことができる)、シグネチャを定義することが可能である。
【0074】
図4fは、4つのイベントフローについてのシグネチャを決定する一例である。
【0075】
この例では、シグネチャは、上記で説明した方法の最新の発生での決定された標準コンテキストの各々(それぞれ401、402、403、404)の発生回数(それぞれn401、n402、n403、n404)のベクトルまたはヒストグラム420であると定義される。
【0076】
次いで、標準シグネチャ(421、422、423)のベースで、決定されたシグネチャに最も近い標準シグネチャを見つけることが可能である。この近接性は、数学的な意味で、何であれ任意の距離を使用することによって確立できる。
【0077】
2つのヒストグラムH1とH2(たとえば420と421)との間の距離は、標準コンテキストの各々についての発生回数を座標として有する2つのベクトル間の数学的距離として計算することができる。
d(H1;H2)=||H1-H2||
【0078】
次のように標準化された距離を計算することも可能である。
【0079】
【0080】
ここで、card(Hj)はヒストグラムHjの標準コンテキストの数(すなわち垂直バー)である。
【0081】
バタチャリヤ距離を、従来の距離の代替として使用することもできる。
【0082】
【0083】
ここで、Hj(i)は、ヒストグラムHjのi番目の標準コンテキストの発生回数である。
【0084】
バタチャリヤ距離または標準化された距離が非常に良い結果を与えることが実験的に観察されている。任意の他の数学的距離を使用することもできる。
【0085】
シグネチャは、4つのイベントフローの非同期信号の一般的な形とすることもできる。
【0086】
標準シグネチャの各々を、受信信号中の所与のパターンに関連付けることができ、たとえば、標準シグネチャ421は、エンジンの機械的故障に対応することができ、標準シグネチャ422は、前記エンジンの通常の動作に対応する。
【0087】
図5aは、本発明の可能な実施形態による方法のフローチャートの一例である(すなわち、標準コンテキストの階層モデルを使用しない)。
【0088】
信号501を受信すると、
図1aおよび
図1bに関して説明したように、信号の特性の検出に基づいて、イベントを生成することによって、非同期信号を生成することが可能である(ステップ502)。
【0089】
ひとたび、これらの非同期信号が作成されると、作成された各非同期信号から、
図2aおよび
図2bに関して説明したようなアクティビティプロファイルを作成することが可能である(ステップ503)。
【0090】
これらのアクティビティプロファイルは、
図3a、
図3b、および
図2aに関して説明したように、所与の時間の間にコンテキストを決定することを可能にする(ステップ504)。決定されたコンテキストは、所与の時間における、作成された非同期信号のアクティビティプロファイルの値のベクトルとして定義することができる。
【0091】
さらに、ステップ504で決定されたコンテキストと、標準コンテキストとの間の距離を最小化することによって、(たとえば、事前計算され、データベース505に記憶された)1組の所定の標準コンテキストの中から標準コンテキストを決定する(ステップ506)ことも可能である。
【0092】
決定された標準コンテキストに基づいて、次いで、複数の受信信号中の「パターン」509を決定することが可能である(ステップ508)。この仮説では、「パターン」を標準コンテキストの各々と関連付けることが有利である。次いで、標準コンテキストが識別されると、関連するパターンを取り出すために、関連データベースにおいてクエリを実行することが可能である。
【0093】
図5bは、本発明の別の可能な実施形態による方法のフローチャートの一例である(すなわち、標準コンテキストの階層モデルを使用する)。
【0094】
信号501を受信すると、
図1aおよび
図1bに関して説明したように、信号の特性の検出に基づいて、イベントを生成することによって、非同期信号を生成することが可能である(ステップ502)。
【0095】
ひとたび、これらの非同期信号が作成されると、作成された各非同期信号から、
図2aおよび
図2bに関して説明したようなアクティビティプロファイルを作成することが可能である(ステップ503)。
【0096】
これらのアクティビティプロファイルは、
図3a、
図3b、および
図2aに関して説明したように、所与の時間の間にコンテキストを決定することを可能にする(ステップ504)。決定されたコンテキストは、所与の時間における、作成された非同期信号のアクティビティプロファイルの値のベクトルとして定義することができる。この決定は、複数の所与の時間に対して実行することができる(たとえば、この複数の時間は、所定のピッチでの時間のサンプリングである)。
【0097】
その場合、作成されたばかりの各非同期信号のイベントを現在のイベントとして使用することが可能である。
【0098】
さらに、標準コンテキストの階層モデル(たとえば、データベース511に記憶されている、max_kレベルを有する)を有することで、第1のレベル(k=1)の標準コンテキストを現在の標準コンテキストとして採用することが可能である。
【0099】
コンテキストが決定されると、ステップ504で決定されたコンテキストと現在の標準コンテキストとの間の距離を最小化することによって、現在の標準コンテキストの中の標準コンテキストを決定することも可能である(ステップ506)。
【0100】
標準コンテキストの各認識は、
図4eに関して説明されたように、イベントの生成(ステップ512)を可能にし得る。可能な各標準モデルは、クリーンな非同期信号の生成を可能にし得る。階層モデルのレベルのすべてがすでに使用されている(すなわち、k=max_k)場合、このステップ512は、オプションであることに留意されたい。
【0101】
これらのステップ(506、512)が上述の複数の時間に対して実行されると、階層モデル内のレベルを変更することが可能である(ステップ513、たとえば、k=k+1)。あるレベルの階層モデルが使用されていない場合(すなわち、k≦max_k、ステップ513からOKを出力)、(すなわち、最後の反復中にステップ512で生成されたイベントを現在のイベントとみなすことによって)作成された新しい非同期信号を使用することによって、および新しい標準コンテキスト(すなわち、ステップ513で選択されたより高い階層レベルのもの)を現在の標準コンテキストとして使用することによって、ステップ506、512、および513を繰り返すことが可能である。
【0102】
さらに、追加の非同期信号として(すなわち、作成された新しい非同期信号に加えて)、ステップ502と同様のステップから来る非同期信号を使用することも可能である。実際、受信信号が高速信号(所定の時間期間の間、その変動が顕著)である場合、階層モデルの第1のレベルを使用してそれを処理することが有利である。しかしながら、受信信号が遅い(所定の時間期間の間にわたって、その変動を無視できる)場合、それを階層モデルの第1のレベルで処理せず、ステップ504によって処理されるべき非同期信号にそれを統合するために、後の階層レベルを待つことが有利であり得る。この非同期信号のこの統合は、すでに統合されている「より速い」信号についてステップ512で生成された非同期信号と並行して行われる。したがって、それらの空間的および/または時間的ダイナミクスの関数として受信信号を分類するために、受信信号501の事前分析を実行することが可能であり、次いで、この分類で、ステップ506、512、および513によって定義されるループに各信号が統合される階層モデルのレベルvがわかり得る。
【0103】
階層モデルのレベルのすべてが使用されている場合、ステップ506の最後の発生時に決定された標準コンテキストと標準シグネチャのベースとの比較を介して「パターン」を決定することが可能である。この比較は、たとえば、
図4fに関して説明したように、ステップ506の最後の発生時に標準コンテキストを決定する発生回数の計算を含むことができる。比較は、ステップ513の最後の発生時に生成された非同期信号とシグネチャベースとの間の距離の比較でもあり得る(この仮説では、階層モデルの最後のレベルが使用されるときにステップ513が実行されなければならない)。
【0104】
この仮説では、シグネチャベースのシグネチャの各々を「パターン」と関連付けることが有利である。次いで、シグネチャが識別されると、関連するパターンを取り出すために、関連データベースにおいてクエリを実行することが可能である。
【0105】
図6は、本発明の一実施形態におけるパターン認識のためのデバイスの一例を示す。
【0106】
この実施形態では、デバイスは、方法の実施を可能にする命令、受信された測定データ、および上述したような方法の様々なステップを実行するための一時データを記憶するためのメモリ605を含むコンピュータ600を含む。
【0107】
コンピュータは、回路604をさらに含む。この回路は、たとえば以下とすることができる。
・コンピュータプログラムの形の命令を解釈できるプロセッサ。
・本発明の方法のステップについての詳細がシリコンに記載されているかどうかにかかわらず、電子ボードまたは電子回路。
・本発明の方法のステップが、たとえば、VHDLまたはVerilogコード(電子システムの挙動およびアーキテクチャを表すことを可能にするハードウェア記述言語)で記述されているFPGAチップ(「フィールドプログラマブルゲートアレイ」として)などのプログラマブル電子チップ。
【0108】
このコンピュータは、分析されるべき信号を受信するための入力インターフェース603と、認識されたパターンを供給するための出力インターフェース606とを含む。最後に、コンピュータは、ユーザとの容易な対話を可能にするために、スクリーン601およびキーボード602を含むことができる。当然、キーボードは、特に、たとえばタッチセンシティブタブレットの形態を有するコンピュータのフレームワークでは、オプションである。
【0109】
さらに、
図5aまたは
図5bに示すブロック図は、説明したデバイスを使用していくつかの命令を実行できるプログラムの典型的な例である。したがって、
図5aまたは
図5bは、本発明に関してコンピュータプログラムの一般的なアルゴリズムのフローチャートに対応することができる。
【0110】
当然、本発明は、例として上述した実施形態に限定されず、他の代替にも及ぶ。
【0111】
他の実施形態も可能である。
【0112】
たとえば、与えられた例は特定の分野のものであるが、提案された方法は、任意の特定の制限なしに、任意の可能な産業分野において、任意のタイプのデータ/信号を分析することを可能にすることができる。
【符号の説明】
【0113】
401 標準コンテキスト
402 標準コンテキスト
403 標準コンテキスト
404 標準コンテキスト
411 信号
412 信号
413 信号
414 信号
420 ベクトルまたはヒストグラム
421 標準シグネチャ
422 標準シグネチャ
423 標準シグネチャ
501 信号
505 データベース
509 パターン
600 コンピュータ
601 スクリーン
602 キーボード
603 入力インターフェース
604 回路
605 メモリ
606 出力インターフェース
【外国語明細書】