IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダリヤの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177991
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】不快臭抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/58 20060101AFI20231207BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20231207BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A61K8/58
A61Q5/10
A61Q5/08
A61K8/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090993
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】浅野 光範
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 吉史
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 博幸
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB351
4C083AB352
4C083AC891
4C083AC892
4C083CC36
4C083EE05
4C083EE26
4C083EE27
4C083EE50
(57)【要約】
【課題】アルカリ剤としてアルカノールアミンを含有し、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない染毛剤または脱色剤組成物の使用時におけるアミン類による不快臭を抑制する不快臭抑制剤を提供する。
【解決手段】アルカリ剤としてアルカノールアミンを含有し、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない染毛剤または脱色剤組成物の使用時における不快臭抑制剤であって、不快臭抑制剤が(A)ヒドロキシエタンジホスホン酸であり、染毛剤または脱色剤組成物に対する前記(A)成分の含有量が、0.001~1質量%であること特徴とする染毛剤または脱色剤組成物の使用時における不快臭抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤としてアルカノールアミンを含有し、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない染毛剤または脱色剤組成物の使用時における不快臭抑制剤であって、不快臭抑制剤が(A)ヒドロキシエタンジホスホン酸であり、染毛剤または脱色剤組成物に対する前記(A)成分の含有量が、0.001~1質量%であること特徴とする染毛剤または脱色剤組成物の使用時における不快臭抑制剤。
【請求項2】
さらに(B)カリミョウバンを前記(A)成分と組み合わせることを特徴とする請求項1に記載の染毛剤または脱色剤組成物の使用時における不快臭抑制剤。
【請求項3】
染毛剤または脱色剤組成物に対する前記(B)成分の含有量が、0.01~2質量%であること特徴とする請求項2に記載の染毛剤または脱色剤組成物の使用時における不快臭抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ剤としてアルカノールアミンを含有し、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない染毛剤または脱色剤組成物の使用時における不快臭抑制剤に関する。さらに詳しくは、アルカリ剤としてアルカノールアミンを含有し、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない染毛剤または脱色剤組成物の使用時におけるアミン類の不快臭抑制剤に関する。
【0002】
近年のファッション意識の高まりから、手軽に髪の色を変化させることのできるヘアカラーリング剤は、男女問わず多くの人に受け入れられている。ヘアカラーリング剤には、永久染毛剤、半永久染毛料、脱色剤および一時着色料など、様々な種類があり、それぞれのニーズによって使用される。なかでも永久染毛剤および脱色剤は、染毛および脱色効果に優れ、この特性から現在多くの人に使用されているヘアカラーリング剤である。
【0003】
ヘアカラーリング剤の永久染毛剤および脱色剤には、一般的にアルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤で構成されており、第1剤に用いられる一般的なアルカリ剤として、アンモニアが使用されている。しかし、アンモニアは、強い刺激臭を有しており、使用時において刺激臭の不快感を伴う欠点があった。
【0004】
上記問題を解決するために特許文献1では毛髪処理剤を構成するアルカリ剤、基材、還元剤からなる毛髪処理剤組成物の各剤に嗅覚を刺激する所定成分の割合を嗅覚上の感知限界以下であるものから選択することにより、不快な嗅覚を覚えることがない毛髪処理剤組成物を開示している。また、特許文献2ではアルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤を混合して使用する染毛剤に、有機溶剤、ポリオキシアルキレン化合物、低級アルコールまたは多価アルコールを含有し、かつアンモニアを含有しないことにより、刺激臭が少なく、毛髪の脱色力、染毛力に優れる染毛剤組成物を開示している。特許文献1および特許文献2いずれもアルカリ剤としてアンモニアおよびアンモニウム塩の代わりに刺激臭のないアルカノールアミンを含有することで、アンモニア特有の刺激臭の問題を解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-146847号公報
【特許文献2】特開2004-217672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2は染毛剤組成物そのものによる不快臭の抑制について検討はされていたが、染毛や脱色の使用時におけるアルカノールアミン由来のアミン類の不快臭については検討されていなかった。
【0007】
そこで本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、アルカリ剤としてアルカノールアミンを含有し、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない染毛剤または脱色剤組成物の使用時におけるアミン類の不快臭を抑制する不快臭抑制剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アルカリ剤としてアルカノールアミンを含有し、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない染毛剤または脱色剤組成物の使用時における不快臭抑制剤であって、不快臭抑制剤が(A)ヒドロキシエタンジホスホン酸とすることにより、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、アルカリ剤としてアルカノールアミンを含有し、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない染毛剤または脱色剤組成物の使用時における不快臭抑制剤であって、不快臭抑制剤が(A)ヒドロキシエタンジホスホン酸であり、染毛剤または脱色剤組成物に対する前記(A)成分の含有量が、0.001~1質量%であることを特徴とする染毛剤または脱色剤組成物の使用時における不快臭抑制剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、アルカリ剤としてアルカノールアミンを含有し、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない染毛剤または脱色剤組成物の使用時におけるアミン類の不快臭を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0012】
本発明における不快臭とはアミン類の臭いを意味するものである。
【0013】
本発明における使用時とは、染毛剤または脱色剤組成物を毛髪上で染毛または脱色している状態のことを意味するものである。
【0014】
本発明における染毛剤または脱色剤組成物は、アルカリ剤を含有する第1剤、酸化剤を含有する第2剤との混合物である。
【0015】
本発明における前記アルカリ剤は、アルカノールアミンである
【0016】
本発明における前記アルカノールアミンとしては、特に限定されないが、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられ、これらは1種以上を含有することができる。
【0017】
本発明における前記アルカリ剤は、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない。
【0018】
本発明における前記アンモニウム塩としては、無機酸のアンモニウム塩として、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられ、有機酸のアンモニウム塩として、クエン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
【0019】
本発明における前記酸化剤は、特に限定されないが、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物、臭素酸ナトリウム等が挙げられ、これらは1種以上を含有することができる。
【0020】
本発明の染毛剤または脱色剤組成物は、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、他の界面活性剤、油性成分、保湿剤、増粘剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。
【0021】
本発明の染毛剤または脱色剤組成物の剤型は、乳液状、クリーム状、ジェルクリーム状、泡状、エアゾールフォーム状等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いられる不快臭抑制剤は、染毛剤または脱色剤組成物の第1剤、第2剤のいずれか一方または両方に含有することができる。
【0023】
本発明で用いられる不快臭抑制剤は、1種以上の成分を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明における染毛剤または脱色剤組成物の不快臭抑制剤は、不快臭を抑制する観点から(A)ヒドロキシエタンジホスホン酸である。
【0025】
本発明で用いられる前記(A)成分の染毛剤または脱色剤組成物に対する含有量は、0.001~1%が好ましく、0.05~1%がより好ましく、0.5~1%がさらに好ましい。前記(A)成分の含有量が0.001%未満の場合、不快臭を抑制できなくなる恐れがある。前記(A)成分の含有量が1%を超える場合、それ以上の効果が得られにくくなる。
【0026】
本発明における染毛剤または脱色剤組成物の不快臭抑制剤は、不快臭の抑制を向上させる観点からさらに(B)カリミョウバンを組み合わせてもよい。
【0027】
本発明で使用するカリミョウバンとは、化学名:硫酸アルミニウムカリウムのことである。
【0028】
本発明で用いられる前記(B)成分の染毛剤または脱色剤組成物に対する含有量は、特に限定されないが、0.01~2%が好ましく、0.5~2%がより好ましい。前記(B)成分の含有量が0.01%未満の場合、不快臭を抑制できなくなる恐れがある。また前記(B)成分の含有量が2%を超える場合、それ以上の効果が得られにくくなる。
【実施例0029】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
本明細書に示す評価試験において、表1および表2に示す染毛剤組成物第1剤および染毛剤組成物第2剤に、表3および表4に示す不快臭抑制剤の含有量を変更しながら染毛剤組成物を調製し実施した。また、染毛剤組成物第1剤および染毛剤組成物第2剤の混合比率は1:1で混合し、(A)成分の不快臭抑制剤は表2の染毛剤組成物第2剤に含有し、(B)成分の不快臭抑制剤は表1の染毛剤組成物第1剤に含有して実施した。染毛剤組成物第1剤および染毛剤組成物第2剤に(A)成分および(B)成分を含有した分は精製水で調製し100%とした。なお、各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。
【0031】
[アミン類の不快臭の試験方法]
表3および表4に示した不快臭抑制剤を含有した染毛剤組成物1gを、人毛毛束(株式会社ビューラックス、人毛黒髪100%(1g×10cm))に塗布し、直ちに人毛毛束の表、裏に各20回櫛を通して均一にする。 不快臭抑制剤を含有した染毛剤組成物を塗布した毛束をビーカー(IWAKI、500mlビーカー、胴外径90mm×高さ125mm)に入れ、ビーカー天面をデュラシール(DS4-500)で密封し、10分間放置して人毛毛束と反応させた後、デュラシールの上に粘着テープ(日東電工CSシステム株式会社、布粘着テープNo.770)を張り付けてデュラシールが裂けることを防いだうえで、ビーカー上部の中心部分に検知管の先端がビーカー上部から3cmの高さとなるように差し込み、検知管式気体測定器のハンドルを操作して測定ガスを吸引し、アミン類の濃度を測定する。
【0032】
検知管、検知管式気体測定器の型式およびこれらを用いたアミン類の測定条件は次の通りである。
・検知管:ガステック社製、No.180
・検知管式気体測定器:ガステック社製、GV-100
・測定条件
吸引回数1回
吸引量100mL
吸引時間30秒
【0033】
[官能による使用時の不快臭の評価]
(試験方法)
表1および表2に示す染毛剤組成物第1剤および染毛剤組成物第2剤に、表3および表4に示す不快臭抑制剤を含有した染毛剤組成物をアミン類の不快臭の試験方法を用いて染毛を行い、染毛してから10分後のビーカー内の臭いを専門パネラ―15名が比較例1を基準として官能評価を行い以下の基準にて評価した。
【0034】
(評価基準)
◎:10名から15名が比較例1と比べ不快臭を感じないと評価した。
〇:5名から9名が比較例1と比べ不快臭を感じないと評価した。
×:比較例1と比べ不快臭を感じないと評価した人が4名以下。
【0035】
以下に、表1に染毛剤組成物第1剤を、表2に染毛剤組成物第2剤を記す。
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表3および表4の実施例1から実施例10は、比較例1から比較例3と比較して、アミン類の不快臭の抑制に関して良好な結果を得た。
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、アルカリ剤としてアルカノールアミンを含有し、アンモニアおよびアンモニウム塩を含有しない染毛剤または脱色剤組成物の使用時におけるアミン類の不快臭を抑制する不快臭抑制剤を提供することができる。