(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178056
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】光学素子、及びそれを有する接眼光学系、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091103
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋輔
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA47
2H199CA53
2H199CA65
2H199CA67
2H199CA68
2H199CA85
(57)【要約】
【課題】広画角の光束を観察者の瞳まで到達させることが可能な光学素子を提供すること。
【解決手段】光学素子は、画像表示素子からの光束を観察者の瞳に導光する光学素子であって、光束を偏向して光学素子の内面に入射させる第1偏向部と、内面で全反射した光束を複数回偏向することで瞳の側へ射出する第2偏向部と、第1偏向部の側から第2偏向部の側へ順に配置された、第1半透過反射面と第2半透過反射面とを備える半透過反射部とを有し、第2半透過反射面は、第1半透過反射面からの光束の一部を第1半透過反射面の側へ反射する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子からの光束を観察者の瞳に導光する光学素子であって、
前記光束を偏向して前記光学素子の内面に入射させる第1偏向部と、
前記内面で全反射した前記光束を複数回偏向することで前記瞳の側へ射出する第2偏向部と、
前記第1偏向部の側から前記第2偏向部の側へ順に配置された、第1半透過反射面と第2半透過反射面とを備える半透過反射部とを有し、
前記第2半透過反射面は、前記第1半透過反射面からの光束の一部を前記第1半透過反射面の側へ反射することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記第1偏向部により偏向された光束は、前記第1半透過反射面を透過した後、前記第2半透過反射面により前記第2半透過反射面を透過する第1光束と前記第2半透過反射面で反射する第2光束とに分けられ、
前記第1光束は、前記第2偏向部に入射し、
前記第2光束は、前記第1半透過反射面で反射し、前記第2半透過反射面を透過し、前記第2偏向部に入射することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1半透過反射面と前記第2半透過反射面とが互いに平行であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1半透過反射面と前記第2半透過反射面とが前記第1の偏向部の入射面に対して垂直であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項5】
前記光学素子の厚さをt、前記第1半透過反射面と前記第2半透過反射面との間隔をL、前記第1の偏向部に対する前記光束の最大入射角をα、nを0以上の整数とするとき、
0.20<L/(t・tan(α))-n<0.80
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項6】
前記光学素子の厚さをt、前記光学素子の入射面における前記光束の光束径をΦ、前記第1の偏向部に対する前記光束の最小入射角をβとするとき、
0.50<Φ/(t・tan(β))<2.00
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項7】
前記半透過反射部は、前記第1偏向部の側から前記第2偏向部の側へ順に配置された、偏光選択性半透過反射機能による前記第1半透過反射面、第3半透過反射面、偏光選択性半透過反射機能による前記第2半透過反射面を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項8】
前記内面で全反射した前記光束の偏光方向と前記第1半透過反射面の偏光透過軸とが互いに平行であることを特徴とする請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1半透過反射面と前記第3半透過反射面との間の光路上に配置された第1四分の一波長板と、
前記第3半透過反射面と前記第2半透過反射面の間の光路上に配置された第2四分の一波長板とを更に有し、
前記第1四分の一波長板、及び前記第2四分の一波長板は、それぞれの遅相軸が90°傾くように配置され、
前記第1半透過反射面の偏光透過軸と前記第2半透過反射面の偏光透過軸とが互いに平行であり、
前記第1半透過反射面の偏光透過軸に対して前記第1四分の一波長板の遅相軸が45°傾くことを特徴とする請求項7に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第1偏向部により偏向された光束は、前記第1半透過反射面を透過し、前記第1四分の一波長板を透過した後、前記第3半透過反射面により前記第3半透過反射面を透過する第1光束と前記第3半透過反射面で反射する第2光束とに分けられ、
前記第1光束は、前記第2四分の一波長板を透過し、前記第2半透過反射面で反射し、前記第2四分の一波長板を透過し、前記第3半透過反射面で反射し、前記第2四分の一波長板を透過し、前記第2半透過反射面を透過し、前記第2偏向部に入射し、
前記第2光束は、前記第1四分の一波長板を透過し、前記第1半透過反射面で反射し、前記第1四分の一波長板を透過し、前記第3半透過反射面を透過し、前記第2四分の一波長板を透過し、前記第2半透過反射面を透過し、前記第2偏向部に入射することを特徴とする請求項9に記載の光学素子。
【請求項11】
前記光学素子の厚さをt、前記第1半透過反射面と前記第3半透過反射面との間隔をa、前記第3半透過反射面と前記第2半透過反射面との間隔をb、前記光束の最大入射角をα、nを0以上の整数とするとき、
0.20<|a-b|/(t・tan(α))-n<0.80
なる条件式を満足することを特徴とする請求項8に記載の光学素子。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の光学素子と、
画像表示素子からの光束を前記光学素子に導光する光学系とを有することを特徴とする接眼光学系。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の光学素子と、
画像表示素子と、
前記画像表示素子からの光束を前記光学素子に導光する光学系とを有することを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示素子からの光束を観察者の瞳に導光する光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示素子からの光束を観察者の瞳に導光する導光板(光学素子)を備える画像表示装置が提案されている。
図10は、従来の導光板100内を伝搬する光束の概念図である。画像表示素子から射出された光束は、第1偏向部110に入射し、偏向された後、全反射条件を満たすため導光板100内を伝搬し、第2偏向部120に入射する。第2偏向部120に入射した光束の一部は偏向されて観察者の瞳SPに向かい、他の一部は反射し、導光板100内を伝搬し、第2偏向部120に入射する。このような構成により、観察者が光束を観察可能な領域を拡大することができる。
【0003】
特許文献1には、画像表示装置の広視野化を実現するために、高い屈折率を有する材料によって形成された導光板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の導光板を使用して広画角の光束を導光する際に、導光板から射出される光束間の幅が大きくなり、観察者の瞳まで光が到達しない場合がある。
【0006】
本発明は、広画角の光束を観察者の瞳まで到達させることが可能な光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての光学素子は、画像表示素子からの光束を観察者の瞳に導光する光学素子であって、光束を偏向して光学素子の内面に入射させる第1偏向部と、内面で全反射した光束を複数回偏向することで瞳の側へ射出する第2偏向部と、第1偏向部の側から第2偏向部の側へ順に配置された、第1半透過反射面と第2半透過反射面とを備える半透過反射部とを有し、第2半透過反射面は、第1半透過反射面からの光束の一部を第1半透過反射面の側へ反射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、広画角の光束を観察者の瞳まで到達させることが可能な光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る導光板を用いた画像表示装置の構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態の導光板の構成を示す図である。
【
図3】第1偏向部と第2偏向部の変形例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態の導光板内を伝搬する光束の概念図である。
【
図5】射出される光束の光束径と光束間の幅の概念図である。
【
図6】第1の実施形態の導光板の構成を示す図である。
【
図7】第2の実施形態の導光板内を伝搬する光束の概念図である。
【
図8】数値実施例1乃至3の導光板への入射光束の入射角と射出される光束間の幅の関係とを示す図である。
【
図9】数値実施例4乃至6の導光板への入射光束の入射角と射出される光束間の幅の関係とを示す図である。
【
図10】導光板内を伝搬する光束の概念図である(従来例)。
【
図11】導光板から射出される光束間の幅の説明図である(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
まず、
図11を参照して、従来の導光板100から射出される光束間の幅について説明する。
図11は、従来の導光板100から射出される光束間の幅D0の説明図である。光束間の幅D0は、導光板100への入射光束の入射角θによって変化する。入射角θが最も大きい光束、すなわち広画角(最周辺画角)の光束が導光板100に入射する場合に光束間の幅は最大となる。光束間の幅D0が大きすぎる場合、観察者の瞳SPまで広画角の光束が到達しない可能性がある。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る画像表示装置の構成を示す図である。画像表示装置は、導光板(光学素子)10、画像表示素子を含む画像形成装置81、及び画像形成装置81から射出された光束を導光板10に導光する光学系82を有する。導光板10は、画像表示素子からの光束を観察者の瞳SPに導光する。本実施形態では、導光板10と光学系82により接眼光学系が構成される。なお、画像形成装置81、及び光学系82はそれぞれ、2次状に配列されたパネル、及びコリメート光学系から構成されてもよいし、レーザープロジェクタ、及びMEMSミラーとリレーレンズ光学系から構成されてもよい。
【0013】
以下、各実施形態の導光板10の構成について説明する。
[第1の実施形態]
図2は、本実施形態の導光板10の構成を示す図である。
図2(a)は、本実施形態の導光板10内を伝搬する第1光束を示している。
図2(b)は、本実施形態の導光板10内を伝搬する第2光束を示している。
図2(c)は、本実施形態の導光板10内を伝搬する光束を示している。
【0014】
導光板10は、第1偏向部11及び第2偏向部12を有する。第1偏向部11は、導光板10への入射光束を偏向して導光板10の内面に入射させる。第2偏向部12は、導光板10の内面で全反射した光束を複数回偏向することで瞳SPの側へ射出する。
【0015】
なお、第1偏向部11及び第2偏向部15は、
図3(a)に示されるように、回折格子151から構成されてもよい。また、第1偏向部11及び第2偏向部15は、
図3(b)に示されるように、ホログラム回折素子161から構成されてもよい。回折格子151及びホログラム回折素子161は、透過型であってもよいし、反射型であってもよい。また、第1偏向部11及び第2偏向部15は、
図3(c)に示されるように、反射面171を備えていてもよい。更に、また、第1偏向部11及び第2偏向部15は、
図3(d)に示されるように、プリズム181から構成されてもよい。第1偏向部11及び第2偏向部12は、上述した構成の一つから構成されてもよいし、複数から構成されてもよい。
【0016】
また、本実施形態の導光板10は、第1偏向部11と第2偏向部12との間の光路上に配置された、半透過反射部を有する。本実施形態では、半透過反射部は、第1偏向部11の側から第2偏向部12の側へ順に配置された、第1半透過反射部31、第2半透過反射部32を備える。第1半透過反射部31は第1半透過反射面を備え、第2半透過反射部32は第2半透過反射面を備える。
【0017】
導光板10の内面を全反射により伝搬する光束は、第1半透過反射部31の第1半透過反射面に入射する。第1半透過反射面を透過した光束は、第2半透過反射部32の第2半透過反射面を透過する第1光束33と、第2半透過反射面で反射する第2光束34とに分けられる。
【0018】
第1光束33は、
図2(a)に示されるように、導光板10の内面を全反射により伝搬し、第2偏向部12によって複数回偏向される。
【0019】
第2光束34は、
図2(b)に示されるように、第1半透過反射面で反射し、第2半透過反射部面を透過した後、導光板10の内面を全反射により伝搬し、第2偏向部12によって複数回偏向される。
【0020】
本実施形態では、導光板10の内面に複数の半透過反射面を設けることで、
図2(c)に示されるように、従来の射出される光束間の幅D0と比較して、射出される光束間の幅D1を小さくすることができる。したがって、高画角の光束が観察者の瞳に到達することができるため、画像表示装置の広視野化を実現することができる。
【0021】
なお、本実施形態では、第1半透過反射部31及び第2半透過反射部32は、第1半透過反射面と第2半透過反射面とが平行となるように配置されていることが好ましい。これにより、第2偏向部12から射出される複数の光束が平行になるため、第2偏向部12から射出される光束による観察像が一致するようになる。ここで、平行とは、厳密に平行である場合だけでなく、実質的に平行(略平行)である場合も含んでいるものとする。
【0022】
また、本実施形態では、第1半透過反射部31及び第2半透過反射部32は、第1半透過反射面と第2半透過反射面とが導光板10の入射光束が入射する面に対して垂直となるように配置されることが好ましい。これにより、第1半透過反射部31及び第2半透過反射部32の製造を容易にすると共に、第1半透過反射面と第2半透過反射面の平行度を高めることができる。ここで、垂直とは、厳密に垂直である場合だけでなく、実質的に垂直(略垂直)である場合も含んでいるものとする。
【0023】
また、本実施形態では、導光板10は、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
【0024】
0.20<L/(t・tan(α))-n<0.80 (1)
ここで、tは、導光板10の厚さ()である。Lは、第1半透過反射面と第2半透過反射面との間隔である。αは、導光板10への入射光束の最大入射角である。nは、0以上の整数である。
【0025】
条件式(1)は、導光板10の厚さ及び第1半透過反射面と第2半透過反射面との間隔を規定する。
図4は、本実施形態の導光板10内を伝搬する光束の概念図である。ここで、導光板10の厚さ及び第1半透過反射面と第2半透過反射面との間隔に応じた導光板10から射出される光束間の幅の変化について説明するため、間隔Lを以下の式(2)で表す。
【0026】
L=L0+n・t・tan(α)(0≦L0<t・tan(α)) (2)
間隔Lがt・tan(α)の整数倍分変化しても光束間の幅は変わらないため、値L0の範囲で光束間の幅を議論してよい。第2偏向部12から射出される光束による第1の間隔をd1、第2の間隔をd2とするとき、第1の間隔d1と第2の間隔d2はそれぞれ、以下の式(3),(4)で表される。
【0027】
d1=2・t・tan(α)-2・L0 (3)
d2=2・L0 (4)
導光板10が条件式(1)を満足することで、第1の間隔d1及び第2の間隔d2を小さくすることができる。すなわち、射出される光束間の幅を小さくすることができる。条件式(1)の下限値を下回ると、第1の間隔d1が大きくなりすぎ、射出される光束間の幅を小さくすることができない。条件式(1)の上限値を上回ると、第2の間隔d2が大きくなりすぎ、射出される光束間の幅を小さくすることができない。
【0028】
なお、条件式(1)の数値範囲を以下の条件式(1a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0029】
0.25<L/(t・tan(α))-n<0.75 (1a)
また、条件式(1)の数値範囲を以下の条件式(1b)の数値範囲とすることが更に好ましい。
【0030】
0.30<L/(t・tan(α))-n<0.70 (1b)
また、本実施形態では、導光板10は、以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
【0031】
0.50<Φ/(t・tan(β))<2.00 (5)
ここで、Φは、導光板10の入射面における導光板10への入射光束の光束径である。βは、導光板10の入射面における導光板10への入射光束の最小入射角である。
【0032】
条件式(5)は、導光板10の厚さ及び入射光束の光束径を規定する。
図5は、射出される光束の光束径Φと光束間の幅Dの概念図である。導光板10が条件式(5)を満足することで、第2偏向部12から射出される光束による間隔dと入射光束の光束径Φとの差分である射出される光束間の幅Dを小さくすることができる。条件式(5)の下限値を下回ると、入射光束の光束径Φが小さくなりすぎ、射出される光束間の幅Dを小さくすることができず好ましくない。条件式(5)の上限値を上回ると、入射光束が導光板10の内面で全反射した後、再度導光板10に入射するため好ましくない。
【0033】
なお、条件式(5)の数値範囲を以下の条件式(5a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0034】
0.55<Φ/(t・tan(β))<1.95 (5a)
また、条件式(5)の数値範囲を以下の条件式(5b)の数値範囲とすることが更に好ましい。
【0035】
0.60<Φ/(t・tan(β))<1.90 (5b)
[第2の実施形態]
図6は、本実施形態の導光板10の構成を示す図である。
図6(a)は、本実施形態の導光板10内を伝搬する第1光束を示している。
図6(b)は、本実施形態の導光板10内を伝搬する第2光束を示している。
図6(c)は、本実施形態の導光板10内を伝搬する光束を示している。
【0036】
本実施形態の導光板10は、第1の実施形態と同様に、第1偏向部11及び第2偏向部12を有する。また、本実施形態の導光板10は、第1偏向部11と第2偏向部12との間の光路上に配置された、半透過反射部を有する。本実施形態では、半透過反射部は、第1偏向部11の側から第2偏向部12の側へ順に配置された、第1半透過反射部51、第3半透過反射部52、第2半透過反射部53を備える。第1半透過反射部51は偏光選択性半透過反射機能による第1半透過反射面を備え、第3半透過反射部52は第3半透過反射面を備え、第2半透過反射部53は偏光選択性半透過反射機能による第2半透過反射面を備える。また、本実施形態の導光板10は、第1半透過反射面と第3半透過反射面との間の光路上に配置された第1四分の一波長板54、及び第3半透過反射面と第2半透過反射面との間の光路上に配置された第2四分の一波長板55を有する。第1四分の一波長板54と第2四分の一波長板55は、それぞれの遅相軸が90°傾くように配置される。第1半透過反射部51と第2半透過反射部53は、第1半透過反射面の偏光透過軸と第2半透過反射面の偏光透過軸とが平行となるように配置される。第1半透過反射部51と第1四分の一波長板54は、第1半透過反射面の偏光透過軸に対して第1四分の一波長板54の遅相軸が45°傾くように配置される。
【0037】
第1偏向部11により導光板10の内面を全反射により伝搬する光束は、第1半透過反射面に入射する。第1半透過反射面を透過した光束は、直線偏光となり、第1四分の一波長板54によって円偏光となり、第3半透過反射面に入射する。第3半透過反射面に入射した光は、第3半透過反射面を透過する第1光束56と、第3半透過反射面で反射する第2光束57とに分けられる。
【0038】
第1光束56はまず、第2四分の一波長板55によって第1半透過反射面を透過した際の方向と直交した方向へ偏光した直線偏光になる。次に、第1光束56は、第2半透過反射面で反射し、第2四分の一波長板55によって最初に第1四分の一波長板54によって円偏光となった際と逆回りの円偏光となり第3半透過反射面に入射する。次に、第1光束56は、第3半透過反射面で反射し、第2四分の一波長板55によって第1半透過反射面を透過した際の方向と同じ方向へ偏光した直線偏光になる。その後、第1光束56は、第2半透過反射面を透過して第2偏向部12によって複数回偏向される。
【0039】
第2光束57はまず、第1四分の一波長板54によって第1半透過反射面を透過した際の方向と直交した方向へ偏光した直線偏光になる。次に、第2光束57は、第1半透過反射面で反射し、第1四分の一波長板54によって最初に第1四分の一波長板54によって円偏光となった際と逆回りの円偏光となり第3半透過反射面に入射する。次に、第2光束57は、第3半透過反射面を透過し、第2四分の一波長板55によって第1半透過反射面を通過した際の方向と同じ方向へ偏光した直線偏光になる。その後、第2光束57は、第2半透過反射面を透過して第2偏向部12によって複数回偏向される。
【0040】
本実施形態では、導光板10の内面に複数の半透過反射面を設けることで、
図7に示されるように、従来の射出される光束間の幅D0と比較して、射出される光束間の幅D2を小さくすることができる。したがって、高画角の光束が観察者の瞳に到達することができるため、画像表示装置の広視野化を実現することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、第1偏向部11及び第1半透過反射部51は、第1偏向部11によって導光板10の内面を全反射により伝搬する光束の偏光方向と第1半透過反射面の偏光透過軸とが平行となるように配置されることが好ましい。これにより、導光板10の内面を全反射により伝搬する光束の第1半透過反射面を透過する効率が高くなる。
【0042】
また、導光板10は、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0043】
0.20<|a-b|/(t・tan(α))-n<0.80 (6)
ここで、tは、導光板10の厚さである。aは、第1半透過反射面と第3半透過反射面との間隔である。bは、第3半透過反射面と第2半透過反射面との間隔である。αは、導光板10への入射光束の最大入射角である。nは、0以上の整数である。
【0044】
条件式(6)は、導光板10の厚さ及び半透過反射面の間隔を規定する。
図10は、本実施形態の導光板10内を伝搬する光束の概念図である。ここで、導光板10の厚さと半透過反射面の間隔に応じた導光板10から射出される光束間の幅の変化について説明するため、絶対値|a-b|を以下の式(7)で表す。
【0045】
|a-b|=L0+n・t・tan(α)(0≦L0<t・tan(α)) (7)
絶対値|a-b|がt・tan(α)の整数倍分変化しても光束間の間隔は変わらないため、値L0の範囲で光束間の間隔を議論してよい。第2偏向部12から射出される光束による第1の間隔をd1、第2の間隔をd2とするとき、第1の間隔d1と第2の間隔d2はそれぞれ、以下の式(8),(9)で表される。
【0046】
d1=2・t・tan(α)-2・L0 (8)
d2=2・L0 (9)
導光板10が条件式(6)を満足することで、第1の間隔d1及び第2の間隔d2を小さくすることができる。すなわち、射出される光束間の幅を小さくすることができる。条件式(6)の下限値を下回ると、第1の間隔d1が大きくなりすぎ、射出される光束間の幅を小さくすることができない。条件式(6)の上限値を上回ると、第2の間隔d2が大きくなりすぎ、射出される光束間の幅を小さくすることができない。
【0047】
なお、条件式(6)の数値範囲を以下の条件式(6a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0048】
0.25<|a-b|/(t・tan(α))-n<0.75 (6a)
また、条件式(6)の数値範囲を以下の条件式(6b)の数値範囲とすることが更に好ましい。
【0049】
0.30<|a-b|/(t・tan(α))-n<0.70 (6b)
以下、各実施形態の導光板10の具体的な構成について説明する。
【0050】
数値実施例1乃至3の導光板10は、第1の実施形態の導光板10と同様の構成を有する。
【0051】
数値実施例1では、導光板10の厚さは0.90mm、第1半透過反射面と第2半透過反射面との間隔は1.25mmである。また、導光板10への入射光束の最大入射角は65°、導光板10への入射光束の最小入射角は45°、導光板10への入射光束の光束径は1.00mmである。更に、導光板10から射出される光束間の幅は、1.50mm以下である。
【0052】
数値実施例2では、導光板10の厚さは1.50mm、第1半透過反射面と第2半透過反射面との間隔は1.10mmである。また、導光板10への入射光束の最大入射角は61°、導光板10への入射光束の最小入射角は35°、導光板10への入射光束の光束径は1.00mmである。更に、導光板10から射出される光束間の幅は、2.00mm以下である。
【0053】
数値実施例3では、導光板10の厚さは0.80mm、第1半透過反射面と第2半透過反射面との間隔は1.45mmである。また、導光板10への入射光束の最大入射角は74°、導光板10への入射光束の最小入射角は32°、導光板10への入射光束の光束径は0.90mmである。更に、導光板10から射出される光束間の幅は、2.00mm以下である。
【0054】
図8は、数値実施例1乃至3の導光板10への入射光束の入射角と射出される光束間の幅の関係とを示す図である。
図8に示されるように、数値実施例1乃至3の導光板10を用いることで、射出される光束間の幅を小さくすることができる。これにより、高画角の光束が観察者の瞳に到達することができるため、画像表示装置の広視野化を実現することができる。
【0055】
数値実施例4乃至6の導光板10は、第2の実施形態の導光板10と同様の構成を有する。
【0056】
数値実施例4では、導光板10の厚さは0.90mm、第1半透過反射面と第3半透過反射面との間隔は1.00mm、第3半透過反射面と第2半透過反射面との間隔は2.10mmである。また、導光板10への入射光束の最大入射角は64°、導光板10への入射光束の最小入射角は42°、導光板10への入射光束の光束径は1.00mmである。更に、導光板10から射出される光束間の幅は、1.50mm以下である。
【0057】
数値実施例5では、導光板10の厚さは1.40mm、第1半透過反射面と第3半透過反射面との間隔は3.00mm、第3半透過反射面と第2半透過反射面との間隔は1.75mmである。また、導光板10への入射光束の最大入射角は64°、導光板10への入射光束の最小入射角は42°、導光板10への入射光束の光束径は1.00mmである。更に、導光板10から射出される光束間の幅は、1.75mm以下である。
【0058】
数値実施例6では、導光板10の厚さは0.80mm、第1半透過反射面と第3半透過反射面の間隔は2.50mm、第3半透過反射面と第2半透過反射面の間隔は1.05mmである。また、導光板10への入射光束の最大入射角は74°、導光板10への入射光束の最小入射角は34°、導光板10への入射光束の光束径は0.90mmである。更に、導光板10から射出される光束間の幅は、2.00mm以下である。
【0059】
図9は、数値実施例4乃至6の導光板10への入射光束の入射角と射出される光束間の幅の関係とを示す図である。
図9に示されるように、数値実施例4乃至6の導光板10を用いることで、射出される光束間の幅を小さくすることができる。これにより、高画角の光束が観察者の瞳に到達することができるため、画像表示装置の広視野化を実現することができる。
【0060】
各数値実施例における種々の値を、以下の表1にまとめて示す。
【0061】
【0062】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
画像表示素子からの光束を観察者の瞳に導光する光学素子であって、
前記光束を偏向して前記光学素子の内面に入射させる第1偏向部と、
前記内面で全反射した前記光束を複数回偏向することで前記瞳の側へ射出する第2偏向部と、
前記第1偏向部の側から前記第2偏向部の側へ順に配置された、第1半透過反射面と第2半透過反射面とを有し、
前記第2半透過反射面は、前記第1半透過反射面からの光束の一部を前記第1半透過反射面の側へ反射することを特徴とする光学素子。
(構成2)
前記第1偏向部により偏向された光束は、前記第1半透過反射面を透過した後、前記第2半透過反射面により前記第2半透過反射面を透過する第1光束と前記第2半透過反射面で反射する第2光束とに分けられ、
前記第1光束は、前記第2偏向部に入射し、
前記第2光束は、前記第1半透過反射面で反射し、前記第2半透過反射面を透過し、前記第2偏向部に入射することを特徴とする構成1に記載の光学素子。
(構成3)
前記第1半透過反射面と前記第2半透過反射面とが互いに平行であることを特徴とする構成1又は2に記載の光学素子。
(構成4)
前記第1半透過反射面と前記第2半透過反射面とが前記第1の偏向部の入射面に対して垂直であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つの構成に記載の光学素子。
(構成5)
前記光学素子の厚さをt、前記第1半透過反射面と前記第2半透過反射面との間隔をL、前記第1の偏向部に対する前記光束の最大入射角をα、nを0以上の整数とするとき、
0.20<L/(t・tan(α))-n<0.80
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つの構成に記載の光学素子。
(構成6)
前記光学素子の厚さをt、前記光学素子の入射面における前記光束の光束径をΦ、前記第1の偏向部に対する前記光束の最小入射角をβとするとき、
0.50<Φ/(t・tan(β))<2.00
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つの構成に記載の光学素子。
(構成7)
前記半透過反射部は、前記第1偏向部の側から前記第2偏向部の側へ順に配置された、偏光選択性半透過反射機能による前記第1半透過反射面、第3半透過反射面、偏光選択性半透過反射機能による前記第2半透過反射面を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
(構成8)
前記内面で全反射した前記光束の偏光方向と前記第1半透過反射面の偏光透過軸とが互いに平行であることを特徴とする請求項7に記載の光学素子。
(構成9)
前記第1半透過反射面と前記第3半透過反射面との間の光路上に配置された第1四分の一波長板と、
前記第3半透過反射面と前記第2半透過反射面の間の光路上に配置された第2四分の一波長板とを更に有し、
前記第1四分の一波長板、及び前記第2四分の一波長板は、それぞれの遅相軸が90°傾くように配置され、
前記第1半透過反射面の偏光透過軸と前記第2半透過反射面の偏光透過軸とが互いに平行であり、
前記第1半透過反射面の偏光透過軸に対して前記第1四分の一波長板の遅相軸が45°傾くことを特徴とする請求項7又は8に記載の光学素子。
(構成10)
前記第1偏向部により偏向された光束は、前記第1半透過反射面を透過し、前記第1四分の一波長板を透過した後、前記第3半透過反射面により前記第3半透過反射面を透過する第1光束と前記第3半透過反射面で反射する第2光束とに分けられ、
前記第1光束は、前記第2四分の一波長板を透過し、前記第2半透過反射面で反射し、前記第2四分の一波長板を透過し、前記第3半透過反射面で反射し、前記第2四分の一波長板を透過し、前記第2半透過反射面を透過し、前記第2偏向部に入射し、
前記第2光束は、前記第1四分の一波長板を透過し、前記第1半透過反射面で反射し、前記第1四分の一波長板を透過し、前記第3半透過反射面を透過し、前記第2四分の一波長板を透過し、前記第2半透過反射面を透過し、前記第2偏向部に入射することを特徴とする請求項9に記載の光学素子。
(構成11)
前記光学素子の厚さをt、前記第1半透過反射面と前記第3半透過反射面との間隔をa、前記第3半透過反射面と前記第2半透過反射面との間隔をb、前記光束の最大入射角をα、nを0以上の整数とするとき、
0.20<|a-b|/(t・tan(α))-n<0.80
なる条件式を満足することを特徴とする請求項7乃至10の何れか一つの構成に記載の光学素子。
(構成12)
構成1乃至11の何れか一つの構成に記載の光学素子と、
画像表示素子からの光束を前記光学素子に導光する光学系とを有することを特徴とする接眼光学系。
(構成13)
構成1乃至11の何れか一つの構成の光学素子と、
画像表示素子と、
前記画像表示素子からの光束前記光学素子に導光する光学系とを有することを特徴とする画像表示装置。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 導光板(光学素子)
11 第1偏向部
12 第2偏向部
31,51 第1半透過反射部
32,53 第2半透過反射部