(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178026
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】造形方法及び造形装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20231207BHJP
H05K 3/10 20060101ALI20231207BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20231207BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20231207BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231207BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20231207BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231207BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
H05K3/10 D
B41J2/17
B41J2/18
B41J2/01 451
B05D3/00 B
B05D7/24 303C
B05D5/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091066
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】平松 直比古
【テーマコード(参考)】
2C056
4D075
5E343
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB20
2C056EB38
2C056EB50
2C056EC07
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2C056EC21
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2C056EC32
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2C056FA04
2C056FB05
2C056HA46
2C056KB16
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AE03
4D075BB16X
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4D075EC30
5E343BB72
5E343DD15
5E343FF05
5E343GG06
5E343GG13
(57)【要約】
【課題】溶剤の残留によって金属含有液における金属微粒子の濃度が低下した場合にも、所望の電気的特性を満たす金属配線を造形できる造形方法、及び造形装置を提供すること。
【解決手段】本開示の造形方法は、タンクに溶剤を供給する第1供給工程と、第1供給工程を実行した後、タンク内の溶剤を排出し、タンクに金属含有液を供給する第2供給工程と、第2供給工程を実行した後、金属含有液を用いて金属配線を造形する際に、タンクに残留した溶剤によって希釈された、第2供給工程で供給された金属含有液における金属微粒子の濃度に応じた処理で、所定の厚みの金属配線を造形する造形工程と、を含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粒子を含有する金属含有液を貯留可能な少なくとも1つのタンクと、
前記タンクに接続され、前記タンクから供給された前記金属含有液を吐出するヘッドと、
を備える吐出装置を用いて金属配線を造形する造形方法であって、
前記タンクに溶剤を供給する第1供給工程と、
前記第1供給工程を実行した後、前記タンク内の前記溶剤を排出し、前記タンクに前記金属含有液を供給する第2供給工程と、
前記第2供給工程を実行した後、前記金属含有液を用いて金属配線を造形する際に、前記タンクに残留した前記溶剤によって希釈された、前記第2供給工程で供給された前記金属含有液における金属微粒子の濃度に応じた処理で、所定の厚みの前記金属配線を造形する造形工程と、
を含む、造形方法。
【請求項2】
前記造形工程において、
前記金属配線を造形する位置に前記金属含有液を吐出する処理を1サイクルとして前記サイクルを少なくとも1回実行し、且つ、前記金属含有液における金属微粒子の濃度に応じた処理として、濃度の低下に応じて前記サイクルの実行回数を増加させる補正、及び濃度の低下に応じて前記金属含有液の1サイクルあたりの吐出量を増加させる補正のうち、少なくとも一方の補正を実行し、所定の厚みの前記金属配線を造形する、請求項1に記載の造形方法。
【請求項3】
前記第2供給工程は、
前記タンク内の前記溶剤を排出する第1排出工程と、
前記第1排出工程を実行した後、前記タンクに前記金属含有液を供給する第1金属含有液供給工程と、
前記第1金属含有液供給工程を実行した後、前記タンクに前記金属含有液を所定量だけ残して残りの前記金属含有液を排出する第2排出工程と、
前記第2排出工程を実行した後、前記タンクに前記金属含有液を供給する第2金属含有液供給工程と、
を含み、
前記造形工程において、
前記第2排出工程で残す所定量の前記金属含有液に含まれる前記溶剤の量と、前記第2金属含有液供給工程で供給した前記金属含有液の供給量に基づいて、前記第2金属含有液供給工程を実行した後の前記タンクに貯留された前記金属含有液における金属微粒子の濃度を演算する、請求項1又は請求項2に記載の造形方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのタンクは、
第1タンクと第2タンクとを含み、
前記第1金属含有液供給工程において、
前記第1タンクに前記金属含有液を供給し、前記第1タンクに供給した前記金属含有液を前記第2タンクとの間で循環させ、
前記第2金属含有液供給工程において、
前記第1タンクに前記金属含有液を供給し、前記第1タンクに供給した前記金属含有液を前記第2タンクとの間で循環させる、請求項3に記載の造形方法。
【請求項5】
前記造形工程を実行した後、前記タンクに前記金属含有液を供給する再供給工程と、
前記再供給工程を実行した後、前記再供給工程を実行する前に前記タンクに貯留されていた前記金属含有液における金属微粒子の濃度と、前記再供給工程により供給した前記金属含有液の供給量に基づいて、前記再供給工程を実行した後の前記タンクに貯留された前記金属含有液における金属微粒子の濃度を演算し、演算した濃度に応じた処理で、所定の厚みの前記金属配線を造形する再供給後造形工程と、
を含む、請求項1又は請求項2に記載の造形方法。
【請求項6】
前記再供給工程と、前記再供給後造形工程を繰り返し実行した後の前記再供給後造形工程において、
演算結果の濃度が所定の閾値濃度以上となった場合、前記金属含有液における金属微粒子の濃度に応じた処理の実行を停止する、請求項5に記載の造形方法。
【請求項7】
前記金属含有液を吐出しない時間が、所定の閾値時間よりも長くなる場合に、前記第1供給工程を実行する、請求項1又は請求項2に記載の造形方法。
【請求項8】
前記造形工程において、
濃度の低下に応じて前記サイクルの実行回数を増加させる補正、及び濃度の低下に応じて前記金属含有液の1サイクルあたりの吐出量を増加させる補正のうち、少なくとも一方の補正による補正量は、造形後の前記金属配線の抵抗値が所定抵抗値以下となる補正量である、請求項2に記載の造形方法。
【請求項9】
金属微粒子を含有する金属含有液を貯留可能な少なくとも1つのタンクと、
前記タンクに接続され、前記タンクから供給された前記金属含有液を吐出するヘッドと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記タンクに溶剤を供給する第1供給処理と、
前記第1供給処理を実行した後、前記タンク内の前記溶剤を排出し、前記タンクに前記金属含有液を供給する第2供給処理と、
前記第2供給処理を実行した後、前記金属含有液を用いて金属配線を造形する際に、前記タンクに残留した前記溶剤によって希釈された、前記第2供給処理で供給された前記金属含有液における金属微粒子の濃度に応じた処理で、所定の厚みの前記金属配線を造形する造形処理と、
を実行する、造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属微粒子を含有する金属含有液で金属配線を造形する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、下記特許文献に記載されているように、金属微粒子を含有する金属含有液を用いて、3次元積層造形法により金属配線を造形する技術が開発されている。具体的には、例えば、インクジェットヘッドによって金属含有液を、回路パターンに応じて線状に吐出する。そして、吐出した金属含有液をレーザ等により焼成することで金属配線を造形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2018/003000号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した金属配線をインクジェット法で造形する場合、例えば金属配線を造形しない時間が長くなると、インクジェットヘッドのノズル内の金属含有液が乾燥し、金属微粒子がノズルに固着する虞がある。このような場合に、インクタンク内やノズル内の金属含有液を排出して、溶剤を供給すれば固着の発生を抑制できる。
【0005】
また、金属配線の造形を再開する際に、溶剤を排出してインクタンク内に金属含有液を供給すると、インクタンク内に溶剤が残留し、金属含有液が溶剤により希釈されてしまう可能性がある。このような場合、金属含有液における金属微粒子の濃度が低下して、造形した金属配線の厚みが薄くなり、所望の電気的特性を満たさない可能性がある。
【0006】
本開示は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、溶剤の残留によって金属含有液における金属微粒子の濃度が低下した場合にも、所望の電気的特性を満たす金属配線を造形できる造形方法、及び造形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、金属微粒子を含有する金属含有液を貯留可能な第1タンク及び第2タンクと、前記第1タンク及び前記第2タンクに接続され、前記第1タンクと前記第2タンクとの少なくとも一方から供給された前記金属含有液を吐出するヘッドと、を備える吐出装置を用いて金属配線を造形する造形方法であって、前記第1タンク及び前記第2タンクに溶剤を供給する第1供給工程と、前記第1供給工程を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンク内の前記溶剤を排出し、前記第1タンク及び前記第2タンクに前記金属含有液を供給する第2供給工程と、前記第2供給工程を実行した後、前記金属含有液を用いて金属配線を造形する際に、前記第1タンク前記第2タンクとの少なくとも一方に残留した前記溶剤によって希釈された、前記第2供給工程で供給された前記金属含有液における金属微粒子の濃度に応じた処理で、所定の厚みの前記金属配線を造形する造形工程と、を含む、造形方法を開示する。
尚、本開示の内容は、造形方法としての実施に限らず、種々の形態により実施することができる。例えば、本開示の内容は、造形装置として実施しても有益である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、第1及び第2タンクに溶剤を供給して排出した後、第1及び第2タンクに金属含有液を供給し金属配線を造形する場合に、第1及び第2タンクの少なくとも一方に残留した溶剤によって希釈された金属微粒子の濃度に応じた処理を実行する。これにより、所定の厚みの金属配線を造形できる。従って、溶剤の残留によって金属含有液における金属微粒子の濃度が低下した場合にも、所望の電気的特性を満たす金属配線を造形できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例に係わる基板製造装置を示す図である。
【
図3】基板製造装置で製造される基板を示す図である。
【
図4】第1印刷部のうち、インクジェットヘッドに係わる構成を示す模式図である。
【
図5】金属インクから溶剤に変更する処理を説明するための図である。
【
図6】金属インクから溶剤に変更する処理を説明するための図である。
【
図7】溶剤から金属インクに変更する処理を説明するための図である。
【
図8】溶剤から金属インクに変更する処理を説明するための図である。
【
図9】溶剤から金属インクに変更する処理を説明するための図である。
【
図10】造形作業の時間、銀濃度、インク量の関係を示すグラフである。
【
図11】別例の第1印刷部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(基板製造装置10の構成)
以下、本開示の造形装置を具体化した一実施例である基板製造装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施例に係わる基板製造装置10を示している。
図2は、基板製造装置10のブロック図を示している。
図1に示すように、基板製造装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット24と、第3造形ユニット25と、装着ユニット27と、制御装置28(
図2参照)を備えている。基板製造装置10は、3次元積層造形法として、インクジェット法を用いて、例えば、
図3に示す基板140を積層造形し、造形した基板140に電子部品157を実装する装置である。
【0011】
搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、第3造形ユニット25、及び装着ユニット27は、基板製造装置10のベース29の上に配置されている。ベース29は、概して長方形状をなしている。以下の説明では、
図1に示すように、ベース29の長手方向をX軸方向、ベース29の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0012】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32を備えている。X軸スライド機構30は、X軸スライドレール34と、X軸スライダ36を有している。X軸スライドレール34は、ベース29の上に設けられ、X軸方向に沿って配置されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ38(
図2参照)を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36をX軸方向の任意の位置に移動させる。
【0013】
また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50と、ステージ52を有している。Y軸スライドレール50は、ベース29の上に設けられ、Y軸方向に沿って配置されている。Y軸スライドレール50の一端部(
図1における上端)は、X軸スライダ36に連結されている。これにより、Y軸スライド機構32は、X軸スライダ36とともにX軸方向に移動可能となっている。ステージ52は、Y軸スライドレール50によって、Y軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、Y軸スライド機構32は、電磁モータ56(
図2参照)を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52をY軸方向の任意の位置に移動させる。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、X軸方向及びY軸方向におけるベース29上の任意の位置に移動できる。
【0014】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64を有している。基台60は、平板状に形成され、上面に基板が載置される。保持装置62は、X軸方向における基台60の両側部に設けられている。例えば、基台60の上には、基板を造形するためのパレット141(
図3参照)が配置される。パレット141は、例えば、金属製の薄い板状の部材である。このパレット141の上には、例えば、剥離フィルム143(
図3参照)が貼り付けられ、その剥離フィルム143の上に基板140が製造される。剥離フィルム143は、例えば、所定の温度以上の熱によって粘着力が低下するフィルム状の部材であり、基板140を製造した後に、基板140をパレット141から分離するのに使用される。パレット141は、基台60に載置されX軸方向の両縁部を保持装置62によって挟まれることで、基台60に対して固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に設けられており、基台60をZ軸方向に昇降させる。
【0015】
第1造形ユニット22は、ステージ52の基台60の上に金属配線147(
図3参照)を造形するユニットであり、第1印刷部72と、焼成部74を有している。第1印刷部72は、インクジェットヘッド76(
図2参照)を有しており、インクジェットヘッド76が金属インクを線状に吐出する。金属インクは、ナノメートルサイズの金属、例えば、銀の微粒子が有機溶剤中に分散されたものである。金属インクは、本開示の金属微粒子を含む金属含有液の一例である。金属微粒子の表面は、例えば、分散剤によりコーティングされており、有機溶剤中での凝集が防止されている。尚、インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから金属インクを吐出する。
【0016】
焼成部74は、赤外線照射装置78(
図2参照)を有している。赤外線照射装置78は、例えば、赤外線ヒータであり、吐出された金属インクに赤外線を照射し加熱する装置である。赤外線照射装置78は、基板製造装置10の制御装置28(
図2参照)の制御に基づいて、例えば、第1温度に加熱される状態と、第1温度よりも高い第2温度に加熱される状態に切替え可能となっている。金属インクは、例えば、第1温度の赤外線照射装置78によって加熱された場合、有機溶剤が気化され乾燥が進行する。また、金属インクは、高温の第2温度の赤外線照射装置78によって加熱された場合、焼成し最終的な金属配線147を形成する。ここでいう金属インクの焼成とは、熱エネルギーを付与することによって、有機溶剤の気化や、金属微粒子の保護膜、つまり、分散剤の分解等が行われ、金属微粒子が接触又は融着することで、導電率が高くなる現象である。基板製造装置10は、吐出した金属インクについて、例えば、第1温度での乾燥を実行した後、第2温度での焼成を実行し金属配線147を形成する。尚、金属配線147の形成方法は、上記した方法に限らない。制御装置28は、乾燥工程を実行せずに、一度の加熱で焼成まで実行しても良い。
【0017】
また、第2造形ユニット24は、ステージ52の基台60の上に樹脂層145(
図3参照)を造形するユニットであり、第2印刷部84と、硬化部86を有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド88(
図2参照)を有している。インクジェットヘッド88は、紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、例えば、絶縁性を有し、紫外線の照射により硬化する樹脂である。尚、インクジェットヘッド88が紫外線硬化樹脂を吐出する方法は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でも良く、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でも良い。
【0018】
硬化部86は、平坦化装置90(
図2参照)と、照射装置92(
図2参照)を有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一させる。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、絶縁性を有する樹脂層145が形成される。
【0019】
第3造形ユニット25は、電子部品157の電極157A(
図3参照)と金属配線147の端子部147Aを接続する接続部を、基台60の上に造形するユニットであり、第3印刷部100と、第1加熱部102を有している。第3印刷部100は、ディスペンサ106(
図2参照)を有している。ディスペンサ106は、導電性樹脂ペースト153(
図3参照)を吐出する。導電性樹脂ペースト153は、例えば、比較的低温の加熱により硬化する樹脂に、マイクロメートルサイズの金属粒子(銀粒子など)が分散されたものである。金属粒子は、例えば、フレーク状とされている。また、導電性樹脂ペースト153の粘度は、例えば、金属インクと比較して高くなっている。尚、金属インクと導電性樹脂ペースト153に含まれる金属は、銀に限らず、金、銅などでも良く、複数の種類の金属でも良い。
【0020】
第1加熱部102は、例えば、Z軸方向で互いに対向する一対の加熱プレート108(
図2参照)を有している。一対の加熱プレート108は、ディスペンサ106により塗布された導電性樹脂ペースト153を加熱する装置である。例えば、製造対象の基板140は、金属配線147の端子部147Aの上に導電性樹脂ペースト153を吐出された後、一対の加熱プレート108の間に挟まれて加熱される。導電性樹脂ペースト153は、この加熱により樹脂が硬化し端子部147Aに接合される。次に、基板140に電子部品157を装着し、端子部147Aに接合した導電性樹脂ペースト153の上に電子部品157の電極157Aを配置する。そして、導電性樹脂ペースト153を介して端子部147Aの上に電子部品157の電極157Aを配置した状態で、一対の加熱プレート108によって基板140を挟み込みながら加熱する。導電性樹脂ペースト153は、この加熱により樹脂が硬化して収縮し、樹脂に分散されたフレーク状の金属粒子が接触する。これにより、導電性樹脂ペースト153が導電性を発揮する。電子部品157は、導電性樹脂ペースト153を介して端子部147Aに電気的に接続される。また、導電性樹脂ペースト153の樹脂は、有機系の接着剤であり、加熱により硬化することで接着力を発揮し、端子部147A(金属配線147)と電極157Aを物理的に接合する。
【0021】
尚、上記した金属インク及び導電性樹脂ペースト153の加熱方法は、一例である。例えば、赤外線ヒータを用いて導電性樹脂ペースト153を加熱しても良い。また、加熱プレート108を用いて金属インクを焼成しても良い。また、基板製造装置10は、赤外線照射装置78や加熱プレート108以外の加熱手段、例えば、製造対象物を炉内に入れて加熱する電気炉を備えても良い。
【0022】
また、装着ユニット27は、供給部120と、装着部122を有している。供給部120は、基板140に実装する電子部品157を供給する装置であり、例えば、テープフィーダ124を備えている。テープフィーダ124は、電子部品157をテープ化したキャリアテープから電子部品157を供給位置に供給する。尚、電子部品157を供給する方法は、テープフィーダ124を用いる方法に限らず、例えば、トレイの上に電子部品157を配置して供給するトレイ型の供給装置を用いる方法でも良い。また、供給部120は、プローブピン159(
図3参照)を供給可能となっている。このプローブピン159は、銅や金などの金属により形成され、例えば、任意の層の金属配線147と、別の層の金属配線147との電気的な接続に用いられる。あるいは、プローブピン159は、任意の基板と、別の基板の電気的な接続に用いられる。プローブピン159の供給方法は、特に限定されないが、例えば、トレイの上にプローブピン159を配置して供給しても良い。
【0023】
装着部122は、装着ヘッド126(
図2参照)と、移動装置128(
図2参照)を有している。装着ヘッド126は、電子部品157やプローブピン159を吸着保持するための吸着ノズル(図示省略)を有する。吸着ノズルは、正負圧供給装置(図示省略)から負圧が供給されることで、エアの吸引により電子部品157等を吸着保持する。また、吸着ノズルは、正負圧供給装置から僅かな正圧が供給されることで、電子部品157等を離脱する。また、移動装置128は、テープフィーダ124の供給位置と、基台60に載置された基板140との間で、装着ヘッド126を移動させる。装着部122は、移動装置128を駆動して、テープフィーダ124から供給された電子部品157を、装着ヘッド126の吸着ノズルにより保持し、装着ヘッド126によって保持した電子部品157を基板140に装着する。
【0024】
また、
図2に示すように、制御装置28は、コントローラ130と、複数の駆動回路132と、記憶装置133と、外部IF(インターフェースの略)135を備えている。コントローラ130は、CPUを備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路132に接続されている。複数の駆動回路132は、モータのアンプ等であり、上記した電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、インクジェットヘッド76、赤外線照射装置78、インクジェットヘッド88、平坦化装置90、照射装置92、ディスペンサ106、加熱プレート108、テープフィーダ124、装着ヘッド126、移動装置128に接続されている。記憶装置133は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、HDD等を備えている。記憶装置133には、制御プログラム133Aが記憶されている。コントローラ130は、制御プログラム133AをCPUで実行し、駆動回路132を介して搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、第3造形ユニット25、装着ユニット27の動作を制御する。以下の説明では、コントローラ130で制御プログラム133Aを実行する制御装置28を、単に装置名で記載する場合がある。例えば、「制御装置28がX軸スライド機構30を制御する」との記載は、「制御装置28が、コントローラ130のCPUで制御プログラム133Aを実行し、駆動回路132を介してX軸スライド機構30を制御する」ことを意味している。
【0025】
また、外部IF135は、例えば、LANIFであり、ローカルネットワーク137を介して第1管理装置138と、第2管理装置139に接続されている。第1管理装置138は、例えば、インクジェット法により積層造形する製造対象物(基板など)の3次元データを生成・記憶する装置である。制御装置28は、第1管理装置138から取得した3次元データ133Bを記憶装置133に記憶し、3次元データ133Bに基づいて第1造形ユニット22等を制御し、基板140の製造を実行する。3次元データ133Bには、例えば、製造対象物である基板140(
図3参照)を各層ごとにスライスしたデータが含まれている。
【0026】
第2管理装置139は、製造した基板140に電子部品157を実装する実装処理に用いるジョブデータ(制御データ、所謂レシピ)を生成・記憶する装置である。制御装置28は、第2管理装置139から取得したジョブデータ133Cを記憶装置133に記憶し、ジョブデータ133Cに基づいて、装着する電子部品157の種類や装着する位置を決定し、装着ユニット27を制御する。尚、
図2に示す構成は一例である。3次元データ133Bを生成する第1管理装置138と、ジョブデータ133Cを生成する第2管理装置139は、同一装置でも良い。また、基板製造装置10が、3次元データ133Bやジョブデータ133Cを生成する機能を有しても良い。
【0027】
本実施例の基板製造装置10は、上述した構成によって、基板を製造する。基板は、例えば、
図3に示すような複数層の基板140である。例えば、制御装置28は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32を制御して、第2造形ユニット24の下方にステージ52を移動させ、第2印刷部84のインクジェットヘッド88から、ステージ52の剥離フィルム143の上面に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出させる。制御装置28は、平坦化装置90による平坦化等を適宜実行し、照射装置92から紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し硬化させる。制御装置28は、吐出、平坦化、硬化を繰り返し実行し、
図3に示す樹脂層145を形成する。
【0028】
次に、制御装置28は、第1造形ユニット22の下方にステージ52を移動させ、第1印刷部72のインクジェットヘッド76から、樹脂層145の上面に金属インクを吐出させる。制御装置28は、吐出した金属インクに赤外線照射装置78から赤外線を照射する。例えば、制御装置28は、ステージ52をX方向に移動させながら、インクジェットヘッド76から金属インクを吐出させる。制御装置28は、このX軸方向への1回の走査で金属インクを吐出した後、赤外線照射装置78を第1温度に設定し、吐出した金属インクを加熱する。これにより、金属インクは、有機溶剤の一部が気化し乾燥する。制御装置28は、1走査の吐出と吐出した金属インクの乾燥を1サイクルとして、その1サイクルを繰り返し実行して所望の厚みだけ積層する。制御装置28は、金属インクを積層した後、第1温度よりも高い第2温度に赤外線照射装置78を設定し、積層した金属インクの焼成を実行する。これにより、3次元データ133Bに設定された所定の厚み(設計上の厚み)及び配線パターンの金属配線147を、樹脂層145の上に形成する。尚、制御装置28は、上記した吐出と乾燥のサイクルを1回(1サイクル)だけ実行し、吐出した金属インクを第2温度で焼成しても良い。従って、制御装置28は、金属インクを積層せずに1層だけで焼成して金属配線147を形成しても良い。
【0029】
また、制御装置28は、1層目の樹脂層145と同様に、紫外線硬化樹脂の吐出、平坦化、硬化を繰り返し実行し、1層目の樹脂層145の上に、2層目の樹脂層145を形成する。2層目の樹脂層145は、1層目の樹脂層145の上の金属配線147を覆うように形成される。制御装置28は、樹脂層145と金属配線147を積層して所望の形状の基板140を造形する。また、制御装置28は、
図3に示すように、複数層の樹脂層145のうち、任意の樹脂層145において、金属配線147の一部を端子部147Aとして露出させるキャビティ149を形成する。また、制御装置28は、例えば、各層の金属配線147の上に金属インクをさらに吐出し、異なる層の金属配線147と接続する層間配線(ビア)151を形成する。尚、異なる層の金属配線147の接続を、層間配線151を用いずにプローブピン159を用いても良い。
【0030】
制御装置28は、上記した製造工程によりキャビティ149が設けられた基板140を製造すると、電子部品157を実装する。具体的には、制御装置28は、例えば、基板140を造形した後、第3造形ユニット25の第3印刷部100を制御して、キャビティ149内の端子部147Aに導電性樹脂ペースト153を吐出させる。また、制御装置28は、プローブピン159を挿入する挿入孔155内に露出した端子部147Aの上にも導電性樹脂ペースト153を吐出させる。制御装置28は、導電性樹脂ペースト153の吐出が完了すると、例えば、基板140を載せたパレット141を、Z軸方向で対向する一対の加熱プレート108の間に配置し、加熱プレート108によって導電性樹脂ペースト153を加熱する。これにより、端子部147Aに導電性樹脂ペースト153が接合される。
【0031】
次に、制御装置28は、基板140を載せたステージ52を装着ユニット27に移動させ、装着ユニット27によって電子部品157を装着する。この際、制御装置28は、電子部品157の電極157Aを、端子部147Aの上に吐出した導電性樹脂ペースト153に接触するように、電子部品157を配置する。また、制御装置28は、装着ユニット27を制御し、装着部122の吸着ノズルで保持したプローブピン159を、挿入孔155の中に挿入する。制御装置28は、電子部品157及びプローブピン159の配置が完了すると、例えば、導電性樹脂ペースト153を介して端子部147Aの上に電子部品157やプローブピン159を配置した状態で、一対の加熱プレート108によってZ軸方向の両側から基板140を挟み込みながら加熱する。導電性樹脂ペースト153は、樹脂が硬化し、電子部品157の電極157Aと端子部147A、あるいは、プローブピン159と端子部147Aを電気的に接続する。これにより、所望の造形物を製造することができる。
【0032】
(第1印刷部72の構成)
次に、本開示の金属微粒子を含有する金属含有液の一例として、第1造形ユニット22の第1印刷部72から吐出する金属インクを採用した場合について説明する。
図4は、第1印刷部72のうち、インクジェットヘッド76に係わる構成を模式的に示している。
図4に示すように、第1印刷部72は、上記したインクジェットヘッド76の他に、第1及び第2タンク161,162、バキュームポンプ163、第1及び第2レギュレータ165,166、第1及び第2圧力計167,168、第1及び第2負圧供給路171,172、第1及び第2インク流路175,176等を備えている。
【0033】
第1及び第2タンク161,162の各々は、金属インク177を貯留可能となっている。バキュームポンプ163は、第1及び第2タンク161,162内の圧力を変更する装置である。バキュームポンプ163は、第1負圧供給路171を介して第1タンク161に接続されている。また、バキュームポンプ163は、第2負圧供給路172を介して第2タンク162に接続されている。バキュームポンプ163は、制御装置28(
図2参照)の制御に基づいて、第1及び第2タンク161,162の各々の圧力を変更し、第1及び第2タンク161,162内へ負圧又は正圧を供給する。
【0034】
第1レギュレータ165は、バキュームポンプ163と第1負圧供給路171の間に接続されている。第1レギュレータ165は、制御装置28の制御に基づいて、第1タンク161内を所定の圧力に調整する。同様に、第2レギュレータ166は、バキュームポンプ163と第2負圧供給路172の間に接続されている。第2レギュレータ166は、制御装置28の制御に基づいて、第2タンク162内を所定の圧力に調整する。
【0035】
第1圧力計167は、第1負圧供給路171内の圧力を検出する装置である。第2圧力計168は、第2負圧供給路172内の圧力を検出する装置である。第1及び第2圧力計167,168の各々は、検出した圧力を示す信号を制御装置28へ出力する。尚、第1及び第2圧力計167,168の各々は、第1及び第2負圧供給路171,172のような流路の圧力を検出する構成に限らず、第1及び第2タンク161,162内の圧力を検出する構成でも良い。
【0036】
制御装置28は、第1圧力計167から入力した信号に基づいて第1レギュレータ165を制御し、第1タンク161内を所望の圧力に制御する。また、制御装置28は、第2圧力計168から入力した信号に基づいて第2レギュレータ166を制御し、第2タンク162内を所望の圧力に制御する。従って、制御装置28は、第1及び第2タンク161,162内の圧力を個別に制御可能となっている。尚、第1及び第2タンク161,162の各々の圧力を個別に制御する構成は、
図4に示す構成に限らない。例えば、第1印刷部72は、第1及び第2タンク161,162の各々に接続される2つのバキュームポンプ163を備え、各バキュームポンプ163を制御することで、第1及び第2タンク161,162の各々の圧力を個別に制御しても良い。
【0037】
また、インクジェットヘッド76は、ヘッド内流路179、複数のノズル181を備えている。第1タンク161は、第1インク流路175を介して、インクジェットヘッド76内のヘッド内流路179に接続されている。また、第2タンク162は、第2インク流路176を介して、ヘッド内流路179に接続されている。従って、第1タンク161は、第1インク流路175、ヘッド内流路179、第2インク流路176を介して第2タンク162と接続されている。
【0038】
第1インク流路175には、電磁弁183が取り付けられている。電磁弁183は、制御装置28の制御に基づいて、第1インク流路175を開閉する。同様に、第2インク流路176には、電磁弁184が取り付けられ、制御装置28により電磁弁184が制御されることで、流路の開閉を切り替えられる。電磁弁183,184が開いた状態では、金属インク177は、圧力の高低に応じて第1及び第2タンク161,162とヘッド内流路179の間で移動する。
【0039】
ヘッド内流路179は、複数のノズル181を接続され、第1及び第2タンク161,162から供給された金属インク177を、各ノズル181へ供給する。制御装置28は、例えば、ノズル181からの金属インク177の吐出を停止する場合、第1及び第2タンク161,162内を所定の負圧で維持する。この所定の負圧は、例えば、ノズル181の開口で金属インク177の液面が保持され、ノズル181から金属インク177が吐出されない圧力である。
【0040】
また、制御装置28は、金属インク177をノズル181から吐出させる場合、例えば、第1及び第2タンク161,162内の負圧の圧力値を小さくする、あるいは第1及び第2タンク161,162内を所定の正圧にする。これにより、第1及び第2タンク161,162内の金属インク177は、第1及び第2インク流路175,176を介してヘッド内流路179へ供給され、ノズル181から吐出される。制御装置28は、第1及び第2タンク161,162内の圧力を調整することで、ノズル181から吐出する金属インク177の吐出量、吐出速度等を制御する。
【0041】
また、第1及び第2タンク161,162の各々には、第1及び第2液面センサ185,186がそれぞれ設けられている。第1液面センサ185は、第1タンク161に貯留された金属インク177の液面の高さに応じた検出信号を制御装置28へ出力する。また、第2液面センサ186は、第2タンク162に貯留された金属インク177の液面の高さに応じた検出信号を制御装置28へ出力する。制御装置28は、第1及び第2液面センサ185,186の検出信号に基づいて、第1及び第2タンク161,162内の金属インク177の量(以下、インク量という)を検出する。
【0042】
また、第1タンク161には、電磁弁189を介して金属インクタンク191が接続されている。制御装置28は、第1及び第2液面センサ185,186の検出信号に基づくインク量が所定の基準インク量以下になると金属インクタンク191から第1タンク161へ金属インク177を供給する。制御装置28は、例えば、電磁弁189を開き第1タンク161内の圧力を下げることで、金属インクタンク191から第1タンク161内へ金属インク177を供給する。また、制御装置28は、後述するように、第1及び第2タンク161,162内の圧力を制御することで、第1及び第2タンク161,162間で金属インク177を循環(行き来)させることができる。これにより、制御装置28は、第1タンク161に供給した金属インク177を、第2タンク162に供給できる。尚、第1印刷部72は、第1タンク161にのみに液面センサを備えても良い。この場合、制御装置28は、第1タンク161のインク量のみを監視しても良い。また、第1印刷部72は、第2タンク162にも金属インクタンクを接続する構成でも良い。
【0043】
(金属インク177から溶剤への変更について)
ここで、金属インク177は、例えば、常温常圧下で、乾燥が進行してしまう虞がある。このため、例えば、金属配線147を造形しない時間が長くなると、インクジェットヘッド76のノズル181内の金属インク177が乾燥し、銀微粒子がノズル181に固着する虞がある。その結果、吐出不良が発生し、金属配線147を適切に造形できなくなる虞がある。そこで、制御装置28は、インクジェットヘッド76の未使用期間が長くなるといった、金属インク177が乾燥する虞がある場合、第1及び第2タンク161,162内やノズル181内の金属インク177を排出して、溶剤をタンク内に供給する制御を実行する。
【0044】
図4に示すように、第1タンク161は、電磁弁193を介して溶剤タンク194に接続されている。第2タンク162は、電磁弁195を介して溶剤タンク196に接続されている。溶剤タンク194,196には、溶剤が貯留されている。この溶剤は、例えば、金属インク177に含まれている有機溶剤と同一成分の液体である。尚、溶剤は、金属インク177に含まれる有機溶剤に限らない。溶剤としては、例えば、金属インク177と混ざっても金属インク177の性質を変化させない液体、金属インク177と混ざっても銀微粒子を溶かして金属インク177の銀微粒子を分離させない金属インク177と親和性の高い液体などを用いることができる。尚、溶剤タンク194,196は、1つのタンクでも良い。また、第1印刷部72は、第1及び第2タンク161,162の一方のみに、溶剤タンクが接続される構成でも良い。
【0045】
まず、制御装置28は、金属インク177を吐出しない時間を監視する。制御装置28は、例えば、前回の吐出が終了した時間から所定の上限時間だけ経過すると、溶剤に変更する制御を実行する。あるいは、制御装置28は、3次元データ133Bに基づいて、金属配線147を造形しない時間が所定の上限時間以上になると予想される場合、溶剤に変更する制御を実行しても良い。
【0046】
図5~
図9は、第1及び第2タンク161,162内の液体を入れ替える制御を示している。尚、
図5~
図9は、図面が煩雑となるのを避けるため、
図4の構成を簡略化して図示しており、バキュームポンプ163や電磁弁183等の図示を省略している。制御装置28は、溶剤への変更を決定すると、
図5に示すステップ(以下、単位Sと記載する)11において、第1及び第2タンク161,162内の金属インク177を排出する。制御装置28は、電磁弁189,193,195を閉じ、電磁弁183,184を開き、第1及び第2タンク161,162内に正圧を供給してノズル181から金属インク177を排出する。制御装置28は、例えば、第1及び第2タンク161,162内の金属インク177がなくなったと判断できるまで、排出を継続する。制御装置28は、例えば、第1及び第2液面センサ185,186で検出するインク量がゼロとなるまで排出を継続する。あるいは、制御装置28は、予め設定された時間だけ排出を継続しても良い。尚、制御装置28は、例えば、ステージ52(
図1参照)上に設けられた捨て打ちエリアや、基板製造装置10に設けられた排出口等に金属インク177を排出させる。
【0047】
次に、S13において、制御装置28は、電磁弁189,183,184を閉じ、電磁弁193,195を開き、第1及び第2タンク161,162内を負圧にして、溶剤タンク194,196の各々から第1及び第2タンク161,162へ溶剤199を供給する。次に、
図6のS15に示すように、制御装置28は、第1タンク161と第2タンク162の間で溶剤199を循環させる。制御装置28は、例えば、電磁弁189,193,195を閉じ、電磁弁183,184を開き、第1タンク161と第2タンク162内の圧力を正圧と負圧で交互に切替える。第1タンク161に負圧を供給し、第2タンク162に正圧を供給すると、溶剤199は、第2タンク162からインクジェットヘッド76を介して第1タンク161へ流れる。逆に、第1タンク161に正圧を供給し、第2タンク162に負圧を供給すると、溶剤199は、第1タンク161からインクジェットヘッド76を介して第2タンク162へ流れる。これにより、溶剤199は、インクジェットヘッド76を通じて第1タンク161と第2タンク162の間を循環する。制御装置28は、正圧及び負圧の切り替えを所定回数実行し、最終的に第1及び第2タンク161,162を負圧に維持する。第1及び第2タンク161,162、インクジェットヘッド76は、溶剤199を貯留する状態となる(S17)。これにより、金属インク177から溶剤199への変更ができ、上記した銀微粒子の固着の発生を抑制できる。
【0048】
尚、上記した変更処理の内容・手順等は、一例である。例えば、制御装置28は、S17を実行した後、溶剤199の排出を実行し、再度、溶剤199の供給、循環を実行しても良い。これにより、一回目で供給した溶剤199でタンク内等を洗浄し、新たに溶剤199を貯留できる。
【0049】
(溶剤199から金属インク177への変更について)
次に、第1及び第2タンク161,162内の溶剤199を金属インク177に変更する処理について説明する。制御装置28は、金属インク177を用いて金属配線147を造形する前に、金属インク177への変更を実行する。例えば、制御装置28は、金属配線147の造形に合わせてステージ52が第1造形ユニット22の下方まで移動してくる前に、
図7以降の変更処理を実行する。まず、
図7のS21に示すように、制御装置28は、第1及び第2タンク161,162内の溶剤199を排出させる。制御装置28は、S11と同様に、第1及び第2タンク161,162に正圧を供給し、第1及び第2タンク161,162内の溶剤199がなくなったと判断できるまで、排出処理を継続する。
【0050】
次に、制御装置28は、例えば、電磁弁183,193を閉じ、電磁弁189を開き、第1タンク161に負圧を供給する(S23)。金属インクタンク191から第1タンク161に金属インク177が供給される。次に、制御装置28は、S13と同様に、電磁弁189,193,195を閉じ、電磁弁183,184を開き、第1タンク161と第2タンク162内の圧力を正圧と負圧で交互に切替える(
図8のS25)。これにより、金属インク177は、インクジェットヘッド76を通じて第1タンク161と第2タンク162の間を循環する(S25)。
【0051】
循環した金属インク177は、第1及び第2タンク161,162内に残留した溶剤199に希釈される。このため、制御装置28は、正圧及び負圧の切り替えを所定回数実行した後、第1及び第2タンク161,162に正圧を供給し、金属インク177を排出する。制御装置28は、第1及び第2タンク161,162に金属インク177をわずかに残した状態で、第1及び第2タンク161,162に負圧を供給し排出を停止する(
図8のS27)。制御装置28は、例えば、第1及び第2液面センサ185,186によって、第1及び第2タンク161,162内の金属インク177が所定のインク量まで減ると、正圧から負圧に切替える。尚、金属インク177を残す制御方法は、上記した方法に限らない。例えば、制御装置28は、排出を開始してから所定時間だけ経過すると、正圧から負圧に切替えて排出を停止しても良い。
【0052】
ここで、S27において、希釈された金属インク177を全て排出する(タンクを空にするまで排出する)と、ノズル181内に空気が入り、ノズル181やヘッド内流路179に泡が発生する虞がある。例えば、金属インク177には、銀微粒子をコーティングする分散材のような界面活性剤が含まれているため、空気の流入により泡立つ虞がある。泡が付いた状態では、金属インク177を正常に吐出できない、あるいは、泡が飛び散って周囲を汚す虞がある。そこで、制御装置28は、S27において、一定のインク量だけ残して、金属インク177の排出を停止する。これにより、ノズル181等に泡が発生することを抑制できる。
【0053】
しかしながら、希釈された金属インク177が残ってしまうため、以下に説明するS29以降の金属インク177の供給を実行しても、第1及び第2タンク161,162内の金属インク177に含まれる銀微粒子が、S27で残した金属インク177に含まれる溶剤199によって希釈される(以下、単に、金属インク177が希釈される、と記載する場合がある)虞がある。金属インク177が希釈された状態では、造形される金属配線147の厚みは、金属インク177に含まれる銀微粒子の濃度(以下、銀微粒子の濃度、と記載する場合がある)が低下した分だけ薄くなる。その結果、金属配線147は、所望の電気的特性を満たさなくなる虞がある。ここでいう所望の電気的特性とは、回路に要求される電気的抵抗や周波数特性などである。
【0054】
この課題を改善するために、所望の電気的特性を満たす金属配線147を造形できる濃度まで、即ち、溶剤199がなくなるまで、S27の排出と、S29以降の金属インク177の供給を繰り返し実行する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、廃液量が増加し、造形コストの増加を招く虞がある。そこで、制御装置28は、銀微粒子の濃度の低下に応じて、金属インク177の印刷回数を増加させる補正を実行する。
【0055】
詳述すると、制御装置28は、S27を実行した後、
図9のS29に示すように、第1タンク161へ金属インク177を供給する。制御装置28は、電磁弁183,193を閉じ、電磁弁189を開いて、第1タンク161に負圧を供給し、金属インクタンク191から第1タンク161へ金属インク177を供給する。次に、制御装置28は、第1及び第2タンク161,162内の正圧と負圧を切り替えて、第1タンク161と第2タンク162の間で金属インク177を循環させる(S31)。これにより、第1及び第2タンク161,162、インクジェットヘッド76内の金属インク177における銀微粒子の濃度をより均一にできる。制御装置28は、正圧及び負圧の切り替えを所定回数実行し、最終的に第1及び第2タンク161,162を負圧に維持する。これにより、
図4に示すように、第1及び第2タンク161,162、インクジェットヘッド76内に金属インク177が貯留された状態となる。制御装置28は、例えば、第1及び第2タンク161,162内のインク量を互いに同一量にする。
【0056】
(金属配線147の造形)
次に、上記した溶剤199から金属インク177への変更を実行した後の金属配線147の造形処理について説明する。
図10は、造形作業の時間、銀濃度、インク量の関係を示している。
図10の横軸は、例えば、複数の金属配線147の造形を行う場合に、最初に金属配線147を造形してからの経過時間を示している。上のグラフの縦軸は、第1及び第2タンク161,162内の銀微粒子の濃度を示している。この縦軸の数字の「1」は、溶剤199によって薄められていない状態を示し、1より下側は濃度を薄められた状態を示している。また、下側の縦軸は、第1及び第2タンク161,162の金属インク177のインク量を示し、縦軸の上に行くほどインク量が多いことを示している。
【0057】
例えば、
図10の時間T0において、上記した溶剤199から金属インク177への変更が完了し、金属配線147の造形が開始されたとする。時間T0では、銀微粒子の濃度がX1とする。S23~S31の処理を実行し金属インク177を再度吐出できる状態になった第1及び第2タンク161,162内の銀微粒子の濃度は、S21で溶剤199を排出した後に第1及び第2タンク161,162内に残留する溶剤199の量、S23で供給した金属インクタンク191の供給量、S27で残すインク量、S29で供給する金属インクタンク191の供給量で決定される。S11において、金属インク177は、全て排出される。また、S21で溶剤199を排出した後に、第1及び第2タンク161,162内に残留する溶剤199の量、例えば、タンクの内壁やインクジェットヘッド76内に付着して残る溶剤199の量は、所定の値に近似できる。即ち、S21の排出後に残留する溶剤199の量は一定値と考えることができる。
【0058】
また、S23で供給するインク量や、S27で両タンクに残すインク量の合計値は、一定値に設定されている。従って、S27で残す金属インク177における銀微粒子の濃度を、予め設定することができる。そして、S31の後の銀微粒子の濃度は、この予め設定した銀微粒子の濃度(残す金属インク177の濃度)と、S29で供給した金属インク177の供給量に基づいて演算できる。例えば、記憶装置133(
図2参照)には、S27で残す金属インク177における銀微粒子の濃度の濃度値が予め設定されている。制御装置28は、
図9のS29で供給した金属インク177のインク量を、供給前の第1液面センサ185の検出値と、供給後の検出値に基づいて検出できる。そして、制御装置28は、上記した濃度値と、検出したインク量に基づいて時間T0における銀微粒子の濃度X1を演算する。
【0059】
尚、上記した演算方法は、一例である。例えば、記憶装置133に、S27で残すインク量や残したインクの濃度を記憶しても良い。制御装置28は、残すインク量と濃度から銀微粒子の量を演算し、演算した銀微粒子の量とS29の供給量とから供給後の濃度を演算しても良い。また、記憶装置133に記憶させておく濃度やインク量として、第1タンク161の濃度やインク量だけ、即ち、2つのタンクのうち一方のタンクの値だけを記憶しても良い。この場合、制御装置28は、例えば、S29の供給量の半分の値と、一方のタンクの濃度値に基づいて、一方のタンクの濃度だけを演算しても良い。
【0060】
次に、制御装置28は、演算結果の濃度X1と、閾値を比較する。
図10に示す例では、閾値として第1閾値濃度TH1、第2閾値濃度TH2が設定されている。第1及び第2閾値濃度TH1,TH2は、例えば、記憶装置133に予め設定されている。制御装置28は、濃度X1が第1閾値濃度TH1未満であるため、印刷回数を2層分増加させる。
【0061】
例えば、制御装置28は、金属配線147を造形する際に、ステージ52をX軸方向に移動させつつ、第1印刷部72から金属インク177を吐出させて、1層分の金属インク177を吐出させる。次に、制御装置28は、ステージ52を焼成部74に移動させ、吐出した金属インク177を加熱する。上記したように、制御装置28は、例えば、第2温度よりも低い第1温度(例えば、焼成させる第2温度の2/3程度の温度)で金属インク177を加熱して乾燥させ、有機溶剤を気化させる。制御装置28は、この1層分(1走査分)の印刷処理と、乾燥処理を1サイクルとして、濃度に応じてサイクル数を増加させる補正を行う。
図10に示す場合であれば、制御装置28は、濃度X1が第1閾値濃度TH1未満である場合、2サイクル増加させる。これにより、金属インク177が希釈されたとしても、印刷回数を増加させることで、所望の厚みの金属配線147、即ち、3次元データ133Bに設定された設計上の厚みの金属配線147を造形できる。その結果、所望の電気的特性の金属配線147を造形でき、製造後の基板140の動作不良の発生を抑制できる。
【0062】
同様に、制御装置28は、演算した濃度が第1閾値濃度TH1以上から、第1閾値濃度TH1よりも大きい第2閾値濃度TH2未満の範囲である場合、1サイクル増加させる。これにより、濃度が高くなるにつれて、増加させる印刷回数を減らし、金属配線147が過剰に厚くなることを抑制できる。尚、制御装置28は、印刷処理と乾燥処理の両方を増加させずに、印刷処理(印刷回数)だけを増加させても良い。あるいは、制御装置28は、印刷回数の補正以外の補正を実行しても良い。例えば、制御装置28は、銀微粒子の濃度が低下するほど、1サイクルあるいは1回の吐出でノズル181から吐出する金属インク177の吐出量を増加させても良い。これにより、吐出量を増やして所望の厚みの金属配線147を造形できる。また、制御装置28は、印刷回数の補正と、吐出量の補正の両方を実行しても良い。従って、制御装置28は、金属配線147を造形する位置に金属インクを吐出する処理を1サイクルとしてサイクルを少なくとも1回実行する。制御装置28は、本開示の濃度に応じた処理として、濃度の低下に応じてサイクルの実行回数を増加させる補正、及び濃度の低下に応じて金属インク177の1サイクルあたりの吐出量を増加させる補正のうち、少なくとも一方の補正を実行し、所定の厚みの金属配線147を造形しても良い。また、この補正量としては、造形後の金属配線147の抵抗値が所定抵抗値以下となる補正量、即ち、所望の電気的特性を満たす補正量を設定することが好ましい。
【0063】
また、上記したように、制御装置28は、溶剤199を排出し(S21、第1排出工程の一例)、排出後、タンク内に金属インク177を供給する(S23、第1金属含有液供給工程の一例)。制御装置28は、供給後、タンクに金属インク177を所定量だけ残して残りを排出し(S27、第2排出工程の一例)、排出後、タンクに金属インク177を供給する(S29、第2金属含有液供給工程の一例))。制御装置28は、造形において、S27で残す所定量の金属インク177に含まれる溶剤199の量と、S29で供給した金属インク177の供給量に基づいて、S29を実行した後の第1タンク161に貯留された銀微粒子の濃度を演算する。これにより、S27で所定量だけ残して排出することで、金属インク177による泡立ちの発生を抑制できる。また、予め設定された所定量だけ毎回残すことで、溶剤199から金属インク177に変更した後の銀微粒子の濃度を演算する処理負荷を軽減できる。尚、制御装置28は、S27においてタンク内に残す金属インク177の量を、残す処理ごとに変更しても良い。例えば、制御装置28は、補給用の金属インクタンク191に残された金属インク177の残量が少なくなってきた場合に、S27でタンク内に残す金属インク177の量を増やしても良い。これにより、金属インク177の消費量を減らすことができる。この場合、残量を増加させた分だけ、サイクル数や吐出量を増加させても良い。
【0064】
また、制御装置28は、S25において、第1タンク161に供給した金属インク177を第2タンク162との間で循環させる。これにより、第1タンク161だけでなく、第2タンク162に残留した溶剤199を金属インク177によって排出させることができる。また、制御装置28は、S31において、第1タンク161に供給した金属インク177を第2タンク162との間で循環させる。これにより、第1タンク161と第2タンク162の銀微粒子の濃度をより均一にできる。
【0065】
次に、制御装置28は、第1及び第2タンク161,162のインク量が造形にともなって減少すると、金属インクタンク191から第1タンク161へ金属インク177を再度供給する。制御装置28は、金属インク177を供給した後、例えば、第1タンク161と第2タンク162との間で金属インク177を循環させ、2つのタンクのインク量を同一にする。制御装置28は、銀微粒子の濃度を再度演算し、サイクル数の補正を再度実行する。例えば、
図10に示すように、第1及び第2タンク161,162のインク量は、時間T0に供給され増加した後、金属配線147の造形にともなって減少する。例えば、時間T1において、所定のインク量まで減少すると、制御装置28は、金属インク177を第1タンク161に再度供給する(再供給工程の一例)。制御装置28は、S29、S31と同様に、金属インク177の供給と循環を実行する。その後も、制御装置28は、インク量の減少にともなって、金属インク177の供給を適宜実行する(時間T2、T3、T4)。
【0066】
金属インク177を再供給するタイミングや供給量は、特に限定されない。例えば、制御装置28は、造形工程の空き時間を判断して適宜供給しても良い。この場合、供給量をタンク内のインク残量に応じて適宜変更しても良い。あるいは、制御装置28は、所定の固定値までインク量が減少した場合に、所定の固定量だけ金属インク177を供給しても良い。
【0067】
制御装置28は、金属インク177の再供給後、金属配線147の造形を実行する(再供給後造形工程の一例)。この際に、制御装置28は、再供給する前に第1タンク161に貯留されていた金属インク177における金属微粒子の濃度と、再供給した金属インク177の供給量に基づいて、再供給後の銀微粒子の濃度を演算し、演算した濃度に応じた処理を、造形において実行する。例えば、時間T1における演算結果の濃度X2は、第1閾値濃度TH1以上で、且つ第2閾値濃度TH2未満となっている。この場合、制御装置28は、印刷処理及び乾燥処理のサイクル数を1サイクル増加させる。これにより、再供給により濃度が高まっていくのに合わせてサイクル数(印刷回数)を減らし、所望の厚みの金属配線147を造形できる。尚、制御装置28は、濃度の増加にともなって補正量を変更しなくとも良い。制御装置28は、濃度に係わらず、増加させるサイクル数として固定値を用いても良い。
【0068】
また、制御装置28は、再供給と、再供給後の造形を繰り返し実行した後の時間T2において、演算結果の濃度X3が第2閾値濃度TH2以上となった場合、濃度に応じた処理の実行を停止する。制御装置28は、時間T2及び、それ以降(時間T3、T4など)において、サイクル数を増やす補正を実行しない。これにより、銀微粒子の濃度が、補正が不要となる濃度まで高まった場合には、補正を終了することで、不要な印刷処理の実行を停止し、金属配線147が不必要に厚くなることを抑制できる。尚、制御装置28は、濃度以外の条件で補正を終了しても良い。例えば、制御装置28は、再供給を実行した回数が所定の閾値回数以上となった場合に、補正を終了しても良い。
【0069】
因みに、上記実施例において、第1印刷部72は、吐出装置の一例である。インクジェットヘッド76は、ヘッドの一例である。金属インク177は、金属微粒子を含有する金属含有液の一例である。S13は、第1供給工程、第1供給処理の一例である。S21は、第1排出工程の一例である。S23,S25は、第1金属含有液供給工程の一例である。S27は、第2排出工程の一例である。S29,S31は、第2供給工程、第2金属含有液供給工程、第2供給処理の一例である。第1閾値濃度TH1、第2閾値濃度TH2は、閾値濃度の一例である。
【0070】
以上、上記実施例によれば以下の効果を奏する。
本実施例の一態様の制御装置28は、金属インク177を用いて金属配線147を造形する際に、第1及び第2タンク161,162に残留した溶剤199によって希釈された、S29で供給された金属インク177における銀微粒子の濃度に応じた処理で、所定の厚みの金属配線147を造形する。これにより、溶剤199により金属インク177が希釈された場合に、濃度に応じた処理を実行し、設計上の厚みの金属配線147を造形できる。
【0071】
尚、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記した
図5~
図9に示す金属インク177と、溶剤199の入れ替え制御の内容・手順等は、一例である。例えば、制御装置28は、S23、S25、S27を実行しなくとも良い。制御装置28は、S21の後に、S29を実行しても良い。この場合、制御装置28は、例えば、S21で第1及び第2タンク161,162に残留する溶剤199の量と、S29で供給した金属インク177の量に基づいて、金属インク177の銀粒子の濃度を演算しても良い。また、S23、S25、S27を実行しないことで、第1及び第2タンク161,162に残留する溶剤199が多くなり、金属インク177がより希釈される場合、制御装置28は、吐出のサイクル数や吐出量の補正において、サイクル数や吐出量の補正量を上記実施例に比べて多くする補正を実行しても良い。
また、制御装置28は、S23、S25、S27の金属インク177によって第1及び第2タンク161,162内の溶剤199を洗い流す制御を、繰り返し実行しても良い。この場合、S23、S25、S27のサイクルを繰り返し実行することで、第1及び第2タンク161,162に残留する溶剤199が少なくなり、金属インク177の希釈が抑制される場合、制御装置28は、吐出のサイクル数や吐出量の補正において、サイクル数や吐出量の補正量を上記実施例に比べて少なくする補正を実行しても良い。
また、制御装置28は、S31を実行しなくとも良い。例えば、制御装置28は、金属配線147の形成において、第1タンク161のみから金属インク177を吐出させても良い。この場合、制御装置28は、例えば、S27において、第1タンク161に残留した金属インク177の濃度と、S29で第1タンク161に供給した金属インク177の供給量に基づいて、S29実行後に第1タンク161に貯留された金属インク177の銀粒子の濃度を演算し、サイクル数等の補正を実行しても良い。
【0072】
また、
図10に示す補正の内容は一例である。例えば、制御装置28は、金属インク177を第1タンク161に再供給した場合(時間T1など)、銀粒子の濃度を再演算しなくとも良い。制御装置28は、溶剤199と金属インク177の入れ替え後に最初に演算した補正量(例えば、時間T0に決定した2サイクルを増加する量)を、金属インク177の再供給後(時間T1後)も維持させても良い。
また、制御装置28は、第1タンク161への金属インク177の再供給を実行するごとに濃度を再演算せずに、再供給を所定回数実行するごとに濃度を再演算して補正量を調整しても良い。
また、上記実施例では、制御装置28は、演算した濃度が所定の第2閾値濃度TH2以上になると、濃度に応じた補正を停止したが、他の条件で補正を停止しても良い。制御装置28は、濃度に応じたサイクル数等の補正を、予め設定された回数だけ実行し、補正を停止しても良い。例えば、制御装置28は、時間T0だけ補正を実行し、時間T1以降は補正を実施しなくとも良い。あるいは、制御装置28は、時間T2までは(金属インク177の供給回数が3回までは)補正を実行し、時間T3以降(金属インク177の供給回数が4回以降)は補正を実行しなくとも良い。
【0073】
図3に示す基板140の層数、金属配線147の形状、電子部品157の数等は、一例である。
第1印刷部72は、金属インク177を貯留するタンク(第1及び第2タンク161,162など)を3つ以上備えても良い。そして、第1印刷部72は、3つ以上のタンクで金属インク177や溶剤199を循環させても良い。
あるいは、第1印刷部72は、金属インク177を貯留するタンクを1つだけ備える構成でも良い。
図11は、別例の第1印刷部72Aの構成を示している。
図11に示すように、別例の第1印刷部72Aは、第1タンク161のみを備えている。この場合、金属インク177と溶剤199の入れ替えにおいて、制御装置28は、例えば、
図5、
図6と同様に、溶剤199への変更を決定すると、S11において第1タンク161内の金属インク177を排出し、S13において電磁弁189,183を閉じ、電磁弁193を開き、第1タンク161内を負圧にして、溶剤タンク194から第1タンク161へ溶剤199を供給する(本開示の第1供給工程の一例)。また、制御装置28は、例えば、S13を実行した後、
図7のS21と同様に、第1タンク161に正圧を供給し、第1タンク161内の溶剤199を排出してする。制御装置28は、溶剤199を排出した後、
図9のS29と同様に、第1タンク161に金属インク177を供給する(本開示の第2供給工程の一例)。そして、制御装置28は、
図10に示すように、金属インク177を用いて金属配線147を造形する際に、第1タンク161に残留した溶剤199によって希釈された、S29で供給された金属インク177における銀微粒子の濃度に応じた処理で、所定の厚みの金属配線147を造形しても良い。このような1つのタンクのみ備える構成においても、溶剤199により金属インク177が希釈された場合に、濃度に応じた処理を実行し、設計上の厚みの金属配線147を造形できる。
【0074】
基板製造装置10は、装着ユニット27を備えており、電子部品157の装着までを実行する構成であったが、装着ユニット27を備えなくとも良い。この場合、基板製造装置10は、電子部品157を装着する前の基板140までの製造を実行しても良い。また、電子部品157の装着を別の装置で実行しても良い。
【0075】
また、各流路を切替える電磁弁183,184,189,193,195は、電磁弁(ソレノイドバルブ)に限らず、例えば、モータを駆動して弁を駆動するタイプのものや、ピエゾ素子を用いたピエゾバルブでも良い。
また、第1印刷部72は、第1及び第2タンク161,162の両方から金属インク177を吐出したが、少なくとも一方から吐出させても良い。例えば、第1印刷部72は、第2タンク162のみから吐出する場合、金属インク177を吐出する際に、電磁弁183を閉じて第2タンク162を正圧にしても良い。また、制御装置28は、第2タンク162のインク量が減ってきた場合に、第1タンク161から第2タンク162へ金属インク177を供給しても良い。
また、上記実施例では、インクジェットヘッド88によって吐出される樹脂として紫外線硬化樹脂が用いられているが、これに限定されない。例えば、インクジェットヘッド88によって吐出される樹脂として、熱硬化性樹脂、2液混合型硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが使用されても良い。
【0076】
尚、本開示の内容は、請求項に記載の従属関係に限定されない。例えば、請求項5において「請求項1又は請求項2に記載の造形方法」を「請求項1から請求項4の何れか1項に記載の造形方法」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項7において「請求項1又は請求項2に記載の造形方法」を「請求項1から請求項6の何れか1項に記載の造形方法」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項8において「請求項2に記載の造形方法」を「請求項2又は請求項2に直接的若しくは間接的に従属する請求項3から請求項7の何れか1項に記載の造形方法」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。
【符号の説明】
【0077】
10 基板製造装置(造形装置)、28 制御装置、72,72A 第1印刷部(吐出装置)、76 インクジェットヘッド(ヘッド)、147 金属配線、161 第1タンク、162 第2タンク、177 金属インク(金属含有液)、199 溶剤、S13(第1供給工程、第1供給処理)、S21(第2供給工程,第1排出工程、第2供給処理)、S23,S25(第1金属含有液供給工程)、S27(第2供給工程、第2排出工程)、S29、S31(第2供給工程、第2金属含有液供給工程)、TH1 第1閾値濃度(閾値濃度)、TH2 第2閾値濃度(閾値濃度)。