(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177983
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】A/D変換回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03M 1/38 20060101AFI20231207BHJP
H03M 1/10 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H03M1/38
H03M1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090982
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】河口 巧
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022BA01
5J022BA05
5J022CA10
5J022CB02
5J022CB07
5J022CE02
5J022CE08
5J022CF01
(57)【要約】
【課題】A/D変換精度を向上させることができるA/D変換回路及び半導体装置を提供する。
【解決手段】一実施の形態によれば、A/D変換回路10は、複数の逐次比較アルゴリズムを記憶する逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41と、複数の逐次比較アルゴリズムから所定の逐次比較アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択部43と、選択された所定の逐次比較アルゴリズムに基づいて比較値を生成する制御回路14と、比較値から比較電圧を生成するDAC12と、アナログ入力電圧Vinと比較電圧との比較を行う比較器13と、を備え、制御回路14は、選択された所定の逐次比較アルゴリズムに基づいて比較器13が行う比較結果から比較値を生成し、比較器13が少なくともデジタル信号Doutのビット数の回数行った比較結果から、アナログ入力電圧Vinをデジタル信号Doutに変換する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の逐次比較アルゴリズムを記憶する逐次比較アルゴリズム設定レジスタと、
前記複数の逐次比較アルゴリズムから所定の逐次比較アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択部と、
選択された前記所定の逐次比較アルゴリズムに基づいて比較値を生成する制御回路と、
前記比較値から比較電圧を生成するDACと、
アナログ入力電圧と前記比較電圧との比較を行う比較器と、
を備え、
前記制御回路は、
選択された前記所定の逐次比較アルゴリズムに基づいて前記比較器が行う前記比較の結果から前記比較値を生成し、
前記比較器が少なくともデジタル信号のビット数の回数行った前記比較の前記結果から、前記アナログ入力電圧を前記デジタル信号に変換する、
A/D変換回路。
【請求項2】
動作タイミングを示すクロックの周波数情報を出力するクロック設定レジスタをさらに備え、
前記アルゴリズム選択部は、前記クロック設定レジスタから出力された前記周波数情報に基づいて前記所定の逐次比較アルゴリズムを選択する、
請求項1に記載のA/D変換回路。
【請求項3】
前記逐次比較アルゴリズム設定レジスタに記憶された前記複数の逐次比較アルゴリズムは、記憶装置に予め書き込まれることにより前記複数の逐次比較アルゴリズム及び各逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数の組み合わせを記憶した前記記憶装置から転送されたものである、
請求項2に記載のA/D変換回路。
【請求項4】
評価される評価用逐次比較アルゴリズムを記憶する評価用逐次比較アルゴリズム設定レジスタと、
評価モードを設定する評価モード設定情報を出力する評価モード設定レジスタと、
評価モード設定レジスタから出力された評価モード設定情報に基づいて、前記評価用逐次比較アルゴリズム、及び、前記アルゴリズム選択部により選択された前記所定の逐次比較アルゴリズムのいずれかを選択するモード選択部と、
をさらに備え、
前記評価用逐次比較アルゴリズムは、前記複数の逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数に渡って評価され、
前記制御回路は、前記モード選択部によって前記評価用逐次比較アルゴリズムが選択された場合には、選択された前記評価用逐次比較アルゴリズムに基づいて前記比較器の前記比較の前記結果から前記比較値を生成する、
請求項2に記載のA/D変換回路。
【請求項5】
前記複数の逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数に渡って用いられる周波数対応逐次比較アルゴリズムを記憶する周波数対応逐次比較アルゴリズム設定レジスタと、
モードを設定するモード設定情報を出力するモード設定レジスタと、
前記モード設定レジスタから出力された前記モード設定情報に基づいて、前記周波数対応逐次比較アルゴリズム、及び、前記アルゴリズム選択部により選択された前記所定の逐次比較アルゴリズムのいずれかを選択するモード選択部と、
をさらに備え、
前記制御回路は、前記モード選択部によって前記周波数対応逐次比較アルゴリズムが選択された場合には、選択された前記周波数対応逐次比較アルゴリズムに基づいて前記比較器の比較結果から前記比較値を生成する、
請求項2に記載のA/D変換回路。
【請求項6】
前記逐次比較アルゴリズム設定レジスタは、前記複数の逐次比較アルゴリズム及び各逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数の組み合わせを、ユーザの設定で動作するプロセッサによって書き込まれた、
請求項2に記載のA/D変換回路。
【請求項7】
クロック制御装置が制御する前記クロックの周波数の変化を検出し、検出した前記周波数に基づいて、前記周波数情報を出力するクロック制御部をさらに備え、
前記アルゴリズム選択部は、前記クロック制御部から出力された前記周波数情報に基づいて前記所定の逐次比較アルゴリズムを選択する、
請求項2に記載のA/D変換回路。
【請求項8】
前記複数の逐次比較アルゴリズムは、
前記デジタル信号の前記ビット数の前記回数行う前記比較において、前記比較値を順次変化させる変化量を前記デジタル信号の最大値の1/2から1/2ずつ順次変化させ、前記比較器の前記比較の前記結果により、前記比較値に前記変化量を加算又は減算を行う二分探索アルゴリズムと、
前記二分探索アルゴリズムにおける前記ビット数の前記回数行う前記比較と前記比較との間、及び、前記ビット数の前記回数行う前記比較の後の少なくともいずれかに、直前の前記比較と同じ冗長な比較を挿入する冗長アルゴリズムと、
のうち少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載のA/D変換回路。
【請求項9】
前記複数の逐次比較アルゴリズムは、複数の前記冗長アルゴリズムを含み、
各冗長アルゴリズムは、前記冗長な比較が配置された位置及び個数の少なくともいずれかが相互に異なる、
請求項8に記載のA/D変換回路。
【請求項10】
A/D変換回路を備え、
前記A/D変換回路は、
複数の逐次比較アルゴリズムを記憶する逐次比較アルゴリズム設定レジスタと、
前記複数の逐次比較アルゴリズムから所定の逐次比較アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択部と、
選択された前記所定の逐次比較アルゴリズムに基づいて比較値を生成する制御回路と、
前記比較値から比較電圧を生成するDACと、
アナログ入力電圧と前記比較電圧との比較を行う比較器と、
を有し、
前記制御回路は、
選択された前記所定の逐次比較アルゴリズムに基づいて前記比較器が行う前記比較の結果から前記比較値を生成し、
前記比較器が少なくともデジタル信号のビット数の回数行った前記比較の前記結果から、前記アナログ入力電圧を前記デジタル信号に変換する、
半導体装置。
【請求項11】
前記A/D変換回路は、動作タイミングを示すクロックの周波数情報を出力するクロック設定レジスタをさらに有し、
前記アルゴリズム選択部は、前記クロック設定レジスタから出力された前記周波数情報に基づいて前記所定の逐次比較アルゴリズムを選択する、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
予め書き込まれることにより前記複数の逐次比較アルゴリズム及び各逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数の組み合わせを記憶した記憶部をさらに備え、
前記逐次比較アルゴリズム設定レジスタに記憶された前記複数の逐次比較アルゴリズムは、前記記憶部から転送されたものである、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記A/D変換回路は、
評価される評価用逐次比較アルゴリズムを記憶する評価用逐次比較アルゴリズム設定レジスタと、
評価モードを設定する評価モード設定情報を出力する評価モード設定レジスタと、
評価モード設定レジスタから出力された評価モード設定情報に基づいて、前記評価用逐次比較アルゴリズム、及び、前記アルゴリズム選択部により選択された前記所定の逐次比較アルゴリズムのいずれかを選択するモード選択部と、
をさらに有し、
前記評価用逐次比較アルゴリズムは、前記複数の逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数に渡って評価され、
前記制御回路は、前記モード選択部によって前記評価用逐次比較アルゴリズムが選択された場合には、選択された前記評価用逐次比較アルゴリズムに基づいて前記比較器の前記比較の前記結果から前記比較値を生成する、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記A/D変換回路は、
前記複数の逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数に渡って用いられる周波数対応逐次比較アルゴリズムを記憶する周波数対応逐次比較アルゴリズム設定レジスタと、
モードを設定するモード設定情報を出力するモード設定レジスタと、
前記モード設定レジスタから出力された前記モード設定情報に基づいて、前記周波数対応逐次比較アルゴリズム、及び、前記アルゴリズム選択部により選択された前記所定の逐次比較アルゴリズムのいずれかを選択するモード選択部と、
をさらに有し、
前記制御回路は、前記モード選択部によって前記周波数対応逐次比較アルゴリズムが選択された場合には、選択された前記周波数対応逐次比較アルゴリズムに基づいて前記比較器の比較結果から前記比較値を生成する、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項15】
ユーザの設定で動作するプロセッサをさらに備え、
前記プロセッサは、前記複数の逐次比較アルゴリズム及び各逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数の組み合わせを、前記逐次比較アルゴリズム設定レジスタに書き込む、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記クロックの周波数を制御するクロック制御回路をさらに備え、
前記A/D変換回路は、
前記クロックの前記周波数の変化を検出し、検出した前記周波数に基づいて、前記周波数情報を出力するクロック制御部をさらに有し、
前記アルゴリズム選択部は、前記クロック制御部から出力された前記周波数情報に基づいて前記所定の逐次比較アルゴリズムを選択する、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記複数の逐次比較アルゴリズムは、
前記デジタル信号の前記ビット数の前記回数行う前記比較において、前記比較値を順次変化させる変化量を前記デジタル信号の最大値の1/2から1/2ずつ順次変化させ、前記比較器の前記比較の前記結果により、前記比較値に前記変化量を加算又は減算を行う二分探索アルゴリズムと、
前記二分探索アルゴリズムにおける前記ビット数の前記回数行う前記比較と前記比較との間、及び、前記ビット数の前記回数行う前記比較の後の少なくともいずれかに、直前の前記比較と同じ冗長な比較を挿入する冗長アルゴリズムと
のうち少なくともいずれかを含む、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記複数の逐次比較アルゴリズムは、複数の前記冗長アルゴリズムを含み、
各冗長アルゴリズムは、前記冗長な比較が配置された位置及び個数の少なくともいずれかが相互に異なる、
請求項17に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、A/D変換回路及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、逐次比較型A/D変換回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
A/D変換回路によるA/D変換精度を向上させることが所望されている。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、A/D変換回路は、複数の逐次比較アルゴリズムを記憶する逐次比較アルゴリズム設定レジスタと、前記複数の逐次比較アルゴリズムから所定の逐次比較アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択部と、選択された前記所定の逐次比較アルゴリズムに基づいて比較値を生成する制御回路と、前記比較値から比較電圧を生成するDACと、アナログ入力電圧と前記比較電圧との比較を行う比較器と、を備え、前記制御回路は、選択された前記所定の逐次比較アルゴリズムに基づいて前記比較器が行う前記比較の結果から前記比較値を生成し、前記比較器が少なくともデジタル信号のビット数の回数行った前記比較の前記結果から、前記アナログ入力電圧を前記デジタル信号に変換する。
【0007】
一実施の形態によれば、半導体装置は、A/D変換回路を備え、前記A/D変換回路は、複数の逐次比較アルゴリズムを記憶する逐次比較アルゴリズム設定レジスタと、前記複数の逐次比較アルゴリズムから所定の逐次比較アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択部と、選択された前記逐次比較アルゴリズムに基づいて比較値を生成する制御回路と、前記比較値から比較電圧を生成するDACと、アナログ入力電圧と前記比較電圧との比較を行う比較器と、を有し、前記制御回路は、選択された前記逐次比較アルゴリズムに基づいて前記比較器が行う前記比較の結果から前記比較値を生成し、前記比較器が少なくともデジタル信号のビット数の回数行った前記比較の前記結果から、前記アナログ入力電圧を前記デジタル信号に変換する。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施の形態によれば、A/D変換精度を向上させることができるA/D変換回路及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】比較例1に係るA/D変換回路を例示したブロック図である。
【
図2】比較例1に係るA/D変換回路において、二分探索アルゴリズムにより算出したA/D変換結果を例示した図である。
【
図3】比較例2に係るA/D変換回路において、途中の比較で誤判定がある場合の二分探索により算出したA/D変換結果を例示した図である。
【
図4】比較例2に係るA/D変換回路において、挿入した冗長サイクルによって誤判定を修正する逐次比較アルゴリズムにより算出したA/D変換結果を例示した図である。
【
図5】逐次比較アルゴリズムによって、クロックにおけるA/D変換精度を例示したグラフであり、横軸は、クロックの周波数を示し、縦軸は、A/D変換精度を示す。
【
図6】逐次比較アルゴリズムによって、クロックにおけるA/D変換精度を例示したグラフであり、横軸は、クロックの振動数を示し、縦軸は、A/D変換精度を示す。
【
図7】実施形態の概要に係るA/D変換回路を含む半導体装置を例示したブロック図である。
【
図8】実施形態の概要に係るA/D変換回路において、設定するクロックによって、逐次比較アルゴリズムを切り替えた場合のA/D変換精度を例示したグラフであり、横軸は、クロックの周波数を示し、縦軸は、A/D変換精度を示す。
【
図9】実施形態1に係るA/D変換回路を含む半導体装置において、記憶部に記憶された設定テーブルを例示した図である。
【
図10】実施形態1に係るA/D変換回路を含む半導体装置を例示したブロック図である。
【
図11】実施形態2に係るA/D変換回路を含む半導体装置を例示したブロック図である。
【
図12】実施形態2の変形例に係るA/D変換回路を含む半導体装置を例示したブロック図である。
【
図13】実施形態3に係るA/D変換回路を含む半導体装置を例示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
まず、比較例1及び比較例2に係るアナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路と呼ぶ。)及びこれに対して発明者が発見した課題を説明する。その後、実施形態に係るA/D変換回路及び半導体装置を説明する。なお、比較例1及び比較例2に係るA/D変換回路及び課題も、実施形態の技術思想の範囲に含まれる。
【0012】
(比較例1:逐次比較型A/D変換回路)
図1は、比較例1に係るA/D変換回路を例示したブロック図である。
図1に示すように、比較例のA/D変換回路110は、サンプルホールド回路111、DAC(Digital to Analog Converter)112、比較器113、及び、制御回路114を備えている。制御回路114は、逐次比較レジスタ115、及び、加減算回路116を有している。A/D変換回路110は、アナログ入力電圧VinをDAC112で生成した比較電圧と逐次比較することによってデジタル信号Doutを出力する。
【0013】
サンプルホールド回路111は、入力されたアナログ入力電圧Vinを保持し、標本化する。サンプルホールド回路111は、標本化されたアナログ入力電圧Vinを比較器113に出力する。DAC112は、制御回路114から出力された比較対象となるデジタル値の比較値をアナログ値に変換して比較電圧を生成する。DAC112は、生成した比較電圧を比較器113に出力する。
【0014】
比較器113は、サンプルホールド回路111から出力されたアナログ入力電圧Vinと、DAC112から出力された比較電圧とを比較する。比較器113は、比較結果を制御回路114に出力する。制御回路114は、逐次比較アルゴリズムに基づいて比較値を生成する。また、制御回路114は、逐次比較アルゴリズムに基づいて比較器113の比較結果から比較値を生成する。さらに、制御回路114は、逐次比較アルゴリズムに基づいてデジタル信号Doutのビット数の回数行った比較結果から、アナログ入力電圧Vinをデジタル信号Doutに変換する。
【0015】
逐次比較アルゴリズムは、制御回路114が生成する比較値の生成方法を示す。例えば、一般的な逐次比較アルゴリズムは、比較値に加減算を行う変化量Lを、デジタル信号Doutの最大値の1/2から1/2ずつ順次変化させる。このような逐次比較アルゴリズムを、二分探索アルゴリズムと呼ぶ。
【0016】
加減算回路116は、比較器113の比較結果に基づいて比較値に変化量Lの加減算を行う。逐次比較レジスタ115は、加減算回路116によって変化量Lが加減算された比較値を、逐次、DAC112に出力する。これにより、DAC112は、逐次、比較値を比較電圧に変換する。よって、比較器113は、アナログ入力電圧Vinと比較電圧とを比較する。このような比較及び比較値の加減算を、デジタル信号Doutのビット数の回数繰り返す。
【0017】
図2は、比較例1に係るA/D変換回路110において、二分探索アルゴリズムにより算出したA/D変換結果を例示した図である。
図2に示すように、A/D変換回路110がアナログ入力電圧Vinを4ビットのデジタル信号Doutに変換する場合には、比較器113は、アナログ入力電圧Vinと比較電圧との比較を比較C1~比較C2の4回行う。
【0018】
まず、1回目の比較C1では、加減算回路116は、比較値の初期値に対する変化量L1を加算する。初期値に対する変化量L1は、デジタル信号Doutの最大値の1/2である。よって、逐次比較レジスタ115は、比較値として、デジタル信号Doutの最大値の1/2を生成する。例えば、4ビットのデジタル信号Doutの場合には、逐次比較レジスタ115は、最上位ビットを「1」としたデジタル値を生成する。DAC112は、逐次比較レジスタ115から出力された比較値を比較電圧に変換する。DAC112は、比較電圧として、例えば、8[V]を比較器113に出力する。比較器113は、アナログ入力電圧Vinと、比較電圧8[V]とを比較する。図に示すように、比較C1では、アナログ入力電圧Vinの方が大きい。よって、加減算回路116は、このような比較器113の比較結果に基づいて、次の変化量L2を比較値に加算する。次の変化量L2は、デジタル信号Doutの最大値の1/4である。また、逐次比較レジスタ115は、最上位ビットを「1」で確定する。
【0019】
次に、2回目の比較C2では、逐次比較レジスタ115は、変化量L2を加算させた比較値を生成する。例えば、4ビットのデジタル信号Doutの場合には、逐次比較レジスタ115は、最上位から2番目のビットを「1」としたデジタル値を生成する。DAC112は、逐次比較レジスタ115から出力された比較値を比較電圧に変換する。DAC112は、比較電圧として、変化量L2を加算(+4)した12[V]を比較器113に出力する。比較器113は、アナログ入力電圧Vinと、比較電圧12[V]とを比較する。図に示すように、比較C2では、アナログ入力電圧Vinの方が小さい。よって、加減算回路116は、このような比較器113の比較結果に基づいて、次の変化量L3を比較値から減算する。次の変化量L3は、デジタル信号Doutの最大値の1/8である。また、逐次比較レジスタ115は、最上位から2番目のビットを「0」で確定する。
【0020】
次に、3回目の比較C3では、逐次比較レジスタ115は、変化量L3を減算させた比較値を生成する。例えば、4ビットのデジタル信号Doutの場合には、逐次比較レジスタ115は、最上位から3番目のビットを「1」としたデジタル値を生成する。DAC112は、逐次比較レジスタ115から出力された比較値を比較電圧に変換する。DAC112は、比較電圧として、変化量L3を減算(-2)した10[V]を比較器113に出力する。比較器113は、アナログ入力電圧Vinと、比較電圧10[V]とを比較する。図に示すように、比較C3では、アナログ入力電圧Vinの方が大きい。よって、加減算回路116は、このような比較器113の比較結果に基づいて、次の変化量L4を比較値に加算する。次の変化量L4は、デジタル信号Doutの最大値の1/16である。また、逐次比較レジスタ115は、最上位から3番目のビットを「1」で確定する。
【0021】
次に、4回目の比較C4では、逐次比較レジスタ115は、変化量L4を加算させた比較値を生成する。例えば、4ビットのデジタル信号Doutの場合には、逐次比較レジスタ115は、最上位から4番目のビットを「1」としたデジタル値を生成する。DAC112は、逐次比較レジスタ115から出力された比較値を比較電圧に変換する。DAC112は、比較電圧として、変化量L4を加算(+1)した11[V]を比較器113に出力する。比較器113は、アナログ入力電圧Vinと、比較電圧11[V]とを比較する。図に示すように、比較C4では、アナログ入力電圧Vinの方が大きい。よって、このような比較器113の比較結果に基づいて、逐次比較レジスタ115は、最上位から4番目のビットを「1」で確定する。よって、逐次比較レジスタ115は、デジタル信号Doutとして、1011を出力する。
【0022】
このように、比較例1のA/D変換回路110は、二分探索アルゴリズムに基づいて、サンプルホールド回路111で保持したアナログ入力電圧Vinと、DAC112で生成された比較電圧との比較を繰り返す。これにより、アナログ入力電圧Vinをデジタル値Doutに変換する。DAC112に設定する比較値は、逐次比較レジスタ115で設定される。
【0023】
二分探索アルゴリズムは、デジタル信号Doutのビット数の回数行う比較において、比較値を順次変化させる変化量Lをデジタル信号Doutの最大値の1/2から1/2ずつ順次変化させる。そして、比較器113の比較の結果により、比較値に変化量を加算又は減算を行う。すなわち、二分探索アルゴリズムは、デジタル信号Doutのビット数に等しい予め設定された回数だけアナログ入力電圧Vinを比較電圧と比較し、各比較において、比較電圧を基本電圧幅の所定倍数ずつ所定のシーケンスで低減させる。
【0024】
(比較例2:冗長な逐次比較の挿入)
次に、比較例2に係るA/D変換回路を説明する。本比較例のA/D変換回路は、冗長な逐次比較が挿入されている。
図3は、比較例2に係るA/D変換回路において、途中の比較で誤判定がある場合の二分探索により算出したA/D変換結果を例示した図である。
【0025】
図3に示すように、本比較例の二分探索アルゴリズムによるA/D変換では、比較C2~C3において、誤判定を含んでいる。比較C2では、アナログ入力電圧Vinの方が比較電圧よりも小さいので、本来は、変化量L3は-2となるところ、変化量L3は+2となっている。このように、途中の比較で誤判定がある場合には、比較C1~比較C4を経たときに誤差Errorが大きくなる。
【0026】
図4は、比較例2に係るA/D変換回路において、挿入した冗長な比較を含むサイクルによって誤判定を修正する逐次比較アルゴリズムにより算出したA/D変換結果を例示した図である。
図4に示すように、本比較例の逐次比較アルゴリズムにおいて、A/D変換の途中で挿入された比較C3は、冗長な比較CRとされている。
【0027】
比較C2では、比較器113は、アナログ入力電圧Vinと、比較電圧とを比較する。図に示すように、比較C2では、アナログ入力電圧Vinの方が小さい。よって、加減算回路116は、本来は、このような比較器113の比較結果に基づいて、次の変化量L3を比較値から減算する。しかしながら、誤判定により、加減算回路116は、次の変化量L3を加算させている。
【0028】
一方、冗長な比較C3(CR)では、比較器113は、再度、アナログ入力電圧Vinと、比較電圧とを比較する。図に示すように、冗長な比較C3(CR)では、アナログ入力電圧Vinの方が小さい。そして、加減算回路116は、このような比較器113の比較結果に基づいて、次の変化量L4(=L3)を比較値から減算する。よって、誤判定を修正することができる。
【0029】
このように、比較例2では、比較C2と比較C4との間に冗長な比較CRを挿入されている。冗長な比較CRは、直前の比較と同じ比較とされている。こうして、冗長な比較CRを挿入することにより、A/D変換における比較の誤判定を修正し、A/D変換精度を向上させることができる。なお、冗長な比較CRは、比較と比較との間に限らず、一連の比較の後に挿入されてもよい。
【0030】
このような冗長な比較CRを挿入するアルゴリズムを、冗長アルゴリズムと呼ぶ。冗長アルゴリズムは、二分探索アルゴリズムにおけるデジタル信号Doutのビット数の回数行う比較と比較との間、及び、デジタル信号Doutのビット数の回数行う比較の後の少なくともいずれかに、直前の比較と同じ冗長な比較を挿入する。冗長アルゴリズムにおいて、挿入される冗長な比較CRの位置は、比較C1と比較C2との間、比較C2と比較C3との間、比較C3と比較C4との間、比較C4の後等でもよく、限定されない。また、冗長アルゴリズムは、1個の冗長な比較CRを挿入されてもよいし、複数個の冗長な比較CRを挿入されてもよい。
【0031】
(発明者が新たに見出した課題)
発明者は、例えば、比較例1及び比較例2に係るA/D変換回路において、A/D変換精度評価を行うと、A/D変換回路の動作のタイミングを設定するクロックADCLKの周波数に依存して、A/D変換精度が悪化することを見出した。この原因としては、例えば、特定の周波数のクロックADCLK時に発生する自己ノイズ等があげられる。
【0032】
図5及び
図6は、逐次比較アルゴリズムによって、クロックADCLKにおけるA/D変換精度を例示したグラフであり、横軸は、クロックADCLKの周波数を示し、縦軸は、A/D変換精度を示す。
図5と
図6とは、相互に異なる逐次比較アルゴリズムを用いてA/D変換した場合を示している。
【0033】
図5及び
図6に示すように、相互に異なる逐次比較アルゴリズムを切り替えることにより、一部のクロックADCLKの周波数におけるA/D変換精度を改善させることができる。例えば、
図5に示す逐次比較アルゴリズムA1を用いた場合には、周波数が60[МHz]付近で、A/D変換精度は、1.5[LSB]のスペックを満たすことができる。しかしながら、周波数が50[МHz]付近で、A/D変換精度は、1.5[LSB]のスペックよりも大きく悪化する。
【0034】
一方、
図6に示すように、逐次比較アルゴリズムA2を用いた場合では、周波数が50[МHz]付近で、A/D変換精度は、1.5[LSB]のスペックを満たすことができる。しかしながら、クロックの周波数が60MHz付近で、A/D変換精度は、1.5[LSB]のスペックよりも大きく悪化する。
【0035】
このように、逐次比較アルゴリズムA1及びA2の設定変更で、クロックADCLKの一部の周波数におけるA/D変換精度は向上するが、クロックADCLKの別の周波数におけるA/D変換精度は悪化する。逐次比較アルゴリズムA1及びA2によって、A/D変換精度のクロックADCLKの周波数に対する依存性は変化する。
【0036】
(実施形態の概要:A/D変換回路及び半導体装置)
次に、実施形態の概要に係るA/D変換回路及び半導体装置を説明する。本実施形態のA/D変換回路は、設定するクロックADCLKの周波数によって逐次比較アルゴリズムを切り替える機能を有している。
図7は、実施形態の概要に係るA/D変換回路を含む半導体装置を例示したブロック図である。
図7に示すように、半導体装置1は、A/D変換回路10、記憶部20、プロセッサ30、端子19を備えている。A/D変換回路10は、アナログ入力電圧VinをDAC12で生成した比較電圧と逐次比較することによってデジタル信号Doutを出力する。
【0037】
A/D変換回路10は、サンプルホールド回路11、DAC12、比較器13、制御回路14、A/D変換制御レジスタ17、データレジスタ18を備えている。制御回路14は、逐次比較レジスタ15を有している。A/D変換制御レジスタ17は、逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41、クロック設定レジスタ42、アルゴリズム選択部43、評価用逐次比較アルゴリズム設定レジスタ44、評価モード設定レジスタ45、モード選択部46を有している。
【0038】
サンプルホールド回路11には、端子19を介して半導体装置1に入力されたアナログ入力電圧Vinが入力される。サンプルホールド回路11は、入力されたアナログ入力電圧Vinを保持し、標本化する。サンプルホールド回路11は、標本化されたアナログ入力電圧Vinを比較器13に出力する。
【0039】
DAC12は、制御回路14から出力された比較対象となるデジタル値の比較値をアナログ値に変換して比較電圧を生成する。つまり、DAC12は、比較値から比較電圧を生成する。DAC112は、生成した比較電圧を比較器13に出力する。
【0040】
比較器13は、サンプルホールド回路11から出力されたアナログ入力電圧Vinと、DAC12から出力された比較電圧との比較を行う。比較器13は、比較結果を制御回路14に出力する。
【0041】
制御回路14は、逐次比較アルゴリズムに基づいて比較値を生成する。また、制御回路14は、逐次比較アルゴリズムに基づいて、比較器13が行う比較の結果から比較値を生成する。制御回路14は、生成した比較値をDAC12に出力する。さらに、制御回路14は、比較器13が少なくともデジタル信号Doutのビット数の回数行った比較の結果から、アナログ入力電圧Vinをデジタル信号Doutに変換する。制御回路14は、変換したデジタル信号Doutを、データレジスタ18を介して出力する。データレジスタ18は、一時的にデジタル信号Doutを保持した後に、プロセッサ30に出力する。デジタル信号Doutは、所望の処理が行われる。
【0042】
例えば、制御回路14の逐次比較レジスタ15は、逐次比較アルゴリズムに基づいて比較値を生成し、生成した比較値をDAC12に出力してもよい。また、逐次比較レジスタ15は、逐次比較した結果から、デジタル信号Doutを出力してもよい。
【0043】
逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41は、複数の逐次比較アルゴリズムを記憶する。複数の逐次比較アルゴリズムは、相互に異なる複数の逐次比較アルゴリズムを記憶してもよいし、さらに、同じ逐次比較アルゴリズムを記憶してもよい。例えば、逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41は、所定の周波数範囲のクロックADCLKでA/D変換精度を向上させる逐次比較アルゴリズムA1及びA2等を含んでもよい。
【0044】
例示として、逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41は、45~49[MHz]でA/D変換精度を向上させる逐次比較アルゴリズムA1、及び、40~44[MHz]でA/D変換精度を向上させる逐次比較アルゴリズムA2を記憶してもよい。逐次比較アルゴリズムA1と逐次比較アルゴリズムA2とは相互に異なっている。具体的には、逐次比較アルゴリズムA1がA/D変換精度を向上させるクロックADCLKの周波数範囲と、逐次比較アルゴリズムA2がA/D変換精度を向上させるクロックADCLKの周波数範囲とは異なっている。
【0045】
また、逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41は、45~49[MHz]でA/D変換精度を向上させる逐次比較アルゴリズムA1及び60~64[MHz]でA/D変換精度を向上させる逐次比較アルゴリズムA1を記憶してもよい。逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41は、2つの周波数範囲でA/D変換精度を向上させる同一の逐次比較アルゴリズムA1を重複して記憶してもよい。
【0046】
逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41に記憶された複数の逐次比較アルゴリズムは、二分探索アルゴリズムと、冗長アルゴリズムと、のうち少なくともいずれかを含んでもよい。また、複数の逐次比較アルゴリズムは、複数の冗長アルゴリズムを含み、各冗長アルゴリズムは、冗長な比較CRが配置された位置及び個数の少なくともいずれかが相互に異なってもよい。
【0047】
クロック設定レジスタ42は、例えば、A/D変換回路10の動作タイミングを示すクロックADCLKの周波数情報を出力する。クロック設定レジスタ42は、クロックADCLKの周波数情報をアルゴリズム選択部43に出力する。
【0048】
アルゴリズム選択部43は、逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41に記憶された複数の逐次比較アルゴリズムから所定の逐次比較アルゴリズムを選択する。よって、制御回路14は、アルゴリズム選択部43によって選択された所定の逐次比較アルゴリズムに基づいて比較値を生成する。
【0049】
アルゴリズム選択部43は、クロック設定レジスタ42から出力された周波数情報に基づいて所定の逐次比較アルゴリズムを選択してもよい。このような構成とすることにより、A/D変換回路10は、設定するクロックADCLKの周波数に依存して自動的に逐次比較アルゴリズムを切り替え可能とすることができる。
【0050】
アルゴリズム選択部43は、選択した逐次比較アルゴリズムをモード選択部46に出力する。なお、モード選択部46がA/D変換モードを選択している場合には、アルゴリズム選択部43は、選択した逐次比較アルゴリズムを、モード選択部46を通して制御回路14に出力してもよい。
【0051】
評価用逐次比較アルゴリズム設定レジスタ44は、評価される評価用逐次比較アルゴリズムを記憶する。評価用逐次比較アルゴリズムは、A/D変換回路10で用いられるクロックADCLKの全周波数に渡って評価されるために、クロックADCLKの周波数に依存させずに評価される。すなわち、評価用逐次比較アルゴリズムは、逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41に記憶された複数の逐次比較アルゴリズムにおける各逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数に渡って評価される。評価用逐次比較アルゴリズム設定レジスタ44は、評価用逐次比較アルゴリズムをモード選択部46に出力する。
【0052】
評価モード設定レジスタ45は、A/D変換精度の評価を行う場合に、評価モードを設定する評価モード設定情報をモード選択部46に出力する。
【0053】
モード選択部46は、評価モード設定レジスタ45から出力された評価モード設定情報に基づいて、A/D変換モード及び評価モードのいずれかを選択する。具体的には、モード選択部46は、評価モード設定レジスタ45から評価モード設定情報を受信した場合には、評価モードを選択する。よって、その場合には、モード選択部46は、評価用逐次比較アルゴリズムを選択して制御回路14に出力する。制御回路14は、モード選択部46によって評価用逐次比較アルゴリズムが選択された場合には、選択された評価用逐次比較アルゴリズムに基づいて比較器13の比較結果から比較値を生成する。
【0054】
一方、モード選択部46は、評価モード設定レジスタ45から評価モード設定情報を受信しない場合には、A/D変換モードを選択する。よって、モード選択部46は、アルゴリズム選択部43から出力された逐次比較アルゴリズムを制御回路14に出力する。制御回路14は、アルゴリズム選択部43によって選択された逐次比較アルゴリズムに基づいて比較器13の比較結果から比較値を生成する。
【0055】
このように、モード選択部46は、評価モード設定レジスタ45から出力された評価モード設定情報に基づいて、評価用逐次比較アルゴリズム、及び、アルゴリズム選択部43により選択された所定の逐次比較アルゴリズムのいずれかを選択する。
【0056】
記憶部20は、例えば、不揮発性メモリであり、Read-Only Memory(ROM)、フラッシュメモリ、Solid-State Drive(SSD)又はその他のメモリ技術を含むが、これらに限らない。記憶部20は、CD-ROM、Digital Versatile Disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含んでもよい。
【0057】
プロセッサ30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であるが、これに限らない。プロセッサ30は、FPGA(Field-programmable Gate Array)、量子プロセッサ(量子コンピュータ制御チップ)等を含んでもよい。
【0058】
図8は、実施形態の概要に係るA/D変換回路10において、設定するクロックADCLKの周波数によって、逐次比較アルゴリズムを切り替えた場合のA/D変換精度を例示したグラフであり、横軸は、クロックADCLKの周波数を示し、縦軸は、A/D変換精度を示す。
図8に示すように、クロックADCLKの周波数の範囲Iは、所定の逐次比較アルゴリズムA1に設定されている。この場合には、当該周波数の範囲Iにおいて、A/D変換精度は、1.5[LSB]のスペックを満たすことができる。よって、A/D変換精度の悪化を抑制することができる。クロックADCLKの周波数の範囲IIの場合には、逐次比較アルゴリズムA2に設定されている。この場合には、当該周波数の範囲IIにおいて、A/D変換精度は、1.5[LSB]のスペックを満たすことができる。よって、A/D変換精度の悪化を抑制することができる。したがって、図に示す周波数の範囲に渡って、A/D変換精度は、1.5[LSB]のスペックを満たすことができるので、A/D変換精度を向上させることができる。
【0059】
このように、本実施形態によれば、クロックADCLKの周波数によって、最適な逐次比較アルゴリズムに切り替えるので、使用するクロックADCLKの周波数全域に渡って、A/D変換精度を向上させることができる。
【0060】
(実施形態1)
次に、実施形態1に係るA/D変換回路及び半導体装置を説明する。本実施形態のA/D変換回路において、逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41に記憶された複数の逐次比較アルゴリズムは、記憶部20から転送されたものである。
【0061】
図9は、実施形態1に係るA/D変換回路10を含む半導体装置1において、記憶部20に記憶された設定テーブルを例示した図である。
図9に示すように、記憶部20は、複数の逐次比較アルゴリズムを記憶している。各逐次比較アルゴリズムは、A/D変換精度の評価モードで、クロックADCLKの周波数に対する依存性を評価されている。そして、各逐次比較アルゴリズムは、評価結果に応じて、クロックADCLKの最適な周波数と対応付けられている。
【0062】
例えば、クロックADCLKの周波数が40~44[MHz]の範囲には、A/D変換精度の劣化を抑制する最適な逐次比較アルゴリズムA2が対応付けられている。同様に、クロックADCLKの周波数が45~49[MHz]の範囲には、逐次比較アルゴリズムA1が対応付けられている。クロックADCLKの周波数が50~54[MHz]の範囲には、逐次比較アルゴリズムA3が対応付けられている。クロックADCLKの周波数が55~59[MHz]の範囲には、逐次比較アルゴリズムA4が対応付けられている。クロックADCLKの周波数が60~64[MHz]の範囲には、逐次比較アルゴリズムA1が対応付けられている。
【0063】
このように、記憶部20は、予め書き込まれることにより複数の逐次比較アルゴリズム及び各逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数の組み合わせを記憶している。すなわち、記憶部20は、A/D変換回路10の評価結果から最適な逐次比較アルゴリズムをテーブル化して記憶している。なお、記憶部20を、単体として機能する記憶装置とも呼ぶ。
【0064】
図10は、実施形態1に係るA/D変換回路を含む半導体装置を例示したブロック図である。
図10に示すように、逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41に記憶された複数の逐次比較アルゴリズムは、記憶部20から転送されたものでもよい。よって、ユーザが設定したクロックADCLKの周波数に連動して、予め当該周波数に最適なアルゴリズムとして対応付けられた逐次比較アルゴリズムに自動的に切り替わるようにすることができる。これにより、A/D変換精度を向上させることができる。
【0065】
また、半導体装置1及びA/D変換回路10等の製品によって、A/D変換精度を向上させるクロックADCLKの周波数依存性が異なっていても、製品毎に記憶部20から最適な複数の逐次比較アルゴリズムの組み合わせを転送することにより、A/D変換精度を向上させることができる。
【0066】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るA/D変換回路及び半導体装置を説明する。本実施形態のA/D変換回路において、逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41に記憶される複数の逐次比較アルゴリズム及びそれらに対応した各周波数は、ユーザが評価して決定する。
【0067】
図11は、実施形態2に係るA/D変換回路を含む半導体装置を例示したブロック図である。
図11に示すように、例えば、ユーザは、半導体装置2のA/D変換回路10において、評価モード設定レジスタ45から評価モード設定情報を出力させ、モード選択部46を評価モードにする。これにより、ユーザは、ユーザの実使用環境におけるクロックADCLKの各周波数に最適な逐次比較アルゴリズムの組み合わせを決定してもよい。そして、ユーザは、
図9に示すような逐次比較アルゴリズムのテーブルを決定してもよい。ユーザは、プロセッサ30を動作させ、決定した逐次比較アルゴリズムの組み合わせを逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41に書き込みさせてもよい。プロセッサ30は、複数の逐次比較アルゴリズム及び各逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数の組み合わせを、逐次比較アルゴリズム設定レジスタに書き込む。
【0068】
したがって、本実施形態の逐次比較アルゴリズム設定レジスタ41は、複数の逐次比較アルゴリズム及び各周波数の組み合わせを、ユーザの設定で動作するプロセッサ30によって書き込まれている。本実施形態によれば、A/D変換回路10の逐次比較アルゴリズムをユーザの実使用環境に合わせることができる。よって、顧客等のユーザの実使用環境における最適な逐次比較アルゴリズムを適用することができ、A/D変換精度を向上させることができる。
【0069】
(変形例)
なお、モード選択部46は、A/D変換モード及び評価モードに切り替えるだけでなく、全周波数対応モードに切り替えてもよい。全周波数対応モードは、評価モードのように、逐次比較アルゴリズムをクロックADCLKの周波数に依存させることなく、周波数に無関係に用いる。つまり、逐次比較アルゴリズムを、使用するクロックADCLKの全周波数において用いる。
【0070】
図12は、実施形態2の変形例に係るA/D変換回路を含む半導体装置を例示したブロック図である。
図12に示すように、半導体装置2aは、A/D変換回路10a、記憶部20、プロセッサ30及び端子19を備えている。A/D変換回路10aは、A/D変換回路10における評価用逐次比較アルゴリズム設定レジスタ44及び評価モード設定レジスタ45の代わりに、周波数対応逐次比較アルゴリズム設定レジスタ44a及びモード設定レジスタ45aを有している。
【0071】
周波数対応逐次比較アルゴリズム設定レジスタ44aは、使用するクロックADCLKの全周波数に対応させる周波数対応逐次比較アルゴリズムを記憶する。すなわち、周波数対応逐次比較アルゴリズム設定レジスタ44aは、複数の逐次比較アルゴリズムに対応付けられた各周波数に渡って用いられる周波数対応逐次比較アルゴリズムを記憶する。
【0072】
モード設定レジスタ45aは、周波数対応逐次比較アルゴリズムに、クロックADCLKの周波数に無関係に、全周波数に対応させるモードを設定するモード設定情報を出力する。モード選択部46aは、モード設定レジスタ45aから出力されたモード設定情報に基づいて、周波数対応逐次比較アルゴリズム、及び、アルゴリズム選択部43により選択された所定の逐次比較アルゴリズムのいずれかを選択する。制御回路14は、モード選択部46aによって周波数対応逐次比較アルゴリズムが選択された場合には、選択された周波数対応逐次比較アルゴリズムに基づいて比較器13の比較結果から比較値を生成する。
【0073】
本変形例によれば、クロックADCLKの周波数に依存させて選択された逐次比較アルゴリズムを用いてA/D変換するモードと、クロックADCLKの周波数とは無関係に特定の逐次比較アルゴリズムを用いてA/D変換するモードとに切り替えることができる。よって、クロックADCLKの周波数に依存した逐次比較アルゴリズムの切り替えを有効、または、無効にすることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0074】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るA/D変換回路及び半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置は、クロックADCLKの周波数を制御するクロック制御回路を備えている。
図13は、実施形態3に係るA/D変換回路を含む半導体装置を例示したブロック図である。
【0075】
図13に示すように、半導体装置3は、A/D変換回路10b、記憶部20、プロセッサ30及び端子19に加えて、さらに、クロック制御回路50を備えている。クロック制御回路50を、単体として機能するクロック制御装置とも呼ぶ。クロック制御回路50は、A/D変換回路10を含む半導体装置3のクロックADCLKの周波数を制御する。クロック制御回路50は、予め半導体装置3に設定された条件に基づいて自動的にクロックADCLKの周波数を変化させてもよい。
【0076】
A/D変換回路10bは、A/D変換回路10におけるA/D変換制御レジスタ17の代わりに、A/D変換制御レジスタ17aを有している。A/D変換制御レジスタ17aは、A/D変換制御レジスタ17におけるクロック設定レジスタ42の代わりに、クロック制御部51を有している。クロック制御部51は、クロックADCLKの周波数の変化を検出し、検出した周波数に基づいて、周波数情報をアルゴリズム選択部43に出力する。アルゴリズム選択部43は、クロック制御部51から出力された周波数情報に基づいて逐次比較アルゴリズムを選択する。
【0077】
本実施形態よれば、A/D変換回路10bは、クロック制御部51を有しているので、自動的にクロックADCLKの周波数が変化する場合でも、クロックADCLKの周波数の変化を検出することができる。よって、アルゴリズム選択部43は、周波数の変化に応じて、逐次比較アルゴリズムを切り替えることができる。これにより、A/D変換精度を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1及び2の記載に含まれている。
【0078】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施形態1~3及び変形例の各構成を組み合わせたものも、技術的思想の範囲である。
【符号の説明】
【0079】
1、2、2a、3 半導体装置
10、10a、10b A/D変換回路
11 サンプルホールド回路
12 DAC
13 比較器
14 制御回路
15 逐次比較レジスタ
17 A/D変換制御レジスタ
17a A/D変換制御レジスタ
18 データレジスタ
19 端子
20 記憶部
30 プロセッサ
41 逐次比較アルゴリズム設定レジスタ
42 クロック設定レジスタ
43 アルゴリズム選択部
44 評価用逐次比較アルゴリズム設定レジスタ
44a 周波数対応逐次比較アルゴリズム設定レジスタ
45 評価モード設定レジスタ
45a モード設定レジスタ
46、46a モード選択部
50 クロック制御回路
51 クロック制御部
110 A/D変換回路
111 サンプルホールド回路
112 DAC
113 比較器
114 制御回路
115 逐次比較レジスタ
116 加減算回路
C1、C2、C3、C4 比較
CR 冗長な比較
Dout デジタル信号
L、L1、L2、L3、L4 変化量
Vin アナログ入力電圧