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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177997
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ドローン及びその駆動方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/24 20060101AFI20231207BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20231207BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20231207BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20231207BHJP
   H02K 7/102 20060101ALI20231207BHJP
   H02K 7/106 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C27/08
B64C39/02
H02K7/10 A
H02K7/102
H02K7/106
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091004
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森元 瑛樹
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607EE07
5H607EE08
5H607EE26
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で、垂直離陸時と水平飛行時のそれぞれにおいて飛行に適した推力を得ることができるドローンを提供する。
【解決手段】ドローン2000は、本体1000と原動ロータ10と受動ロータ20とを有する磁気ギアードモータ100と第1及び第2回転翼1310,1320とを備えている。第1回転翼1310は原動ロータ10の回転とともに、第2回転翼1320は受動ロータ20の回転とともにそれぞれ回転する。第2回転翼1320は受動ロータ20の回転に応じて開閉自在である。磁気ギアードモータ100は、受動ロータ20及び原動ロータ10が互いに同調して回転する第1モードと、原動ロータ10が回転する間に、受動ロータ20が原動ロータ10の回転から脱調状態となる第2モードのいずれかで動作可能に構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に連結された磁気ギアードモータと、
前記磁気ギアードモータに連結された回転翼と、を少なくとも備え、
前記回転翼は、
前記磁気ギアードモータの第1出力軸に連結された第1回転翼と、
前記磁気ギアードモータの第2出力軸に連結された第2回転翼と、を有し、
前記第1回転翼は、前記第1出力軸の回転とともに回転し、
前記第2回転翼は、前記第2出力軸の回転とともに回転し、かつ前記第2出力軸の回転に応じて開閉自在に構成され、
前記第2回転翼が開いた場合の直径は、前記第1回転翼の直径よりも大きく、
前記磁気ギアードモータは、
前記第1出力軸を有する原動ロータと、
前記第2出力軸を有する受動ロータと、
前記原動ロータ及び前記受動ロータとそれぞれ磁気的に結合されたステータと、を少なくとも有し、
前記第1出力軸は、前記原動ロータと回転一体に設けられるとともに、前記第1出力軸の長手方向である軸方向回りに回転可能に構成され、
前記第2出力軸は、前記受動ロータと回転一体に設けられるとともに、前記第1出力軸と同軸に配置され、
前記磁気ギアードモータは、さらに、
前記受動ロータ及び前記原動ロータが互いに同調して回転する第1モードと、
前記原動ロータが回転する間に、前記受動ロータが前記原動ロータの回転から脱調状態となる第2モードのいずれかのモードで動作可能に構成されていることを特徴とするドローン。
【請求項2】
請求項1に記載のドローンにおいて、
前記磁気ギアードモータは、磁気ギアとモータとで構成され、
前記磁気ギアは、前記第1出力軸を有する前記原動ロータと、前記第2出力軸を有する前記受動ロータと、前記ステータと、を少なくとも有し、
前記第1出力軸は、前記モータの回転軸に回転一体に接続され、前記モータの回転とともに回転することを特徴とするドローン。
【請求項3】
請求項1に記載のドローンにおいて、
前記原動ロータから前記第1出力軸が突出する方向を第1方向とするとき、
前記第1出力軸及び前記第2出力軸は、ともに前記第1方向に沿って突出していることを特徴とするドローン。
【請求項4】
請求項1に記載のドローンにおいて、
前記原動ロータから前記第1出力軸が突出する方向を第1方向とするとき、
前記第2出力軸は、前記第1方向と反対側に突出していることを特徴とするドローン。
【請求項5】
請求項1に記載のドローンにおいて、
前記第2回転翼は、付勢部材を介して前記第2出力軸に連結されており、
前記磁気ギアードモータが前記第2モードで動作しているか、または動作していない場合、前記第2回転翼は、前記付勢部材により閉じた状態になっていることを特徴とするドローン。
【請求項6】
請求項1に記載のドローンの駆動方法であって、
前記磁気ギアードモータは、ブレーキをさらに備え、
前記磁気ギアードモータの動作モードを前記第1モードから前記第2モードに移行させる場合、
前記ブレーキを動作させて、前記受動ロータの回転を制動するか、または前記受動ロータを静止固定することを特徴とするドローンの駆動方法。
【請求項7】
請求項1に記載のドローンの駆動方法であって、
前記磁気ギアードモータは、ブレーキをさらに備え、
前記磁気ギアードモータの動作モードを前記第1モードから前記第2モードに移行させる場合、
前記受動ロータにはずみを付けた後に、前記ブレーキを動作させて、前記原動ロータの回転を制動するか、または前記原動ロータを静止固定することを特徴とするドローンの駆動方法。
【請求項8】
請求項1に記載のドローンの駆動方法であって、
前記磁気ギアードモータの動作モードを前記第1モードから前記第2モードに移行させる場合、
前記ステータで発生する回転磁界を強めることで、前記原動ロータの回転を所定値以上に加速させることを特徴とするドローンの駆動方法。
【請求項9】
請求項1に記載のドローンの駆動方法であって、
前記磁気ギアードモータの動作モードを前記第1モードから前記第2モードに移行させる場合、
前記ステータで発生する回転磁界の回転方向を反転させることで、前記原動ロータの回転方向を反転させることを特徴とするドローンの駆動方法。
【請求項10】
請求項9に記載のドローンの駆動方法において、
前記ステータで発生する回転磁界の回転方向を複数回反転させることを特徴とするドローンの駆動方法。
【請求項11】
請求項6に記載のドローンの駆動方法において、
前記磁気ギアードモータの回転指令に、前記原動ロータと前記受動ロータとの磁気的結合に関する共振周波数の脈動成分を重畳させることで、前記磁気ギアードモータの動作モードを前記第1モードから前記第2モードに移行させることを特徴とするドローンの駆動方法。
【請求項12】
請求項6に記載のドローンの駆動方法において、
前記原動ロータの回転を減速するか、または、前記原動ロータの回転を一時的に停止して、前記受動ロータの回転と同調させることで、前記磁気ギアードモータの動作モードを前記第2モードから前記第1モードに移行させることを特徴とするドローンの駆動方法。
【請求項13】
請求項6に記載のドローンの駆動方法において、
前記磁気ギアードモータは、前記受動ロータを回転させる回転機構をさらに備え、
前記回転機構を駆動して、前記受動ロータを前記原動ロータとの回転同調速度に近づけるように回転させることで、前記磁気ギアードモータの動作モードを前記第2モードから前記第1モードに移行させることを特徴とするドローンの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドローン及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータに連結された回転翼を有する飛行装置(以下、ドローンという)の利用が広まりつつあり、ドローンの構造や駆動に関する提案が多くなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、同軸に配置された第1ロータと第2ロータにそれぞれ連結された第1プロペラと第2プロペラとを有するドローンが開示されている。第1ロータには、ステータで発生した回転磁界と逆方向に回転するのを妨げる第1負荷トルクが作用する。また、第2ロータには、ステータで発生した回転磁界と同方向に回転するのを妨げる第2負荷トルクが作用する。このことにより、回転磁界と第1ロータと第2ロータとは、互いの間に回転速度の所定の共線関係を保ちながら回転する。また、第1ロータと第2ロータとは、互いに反対方向に回転するように構成されており、これに応じて、第1プロペラと第2プロペラも、互いに反対方向に回転する、いわゆる、二重反転スクリュー機構となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-113578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ドローンの推力発生機構として、二重反転スクリュー機構を用いた場合、垂直離着陸時の推力は大きくすることができるが、水平飛行時に空気抵抗が増えてドローンを効率良く運転できないという課題があった。
【0006】
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、簡便な構成で、垂直離陸時と水平飛行時のそれぞれにおいて飛行に適した推力が得られるドローン及びその駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係るドローンは、本体と、前記本体に連結された磁気ギアードモータと、前記磁気ギアードモータに連結された回転翼と、を少なくとも備え、前記回転翼は、前記磁気ギアードモータの第1出力軸に連結された第1回転翼と、前記磁気ギアードモータの第2出力軸に連結された第2回転翼と、を有し、前記第1回転翼は、前記第1出力軸の回転とともに回転し、前記第2回転翼は、前記第2出力軸の回転とともに回転し、かつ前記第2出力軸の回転に応じて開閉自在に構成され、前記第2回転翼が開いた場合の直径は、前記第1回転翼の直径よりも大きく、前記磁気ギアードモータは、前記第1出力軸を有する原動ロータと、前記第2出力軸を有する受動ロータと、前記原動ロータ及び前記受動ロータとそれぞれ磁気的に結合されたステータと、を少なくとも有し、前記第1出力軸は、前記原動ロータと回転一体に設けられるとともに、前記第1出力軸の長手方向である軸方向回りに回転可能に構成され、前記第2出力軸は、前記受動ロータと回転一体に設けられるとともに、前記第1出力軸と同軸に配置され、前記磁気ギアードモータは、さらに、前記受動ロータ及び前記原動ロータが互いに同調して回転する第1モードと、前記原動ロータが回転する間に、前記受動ロータが前記原動ロータの回転から脱調状態となる第2モードのいずれかのモードで動作可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、簡便な構成で、垂直離陸時と水平飛行時のそれぞれにおいて飛行に適した推力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係るドローンの平面図である。
図2】ドローンの要部の断面模式図である。
図3A】第2回転翼の開閉状態を示す模式図である。
図3B】付勢部材を設けた場合の第2回転翼の開閉状態を示す模式図である。
図4】垂直離陸時と水平飛行時の磁気ギアードモータ、第1回転翼及び第2回転翼の状態を示す模式図である。
図5】別の磁気ギアードモータの要部の断面模式図である。
図6】磁気ギアードモータの脱調方法を説明する模式図である。
図7】磁気ギアードモータの別の脱調方法を説明する模式図である。
図8】ブレーキの一例を示す模式図である。
図9】磁気ギアードモータの回転同調の復帰方法を説明する模式図である。
図10】変形例1に係る磁気ギアードモータの脱調方法を説明する模式図である。
図11】原動ロータと受動ロータとの磁気的結合状態を説明する模式図である。
図12】磁気ギアードモータの伝達関数のボード線図である。
図13】変形例1に係る磁気ギアードモータの動作シミュレーション結果を示す図である。
図14】変形例1に係る磁気ギアードモータの回転同調の復帰方法を説明する模式図である。
図15】実施形態2に係るドローンの要部の断面模式図である。
図16A】実施形態2に係る第1モードで動作時の磁気ギアードモータの一例を示す図である。
図16B】第2モードで動作時の磁気ギアードモータの一例を示す図である。
図17A】変形例2に係る第1のドローンの要部の断面模式図である。
図17B】変形例2に係る第2のドローンの要部の断面模式図である。
図17C】変形例2に係る第3のドローンの要部の断面模式図である。
図17D】変形例2に係る第4のドローンの要部の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0011】
(実施形態1)
[ドローン及び磁気ギアードモータの構成]
図1は、実施形態1に係るドローンの平面図を示し、図2は、ドローンの要部の断面模式図を示す。図3Aは、第2回転翼の開閉状態を示す模式図であり、図3Bは、付勢部材を設けた場合の第2回転翼の開閉状態を示す模式図である。図4は、垂直離陸時と水平飛行時の磁気ギアードモータ、第1回転翼及び第2回転翼の状態を示す模式図である。図5は、別の磁気ギアードモータの要部の断面模式図を示す。
【0012】
なお、図2及び図5に示す磁気ギアードモータ100,200は、他の構成部品、例えば、軸受等を備えているが、説明の便宜上、これら以外の部品については図示及び説明を省略する。また、磁気ギアードモータ100,200を構成する各部品は、形状を簡略化して図示しており、実際の形状とは異なっている。
【0013】
なお、以降の説明において、磁気ギア300または磁気ギアードモータ100の軸心を通る方向であって、第1出力軸11,311及び第2出力軸21,321の長手方向を軸方向と呼ぶことがある。ステータ30,330の外周方向を周方向と呼ぶことがある。ステータ30,330の半径方向を径方向と呼ぶことがある。また、軸方向において、図2に示すように、原動ロータ10から第1出力軸11が突出する方向を第1方向と呼ぶことがある。なお、本実施形態では、第1方向は、ドローン2000が垂直離着陸する方向である。一方、ドローン2000が水平飛行する方向を第2方向(図4参照)と呼ぶ。なお、後で述べるように、ドローン2000が水平飛行する場合は、原動ロータ10から第1出力軸11が突出する方向が第2方向となる。
【0014】
図1に示すように、ドローン2000は、本体1000と4本のアーム1100と方向制御部1200とを有している。4本のアーム1100のそれぞれは、本体1000に接続され、方向制御部1200は、アーム1100の先端にそれぞれ設けられている。また、方向制御部1200のそれぞれに、磁気ギアードモータ100とこれに連結された第1回転翼1310と第2回転翼1320とが設けられている。なお、以降の説明において、第1回転翼1310と第2回転翼1320とを総称して回転翼1300と呼ぶことがある。
【0015】
本体1000は、バッテリーと通信部と制御部(いずれも図示せず)とを有している。バッテリーは、制御部と通信部に電力を供給する。また、バッテリーは、方向制御部1200と磁気ギアードモータ100のそれぞれに駆動電力を供給する。
【0016】
通信部は、外部からの制御情報、例えば、図示しないコントローラからの操作信号を受け取って制御部に送る。なお、コントローラは、操作者が携帯して移動可能に構成されたモバイルデバイスであることが好ましい。モバイルデバイスとして、ドローン2000の運転プログラムがインストールされた公知のスマートフォン等を用いてもよい。
【0017】
制御部は、通信部から受け取った操作信号に基づいて、磁気ギアードモータ100と方向制御部1200のそれぞれの動作を制御する。特に、制御部は、垂直離着陸と水平飛行のそれぞれの開始、終了時において、磁気ギアードモータ100と方向制御部1200との連動動作を制御する。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される。制御部にRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリが記憶部として組み込まれていてもよい。メモリに、ドローン2000の運転プログラムが記憶され、通信部から送られた信号に基づいて、運転プログラムが起動し、磁気ギアードモータ100と方向制御部1200のそれぞれの動作を制御してもよい。
【0018】
アーム1100は、所定の強度と剛性を有する棒状の部材であり、一端が本体1000に接続されている。方向制御部1200は、アーム1100によって支持され、本体1000に連結される。
【0019】
方向制御部1200は、制御部からの制御信号に基づいて、ドローン2000の移動方向を変更させる。アーム1100と方向制御部1200との接続部分は回転軸(図示せず)が設けられており、方向制御部1200は当該回転軸の回りに所定の角度だけ回転可能に構成されている。なお、当該回転軸は、アーム1100または方向制御部1200に設けられた図示しないモータによって回転する。
【0020】
方向制御部1200が所定の角度、回転することで、磁気ギアードモータ100やこれに連結された回転翼1300の姿勢が変化し、ドローン2000の移動方向が変更される。これについては後でさらに述べる。
【0021】
磁気ギアードモータ100は、第1出力軸11に連結された第1回転翼1310を第1出力軸11の周りに、第2出力軸21に連結された第2回転翼1320を第2出力軸21の周りにそれぞれ回転させる。なお、磁気ギアードモータ100に代えて、図5に示す磁気ギアードモータ200を用いてもよい。磁気ギアードモータ100,200の構造については後で述べる。
【0022】
第1回転翼1310は、プレート1311に接続された2枚の板状の翼である。第1回転翼1310は、プレート1311を介して磁気ギアードモータ100の第1出力軸11に連結されている。プレート1311は第1出力軸11に回転一体に連結されている。このことにより、第1回転翼1310は第1出力軸11の回転とともに回転する。なお、第1回転翼1310の枚数は、2枚以上であればよく、3枚でも4枚でもよい。回転時に生じる第1回転翼1310の推力に要求される仕様に応じて適宜変更される。
【0023】
第2回転翼1320は、プレート1321に連結された2枚の板状の翼である。第2回転翼1320は、プレート1321を介して磁気ギアードモータ100の第2出力軸21に連結されている。プレート1321は第2出力軸21に回転一体に連結されている。このことにより、第2回転翼1320は第2出力軸21の回転とともに回転する。ただし、第2回転翼1320とプレート1321とはヒンジ1322を介して連結されており、第2出力軸21が回転動作をしていない場合、第2回転翼1320は閉じた状態になっている。なお、第2回転翼1320の枚数は、2枚以上であればよく、3枚でも4枚でもよい。回転時に生じる第2回転翼1320の推力に要求される仕様に応じて適宜変更される。
【0024】
なお、本願明細書において、図3Aに破線で示すように、第2回転翼1320が「閉じた状態」とは、第2回転翼1320が、ヒンジ1322を支点としてプレート1321の表面と直交するように変位した状態を言う。一方、第2回転翼1320が「開いた状態」とは、図3Aに実線で示すように、第2回転翼1320が、ヒンジ1322を支点としてプレート1321の表面と平行になるように変位した状態を言う。
【0025】
なお、本願明細書において、「直交」または「平行」とは、比較対象同士が厳密な意味で直交または平行であることまでも意味するものではない。例えば、第2回転翼1320が開いた状態である場合、軸方向と交差する方向から見て、第2回転翼1320の表面とプレート1321の表面とがなす角度が数度~十数度の範囲になっていてもよい。同様に、第2回転翼1320が閉じた状態である場合、軸方向と交差する方向から見て、第2回転翼1320の表面とプレート1321の表面とがなす角度が90度から数度~十数度差し引いた範囲になっていてもよい。
【0026】
なお、ドローン2000の移動方向を垂直方向から水平方向に切り替える場合、磁気ギアードモータ100の動作モードも切り替える。第2回転翼1320の開閉状態は、磁気ギアードモータ100の動作モードによって決まるため、第2回転翼1320の開閉状態もドローン2000の移動方向に応じて変化する。これらについては後で説明する。
【0027】
[磁気ギアードモータの構成]
図2に示すように、磁気ギアードモータ100は、モータケース40の内部に原動ロータ10と受動ロータ20とステータ30とを少なくとも備えている。
【0028】
ステータ30は、磁気ギアードモータ100の軸心に配置されており、図示しない外部電源から供給された電力により、時間的に変動する回転磁界を発生させる。
【0029】
受動ロータ20は、ステータ30の径方向外側に、ステータ30と所定の間隔をあけて配置されている。受動ロータ20は、軸心部分が中空である中空構造の第2出力軸21を有しており、第2出力軸21は、第1方向に沿ってモータケース40の外部に突出している。
【0030】
原動ロータ10は、受動ロータ20の径方向内側に、受動ロータ20と所定の間隔をあけて配置されている。原動ロータ10は、第1出力軸11を有しており、第1出力軸11は、第1方向に沿ってモータケース40の外部に突出している。第1出力軸11は、第2出力軸21の内部に第2出力軸21と所定の間隔をあけて収容されている。
【0031】
原動ロータ10は、ステータ30と磁気的に結合されており、ステータ30で発生した回転磁界により、磁気ギアードモータ100の軸心回り、つまり、軸方向回りに回転する。第1出力軸11は、原動ロータ10と回転一体に設けられているため、原動ロータ10とともに回転する。なお、磁気ギアードモータ100の軸心は、原動ロータ10及び第1出力軸11の軸心に相当する。
【0032】
受動ロータ20は、ステータ30及び原動ロータ10と磁気的に結合されており、原動ロータ10が回転すると、速度比Grにしたがって、軸方向回りに回転する。第2出力軸21は、受動ロータ20と回転一体に設けられているため、受動ロータ20とともに回転する。なお、速度比Grは、以下に示す式(1)で表される。
【0033】
|Gr|= N/N ・・・(1)
ここで、Nは、原動ロータ10の極対数であり、Nは、受動ロータ20の極対数または極数である。受動ロータ20が永久磁石で構成されていれば、Nとして、受動ロータ20の極対数が適用される。受動ロータ20が磁性体で構成されていれば、Nとして、受動ロータ20の極数が適用される。
【0034】
つまり、式(2)に示すように、受動ロータ20の回転速度Vは、原動ロータ10の回転速度Vを速度比Grで除した値となる。
【0035】
=V/Gr ・・・(2)
なお、式(1)から明らかなように、極対数Nが極対数Nよりも小さければ、速度比Grは1よりも大きくなる。つまり、受動ロータ20の回転速度Vは、原動ロータ10の回転速度Vよりも低下する。一方、極対数Nが極対数Nよりも大きければ、速度比Grは1よりも小さくなる。つまり、受動ロータ20の回転速度Vは、原動ロータ10の回転速度Vよりも上昇する。
【0036】
言い換えると、受動ロータ20は、変速比Grの仮想的な磁気ギアを介して原動ロータ10に結合している。仮想的な磁気ギアが、原動ロータ10の回転速度Vを減速して受動ロータ20に伝達する場合、受動ロータ20には原動ロータ10よりも大きな回転トルクが発生する。
【0037】
また、磁気ギアードモータ100は、図5に示すように、磁気ギア300とモータ400とが独立して設けられた構造であってもよい。
【0038】
図5に示す磁気ギアードモータ200では、モータ400の回転軸411に対して、磁気ギア300の第1出力軸311が回転一体に連結されている。モータ400は、モータケース430の内部にロータ410とステータ420とを有している。ロータ410は、モータ400の軸心に配置され、回転軸411はロータ410と回転一体に設けられている。ステータ420は、ロータ410の径方向外側に、ロータ410と所定の間隔をあけて配置されている。ステータ420は、図示しない外部電源から供給された電力により、時間的に変動する回転磁界を発生させる。なお、図5に示す磁気ギアードモータ200においても、原動ロータ310の径方向外側に受動ロータ320が配置されている。よって、第1出力軸311の径方向外側に第2出力軸321が配置される。つまり、第2回転翼1320が閉じた状態になっても、第1回転翼1310の回転を妨げないように配置される。
【0039】
ロータ410は、ステータ420と磁気的に結合されており、ステータ420で発生した回転磁界により、モータ400の軸心の回りに回転する。回転軸411は、ロータ410と回転一体に設けられているため、ロータ410とともに回転する。
【0040】
磁気ギア300は、ギアケース340の内部に、原動ロータ310と受動ロータ320とステータ330とを備えている。受動ロータ320は、磁気ギア300の軸心に配置され、第2出力軸321を有している。第2出力軸321は、ギアケース340の外部に突出している。
【0041】
原動ロータ310は、受動ロータ320の径方向外側に、受動ロータ320と所定の間隔をあけて配置されている。原動ロータ310は、軸心部分が中空である中空構造の第1出力軸311を有しており、第1出力軸311は、第1方向に沿ってギアケース340の外部に突出している。第2出力軸321は、第1出力軸311の内部に第1出力軸311と所定の間隔をあけて収容されている。また、第2出力軸321も第1方向に沿ってギアケース340の外部に突出している。
【0042】
ステータ330は、原動ロータ310の径方向外側に、原動ロータ310と所定の間隔をあけて配置されている。ステータ330は、図示しない外部電源から供給された電力により、時間的に変動する回転磁界を発生させる。
【0043】
前述したように、磁気ギア300の第1出力軸311は、モータ400の回転軸411とともに回転する。一方、受動ロータ320は、原動ロータ310及びステータ330と磁気的に連結されていることにより、原動ロータ310が回転することで速度比Grにしたがって回転する。また、受動ロータ320は、磁気ギア300の軸心回り、つまり、軸方向回りに回転する。なお、磁気ギア300の軸心は、原動ロータ310及び第1出力軸311の軸心に相当する。第2出力軸321は、受動ロータ320と回転一体に設けられているため、受動ロータ320とともに回転する。この場合、第2出力軸321の回転速度Vは、前述したように、原動ロータ310の回転速度Vを速度比Grで除した値となる。
【0044】
なお、磁気ギアードモータ100において、ステータ30と原動ロータ10と受動ロータ20との配置関係は、図2に示す形に特に限定されない。同様に、磁気ギア300において、ステータ330と原動ロータ310と受動ロータ320との配置関係は、図5に示す形に特に限定されない。例えば、図1に示す磁気ギアードモータ100において、ステータ30が径方向で最外側に配置されもよい。また、ステータ30の内側に原動ロータ10が配置され、さらにその内側に受動ロータ20が配置されるようにしてもよい。
【0045】
図2に示す磁気ギアードモータ100は、2つの異なる動作モードで動作可能に構成されている。第1モード(両軸駆動モード)では、第1出力軸11と第2出力軸21がともに回転する。この場合、前述したように、受動ロータ20と原動ロータ10とが互いに同調して回転する。つまり、受動ロータ20及び第2出力軸21が速度比Grにしたがって回転する。
【0046】
第2モード(片軸駆動モード)では、第1出力軸11及び第2出力軸21の一方が回転する。一方で、第1出力軸11及び第2出力軸21の他方が一方の回転から脱調する。例えば、図2に示す磁気ギアードモータ100において、第1出力軸11は、ステータ30が発生させる回転磁界により回転する。一方、受動ロータ20及び第2出力軸21は、原動ロータ10及び第1出力軸11の回転から脱調する。場合によっては、受動ロータ20及び第2出力軸21は、回転を停止する。
【0047】
図5に示す磁気ギアードモータ200も同様に、第1モード(両軸駆動モード)と第2モード(片軸駆動モード)のいずれかで動作可能に構成されている。磁気ギアードモータ200において、第1出力軸311は、モータ400の回転軸411とともに回転する。磁気ギアードモータ200が第1モードで動作する場合、受動ロータ320及び第2出力軸321は、原動ロータ10と同調して回転する。つまり、受動ロータ20及び第2出力軸321が速度比Grにしたがって回転する。
【0048】
一方、磁気ギアードモータ200が第2モードで動作する場合、受動ロータ320及び第2出力軸321は、原動ロータ310及び第1出力軸311の回転から脱調して、回転を停止する。
【0049】
なお、通常、磁気ギアードモータ100,200において、原動ロータ10,310は高速かつ低トルクで回転し、受動ロータ20,320は、原動ロータ10,310に比べて低速かつ高トルクで回転する。また、第1モード及び第2モードの両方の動作モードで、基本的に、原動ロータ10,310及び第1出力軸11,311が回転する。
【0050】
また、原動ロータ10,310の回転方向は一方向に限定されず、例えば、時計回り方向と反時計回り方向のいずれにも回転可能に構成されている。同様に、受動ロータ20,320は、時計回り方向と反時計回り方向のいずれにも回転可能に構成されている。
【0051】
[ドローンの動作]
前述したように、ドローン2000は、垂直離着陸及び水平飛行がそれぞれ可能なように構成されている。垂直離陸時には、図4の上側の図に示すように、4本のアーム1100のそれぞれに連結された磁気ギアードモータ100において、第1出力軸11及び第2出力軸21の長手方向である第1方向が、鉛直方向となる。さらに、それぞれの磁気ギアードモータ100は、第1モードで動作する。つまり、第1出力軸11と第2出力軸21がともに回転し、さらに、第2出力軸21は、第1出力軸11の回転速度を速度比Grで除した値の回転速度で回転する。
【0052】
この場合、遠心力を受けて、第2回転翼1320は開いた状態となる。また、前述したように、受動ロータ20は、原動ロータ10に比べて低速かつ高トルクで回転する。さらに、第2回転翼1320が開いた場合、第2回転翼1320の直径は、第1回転翼1310の直径よりも大きくなるように設計されている。
【0053】
つまり、第2回転翼1320が回転することで、第1回転翼1310の回転による推力と合わせて、ドローン2000は垂直方向に大きな推力を受けることができ、スムーズに垂直離着陸を行うことができる。
【0054】
一方、水平飛行時には、方向制御部1200の回転軸を駆動させて、本体1000及びアーム1100に対して、方向制御部1200及びこれに設置された磁気ギアードモータ100の姿勢を変化させる。具体的には、図4の下側の図に示すように、もとの姿勢から90度回転した状態に磁気ギアードモータ100の姿勢を変化させる。
【0055】
さらに、この状態で磁気ギアードモータ100を第2モードで動作させる。そうすると、受動ロータ20及び第2出力軸21は、原動ロータ10及び第1出力軸11の回転から脱調する。このため、第2回転翼1320も第1回転翼1310の回転から脱調して、回転速度が低下する。さらに、遠心力の低下や空気抵抗の影響で第2回転翼1320は回転を停止し、図4の下側の図に示すように閉じた状態になる。
【0056】
水平飛行時は、垂直離着陸時に比べて、推力が小さくてもよい。よって、高速かつ低トルクで回転する第1回転翼1310のみを用いても、水平飛行に十分な推力を得ることができる。
【0057】
なお、第1回転翼1310の回転速度と第2回転翼1320の回転速度とを、それぞれ、ドローン2000の水平飛行や垂直離着陸に適した値にするにあたって、前述の速度比Grが調整される。原動ロータ10の極対数Nと、受動ロータ20の極対数または極数Nとを適宜、変更することで、速度比Grは簡便に調整することができる。
【0058】
また、4本のアーム1100のそれぞれに連結された方向制御部1200の姿勢をそれぞれ独立して制御できることが好ましい。このようにすることで、ドローン2000の移動方向を細かく制御することができる。
【0059】
なお、図4の下側の図に示すように、水平飛行時には、第2回転翼1320は閉じた状態を維持しているのが好ましい。しかし、重力や空気抵抗の影響で、第2回転翼1320が開いた状態になってしまう場合がある。開いた状態の第2回転翼1320が空気抵抗を受けることで、ドローン2000の水平飛行に悪影響を与えるおそれがある。例えば、所望の速度で水平飛行できない場合がありうる。また、風量や風向によっては、所望の方向に水平飛行できない場合がありうる。
【0060】
このような不具合が発生するのを防止するため、第2回転翼1320の回転速度または回転トルクが所定値以上にならない場合は、強制的に第2回転翼1320を閉じた状態に維持するのが好ましい。
【0061】
例えば、図3Bに示すように、第2回転翼1320と第2出力軸21との間をコイルばね1330で連結するようにしてもよい。このようにすることで、第2回転翼1320に対して開く方向に加わる力が、コイルばね1330の張力を超えない限り、第2回転翼1320は閉じた状態に維持される。したがって、適切な張力のコイルばね1330を用いることにより、第2回転翼1320の回転速度または回転トルクが所定値以上にならない場合は、強制的に第2回転翼1320を閉じた状態に維持することができる。
【0062】
なお、図3Bに示す例では、第2回転翼1320を第2出力軸21に向かって付勢する付勢部材として、コイルばね1330を用いたが、他の部材を用いてもよい。例えば、ゴム等の伸縮性のある弾性体を用いてもよいし、磁石を用いてもよい。例えば、第2出力軸21に磁石を配置し、金属製の第2回転翼1320が磁石に対して所定の距離以内に近づいたときに、磁石の吸引力により第2回転翼1320が閉じた状態になるようにしてもよい。あるいは、第2出力軸21と第2回転翼1320のそれぞれに磁石を配置し、それぞれの磁石同士が所定の距離以内に近づいたときに、磁石の吸引力により第2回転翼1320が閉じた状態になるようにしてもよい。
【0063】
また、第1回転翼1310を第1出力軸11に向かって付勢する付勢部材(図示せず)を別途、設けるようにしてもよい。このようにすることで、垂直離着陸時等の低速飛行時に第1回転翼1310を閉じた状態に維持できる。このようにすることで、垂直離着陸時等の大きな推力を要する場合に、推力が比較的小さい第1回転翼1310でエネルギーが消費されるのを抑制し、ドローン2000の飛行時のエネルギー効率を向上させることができる。
【0064】
以上説明したように、ドローン2000の運転モードは、磁気ギアードモータ100の動作モードに応じて変更される。よって、ドローン2000の駆動方法をさらに説明するため、磁気ギアードモータ100の脱調方法及び復調方法について以下に述べる。
【0065】
[ドローンの駆動方法]
図6は、磁気ギアードモータの脱調方法を説明する模式図を、図7は、別の脱調方法を説明する模式図を、図8は、ブレーキの一例をそれぞれ示す。図9は、磁気ギアードモータの回転同調の復帰方法を説明する模式図を示す。なお、図6,7,9及び以降に示す図10,14において、モータケース40の図示を省略している。
【0066】
ドローン2000を両軸駆動モードで運転するか片軸駆動モードで運転するかは、前述したように、磁気ギアードモータ100,200を第1モードで動作させるか第2モードで動作させるかによって決まる。したがって、ドローン2000の駆動方法を説明するにあたって、磁気ギアードモータ100,200の脱調方法あるいは回転同期の復調方法を以下に説明する。
【0067】
前述した通り、受動ロータ20は、ステータ30及び原動ロータ10とそれぞれ磁気的に結合されている。よって、磁気ギアードモータ100が第1モードで動作する場合は、原動ロータ10及び第1出力軸11が回転すると、速度比Grにしたがって、受動ロータ20及び第2出力軸21も回転する。
【0068】
一方、磁気ギアードモータ100の動作モードを第1モードから第2モードに移行させる場合は、受動ロータ20及び原動ロータ10の一方の回転を、他方の回転から脱調させる必要がある。この手法は様々であり、本実施形態ではそのうちのいくつかを説明する。
【0069】
まず、図6に示すように、磁気ギアードモータ100にブレーキ50を搭載し、ブレーキ50を動作させることで、受動ロータ20の回転を制動するか、または受動ロータ20を静止固定する方法がある。前者の場合、磁気ギアードモータ100にコントローラ(図示せず)から第2モードへの移行命令が出力されると、ブレーキ50が動作して受動ロータ20に当接し、受動ロータ20の回転を制動する。例えば、図8に示すように電磁式のブレーキ50を用いると、応答速度を高めることができる。なお、図8に示すブレーキ50は、コイル51に通電することで、受動ロータ20とブレーキ50の本体部52との間に吸引力が働き、本体部52が受動ロータ20に当接して、受動ロータ20の回転を制動する。または、受動ロータ20を静止固定する。
【0070】
なお、ブレーキ50の構造は図8に示した例に特に限定されない。例えば、磁気摩擦を利用した公知のヒステリシスブレーキや磁力と機械的摩擦を利用した公知のパウダーブレーキ等を利用することができる。また、ブレーキ50の構造を、受動ロータ20の当接面に対しピンや凹凸(いずれも図示せず)を噛み合わせることで、受動ロータ20の回転を固定する機械的なロック機構としてもよい。
【0071】
また、図7に示すように、磁気ギアードモータ100にブレーキ50を搭載し、受動ロータ20を回してはずみを付けた後に、原動ロータ10の回転を制動するか、または原動ロータ10を静止固定してもよい。ブレーキ50の構造は、図8に示したものでもよいし、前述した他の構造であってもよい。
【0072】
前者の方法、つまり、受動ロータ20の回転を制動するか、受動ロータ20を静止固定する方法は、原動ロータ10に蓄積された慣性エネルギーを利用して、原動ロータ10と同調して回転していた受動ロータ20の回転を強制的に制動する。このようにして、原動ロータ10を脱調させる。また、原動ロータ10に脱調トルク以上の電流トルクを発生させることで、原動ロータ10を脱調させてもよい。また、原動ロータ10に蓄積された慣性エネルギーを利用しつつ、原動ロータ10に脱調トルク以上の電流トルクを発生させてもよい。この場合も、原動ロータ10を脱調させることができる。
【0073】
なお、受動ロータ20をブレーキ50で制働するか、または静止固定させないと、発生した電流トルクにより、原動ロータ10に回転加速度が生じてしまう。
【0074】
一方、後者の方法、つまり、原動ロータ10の回転を制動するか、原動ロータ10を静止固定する方法は、受動ロータ20に蓄積された慣性エネルギーを利用している。つまり、受動ロータ20と同調して回転していた原動ロータ10の回転を強制的に制動することで、受動ロータ20に脱調トルク以上のトルクが加わり、受動ロータ20が脱調する。
【0075】
一方、磁気ギアードモータ100の動作モードを第2モードから第1モードに移行させる場合、磁気ギアードモータ100の回転同調を復帰させる必要がある。この手法も様々であり、本実施形態ではそのうちのいくつかを説明する。
【0076】
まず、図9に示すように、原動ロータ10を減速して、受動ロータ20の回転と同調させる方法がある。また、原動ロータ10の回転を一時的に停止して、受動ロータ20の回転と同調させる方法がある。これらの方法により、受動ロータ20の回転と原動ロータ10の回転とを再び同調させることができる。
【0077】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るドローン2000は、本体1000と、本体1000に連結された磁気ギアードモータ100と、磁気ギアードモータ100に連結された回転翼1300と、を少なくとも備えている。なお、磁気ギアードモータ100は、アーム1100と方向制御部1200とを介して、本体1000に連結されている。
【0078】
回転翼1300は、磁気ギアードモータ100の第1出力軸11に連結された第1回転翼1310と、磁気ギアードモータ100の第2出力軸21に連結された第2回転翼1320と、を有している。
【0079】
第1回転翼1310は、第1出力軸11の回転とともに回転し、第2回転翼1320は、第2出力軸21の回転とともに回転し、かつ第2出力軸21の回転に応じて開閉自在に構成されている。また、第2回転翼1320が開いた場合の直径は、第1回転翼1310の直径よりも大きくなるように設定されている。
【0080】
磁気ギアードモータ100は、第1出力軸11を有する原動ロータ10と、第2出力軸21を有する受動ロータ20と、原動ロータ10及び受動ロータ20とそれぞれ磁気的に結合されたステータ30と、を少なくとも備えている。
【0081】
第1出力軸11は、原動ロータ10と回転一体に設けられている。第2出力軸21は、受動ロータ20と回転一体に設けられるとともに、第1出力軸11と同軸に配置されている。
【0082】
磁気ギアードモータ100は、受動ロータ20及び原動ロータ10が互いに同調して回転する第1モード(両軸駆動モード)と、原動ロータ10が回転する間に、受動ロータ20が原動ロータ10の回転から脱調状態となる第2モード(片軸駆動モード)のいずれかのモードで動作可能に構成されている。
【0083】
ドローン2000をこのように構成することで、垂直離陸時と水平飛行時のそれぞれにおいて飛行に適した推力を得ることができる。特に、垂直離陸時は、第1モード(両軸駆動モード)で、大径の第2回転翼1320と小径の第1回転翼1310とが同時に回転する。仮想的な磁気ギア効果で減速され高トルクとなる受動ロータ20の回転により大径の第2回転翼1320を回転させるため、高い推力を得ることができる。水平飛行時には、磁気ギアードモータ100,200を第2モード(片軸駆動モード)で動作させるため、受動ロータ20に連結された第2回転翼1320は、第1出力軸11,311の回転から脱調する。その結果、第2回転翼1320の回転は停止し、第2回転翼1320は開いた状態から閉じた状態に移行する。このことにより、第2回転翼1320による空気抵抗の影響を抑制でき、水平飛行時の推力低下を抑制してドローン2000を高速で飛行することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、磁気ギアードモータ100,200において、磁気ギアの原理にしたがって、原動ロータ10,310と受動ロータ20,320との間で、回転トルクと回転数で決まる出力特性の差を簡便に生じさせることができる。このことにより、垂直離着陸時と水平飛行時の両方に適したドローン2000の設計を容易に行うことができる。
【0085】
なお、磁気ギアードモータ200は、磁気ギア300とモータ400とを備えていてもよい。この場合、磁気ギア300は、第1出力軸311を有する原動ロータ310と、第2出力軸321を有する受動ロータ320と、原動ロータ310及び受動ロータ320とそれぞれ磁気的に結合されたステータ330と、を少なくとも備えている。
【0086】
第1出力軸311は、原動ロータ310と回転一体に設けられている。第2出力軸321は、受動ロータ320と回転一体に設けられるとともに、第1出力軸311と同軸に配置されている。また、原動ロータ310及び第1出力軸311は、外力、この場合は、モータ400の回転駆動力を受けて軸方向回りに回転可能に構成されている。
【0087】
また、磁気ギア300は、受動ロータ320及び原動ロータ310が互いに同調して回転する第1モード(両軸駆動モード)と、原動ロータ10が回転する間に、受動ロータ20が原動ロータ10の回転から脱調状態となる第2モード(片軸駆動モード)のいずれかのモードで動作可能に構成されている。
【0088】
モータ400は、回転軸411を有するロータ410とステータ420とを少なくとも備えている。磁気ギア300の第1出力軸311は、モータ400の回転軸411に回転一体に接続されている。原動ロータ310及び第1出力軸311は、モータ400の回転とともに回転する。
【0089】
磁気ギアードモータ100,200や磁気ギア300をこのように構成することで、磁気ギアードモータ100,200の出力特性を可変にできる。また、高速回転する原動ロータ10,310に対して、受動ロータ20,320を低速回転させるにあたって、クラッチや減速機等を設けたり、出力特性の異なる2種類のモータを用いたりする必要が無く、磁気ギアードモータ100,200の小型化及び軽量化が図れる。
【0090】
つまり、磁気ギアードモータ100,200の構造を簡素化できるため、磁気ギアードモータ100,200、ひいては、ドローン2000の故障リスクを低減できる。
【0091】
また、磁気ギアードモータ100は、ブレーキ50をさらに備えていてもよい。その場合、本実施形態に係るドローン2000の駆動方法は、以下のステップを有する。
【0092】
磁気ギアードモータ100の動作モードを第1モードから第2モードに移行させる場合、ブレーキ50を動作させて、受動ロータ20の回転を制動するか、または受動ロータ20を静止固定する。
【0093】
このようにすることで、原動ロータ10に蓄積された慣性エネルギーに起因して、原動ロータ10に脱調トルク以上のトルクが加わり、原動ロータ10が脱調する。このことにより、磁気ギアードモータ100の動作モードを第1モードから第2モードに移行させることができる。このことにより、第2回転翼1320を第1回転翼1310の回転から脱調させて、第2回転翼1320の回転を停止させることができる。その結果、ドローン2000を水平飛行に適した動作モードで運転することができる。
【0094】
なお、磁気ギアードモータ100の動作モードを第1モードから第2モードに移行させる場合、受動ロータ20にはずみを付けた後に、ブレーキ50を動作させて、受動ロータ20の回転を制動するか、または受動ロータ20を静止固定してもよい。
【0095】
また、本実施形態に係るドローン2000の駆動方法は、以下のステップを備えていてもよい。つまり、原動ロータ10の回転を減速して、受動ロータ20の回転と同調させることで、磁気ギアードモータ100の動作モードを第2モードから第1モードに移行させるようにしてもよい。
【0096】
このようにすることで、第2モードから第1モードへの移行を簡便かつ確実に行うことができる。
【0097】
なお、原動ロータ10の回転を一時的に停止して、受動ロータ20の回転と同調させることで、磁気ギアードモータ100の動作モードを第2モードから第1モードに移行させてもよい。このことにより、第1回転翼1310の回転に同調させて、第2回転翼1320を回転させることができる。その結果、ドローン2000を垂直離着陸に適した動作モードで運転することができる。
【0098】
<変形例1>
図10は、変形例1に係る磁気ギアードモータの脱調方法を説明する模式図を示す。なお、図10及び以降に示す各図面において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0099】
前述したように、原動ロータ10及び受動ロータ20の一方を脱調させる方法、つまり、磁気ギアードモータ100の動作モードを第1モードから第2モードに移行させる方法は、実施形態1に示した方法に特に限定されない。
【0100】
例えば、図10の左側の図に示すように、ステータ30に設けられたコイル(図示せず)に大電流を流し、ステータ30で発生する回転磁界を強めるようにしてもよい。この場合、原動ロータ10の回転が所定値以上に急加速するため、受動ロータ20の回転が脱調し、動作モードが第2モードに移行する。
【0101】
また、図10の右側の図に示すように、ステータ30で発生する回転磁界の回転方向を反転させることで、原動ロータ10の回転方向を急反転させるようにしてもよい。この場合、ステータ30で発生する回転磁界の回転方向を複数回反転させてもよい。このようにすることで、原動ロータ10は正転と反転を繰り返すため、受動ロータ20の回転が容易に脱調し、磁気ギアードモータ100の動作モードを第2モードに移行させることができる。
【0102】
また、磁気ギアードモータ100の回転指令に特定の周波数成分を重畳させることで、磁気ギアードモータ100の動作モードを第1モードから第2モードに移行させてもよい。なお、ここで言う回転指令とは、速度指令またはトルク指令である。
【0103】
図11は、原動ロータと受動ロータとの磁気的結合状態を説明する模式図を示し、図12は、磁気ギアードモータの伝達関数のボード線図を示す。
【0104】
図11に示すように、受動ロータ20と原動ロータ10の磁気的結合状態を模式的に示した場合、両者の間に所定の共振周波数を有する磁気ばね70が仮想的に存在していると言える。したがって、磁気ギアードモータ100の回転指令にこの共振周波数と略同じ周波数成分を重畳させると、受動ロータ20と原動ロータ10との間に共振が起こり、受動ロータ20と原動ロータ10の回転位相差が振動する。その振動の振幅が所定値を超えたとき、原動ロータ10及び受動ロータ20の回転が同調しなくなる。
【0105】
図12に示す例で言えば、回転指令の周波数が100Hzとなる近傍で、受動ロータ20のゲインが大きく変動する。なお、ここで言う「ゲイン」とは、周波数伝達関数の入出力の振幅比である。図12から明らかなように、この傾向は、磁気ギアードモータ100内の各構成部品を数式モデル化したシミュレーション結果及び実機を用いた検証結果の両方に共通して見られた。
【0106】
なお、図11に示すように、原動ロータ10は、慣性モーメントJを有する回転体としてモデル化される。受動ロータ20は、慣性モーメントJを有する回転体としてモデル化される。原動ロータ10と受動ロータ20の磁気結合は、原動ロータ10と受動ロータ20を連結するばね定数Kを有する磁気ばね70としてモデル化される。
【0107】
原動ロータ10は、回転トルクTと磁気ばね70からの回転トルクTを受けて、角速度ωで回転する。一方、受動ロータ20は、磁気ばね70からの回転トルクTと出力軸側からの反作用回転トルクTを受けて、角速度ωで回転する。
【0108】
したがって、磁気ギアードモータ100は、2慣性系の運動モデルとなり、原動ロータ10の慣性モーメントJ、受動ロータ20の慣性モーメントJ、磁気ばね70のばね定数Kに依存する共振周波数を持つ。
【0109】
つまり、磁気ギアードモータ100の回転指令に周波数が100Hz程度の成分を重畳させることで、受動ロータ20の回転が原動ロータ10の回転から脱調する。その結果、磁気ギアードモータ100の動作モードが第1モードから第2モードに移行する。この方法によれば、磁気ギアードモータ100の動作モードを簡便に移行させることができる。
【0110】
図13は、変形例1に係る磁気ギアードモータの動作シミュレーション結果を示す。
【0111】
図13に示す例では、原動ロータ10の速度指令値を、0秒から8秒までの間に徐々に引き上げて増加させる。8秒から20秒までの間は、速度指令値を1550r.p.m.に保つ。なお、この時点で、受動ロータ20との回転速度比は7.75となった。20秒を過ぎてから、速度指令値に共振周波数の脈動成分を重畳させる。その結果、受動ロータ20が脱力し、受動ロータ20に生じている摩擦等の損失によって、受動ロータ20の運動エネルギーが徐々に減少する。これを受けて、図13に示すように、受動ロータ20の回転数が低下し、受動ロータ20が脱調するに至ることが確かめられた。
【0112】
以上説明したように、本変形例の方法によれば、第2回転翼1320を第1回転翼1310の回転から脱調させて、第2回転翼1320の回転を停止させることができる。その結果、ドローン2000を水平飛行に適した動作モードで運転することができる。
【0113】
また、磁気ギアードモータ100の動作モードを第2モードから第1モードに移行させる方法も、実施形態1に示した方法に特に限定されない。
【0114】
図14は、変形例1に係る磁気ギアードモータの回転同調の復帰方法を説明する模式図を示す。
【0115】
例えば、図14に示すように、磁気ギアードモータ100に回転機構500を設けてもよい。回転機構500は、モータ(図示せず)と回転軸511とを有する回転部510と、回転軸511の先端に接続された歯車520とを有している。歯車520は、受動ロータ20の外周面20aに当接している。なお、図示しないが、受動ロータ20の外周面20aには、外周方向にわたって歯車520と噛み合う複数の歯(図示せず)が設けられている。
【0116】
受動ロータ20が回転停止している状態で、回転機構500を駆動すると、回転部510の回転に応じて歯車520が回転し、歯車520と噛み合った受動ロータ20も回転する。受動ロータ20の回転速度を原動ロータ10との回転同調速度に近づけることで、原動ロータ10の回転と受動ロータ20の回転とが同調し、磁気ギアードモータ100の動作モードが第2モードから第1モードに移行する。
【0117】
つまり、本変形例の方法によれば、第1回転翼1310の回転に同調させて、第2回転翼1320を回転させることができる。その結果、ドローン2000を垂直離着陸に適した動作モードで運転することができる。
【0118】
(実施形態2)
図15は、実施形態2に係るドローンの要部の断面模式図を示し、図16Aは、実施形態2に係る第1モードで動作時の磁気ギアードモータの一例を示し、図16Bは、第2モードで動作時の磁気ギアードモータの一例を示す。
【0119】
実施形態1に示す磁気ギアードモータ100,200では、第1出力軸11,311及び第2出力軸21,321は、ともに軸方向に沿って、かつ同じ方向に突出している。
【0120】
しかし、本実施形態の磁気ギアードモータ100は、図16A及び図16Bに示すように、第1出力軸11と第2出力軸21とが、軸方向に沿って互いに反対方向に突出するように設けられている。つまり、第2出力軸21が、第1出力軸11と同軸に設けられる一方、第1方向と反対側に突出している。そのため、図15に示すように、第1回転翼1310と第2回転翼1320は、軸方向に沿って、モータケース40を挟んで互いに離間して、磁気ギアードモータ100にそれぞれ連結される。
【0121】
なお、本実施形態に示す磁気ギアードモータ100において、第2回転翼1320が閉じた状態になった場合、第2回転翼1320がアーム1100と衝突しないようにする必要がある。このため、ステータ30は、受動ロータ20よりも径方向外側に配置される。ただし、アーム1100から磁気ギアードモータ100までの軸方向に沿った距離が十分に確保されている場合は、この限りではない。よって、ステータ30を受動ロータ20よりも径方向内側に配置することもありうる。
【0122】
ドローン2000をこのように構成することで、第1回転翼1310と第2回転翼1320との距離を、実施形態1に示す構成に比べて遠ざけることができる。このことにより、磁気ギアードモータ100の動作モードが移行した場合に、第2回転翼1320の開閉状態の変化が第1回転翼1310の回転を妨げにくくすることができる。
【0123】
なお、実施形態1及び本実施形態に示す例では、磁気ギアードモータ100が第1モードで動作する場合、第2出力軸21の回転速度ωbを500r.p.m.~3,000r.p.m.としている。この場合、第1出力軸11の回転速度ωaは、ωbのギア比倍となる。また、磁気ギアードモータ100が第2モードで動作する場合、第1出力軸11の回転速度ωaは、30,000r.p.m.である。ただし、これらの値は、特に限定されず、適宜別の値を取りうる。なお、第2出力軸21の回転トルクTbが、第1出力軸11の回転トルクTaよりも大きい値であることは言うまでもない。
【0124】
<変形例2>
図17A~17Dは、変形例2に係る第1~第4のドローンの要部の断面模式図を示す。なお、説明の便宜上、図17A~17Dにおいて、モータケース40及びプレート1311,1321の図示及び説明を省略している。
【0125】
実施形態1,2及び変形例1では、磁気的に結合する3つの部品、つまり、原動ロータ10と受動ロータ20とステータ30とが、径方向に並んで配置された磁気ギアードモータ100を示した。
【0126】
しかし、磁気ギアードモータ100の構造は、特にこれに限定されず、図17A~17Dに示すように、当該3つの部品が軸方向にも並んで配置されていてもよい。
【0127】
例えば、図17Aに示すように、中央に位置するステータ30に対して、軸方向の一方側に原動ロータ10を設け、他方側に受動ロータ20を設けてもよい。また、図17Bに示すように、軸方向に対向して原動ロータ10と受動ロータ20とを配置し、これらの径方向外側にステータ30を配置してもよい。
【0128】
なお、図17A及び図17Bに示す構造によれば、例えば、原動ロータ10と受動ロータ20を両方とも永久磁石で構成する場合において、両方のロータの回転方向を逆にしつつ、脱調トルクを大きくする設計が容易となる。
【0129】
図17Cに示すように、中央に位置する受動ロータ20に対して、軸方向の一方側に原動ロータ10を設け、他方側にステータ30を設けてもよい。また、図17Dに示すように、軸方向に対向して原動ロータ10とステータ30とを配置し、これらの径方向外側に受動ロータ20を配置してもよい。
【0130】
なお、図17C及び図17Dに示す構造によれば、例えば径方向に3つの部品を配置するアウターロータ構造の磁気ギアードモータ100と比較して、脱調トルクを大きくしつつ、受動ロータ20に連結された第2回転翼1320と原動ロータ10に連結された第1回転翼1310との衝突を回避することが容易となる。
【0131】
なお、図17A及び図17Bに示す磁気ギアードモータ100では、受動ロータ20で発生した磁束は、ステータ30を通って、さらに原動ロータ10に流れる。また、図17C及び図17Dに示す磁気ギアードモータ100では、ステータ30で発生した磁束は、受動ロータ20を通って、さらに原動ロータ10に流れる。すなわち、3つの部品の磁気的な結合は、図中に示される磁束の流れの向きに沿って生じており、動力の伝達が行われる。
【0132】
また、図17A~17Dに示す磁気ギアードモータ100のいずれにおいても、径方向に部品を並べるよりも、モータの直径を小さく設計することができる。
【0133】
また、図17A及び図17Dに示すドローン2000において、受動ロータ20に対して、図示しないプレート1321を介して第2回転翼1320が連結される構成を示した。ただし、この例に特に限定されず、図15に示すように、受動ロータ20に第2出力軸21が連結され、第2出力軸21に対してプレート1321を介して第2回転翼1320が連結されてもよい。その場合、第2出力軸21が、軸方向に沿って、かつ第1出力軸11と反対側に突出していることは言うまでもない。
【0134】
また、図5に示す磁気ギアードモータ200、つまり、磁気ギア300を備えた磁気ギアードモータ200においても、図17A~17Dに示すのと同様に、原動ロータ10と受動ロータ20とステータ30とが、軸方向にも並んで配置されていてもよい。
【0135】
(その他の実施形態)
実施形態1,2及び変形例1,2に示す各構成要素を適宜組み合わせて新たな実施形態とすることもできる。例えば、図2に示す磁気ギアードモータ200に、変形例に示す回転の脱調方法や回転同調の復帰方法を適用してもよい。また、磁気ギアードモータ100の動作モードを第2モードから第1モードに移行させるにあたって、図9に示す方法と図14に示す方法とを組み合わせてもよい。
【0136】
また、実施形態1や変形例1に示すドローン2000において、第2回転翼1320が閉じた状態になった場合に、第1回転翼1310の回転を妨げないようにできれば、受動ロータ20が原動ロータ10よりも径方向内側に配置されてもよい。例えば、プレート1321の径方向の長さを調整することで、受動ロータ20を原動ロータ10よりも径方向内側に配置しうる。
【0137】
なお、ドローン2000において、本体1000の形状は、図1に示したものに特に限定されない。例えば、本体1000の形状が公知のヘリコプターや飛行機と同様であってもよい。また、本体に接続されるアーム1100の本数も、図1に示したものに特に限定されない。
【0138】
なお、アーム1100を省略して、本体1000に直接、磁気ギアードモータ100と回転翼1300とを取り付けてもよい。また、本体1000から軸方向に沿って突出するアーム1100が設けられ、その先端に、方向制御部1200と磁気ギアードモータ100と回転翼1300とを取り付けてもよい。
【0139】
なお、本体1000に取り付けられる磁気ギアードモータ100と回転翼1300との組が複数ある場合、それぞれが方向制御部1200を介して本体1000に取り付けられるのが好ましい。このようにすることで、ドローン2000の移動方向を複数通りに制御できる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本開示のドローンは、簡便な構成で、垂直離陸時と水平飛行時のそれぞれにおいて飛行に適した推力を得ることができ、有用である。
【符号の説明】
【0141】
10 原動ロータ
11 第1出力軸
20 受動ロータ
21 第2出力軸
30 ステータ
40 モータケース
50 ブレーキ
70 磁気ばね
100 磁気ギアードモータ
200 磁気ギアードモータ
300 磁気ギア
310 原動ロータ
311 第1出力軸
320 受動ロータ
321 第2出力軸
330 ステータ
340 ギアケース
400 モータ
410 ロータ
420 ステータ
430 モータケース
500 回転機構
510 回転部
511 回転軸
520 歯車
1000 本体
1100 アーム
1200 方向制御部
1300 回転翼
1310 第1回転翼
1311 プレート
1320 第2回転翼
1321 プレート
1322 ヒンジ
1330 コイルばね(付勢部材)
2000 ドローン
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図17D