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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178002
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20231207BHJP
   F16H 61/04 20060101ALI20231207BHJP
   F16H 59/04 20060101ALI20231207BHJP
   F16H 59/48 20060101ALI20231207BHJP
   F16H 61/686 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/04
F16H59/04
F16H59/48
F16H61/686
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091011
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】松永 仁
(72)【発明者】
【氏名】岡村 紘治
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA02
3J552MA12
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA02
3J552PA20
3J552QA13C
3J552RA03
3J552RA06
3J552RA12
3J552SA08
3J552SA54
3J552VA07W
3J552VA66W
3J552VA68W
3J552VA76W
3J552VB04W
(57)【要約】
【課題】変速制御の応答遅れを低減し、適切なタイミングで自動変速機の変速を実行する。
【解決手段】摩擦係合要素を油圧制御することにより変速を行う有段の自動変速機を備え、変速閾値を判断基準にして前記変速の実行を判断する車両の制御装置において、車両の運転状態が前記変速閾値を越えることにより、前記変速を実行するとともに、前記変速閾値と異なる変速準備閾値を設け、前記変速の実行に先立って、前記運転状態が前記変速準備閾値を越えることにより、前記解放状態の前記摩擦係合要素に対して、前記解放状態を維持しつつ、前記係合油圧よりも低い係合準備油圧を供給する、または、前記係合状態の前記摩擦係合要素に対して、前記係合状態を維持しつつ、前記係合油圧よりも低くかつ前記解放油圧よりも高い解放準備油圧まで前記係合油圧を低下させる、変速準備制御を実行する(ステップS3)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦係合要素の係合および解放の状態を油圧で制御することにより、それぞれ変速比が異なる複数の変速段を切り替えて設定する変速が可能な自動変速機を備え、要求駆動力と車速との関係を規定した変速閾値を判断基準にして前記変速の実行を判断する車両の制御装置であって、
解放状態の前記摩擦係合要素に対して、前記解放状態の前記摩擦係合要素を係合状態にする係合油圧を供給する、または、係合状態の前記摩擦係合要素に対して、前記係合状態の前記摩擦係合要素が解放状態になる解放油圧まで前記係合油圧を低下させる、油圧制御を実行し、いずれかの前記変速段を選択的に設定するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記要求駆動力と前記車速とに基づく運転状態が前記変速閾値を越えることにより、前記変速を実行して前記変速段を切り替えるとともに、
前記変速閾値と異なる変速準備閾値を有しており、
前記変速の実行に先立って、前記運転状態が前記変速準備閾値を越えることにより、前記解放状態の前記摩擦係合要素に対して、前記解放状態を維持しつつ、前記係合油圧よりも低い係合準備油圧を供給する、または、前記係合状態の前記摩擦係合要素に対して、前記係合状態を維持しつつ、前記係合油圧よりも低くかつ前記解放油圧よりも高い解放準備油圧まで前記係合油圧を低下させる、変速準備制御を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置であって、
前記コントローラは、
前記変速閾値として、現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が小さい前記変速段に向けて前記変速を行うアップシフトの実行を判断するアップ変速閾値と、現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が大きい前記変速段に向けて前記変速を行うダウンシフトの実行を判断するダウン変速閾値とを有しており、
前記運転状態が、前記要求駆動力が低くなり、かつ、前記車速が高くなる方向に、前記アップ変速閾値を跨いで変化した場合に、前記アップシフトを実行し、前記運転状態が、前記要求駆動力が高くなり、かつ、前記車速が低くなる方向に、前記ダウン変速閾値を跨いで変化した場合に、前記ダウンシフトを実行するとともに、
前記変速準備閾値として、前記アップ変速閾値の近傍で、前記アップ変速閾値よりも前記要求駆動力が高く、かつ、前記車速が低い側に設定され、前記アップ変速閾値と並列するように前記要求駆動力と前記車速との関係を規定したアップ変速準備閾値と、前記ダウン変速閾値の近傍で、前記ダウン変速閾値よりも前記要求駆動力が低く、かつ、前記車速が高い側に設定され、前記ダウン変速閾値と並列するように前記要求駆動力と前記車速との関係を規定したダウン変速準備閾値とを有しており、
前記運転状態が、前記要求駆動力が低くなり、かつ、前記車速が高くなる方向に、前記アップ変速準備閾値を跨いで変化した場合に、前記アップシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行し、前記運転状態が、前記要求駆動力が高くなり、かつ、前記車速が低くなる方向に、前記ダウン変速準備閾値を跨いで変化した場合に、前記ダウンシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の制御装置であって、
前記コントローラは、
前記変速準備制御の実行を判断するための前記変速準備閾値であり、運転者の運転操作に基づく加速要求量、または、前記運転操作に基づく減速要求量の少なくともいずれかの基準の値を規定した予測変速準備閾値を有しており、
実際の前記加速要求量、または、実際の前記減速要求量の少なくともいずれかを取得し、
前記変速の実行に先立って、取得した前記加速要求量または前記減速要求量が前記予測変速準備閾値を超えることにより、前記変速準備制御を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の制御装置であって、
前記コントローラは、
前記変速閾値として、現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が小さい前記変速段に向けて前記変速を行うアップシフトの実行を判断するアップ変速閾値と、現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が大きい前記変速段に向けて前記変速を行うダウンシフトの実行を判断するダウン変速閾値とを有しており、
前記運転状態が、前記要求駆動力が低くなり、かつ、前記車速が高くなる方向に、前記アップ変速閾値を跨いで変化した場合に、前記アップシフトを実行し、前記運転状態が、前記要求駆動力が高くなり、かつ、前記車速が低くなる方向に、前記ダウン変速閾値を跨いで変化した場合に、前記ダウンシフトを実行するとともに、
前記予測変速準備閾値として、前記アップシフトの実行を予測して前記変速準備制御の実行を判断するための予測アップ変速準備閾値と、前記ダウンシフトの実行を予測して前記変速準備制御の実行を判断するための予測ダウン変速準備閾値とを有しており、
実際の前記加速要求量が、前記予測アップ変速準備閾値よりも大きくなった場合に、前記アップシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行し、実際の前記減速要求量が、前記予測ダウン変速準備閾値よりも大きくなった場合に、前記ダウンシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両の制御装置であって、
前記自動変速機は、手動変速モードが選択されることにより、運転者の変速操作に対応して前記変速を行う手動変速が可能であり、
前記コントローラは、
前記手動変速モードで前記変速準備制御の実行を判断するための前記変速準備閾値であり、前記運転者の運転操作に基づく加速要求量、または、前記運転操作に基づく減速要求量の少なくともいずれか基準の値を規定した手動変速準備閾値を有しており、
実際の前記加速要求量、または、実際の前記減速要求量の少なくともいずれかを取得し、
前記手動変速モードで、前記手動変速の実行に先立って、取得した前記加速要求量または前記減速要求量が前記手動変速準備閾値を超えることにより、前記変速準備制御を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の制御装置であって、
前記コントローラは、
前記手動変速準備閾値として、前記運転者が現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が小さい前記変速段に向けて前記変速を行うアップシフトの前記変速操作を行うことを予測して前記変速準備制御の実行を判断するための手動アップ変速準備閾値と、前記運転者が現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が大きい前記変速段に向けて前記変速を行うダウンシフトの前記変速操作を行うことを予測して前記変速準備制御の実行を判断するための手動ダウン変速準備閾値とを有しており、
前記手動変速モードで、
前記変速操作に応じて、前記アップシフト、または、前記ダウンシフトを実行するともに、
実際の前記加速要求量が、前記手動アップ変速準備閾値よりも大きくなった場合に、前記アップシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行し、実際の前記減速要求量が、前記手動ダウン変速準備閾値よりも大きくなった場合に、前記ダウンシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の車両の制御装置であって、
前記コントローラは、
前記変速準備制御を実行する際に、
前記変速準備制御の実行を開始した時点からの継続時間、または、前記継続時間の期間における前記摩擦係合要素の熱吸収量の少なくともいずれかを取得し、
前記継続時間が所定の基準時間を超過した場合、または、前記熱吸収量が所定の基準熱量を超過した場合の少なくともいずれかの場合に、前記変速準備制御を終了する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動変速機を搭載した車両の制御装置に関し、特に、変速段を切り替えて変速を行い、複数の変速段を設定することが可能な自動変速機の変速制御を実行する車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、いわゆるパワーオフダウンシフトで変速が行われる場合の変速ショックを抑制することを目的とした自動変速機の油圧制御装置が記載されている。この特許文献1に記載された自動変速機の油圧制御装置は、パワーオフダウンシフトの変速動作時に、更に低変速段(次変速段)側への変速要求が生じる可能性について、車両の減速度から推定するとともに、変速途中で次変速段への変速要求が生じる可能性があると推定した場合には、その次変速段で係合する摩擦係合要素に対して係合準備油圧の供給動作を開始するように構成されている。
【0003】
また、特許文献2には、運転者の意思を反映した変速制御を可能にすることを目的として、アクセル操作速度(エンジン負荷変化速度)に応じて、変速車速を低く設定した変速パターン、または、変速車速を高く設定した変速パターンのいずれかの変速パターンを選択して変速を行う自動変速機の変速制御装置が記載されている。この特許文献2に記載された自動変速機の変速制御装置は、アクセルペダルがゆっくり踏み込まれ、スロットル開度が緩やかに増加している場合に、スロットル開度の増加開始時点(すなわち、アクセルペダルの踏み始め時点)からのスロットル開度の増加量が所定量を超えるまでの間は、変速パターンの選択判断を停止し、所定量を超えた時点で初めて、変速パターン選択判断のためのスロットル開度変化速度を算出し、その算出値に基づいて変速パターンの選択判断を実行するように構成されている。
【0004】
なお、特許文献3には、複数の摩擦係合要素を選択的に締結制御して変速機の変速制御を行う自動変速機の変速制御装置が記載されている。この特許文献3に記載された自動変速機の変速制御装置は、変速動作時に締結動作する摩擦係合要素の発熱量と放熱量とに基づいて摩擦係合要素毎の蓄熱量を演算し、その蓄熱量が設定値以上の摩擦係合要素が存在する場合に、少なくとも、蓄熱量が設定値以上の摩擦係合要素を用いた変速段へのアップシフトタイミングを蓄熱量が設定値以下のときよりも早いタイミングに設定するように構成されている。
【0005】
また、特許文献4には、設定すべき変速段を走行状態に基づいて判断して変速動作を行う自動変速モードと、運転者の手動操作によって指示された変速動作を行う手動変速モードとを切り替えることが可能な自動変速機の変速制御装置が記載されている。この特許文献4に記載された自動変速機の変速制御装置は、自動変速モードまたは手動変速モードのいずれか一方の変速モードによる変速動作が行われている間に他方の変速モードへの切換え操作が生じた場合、切換え操作前の変速モードによる変速動作が終了した後に、他方の変速モードによる変速動作を開始するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-223939号公報
【特許文献2】特開平6-129529号公報
【特許文献3】特開2005-98431号公報
【特許文献4】特開2000-2325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、特許文献1に記載された自動変速機の油圧制御装置では、変速途中で次変速段への変速要求が生じる可能性がある場合には、その次変速段で係合されるべき摩擦係合要素(クラッチおよびブレーキ)の係合側への作動が開始される。したがって、次変速段への変速要求後に、その次変速段が成立するまでの時間が短縮される。そのため、特許文献1に記載された自動変速機の油圧制御装置によれば、例えば、車両の減速度が比較的高い状況で、複数段階でシフトダウン動作が行われる場合であっても、変速動作に遅れを生じさせることなく、車速に応じた適切な変速段を得ることが可能になり、変速ショックを抑制することができる、とされている。但し、この特許文献1に記載された自動変速機の油圧制御装置においても、通常の変速制御は、従来どおり、変速線(シフトアップ線、および、シフトダウン線)を設定した変速マップを用いて行われる。車速およびアクセル開度に基づく車両の運転状態が、変速マップ上の変速線を跨いで変化することにより、変速の判定が行われて目標変速段が変更され、新たな(変更された)目標変速段を設定するための油圧指令信号が出力される。そして、その油圧指令信号に基づく油圧が供給され、自動変速機のクラッチおよびブレーキが作動することにより、実際に自動変速機の変速が行われる。したがって、上記のような油圧制御の応答性に起因して、不可避的に、変速制御の応答遅れが生じてしまう。
【0008】
また、上記の特許文献2に記載された自動変速機の変速制御装置のように、複数の変速パターンの中からいずれかの変速パターンを適宜選択するように構成することにより、アクセルペダルの操作速度に応じて、適切な変速速度で変速を行うことができる。例えば、アクセルペダルの操作速度が通常よりも早い場合に、高車速側の変速パターンを設定して変速の判断を早めることにより、通常の変速動作時と比較して、変速出力(制御指令)を早めることができる。それにより、アクセルペダルの急操作に対応して、変速のタイミングを早めることができる。しかしながら、上記のような制御は、変速を実行する時期は早められるものの、一連の変速動作の期間(変速時間)を短縮するものではない。したがって、前述したような変速制御の応答遅れを解消することはできない。更に、特許文献2に記載された自動変速機の変速制御装置では、アクセルペダルの操作速度によって変速出力のタイミングが変更されるため、運転者のアクセルペダルの操作がばらついている場合には、運転者の意図に反して変速が行われてしまう可能性がある。
【0009】
この発明は上記の技術的課題に着目して考え出されたものであり、変速制御の応答遅れを低減し、適切なタイミングで自動変速機の変速を実行することが可能な車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明は、摩擦係合要素の係合および解放の状態を油圧で制御することにより、それぞれ変速比が異なる複数の変速段を切り替えて設定する変速が可能な自動変速機を備え、要求駆動力と車速(または、前記自動変速機の出力軸回転数)との関係を規定した変速閾値を判断基準にして前記変速の実行を判断する車両の制御装置であって、解放状態の前記摩擦係合要素に対して、前記解放状態の前記摩擦係合要素を係合状態にする係合油圧を供給する、または、係合状態の前記摩擦係合要素に対して、前記係合状態の前記摩擦係合要素が解放状態になる解放油圧まで前記係合油圧を低下させる、油圧制御を実行し、いずれかの前記変速段を選択的に設定するコントローラを備え、前記コントローラは、前記要求駆動力と前記車速とに基づく運転状態が前記変速閾値を越えることにより、前記変速を実行して前記変速段を切り替えるとともに、前記変速閾値と異なる変速準備閾値を有しており、前記変速の実行に先立って、前記運転状態が前記変速準備閾値を越えることにより、前記解放状態の前記摩擦係合要素に対して、前記解放状態を維持しつつ、前記係合油圧よりも低い係合準備油圧を供給する、または、前記係合状態の前記摩擦係合要素に対して、前記係合状態を維持しつつ、前記係合油圧よりも低くかつ前記解放油圧よりも高い解放準備油圧まで前記係合油圧を低下させる、変速準備制御を実行することを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明における前記コントローラは、前記変速閾値として、現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が小さい前記変速段に向けて前記変速を行うアップシフトの実行を判断するアップ変速閾値と、現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が大きい前記変速段に向けて前記変速を行うダウンシフトの実行を判断するダウン変速閾値とを有しており、前記運転状態が、前記要求駆動力が低くなり、かつ、前記車速が高くなる方向に、前記アップ変速閾値を跨いで変化した場合に、前記アップシフトを実行し、前記運転状態が、前記要求駆動力が高くなり、かつ、前記車速が低くなる方向に、前記ダウン変速閾値を跨いで変化した場合に、前記ダウンシフトを実行するとともに、前記変速準備閾値として、前記アップ変速閾値の近傍で、前記アップ変速閾値よりも前記要求駆動力が高く、かつ、前記車速が低い側に設定され、前記アップ変速閾値と並列するように前記要求駆動力と前記車速との関係を規定したアップ変速準備閾値と、前記ダウン変速閾値の近傍で、前記ダウン変速閾値よりも前記要求駆動力が低く、かつ、前記車速が高い側に設定され、前記ダウン変速閾値と並列するように前記要求駆動力と前記車速との関係を規定したダウン変速準備閾値とを有しており、前記運転状態が、前記要求駆動力が低くなり、かつ、前記車速が高くなる方向に、前記アップ変速準備閾値を跨いで変化した場合に、前記アップシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行し、前記運転状態が、前記要求駆動力が高くなり、かつ、前記車速が低くなる方向に、前記ダウン変速準備閾値を跨いで変化した場合に、前記ダウンシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行するように構成してもよい。
【0012】
また、この発明における前記コントローラは、前記変速準備制御の実行を判断するための前記変速準備閾値であり、運転者の運転操作に基づく加速要求量、または、前記運転操作に基づく減速要求量の少なくともいずれかの基準の値を規定した予測変速準備閾値を有しており、実際の前記加速要求量、または、実際の前記減速要求量の少なくともいずれかを取得し、前記変速の実行に先立って、取得した前記加速要求量または前記減速要求量が前記予測変速準備閾値を超える(上回る)ことにより、前記変速準備制御を実行するように構成してもよい。
【0013】
また、この発明における前記コントローラは、前記変速閾値として、現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が小さい前記変速段に向けて前記変速を行うアップシフトの実行を判断するアップ変速閾値と、現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が大きい前記変速段に向けて前記変速を行うダウンシフトの実行を判断するダウン変速閾値とを有しており、前記運転状態が、前記要求駆動力が低くなり、かつ、前記車速が高くなる方向に、前記アップ変速閾値を跨いで変化した場合に、前記アップシフトを実行し、前記運転状態が、前記要求駆動力が高くなり、かつ、前記車速が低くなる方向に、前記ダウン変速閾値を跨いで変化した場合に、前記ダウンシフトを実行するとともに、前記予測変速準備閾値として、前記アップシフトの実行を予測して前記変速準備制御の実行を判断するための予測アップ変速準備閾値と、前記ダウンシフトの実行を予測して前記変速準備制御の実行を判断するための予測ダウン変速準備閾値とを有しており、実際の前記加速要求量が、前記予測アップ変速準備閾値よりも大きくなった場合に、前記アップシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行し、実際の前記減速要求量が、前記予測ダウン変速準備閾値よりも大きくなった場合に、前記ダウンシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行するように構成してもよい。
【0014】
また、この発明における前記自動変速機は、手動変速モードが選択されることにより、運転者の変速操作に対応して前記変速を行う手動変速が可能であり、この発明における前記コントローラは、前記手動変速モードで前記変速準備制御の実行を判断するための前記変速準備閾値であり、前記運転者の運転操作に基づく加速要求量、または、前記運転操作に基づく減速要求量の少なくともいずれか基準の値を規定した手動変速準備閾値を有しており、実際の前記加速要求量、または、実際の前記減速要求量の少なくともいずれかを取得し、前記手動変速モードが選択された状態で、前記手動変速の実行に先立って、取得した前記加速要求量または前記減速要求量が前記手動変速準備閾値を超える(上回る)ことにより、前記変速準備制御を実行するように構成してもよい。
【0015】
また、この発明における前記コントローラは、前記手動変速準備閾値として、前記運転者が現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が小さい前記変速段に向けて前記変速を行うアップシフトの前記変速操作を行うことを予測して前記変速準備制御の実行を判断するための手動アップ変速準備閾値と、前記運転者が現在設定されている前記変速段よりも前記変速比が大きい前記変速段に向けて前記変速を行うダウンシフトの前記変速操作を行うことを予測して前記変速準備制御の実行を判断するための手動ダウン変速準備閾値とを有しており、前記手動変速モードが選択された状態で、前記変速操作に応じて、前記アップシフト、または、前記ダウンシフトを実行するとともに、実際の前記加速要求量が、前記手動アップ変速準備閾値よりも大きくなった場合に、前記アップシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行し、実際の前記減速要求量が、前記手動ダウン変速準備閾値よりも大きくなった場合に、前記ダウンシフトの実行に先立って、前記変速準備制御を実行するように構成してもよい。
【0016】
そして、この発明における前記コントローラは、前記変速準備制御を実行する際に、前記変速準備制御の実行を開始した時点からの継続時間、または、前記継続時間の期間における前記摩擦係合要素の熱吸収量の少なくともいずれかを取得し、前記継続時間が所定の基準時間を超過した場合、または、前記熱吸収量が所定の基準熱量を超過した場合の少なくともいずれかの場合に、前記変速準備制御を終了するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明の車両の制御装置は、複数の変速段を設定することが可能な自動変速機を搭載した車両を制御対象にして、その自動変速機の変速制御を実行する。自動変速機は、内部に設けられたクラッチやブレーキ等の摩擦係合要素を油圧で制御することにより、変速段を切り替えて所定の変速段を設定する。摩擦係合要素を油圧制御して変速段を切り替える変速(変速制御)は、従来の自動変速機における変速制御と同様に、例えば、アクセル開度やスロットルバルブの開度などから決まる要求駆動力と、車速または(自動変速機の)出力軸回転数とに基づく運転状態、あるいは、そのような運転状態を示す運転点が、変速閾値を越える、または、跨ぐことにより実行される。変速閾値は、例えば、変速マップあるいは変速線図上の変速線であり、上記のような要求駆動力と車速(出力軸回転数)との関係を規定した変速実施の判断基準である。
【0018】
上記のような自動変速機の変速制御では、例えば、油圧や電気信号の応答時間、および、回転要素のねじれや回転慣性などに起因して、不可避的な制御の応答遅れが生じる。そのため、従来の自動変速機の変速制御では、予め制御の応答遅れを見込んで、上記のような変速線(変速閾値)が設定されている。それに対して、この発明の車両の制御装置では、上記のような変速閾値と共に、その変速閾値とは異なる変速準備閾値が設けられる。変速準備閾値は、例えば、変速マップあるいは変速線図上で、変速閾値(変速線)の近傍に、変速閾値と並列するような値に設定されており、上記の運転状態が、変速閾値よりも先にこの変速準備閾値を越える(跨ぐ)ことにより、変速準備制御が実行される。すなわち、自動変速機の変速の実行に先立って、この発明における変速準備制御が実行される。変速準備制御は、上記のような制御の応答遅れを低減するために、この後の変速の際に作動させる摩擦係合要素の油圧制御を行い、その係合および解放の状態を、所定の変速準備状態または変速待機状態に動作させておく制御である。変速準備制御が実行されることにより、解放状態の摩擦係合要素に係合準備油圧が供給される。また、係合状態の摩擦係合要素から係合油圧が排出される。そのため、解放状態の摩擦係合要素は、その解放状態を維持しつつ、すなわち、係合状態になることなく、係合側に僅かに動作して、変速準備状態となる。また、係合状態の摩擦係合要素は、その係合状態を維持しつつ、すなわち、解放状態になることなく、解放側に僅かに動作して、変速準備状態となる。
【0019】
例えば、変速準備閾値は、アップ変速閾値(アップシフトの変速線)の近傍で、アップ変速閾値よりも要求駆動力が高く、かつ、車速が低い側に設定されたアップ変速準備閾値と、ダウン変速閾値(ダウンシフトの変速線)の近傍で、ダウン変速閾値よりも要求駆動力が低く、かつ、車速が高い側に設定されたダウン変速準備閾値とから構成される。そのため、この発明の車両の制御装置では、車両の運転状態が、アップ変速閾値を跨ぐ前にアップ変速準備閾値を跨ぐことになり、それによって変速準備制御が実行される。すなわち、アップシフトの実行に先立って、そのアップシフトのための変速準備制御が実行される。同様に、この発明の車両の制御装置では、車両の運転状態が、ダウン変速閾値を跨ぐ前にダウン変速準備閾値を跨ぐことになり、それによって変速準備制御が実行される。すなわち、ダウンシフトの実行に先立って、そのダウンシフトのための変速準備制御が実行される。
【0020】
また、この発明の車両の制御装置では、上記のように変速準備制御の実行を判断するための変速準備閾値として、例えば、アクセル操作量(アクセル開度)、スロットルバルブ開度、または、燃料噴射量などの加速要求量、もしくは、ブレーキ操作量、ストローク、踏力、または、マスタシリンダ圧などの減速要求量の少なくともいずれかの基準の値を規定した予測変速準備閾値が設けられる。そして、運転者の運転操作に基づいた実際の加速要求量または実際の減速要求量が予測変速準備閾値を超える(上回る)ことにより、変速準備制御が実行される。すなわち、実際の加速要求量または実際の減速要求量が予測変速準備閾値を超えて、直後に自動変速機の変速が実行されることを予測する場合に、変速準備制御が実行される。
【0021】
例えば、予測変速準備閾値は、アップ変速閾値(アップシフトの変速線)と異なり、アップ変速閾値に相当するアクセル操作量よりも低い値に設定された予測アップ変速準備閾値と、ダウン変速閾値(ダウンシフトの変速線)と異なり、ダウン変速閾値に相当するブレーキ操作量よりも低い値に設定された予測ダウン変速準備閾値とから構成される。そのため、この発明の車両の制御装置では、アクセル操作量が予測アップ変速準備閾値を上回り、直後にアップシフトが実行されることを予測する(アップシフトが実行される可能性が高い)場合に、アップシフトの実行に先立って、そのアップシフトのための変速準備制御が実行される。あるいは、この発明の車両の制御装置では、ブレーキ操作量が予測アップ変速準備閾値を上回り、直後にダウンシフトが実行されることを予測する(ダウンシフトが実行される可能性が高い)場合に、ダウンシフトの実行に先立って、そのダウンシフトのための変速準備制御が実行される。
【0022】
そして、この発明の車両の制御装置では、特に、運転者が自動変速機の変速を手動で行う状況(手動変速モード)を想定して、上記のように変速準備制御の実行を判断するための変速準備閾値として、例えば、アクセル操作量(アクセル開度)、スロットルバルブ開度、または、燃料噴射量などの加速要求量、もしくは、ブレーキ操作量、ストローク、踏力、または、マスタシリンダ圧などの減速要求量の少なくともいずれかの基準の値を規定した手動変速準備閾値が設けられる。そして、自動変速機の手動変速モードが選択された状態で、運転者の運転操作に基づいた実際の加速要求量または実際の減速要求量が手動変速準備閾値を超える(上回る)ことにより、変速準備制御が実行される。すなわち、実際の加速要求量または実際の減速要求量が手動変速準備閾値を超えて、直後に、手動変速で自動変速機の変速を行う運転者の変速意図を予測する場合に、変速準備制御が実行される。
【0023】
例えば、手動変速準備閾値は、アップ変速閾値(アップシフトの変速線)と異なり、アップ変速閾値に相当するアクセル操作量よりも低い値に設定された手動アップ変速準備閾値と、ダウン変速閾値(ダウンシフトの変速線)と異なり、ダウン変速閾値に相当するブレーキ操作量よりも低い値に設定された手動ダウン変速準備閾値とから構成される。そのため、この発明の車両の制御装置では、自動変速機の手動変速モードで、アクセル操作量が手動アップ変速準備閾値を上回り、直後に、手動でアップシフトが実行されることを予測する(手動でアップシフトが実行される可能性が高い)場合に、アップシフトの実行に先立って、そのアップシフトのための変速準備制御が実行される。あるいは、この発明の車両の制御装置では、ブレーキ操作量が手動ダウン変速準備閾値を上回り、直後に、手動でダウンシフトが実行されることを予測する(手動でダウンシフトが実行される可能性が高い)場合に、ダウンシフトの実行に先立って、そのダウンシフトのための変速準備制御が実行される。
【0024】
したがって、この発明の車両の制御装置によれば、通常の変速閾値(変速線)とは別に、上記のような変速準備閾値が設けられ、その変速準備閾値を基に変速準備制御が実行される。この発明における変速準備制御が実行されることにより、実際にアップシフトまたはダウンシフトが実行されることに先行して、そのアップシフトまたはダウンシフトを実現するために係合または解放される摩擦係合要素の係合油圧が予備的に制御される。すなわち、摩擦係合要素の係合および解放の状態が切り替わらない範囲で、あるいは、実際の変速が行われない範囲で、係合油圧が増大および低下されて、摩擦係合要素が変速準備状態にされる。実際の変速に先立って、予め、摩擦係合要素を変速準備状態にしておくことにより、変速制御の応答遅れの主たる要因となる油圧の応答遅れを低減することができる。そのため、従来、相対的に大きな応答遅れを見込んで設定されていた変速閾値を、変速準備制御によって低減される最小限の応答遅れだけを見込んだ設定とすることができる。したがって、当初の狙いとおりの、あるいは、当初の狙いに近い適切なタイミングで、自動変速機の変速を実行することができる。
【0025】
なお、上記のような変速準備制御は、例えば、変速準備制御の継続時間が所定の基準時間を超過したこと、あるいは、その変速準備制御の継続時間の期間における摩擦係合要素の熱吸収量(または、発熱量)が所定の基準熱量を超過したことにより、その変速準備制御の実行を終了する。例えば、変速準備制御において摩擦係合要素の滑り状態を許容した状態で、車両の運転状態によって変速準備制御の継続時間が長くなった場合には、変速準備制御の実行を取り止めることができる。そのため、変速準備制御で摩擦係合要素の滑り状態が長時間にわたって継続されることにより、損失が増大してしまい、車両のエネルギ効率が低下してしまうことを抑制できる。また、摩擦係合要素の耐久性が低下してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の車両の制御装置で制御の対象にする車両を説明するための図であって、その車両の構成および制御系統の一例を模式的に示す図である。
図2】この発明の車両の制御装置による変速制御および変速準備制御の実行を判断するために用いる変速閾値(変速線)および変速準備閾値(変速準備線)のイメージを示す図である。
図3】従来技術の変速制御における課題を説明するための図であって、油圧制御の応答遅れを見込んだ変速線と、本来変速を開始したいポイントとがずれてしまう状況のイメージを示す図である。
図4】従来技術の変速制御における課題を説明するための図であって、運転者の運転操作がふらつく場合に、運転者の意図に反して変速が行われてしまう状況のイメージを示す図である。
図5】この発明の車両の制御装置で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図6】この発明の車両の制御装置によって実行される変速準備制御の作用効果を説明するための図であって、係合側の摩擦係合要素の係合油圧の推移を示すタイムチャートである。
図7】この発明の車両の制御装置によって実行される変速準備制御の作用効果を説明するための図であって、解放側の摩擦係合要素の係合油圧(解放油圧)の推移を示すタイムチャートである。
図8】この発明の車両の制御装置で実行される制御の他の例を説明するためのフローチャートである。
図9】この発明の車両の制御装置による変速準備制御の実行を判断するために用いる予測変速準備閾値(予測変速準備線)、および、手動変速準備閾値(手動変速準備線)のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0028】
この発明の実施形態で制御対象にする車両は、変速段を切り替えて変速を行い、複数の変速段を設定することが可能な自動変速機を備えている。駆動力源としてエンジン(内燃機関)を搭載したコンベンショナルなエンジン車両であってもよい。あるいは、駆動力源としてエンジンおよびモータを搭載したハイブリッド車両であってもよい。更には、モータのみを駆動力源とし、そのモータに有段の自動変速機を組み合わせた電気自動車であってもよい。自動変速機は、内部に設けられた摩擦係合要素を油圧制御することにより、変速比の異なる複数の変速段を設定することが可能である。例えば、複数の遊星歯車機構の間の動力伝達状態を、摩擦係合要素の動作を油圧制御するステップ式(有段)の自動変速機が用いられる。あるいは、二系統のクラッチおよび常時噛み合い式の歯車機構を用いたいわゆるデュアルクラッチトランスミッション(DCT)のような自動変速機であってもよい。あるいは、複数の変速段(例えば、高速段、および、低速段)を切り替える副変速機構を設けたベルト式無段変速機(CVT)であってもよい。そのような自動変速機を備えた車両の構成(駆動系統および制御系統)の一例を、図1に示してある。
【0029】
図1に示す車両Veは、主要な構成要素として、駆動力源1、駆動輪2、自動変速機(AT)3、(自動変速機3の)摩擦係合要素4、検出部5、および、コントローラ(ECU)6を備えている。
【0030】
駆動力源1は、駆動輪2を駆動するトルク、すなわち、車両Veの駆動力を発生させるためのトルクを出力する。図1に示す例では、駆動力源1として、エンジン(ENG)7を備えている。エンジン7は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関であり、出力の調整、ならびに、始動および停止などの作動状態が電気的に制御するように構成される。ガソリンエンジンであれば、スロットルバルブの開度、燃料の供給量または噴射量、点火の実行および停止、ならびに、点火時期などが電気的に制御される。また、ディーゼルエンジンであれば、燃料の噴射量、燃料の噴射時期、あるいは、(EGRシステムにおける)スロットルバルブの開度などが電気的に制御される。なお、この発明の実施形態における駆動力源1は、上記のようなエンジン7の他に、例えば、エンジン7およびモータ(モータジェネレータ)備えたハイブリッド駆動ユニット(図示せず)であってもよい。この発明の実施形態における車両の制御装置では、そのようなハイブリッド駆動ユニットと後述する自動変速機3とを組み合わせたハイブリッド車両(図示せず)を、制御の対象にすることもできる。
【0031】
駆動輪2は、駆動力源1の出力トルクが伝達されることによって車両Veの駆動力を発生する車輪である。図1に示す例では、駆動輪2は、車両Veの後輪になっており、プロペラシャフト8、および、デファレンシャルギヤ9、ならびに、左右のドライブシャフト10を介して、後述する自動変速機3の出力軸3aに連結されている。すなわち、図1に示す例では、車両Veは、後輪を駆動輪2とし、その後輪で駆動力を発生する後輪駆動車両となっている。なお、この発明の実施形態における車両Veは、前輪を駆動輪2とし、その前輪で駆動力を発生する前輪駆動車両(図示せず)であってもよい。または、駆動力源1の出力トルクをトランスファ(図示せず)で前輪と後輪とに分配し、すなわち、前輪および後輪を駆動輪2とする四輪駆動車両(図示せず)であってもよい。あるいは、エンジン7で前輪または後輪のいずれか一方を駆動し、前輪または後輪の他方をモータで駆動する四輪駆動のハイブリッド車両(図示せず)であってもよい。
【0032】
自動変速機3は、駆動力源1と駆動輪2との間の動力伝達経路11に設けられており、その動力伝達経路11内で、駆動力源1の出力トルクを伝達する。それとともに、駆動力源1の出力軸(図示せず)の回転数を変化させる。図1に示す例では、自動変速機3は、例えば、トルクコンバータ等(図示せず)を介して、エンジン7の出力側に連結されおり、エンジン7と駆動輪2との間で、エンジン7の出力トルクを駆動輪2側に伝達する。そして、自動変速機3は、入力軸(図示せず)の回転数に対する出力軸3aの回転数の比率、すなわち、変速比を適宜に変更できる動力伝達装置であって、変速比を変更する制御、すなわち、変速制御を自動制御する。具体的には、自動変速機3は、従来、一般的に用いられている車両用の変速機であり、例えば、複数の遊星歯車機構(図示せず)の間の動力伝達状態を油圧制御するステップ式(有段)の“自動変速機”である。あるいは、前述したような“デュアルクラッチトランスミッション”(DCT)や、油圧制御する副変速機構を備えた“ベルト式無段変速機”(CVT)であってもよい。
【0033】
また、自動変速機3は、油圧制御装置(図示せず)を備えており、変速段(変速比)の変更、前後進段の切り替え、および、ニュートラル状態の設定等の変速動作を油圧制御によって行う。具体的には、自動変速機3の内部に構成された摩擦係合要素(または摩擦係合機構)4の動作を油圧制御する。例えば、摩擦係合要素4は、自動変速機3の内部に設けられている“クラッチ”および“ブレーキ”であり、それら“クラッチ”および“ブレーキ”の係合および解放の動作をそれぞれ油圧制御することにより、上記のような変速動作を行う。解放状態の摩擦係合要素4に所定の係合油圧を供給することにより、摩擦係合要素4を係合する。また、係合状態の摩擦係合要素4から係合油圧を排出することにより、摩擦係合要素4を解放する。そのような係合油圧を供給および排出する油圧制御を実行し、変速比が異なる複数の変速段の中から、いずれかの変速段を選択的に設定する。
【0034】
自動変速機3の変速は、従来と同様に、例えば、変速線図または変速マップ上に設定された変速閾値(いわゆる、アップシフト線、および、ダウンシフト線などと称される変速線)を用いて行われる。変速閾値(変速線)は、例えば、図2に示すような変速線図または変速マップ上で、要求駆動力と車速との関係を規定した基準値あるいは閾値である。自動変速機3は、この変速閾値を判断基準にして変速の実行を判断する。図2に示す例では、縦軸をアクセル開度(要求駆動力)とし、横軸を自動変速機3の出力軸回転数(または、車速)とする変速線図もしくは変速マップ上で、第x速段から第(x+1)速段へのアップシフトの変速閾値として、アップ変速閾値(x→x+1/Up変速線)、および、第(x+1)速段から第x速段へのダウンシフトの変速閾値として、ダウン変速閾値(x+1→x/Down変速線)が設けられている。車速(出力軸回転数)およびアクセル開度(要求駆動力)に基づく車両Veの運転状態が、変速閾値(変速線)を跨いで変化することにより、自動変速機3の変速の判定が行われて目標変速段が変更され、新たな(変更された)変速段を設定するための油圧指令信号が出力される。そして、その油圧指令信号に基づいた油圧が供給され、自動変速機3の“クラッチ”および“ブレーキ”が作動することにより、実際に自動変速機3の変速が行われる。
【0035】
更に、この発明の実施形態における自動変速機3の変速では、上記の変速閾値(変速線)と共に、変速準備閾値が設けられている。変速準備閾値は、上記の変速閾値とは異なる基準値あるいは閾値であって、例えば、変速線図上、または、変速マップ上に設定される、言わば、変速準備線である。図2に示す例では、変速線図もしくは変速マップ上で、第x速段から第(x+1)速段へのアップシフトの変速準備閾値がとして、アップ変速準備閾値(Up準備線)、および、第(x+1)速段から第x速段へのダウンシフトの変速準備閾値として、ダウン変速準備閾値(Down準備線)が設けられている。アップ変速準備閾値は、アップ変速閾値の近傍で、アップ変速閾値よりも要求駆動力(または、アクセル開度)が高く、かつ、車速(または、出力軸回転数)が低い側に、アップ変速閾値と並列するように設定され、要求駆動力(アクセル開度)と車速(出力軸回転数)との関係を規定している。また、ダウン変速準備閾値は、ダウン変速閾値の近傍で、ダウン変速閾値よりも要求駆動力(または、アクセル開度)が低く、かつ、車速(または、出力軸回転数)が高い側に、ダウン変速閾値と並列するように設定され、要求駆動力(アクセル開度)と車速(出力軸回転数)との関係を規定している。そのため、この発明の実施形態における車両の制御装置では、上述した車両Veの運転状態が、上記のアップ変速閾値を跨ぐ前にアップ変速準備閾値を跨ぐことになり、それによって変速準備制御が実行される。すなわち、アップシフトの実行に先立って、そのアップシフトのための変速準備制御が実行される。同様に、この発明の実施形態における車両の制御装置では、上述した車両Veの運転状態が、上記のダウン変速閾値を跨ぐ前にダウン変速準備閾値を跨ぐことになり、それによって変速準備制御が実行される。すなわち、ダウンシフトの実行に先立って、そのダウンシフトのための変速準備制御が実行される。
【0036】
変速準備制御は、自動変速機3の変速における制御の応答遅れを低減するために、この後の変速の際に作動させる摩擦係合要素4の油圧制御を先行して行い、その係合および解放の状態を、所定の変速準備状態または変速待機状態に動作させておく制御である。そのような変速準備制御が実行されることにより、解放状態の摩擦係合要素4に係合準備油圧が供給される。また、係合状態の摩擦係合要素4に作用している係合油圧が解放準備油圧まで低下させられる。係合準備油圧は、解放状態の摩擦係合要素4に供給する油圧の目標値であり、摩擦係合要素4を係合する際に供給される係合油圧よりも低い油圧である。また、解放準備油圧は、係合状態の摩擦係合要素4から低下させる油圧の目標値であり、摩擦係合要素4が解放状態になる際の解放油圧または0よりも高くかつ係合油圧よりも低い油圧である。このような変速準備制御については、その制御の実施例を示して、詳細な説明を後述する。
【0037】
検出部5は、車両Veを制御する際に必要な各種のデータや情報を取得するための機器あるいは装置であり、例えば、電源部、マイクロコンピュータ、センサ、および、入出力インターフェース等を含む。特に、この発明の実施形態における検出部5は、駆動力源1(エンジン7)、および、自動変速機3をそれぞれ制御するための各種のデータや情報を検出する。具体的には、検出部5は、車輪の回転速度等から車速を検出する車速センサ5a、エンジン7の出力軸の回転数を検出するエンジン回転数センサ5b、エンジン7のスロットルバルブ(図示せず)の開度を検出するスロットル開度センサ5c、アクセルペダル(図示せず)の操作量(開度)を検出するアクセル開度センサ5d、制動装置のマスタシリンダ(図示せず)に作用する油圧を検出するマスタシリンダ圧センサ5e、制動装置のブレーキペダル(図示せず)の操作量(ストローク)を検出するブレーキセンサ5f、自動変速機3の入力軸(図示せず)の回転数を検出する入力軸回転数センサ5g、自動変速機3の出力軸3aの回転数を検出する出力軸回転数センサ5h、自動変速機3の摩擦係合要素4に作用する油圧(係合油圧)を検出する係合圧センサ5i、および、制御の継続時間や待ち時間等を計測するタイマ5jなどの各種センサを有している。そして、検出部5は、後述するコントローラ6と電気的に接続されており、上記のような各種センサや機器・装置等の検出値または算出値に応じた電気信号を検出データとしてコントローラ6に出力する。
【0038】
コントローラ6は、マイクロコンピュータ等を主体にして構成される電子制御装置であり、特に、この発明の実施形態におけるコントローラ6は、主に、駆動力源1(エンジン7)の動作、および、自動変速機3の動作をそれぞれ制御する。コントローラ6には、上記の検出部5で検出または算出された各種データが入力される。コントローラ6は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントローラ6は、その演算結果に基づく制御指令信号を出力し、上記のようなエンジン7の運転、および、自動変速機3の変速動作等をそれぞれ制御するように構成されている。なお、図1では一つのコントローラ6が設けられた例を示しているが、コントローラ6は、制御する装置や機器毎に、あるいは制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
【0039】
前述したように、変速の動作を油圧制御する自動変速機3を用いる場合には、油圧制御の応答性に起因して、不可避的に、変速制御の応答遅れが生じてしまう。そのため、従来の変速制御では、運転者のアクセルペダルの操作がばらついている場合には、運転者が意図しない変速が行われてしまう可能性があった。例えば、図3のタイムチャートに示すように、従来の変速制御では、制御の応答遅れ(油圧応答遅れ)を考慮して、本来、変速を実施したいタイミングまたはアクセル開度(A点)よりも早めに、すなわち、低いアクセル開度(B点)で変速が開始されるように変速閾値(変速線)設定される。そのような変速閾値を基に変速制御を行うと、例えば、図4のタイムチャートに示すように、運転者のアクセル操作が増大および減少を繰り返すようにふらついた場合に、本来、変速を実施したい狙いのアクセル開度に到達しない状態(C点)で、変速指令が出力され、変速が実施されてしまう可能性がある。その結果、運転者の意図に反して変速が行われてしまうおそれがある。このような事象は、例えば、自動変速機3で高速側の変速段が設定されている状態で高速走行している場合など、車両Veの駆動力の余裕が少ない状態で頻度が高くなる。そこで、この発明の実施形態における車両の制御装置は、変速制御の応答遅れを低減し、できるだけ狙いとおりの適切なタイミングで変速を実行できるようにするために、例えば、以下の図5のフローチャートで示す制御を実行するように構成されている。
【0040】
図5のフローチャートに示す制御は、車両Veが所定の車速以上で走行している場合に実行される変速制御であり、代表的に、現在設定されている変速段よりも変速比が大きい変速段に向けて変速を行うダウンシフトの例を示してある。先ず、ステップS1では、自動変速機3で現在設定されている変速段が、第(x+1)速段以上であるか否かが判断される。すなわち、現在の変速段が、第(x+1)速段である、または、第(x+1)速段よりも変速比が小さい高速側の変速段(例えば、第(x+2)速段、第(x+3)速段)であるか否かが判断される。
【0041】
現在の変速段が、第(x+1)速段よりも低い変速段、すなわち、第(x+1)速段よりも変速比が大きい低速側の変速段(例えば、第x速段、第(x-1)速段)であることにより、このステップS1で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図5のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0042】
それに対して、現在の変速段が、第(x+1)速段以上である、すなわち、現在の変速段が、第(x+1)速段である、または、第(x+1)速段よりも変速比が小さい高速側の変速段であることにより、ステップS1で肯定的に判断された場合には、ステップS2へ進む。
【0043】
ステップS2では、変速準備制御の要否について判断される。すなわち、車両Veの要求駆動力と車速とに基づく運転状態が、変速準備閾値を越えたか否かが判断される。具体的には、車両Veの運転状態が、要求駆動力が高くなり、かつ、車速が低くなる方向に、ダウン変速準備閾値を跨いで変化したか否かが判断される。例えば、前述の図2で示したような変速マップ上で、車速に相当する自動変速機3の出力軸回転数reが、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速準備閾値(Down準備線)よりも低くなり、かつ、要求駆動力に相当するアクセル開度taが、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速準備閾値(Down準備線)よりも高くなったか否かが判断される。すなわち、図2の変速マップ上で、車両Veの運転状態が、アクセル開度taが高くなり、かつ、出力軸回転数reが低くなる方向に、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速準備閾値(Down準備線)を跨いで変化したか否かが判断される。
【0044】
そして、車両Veの運転状態が、要求駆動力(アクセル開度ta)が高くなり、かつ、車速(出力軸回転数re)が低くなる方向に、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速準備閾値(Down準備線)を跨いで変化したことにより、このステップS2で肯定的に判断された場合は、ステップS3へ進む。
【0045】
ステップS3では、変速準備制御が実行される。すなわち、この後に予定されるダウンシフトの際に作動させる摩擦係合要素4(クラッチおよびブレーキ)の油圧制御を行い、その係合および解放の状態を、ダウンシフトの変速準備状態または変速待機状態(準備Phase)にする制御である。具体的には、この変速準備制御では、解放状態の摩擦係合要素4に係合準備油圧が供給される。また、係合状態の摩擦係合要素4に作用している係合油圧が解放準備油圧まで低下させられる。係合準備油圧は、解放状態の摩擦係合要素4に供給する油圧の目標値であり、摩擦係合要素4を係合する際に供給される係合油圧よりも低い油圧である。解放状態の摩擦係合要素4に、この係合準備油圧を供給することにより、解放状態の摩擦係合要素4は、その解放状態を維持しつつ、すなわち、係合状態になることなく、係合側に僅かに動作して、変速準備状態(準備Phase)となる。また、解放準備油圧は、係合状態の摩擦係合要素4から低下させる油圧の目標値であり、摩擦係合要素4が解放状態になる際の解放油圧または0よりも高くかつ係合油圧よりも低い油圧である。係合状態の摩擦係合要素4に作用している係合油圧を、この解放準備油圧まで低下させることにより、係合状態の摩擦係合要素4は、その係合状態を維持しつつ、すなわち、解放状態になることなく、解放側に僅かに動作して、変速準備状態(準備Phase)となる。
【0046】
続いて、ステップS4では、変速制御の実行の要否について判断される。すなわち、車両Veの要求駆動力と車速とに基づく運転状態が、変速閾値を越えたか否かが判断される。具体的には、車両Veの運転状態が、要求駆動力が高くなり、かつ、車速が低くなる方向に、ダウン変速閾値を跨いで変化したか否かが判断される。例えば、前述の図2で示したような変速マップ上で、車速に相当する自動変速機3の出力軸回転数reが、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速閾値(Down変速線)よりも低くなり、かつ、要求駆動力に相当するアクセル開度taが、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速閾値(Down変速線)よりも高くなったか否かが判断される。すなわち、図2の変速マップ上で、車両Veの運転状態が、アクセル開度taが高くなり、かつ、出力軸回転数reが低くなる方向に、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速閾値(Down変速線)を跨いで変化したか否かが判断される。
【0047】
車両Veの運転状態が、未だ、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速閾値(Down変速線)を越えていない(跨いでいない)ことにより、このステップS4で否定的に判断された場合は、上記のステップS2に戻り、従前と同様の制御が実行される。したがって、上記のステップS2で否定的に判断されるまで、変速準備制御が継続される。もしくは、このステップS4で、車両Veの運転状態が第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速閾値(Down変速線)を越えた(跨いだ)ことを判断するまで、変速準備制御が継続される。
【0048】
それに対して、車両Veの運転状態が、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速閾値(Down変速線)を越えた(跨いだ)ことにより、ステップS4で肯定的に判断された場合には、ステップS5へ進む。
【0049】
ステップS5では、変速制御が実行される。すなわち、第(x+1)速段から第x速段へのダウンシフトが実施される。このステップS5で変速制御が実行されると、この図5のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0050】
一方、この図5のフローチャートの初回のルーチンで、車両Veの運転状態が、要求駆動力(アクセル開度ta)が高くなり、かつ、車速(出力軸回転数re)が低くなる方向に、未だ、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速準備閾値(Down準備線)を跨いで変化していないことにより、前述のステップS2で否定的に判断された場合には、ステップS6へ進む。
【0051】
この場合は、未だ、変速準備制御は実行されておらず、自動変速機3の摩擦係合要素4は、未だ、変速準備状態(準備Phase)になっていない状態、すなわち、変速準備制御、および、準備Phaseを終了したのと同様の状態である。したがって、この場合(初回のルーチン)のステップS6では、特に制御を行うことはなく、その後、この図5のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0052】
もしくは、一旦、車両Veの運転状態が、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速準備閾値(Down準備線)を跨いで変化した後に、ダウン変速閾値(Down変速線)を跨いで変化することなく、再び、出力軸回転数reが、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速準備閾値(Down準備線)よりも高くなったこと、または、アクセル開度taが、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速準備閾値(Down準備線)よりも低くなったこと、の少なくともいずれかであることにより、前述のステップS2で否定的に判断された場合には、ステップS6へ進む。
【0053】
この場合は、一旦、変速準備制御、および、準備Phaseを開始したものの、その後、実際の変速(ダウンシフト)を実行することなく、第(x+1)速段から第x速段へのダウン変速準備閾値(Down準備線)を跨ぐ以前の状況に戻った状態である。したがって、この場合(変速準備制御の実行条件が成立しない状態)のステップS6では、変速準備制御、および、準備Phaseが終了される。
【0054】
そして、このステップS6で、変速準備制御、および、準備Phaseが終了されると、この図5のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0055】
このように、この発明の実施形態における車両の制御装置では、自動変速機3の変速制御に対して、上記のように、実際の変速を実行する変速閾値と共に、その変速閾値とは異なる変速準備閾値が設けられる。変速準備閾値は、例えば、変速マップあるいは変速線図上で、変速閾値(変速線)の近傍に、変速閾値と並列するような値に設定されており、要求駆動力(アクセル開度)および車速(自動変速機3の出力軸回転数)に基づく車両Veの運転状態が、変速閾値よりも先にこの変速準備閾値を越える(跨ぐ)ことにより、変速準備制御が実行される。すなわち、自動変速機3の変速の実行に先立って、変速準備制御が実行される。変速準備制御が実行されることにより、解放状態の摩擦係合要素4に係合準備油圧が供給される。また、係合状態の摩擦係合要素4から係合油圧が排出される。そのため、解放状態の摩擦係合要素4は、その解放状態を維持しつつ、すなわち、係合状態になることなく、係合側に僅かに動作して、変速準備状態となる。また、係合状態の摩擦係合要素4は、その係合状態を維持しつつ、すなわち、解放状態になることなく、解放側に僅かに動作して、変速準備状態となる。
【0056】
上記のようなこの発明の実施形態における変速準備制御を実行しない従来の変速制御では、解放状態の摩擦係合要素4は、図6のタイムチャートに示すように、時刻t1で変速の指令値が出力されてから、実際に係合油圧が立ち上がり、係合状態となる時刻t3までの間に、相対的に長い時間を要している。すなわち、変速制御(油圧制御)の応答遅れが大きい。それに対して、この発明の実施形態における変速準備制御を実行することにより、解放状態の摩擦係合要素4に係合準備油圧が供給され、その解放状態の摩擦係合要素4は、その解放状態を維持しつつ、すなわち、係合状態になることなく、係合側に僅かに動作して、変速準備状態(変速待機状態)となる。そして、その変速準備状態の摩擦係合要素4に対して、例えば、時刻t2で変速の指令値が出力されると、その時刻t2から時刻t3にかけて係合油圧が立ち上がり、変速準備状態の摩擦係合要素4が係合状態になる。したがって、従来の変速制御と比較して、変速制御(油圧制御)の応答遅れが大幅に低減されている。
【0057】
同様に、上記のようなこの発明の実施形態における変速準備制御を実行しない従来の変速制御では、係合状態の摩擦係合要素4は、図7のタイムチャートに示すように、時刻t11で変速の指令値が出力されてから、実際に解放油圧まで低下し、解放状態となる時刻t13までの間に、相対的に長い時間を要している。すなわち、変速制御(油圧制御)の応答遅れが大きい。それに対して、この発明の実施形態における変速準備制御を実行することにより、係合状態の摩擦係合要素4から係合油圧が排出され、係合状態の摩擦係合要素4に作用する油圧が、係合油圧よりも低い解放準備油圧まで低下される。そのため、係合状態の摩擦係合要素4は、その係合状態を維持しつつ、すなわち、解放状態になることなく、解放側に僅かに動作して、変速準備状態(変速待機状態)となる。そして、その変速準備状態の摩擦係合要素4に対して、例えば、時刻t12で変速の指令値が出力されると、その時刻t12から時刻t13にかけて、解放油圧まで油圧が低下されて、変速準備状態の摩擦係合要素4が解放状態になる。したがって、従来の変速制御と比較して、変速制御(油圧制御)の応答遅れが大幅に低減されている。
【0058】
なお、上記の図5のフローチャートでは、自動変速機3でダウンシフトを実行する場合の例を示しているが、この発明の実施形態における車両の制御装置では、自動変速機3でアップシフトを実行する場合においても、上記と同様の変速準備制御を実行し、同様の作用効果を得ることができる。すなわち、この発明の実施形態における変速準備閾値は、アップ変速閾値(図2のUp変速線)の近傍で、アップ変速閾値よりも要求駆動力(アクセル開度ta)が高く、かつ、車速(出力軸回転数re)が低い側に設定されたアップ変速準備閾値(図2のUp準備線)と、ダウン変速閾値(図2のDown変速線)の近傍で、ダウン変速閾値よりも要求駆動力が低く、かつ、車速が高い側に設定されたダウン変速準備閾値(図2のDown準備線)とから構成される。そのため、この発明の実施形態における車両の制御装置では、車両Veの運転状態が、アップ変速閾値を跨ぐ前にアップ変速準備閾値を跨ぐことになり、それによって変速準備制御が実行される。すなわち、アップシフトの実行に先立って、そのアップシフトのための変速準備制御が実行される。同様に、この発明の車両の制御装置では、車両Veの運転状態が、ダウン変速閾値を跨ぐ前にダウン変速準備閾値を跨ぐことになり、それによって変速準備制御が実行される。すなわち、ダウンシフトの実行に先立って、そのダウンシフトのための変速準備制御が実行される。
【0059】
この発明の実施形態における車両の制御装置は、手動変速モードが選択されることにより、運転者の変速操作に対応して変速を行う手動変速が可能な自動変速機3を搭載した車両Veを制御対象にして、次の図8のフローチャートに示す制御を実行することもできる。
【0060】
図8のフローチャートに示す制御は、車両Veが所定の車速以上で走行している場合に実行される変速制御であり、この場合も、代表的に、自動変速機3のダウンシフトの例を示してある。先ず、ステップS11では、手動変速モード(手動変速Mode)が選択されているか否かが判断される。
【0061】
手動変速モード(手動変速Mode)が選択されていないことにより、このステップS11で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図5のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0062】
それに対して、手動変速モード(手動変速Mode)が選択されていることにより、ステップS11で肯定的に判断された場合には、ステップS12へ進む。
【0063】
ステップS12では、自動変速機3で現在設定されている変速段が、第(x+1)速段以上であるか否かが判断される。すなわち、現在の変速段が、第(x+1)速段である、または、第(x+1)速段よりも変速比が小さい高速側の変速段(例えば、第(x+2)速段、第(x+3)速段)であるか否かが判断される。
【0064】
現在の変速段が、第(x+1)速段よりも低い変速段、すなわち、第(x+1)速段よりも変速比が大きい低速側の変速段(例えば、第x速段、第(x-1)速段)であることにより、このステップS11で否定的に判断された場合は、ステップS13へ進む。
【0065】
このステップS13は、変速準備制御、および、準備Phaseを終了する制御ステップであるが、この図8のフローチャートの初回のルーチンでは、未だ、変速準備制御は実行されておらず、自動変速機3の摩擦係合要素4は、未だ、変速準備状態(準備Phase)になっていない状態、すなわち、変速準備制御、および、準備Phaseを終了したのと同様の状態である。したがって、この場合(初回のルーチン)のステップS13では、特に制御を行うことはなく、その後、この図8のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0066】
それに対して、現在の変速段が、第(x+1)速段以上である、すなわち、現在の変速段が、第(x+1)速段である、または、第(x+1)速段よりも変速比が小さい高速側の変速段であることにより、ステップS12で肯定的に判断された場合には、ステップS14へ進む。
【0067】
ステップS14では、運転者によるブレーキペダルの操作量(ブレーキ操作量)baが、手動変速準備閾値よりも大きいか否かが判断される。手動変速準備閾値は、手動変速モードにおいて、変速準備制御の実行を判断するための変速準備閾値であり、運転者の運転操作(アクセル操作、および、ブレーキ操作)に基づく加速要求量(例えば、アクセル開度、スロットルバルブ開度、燃料噴射量、など)、または、運転操作に基づく減速要求量(例えば、ブレーキ操作量、ブレーキストローク、踏力、マスタシリンダ圧、など)の少なくともいずれかの基準の値を規定した閾値である。自動変速機3の変速の実行に先立って、実際の加速要求量、または、実際の減速要求量が、この手動変速準備閾値を超える(上回る)ことにより、変速準備制御が実行される。この図8のフローチャートに示す例では、手動変速準備閾値は、ブレーキ操作量baに対する手動ダウン変速準備閾値であり、ブレーキ操作量baが手動ダウン変速準備閾値を上回ることにより、その直後に、運転者による手動変速モードのダウンシフトが行われることを予測する。もしくは、運転者による手動変速モードのダウンシフトが行われる可能性が高いと判断する。そして、その手動変速モードのダウンシフトの実施に先行するように、変速準備制御を開始する。
【0068】
なお、このステップS14の制御は、上記のように、ブレーキ操作量baと、そのブレーキ操作量baに対する手動ダウン変速準備閾値とを比較する制御の替わりに、アクセル操作量(または、アクセル開度)と、そのアクセル操作量に対する手動ダウン変速準備閾値とを比較する制御としてもよい。また、ブレーキ操作量baと、そのブレーキ操作量baに対する手動アップ変速準備閾値とを比較する制御としてもよい。あるいは、アクセル操作量(または、アクセル開度)と、そのアクセル操作量に対する手動アップ変速準備閾値とを比較する制御としてもよい。手動アップ変速準備閾値は、ブレーキ操作量baまたはアクセル操作量が手動アップ変速準備閾値を上回ることにより、その直後に、運転者による手動変速モードのアップシフトが行われることを予測する。もしくは、運転者による手動変速モードのアップシフトが行われる可能性が高いと判断する。そして、その手動変速モードのアップシフトの実施に先行するように、変速準備制御を開始する。
【0069】
手動ダウン変速準備閾値は、例えば、図9に示すように、変速閾値(変速線)に相当するブレーキ操作量の値よりも低い値に設定される。あるいは、変速閾値(変速線)に相当するアクセル操作量の値よりも低い値に設定される。手動アップ変速準備閾値も同様に、例えば、図9に示すように、変速閾値(変速線)に相当するブレーキ操作量の値よりも低い値に設定される。あるいは、変速閾値(変速線)に相当するアクセル操作量の値よりも低い値に設定される。
【0070】
ステップS14で、手動変速準備閾値によって運転者の運転操作に基づく加速要求量、または、運転操作に基づく減速要求量から運転者の加速意図または減速意図を予測し、その加速意図または減速意図によって、運転者の手動変速操作を予測することによって、その運転者の手動変速操作に先行して、変速準備制御を開始することができる。そのため、この発明の実施形態における変速準備制御を、効果的に実行することができる。
【0071】
なお、このステップS14で示すような手動変速準備閾値を用いて変速準備制御の実行を判断する制御は、例えば、上記のような自動変速機3の手動変速モードではない、通常の(自動変速モードn)状態においても適用することが可能である。すなわち、手動変速準備閾値の替わりに、予測変速準備閾値(予測ダウン変速準備閾値、予測アップ変速準備閾値)を設定し、運転者の手動変速操作の替わりに、自動変速機3における変速の実施可能性を予測し、その予測結果に基づき、変速準備制御を実行するようにしてもよい。
【0072】
したがって、ブレーキ操作量baが手動変速準備閾値(手動ダウン変速準備閾値)よりも大きいことにより、このステップS14で肯定的に判断された場合は、ステップS15へ進む。
【0073】
ステップS15では、変速準備制御が実行される。すなわち、この後に運転者の手動操作によって実施されることを予測したダウンシフトの際に作動させる摩擦係合要素4(クラッチおよびブレーキ)の油圧制御を行い、その係合および解放の状態が、ダウンシフトの変速準備状態または変速待機状態(準備Phase)にされる。具体的には、解放状態の摩擦係合要素4に係合準備油圧が供給される。また、係合状態の摩擦係合要素4に作用している係合油圧が解放準備油圧まで低下させられる。係合準備油圧は、解放状態の摩擦係合要素4に供給する油圧の目標値であり、摩擦係合要素4を係合する際に供給される係合油圧よりも低い油圧である。解放状態の摩擦係合要素4に、この係合準備油圧を供給することにより、解放状態の摩擦係合要素4は、その解放状態を維持しつつ、すなわち、係合状態になることなく、係合側に僅かに動作して、変速準備状態(準備Phase)となる。また、解放準備油圧は、係合状態の摩擦係合要素4から低下させる油圧の目標値であり、摩擦係合要素4が解放状態になる際の解放油圧または0よりも高くかつ係合油圧よりも低い油圧である。係合状態の摩擦係合要素4に作用している係合油圧を、この解放準備油圧まで低下させることにより、係合状態の摩擦係合要素4は、その係合状態を維持しつつ、すなわち、解放状態になることなく、解放側に僅かに動作して、変速準備状態(準備Phase)となる。
【0074】
続いて、ステップS16では、運転者によるダウンシフトの手動操作が行われたか否かが判断される。例えば、自動変速機3のシフト装置(図示せず)が、運転者によって操作されたか否かが判断される。未だ、運転者によるダウンシフトの手動操作は行われていないことにより、このステップS16で否定的に判断された場合は、上記のステップS14に戻り、従前と同様の制御が実行される。したがって、ブレーキ操作量baが予測変速準備閾値以下に低下されたことにより、上記のステップS14で否定的に判断されるまで、変速準備制御が継続される。もしくは、このステップS16で、運転者によるダウンシフトの手動操作が実施されたことを判断するまで、変速準備制御が継続される。
【0075】
そして、運転者によるダウンシフトの手動操作が行われたことにより、ステップS16で肯定的に判断された場合には、ステップS17へ進む。
【0076】
ステップS17では、変速制御が実行される。すなわち、第(x+1)速段から第x速段へのダウンシフトが実施される。このステップS17で変速制御が実行されると、この図8のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0077】
一方、ブレーキ操作量baが予測変速準備閾値以下であることにより、前述のステップS14で否定的に判断された場合には、ステップS18へ進む。
【0078】
ステップS18では、変速準備制御の継続時間tiが、0よりも長く、かつ、上限値よりも短いか否かが判断される。継続時間tiは、変速準備制御の実行を開始した時点からの現在までの時間であり、この場合の上限値は、継続時間tiに対する所定の基準値である。継続時間tiが上限値を超過した場合に、変速準備制御が終了される。
【0079】
変速準備制御の継続時間tiが、0よりも長く、かつ、上限値よりも短いことにより、このステップS18で肯定的に判断された場合は、前述のステップS16へ進み、従前と同様の制御が実行される。
【0080】
それに対して、変速準備制御の継続時間tiが0であること、または、変速準備制御の継続時間tiが上限値を超過したことにより、ステップS18で否定的に判断された場合には、ステップS13へ進む。なお、この図8のフローチャートの初回のルーチンでは、未だ、変速準備制御は実行されていないので、変速準備制御の継続時間tiは0となる。
【0081】
変速準備制御の継続時間tiが0であった場合は、未だ、変速準備制御は実行されておらず、自動変速機3の摩擦係合要素4は、未だ、変速準備状態(準備Phase)になっていない状態、すなわち、変速準備制御、および、準備Phaseを終了したのと同様の状態である。したがって、この場合(初回のルーチン)のステップS13では、特に制御を行うことはなく、その後、この図5のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0082】
また、変速準備制御の継続時間tiが上限値を超過した場合は、変速準備制御が継続されることにより損失の増加を抑制するため、および、自動変速機3の摩擦係合要素4を保護するために、変速準備制御、および、準備Phaseが終了される。
【0083】
上記のような変速準備制御は、例えば、変速準備制御の継続時間tiが過剰に長くなると、損失が増大してしまい、車両Veのエネルギ効率が低下してしまう場合がある。また、摩擦係合要素4の滑り状態を許容した場合は、その滑り状態が過剰に長くなると、摩擦係合要素4の摩耗や劣化が進行してしまう可能性がある。そのため、このステップS18の制御では、変速準備制御の継続時間tiに上限値を設けている。
【0084】
なお、このステップS18の制御は、上記のような継続時間tiに上限値を設ける替わりに、継続時間tiの期間における摩擦係合要素4の熱吸収量(または、発熱量)に上限値(基準熱量)を設け、摩擦係合要素4の熱吸収量がその上限値を超過した場合に、変速準備制御を終了するようにしてもよい。あるいは、継続時間tiと摩擦係合要素4の熱吸収量とが共に、それぞれの上限値を超過した場合に、変速準備制御を終了するようにしてもよい。摩擦係合要素4の熱吸収量は、例えば、継続時間ti、摩擦係合要素4の滑り量(差回転)、および、摩擦係合要素4の押し付け力(係合圧)などから推定して算出することができる。
【0085】
したがって、ステップS18の制御により、変速準備制御において摩擦係合要素4の滑り状態を許容した状態で、車両Veの運転状態によって変速準備制御の継続時間tiが長くなった場合には、変速準備制御の実行を取り止めることができる。そのため、変速準備制御で摩擦係合要素4の滑り状態が長時間にわたって継続されることにより、損失が増大してしまい、車両Veのエネルギ効率が低下してしまうことを抑制できる。また、摩擦係合要素4の耐久性が低下してしまうことを抑制できる。
【0086】
また、このステップS18の制御、および、上記のような摩擦係合要素4の熱吸収量に上限(基準熱量)を設ける制御、すなわち、変速準備制御に上限を設ける制御は、例えば、前述の図5のフローチャートで示した制御に適用してもよい。図5のフローチャートで示した制御において、変速準備制御に上限を設けることにより、上記と同様に、車両Veのエネルギ効率が低下してしまうことを抑制できる。また、摩擦係合要素4の耐久性が低下してしまうことを抑制できる。
【0087】
そして、このステップS6で、変速準備制御、および、準備Phaseが終了されると、この図5のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0088】
以上のように、この発明の実施形態における車両の制御装置によれば、通常の変速閾値(変速線)とは別に、上述したような変速準備閾値が設けられ、その変速準備閾値を基に変速準備制御が実行される。この発明の実施形態における変速準備制御が実行されることにより、実際にアップシフトまたはダウンシフトが実行されることに先行して、そのアップシフトまたはダウンシフトを実現するために係合または解放される摩擦係合要素4の係合油圧が予備的に制御される。すなわち、摩擦係合要素4の係合および解放の状態が切り替わらない範囲で、あるいは、実際の変速が行われない範囲で、係合油圧が増大および低下されて、摩擦係合要素4が変速準備状態にされる。実際の変速に先立って、予め、摩擦係合要素4を変速準備状態にしておくことにより、変速制御の応答遅れの主たる要因となる油圧の応答遅れを低減することができる。そのため、従来、相対的に大きな応答遅れを見込んで設定されていた変速閾値を、変速準備制御によって低減される最小限の応答遅れだけを見込んだ設定とすることができる。したがって、当初の狙いとおりの、あるいは、当初の狙いに近い適切なタイミングで、自動変速機の変速を実行することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 駆動力源
2 駆動輪
3 自動変速機(AT)
3a (自動変速機の)出力軸
4 摩擦係合要素
5 検出部
5a (検出部の)車速センサ
5b (検出部の)エンジン回転数センサ
5c (検出部の)スロットル開度センサ
5d (検出部の)アクセル開度センサ
5e (検出部の)マスタシリンダ圧センサ
5f (検出部の)ブレーキセンサ
5g (検出部の)入力軸回転数センサ
5h (検出部の)出力軸回転数センサ
5i (検出部の)係合圧センサ
5j (検出部の)タイマ
6 コントローラ(ECU)
7 エンジン(ENG;駆動力源)
8 プロペラシャフト
9 デファレンシャルギヤ
10 ドライブシャフト
11 動力伝達経路
Ve 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9