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  • 特開-ゴルフボール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177978
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
A63B37/00 538
A63B37/00 536
A63B37/00 534
A63B37/00 618
A63B37/00 644
A63B37/00 658
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090977
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】井上 英高
(72)【発明者】
【氏名】橋之口(荒瀬) 真理子
(57)【要約】
【課題】ドライバーショットでの飛距離が向上し、且つアプローチショット(特に芝を噛んだ条件)およびミドルアイアンショットでのスピン性能に優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のゴルフボールは、球状コアと前記球状コアの外側に位置するカバーとを有し、球状コアの中心硬度(ショアC硬度)、球状コアの中心から表面に向かって2.5mm、5mm、7.5mm、10mm、12.5mm、15mm地点の硬度(ショアC硬度)、球状コアの表面硬度(ショアC硬度)をそれぞれH、H2.5、H、H7.5、H10、H12.5、H15、Hとしたとき、下記の関係を満たすことを特徴とする。
(H2.5-H)>(H12.5-H10)>(H-H15
(H2.5+H+H7.5+H10)/4≧70
75≦(H15+H)/2≦85
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状コアと前記球状コアの外側に位置するカバーとを有するゴルフボールであって、球状コアの中心硬度(ショアC硬度)、球状コアの中心から表面に向かって、2.5mm、5mm、7.5mm、10mm、12.5mm、15mm地点の硬度(ショアC硬度)、球状コアの表面硬度(ショアC硬度)をそれぞれH、H2.5、H、H7.5、H10、H12.5、H15、Hとしたとき、下記の関係を満たすことを特徴とするゴルフボール。
(H2.5-H)>(H12.5-H10)>(H-H15
(H2.5+H+H7.5+H10)/4≧70
75≦(H15+H)/2≦85
【請求項2】
(H2.5-H)≧5の関係を満たす請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
2≦(H12.5-H10)≦7の関係を満たす請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項4】
0≦(H-H15)≦5の関係を満たす請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項5】
(H2.5-H)-(H12.5-H10)≦5の関係を満たす請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項6】
(H12.5-H10)-(H-H15)≦5の関係を満たす請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項7】
(H-H2.5)≦3、(H7.5-H)≦3および(H10-H7.5)≦3の関係を満たす請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項8】
15≦(H-H)≦25の関係を満たす請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項9】
≧60の関係を満たす請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項10】
前記球状コアと前記カバーの間に中間層を有し、球状コアの表面硬度(ショアC硬度)と中間層の表面硬度(ショアC硬度)とボールの表面硬度(ショアC硬度)が、球状コアの表面硬度<中間層の表面硬度>ボールの表面硬度の関係を満たす請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項11】
ゴルフボールに、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量が、2.80mm以下である請求項1に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関するものであり、特にコアの硬度分布の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドライバーショットの飛距離を大きくするために、様々な検討が行われてきた。例えば、コアの表面と中心の硬度差を大きくしスピン量を低減させることで、ドライバーショットの飛距離を大きくする技術がある。また、ドライバーショットの飛距離のみならず、ミドルアイアンショットの飛距離やアプローチショットのスピン性能が良好であることも求められている。このような技術としては、例えば、特許文献1、2がある。
【0003】
特許文献1には、コア、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールであって、上記コアは基材ゴムを主材として形成され、その直径が32mm以上であり、上記中間層,カバーの各層は樹脂材料により形成され、上記コアの内部硬度について、コア中心のショアC硬度をCc、コア中心から2mmの位置のショアC硬度をC2、コア中心から4mmの位置のショアC硬度をC4、コア中心から6mmの位置のショアC硬度をC6、コア中心から8mmの位置のショアC硬度をC8、コア中心から10mmの位置のショアC硬度をC10、コア中心から12mmの位置のショアC硬度をC12、コア中心から14mmの位置のショアC硬度をC14、コア中心から16mmの位置のショアC硬度をC16、コア表面のショアC硬度をCs、コア表面から3mm内側の位置のショアC硬度をCs-3、及びコア表面とコア中心の中間位置の硬度をCmとしたとき、C8-C6の値、C6-C4の値、C4-C2の値、C2-Ccの値がいずれも4.0以内であり、C16-C14の値、C14-C12の値、C12-C10の値、C10-C8の値がいずれも5.5以内であると共に、下記式(1)(2)及び(3)
Cs-Cc≧22 ・・・(1)
(Cs-Cm)/(C4-Cc)≧4.0 ・・・(2)
Cs-Cs-3≦5.0 ・・・(3)
を満たすものであり、且つ、上記コアを中間層で被覆した球体(中間層被覆球体)の表面硬度とボールの表面硬度とが、下記式
ボール表面硬度<中間層被覆球体の表面硬度 ・・・(4)
(但し、上記の各層の硬度はショアC硬度の値を意味する。)
を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールが開示されている。
【0004】
特許文献2には、コアとカバーとの間に中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コア、該コアの周囲に中間層が被覆された球体(中間層被覆球体)及びボールの表面硬度がショアD硬度で、ボール表面硬度≦中間層被覆球体の表面硬度≧コアの表面硬度の関係を満たし、中間層の厚さ及びカバーの厚さが、(中間層の厚さ-カバー厚さ)≧0の関係を満たし、コア硬度分布において、JIS-C硬度で、22≦コア表面硬度(Cs)-コア中心硬度(Cc)、5≧[コア中心から5mmの位置の硬度(C5)-コア中心硬度(Cc)]>0、[コア表面硬度(Cs)-コア中心硬度(Cc)]/[コアの表面と中心の中間位置の硬度(Cm)-コア中心硬度(Cc)]≧4の関係を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-62036号公報
【特許文献2】特開2016-112308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プロや上級者からはミドルアイアンショットのスピン量を増やしたいという要望がある。しかしながら、ドライバーショットの飛距離を大きくするためにスピン量を低減すると、ミドルアイアンショットのスピン量も低下する。また、芝を噛んだ状態におけるアプローチショットでのスピン量を増加させることもプロや上級者から求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ドライバーショットの飛距離が向上し、且つアプローチショット(特に芝を噛んだ条件)およびミドルアイアンショットのスピン性能に優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のゴルフボールは、球状コアと前記球状コアの外側に位置するカバーとを有するゴルフボールであって、球状コアの中心硬度(ショアC硬度)、球状コアの中心から表面に向かって、2.5mm、5mm、7.5mm、10mm、12.5mm、15mm地点の硬度(ショアC硬度)、球状コアの表面硬度(ショアC硬度)をそれぞれH、H2.5、H、H7.5、H10、H12.5、H15、Hとしたとき、下記の関係を満たすことを特徴とする。
(H2.5-H)>(H12.5-H10)>(H-H15
(H2.5+H+H7.5+H10)/4≧70
75≦(H15+H)/2≦85
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドライバーショットの飛距離が向上し、且つアプローチショット(特に芝を噛んだ条件)およびミドルアイアンショットのスピン性能に優れたゴルフボールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のゴルフボールは、球状コアと前記球状コアの外側に位置するカバーとを有するゴルフボールであって、球状コアの中心硬度(ショアC硬度)、球状コアの中心から表面に向かって、2.5mm、5mm、7.5mm、10mm、12.5mm、15mm地点の硬度(ショアC硬度)、球状コアの表面硬度(ショアC硬度)をそれぞれH、H2.5、H、H7.5、H10、H12.5、H15、Hとしたとき、下記の関係を満たすことを特徴とする。
(H2.5-H)>(H12.5-H10)>(H-H15
(H2.5+H+H7.5+H10)/4≧70
75≦(H15+H)/2≦85
【0011】
本発明のゴルフボールは、上記のように構成されることにより、ドライバーショット時の初速が高くなり、かつ、アプローチショット(特に芝を噛んだ条件)およびミドルアイアンショットのスピン速度が高くなる。その結果、ドライバーショットの飛距離が大きくなり、アプローチショットおよびミドルアイアンショットのスピン性能が向上する。
【0012】
球状コアの中心硬度(ショアC硬度)、球状コアの中心から表面に向かって、2.5mm、5mm、7.5mm、10mm、12.5mm、15mm地点の硬度(ショアC硬度)は、球状コアを球状コア中心を通る断面で切断し、切断面の中心、および、中心から所定の距離の地点で測定した硬度である。球状コアの表面硬度は、球状コアの表面で測定した硬度である。
【0013】
本発明において、球状コアは、(H2.5-H)>(H12.5-H10)を満足する。
前記硬度差(H2.5-H)と硬度差(H12.5-H10)との差((H2.5-H)-(H12.5-H10))は、ショアC硬度で、0を超えることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましく、5以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。差((H2.5-H)-(H12.5-H10))が前記範囲内であれば、ドライバーショットのボール初速、および、アプローチショット(特に芝を噛んだ条件)およびミドルアイアンショットでのボールスピン速度がより高くなる。
【0014】
本発明において、球状コアは、(H12.5-H10)>(H-H15)を満足する。
前記硬度差(H12.5-H10)と硬度差(H-H15)との差((H12.5-H10)-(H-H15))は、ショアC硬度で、0を超えることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましく、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。差((H12.5-H10)-(H-H15))が前記範囲内であれば、ドライバーショットのボール初速、および、アプローチショット(特に芝を噛んだ条件)およびミドルアイアンショットでのボールスピン速度がより高くなる。
【0015】
球状コアの中心から2.5mm地点の硬度(H2.5)と、5mm地点の硬度(H)と、7.5mm地点の硬度(H7.5)と、10mm地点の硬度(H10)の平均硬度((H2.5+H+H7.5+H10)/4)は、ショアC硬度で、70以上であることが好ましく、71以上であることがより好ましく、72以上であることがさらに好ましく、80以下であることが好ましく、79以下であることがより好ましく、78以下であることがさらに好ましい。前記平均硬度が前記範囲内であれば、ドライバーショットでのゴルフボールの初速が速くなり、かつスピン速度の増大を抑制できるからである。
【0016】
球状コアの中心から15mm地点の硬度(H15)と球状コアの表面硬度(H)の平均硬度((H15+H)/2)は、ショアC硬度で、75以上であることが好ましく、76以上であることがより好ましく、77以上であることがさらに好ましく、85以下であることが好ましく、84以下であることがより好ましく、83以下であることがさらに好ましい。前記平均硬度が上記範囲内であれば、ミドルアイアンショットでのスピン速度が速くなり、かつ耐久性が良好となるからである。
【0017】
前記硬度差(H2.5-H)は、ショアC硬度で、5以上であることが好ましく、5.5以上であることがより好ましく、6以上であることがさらに好ましい。また、前記硬度差(H2.5-H)の上限は特に限定されないが、ショアC硬度で、11以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、9以下であることがさらに好ましい。硬度差(H2.5-H)が前記範囲内であれば、ドライバーショットでのゴルフボールの初速が速くなるからである。
【0018】
前記硬度差(H12.5-H10)は、ショアC硬度で、2以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、7以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。硬度差(H12.5-H10)が前記範囲内であればミドルアイアンでのスピン速度が速くなるからである。
【0019】
前記硬度差(H-H15)は、ショアC硬度で、5以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。硬度差(H-H15)がショアC硬度で5以下であれば、アプローチショット(特に芝を噛んだ条件)およびミドルアイアンショットのスピン速度が高くなる。また、前記硬度差(H-H15)は、特に限定されないが、ショアC硬度で、0以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。
【0020】
球状コアの中心から5mm地点の硬度(H)と球状コアの中心から2.5mm地点の硬度(H2.5)との硬度差(H-H2.5)は、ショアC硬度で、3以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましく、0以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。硬度差(H-H2.5)が前記範囲内であれば、ドライバーショットでのゴルフボールの初速が速くなるからである。
【0021】
球状コアの中心から7.5mm地点の硬度(H7.5)と球状コアの中心から5mm地点の硬度(H)との硬度差(H7.5-H)は、ショアC硬度で、3以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましく、0以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。硬度差(H7.5-H)が、前記範囲内であれば、ドライバーショットでのゴルフボールの初速が速くなるからである。
【0022】
球状コアの中心から10mm地点の硬度(H10)と球状コアの中心から7.5mm地点の硬度(H7.5)との硬度差(H10-H7.5)は、ショアC硬度で、3以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましく、0以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。硬度差(H10-H7.5)が、前記範囲内であれば、ドライバーショットでのゴルフボールの初速が速く、かつドライバーショットでの打感が軟らかく良好となるからである。
【0023】
球状コアの中心から15mm地点の硬度(H15)と球状コアの中心から12.5mm地点の硬度(H12.5)との硬度差(H15-H12.5)は、ショアC硬度で、7以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、0超であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。硬度差(H15-H12.5)が、前記範囲内であれば、ミドルアイアンショットでのスピン速度が速く、打感が軟らかく良好となるからである。
【0024】
前記球状コアの表面硬度(H)は、特に限定されないが、ショアC硬度で75以上であることが好ましく、76以上であることがより好ましく、77以上であることがさらに好ましく、85以下であることが好ましく、84以下であることがより好ましく、83以下であることがさらに好ましい。前記表面硬度(H)が上記範囲内であれば、アプローチショットでの打感が軟らかくなり、かつ耐久性が良好となるからである。
【0025】
球状コアの表面硬度(H)と中心硬度(H)との硬度差(H-H)は、ショアC硬度で、15以上であることが好ましく、16以上であることがより好ましく、17以上であることがさらに好ましく、25以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。硬度差(H-H)が前記範囲内であれば、ドライバーショットでのスピン速度が抑制され、飛距離が増大するからである。
【0026】
前記球状コアの中心硬度(H)は、特に限定されないが、ショアC硬度で、60以上であることが好ましく61以上であることがより好ましく、62以上であることがさらに好ましく、72以下であることが好ましく、71以下であることがより好ましく、70以下であることがさらに好ましい。球状コアの中心硬度(H)が、前記範囲内であれば、ドライバーショットでのゴルフボールの初速が速くなり、スピン速度が抑制されるからである。
【0027】
本発明において、球状コアは、(H10-H)≧7を満足することが好ましい。
前記硬度差(H10-H)は、ショアC硬度で、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましい。硬度差(H10-H)がショアC硬度で7以上であれば、ドライバーショットのゴルフボールの初速が高くなる。また、前記硬度差(H10-H)は、特に限定されないが、ショアC硬度で、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましい。
【0028】
前記硬度差(H10-H)と硬度差(H-H15)との比((H10-H)/(H-H15))は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、12以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。前記硬度差(H10-H)と硬度差(H-H15)との比((H10-H)/(H-H15))が、前記範囲内であれば、ミドルアイアンでのスピン速度が速くなるからである。
【0029】
本発明のゴルフボールの球状コアは、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、および(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物(以下、「コア用ゴム組成物」という場合がある。)から形成されることが好ましい。
【0030】
(a)基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に、反発に有利なシス-1,4-結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンが好適である。
【0031】
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2-ビニル結合の含有量が2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が2質量%以下であれば、反発性が良くなる。
【0032】
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4-シス結合が高含量、1,2-ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
【0033】
前記ハイシスポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0034】
前記ハイシスポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下である。ハイシスポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が2.0以上であれば、作業性がよくなり、6.0以下であれば反発性が高くなる。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC-8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
【0035】
(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、共架橋剤として、ゴム組成物に配合されるものであり、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。
【0036】
炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げることができる。
【0037】
炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましい。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。特に、二価の金属塩としては、得られるゴルフボールの反発性が高くなるということから、アクリル酸亜鉛が好適である。なお、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0038】
(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が15質量部以上であれば、形成されるコアが適当な硬さを有し、ゴルフボールの反発性が良くなる。一方、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が50質量部以下であれば、形成されるコアが硬くなりすぎず、ゴルフボールの打球感が良好である。
【0039】
(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0040】
(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.6質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.5質量部以下であり、さらに好ましくは1.0質量部以下である。(c)架橋開始剤の含有量が、前記範囲内であれば、形成されるコアの硬度が適度になり、ゴルフボールの反発性が良好になる。
【0041】
前記ゴム組成物は、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のみを含有する場合、さらに(d)金属化合物を含有することが好ましい。ゴム組成物中で炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を金属化合物で中和することにより、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を使用する場合と実質的に同様の効果が得られるからである。また、共架橋剤として、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とその金属塩とを併用する場合は、(d)金属化合物を用いてもよい。
【0042】
前記(d)金属化合物としては、ゴム組成物中において(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。前記(d)金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。前記(d)金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高いゴルフボールが得られる。これらの(d)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記ゴム組成物は、さらに(e)有機硫黄化合物を含有することが好ましい。(e)有機硫黄化合物としては、分子内に硫黄原子を有する有機化合物であれば、特に限定されず、例えば、チオール基(-SH)、または、硫黄数が2~4のポリスルフィド結合(-S-S-、-S-S-S-、または、-S-S-S-S-)を有する有機化合物、あるいはこれらの金属塩(-SM、-S-M-S-、Mは金属原子)を挙げることができる。前記(e)有機硫黄化合物としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾール類などを挙げることができる。
【0044】
前記チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;4-フルオロチオフェノール、2,4-ジフルオロチオフェノール、2,5-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,4,5-トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6-テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2-クロロチオフェノール、4-クロロチオフェノール、2,4-ジクロロチオフェノール、2,5-ジクロロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、2,4,5,6-テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;4-ブロモチオフェノール、2,4-ジブロモチオフェノール、2,5-ジブロモチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,4,5-トリブロモチオフェノール、2,4,5,6-テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;4-ヨードチオフェノール、2,4-ジヨードチオフェノール、2,5-ジヨードチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリヨードチオフェノール、2,4,5,6-テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。
【0045】
前記チオナフトール類(ナフタレンチオール類)としては、2-チオナフトール、1-チオナフトール、1-クロロ-2-チオナフトール、2-クロロ-1-チオナフトール、1-ブロモ-2-チオナフトール、2-ブロモ-1-チオナフトール、1-フルオロ-2-チオナフトール、2-フルオロ-1-チオナフトール、1-シアノ-2-チオナフトール、2-シアノ-1-チオナフトール、1-アセチル-2-チオナフトール、2-アセチル-1-チオナフトール、またはこれらの金属塩を挙げることができる。
【0046】
ポリスルフィド類とは、ポリスルフィド結合を有する有機硫黄化合物であり、例えば、ジスルフィド類、トリスルフィド類、テトラスルフィド類が挙げられる。前記ポリスルフィド類としては、ジフェニルポリスルフィド類が好ましい。
【0047】
ジフェニルポリスルフィド類としては、ジフェニルジスルフィドの他;ビス(4-フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィド等のハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド等のアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;などが挙げられる。
【0048】
チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムテトラスルフィド類が挙げられる。チオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンチオカルボン酸が挙げられる。ジチオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンジチオカルボン酸が挙げられる。スルフェンアミド類としては、例えば、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
【0049】
前記(e)有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0050】
前記(e)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。(e)有機硫黄化合物の含有量が、前記範囲内であれば、反発性が良好になる。
【0051】
前記ゴム組成物は、さらに(f)カルボン酸および/またはその金属塩を含有してもよい。(f)カルボン酸および/またはその金属塩としては、炭素数が1~30のカルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)、芳香族カルボン酸(安息香酸など)のいずれも使用できる。前記(f)カルボン酸および/またはその金属塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下であることが好ましい。
【0052】
前記ゴム組成物は、必要に応じて、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。
【0053】
ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。充填剤の含有量が、0.5質量部以上であれば、重量調整が容易になり、30質量部以下であれば、ゴム成分の重量分率が大きくなり反発性が高くなる傾向があるからである。
【0054】
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0055】
前記ゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、および、必要に応じて配合するその他の成分を混練することにより得られる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
【0056】
球状コアは、混練後のゴム組成物を金型内で加硫(加熱プレス成形)することにより得ることができる。上記したコア硬度要件を満たしやすい観点から、2段階で加硫を行うことが好ましく、下記の条件で加硫を行うことがより好ましい。
【0057】
第1段階では、加硫温度は、120℃以上が好ましく、125℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましく、160℃以下が好ましく、155℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。加硫時間は、5分間以上が好ましく、6分間以上がより好ましく、7分間以上がさらに好ましく、20分間未満が好ましく、18分間以下がより好ましく、15分間以下がさらに好ましい。
【0058】
第2段階では、加硫温度は、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、170℃以下が好ましく、165℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。加硫時間は、5分間以上が好ましく、6分間以上がより好ましく、7分間以上がさらに好ましく、20分間以下が好ましく、18分間以下がより好ましく、15分間以下がさらに好ましい。
【0059】
第2段階と第1段階の加硫温度の差(第2段階の加硫温度-第1段階の加硫温度)は、2℃以上が好ましく、3℃以上がより好ましく、4℃以上がさらに好ましく、20℃以下が好ましく、18℃以下がより好ましく、16℃以下がさらに好ましい。
【0060】
前記球状コアの構造は、単層構造と多層構造のいずれもよいが、単層構造であることが好ましい。
【0061】
前記球状コアの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは36.8mm以上、さらに好ましくは38.8mm以上であり、42.2mm以下が好ましく、41.8mm以下がより好ましく、さらに好ましくは41.2mm以下であり、最も好ましくは40.8mm以下である。前記球状コアの直径が34.8mm以上であれば、カバーの厚みが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、球状コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
【0062】
前記球状コアは、直径34.8mm~42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向に球状コアが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、より好ましくは2.5mm以上、さらに好ましくは3.0mm以上であり、5.0mm以下が好ましく、より好ましくは4.5mm以下、さらに好ましくは4.0mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上であれば打球感がより良好となり、5.0mm以下であれば、反発性がより良好となる。
【0063】
本発明のゴルフボールは、コアの外側に位置するカバーを有する。前記カバーは、樹脂成分を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱ケミカル(株)から商品名「テファブロック」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。
【0064】
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2~8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン-(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
【0065】
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM3711(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
【0066】
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)など)」が挙げられる。
【0067】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
【0068】
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記アイオノマー樹脂は、単独で若しくは2種以上を混合して使用しても良い。
【0069】
前記樹脂組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。前記樹脂組成物の樹脂成分中の熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。前記樹脂組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂のみを含有してもよい。
【0070】
前記樹脂組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0071】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部であって、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部以下であれば、得られるカバーの耐久性が損なわれない。
【0072】
前記カバーの材料硬度(即ち、カバーを構成する樹脂組成物のスラブ硬度)は、所望のゴルフボールの性能に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、飛距離を重視するディスタンス系のゴルフボールの場合、カバーの材料硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上がさらに好ましく、80以下が好ましく、70以下がより好ましく、68以下がさらに好ましい。カバーの材料硬度を50以上にすることにより、ドライバーショットおよびアイアンショットにおいて、高打出角で低スピンのゴルフボールが得られ、飛距離が向上する。また、カバーの材料硬度を80以下とすることにより、耐久性に優れたゴルフボールが得られる。また、コントロール性を重視するスピン系のゴルフボールの場合、カバーの材料硬度は、ショアD硬度で、50未満が好ましく、48以下がより好ましく、45以下がさらに好ましく、20以上が好ましく、23以上がより好ましく、26以上がさらに好ましい。カバーの材料硬度が、ショアD硬度で50未満であれば、アプローチショットのスピン量が高くなり、グリーン上で止まりやすいゴルフボールが得られる。また、スラブ硬度を20以上とすることにより、耐擦過傷性が向上する。複数のカバー層の場合は、各層を構成するカバーの材料硬度は、同一あるいは異なっても良い。
【0073】
前記カバーを成形する方法としては、例えば、前記樹脂組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、樹脂組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、前記樹脂組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0074】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。樹脂組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、樹脂組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、樹脂組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有するカバーを成形できる。
【0075】
樹脂組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状の樹脂組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、樹脂組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa~15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃~250℃に加熱した樹脂組成物を0.5秒~5秒で注入し、10秒~60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0076】
カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が前記範囲内であれば、ディンプルサイズが適度となり、ディンプルの効果が得られやすい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0077】
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.5mm以上である。カバーの厚みが0.3mm以上であれば、カバーの打撃耐久性や耐摩耗性が向上する。複数のカバー層の場合は、複数のカバー層の合計厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0078】
前記カバーは、単層であってもよいし、複数層であってもよい。なお、本発明では、カバーが複数層を有する場合は、球状コアと最も外側に位置するカバー層との間に位置するカバー層を単に「中間層」と称することがある。
【0079】
前記カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、7μm以上がさらに好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm以上であれば、継続的に使用しても塗膜が摩耗消失しにくくなり、膜厚が50μm以下であれば、ディンプルの効果が十分に得られ、ゴルフボールの飛行性能が向上する。
【0080】
本発明のゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、本発明のゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0081】
本発明のゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールの縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上、さらに好ましくは2.4mm以上であり、3.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.3mm以下、さらに好ましくは3.1mm以下であり、特に好ましくは2.8mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を3.5mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【0082】
本発明のゴルフボールの構造は、球状コアと前記球状コアの外側に位置するカバーとを有するものであれば、特に限定されない。図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、球状コア2を被覆するカバー3とを有する。このカバーの表面には、多数のディンプル31が形成されている。このゴルフボール1の表面のうち、ディンプル31以外の部分は、ランド32である。このゴルフボール1は、カバー3の外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0083】
本発明のゴルフボールとしては、例えば、球状コアと前記球状コアを被覆するように配設された単層のカバーとからなるツーピースゴルフボール;球状コアと、前記球状コアを被覆するように配設された一層以上の中間層と、前記中間層を被覆するように配設された単層のカバーとを有するマルチピースゴルフボール(スリーピースゴルフボールを含む)などを挙げることができる。上記いずれの構造のゴルフボールにも本発明を好適に利用できる。
【0084】
好ましい態様では、本発明のゴルフボールは、球状コアと1層以上の中間層とカバーとを有し、球状コアの表面硬度(ショアC硬度)と中間層の表面硬度(ショアC硬度)とボールの表面硬度(ショアC硬度)が、球状コアの表面硬度<中間層の表面硬度>ボールの表面硬度の関係を満たすものである。この関係を満たすことで、ドライバーショットでのゴルフボールの初速が速くなり、アプローチショットでのスピン速度が速くなる。なお、2層以上の中間層が設けられる場合、前記中間層の表面硬度は、球状コアに2層以上の中間層がすべて形成された球体の表面において測定した硬度である。
【0085】
前記中間層の表面硬度は、ショアC硬度で、80以上が好ましく、85以上がより好ましく、90以上がさらに好ましく、100以下が好ましく、99以下がより好ましく、98以下がさらに好ましい。中間層の表面硬度が、前記範囲内であれば、ドライバーショットでのゴルフボールの初速が速くなるからである。なお、中間層の表面硬度は、中間層を被覆した球体の表面硬度である。
【0086】
前記中間層のスラブ硬度は、ショアD硬度で60以上が好ましく、62以上がより好ましく、64以上がさらに好ましく、76以下が好ましく、74以下がより好ましく、72以下がさらに好ましい。中間層のスラブ硬度が、前記範囲内であれば、ドライバーショットでのゴルフボールのスピン速度が抑制され、打感がやわらかくなるからである。
【0087】
前記中間層の厚みは、0.8mm以上が好ましく、0.9mm以上がより好ましく、1.0mm以上がさらに好ましく、2.0mm以下が好ましく、1.9mm以下がより好ましく、1.8mm以下がさらに好ましい。中間層の厚みが、前記範囲内であれば、耐久性が良好となりミドルアイアンショットでの打感が軟らかく良好となるからである。
【0088】
本発明のゴルフボールの表面硬度は、ショアC硬度で、50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上がさらに好ましく、80以下が好ましく、75以下がより好ましく、70以下がさらに好ましい。ゴルフボールの表面硬度が、前記範囲内であれば、アプローチショットでのスピン初速が速くなるからである。
【実施例0089】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0090】
[評価方法]
(1)圧縮変形量(mm)
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
【0091】
(2)スラブ硬度(ショアD硬度)
中間層用組成物またはカバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM-D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
【0092】
(3)コア硬度分布(ショアC硬度)
スプリング式硬度計ショアC型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、コアの表面部において測定したショアC硬度をコア表面硬度とした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心、および、中心から所定の距離において硬度を測定した。なお、コア硬度は、コア断面の中心から所定の距離の4点で硬度を測定して、これらを平均することにより算出した。
【0093】
(4)中間層の表面硬度およびボールの表面硬度(ショアC硬度)
スプリング式硬度計ショアC型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、球状コア上に中間層が形成された中間層被覆球体の表面部およびゴルフボールの表面部において測定したショアC硬度をそれぞれ中間層の表面硬度、ボールの表面硬度とした。
【0094】
(5)ドライバーショットのボール初速、スピン量、飛距離
ゴルフラボラトリー社製のスイングマシンに、W#1ドライバー(住友ゴム工業社製、商品名「SRIXON ZX7」、ロフト角:10.5°)を装着した。打点はフェースセンターに設定した。ヘッドスピード50m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのボール初速(m/秒)、スピン量(rpm)、ならびに飛距離(発射始点から落下地点までの距離(m))を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン量は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。ドライバーショットのスピン量、ボール初速、飛距離は、表4~表6において、ゴルフボールNo.6との差で示した。
【0095】
(6)ミドルアイアンショットのスピン量
ゴルフラボラトリー社製のスイングマシンに、I#7アイアン(住友ゴム工業社製、商品名「SRIXON ZX7」、ロフト角:32°)を装着した。打点はフェースセンターに設定した。ヘッドスピード39m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのスピン量(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン量は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。ミドルアイアンショットのスピン量は、表4~表6において、ゴルフボールNo.6との差で示した。
【0096】
(7)アプローチショットのスピン量(芝を噛んだ条件)
ゴルフラボラトリー社製のスイングマシンに、サンドウェッジ(クリーブランドゴルフ社製、商品名「RTX ZIPCORE」、ロフト角:58°)を取り付け、測定対象となるゴルフボールに野芝の葉(長さ約3cm)を2枚貼付け、打撃時にクラブフェースとゴルフボールとの間に野芝が位置するように、ヘッドスピード16m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのスピン量(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン量は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。アプローチショットのスピン量は、表4~表6において、ゴルフボールNo.6との差で示した。
【0097】
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示した配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で、表1に示した加硫条件で成形することにより直径38.9mm~39.7mmの球状コアを得た。なお、ゴルフボールの質量が45.6gとなるように、硫酸バリウムの量を調整した。
【0098】
【表1】
【0099】
ポリブタジエン:JSR社製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日触テクノファインケミカル社製、「ZN-DA90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
安息香酸:東京化成工業社製(純度98%以上)
ペンタブロモジフェニルジスルフィド:川口化学工業社製
ジフェニルジスルフィド:住友精化製
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
【0100】
(2)中間層用組成物およびカバー用組成物の調製
表2、表3に示した配合の材料を二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物およびカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160~240℃に加熱された。
【0101】
【表2】
【0102】
サーリン(登録商標)8150:デュポン社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン(登録商標)AM7329:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
二酸化チタン:石原産業社製、「A-220」
ハイミランAM1605:三井・デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
【0103】
【表3】
【0104】
エラストラン(登録商標)NY84A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
エラストラン(登録商標)NY82A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
チヌビン(登録商標)770:BASFジャパン社製、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)
二酸化チタン:石原産業社製、「A-220」
【0105】
(3)ゴルフボールの作製
前記中間層用組成物を上述のようにして得られた球状コア上に射出成形して、中間層被覆球体を得た。得られた中間層被覆球体を、キャビティ面に多数のディンプルを備えたファイナル金型に投入した。前記カバー用組成物から圧縮成形法にてハーフシェルを得た。ハーフシェル2枚を、ファイナル金型に投入した中間層被覆球体上に被覆し、カバーにキャビティ面のディンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成されたゴルフボールを得た。得られたゴルフボールについて評価した結果を表4~表6に示した。
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
表4~表6の結果から、球状コアと前記球状コアの外側に位置するカバーとを有するゴルフボールであって、球状コアの中心硬度(ショアC硬度)、球状コアの中心から表面に向かって、2.5mm、5mm、7.5mm、10mm、12.5mm、15mm地点の硬度(ショアC硬度)、球状コアの表面硬度(ショアC硬度)をそれぞれH、H2.5、H、H7.5、H10、H12.5、H15、Hとしたとき、下記の関係を満たすゴルフボールは、いずれも、ドライバーショットでの飛距離が向上し、且つアプローチショット(特に芝を噛んだ条件)およびミドルアイアンショットでのスピン性能に優れるものである。
(H2.5-H)>(H12.5-H10)>(H-H15
(H2.5+H+H7.5+H10)/4≧70
75≦(H15+H)/2≦85
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のゴルフボールは、ドライバーショットでの飛距離が向上し、且つアプローチショット(特に芝を噛んだ条件)およびミドルアイアンショットでのスピン性能に優れるものである。
【0111】
本発明の好ましい態様1は、球状コアと前記球状コアの外側に位置するカバーとを有するゴルフボールであって、球状コアの中心硬度(ショアC硬度)、球状コアの中心から表面に向かって、2.5mm、5mm、7.5mm、10mm、12.5mm、15mm地点の硬度(ショアC硬度)、球状コアの表面硬度(ショアC硬度)をそれぞれH、H2.5、H、H7.5、H10、H12.5、H15、Hとしたとき、下記の関係を満たすことを特徴とするゴルフボールである。
(H2.5-H)>(H12.5-H10)>(H-H15
(H2.5+H+H7.5+H10)/4≧70
75≦(H15+H)/2≦85
【0112】
本発明の好ましい態様2は、(H2.5-H)≧5の関係を満たす前記態様1に記載のゴルフボールである。
【0113】
本発明の好ましい態様3は、2≦(H12.5-H10)≦7の関係を満たす前記態様1または2に記載のゴルフボールである。
【0114】
本発明の好ましい態様4は、0≦(H-H15)≦5の関係を満たす前記態様1~3のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0115】
本発明の好ましい態様5は、(H2.5-H)-(H12.5-H10)≦5の関係を満たす前記態様1~4のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0116】
本発明の好ましい態様6は、(H12.5-H10)-(H-H15)≦5の関係を満たす前記態様1~5のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0117】
本発明の好ましい態様7は、(H-H2.5)≦3、(H7.5-H)≦3および(H10-H7.5)≦3の関係を満たす前記態様1~6のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0118】
本発明の好ましい態様8は、15≦(H-H)≦25の関係を満たす前記態様1~7のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0119】
本発明の好ましい態様9は、H≧60の関係を満たす前記態様1~8のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0120】
本発明の好ましい態様10は、前記球状コアと前記カバーの間に中間層を有し、球状コアの表面硬度(ショアC硬度)と中間層の表面硬度(ショアC硬度)とボールの表面硬度(ショアC硬度)が、球状コアの表面硬度<中間層の表面硬度>ボールの表面硬度の関係を満たす前記態様1~9のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0121】
本発明の好ましい態様11は、ゴルフボールに、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量が、2.80mm以下である前記態様1~10のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
図1