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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177944
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/32 20060101AFI20231207BHJP
   E04B 7/08 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
E04B1/32 102B
E04B7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090919
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 充
(72)【発明者】
【氏名】谷口 尚範
(57)【要約】
【課題】角部の座屈耐力をより向上させることができる屋根構造を提供する。
【解決手段】ケーブル材(引張材)6は、張弦リング材(リング材)3における八角形(多角形)の角部に対応する位置と、ドーム架構2の外周材24における四角形(多角形)の辺の長さ方向の中間部に対応する位置と、を連結する。張弦リング束材4は、張弦リング材3における八角形の角部に対応する位置とドーム架構2とを連結する角部束材41と、張弦リング材3における八角形の辺の中間部に対応する位置とドーム架構2を連結する中間束材42と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面に沿って配置され、平面視で多角形の形状をなすドーム架構と、
前記ドーム架構の下方に配置され、平面視で多角形の環状に形成されたリング材と、
前記リング材と前記ドーム架構との間において鉛直方向に延び前記リング材と前記ドーム架構とを連結する複数の束材と、
前記リング材と前記ドーム架構の外周端部とを連結する複数の引張材と、を備え、
前記引張材は、前記リング材における前記多角形の角部に対応する位置と、前記ドーム架構の外周端部における前記多角形の辺の長さ方向の中間部に対応する位置と、を連結し、
前記束材は、
前記リング材における前記多角形の角部に対応する位置と前記ドーム架構とを連結する角部束材と、
前記リング材における前記多角形の辺の中間部に対応する位置と前記ドーム架構とを連結する中間束材と、を有する屋根構造。
【請求項2】
前記リング材における前記多角形の外周に沿った方向に隣り合う前記束材を連結する斜材を更に有する請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
前記リング材の平面視の形状は、4つの短辺と4つの長辺とが1つずつ交互に配列された八角形であり、
前記中間束材は、前記リング材における前記長辺に対応する長辺部の中間部と、前記ドーム架構とを連結する請求項1または2に記載の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
球面に沿って配置され鉛直方向から見た平面視で円以外の形状をなすドーム架構と、ドーム架構の下方に配置され、平面視で円形に形成されたリング材と、ドーム架構とリング材とを連結し鉛直方向に延びる束材と、リング材とドーム架構の外周材とを連結するケーブル材と、有し、ケーブル材に張力を導入する屋根構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような屋根構造では、ケーブル材に張力を導入することによって、ドーム架構の曲げ応力の抑制や自重による変形の低減が可能である。
この屋根構造において、ドーム架構が平面視で四角形などの多角形であると、ドーム架構の外周材における上記多角形の角部となる部分は、ドーム架構の外周材の他の部分よりも低い位置に配置され、かつリング材よりも下方に配置される。このため、リング材とドーム架構の外周材の角部と連結するケーブル材は、リング材からドーム架構の外周材に向かって漸次下方に向かって延びている。
【0003】
また、出願人は、リング材の形状を八角形にして、リング材における八角形の角部に対応する位置とドーム架構の外周材における四角形の辺の長さ方向の中間部とを引張材で連結した屋根構造を提案している(特願2021-082924号)。
この屋根構造では、リング材とドーム架構の外周材の角部とを連結するケーブル材を設けていない。ケーブル材が連結されるドーム架構の外周材における四角形の辺の長さ方向の中間部は、リング部材よりも上方に配置される。このため、ケーブル材は、リング材からドーム架構の外周材に向かって漸次上方に向かって延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-21232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された屋根構造では、リング材とドーム架構の外周材の角部とを連結するケーブル材に張力を導入すると、リング材を下向きに引っ張る力が発生するため、ドーム架構における角部となる部分に局部座屈が発生しやすくなる。
【0006】
特願2021-082924号で提案された屋根構造では、リング材とドーム架構の外周材における角部とを連結するケーブル材が設けられていないため、特許文献1に開示された屋根構造に比べ角部の座屈耐力が向上するが、角部の局部座屈が先行して発生する虞がある。
【0007】
本発明は、角部の座屈耐力をより向上させることができる屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る屋根構造は、球面に沿って配置され、平面視で多角形の形状をなすドーム架構と、前記ドーム架構の下方に配置され、平面視で多角形の環状に形成されたリング材と、前記リング材と前記ドーム架構との間において鉛直方向に延び前記リング材と前記ドーム架構とを連結する複数の束材と、前記リング材と前記ドーム架構の外周端部とを連結する複数の引張材と、を備え、前記引張材は、前記リング材における前記多角形の角部に対応する位置と、前記ドーム架構の外周端部における前記多角形の辺の長さ方向の中間部に対応する位置と、を連結し、前記束材は、前記リング材における前記多角形の角部に対応する位置と前記ドーム架構とを連結する角部束材と、前記リング材における前記多角形の辺の中間部に対応する位置と前記ドーム架構とを連結する中間束材と、を有する。
【0009】
本発明では、中間束材を設けることにより、屋根構造の鉛直剛性を高めることができ、ケーブル材に張力が導入した際に、屋根構造の角部に中間束材からの突き上げ力を発生させることができる。これにより、屋根構造の角部に変形が集中することを防止でき、角部の座屈耐力をより向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る屋根構造では、前記リング材における前記多角形の外周に沿った方向に隣り合う前記束材を連結する斜材を更に有していてもよい。
【0011】
このような構成とすることにより、斜材の補剛効果によって屋根構造の鉛直剛性を更に高めることができ、ケーブル材に張力が導入した際に、屋根構造の角部に中間束材からの突き上げ力を発生させることができる。これにより、屋根構造の角部に変形が集中することを防止でき、角部の座屈耐力をより向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る屋根構造では、前記リング材の平面視の形状は、4つの短辺と4つの長辺とが1つずつ交互に配列された八角形であり、前記中間束材は、前記リング材における前記長辺に対応する長辺部の中間部と、前記ドーム架構とを連結してもよい。
【0013】
このような構成とすることにより、ケーブル材に張力が導入した際に、屋根構造の角部に中間束材からの突き上げ力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、屋根構造の角部の座屈耐力をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による屋根構造を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態による屋根構造を示す立面図である。
図3】ドーム架構、張弦トラス材、ケーブル材、束材、斜材の配置を示す平面図である。
図4】張弦トラス材、ケーブル材、束材、斜材の配置を示す斜視図である。
図5】張弦トラス材、ケーブル材、束材、斜材の配置を示す立面図である。
図6】従来の屋根構造を示す斜視図である。
図7】従来の屋根構造を示す立面図である。
図8】屋根構造のモデル(中間束材無し、斜材の無し)の一次座屈モードを示す画像である。
図9】屋根構造のモデル(中間束材有り、斜材の無し)の一次座屈モードを示す画像である。
図10】屋根構造のモデル(中間束材有り、斜材の有り)の一次座屈モードを示す画像である。
図11】本発明の実施形態の第1変形例による屋根構造を示す平面図である。
図12】本発明の実施形態の第2変形例による屋根構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による屋根構造について、図1図5に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態による屋根構造1は、ドーム架構2と、張弦リング材(リング材)3と、複数の張弦リング束材(束材)4と、複数の張弦リング斜材(斜材)5と、複数のケーブル材(引張材)6と、を有する。屋根構造1は、例えば運動競技施設等の大空間を有する建築物の屋根構造である。図2は、図1に示す矢印A方向から見た立面図である。
【0017】
以下の説明においでは、鉛直方向から見た平面視における屋根構造1の中心を中心Pと表記する。ドーム架構2は、球面に沿って配置されている。図1に示すように、ドーム架構2は、頂部リング材21と、複数の円周方向材22と、複数の円弧材23と、外周材(外周端部)24と、複数の放射方向材25と、複数の斜め方向材26と、を有している。本実施形態では、ドーム架構2は、いわゆる単層ドーム架構である。
【0018】
図3に示すように、ドーム架構2の平面視形状は、四角形である。本実施形態では、ドーム架構2の平面視形状は、正方形である。
図1に示すように、頂部リング材21および複数の円周方向材22は、平面視で中心Pを中心とした円形状の環状をしている。円弧材23は、平面視で中心Pを中心として円形状の環状の一部、つまり円弧状をなしている。
【0019】
円周方向材22は、頂部リング材21よりも外側(径方向外側)に配置されている。
円弧材23は、円周方向材22よりも外側(径方向の外側)に配置されている。頂部リング材21、円周方向材22および円弧材23は、同一面上(同一球面上)に配置されている。例えば、頂部リング材21はH型鋼からなる部材が接続されて構成され、円周方向材22および円弧材23は角管からなる部材が複数接続されて構成されている。
【0020】
外周材24は、平面視で中心Pを中心とした正方形の環状をしている。外周材24は、ドーム架構2の外形をなしている。例えば、外周材24はH型鋼からなる部材が複数接続されて構成されている。外周材24の正方形の互いに直交する辺の一方の辺が延びる方向をX方向と表記し、他方の辺が延びる方向をY方向と表記する。外周材24のうちの上記の一の辺に対応する部分を第1外周辺部241と表記し、上記の他方の辺に対向する部分を第2外周辺部242と表記する。第1外周辺部241と第2外周辺部242を併せて外周辺部244と表記することがある。
【0021】
外周材24には、複数の外周柱材27および複数の外周斜材28が固定されている。外周柱材27は、不図示の下部構造に設置されている。
【0022】
放射方向材25は、複数の円周方向材22と外周材24とを連結している。放射方向材25は、円周方向に間隔を有して複数配置されている。各放射方向材25の延長線上には、中心Pが配置されている。換言すると、放射方向材25は、放射線状に延びている。例えば、放射方向材25は、角管からなる部材が複数接続されて構成されている。
【0023】
斜め方向材26は、頂部リング材21と外周材24とを連結している。斜め方向材26は、曲線に沿って形成されている。例えば、斜め方向材26は、角管からなる部材が複数接続されて構成されている。
【0024】
図1図2図4図5に示すように、張弦リング材3は、ドーム架構2の下方に配置されている。
図4図5では、張弦リング材3、張弦リング束材4、張弦リング斜材5およびケーブル材6のみを示し、他の構成部材の図示を省略している。図1図5に示すように、張弦リング材3は、平面視で、多角形の環状に形成されている。本実施形態では、張弦リング材3の平面視形状は、中心Pを中心とした八角形の環状をしている。
【0025】
張弦リング材3の八角形の辺は、短辺と、短辺よりも長い長辺とが中心Pを中心に交互に配列されている。すなわち、張弦リング材3の八角形は、4つの短辺と4つの長辺とから構成されている。張弦リング材3における上記の短辺に対応する部分を短辺部31と表記し、長辺に対応する部分を長辺部32と表記する。4つの短辺部31は、それぞれ同じ長さである。4つの長辺部32は、それぞれ同じ長さである。
【0026】
図1および図2に示すように、張弦リング材3は、平面視で、ドーム架構2の外周材24の内側に配置されている。張弦リング材3は、4つの短辺部31のうちの2つの短辺部31(第1短辺部311)がX方向に延び、Y方向に対向して配置され、他の2つの短辺部31(第2短辺部312)がY方向に延び、X方向に対向して配置される。すなわち、張弦リング材3は、2つの第1短辺部311が外周材24の第1外周辺部241と平行に配置され、2つの第2短辺部312が外周材24の第2外周辺部242と平行に配置される。2つの第1短辺部311は、それぞれ第1外周辺部241のX方向の中央部とY方向に対向する位置に配置される。2つの第2短辺部312は、それぞれ第2外周辺部242のY方向の中央部とX方向に対向する位置に配置される。
【0027】
図1図2図4図5に示すように、張弦リング材3の長辺部32は、一方の端部が隣り合う第1短辺部311の端部と接続され、他方の端部が隣り合う第2短辺部312の端部と接続される。第1短辺部311と長辺部32との接続点および第2短辺部312と長辺部32との接続部を頂点部33(図2図4図5参照)とする。頂点部33は、張弦リング材(リング材)3の八角形の角に相当する。
例えば、短辺部31および長辺部32は、H型鋼などで構成されている。
張弦リング材3は、テンションリングとして機能し、ドーム架構2の外周材24が外側に広がろうとする力(スラスト力)を抗することができる。
【0028】
図2に示すように、張弦リング束材4は、ドーム架構2と張弦リング材3とを連結している。張弦リング束材4は、鉛直方向に延びている。張弦リング束材4は、例えば、円形鋼管や角形鋼管などの鋼材である。
張弦リング束材4は、ドーム架構2と張弦リング材3の頂点部33とを連結する角部束材41と、ドーム架構2と張弦リング材3の長辺部32の中央部とを連結する中間束材42と、を有する。
本実施形態では、角部束材41は、張弦リング材3の頂点部33の数に対応して8本設けられている。中間束材42は、張弦リング材3の長辺部32の数に対応して4本設けられている。
【0029】
張弦リング斜材5は、平面視で張弦リング材3の外周に沿って隣り合う張弦リング束材4の間に設けられている。張弦リング斜材5は、斜め方向に延びている。張弦リング斜材5は、隣り合う一方の張弦リング束材4の上端部と他方の張弦リング束材4の下端部との間、および隣り合う一方の張弦リング束材4の下端部と他方の張弦リング束材4の上端部との間それぞれに設けられている。隣り合う一方の張弦リング束材4の上端部と他方の張弦リング束材4の下端部との間に設けられる張弦リング束材4は、一方の張弦リング束材4の上端部と他方の張弦リング束材4の下端部とを連結している。隣り合う一方の張弦リング束材4の下端部と他方の張弦リング束材4の上端部との間に設けられる張弦リング束材4は、隣り合う一方の張弦リング束材4の下端部と他方の張弦リング束材4の上端部とを連結している。
張弦リング斜材5は、例えば、丸鋼などの鋼材である。張弦リング斜材5は、制震ダンパーであってもよい。
【0030】
図1に示すように、ケーブル材6は、ドーム架構2の外周材24と張弦リング材3とを連結している。図4に示すように、ケーブル材6の一端部は、張弦リング材3の頂点部33に接続されている。ケーブル材6の他端部は、外周材24の外周辺部244の中央部に接続されている。外周材24の角部243には、ケーブル材6は接続されていない。外周材24の角部243とは、第1外周辺部241と第2外周辺部242とがなす角部である。
【0031】
1つの外周辺部244には、それぞれ2本のケーブル材6が接続されている。1つの外周辺部244に接続された2本のケーブル材6は、張弦リング材3から1つの外周辺部244に向かうにしたがって次第に互いにわずかに離間するように配置されている。
【0032】
本実施形態では、ケーブル材6の数は、張弦リング材3の頂点部33の数に対応して8本である。例えば、ケーブル材6は、亜鉛めっき鋼より線で構成されている。
【0033】
図2に示すように、ケーブル材6は、外周側(外周材24側)に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。ケーブル材6に張力を加えられると、張弦リング材3は引っ張り上げられ、外周材24は内側(中心P側)に引っ張られている。換言すると、ケーブル材6に張力を加えることによって、外周材24が引き絞られる。
【0034】
次に、本実施形態による屋根構造の作用・効果について説明する。
本実施形態による屋根構造1では、ドーム架構2と張弦リング材3の長辺部32の中央部とが中間束材42で連結されているため、ケーブル材6に張力が導入した際に、屋根構造1の角部に中間束材42からの突き上げ力を発生させることができる。これにより、屋根構造1の鉛直剛性を高めることができ、屋根構造1の角部に変形が集中することを防止でき、角部の座屈耐力をより向上させることができる。
【0035】
本実施形態による屋根構造1では、隣り合う張弦リング束材4を連結する張弦リング斜材5を有する。
このような構成とすることにより、張弦リング斜材5の補剛効果によって屋根構造の鉛直剛性を更に高めることができ、ケーブル材6に張力が導入した際に、屋根構造1の角部に中間束材42からの突き上げ力を発生させることができる。これにより、屋根構造1の角部に変形が集中することを防止でき、角部の座屈耐力をより向上させることができる。
【0036】
本実施形態による屋根構造1では、張弦リング材3の平面視の形状は、4つの短辺と4つの長辺とが1つずつ交互に配列された八角形であり、中間束材42は、張弦リング材3における長辺に対応する長辺部の中間部と、ドーム架構2とを連結している。
このような構成とすることにより、ケーブル材6に張力が導入した際に、屋根構造1の角部に中間束材42からの突き上げ力を発生させることができる。
【0037】
ドーム架構が四角形である屋根構造のモデルを用いて、数値解析により補強による座屈耐力の向上効果を確認する。なお,解析は幾何非線形性を考慮する。荷重は固定荷重(鉄骨自重および屋根仕上荷重600N/m)を考慮する。柱脚はすべて並進・回転固定とする。
モデルは、中間束材42および張弦リング斜材5の両方が設けられていない屋根構造101のモデル(中間束材無し斜材無しモデル、図6図7参照)、中間束材42が設けられているが張弦リング斜材5が設けられていない屋根構造のモデル(中間束材有り斜材無しモデル)、中間束材42および張弦リング斜材5の両方が設けられている上記の実施形態と同様の屋根構造のモデル(中間束材有り斜材有りモデル)の3つである。
屋根構造の各部材断面リストを表1に示す。表1の外周リングは、上記の実施形態の外周材24(外周端部)に相当する。
【0038】
【表1】
【0039】
座屈解析結果を図8図10に示す。図8は、中間束材無し斜材無しモデルの1次座屈モードであり、座屈荷重倍率λ=5.55である。図9は、中間束材有り斜材無しモデルの1次座屈モードであり、座屈荷重倍率λ=5.79である。図10は、中間束材有り斜材有りモデルの1次座屈モードであり、座屈荷重倍率λ=7.47である。
各モデルの座屈荷重倍率(座屈耐力に相当)、中間束材無し斜材無しモデルとの座屈荷重倍率比および鉄骨重量比を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
中間束材42が設置された中間束材有り斜材無しモデルでは、中間束材無し斜材無しモデルに対して、座屈荷重倍率が4%増加することがわかる。さらに、中間束材42および張弦リング斜材5が設置された中間束材有り斜材有りモデルでは、中間束材無し斜材無しモデルに対して、座屈荷重倍率が35%増加することがわかる。
また、中間束材42および張弦リング斜材5が設置された中間束材有り斜材有りモデルでは、角部の局部座屈モードの発生を防止できることがわかる。
中間束材42および張弦リング斜材5を設けることによる鉄骨重量の増加率に比べ、座屈荷重倍率の増加率が高いため、安価で効果的な補強ができることを確認した。
【0042】
以上、本発明による屋根構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態の屋根構造1では、ドーム架構2は平面視で四角形であるが、四角形以外の多角形であってもよい。
また、上記の実施形態の屋根構造1では、張弦リング材3の平面視の形状は、4つの短辺と4つの長辺とが1つずつ交互に配列された八角形であるが、八角形以外の多角形であってもよく、各辺の長さが等しい多角形であってもよい。
【0043】
例えば、図11に示す屋根構造1Bのようにドーム架構2および張弦リング材3がいずれも平面視で六角形であってもよい。また、図12に示す屋根構造1Cのようにドーム架構2および張弦リング材3がいずれも平面視で八角形であってもよい。
このような場合も、張弦リング材3の平面視形状の多角形の角部に対応する部分に角部束材41が設けられ、張弦リング材3の平面視形状の多角形の辺の中間部に対応する部分に中間束材42が設けられる。
なお、ドーム架構2の平面視の多角形の角部の数は、張弦リング材3の平面視の多角形の角部の数以下とする。
【0044】
上記の実施形態の屋根構造1には、隣り合う角部束材41と中間束材42とを連結する張弦リング斜材5が設けられているが、中間束材42が設けられていれば、張弦リング斜材5が設けられていなくてもよい。
外周材24に設けられる外周斜材28は、図1図2では隣り合う外周柱材27の間全てに設けられているが、必要数が設けられていれば、隣り合う外周柱材27の間全てに設けず、間引かれて設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 屋根構造
2 ドーム架構
5 斜材
32 長辺部
41 角部束材
42 中間束材
243 角部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12