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特開2023-178017(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート、及びそれからの(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178017
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート、及びそれからの(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/145 20060101AFI20231207BHJP
   C07C 67/343 20060101ALI20231207BHJP
   C07C 17/16 20060101ALI20231207BHJP
   C07C 21/04 20060101ALI20231207BHJP
   C07C 45/51 20060101ALI20231207BHJP
   C07C 47/21 20060101ALI20231207BHJP
   C07C 29/14 20060101ALI20231207BHJP
   C07C 33/02 20060101ALI20231207BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C07C69/145 CSP
C07C67/343
C07C17/16
C07C21/04
C07C45/51
C07C47/21
C07C29/14
C07C33/02
C07C67/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091038
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武
(72)【発明者】
【氏名】長江 祐輔
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB05
4H006AB84
4H006AC30
4H006AC41
4H006AC45
4H006AC48
4H006BM10
4H006BM72
4H006BN10
4H006BQ10
4H006EA03
4H006FE11
4H006FE71
4H006FE75
4H006KA06
4H006KA31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物を工業的に製造するための合成前駆体である(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテートの提供。
【解決手段】[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させ、次いで、(2E)-2-ヘプテナール(5)とウィッティヒ反応に付して前駆体化合物(1)を得る製造方法。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化01】
で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート。
【請求項2】
下記一般式(2):
【化02】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物と、下記一般式(3):
PAr (3)
(式中、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表す。)
で表されるホスフィン化合物とのホスホニウム塩形成反応により、下記一般式(4):
【化03】
(式中、Yはハロゲン原子を表し、Arは、上記で定義した通りである。)
で表される[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物を得る工程と、
前記[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、
前記反応生成物混合物と、下記式(5):
【化04】
で表される(2E)-2-ヘプテナールとをウィッティヒ反応に付して、下記一般式(1):
【化05】
で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテートを得る工程と
を少なくとも含む、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(1):
【化06】
で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテートを脱トリメチルアセチル化して、下記式(6):
【化07】
で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オールを得る工程と、
前記(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)をハロゲン化して、下記一般式(7):
【化08】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物を得る工程と
を少なくとも含む、(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の、(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)の製造方法と、
前記(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)を、下記一般式(15):
【化09】
(式中、Mは、Li又はMgZを表し、Zはハロゲン原子又は(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル基を表す。)
で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬に変換する工程と、
該(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)を、下記一般式(8):
【化10】
(式中、Rは、互いに同じであっても異なっていてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。)
で表されるオルトギ酸エステル化合物(8)との求核置換反応により、下記一般式(9):
【化11】
(式中、Rは、互いに同じであっても異なっていてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。)
で表される(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物を得る工程と、
前記(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物(9)の加水分解反応により、下記一般式(10):
【化12】
で表される(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナールを得る工程と
を少なくとも含む、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の製造方法と、
前記(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)を還元反応に付すことにより、下記式(11):
【化13】
で表される(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オールを得る工程と
を少なくとも含む、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)の製造方法と、
前記(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)のアセチル化反応により、下記式(12):
【化14】
で表される(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテートを得る工程と
を少なくとも含む、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテート(12)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート、及びそれからのDendrolimus spp.の性フェロモン物質である(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界各地に生息するDendrolimus spp.は、針葉樹を中心とした森林害虫であり、例えば、Siberian moth(学名:Dendrolimus superans sibiricus)、Pine-tree lappet moth(学名:Dendrolimus pini)及びSimano pine caterpillar moth(学名:Dendrolimus kikuchii)を含む。例えば、Siberian moth(学名:Dendrolimus superans sibiricus)の幼虫は葉を食害することで、シベリアの800万haに及ぶモミ(fir)及びカラマツ(larch)を枯らせたことが報告されている(下記の非特許文献1)。また、Pine-tree lappet moth(学名:Dendrolimus pini)は北欧の森林害虫として知られており、スコットランドで深刻な被害が出ている。従来型の防除方法である広大な森林への殺虫剤散布は環境面から望ましくなく、害虫発生状況を性フェロモンルアーで把握し、必要な時期のみ殺虫剤散布を行う試み、及び殺虫剤使用を極力減らした生物学的防除方法が検討されている。生物学的防除方法の中でも、性フェロモンを用いた交信かく乱による防除が防除方法の一つとして期待されている(下記の非特許文献1)。
【0003】
Dendrolimus spp.の性フェロモン物質は、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物であることが明らかとなっており、例えば、D. superans sibiricusD. piniの性フェロモン物質は、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナールと(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オールとの混合物であることが報告されている(下記の非特許文献1及び2)。また、Simano pine caterpillar moth(学名:Dendrolimus kikuchii)の性フェロモン物質は、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテートと、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オールと(5Z)-5-ドデセニル=アセテートとの混合物であることが報告されている(下記の非特許文献3)。
【0004】
(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナールの合成方法としては、例えば、2-ヘキシン-1-オールを金属リチウム及び1,3-ジアミノプロパンの存在下、ジッパー反応に付して5-ヘキシン-1-オールを合成し、得られた5-ヘキシン-1-オールの水酸基を、ジクロロメタン中、酸触媒としてのカンファースルホン酸の存在下、3,4-ジヒドロ-2-ピランでTHP保護を行って、2-(5-ヘキシン-1-イロキシ)テトラヒドロ-2-ピランを合成する。続いて、得られた2-(5-ヘキシン-1-イロキシ)テトラヒドロ-2-ピランをヨウ化第一銅とビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドとの存在下、trans-1,2-ジクロロエチレンとカップリング反応させて、2-[[(7E)-8-クロロ-7-オクテン-5-イン-1-イル]オキシ]テトラヒドロ-2-ピランを合成する。続いて、得られた2-[[(7E)-8-クロロ-7-オクテン-5-イン-1-イル]オキシ]テトラヒドロ-2-ピランを、鉄(III)アセチルアセトナート触媒の存在下、ブチルマグネシウム=ブロミドとカップリング反応させて、2-[(7E)-7-ドデセン-5-イン-1-イロキシ]テトラヒドロ-2-ピランを合成する。次に、得られた2-[(7E)-7-ドデセン-5-イン-1-イロキシ]テトラヒドロ-2-ピランを亜鉛還元して、2-[(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-イロキシ]テトラヒドロ-2-ピランを合成する。さらに、得られた2-[(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-イロキシ]テトラヒドロ-2-ピランをメタノール中、酸触媒としてのカンファースルホン酸の存在下、テトラヒドロピラニル基(THP基)を脱保護することにより、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オールを合成する。続いて、得られた(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オールの水酸基を、ジクロロメタン中、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)で酸化することにより、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナールを全7工程で43.5%の収率で製造する方法が報告されている(下記の特許文献1)。
【0005】
また、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナールの別の合成方法としては、例えば、5-ヘキシン-1-オールをPCC酸化し、その後、オルトギ酸エチルでホルミル基をアセタール化、続くアルキン末端の脱プロトン化により(6,6-ジエトキシ-1-ヘキシン-1-イル)マグネシウム=ブロミドを得る。また、別途、1-ヘキシンに水素化ジイソブチルアルミニウムを反応させ、その後、ヨウ素と反応させて(1E)-1-ヨード-1-ヘキセンを得る。続いて、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)触媒の存在下、上記で得られた(6,6-ジエトキシ-1-ヘキシン-1-イル)マグネシウム=ブロミドと、(1E)-1-ヨード-1-ヘキセンとをカップリング反応させることにより、(5E)-12,12-ジエトキシ-5-ドデセン-7-インを合成する。続いて、得られた(5E)-12,12-ジエトキシ-5-ドデセン-7-インを、亜鉛で還元して、(5Z,7E)-1,1-ジエトキシ-5,7-ドデカジエンを合成する。次に、得られた(5Z,7E)-1,1-ジエトキシ-5,7-ドデカジエンを、アセトン中、10質量%硫酸で加水分解反応することにより、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナールを全4工程で52.3%の収率で製造する方法が報告されている(下記の特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ashot Khrimian et al.,J.Agric.Food Chem.,2002,50,6366-6370.
【非特許文献2】B. G. Kovalev et al.,Chem. Nat. Comp.,1993,29,135-136.
【非特許文献3】Xiang-Bo Kong et al.,J.Chem.Ecol.,2011,37,412-419.
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願公開102613177号明細書
【特許文献2】ポーランド国特許発明第215357号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2における(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナールの合成方法は、環境毒性の極めて高いPCC及びジクロロメタンを用いているためグリーンケミストリーの観点から望ましくなくない。さらに、いずれの合成方法でも高価なパラジウム触媒を用いている上に、溶媒を多量に使用する必要がある亜鉛還元を用いているために、経済性及び生産性の観点から工業的でない。例えば、特許文献1では0.1Mのメタノール水溶液にて反応を行っており、1mの反応器で最大0.1kmolしか目的物を得られない。加えて、いずれの製造方法においても、PCCを用いた酸化反応を用いており、当該酸化反応は爆発の危険を伴うことが多いことから、工業スケールでの実施が難しい。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物を工業的に製造するための合成前駆体である新規な化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、該新規な化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテートが新規な化合物であり、かつ、該(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテートが(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物の製造において有用な中間体であることを見出した。そして、該(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテートを用いることにより、Dendrolimus spp.の性フェロモンである(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物を短工程で工業的に製造できることを見出し、本発明を為すに至った。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、下記式(1):
【化01】
で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテートが提供される。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、下記一般式(2):
【化02】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物と、下記一般式(3):
PAr (3)
(式中、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表す。)
で表されるホスフィン化合物とのホスホニウム塩形成反応により、下記一般式(4):
【化03】
(式中、Yはハロゲン原子を表し、Arは、上記で定義した通りである。)
で表される[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物を得る工程と、
該[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、
該反応生成物混合物と、下記式(5):
【化04】
で表される(2E)-2-ヘプテナールとをウィッティヒ反応に付して、下記一般式(1):
【化05】
で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテートを得る工程と
を少なくとも含む、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、下記一般式(1):
【化06】
で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテートを脱トリメチルアセチル化して、下記式(6):
【化07】
で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オールを得る工程と、
該(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)をハロゲン化して、下記一般式(7):
【化08】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物を得る工程と
を少なくとも含む、(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)の製造方法が提供される。
【0014】
本発明の第4の態様によれば、
上記(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)の上記製造方法と、
該(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)を、下記一般式(15):
【化09】
(式中、Mは、Li又はMgZを表し、Zはハロゲン原子又は(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル基を表す。)
で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬に変換する工程と、
該(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)を、下記一般式(8):
【化10】
(式中、Rは、互いに同じであっても異なっていてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。)
で表されるオルトギ酸エステル化合物(8)との求核置換反応により、下記一般式(9):
【化11】
(式中、Rは、互いに同じであっても異なっていてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。)
で表される(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物を得る工程と、
該(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物(9)の加水分解反応により、下記一般式(10):
【化12】
で表される(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナールを得る工程と
を少なくとも含む、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の製造方法が提供される。
【0015】
本発明の第5の態様によれば、
上記(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の上記製造方法と、
該(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)を還元反応に付すことにより、下記式(11):
【化13】
で表される(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オールを得る工程と
を少なくとも含む、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の第6の態様によれば、
上記(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)の上記製造方法と、
該(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)のアセチル化反応により、下記式(12):
【化14】
で表される(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテートを得る工程と
を少なくとも含む、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテート(12)の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高価な原料を用いることなく、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物を短工程で工業的に製造することができる。また、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物を製造するにあたって有用な合成中間体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.下記式(1)で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテートについて
【化15】
【0019】
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)は例えば、下記に示す化学反応式に従って製造することができる。
【0020】
【化16】
【0021】
まず、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る。該脱プロトン化反応により得られる該混合物は、トリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)を反応生成物として含有していると推定される(以下では、該反応生成物がトリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)として説明をする)。そして、次に、該反応生成物混合物と、下記式(5)で表される(2E)-2-ヘプテナールとを、例えばイン・サイチュ(in situ)で、ウィッティヒ反応に付すことにより、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)を製造することができる。
【0022】
次に、以下の項Bにおいて、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)の製造に有用な中間体である[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)について説明する。
【0023】
B.[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)について
【0024】
【化17】
(式中、Yはハロゲン原子を表し、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表す。)
【0025】
具体的には、ハロゲン原子Yとして、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、反応性の観点から臭素原子及びヨウ素原子が好ましい。
上記一般式(4)において、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表す。アリール基の炭素数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~12、更に好ましくは6~7である。アリール基としては、例としてフェニル基(Ph基)、トリル基、ナフチル基及びアントラセニル基が挙げられるが、合成のしやすさの観点から、フェニル基が好ましく、三つのアリール基が全てフェニル基であることがより好ましい。
【0026】
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=クロリド、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ブロミド、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ヨージド等の[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ハライド化合物;
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリトリルホスホニウム=クロリド、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリトリルホスホニウム=ブロミド、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリトリルホスホニウム=ヨージド等の[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリトリルホスホニウム=ハライド化合物。
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)として、合成しやすさの観点から、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ブロミド、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ヨージド等の[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ハライド化合物が好ましい。
【0027】
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)は、以下で述べる通り、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)及び(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物の製造における合成中間体として使用されうる。
【0028】
次に、以下の項C.において[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)の製造方法について説明する。
【0029】
C.[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)の製造方法について
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)は例えば、下記の化学反応式に示される通り、上述の4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物(2)と、下記一般式(3)で表されるホスフィン化合物とのホスホニウム塩形成反応により製造することができる。
【0030】
【化18】
【0031】
一般式(2)におけるXは、ハロゲン原子を表す。具体的には、ハロゲン原子Xとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物(2)としては、4-クロロブチル=トリメチルアセテート、4-ブロモブチル=トリメチルアセテート及び4-ヨードブチル=トリメチルアセテートが挙げられ、調製しやすさの観点から、4-クロロブチル=トリメチルアセテートが好ましい。
【0032】
一般式(3)におけるArは、上記一般式(4)で定義した通りである。
ホスフィン化合物(3)としては、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリナフチルホスフィン及びトリアントラセニルホスフィン等のトリアリールホスフィン化合物が挙げられ、反応性の観点から、トリフェニルホスフィンが好ましい。
ホスフィン化合物(3)の使用量は、反応性の観点から、4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物(2)1molに対して、好ましくは0.8~5.0molである。
【0033】
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)の調製には、必要に応じて、ハロゲン化物を用いてもよい。
該ハロゲン化物としては、例えば、ヨウ化ナトリウム及びヨウ化カリウム等のヨウ化物;並びに、臭化ナトリウム及び臭化カリウム等の臭化物が挙げられ、反応性の観点から、ヨウ化ナトリウム及びヨウ化カリウム等のヨウ化物が好ましい。
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)の上記調製においてハロゲン化物を用いない場合は、上記一般式(4)中のYは、上記一般式(2)中のXと同じハロゲン原子である。一方、該調製においてハロゲン化物としてヨウ化物を用いる場合には、上記一般式(4)中のYは4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物(2)についての一般式(2)のXと同じハロゲン原子又はヨウ素原子である。
該ハロゲン化物は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該ハロゲン化物は、市販されているものを用いることができる。
該ハロゲン化物の使用量は、反応性の観点から、4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物(2)1molに対して、好ましくは0.1~10.0mol、より好ましくは0.8~4.0molである。
【0034】
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)の調製には、必要に応じて、塩基を加えてもよい。
該塩基としては、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;並びに、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、-ジエチルアニリン及びピリジン等のアミン等が挙げられ、取扱いの観点から、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該塩基は、市販されているものを用いることができる。
該塩基の使用量は、反応性の観点から、4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物(2)1molに対して、好ましくは0~4.0mol、より好ましくは0.001~1.0molである。
【0035】
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)の調製には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒及びアセトニトリル、-ジメチルホルムアミド及び-ジメチルアセトアミド等の極性溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物(2)1molに対して、好ましくは50~7000gである。
【0036】
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)の調製における反応温度は、用いる溶媒により至適温度は異なるが、好ましくは30~180℃、より好ましくは50~150℃である。
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)の調製における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.5~100時間である。
【0037】
次に、該反応生成物混合物であるトリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)について説明する。
【化19】
上記一般式(13)において、Arは、上記一般式(4)において定義した通りである。
【0038】
トリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)の具体例としては、トリフェニルホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド及びトリトリルホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド等が挙げられる。
トリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)として、経済性の観点から、トリフェニルホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13:Ar=フェニル基)が好ましい。
【0039】
<脱プロトン化反応について>
上記反応生成物混合物を得る方法としては、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)を調製した後の反応系中に塩基を加えて、トリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)に直接導いてもよいし、又は[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)を精製してから塩基と反応させてトリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)に導いてもよい。
上記反応生成物混合物の調製に用いる塩基としては、例えば、n-ブチルリチウム及びtert-ブチルリチウム等のアルキルリチウム;メチルマグネシウム=クロリド、メチルマグネシウム=ブロミド、ナトリウム=アセチリド及びカリウム=アセチリド等の有機金属試薬類;カリウム=tert-ブトキシド、ナトリウム=tert-ブトキシド、カリウム=メトキシド、ナトリウム=メトキシド及びカリウム=エトキシド、ナトリウム=エトキシド等の金属アルコキシド;並びに、リチウム=ジイソプロピルアミド、ナトリウム=ビス(トリメチルシリル)アミド等の金属アミド等が挙げられ、反応性の観点から、金属アルコキシドが好ましく、カリウム=tert-ブトキシド、ナトリウム=メトキシド及びナトリウム=エトキシドがより好ましい。
該塩基の使用量は、反応性の観点から、4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物(2)又は[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)1molに対して、好ましくは0.7~5.0molである。
【0040】
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)及びトリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)の調製には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒及びアセトニトリル、-ジメチルホルムアミド及び-ジメチルアセトアミド等の極性溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、4-ハロブチル=トリメチルアセテート化合物(2)又は[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)1molに対して、好ましくは50~7000gである。
【0041】
上記反応生成物混合物の調製における反応温度は、用いる溶媒及び/又は塩基により至適温度は異なるが、好ましくは-78~70℃であり、例えば、塩基として金属アルコキシドを用いた場合の至適温度は-78~25℃である。
上記反応生成物混合物の調製における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.5~100時間である。
【0042】
<ウィッティヒ反応について>
トリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)の使用量は、反応性の観点から、(2E)-2-ヘプテナール(5)1molに対して、好ましくは0.8~4.0mol、より好ましくは1.0~2.0molである。
トリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
(2E)-2-ヘプテナール(5)は市販されているものであってもよく、または、例えば、(2E)-2-ヘプテン-1-オールの酸化、若しくは(2E)-1,1-ジアルコキシ-2-ヘプテンの加水分解反応等で独自に合成したものであってもよい。
【0043】
ウィッティヒ反応には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;並びに、アセトニトリル、-ジメチルホルムアミド及び-ジメチルアセトアミド等の極性溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、(2E)-2-ヘプテナール(5)1molに対して、好ましくは50~7000gである。
【0044】
ウィッティヒ反応における反応温度は、用いる溶媒により最適温度は異なるが、好ましくは-78~80℃である。ウィッティヒ反応をZ選択的に行うために、-78~30℃で反応させることがより好ましく、経済性及び/又は環境を加味すると、-20~25℃が最も好ましい。なお、-78~-40℃でウィッティヒ反応させた後、フェニルリチウム等の強塩基で処理することによるシュロッサー(Schlosser)変法等の条件下、生じる合成中間体を反応させることにより、E選択的に反応を行うこともできる。また、通常のウィッティヒ反応条件下においてハロゲン化リチウムを添加することによりE選択的に反応を行うこともできる。
ウィッティヒ反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.5~100時間である。
【0045】
トリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)以外にも、水酸基をアセチル基又はベンゾイル基等のアシル系保護基で保護したイリドを用いてウィッティヒ反応することが可能と予想される。しかしながら、予想に反して水酸基をトリメチルアセチル基以外のアシル基で保護すると本ウィッティヒ反応の収率が悪かった。例えば、イリドとしてトリアリールホスホニウム=4-(アセチルオキシ)ブチリド化合物を用いると、一定の温度以上では反応中にアセチル基の脱保護が併発して収率が悪くなる。また、例えば、イリドとしてトリアリールホスホニウム=4-(ベンゾイルオキシ)ブチリド化合物を用いると、10℃付近で前駆体の[4-(ベンゾイルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物が溶媒中でも固化してしまうため、低温でのトリアリールホスホニウム=4-(ベンゾイルオキシ)ブチリド化合物の調製ができない。温度を上げてトリアリールホスホニウム=4-(ベンゾイルオキシ)ブチリド化合物を調製することは可能であるが、速やかにイリドが分解してしまいウィッティヒ反応の収率が悪くなる。そのため、ホスホニウム塩が溶液中で結晶化せず、塩基性条件下でもアシル基が脱保護されないトリメチルアセチルで水酸基を保護したトリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)を用いることが本ウィッティヒ反応を収率よく行う上で重要である。前記トリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)は、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)に由来していることから、言い換えれば、前工程である上述の脱プロトン化反応において、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)を用いることが重要である。
【0046】
D.下記式(6)で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール及びその製造方法について
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)は下記の化学反応式に示される通り、上述の(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)を脱トリメチルアセチル化することにより製造することができる。
【0047】
【化20】
【0048】
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)の脱トリメチルアセチル化反応は、例えば、塩基を用いて行うことができる。
トリメチルアセチル化反応に用いる塩基としては、例えば、n-ブチルリチウム及びtert-ブチルリチウム等のアルキルリチウム;メチルマグネシウム=クロリド、メチルマグネシウム=ブロミド、ナトリウム=アセチリド及びカリウム=アセチリド等の有機金属試薬類;水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al)及び水素化アルミニウムリチウム(LAH)等の有機アルミニウム化合物;カリウム=tert-ブトキシド、ナトリウム=tert-ブトキシド、カリウム=メトキシド、ナトリウム=メトキシド及びカリウム=エトキシド、ナトリウム=エトキシド等の金属アルコキシド;水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;並びに、リチウム=ジイソプロピルアミド、ナトリウム=ビス(トリメチルシリル)アミド等の金属アミド等が挙げられ、反応性の観点から、カリウム=tert-ブトキシド、ナトリウム=メトキシド及びナトリウム=エトキシド等の金属アルコキシド;メチルマグネシウム=クロリド、メチルマグネシウム=ブロミド、ナトリウム=アセチリド及びカリウム=アセチリド等の有機金属試薬類;水酸化カリウム及び、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;並びに、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩が好ましく、有機金属試薬類及びアルカリ金属炭酸塩がより好ましい。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該塩基は、市販されているものを用いることができる。
該塩基の使用量は、反応完結の観点から、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)1molに対して、好ましくは0.01~30.0mol、より好ましくは0.1~15.0molである。
【0049】
脱トリメチルアセチル化反応には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、n-トリデカノール、n-テトラデカノール及びn-ペンタデカノール等の直鎖アルコール類;イソプロパノール及び2-ブタノール等の分岐アルコール類等;並びに、水が挙げられ、反応性の観点から、塩基として有機金属試薬類及を用いた場合は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が好ましく、塩基としてアルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属炭酸塩を用いた場合は、メタノール及びエタノール等の直鎖アルコール類;イソプロパノール及び2-ブタノール等の分岐アルコール類;並びに、水が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、用いる塩基により異なるが、反応性の観点から、上記(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)1molに対して、好ましくは0~8000g、より好ましくは0~3000gである。
【0050】
該脱トリメチルアセチル化反応における反応温度は、用いる塩基により異なるが、反応完結の観点から、好ましくは0~150℃、より好ましくは30~100℃である。
該脱トリメチルアセチル化反応における反応時間は、用いる塩基及び/または反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0051】
E.下記一般式(7)で表される(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物及びその製造方法について
(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)は、下記の化学反応式に示される通り、上述の(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)をハロゲン化することにより製造することができる。
【0052】
【化21】
【0053】
該ハロゲン化反応は、例えば、p-トルエンスルホニル=ハライド化合物を用いて水酸基をトシル化した後にリチウム=ハライド化合物を用いてハロゲン化する方法、又はハロゲン化剤を用いて直接ハロゲン化する方法によって行われることができる。
該ハロゲン化剤としては、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン;塩化水素、臭化水素及びヨウ化水素等のハロゲン化水素化合物;メタンスルホニル=クロリド、メタンスルホニル=ブロミド及びメタンスルホニル=ヨージド等のメタンスルホニル=ハライド化合物;ベンゼンスルホニル=クロリド、ベンゼンスルホニル=ブロミド及びベンゼンスルホニル=ヨージド等のベンゼンスルホニル=ハライド化合物;p-トルエンスルホニル=クロリド、p-トルエンスルホニル=ブロミド及びp-トルエンスルホニル=ヨージド等のp-トルエンスルホニル=ハライド化合物;塩化チオニル、臭化チオニル及びヨウ化チオニル等のハロゲン化チオニル化合物;三塩化リン、五塩化リン及び三臭化リン等のハロゲン化リン化合物;四塩化炭素、四臭化炭素及び四ヨウ化炭素等の四ハロゲン化炭素化合物;トリメチルシリル=クロリド、トリメチルシリル=ブロミド、トリメチルシリル=ヨージド、トリエチルシリル=クロリド、トリエチルシリル=ブロミド、トリエチルシリル=ヨージド、トリイソプロピルシリル=クロリド、トリイソプロピルシリル=ブロミド、トリイソプロピルシリル=ヨージド、tert-ブチルジメチルシリル=クロリド、tert-ブチルジメチルシリル=ブロミド及びtert-ブチルジメチルシリル=ヨージド等のアルキルシリル=ハライド化合物;オキサリル=クロリド、オキサリル=ブロミド及びオキサリル=ヨージド等のオキサリル=ハライド化合物;並びに、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド及びN-ヨードスクシンイミド等のN-ハロスクシンイミド化合物等が挙げられるが、副反応抑制の観点から、メタンスルホニル=ハライド化合物、ベンゼンスルホニル=ハライド化合物及びp-トルエンスルホニル=ハライド化合物、並びにハロゲン化チオニル化合物が好ましく、メタンスルホニル=ハライド化合物、ベンゼンスルホニル=ハライド化合物及びハロゲン化チオニル化合物が特に好ましい。
該ハロゲン化剤は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該ハロゲン化剤は、市販されているものを用いることができる。
該ハロゲン化剤の使用量は、反応性の観点から、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)1molに対して、好ましくは0.8~5.0mol、より好ましくは1.0~2.5molである。
【0054】
該ハロゲン化反応には、必要に応じて、塩基を用いてもよい。
該塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩類;並びに、トリエチルアミン、-ジイソプロピルエチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ピリジン、ルチジン、4-ジメチルアミノピリジン、-ジメチルアニリン、-ジエチルアニリン及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等のアミン類等を挙げることができる。
該ハロゲン化剤としてメタンスルホニル=ハライド化合物、ベンゼンスルホニル=ハライド化合物及びp-トルエンスルホニル=ハライド化合物等を用いる場合は、塩基としてアミン類を用いることが好ましく、ピリジン、ルチジン及び4-ジメチルアミノピリジン等のピリジン類を用いることがより好ましい。
該ハロゲン化剤としてハロゲン化チオニル化合物を用いる場合は、塩基としてアミン類を用いることが好ましく、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンを用いることがより好ましい。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該塩基は、市販されているものを用いることができる。
該塩基の使用量は、収率及び/又は経済性の観点から、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)1molに対して、好ましくは0~8.0mol、より好ましくは0~3.0molである。
【0055】
該ハロゲン化反応には、必要に応じて、金属塩を添加してもよい。
該金属塩としては、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等のリチウム塩;塩化ナトリウム、臭化ナトリウム及びヨウ化ナトリウム等のナトリウム塩;塩化カリウム、臭化カリウム及びヨウ化カリウム等のカリウム塩;塩化カルシウム、臭化カルシウム及びヨウ化カルシウム等のカルシウム塩;並びに、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム及びヨウ化マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。
該金属塩は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該金属塩は、市販されているものを用いることができる。
該金属塩の使用量は、反応性の観点から、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)1molに対して、好ましくは0~30.0mol、より好ましくは0~5.0molである。
該金属塩を添加することで、反応系中のハロゲン化物濃度を高めて反応性を上げることができるが、経済性及び/又は環境を加味すると金属塩を用いずに反応することが好ましい。
【0056】
該ハロゲン化反応には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;並びに、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル及び酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジクロロメタン、クロロホルム、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド及びアセトニトリルが好ましく、安全性の観点から2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン及びアセトニトリルが特に好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該ハロゲン化反応に用いる溶媒の使用量は、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)1molに対して、好ましくは0~3000g、より好ましくは0~800gである。
該溶媒を用いることによって仕込み量が減り、生産性が低下するため、上記の溶媒を用いずに塩基を溶媒として反応を行ってもよい。
【0057】
該ハロゲン化反応における反応温度は、用いるハロゲン化剤により異なるが、反応性の観点から、好ましくは5~180℃、より好ましくは20~120℃である。
該ハロゲン化反応における反応時間は、用いるハロゲン化剤及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0058】
(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)について、以下に説明する。
上記一般式(7)において、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子を表す。
【0059】
(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)の具体例としては、(4Z,6E)-1-クロロ-4,6-ウンデカジエン、(4Z,6E)-1-ブロモ-4,6-ウンデカジエン及び(4Z,6E)-1-ヨード-4,6-ウンデカジエン等が挙げられる。
【0060】
F.下記一般式(9)で表される(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物及びその製造方法について
(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物(9)は、下記の化学反応式に示される通り、上述の(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)を、下記一般式(15)で表される(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬に変換し、該(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)を、下記一般式(8)で表されるオルトギ酸エステル化合物との求核置換反応に付すことにより製造することができる。
【0061】
【化22】
【0062】
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬は上記一般式(15)で表される。一般式(15)におけるMは、Li又はMgZを表し、Zはハロゲン原子又は(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル基を表す。ハロゲン原子Zとしては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)の具体例としては、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルリチウム;並びに、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=クロリド、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ブロミド、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ヨージド等の(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(グリニャール試薬)が挙げられ、汎用性の観点から、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬が好ましい。
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)は、上記の(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)から(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)を調製する工程により調製することができる。
例えば、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬の様な(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(15:M=MgZ)は、下記の化学反応式で示される通り、(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)を溶媒中、マグネシウムと反応させることにより、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(15:M=MgZ)を得る工程(グリニャール試薬調製)により調製することができる。
【0063】
【化23】
【0064】
(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)から(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(15:M=MgZ)を調製する際に用いるマグネシウムの使用量は、反応完結の観点から、(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)1molに対して、好ましくは1.0~2.0グラム原子である。
グリニャール試薬調製における該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;並びに、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン及びジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;並びに、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が好ましく、エーテル系溶媒がより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは100~2000gである。
【0065】
(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)から(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(15:M=MgZ)を調製する際の反応温度は、用いる溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは30~120℃である。
(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)から(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(15:M=MgZ)を調製する際の反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0066】
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(15)の使用量は、経済性の観点から、オルトギ酸エステル化合物(8)1molに対して、好ましくは0.3~1.5molである。
【0067】
オルトギ酸エステル化合物は上記一般式(8)で表される。一般式(8)における3つのRは、互いに同じであっても異なっていてもよい炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のアルキル基を表す。
炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基及びn-ヘキシル基等の直鎖状のアルキル基;並びに、イソプロピル基及び2-メチルプロピル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。
オルトギ酸エステル化合物(8)の具体例としては、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルトギ酸プロピル、オルトギ酸ブチル、オルトギ酸ペンチル及びオルトギ酸ヘキシル等が挙げられるが、入手のしやすさの観点からオルトギ酸メチル及びオルトギ酸エチルが好ましい。
オルトギ酸エステル化合物(8)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、オルトギ酸エステル化合物(8)は、市販されているものを用いることができる。
【0068】
上記の求核置換反応に用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;並びに、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;並びに、上記のエーテル系溶媒と炭化水素系溶媒との混合物が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)が溶媒で希釈されている場合、又は(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)を調製する際に溶媒を用いた場合、これらの溶媒と求核置換反応に用いる溶媒は同じであっても異なっていてもよい。
上記の溶媒が異なる場合は、求核置換反応の反応性を高くする溶媒に置換してもよい。
例えば、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)を調製する際に溶媒としてテトラヒドロフランを用い、求核置換反応に用いる溶媒としてトルエンを選択した場合は、テトラヒドロフランを含む(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)を、オルトギ酸エステル化合物とトルエンを含む反応器に加え、その後、反応温度を上昇させる過程においてテトラヒドロフランを留去させることにより、反応系における溶媒をトルエンに置換していってもよい。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、オルトギ酸エステル化合物(8)1molに対して、好ましくは100~6000gである。
【0069】
該求核置換反応における反応温度は、反応をスムーズに進行させ、溶媒の蒸発を防ぐ観点から、好ましくは75~150℃である。
該求核置換反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.5~100時間である。
【0070】
(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物は上記一般式(9)で表される。一般式(9)におけるRは、上記一般式(8)で定義した通りである。
(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物(9)の具体例としては、(5Z,7E)-1,1-ジメトキシ-5,7-ドデカジエン、(5Z,7E)-5,7-1,1-ジエトキシ-ドデカジエン、(5Z,7E)-1,1-ジプロピルオキシ-5,7-ドデカジエン、(5Z,7E)-1,1-ジブチルオキシ-5,7-ドデカジエン、(5Z,7E)-1,1-ジペンチルオキシ-5,7-ドデカジエン及び(5Z,7E)-1,1-ジヘキシルオキシ-5,7-ドデカジエン等が挙げられる。
【0071】
G.下記一般式(10)で表される(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール及びその製造方法について
Dendrolimus spp.の性フェロモン物質である(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)は、下記の化学反応式に示される通り、上述の(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物(9)の加水分解反応により製造することができる。
【0072】
【化24】
【0073】
<加水分解反応について>
上記加水分解反応において、(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物(9)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
【0074】
該加水分解反応は例えば、酸と水を用いて行うことができる。
上述の酸としては、塩酸、臭化水素酸等の無機酸類;並びに、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、しゅう酸、ヨードトリメチルシラン及び四塩化チタン等が挙げられるが、反応性の観点から、酢酸、ギ酸及びしゅう酸が好ましい。
該酸は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該酸は、市販されているものを用いることができる。
該酸の使用量は、(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物(9)1molに対して、好ましくは0.01~10.0molである。
上述の水の使用量は、(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物(9)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは18~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【0075】
該加水分解反応には、上述の酸又は水とともに、必要に応じて溶媒を更に用いてもよい。
該溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン及びクメン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテルジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、アセトニトリル、アセトン、γ―ブチロラクトン、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;並びに、メタノール及びエタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
用いる酸により最適な溶媒は異なるが、例えば、酸として、しゅう酸を用いる場合は、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン及びγ―ブチロラクトンが好ましい。
該溶媒の使用量は、(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物(9)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【0076】
加水分解反応における反応温度は、用いる酸及び/又は溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは-15~180℃、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の安定性の観点からより好ましくは-5~70℃、更に好ましくは0~30℃である。
加水分解反応における反応時間は、用いる酸、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の安定性の観点から、例えば、反応温度0~30℃の場合は、好ましくは0.5~100時間、より好ましくは0.5~30時間であり、反応温度30℃超~70℃、例えば60~70℃の比較的高温の場合は、好ましくは0.1~100時間、より好ましくは0.1~30時間、更に好ましくは0.1~5時間である。
【0077】
H.下記一般式(11)で表される(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール及びその製造方法について
Dendrolimus spp.の性フェロモン物質である(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)は、下記の化学反応式に示される通り、上述の(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)を還元反応に付すことにより製造することができる。
【0078】
【化25】
【0079】
<還元反応について>
上記還元反応は、還元剤を用いて行うことができる。
該還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化ホウ素マグネシウム、水素化ホウ素アルミニウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素亜鉛、シアノ水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素リチウム等の水素化ホウ素金属化合物;水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al)及び水素化アルミニウムリチウム(LAH)等の有機アルミニウム化合物;水素化トリブチルスズ等の水素化アルキルスズ化合物;並びに、トリエチルシラン等のトリアルキルシラン化合物が挙げられるが、経済性の観点から、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛及び水素化ホウ素マグネシウム等の水素化ホウ素金属化合物;並びに、DIBAL及びRed-Al等の有機アルミニウム化合物が好ましく、水素化ホウ素金属化合物がより好ましい。
該還元剤の使用量は、使用する還元剤により異なるが(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)1molに対して、反応性及び/又は経済性の観点から、好ましくは0.15~10.0mol、より好ましくは0.25~5.0molである。
【0080】
該還元反応には、必要に応じて、塩基を用いてもよい。
該塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン及び-ジイソプロピルエチルアミン等のトリアルキルアミン化合物;ピペリジン、ピロリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等の環状アミン化合物;ピリジン、ルチジン、-ジメチルアニリン、-ジエチルアニリン、-ジブチルアニリン及び4-ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミン化合物;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;並びに、ナトリウム=メトキシド、ナトリウム=エトキシド、ナトリウム=t-ブトキシド、ナトリウム=t-アミロキシド、リチウム=メトキシド、リチウム=エトキシド、リチウム=t-ブトキシド、リチウム=t-アミロキシド、カリウム=メトキシド、カリウム=エトキシド、カリウム=t-ブトキシド及びカリウム=t-アミロキシド等の金属アルコキシド類が挙げられる。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
該塩基の使用量は、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0~10.0mol、より好ましくは0~5.0molである。
【0081】
該還元反応には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、使用する還元剤により異なるが、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン及びクメン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテルジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、アセトニトリル、アセトン、γ―ブチロラクトン、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;メタノール及びエタノール等のアルコール系溶媒;並びに、水等が挙げられる。
上記還元反応は、溶媒として水とそれ以外の溶媒の二層系を用いて行われてもよい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該還元反応に用いる溶媒の使用量は、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)1molに対して、好ましくは0~5000g、より好ましくは0~2000gである。
【0082】
該還元反応における反応温度は、用いる還元剤及び/又は溶媒により異なるが、反応性及び/又は(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の熱安定性の観点から、好ましくは-78~80℃、より好ましくは-20~40℃である。
該還元反応における反応時間は、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0083】
I.下記一般式(12)で表される(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテート及びその製造方法について
Dendrolimus spp.の性フェロモン物質である(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテート(12)は、下記の化学反応式に示される通り、上述の(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)のアセチル化反応により製造することができる。
【0084】
【化26】
【0085】
<アセチル化反応について>
上記アセチル化は、アセチル化剤を用いて行うことができる。
該アセチル化剤としては、酢酸及び無水酢酸等の酸無水物;アセチル=クロリド、アセチル=ブロミド及びアセチル=ヨージド等のアセチル=ハライド化合物;並びに、酢酸メチル及び酢酸エチル等の酢酸エステル化合物が挙げられるが、汎用性の観点から、無水酢酸及びアセチル=ハライド化合物が好ましい。
該アセチル化剤の使用量は、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)1molに対して、反応性及び経済性の観点から、好ましくは1.0~10.0mol、より好ましくは1.0~5.0molである。
【0086】
該アセチル化には、必要に応じて、酸又は塩基を用いてもよい。
該酸としては、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸;ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;並びに、三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫=ジメトキシド、ジブチル錫=オキシド、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド及び酸化チタン(IV)等のルイス酸が挙げられる。
該酸は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
該酸の使用量は、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)1molに対して、反応性及び経済性の観点から、好ましくは0.001~3.00mol、より好ましくは0.01~1.50molである。
【0087】
該塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン及び-ジイソプロピルエチルアミン等のトリアルキルアミン化合物;ピペリジン、ピロリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等の環状アミン化合物;ピリジン、ルチジン、-ジメチルアニリン、-ジエチルアニリン、-ジブチルアニリン及び4-ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミン化合物;並びに、ナトリウム=メトキシド、ナトリウム=エトキシド、ナトリウム=t-ブトキシド、ナトリウム=t-アミロキシド、リチウム=メトキシド、リチウム=エトキシド、リチウム=t-ブトキシド、リチウム=t-アミロキシド、カリウム=メトキシド、カリウム=エトキシド、カリウム=t-ブトキシド及びカリウム=t-アミロキシド等の金属アルコキシド類が挙げられる。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
該塩基の使用量は、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)1molに対して、反応性及び経済性の観点から、好ましくは0.010~10.0mol、より好ましくは0.001~5.0molである。
【0088】
該アセチル化には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム及びヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)等の極性溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;並びに、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該アセチル化は、必要に応じて溶媒を用いてもよいが、無溶媒で反応を行ってもよい。
該アセチル化に用いる溶媒の使用量は、上記(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)1molに対して、好ましくは0~5000g、より好ましくは0~2000gである。
【0089】
該アセチル化における反応温度は、用いるアセチル化剤及び/又は溶媒により異なるが、反応性及び/又は(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテート(12)の熱安定性の観点から、好ましくは-40~100℃、より好ましくは-20~80℃、更に好ましくは0~40℃である。
該アセチル化における反応時間は、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0090】
以上のようにして、合成中間体である(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)から、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)及び(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテート(12)等の(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン化合物を短工程で、かつ効率良く製造することができる。
【0091】
[実施例]
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、以下において、「純度」は、特に明記しない限り、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって得られた面積百分率を示し、「生成比」はGC分析によって得られた面積百分率の相対比を示す。また、「収率」はGC分析によって得られた面積百分率を基に算出した。
各実施例において、反応のモニタリング及び収率の算出は、次のGC条件に従って行った。
GC条件:GC:島津製作所 キャピラリガスクロマトグラフ GC-2014,カラム:DB-5,0.25μmx0.25mmφx30m,キャリアーガス:He(1.55mL/分)、検出器:FID,カラム温度:150℃ 5℃/分昇温 230℃。
収率は、原料及び生成物の純度(%GC)を考慮して、以下の式に従い計算した。
収率(%)={[(反応によって得られた生成物の重量×%GC)/生成物の分子量]
÷[ (反応における出発原料の重量×%GC)/出発原料の分子量]}×100
なお、THFはテトラヒドロフラン、GBLはγ―ブチロラクトン、Etはエチル基、Phはフェニル基、Acはアセチル基及びBuはtert-ブチル基を表す。
【0092】
実施例1
<4-クロロブチル=トリメチルアセテート(2:X=Cl)の製造>
【0093】
【化27】
【0094】
室温にて、反応器にテトラヒドロフラン(774.32g、10.74mol、純度100%)、塩化亜鉛(11.26g、0.083mol)を加えて50℃に昇温した。続いてトリメチルアセチル=クロリド(996.00g、8.26mol)を内温50~60℃で滴下した。滴下終了後、60~65℃にて14時間撹拌した。その後、反応液に水(826.00g)とヘキサン(327.60g)を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で蒸留(b.p.=94.5~100.0℃/0.40kPa(3.0mmHg))することにより、4-クロロブチル=トリメチルアセテート(2:X=Cl)(1491.64g、7.74mol、純度99.98%)が収率93.66%で得られた。
【0095】
上記で得られた4-クロロブチル=トリメチルアセテート(2:X=Cl)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.19(9H,s),1.75-1.88(4H,m),3.56(2H,t,J=6.5Hz),4.08(2H,t,J=6.5Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=26.06,27.15,29.17,38.71,44.45,63.43,178.47
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 193(M+1),157,129,115,103,85,57,41,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2962,1729,1481,1285,1155
【0096】
実施例2
<(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)の製造>
【0097】
【化28】
【0098】
室温にて、反応器に、実施例1で得られた4-クロロブチル=トリメチルアセテート(2:X=Cl)(23.13g、0.12mol、純度99.98%)、トリフェニルホスフィン(PPh)(3:Ar=Ph)(31.55g、0.12mol)、ヨウ化ナトリウム(NaI)(19.49g、0.13mol)、炭酸カリウム(KCO)(0.97h、0.007mol)及びアセトニトリル(CHCN)(45.00g)を加えて、75~85℃にて17時間撹拌することにより、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ヨージド(4:Y=I,Ar=Ph)を調製した。
【0099】
次に、該反応器にテトラヒドロフラン(THF)(80.00g)を30~40℃にて滴下した。滴下終了後、反応液を-10~5℃に冷却した。続いて、カリウム=tert-ブトキシド(BuOK)(12.90g、0.12mol)を-10~5℃で加え、その後、-10~5℃で1時間撹拌することにより、反応生成物混合物を得た。該反応生成物混合物は、トリフェニルホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13:Ar=Ph)を反応生成物として含有していると推定される。
【0100】
その後、上記反応器に、(2E)-2-ヘプテナール(5)(11.41g、0.10mol、純度98.28%)を-5~5℃にて滴下した。滴下終了後、20~30℃にて3時間撹拌した。その後、反応液に食塩水(食塩(15.16g)及び水(151.57g))を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を蒸留(b.p.=102.1~113.4℃/0.40kPa(3.0mmHg))することにより、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)(19.49g、0.076mol、純度98.44%、4Z6E:4Z6Z:4E6E=88.4:0.7:10.9)が収率76.17%で得られた。
【0101】
[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ヨージド(4:Y=I,Ar=Ph)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.05(9H,s),1.63-1.73(2H,m),1.80-1.88(2H,m),3.27-3.35(2H,m)4.04(2H,t,J=6.1Hz),7.68-7.77(12H,m),7.83-7.88(3H,m)
〔マススペクトル〕ESI,N gas:12L/min,35psi,250℃ Vcap:4000V):m/z 419.21(M
【0102】
上記で得られた(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.20(9H,s),1.27-1.41(4H,m),1.71(2H,tt,J=7.3Hz,7.3Hz),2.09(2H,dt,J=6.9Hz,6.9Hz),2.24(2H,dt,J=7.9Hz,7.9Hz),4.06(2H,t,J=6.1Hz),5.27(1H,dt、J=10.7Hz,7.7Hz),5.67(1H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),5.98(1H,dd,J=11.1Hz,11.1Hz),6.27(1H,dd,J=15.0Hz,11.1Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.89,22.25,24.00,27.19,28.66,31.47,32.53,38.71,63.63,125.20,128.00,129.67,135.36,178.50
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 252(M),237,223,167,150,135,121,107,93,79,57,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2958,2929,2873,1731,1480,1460,1284,1156,984,948
【0103】
比較例1
<(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=アセテートの製造>
【0104】
【化29】
4-クロロブチル=トリメチルアセテート(2:X=Cl)を4-クロロブチル=アセテート(18.10g、0.12mol、純度99.83%)に変えた以外は実施例2と同じ条件下で実験を行ったところ、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=アセテート(収率22.45%)と(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニン-1-オール(収率12.38%)の混合物が得られ、収率が極めて低かった。
【0105】
上記で得られた(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=アセテートのスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.27-1.43(4H,m),1.71(2H,tt,J=6.9Hz,6.9Hz),2.04(3H,s),2.09(2H,dt,J=7.7Hz,7.7Hz),2.23(2H,ddt,J=1.5Hz,7.5Hz,7.5Hz),4.06(2H,t、J=6.9Hz),5.25(1H,dt,J=11.1Hz,7.7Hz),5.67(1H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),5.98(1H,dd,J=10.7Hz,10.7Hz),6.26(1H,dddt,J=14.9Hz,11.1Hz,1.5Hz,1.5Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.90,20.95,22.25,23.96,28.50,31.46,32.55,63.84,125.17,127.86,129.71,135.42,171.10
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 210(M),167,150,135,121,107,93,79,67,55,43,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2957,2928,1743,1366,1240,1041,984,949
【0106】
比較例2
<(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=アセテートの製造>
【0107】
【化30】
【0108】
4-クロロブチル=トリメチルアセテート(2:X=Cl)を4-クロロブチル=アセテート(18.10g、0.12mol、純度99.83%)に、カリウム=tert-ブトキシドと(2E)-2-ヘプテナール(5)を反応器に加える温度を-70~-60℃に変えた以外は実施例2と同じ条件下で実験を行ったところ、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=アセテート(12.62g、0.071mol、純度94.61%、4Z6E:4Z6Z:4E6E=92.8:0:7.2)が収率70.94%で得られた。比較例1と異なり-60℃以下の低温ではアセチル基の脱保護や収率の大きな低下は見られなかったが、実施例2に比べて収率が低かった。なお、工業的に-60℃以下の低温反応を行う場合、特殊な反応装置の導入が必要となり、かつ、冷却に多量の電力を使用することから経済性の観点から非常に不利である。
【0109】
比較例3
<(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=ベンゾエートの製造>
【0110】
【化31】
【0111】
室温にて、4-クロロブチル=ベンゾエート(26.55g、0.12mol、純度96.12%)、トリフェニルホスフィン(3:Ar=Ph)(31.55g、0.12mol)、ヨウ化ナトリウム(19.49g、0.13mol)、炭酸カリウム(0.97h、0.007mol)及びアセトニトリル(45.00g)を加えて、75~85℃にて17時間撹拌することにより、[4-(ベンゾイルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ヨージドを調製した。
【0112】
次に、該反応器にテトラヒドロフラン(80.00g)を30~40℃にて滴下した。滴下終了後、反応液を5~-10℃に冷却したが固化して撹拌できなくなったため、テトラヒドロフラン(160g)を追加した。しかしながら、-10~5℃では固体が多く撹拌が難しかったため5~10℃で[4-(ベンゾイルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ヨージドを溶解させ、その後、カリウム=tert-ブトキシド(12.90g、0.12mol)を加えた。引き続き、-5~5℃にて1時間撹拌することにより、反応生成物混合物を得た。該反応生成物混合物は、トリフェニルホスホニウム=4-(ベンゾイルオキシ)ブチリドを反応生成物として含有していると推定される。しかしながら、1時間の撹拌中にイリドの色は徐々に薄くなっていた。
【0113】
その後、上記反応器に、(2E)-2-ヘプテナール(5)(11.41g、0.10mol、純度98.28%)を-5~5℃にて滴下した。滴下終了後、20~30℃にて3時間撹拌した。その後、反応液に食塩水(食塩(15.16g)及び水(151.57g))を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を蒸留したが、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=ベンゾエートは全く得られなかった。トリフェニルホスホニウム=4-(ベンゾイルオキシ)ブチリドが分解したことが原因と推測している。
【0114】
実施例3
<(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)の製造>
【0115】
【化32】
【0116】
室温にて、反応器に実施例2と同様の製造方法で得られた(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)(142.69g、0.55mol、純度97.07%、4Z6E:4Z6Z:4E6E=87.8:0.7:11.5)を加えて、50℃に昇温し、その後、メチルマグネシウム=クロリド(CHMgCl)のテトラヒドロフラン溶液(1699.08g、メチルマグネシウム=クロリドとして4.39mol)を50~60℃で滴下した。滴下終了後、60~65℃にて2時間攪拌した。その後、反応液に20質量%塩酸(900.42g)を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留(b.p.=88.1~105.0℃/0.40kPa(3.0mmHg))することにより、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)(98.68g、0.55mol、純度93.79%、4Z6E:4Z6Z:4E6E=86.9:1.4:11.7)が収率99.77%で得られた。
【0117】
上記で得られた(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.27-1.41(4H,m),1.65(2H,quin-like,J=6.5Hz),2.09(2H,dt,J=6.9Hz,6.9Hz),2.25(2H,ddt,J=1.6Hz,7.4Hz,7.4Hz),3.65(2H,t,J=6.5Hz),5.29(1H,dt,J=10.7Hz,7.7Hz),5.67(1H,ddt,J=7.3Hz,7.3Hz,7.3Hz),5.97(1H,dd,J=11.1Hz,11.1Hz),6.30(1H,dddt,J=15.0Hz,11.1Hz,1.6Hz,1.6Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.89,22.23,23.98,31.47,32.48,32.51,62.40,125.24,128.69,129.36,135.31
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 168(M),150,135,121,107,93,79,67,55,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=3333,2956,2927,1456,1059,983,947,731
【0118】
実施例4
<(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)の製造>
【0119】
【化33】
【0120】
室温にて、反応器に実施例2と同様の製造方法で得られた(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)(186.39g、0.73mol、純度98.22%、4Z6E:4Z6Z:4E6E=87.9:0.8:11.3)、炭酸カリウム(30.08g、0.22mol)、メタノール(CHOH)(1394.51g)を加えて、60~65℃にて11時間攪拌した。その後、反応液に酢酸(26.14g)を加えて、該反応液を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留(b.p.=88.1~105.0℃/0.40kPa(3.0mmHg))することにより、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)(124.90g、0.71mol、純度96.32%、4Z6E:4Z6Z:4E6E=87.4:0.8:11.8)が収率98.55%で得られた。
【0121】
上記で得られた(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)のスペクトルデータは実施例3と同じであった。
【0122】
実施例5
<(4Z,6E)-1-クロロ-4,6-ウンデカジエン(7:X=Cl)の製造>
【0123】
【化34】
【0124】
反応器に、実施例4で製造された(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(6)(124.90g、0.71mol、純度96.32%、4Z6E:4Z6Z:4E6E=87.4:0.8:11.8)、ピリジン(84.82g、1.07mol)、GBL(107.24g)を加えて、40℃にて14分間撹拌した。
続いて、40~60℃にて、メタンスルホニル=クロリド(CHSOCl)(98.27g、0.86mol)を滴下した。その後、60~65℃に昇温し、そして、7.5時間撹拌した。撹拌終了後、水(178.73g)とヘキサン(107.24g)を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を酢酸水溶液(酢酸(7.52g)、水(94.06g))で洗浄し、その後、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム(3.76g)、水(94.06g))で洗浄し、そして得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留(b.p.=90.0~97.0℃/0.67kPa(5.0mmHg))することにより、(4Z,6E)-1-クロロ-4,6-ウンデカジエン(7:X=Cl)(123.75g、0.65mol、純度98.50%、4Z6E:4Z6Z:4E6E=86.4:1.1:12.5)が収率91.32%で得られた。
【0125】
上記で得られた(4Z,6E)-1-クロロ-4,6-ウンデカジエン(7:X=Cl)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.90(3H,t,J=6.9Hz),1.28-1.44(4H,m),1.86(2H,quin-like,J=6.9Hz),2.11(2H,dt,J=6.9Hz,6.9Hz),2.33(2H,dt,J=7.5Hz,7.5Hz),3.55(2H,t,J=6.9Hz),5.25(1H,dt,J=10.7Hz,7.7Hz),5.69(1H,dt,J=7.7Hz,7.7Hz),6.01(1H,dd,J=11.1Hz,11.1Hz),6.31(1H,dddt,J=14.9Hz,11.1Hz,1.5Hz,1.5Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.91,22.25,24.81,31.45,32.46,32.53,44.42,125.23,127.26,130.20,135.64
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 186(M),171,157,143,130,107,95,81,67,55,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2957,2928,1456,1443,984,948,730,655
【0126】
実施例6
<(5Z,7E)-1,1-ジエトキシ-5,7-ドデカジエン(9:R=Et)の製造>
【0127】
【化35】
【0128】
室温で、反応器にマグネシウム(15.84g、0.65mol)及びテトラヒドロフラン(186.30g)を加えて、60~65℃で16分間撹拌した。撹拌終了後、該反応器に実施例5で製造された(4Z,6E)-1-クロロ-4,6-ウンデカジエン(7:X=Cl)(117.72g、0.62mol、純度98.50%、4Z6E:4Z6Z:4E6E=86.4:1.1:12.5)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて3時間撹拌することにより、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=マグネシウムクロリド(15:M=MgCl)を調製した。
続いて、上記反応器にトルエン(288.77g)及びオルトギ酸エチル(8:R=Et)(119.64、0.81mol)を75~85℃で滴下した。滴下終了後、反応混合物を90~100℃において15時間撹拌した。その後、30~45℃に冷却し、反応液に酢酸水溶液(酢酸(77.63g)と水(232.88g))を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留(b.p.=105.1~110.5℃/0.40kPa(3.0mmHg))することにより、(5Z,7E)-1,1-ジエトキシ-5,7-ドデカジエン(9:R=Et)(130.91g、0.50mol、純度96.76%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=86.0:1.1:12.9)が収率80.18%で得られた。
【0129】
上記で得られた(5Z,7E)-1,1-ジエトキシ-5,7-ドデカジエン(9:R=Et)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=6.9Hz),1.20(6H,t,J=6.9Hz),1.27-1.41(4H,m),1.41-1.49(2H,m),1.63(2H,dt,J=9.9Hz,5.8Hz),2.09(2H,q-like,J=6.9Hz),2.18(2H,q-like,7.5Hz),3.45-3.52(2H,m),3.59-3.67(2H,m),4.48(1H,t,J=5.7Hz),5.28(1H,dt,J=10.7Hz,7.7Hz),5.65(1H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),5.95(1H,dd,J=11.1Hz,11.1Hz),6.28(1H,dddt,J=15.0Hz,11.1Hz,1.5Hz,1.5Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.90,15.31,22.24,24.84,27.38,31.51,32.52,33.09,60.82,102.77,125.48,129.01,129.32,134.89
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 254(M),208,165,136,103,79,57,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2956,2928,2873,1457,1444,1374,1343,1129,1064,984,94
【0130】
実施例7-1
<(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の製造>
【0131】
【化36】
【0132】
反応器に、実施例6と同様の製造方法で得られた(5Z,7E)-1,1-ジエトキシ-5,7-ドデカジエン(9:R=Et)(10.00g、0.036mol、純度90.82%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=84.3:1.3:14.4)、しゅう酸二水和物((COOH))(13.50g、0.11mol)、テトラヒドロフラン(35.70g)及び水(35.70g)を加えて、15~25℃にて13.5時間撹拌した。そして、ヘキサン(10.42g)を加えて、30分間撹拌した。撹拌終了後、反応液を静置して分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)により精製することにより、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)(6.28g、0.033mol、純度93.69%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=83.9:1.5:14.6)が、収率91.46%で得られた。
【0133】
実施例7-2
<(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の製造>
【0134】
【化37】
【0135】
反応器に、実施例6と同様の製造方法で得られた(5Z,7E)-1,1-ジエトキシ-5,7-ドデカジエン(9:R=Et)(10.00g、0.036mol、純度90.82%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=84.3:1.3:14.4)、しゅう酸二水和物((COOH))(13.50g、0.11mol)、テトラヒドロフラン(35.70g)及び水(35.70g)を加えて、60~65℃にて1.5時間撹拌した。そして、ヘキサン(10.42g)を加えて、30分間撹拌した。撹拌終了後、反応液を静置して分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)により精製することにより、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)(6.11g、0.030mol、純度89.74%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=81.1:1.8:17.1)が、収率84.51%で得られた。なお、加水分解反応を高温で、例えば上記の60~65℃で長時間続けると、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)のGC純度が徐々に低下していき、最終的に(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の収率が下がることが分かった。この収率の低下は、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)が分解する為と考えられる。この分解を防ぐ為に、GC又は薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡することにより、適切なタイミングで加水分解反応を停止させることが可能である。
【0136】
上記で得られた(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の各種スペクトルデータは、実施例7-1で得られた各種スペクトルデータと同じであった。
【0137】
実施例7-3
<(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の製造>
【0138】
【化38】
【0139】
反応器に、実施例6と同様の製造方法で得られた(5Z,7E)-1,1-ジエトキシ-5,7-ドデカジエン(9:R=Et)(10.00g、0.036mol、純度90.82%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=84.3:1.3:14.4)、しゅう酸二水和物((COOH))(13.50g、0.11mol)、テトラヒドロフラン(35.70g)及び水(35.70g)を加えて、60~65℃にて5.5時間撹拌した。そして、ヘキサン(10.42g)を加えて、30分間撹拌した。撹拌終了後、反応液を静置して分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)により精製することにより、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)(4.89g、0.022mol、純度81.31%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=72.2:2.7:25.1)が、収率61.22%で得られた。なお、加水分解反応を高温で、例えば上記の60~65℃で長時間続けると、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)のGC純度が徐々に低下していき、最終的に(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の収率が下がることが分かった。よって、実施例7-2において述べた通り、GC又は薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡することにより、適切なタイミングで加水分解反応を停止させることが可能である。
【0140】
上記で得られた(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)の各種スペクトルデータは、実施例7-1で得られた各種スペクトルデータと同じであった。
【0141】
上記で得られた(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.27-1.40(4H,m),1.72(2H,tt,J=7.3Hz),2.09(2H,q-like,J=6.9Hz),2.21(2H,ddt,J=1.2Hz,7.4Hz,7.4Hz),2.44(2H,dt,J=1.6Hz,7.3Hz),5.24(1H,dt,J=10.7Hz,7.7Hz),5.68(1H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),5.99(1H,t-like,J=11.1Hz),6.24(1H,dddt,J=14.9Hz,11.1Hz,1.6Hz,1.6Hz),9.77(1H,t,J=1.6Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.88,21.97,22.22,26.81,31.44,32.50,43.15,125.16,127.96,129.91,135.58,202.48
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 180(M),162,151,136,123,79,67,55,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2956,2928,1726,1456,986,950
【0142】
実施例8
<(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)の製造>
【0143】
【化39】
【0144】
反応器に、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)(1.08g、0.029mol)、テトラヒドロフラン(20.00g)、25質量%水酸化ナトリウム水溶液(0.27g、水酸化ナトリウムとして0.0017mol)及び水(7.26g)を加えて、0~5℃で1時間攪拌した。
続いて、実施例7-1と同様の製造方法で得られた((5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)(10.61g、0.057mol、純度97.13%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=83.8:1.5:14.7)を-5~10℃にて滴下した。その後、0~10℃で2時間撹拌した。撹拌終了後、酢酸水溶液(酢酸(20g)、水(60g))とヘキサン(20g)を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1~5:1)により精製することにより、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)(9.78g、0.051mol、純度94.34%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=82.3:1.5:16.2)が収率88.56%で得られた。
【0145】
上記で得られた(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.27-1.41(4H,m),1.45(2H,quin-like,J=7.3Hz),1.54-1.63(2H,m),2.00(1H,brs),2.09(2H,dt,J=6.9Hz,6.9Hz),2.19(2H,dt,J=1.6Hz,7.5Hz,7.5Hz),3.64(2H,t,J=6.5Hz),5.28(1H,dt,J=11.1Hz,7.7Hz),5.66(1H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),5.95(1H,dd,J=11.1Hz,11.1Hz),6.28(1H,dddt,J=14.9Hz,11.1Hz,1.6Hz,1.6Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.91,22.25,25.79,27.32,31.50,32.23,32.53,62.79,125.41,129.01,129.31,135.00
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 182(M),164,135,121,107,93,79,67,55,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=3326,2956,2928,1457,1425,1060,983,949,731
【0146】
実施例9
<(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテート(12)の製造>
【0147】
【化40】
室温にて、反応器に実施例8で得られた(5Z,7E)-5,7-ドデカジエン-1-オール(11)(9.63g、0.050mol、純度94.34%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=82.3:1.5:16.2)、ピリジン(6.31g、0.080mol)及びテトラヒドロフラン(30.00g)を加えて、15~25℃にて2分間撹拌した。撹拌終了後、無水酢酸(AcO)(6.61g、0.065mol)を15~25℃にて滴下し、15~25℃にて6.5時間撹拌した。次に、該反応液に水(20.00g)、ヘキサン(30.00g)を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、そして残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)により精製することにより、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテート(12)(11.21g、0.050mol、純度99.70%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=81.9:1.6:16.5)が収率100%で得られた。
【0148】
上記で得られた(5Z,7E)-5,7-ドデカジエニル=アセテート(12)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.27-1.40(4H,m),1.44(2H,quin-like,J=7.7Hz),1.64(2H,quin-like,J=6.9Hz),2.04(3H,s),2.09(2H,dt,J=6.9Hz,6.9Hz),2.19(2H,ddt,J=1.5Hz,7.5Hz,7.5Hz),4.06(2H,t,J=6.5Hz),5.26(1H,dt,J=10.7Hz,7.7Hz),5.66(1H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),5.96(1H,dd,J=11.1Hz,11.1Hz),6.27(1H,dddt,J=15.0Hz,11.1Hz,1.5Hz,1.5Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.90,20.96,22.23,25.97,27.15,28.12,31.48,32.52,64.39,125.35,128.96,129.17,135.13,171.17
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 224(M),181,164,136,121,107,93,79,67,55,43
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2956,2928,1742,1365,1238,1042,985,950
【手続補正書】
【提出日】2023-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
まず、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリアリールホスホニウム=ハライド化合物(4)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る。該脱プロトン化反応により得られる該混合物は、トリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)を反応生成物として含有していると推定される(以下では、該反応生成物がトリアリールホスホニウム=4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチリド化合物(13)として説明をする)。そして、次に、該反応生成物混合物と、記式(5)で表される(2E)-2-ヘプテナールとを、例えばイン・サイチュ(in situ)で、ウィッティヒ反応に付すことにより、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)を製造することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)の脱トリメチルアセチル化反応は、例えば、塩基を用いて行うことができる。
トリメチルアセチル化反応に用いる塩基としては、例えば、n-ブチルリチウム及びtert-ブチルリチウム等のアルキルリチウム;メチルマグネシウム=クロリド、メチルマグネシウム=ブロミド、ナトリウム=アセチリド及びカリウム=アセチリド等の有機金属試薬類;水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al)及び水素化アルミニウムリチウム(LAH)等の有機アルミニウム化合物;カリウム=tert-ブトキシド、ナトリウム=tert-ブトキシド、カリウム=メトキシド、ナトリウム=メトキシド及びカリウム=エトキシド、ナトリウム=エトキシド等の金属アルコキシド;水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;並びに、リチウム=ジイソプロピルアミド、ナトリウム=ビス(トリメチルシリル)アミド等の金属アミド等が挙げられ、反応性の観点から、カリウム=tert-ブトキシド、ナトリウム=メトキシド及びナトリウム=エトキシド等の金属アルコキシド;メチルマグネシウム=クロリド、メチルマグネシウム=ブロミド、ナトリウム=アセチリド及びカリウム=アセチリド等の有機金属試薬類;水酸化カリウム及び、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;並びに、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩が好ましく、有機金属試薬類及びアルカリ金属炭酸塩がより好ましい。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該塩基は、市販されているものを用いることができる。
該塩基の使用量は、反応完結の観点から、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=トリメチルアセテート(1)1molに対して、好ましくは0.01~30.0mol、より好ましくは0.1~15.0molである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬は上記一般式(15)で表される。一般式(15)におけるMは、Li又はMgZを表し、Zはハロゲン原子又は(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル基を表す。ハロゲン原子Zとしては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)の具体例としては、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルリチウム;並びに、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=クロリド、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ブロミド、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ヨージド等の(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(グリニャール試薬)が挙げられ、汎用性の観点から、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬が好ましい。
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)は、上記の(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)から(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)を調製する工程により調製することができる。
例えば、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル求核試薬(15)のうち(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(15:M=MgZ)は、下記の化学反応式で示される通り、(4Z,6E)-1-ハロ-4,6-ウンデカジエン化合物(7)を溶媒中、マグネシウムと反応させることにより、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(15:M=MgZ)を得る工程(グリニャール試薬調製)により調製することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=ハライド試薬(15:M=MgZ )の使用量は、経済性の観点から、オルトギ酸エステル化合物(8)1molに対して、好ましくは0.3~1.5molである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
該加水分解反応には、上述の酸又は水とともに、必要に応じて溶媒を更に用いてもよい。
該溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン及びクメン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテルジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、アセトニトリル、アセトン、γーブチロラクトン、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;並びに、メタノール及びエタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
用いる酸により最適な溶媒は異なるが、例えば、酸として、しゅう酸を用いる場合は、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン及びγーブチロラクトンが好ましい。
該溶媒の使用量は、(5Z,7E)-1,1-ジアルコキシ-5,7-ドデカジエン化合物(9)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
該還元反応には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、使用する還元剤により異なるが、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン及びクメン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテルジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、アセトニトリル、アセトン、γーブチロラクトン、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;メタノール及びエタノール等のアルコール系溶媒;並びに、水等が挙げられる。
上記還元反応は、溶媒として水とそれ以外の溶媒の二層系を用いて行われてもよい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該還元反応に用いる溶媒の使用量は、(5Z,7E)-5,7-ドデカジエナール(10)1molに対して、好ましくは0~5000g、より好ましくは0~2000gである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
室温にて、反応器に、実施例1で得られた4-クロロブチル=トリメチルアセテート(2:X=Cl)(23.13g、0.12mol、純度99.98%)、トリフェニルホスフィン(PPh)(3:Ar=Ph)(31.55g、0.12mol)、ヨウ化ナトリウム(NaI)(19.49g、0.13mol)、炭酸カリウム(KCO)(0.97、0.007mol)及びアセトニトリル(CHCN)(45.00g)を加えて、75~85℃にて17時間撹拌することにより、[4-(トリメチルアセチルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ヨージド(4:Y=I,Ar=Ph)を調製した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
【化29】
4-クロロブチル=トリメチルアセテート(2:X=Cl)を4-クロロブチル=アセテート(18.10g、0.12mol、純度99.83%)に変えた以外は実施例2と同じ条件下で実験を行ったところ、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニル=アセテート(収率22.45%)と(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエン-1-オール(収率12.38%)の混合物が得られ、収率が極めて低かった。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
室温にて、4-クロロブチル=ベンゾエート(26.55g、0.12mol、純度96.12%)、トリフェニルホスフィン(3:Ar=Ph)(31.55g、0.12mol)、ヨウ化ナトリウム(19.49g、0.13mol)、炭酸カリウム(0.97、0.007mol)及びアセトニトリル(45.00g)を加えて、75~85℃にて17時間撹拌することにより、[4-(ベンゾイルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ヨージドを調製した。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0112
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0112】
次に、該反応器にテトラヒドロフラン(80.00g)を30~40℃にて滴下した。滴下終了後、反応液を-10~5℃に冷却したが固化して撹拌できなくなったため、テトラヒドロフラン(160g)を追加した。しかしながら、-10~5℃では固体が多く撹拌が難しかったため5~10℃で[4-(ベンゾイルオキシ)ブチル]トリフェニルホスホニウム=ヨージドを溶解させ、その後、カリウム=tert-ブトキシド(12.90g、0.12mol)を加えた。引き続き、-5~5℃にて1時間撹拌することにより、反応生成物混合物を得た。該反応生成物混合物は、トリフェニルホスホニウム=4-(ベンゾイルオキシ)ブチリドを反応生成物として含有していると推定される。しかしながら、1時間の撹拌中にイリドの色は徐々に薄くなっていた。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0128
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0128】
室温で、反応器にマグネシウム(15.84g、0.65mol)及びテトラヒドロフラン(186.30g)を加えて、60~65℃で16分間撹拌した。撹拌終了後、該反応器に実施例5で製造された(4Z,6E)-1-クロロ-4,6-ウンデカジエン(7:X=Cl)(117.72g、0.62mol、純度98.50%、4Z6E:4Z6Z:4E6E=86.4:1.1:12.5)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて3時間撹拌することにより、(4Z,6E)-4,6-ウンデカジエニルマグネシウム=クロリド(15:M=MgCl)を調製した。
続いて、上記反応器にトルエン(288.77g)及びオルトギ酸エチル(8:R=Et)(119.64、0.81mol)を75~85℃で滴下した。滴下終了後、反応混合物を90~100℃において15時間撹拌した。その後、30~45℃に冷却し、反応液に酢酸水溶液(酢酸(77.63g)と水(232.88g))を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留(b.p.=105.1~110.5℃/0.40kPa(3.0mmHg))することにより、(5Z,7E)-1,1-ジエトキシ-5,7-ドデカジエン(9:R=Et)(130.91g、0.50mol、純度96.76%、5Z7E:5Z7Z:5E7E=86.0:1.1:12.9)が収率80.18%で得られた。