IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特開2023-177966空調装置、車両、及び空調装置の制御方法
<>
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図1
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図2
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図3
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図4
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図5
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図6
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図7
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図8
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図9
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図10
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図11
  • 特開-空調装置、車両、及び空調装置の制御方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177966
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】空調装置、車両、及び空調装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20231207BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20231207BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20231207BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/32 624D
B60H1/32 624C
F25B1/00 351J
F25B1/00 304P
F25B5/02 530Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090951
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 幸克
(72)【発明者】
【氏名】小倉 陽一
(72)【発明者】
【氏名】太田 篤治
(72)【発明者】
【氏名】林 邦彦
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA23
3L211CA18
3L211CA19
3L211FA22
3L211GA23
3L211GA26
(57)【要約】
【課題】外気温が極低温の場合に、急速暖房時の暖房能力が高い空調装置、車両、及び空調装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】空調装置は、対象領域内の空調を行う空調装置であって、吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、前記冷媒の熱を放熱する放熱器と、前記冷媒を蓄積するアキュムレータと、前記圧縮機と前記放熱器とを連通する第1流路の途中に設けられている第1膨張弁と、前記圧縮機と前記アキュムレータの上流側とを連通する第2流路の途中に設けられている第2膨張弁と、前記圧縮機を起動する際、前記第1膨張弁を閉じるとともに前記第2膨張弁を所定の開度とし、所定時間経過後、前記第1膨張弁を開く制御を行うように構成されたプロセッサと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域内の空調を行う空調装置であって、
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記冷媒の熱を放熱する放熱器と、
前記冷媒を蓄積するアキュムレータと、
前記圧縮機と前記放熱器とを連通する第1流路の途中に設けられている第1膨張弁と、
前記圧縮機と前記アキュムレータの上流側とを連通する第2流路の途中に設けられている第2膨張弁と、
前記圧縮機を起動する際、前記第1膨張弁を閉じるとともに前記第2膨張弁を所定の開度とし、所定時間経過後、前記第1膨張弁を開く制御を行うプロセッサと、
を備える空調装置。
【請求項2】
前記冷媒と前記対象領域内の空気との間の熱交換を行う第1熱交換器と、
前記放熱器と前記第1熱交換器とを連通する第3流路の途中に設けられている第3膨張弁と、
を備え、
前記プロセッサは、
前記第1膨張弁の開度と前記第3膨張弁の開度とを調整することにより前記冷媒を2段膨張させ、前記放熱器内の圧力を前記圧縮機の吸入圧以上吐出圧以下に制御する請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記アキュムレータの貯液部と前記第2流路の前記第2膨張弁の下流側とを連通する第4流路が設けられており、前記第2膨張弁を通過した前記冷媒と、前記貯液部に蓄積された液冷媒とを混合して前記アキュムレータに流入させる請求項1に記載の空調装置。
【請求項4】
前記第2流路と前記第4流路との接続部に設けられており、前記貯液部に蓄積された前記液冷媒を吸引し、前記第2膨張弁を通過した前記冷媒と混合するエジェクタを備える請求項3に記載の空調装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記放熱器と前記第1熱交換器とに直列に前記冷媒を流す請求項2に記載の空調装置。
【請求項6】
前記冷媒と前記対象領域内の空気との間の熱交換を行う第1熱交換器と、
前記放熱器と前記アキュムレータとの間に前記第1熱交換器と並列に配置されており、前記冷媒と前記対象領域外の空気との間の熱交換を行う第2熱交換器と、
前記放熱器と前記第2熱交換器とを連通する第5流路の途中に設けられている第4膨張弁と、
前記第2熱交換器と前記アキュムレータの上流側とを連通する第6流路の途中に設けられている逆止弁と、
を備える請求項1に記載の空調装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記所定時間経過後、前記圧縮機の吐出圧の目標値に基づいて前記第1膨張弁の開度を調整する請求項1に記載の空調装置。
【請求項8】
対象領域内の空調を行う空調装置であって、
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記冷媒の熱を放熱する放熱器と、
前記冷媒を蓄積するアキュムレータと、
前記圧縮機と前記放熱器とを連通する第1流路の途中に設けられている第1膨張弁と、
前記圧縮機と前記アキュムレータの上流側とを連通する第2流路の途中に設けられている第2膨張弁と、
前記圧縮機を起動する際、前記第1膨張弁を閉じるとともに前記第2膨張弁を所定の開度とし、所定時間経過後、前記第1膨張弁を開く制御を行うように構成されたプロセッサと、
を備える車両。
【請求項9】
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記冷媒の熱を放熱する放熱器と、
前記冷媒を蓄積するアキュムレータと、
前記圧縮機と前記放熱器とを連通する第1流路の途中に設けられている第1膨張弁と、
前記圧縮機と前記アキュムレータの上流側とを連通する第2流路の途中に設けられている第2膨張弁と、
前記第1及び第2膨張弁の開閉を制御するプロセッサと、
を備え、対象領域内の空調を行う空調装置の制御方法であって、
前記プロセッサが、
前記圧縮機を起動する際、前記第1膨張弁を閉じるとともに前記第2膨張弁を所定の開度とし、所定時間経過後、前記第1膨張弁を開く
空調装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調装置、車両、及び空調装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧縮機の吐出側から吸入側に連通する第2のバイパス管と、第2のバイパス管に設けられた減圧装置と、を備える空調装置が開示されている。この空調装置では、暖房の初期立ち上がり時に、圧縮機から第2のバイパス管の減圧装置に冷媒を流すことにより、冷凍サイクルが閉回路となり、冷凍サイクルの圧力が急上昇し、圧縮機の圧縮仕事が急上昇する。その後、熱交換器に連通する第1のバイパス管に設けられた減圧装置に冷媒を流すことにより、熱交換器を経由する閉回路に冷凍サイクルを切り換える。このとき、既に圧縮機の圧縮仕事は大きくなっているため空調の初期の暖房能力が向上し、急速暖房が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-2979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、熱交換器を減圧装置の低圧側に配置しており、低圧側では冷媒が気相域において顕熱変化の熱交換をするため、熱交換の効率が悪く空気に放熱できる能力が制限される。さらに、冷凍サイクルの切り替え時に、圧縮機の吐出圧が低下して圧縮仕事が一時的に低下することにより、急速暖房が阻害されてしまう。
【0005】
また、特許文献1の技術では、第2のバイパス管のみに冷媒を流す場合、過熱度の大きな冷媒が圧縮機に吸入されるため、外気温が-20℃以下のような極低温の場合には、吐出温度が過昇温となって運転継続が困難となる場合がある。
【0006】
また、熱交換器を減圧装置の高圧側に配置する場合、暖房能力が向上させることができるが、高温の冷媒が熱交換器に流入するため、低圧側に配置する場合よりも放熱量が大きく、減圧装置の上流側においても放熱が起きる。その結果、圧縮機の吐出圧が大きく低下し、急速暖房時の暖房能力が低下してしまう。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、外気温が極低温の場合に、急速暖房時の暖房能力が高い空調装置、車両、及び空調装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る空調装置は、対象領域内の空調を行う空調装置であって、吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、前記冷媒の熱を放熱する放熱器と、前記冷媒を蓄積するアキュムレータと、前記圧縮機と前記放熱器とを連通する第1流路の途中に設けられている第1膨張弁と、前記圧縮機と前記アキュムレータの上流側とを連通する第2流路の途中に設けられている第2膨張弁と、前記圧縮機を起動する際、前記第1膨張弁を閉じるとともに前記第2膨張弁を所定の開度とし、所定時間経過後、前記第1膨張弁を開く制御を行うように構成されたプロセッサと、を備える。
【0009】
本開示に係る車両は、対象領域内の空調を行う空調装置であって、吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、前記冷媒の熱を放熱する放熱器と、前記冷媒を蓄積するアキュムレータと、前記圧縮機と前記放熱器とを連通する第1流路の途中に設けられている第1膨張弁と、前記圧縮機と前記アキュムレータの上流側とを連通する第2流路の途中に設けられている第2膨張弁と、前記圧縮機を起動する際、前記第1膨張弁を閉じるとともに前記第2膨張弁を所定の開度とし、所定時間経過後、前記第1膨張弁を開く制御を行うように構成されたプロセッサと、を備える。
【0010】
本開示に係る空調装置の制御方法は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、前記冷媒の熱を放熱する放熱器と、前記冷媒を蓄積するアキュムレータと、前記圧縮機と前記放熱器とを連通する第1流路の途中に設けられている第1膨張弁と、前記圧縮機と前記アキュムレータの上流側とを連通する第2流路の途中に設けられている第2膨張弁と、前記第1及び第2膨張弁の開閉を制御するプロセッサと、を備え、対象領域内の空調を行う空調装置の制御方法であって、前記プロセッサが、前記圧縮機を起動する際、前記第1膨張弁を閉じるとともに前記第2膨張弁を所定の開度とし、所定時間経過後、前記第1膨張弁を開く。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、外気温が極低温の場合に、急速暖房時の暖房能力が高い空調装置、車両、及び空調装置の制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態1に係る空調装置の構成図である。
図2図2は、実施の形態1に係る空調装置が実行する処理を示すフローチャートである。
図3図3は、冷凍サイクルのP-h線図である。
図4図4は、冷凍サイクルの各パラメータの時間変化を表す図である。
図5図5は、冷凍サイクルのP-h線図である。
図6図6は、冷凍サイクルのP-h線図である。
図7図7は、実施の形態2に係る空調装置の構成図である。
図8図8は、図7に示すエジェクタの断面図である。
図9図9は、実施の形態3に係る空調装置の構成図である。
図10図10は、図9に示すアキュムレータの断面図である。
図11図11は、実施の形態4に係る空調装置の構成図である。
図12図12は、実施の形態5に係る空調装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態に係る空調装置、車両、及び空調装置の制御方法について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
(実施の形態1)
〔空調装置の構成〕
図1は、実施の形態1に係る空調装置の構成図である。空調装置100は、冷凍サイクル1、水回路5と、HVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニット7と、プロセッサとしての制御部10と、を備える。空調装置100は、例えば対象領域である車内の空調を行う車両用の空調装置であり、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)等に搭載され、車内の空気の温度を調整する。
【0015】
〔冷凍サイクルの構成〕
冷凍サイクル1は、冷媒が循環する流路であり、圧縮機11と、放熱器としての水冷媒熱交換器12と、第1熱交換器としての室内熱交換器13と、第2熱交換器としての室外熱交換器14と、アキュムレータ15と、これらを連通する冷媒配管と、を備える。また、冷凍サイクル1は、第1膨張弁21~第4膨張弁24と、圧力検知器31と、逆止弁32と、を備える。
【0016】
圧縮機11は、吸入部から吸入した冷媒を圧縮して吐出部41から吐出する。圧縮機11の吐出部41から連通する配管は二つに分岐し、一方は水冷媒熱交換器12に連通し、他方はアキュムレータ15に直接連通する。
【0017】
水冷媒熱交換器12は、冷凍サイクル1と水回路5との間の熱交換を行い、冷媒の熱を放熱する。水冷媒熱交換器12から連通する配管は二つに分岐し、一方は室内熱交換器13に連通し、他方は室外熱交換器14に連通する。
【0018】
室内熱交換器13は、冷媒と対象領域である室内の空気との間の熱交換を行う。
【0019】
室外熱交換器14は、水冷媒熱交換器12とアキュムレータ15との間に室内熱交換器13と並列に配置されており、冷媒と室外の空気との間の熱交換を行う。また、室外熱交換器14は、室外に空気を排出する送風用ファン140を有する。
【0020】
アキュムレータ15は、冷凍サイクル1内の余剰冷媒を蓄積する機能を有し、アキュムレータ15の内部空間の下部に液冷媒が貯まる。
【0021】
第1膨張弁21~第4膨張弁24は、全閉機能を有する膨張弁であり、制御部10による制御のもと、開度を調整可能である。そして、全閉する第1膨張弁21~第4膨張弁24の組み合わせを変えることにより、冷媒が流れる流路を切り換えることができる。
【0022】
第1膨張弁21は、圧縮機11の吐出部と水冷媒熱交換器12とを連通する流路(第1流路)の途中に設けられている。第2膨張弁22は、圧縮機11の吐出部とアキュムレータ15の上流側とを連通するバイパス流路(第2流路)の途中に設けられている。第3膨張弁23は、水冷媒熱交換器12と室内熱交換器13とを連通する流路(第3流路)の途中に設けられている。第4膨張弁24は、水冷媒熱交換器12と室外熱交換器14とを連通する流路(第5流路)の途中に設けられている。
【0023】
圧力検知器31は、圧縮機11の吐出部41から吐出される冷媒の圧力を測定する。
【0024】
逆止弁32は、室外熱交換器14とアキュムレータ15の上流側とを連通する流路(第6流路)の途中に設けられており、アキュムレータ15側から室外熱交換器14側に冷媒が流れることを防止する。
【0025】
〔水回路の構成〕
水回路5は、不凍液が循環する流路であるが、本明細書において水とも記載する。水回路5は、水ポンプ51と、水冷媒熱交換器12と、室内水熱交換器52と、室外水熱交換器53と、これらを連通する水配管と、を備える。また、水回路5は、三方弁54と、温度検知器55と、を備える。
【0026】
水ポンプ51は、電動のポンプであり、制御部10による制御のもと、水流量を制御する。
【0027】
水冷媒熱交換器12から連通する水配管は二つに分岐し、一方は室内水熱交換器52に連通し、他方は室外水熱交換器53に連通する。
【0028】
室内水熱交換器52は、水と室内の空気との間の熱交換を行う。室内水熱交換器52から連通する水配管には、三方弁54が設けられている。
【0029】
室外水熱交換器53は、水と室外との間の熱交換を行う。また、室外水熱交換器53は、室外に空気を排出する送風用ファン530を有する。
【0030】
三方弁54は、水冷媒熱交換器12、室内水熱交換器52、及び室外水熱交換器53にそれぞれ連通する水配管の分岐部に設けられており、水が流れる方向を切り換えることができる。
【0031】
温度検知器55は、水回路5を循環する水の温度を測定する。
【0032】
〔HVACユニットの構成〕
HVACユニット7は、車両のHVACユニットであり、ブロア71と、ダンパ72と、を備える。
【0033】
ブロア71は、室内の空調のための空気を送る。
【0034】
ダンパ72は、室内水熱交換器52を通過する空気の流量を調節する。ダンパ72を塞ぐことにより、室内水熱交換器52を通過する空気の流量をゼロにすることができる。
【0035】
〔制御部の構成〕
制御部10は、例えば車両のECU(Electronic Control Unit)であり、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等からなるプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等からなるメモリ(主記憶部)と、を備える。
【0036】
制御部10は、車両全体を制御する。具体的には、制御部10は、圧力検知器31が検知した圧力、及び温度検知器55が検知した温度を取得する。また、制御部10は、第1膨張弁21~第4膨張弁24の開度を制御する。また、制御部10は、圧縮機11、水ポンプ51、三方弁54、送風用ファン140、送風用ファン530、ブロア71等の動作を制御する。
【0037】
〔急速暖房運転〕
次に、外気温が-20℃以下のような極低温である場合の急速暖房運転において、空調装置100が実行する処理について説明する。急速暖房運転では、冷凍サイクル1の室外熱交換器14は熱交換しないので、制御部10は、第4膨張弁24を全閉とする。同様に、水回路5の室外水熱交換器53も熱交換しないので、制御部10は、三方弁54を制御し、水冷媒熱交換器12と室内水熱交換器52とを連通させる。また、制御部10は、ダンパ72を図1に示す位置に制御し、ブロア71の送風が室内水熱交換器52を通過する設定とする。
【0038】
図2は、実施の形態1に係る空調装置が実行する処理を示すフローチャートである。図2には、ブロア71が室内に送風を開始するまでの処理を示す。
【0039】
まず、制御部10は、第1膨張弁21を全閉、第2膨張弁22を所定の開度Vo2、第3膨張弁23を所定の開度Vo3、第4膨張弁24を全閉にする(ステップS1)。
【0040】
続いて、制御部10は、圧縮機11を起動する(ステップS2)。圧縮機11を起動すると、冷媒は圧縮機11の吐出部41から第2膨張弁22、アキュムレータ15の順に循環し、圧縮機11に戻る。圧縮機11と第1膨張弁21及び第2膨張弁22の間には、熱交換器のような熱容量や内容積の大きなものが設置されていないので、熱容量や内容積が小さい。その結果、圧縮機11の吐出圧の上昇速度を大きくすることができ、吐出圧が大きいほど圧縮機11の圧縮仕事が増大し、圧縮機11の消費電力が増加する。
【0041】
そして、制御部10は、圧縮機11の吐出圧Pdが所定値Pd0以上であるか否かを判定する(ステップS3)。吐出圧Pdが大きいほど圧縮機11の圧縮仕事は増加するが、冷凍サイクル1の耐圧設計や運転上の制約などの条件を考慮して制御目標となる所定値Pd0が決定される。制御部10が、吐出圧Pdが所定値Pd0以上ではないと判定した場合(ステップS3:No)、ステップS3の処理を繰り返す。すなわち、制御部10は、吐出圧Pdが所定値Pd0以上になるまで待機する。
【0042】
制御部10が、吐出圧Pdが所定値Pd0以上であると判定した場合(ステップS3:Yes)、制御部10は、第2膨張弁22の開度を調整し、所定値Pd0を目標に吐出圧Pdを制御する(ステップS4)。
【0043】
続いて、制御部10は、圧縮機11起動からの経過時間tが所定時間t0より大きいか否かを判定する(ステップS5)。所定時間t0は、空調装置100を稼働させた際の圧縮仕事や急速暖気運転の暖気時間(ブロア71を稼働させるまでの時間)等を考慮して定めることができる。制御部10が、時間tが所定時間t0以下であると判定した場合(ステップS5:No)、ステップS4に戻り処理を繰り返す。すなわち、制御部10は、時間tが所定時間t0より大きくなるまでステップS4の処理を継続して実行する。この間、圧縮機11の電力により冷凍サイクル1が暖機され、そのエネルギーの一部は低圧側にも分配され、圧縮機11の吸入部に連通する低圧側の配管やアキュムレータ15等が加熱されて温度が上昇する。
【0044】
図3は、冷凍サイクルのP-h線図である。図3は、ステップS3、S4の処理が実行されている時の冷凍サイクル1のP-h線図である。圧縮機11の吐出部41から吐出された冷媒(図3の点B)は高圧側で配管などに放熱してエンタルピが減少する(点B→点C)。その後、第2膨張弁22で減圧され圧力が減少する(点C→点D)。さらに、低圧側の配管などに放熱してエンタルピが減少する(点D→点A)。なお、アキュムレータ15があることにより、点Aは常に飽和蒸気線上に位置する。低圧側が加熱されて温度が上昇すると、圧縮機11の吸入圧が上昇する。吸入圧が上昇すると、圧縮機11が吸入する冷媒の密度も大きくなり、圧縮機11の圧縮仕事をさらに増大させて消費電力が大きくなる。
【0045】
なお、低圧側が加熱され、圧縮機11の吸入圧は上昇するが、室外熱交換器14は低温のままである。そのため、室外熱交換器14が低圧側の配管と連通していると、ヒートパイプと同様の効果により、低圧側の配管内の冷媒が室外熱交換器14内に流入し、そこで冷媒が放熱してしまう。これを防止するために、逆止弁32が設けられている。逆止弁32により、冷媒が室外熱交換器14内に流入することが防止されているため、放熱損失を低減することができ、効率的に吸入圧を上昇させて圧縮機11の消費電力を増大させることができる。
【0046】
制御部10が、時間tが所定時間t0より大きいと判定した場合(ステップS5:Yes)、制御部10は、第1膨張弁21の開度を調整し、所定値Pd0を目標に吐出圧Pdを制御する(ステップS6)。第1膨張弁21を開くと、冷媒は第1膨張弁21、水冷媒熱交換器12、第3膨張弁23、室内熱交換器13の順に流れ、第2膨張弁22を経由するバイパス配管と合流し、アキュムレータ15を経て圧縮機11に吸入される。
【0047】
図4は、冷凍サイクルの各パラメータの時間変化を表す図である。図4の(a)は、圧縮機11の吐出圧Pdと、水冷媒熱交換器12の入り口側(第1膨張弁21側)の圧力Pcの時間変化を表す。図4の(b)~(d)は、第1膨張弁21~第3膨張弁23の開度の時間変化を表す。図4の(e)は、水回路5を流れる水の水流量の時間変化を表す。
【0048】
圧縮機11の吸入圧が時間とともに上昇することにより、圧縮機11の吐出部41から吐出される冷媒の量が増加する。吐出圧Pdを所定値Pd0付近に制御するために、時間t≦t0では第2膨張弁22の開度を調整し、時間t>t0では第2膨張弁22の開度を一定にして第1膨張弁21の開度を調整する。第1膨張弁21の開度が大きくなると、水冷媒熱交換器12の入り口側の圧力Pcが上昇する。
【0049】
空調装置100では、水冷媒熱交換器12の入口側と出口側とにそれぞれ第1膨張弁21と第3膨張弁23とが設けられており、2段膨張を行うことにより水冷媒熱交換器12を加熱するエネルギーの量を調整することができる。その結果、第1膨張弁21を開いても、エネルギーの一部は低圧側の加熱のために分配され、低圧側の加熱が継続されるため、圧縮機11の吸入圧はさらに上昇し消費電力の増大が継続する。
【0050】
続いて、制御部10は、第1膨張弁21の開度が全開に近い開度Vo1以上であるか否かを判定する(ステップS7)。制御部10が、第1膨張弁21の開度が開度Vo1より小さいと判定した場合(ステップS7:No)、ステップS6に戻り処理を繰り返す。すなわち、制御部10は、第1膨張弁21の開度が開度Vo1以上になるまでステップS6の処理を継続して実行する。
【0051】
制御部10が、第1膨張弁21の開度が開度Vo1以上であると判定した場合(ステップS7:Yes)、制御部10は、水ポンプ51を起動し、水回路5の暖機を開始する(ステップS8)。
【0052】
その後、制御部10は、水ポンプ51を制御することにより水回路5の水流量を調整し、所定値Pd0を目標に吐出圧Pdを制御する(ステップS9)。なお、制御部10は、図4の(e)に示すように、水ポンプ51の出力を制御して連続流の水流量を調整することにより、水への放熱量を制御してもよい。また、制御部10は、水ポンプ51のオン/オフを制御することにより流量を調整し、水への放熱量を制御してもよい。この場合、水ポンプ51による微小な流量制御を回避することができ、制御の安定性を向上させること、制御の簡素化を図ることができる。
【0053】
図5は、冷凍サイクルのP-h線図である。図5は、ステップS9、S10の処理が実行されている時の冷凍サイクル1のP-h線図である。圧縮機11の吐出部41から吐出された冷媒(図5の点B)のうち、バイパス流路を流れる冷媒は、第2膨張弁22で減圧され圧力が減少する(点B→点D)。一方、第1膨張弁21を流れる冷媒は、第1膨張弁21が全開に近い開度Vo1であることにより第1膨張弁21では減圧されず、水冷媒熱交換器12において冷媒から水に熱が伝わりエンタルピが減少する(点B→点E)。さらに、第3膨張弁23で減圧され圧力が減少する(点E→点F)。その後、F点の冷媒とD点の冷媒とが合流し、アキュムレータ15を通過して、圧縮機11に吸入される(点A)。
【0054】
空調装置100では、圧縮機11が吐出した冷媒の一部をバイパス配管に流して低圧側で再度合流させている。これにより、水冷媒熱交換器12の出口側の冷媒のエンタルピ(E点)は、圧縮機11の吸入側のエンタルピ(A点)より小さくなる。そのため、水冷媒熱交換器12内での冷媒の状態は、バイパス配管がない場合に比べ、気液二相となる領域が広くなる。気液二相域における伝熱形態は、凝縮熱伝達となり、気相の熱伝達に比べ熱伝達率が大きく、かつ等温変化のため冷却にともなう温度低下がなく、熱交換の効率を気相の熱伝達に比べ高くすることができる。その結果、空調装置100では、水冷媒熱交換器12を小型、かつ大能力にすることができる。
【0055】
続いて、制御部10は、温度検知器55が検知した水流量Twが所定水流量Tw0以上であるか否かを判定する(ステップS10)。制御部10が、水流量Twが所定水流量Tw0より小さいと判定した場合(ステップS10:No)、ステップS9に戻り処理を繰り返す。すなわち、制御部10は、水流量Twが所定水流量Tw0以上になるまでステップS9の処理を継続して実行する。
【0056】
制御部10が、水流量Twが所定水流量Tw0以上であると判定した場合(ステップS10:Yes)、制御部10は、水回路5の暖機が終了したと判断し、ブロア71からの送風を開始させる(ステップS11)。
【0057】
空調装置100では、水冷媒熱交換器12、第3膨張弁23、室内熱交換器13の順に冷媒が流れ、ブロア71からの送風を開始する前に冷凍サイクル1の低圧側が加熱されて温度が上昇している。その結果、室内熱交換器13を通過する冷媒の温度は、送風開始時の空気の温度より高くなる。
【0058】
図6は、冷凍サイクルのP-h線図である。図6は、ステップS11におけるブロア71からの送風開始後の冷凍サイクル1のP-h線図である。第3膨張弁23で減圧された冷媒(図6の点F)は、室内熱交換器13において、冷媒の飽和温度より低温の空気で冷却されてエンタルピが減少する(点F→点G)。
【0059】
空調装置100において、空気の加熱は室内水熱交換器52に加えて、室内熱交換器13でも行われることとなり、同等体格の室内水熱交換器52のみを用いる構成と比較すると最大暖房能力を大きくすることができる。また、空調装置100において、空気の加熱を室内水熱交換器52と室内熱交換器13とで行うことにより、室内水熱交換器52のみで空気を加熱する同等の最大暖房能力の構成と比較すると、室内水熱交換器52を小型化することができる。
【0060】
以上説明した実施の形態1によれば、制御部10は、圧縮機11を起動する際、第1膨張弁21を閉じるとともに第2膨張弁22を所定の開度Vo2とし、所定時間t0が経過後、第1膨張弁21を開く制御を行う。その結果、圧縮機11の吐出部41と第1膨張弁21及び第2膨張弁22との間の空間の熱容量及び内容積を小さくすることにより、圧縮機11の起動時における吐出圧の上昇速度を増大させ、圧縮機11の消費電力の立ち上がり速度を向上させることができる。圧縮機11の消費電力が増大すると、圧縮機11の仕事量が増大し、急速暖房時の暖房能力を向上させることができる。
【0061】
また、制御部10は、第1膨張弁21の開度と第3膨張弁23の開度とを調整することにより冷媒を2段膨張させ、水冷媒熱交換器12内の圧力を圧縮機11の吸入圧以上吐出圧以下に制御する。冷媒を2段膨張することにより、水冷媒熱交換器12側への放熱量を制御し、低圧側の加熱に分配するエネルギーを確保することができ、圧縮機11の消費電力を増大させることができる。
【0062】
また、制御部10は、所定時間t0が経過後、圧縮機11の吐出圧Pdの目標値(所定値Pd0)に基づいて第1膨張弁21の開度を調整する。その結果、圧縮機11の吐出圧Pdを低下させることなく水冷媒熱交換器12の入り口側の圧力Pcを徐々に上昇させることができる。
【0063】
次に、空調装置100の急速暖房運転以外の運転方法について説明する。
【0064】
〔冷房運転〕
制御部10は、第1膨張弁21を全開、第2膨張弁22、及び第4膨張弁24を全閉にし、第3膨張弁23の開度を制御して室温を調整する。また、制御部10は、三方弁54を水冷媒熱交換器12から室外水熱交換器53に水が流れる設定とする。
【0065】
圧縮機11の吐出部41から吐出された冷媒は、水冷媒熱交換器12で水回路5に放熱し、第3膨張弁23で減圧され、室内熱交換器13で蒸発して室内の空気を冷却する。水回路5では、水冷媒熱交換器12で水が加熱され、室外水熱交換器53で水が冷却される。
【0066】
〔暖房運転〕
制御部10は、第1膨張弁21を全開、第2膨張弁22、第3膨張弁23を全閉にし、第4膨張弁24の開度を制御して室温を調整する。また、制御部10は、三方弁54を水冷媒熱交換器12から室内水熱交換器52に水が流れる設定とする。
【0067】
圧縮機11の吐出部41から吐出された冷媒は、水冷媒熱交換器12で水回路5に放熱し、第4膨張弁24で減圧され、室外熱交換器14で蒸発して空気から吸熱する。水回路5では、水冷媒熱交換器12で水が加熱され、室内水熱交換器52で室内の空気を温める。
【0068】
〔除湿運転〕
制御部10は、第1膨張弁21を全開、第2膨張弁22、及び第4膨張弁24を全閉にし、第3膨張弁23の開度を制御して室温を調整する。また、制御部10は、三方弁54を制御して、水冷媒熱交換器12から室内水熱交換器52に水が流れる設定とする。
【0069】
圧縮機11の吐出部41から吐出された冷媒は、水冷媒熱交換器12で水回路5に放熱し、第3膨張弁23で減圧され、室内熱交換器13で蒸発して室内の空気を除湿する。水回路5では、水冷媒熱交換器12で水が加熱され、室内水熱交換器52で除湿された空気を温める。
【0070】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係る空調装置の構成図である。実施の形態1と同様の構成については図1と同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0071】
空調装置100Aの冷凍サイクル1Aは、圧縮機11の吐出部41とアキュムレータ15の上流側とを連通するバイパス流路(第2流路)と、アキュムレータ15の貯液部と第2膨張弁22とを連通する流路(第4流路)と、の接続部に設けられており、アキュムレータ15の貯液部に蓄積された液冷媒を吸引し、第2膨張弁22を通過した冷媒と混合するエジェクタ81と、エジェクタ81が吸引する冷媒の量を調整する絞り82と、を備える。
【0072】
図8は、図7に示すエジェクタの断面図である。図8に示すように、エジェクタ81は、ノズル810、ボディー811、及び流入部812の3つの部品からなる。これらの3つの部品は、アルミニウム、又はやステンレス等の金属からなる。
【0073】
ノズル810は、ボディー811にはめ込まれており、上端が流入部812に押圧されている。そして、ボディー811と流入部812とが溶接又はロー付けにより接合され、ノズル810がボディー811の内側に固定される。
【0074】
第2膨張弁22に連通する配管は、流入口813に接続され、アキュムレータ15に連通する配管は、流出口814に接続され、アキュムレータ15の貯液部に連通する配管は、吸入口815に接続される。
【0075】
ノズル810の出口部8101は、第2膨張弁22からの冷媒が流入する流入口813と比較して、流路の断面積が小さくされており、冷媒がノズル810を通過するときに流速が速くなる。エネルギー保存則により、流速が速くなると圧力が低下する。そのため、空間817の圧力は、アキュムレータ15内の圧力より低くなり、この負圧を利用してアキュムレータ15内に貯まっている液冷媒を吸引する。アキュムレータ15の貯液部からエジェクタ81に吸引される冷媒の流量は、絞り82の開度により調整することができる。吸引された液冷媒は、混合部816において第2膨張弁22からの冷媒と混合される。液冷媒と第2膨張弁22からの冷媒とを混合することにより熱交換が行われる。混合部816及びその下流における流路の断面積は、ノズル810の出口部8101の流路の断面積より大きくされているため流速が減速し、圧力が上昇する。
【0076】
ここで、エジェクタ81を有しない構成では、第1膨張弁21を全閉して第2膨張弁22を開き、パイパス配管に冷媒を流すと、高温の冷媒がアキュムレータ15に流入することになる。アキュムレータ15は、余剰冷媒を貯めるために、流入した冷媒を気液分離して液相をアキュムレータ15の下部に貯める構成である。高温の気相冷媒がアキュムレータ15に流入した場合、アキュムレータ15の上部の空間を通過するが、このとき下部に貯まった液冷媒と十分に熱交換しない場合がある。この場合、アキュムレータ15内に液冷媒が貯まっていたとしても、流入した高温の冷媒がアキュムレータ15から流出し、圧縮機11に吸入される。圧縮機11に吸入される冷媒が過熱されていると、圧縮機11から吐出される冷媒の温度が上昇する。圧縮機11は、保護のため吐出される冷媒の温度の上限が決まっており、吐出する冷媒の温度が上昇すると圧縮機11が作動可能な時間を短縮する場合がある。また、第2膨張弁22を開いてバイパス配管に高温の冷媒を流し、低圧側を加熱して圧縮機11の吸入圧を上昇させることにより、圧縮機11の消費電力を増大させる構成であるものが、過熱された冷媒が圧縮機11に吸入され、圧縮機11が加熱されるのに使用されてしまうため、低圧側の加熱に利用できる熱量が低下し、圧縮機11の消費電力増大が阻害されてしまう。
【0077】
これに対して、空調装置100Aでは、エジェクタ81が、第2膨張弁22を通過した冷媒と、アキュムレータ15の貯液部に蓄積された液冷媒とを混合してアキュムレータ15に流入させる。その結果、第2膨張弁22を通過した冷媒がアキュムレータ15を通過し、高温のまま圧縮機11に吸入されることを防止し、圧縮機11の吐出部41から吐出される冷媒が過昇温となることを防止するとともに、低圧側の加熱に使われるエネルギーを増大させることができる。
【0078】
また、エジェクタ81が、アキュムレータ15の貯液部に蓄積された液冷媒を吸引するため、冷媒が膨張するエネルギーを活用して液冷媒をポンピングすることができ、余分なエネルギーを使わずにポンピング作用が得られる。
【0079】
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3に係る空調装置の構成図である。実施の形態1と同様の構成については図1と同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0080】
空調装置100Bの冷凍サイクル1Bは、アキュムレータ15Bを備える。第2膨張弁22に連通する配管は、アキュムレータ15Bの下部に接続される。
【0081】
図10は、図9に示すアキュムレータの断面図である。図10に示すように、アキュムレータ15Bは、液冷媒を貯蓄するアキュムレータタンク151と、低圧側の配管と接続される流入口152と、圧縮機11の吸入側と接続される流出管153と、流出管153の外径より大きな内径を有し、一端(下端)が閉じており、流出管153と同軸で配置されている管154と、を有する。
【0082】
管154の下部側には、液戻し用の穴155が形成されており、穴155に異物が詰まるのを防止するために、穴155の外周には円筒状のフィルタ156が装着されている。傘部157は、冷媒が流入する空間158と液冷媒が貯まる下部空間159とを仕切っている。バイパス流路管160は、第2膨張弁22に連通するバイパス流路に接続されている。バイパス流路管160の下部側には、液注入穴161が形成されている。バイパス流路管160は、傘部157の上側の空間158に連通しており、バイパス流路を通過した冷媒は空間158に流入する。
【0083】
流入口152から空間158に流入した冷媒は、傘部157の外周の隙間1570を通過し、下部空間159に流入する。そして、下部空間159において、冷媒は、重力により気液分離され、液冷媒がアキュムレータ15の下部に貯まるとともに、気相冷媒が管154の上端の開口部から、管154と流出管153との間を通過し、穴155からオイルが溶解した液冷媒が流入する。管154を流れる冷媒と、穴155から流入した液冷媒とは混合され、流出管153の内部空間を通って流出する。
【0084】
バイパス流路管160を流れる冷媒には、貯まっている液冷媒の圧力により液注入穴161から液冷媒が注入される。第2膨張弁22からの冷媒と、液注入穴161から注入された液冷媒と混合し、傘部157の上部の空間158に流出する。さらに、傘部157の外周の隙間1570を通過して、下部空間159に流入する。そして、流入口152からの冷媒と同様に気液分離され、液冷媒はアキュムレータ15の下部に貯まり、気相冷媒は流出する。
【0085】
実施の形態3によれば、アキュムレータ15の下部に貯まっている液冷媒に作用する重力による圧力を使って、バイパス配管からの冷媒に液冷媒を押込むことにより、実施の形態2のエジェクタ81と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態3では、実施の形態2のようにアキュムレータ15の貯液部から第2膨張弁22に連通する配管を設ける必要がなく、実施の形態2よりも構成を簡素化することができる。
【0086】
(実施の形態4)
図11は、実施の形態4に係る空調装置の構成図である。図11に示すように、空調装置100Cの冷凍サイクル1Cは、室内放熱器121を備え、水回路5Cは、室内放熱器を備えていない。図1に示す水回路5が室内放熱器を備え、水回路の熱により暖房運転を行う構成では、水の熱容量のため圧縮機11の起動からブロア71をオンにするまで時間がかかる。これに対して、実施の形態4では、水回路5の暖機が不要となるので、暖房運転開始までの立ち上がり時間を短縮することができる。
【0087】
冷凍サイクル1Cは、圧縮機11から吐出した冷媒をさらに分岐した配管に設けられた室内放熱器121を備える。さらに、冷凍サイクル1Cは、室内放熱器121の入口側に設けられた第1膨張弁B211と、出口側に設けられた逆止弁321と、を備える。また、冷凍サイクル1Cは、水冷媒熱交換器12の入口側に設けられた第1膨張弁A210と、出口側に設けられた逆止弁320と、を備える。
【0088】
〔急速暖房運転〕
外気温が-20℃のような極低温における急速暖房運転では、制御部10は、第1膨張弁A210を常時全閉とすることにより水冷媒熱交換器12への冷媒の流入を防止する。また、水冷媒熱交換器12の出口側には、逆止弁320が設けられているので、出口側から冷媒が流入することも防止されている。制御部10は、第1膨張弁B211を実施の形態1の第1膨張弁21と同様に制御する。
【0089】
制御部10が、第1膨張弁B211を全閉として圧縮機11を起動すると、冷媒は、第2膨張弁22を経由してアキュムレータ15の吸入側に流れる。圧縮機11の吐出圧Pdが所定値Pd0以上となった後、経過時間tが所定時間t0になると、制御部10は、第1膨張弁B211を開いて室内放熱器121側にも冷媒を流す。室内放熱器121側を流れる冷媒は、第1膨張弁B211、室内放熱器121、逆止弁321、第3膨張弁23、室内熱交換器13の順に流れ、低圧側の配管において第2膨張弁22を通過したバイパス配管側の冷媒と合流し、アキュムレータ15を経て圧縮機11に吸入される。制御部10は、圧縮機11の吐出圧Pdが所定値Pd0となるように、第1膨張弁B211の開度を調整する。すると、第1膨張弁B211の開度が大きくなるに従って、室内放熱器121内の圧力が上昇する。第1膨張弁B211の開度が全開に近い開度である開度Vo1以上となったら、制御部10は、ブロア71を起動して、室内の空気を加熱して暖房を開始する。
【0090】
次に、空調装置100Cの急速暖房運転以外の運転方法について説明する。
【0091】
〔冷房運転〕
制御部10は、第1膨張弁A210を全開、第1膨張弁B211を全閉、第2膨張弁22を全閉、第3膨張弁23の開度を制御して室温を調整し、第4膨張弁を全閉にする。
【0092】
圧縮機11の吐出部41から吐出した冷媒は、水冷媒熱交換器12で水回路5Cに放熱し、第3膨張弁23で減圧、室内熱交換器13で冷媒が蒸発して空気を冷却する。水回路5Cでは、水冷媒熱交換器12で水が加熱され、室外水熱交換器53で水が冷却される。
【0093】
〔暖房運転〕
制御部10は、第1膨張弁A210を全閉、第1膨張弁B211を全開、第2膨張弁22を全閉、第3膨張弁23を全閉にし、第4膨張弁24の開度を制御して室温を調整する。
【0094】
圧縮機11の吐出部41から吐出した冷媒は、室内放熱器121で室内の空気を温める。その後、冷媒は、第4膨張弁24で減圧され、室外熱交換器14で冷媒が蒸発して空気から吸熱する。
【0095】
〔除湿運転(1)〕
制御部10は、第1膨張弁A210を全閉、第1膨張弁B211を全開、第2膨張弁22を全閉、第3膨張弁23の開度を調整して室温を調整し、第4膨張弁24を全閉にする。
【0096】
圧縮機11の吐出部41から吐出した冷媒は、室内放熱器121で車室内空気を加熱し、第3膨張弁23で減圧され、室内熱交換器13で冷媒が蒸発して除湿する。
【0097】
〔除湿運転(2)〕
除湿運転(2)は、除湿運転(1)に対して、外気への放熱量を増やして、除湿した空気の温度上昇を抑える運転モードである。
【0098】
制御部10は、第1膨張弁A210、及び第1膨張弁B211を開き、冷媒は、水冷媒熱交換器12と室内放熱器121とを並列で流れる。水冷媒熱交換器12では、水回路5Cに放熱し、室内放熱器121では、室内の空気を温める。水ポンプ51により水回路5Cの水流量を調整することにより、水への放熱量を調整することができる。水への放熱量が小さい場合、水ポンプ51による水流量の調整が難しい場合があるが、その場合には、水ポンプ51のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。水冷媒熱交換器12からの冷媒と、室内放熱器121からの冷媒とは合流し、第3膨張弁23で減圧され、室内熱交換器13で冷媒が蒸発して除湿する。
【0099】
(実施の形態5)
図12は、実施の形態5に係る空調装置の構成図である。図12に示すように、空調装置100Dの電池温調用水回路9は、第2水ポンプ91と、第2水冷媒熱交換器92と、第2室外水熱交換器93と、第2三方弁94と、電池950と熱交換を行う電池用熱交換器95と、を備える。
【0100】
第2水ポンプ91は、電動のポンプであり、制御部10による制御のもと、水流量を制御する。
【0101】
第2水冷媒熱交換器92は、電池温調用水回路9を循環する水と、冷凍サイクル1を循環する冷媒との間の熱交換を行う。
【0102】
第2室外水熱交換器93は、水と室外との間の熱交換を行う。また、第2室外水熱交換器93は、室外に空気を排出する送風用ファン930を有する。
【0103】
第2三方弁94は、第2水ポンプ91、第2室外水熱交換器93、及び電池用熱交換器95にそれぞれ連通する水配管の分岐部に設けられており、水が流れる方向を切り換えることができる。
【0104】
電池用熱交換器95は、電池温調用水回路9を循環する水と、電池950との間の熱交換を行う。
【0105】
制御部10は、電池温調を行う場合、第2三方弁94を、第2水ポンプ91、電池用熱交換器95、第2水冷媒熱交換器92、第2水ポンプ91の順に水が流れる経路に設定し、電池950と冷凍サイクル1との間の熱交換を行う。
【0106】
制御部10は、外気から吸熱してヒートポンプによる暖房を行う場合、第2三方弁94を、第2水ポンプ91、第2室外水熱交換器93、第2水冷媒熱交換器92、第2水ポンプ91の順に水が流れる経路に設定する。
【0107】
なお、電池温調において、電池950を冷凍サイクル1の熱により加熱する場合に、圧縮機11の吐出部41から吐出した高温の冷媒を第2水冷媒熱交換器92に流すため、第2膨張弁22が設けられたバイパス配管を第2水冷媒熱交換器92の入口側に連通する。
【0108】
〔急速暖房運転〕
外気温が-20℃のような極低温における急速暖房運転では、制御部10は、実施の形態1と同様の制御を行う。制御部10が、圧縮機11を起動すると、冷媒は、第2膨張弁22、第2水冷媒熱交換器92、アキュムレータ15の順に流れ、圧縮機11に吸入されるが、第2水冷媒熱交換器92における放熱を抑制するため、制御部10は、第2水ポンプ91を停止させている。
【0109】
電池を加熱するモードの場合、制御部10は、第1膨張弁21を全閉、第2膨張弁22の開度を調整し、第3膨張弁23を全閉、第4膨張弁24を全閉にする。圧縮機11の吐出部41から吐出された冷媒は、第2膨張弁22で減圧され、第2水冷媒熱交換器92において電池温調用水回路9の水と熱交換し、アキュムレータ15を経て圧縮機11に吸入される。これはいわゆるホットガスサイクルであり、高温の冷媒により電池温調用水回路9を循環する水が加熱される。電池温調用水回路9における水の循環経路は、第2水ポンプ91、第2三方弁94、電池用熱交換器95、第2水冷媒熱交換器92、第2水ポンプ91の順であり、第2水冷媒熱交換器92において加熱された水により、電池950を加熱する。
【0110】
実施の形態5によれば、外気温が極低温の場合に急速暖房運転をするために設けたバイパス配管と第2膨張弁22とを電池950の温調用に兼用することができる。
【0111】
次に、空調装置100Dの急速暖房運転以外の運転方法について説明する。
【0112】
〔冷房運転〕
制御部10は、第1膨張弁21を全開、第2膨張弁22を全閉、第3膨張弁23の開度を調整して室温を調整し、第4膨張弁24を全閉にする。
【0113】
圧縮機11の吐出部41から吐出した冷媒は、水冷媒熱交換器12で水に放熱し、第3膨張弁23で減圧され、室内熱交換器13で冷媒が蒸発して空気を冷却する。水回路5では、水冷媒熱交換器12で水が加熱され、室外水熱交換器53で水が冷却される。
【0114】
〔暖房運転〕
制御部10は、第1膨張弁21を全開、第2膨張弁22を全閉、第3膨張弁23を全閉、第4膨張弁24の開度を制御して室温を調整する。
【0115】
圧縮機11の吐出部41から吐出した冷媒は、水冷媒熱交換器12で水回路5の水を加熱し、第4膨張弁24で減圧され、第2水冷媒熱交換器92で冷媒が蒸発して電池温調用水回路9の水から吸熱する。
【0116】
水回路5において、制御部10は、三方弁54を制御して、水を水ポンプ51、水冷媒熱交換器12、三方弁54、室内水熱交換器52、水ポンプ51の順に流し、水冷媒熱交換器12で加熱された水が室内水熱交換器52で空気に放熱し暖房を行う。
【0117】
電池温調用水回路9において、制御部10は、第2三方弁94を制御して、水を第2水ポンプ91、第2三方弁94、第2室外水熱交換器93、第2水冷媒熱交換器92、第2水ポンプ91の順に流し、第2室外水熱交換器93において水が外気から吸熱し、第2水冷媒熱交換器92において水が冷媒を加熱する。
【0118】
〔除湿運転〕
制御部10は、第1膨張弁21を全開、第2膨張弁22を全閉、第3膨張弁23の開度を制御して室温を調整し、第4膨張弁は全閉にする。制御部10は、三方弁54を水冷媒熱交換器12、室内水熱交換器52の順に水が流れる方向に設定する。
【0119】
圧縮機11の吐出部41から吐出した冷媒は、水冷媒熱交換器12で水に放熱し、第3膨張弁23で減圧され、室内熱交換器13で冷媒が蒸発して除湿する。水回路5では、水冷媒熱交換器12で水が加熱され、室内水熱交換器52で除湿された空気を温める。
【0120】
〔電池冷却運転〕
制御部10は、第1膨張弁21を全開、第2膨張弁22を全閉、第3膨張弁23を全閉、第4膨張弁24の開度を制御する。
【0121】
圧縮機11の吐出部41から吐出した冷媒は、水冷媒熱交換器12で水に放熱し、第4膨張弁24で減圧され、第2水冷媒熱交換器92で冷媒が蒸発して電池温調用水回路9を循環する水を冷却する。電池温調用水回路9では、制御部10は、第2三方弁94を制御して、水を第2水ポンプ91、第2三方弁94、電池用熱交換器95、第2水冷媒熱交換器92、第2水ポンプ91の順に流し、第2水冷媒熱交換器92で冷却された水により、電池950を冷やす。
【0122】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わしかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0123】
1、1A、1B、1C 冷凍サイクル
5、5C 水回路
7 HVACユニット
9 電池温調用水回路
10 制御部
11 圧縮機
12 水冷媒熱交換器
13 室内熱交換器
14 室外熱交換器
15、15B アキュムレータ
21 第1膨張弁
22 第2膨張弁
23 第3膨張弁
24 第4膨張弁
31 圧力検知器
32 逆止弁
41 吐出部
51 水ポンプ
52 室内水熱交換器
53 室外水熱交換器
54 三方弁
55 温度検知器
71 ブロア
72 ダンパ
81 エジェクタ
82 絞り
91 第2水ポンプ
92 第2水冷媒熱交換器
93 第2室外水熱交換器
94 第2三方弁
95 電池用熱交換器
100、100A、100B、100C、100D 空調装置
121 室内放熱器
140 送風用ファン
151 アキュムレータタンク
152 流入口
153 流出管
154 管
155 穴
156 フィルタ
157 傘部
158 空間
159 下部空間
160 バイパス流路管
161 液注入穴
320 逆止弁
321 逆止弁
530 送風用ファン
810 ノズル
811 ボディー
812 流入部
813 流入口
814 流出口
815 吸入口
816 混合部
817 空間
930 送風用ファン
950 電池
1570 隙間
8101 出口部
A210 第1膨張弁
B211 第1膨張弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12