(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178009
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】半導体受光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091023
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】田口 桂基
(72)【発明者】
【氏名】牧野 健二
(72)【発明者】
【氏名】大重 美明
(72)【発明者】
【氏名】石原 兆
【テーマコード(参考)】
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
5F149AA03
5F149AB07
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5F849XB40
(57)【要約】
【課題】高速化が可能な半導体受光素子を提供する。
【解決手段】半導体受光素子1は、基板10と半導体積層部20と、半導体積層部20に電気的に接続された電極4及び電極5とを備える。半導体積層部20は、In
xGa
1-xAsを含む第1導電型の光吸収層23を含む。光吸収層23におけるIn組成xは、0.55以上であり、光吸収層23の厚さは、0.6μm以上1.8μm以下である。半導体受光素子1は、側面入射型である。側面20sに対する光Lの入射方向に沿った光吸収層23の幅は10μm以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.3μm帯、1.55μm帯、及び1.6μm帯の少なくとも1つの波長帯の光の入射を受け、入射光に応じて電気信号を生成するための半導体受光素子であって、
基板と、
前記基板上に形成され、前記基板側の裏面と前記基板と反対側の表面と前記裏面から前記表面に向けて延びる側面と、を含む半導体積層部と、
前記半導体積層部に電気的に接続された第1電極及び第2電極と、
を備え、
前記半導体積層部は、
InxGa1-xAsを含む第1導電型の光吸収層と、
前記基板と前記光吸収層との間に設けられた前記第1導電型のバッファ層と、
前記光吸収層に対して前記基板と反対側に位置すると共に前記光吸収層に接合された前記第1導電型と異なる第2導電型の第1半導体層と、
を含み、
前記第1電極は、前記半導体積層部のうち、前記光吸収層に対して前記基板側に位置する前記第1導電型の第1部分に接続されており、
前記第2電極は、前記半導体積層部のうち、前記光吸収層に対して前記基板と反対側に位置する前記第2導電型の第2部分に接続されており、
前記光吸収層におけるIn組成xは、0.55以上であり、
前記光吸収層の厚さは、1.8μm以下であり、
前記側面から前記光の入射を受ける側面入射型であり、
前記側面に対する前記光の入射方向に沿った前記光吸収層の幅は10μm以下である、
半導体受光素子。
【請求項2】
前記バッファ層は、前記基板の格子定数と前記光吸収層の格子定数との間の格子定数を有する歪緩和層を含む、
請求項1に記載の半導体受光素子。
【請求項3】
前記半導体積層部は、
前記光吸収層に対して前記基板と反対側において前記光吸収層上に設けられると共に、InAsP又はInGaAsPを含む前記第2導電型のキャップ層と、
前記光吸収層に対して前記基板と反対側において前記キャップ層上に設けられると共にInGaAsを含む前記第2導電型のコンタクト層と、
を含み、
前記第1半導体層は、前記コンタクト層及び前記キャップ層を含み、
前記第2電極が接続される前記第2部分は、前記コンタクト層の表面である、
請求項1に記載の半導体受光素子。
【請求項4】
前記半導体積層部は、
前記基板と前記光吸収層との間に配置された前記第1導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有し、前記第2半導体層と前記光吸収層との間に配置された前記第1導電型の容量低減層と、
を含む、
請求項1に記載の半導体受光素子。
【請求項5】
前記半導体積層部は、前記光吸収層と前記キャップ層との間に設けられ、前記光吸収層のバンドギャップと前記キャップ層のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する第3半導体層を含む、
請求項3に記載の半導体受光素子。
【請求項6】
前記バッファ層の少なくとも1つの層は、Feのドープにより半絶縁化されている、
請求項1に記載の半導体受光素子。
【請求項7】
前記容量低減層は、前記光吸収層の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有すると共に、前記光吸収層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、前記光吸収層と前記バッファ層との間に設けられている、
請求項4に記載の半導体受光素子。
【請求項8】
前記容量低減層の厚さは、0.3μm以上3.0μm以下あり、
前記容量低減層の不純物濃度は、2.0×1014cm-3以上3.0×1016cm-3以下である、
請求項7に記載の半導体受光素子。
【請求項9】
前記光吸収層におけるIn組成xは、0.57以上であり、
前記光吸収層の厚さは、1.2μm以下である、
請求項1に記載の半導体受光素子。
【請求項10】
前記光吸収層におけるIn組成xは、0.59以上であり、
前記光吸収層の厚さは、0.7μm以下である、
請求項9に記載の半導体受光素子。
【請求項11】
前記基板は、絶縁体又は半絶縁性半導体を含み、
前記半導体積層部は、前記基板に接合されている、
請求項1に記載の半導体受光素子。
【請求項12】
1.3μm帯、1.55μm帯、及び1.6μm帯の少なくとも1つの波長帯の光の入射を受け、入射光に応じて電気信号を生成するための半導体受光素子であって、
基板と、
前記基板上に形成され、前記基板側の裏面と前記基板と反対側の表面と前記裏面から前記表面に向けて延びる側面と、を含む半導体積層部と、
前記半導体積層部に電気的に接続された第1電極及び第2電極と、
を備え、
前記半導体積層部は、
InxGa1-xAsを含む第2導電型の光吸収層と、
前記基板と前記光吸収層との間に設けられた前記第2導電型と異なる第1導電型のバッファ層と、
前記光吸収層に対して前記基板と反対側に位置すると共に前記光吸収層に接合された前記第2導電型の第4半導体層と、
を含み、
前記第1電極は、前記半導体積層部のうち、前記光吸収層に対して前記基板側に位置する前記第1導電型の第1部分に接続されており、
前記第2電極は、前記半導体積層部のうち、前記光吸収層に対して前記基板と反対側に位置する前記第2導電型の第2部分に接続されており、
前記光吸収層におけるIn組成xは、0.55以上であり、
前記光吸収層の厚さは、1.8μm以下であり、
前記側面から前記光の入射を受ける側面入射型であり、
前記側面に対する前記光の入射方向に沿った前記光吸収層の幅は10μm以下である、
半導体受光素子。
【請求項13】
前記バッファ層は、前記基板の格子定数と前記光吸収層の格子定数との間の格子定数を有する歪緩和層を含む、
請求項12に記載の半導体受光素子。
【請求項14】
前記半導体積層部は、
前記光吸収層に対して前記基板と反対側において前記光吸収層上に設けられると共に、InAsP又はInGaAsPを含む前記第2導電型の拡散ブロック層と、
前記光吸収層に対して前記基板と反対側において前記拡散ブロック層上に設けられると共にInGaAsを含む前記第2導電型のコンタクト層と、
を含み、
前記第4半導体層は、前記コンタクト層及び前記拡散ブロック層を含み、
前記第2電極が接続される前記第2部分は、前記コンタクト層の表面である、
請求項12に記載の半導体受光素子。
【請求項15】
前記半導体積層部は、前記バッファ層と前記光吸収層との間に設けられた第1導電型の電子走行層を含み、
前記電子走行層の不純物濃度は、前記バッファ層の不純物濃度よりも低い、
請求項12に記載の半導体受光素子。
【請求項16】
前記半導体積層部は、前記光吸収層と前記拡散ブロック層との間に設けられ、前記光吸収層のバンドギャップと前記拡散ブロック層のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する第6半導体層を含む、
請求項14に記載の半導体受光素子。
【請求項17】
前記バッファ層の少なくとも1つの層は、Feのドープにより半絶縁化されている、
請求項12に記載の半導体受光素子。
【請求項18】
前記電子走行層は、前記光吸収層の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有すると共に、前記光吸収層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、前記光吸収層と前記バッファ層との間に設けられている、
請求項15に記載の半導体受光素子。
【請求項19】
前記電子走行層の厚さは、0.3μm以上3.0μm以下あり、
前記電子走行層の不純物濃度は、2.0×1014cm-3以上3.0×1016cm-3以下である、
請求項18に記載の半導体受光素子。
【請求項20】
前記光吸収層におけるIn組成xは、0.57以上であり、
前記光吸収層の厚さは、0.3μm以下である、
請求項12に記載の半導体受光素子。
【請求項21】
前記光吸収層におけるIn組成xは、0.59以上であり、
前記光吸収層の厚さは、0.1μm以下である、
請求項12に記載の半導体受光素子。
【請求項22】
前記基板は、絶縁体又は半絶縁性半導体を含み、
前記半導体積層部は、前記基板に接合されている、
請求項12に記載の半導体受光素子。
【請求項23】
1.3μm帯、1.55μm帯、及び1.6μm帯の少なくとも1つの波長帯の光の入射を受け、入射光に応じて電気信号を生成するための半導体受光素子であって、
第1方向に沿って順に配列された第1領域、第2領域、及び第3領域を含む主面を有する基板と、
前記第2領域上に形成され、前記基板側の裏面と前記基板と反対側の表面と前記裏面から前記表面に向けて延びる側面と、を含む半導体積層部と、
前記第1領域上に形成された第1導電型の第1半導体部と、
前記第3領域上に形成され、前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体部と、
前記第1半導体部に電気的に接続された第1電極と、
前記第2半導体部に電気的に接続された第2電極と、
前記第2領域上に形成され、前記主面に沿うと共に前記第1方向に交差する第2方向に沿って前記側面に向けて延在して前記側面に結合された光導波路と、
を備え、
前記半導体積層部は、InxGa1-xAsを含む光吸収層を含み、
前記光吸収層におけるIn組成xは、0.55以上であり、
前記光吸収層の厚さは、1.8μm以下であり、
前記光導波路を介して前記側面から前記光の入射を受ける側面入射型であり、
前記側面に対する前記光の入射方向に沿った前記光吸収層の幅は10μm以下である、
半導体受光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光導波路型受光素子が記載されている。この光導波路型受光素子は、第1導電型を有する第1半導体層と、第1半導体層の第1領域上に設けられた光導波路構造と、第1半導体層の第1領域と隣接する第2領域上に設けられた導波路型フォトダイオード構造と、を備える。光導波路構造は、第1半導体層上に設けられた光導波コア層と、光導波コア層上に設けられたクラッド層と、を有する。導波路型フォトダイオード構造は、第1半導体層上に設けられ、光導波コア層と光結合された、吸収端の波長が1612nm以上である光吸収層と、光吸収層上に設けられた第2導電型を有する第2半導体層と、を有する。光導波方向における光吸収層の長さは12μm以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記技術分野にあっては、さらなる動作速度の高速化が望まれている。そのためには、光吸収層を薄化することにより電子の移動距離を短縮することが考えられる。しかしながら、光吸収層を薄化すると感度の低下が生じる。これに対して、特許文献1に記載のフォトダイオードでは、光吸収層に対して、光吸収層の厚さ方向に交差する方向から光を入射させることにより、実行的な吸収層厚を増大させている(光吸収層が光導波方向に12μmの長さを有している)。これによれば、光吸収層の薄化による感度低下を抑制して高速化が図られるとも考えられる。このように、上記技術分野にあっては、高速化の要求がある。
【0005】
本開示は、高速化が可能な半導体受光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体受光素子は、[1]「1.3μm帯、1.55μm帯、及び1.6μm帯の少なくとも1つの波長帯の光の入射を受け、入射光に応じて電気信号を生成するための半導体受光素子であって、基板と、前記基板上に形成され、前記基板側の裏面と前記基板と反対側の表面と前記裏面から前記表面に向けて延びる側面と、を含む半導体積層部と、前記半導体積層部に電気的に接続された第1電極及び第2電極と、を備え、前記半導体積層部は、InxGa1-xAsを含む第1導電型の光吸収層と、前記基板と前記光吸収層との間に設けられた前記第1導電型のバッファ層と、前記光吸収層に対して前記基板と反対側に位置すると共に前記光吸収層に接合された前記第1導電型と異なる第2導電型の第1半導体層と、を含み、前記第1電極は、前記半導体積層部のうち、前記光吸収層に対して前記基板側に位置する前記第1導電型の第1部分に接続されており、前記第2電極は、前記半導体積層部のうち、前記光吸収層に対して前記基板と反対側に位置する前記第2導電型の第2部分に接続されており、前記光吸収層におけるIn組成xは、0.55以上であり、前記光吸収層の厚さは、1.8μm以下であり、前記側面から前記光の入射を受ける側面入射型であり、前記側面に対する前記光の入射方向に沿った前記光吸収層の幅は10μm以下である、半導体受光素子」である。
【0007】
上記[1]の半導体受光素子は、1.3μm帯(O-band(Original-band))、1.55μm帯(C-band (Conventional-band))、及び1.6μm帯(L-band (Long-wavelength-band))といった光通信用の波長帯の光を対象とする。この半導体受光素子では、基板上に設けられた光吸収層が、InxGa1-xAsを含む。そして、光吸収層のIn組成xが0.55以上(且つ1未満)である。このように、光吸収層においてInxGa1-xAsのIn組成xを0.55以上とすると、例えばIn組成xが0.53である場合と比較して、吸収係数が向上される(例えば1.55μm帯では組成xを0.62にすることで吸収係数が2倍程度に向上される)。したがって、光吸収層の厚さを1.8μm以下程度に薄化しても感度の低下が避けられる。よって、高速化が可能となる。さらに、同様の理由により、光の入射方向における光吸収層の幅を10μm以下とすることができ、光吸収層の容量を小さくしてさらなる高速化を図ることが可能となる。
【0008】
本開示に係る半導体受光素子は、[2]「前記バッファ層は、前記基板の格子定数と前記光吸収層の格子定数との間の格子定数を有する歪緩和層を含む、上記[1]に記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、半導体積層部の結晶性が向上され、暗電流の増加が抑制される。
【0009】
本開示に係る半導体受光素子は、[3]「前記バッファ層は、前記基板から前記光吸収層に向かうにつれて段階的に格子定数が前記光吸収層の格子定数に近づくように配置された複数の前記歪緩和層を含む、上記[2]に記載の半導体受光素子」であってもよい。或いは、本開示に係る半導体受光素子は、[4]「前記バッファ層は、前記基板から前記光吸収層に向かうにつれて連続的に格子定数が前記光吸収層の格子定数に近づくように変化された前記歪緩和層を含む、上記[2]に記載の半導体受光素子」であってもよい。これらの場合、半導体積層部の結晶性が確実に向上され、暗電流の増加が抑制される。
【0010】
本開示に係る半導体受光素子は、[5]「前記半導体積層部は、前記光吸収層に対して前記基板と反対側において前記光吸収層上に設けられると共に、InAsP又はInGaAsPを含む前記第2導電型のキャップ層と、前記光吸収層に対して前記基板と反対側において前記キャップ層上に設けられると共にInGaAsを含む前記第2導電型のコンタクト層と、を含み、前記第1半導体層は、前記コンタクト層及び前記キャップ層を含み、前記第2電極が接続される前記第2部分は、前記コンタクト層の表面である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、第2電極のコンタクト抵抗を下げ、直列抵抗を下げることが可能となる。これにより、応答性の悪化を抑制可能である。また、キャップ層として光吸収層の屈折率よりも低い屈折率の材料を用いることにより、光吸収層に光を好適に閉じ込めることが可能となる。
【0011】
本開示に係る半導体受光素子は、[6]「前記半導体積層部は、前記光導波路層と前記光吸収層との間に配置された前記第1導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有し、前記第2半導体層と前記光吸収層との間に配置された前記第1導電型の容量低減層と、を含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。このように、相対的に不純物濃度が低い容量低減層を設けることにより、バイアスが加えられた際に当該容量低減層が空乏化するため、容量の低減によってさらなる高速化が図られる。
【0012】
本開示に係る半導体受光素子は、[7]「前記半導体積層部は、前記光吸収層と前記キャップ層との間に設けられ、前記光吸収層のバンドギャップと前記キャップ層のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する第3半導体層を含む、上記[5]に記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、光吸収層とキャップ層との間に、それらの間のバンドギャップを有する層を設けることによって、各層間の障壁を低減し、応答の劣化を抑制することができる。
【0013】
本開示に係る半導体受光素子は、[8]「前記バッファ層の少なくとも1つの層は、Feのドープにより半絶縁化されている、上記[1]~[7]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、容量低減を図ることが可能となる。
【0014】
本開示に係る半導体受光素子は、[9]「前記容量低減層は、前記光吸収層の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有すると共に、前記光吸収層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、前記光吸収層と前記光導波路層との間に設けられている、上記[6]に記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、容量低減層は、上記のように相対的に不純物濃度が低く、容量低減に寄与する層である。しかし、容量低減層の不純物濃度を単に低くしてしまうと各層間の障壁が大きくなり、応答の劣化につながるおそれがある。一方で、容量低減層の不純物濃度を高くすると、空乏層が広がらないために十分に容量を低減することが困難となる。したがって、この場合のように、容量低減層の不純物濃度を低くするに最低、容量低減層が光吸収層よりも大きなバンドギャップを有するようにすることによって、容量低減層での光の吸収、及び、当該光の吸収による容量低減層でのキャリアの発生が抑制され、応答の劣化が抑制される。また、容量低減層が光吸収層よりも大きなバンドギャップを有する一方で、容量低減層が光吸収層よりも高い不純物濃度を有するため、容量低減層における障壁が低減される。
【0015】
本開示に係る半導体受光素子は、[10]「前記容量低減層の厚さは、0.3μm以上3.0μm以下あり、前記容量低減層の不純物濃度は、2.0×1014cm-3以上3.0×1016cm-3以下である、上記[6]又は[9]に記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、容量低減層の不純物濃度の上限が上記のとおりとされることにより、バイアスを加えた際に好適に空乏化され得る。また、容量低減層の厚さが上記の範囲とされることにより、応答速度の低下や、半導体受光素子の直列抵抗の増大を抑制することができる。
【0016】
本開示に係る半導体受光素子は、[11]「前記光吸収層におけるIn組成xは、0.57以上であり、前記光吸収層の厚さは、1.2μm以下である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。さらに、本開示に係る半導体受光素子は、[12]「前記光吸収層におけるIn組成xは、0.59以上であり、前記光吸収層の厚さは、0.7μm以下である、上記[11]に記載の半導体受光素子」であってもよい。これらの場合、光吸収層のさらなる薄化により高速化が図られる。
【0017】
本開示に係る半導体受光素子は、[13]「前記基板は、半絶縁性半導体を含む、上記[1]~[12]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、第1電極のパッドを基板上に設けることによってパッド容量を低減することができ、高速化が可能となる。
【0018】
本開示に係る半導体受光素子は、[14]「前記基板は、絶縁体又は半絶縁性半導体を含み、前記半導体積層部は、前記基板に接合されている、上記[1]~[13]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、基板と半導体積層部とを別体に構成して直接接合することにより半導体受光素子を構成することによって、大口径化を図ることや、安価な材料にて光学的な部品を作り込むことによってコストを抑えることが可能となる。
【0019】
本開示に係る半導体受光素子は、[15]「1.3μm帯、1.55μm帯、及び1.6μm帯の少なくとも1つの波長帯の光の入射を受け、入射光に応じて電気信号を生成するための半導体受光素子であって、基板と、前記基板上に形成され、前記基板側の裏面と前記基板と反対側の表面と前記裏面から前記表面に向けて延びる側面と、を含む半導体積層部と、前記半導体積層部に電気的に接続された第1電極及び第2電極と、を備え、前記半導体積層部は、InxGa1-xAsを含む第2導電型の光吸収層と、前記基板と前記光吸収層との間に設けられた前記第2導電型と異なる第1導電型のバッファ層と、前記光吸収層に対して前記基板と反対側に位置すると共に前記光吸収層に接合された前記第2導電型の第4半導体層と、を含み、前記第1電極は、前記半導体積層部のうち、前記光吸収層に対して前記基板側に位置する前記第1導電型の第1部分に接続されており、前記第2電極は、前記半導体積層部のうち、前記光吸収層に対して前記基板と反対側に位置する前記第2導電型の第2部分に接続されており、前記光吸収層におけるIn組成xは、0.55以上であり、前記光吸収層の厚さは、1.8μm以下であり、前記側面から前記光の入射を受ける側面入射型であり、前記側面に対する前記光の入射方向に沿った前記光吸収層の幅は10μm以下である、半導体受光素子」である。
【0020】
上記[15]の半導体受光素子は、1.3μm帯(O-band(Original-band))、1.55μm帯(C-band (Conventional-band))、及び1.6μm帯(L-band (Long-wavelength-band))といった光通信用の波長帯の光を対象とする。この半導体受光素子では、基板上に設けられた光吸収層が、InxGa1-xAsを含む。そして、光吸収層のIn組成xが0.55以上(且つ1未満)である。このように、光吸収層においてInxGa1-xAsのIn組成xを0.55以上とすると、例えばIn組成xが0.53である場合と比較して、吸収係数が向上される(例えば1.55μm帯では組成xを0.62にすることで吸収係数が2倍程度に向上される)。したがって、光吸収層の厚さを1.8μm以下程度に薄化としても感度の低下が避けられる。さらに、同様の理由により、光の入射方向における光吸収層の幅を10μm以下とすることができ、光吸収層の容量を小さくしてさらなる高速化を図ることが可能となる。
【0021】
本開示に係る半導体受光素子は、[16]「前記バッファ層は、前記基板の格子定数と前記光吸収層の格子定数との間の格子定数を有する歪緩和層を含む、上記[15]に記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、半導体積層部の結晶性が向上され、暗電流の増加が抑制される。
【0022】
本開示に係る半導体受光素子は、[17]「前記バッファ層は、前記基板から前記光吸収層に向かうにつれて段階的に格子定数が前記光吸収層の格子定数に近づくように配置された複数の前記歪緩和層を含む、上記[16]に記載の半導体受光素子」であってもよい。或いは、本開示に係る半導体受光素子は、[18]「前記バッファ層は、前記基板から前記光吸収層に向かうにつれて連続的に格子定数が前記光吸収層の格子定数に近づくように変化された前記歪緩和層を含む、上記[16]に記載の半導体受光素子」であってもよい。これらの場合、半導体積層部の結晶性が確実に向上され、暗電流の増加が抑制される。
【0023】
本開示に係る半導体受光素子は、[19]「前記半導体積層部は、前記光吸収層に対して前記基板と反対側において前記光吸収層上に設けられると共に、InAsP又はInGaAsPを含む前記第2導電型の拡散ブロック層と、前記光吸収層に対して前記基板と反対側において前記拡散ブロック層上に設けられると共にInGaAsを含む前記第2導電型のコンタクト層と、を含み、前記第4半導体層は、前記コンタクト層及び前記拡散ブロック層を含み、前記第2電極が接続される前記第2部分は、前記コンタクト層の表面である、上記[15]~[18]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、第2電極のコンタクト抵抗を下げ、直列抵抗を下げることが可能となる。これにより、応答性の悪化を抑制可能である。また、拡散ブロック層として光吸収層の屈折率よりも低い屈折率の材料を用いることにより、光吸収層に光を好適に閉じ込めることが可能となる。
【0024】
本開示に係る半導体受光素子は、[20]「前記半導体積層部は、前記バッファ層と前記光吸収層との間に設けられた第1導電型の電子走行層を含み、前記電子走行層の不純物濃度は、前記バッファ層の不純物濃度よりも低い、上記[15]~[19]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。このように、電子走行層の不純物濃度を相対的に低くすることにより、バイアスが加えられた際に当該電子走行層が空乏化するため、容量の低減によってさらなる高速化が図られる。
【0025】
本開示に係る半導体受光素子は、[21]「前記半導体積層部は、前記光吸収層と前記拡散ブロック層との間に設けられ、前記光吸収層のバンドギャップと前記拡散ブロック層のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する第6半導体層を含む、上記[19]に記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、光吸収層とキャップ層との間に、それらの間のバンドギャップを有する層を設けることによって、各層間の障壁を低減し、応答の劣化を抑制することができる。
【0026】
本開示に係る半導体受光素子は、[22]「前記バッファ層の少なくとも1つの層は、Feのドープにより半絶縁化されている層を含む、上記[15]~[21]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、容量低減を図ることが可能となる。
【0027】
本開示に係る半導体受光素子は、[23]「前記電子走行層は、前記光吸収層の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有すると共に、前記光吸収層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、前記光吸収層と前記光導波路層との間に設けられている、上記[20]に記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、電子走行層の不純物濃度を相対的に低くすることにより、容量の低減を図ることができる。また、電子走行層の不純物濃度を低くすることによって空乏化しやすくしたうえで、光吸収層との間の障壁も低減することができる。
【0028】
本開示に係る半導体受光素子は、[24]「前記電子走行層の厚さは、0.3μm以上3.0μm以下あり、前記電子走行層の不純物濃度は、2.0×1014cm-3以上3.0×1016cm-3以下である、上記[20]又は[23]に記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、電子走行層の不純物濃度の上限が上記のとおりとされることにより、バイアスを加えた際に好適に空乏化され得る。また、電子走行層の厚さが上記の範囲とされることにより、応答速度の低下や、半導体受光素子の直列抵抗の増大を抑制することができる。
【0029】
本開示に係る半導体受光素子は、[25]「前記光吸収層におけるIn組成xは、0.57以上であり、前記光吸収層の厚さは、0.3μm以下である、上記[15]~[24]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。さらに、本開示に係る半導体受光素子は、[26]「前記光吸収層におけるIn組成xは、0.59以上であり、前記光吸収層の厚さは、0.1μm以下である、上記[15]~[25]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。これらの場合、光吸収層のさらなる薄化により高速化が図られる。
【0030】
本開示に係る半導体受光素子は、[27]「前記基板は、半絶縁性半導体を含む、上記[15]~[26]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、第1電極のパッドを基板上に設けることによってパッド容量を低減することができ、高速化が可能となる。
【0031】
本開示に係る半導体受光素子は、[28]「前記基板は、絶縁体又は半絶縁性半導体を含み、前記半導体積層部は、前記基板に接合されている、上記[15]~[27]のいずれかに記載の半導体受光素子」であってもよい。この場合、基板と半導体積層部とを別体に構成して直接接合することにより半導体受光素子を構成することによって、大口径化を図ることや、安価な材料にて光学的な部品を作り込むことによってコストを抑えることが可能となる。
【0032】
本開示に係る半導体受光素子は、[29]「1.3μm帯、1.55μm帯、及び1.6μm帯の少なくとも1つの波長帯の光の入射を受け、入射光に応じて電気信号を生成するための半導体受光素子であって、第1方向に沿って順に配列された第1領域、第2領域、及び第3領域を含む主面を有する基板と、前記第2領域上に形成され、前記基板側の裏面と前記基板と反対側の表面と前記裏面から前記表面に向けて延びる側面と、を含む半導体積層部と、前記第1領域上に形成された第1導電型の第1半導体部と、前記第3領域上に形成され、前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体部と、前記第1半導体部に電気的に接続された第1電極と、前記第2半導体部に電気的に接続された第2電極と、前記第2領域上に形成され、前記主面に沿うと共に前記第1方向に交差する第2方向に沿って前記側面に向けて延在して前記側面に結合された光導波路と、を備え、前記半導体積層部は、InxGa1-xAsを含む光吸収層を含み、前記光吸収層におけるIn組成xは、0.55以上であり、前記光吸収層の厚さは、1.8μm以下であり、前記光導波路を介して前記側面から前記光の入射を受ける側面入射型であり、前記側面に対する前記光の入射方向に沿った前記光吸収層の幅は10μm以下である、半導体受光素子」である。
【0033】
上記[29]の半導体受光素子は、1.3μm帯(O-band(Original-band))、1.55μm帯(C-band (Conventional-band))、及び1.6μm帯(L-band (Long-wavelength-band))といった光通信用の波長帯の光を対象とする。この半導体受光素子では、基板上に設けられた光吸収層が、InxGa1-xAsを含む。そして、光吸収層のIn組成xが0.55以上(且つ1未満)である。このように、光吸収層においてInxGa1-xAsのIn組成xを0.55以上とすると、例えばIn組成xが0.53である場合と比較して、吸収係数が向上される(例えば1.55μm帯では組成xを0.62にすることで吸収係数が2倍程度に向上される)。したがって、光吸収層の厚さを1.8μm以下程度に薄化としても感度の低下が避けられる。さらに、同様の理由により、光の入射方向における光吸収層の幅を10μm以下とすることができ、光吸収層の容量を小さくしてさらなる高速化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、高速化が可能な半導体受光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る半導体受光素子を示す模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿っての模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿っての模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、光吸収層の組成と吸収係数との関係を説明するグラフである。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、第5実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、第6実施形態に係る半導体受光素子の模式的な平面図である。
【
図13】
図13は、第7実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
【
図14】
図14は、第7実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
[第1実施形態]
【0037】
図1は、第1実施形態に係る半導体受光素子を示す模式的な平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿っての模式的な断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿っての模式的な断面図である。
図1~3に示される半導体受光素子1は、1.3μm帯(O-band (Original-band))、1.55μm帯(C-band(Conventional-band))、及び1.6μm帯(L-band(Long-wavelength-band))といった光通信用の波長帯の光を対象としている。すなわち、半導体受光素子1は、上記複数の波長帯のうちの少なくとも1つの波長帯の光の入射を受け、入射光に応じて電気信号を生成するためのものである。1.3μm帯とは、例えば、1.26μm以上1.36μm以下の波長範囲である。1.55μm帯とは、例えば、1.53μm以上1.565μm以下の波長範囲である。1.6μm帯とは、例えば、1.565μmよりも大きく1.625μm以下の波長範囲である。また、通信用の波長帯の光とは、上記のいずれかの波長帯の波長範囲内にピークを有する光である(すなわち、ピーク以外の波長が上記の波長帯の波長範囲外となってもよい)。
【0038】
半導体受光素子1は、基板10と、半導体積層部20と、電極4(第2電極)と、一対の電極5(第1電極)と、を備えている。電極4は、半導体積層部20に接合される接合部4aと、パッド部4bと、接合部4aとパッド部4bとを接続する接続部4cと、を含む。接続部4cは、接合部4aからパッド部4bに向けて拡幅している。電極5は、半導体積層部20に接合される接合部5aと、パッド部5bと、接合部5aとパッド部5bとを接続する接続部5cと、を含む。接続部5cは、接合部5aからパッド部5bに向けて拡幅している。
【0039】
基板10は、半絶縁性半導体を含む。ここでは、基板10は、例えば、InPからなる半絶縁半導体基板である。基板10は、表面(主面)10aと表面10aの反対側の裏面10bとを含む。また、基板10は、表面10a及び裏面10bに沿うX軸方向(第1方向)に沿って順に配列された領域RA、領域RB、及び、領域RCを含む。領域RBは、領域RAと領域RCとの間の領域であって、半導体積層部20が設けられる領域である。
【0040】
半導体積層部20は、上記のとおり、基板10の領域RB上に形成されており、表面10aから突出する半導体メサとされている。半導体積層部20は、基板10側の裏面20bと、基板10と反対側の表面20aと、裏面20bから表面20aに向けて延びる側面20sと、を含む。側面20sは、裏面20bと表面20aとを接続している。半導体積層部20は、基板10側から順に積層されたバッファ層21、容量低減層22、光吸収層23、キャップ層24(第1半導体層)、及び、コンタクト層25(第1半導体層)を含む。表面20aは、コンタクト層25の光吸収層23と反対側の表面であり、裏面20bは、バッファ層21の光吸収層23と反対側の表面であり、基板10の表面10aに接触している。
【0041】
バッファ層21は、第1導電型(ここではN型であり、一例としてN+型)を有する。バッファ層21は、領域RBを中心として領域RA及び領域RCにわたって設けられている。ここでは、半導体積層部20は、バッファ層21において基板10の表面10aに接している。半導体積層部20のバッファ層21以外の層は、領域RB上に設けられている。すなわち、バッファ層21は、表面10aに交差する方向からみて半導体積層部20の他の層から突出する部分21pを有しており、当該部分21pにおいて電極5(接合部5a)との接合が形成されている。
【0042】
バッファ層21は、基板10側から順に積層された第1バッファ層、第2バッファ層、第3バッファ層を含む。一例として、第1バッファ層は、N+-InPからなり、第2バッファ層は、N+-InAs0.05Pからなり、第3バッファ層は、N+-InAs0.10Pからなる。容量低減層22は、第1導電型(ここではN型であり、一例としてN-型)を有し、一例としてN--InAs0.15Pからなる。
【0043】
これにより、バッファ層21及び容量低減層22は、基板10の格子定数と光吸収層23の格子定数との間の格子定数を有する歪緩和層として機能する。すなわち、半導体積層部20は、基板10から光吸収層23に向かうにつれて段階的に格子定数が光吸収層23の格子定数に近づくように設けられた複数の歪緩和層(ステップ層)を含むこととなる。バッファ層21の厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下である。
【0044】
また、容量低減層22は、バッファ層21よりも光吸収層23側に配置されており、且つ、バッファ層21の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有する。光吸収層23は、第1導電型(例えばN-型)を有する。光吸収層23は、InGaAsを含む。ここでは、光吸収層23は、N--InxGa1-xAsからなる。そして、光吸収層23のIn組成xは、0.55以上(且つ1未満)である。一例として、In組成xは、0.57以上でもよく、ここでは0.59以上である(一例として、0.59である)。
【0045】
また、光吸収層23の厚さ(半導体積層部20の積層方向(Z軸方向)に沿っての厚さ)は、0.6μm以上1.8μm以下である。一例として、光吸収層23の厚さは、1.2μm以下でもよく、ここでは、0.7μm以下である(一例として0.7μmである)。なお、光吸収層23は、バンドギャップが0.72eV以下の範囲で、Al、P、Sb、N、その他の材料とInGaAsとの混晶の吸収層とされてもよい。InGaAsに混ぜるAl、P、Sb、及び、N(或いはその他の材料)の割合は、例えば5%以下、又は10%以下とすることができる。
【0046】
ここで、容量低減層22は、光吸収層23の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有する。一例として、容量低減層22の不純物濃度は、2.0×1014cm-3以上3.0×1016cm-3程度であり、光吸収層23の不純物濃度は、1.0×1014cm-3以上1.0×1016cm-3以下程度である。また、容量低減層22は、光吸収層23のバッドギャップよりも大きなバンドギャップを有する。光吸収層23のバンドギャップが上記のように0.72eV以下であるとき、容量低減層22のバンドギャップは、0.72eVよりも大きく、1.35eV以下の範囲とすることができる。
【0047】
これにより、半導体積層部20は、バッファ層21と光吸収層23との間に設けられた容量低減層22を有することとなる。容量低減層22として求められる事項としては、上記のように光吸収層23よりも不純物濃度が高いことと、バイアスを加えた際に空乏化することである。その理由としては、上記のように容量低減層22は光吸収層23よりも大きなバンドギャップを有するので、不純物濃度が低い場合には伝導帯に障壁ができ、障壁が大きいキャリアの移動が阻害されて好適に取り出されないおそれがあるためである。
【0048】
また、容量低減層22としては、バイアスを加えた際に空乏化する必要があることから、その不純物濃度の上限は、上記のように3.0×1016cm-3程度とされることが好適である。さらに容量低減層22としては、入射光に対して吸収しない組成であること(すなわち、バンドギャップが光吸収層23よりも広いこと)が望ましい。これは、容量低減層22において入射光を吸収してしまうと、容量低減層22でキャリアが発生する。当該キャリアは、容量低減層22から光吸収層23を介して信号として取り出されるため、遅いキャリアとなり、応答性特性を悪化させるおそれがあるためである。
【0049】
換言すれば、バッファ層21と容量低減層22と光吸収層23との関係を上記のように設定することにより、容量低減層22を、キャリアの応答を下げずに容量を低減可能な層として機能させることが可能となる。容量低減層22は、設けられていれば効果が得られるため、その厚さは特に制限はないものの、一例として、0.3μm以上3μm以下とされ得る。
【0050】
なお、光吸収層23と後述するキャップ層24との間に、P-型の半導体層を設けることで、当該半導体層を容量低減層とすることも可能である。しかし、N-型の半導体層がP-型の半導体層よりも作製が容易であることや、P-層でのキャリアのスピードよりも電子の方が大きな移動度を有すること等から、光吸収層23の直下に(光吸収層23とバッファ層21との間で光吸収層23に接して)N-型の容量低減層22を形成することがより有効であると考えられる。
【0051】
また、半導体受光素子1では、光吸収層23は、単一の層とされている。光吸収層23が単一の層であるとは、光吸収層23が、組成或いは特性の異なる2つ以上の層が積層されて構成される積層構造を有していないことを意味する。より具体的には、光吸収層23が単一の層であるとは、例えば、組成の異なる複数の層を繰り返し積層して構成される超格子構造を有していないことを意味する。
【0052】
キャップ層24は、第1導電型と異なる第2導電型(ここではP型であり、一例としてP+型)を有する。キャップ層24は、InAsP又はInGaAsPを含む。ここでは、キャップ層24は、InAsPを含む。一例として、キャップ層24は、P+-InAs0.15Pからなる。キャップ層24の厚さは、例えば0.05μm以上2.5μm以下である。
【0053】
コンタクト層25は、第2導電型(ここではP型であり、一例としてP+型)を有する。コンタクト層25は、InGaAsを含む。一例として、コンタクト層25は、P+-InGaAsからなる。コンタクト層25の厚さは、例えば0.025μm以上0.2μm以下である。このように、半導体積層部20は、光吸収層23に対して基板10と反対側に位置すると共に光吸収層23に接合された第2導電型の第1半導体層を含むこととなる。第1半導体層は、キャップ層24及びコンタクト層25を含む。
【0054】
なお、以上の例において、N+型とは、N型の不純物濃度が1×1017cm-3程度以上であることを意味する。N-型とは、N型の不純物濃度が3.0×1016cm-3程度以下であり、N+型と比較して相対的に低いことを意味する。また、P+型とは、P型不純物の濃度が1×1017cm-3程度以上であることを意味する。
【0055】
半導体受光素子1は、保護膜(パッシベーション膜)Fを備えている。保護膜Fは、例えば絶縁膜である。半導体積層部20の表面20a(頂面)の一部、及び、表面20aの周縁から基板10側に向けて延びる半導体積層部20の側面20sは、保護膜Fにより覆われている。一方、半導体積層部20の表面20aの残部、ここでは、コンタクト層25の表面の一部は、保護膜Fの開口Fpから露出されている。
【0056】
そして、表面20aの保護膜Fから露出した部分に電極4の接合部4aが形成され、電極4と半導体積層部20(コンタクト層25)との接合が形成されている。すなわち、電極4は、半導体積層部20のうち、光吸収層23に対して基板10と反対側に位置する第2導電型の第2部分(ここではコンタクト層25の表面)に接続されている。一方、バッファ層21の部分21pの表面の一部は、保護膜Fの開口Fnから露出されており、当該露出部分に電極5の接合部5aが形成され、電極5と半導体積層部20(バッファ層21)との接合が形成されている。すなわち、電極5は、半導体積層部20のうち、光吸収層23に対して基板10側に位置する第1導電型の第1部分(バッファ層21の表面)に接続されている。
【0057】
ここで、半導体受光素子1は、上記の半導体積層部20を含む受光部2と、受光部2に向けて光を伝播させる導波路部3と、を有している。導波路部3は、基板10の表面10a上に設けられたバッファ層21及び容量低減層22を含む。より具体的には、バッファ層21及び容量低減層22は、それぞれ、基板10の表面10a及び裏面10bに沿ったY軸方向(第1方向に交差する第2方向)に沿って、受光部2(半導体積層部20)の外部に延設されており、そのバッファ層21及び容量低減層22の受光部2の外部に延びる部分によって導波路部3が形成されている。
【0058】
換言すれば、バッファ層21は、半導体積層部20に含まれる部分21qと半導体積層部20の側面20sから半導体積層部20の外部に延在する部分21rとを含み、容量低減層22は、半導体積層部20に含まれる部分22qと半導体積層部20の側面20sから半導体積層部20の外部に延在する部分22rとを含む。そして、当該部分21r,22rによって導波路部3が形成されている。部分22rの基板10と反対側の表面は、保護膜Fによって覆われている。
【0059】
半導体受光素子1は、導波路部3においてバッファ層21及び容量低減層22によって導波された光Lの入射を、半導体積層部20の側面20sから受ける側面入射型とされている。よって、半導体受光素子1では、バッファ層21及び容量低減層22は、基板10と光吸収層23との間に設けられた第1導電型の光導波路層でもある。バッファ層21、容量低減層22、及び、光吸収層23は、この順に屈折率が高くなるようにされている。
【0060】
したがって、導波路部3を伝播する光Lは、主に容量低減層22に分布しつつ半導体積層部20の側面20sから半導体積層部20に入射し、バッファ層21及び容量低減層22側から光吸収層23に遷移して光吸収層23において吸収される。すなわち、半導体受光素子1は、側面入射型である。側面20sから入射した光Lは、光導波路層を介して光吸収層23に至る。側面20sに対する光Lの入射方向(Y軸方向)に沿った光吸収層23の幅は、例えば、2μm以上10μm以下である。なお、光吸収層23の屈折率を、キャップ層24の屈折率よりも低くすることにより、光吸収層23内に好適に光Lを閉じ込めることが可能となる。また、基板10の屈折率は、バッファ層21の屈折率よりも低い方が好ましいが、バッファ層21の屈折率よりも高くてもよい。
【0061】
以上説明したように、半導体受光素子1は、1.3μm帯、1.55μm帯、及び1.6μm帯といった光通信用の波長帯の光を対象とする。半導体受光素子1では、基板10上に設けられた光吸収層23が、In
xGa
1-xAsを含む。そして、光吸収層23のIn組成xが0.55以上(且つ1未満)である。このように、光吸収層23においてIn
xGa
1-xAsのIn組成xを0.55以上(
図4のグラフG2)とすると、例えば、
図4のグラフG1で示されるIn組成xが0.53である場合と比較して、吸収係数が向上される(
図4の例では、1.55μm帯では2倍程度に向上される)。なお、
図4のグラフG0は、InGaAsPからなる光吸収層を用いた場合を示している。
【0062】
したがって、光吸収層23の厚さを1.8μm以下程度に薄化しても感度の低下が避けられる。つまり、高速化が可能となる。さらに、半導体受光素子1は、半導体積層部20の側面20sから半導体積層部20に光が入射する側面入射型であるが、当該側面20sから入射した光が光吸収層23よりも基板10側の光導波路層(少なくとも容量低減層22)を介して、光吸収層23に至るようにされている。換言すれば、半導体受光素子1では、光吸収層23の厚さに交差するY軸方向に対して少なくとも斜めに入射することとなる。これにより、光吸収層の端面からY軸方向に直接的に光が入射する場合と比較して、光吸収層23における光が吸収される領域が増大される。この結果、フォトキャリア密度の局所的な増大が生じることなく、周波数特性やリニアリティといった特性の劣化が抑制される。よって、半導体受光素子1によれば、特性の劣化を抑制しつつ高速化が可能となる。さらに、半導体受光素子1によれば、感度の低下が避けつつ、光の入射方向における光吸収層23の幅を10μm以下とすることができ、光吸収層23の容量を小さくしてさらなる高速化を図ることが可能となる。
【0063】
また、半導体受光素子1では、半導体積層部20は、基板10と光吸収層23との間に設けられた第1導電型のバッファ層21を含む。このため、バッファ層21の不純物濃度を高めることにより、バッファ層21を電極5とのコンタクトの形成に好適に利用することが可能である。また、光吸収層23の下部にバッファ層21を設けることで、応答の劣化を抑制できる。
【0064】
また、半導体受光素子1では、バッファ層21は、基板10の格子定数と光吸収層23の格子定数との間の格子定数を有する歪緩和層(第1~3バッファ層)を含む。このため、半導体積層部20の結晶性が向上され、暗電流の増加が抑制される。
【0065】
また、半導体受光素子1では、バッファ層21は、基板10から光吸収層23に向かうにつれて段階的に格子定数が光吸収層23の格子定数に近づくように設けられた複数の歪緩和層(第1~第3バッファ層)を含む。このため、半導体積層部の結晶性が確実に向上され、暗電流の増加が抑制される。
【0066】
また、半導体受光素子1では、半導体積層部20は、光吸収層23に対して基板10と反対側において光吸収層23上に設けられると共に、InAsPを含む第2導電型のキャップ層24(第1半導体層)と、光吸収層23に対して基板10と反対側においてキャップ層24上に設けられると共にInGaAsを含む第2導電型のコンタクト層25(第1半導体層)と、を含む。そして、電極4が接続される第2部分は、コンタクト層25の表面である。このため、電極4のコンタクト抵抗を下げ、直列抵抗を下げることが可能となる。これにより、応答性の悪化を抑制可能である。また、キャップ層24として光吸収層23の屈折率よりも低い屈折率の材料を用いることにより、光吸収層23に光を好適に閉じ込めることが可能となる。
【0067】
また、半導体受光素子1では、半導体積層部20は、基板10(バッファ層21)と光吸収層23との間に配置され、バッファ層21の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有する第1導電型の容量低減層22を含む。このように、相対的に不純物濃度が低い容量低減層22を設けることにより、バイアスが加えられた際に当該容量低減層22が空乏化するため、容量の低減によってさらなる高速化が図られる。
【0068】
また、半導体受光素子1では、容量低減層22は、光吸収層23の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有すると共に、光吸収層23のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、光吸収層23とバッファ層21のとの間に設けられている。容量低減層22は、上記のように相対的に不純物濃度が低く、容量低減に寄与する層である。しかし、容量低減層22の不純物濃度を単に低くしてしまうと各層間の障壁が大きくなり、応答の劣化につながるおそれがある。一方で、容量低減層22の不純物濃度を高くすると、空乏層が広がらないために十分に容量を低減することが困難となる。
【0069】
したがって、上記のように、容量低減層22の不純物濃度を低くするに際して、容量低減層22が光吸収層23よりも大きなバンドギャップを有するようにすることによって、容量低減層22での光の吸収、及び、当該光の吸収による容量低減層22でのキャリアの発生が抑制され、応答の劣化が抑制される。また、容量低減層22が光吸収層23よりも大きなバンドギャップを有する一方で、容量低減層22が光吸収層23よりも高い不純物濃度を有するため、容量低減層22における障壁が低減される。
【0070】
また、半導体受光素子1では、容量低減層22の厚さは、0.3μm以上3.0μm以下であり、容量低減層22の不純物濃度は、2.0×1014cm-3以上3.0×1016cm-3以下である。このため、容量低減層22の不純物濃度の上限が上記のとおりとされることにより、バイアスを加えた際に好適に空乏化され得る。また、容量低減層22の厚さが上記の範囲とされることにより、応答速度の低下や、半導体受光素子1の直列抵抗の増大を抑制することができる。
【0071】
また、半導体受光素子1では、光吸収層23におけるIn組成xは、0.57以上であり、光吸収層23の厚さは、1.2μm以下である。さらに、半導体受光素子1では、光吸収層23におけるIn組成xは、0.59以上であり、光吸収層23の厚さは、0.7μm以下である。このため、光吸収層23のさらなる薄化により高速化が図られる。
【0072】
また、半導体受光素子1では、基板10は、半絶縁性半導体を含む。このため、電極5のパッド部5bを基板10上に設けることによってパッド容量を低減することができ、高速化が可能となる。
【0073】
なお、半導体受光素子1では、バッファ層21は、光導波路層の少なくとも一部を構成しているが、Feのドープにより半絶縁化されている層を含んでもよい。この場合、容量低減を図ることが可能となる。
【0074】
また、半導体受光素子1では、半導体積層部20は、光吸収層23とキャップ層24との間に設けられ、光吸収層23のバンドギャップとキャップ層24のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する第3半導体層を含んでもよい。この場合、光吸収層23とキャップ層24との間に、それらの間のバンドギャップを有する層を設けることによって、各層間の障壁を低減し、応答の劣化を抑制することができる。
【0075】
なお、各波長帯と光吸収層23の厚さ及び光吸収層23のIn組成xとの組み合わせの例について、以下に列記する。なお、例えば以下の(5)等については、C-band帯に限らず、O-band帯及びL-band帯でも同様に構成可能である。
【0076】
(1)C-band帯。
感度:0.86A/W以上。
遮断周波数:20GHz以上(28GB等の場合)。
吸収層厚:1.5μm。
In組成x:x=0.55。
【0077】
(2)C-band帯。
感度:0.90A/W以上。
遮断周波数:20GHz以上(28GBの高感度品の場合)。
吸収層厚:1.5μm。
In組成x:x=0.57。
【0078】
(3)C-band帯。
感度:0.80A/W以上。
遮断周波数:30GHz以上(56GB等の場合)。
吸収層厚:1.2μm。
In組成x:x=0.57。
【0079】
(4)C-band帯。
感度0.85A/W以上。
遮断周波数:30GHz以上(56GBの高感度品の場合)。
吸収層厚:1.2μm。
In組成x:x=0.59。
【0080】
(5)C-band帯。
感度0.7A/W以上。
遮断周波数:45GHz以上(96GB等の場合)。
吸収層厚:0.7μm。
In組成x:x=0.59。
【0081】
(6)C-band帯。
感度0.90A/W以上。
遮断周波数:16GHz以上(25GB等の場合)。
吸収層厚:1.8μm。
In組成x:x=0.55。
【0082】
(7)C-band帯。
感度0.93A/W以上。
遮断周波数:16GHz以上(25GB等の場合)。
吸収層厚:1.8μm。
In組成x:x=0.57。
[第2実施形態]
【0083】
図5は、第2実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
図5に示されるように、半導体受光素子1Aは、第1実施形態に係る半導体受光素子1と比較して、半導体積層部20に代えて半導体積層部20Aを備える点で相違している。半導体積層部20Aは、半導体積層部20の各層に加えて、光導波路層27Aをさらに備えている。光導波路層27Aは、光吸収層23と基板10との間、より具体的には、バッファ層21と基板10との間に設けられている。
【0084】
光導波路層27Aは、基板10の表面10aと接している。半導体受光素子1Aでは、光導波路層27A、バッファ層21、容量低減層22、光吸収層23の順で屈折率が高くされている。光導波路層27Aは、例えばInGaAsPを含む。光導波路層27Aは、光損失を減らすためにドーパントを含まない材料(例えばノンドープの材料)から構成され得る。或いは、光導波路層27Aは、同様の理由から絶縁材料により構成されてもよい。なお、基板10の屈折率は、光導波路層27Aの屈折率よりも低いことが好ましいが、光導波路層27Aの屈折率よりも高くてもよい。
【0085】
光導波路層27Aは、半導体積層部20Aに含まれる部分27qと半導体積層部20Aの側面20sから半導体積層部20Aの外部に延在する部分27rとを含む。部分27rの基板10と反対側の表面は、保護膜Fによって覆われている。半導体受光素子1Aでは、この部分27rによって導波路部3が形成されている。半導体受光素子1Aは、導波路部3において光導波路層27A(部分27r)によって導波された光Lの入射を半導体積層部20Aの側面20sから受ける側面入射型とされている。半導体受光素子1Aでは、導波路部3(光導波路層27A)を伝播する光Lは、半導体積層部20Aの側面20sから半導体積層部20Aに入射し、光導波路層27A側から光吸収層23に遷移して光吸収層23において吸収される。すなわち、半導体受光素子1Aは、側面入射型である。側面20sから入射した光Lは、光導波路層27A(及びバッファ層21、容量低減層22)を介して光吸収層23に至る。
【0086】
一方、半導体受光素子1Aでは、バッファ層21及び容量低減層22は、側面20sで終端されており(バッファ層21及び容量低減層22の端面が光吸収層23の端面と面一とされており)、側面20sの外部に延在していない。半導体受光素子1Aでは、半導体積層部20Aは、光導波路層27Aと光吸収層23との間に設けられた第1導電型のバッファ層21(第2半導体層)と、バッファ層21の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有し、バッファ層21と光吸収層23との間に設けられた第1導電型の容量低減層22と、を含むこととなる。容量低減層22は、光吸収層23の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有すると共に、光吸収層23のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、光吸収層23と光導波路層27Aとの間に設けられる。
【0087】
以上の半導体受光素子1Aにあっても、半導体受光素子1と同様の効果を奏することが可能となる。特に、半導体受光素子1Aでは、受光部2までの光の伝播を担う光導波路層27Aと、バッファ層21とが別の層として構成されている。したがって、光導波路層27Aの不純物濃度を高めることによる(自由電子吸収による)光損失を生じさせることなく、バッファ層21の不純物濃度を高めることによってバッファ層21を電極5とのコンタクトの形成に好適に利用することが可能である。
【0088】
また、半導体受光素子1Aでは、半導体積層部20Aは、光導波路層27Aと光吸収層23との間に設けられた第1導電型のバッファ層21(第2半導体層)と、バッファ層21の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有し、バッファ層21と光吸収層23との間に設けられた第1導電型の容量低減層22と、を含む。このように、相対的に不純物濃度が低い容量低減層22を設けることにより、バイアスが加えられた際に当該容量低減層22が空乏化するため、容量の低減によってさらなる高速化が図られる。
[第3実施形態]
【0089】
図6は、第3実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
図6に示されるように、半導体受光素子1Bは、第1実施形態に係る半導体受光素子1と比較して、半導体積層部20に代えて半導体積層部20Bを備える点で相違している。半導体積層部20Bは、半導体積層部20と比較して、容量低減層22に代えて電子走行層22Bを含む点、光吸収層23に代えて光吸収層23Bを含む点、及び、キャップ層24に代えて拡散ブロック層24Bを含む点で相違している。
【0090】
光吸収層23Bは、InxGa1-xAsを含み、第2導電型(ここではP型であり、一例としてP+型)を有する。光吸収層23BのIn組成xは、0.55以上(且つ1未満)である。一例として、In組成xは、0.57以上でもよく、ここでは0.59以上である(一例として、0.59である)。また、光吸収層23Bの厚さは、1.8μm以下である。一例として、光吸収層23Bの厚さは、0.3μm以下でもよく、ここでは、0.1μm以下であってもよい。一例として、光吸収層23Bの厚さは、0.02μm以上0.5μm以下とされてもよい。側面20sに対する光Lの入射方向(Y軸方向)に沿った光吸収層23Bの幅は、例えば、2μm以上10μm以下である。
【0091】
電子走行層22Bは、光吸収層23Bとバッファ層21との間に設けられており、第1導電型(ここではN型であり、一例としてN-型)を有する。電子走行層22Bは、一例としてN--InAs0.15Pからなる。電子走行層22Bは、バッファ層21の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有する。電子走行層22Bの厚さは、例えば、0.1μm以上3.0μm以下であり、0.3μm以上3.0μm以下であってもよい。また、電子走行層22Bの不純物濃度は、2.0×1014cm-3以上3.0×1016cm-3以下程度である。
【0092】
拡散ブロック層24Bは、第2導電型(ここではP型であり、一例としてP+型)を有する。拡散ブロック層24B、InAsP又はInGaAsPを含む。ここでは、拡散ブロック層24Bは、InAsPを含む。一例として、拡散ブロック層24Bは、P+-InAs0.15Pからなる。拡散ブロック層24Bの厚さは、例えば0.05μm以上2.5μm以下である。このように、半導体積層部20Bは、光吸収層23Bに対して基板10と反対側に位置すると共に光吸収層23Bに接合された第2導電型の第4半導体層を含むこととなる。第4半導体層は、拡散ブロック層24B及びコンタクト層25を含む。
【0093】
なお、半導体受光素子1Bでは、半導体受光素子1のバッファ層21及び容量低減層22と同様に、バッファ層21及び電子走行層22Bが、半導体積層部20Bの外部に延設されて導波路部3を構成している。すなわち、半導体受光素子1Bは、側面入射型である。半導体受光素子1Bでは、バッファ層21及び電子走行層22Bは、基板10と光吸収層23Bとの間に設けられた第1導電型の光導波路層でもある。半導体受光素子1Bでは、側面20sから入射した光Lは、光導波路層を介して光吸収層23Bに至る。
【0094】
以上の半導体受光素子1Bにあっても、半導体受光素子1と同様の効果を奏することが可能となる。また、半導体受光素子1Bでは、UTC構造にすることで電子のみの移動を考慮することとなり、光吸収層23Bが薄い場合には応答性の向上が見込める。また、InPに比べ、InAsP、InGaAsPの方が電子の移動度が早いことが期待されるため同じ膜厚での応答性の向上も期待できる。
【0095】
また、半導体受光素子1Bでは、半導体積層部20Bは、光吸収層23Bに対して基板10と反対側において光吸収層23B上に設けられると共に、InAsPを含む第2導電型の拡散ブロック層24Bと、光吸収層23Bに対して基板10と反対側において拡散ブロック層24B上に設けられると共にInGaAsを含む第2導電型のコンタクト層25と、を含む。そして、第4半導体層は、コンタクト層25及び拡散ブロック層24Bを含み、電極4が接続される第2部分は、コンタクト層25の表面である。このため、電極4のコンタクト抵抗を下げ、直列抵抗を下げることが可能となる。これにより、応答性の悪化を抑制可能である。また、拡散ブロック層24Bとして光吸収層23Bの屈折率よりも低い屈折率の材料を用いることにより、光吸収層23Bに光を好適に閉じ込めることが可能となる。
【0096】
また、半導体受光素子1Bでは、電子走行層22Bの厚さは、0.3μm以上3.0μm以下あり、電子走行層22Bの不純物濃度は、2.0×1014cm-3以上3.0×1016cm-3以下である。このため、電子走行層22Bの不純物濃度の上限が上記のとおりとされることにより、バイアスを加えた際に好適に空乏化され得る。また、電子走行層22Bの厚さが上記の範囲とされることにより、応答速度の低下や、半導体受光素子1Bの直列抵抗の増大を抑制することができる。
【0097】
なお、半導体受光素子1Bにおいても、半導体受光素子1Aと同様に、バッファ層21及び拡散ブロック層24Bが側面20sで終端される(バッファ層21及び拡散ブロック層24Bの端面が光吸収層23Bの端面と面一とされる)と共に、バッファ層21と基板10との間に光導波路層27Aを設けることが可能である。この場合、半導体積層部20Bは、光導波路層27Aと光吸収層23Bとの間に設けられた第1導電型のバッファ層21(第5半導体層)と、バッファ層21の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有し、バッファ層21と光吸収層23Bとの間に設けられた第1導電型の電子走行層22Bと、を含むこととなる。このように、電子走行層22Bの不純物濃度を相対的に低くすることにより、バイアスが加えられた際に当該電子走行層22Bが空乏化するため、容量の低減によってさらなる高速化が図られる。
【0098】
また、この場合、電子走行層22Bは、光吸収層23Bの不純物濃度よりも低い不純物濃度を有すると共に、光吸収層23Bのバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、光吸収層23Bと光導波路層27Aとの間に設けられてもよい。この場合、電子走行層22Bの不純物濃度を相対的に低くすることにより、容量の低減を図ることができる。また、電子走行層22Bの不純物濃度を低くすることによって空乏化しやすくしたうえで、光吸収層23Bとの間の障壁も低減することができる。
【0099】
また、半導体受光素子1Bでは、半導体積層部20Bは、光吸収層23Bと拡散ブロック層24Bとの間に設けられ、光吸収層23Bのバンドギャップと拡散ブロック層24Bのバンドギャップとの間のバンドギャップを有する第6半導体層を含んでもよい。この場合、光吸収層23Bと拡散ブロック層24Bとの間に、それらの間のバンドギャップを有する層を設けることによって、各層間の障壁を低減し、応答の劣化を抑制することができる。
[第4実施形態]
【0100】
図7は、第4実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
図7に示されるように、半導体受光素子1Cは、第1実施形態に係る半導体受光素子1と比較して、光導波路層27Cとクラッド層29Cとをさらに備える点で相違している。半導体受光素子1Cでは、半導体受光素子1と同様に、バッファ層21が半導体積層部20に含まれる部分21qと半導体積層部20の側面20sから半導体積層部20の外部に延在する部分21rとを含むが、容量低減層22が側面20sで終端されている。
【0101】
そして、半導体受光素子1Cでは、導波路部3において、バッファ層21の部分21r上に光導波路層27C及びクラッド層29Cがこの順で積層されて設けられている。光導波路層27Cは、少なくとも、バッファ層21の屈折率及びクラッド層29Cの屈折率よりも高い屈折率を有している。光導波路層27Cは、例えばInGaAsPを含む。光導波路層27Aは、光損失を減らすためにドーパントを含まない材料(例えばノンドープの材料)から構成され得る。或いは、光導波路層27Cは、同様の理由から絶縁材料により構成されてもよい。
【0102】
クラッド層29Cは、例えば、InP、InAsP、InGaAsP等から構成され得る。クラッド層29Cは、少なくとも光導波路層27Cの屈折率よりも低い屈折率を有する。クラッド層29Cの光導波路層27Cと反対側の表面は、保護膜Fにより覆われている。光導波方向(Y軸方向)における光導波路層27C及びクラッド層29Cの端面は、半導体積層部20の側面20sに接合されている。これにより、光導波路層27Cは、半導体積層部20に光学的に結合される。
【0103】
ここでは、光導波路層27Cの厚さは、容量低減層22の厚さと光吸収層23の厚さとの合計よりも厚くされている。この結果、光導波路層27Cは、半導体積層部20の積層方向(Z軸方向)について、バッファ層21と容量低減層22との界面から光吸収層23とキャップ層24との界面を越えて、キャップ層24に至っている。光吸収層23の屈折率は、容量低減層22及びキャップ層24の屈折率よりも高くされ得る。これにより、光導波路層27Cを伝播して側面20sから半導体積層部20に入射した光Lは、光吸収層23に遷移して光吸収層23において吸収される。すなわち、半導体受光素子1Cは、側面入射型である。
【0104】
特に、半導体受光素子1Cでは、光導波路層27Cと光吸収層23とが側面20sにおいて直接的に結合されている。このため、半導体受光素子1Cでは、光導波路層27Cを伝播した光Lが、光吸収層23に対して、側面20sに対する入射方向(Y軸方向)に直接的に入射される。なお、光導波路層27C及びクラッド層29Cは、例えば、バッファ層21上に半導体層を再成長することにより形成され得る。
【0105】
以上の半導体受光素子1Cにあっても、側面20sから入射した光Lが光導波路層を介して光吸収層23に至ることによる効果を除いて、半導体受光素子1と同様の効果を奏することができる。また、光導波路層27Cを光吸収層23の真横に配置することによって、光の伝搬がコア層とクラッド層の行き来する影響を減らすことが出来る。それにより、結合効率を高め、短い距離で感度を稼ぐことが出来る。
【0106】
なお、半導体受光素子1Cにおいて、半導体積層部20を、半導体受光素子1Bと同様に半導体積層部20Bに変更してもよい。この場合、光吸収層23が第2導電型の光吸収層23Bに変更されると共に、容量低減層22及びキャップ層24のそれぞれが、電子走行層22B及び拡散ブロック層24Bに変更される。光導波路層27C及びクラッド層29Cと各層との関係は同様である。
[第5実施形態]
【0107】
図8は、第5実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
図8に示されるように、半導体受光素子1Dは、第1実施形態に係る半導体受光素子1と比較して、半導体積層部20の側面20sが保護膜Fにより覆われている点において相違している。したがって、半導体受光素子1Dでは、半導体積層部20の全ての層の端面が面一とされて側面20sを構成している。これにより、半導体受光素子1Dでは、光吸収層23の端面が保護膜Fを介して露出するため、例えば空間や光ファイバ等を伝播した光Lを、側面20sにおいて光吸収層23の端面に結合することができる。したがって、半導体受光素子1Dは、半導体積層部20の側面20sから光Lの入射を受ける側面入射型である。特に、半導体受光素子1Dでは、光吸収層23に対して、側面20sに対する入射方向(Y軸方向)に直接的に入射される。
【0108】
以上の半導体受光素子1Dにあっても、側面20sから入射した光Lが光導波路層を介して光吸収層23に至ることによる効果を除いて、半導体受光素子1と同様の効果を奏することができる。また、光吸収層23に直接光を入射することで導波路部3をチップ上に作る必要がないためにチップサイズを最小限にすることが可能となる。また、導波路層もいらず、コア層(光吸収層)とクラッド層のみで(例えばエピタキシャル成長による)積層構造を考えることが出来るため、簡略化が可能となる。
【0109】
なお、半導体受光素子1Dにおいて、半導体積層部20を、半導体受光素子1Bと同様に半導体積層部20Bに変更してもよい。この場合、光吸収層23が第2導電型の光吸収層23Bに変更されると共に、容量低減層22及びキャップ層24のそれぞれが、電子走行層22B及び拡散ブロック層24Bに変更される。
[第6実施形態]
【0110】
図9は、第6実施形態に係る半導体受光素子の模式的な平面図である。
図10は、
図9のX-X線に沿っての模式的な断面図である。
図11は、
図9のXI-XI線に沿っての模式的な断面図である。
図7~9に示されるように、半導体受光素子1Kは、基板10の表面10a上に設けられた半導体積層部20Kを備えている。基板10の表面10a(主面)は、X軸方向(第1方向)に沿って順に配列された第1領域10a1、第2領域10a2、及び、第3領域10a3を含む。半導体積層部20Kは、第2領域10a2上に設けられている。
【0111】
また、半導体受光素子1Kは、第1領域10a1上に設けられた第1導電型(ここではN型であり、一例としてN+型)の第1半導体部41Kと、第3領域10a3上に設けられた第2導電型(ここではP型であり、一例としてP+型)の第2半導体部42Kと、を備えている。これにより、後述する光吸収層23K及び半導体積層部20Kは、第1半導体部41Kと第2半導体部42Kとの間に配置され、第1半導体部41Kと第2半導体部42Kとに埋め込まれるように設けられることとなる。第1半導体部41K及び第2半導体部42Kは、例えば、InP、InAsP、及び、InGaAaP等により構成されている。
【0112】
保護膜Fは、半導体積層部20Kの表面20aを覆うっている。一方、保護膜Fには、第1半導体部41Kの表面(頂面)の一部を露出するように開口Fnが設けられ、且つ、第2半導体部42Kの表面(頂面)の一部を露出するように開口Fpが設けられている。電極4(接合部4a)は、開口Fpを介して第2半導体部42Kに接合されて電気的に接続され、電極5(接合部5a)は、開口Fnを介して第1半導体部41Kに接合されて電気的に接続されている。なお、第1半導体部41K及び第2半導体部42Kと電極4,5との間に、コンタクト層が設けられてもよい。
【0113】
半導体積層部20Kは、光吸収層23Kと、光吸収層23Kと基板10との間に設けられた光導波路層27Kと、基板10と反対側において光吸収層23K上に設けられたクラッド層31Kと、を含む。光吸収層23Kは、I型、又は、第1導電型(例えばN-型)である。光吸収層23Kは、InGaAsを含む。ここでは、光吸収層23Kは、N--InxGa1-xAsからなる。そして、光吸収層23KのIn組成xは、0.55以上(且つ1未満)である。一例として、In組成xは、0.57以上でもよく、ここでは0.59以上である(一例として、0.59である)。また、光吸収層23Kの厚さは、0.6μm以上1.8μm以下である。一例として、光吸収層23Kの厚さは、1.2μm以下でもよく、ここでは、0.7μm以下である(一例として0.7μmである)。側面20sに対する光Lの入射方向(Y軸方向)に沿った光吸収層23Kの幅は、例えば、2μm以上10μm以下である。
【0114】
クラッド層31Kは、例えば、InP、InAsP、InGaAsP等から構成され得る。クラッド層31Kは、光吸収層23Kの屈折率よりも低い屈折率を有する。ここでは、半導体積層部20Kの表面20aは、クラッド層31Kの光吸収層23Kと反対側の表面である。光導波路層27Kは、例えばInGaAsPを含む(InGaAsPから構成される)。光導波路層27Kは、光損失を減らすためにドーパントを含まない材料(例えばノンドープの材料)から構成され得る。或いは、光導波路層27Kは、同様の理由から絶縁材料により構成されてもよい。
【0115】
光導波路層27Kは、光導波路層27Aと同様に、半導体積層部20Kに含まれる部分27qと半導体積層部20Kの側面20sから半導体積層部20Kの外部に延在する部分27rを含む。部分27rの基板10と反対側の表面は、保護膜Fによって覆われている。半導体受光素子1Kでは、この部分27rによって導波路部3が形成されている。半導体受光素子1Kは、導波路部3において光導波路層27Kによって導波された光Lの入射を、半導体積層部20Kの側面20sから受ける側面入射型とされている。
【0116】
半導体受光素子1Kでは、導波路部3(光導波路層27K)を伝播する光Lは、半導体積層部20Kの側面20sから半導体積層部20Kに入射し、光導波路層27K側から光吸収層23Kに遷移して光吸収層23Kにおいて吸収される。すなわち、側面20sから入射した光Lは、光導波路層27Kを介して光吸収層23Kに至る。なお、半導体受光素子1Kでは、光導波路層27Kにおいて、基板10と光吸収層23Kとの間の格子緩和を図ることができる。
【0117】
以上の半導体受光素子1Kにあっても、第1実施形態に係る半導体受光素子1と同様の効果を奏することが可能である。また、光導波路層27Kよりも高屈折、かつ光吸収層23Kよりも低屈折率の材料を用いることにより、より効率的に吸収層に光を導くことが出来る。
【0118】
なお、
図12に示されるように、半導体受光素子1Kにおいて、基板10をエッチングや研磨等により除去しつつ、別途に用意した基板に対して半導体積層部20Kを直接接合してもよい。
図12の例では、互いに積層された第1層51M及び第2層52Mを含む基板10Mを用意し、半導体積層部20Kを第1層51Mに直接接合している。このとき、半導体積層部20Kの光導波路層27Kを、第2層52Mに形成された導波路53Mに直接接合することができる。第1層51M及び第2層52Mは、例えばSiO
2を含み、導波路53Mは、例えばSiを含む。このように、基板10Mと半導体積層部20Kとを別体に構成して接合することにより半導体受光素子1Kを製造することによって、面積の大きな導波路を安価に作製することができる。
[第7実施形態]
【0119】
図13及び
図14は、第7実施形態に係る半導体受光素子の模式的な断面図である。
図13は、第6実施形態の
図9のX-X線に沿っての断面に相当する断面を示し、
図14は、第6実施形態の
図9のXI-XIに沿った断面に相当する断面を示している。
図13,14に示される半導体受光素子1Lは、第6実施形態に係る半導体受光素子1Kと比較して、半導体積層部20Kに代えて半導体積層部20Lを備える点、及び、光導波路層32Lを備える点において相違している。
【0120】
半導体積層部20Lは、半導体積層部20Kと比較して、光吸収層23Kに代えて光吸収層23Lを有する点、及び、光導波路層27Kに代えてクラッド層33Lを有する点で相違している。クラッド層33Lは、クラッド層31Kと同様の材料より構成され得る。クラッド層33Lは、半導体積層部20Lの側面20sを越えて半導体積層部20Lの外部に延在している。すなわち、クラッド層33Lは、半導体積層部20Lに含まれる部分33qと半導体積層部20Lの側面20sから半導体積層部20Lの外部に延在する部分33rとを含む。光導波路層32Lは、半導体積層部20Lの外側において、クラッド層33Lの部分33r上に積層されている。光導波路層32Lの基板10と反対側の表面は、保護膜Fによって覆われている。
【0121】
光吸収層23Lは、光吸収層23Kの導電型を第2導電型(例えばP-型)としたものに相当する。半導体受光素子1Lでは、第1導電型の第1半導体部41Kと半導体積層部20Lの側面20sとの間に、第1導電型(例えばN-型)の電子走行層43が設けられている。電子走行層43の材料等については、電子走行層22Bと同様である。このように、UTC構造にすることで電子のみの移動を考慮することとなり、光吸収層23Lが薄い場合には応答性の向上が見込める。また、InPに比べ、InAsP、InGaAsPの方が電子の移動度が早いことが期待されるため同じ膜厚での応答性の向上も期待できる。
【0122】
半導体受光素子1Lでは、光導波路層32Lを伝播して側面20sから半導体積層部20Lに入射した光Lは、光吸収層23Lに遷移して光吸収層23Lにおいて吸収される。すなわち、半導体受光素子1Lは、側面入射型である。特に、半導体受光素子1Lでは、光導波路層32Lと光吸収層23Lとが側面20sにおいて直接的に結合されている。このため、半導体受光素子1Lでは、光導波路層32Lを伝播した光Lが、光吸収層23Lに対して、側面20sに対する入射方向(Y軸方向)に直接的に入射される。
【0123】
以上の半導体受光素子1Lにあっても、側面20sから入射した光Lが光導波路層を介して光吸収層23に至ることによる効果を除いて、半導体受光素子1と同様の効果を奏することができる。また、光導波路層32Lを光吸収層23Lの真横に配置することによって、光の伝搬がコア層とクラッド層の行き来する影響を減らすことが出来る。それにより、結合効率を高め、短い距離で感度を稼ぐことが出来る。
【0124】
なお、半導体受光素子1Lにおいて、光吸収層23Lを半導体受光素子1Kと同様に第1導電型の光吸収層23Kとしてもよい。この場合、電子走行層43は設けられていなくてもよい。また、半導体受光素子1Kにおいて、光吸収層23Kの導電型を第2導電型(例えばP-型)とし、電子走行層43を設けてもい。
【0125】
[他の変形例]
【0126】
以上の実施形態は、本開示の一形態を説明したものである。したがって、本開示に係る半導体受光素子は、上述した半導体受光素子1,1A,1B,1C,1D,1K,1Lを任意に変更してものとされ得る。
【0127】
例えば、半導体受光素子1,1A,1B,1C,1Dにおいて、バッファ層21は、InAsPに限らず、バンドギャップを大きくして1.3μm帯、1.55μm帯、及び、1.6μm帯の透過率を向上させる目的から、InGaAsPを含んでもよい(InGaAsPから構成されてもよい)。さらに、半導体積層部20の各層は、Al等の他の元素を含んでもよい。
【0128】
また、半導体受光素子1,1A,1B,1C,1Dにおいて、バッファ層21は、基板10から光吸収層23,23Bに向かうにつれて連続的に格子定数が光吸収層23の格子定数に近づくように変化された歪緩和層を含んでもよい。また、半導体受光素子1,1A,1C,1Dにおいて、光吸収層23上に順に積層されたキャップ層24及びコンタクト層25のうち、キャップ層24が省略され、コンタクト層25が光吸収層23に直接的に形成されていてもよい。この場合であっても、電極4のコンタクト抵抗が下げられる。
【0129】
また、高速化の観点に着目した場合には、半導体受光素子1,1A,1B,1C,1Dにおいて、光吸収層23,23Bを、導波路型の半導体受光素子に適用してもよい。導波路型の半導体受光素子では、半絶縁のInP基板上にリッジ導波路を形成し、当該リッジ導波路内に光吸収層23,23Bを含む受光部を形成する。このように、導波路型であっても、吸収率が向上された光吸収層23,23Bを採用することにより、導波路の延在方向に沿っての受光面の長さを短縮して容量を下げることが可能となる。また、同じ厚さだとしても電子の走行スピードが上がることによって応答性が向上する。
【0130】
また、半導体受光素子1,1A,1B,1C,1D,1K,1Lでは、例えばエッチングや研磨によって基板10を除去したうえで、石英等の絶縁体や、InP以外の半絶縁性半導体(例えばガリウムヒ素等)の材料からなる基板に半導体積層部20,20A,20B,20Kが接合されてもよい。換言すれば、半導体受光素子1では、基板10は、絶縁体又は半絶縁性半導体を含むと共に半導体積層部20,20A,20B,20Kとは別体に構成され、半導体積層部20,20A,20B,20Kが当該基板10に(例えば直接的に)接合されていてもよい。このように、基板10と半導体積層部20,20A,20B,20Kとを別体に構成して接合することにより半導体受光素子1を製造することによって、大口径化を図ることや、安価な材料にて光学的な部品を作り込むことによってコストを抑えることが可能となる。
【0131】
また、互いに別体に構成された基板10と半導体積層部20,20A,20B,20K,20Lとを接合する際には、直接接合(direct bonding)や樹脂を用いた接合を採用することができる。基板10と半導体積層部20,20A,20B,20K,20Lとの接合に樹脂を用いた場合、樹脂の性質によっては、ターゲット波長帯の光を吸収してしまう可能性があるが、直接接合によればその可能性がない。
【0132】
また、半導体受光素子1,1A,1B,1C,1D,1K,1Lでは、基板10上に、MIM構造やトランジスタ等の電子デバイスやスポットサイズコンバータ等を含む光回路等がさらに形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1,1A,1B,1C,1D,1K,1L…半導体受光素子、20,20A,20B,20K,20L…半導体積層部、21…バッファ層(歪緩和層、第2半導体層、第5半導体層)、22…容量低減層、22B…電子走行層、23,23B,23K,23L…光吸収層、24…キャップ層(第1半導体層)、24B…拡散ブロック層(第4半導体層)、25…コンタクト層(第1半導体層、第4半導体層)、27A,27C…光導波路層、4…電極(第2電極)、5…電極(第1電極)。