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特開2023-177954電解セル、電解装置、および電解セルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177954
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電解セル、電解装置、および電解セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/60 20210101AFI20231207BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20231207BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20231207BHJP
   C25B 9/75 20210101ALI20231207BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20231207BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20231207BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231207BHJP
【FI】
C25B9/60
C25B9/23
C25B9/65
C25B9/75
C25B9/77
C25B9/00 A
C25B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090933
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】祐延 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】田上 直人
(72)【発明者】
【氏名】向井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三好 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】田島 英彦
(72)【発明者】
【氏名】弦巻 茂
(72)【発明者】
【氏名】古川 翔一
(72)【発明者】
【氏名】浦下 靖崇
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA01
4K021CA05
4K021CA08
4K021DB06
4K021DB36
4K021DB40
4K021DB48
4K021DB53
4K021EA04
4K021EA07
(57)【要約】
【課題】性能を維持しつつ、製造コストの低減を図ることができる電解セル、電解装置、および電解セルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電解セルは、第1セパレータとイオン交換膜との間に配置された陰極と、第2セパレータとイオン交換膜との間に配置された陽極と、第1セパレータと第2セパレータとの間に配置されて収容空間を封止する封止部と、第1セパレータとイオン交換膜との間に配置されて陰極よりも外周側でイオン交換膜を支持し、封止部との間にイオン交換膜の皺を収容可能な第1空間を空けた第1支持部と、第2セパレータとイオン交換膜との間に配置されて陽極よりも外周側でイオン交換膜を支持し、封止部との間にイオン交換膜の皺を収容可能な第2空間を空けた第2支持部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セパレータと、
前記第1セパレータとの間に収容空間を空けて配置された第2セパレータと、
前記収容空間に配置されたイオン交換膜と、
前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された陰極と、
前記第2セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された陽極と、
前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に配置され、前記収容空間を封止した封止部と、
前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置され、前記陰極よりも外周側で前記イオン交換膜を支持し、前記封止部との間に前記イオン交換膜の皺を収容可能な第1空間を空けた第1支持部と、
前記第2セパレータと前記イオン交換膜との間に配置され、前記陽極よりも前記外周側で前記イオン交換膜を支持し、前記封止部との間に前記イオン交換膜の皺を収容可能な第2空間を空けた第2支持部と、
を備えた電解セル。
【請求項2】
前記第1支持部および前記第2支持部は、前記イオン交換膜の膨張時に前記イオン交換膜が前記外周側に伸びることを許容する強さで前記イオン交換膜を支持する、
請求項1に記載の電解セル。
【請求項3】
前記第1支持部は、前記陰極周囲の電解液が前記第1空間に漏れ出る程度の強さで前記イオン交換膜を支持し、
前記第2支持部は、前記陽極周囲の電解液が前記第2空間に漏れ出る程度の強さで前記イオン交換膜を支持する、
請求項1に記載の電解セル。
【請求項4】
前記封止部は、前記イオン交換膜の周端部を支持し、
前記第1支持部および前記第2支持部は、前記封止部と比べて、前記イオン交換膜を緩く支持する、
請求項1に記載の電解セル。
【請求項5】
前記第1支持部および前記第2支持部の材質は、前記封止部の材質と比べて柔らかい、
請求項1に記載の電解セル。
【請求項6】
前記第1支持部は、前記陰極に接しており、
前記第2支持部は、前記陽極に接している、
請求項1に記載の電解セル。
【請求項7】
前記第1支持部と前記陰極との間の隙間、および前記第2支持部と前記陽極との間の隙間の各々の大きさは、前記イオン交換膜の厚さの2倍未満である、
請求項1に記載の電解セル。
【請求項8】
前記第1空間および前記第2空間は、電解液を含む、
請求項1に記載の電解セル。
【請求項9】
前記第1支持部は、前記陰極を囲む環状であり、
前記第2支持部は、前記陽極を囲む環状である、
請求項1に記載の電解セル。
【請求項10】
請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載の電解セルと、
前記電解セルに電解液を供給する電解液供給部と、
前記電解セルに電圧を印加する電源部と、
を備えた電解装置。
【請求項11】
前記電解セルを含む複数の電解セルを有した電解セルスタックを備え、
前記複数の電解セルのなかで隣り合う2つの電解セルは、バイポーラプレートである前記第1セパレータまたは前記第2セパレータを共有する、
請求項10に記載の電解装置。
【請求項12】
第1セパレータと第2セパレータとの間に電解液が存在しない状態で、イオン交換膜、陰極、陽極、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間の収容空間を封止する封止部、前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置されて前記陰極よりも外周側で前記イオン交換膜を支持し、前記封止部との間に第1空間を空けた第1支持部、および、前記第2セパレータと前記イオン交換膜との間に配置されて前記陽極よりも前記外周側で前記イオン交換膜を支持し、前記封止部との間に第2空間を空けた第2支持部、を含む電解セルを組み立て、
前記電解セルを組み立てた後に、前記収容空間に前記電解液を注入する、
ことを含む電解セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解セル、電解装置、および電解セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、イオン交換膜中の犠牲糸の残存量の厳密な制御を必要とすることなく、寸法変動を制御しやすいイオン交換膜が開示されている。このイオン交換膜は、イオン交換基を有する含フッ素ポリマー層と、上記含フッ素ポリマー層の内部に設けられた補強糸および犠牲糸からなる補強材とを有する。
【0003】
特許文献2には、燃料電池用の膜電極接合体の製造方法として、高分子電解質膜の一方の面に少なくとも第1補強基材を含む第1補強層を額縁状に配置し、上記第1補強層で囲まれた開口部に第1電極触媒層を成膜する膜電極接合体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表WO2017/154925号公報
【特許文献2】特開2017-54598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、イオン交換膜は、電解液に浸漬された場合、膨張して皺を生じることがある。陰極と陽極との間の領域でイオン交換膜に皺が生じると、皺が発生した部位で抵抗が大きくなる。その結果、イオン交換膜の部分によって電流密度が異なり、電解セルの性能が低下する場合がある。
【0006】
そこで電解セルの製造方法としては、イオン交換膜に皺が発生することを抑制するため、イオン交換膜を予め電解液で濡らした状態で組み立てる湿式組立が採用される。しかしながら、湿式組立を行うためには、湿式組立に対応した設備が必要であり、製造コストが高くなる。また、湿式組立は時間を要するため、この観点でも製造コストが高くなる。
【0007】
一方で、高分子膜に皺が発生することを抑制するため、高分子膜に補強材を設ける場合、補強材の存在によって膜抵抗が高くなる。また、補強材を設ける場合、補強材によって高分子膜の表面に凹凸が生じて電極の接合や接触抵抗に悪い影響を及ぼすことがある。
【0008】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、性能を維持しつつ、製造コストの低減を図ることができる電解セル、電解装置、および電解セルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の電解セルは、第1セパレータと、前記第1セパレータとの間に収容空間を空けて配置された第2セパレータと、前記収容空間に配置されたイオン交換膜と、前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された陰極と、前記第2セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された陽極と、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に配置され、前記収容空間を封止した封止部と、前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置され、前記陰極よりも外周側で前記イオン交換膜を支持し、前記封止部との間に前記イオン交換膜の皺を収容可能な第1空間を空けた第1支持部と、前記第2セパレータと前記イオン交換膜との間に配置され、前記陽極よりも前記外周側で前記イオン交換膜を支持し、前記封止部との間に前記イオン交換膜の皺を収容可能な第2空間を空けた第2支持部と、を備える。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の電解装置は、電解セルと、前記電解セルに電解液を供給する電解液供給部と、前記電解セルに電圧を印加する電源部と、を備える。前記電解セルは、第1セパレータと、前記第1セパレータとの間に収容空間を空けて配置された第2セパレータと、前記収容空間に配置されたイオン交換膜と、前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された陰極と、前記第2セパレータと前記イオン交換膜との間に配置された陽極と、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に配置され、前記収容空間を封止した封止部と、前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置され、前記陰極よりも外周側で前記イオン交換膜を支持し、前記封止部との間に前記イオン交換膜の皺を収容可能な第1空間を空けた第1支持部と、前記第2セパレータと前記イオン交換膜との間に配置され、前記陽極よりも前記外周側で前記イオン交換膜を支持し、前記封止部との間に前記イオン交換膜の皺を収容可能な第2空間を空けた第2支持部と、を備える。
【0011】
上記課題を解決するために、本開示の電解セルの製造方法は、第1セパレータと第2セパレータとの間に電解液が存在しない状態で、イオン交換膜、陰極、陽極、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間の収容空間を封止する封止部、前記第1セパレータと前記イオン交換膜との間に配置されて前記陰極よりも外周側で前記イオン交換膜を支持し、前記封止部との間に第1空間を空けた第1支持部、および、前記第2セパレータと前記イオン交換膜との間に配置されて前記陽極よりも前記外周側で前記イオン交換膜を支持し、前記封止部との間に第2空間を空けた第2支持部、を含む電解セルを組み立て、前記電解セルを組み立てた後に、前記収容空間に前記電解液を注入する、ことを含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示の電解セル、電解装置、および電解セルの製造方法によれば、性能を維持しつつ、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施形態の電解装置の全体構成を示す概略構成図である。
図2】本開示の実施形態の電解セルを模式的に示す断面図である。
図3】本開示の実施形態の電解セルを示す分解斜視図である。
図4】本開示の実施形態の電解セルを示す断面図である。
図5図4中に示された電解セルのF5-F5線に沿う断面図である。
図6】本開示の実施形態の第1空間の大きさの例を示す図である。
図7】本開示の実施形態の電解セルの製造方法の流れを示す図である。
図8】本開示の実施形態の電解セルの作用を説明するための図である。
図9】本開示の実施形態の第1変形例の電解セルを示す断面図である。
図10】本開示の実施形態の第2変形例の電解セルを示す断面図である。
図11】本開示の実施形態の第3変形例の電解セルを示す断面図である。
図12】本開示の実施形態の第4変形例の電解セルを示す断面図である。
図13】本開示の実施形態の第5変形例の電解セルを示す断面図である。
図14】本開示の実施形態の第6変形例の電解セルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態の電解セル、電解装置、および電解セルの製造方法を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。本開示において「対向する」とは、ある方向で見た場合に2つの部材が重なることを意味し、上記2つの部材の間に別の部材(例えば別の層)が存在する場合も含み得る。
【0015】
先に図4を参照し、Z方向、X方向、およびY方向を定義する。Z方向は、後述する第1セパレータ41から第2セパレータ42に向かう方向である。X方向は、Z方向とは交差する(例えば直交する)方向であり、後述するイオン交換膜51の中央部Cからイオン交換膜51の一端部に向かう方向である。Y方向は、Z方向およびX方向とは交差する(例えば直交する)方向であり、例えば図4における紙面奥行方向である。本開示において「外形サイズ」とは、Z方向で見た場合における外形サイズ(すなわちX方向およびY方向に広がる外形サイズ)を意味する。
【0016】
(実施形態)
<1.電解装置の構成>
図1は、実施形態の電解装置1の全体構成を示す概略構成図である。電解装置1は、例えば、電解液に含まれる水を電気分解することで水素を生成する装置である。電解装置1は、例えば、アニオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)式の電解装置である。ただし、電解装置1は、上記例に限定されず、二酸化炭素を電解還元する装置など異なるタイプの電解装置でもよい。
【0017】
電解装置1は、例えば、電解セルスタック10と、電解液供給部20と、電源部30とを備える。
【0018】
(電解セルスタック)
電解セルスタック10は、複数の電解セル11の集合体である。例えば、電解セルスタック10は、複数の電解セル11が一方向に並べられることで形成される。各電解セル11は、陰極室Saと、陽極室Sbとを含む。電解セル11については、詳しく後述する。
【0019】
(電解液供給部)
電解液供給部20は、各電解セル11に電解液を供給する供給部である。電解液は、例えば、純水あるいはアルカリ水溶液である。電解液供給部20は、陰極側供給部20aと、陽極側供給部20bとを含む。
【0020】
陰極側供給部20aは、各電解セル11の陰極室Saに電解液を供給する供給部である。陰極側供給部20aは、例えば、水素気液分離装置21、第1ポンプ22、水素回収部23、第1電解液供給部24、および配管ラインL1,L2を含む。
【0021】
水素気液分離装置21は、電解液を貯留する。水素気液分離装置21の供給口は、配管ラインL1を介して電解セル11の陰極室Saに接続される。第1ポンプ22は、配管ラインL1の途中に設けられ、水素気液分離装置21に貯留された電解液を電解セル11の陰極室Saに向けて送る。
【0022】
水素気液分離装置21の戻り口は、配管ラインL2を介して電解セル11の陰極室Saに接続される。水素気液分離装置21には、電解セル11で生成された水素を含む電解液が電解セル11から流入する。水素気液分離装置21は、電解液に含まれる水素を分離する気液分離部を有する。水素気液分離装置21により電解液から分離された水素は、水素回収部23によって回収される。水素気液分離装置21には、第1電解液供給部24から電解液が補充される。
【0023】
一方で、陽極側供給部20bは、各電解セル11の陽極室Sbに電解液を供給する供給部である。陽極側供給部20bは、例えば、酸素気液分離装置26、第2ポンプ27、酸素回収部28、第2電解液供給部29、および配管ラインL3,L4を含む。
【0024】
酸素気液分離装置26は、電解液を貯留する。酸素気液分離装置26の供給口は、配管ラインL3を介して電解セル11の陽極室Sbに接続される。第2ポンプ27は、配管ラインL3の途中に設けられ、酸素気液分離装置26に貯留された電解液を電解セル11の陽極室Sbに向けて送る。
【0025】
酸素気液分離装置26の戻り口は、配管ラインL4を介して電解セル11の陽極室Sbに接続される。酸素気液分離装置26には、電解セル11で生成された酸素を含む電解液が電解セル11から流入する。酸素気液分離装置26は、電解液に含まれる酸素を分離する気液分離部を有する。酸素気液分離装置26により電解液から分離された酸素は、酸素回収部28によって回収される。酸素気液分離装置26には、第2電解液供給部29から電解液が補充される。
【0026】
(電源部)
電源部30は、電解セル11に電圧を印加する直流電源装置である。電源部30は、電解セル11の陽極と陰極との間に、電解液の電気分解に必要な直流電圧を印加する。
【0027】
<2.電解セルの構成>
<2.1 電解セルの基本構造>
次に、電解セル11について詳しく説明する。
図2は、電解セル11を模式的に示す断面図である。電解セル11は、例えば、第1セパレータ41、第2セパレータ42、および膜電極接合体43を含む。
【0028】
(第1セパレータ)
第1セパレータ41は、電解セル11の収容空間Sの一方の面を規定する部材である。収容空間Sは、後述する陰極室Saおよび陽極室Sbを含む空間である。第1セパレータ41は、例えば、矩形の板状であり、金属部材で形成される。第1セパレータ41は、例えば、後述する第1集電体61(図3参照)を介して電源部30からマイナス電圧が印加される。
【0029】
第1セパレータ41は、第1端部41e1(例えば下端部)と、第1端部41e1とは反対側に位置した第2端部41e2(例えば上端部)とを有する。第1セパレータ41の第1端部41e1には、上述した配管ラインL1が接続される。第1セパレータ41の第2端部41e2には、上述した配管ラインL2が接続される。第1セパレータ41は、後述する陰極室Saに面する第1内面41aを有する。第1内面41aには、配管ラインL1から供給される電解液が流れる第1流路FP1が形成されている。第1流路FP1は、例えば、第1内面41aに設けられた溝である。第1流路FP1を流れた電解液は、配管ラインL2を通じて電解セル11の外部に排出される。なお、図2に示される各構造(例えば流路構造など)は、あくまで例示であり、本実施形態の内容を限定するものではない。例えば、流路構造は、装置の大きさや目的、使用環境に応じて種々の構造が利用可能である。これは、他の図で示される各構造についても同様である。
【0030】
(第2セパレータ)
第2セパレータ42は、第1セパレータ41との間に収容空間Sを空けて配置され、収容空間Sの他方の面を規定する部材である。第2セパレータ42は、例えば、矩形の板状であり、金属部材で形成される。第2セパレータ42は、後述する第2集電体62(図3参照)を介して電源部30からプラス電圧が印加される。同じ電解セル11に含まれる第1セパレータ41と第2セパレータ42とは、一対のセパレータとして当該電解セル11の電解槽40を形成する。
【0031】
第2セパレータ42は、第1端部42e1(例えば下端部)と、第1端部42e1とは反対側に位置した第2端部42e2(例えば上端部)とを有する。第2セパレータ42の第1端部42e1には、上述した配管ラインL3が接続される。第2セパレータ42の第2端部42e2には、上述した配管ラインL4が接続される。第2セパレータ42は、後述する陽極室Sbに面する第2内面42aを有する。第2内面42aには、配管ラインL3から供給される電解液が流れる第2流路FP2が形成されている。第2流路FP2は、例えば、第2内面42aに設けられた溝である。第2流路FP2を流れた電解液は、配管ラインL4を通じて電解セル11の外部に排出される。
【0032】
なおここでは説明の便宜上、第1セパレータ41の第1内面41aが流路用の溝(第1流路FP1)を有し、第2セパレータ42の第2内面42aが流路用の溝(第2流路FP2)を有する構成について説明している。しかしながら、例えば電解セルスタック10(図1参照)に含まれる電解セル11の第1セパレータ41は、第1内面41aに加えて第1内面41aとは反対側の面41bにも同様の流路用の溝(第1流路FP1、図2中に2点鎖線で示す)を有したバイポーラプレートでもよい。また、電解セルスタック10に含まれる電解セル11の第2セパレータ42は、第2内面42aに加えて第2内面42aとは反対側の面42bにも同様の流路用の溝(第2流路FP2、図2中に2点鎖線で示す)を有したバイポーラプレートでもよい。なお、第1セパレータ41の両面に設けられる流路用の溝は、互いに形状や配置が異なってもよい。また、第2セパレータ42の両面に設けられる流路用の溝は、互いに形状や配置が異なってもよい。
【0033】
膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode. Assembly)43は、イオン交換膜、触媒、および給電体が組み立てられた構造体である。膜電極接合体43は、第1セパレータ41と第2セパレータ42との間に配置され、収容空間Sに位置する。膜電極接合体43は、例えば、イオン交換膜51、陰極触媒層52、陰極給電体53、陽極触媒層54、および陽極給電体55を含む。
【0034】
(イオン交換膜)
イオン交換膜51は、イオンを選択透過させる膜である。イオン交換膜51は、例えば、固体高分子電解質膜である。イオン交換膜51は、例えば、水酸化物イオン伝導性のあるアニオン交換膜(AEM)である。ただし、イオン交換膜51は、上記例に限定されず、上記例とは異なるタイプのイオン交換膜でもよい。イオン交換膜51は、例えば、矩形のシート状である。イオン交換膜51の外形サイズは、第1セパレータ41または第2セパレータ42の外形サイズよりも小さい。イオン交換膜51は、第1セパレータ41と第2セパレータ42との間に配置され、上述した収容空間Sに位置する。イオン交換膜51は、第1セパレータ41の第1内面41aと対向する第1面51aと、第1面51aとは反対側に位置し、第2セパレータ42の第2内面42aと対向する第2面51bとを有する。収容空間Sにおいて、イオン交換膜51の第1面51aと第1セパレータ41の第1内面41aとの間には、陰極室Saが規定される。収容空間Sにおいて、イオン交換膜51の第2面51bと第2セパレータ42の第2内面42aとの間には、陽極室Sbが規定される。
【0035】
陰極室Saでは、電解セル11に電圧が印加される場合に、下記の化学反応が起こり、電解液から水素が生成される。なお本出願「XXが生成される」とは、XXの生成に伴って他の物質が同時に生成される場合も含み得る。陰極室Saで生成された水酸化物イオンは、イオン交換膜51を通過して陰極室Saから陽極室Sbに移動する。
2HO+2e→H+2OH …(化1)
【0036】
陽極室Sbでは、電解セル11に電圧が印加される場合に、下記の化学反応が起こり、電解液から酸素が生成される。
2OH→1/2O+HO+2e …(化2)
【0037】
これにより、電解セル11全体で見た場合は、下記の化学反応が生じる。
O→H+1/2O …(化3)
【0038】
(陰極触媒層)
陰極触媒層52は、上述した陰極室Saでの化学反応を促進する層である。陰極触媒層52は、例えば、矩形のシート状である。本実施形態では、陰極触媒層52の外形サイズは、イオン交換膜51の外形サイズよりも小さい。陰極触媒層52は、陰極室Saに配置され、Z方向でイオン交換膜51と隣り合う。なお本出願で「隣り合う」とは、2つの部材が独立して隣り合う場合に限定されず、2つの部材のうち一方の部材の少なくとも一部が他方の部材に入り込む場合も含み得る。例えば、陰極触媒層52の一部は、イオン交換膜51の表面部に入り込んでもよい。本実施形態では、陰極触媒層52は、イオン交換膜51の第1面51aに設けられている。例えば、陰極触媒層52は、イオン交換膜51の第1面51aに当該陰極触媒層52の材料が塗布されることで形成される。陰極触媒層52は、第1セパレータ41および陰極給電体53を介して電源部30からマイナス電圧が印加され、電池セル11の陰極47の一部として機能する。陰極触媒層52の材質としては、上述した陰極室Saでの化学反応を促進する材質であればよく、種々の材質が利用可能である。
【0039】
(陰極給電体)
陰極給電体53は、第1セパレータ41に印加された電圧を陰極触媒層52に伝える電気接続部である。陰極給電体53は、陰極室Saに配置される。陰極給電体53は、第1セパレータ41の第1内面41aと陰極触媒層52との間に位置し、第1セパレータ41の第1内面41aと陰極触媒層52とにそれぞれ接する。なお、陰極給電体53の少なくとも一部は、第1セパレータ41または陰極触媒層52の少なくとも一方の少なくとも一部と重なり合ってもよい。陰極給電体53は、内部を電解液とガスが通過可能な構造を有する。陰極給電体53は、例えば、金属製のメッシュ構造体、焼結体、またはファイバーなどにより形成される。本実施形態では、陰極給電体53の外形サイズは、陰極触媒層52の外形サイズと同じである。本実施形態では、陰極触媒層52と陰極給電体53とにより、電池セル11の陰極47が形成されている。
【0040】
(陽極触媒層)
陽極触媒層54は、上述した陽極室Sbでの化学反応を促進する層である。陽極触媒層54は、例えば、矩形のシート状である。本実施形態では、陽極触媒層54の外形サイズは、イオン交換膜51の外形サイズよりも小さい。陽極触媒層54は、陽極室Sbに配置され、Z方向でイオン交換膜51と隣り合う。なお、例えば、陽極触媒層54の一部は、イオン交換膜51の表面部に入り込んでもよい。本実施形態では、陽極触媒層54は、イオン交換膜51の第2面51bに設けられている。例えば、陽極触媒層54は、イオン交換膜51の第2面51bに当該陽極触媒層54の材料が塗布されることで形成される。陽極触媒層54は、第2セパレータ42および陽極給電体55を介して電源部30からプラス電圧が印加され、電池セル11の陽極48の一部として機能する。陽極触媒層54の材質としては、上述した陽極室Sbでの化学反応を促進する材質であればよく、種々の材質が利用可能である。
【0041】
(陽極給電体)
陽極給電体55は、第2セパレータ42に印加された電圧を陽極触媒層54に伝える電気接続部である。陽極給電体55は、陽極室Sbに配置される。陽極給電体55は、第2セパレータ42の第2内面42aと陽極触媒層54との間に位置し、第2セパレータ42の第2内面42aと陽極触媒層54とにそれぞれ接する。なお、陽極給電体55の少なくとも一部は、第2セパレータ42または陽極触媒層54の少なくとも一方の少なくとも一部と重なり合ってもよい。陽極給電体55は、内部を電解液とガスが通過可能な構造を有する。陽極給電体55は、例えば、金属製のメッシュ構造体、焼結体、またはファイバーなどにより形成される。本実施形態では、陽極給電体55の外形サイズは、陽極触媒層54の外形サイズと同じである。本実施形態では、陽極触媒層54と陽極給電体55とにより、電池セル11の陽極48が形成されている。
【0042】
図3は、電解セル11を示す分解斜視図である。電解セル11は、上述した構成に加え、例えば、第1集電体61、第2集電体62、第1絶縁材63、第2絶縁材64、第1エンドプレート65、および第2エンドプレート66を含む。
【0043】
(第1集電体)
第1集電体61は、電源部30から印加されるマイナス電圧を第1セパレータ41に伝える電気接続部である。第1集電体61は、金属製の板部材(例えば銅板)である。第1集電体61は、例えば、電解セル11の収容空間Sとは反対側から第1セパレータ41に接し、第1セパレータ41に電気的に接続される。第1集電体61には、電解セル11での電気分解に必要なマイナス電圧が電源部30から印加される。なお、第1集電体61は、電解セルスタック10で互いに隣り合う2つの電解セル11によって共有されてもよい。
【0044】
(第2集電体)
第2集電体62は、電源部30から印加されるプラス電圧を第2セパレータ42に伝える電気接続部である。第2集電体62は、金属製の板部材(例えば銅板)である。第2集電体62は、例えば、電解セル11の収容空間Sとは反対側から第2セパレータ42に接し、第2セパレータ42に電気的に接続される。第2集電体62には、電解セル11での電気分解に必要なプラス電圧が電源部30から印加される。なお、第2集電体62は、電解セルスタック10で互いに隣り合う2つの電解セル11によって共有されてもよい。
【0045】
(第1絶縁材)
第1絶縁材63は、第1集電体61と第1エンドプレート65との間に位置する。第1絶縁材63の外形サイズは、例えば、第1集電体61の外形サイズと同じ、または第1集電体61の外形サイズよりも大きい。
【0046】
(第2絶縁材)
第2絶縁材64は、第2集電体62と第2エンドプレート66との間に位置する。第2絶縁材64の外形サイズは、例えば、第2集電体62の外形サイズと同じ、または第2集電体62の外形サイズよりも大きい。
【0047】
(第1エンドプレート)
第1エンドプレート65は、電解セル11の収容空間Sに対して、第1絶縁材63とは反対側に位置する。第1エンドプレート65の外形サイズは、例えば、第1絶縁材63の外形サイズよりも大きい。
【0048】
(第2エンドプレート)
第2エンドプレート66は、電解セル11の収容空間Sに対して、第2絶縁材64とは反対側に位置する。第2エンドプレート66の外形サイズは、例えば、第2絶縁材64の外形サイズよりも大きい。
【0049】
なお、電解セル11は、上述した構成に限定されない。例えば、電解セルスタック10において複数の電解セル11が並べて配置される場合、複数の電解セル11のなかで隣り合う2つの電解セル11は、それぞれバイポーラプレートである第1セパレータ41または第2セパレータ42を共有してもよい。この場合、隣り合う2つの電解セル11の間には、集電体(第1集電体61または第2集電体62)、絶縁材(第1絶縁材63または第2絶縁材64)、エンドプレート(第1エンドプレート65または第2エンドプレート66)は存在しなくてもよい。
【0050】
<2.2 電解セルの外周部の構造>
図4は、電解セル11を示す断面図である。本実施形態では、イオン交換膜51の外形サイズは、陰極触媒層52の外形サイズおよび陰極給電体53の外形サイズの各々よりも大きい。言い換えると、イオン交換膜51の外形サイズは、陰極47の外形サイズよりも大きい。イオン交換膜51は、膜電極接合体43の厚さ方向(Z方向)とは直交する方向(例えばX方向またはY方向)において、陰極47よりも外周側に突出している。本開示で「外周側」とは、膜電極接合体43の厚さ方向(Z方向)とは直交する方向(例えばX方向またはY方向)において、イオン交換膜51の中央部Cから離れる側を意味する。
【0051】
同様に、イオン交換膜51の外形サイズは、陽極触媒層54の外形サイズおよび陽極給電体55の外形サイズの各々よりも大きい。言い換えると、イオン交換膜51の外形サイズは、陽極48の外形サイズよりも大きい。イオン交換膜51は、膜電極接合体43の厚さ方向(Z方向)とは直交する方向(例えばX方向またはY方向)において、陽極48よりも外周側に突出している。
【0052】
図4に示すように、電解セル11は、例えば、封止部70と、位置規制部80と、支持部90とを有する。以下、これらについて説明する。
【0053】
(封止部)
封止部70は、第1セパレータ41と第2セパレータ42との間の収容空間Sを封止する部材である。封止部70は、第1セパレータ41と第2セパレータ42との間に配置される。封止部70の少なくとも一部は、イオン交換膜51の外周縁51eよりも外周側に位置し、イオン交換膜51の外周縁51eよりも外周側で収容空間Sの外周部を封止する。
本開示で「外周縁」とは、膜電極接合体43の厚さ方向(Z方向)とは直交する方向(例えばX方向またはY方向)において、イオン交換膜51の中央部Cから離れた縁を意味する。封止部70は、収容空間Sに収容された電解液が外部に漏れることを防止するパッキン部材(シール部材)である。
【0054】
本実施形態では、封止部70は、イオン交換膜51の周端部51fに接しており、イオン交換膜51の周端部51fを支持する。本開示で「周端部」とは、イオン交換膜51のなかで外周縁51eに沿う端部領域を意味する。封止部70は、例えば、イオン交換膜51の周端部51fをZ方向の両側から挟持することで、イオン交換膜51の周端部51fを支持する。
【0055】
本実施形態では、封止部70は、第1封止部71と、第2封止部72とを含む。第1封止部71および第2封止部72の各々は、収容空間Sに収容された電解液が外部に漏れることを防止するパッキン部材(シール部材)である。ただし、第1封止部71と第2封止部72とは、一体に形成されてもよい。すなわち、第1封止部71と第2封止部72とは、1つの部材であってもよい。
【0056】
(第1封止部)
第1封止部71は、陰極側の封止部である。第1封止部71は、イオン交換膜51の周端部51fに沿う環状(例えば枠状)に形成される(図5参照)。ただし本開示で「環状」とは、枠状に限定されず、円環状やその他形状の環状でもよい。第1封止部71は、例えば、第1部分71aと、第2部分71bとを含む。
【0057】
第1部分71aは、イオン交換膜51の外周縁51eよりも外周側に位置する。第1部分71aは、第1セパレータ41の第1内面41aと第2封止部72との間に挟まれて圧縮され、収容空間Sの外周側の一部を封止する。
【0058】
第2部分71bは、イオン交換膜51の外周縁51eよりも内周側に位置する。本開示で「内周側」とは、イオン交換膜51の中央部Cから見て内側(中央部Cに近い側)を意味する。第2部分71bは、第1セパレータ41の第1内面41aとイオン交換膜51の第1面51aとの間に挟まれて圧縮され、収容空間Sの外周側の一部を封止する。第2部分71bは、イオン交換膜51の周端部51fにおいてイオン交換膜51の第1面51aに接しており、イオン交換膜51の周端部51fを支持する。本実施形態では、第1封止部71は、イオン交換膜51の周端部51fに沿う環状(例えば枠状)に形成され、矩形であるイオン交換膜51の四辺を支持する。
【0059】
なお、第1封止部71は、第1部分71aと第2部分71bとの境界に、イオン交換膜51を収容するための段差71hが予め設けられてもよく、段差71hが設けられていなくてもよい。段差71hが予め設けられていない場合、段差71hは、第1封止部71の第2部分71bが、第1セパレータ41とイオン交換膜51との間で圧縮されることで形成されてもよい。
【0060】
(第2封止部)
第2封止部72は、陽極側の封止部である。第2封止部72は、第1封止部71と同様に、イオン交換膜51の周端部51fに沿う環状(例えば枠状)に形成される。第2封止部72は、例えば、第1部分72aと、第2部分72bとを含む。
【0061】
第1部分72aは、イオン交換膜51の外周縁51eよりも外周側に位置する。第1部分72aは、第2セパレータ42の第2内面42aと第1封止部71との間に挟まれて圧縮され、収容空間Sの外周側の一部を封止する。
【0062】
第2部分72bは、イオン交換膜51の外周縁51eよりも内周側に位置する。第2部分72bは、第2セパレータ42の第2内面42aとイオン交換膜51の第2面51bとの間に挟まれて圧縮され、収容空間Sの外周側の一部を封止する。第2部分72bは、イオン交換膜51の周端部51fにおいてイオン交換膜51の第2面51bに接しており、イオン交換膜51の周端部51fを支持する。本実施形態では、第2封止部72は、イオン交換膜51の周端部51fに沿う環状(例えば枠状)に形成され、矩形であるイオン交換膜51の四辺を支持する。
【0063】
なお、第2封止部72は、第1部分72aと第2部分72bとの境界に、イオン交換膜51を収容するための段差72hが予め設けられてもよく、段差72hが設けられていなくてもよい。段差72hが予め設けられていない場合、段差72hは、第2封止部72の第2部分72bが、第2セパレータ42とイオン交換膜51との間で圧縮されることで形成されてもよい。
【0064】
(位置規制部)
位置規制部80は、封止部70の外周側に配置され、封止部70が外周側に外れることを抑制する部材(ストッパ)である。位置規制部80は、例えば、第1位置規制部81と、第2位置規制部82とを有する。
【0065】
(第1位置規制部)
第1位置規制部81は、第1封止部71が外周側に外れないように第1封止部71を固定する固定部である。第1位置規制部81は、第1セパレータ41に固定され、第1封止部71に外周側から接する。電解セル11の製造時に、第1封止部71は、第1位置規制部81に当接させられることで位置合わせが行われる。なお、第1封止部71が第1セパレータ41に固定されるなど異なる構成によって第1封止部71の外れ防止や位置合わせが行われる場合は、第1位置規制部81は省略されてもよい。
【0066】
(第2位置規制部)
第2位置規制部82は、第2封止部72が外周側に外れないように第2封止部72を固定する固定部である。第2位置規制部82は、第2セパレータ42に固定され、第2封止部72に外周側から接する。電解セル11の製造時に、第2封止部72は、第2位置規制部82に当接させられることで位置合わせが行われる。なお、第2封止部72が第2セパレータ42に固定されるなど異なる構成によって第2封止部72の外れ防止や位置合わせが行われる場合、第2位置規制部82は省略されてもよい。
【0067】
(支持部)
支持部90は、電解セル11の内部でイオン交換膜51を支持する部材である。支持部90は、第1セパレータ41と第2セパレータ42との間に配置される。支持部90は、イオン交換膜51の外周縁51eよりも内周側に位置し、イオン交換膜51を支持する。支持部90は、例えば、第1支持部91と、第2支持部92とを含む。
【0068】
(第1支持部)
第1支持部91は、陰極側の支持部である。第1支持部91は、イオン交換膜51の外周縁51eよりも内周側に位置する。第1支持部91は、第1セパレータ41の第1内面41aとイオン交換膜51の第1面51aとの間に配置される。第1支持部91は、陰極47よりも外周側に位置する。第1支持部91は、陰極47よりも外周側でイオン交換膜51の第1面51aに接しており、陰極47よりも外周側でイオン交換膜51を支持する。第1支持部91は、例えば、第1セパレータ41とイオン交換膜51との間に挟まれて圧縮されてイオン交換膜51を支持する。ただし、第1支持部91は、第1セパレータ41とイオン交換膜51との間で圧縮されなくてもよい。第1支持部91は、例えば、パッキン部材(シール部材)である。ただし、第1支持部91は、パッキンとしては機能せずに、陰極47周囲の電解液が後述する第1空間S1に漏れることを許容してよい。
【0069】
本実施形態では、第1支持部91は、外周側から陰極47に接している。例えば、第1支持部91は、外周側から陰極給電体53に接している。例えば、第1支持部91の断面形状は、イオン交換膜51に接する第1平面部101aと、陰極給電体53に接する第2平面部101bとを含む矩形状である。
【0070】
第1支持部91は、封止部70との間に第1空間S1を空けて配置されている。第1空間S1は、イオン交換膜51の膨張時にイオン交換膜51に生じる皺を収容可能(吸収可能)な空間である。この内容については詳しく後述する。本実施形態では、第1空間S1は、電解液を含む。例えば、第1空間S1は、電解液で満たされている。ただし、第1空間S1は、電解液を含まなくてもよい。
【0071】
図5は、図4中に示された電解セル11のF5-F5線に沿う断面図である。第1支持部91は、イオン交換膜51の周端部51fに沿う環状(例えば枠状)に形成される。第1支持部91は、陰極47を囲む環状に形成されている。本実施形態では、第1支持部91は、陰極47の全周において、外周側から陰極47に接している。第1空間S1は、封止部70と第1支持部91の間に規定される空間として、イオン交換膜51の周端部51fに沿う環状(例えば枠状)に形成される。
【0072】
(第2支持部)
図4に戻り、第2支持部92について説明する。第2支持部92は、陽極側の支持部である。第2支持部92は、イオン交換膜51の外周縁51eよりも内周側に位置する。第2支持部92は、第2セパレータ42の第2内面42aとイオン交換膜51の第2面51bとの間に配置される。第2支持部92は、陽極48よりも外周側に位置する。第2支持部92は、陽極48よりも外周側でイオン交換膜51の第2面51bに接しており、陽極48よりも外周側でイオン交換膜51を支持する。第2支持部92は、例えば、第2セパレータ42とイオン交換膜51との間に挟まれて圧縮されてイオン交換膜51を支持する。ただし、第2支持部92は、第2セパレータ42とイオン交換膜51との間で圧縮されなくてもよい。第2支持部92は、例えば、パッキン部材(シール部材)である。ただし、第2支持部92は、パッキンとしては機能せずに、陽極48周囲の電解液が後述する第2空間S2に漏れることを許容してよい。
【0073】
本実施形態では、第2支持部92は、外周側から陽極48に接している。例えば、第2支持部92は、外周側から陽極給電体55に接している。本実施形態では、第2支持部92の断面形状は、イオン交換膜51に接する第1平面部102aと、陽極給電体55に接する第2平面部102bとを含む矩形状である。
【0074】
第2支持部92は、封止部70との間に第2空間S2を空けて配置されている。第2空間S2は、第1空間S1と同様に、イオン交換膜51の膨張時にイオン交換膜51に生じる皺を収容可能(吸収可能)な空間である。本実施形態では、第2空間S2は、電解液を含む。例えば、第2空間S2は、電解液で満たされている。ただし、第2空間S2は、電解液を含まなくてもよい。
【0075】
第2支持部92は、第1支持部91と同様に、イオン交換膜51の周端部51fに沿う環状(例えば枠状)に形成される。第2支持部92は、陽極48を囲む環状に形成されている。例えば、第2支持部92は、陽極48の全周において、外周側から陽極48に接している。第2空間S2は、封止部70と第2支持部92の間に規定される空間として、イオン交換膜51の周端部51fに沿う環状(例えば枠状)に形成される。
【0076】
(第1支持部および第2支持部による支持)
次に、イオン交換膜51に対する第1支持部91および第2支持部92による支持について説明する。第1支持部91および第2支持部92は、イオン交換膜51の膨張時にイオン交換膜51が外周側に伸びることを許容する強さでイオン交換膜51を支持する。これにより、イオン交換膜51の膨張時にイオン交換膜51に生じる皺を、第1空間S1および第2空間S2に集中して発生させることできる。
【0077】
本実施形態では、第1支持部91は、例えばパッキン部材(シール部材)である。ただし、第1支持部91は、陰極47周囲の電解液が第1空間S1に漏れ出る程度の強さでイオン交換膜51を支持している。同様に、第2支持部92は、例えばパッキン部材(シール部材)である。ただし、第2支持部92は、陽極48周囲の電解液が第2空間S2に漏れ出る程度の強さでイオン交換膜51を支持している。
【0078】
本実施形態では、第1支持部91および第2支持部92は、封止部70と比べて、イオン交換膜51を緩く支持している。「緩く支持」とは、イオン交換膜51に対する接触圧が小さいことを意味する。
【0079】
本実施形態では、第1支持部91および第2支持部92の材質(以下「支持部90の材質」と称する)は、封止部70の材質と比べて柔らかい材質が用いられる。封止部70の材質は、例えば、フッ素ゴムである。封止部70の硬さは、例えば、JIS-Aで規定されている硬さにおいて、70±5である。一方で、支持部90の材質は、例えば、エチレンプロピレンゴムである。支持部90の硬さは、例えば、JIS-Aで規定されている硬さで、40±5である。
【0080】
次に、図5を参照し、第1空間S1および第2空間S2の大きさについて説明する。なお、本実施形態では、第1空間S1と第2空間S2の大きさは同じであるので、以下では、第1空間S1について代表して説明する。
【0081】
図5に示すように、イオン交換膜51の幅の半分をW1、第1空間S1の幅をW2と定義する。「イオン交換膜51の幅」とは、例えば、イオン交換膜51のX方向(またはY方向)の寸法を意味する。例えば、「イオン交換膜51の幅」とは、矩形状のイオン交換膜51の一辺の長さを意味する。「第1空間S1の幅」とは、X方向(またはY方向)における第1空間S1の寸法を意味する。例えば、「第1空間S1の幅」とは、第1封止部71と第1支持部91との間の距離を意味する。
【0082】
ここで本発明者らの実験により、本実施形態の電解セル11の構成では、イオン交換膜51は、陰極47および陽極48の間に挟まれるためZ方向の伸びが制限され、X方向およびY方向に伸び、X方向およびY方向の膨潤率が2%以上、10%未満になることが確認されている。そのため本実施形態では、第1空間S1の幅W2は、イオン交換膜51の幅の半分である寸法W1の2%以上、10%以下に設定される。
【0083】
図6は、第1空間S1の大きさの例を示す図である。例えば、上記寸法W1が25mmである場合、第1空間S1の幅W2は、1mm以上、3mm以下に設定される。上記寸法W1が125mmである場合、第1空間S1の幅W2は、3mm以上、13mm以下に設定される。上記寸法W1が500mmである場合、第1空間S1の幅W2は、10mm以上、50mm以下に設定される。なお、他の寸法についても同様である。
【0084】
<3.製造方法>
次に、電解セル11および電解セルスタック10の製造方法について説明する。
図7は、電解セル11の製造方法の流れを示す断面図である。まず、図7中の(a)に示すように、イオン交換膜51の第1面51aに陰極触媒層52が設けられ、イオン交換膜51の第2面51bに陽極触媒層54が設けられる。次に、陰極触媒層52に陰極給電体53が重ねられ、陽極触媒層54に陽極給電体55が重ねられた状態で、陰極給電体53、陰極触媒層52、イオン交換膜51、陽極触媒層54、および陽極給電体55が加圧される。これにより、膜電極接合体43が準備される。
【0085】
次に、図7中の(b)に示すように、第1セパレータ41に第1封止部71、第1位置規制部81、および第1支持部91が取り付けられる。これにより、第1セパレータ41、第1封止部71、第1位置規制部81、および第1支持部91を含む第1セパレータ組立体U1が準備される。同様に、第2セパレータ42に第2封止部72、第2位置規制部82、および第2支持部92が取り付けられる。これにより、第2セパレータ42、第2封止部72、第2位置規制部82、および第2支持部92を含む第2セパレータ組立体U2が準備される。
【0086】
次に、図7中の(c)に示すように、電解液が存在しない状態での乾式組み立てにより、電解セル11が組み立てられる。すなわち、第1セパレータ41と第2セパレータ42との間に電解液が存在しない状態で、第1セパレータ組立体U1と第2セパレータ組立体U2との間に膜電極接合体43が挟まれ、不図示の連結部材により第1セパレータ組立体U1と第2セパレータ組立体U2とが連結される。これにより、電解セル11が組み立てられる。
【0087】
次に、図7中の(d)に示すように、電解セル11が組み立てられた後に、電解セル11内の収容空間Sに電解液が注入される。これにより、電解セル11が完成する。
【0088】
なお本実施形態では、上述した図7中の(a)~(d)の作業は、電解セルスタック10に含まれる複数の電解セル11について同時に行われる。
【0089】
<4.作用>
図8は、本実施形態の電解セル11の作用を説明するための図である。本実施形態では、第1支持部91および第2支持部92は、イオン交換膜51が外周側に移動可能な強さでイオン交換膜51を緩く支持している。また、第1支持部91と封止部70との間には、イオン交換膜51の皺を収容可能な第1空間S1が設けられている。同様に、第2支持部92と封止部70との間には、イオン交換膜51の皺を収容可能な第2空間S2が設けられている。このため、電解セル11が組み立てられた後に電解セル11内の収容空間Sに電解液が注入され、イオン交換膜51が膨張する膨張時には、イオン交換膜51が第1支持部91および第2支持部92に案内されて外周側に移動するとともに、イオン交換膜51に生じる皺(図8中に符号wで示す)は第1空間S1と第2空間S2とのうち少なくとも一方に収容される。このため、イオン交換膜51のなかで陰極47と陽極48との間に位置する領域で皺が発生することが抑制される。なお、第1空間S1および第2空間S2に発生した皺はそのまま残された状態で、電解セル11は使用可能である。
【0090】
また、本実施形態では、イオン交換膜51は、陰極47の外周側で第1支持部91によって支持されている。このため、イオン交換膜51の膨張時に陰極47の近傍でイオン交換膜51が折れ曲がり、陰極47の角(例えば陰極給電体53の角)との接触でイオン交換膜51が損傷することを抑制することができる。同様に、イオン交換膜51は、陽極48の外周側で第2支持部92によって支持されている。このため、イオン交換膜51の膨張時に陽極48の近傍でイオン交換膜51が折れ曲がり、陽極48の角(例えば陽極給電体55の角)との接触でイオン交換膜51が損傷することを抑制することができる。これにより、電解セル11の性能を維持しやすくなる。
【0091】
<5.利点>
本実施形態では、電解セル11は、第1セパレータ41と第2セパレータ42との間に配置されて収容空間Sを封止する封止部70と、第1セパレータ41とイオン交換膜51との間に配置され、陰極47よりも外周側でイオン交換膜51を支持し、封止部70との間にイオン交換膜51の皺を収容可能な第1空間S1を空けた第1支持部91と、第2セパレータ42とイオン交換膜51との間に配置され、陽極48よりも外周側でイオン交換膜51を支持し、封止部70との間にイオン交換膜51の皺を収容可能な第2空間S2を空けた第2支持部92と、を備える。
【0092】
このような構成によれば、電解液が存在しない状態での乾式組み立てによっても、陰極47と陽極48との間でイオン交換膜51に皺が発生することを抑制しながら電解セル11を組み立てることができる。その結果、湿式組立に対応した設備が不要になり、製造コストの低減を図ることができる。また、湿式組立は時間を要するため、乾式組立を採用することで、作業時間の観点でも製造コストの低減を図ることができる。
【0093】
また、上記構成によれば、イオン交換膜51に補強材を設けることが不要になる、またはその必要が小さくなる。その結果、補強材によってイオン交換膜51の膜抵抗が高まることや、補強材によってイオン交換膜51の表面に凹凸が生じて電極の接合や接触抵抗に悪い影響が生じることなどを抑制することができる。これらにより、電解セル11の性能を維持しつつ、製造コストの低減を図ることができる。
【0094】
<6.変形例>
次に、いくつかの変形例について説明する。なお各変形例において以下に説明する以外の構成は、上述した実施形態の構成と同じである。
【0095】
<6.1 第1変形例>
図9は、第1変形例の電解セル11を示す断面図である。本変形例では、第1支持部91と陰極47との間(例えば、第1支持部91と陰極給電体53との間)には、第1隙間m1が存在する。第1支持部91と陰極47とが並ぶ方向における第1隙間m1の大きさ(幅)は、イオン交換膜51の厚さtの2倍未満である。
【0096】
同様に、第2支持部92と陽極48との間(例えば、第2支持部92と陽極給電体55との間)には、第2隙間m2が存在する。第2支持部92と陽極48とが並ぶ方向における第2隙間m2の大きさ(幅)は、イオン交換膜51の厚さの2倍未満である。
【0097】
このような構成によれば、イオン交換膜51の膨張時に陰極47または陽極48の近傍でイオン交換膜51が折れ曲がり、陰極47または陽極48の角でイオン交換膜51が損傷することを抑制することができる。
【0098】
<6.2 第2変形例>
図10は、第2変形例の電解セル11を示す断面図である。本変形例では、第1支持部91は、第1支持部91と陰極47との間に、第1曲面部111を有する。第1曲面部111は、イオン交換膜51の第1面51aと陰極47(例えば陰極給電体53)とによって規定される第1角部C1に対応して配置され、イオン交換膜51の第1面51aおよび陰極47(例えば陰極給電体53)に面する。第1曲面部111は、第1角部C1に対して凸となる曲面を有する。第1曲面部111は、第1角部C1から離れている。本変形例では、第1支持部91は、断面形状が円状または楕円状のOリングによって当該第1支持部91が形成されることで、第1曲面部111を有する。
【0099】
同様に、第2支持部92は、第2支持部92と陽極48との間に、第2曲面部112を有する。第2曲面部112は、イオン交換膜51の第2面51bと陽極48(例えば陽極給電体55)とによって規定される第2角部C2に対応して配置され、イオン交換膜51の第2面51bおよび陽極48(例えば陽極給電体55)に面する。第2曲面部112は、第2角部C2に対して凸となる曲面を有する。第2曲面部112は、第2角部C2から離れている。本変形例では、第2支持部92は、断面形状が円状または楕円状のOリングによって当該第2支持部92が形成されることで、第2曲面部112を有する。
【0100】
このような構成によれば、イオン交換膜51の膨張時においてイオン交換膜51が外周側に膨張して移動する場合、イオン交換膜51が第1支持部91および第2支持部92の角などに引っ掛かりにくく、イオン交換膜51が外周側にスムーズに移動することができる。これにより、陰極47と陽極48との間でイオン交換膜51に皺が発生することをより確実に抑制することができる。
【0101】
<6.3 第3変形例>
図11は、第3変形例の電解セル11を示す断面図である。本変形例では、第1支持部91は、第2変形例と同様に、第1曲面部111を有する。本変形例では、第1支持部91は、角部に円弧部を有する矩形状の断面形状を有する部材によって当該第1支持部91が形成されることで、第1曲面部111を有する。
【0102】
また、第2支持部92は、第2変形例と同様に、第2曲面部112を有する。本変形例では、第2支持部92は、角部に円弧部を有する矩形状の断面形状を有する部材によって当該第1支持部91が形成されることで、第2曲面部112を有する。
【0103】
このような構成によれば、第2変形例と同様に、イオン交換膜51の膨張時においてイオン交換膜51が外周側に膨張して移動する場合、イオン交換膜51が第1支持部91および第2支持部92の角などに引っ掛かりにくく、イオン交換膜51が外周側にスムーズに移動することができる。これにより、陰極47と陽極48との間でイオン交換膜51に皺が発生することをより確実に抑制することができる。
【0104】
<6.4 第4変形例>
図12は、第4変形例の電解セル11を示す断面図である。本変形例では、第1支持部91は、第1支持部91と陰極47との間に、第1傾斜部121を有する。第1傾斜部121は、イオン交換膜51の第1面51aと陰極47(例えば陰極給電体53)とによって規定される第1角部C1に対応して配置され、イオン交換膜51の第1面51aおよび陰極47(例えば陰極給電体53)に面する。第1傾斜部121は、例えば、第1角部C1に対して傾斜した平面を有する。第1傾斜部121は、第1角部C1から離れている。本変形例では、第1支持部91は、角部が面取りされた矩形状の断面形状を有する部材によって当該第1支持部91が形成されることで、第1傾斜部121を有する。
【0105】
同様に、第2支持部92は、第2支持部92と陽極48との間に、第2傾斜部122を有する。第2傾斜部122は、イオン交換膜51の第2面51bと陽極48(例えば陽極給電体55)とによって規定される第2角部C2に対応して配置され、イオン交換膜51の第2面51bおよびと陽極48(例えば陽極給電体55)に面する。第2傾斜部122は、例えば、第2角部C2に対して傾斜した平面を有する。本変形例では、第2支持部92は、角部が面取りされた矩形状の断面形状を有する部材によって当該第2支持部92が形成されることで、第2傾斜部122を有する。
【0106】
このような構成によれば、第2変形例と同様に、イオン交換膜51の膨張時においてイオン交換膜51が外周側に膨張して移動する場合、イオン交換膜51が第1支持部91および第2支持部92の角などに引っ掛かりにくく、イオン交換膜51が外周側にスムーズに移動することができる。これにより、陰極47と陽極48との間でイオン交換膜51に皺が発生することをより確実に抑制することができる。
【0107】
<6.5 第5変形例>
図13は、第5変形例の電解セル11を示す断面図である。イオン交換膜51は、膨潤率に関してX方向およびY方向に関する異方性を有することがある。図13に示す例では、イオン交換膜51のX方向の膨潤率がY方向の膨潤率と比べて大きく、イオン交換膜51がX方向に伸びやすい例を示す。
【0108】
本変形例では、X方向における第1空間S1の幅W2(幅W2A)は、Y方向における第1空間S1の幅W2(幅W2B)よりも大きく設定される。これは、第2空間S2についても同様である。
【0109】
このような構成によれば、イオン交換膜51の膨潤率がX方向とY方向とで異なる場合であっても、イオン交換膜51に皺が発生することをより確実に抑制することができる。
【0110】
<6.6 第6変形例>
図14は、第6変形例の電解セル11を示す断面図である。本変形例では、第1支持部91は、イオン交換膜51の周端部51fの全周に沿って設けられることに代えて、矩形状のイオン交換膜51の4つの角部131,132,133,134に対応して設けられている。すなわち、第1支持部91は、イオン交換膜51の角部131に対応する第1部分141、イオン交換膜51の角部132に対応する第2部分142、イオン交換膜51の角部133に対応する第3部分143、およびイオン交換膜51の角部134に対応する第4部分144を有する。これら第1から第4の部分141,142,143,144は、互いに分断されている。
【0111】
第2支持部92は、第1支持部91と同様に、イオン交換膜51の周端部51fの全周に沿って設けられることに代えて、矩形状のイオン交換膜51の4つの角部131,132,133,134に対応して設けられている。すなわち、第2支持部92は、イオン交換膜51の角部131に対応する第1部分141、イオン交換膜51の角部132に対応する第2部分142、イオン交換膜51の角部133に対応する第3部分143、およびイオン交換膜51の角部134に対応する第4部分144を有する。これら第1から第4の部分141,142,143,144は、互いに分断されている。
【0112】
ここで、イオン交換膜51のなかでは、矩形状のイオン交換膜51の4辺の各中央部と比べて、4つの角部131,132,133,134で皺が発生する可能性が高い。このため、本変形例のように、イオン交換膜51の角部131,132,133,134の周囲でイオン交換膜51が支持されていると、イオン交換膜51の皺の発生を抑制することができる場合がある。
【0113】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更なども含まれる。例えば、上述した実施形態では、封止部70は、イオン交換膜51の周端部51fを支持している。ただし、封止部70がイオン交換膜51の周端部51fを支持することは必須ではない。
【0114】
<付記>
各実施形態に記載の電解セル11、電解装置1、および電解セル11の製造方法は、例えば以下のように把握される。
【0115】
(1)第1態様の電解セル11は、第1セパレータ41と、第2セパレータ42と、イオン交換膜51と、陰極47と、陽極48と、封止部70と、第1支持部91と、第2支持部92とを備える。第2セパレータ42は、第1セパレータ41との間に収容空間Sを空けて配置される。イオン交換膜51は、収容空間Sに配置される。陰極47は、第1セパレータ41とイオン交換膜51との間に配置される。陽極48は、第2セパレータ42とイオン交換膜51との間に配置される。封止部70は、第1セパレータ41と第2セパレータ42との間に配置され、収容空間Sを封止する。第1支持部91は、第1セパレータ41とイオン交換膜51との間に配置され、陰極47よりも外周側でイオン交換膜51を支持し、封止部70との間にイオン交換膜51の皺を収容可能な第1空間S1を空けている。第2支持部92は、第2セパレータ42とイオン交換膜51との間に配置され、陽極48よりも外周側でイオン交換膜51を支持し、封止部70との間にイオン交換膜51の皺を収容可能な第2空間S2を空けている。
【0116】
このような構成によれば、電解セル11が組み立てられた後に電解セル11内の収容空間Sに電解液が注入され、イオン交換膜51の膨張時にイオン交換膜51が第1支持部91および第2支持部92に案内されて外周側に膨張し、第1空間S1と第2空間S2とのうち少なくとも一方にイオン交換膜51の皺が吸収される。このため、イオン交換膜51のなかで陰極47と陽極48との間の領域で皺が発生することが抑制される。また、第1支持部91および第2支持部92によって、イオン交換膜51の膨張時に陰極47または陽極48の近傍でイオン交換膜51が折れ曲がり、陰極47または陽極48の角などでイオン交換膜51が損傷することが抑制される。その結果、電解液が存在しない状態での乾式組み立てにより、電解セル11を組み立てることができる。このため、湿式組立に対応した設備が不要になり、製造コストの低減を図ることができる。また、湿式組立は時間を要するため、乾式組立を採用することで、作業時間の観点でも製造コストの低減を図ることができる。これにより、性能を維持しつつ、製造コストの低減を図ることができる。
【0117】
(2)第2態様の電解セル11は、(1)の電解セル11であって、第1支持部91および第2支持部92は、イオン交換膜51の膨張時にイオン交換膜51が外周側に伸びることを許容する強さでイオン交換膜51を支持する。このような構成によれば、イオン交換膜51の膨張時にはイオン交換膜51が第1支持部91および第2支持部92に案内されて外周側に膨張しやすくなり、イオン交換膜51のなかで陰極47または陽極48と対向する部分で皺が発生することが抑制される。
【0118】
(3)第3態様の電解セル11は、(1)または(2)の電解セル11であって、第1支持部91は、陰極47周囲の電解液が第1空間S1に漏れ出る程度の強さでイオン交換膜51を支持する。第2支持部92は、陽極48周囲の電解液が第2空間S2に漏れ出る程度の強さでイオン交換膜51を支持する。このような構成によれば、イオン交換膜51の膨張時にはイオン交換膜51が第1支持部91および第2支持部92に案内されて外周側に膨張しやすくなり、イオン交換膜51のなかで陰極47または陽極48と対向する部分で皺が発生することが抑制される。
【0119】
(4)第4態様の電解セル11は、(1)から(3)のうちいずれか1つの電解セル11であって、封止部70は、イオン交換膜51の周端部51fを支持する。第1支持部91および第2支持部92は、封止部70と比べて、イオン交換膜51を緩く支持する。このような構成によれば、イオン交換膜51の膨張時にはイオン交換膜51が第1支持部91および第2支持部92に案内されて外周側に膨張しやすくなり、イオン交換膜51のなかで陰極47または陽極48と対向する部分で皺が発生することが抑制される。
【0120】
(5)第5態様の電解セル11は、(1)から(4)のうちいずれか1つの電解セル11であって、第1支持部91および第2支持部92の材質は、封止部70の材質と比べて柔らかい。このような構成によれば、イオン交換膜51の膨張時にはイオン交換膜51が第1支持部91および第2支持部92に案内されて外周側に膨張しやすくなる。その結果、イオン交換膜51のなかで陰極47または陽極48と対向する部分で皺が発生することをより確実に抑制することができる。
【0121】
(6)第6態様の電解セル11は、(1)から(5)のうちいずれか1つの電解セル11であって、第1支持部91は、陰極47に接している。第2支持部92は、陽極48に接している。このような構成によれば、イオン交換膜51の膨張時に陰極47または陽極48の近傍でイオン交換膜51が折れ曲がり、陰極47または陽極48の角でイオン交換膜51が損傷することをより確実に抑制することができる。
【0122】
(7)第7態様の電解セル11は、(1)から(5)のうちいずれか1つの電解セル11であって、第1支持部91と陰極47との間の隙間m1、および第2支持部92と陽極48との間の隙間m2の各々の大きさは、イオン交換膜51の厚さtの2倍未満である。このような構成によれば、イオン交換膜51の膨張時に陰極47または陽極48の近傍でイオン交換膜51が折れ曲がり、陰極47または陽極48の角でイオン交換膜51が損傷することをより確実に抑制することができる。
【0123】
(8)第7態様の電解セル11は、(1)から(7)のうちいずれか1つの電解セル11であって、第1空間S1および第2空間S2は、電解液を含む。このような構成によれば、第1空間S1および第2空間S2に露出するイオン交換膜51の部分を電解液に浸すことができ、イオン交換膜51の全体を湿潤に保つことができる。これにより、イオン交換膜51の一部が湿潤状態と乾燥状態とを繰り返えすことによる劣化の進行を抑制することができる。その脚気、電解セル11の寿命の向上を図ることができる。
【0124】
(9)第8態様の電解セル11は、(1)から(8)のうちいずれか1つの電解セル11であって、第1支持部91は、陰極47を囲む環状である。第2支持部92は、陽極48を囲む環状である。このような構成によれば、陰極47の全周囲で、イオン交換膜51の膨張時に陰極47の近傍でイオン交換膜51が折れ曲がり、陰極47の角によってイオン交換膜51が損傷することを抑制することができる。
【0125】
(10)第10態様の電解装置1は、(1)から(9)のうちいずれか1つの電解セル11と、電解セル11に電解液を供給する電解液供給部20と、電解セル11に電圧を印加する電源部30と、を備える。このような構成によれば、(1)の電解セル11と同様に、電解装置1の性能を維持しつつ、製造コストの低減を図ることができる。
【0126】
(11)第11態様の電解装置1は、(10)の電解装置1であって、電解セル11を含む複数の電解セル11を有した電解セルスタック10を備える。複数の電解セル11のなかで隣り合う2つの電解セル11は、バイポーラプレートである第1セパレータ41または第2セパレータ42を共有する。このような構成によれば、複数の電解セル11を含む電解装置1に関して、性能を維持しつつ、製造コストの低減を図ることができる。
【0127】
(12)第12態様の電解セル11の製造方法は、第1セパレータ41と第2セパレータ42との間に電解液が存在しない状態で、イオン交換膜51、陰極47、陽極48、第1セパレータ41と第2セパレータ42との間の収容空間Sを封止する封止部70、第1セパレータ41とイオン交換膜51との間に配置されて陰極47よりも外周側でイオン交換膜51を支持し、封止部70との間に第1空間S1を空けた第1支持部91、および、第2セパレータ42とイオン交換膜51との間に配置されて陽極48よりも外周側でイオン交換膜51を支持し、封止部70との間に第2空間S2を空けた第2支持部92、を含む電解セル11を組み立て、電解セル11を組み立てた後に、収容空間Sに電解液を注入する、ことを含む。このような構成によれば、(1)の電解セル11と同様に、電解セル11の性能を維持しつつ、製造コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0128】
1…電解装置
10…電解セルスタック
11…電解セル
20…電解液供給部
30…電源部
40…電解槽
41…第1セパレータ
42…第2セパレータ
47…陰極
48…陽極
51…イオン交換膜
52…陰極触媒層
53…陰極給電体
54…陽極触媒層
55…陽極給電体
70…封止部
71…第1封止部
72…第2封止部
80…位置規制部
81…第1位置規制部
82…第2位置規制部
90…支持部
91…第1支持部
92…第2支持部
S…収容空間
S1…第1空間
S2…第2空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14