(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177974
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】プリント金属化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B32B15/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090972
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝史
(72)【発明者】
【氏名】山村 菜月
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20C
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4F100AB03A
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4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】表面光沢値が低い場合であっても、耐候性を維持し、且つトップコート層に塗工ムラや塗工スジが生じる等の塗工適性(生産安定性)の低下を低減したプリント金属化粧板を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係るプリント金属化粧板10は、鋼鈑1、絵柄層4、トップコート層5をこの順に少なくとも備え、トップコート層5は、艶消し剤を含み、艶消し剤は、マット剤及び骨材の少なくとも一方を含み、トップコート層5中における艶消し剤の含有比率は、トップコート層5全体の質量に対して25.0質量%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼鈑、柄印刷層、トップコート層をこの順に少なくとも備えるプリント金属化粧板であって、
前記トップコート層は、艶消し剤を含み、
前記艶消し剤は、マット剤及び骨材の少なくとも一方を含み、
前記トップコート層中における前記艶消し剤の含有比率は、前記トップコート層全体の質量に対して25.0質量%以下であることを特徴とするプリント金属化粧板。
【請求項2】
前記艶消し剤の粒度分布は、3μm以上9μm以下の間と10μm以上15μm以下の間の2つのピークを有することを特徴とする請求項1に記載のプリント金属化粧板。
【請求項3】
前記艶消し剤の形状は、平均粒径が3μm以上9μm以下の範囲内にあるものは不定形状であり、平均粒径が10μm以上15μm以下の範囲内にあるものは真球状であることを特徴とする請求項2に記載のプリント金属化粧板。
【請求項4】
平均粒径が3μm以上9μm以下の範囲内にある前記艶消し剤の含有比率は、前記トップコート層全体の質量に対して15質量%以上18質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載のプリント金属化粧板。
【請求項5】
平均粒径が3μm以上9μm以下の範囲内にある前記艶消し剤は、有機系添加剤及び無機系添加剤の2種類を含み、
前記無機系添加剤の含有比率は、前記トップコート層全体の質量に対して2質量%以下であることを特徴とする請求項4に記載のプリント金属化粧板。
【請求項6】
前記トップコート層は、耐候剤をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のプリント金属化粧板。
【請求項7】
前記プリント金属化粧板は、裏面コート層、化成皮膜、前記鋼鈑、化成皮膜、プライマーコート層、ベースコート層、前記柄印刷層、前記トップコート層をこの順に少なくとも備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプリント金属化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント金属化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼鈑とは、溶融亜鉛メッキ鋼鈑などの鋼鈑やアルミ板などの金属板の上に化粧シートが積層された化粧板という。
このプリント金属化粧板に関する技術としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリント金属化粧板は、例えば玄関ドアやサイディング材として使用される場合がある。そのため、プリント金属化粧板には、表面光沢値の低いもの(マット感)が求められる場合がある。
しかしながら、従来技術に係るプリント金属化粧板は、表面光沢値を低くした場合には、耐候性が低下したり、塗工適性(生産安定性)が低下したりすることがある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、表面光沢値が低い場合であっても、耐候性を維持し、且つトップコート層に塗工ムラや塗工スジが生じる等の塗工適性(生産安定性)の低下を低減したプリント金属化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るプリント金属化粧板は、鋼鈑、柄印刷層、トップコート層をこの順に少なくとも備えるプリント金属化粧板であって、前記トップコート層は、艶消し剤を含み、前記艶消し剤は、マット剤及び骨材の少なくとも一方を含み、前記トップコート層中における前記艶消し剤の含有比率は、前記トップコート層全体の質量に対して25.0質量%以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様に係るプリント金属化粧板によれば、表面光沢値が低い場合であっても、耐候性を維持し、且つトップコート層に塗工ムラや塗工スジが生じる等の塗工適性(生産安定性)の低下を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリント金属化粧板の構成を説明する断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(全体構成)
図1に示すように、本実施形態に係るプリント金属化粧板10は、鋼鈑1と、プライマーコート層2と、ベースコート層3と、絵柄層(柄印刷層)4と、トップコート層5と、裏面コート層6と、を備えている。より具体的には、鋼鈑1の一方の面上(表面上)に、プライマーコート層2と、ベースコート層3と、絵柄層4と、トップコート層5と、が順に形成されている。また、鋼鈑1の他方の面上(裏面上)に、裏面コート層6が形成されている。
以下、上述した各層の詳細について説明する。
【0010】
<鋼鈑1>
鋼鈑1は、プリント金属化粧板10のベースとなる板である。鋼鈑1の材料としては、例えば溶融亜鉛めっき鋼鈑を用いる。溶融亜鉛めっき鋼鈑は、塗料との密着性・耐食性の向上のために、鋼鈑表面に亜鉛めっき(金属被膜)が形成された鋼鈑である。また、亜鉛めっきされた鋼鈑の表層(表面及び裏面)には、耐食性(耐白錆性)の向上のために、化成皮膜7を設けてもよい。化成皮膜7としては、例えばクロメート被膜、クロメートフリー被膜を採用できる。特に、環境負荷の面から、クロメートフリー被膜が望ましい。クロメートフリー被膜は、クロメートフリー処理(ノンクロメート処理)により形成できる。
クロメートフリー処理に使用する処理液としては、例えば六価クロムを含有しない処理液、例えばZr若しくはTi又はこれらの両方の塩を含む処理液、又は、シランカップリング剤を含む処理液等を採用できる。このような処理液を用いたクロメートフリー処理により、亜鉛めっきの層上に、Ti、Zr、P、Ce、Si、Al、Li等を主成分として含有し、クロムを含有しないクロメートフリー被膜を形成できる。つまりクロメートフリー被膜は、例えばTi、Zr、P、Ce、Si、Al若しくはLi又はこれらの任意の組み合わせを含む。なお、めっきは合金化めっきに限定されるものではなく、任意のめっきを採用することができる。
鋼鈑1の厚さは、例えば0.2mm以上1.0mm以下の範囲内が好ましく、0.25mm以上0.5mm以下の範囲内がより好ましい。
【0011】
上述のように、本実施形態では鋼鈑1として、溶融亜鉛めっき鋼鈑を用いることが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。鋼鈑1には、例えばガルバリウム鋼鈑(登録商標)や電気亜鉛めっき鋼鈑、あるいはステンレス鋼鈑やアルミ鋼鈑等を用いてもよい。
なお、本実施形態において「溶融亜鉛めっき鋼鈑」とは、合金化亜鉛めっき鋼鈑とも称される鋼鈑であり、溶融亜鉛めっき後、加熱処理を施し、亜鉛めっき層と鉄との相互拡散により、鉄亜鉛系の金属間化合物(厚さ8μm程度、付着量60g/m2程度)を生成させた鋼鈑を意味する。また、本実施形態において「ガルバリウム鋼鈑(登録商標)」とは、アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼鈑を意味する。
【0012】
<プライマーコート層2>
プライマーコート層2は、鋼鈑1とベースコート層3との密着性・耐食性を向上させるために形成する層である。
プライマーコート層2は、公知のプライマー用の樹脂塗料を使用することができる。その樹脂塗料としては、例えばポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等の熱硬化型樹脂をバインダ樹脂(ベース樹脂)として含む公知の硬化性塗料を適用することができる。
プライマーコート層2には、耐食性(耐白錆性)を向上させる目的で防錆顔料を配合してもよい。
プライマーコート層2の厚さは、例えば1μm以上10μm以下の範囲内が好ましい。
【0013】
<ベースコート層3>
ベースコート層3は、全体の色調のベースとなる単色のコート層である。
ベースコート層3は、公知のベースコート層用のバインダ樹脂(ベース樹脂)を含む塗料を使用してすればよい。そのバインダ樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等の熱硬化型樹脂を適用することができる。
ベースコート層3には、単色の色調を形成するための顔料が添加されている。
また、ベースコート層3には、耐候性を向上させるために、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤を添加してもよい。ベースコート層3に添加可能な紫外線吸収剤としては、例えば、Tinuvin 479を用いることができる。また、ベースコート層3に添加可能な光安定剤としては、例えば、Tinuvin 144を用いることができる。
また、耐食性(耐白錆性)を向上させるために、防錆顔料を配合してもよい。
ベースコート層3の厚さは、例えば10μm以上30μm以下の範囲内である。
【0014】
<絵柄層4>
絵柄層4は、絵柄が印刷された層である。絵柄層4を形成する塗料は、バインダ樹脂(ベース樹脂)及び顔料・染料を含む。バインダ樹脂としては、公知のバインダ樹脂を使用すればよいが、上記のプライマーコート層2で使用されるような、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等の熱硬化型樹脂が好適である。
【0015】
顔料としては、公知の顔料を採用すればよい。例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、酸化鉄、有機顔料、メタリック顔料、パール顔料などが例示できる。
また、染料としては、公知の染料を採用すればよい。
絵柄層4が形成する絵柄模様については特に限定はないが、例えば、木目模様の絵柄とすることができる。
絵柄層4は、ベタに印刷され、その厚さは、例えば0.1μm以上0.2μm以下の範囲内である。
絵柄層4は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を上述したベース樹脂とともに、適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させたインキ、塗料を用いて形成された層である。
絵柄層4の塗工方法(形成方法)は特に限定されるものではなく、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、又はインクジェット印刷等の各種印刷法、又は、ロールコート法等の各種塗工方法を用いることができる。
【0016】
<トップコート層5>
トップコート層5は、透明な硬化型樹脂で構成された層である。
トップコート層5は、耐候性、曲げ加工性、耐傷性や清掃性に関してその優劣を左右する重要な役割をもつ。トップコート層5は、硬化型樹脂と、艶消し剤とを含んでいる。
【0017】
トップコート層5は、硬化型樹脂として、例えば電離放射線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂を含有する。また、トップコート層5は、上述した硬化型樹脂以外に、更にフッ素系樹脂を含んでいてもよい。但し、硬化型樹脂の含有割合として、電離放射線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂がトップコート層5を構成する樹脂全体100質量部に対して60質量部以上含有していることが好ましい。
【0018】
また、トップコート層5は、艶消し剤として、マット剤及び骨材の少なくとも一方を含む添加剤を含有する。トップコート層5に添加可能なマット剤として、例えば、長石、珪砂(シリカ)、寒水石、ガラスビーズ等の無機ビーズを用いることができる。また、トップコート層5に添加可能な骨材として、例えば、アクリル、ナイロン、ウレタン等の合成樹脂ビーズを用いることができる。
【0019】
トップコート層5中における艶消し剤の含有比率は、トップコート層5全体の質量に対して25.0質量%以下であればよく、20.0質量%以下がより好ましく、15.0質量%以下がさらに好ましい。また、トップコート層5中における艶消し剤の含有比率は、トップコート層5全体の質量に対して5.0質量%以上であればよく、8.0質量%以上がより好ましく、10.0質量%以上がさらに好ましい。
トップコート層5中における艶消し剤の含有比率が上記数値範囲内であれば、トップコート層5に塗工ムラや塗工スジが生じる等の塗工適性(生産安定性)の低下を低減することができる、即ちトップコート層5に発生する塗工ムラや塗工スジを低減することができ、意匠性が向上する。
【0020】
艶消し剤の平均粒径(D50)は、例えばトップコート層5の厚さを基準として、0.3倍以上2倍以下の範囲内であれば好ましい。すなわち、艶消し剤の平均粒径(D50)をφとし、トップコート層5の厚さをDとしたときに、0.3D≦φ≦2Dの式が成立すれば好ましい。これは、艶消し剤の平均粒径がトップコート層5の0.3倍以上2倍以下の範囲内である場合、艶消し剤とトップコート層5との接触面積の拡大、及び艶消し剤自体の表面積拡大により、マット感が良好になる。
また、艶消し剤の平均粒径は、3μm以上15μm以下の範囲内であれば好ましい。これは、艶消し剤の平均粒径が3μm以上である場合、艶消し剤とトップコート層5との接触面積が拡大し、マット感が良好になり、艶消し剤の平均粒径が15μm以下である場合、耐傷性が向上する。
【0021】
また、艶消し剤の粒径分布(粒度分布)は複数のピークを有していれば好ましい。より詳しくは、艶消し剤の粒度分布は、3μm以上9μm以下の間と10μm以上15μm以下の間の2つのピークを有していれば好ましい。つまり、艶消し剤の粒度分布は、3μm以上9μm以下の範囲内にピーク(第1のピーク)を有し、且つ10μm以上15μm以下の範囲内にピーク(第2のピーク)を有していれば好ましい。艶消し剤の粒度分布に少なくとも2つのピーク(第1のピーク及び第2のピーク)があれば、艶消し剤による光の反射(乱反射)が顕著になり、よりマット感が向上する。粒径のピークが複数存在していることにより、艶消し剤の充填密度がより向上し、艶消し剤をより多く添加することが可能となる。このため、艶消し剤とトップコート層5との接触面積が拡大し、艶消し剤の表面積も拡大することにより、マット感が向上する。なお、艶消し剤の粒度分布は、画像分析型粒度分布計を用いて測定することが可能である。
【0022】
また、艶消し剤の形状は、平均粒径が3μm以上9μm以下の範囲内にあるものは不定形状であり、平均粒径が10μm以上15μm以下の範囲内にあるものは真球状であれば好ましい。ここで、「真球状」とは、円形度が0.6以上であることを意味し、本実施形態では、円形度が0.7以上であれば好ましく、0.9以上であればさらに好ましい。円形度が0.6未満であると艶消し剤としての機能が低下する場合がある。
真球度の指標は、画像分析型粒度分布計による円形度から評価することができる。例えば、平均円形度は、画像分析型粒度分布計にて測定した1000個以上の粒子の円形度の平均値として算出することができる。なお、画像上における複合粒子の面積をS、周囲長をLとしたとき、円形度は、「円形度=4πS/L2」の式で算出でき、円形度が1に近いほど真球度が高くなる。
また、「不定形状」とは、上述した「真球状」以外の形状を意味する。また、不定形状の粒子における「粒径」とは、画像分析型粒度分布計によって測定(評価)された粒径値を意味する。
【0023】
また、平均粒径が3μm以上9μm以下の範囲内にある艶消し剤(不定形粒子)の含有比率は、トップコート層5全体の質量に対して13質量%以上18質量%以下の範囲内であれば好ましく、15質量%以上18質量%以下の範囲内であればより好ましい。不定形粒子の含有比率が上記数値範囲内であれば、艶消し剤による光の反射(乱反射)がより顕著になり、さらにマット感が向上する。
また、平均粒径が10μm以上15μm以下の範囲内にある艶消し剤(真球状粒子)の含有比率は、トップコート層5全体の質量に対して3.5質量%以上9.0質量%以下の範囲内であれば好ましく、5.0質量%以上9.0質量%以下の範囲内であれば好ましい。真球状粒子の含有比率が上記数値範囲内であれば、艶消し剤による光の反射(乱反射)がより顕著になり、さらにマット感が向上する。
【0024】
また、平均粒径が3μm以上9μm以下の範囲内にある艶消し剤(不定形粒子)は、有機系添加剤(例えば、上述した骨材)及び無機系添加剤(例えば、上述したマット剤)の2種類を含み、無機系添加剤の含有比率は、トップコート層5全体の質量に対して2質量%以下であれば好ましい。より具体的に、平均粒径が3μm以上9μm以下の範囲内にある艶消し剤(不定形粒子)が、有機系添加剤及び無機系添加剤の2種類を含む場合には、有機系添加剤の含有比率は、トップコート層5全体の質量に対して14質量%以上16質量%以下の範囲内であり、無機系添加剤の含有比率は、トップコート層5全体の質量に対して1質量%以上2質量%以下の範囲内であれば好ましい。不定形の無機系添加剤の含有比率が上記数値範囲内であれば、艶消し剤による光の反射(乱反射)がより顕著になり、さらにマット感が向上する。
【0025】
また、平均粒径が10μm以上15μm以下の範囲内にある艶消し剤(真球状粒子)は、有機系添加剤(例えば、上述した骨材)及び無機系添加剤(例えば、上述したマット剤)の少なくとも一方を含んでいればよく、有機系添加剤のみであればより好ましい。
【0026】
トップコート層5の厚さは1μm以上10μm以下の範囲で設定することが好ましい。
また、トップコート層5は、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料、溶剤等の各種添加剤を含んでもよい。
トップコート層5には、耐候性を向上させるために、例えば、紫外線吸収剤及び光安定剤を添加してもよい。トップコート層5に添加可能な紫外線吸収剤としては、例えば、Tinuvin 400やTinuvin 479を用いることができる。また、トップコート層5に添加可能な光安定剤としては、例えば、Tinuvin 144やTinuvin 123を用いることができる。
【0027】
<裏面コート層6>
裏面コート層6は、ポリエステル系樹脂やエポキシ系樹脂を主成分とした塗料を塗装後、加熱焼付けして形成される。
(効果その他)
本実施形態のプリント金属化粧板10は、鋼鈑1、絵柄層(柄印刷層)4、トップコート層5をこの順に少なくとも備え、トップコート層5は、艶消し剤を含み、その艶消し剤は、マット剤及び骨材の少なくとも一方を含み、トップコート層5中における艶消し剤の含有比率は、トップコート層5全体の質量に対して25.0質量%以下である。
【0028】
この構成によれば、表面光沢値が低い場合であっても、耐候性を維持し、且つトップコート層5に塗工ムラや塗工スジが生じる等の塗工適性(生産安定性)の低下を低減したプリント金属化粧板10を提供可能となる。
【0029】
[実施例]
以下、本発明の実施形態に係るプリント金属化粧板10の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、JIS G 3302に準拠した厚さ0.4mmの溶融亜鉛めっき鋼鈑を鋼鈑1として用意した。続いて、鋼鈑1の表層に化成処理(クロメート処理)を施して化成皮膜7を設けた。
続いて、鋼鈑1の一方の面側に裏面コート層6を設け、さらに鋼鈑1の他方の面側にプライマーコート層2を設けた。プライマーコート層2の乾燥は、200℃以上で焼付け乾燥を行なった。
続いて、プライマーコート層2上にベースコート層3を設けた。ベースコート層3の乾燥は、200℃以上で焼付け乾燥を行なった。
続いて、グラビアオフセット印刷で、ベースコート層3上に絵柄層4を設けた。
ベースコート層3には、耐候剤として、UVA479(Tinuvin 479)、HALS123(Tinuvin 123)を、ベースコート層3全体の質量に対して1質量%、1質量%添加した。
続いて、絵柄層4上にトップコート剤を塗布して、塗布量(坪量)11g/cm2のトップコート層5を設けた。トップコート層5の乾燥は、200℃以上で焼付け乾燥を行なった。
トップコート層5には、耐候剤として、UVA400(Tinuvin 400)、UVA479(Tinuvin 479)、HALS144(Tinuvin 144)、HALS123(Tinuvin 123)を、トップコート層5全体の質量に対して3質量%、6質量%、2.5質量%、1質量%添加した。
また、トップコート層5には、マット剤として、平均粒径(D50)が4μmの不定形シリカを、トップコート層5全体の質量に対して1.6質量%添加した。
また、トップコート層5には、骨材として、平均粒径(D50)が5μmの不定形アクリルビーズ、平均粒径(D50)が15μmの真球状アクリルビーズを、トップコート層5全体の質量に対して15.0質量%、4.8質量%添加した。
こうして実施例1のプリント金属化粧板10を作製した。
なお、裏面コート層6の組成は、質量比で、ポリエステル系樹脂(約49質量%)、有機添加剤(約6質量%)及び無機添加剤(約51質量%)とし、その厚さは、5μm~6μmとした。
また、プライマーコート層2の組成は、質量比で、ポリエステル系樹脂(約57質量%)、有機添加剤(約1質量%)及び顔料(約42質量%)とし、その厚さは、1μmとした。
また、ベースコート層3の耐候剤以外の組成は、質量比で、ポリエステル系樹脂(約45%)、メラミン系樹脂(約15%)及び顔料(約38%)とした。その厚さは、13μmとした。
また、絵柄層4の組成は、質量比で、ポリエステル系樹脂(約49質量%)、有機添加剤(約1質量%)及び顔料(約50質量%)とした。
また、トップコート層5の耐候剤、マット剤、及び骨材以外の組成(構成樹脂)は、ポリエステル系樹脂とした。
【0030】
(実施例2)
実施例2では、4μmの不定形シリカ(マット剤)の添加量を1.1質量%とし、5μmの不定形アクリルビーズ(骨材)の添加量を14.2質量%とし、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を3.7質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例2のプリント金属化粧板10を作製した。
(実施例3)
実施例3では、4μmの不定形シリカ(マット剤)の添加量を1.8質量%とし、5μmの不定形アクリルビーズ(骨材)の添加量を15.8質量%とし、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を5.8質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例3のプリント金属化粧板10を作製した。
【0031】
(実施例4)
実施例4では、4μmの不定形シリカ(マット剤)の添加量を5.0質量%とし、5μmの不定形アクリルビーズ(骨材)の添加量を14.0質量%とし、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を3.5質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例4のプリント金属化粧板10を作製した。
【0032】
(実施例5)
実施例5では、5μmの不定形アクリルビーズ(骨材)に代えて、5μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を15.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例5のプリント金属化粧板10を作製した。
(実施例6)
実施例6では、5μmの不定形アクリルビーズ(骨材)の添加量を6.4質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例6のプリント金属化粧板10を作製した。
【0033】
(実施例7)
実施例7では、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を8.4質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例7のプリント金属化粧板10を作製した。
【0034】
(実施例8)
実施例8では、4μmの不定形シリカ(マット剤)の添加量を1.1質量%とし、5μmの不定形アクリルビーズ(骨材)の添加量を2.9質量%とし、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を1.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例8のプリント金属化粧板10を作製した。
【0035】
(実施例9)
実施例9では、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)に代えて、5μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を8.4質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例9のプリント金属化粧板10を作製した。
【0036】
(実施例10)
実施例10では、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を25.0質量%とし、それ以外のマット剤及び骨材については添加しなかった。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例10のプリント金属化粧板10を作製した。
【0037】
(実施例11)
実施例11では、4μmの不定形シリカ(マット剤)の添加量を2.6質量%とし、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を20.1質量%とし、それ以外のマット剤及び骨材については添加しなかった。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例11のプリント金属化粧板10を作製した。
【0038】
(実施例12)
実施例12では、5μmの不定形アクリルビーズ(骨材)の添加量を2.6質量%とし、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を20.1質量%とし、それ以外のマット剤及び骨材については添加しなかった。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例12のプリント金属化粧板10を作製した。
【0039】
(実施例13)
実施例13では、5μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を2.6質量%とし、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を20.1質量%とし、それ以外のマット剤及び骨材については添加しなかった。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、実施例13のプリント金属化粧板10を作製した。
【0040】
(比較例1)
比較例1では、5μmの不定形アクリルビーズ(骨材)の添加量を12.7質量%とし、15μmの真球状アクリルビーズ(骨材)の添加量を12.7質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、比較例1のプリント金属化粧板10を作製した。
【0041】
(性能評価、評価結果)
実施例1~13のプリント金属化粧板10と、比較例1のプリント金属化粧板10に対し、それぞれ、「生産安定性試験」、「低艶性試験(光沢値測定)」、「耐候性試験」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0042】
<生産安定性試験>
実施例1~13、比較例1のプリント金属化粧板10を生産する際、トップコート層5に発生する塗工ムラや塗工スジの有無を目視にて確認した。本評価基準を以下に示す。
〔評価基準〕
塗工ムラや塗工スジの発生・無:〇(合格)
塗工ムラや塗工スジの発生・有:×(不合格)
【0043】
<低艶性試験(光沢値測定)>
60°光沢計を用いて、実施例1~13、比較例1のプリント金属化粧板10のトップコート層5の表面における60°光沢度(光沢値)を測定した。本性能試験における「60°光沢度」とは、JIS B 0601で規定される60度鏡面光沢度(Gs60)を意味する。また、各実施例における光沢度は、トップコート層5の異なる箇所を10回測定して得られた平均値をそれぞれ用いた。本評価基準を以下に示す。
〔評価基準〕
光沢値が6.9以下:〇(合格)
光沢値が6.9超10.9以下:△(合格)
光沢値が10.9超:×(不合格)
【0044】
<耐候性試験>
実施例1~13、比較例1のプリント金属化粧板10に対して耐候性試験を行った。そして、耐候性試験の外観(プリント金属化粧板の表面における白化の有無)を以下の基準により目視評価した。耐候性試験はダイプラ・ウィンテス(株)製・メタルウェザー試験機(KU-R5DCI-A)を用い、光源にはメタルハライドランプを使用し、ブラックパネル温度63℃、照度65mW/cm2にて、(UV照射20時間+結露4時間)を1サイクルとし30サイクル実施した。また、耐候経時600時間として行った。本評価基準を以下に示す。
〔評価基準〕
白化が確認できなかった:〇(合格)
白化が確認できたが、許容範囲内である:△(合格)
白化が確認でき、製品としては許容できない:×(不合格)
【0045】
【0046】
【0047】
(評価結果)
表1、表2に示すように、鋼鈑1、絵柄層4、トップコート層5をこの順に少なくとも備えるプリント金属化粧板10であって、トップコート層5が艶消し剤を含み、その艶消し剤がマット剤及び骨材の少なくとも一方を含み、トップコート層5中における艶消し剤の含有比率がトップコート層5全体の質量に対して25.0質量%以下であれば、表面光沢値が低い場合であっても、耐候性を維持し、且つトップコート層5に塗工ムラや塗工スジが生じる等の塗工適性(生産安定性)の低下を低減することができる。
【0048】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【0049】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
鋼鈑、柄印刷層、トップコート層をこの順に少なくとも備えるプリント金属化粧板であって、
前記トップコート層は、艶消し剤を含み、
前記艶消し剤は、マット剤及び骨材の少なくとも一方を含み、
前記トップコート層中における前記艶消し剤の含有比率は、前記トップコート層全体の質量に対して25.0質量%以下であることを特徴とするプリント金属化粧板。
(2)
前記艶消し剤の粒度分布は、3μm以上9μm以下の間と10μm以上15μm以下の間の2つのピークを有することを特徴とする上記(1)に記載のプリント金属化粧板。
(3)
前記艶消し剤の形状は、平均粒径が3μm以上9μm以下の範囲内にあるものは不定形状であり、平均粒径が10μm以上15μm以下の範囲内にあるものは真球状であることを特徴とする上記(2)に記載のプリント金属化粧板。
(4)
平均粒径が3μm以上9μm以下の範囲内にある前記艶消し剤の含有比率は、前記トップコート層全体の質量に対して15質量%以上18質量%以下の範囲内であることを特徴とする上記(2)または(3)に記載のプリント金属化粧板。
(5)
平均粒径が3μm以上9μm以下の範囲内にある前記艶消し剤は、有機系添加剤及び無機系添加剤の2種類を含み、
前記無機系添加剤の含有比率は、前記トップコート層全体の質量に対して2質量%以下であることを特徴とする上記(2)から(4)のいずれか1項に記載のプリント金属化粧板。
(6)
前記トップコート層は、耐候剤をさらに含むことを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載のプリント金属化粧板。
(7)
前記プリント金属化粧板は、裏面コート層、化成皮膜、前記鋼鈑、化成皮膜、プライマーコート層、ベースコート層、前記柄印刷層、前記トップコート層をこの順に少なくとも備えることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか1項に記載のプリント金属化粧板。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のプリント金属化粧板は、建築内装用および外装用、建具の表面や床材等々の建築用資材として利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 鋼鈑
2 プライマーコート層
3 ベースコート層
4 絵柄層
5 トップコート層
6 裏面コート層
7 化成皮膜
10 プリント金属化粧板