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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178021
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】プリント配線板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
H05K3/18 C
H05K3/18 G
H05K3/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091047
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】514015019
【氏名又は名称】エレファンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098350
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 睦彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 健二
(72)【発明者】
【氏名】須賀 淳
(72)【発明者】
【氏名】清水 信哉
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA18
5E343AA33
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB34
5E343BB44
5E343BB48
5E343CC20
5E343DD33
5E343DD43
5E343EE37
5E343EE40
5E343ER02
5E343ER18
5E343ER35
5E343ER43
5E343FF01
5E343FF11
5E343FF12
5E343FF16
5E343GG08
(57)【要約】
【課題】より高精細な導電パターンを有するプリント配線板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性の基材11と、基材11上に光硬化樹脂および金属ナノ粒子で形成されためっき種層13と、めっき種層13上に形成されためっき層15とを備え、めっき種層13は非露光領域である第1の領域13aと、露光領域である第2の領域13bとを有し、めっき層15は第2の領域13bには形成されず第1の領域13aに形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基材と、
前記基材上に光硬化樹脂および金属ナノ粒子で形成されためっき種層と、
前記めっき種層上に形成されためっき層とを備え、
前記めっき種層は非露光領域である第1の領域と、露光領域である第2の領域とを有し、前記めっき層は前記第2の領域には形成されず前記第1の領域に形成されている
プリント配線板。
【請求項2】
前記めっき種層は前記基材の全面に形成されている請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記めっき種層は前記基材上にパターン状に形成されている請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項4】
光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含んだ溶液を基材の表面に塗布する塗布工程と、
前記溶液が塗布された基材をパターン状に露光する露光工程と、
前記露光された基材を焼成する焼成工程と、
前記焼成された基材をめっきするめっき工程とを備え、
前記めっき工程において、露光部にはめっき金属が析出せず、非露光部にめっき金属が析出するプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記露光工程で、目的の配線パターンのネガイメージで露光を行う請求項4に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記塗布工程で、目的の配線パターンを包含するよう前記基材上にパターン状に前記溶液を塗布し、
前記露光工程で、前記塗布されたパターンに対して、前記配線パターンのネガイメージで露光を行う請求項4に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記基材の表面に塗布する方法がインクジェット印刷方法である請求項4に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記金属ナノ粒子として銀ナノ粒子を用い、前記光硬化樹脂は光重合開始剤を含み、前記光重合開始剤はその成分としてイオウまたはヨウ素を含有する請求項4に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記金属ナノ粒子として銅ナノ粒子を用い、前記光硬化樹脂は光重合開始剤を含み、前記光重合開始剤はその成分としてヨウ素を含有する請求項4に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細な導電パターンを形成可能なプリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板は、樹脂などの絶縁性基材(ベース材料)の上に金属層を形成した後、この金属層の不要な部分をエッチングにより除去することによって配線パターンを形成する、という方法で製造されてきた。この方法では大量の水と、エッチングで捨てられる余分な金属を使用し、多くの工程を経ねばならなかった。
【0003】
これに対し、本出願人は、インクジェット法などで金属ナノ粒子を含む導電性インクを必要な部分にのみ塗布し、さらに抵抗値を下げるためめっき処理で金属層を増膜するという手法を提案している(特許文献1)。この手法は基板製造工程の大幅な簡略化を可能とし、特に使用する水の量を大幅に削減すること、さらにCO2の排出量削減に成功した。インクジェット法は、オンデマンドで少量のプリント配線板を最小の時間とコストで作れる信頼できる方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6300213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェット法で達成できるラインアンドスペースで表現される精密さは、200~200μmが限界で、これより高精細な導電パターンを作製することは困難であった。
【0006】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、より高精細な導電パターンを有するプリント配線板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示によるプリント配線板は、絶縁性の基材と、前記基材上に光硬化樹脂および金属ナノ粒子で形成されためっき種層と、前記めっき種層上に形成されためっき層とを備え、前記めっき種層は非露光領域である第1の領域と、露光領域である第2の領域とを有し、前記めっき層は前記第2の領域には形成されず前記第1の領域に形成されている。
【0008】
このプリント配線板では、光硬化樹脂および金属ナノ粒子で形成されためっき種層は露光領域と非露光領域とでめっきの可否が分かれる。これにより、パターン状の露光に基いて形成されたパターン状のめっき層は、高精細な導電パターンとなりうる。
【0009】
本開示によるプリント配線板の一態様では、前記めっき種層は前記基材の全面に形成されている。
【0010】
本開示によるプリント配線板の他の態様では、前記めっき種層は前記基材上にパターン状に形成されている。
【0011】
本開示によるプリント配線板の製造方法は、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含んだ溶液を基材の表面に塗布する塗布工程と、前記溶液が塗布された基材をパターン状に露光する露光工程と、前記露光された基材を焼成する焼成工程と、前記焼成された基材をめっきするめっき工程とを備え、前記めっき工程において、露光部にはめっき金属が析出せず、非露光部にめっき金属が析出する。
【0012】
このプリント配線板の製造方法では、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含んだ溶液を基材の表面に塗布し、これをパターン状に露光し、焼成することにより、後続のめっき工程においては、露光部にはめっき金属が析出せず、非露光部にめっき金属が析出する。その結果、パターン状の露光を通して、高精細な導電パターンを形成することができる。
【0013】
前記プリント配線板の製造方法の一態様では、前記露光工程で、目的の配線パターンのネガイメージで露光を行う。
【0014】
前記プリント配線板の製造方法の他の態様では、前記塗布工程で、目的の配線パターンを包含するよう前記基材上にパターン状に前記溶液を塗布し、前記露光工程で、前記塗布されたパターンに対して、前記配線パターンのネガイメージで露光を行う。
【0015】
前記プリント配線板の製造方法の他の態様では、前記基材の表面に塗布する方法がインクジェット印刷方法である。
【0016】
前記プリント配線板の製造方法の他の態様では、前記金属ナノ粒子として銀ナノ粒子を用い、前記光硬化樹脂は光重合開始剤を含み、前記光重合開始剤はその成分としてイオウまたはヨウ素を含有する。
【0017】
前記プリント配線板の製造方法の他の態様では、前記金属ナノ粒子として銅ナノ粒子を用い、前記光硬化樹脂は光重合開始剤を含み、前記光重合開始剤はその成分としてヨウ素を含有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、より高精細な導電パターンを有するプリント配線板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態によるプリント配線板の概略構成を模式的に表した断面図である。
図2】本発明の実施形態によるプリント配線板の第1の製造方法の概略の工程を模式的に示した図である。
図3】本発明の実施形態によるプリント配線板の第2の製造方法の概略の工程を模式的に示した図である。
図4】本発明の実施形態によるプリント配線板の第2の製造方法の具体的な応用例としてプリント配線板の表面の斜視図である。
図5】本発明の実施形態におけるめっき処理前後のサンプルの写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態では、光硬化樹脂のインクを用い、この中に金属ナノ粒子を含ませるというアプローチを採用する。光硬化樹脂には光重合開始剤が含まれており、ここに所定の光が当たると反応が起こる。本発明者らは、光重合開始剤等の成分等により、場合によっては金属ナノ粒子によるめっきの触媒に影響を与えるものがあることに気づき、これに基づいて高精細な導電パターンが形成できることに想到した。以下、本実施形態のプリント配線板の構成およびその製造方法について具体的に説明する。
【0021】
<プリント配線板の構成>
図1に本実施形態によるプリント配線板の基本構成を模式的に表した断面図を示す。図1(a)は概略の構成を示し、図1(b)は具体的な構成例を示している。
【0022】
図1(a)に示すように、プリント配線板10は、基本的に、絶縁性の基材11と、この基材11上に光硬化樹脂および金属ナノ粒子で形成されためっき種層13と、このめっき種層13上に形成されためっき層15とを備えて構成される。めっき種層13は、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含有する溶液(インク)の層であるインク層に基いて形成される。めっき層15は導電層を構成する。
【0023】
図1(b)は簡略化したプリント配線板10の概略構成を示している。めっき種層13の元となるインク層が基材11上に塗布され、このインク層はパターン状に露光される。その結果、めっき種層13には、非露光領域である第1の領域13aと、露光領域である第2の領域13bが形成される。めっき種層13では、非露光領域である第1の領域13aにある金属ナノ粒子のみがめっき種として機能し、露光領域である第2の領域13bにある金属ナノ粒子はめっき種として機能しない。その結果、非露光領域である第1の領域13aの上にのみめっき金属が析出して導電パターンとしてのめっき層15が形成される。
【0024】
プリント配線板10の構成要素の具体的な構成は次のとおりである。
【0025】
(絶縁性基材11)
絶縁性の基材(絶縁性基材)11は、典型的には樹脂で構成することができる。その樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ナイロン6-10、ナイロン46などのナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS、PMMA、ポリ塩化ビニルなどの樹脂が挙げられる。
【0026】
本実施形態において使用する絶縁性基材11は特に限定するものではないが、フィルム状の基材としてのベースフィルムを例として説明する。
【0027】
ベースフィルムの厚みは、5μmから3mmが好ましく、12μmから1mmがより好ましく、25μmから200μmが最も好ましい。ベースフィルムの厚みが薄すぎる場合、強度が不十分になると共に、めっき工程時にベースフィルムの歪みが顕著になるおそれがある。ベースフィルムが厚すぎる場合、性能上特に問題はないが、その材料費が増大してしまうとともに、完成した基板の体積および重量が不必要に大きくなってしまうおそれがある。但し、これは絶縁性基材がフィルム状の基材である場合の条件であり、本発明が適用される絶縁性基材はフィルム状の基材に限定されないことは上述したとおりである。
【0028】
ベースフィルムの表面には、後述するインクを均一に塗るために、易接着処理を施すことが好ましい。易接着処理としては、例えばコロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理を用いることができる。このような易接着処理を実行する代わりに、市販の易接着処理済のベースフィルムを利用してもよい。
【0029】
(めっき種層13;インク層;金属ナノ粒子を含む層)
めっき種層13は、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含有する溶液としての光硬化樹脂インク(以下、「UV硬化インク」または「UVインク」「ナノインク」ともいう)の塗布に基いて形成される層である。光硬化樹脂インクは、プリント配線板10を製造するために絶縁性の基材の表面に塗布される溶液であって、光により硬化される光硬化樹脂と、めっき種として機能する金属ナノ粒子とが混合された溶液である。本実施の形態では、インク層は部分的に露光する。露光した領域は金属ナノ粒子の触媒活性が消滅し、その領域には後続のめっき処理においてめっきが付かない。光硬化樹脂には光重合開始剤が含まれており、その種類によって、めっきを阻害(妨害)するものがある。中でも露光によって阻害成分を放出するものをここに使用する。
【0030】
本実施形態における光硬化のための光は紫外線(UV:ultraviolet)であり、以下、光硬化樹脂をUV硬化樹脂という。
【0031】
めっき種層13の厚みは、100nmから20μmが好ましく、200nmから5μmがさらに好ましく、500nmから2μmが最も好ましい。この層が薄すぎると、機械的強度が低下するおそれがある。逆に、インク塗布層が厚すぎると、一般に金属ナノ粒子の方が通常の金属よりも高価であるため、製造コストが大きくなってしまうおそれがある。
【0032】
金属ナノ粒子の素材としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)などが用いられ、一種または複数の金属を含んでもよいが、導電性の観点から金、銀、銅が好ましく、銅に比べて酸化されにくく金に比べて安価な銀がよいが、さらに安価な銅を利用可能ならばなおよい。
【0033】
金属ナノ粒子の平均粒子径は1nmから200nmが好ましく、10nmから100nmがより好ましい。粒子径が小さすぎる場合、粒子の反応性が高くなりインクの保存性・安定性に悪影響を与えるおそれがある。粒子径が大きすぎる場合、薄膜の均一形成が困難になると共に、インクの粒子の沈殿が起こりやすくなるおそれがある。
【0034】
金属ナノ粒子を含んだUV硬化樹脂インクの粘度については1cpsから50cpsが好ましい。塗布工程にインクジェット法を用いる場合には2cpsから20cpsが好ましい。
【0035】
通常のインクでは、金属ナノ粒子を混合しても、ポリイミドのような樹脂基材に金属ナノ粒子を強く定着する理由が無く、多数の金属ナノ粒子が焼結されて初めて樹脂基材に密着することができる。また、バインダーを用いたインクでは、ある程度の強度で金属粒子を定着することが可能であるが、金属ナノ粒子の濃度を低減した場合はこの限りでは無い。金属ナノ粒子が焼結していない場合、金属ナノ粒子が脱落・流出してしまい、密着性が得られないばかりか、めっき槽にも悪影響を与えるおそれがある。一方、UVインクや熱硬化可能なバインダーを用いた場合には、次の工程での金属ナノ粒子の流失を防止することが可能と考えられ、この結果として、金属ナノ粒子の焼結層が無くても密着性が得られると推定した。
【0036】
めっき種層にめっきが付くにはその表面の近傍に金属ナノ粒子が位置する必要がある。インク層の表面またはその近傍にある金属ナノ粒子の表面に被覆材による保護膜があっても、焼成によりこの保護膜が除去される。しかし、金属ナノ粒子の上に完全に硬化した樹脂が乗りすぎると、当該金属ナノ粒子はインク層の表面から深い場所に位置することになりめっきが付かない。これが光硬化樹脂の硬化率が高すぎるとめっきが付かない理由と考えられる。
【0037】
UVインクの金属ナノ粒子の濃度に関しては、めっき工程では、めっき種(めっき触媒)としての金属ナノ粒子が多いほうがよいが、UV光を過度に遮蔽しないという観点およびコストの観点からインクに投入できる金属ナノ粒子は少ないほうがよい。
【0038】
このような観点から、種々の実験を繰り返し、UVインクに対する適正な金属ナノ粒子の投入量(重量濃度)の範囲を求めた。
【0039】
例えば、ビスフェノールAジアルキジルエーテル(53wt%),信越化学社製の4官能エポキシモノマーKR-470(5wt%),オキセタン(40wt%),光重合開始剤(2wt%)を混合した系に銀ナノインクを銀ナノ粒子が5wt%の濃度になるように混合した系では、UV硬化するが、無電解めっき1時間で、めっきはつかなかった。
【0040】
この無電解めっきはホルムアルデヒドを還元剤とした硫酸銅溶液をpH10以上にした標準的なものである。同じ組成で銀ナノ粒子が5wt%では、同じめっき液で、顕微鏡で観察するとわずかにめっきが付き始めているのが観測された。さらに8wt%では、めっきに成功し、同じめっき液で3時間すると十分なめっきが付くことが分かった。ここから実用的にめっきが付く下限を8wt%と判定した。一方で20wt%以上にするとUVインクが硬化しなくなるため、ここを限度とした。より好ましくは10wt%前後がよいと言える。
【0041】
このような実験の結果、インク中の金属ナノ粒子の含有割合については、必要最低限の範囲として、重量濃度(wt%)で、8%~20%であることが好ましいことが判明した。この重量濃度の低下は高価な金属ナノ粒子のコストを低減につながる。但し、重量濃度がこの範囲の下限を下回ると、めっき層が導電層として機能しなくなるおそれがある。
【0042】
なお、本実施形態において、当該重量濃度範囲のインクで形成されためっき種層13(露光および焼成後)自体は導電層として機能しなくてもよく、最終的に生成されためっき層15が導電層として機能すれば足りる。
【0043】
(めっき層15)
導電層としてのめっき層15は、めっき種層13の上にめっき処理(電解めっきまたは無電解めっき)により形成される。
【0044】
めっき金属としては、銅、ニッケル、錫、銀、金などを用いることができるが、経済性および導電性の観点から銅を用いることが最も好ましい。
【0045】
めっき層15の厚さは、3μmから100μmが好ましく、3μmから35μmがより好ましい。めっき層15が薄すぎると、機械的強度が不足すると共に、導電性が実用上十分に得られないおそれがある。逆に、めっき層15が厚すぎると、めっき処理に必要な時間が長くなり、製造コストが増大するおそれがある。一般に電解めっきの方が無電解めっきに比べてめっきに必要な時間が短いため、電解めっきの場合のほうがより厚いめっき層に現実的なコストで対応できる。ただし、無電解めっきは、つながった電極ラインだけでなく、島として浮いた領域にめっきができる利点を有する。
【0046】
<プリント配線板の製造方法>
本実施形態によるプリント配線板の製造方法は、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含んだ溶液を基材の表面に塗布する塗布工程と、前記溶液が塗布された基材をパターン状に露光する露光工程と、前記露光された基材を焼成する焼成工程と、前記焼成された基材をめっきするめっき工程とを備え、前記めっき工程において、露光部にはめっき金属が析出せず、非露光部にめっき金属が析出する。
【0047】
より具体的には、露光工程では、目的の導電パターンのネガイメージで露光を行う。
【0048】
(インクの塗布工程)
基材の表面への金属ナノ粒子を含むUV硬化インクの塗布は、後述するように、基材上に全面塗布する場合とパターン状に塗布する場合とがある。パターン状に塗布する場合には、印刷による方法が採用でき、典型的にはインクジェット法を用いる。但し、必ずしもインクジェット法に限るものではなく、これ以外の塗布方法を用いてもよい。また、後述する実験では、バーコーターによる塗布も行っている。
【0049】
金属ナノ粒子を含んだUV硬化インクを基材としてのベースフィルムに塗布した後、溶媒がある場合はこれを除去する乾燥工程を行う。この工程は公知の金属ナノ粒子インクの乾燥工程と同様である。金属ナノ粒子を含んだUV硬化インクの乾燥方法としては、オーブンなどによる加熱、温風乾燥等を採用することができる。
【0050】
(UV露光工程)
金属ナノ粒子を含んだUV硬化インクのUV露光工程では、パターン状の露光を行う。その際、UV硬化樹脂に含まれる光重合開始剤の感度波長によって露光手段を選択する。パターン状の露光はマスクを用いてもよいし、後述する光描画装置による光描画を行ってもよい。また、その露光パターンとしては目的の導電パターンのネガイメージで露光を行う。このUV露光工程では、UV硬化樹脂が硬化し過ぎず不完全硬化状態とする。
【0051】
(UV硬化樹脂の焼成工程)
UV露光工程に続く焼成工程ではUV硬化樹脂の追加的な硬化が行われるとともに、インク層表面において樹脂に裂け目を生じさせる。金属ナノ粒子はこの裂け目を通して表面につながり、後続のめっき工程ではこの裂け目を通してめっき種層の表面に金属が析出すると推測される。この裂け目を生じさせる作用については、焼成前のUV硬化樹脂が硬化し過ぎず不完全硬化状態となっていることがその作用を助けていると推測される。但し、本実施形態においては、露光部でのめっき阻害効果により露光部ではめっき金属が析出しない。
【0052】
また、この焼成工程では、めっき種層と基材との密着性の向上も期待される。上述したように、例えば銅ナノ粒子のように金属ナノ粒子によってはその表面に被覆材による保護膜が形成されている場合がある。被覆材は例えば有機酸類等を含む。焼成工程では、このような金属ナノ粒子についてはめっき種として機能させるために、UV露光後めっき前に焼成によりこのような保護膜が除去される。
【0053】
焼成温度は160℃から260℃程度で焼成時間は10分から1時間である。UV硬化インクの場合には焼成温度は160℃では不十分で260℃以上が好ましい。この焼成工程では、めっき種層と基材との密着性の向上も期待される。この工程を経て後続のめっき工程へ移行する。
【0054】
(めっき工程)
上記インク塗布工程およびUV露光工程の後、ベースフィルム上に形成されためっき種層に対し、めっき処理(電解めっきまたは無電解めっき)を行う。これにより、めっき種層の表面および内部にめっき金属を析出させる。
【0055】
めっき方法は公知のめっき液を用いた公知のめっき処理と同様であり、具体的には無電解銅めっき、電解銅めっき、電解ニッケルめっき等を含みうる。
【0056】
UV硬化樹脂には光重合開始剤が含まれており、ここにUV光が当たると反応が起こり、基本的には樹脂の硬化が始まる。しかし、上述したように、光重合開始剤は、場合によっては金属ナノ粒子によるめっきの触媒に影響を与える。これは金属と光重合開始剤の組み合わせにより決まる。これによって、めっき種層の光が当たった部分(露光領域)には無電解めっき液に漬けてもめっきが付かず、光が当たらなかった部分(非露光領域)にはめっきが付く。すなわち、この方法によれば露光領域と非露光領域でめっきの可否が分かれるため、これによって導電パターンを作製することができる。UV光はビームを絞り込むことができるので、このような手法を利用すれば、より高精細な導電パターン、例えば現状では、1μm以下のパターンを作ることも可能である。ただし、この場合は露光部にめっきが付かず、非露光部にめっきが付くので、露光パターンは、いわゆるポジネガ逆転のパターン(ネガイメージ)となる。このパターンは、目的の導電パターンに対応するマスクを用いた露光により形成することもできるし、描画装置を用いてUV光のLEDで描画してオンデマンドで形成することもできる。このような描画装置としては、例えば英国製の小型LED直接描画装置、マイクロライターMLが挙げられる。
【0057】
(プリント配線板の第1の製造方法)
図2に本実施形態によるプリント配線板の第1の製造方法の概略の工程を模式的に示す。
【0058】
このプリント配線板は、絶縁性基材(ベースフィルム)11と、この絶縁性基材11上に金属ナノ粒子を含むUV硬化インクを塗布することによりインク層13を形成する。この例では、スピンコート等によりポリイミド等のベースフィルム上にUV硬化インクを全面塗布する。次いで、UV光で目的の導電パターンのネガイメージのパターンを描画することによりパターン状に露光を行う。これにより露光した部分である露光領域13bのめっき触媒が失活する。その後、焼成により熱硬化してすべての部分を硬化させる。このようにしてめっき種層13が形成される。ついで、めっき(ここでは無電解めっき)を施すことにより、非露光領域13aにめっき金属が析出することにより配線パターン15aとしてのめっき層15が形成される。UV硬化インクの非露光部は、熱硬化したものと考えられる。このようにしてプリント配線板が完成する。
【0059】
なお、図2において示した各層の厚さの比率はあくまで例示であり、本発明は図示の比率に限定されるものではない。また、導電ラインの幅やライン間隔も例示にすぎない。
【0060】
この方法によれば、現状、0.6μm~1μmの分解能で配線パターンを形成することができる。図ではラインの幅は3μmの例を示している。
【0061】
(プリント配線板の第2の製造方法)
図3に、本実施形態によるプリント配線板の第2の製造方法の概略の工程を模式的に示す。
【0062】
図2に示した第1の製造方法の場合には基板全面に金属ナノ粒子を含んだUV硬化インクを塗布したが、図3に示す第2の製造方法ではインクジェット法などの印刷方法で可能なラインアンドスペースで、必要な部分のみに金属ナノ粒子を含んだUV硬化インクをパターン状に塗布することによりインクパターン13cを形成する。
【0063】
より具体的には、目的の導電パターンを包含するインクパターン13cに基いてパターン状にUV硬化インクを塗布する。このインクパターンの印刷は低解像度のものでよい。この方法によれば、UV硬化インクを全面塗布ではなく、低解像度で必要最小限の部分にのみ塗布を行えばよい。これにより、第1の製造方法に比べて、金属ナノ粒子の含まれるUV硬化インクの無駄を無くすことができる。続く露光工程ではこの低解像度のインクパターンに対して高精細な配線パターン(導電パターン)のネガイメージで露光を行う。これにより、インクパターン13cに、非露光部13aと露光部13bとが生じる。その結果、次のめっき工程で当該ラインの中で目的のより高解像度の導電パターン15aからなるめっき層15を形成することができる。
【0064】
図4に、第2の製造方法の具体的な応用例としてのプリント配線板の表面の斜視図を示す。これは、インクジェット法で基材11の表面にインクパターン13cを描画後に、そのインク層13に対して、目的の導電パターンのネガイメージでLED露光(UVLED描画)したものである。すなわち、目的の導電パターン(線状部分)13aを残してその周りの部分13bを露光した。インク層13のインクパターン13cのラインアンドスペースは200~200μmであるが、導電パターンに対応する非露光領域13aのライン幅はこれより十分に狭い幅、例えば約3μmである。後続のめっき工程ではこの導電パターンに対応する非露光領域13aの上にめっき金属が析出するので、得られる配線パターンンのライン幅も約3μmとなる。
【0065】
次に、本実施形態のUV硬化インクを用いてめっきを行う実験例を示す。
【0066】
(実験例1)
この実験例は、ラジカル重合のUV硬化インクを用いた例である。PI(ポリイミド)フィルムをベースフィルムとし、UV硬化インクとして以下のものを使用した(組成1)。銀または銅のナノ粒子の市販インクを用いた(1~17wt%)。UV硬化ベース樹脂としてはアクリル樹脂ベースのUV硬化インクを調整した。二官能アクリル酸エステル(40wt%)とクレゾールノボラック系エポキシ樹脂(2.5wt%)、3官能アクリル酸エステル(1wt%)、1官能アクリル酸エステル(15wt%)を配合し、ここに光重合開始剤:リンを含むリン系光重合開始剤A(5wt%)を入れたものを調整した。これらの比率は一例であり本発明を限定するものではない。このインクには金属ナノ粒子のために分散剤を入れてもよい。このようにして調整したインクを10番手(OSP-10:osp社製)のバーコーターでベースフィルム上に塗布し、Hgランプで露光し、260℃のオーブンで60分焼成し、未硬化部分のUV硬化樹脂を硬化させた。このとき、インク層の表面またはその近傍にある金属ナノ粒子の表面に被覆材による保護膜があっても、焼成によりこの保護膜が除去される。
【0067】
金属ナノ粒子を含むめっき種層を形成したベースフィルムに対し、流水で1分間のクリーニングを行った。その後、無電解銅めっき液のプレディップを行い、銅、アルカリ、ホルムアルデヒドを主成分とする無電解銅めっき液を用いて、液温65℃で180分間の無電解銅めっきを行った。その後、変色防止剤に常温で1分間浸けたあと、乾燥させた。
【0068】
この場合には、光硬化剤との組み合わせもよく、めっきが付き、導電性も確保された。
【0069】
(実験例2)
この実験例2も、ラジカル重合のUV硬化インクを用いた例である。PIフィルムをベースフィルムとし、UV硬化インクとして以下のものを使用した(組成3~4)。金属ナノ粒子の素材としてヒドラジンで還元した銅のナノ粒子か銀のナノ粒子を用いた(4.5~25wt%)。UV硬化ベース樹脂としてはアクリル樹脂ベースのUV硬化インクを調整した。二官能アクリル酸エステル(40wt%)とクレゾールノボラック系エポキシ樹脂(2.5wt%)、3官能アクリル酸エステル(1wt%)、1官能アクリル酸エステル(15wt%)を配合し、ここにイオウを含むイオウ系光重合開始剤C(5wt%)を入れたものを調整した。これらの比率は一例であり本発明はこれに限定されるものではない。このUV硬化インクにはナノ粒子のために分散剤を入れてもよい。このようにして調整したUV硬化インクを10番手のバーコーターでベースフィルム上に塗布し、Hgランプで露光し、260℃のオーブンで60分,未硬化部分のUV硬化樹脂を硬化させた。
【0070】
金属ナノ粒子を含むめっき種層を形成したベースフィルムに対し、流水で1分間のクリーニングを行った。その後、無電解銅めっき液のプレディップを行い、銅、アルカリ、ホルムアルデヒドを主成分とする無電解銅めっき液を用いて、液温65℃で180分間の無電解銅めっきを行った。その後、変色防止剤に常温で1分間浸けたあと、乾燥させた。
【0071】
この場合には、光硬化剤との組み合わせもよく、めっきが付き、導電性も確保された。
【0072】
(実験例3)
この実験例3ではカチオン重合系の光重合開始剤を用いた(組成2)。UV硬化インクベースは、オキセタン(40wt%),ビスフェノールA-ジアルキジルエーテル(53wt%)、信越化学社製の4官能エポキシモノマーKR-470(5wt%)、ヨウ素系光重合開始剤B(2wt%)を用いて樹脂ベースを作製した。なおこれらの比率は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。この樹脂ベースに、銅または銀ナノインクを2~10wt%の割合で混ぜ、UV硬化インクとした。
【0073】
このようにして調整したUV硬化インクを10番手のバーコーターでベースフィルム上に塗布し、254nmのUVランプで部分的に露光し、260℃のオーブンで60分、未硬化部分のUV硬化樹脂を硬化させた。
【0074】
金属ナノ粒子を含むめっき種層を形成したベースフィルムに対し、流水で1分間のクリーニングを行った。その後、無電解銅めっき液のプレディップを行い、銅、アルカリ、ホルムアルデヒドを主成分とする無電解銅めっき液を用いて、液温60℃で180分間の無電解銅めっきを行った。その後、変色防止剤に常温で1分間浸けたあと、乾燥させた。
【0075】
この実験により、インク塗布領域の非露光部にのみめっきが付き露光部にはめっきが付かないことを確認した。露光部では光重合開始剤が光反応し、放出された成分(この例ではヨウ素)がめっきに対して阻害したものと推測される。すなわち、露光部では光重合開始剤が反応して、当該成分が放出され、金属ナノ粒子の表面に結合し、電位を変えることでめっきが阻害されると考えられる。これに対して、非露光部については、この反応が起こらないのでめっきの阻害作用が生じない。
【0076】
ここで用いたヨウ素系光重合開始剤Bは、実験例1のUV硬化インク(すでにラジカル重合開始剤を含むが)に混ぜても露光部にはめっきが付かず、非露光部にはめっきが付くことを確認した。このことは、重合方法にかかわらず、露光して放出された成分がめっきを阻害していることを示唆している。
【0077】
(実験例4)
実験例4として、露光工程でマスク露光を行う場合の原理を示す。4官能エポキシモノマーKR-470(信越化学)1gと、2官能エポキシモノマーX40-2669 9gにイオウ系光重合開始剤C0.2gを混ぜて樹脂ベースを作り0.6g秤取り、市販の銀ナノインク0.4gと混合し、UV硬化インクとした。バーコーターを用いて、10μmの膜厚にポリイミドフィルム上に塗布し、マスクして一部だけUV露光したサンプルと、露光無しのサンプルを作った。これらは260℃で1時間焼成し、無電解めっきを3時間行った。この結果を図5に示す。
【0078】
図5(a)はめっき処理前のサンプル、図5(b)はめっき処理後サンプルの写真を示している。それぞれの左のサンプルは一部をマスクしてUV露光を行ったもの、右のサンプルはマスクをせずにUV露光を行ったものである。
【0079】
図5(b)に示すように、UV露光無し(右)のサンプルではめっきがインク塗布領域全体に付き、部分的にUV露光したサンプル(左)には、非露光部(中央部51)にのみめっきが付いた。すなわち、インク塗布領域の露光部では光重合開始剤が光反応し、放出された成分(この例ではイオウ)がめっきに対して阻害したものと推測される。
【0080】
(実験例5)
実験例5は、カチオン重合系の光重合開始剤を用いた例である(組成2)。UV硬化インクベースには、オキセタン(30~40wt%),ビスフェノールA-ジアルキジルエーテル(40~55wt%)、4官能エポキシモノマーKR-470(信越化学)(2~5wt%)、ヨウ素系光重合開始剤B(1~2wt%)を用いた。なおこれらの比率は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。この樹脂ベースに、銀ナノインクを2~10wt%の割合で混ぜ、UV硬化インクとした。
【0081】
このようにして調整したUV硬化インクを10番手のバーコーターでベースフィルム上に塗布し、254nmのUVランプで部分的に露光し、160℃のオーブンで60分、未硬化部分のUV硬化樹脂を硬化させた。
【0082】
このようにして金属ナノ粒子を含むめっき種層を形成したベースフィルムに対し、流水で1分間のクリーニングを行った。その後、無電解銅めっき液のプレディップを行い、銅、アルカリ、ホルムアルデヒドを主成分とする無電解銅めっき液を用いて、液温60℃で60分間の無電解銅めっきを行った。その後、変色防止剤に常温で1分間浸けたあと、乾燥させた。
【0083】
この実験により、インク塗布領域の非露光部にのみめっきが付き露光部にはめっきが付かないことを確認した。この場合も、露光部では光重合開始剤が光反応し、放出された成分(この例ではヨウ素)がめっきに対して阻害したものと推測される。この原理に従って、配線パターンを作ることができることを確認した。また同時に、異なるUV硬化の手法で同じ効果が得られることを確認した。
【0084】
ここで用いたヨウ素系光重合開始剤Bは、実験例1のUV硬化インク(すでにラジカル重合開始剤を含むが)に混ぜても露光部にはめっきが付かず、非露光部にはめっきが付くことを確認した。
【0085】
以上の組成や組み合わせでのほかの実験結果も含めて表1にまとめた(上記実験例は必ずしも表1の「実験番号」に対応していない)。光硬化剤が二種類入っている系もあるが、露光する光は別々にしてある。光重合開始剤:「A」はリン系光重合開始剤で、波長365mでラジカル発生し、「B」はヨウ素を含むヨウ素系光重合開始剤で、254nmでラジカルとカチオンが発生する。また「C」はイオウ系光重合開始剤で波長365mでラジカルとカチオンが発生する。表1からわかるように、めっきの可否は、それぞれの試薬と露光波長の組み合わせに依存している。
【0086】
(各種実験条件における露光部でのめっきの可否)
【表1】
【0087】
この実験結果から分かるように、めっき可否を含めて各種実験条件の組み合わせにより、適正なプリント配線板を実現することができる。
【0088】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、UVインクを用いたプリント配線板およびその製造方法であって、ネガイメージを用いた非露光部のめっきによる高精細の導電パターンの形成について説明した。これに対して、さらに別の実施形態として、露光部へのめっき金属の析出を良好とするナノ粒子金属と光重合開始剤(光硬化剤)の成分の組み合わせについて説明する。
【0089】
この実施形態では、インクの塗布工程で、目的の導電パターンに合致したポジイメージのパターン状のインク層の塗布(印刷)を行う。上記の実施形態と異なり、露光工程におけるUV照射は必ずしもパターン状に行う必要はなく、全面照射(全面露光)であってよい。
【0090】
この実施形態は、光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含んだインク(溶液)を用いためっき種層による良好なめっきを実現することを意図したものである。より具体的には、上述した実験例1,実験例2、表1の実験番号1,2,6~9に現れているように、特定のナノ粒子金属と光重合開始剤(光硬化剤)の成分の組み合わせにめっき触媒の増進効果を見出したものである。
【0091】
そのようなインク内の光硬化樹脂として、金属ナノ粒子が銀ナノ粒子である場合にリンを含み、金属ナノ粒子が銅ナノ粒子である場合にリンまたはイオウを含むものである。これにより形成された基板(プリント配線板)のめっき種層は、銀ナノ粒子とリンとを含む第1の組成物、または、銅ナノ粒子とリンまたはイオウとを含む第2の組成物を有することになる。
【0092】
ナノインクの濃度については、好ましくは、上記実施形態と同じく金属ナノ粒子の成分が重量濃度で8%~20%である。
【0093】
実施例1、実施例2等に記載のように、ナノインクのUV硬化樹脂はUV露光工程によりある程度硬化された後、未硬化部分が後続の焼成工程で硬化される。
【0094】
本実施形態での焼成工程では、UV硬化の後に追加的な硬化を行うとともに、後続のめっき処理を助けるためにめっき種層の表面に裂け目を生じさせる。
【0095】
本実施の形態は以下のような態様を取りうる。
(1) 絶縁性の基材と、
前記基材上に光硬化樹脂および金属ナノ粒子で形成されためっき種層と、
前記めっき種層上に形成されためっき層とを備え、
前記めっき種層は、銀ナノ粒子とリンとを含む第1の組成物、または、銅ナノ粒子とリンまたはイオウとを含む第2の組成物を有する
基板。
(2) 光硬化樹脂および金属ナノ粒子を含んだ溶液を、絶縁性の基材の表面に塗布する塗布工程と、
前記溶液が塗布された基材を露光する露光工程と、
前記露光された基材を焼成する焼成工程と、
前記焼成された基材をめっきするめっき工程とを備え、
前記光硬化樹脂は、前記金属ナノ粒子が銀ナノ粒子である場合にリンを含み、前記金属ナノ粒子が銅ナノ粒子である場合にリンまたはイオウを含む
基板の製造方法。
(3) 前記溶液中の前記金属ナノ粒子の成分が重量濃度で8%~20%である(2)に記載の基板の製造方法。
(4) 前記塗布工程では前記溶液をパターン状に塗布する(2)に記載の基板の製造方法。
(5) 前記基材の表面に塗布する方法がインクジェット印刷方法である(2)または(4)に記載の基板の製造方法。
(6) 基板を製造するために基材の表面に塗布される溶液であって、
光により硬化される光硬化樹脂と、めっき種として機能する金属ナノ粒子とが混合され、
前記光硬化樹脂は、前記金属ナノ粒子が銀ナノ粒子である場合にリンを含み、前記金属ナノ粒子が銅ナノ粒子である場合にリンまたはイオウを含む
溶液。
(7) 前記金属ナノ粒子の成分が重量濃度で8%~20%である(6)に記載の溶液。
(8)(1)に記載の基板を用いて形成されたプリント配線板。
【0096】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形・変更を行うことが可能である。使用した材料、長さ、比率、温度、時間等は例示であり、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0097】
10 プリント配線板
11 基材(絶縁性基材)
13 めっき種層(インク層)
13a 第1の領域(非露光領域,非露光部)
13b 第2の領域(露光領域,露光部)
13c インクパターン
15 めっき層
15a 配線パターン(導電パターン)
図1
図2
図3
図4
図5