(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178047
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電子写真画像形成用キャリア、電子写真画像形成用現像剤、電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置およびプロセスカートリッジ
(51)【国際特許分類】
G03G 9/113 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
G03G9/113 361
G03G9/113 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091090
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健都
(72)【発明者】
【氏名】長山 将志
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 亨
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智美
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AB04
2H500AB05
2H500CA41
2H500CB07
2H500CB09
2H500CB10
2H500EA44E
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】高い耐久性を実現し、かつ低抵抗領域での電気特性の制御を可能とし、長期印刷下においてキャリアの抵抗値変動が少なく、キャリア付着を抑制する電子写真画像形成用キャリアを提供する。
【解決手段】芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する被覆層とを有する電子写真画像形成用キャリアにおいて、前記被覆層中に、少なくともアンチモン含有粒子およびアニオン系分散剤を含み、前記アンチモン含有粒子が、無機微粒子を基体粒子としていることを特徴とする、電子写真画像形成用キャリアによって上記課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する被覆層とを有する電子写真画像形成用キャリアにおいて、
前記被覆層中に、少なくともアンチモン含有粒子およびアニオン系分散剤を含み、
前記アンチモン含有粒子が、無機微粒子を基体粒子としている
ことを特徴とする、電子写真画像形成用キャリア。
【請求項2】
前記アンチモン含有粒子が、アンチモンをドープした酸化スズを含有することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項3】
前記アンチモン含有粒子が、五酸化二アンチモンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項4】
前記基体粒子である無機微粒子が、酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項5】
前記アニオン系分散剤が、リン酸エステル系界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項6】
前記被覆層中に消泡剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項7】
前記消泡剤がシリコーン系消泡剤であることを特徴とする、請求項6に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項8】
前記被覆層中に、前記アンチモン含有粒子以外に、無機微粒子を含有することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項9】
前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子が、白色であることを特徴とする、請求項8に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項10】
前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子が、硫酸バリウムを含有することを特徴とする、請求項8に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項11】
前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子が、硫酸バリウム単体であることを特徴とする、請求項10に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項12】
請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリアを含むことを特徴とする、電子写真画像形成用現像剤。
【請求項13】
請求項12に記載の電子写真画像形成用現像剤を用いて画像形成することを特徴とする、電子写真画像形成方法。
【請求項14】
請求項12に記載の電子写真画像形成用現像剤を含むことを特徴とする、電子写真画像形成装置。
【請求項15】
請求項12に記載の電子写真画像形成用現像剤を備えることを特徴とする、プロセスカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成用キャリア、電子写真画像形成用現像剤、電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成では、光導電性物質等の静電潜像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナーを付着させてトナー像を形成した後、トナー像を記録媒体に転写し、定着して、出力画像を得る。近年はプリント速度の高速化も相まって、キャリアのトナーへの素早い帯電付与能力が強く要求されているのが現状である。
このような現状から、長期印刷の際には劣化したトナーがキャリア表面に付着するトナースペントによりキャリアの帯電が変動することがある。そのため、現像剤に補給されたトナーがキャリアと十分に摩擦帯電されないために帯電せず、現像器外にトナーが堆積してしまうトナー飛散や、白紙部にトナーが現像されてしまう地汚れが問題となっている。
また、近年のさらなる高画質化への要求から、高速現像をするために現像機内部でキャリアが強いストレスを受けて、キャリア被覆樹脂の削れや剥がれにより芯材が露出し、キャリアの電気抵抗が変動することでキャリアが静電潜像担持体上に転移する、所謂キャリア付着が発生する問題が発生している。このため、画像端部や中央部に白抜けとして現れるという不具合が発生するが、この問題に対する要求は近年さらにシビアになりつつある。
【0003】
このため、キャリアの電気抵抗を維持するためにこれまでに様々な試みが行われている。
例えば、特許文献1、2では適当な樹脂材料で被覆することで芯材との接着性や耐久性を向上させる方法が挙げられている。
特許文献3、4では被覆樹脂に無機微粒子を添加することでキャリア被覆層の耐久性を向上させる方法が挙げられている。
特許文献5では、被覆樹脂に高耐久の樹脂を使用し、さらに被覆層表面近傍に無機微粒子を多く存在させることで、長期印刷下での耐久性を上げる方法が挙げられている。
特許文献6では、導電性微粒子をキャリア被覆層に添加することで、キャリアの抵抗を調整し、またキャリアの耐久性を得ている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高い耐久性を実現し、かつ低抵抗領域での電気特性の制御を可能とし、長期印刷下においてキャリアの抵抗値変動が少なく、キャリア付着を抑制する電子写真画像形成用キャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、下記構成1)により解決される。
1)芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する被覆層とを有する電子写真画像形成用キャリアにおいて、
前記被覆層中に、少なくともアンチモン含有粒子およびアニオン系分散剤を含み、
前記アンチモン含有粒子が、無機微粒子を基体粒子としている
ことを特徴とする、電子写真画像形成用キャリア。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高い耐久性を実現し、かつ低抵抗領域での電気特性の制御を可能とし、長期印刷下においてキャリアの抵抗値変動が少なく、キャリア付着を抑制する電子写真画像形成用キャリアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のプロセスカートリッジの一例を説明するための図である。
【
図2】縦帯チャートにおける正常な画像と課題となるゴースト画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
本発明の電子写真画像形成用キャリアは、上記構成1)に示す通りであるが、本発明は、下記2)~12)の形態も好適に含むものである。
【0009】
2)前記アンチモン含有粒子が、アンチモンをドープした酸化スズを含有することを特徴とする、上記1)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
3)前記アンチモン含有粒子が、五酸化二アンチモンを含むことを特徴とする、上記1)または2)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
4)前記基体粒子である無機微粒子が、酸化アルミニウムであることを特徴とする、上記1)~3)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
5)前記アニオン系分散剤が、リン酸エステル系界面活性剤であることを特徴とする、上記1)~4)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
6)前記被覆層中に消泡剤を含有することを特徴とする、上記1)~5)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
7)前記消泡剤がシリコーン系消泡剤であることを特徴とする、上記6)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
8)前記被覆層中に、前記アンチモン含有粒子以外に、無機微粒子を含有することを特徴とする、上記1)~7)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
9)前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子が、白色であることを特徴とする、上記8)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
10)前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子が、硫酸バリウムを含有することを特徴とする、上記8)または9)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
11)前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子が、硫酸バリウム単体であることを特徴とする、上記8)~10)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
12)上記1)~8)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリアを含むことを特徴とする、電子写真画像形成用現像剤。
13)上記12)に記載の電子写真画像形成用現像剤を用いて画像形成することを特徴とする、電子写真画像形成方法。
14)上記12)に記載の電子写真画像形成用現像剤を含むことを特徴とする、電子写真画像形成装置。
15)上記12)に記載の電子写真画像形成用現像剤を備えることを特徴とする、プロセスカートリッジ。
【0010】
上記従来技術には次のような問題点がある。
特許文献1、2には、適当な樹脂材料で被覆することで芯材との接着性や耐久性を向上させる方法が挙げられている。しかしながら、近年ではプリント速度の高速化やトナーの低温定着化によりキャリアのトナースペントや該樹脂材料の摩耗がより発生しやすいものになっており、樹脂材料を変えるだけでは不十分である。
特許文献3、4では被覆樹脂に無機微粒子を添加させることでキャリア被覆層の耐久性を向上させる方法が挙げられている。しかし、単純に被覆樹脂に無機微粒子を添加させるだけでは、キャリアの耐久性は向上する一方、被覆樹脂への固定が十分でない無機微粒子が脱離することで、キャリアの電気特性の変化が生じ、キャリア付着などが起きる問題がある。
特許文献5では、被覆樹脂に高耐久の樹脂を使用し、さらに被覆層表面近傍に無機微粒子を多く存在させることで、長期印刷下での耐久性を上げる方法が挙げられている。無機微粒子を多く添加するにつれて、特に分布の偏りにより無機微粒子が多く存在する箇所から脱離が生じるリスクがあり、また被覆樹脂の削れにより無機微粒子の露出が多くなることでキャリアの電気特性が変化する問題がある。
特許文献6では、導電性微粒子をキャリア被覆層に添加することで、キャリアの抵抗を調整し、またキャリアの耐久性を得ている。得られる抵抗値は導電性微粒子の導電性とその添加量によって決定されるが、導電性の高い粒子の場合低い抵抗値を得るためには添加量を増やす必要があり、耐久性は得られる一方、脱離のリスクの増加や被覆樹脂が削れた時の微粒子の露出が多くなることによる大きな抵抗低下につながる。また、導電性の低い粒子の場合、少量の添加量で意図する抵抗値を得やすくなるが、膜の耐久性が低下する問題がある。
【0011】
本発明の電子写真画像形成用キャリアは、少量の導電性微粒子の添加で高い耐久性を発現しながら低抵抗領域での電気特性の制御を可能とし、長期印刷下においてキャリアの抵抗値変動が少なく、非画像部におけるキャリア付着を抑制することを可能とする。
【0012】
本発明の電子写真画像形成用キャリアは、前記構成1)に示すように、芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する被覆層とを有し、前記被覆層中に、少なくともアンチモン含有粒子およびアニオン系分散剤を含み、前記アンチモン含有粒子が、無機微粒子を基体粒子としていることを特徴とする。
【0013】
電子写真画像形成用キャリアにおいて、少量の導電性微粒子の添加で高い耐久性を発現しながら低抵抗領域での電気特性の制御を可能とする場合には、以下の2点が本発明の重要なポイントとして挙げられる。
【0014】
まず一つ目に、被覆層に無機微粒子を基体粒子としたアンチモン含有粒子を含むことである。アンチモンは導電性に優れており、少量の添加でキャリアに高い導電性を付与することが可能である。添加量が少ないことで、微粒子の脱離や削れた時の微粒子の露出を抑えることができる。アンチモンは粒子に含有、もしくはアンチモン自体を粒子として使用することが可能であるが、特に、アンチモンを酸化スズにドープして使用することで、非常に高い抵抗調整剤とすることができる。また、無機微粒子を基体とすることで、アンチモン含有粒子が被覆層中で崩れて破片となり被覆層から離脱して抵抗調整能力が失われることを防ぐことができる。
【0015】
基体とする無機微粒子は従来既存もしくは新規の材料を用いることが可能であるが、特に酸化アルミニウムを用いると抵抗調整能力が顕著となるため好ましい。これは、基体粒子表面の導電処理との相性が良く、処理効果が効率的に機能するためと考えられる。
【0016】
アンチモン含有粒子は、円相当径が500nm以上1000nm以下であることが望ましい。500nm以上であると、粒子径が小さすぎることがなく、キャリア抵抗を効率良く下げることができる。また1000nm以下であると、被覆層表面からの脱離が発生しにくくなる。
【0017】
アンチモン含有粒子は、被覆層に使用される樹脂100質量部に対し40~120質量部含まれるのが好ましく、60~100質量部含まれるのがさらに好ましい。
【0018】
ここで、アンチモン含有粒子は五酸化二アンチモンを含むことが好ましい。一般に、抵抗調整を目的として用いられるアンチモンである三酸化二アンチモンは、人体に対する有害性が指摘されており、好ましく用いられる材料ではない。五酸化二アンチモンを含有させた粒子を用いることで、人体への有害性が低く、且つ、効率のよい抵抗調整能力を持つキャリアを得ることができる。
【0019】
二つ目は、被覆層中にアニオン系分散剤を含むことである。樹脂、アンチモン含有粒子を含む無機微粒子、希釈溶媒等からなる被覆層を形成するコート液において、アニオン系分散剤を処方することで、無機微粒子を一次粒子径まで分散し、かつ粒度分布を狭分布化できる。これにより粗大粒子といった、樹脂に十分に包埋されずに、キャリア表面に弱く固定された微粒子をなくすことができる。アンチモン含有粒子は少量の添加で高い導電性を得られる一方、添加量が少なくなることで被覆層の耐久性が下がるリスクがあるが、分散剤の添加によって均一に被覆層内に微粒子が配置されることで、膜の耐久性を維持することができる。また、分散剤は樹脂と親和性のある基と、無機微粒子に親和性のある基の両方を有することから、樹脂と無機微粒子の親和性を向上させる効果がある。結果として、被覆層中の樹脂と無機微粒子の密着性が高まり、より強固な膜を形成することができ、長期印刷時のストレスにおいても無機微粒子が被覆層から脱離し難くなる。これにより経時でのベタ画像部へのキャリア付着の発生を抑制することができる。
【0020】
ここで上述のように、分散剤がアニオン系分散剤であることが重要である。アニオン系分散剤は分散性に優れる性質を持ち、アニオン系分散剤を添加することによって無機微粒子の粒度分布を狭分布化し、かつ均一にコート液内に配置することができる。アニオン系分散剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤等が挙げられる。中でも、リン酸エステル系界面活性剤であることが望ましい。リン酸エステル系界面活性剤は、被覆層中に含まれる無機微粒子を一次粒子径まで良好に分散することを可能にし、被覆層内の無機微粒子を均質化し、樹脂と無機微粒子の親和性を高めることができる。加えて本発明者等の検討の結果、リン酸エステルの構造を有するアニオン系分散剤を添加することで、トナー飛散に対する余裕度がさらに向上することが分かった。これはリン酸エステルの構造部分が負帯電トナーに対して正帯電するためであり、リン酸エステル系界面活性剤を含むアニオン系分散剤を添加した場合、添加しない場合と比較してトナーとの帯電性が向上するためである。特にトナーと混ぜて攪拌した直後の帯電性、所謂帯電立ち上がり性が良好となるため、補給時のトナーが十分に帯電せずにトナーが飛散してしまう、補給時のトナー飛散の抑制に大きな効果を示す。
【0021】
アニオン系分散剤は、主成分としてリン酸エステル系界面活性剤を含むことが好ましい。本実施形態において「主成分」であるというためには、分散剤中、リン酸エステル系界面活性剤を50質量%以上含むことが好ましい。90質量%以上含むことが更に好ましい。
また、アニオン系分散剤の添加量としては、アンチモン含有粒子並びにそれ以外の無機微粒子の総量100質量部に対して0.5質量部以上10.0重量部以下であることが好ましい。アニオン系分散剤の前記添加量が0.5質量部以上であることにより、無機微粒子の全てを一次粒子径まで分散することができ、凝集状態の無機微粒子が残りにくい。凝集粒子が存在する場合、これは被覆層に十分に固定化されず、印刷初期のストレスによって脱離し、抵抗が低下することで、キャリア付着が発生してしまう。加えて、被覆層の最表面に存在する分散剤量が少なく、良好な帯電立ち上がり性を示さず、トナー飛散に対する優位性が得られない。また、アニオン系分散剤の前記添加量が10.0重量部以下であることにより、無機微粒子に吸着できない分散剤成分の被覆層中の存在量が少なくなり、被覆層中における樹脂の割合が適切となり、被覆層の耐久性が向上し、また、印刷経時にて無機微粒子が脱離することを抑制し、印刷経時でのベタ画像部へのキャリア付着やトナー飛散を防止できる。アニオン系分散剤の前記添加量は、1.0質量部以上3.0質量部以下がさらに好ましい。
【0022】
また本発明においては、被覆層中に消泡剤を添加することがさらに望ましい。樹脂、アンチモン含有粒子を含む無機微粒子、希釈溶媒等からなる被覆層を形成するコート液にアニオン系分散剤を処方する場合、アニオン系分散剤は分散性に優れる一方、コート液が泡立ちやすくなる。この泡立ったコート液でコーティングを行った場合、泡を取り込んだ状態で被覆層が形成され、取り込んだ泡に起因した空隙が被覆層中に発生することがある。この被覆層中の空隙は膜の耐久性を低下させ、印刷経時にて、膜削れが進行してしまう。そこで、分散剤に加えて消泡剤を併せて処方することで、コート液の泡立ちが抑えられ、被覆層中の空隙の発生を無くすことができる。これにより、被覆層中に形成される空隙による印刷経時での膜削れを削減し、より高い耐久性を有し、キャリア付着をさらに抑制できるキャリアを得ることが可能となる。
【0023】
消泡剤としては、特に限定されないが、シリコーン系、アクリル系、ビニル系が挙げられる。中でも、シリコーン系であることが望ましい。一般的に消泡効果を発揮するためには、溶媒との相溶性と不相溶性のバランスが重要であるが、シリコーン系消泡剤は、この相溶性と不相溶性のバランスが良好であり、少ない添加量でも高い消泡効果を得ることができ、被覆層中の空隙の発生を抑制できる。
【0024】
消泡剤の市販品としては、KS-530、KF-96、KS-7708、KS-66、KS-69(信越シリコーン社製)、TSF451、THF450、TSA720、YSA02、TSA750、TSA750S(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK-065、BYK-066N、BYK-070、BYK-088、BYK-141(ビックケミー社製)、ディスパロン1930N、ディスパロン1933、ディスパロン1934(楠本化成社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
また、消泡剤の添加量としては被覆層を形成するコート液の総量100質量部に対して1.0質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。消泡剤の前記添加量が1.0質量部以上であることにより、十分な消泡効果が得られ、被覆層中の空隙の発生を防止できる。また消泡剤の前記添加量が10.0以下であることにより、ハジキと呼ばれる塗膜表面欠陥を防止でき、キャリア表面の被覆層の脆化および無機微粒子が脱離を抑制し、ベタ画像部へのキャリア付着を改善できる。消泡剤の前記添加量は、2.0質量部以上7.0質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0026】
被覆層は、前記アンチモン含有粒子以外に無機微粒子を含有することが好ましい。該無機微粒子を含有することで、被覆層の摺擦に対する耐久性が向上し、摩耗や削れによる劣化を抑制することができる。アンチモン含有粒子の存在によっても被覆層の耐久性は向上するが、アンチモン含有粒子の量によってキャリアの電気抵抗値が変化してしまうため、耐久性を向上させることを目的として被覆層中の量を調整することはできない。そのため、この無機微粒子によって被覆層の耐久性を担保させることが好ましい。
【0027】
また、この前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子は、白色であることが好ましい。白色の無機微粒子を用いることで、被覆層から脱離した場合にもトナーの色味への影響が少なく、良好である。
前記無機微粒子は、特にその材質に限定はないが、負帯電トナーを用いた場合、無機微粒子に正帯電性を持つ材料を用いると、長期での帯電付与能力が安定する。無機微粒子としては、金、銀、銅、シリカ、アルミニウム等の金属微粒子や、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化カルシウム、ITO、酸化シリコーン、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化セレン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ハ二酸化ケイ素、窒化硼素、窒化珪素、チタン酸カリウム、イドロタルサイト、アンチモンやタングステンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等が挙げられる。特に好ましい材料としては、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイトが挙げられ、中でも硫酸バリウムは、白色であり、負帯電トナーに対する帯電能力が高いため最適である。
【0028】
前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子として硫酸バリウムを用いる場合、硫酸バリウムは単体であることが好ましい。硫酸バリウムは被覆層表面に存在してトナーと接触することで帯電付与効果を発揮するが、硫酸バリウムが単体であると、トナーとの接触確率が増加し、帯電付与効果を最大限に発揮できる。なお硫酸バリウム単体とは、前記の「アンチモン含有粒子以外の無機微粒子」として使用する粒子が、硫酸バリウムのみによって構成されていることを指す。
【0029】
また、アンチモン含有粒子以外の無機微粒子は、円相当径が400nm以上900nm以下であることが望ましい。この範囲であると、被覆層表面に対して前記無機微粒子を凸の状態で存在させることができ、トナーとの帯電性を確保できる。安定した帯電能力、現像能力を確保するためには、前記無機微粒子の円相当径は600nm以上であることがより好ましい。また、前記無機微粒子の円相当径が900nm以下であると、被覆層の厚みに対して前記無機微粒子の粒径が大きすぎることがないために、樹脂に十分保持され、被覆層から脱離しにくくなるため好ましい。
【0030】
前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子は、被覆層に用いられる樹脂100質量部に対し30~100質量部含まれるのが好ましく、50~80質量部含まれるのがさらに好ましい。
【0031】
なお、本発明で言う円相当径は、従来公知の手法で確認することができ、例えば、キャリア化前であれば、例えばナノトラックUPAシリーズ(日機装社製)を用いて測定することができる。キャリア化後であれば、例えば、FIBにてキャリア表面の被覆層を切断し、断面をSEM、EDXにて観察することで確認をすることができる。以下に例を挙げる。
キャリアを包埋樹脂(Devcon 社、2 液混合、30 分硬化型エポキシ樹脂)に混ぜ込み、一晩以上置いて硬化させ、機械研磨により大まかな断面試料を作製する。これにクロスセクションポリッシャー(JEOL 製 SM-09010)を用い、加速電圧5.0kV、ビーム電流120μAの条件で断面の仕上げを行った。これを、走査型電子顕微鏡(Carl Zeiss製Merlin)を用いて、加速電圧0.8kV、倍率30000倍の条件で撮影する。撮影した画像をTIFF画像に取り込み、Media Cybernetics社製のImage-Pro Plusを用いて、粒子100粒子の円相当径を測定し、その平均値を使用した。
なお、確認方法はこれに限られるものではない。また、被覆層の厚さについても同様に撮影した画像から計測することが可能である。ただし、粒子には粒子毎の個体差、被覆層厚には場所による厚さのばらつきが存在することから、1粒/1箇所だけの測定に留まらず、統計的に問題のないn数の計測を行なう。
【0032】
本発明において、被覆層は、樹脂および必要に応じてその他の成分を含有することができる。このような樹脂としてはシリコーン樹脂、アクリル樹脂、またはこれらを併用して使用することができる。これは、アクリル樹脂は接着性が強く脆性が低いので耐磨耗性に非常に優れた性質を持つが、その反面、表面エネルギーが高いため、スペントし易いトナーとの組み合わせでは、トナー成分スペントが蓄積することによる帯電量低下など不具合が生じる場合がある。その場合、表面エネルギーが低いためトナー成分のスペントがし難く、膜削れが生じるためのスペント成分の蓄積が進み難い効果が得られるシリコーン樹脂を併用することで、この問題を解消することができる。しかし、シリコーン樹脂は接着性が弱く脆性が高いので、耐磨耗性が悪いという弱点も有するため、この2種の樹脂の性質をバランス良く得ることが重要であり、これによりスペントがし難く耐摩耗性も有する被覆膜を得ることが可能となる。これは、シリコーン樹脂は表面エネルギーが低いためトナー成分のスペントがし難く、膜削れが生じるためのスペント成分の蓄積が進み難い効果が得られるためである。
【0033】
本明細書でいうシリコーン樹脂とは、一般的に知られているシリコーン樹脂全てを指し、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコンや、アルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタンなどで変性したシリコーン樹脂などが挙げられるが、これに限るものではない。例えば、市販品としてストレートシリコン樹脂としては、信越化学製のKR271、KR255、KR152、東レ・ダウコーニング・シリコン社製のSR2400、SR2406、SR2410等が挙げられる。この場合、シリコーン樹脂単体で用いることも可能であるが、架橋反応する他成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。さらに、変性シリコーン樹脂としては、信越化学製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性)、東レ・ダウコーニング・シリコン社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)などが挙げられる。
【0034】
本明細書でいうアクリル樹脂とは、アクリル成分を有する樹脂全てを指し、特に限定するものではない。また、アクリル樹脂単体で用いることも可能であるが、架橋反応する他成分を少なくとも1つ以上同時に用いることも可能である。ここでいう架橋反応する他成分とは、例えばアミノ樹脂、酸性触媒などが挙げられるが、これに限るものではない。ここでいうアミノ樹脂とはグアナミン、メラミン樹脂等を指すが、これらに限るものではない。また、ここでいう酸性触媒とは、触媒作用を持つもの全てを用いることができる。例えば、完全アルキル化型、メチロール基型、イミノ基型、メチロール/イミノ基型等の反応性基を有するものであるが、これらに限るものではない。
【0035】
前記樹脂としてシリコーン樹脂、アクリル樹脂、またはこれらを併用して使用する場合、シラノール基を縮重合触媒によって縮合することで架橋させることにより、膜強度を高くすることができる。
縮重合触媒としては、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒が揚げられるが、本発明では、これら各種触媒のうち、優れた結果を齎すチタン系触媒の中でも、特にチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が触媒として最も好ましい。これは、シラノール基の縮合反応を促進する効果が大きく、且つ触媒が失活しにくいためであると考えられる。
【0036】
本発明のキャリアは、体積平均粒径が20μm以上100μm以下であることが好ましい。キャリア粒子の体積平均粒径が20μm以上であると、キャリア付着が少なくなり、100μm以下であると、画像細部の再現性が低下することがなく、精細な画像を形成できなくなることがない。特に、20~60μmのものを用いることで、近年の高画質化に対して、より好適に応えることができる。
なお、体積平均粒径は、例えば、マイクロトラック粒度分布計モデルHRA9320―X100や、SRAタイプ(日機装株式会社)を用いて測定することができる。
【0037】
本発明において、被覆層を形成するコート液は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、無機微粒子を安定に分散させることができる。
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ-クロルプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロルシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、メタクリルオキシエチルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0038】
シランカップリング剤の市販品としては、AY43-059、SR6020、SZ6023、SH6026、SZ6032、SZ6050、AY43-310M、SZ6030、SH6040、AY43-026、AY43-031、sh6062、Z-6911、sz6300、sz6075、sz6079、sz6083、sz6070、sz6072、Z-6721、AY43-004、Z-6187、AY43-021、AY43-043、AY43-040、AY43-047、Z-6265、AY43-204M、AY43-048、Z-6403、AY43-206M、AY43-206E、Z6341、AY43-210MC、AY43-083、AY43-101、AY43-013、AY43-158E、Z-6920、Z-6940(東レ・シリコーン社製)等が挙げられる。
【0039】
シランカップリング剤の添加量は、シリコーン樹脂に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。シランカップリング剤の添加量が0.1質量%以上であることにより、芯材粒子や導電性微粒子とシリコーン樹脂の接着性が向上し、長期間の使用中での被覆層の脱落を防止でき、10質量%以下であることにより、長期間の使用中でのトナーのフィルミングを防止できる。
【0040】
本発明において、芯材粒子としては、磁性体であれば、特に限定されないが、鉄、コバルト等の強磁性金属;マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;各種合金や化合物;これらの磁性体を樹脂中に分散させた樹脂粒子等が挙げられる。中でも、環境面への配慮から、Mn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Mn-Mg-Srフェライト等が好ましい。
【0041】
また、被覆層は、平均膜厚が0.50μm以上であることが望ましい。平均膜厚が0.50μm以上であると、膜の欠損箇所がなく微粒子を十分に保持することができる塗膜を形成できる。さらに好ましい被覆層の平均膜厚は、0.50μm以上1.00μm以下である。
【0042】
本発明のキャリアは、例えば、前記被覆層を形成するコート液を調製した後、該コート液を前記芯材粒子の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより製造することができる。前記塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法などが挙げられる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテート、合成イソパラフィン系炭化水素などが挙げられる。
前記焼付の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよい。
前記焼付の装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉、マイクロウエーブを備えた装置などが挙げられる。
【0043】
本発明の現像剤は、本発明のキャリアを含み、さらにトナーを含有することができる。
トナーは結着樹脂、着色剤、帯電制御剤、外添剤等を含有することができ、モノクロトナー、カラートナーのいずれであってもよい。また、定着ローラにトナー固着防止用オイルを塗布しないオイルレスシステムに適用するために、トナーは、離型剤を含有してもよい。このようなトナーは、一般に、フィルミングが発生しやすいが、本発明のキャリアは、フィルミングを抑制することができるため、本発明の現像剤は、長期に亘り、良好な品質を維持することができる。さらに、カラートナー、特に、イエロートナーは、一般に、キャリアの被覆層の削れによる色汚れが発生するという問題があるが、本発明の現像剤は、色汚れの発生を抑制することができる。
【0044】
トナーは、粉砕法、重合法等の公知の方法を用いて製造することができる。例えば、粉砕法を用いてトナーを製造する場合、まず、トナー材料を混練することにより得られる溶融混練物を冷却した後、粉砕し、分級して、母体粒子を作製する。次に、転写性、耐久性をさらに向上させるために、母体粒子に外添剤を添加し、トナーを作製する。
このとき、トナー材料を混練する装置としては、特に限定されないが、バッチ式の2本ロール;バンバリーミキサー;KTK型2軸押出し機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出し機(東芝機械社製)、2軸押出し機(KCK社製)、PCM型2軸押出し機(池貝鉄工社製)、KEX型2軸押出し機(栗本鉄工所社製)等の連続式の2軸押出し機;コ・ニーダ(ブッス社製)等の連続式の1軸混練機等が挙げられる。
【0045】
また、冷却した溶融混練物を粉砕する際には、ハンマーミル、ロートプレックス等を用いて粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機、機械式の微粉砕機等を用いて微粉砕することができる。なお、平均粒径が3~15μmとなるように粉砕することが好ましい。
さらに、粉砕された溶融混練物を分級する際には、風力式分級機等を用いることができる。なお、母体粒子の平均粒径が5~20μmとなるように分級することが好ましい。
また、母体粒子に外添剤を添加する際には、ミキサー類を用いて混合攪拌することにより、外添剤が解砕されながら母体粒子の表面に付着する。
【0046】
結着樹脂としては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリp-スチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単独重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
圧力定着用の結着樹脂としては、特に限定されないが、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等のオレフィン共重合体;エポキシ樹脂、ポリエステル、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、マレイン酸変性フェノール樹脂、フェノール変性テルペン樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0047】
着色剤(顔料又は染料)としては、特に限定されないが、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等の緑色顔料;カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等の黒色顔料、酸化チタン等の白色顔料等が挙げられ、二種以上を併用してもよく、透明トナーの場合は使用しなくてもよい。
【0048】
離型剤としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、アミド系ワックス、多価アルコールワックス、シリコーンワニス、カルナウバワックス、エステルワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0049】
また、トナーは、帯電制御剤をさらに含有してもよい。帯電制御剤としては、特に限定されないが、ニグロシン;炭素数が2~16のアルキル基を有するアジン系染料;C.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)等の塩基性染料;これらの塩基性染料のレーキ顔料;C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩;ジブチル、ジオクチル等のジアルキルスズ化合物;ジアルキルスズボレート化合物;グアニジン誘導体;アミノ基を有するビニル系ポリマー、アミノ基を有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂;サルチル酸;ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体;スルホン化した銅フタロシアニン顔料;有機ホウ素塩類;含フッ素4級アンモニウム塩;カリックスアレン系化合物等が挙げられるが、二種以上併用してもよい。なお、ブラック以外のカラートナーにおいては、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好ましい。
【0050】
外添剤としては、特に限定されないが、シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素等の無機粒子;ソープフリー乳化重合法により得られる平均粒径が0.05~1μmのポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等の樹脂粒子が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、表面が疎水化処理されているシリカ、酸化チタン等の金属酸化物粒子が好ましい。さらに、疎水化処理されているシリカ及び疎水化処理されている酸化チタンを併用し、疎水化処理されているシリカよりも疎水化処理されている酸化チタンの添加量を多くすることにより、湿度に対する帯電安定性に優れるトナーが得られる。
【0051】
本発明のキャリアを、キャリアとトナーから成る補給用現像剤とし、現像装置内の余剰の現像剤を排出しながら画像形成を行う画像形成装置に適用することで、極めて長期に渡って安定した画像品質が得られる。つまり、現像装置内の劣化したキャリアと、補給用現像剤中の劣化していないキャリアを入れ替え、長期間に渡って帯電量を安定に保ち、安定した画像が得られる。本方式は、特に高画像面積印字時に有効である。高画像面積印字時は、キャリアへのトナースペントによるキャリア帯電劣化が主なキャリア劣化であるが、本方式を用いることで、高画像面積時には、キャリア補給量も多くなるため、劣化したキャリアが入れ替わる頻度があがる。これにより、極めて長期間に渡って安定した画像を得られる。
補給用現像剤の混合比率は、キャリア1質量部に対してトナーを2質量部以上50質量部以下の配合割合とすることが好ましい。トナーが2質量部以上の場合には、キャリア供給過多となることがなく、現像装置中のキャリア濃度が高くなりすぎることがないため、現像剤の帯電量が増加しにくい。現像剤帯電量が上がる事により、現像能力が下がり画像濃度が低下してしまう。また50質量部以下であると、補給用現像剤中のキャリア割合が少なくなることがないため、画像形成装置中のキャリアの入れ替わりが多くなり、キャリア劣化に対する効果が期待できる。
【0052】
本発明の電子写真画像形成用現像剤は、上記本発明のキャリアを含むことを特徴とする。
なお、前記現像剤としては、現像剤中のトナーの濃度が、4質量%以上9質量%以下の範囲であることが好ましい。4質量%以上であるとトナー量が多く、適切な画像濃度が得られる。9質量%以下であるとキャリアのトナーが保持されやすくなり、トナー飛散が発生しにくくなる。
【0053】
(画像形成方法)
本発明の画像形成方法は、前記本発明の現像剤を用いて画像形成することを特徴とし、具体的には次の工程を有する。静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、本発明の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有する。
【0054】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、前記本発明の現像剤を備えることを特徴とし、具体的には、静電潜像担持体、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を本発明の現像剤を用いて現像する現像部材と、前記静電潜像担持体をクリーニングするクリーニング部材を有する。
【0055】
図1に、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ(10)は、静電潜像担持体である感光体(11)、感光体(11)を帯電する帯電部材である帯電装置(12)、感光体(11)上に形成された静電潜像を本発明の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像部材である現像装置(13)及び感光体(11)上に形成されたトナー像を記録媒体に転写した後、感光体(11)上に残留したトナーを除去するクリーニング部材であるクリーニング装置(14)が一体に支持されており、プロセスカートリッジ(10)は、複写機、プリンター等の画像形成装置の本体に対して着脱可能である。
【0056】
以下、プロセスカートリッジ(10)を搭載した画像形成装置を用いて画像を形成する方法について説明する。まず、感光体(11)が所定の周速度で回転駆動され、帯電装置(12)により、感光体(11)の周面が正又は負の所定電位に均一に帯電される。次に、スリット露光方式の露光装置、レーザービームで走査露光する露光装置等の露光装置から感光体(11)の周面に露光光が照射され、静電潜像が順次形成される。さらに、感光体(11)の周面に形成された静電潜像は、現像装置(13)により、本発明の現像剤を用いて現像され、トナー像が形成される。次に、感光体(11)の周面に形成されたトナー像は、感光体(11)の回転と同期されて、給紙部(不図示)から感光体(11)と転写装置の間に給紙された転写紙に、順次転写される。さらに、トナー像が転写された転写紙は、感光体(11)の周面から分離されて定着装置に導入されて定着された後、複写物(コピー)として、画像形成装置の外部へプリントアウトされる。一方、トナー像が転写された後の感光体(11)の表面は、クリーニング装置(14)により、残留したトナーが除去されて清浄化された後、除電装置により除電され、繰り返し画像形成に使用される。
【0057】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、前記本発明の現像剤を含むことを特徴とし、具体的には、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体を帯電させる帯電手段と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、該静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有しており、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなるものであり、現像剤として本発明の現像剤を用いるものである。
【実施例0058】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、以下の記載中の「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0059】
(キャリア製造例1)
<樹脂液1>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコーン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・五酸化二アンチモンドープ酸化スズ表面処理酸化アルミニウム(円相当径=0.55μm) 700部
・硫酸バリウム(円相当径=0.60μm) 570部
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 25部
・消泡剤(シリコーン系、シリコーン含有量:1%) 430部
【0060】
樹脂液1において、以上の各材料をホモミキサーにて10分間分散し、被覆層形成液を調合した。キャリア芯材として体積平均粒径36μmのMn-Mg-Srフェライトを用い、上記樹脂液1を芯材表面に厚みが0.50μmとなるようにスピラコーターSP-40(岡田精工社製)により60℃の雰囲気下で30g/minに割合で塗布し、その後、乾燥させた。得られたキャリアを、電気炉中にて230℃で1時間放置して焼成し、冷却後に目開き100μmの篩を用いて解砕して、キャリア1を得た。芯材表面から被覆層表面までの平均厚さTは0.50μmであった。
芯材の体積平均粒径の測定は、マイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社)のSRAタイプを使用し、0.7μm以上、125μm以下のレンジ設定で行ったものを用いた。
前記芯材表面から被覆層表面までの厚みT(μm)は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリア断面の観察をし、芯材表面から被覆層表面までの厚みTを、キャリア表面に沿って0.2μm間隔で50点測定し、得られた測定値を平均して求めた。
【0061】
(キャリア製造例2)
五酸化二アンチモンドープ酸化スズ表面処理酸化アルミニウムを、三酸化アンチモンドープ酸化スズ表面処理酸化アルミニウムに変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア2を得た。
【0062】
(キャリア製造例3)
リン酸エステル系界面活性剤を、硫酸エステル系界面活性剤に変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア3を得た。
【0063】
(キャリア製造例4)
リン酸エステル系界面活性剤を、カルボン酸系界面活性剤に変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア4を得た。
【0064】
(キャリア製造例5)
五酸化二アンチモンドープ酸化スズ表面処理酸化アルミニウムを、五酸化二アンチモンドープ酸化スズ表面処理酸化チタンに変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア5を得た。
【0065】
(キャリア製造例6)
<樹脂液6>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコーン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・五酸化二アンチモンドープ酸化スズ表面処理酸化アルミニウム(円相当径=0.55nm) 700部
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 14部
・消泡剤(シリコーン系、シリコーン含有量:1%) 400部
樹脂液1を樹脂液6に変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア6を得た。
【0066】
(キャリア製造例7)
硫酸バリウムを、酸化マグネシウムに変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア7を得た。
【0067】
(キャリア製造例8)
硫酸バリウムを、ハイドロタルサイトに変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア8を得た。
【0068】
(キャリア製造例9)
硫酸バリウムを、水酸化マグネシウムに変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア9を得た。
【0069】
(キャリア製造例10)
硫酸バリウムを、酸化アルミニウムに変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア10を得た。
【0070】
(キャリア製造例11)
シリコーン系消泡剤を、アクリル系消泡剤に変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア11を得た。
【0071】
(キャリア製造例12)
シリコーン系消泡剤を、ビニル系消泡剤に変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア12を得た。
【0072】
(キャリア製造例13)
五酸化二アンチモンドープ酸化スズ表面処理酸化アルミニウムを、五酸化二アンチモンドープ酸化スズに変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア13を得た。
【0073】
(キャリア製造例14)
リン酸エステル系界面活性剤を、ジアルキルアミン塩系界面活性剤に変更したこと以外は、キャリアの製造例1と同様にして、キャリア14を得た。
【0074】
<トナー製造例>
-ポリエステル樹脂Aの合成-
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物65部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物86部、テレフタル酸274部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で15時間反応させた。次に、5~10mmHgの減圧下、6時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が2,300、重量平均分子量(Mw)が8,000、ガラス転移温度(Tg)が58℃、酸価が25mgKOH/g、水酸基価が35mgKOH/gであった。
【0075】
―プレポリマー(活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)の合成―
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部、及びジブチルチンオキサイド2部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10~15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。
得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5、水酸基価が49であった。
次に、冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル411部、イソホロンジイソシアネート89部、及び酢酸エチル500部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、プレポリマー(前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)を合成した。
得られたプレポリマーの遊離イソシアネート含有量は、1.60質量%であり、プレポリマーの固形分濃度(150℃、45分間放置後)は50質量%であった。
【0076】
-ケチミン(前記活性水素基含有化合物)の合成-
攪拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン30部及びメチルエチルケトン70部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(前記活性水素基含有化合物)を合成した。得られたケチミン化合物(前記活性水素機含有化合物)のアミン価は423であった。
【0077】
-マスターバッチの作製-
水1,000部、DBP吸油量が42mL/100g、pHが9.5のカーボンブラックPrintex35(デグサ社製)540部、及び1,200部のポリエステル樹脂Aを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。次に、二本ロールを用いて、得られた混合物を150℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを作製した。
【0078】
-水系媒体の調製-
イオン交換水306部、リン酸三カルシウムの10質量%懸濁液265部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部を混合攪拌し、均一に溶解させて、水系媒体を調製した。
【0079】
-臨界ミセル濃度の測定-
界面活性剤の臨界ミセル濃度は以下の方法で測定した。表面張力計Sigma(KSV Instruments社製)を用いて、Sigmaシステム中の解析プログラムを用いて解析を行なった。界面活性剤を水系媒体に対して0.01%ずつ滴下し、攪拌、静置後の界面張力を測定した。得られた表面張力カーブから、界面活性剤の滴下によっても界面張力が低下しなくなる界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度として算出した。水系媒体に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの臨界ミセル濃度を表面張力計Sigmaで測定を行ったところ、水系媒体の質量に対して0.05%であった。
【0080】
―トナー材料液の調製―
ビーカー内に、ポリエステル樹脂Aを70部、プレポリマーを10部及び酢酸エチル100部を入れ、攪拌して溶解させた。離型剤としてパラフィンワックス5部(日本精鑞社製 HNP-9 融点75℃)、MEK-ST(日産化学工業社製)2部、及びマスターバッチ10部を加えて、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスクの周速度6m/秒で、粒径0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスした後、前記ケチミン2.7部を加えて溶解させ、トナー材料液を調製した。
【0081】
―乳化乃至分散液の調製―
前記水系媒体相150部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数12,000rpmで攪拌し、これに前記トナー材料液100部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化スラリー)を調製した。
【0082】
―有機溶剤の除去―
攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、前記乳化スラリー100部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間脱溶剤し、分散スラリーを調製した。
【0083】
―洗浄―
前記分散スラリー100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて30分間)した後減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。更に得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。
【0084】
―界面活性剤量調整―
上記洗浄により得られた濾過ケーキに、イオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した際のトナー分散液の電気伝導度を測定し、事前に作成した界面活性剤濃度の検量線より、トナー分散液の界面活性剤濃度を算出した。その値から、界面活性剤濃度が狙いの界面活性剤濃度0.05%になるように、イオン交換水を追加し、トナー分散液を得た。
【0085】
―表面処理工程―
前記所定の界面活性剤濃度に調整されたトナー分散液を、TK式ホモミキサーで5000rpmにて混合しながら、ウォーターバスで加熱温度T1=55℃で10時間加熱を行なった。その後トナー分散液を25℃まで冷却し、濾過を行なった。更に得られた濾過ケーキに、イオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。
【0086】
―乾燥―
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子1を得た。
【0087】
―外添処理―
さらに、トナー母体粒子1を100部に対して、平均粒径100nmの疎水性シリカ3.0部と、平均粒径20nmの酸化チタン1.0部と、平均粒径15nmの疎水性シリカ微粉体を1.5部とをヘンシェルミキサーにて混合し、[トナー1]を得た。
【0088】
[実施例1]
トナー製造例で得たトナー1を7質量部と、キャリア製造例1で得たキャリア1を93質量部用い、ミキサーで3分攪拌して現像剤1を作製した。
【0089】
[実施例2~12]
表2に示すように、実施例1においてキャリア1をキャリア2~12に変更したこと以外は実施例1と同様にして現像剤2~12を作製した。
【0090】
[比較例1]
キャリア1をキャリア13に変更したこと以外は実施例1と同様にして現像剤13を作製した。
【0091】
[比較例2]
キャリア1をキャリア14に変更したこと以外は実施例1と同様にして現像剤14を作製した。
【0092】
得られた現像剤について、各キャリアの被覆層の構成を表1に示した。
【0093】
【0094】
<現像剤特性評価>
得られた[現像剤1]~[現像剤14]を用いて下記の評価を行った。
長期印刷時におけるキャリアの削れ、帯電、抵抗の変動の評価としてエッジキャリア付着、ベタキャリア付着の評価を行い、長期印刷時の帯電安定性の評価として、トナー飛散、ID、帯電立ち上がり性、経時帯電安定性、ゴースト画像の評価を行った。
【0095】
得られた現像剤を用いて市販のデジタルフルカラー複合機(株式会社リコー製、Pro C9100)にセットし、画像評価を実施した。
【0096】
(トナー飛散)
100万枚ランニング後に現像剤担持体下部に溜まったトナーの量を吸引、回収し、トナー重量を測定した。評価基準を以下に示す。◎、〇および△評価が合格である。
0mg以上~50mg未満 : ◎(大変良好)
50mg以上~100mg未満 : ○(良好)
100mg以上~250mg未満 : △(使用可能)
250mg以上 : ×(不良)
【0097】
(エッジキャリア付着)
100万枚ランニング後にマシンを環境評価室(10℃15%の低温低湿環境)に入れて一日放置し、その後、各現像剤を用いてエッジキャリア付着を評価した。
現像条件(帯電電位(Vd):-630V、現像バイアス:DC-500V)にて170μm×170μmを1マスとして、ベタ部と白紙を縦横交互に配置させた画像をA3サイズで出力し、1マス1マスの境目にあるキャリア付着による画像の白抜け個数をカウントした。評価基準を下記に示す。◎、〇および△評価が合格である。
0個 : ◎(大変良好)
1~3個 : ○(良好)
4~10個 : △(使用可能)
11個以上 : ×(不良)
【0098】
(ベタキャリア付着)
100万枚ランニング後にマシンを実験室環境(25℃60%環境)にて、各現像剤を用いてベタキャリア付着を評価した。
ベタ画像を所定の現像条件(帯電電位(Vd):-600V、画像部(ベタ原稿)にあたる部分の感光後の電位:-100V、現像バイアス:DC-500V)にて作像中に電源をOFFにする等の方法で作像を中断し、転写後の感光体上のキャリア付着の個数を数えて評価を実施した。なお、評価する領域は感光体上の10mm×100mmの領域とした。評価基準を下記に示す。◎、〇および△評価が合格である。
0個 : ◎(大変良好)
1~3個 : ○(良好)
4~10個 : △(使用可能)
11個以上 : ×(不良)
【0099】
(ID)
マシンを環境評価室(10℃15%の低温低湿環境)に入れて100K枚(100000枚)ラン後、白ベタ、及び黒ベタ画像、A3紙(銘柄:RICOH MyPaper)を各3枚印字し、画像サンプル上の画像濃度(目視評価)を評価した。
以上の評価結果を次の4段階でランク付けした。◎、〇および△評価が合格である。
◎:大変良い、○:良い、△:使用可能、×:悪い
【0100】
(帯電立ち上がり性)
初期のキャリア93質量%に対しトナー7質量%の割合で混合し、摩擦帯電させたサンプルを、ブローオフTB-200(東芝ケミカル社製)を用いて測定する。このとき、キャリアとトナーの混合を開始し、15秒時点での帯電量をQ1とし、混合開始後600秒時点での帯電量をQ2とする。帯電立ち上がり性は(Q1-Q2)/(Q1)×100の絶対値と規定した。評価基準を以下に示す。◎、〇および△評価が合格である。
15以上 : ◎(大変良好)
10以上~15未満 : ○(良好)
5以上~10未満 : △(使用可能)
0以上~5未満 : ×(不良)
【0101】
(経時帯電安定性)
リコー社製Pro C9100(リコー製デジタルカラー複写機・プリンター複合機)に実施例及び比較例の現像剤1~14と、それらの補給用現像剤を用いて、画像面積率40%で100万枚のランニング後のキャリアで評価を行った。
まず、初期のキャリアの帯電量(Q1)は、キャリア1~14と、トナー1を、質量比93:7で混合し、摩擦帯電させたサンプルを、ブローオフ装置TB-200(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。また、100万枚ランニング後のキャリアの帯電量(Q2)は、ブローオフ装置を用いてランニング後の現像剤中の各色のトナーを除去したキャリアを用いた以外は、上記と同様にして測定した。帯電量の変化率は(Q1-Q2)/(Q1)×100の絶対値と規定した。評価基準を以下に示す。◎、〇および△評価が合格である。
0以上~5未満 : ◎(大変良好)
5以上~10未満 : ○(良好)
10以上~20未満 : △(使用可能)
20以上 : ×(不良)
【0102】
(ゴースト画像)
ゴースト画像は画像面積率8%のA4サイズの
図2に示すような画像チャートに示す縦帯チャートを印刷し、スリーブ一周分(a)と一周後(b)の濃度差をX-Rite938(X-Rite社製)により、センター、リア、フロントの3箇所測定の平均濃度差をΔIDとし、以下ランク分けした。
図2において、上図は縦帯チャートにおける正常な画像を示し、下図は画像部(a1)、(a2)および(a3)に対する、課題となるゴースト画像(b1)、(b2)および(b3)をそれぞれ示している。
◎:非常に良好、○:良好、△:許容、×:実用上使用できないレベル
◎、○、△を合格とし×を不合格とした。
◎:0.01≧ΔID
○:0.01<ΔID≦0.03
△:0.03<ΔID≦0.06
×:0.06<ΔID
【0103】
画像評価の結果を表2に示す。
【0104】