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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177982
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】エレベーター装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/14 20060101AFI20231207BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20231207BHJP
   B66B 13/26 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B66B13/14 F
B66B3/00 W
B66B3/00 F
B66B13/26 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090981
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川榮 祐貴
【テーマコード(参考)】
3F303
3F307
【Fターム(参考)】
3F303DA01
3F303DB26
3F303DC20
3F307DA11
3F307DA31
(57)【要約】
【課題】複数の乗場のそれぞれにスピーカー装置を備えることなく、各乗場の利用者に対してアナウンスを行うために有利な技術を提供する。
【解決手段】エレベーター装置は、エレベーターのかごに設けられたかご扉と、かごが目的階の乗場に停止した乗場停止状態においてかご扉と対向する位置に設けられた乗場扉と、かご扉と乗場扉とを連動して開閉する戸開閉装置と、かご扉に設けられ、乗場停止状態においてかご扉から乗場扉に向かって音声出力するスピーカー装置と、乗場停止状態においてスピーカー装置を乗場扉に向かって移動させる押出機構と、戸開閉装置、スピーカー装置、及び押出機構を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、かごが乗場に停止したとき、戸開閉装置の戸開動作の実行前に、押出機構を駆動してスピーカー装置を乗場扉に接触させ、スピーカー装置から戸開アナウンスを鳴動させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのかごに設けられたかご扉と、
前記かごが目的階の乗場に停止した乗場停止状態において前記かご扉と対向する位置に設けられた乗場扉と、
前記かご扉と前記乗場扉とを連動して開閉する戸開閉装置と、
前記かご扉に設けられ、前記乗場停止状態において前記かご扉から前記乗場扉に向かって音声出力するスピーカー装置と、
前記乗場停止状態において前記スピーカー装置を前記乗場扉に向かって移動させる押出機構と、
前記戸開閉装置、前記スピーカー装置、及び前記押出機構を制御する制御装置と、
を備えるエレベーター装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記かごが前記乗場に停止したとき、前記戸開閉装置の戸開動作の実行前に、前記押出機構を駆動して前記スピーカー装置を前記乗場扉に接触させるとともに前記スピーカー装置からアナウンスを鳴動させる戸開前報知動作を実行する
ように構成される請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記乗場扉への物体の近接を検知する物体検知センサを更に備え、
前記戸開前報知動作の実行後、前記物体検知センサが物体を検知しない場合、
前記制御装置は、前記スピーカー装置を前記乗場扉に接触させた状態で、前記戸開動作を実行する
ように構成される請求項2に記載のエレベーター装置。
【請求項4】
前記乗場扉への物体の近接を検知する物体検知センサを更に備え、
前記戸開前報知動作の実行後、前記物体検知センサが物体を検知した場合、
前記制御装置は、前記戸開前報知動作を再度実行する
ように構成される請求項2に記載のエレベーター装置。
【請求項5】
前記戸開動作の実行後、前記戸開閉装置の戸閉動作を実行する場合、
前記制御装置は、前記戸閉動作の前に、前記スピーカー装置を前記乗場扉に接触させた状態で前記スピーカー装置からアナウンスを鳴動させる戸閉前報知動作を実行する
ように構成される請求項2に記載のエレベーター装置。
【請求項6】
前記乗場扉への物体の近接を検知する物体検知センサを更に備え、
前記戸閉前報知動作の実行後、前記物体検知センサが物体を検知しない場合、
前記制御装置は、前記スピーカー装置を前記乗場扉に接触させた状態で、前記戸閉動作を実行する
ように構成される請求項5に記載のエレベーター装置。
【請求項7】
前記乗場扉への物体の近接を検知する物体検知センサを更に備え、
前記戸閉前報知動作の実行後、前記物体検知センサが物体を検知した場合、
前記制御装置は、前記戸閉前報知動作を再度実行する
ように構成される請求項5に記載のエレベーター装置。
【請求項8】
前記戸閉動作の動作中に前記物体検知センサが物体を検知した場合、
前記制御装置は、前記戸閉動作を中止して前記戸開閉装置を反転戸開する
ように構成される請求項6に記載のエレベーター装置。
【請求項9】
前記戸閉動作が完了した場合、
前記制御装置は、前記押出機構を駆動して前記スピーカー装置を前記乗場扉から離間させる
ように構成される請求項5から請求項8の何れか1項に記載のエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗場扉の開閉に対するアナウンスを行うエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレベーターの扉開放時に扉と扉収納部との隙間に物が引き込まれるのを防止するための技術が開示されている。この技術の装置では、光学機器によって隙間の近傍に物が存在すると判断された場合、乗場に待機している乗客に警告を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3958940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、音声出力するためのスピーカー装置が各乗場に必要となる。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、複数の乗場のそれぞれにスピーカー装置を備えることなく、各乗場の利用者に対してアナウンスを行うために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のエレベーター装置は、エレベーターのかごに設けられたかご扉と、かごが目的階の乗場に停止した乗場停止状態においてかご扉と対向する位置に設けられた乗場扉と、かご扉と乗場扉とを連動して開閉する戸開閉装置と、かご扉に設けられ、乗場停止状態においてかご扉から乗場扉に向かって音声出力するスピーカー装置と、乗場停止状態においてスピーカー装置を乗場扉に向かって移動させる押出機構と、戸開閉装置、スピーカー装置、及び押出機構を制御する制御装置と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、複数の乗場のそれぞれにスピーカー装置を備えることなく、各乗場の利用者に対してアナウンスを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係るエレベーター装置が適用されたエレベーターの概要を説明するための図である。
図2】実施の形態に係るエレベーター装置の制御構成を説明するための機能ブロック図である。
図3】昇降路内を移動しているかごを透視した斜視図である。
図4】乗場に停止している昇降路内のかごを透視した斜視図である。
図5図4のエレベーター装置をスピーカー装置の中心軸Aを通る鉛直面で切断した断面模式図である。
図6】スピーカー装置及び押出機構の構成を模式的に示した図である。
図7】エレベーター装置の制御装置において実行される戸開前報知動作のフローチャートである。
図8】エレベーター装置の制御装置において実行される戸閉前報知動作のフローチャートである。
図9】制御装置のハードウェア資源の例を示す図である。
図10】制御装置のハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
実施の形態.
1.エレベーター装置の構成
図1は、本実施の形態に係るエレベーター装置が適用されたエレベーターの概要を説明するための図である。図2は、本実施の形態に係るエレベーター装置の制御構成を説明するための機能ブロック図である。本実施の形態に係るエレベーター装置10は、エレベーター100の乗場扉の前にいる利用者に対して、乗場扉が動作することを事前にアナウンスする装置である。エレベーター100は、複数の階床を有する建物などからなる施設に設置されている。
【0011】
施設において、エレベーター100の昇降路3が設けられる。昇降路3は、複数の階床にわたる上下方向に長い空間である。施設の各々の階床において、エレベーター100の乗場4が設けられる。乗場4は、昇降路3に隣接する場所である。各々の階床の乗場4の乗場出入口において、乗場扉8が設けられる。乗場扉8は、乗場4および昇降路3を区画する扉である。乗場扉8は、例えば、乗場出入口の左右方向の中央を扉閉鎖位置として2枚のパネルが左右方向に開閉する中央開き方式である。乗場扉8は、乗場出入口の右端又は左端の扉閉鎖位置を起点として2枚のパネルが左右方向に開閉する片開き方式でもよい。
【0012】
エレベーター100は、かご1と、制御盤6と、戸開閉装置12と、物体検知センサ14と、を備える。かご1は、昇降路3を上下方向に走行することで、内部に乗車している利用者などを複数の階床の間で輸送する装置である。かご1は、左右方向に開閉自在な一対のかご扉2を、かご出入口に備える。かご扉2は、中央開き方式と片開き方式のうち、乗場扉8と同方式が採用されている。
【0013】
かご扉2は、かご1がいずれかの階床に停止するときに、当該階床の乗場4およびかご1において利用者が乗降しうるように、戸開閉装置12によって当該階床の乗場4の乗場扉8を連動させて開閉される。戸開閉装置12の構成に限定はない。戸開閉装置12は、乗場扉8をかご扉2に機械的に係合して連動させる構成でもよいし、それぞれの扉を電気的に連動させて開閉させる構成でもよい。
【0014】
物体検知センサ14は、乗場4における乗場扉8に近接する物体を検知する非接触型のセンサである。物体検知センサ14の構成に限定はない。物体検知センサ14は、例えば、発光面を有する発光器と、当該発光面を撮像するカメラとを、乗場出入口を左右方向に跨ぐように配置する構成を採用することができる。物体検知センサ14によれば、乗場4において乗場扉8の近傍のエリアにおける利用者の有無を検知することができる。物体検知センサ14の検知信号は、制御盤6に送られる。
【0015】
制御盤6は、エレベーター100の動作を制御する装置である。制御盤6は、本実施の形態のエレベーター装置10の制御装置50の一部である。制御盤6によって制御されるエレベーター100の動作は、例えば戸開閉装置12の開閉動作、登録される呼びの管理、および呼びに応答するかご1の走行などを含む。
【0016】
本実施の形態に係るエレベーター装置10は、上述したエレベーター100の構成に加えて、スピーカー装置20と、押出機構30と、スピーカー制御部40と、を備える。
【0017】
スピーカー装置20は、利用者に対して音声出力によるアナウンスを行うための装置である。図3は、昇降路3内を移動しているかご1を透視した斜視図である。また、図4は、乗場4に停止している昇降路3内のかご1を透視した斜視図である。図5は、図4のエレベーター装置10をスピーカー装置20の中心軸Aを通る鉛直面で切断した断面模式図である。図6は、スピーカー装置20及び押出機構30の構成を模式的に示した図である。
【0018】
スピーカー装置20は、かご1のかご扉2において、昇降路3に露出するパネル背面2aに設置される。スピーカー装置20の個数及びパネル背面2a上の配置に限定はない。図に示す例では、かご扉2の2枚のパネルのそれぞれのパネル背面2aにスピーカー装置20が設置される。スピーカー装置20は、かご1が乗場4に停止している乗場停止状態において、かご扉2のパネル背面2aと対向する乗場扉8のパネル背面8aに向かって音声を出力する向きで配置される。
【0019】
スピーカー装置20は、有底円筒状のエンクロージャー21の内部に、振動板22と可動コイル23と永久磁石24とが収納されている。可動コイル23は円筒状の永久磁石24の中心に配置されている。可動コイル23は、音声信号による電流が流れると電磁石となって振動する。振動板22は、可動コイル23と連結されており、可動コイル23の振動を空間に音波として放出する。
【0020】
エンクロージャー21は、振動板22は、乗場扉8のパネル背面8aに向かって開口している。当該開口から振動板22が露出している。エンクロージャー21と振動板22とは、エレベーターの設置環境に対応できるように、高い耐候性を有する材質及び密閉構造を採用することが望ましい。
【0021】
エンクロージャー21の先端側の開口縁部21aとパネル背面8aとは、基準距離Lだけ離間している。基準距離Lは、かご1が昇降路3内を移動したときにエンクロージャー21の開口縁部21aが昇降路3内の他部品と接触しない距離に設定されている。
【0022】
押出機構30は、乗場停止状態において、スピーカー装置20を乗場扉8のパネル背面8aの方向に向かう水平移動方向に移動させる装置である。押出機構30は、スピーカー装置20のエンクロージャー21の基端側とかご扉2のパネル背面との間に配置される。押出機構30は、ケース31と、ネジ部品32と、モーター33と、を備える。ケース31は、ネジ部品32と、モーター33と、が収納される筒状の部品であり、基端側がかご扉2のパネル背面2aに固定されている。ケース31の先端側はネジ部品32が螺合されている。ネジ部品32の先端側はスピーカー装置20のエンクロージャー21の基端側に固定されている。ネジ部品32の基端側はモーター33の回転軸に回転動力伝達可能に接続されている。
【0023】
モーター33が時計回りに正回転されると、ネジ部品32が回転される。これにより、スピーカー装置20が乗場扉8のパネル背面8aに向かって押し出される。つまり、押出機構30は、モーター33の回転運動をネジ部品32の軸方向の直線運動に変換する。エンクロージャー21の先端側の開口縁部21aが乗場扉8のパネル背面8aに接触すると、乗場扉8のパネル背面8aが第二の振動板として機能する。
【0024】
一方、モーター33が反時計回りに逆回転されると、ネジ部品32が逆方向に回転される。これにより、スピーカー装置20がかご扉2のパネル背面2aに向かって押し戻され、エンクロージャー21の先端側の開口縁部21aが乗場扉8のパネル背面8aから離間する。これにより、かご1は昇降路3内を上下方向に移動可能となる。
【0025】
スピーカー制御部40は、エレベーター装置10の制御装置50の一部である。スピーカー制御部40は、スピーカー装置20及び押出機構30の動作を制御する。スピーカー制御部40は、乗場扉8の戸開動作を乗場4にいる利用者に事前に通知するための戸開アナウンスの出力をスピーカー装置20に対して指示する。戸開アナウンスは、例えば、「ドアが開きます」、「ドアから離れてください」等が例示される。戸開アナウンスは、例えばブザー音でもよい。
【0026】
或いは、スピーカー制御部40は、乗場扉8の戸閉動作を乗場4にいる利用者に事前に通知するための戸閉アナウンスの出力をスピーカー装置20に対して指示する。戸閉アナウンスは、例えば、「ドアが閉まります」、「ドアから離れてください」等が例示される。戸閉アナウンスは、例えばブザー音でもよい。
【0027】
また、スピーカー制御部40は、押出機構30のモーター33への通電を制御する。具体的には、スピーカー制御部40は、スピーカー装置20を押し出す場合にモーター33を正回転させるための電流を供給し、スピーカー装置20を押し戻す場合にモーター33を逆転させるための電流を供給する。
【0028】
2.エレベーター装置の特徴
次に、本実施の形態のエレベーター装置10における特徴的動作について説明する。制御盤6は、かご1が目的階の到着したとき、戸開閉装置12を駆動して、かご扉2と乗場扉8を連動して戸開する。この動作は、以下「戸開動作」と呼ばれる。また、制御盤6は、戸開動作後の戸閉指令を受けて、戸開閉装置12を駆動して、かご扉2と乗場扉8を連動して戸閉する。この動作は、以下「戸閉動作」と呼ばれる。
【0029】
ここで、各乗場に音声出力のための装置が設置されていない場合、各乗場の利用者に対して音声のアナウンスを行うことができない。この場合、エレベーターの乗場4にいる利用者は、戸開動作又は戸閉動作に気づかないことも考えられる。その結果、乗場扉8の近傍にいる利用者の所持物などが戸開動作又は戸閉動作によって隙間に引き込まれるおそれがある。
【0030】
そこで、本実施の形態のエレベーター装置10は、かご1から乗場4の利用者に対して音声のアナウンスを行う。具体的には、エレベーター装置10は、かご1が目的階の乗場4に到着したとき、戸開動作の実行前に乗場4の利用者に対して音声のアナウンスを行う。この動作は、以下「戸開前報知動作」と呼ばれる。また、エレベーター装置10は、かご1が乗場4を出発するとき、戸閉動作の実行前に乗場4の利用者に対して音声のアナウンスを行う。この動作は、以下「戸閉前報知動作」と呼ばれる。戸開前報知動作及び戸閉前報知動作について、更に詳しく説明する。
【0031】
2-1.戸開前報知動作
かご1が目的階の乗場4に到着したとき、かご扉2のパネル背面2aは乗場扉8のパネル背面8aに対面する。スピーカー制御部40は、戸開動作の開始前に、押出機構30を駆動してスピーカー装置20を乗場扉8のパネル背面8aに向かって押し出す。この動作は、以下「押出動作」と呼ばれる。
【0032】
押出動作は、スピーカー装置20のエンクロージャー21の開口縁部21aが乗場扉8のパネル背面8aに接触する位置まで行われる。これにより、乗場扉8のパネル背面8aは、乗場4に音声を伝達する第二の振動板として機能する。戸開前報知動作において、スピーカー制御部40は、スピーカー装置20から乗場扉8の戸開動作を事前に報知するための戸開アナウンスを鳴動させる。戸開前報知動作によれば、第二の振動板としての乗場扉8を疑似的なスピーカーとして、乗場4にいる利用者に向けて戸開アナウンスを伝達することができる。また、乗場扉8は第二の振動板として振動するため、例えば乗場扉8に寄りかかっている利用者或いは聴覚が不自由な利用者に対して振動による注意喚起を行うことができる。
【0033】
戸開前報知動作の実行後、物体検知センサ14が物体を検知した場合、乗場扉8の近傍に利用者又は利用者の所持物がある可能性が高い。そこで、スピーカー制御部40は、戸開前報知動作の実行後、物体検知センサ14が物体を検知した場合に戸開前報知動作を再度行う。
【0034】
2-2.戸閉前報知動作
戸閉前報知動作において、スピーカー制御部40は、戸閉動作の開始前に、スピーカー装置20から乗場扉8の戸閉動作を事前に報知するための戸閉アナウンスを鳴動させる。
【0035】
戸閉前報知動作の実行後、物体検知センサ14が物体を検知した場合、乗場扉8の近傍に利用者又は利用者の所持物がある可能性が高い。そこで、戸閉前報知動作では、スピーカー制御部40は、戸閉前報知動作の実行後、物体検知センサ14が物体を検知した場合に戸閉前報知動作を再度行う。また、戸閉動作中に物体検知センサ14が物体を検知した場合、スピーカー制御部40は、戸閉動作を中止して戸開動作を行う。この動作は、以下「戸開反転動作」と呼ばれる。
【0036】
戸閉動作が完了すると、スピーカー制御部40は、押出機構30を駆動してスピーカー装置20をかご扉2のパネル背面2aに向かって押し戻す。この動作は、以下「押し戻し動作」と呼ばれる。
【0037】
押し戻し動作は、スピーカー装置20のエンクロージャー21の開口縁部21aと乗場扉8のパネル背面8aとの距離が基準距離Lを超える位置まで行われる。これにより、かご1が昇降路3内を移動したときにエンクロージャー21の開口縁部21aが昇降路3内の他部品と接触することを防ぐことができる。
【0038】
3.エレベーター装置において実行される具体的処理
次に、フローチャートを参照して、エレベーター装置10において実行される具体的処理について説明する。図7は、エレベーター装置10の制御装置50において実行される戸開前報知動作のフローチャートである。ステップS100では、エレベーター100に設置されている各種センサの検知結果に基づいて、エレベーターが目的階の乗場4に到着したかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、再びステップS100に戻り、判定の成立が認められた場合、処理はステップS102に進む。
【0039】
ステップS102では、制御装置50のスピーカー制御部40は、押出動作を行うための動作指令を押出機構30に出力する。動作指令を受けた押出機構30は、スピーカー装置20を乗場扉8のパネル背面8aに接触するまで水平移動方向に移動させる。ステップS102の処理が行われると、処理はステップS104に進む。
【0040】
ステップS104では、制御装置50のスピーカー制御部40は、戸開アナウンス動作のための動作指令をスピーカー装置20に出力する。動作指令を受けたスピーカー装置20は、戸開アナウンスを鳴動させる。
【0041】
ステップS104の処理が実行されると、処理はステップS106に進む。ステップS106では、戸開動作を開始可能かどうかが判定される。ここでは、物体検知センサ14が物体を検知したかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理はステップS108に進み、判定の成立が認められた場合、処理はステップS110に進む。
【0042】
ステップS108では、制御装置50のスピーカー制御部40は、戸開アナウンス動作のための動作指令をスピーカー装置20に再度出力する。動作指令を受けたスピーカー装置20は、戸開アナウンスを再度鳴動させる。ステップS108の処理が完了すると、処理は再度ステップS106に戻る。
【0043】
ステップS110では、制御装置50の制御盤6は、スピーカー装置20を乗場扉8のパネル背面8aに接触させた状態で戸開動作を実行する。ステップS110の処理が完了すると、本ルーチンは終了される。
【0044】
図8は、エレベーター装置10の制御装置50において実行される戸閉前報知動作のフローチャートである。図8のルーチンは、エレベーター100の戸開動作後、戸閉動作の動作指令を受けて実行される。ステップS120では、制御装置50のスピーカー制御部40は、戸閉前報知動作のための動作指令をスピーカー装置20に出力する。動作指令を受けたスピーカー装置20は、戸閉アナウンスを鳴動させる。
【0045】
ステップS120の処理が実行されると、処理はステップS122に進む。ステップS106では、戸閉動作を開始可能かどうかが判定される。ここでは、物体検知センサ14が物体を検知したかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理はステップS124に進み、判定の成立が認められた場合、処理はステップS126に進む。
【0046】
ステップS124では、制御装置50のスピーカー制御部40は、戸閉前報知動作のための動作指令をスピーカー装置20に再度出力する。動作指令を受けたスピーカー装置20は、戸閉アナウンスを再度鳴動させる。ステップS124の処理が完了すると、処理は再度ステップS122に戻る。
【0047】
ステップS126では、制御装置50の制御盤6は、スピーカー装置20を乗場扉8のパネル背面8aに接触させた状態で戸閉動作を実行する。ステップS128では、戸閉動作中に物体検知センサ14が物体を検知したかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められた場合、処理はステップS130に進み、判定の成立が認められない場合、処理はステップS132に進む。
【0048】
ステップS130では、制御装置50の制御盤6は、スピーカー装置20を乗場扉8のパネル背面8aに接触させた状態で反転戸開動作を実行する。ステップS130の処理が実行されると、処理は再びステップS120に戻る。
【0049】
ステップS132では、制御装置50のスピーカー制御部40は、押し戻し動作を行うための動作指令を押出機構30に出力する。動作指令を受けた押出機構30は、スピーカー装置20の開口縁部21aが乗場扉8のパネル背面8aから基準距離L以上離間するまで水平移動方向に移動させる。ステップS132の処理が行われると、本ルーチンは終了される。
【0050】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態のエレベーター装置10によれば、複数の乗場のそれぞれにスピーカー装置を備えることなく、各乗場にいる利用者に対して乗場扉の戸開に対する事前のアナウンスを行うことが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態のエレベーター装置10によれば、乗場扉8は第二の振動板として振動するため、例えば乗場扉8に寄りかかっている利用者或いは聴覚が不自由な利用者に対して振動による注意喚起を行うことができる。
【0052】
また、本実施の形態のエレベーター装置10によれば、スピーカー装置20を乗場扉8のパネル背面8aに接触させた状態で戸開動作及び戸閉動作を実行する。これにより、戸開動作又は戸閉動作の実行中に乗場4に向かってアナウンスを鳴動させることも可能となる。
【0053】
4.エレベーター装置の変形例
本実施の形態に係るエレベーター装置10は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0054】
4-1.制御装置50の機能配置
制御装置50の機能の配置に限定はない。すなわち、制御装置50に含まれるスピーカー制御部40の機能の一部又は全部は、制御盤6に配置されていてもよい。
【0055】
4-2.制御装置50のハードウェア資源
図9は、制御装置50のハードウェア資源の例を示す図である。制御装置50は、ハードウェア資源として、プロセッサ52とメモリ54とを含む処理回路56を備える。処理回路56に複数のプロセッサ52が含まれても良い。処理回路56に複数のメモリ54が含まれても良い。
【0056】
本実施の形態において、制御装置50が備える機能は、プログラムとして記述されたソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現できる。当該プログラムは、メモリ54に記憶される。制御装置50は、メモリ54に記憶されたプログラムをプロセッサ52(コンピュータ)によって実行することにより、各機能を実現する。
【0057】
プロセッサ52は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、或いはDSPともいわれる。メモリ54として、半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、或いはDVDを採用しても良い。採用可能な半導体メモリには、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、及びEEPROM等が含まれる。
【0058】
図10は、制御装置50のハードウェア資源の他の例を示す図である。図10に示す例では、制御装置50は、プロセッサ52、メモリ54、及び専用ハードウェア58を含む処理回路56を備える。図10は、制御装置50が有する機能の一部を専用ハードウェア58によって実現する例を示す。制御装置50が有する機能の全部を専用ハードウェア58によって実現しても良い。専用ハードウェア58として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【0059】
4-3.押出機構30
押出機構30の構成に限定はない。すなわち、押出機構30は、上述の押出動作及び押し戻し動作を実行可能な構成であれば、他の公知の機構を採用してもよい。
【0060】
4-4.押出動作
押出動作において、スピーカー装置20の開口縁部21aは、乗場扉8のパネル背面8aに接触しなくてもよい。この場合においても、スピーカー装置20が乗場扉8のパネル背面8aに近接するので、少なくとも乗場扉8を第二の振動板として機能させることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 かご、 2 かご扉、 2a パネル背面、 3 昇降路、 4 乗場、 6 制御盤、 8 乗場扉、 8a パネル背面、 10 エレベーター装置、 12 戸開閉装置、 14 物体検知センサ、 20 スピーカー装置、 21 エンクロージャー、 21a 開口縁部、 22 振動板、 23 可動コイル、 24 永久磁石、 30 押出機構、 31 ケース、 32 ネジ部品、 33 モーター、 40 スピーカー制御部、 50 制御装置、 52 プロセッサ、 54 メモリ、 56 処理回路、 58 専用ハードウェア、 100 エレベーター
図1
図2
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図9
図10