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特開2023-178064浸水把握装置、浸水把握システム、浸水把握方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178064
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】浸水把握装置、浸水把握システム、浸水把握方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20231207BHJP
   H04N 23/63 20230101ALI20231207BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20231207BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20231207BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H04N7/18 U
H04N5/232 945
H04N5/232 290
G08B25/00 510M
G08B21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091113
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】野村 立
【テーマコード(参考)】
5C054
5C086
5C087
5C122
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054CE01
5C054DA07
5C054FC15
5C054FE09
5C054HA19
5C086AA15
5C086AA43
5C086BA24
5C086CA22
5C086CA25
5C086CA28
5C086CB36
5C086FA17
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA19
5C087BB18
5C087BB72
5C087DD02
5C087DD17
5C087EE05
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF16
5C087GG02
5C122DA11
5C122EA59
5C122FH11
5C122FK12
5C122FK28
5C122FK37
5C122FK42
5C122FL02
5C122FL03
5C122FL05
5C122GC38
5C122GC52
5C122HA01
5C122HA05
5C122HA65
5C122HA78
5C122HA88
5C122HA90
5C122HB01
5C122HB05
5C122HB09
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】浸水の規模に関する情報を提供することができる浸水把握装置を得ること。
【解決手段】浸水把握装置4は、航空機1に搭載されたカメラ装置によって撮影されたカメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置と、標高データとを用いて、浸水の規模に関する情報である浸水情報を算出する浸水深算出部47と、浸水情報を出力する出力部53と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に搭載されたカメラ装置によって撮影されたカメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置と、標高データとを用いて、浸水の規模に関する情報である浸水情報を算出する浸水情報算出部と、
前記浸水情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする浸水把握装置。
【請求項2】
前記境界位置と標高データとを用いて浸水深を算出する浸水深算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記浸水深を含むことを特徴とする請求項1に記載の浸水把握装置。
【請求項3】
前記境界位置を用いて浸水域の面積を算出する面積算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記面積を含むことを特徴とする請求項2に記載の浸水把握装置。
【請求項4】
前記浸水深を用いて浸水域の水量を算出する水量算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記水量を含むことを特徴とする請求項2に記載の浸水把握装置。
【請求項5】
前記浸水情報算出部は、前記境界位置を用いて前記カメラ映像の撮影範囲の浸水域である第1の浸水域の水位の高さを算出し、前記水位の高さと標高データとを用いて前記撮影範囲外の浸水域である第2の浸水域を推定し、前記第2の浸水域と前記第1の浸水域とを併せた推定浸水域を算出し、
前記浸水情報は、前記推定浸水域を示す情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の浸水把握装置。
【請求項6】
前記推定浸水域を示す情報と標高データとを用いて前記推定浸水域の浸水深を算出する浸水深算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記浸水深を含むことを特徴とする請求項5に記載の浸水把握装置。
【請求項7】
前記推定浸水域を示す情報を用いて前記推定浸水域の面積を算出する面積算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記面積を含むことを特徴とする請求項6に記載の浸水把握装置。
【請求項8】
前記浸水深を用いて浸水域の水量を算出する水量算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記水量を含むことを特徴とする請求項6に記載の浸水把握装置。
【請求項9】
前記境界位置は、表示された前記カメラ映像における位置としてユーザから指定された指定位置に対応する前記カメラ装置への光の入射方向と、前記標高データが示す地表面との交点として算出されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の浸水把握装置。
【請求項10】
前記カメラ映像から画像解析により浸水域を判別する浸水域判別部、
を備え、
前記境界位置は、前記浸水域判別部によって判別された前記浸水域の境界を示す複数の位置に対応する前記カメラ装置への光の入射方向と、前記標高データが示す地表面との交点として算出されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の浸水把握装置。
【請求項11】
前記カメラ装置は、前記航空機の鉛直斜め下方を撮影することを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の浸水把握装置。
【請求項12】
前記境界位置は、航空機の位置および姿勢を示す情報を含む航空機情報を用いて算出され、前記航空機情報は、前記カメラ映像に重畳されて前記航空機から送信されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の浸水把握装置。
【請求項13】
航空機に搭載されるカメラ装置と、
浸水把握装置と、
を備え、
前記浸水把握装置は、
前記カメラ装置によって撮影されたカメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置と、標高データとを用いて、浸水の規模に関する情報である浸水情報を算出する浸水情報算出部と、
前記浸水情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする浸水把握システム。
【請求項14】
航空機に搭載されるカメラ装置と、
前記航空機に搭載され、カメラ装置によって撮影されたカメラ映像と、航空機の位置および姿勢を示す情報を含む航空機情報とを重畳する航空機情報重畳装置と、
前記航空機に搭載され、前記航空機情報が重畳された前記カメラ映像を送信する送信システムと、
前記航空機情報が重畳された前記カメラ映像を受信信号として受信する受信システムと、
前記受信システムによって受信された前記受信信号を、前記航空機情報と前記カメラ映像とに分離する航空機情報分岐装置と、
を備え、
前記境界位置は、前記航空機情報を用いて算出されることを特徴とする請求項13に記載の浸水把握システム。
【請求項15】
浸水把握装置における浸水把握方法であって、
航空機に搭載されたカメラ装置によって撮影されたカメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置と、標高データとを用いて、浸水の規模に関する情報である浸水情報を算出するステップと、
前記浸水情報を出力するステップと、
を含むことを特徴とする浸水把握方法。
【請求項16】
コンピュータシステムに、
航空機に搭載されたカメラ装置によって撮影されたカメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置と、標高データとを用いて、浸水の規模に関する情報である浸水情報を算出するステップと、
前記浸水情報を出力するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浸水域を把握する浸水把握装置、浸水把握システム、浸水把握方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
洪水などによる浸水が発生した場合、浸水被害の規模を正確に判断して、速やかに救援・復旧活動の計画立案を行うことが望まれる。例えば、ポンプ車の派遣の計画には浸水量を把握する必要がある。浸水被害の規模の把握の方法として、これまで、例えば、被災地域に担当者を派遣して人手によって浸水被害の規模を把握する方法があるが、この方法では非常に時間を要し、救援や復旧の遅れが発生する。
【0003】
また、ヘリコプターから被害地域を撮影し、撮影された映像を用いて浸水被害を把握する方法もある。特許文献1には、災害時にヘリコプターに搭載されたテレビカメラによって鉛直真下を撮影し、地上側の端末装置が、ヘリコプターの位置情報を元に、地図画面上にテレビカメラによって撮影された映像を重ねて表示し、オペレータが映像を確認して災害地点をマウスによって指定することで、災害地点を特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-331831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、ヘリコプターに搭載されたテレビカメラによって撮影された映像に基づいて災害位置を特定点として把握することができるが、浸水の規模に関する情報を提供することができない。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、浸水の規模に関する情報を提供することができる浸水把握装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる浸水把握装置は、航空機に搭載されたカメラ装置によって撮影されたカメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置と、標高データとを用いて、浸水の規模に関する情報である浸水情報を算出する浸水情報算出部と、浸水情報を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、浸水の規模に関する情報を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる浸水把握システムの構成例を示す図
図2】実施の形態1の航空機の構成例を示す図
図3】実施の形態1のヘリ情報の一例を示す図
図4】実施の形態1の境界算出部の構成例を示す図
図5】実施の形態1の浸水把握装置における浸水把握処理の一例を示すフローチャート
図6】実施の形態1のカメラ装置における撮影を模式的に示す図
図7】実施の形態1の境界位置の指定方法を説明するための図
図8】実施の形態1の撮影方向ベクトルおよび境界位置方向ベクトルを説明するための図
図9】実施の形態1の境界位置を頂点とする多角形の一例を示す図
図10】実施の形態1の浸水深の算出方法を説明するための図
図11】実施の形態1の浸水深の表示画面の一例を示す図
図12】実施の形態1の浸水把握装置を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図
図13】実施の形態1の変形例にかかる浸水把握装置の構成例を示す図
図14】実施の形態2にかかる浸水把握システムの構成例を示す図
図15】実施の形態2の浸水域の推定を説明するための図
図16】実施の形態2の浸水把握装置における浸水把握処理の一例を示すフローチャート
図17】実施の形態2の推定浸水域の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかる浸水把握装置、浸水把握システム、浸水把握方法およびプログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる浸水把握システムの構成例を示す図である。本実施の形態の浸水把握システム100は、受信システム2と、ヘリ情報分岐装置3と、浸水把握装置4とを備える。なお、図1に示した例では、受信システム2、ヘリ情報分岐装置3および浸水把握装置4が個別に設けられているが、浸水把握装置4がヘリ情報分岐装置3を備えていてもよく、浸水把握装置4が、受信システム2およびヘリ情報分岐装置3を備えていてもよい。
【0012】
受信システム2は、ヘリコプターなどの航空機1からヘリ情報(航空機情報)が重畳されたカメラ映像を受信し、受信した信号をヘリ情報分岐装置3へ出力する。航空機1は、例えば、ヘリコプターであり、以下では、航空機1がヘリコプターである例を説明するが、航空機1は、これに限らず、飛行船、UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)、ドローン、有人航空機であってもよい。ヘリ情報は、航空機1の位置、姿勢などを含む情報である。ヘリ情報の詳細は後述する。カメラ映像は、航空機1に搭載される後述するカメラ装置によって取得された映像である。
【0013】
受信システム2は、アンテナ21および受信処理装置22を備える。アンテナ21は、航空機1からヘリ情報が重畳されたカメラ映像を電波として受信し、受信した電波を電気信号に変換して受信処理装置22へ出力する。受信処理装置22は、アンテナ21から出力された電気信号(受信信号)に定められた受信処理を施し、受信処理後の受信信号をヘリ情報分岐装置3へ送信する。
【0014】
航空機情報分岐装置であるヘリ情報分岐装置3は、受信システム2から受信した受信信号に含まれるヘリ情報とカメラ映像とを分離することで、ヘリ情報をカメラ映像から分岐させる。ヘリ情報分岐装置3は、ヘリ情報とカメラ映像とを浸水把握装置4へ送信する。後述するように、例えば、ヘリ情報は、航空機1において変調されてカメラ映像の音声信号として送信されることで、カメラ映像に重畳されるが、ヘリ情報の重畳方法はこの例に限定されない。なお、以下では、ヘリ情報がカメラ映像に重畳される例を説明するが、ヘリ情報とカメラ映像とが個別に航空機1から送信され、受信システム2がヘリ情報とカメラ映像とをそれぞれ受信してもよい。ヘリ情報がカメラ映像に重畳されると、1種類の受信信号を受信して処理するだけで、カメラ映像に同期したヘリ情報を取得することができるため、ヘリ情報とカメラ映像とをそれぞれ受信して受信処理を行って両者を同期させる場合に比べて、処理のリアルタイム性を高めることができる。
【0015】
浸水把握装置4は、航空機1に搭載されたカメラ装置によって撮影されたカメラ映像を用いて浸水の規模に関する情報を提供する。本実施の形態では、浸水の規模に関する情報は、例えば、浸水深、水量、浸水域の面積などであり、少なくとも浸水深を含む。
【0016】
浸水把握装置4は、映像取得部41、ヘリ情報取得部42、標高データ記憶部43、静止画抽出部44、境界算出部45、面積算出部46、浸水深算出部47、水量算出部48、浸水情報記憶部49、入力受付部50、画像内位置検出部51、表示データ生成部52および出力部53を備える。
【0017】
映像取得部41は、ヘリ情報分岐装置3からカメラ映像を受信することでカメラ映像を取得し、取得したカメラ映像を静止画抽出部44へ出力する。静止画抽出部44は、カメラ映像を、例えばフレームごとの画像に分割することで静止画を抽出し、抽出した静止画(画像)を境界算出部45および表示データ生成部52へ出力する。
【0018】
表示データ生成部52は、静止画抽出部44から出力された静止画を表示するための表示データを生成し、表示データを出力部53へ出力する。また、表示データ生成部52は、浸水情報記憶部49に記憶されている浸水情報を表示するための表示データを生成し、表示データを出力部53へ出力する。浸水情報は、浸水の規模に関する情報であり、例えば、浸水域の面積、浸水深および水量(浸水量)のうちの少なくとも1つを含む。浸水情報は、浸水域の位置を示す情報を含んでいてもよい。
【0019】
出力部53は、カメラ映像(カメラ映像から抽出された静止画)、浸水情報などを出力する。出力部53は、例えば、カメラ映像(カメラ映像から抽出された静止画)、浸水情報などを表示するための表示データを表示することで、カメラ映像(カメラ映像から抽出された静止画)、浸水情報を出力する。出力部53は、表示データを図示しない端末装置などの表示装置へ送信することでカメラ映像(カメラ映像から抽出された静止画)、浸水情報を出力してもよい。この場合、表示装置が表示データを表示する。出力部53は、表示データの表示と、表示装置への表示データの送信との両方を行ってもよい。
【0020】
航空機情報取得部であるヘリ情報取得部42は、航空機情報の一例であるヘリ情報を受信することでヘリ情報を取得し、取得したヘリ情報を境界算出部45へ出力する。
【0021】
入力受付部50は、例えば、マウス、タッチパネル、キーボード、タッチパッドなどの入力手段であり、ユーザから浸水域の境界を示す指定位置の入力を受け付け、受け付けた指定位置を画像内位置検出部51へ出力する。なお、指定位置は、例えば、表示される表示画面内の座標値として受け付けられる。また、入力受付部50は、表示データが図示しない表示装置へ送信される場合、当該表示装置がユーザから入力を受け付けた指定位置を表示装置から受信し、受信した指定位置を画像内位置検出部51へ出力してもよい。
【0022】
画像内位置検出部51は、入力受付部50から受け取った指定位置の、表示された画像(静止画)における座標系である画像xy座標系の座標値を算出し、算出した座標値を画像位置座標として境界算出部45へ出力する。画像xy座標系は、例えば、表示された画像の横方向をx軸とし、縦方向をy軸とする座標系である。なお、表示データが図示しない表示装置によって表示される場合、入力受付部50は、表示装置から指定位置を画像xy座標系の座標値として取得してもよく、この場合には、画像内位置検出部51は設けられず、指定位置が入力受付部50から境界算出部45へ出力されてもよい。
【0023】
標高データ記憶部43は、標高データを記憶する。標高データとしては、例えば、メッシュごとの標高を示す標高データを用いることができる。例えば、国土地理院が提供する10mメッシュ、5mメッシュなどの標高データを用いることができるが、これに限定されない。境界算出部45は、航空機1に搭載されたカメラ装置によって撮影されたカメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置を求める。詳細には、境界算出部45は、画像位置座標、ヘリ情報および標高データを用いて、浸水域の境界となる指定位置の地球固定座標系における座標値を境界位置として算出し、算出した境界位置を面積算出部46、浸水深算出部47および水量算出部48へ出力する。なお、境界位置は水量算出部48には出力されなくてもよい。本実施の形態では、境界位置は、表示されたカメラ映像における位置としてユーザから指定された指定位置に対応するカメラ装置への光の入射方向と、標高データが示す地表面との交点として算出される。
【0024】
面積算出部46は、境界位置を用いて浸水域の面積を算出し、算出した面積を浸水情報記憶部49に格納する。浸水深算出部47は、境界位置と標高データとを用いて浸水深を算出し、算出した浸水深を浸水情報記憶部49に格納する。水量算出部48は、浸水情報記憶部49によって算出された浸水深を用いて水量を算出し、算出した水量を浸水情報記憶部49に格納する。
【0025】
面積算出部46、浸水深算出部47および水量算出部48は、カメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置と、標高データとを用いて、浸水の規模に関する情報である浸水情報を算出する浸水情報算出部の一例である。なお、図1に示した構成例では、面積算出部46、浸水深算出部47および水量算出部48が設けられているが、これに限らず、これらのうちの少なくとも1つが設けられてもよい。例えば、浸水情報算出部として、少なくとも浸水深算出部47が設けられればよい。本実施の形態の浸水把握装置4は、ユーザから浸水域の境界を示す指定位置の入力を受け付け、指定位置に基づいて浸水域を決定し、決定した浸水域と標高データとを用いて、浸水の規模に関する情報の一例である浸水深を算出する。これにより、本実施の形態の浸水把握装置4は、水の規模に関する情報を提供することができる。例えば、浸水把握装置4が浸水深を算出して出力すると、ユーザは、各場所の浸水の被害の程度を把握することができる。また、浸水把握装置4が水量を算出して出力すると、ユーザは、水量を用いてポンプ車の派遣計画を策定することができる。
【0026】
図2は、本実施の形態の航空機1の構成例を示す図である。航空機1は、図2に示すように、GPS(Global Positioning System)受信機11、ジャイロ12、ヘリ情報作成装置13、カメラ装置14、ヘリ情報重畳装置15および送信システム16を備える。本実施の形態の浸水把握システム100は、ヘリ情報作成装置13、カメラ装置14、ヘリ情報重畳装置15および送信システム16のうちの少なくとも一部を含んでいてもよい。
【0027】
GPS受信機11は、GPS衛星から送信された測位信号を受信し、測位信号に基づいて測位を行い、測位結果をGPS情報としてヘリ情報作成装置13へ出力する。なお、ここでは、GPS受信機11を例示したが、これに限らず、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星を用いた測位を行う受信機であればよい。
【0028】
ジャイロ12は、航空機1の機体の傾き(ピッチ角、ロール角、ヨー角(方位角))を検出し、検出結果をヘリ姿勢情報としてヘリ情報作成装置13へ出力する。カメラ装置14は、航空機1に搭載され、例えば、航空機1に搭乗するカメラマンの操作に応じて地上の映像を撮影する。なお、カメラ装置14の撮影は、カメラマンの操作に応じて撮影を行う例に限定されず、例えば、地上からの遠隔操作などによって自動で撮影が行われてもよい。カメラ装置14は、撮影により得られたカメラ映像をヘリ情報重畳装置15へ出力し、パン角、チルト角、焦点距離といったカメラに関する情報であるカメラ情報をヘリ情報作成装置13へ出力する。
【0029】
ヘリ情報作成装置13は、GPS情報、ヘリ姿勢情報およびカメラ情報を用いてヘリ情報を作成し、作成したヘリ情報をヘリ情報重畳装置15へ出力する。航空機情報重畳装置であるヘリ情報重畳装置15は、カメラ映像にヘリ情報を重畳し、ヘリ情報を重畳したカメラ映像を送信システム16へ出力する。例えば、ヘリ情報作成装置13は、ヘリ情報を変調してカメラ映像の音声信号に含めることで、ヘリ情報をカメラ映像に重畳する。
【0030】
送信システム16は、ヘリ情報が重畳されたカメラ映像を地上へ送信する。送信システム16は、ヘリ情報が重畳されたカメラ映像に定められた送信処理を施し、送信処理後の信号を出力する送信処理装置17と、送信処理装置17から出力される信号を電波として送出するアンテナ18とを備える。
【0031】
図3は、本実施の形態のヘリ情報の一例を示す図である。図3に示すように、ヘリ情報は、航空機1の位置を示す位置情報であるヘリ位置情報(緯度、経度、高度)と、航空機1の傾き(姿勢)を示すヘリ姿勢情報(ロール角、ピッチ角、ヨー角(方位角))と、カメラ情報(パン角、チルト角、焦点距離)とを含む。なお、図3は一例であり、ヘリ情報は、図3に示した情報以外を含んでいてもよいし、図3に示した情報のうちの一部を含んでいなくてもよい。また、ヘリ位置情報は、緯度、経度、高度以外の値で示されてもよいし、ヘリ姿勢情報もロール角、ピッチ角、ヨー角(方位角)以外の値で示されてもよい。また、カメラ情報も図3に示した例に限定されない。
【0032】
次に、本実施の形態の浸水把握装置4の詳細について説明する。図4は、本実施の形態の境界算出部45の構成例を示す図である。図4に示すように、境界算出部45は、ヘリ情報分離部451、撮影方向ベクトル算出部452、境界位置座標特定部453、装置情報記憶部454および境界位置方向ベクトル算出部455を備える。
【0033】
ヘリ情報分離部451は、ヘリ情報を、ヘリ位置情報、ヘリ姿勢情報、カメラ情報に分離し、ヘリ位置情報を境界位置座標特定部453に出力し、ヘリ姿勢情報を撮影方向ベクトル算出部452へ出力する。さらに、ヘリ情報分離部451は、カメラ情報からカメラ角度情報(カメラ情報のうちのパン角およびチルト角)を抽出するとともに、ヘリ情報から高度を示す高度情報を抽出し、抽出したカメラ角度情報および高度情報を境界位置方向ベクトル算出部455へ出力する。さらに、ヘリ情報分離部451は、カメラ情報から焦点距離を示す焦点距離情報を抽出し、抽出した焦点距離情報を撮影方向ベクトル算出部452へ出力する。
【0034】
撮影方向ベクトル算出部452は、航空機1に固定された座標系であるプラットフォーム座標系における撮影方向ベクトルを算出し、算出した撮影方向ベクトルを境界位置方向ベクトル算出部455へ出力する。撮影方向ベクトルは、航空機1に搭載されたカメラ装置14の撮影方向、例えば画角の中心方向を示すベクトルである。
【0035】
装置情報記憶部454は、航空機1に搭載されるカメラ装置14に関する固定の情報であるカメラ装置情報を記憶する。カメラ装置情報は、例えば、カメラ装置14の撮像素子のサイズ(1画素に対応するサイズと撮像素子の数)を含む。撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)であるがこれに限定されない。また、カメラ装置情報は、オペレータなどによって、浸水把握装置4に入力されてもよいし、図示しない装置から送信され浸水把握装置4が受信してもよい。
【0036】
境界位置方向ベクトル算出部455は、画像内位置検出部51から出力された画像位置座標と、装置情報記憶部454から読み出したカメラ装置情報と、ヘリ情報分離部451から出力された焦点距離情報と、撮影方向ベクトル算出部452から出力された撮影方向ベクトルとを用いてプラットフォーム座標系における境界位置方向ベクトルを算出する。本実施の形態では、境界位置は、撮影された画像をもとにユーザによって指定された位置(以下、指定位置と呼ぶ)である。このため、本実施の形態では、境界位置方向ベクトルは、カメラ装置14から指定位置へ向かうベクトルである。指定位置は、浸水域を示すために複数指定されるため、境界位置方向ベクトルは複数算出され、境界位置方向ベクトル算出部455は、複数の境界位置方向ベクトルを算出し、複数の境界位置方向ベクトルを境界位置方向ベクトルリストとして境界位置座標特定部453に出力する。
【0037】
境界位置座標特定部453は、ヘリ位置情報、境界位置方向ベクトルリストおよび標高データを用いて、複数の境界位置のそれぞれに関して、地球固定座標系における座標値である境界位置座標を求め、境界位置座標のリスト(境界位置座標リスト)を面積算出部46および浸水深算出部47へ出力する。
【0038】
次に、本実施の形態の浸水把握装置4の動作について説明する。図5は、本実施の形態の浸水把握装置4における浸水把握処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、浸水把握装置4は、カメラ映像およびヘリ情報を取得する(ステップS1)。詳細には、映像取得部41、ヘリ情報取得部42が、それぞれカメラ映像、ヘリ情報を取得する。
【0039】
次に、浸水把握装置4は、ヘリ情報を分離する(ステップS2)。詳細には、ヘリ情報分離部451が、ヘリ情報を分離し、ヘリ位置情報を境界位置座標特定部453に出力し、ヘリ姿勢情報、カメラ角度情報および高度情報を撮影方向ベクトル算出部452へ出力し、焦点距離情報を境界位置方向ベクトル算出部455へ出力する。
【0040】
次に、浸水把握装置4は、撮影方向ベクトルを算出する(ステップS3)。詳細には、撮影方向ベクトル算出部452が、ヘリ姿勢情報、カメラ角度情報および高度情報を用いて、プラットフォーム座標系における撮影方向ベクトルを算出する。撮影方向ベクトルは、例えば、パン角およびチルト角が0度の場合のカメラ装置14の画角の中心の方向を示す画角中心方向ベクトルに、下記式(1)および式(2)に示す変換行列T(太字)CH、T(太字)HWを乗算することで算出される。paはパン角であり、tiはチルト角であり、yaはヨー角であり、piはピッチ角であり、roはロール角であり、hは高度である。
【0041】
【数1】
【0042】
【数2】
【0043】
次に、浸水把握装置4は、境界位置方向ベクトルを算出する(ステップS4)。詳細には、境界位置方向ベクトル算出部455が、画像内位置検出部51から出力された画像位置座標と、装置情報記憶部454から読み出したカメラ装置情報と、ヘリ情報分離部451から出力された焦点距離情報と、撮影方向ベクトル算出部452から出力された撮影方向ベクトルとを用いてプラットフォーム座標系における境界位置方向ベクトルを算出する。
【0044】
ここで、本実施の形態のカメラ装置14による撮影について説明する。本実施の形態では、水害の発生時などに、航空機1が被害の想定される地域に派遣され、航空機1からカメラ装置14による撮影が行われる。図6は、本実施の形態のカメラ装置14における撮影を模式的に示す図である。カメラ装置14の画角61は、カメラ装置14が直下を撮影するときの画角であり、カメラ装置14の画角62は、カメラ装置14が、斜め、すなわち航空機1の鉛直方向から傾いた方向である鉛直斜め下方を撮影するときの画角である。直下を撮影したときよりも、斜めに撮影したときの方が、カメラ装置14によって撮影される範囲が広くなり、また、斜めに撮影することで高さのある部分に関して高さ方向の情報も得ることができる。このため、以下では、カメラ装置14により斜めに撮影される場合を例に挙げて説明するが、カメラ装置14が直下を撮影する場合にも本実施の形態の動作を適用可能である。また、本実施の形態は、斜めの撮影であっても直下の撮影であっても適用できるため、任意の方向からの撮影映像を利用して浸水の状況を把握することができる。
【0045】
図7は、本実施の形態の境界位置の指定方法を説明するための図である。図7において、画像70は、カメラ装置14によって撮影された全体の画像を示している。図7に示した例では、浸水域71と、非浸水域72とが画像70に含まれており、ユーザは、表示された画像70における浸水域71と非浸水域72との境界位置をマウスなどによって指定する。図7では、ユーザによって指定された指定位置である境界位置73が、丸印で示されている。符号73を付していない同様の形状の丸印も境界位置73である。このように、複数の境界位置73がユーザによって選択されることで、浸水域71が多角形として指定されることになる。
【0046】
図8は、本実施の形態の撮影方向ベクトルおよび境界位置方向ベクトルを説明するための図である。図8に示すように、航空機1に搭載されたカメラ装置14の画角の中心に対応する撮影方向ベクトル81は、カメラ装置14の画角を示す範囲82の中心となり、カメラ装置14の撮像素子のサイズと焦点距離とに応じて撮影される画像に対応する範囲82が決まる。図8では、範囲82は方向(角度)で示されており、実際に撮影される地上における撮影領域は、範囲82内のベクトルがそれぞれ地上と交わる点である。範囲82内の各方向は、撮影された画像の画像xy座標系における座標値にそれぞれ対応している。なお、プラットフォーム座標系におけるカメラ装置14の設置の向きはあらかじめ定められている、またはオペレータなどによって入力されるとする。境界位置方向ベクトル算出部455は、画像内位置検出部51から出力された画像位置座標と、装置情報記憶部454から読み出したカメラ装置情報と、ヘリ情報分離部451から出力された焦点距離情報と、撮影方向ベクトル算出部452から出力された撮影方向ベクトル81とを用いて、画像xy座標系における座標値に対応する境界位置方向ベクトル83を算出することができる。境界位置方向ベクトル83は、ユーザが指定した指定位置に対応する境界位置を、カメラ装置14の位置から見たときの視線方向ベクトルである。
【0047】
図4の説明に戻る。次に、浸水把握装置4は、境界位置座標を特定する(ステップS5)。詳細には、境界位置座標特定部453が、ヘリ位置情報および境界位置方向ベクトルリストを用いて、境界位置方向ベクトルを地球固定座標系のベクトルに変換する。そして、境界位置座標特定部453は、標高データと変換後の境界位置方向ベクトルとを用いて、複数の境界位置のそれぞれに関して、地球固定座標系における座標値である境界位置座標を求める。図8に示した例では、境界位置方向ベクトル83が、標高データが示す地表面(標高を考慮した地表面)と交わる点84が、境界位置方向ベクトル83に対応する地上の点である。すなわち、境界位置は、指定位置に対応するカメラ装置14への光の入射方向と標高データが示す地表面との交点として算出される。境界位置座標特定部453は、このように、標高も考慮して地表面と境界位置方向ベクトルとが交わる点の緯度、経度、標高を境界位置座標として算出する。なお、浸水域の水面の高さ(標高)は同一であるため、標高(水面の標高)は、連続した1つの浸水域あたり1つ算出されればよい。境界位置座標特定部453は、各境界位置ベクトルに対応する境界位置座標を含む境界位置座標リストを面積算出部46および浸水深算出部47へ出力する。
【0048】
図5の説明に戻る。次に、浸水把握装置4は、浸水域の面積を算出する(ステップS6)。詳細には、面積算出部46が、境界位置座標リストにおける各境界位置(緯度経度)を頂点とする多角形を浸水域とみなして浸水域の面積を算出し、算出した面積を浸水情報記憶部49に格納する。図9は、本実施の形態の境界位置を頂点とする多角形の一例を示す図である。図9では、図7に例示した浸水域71に基づいてユーザが指定した境界位置73を頂点とする多角形74を示している。なお、ユーザが指定する境界位置73の数、すなわち多角形74の頂点の数は図9に示した例に限定されず、3以上であればよい。多角形74の面積Sは、下記の式(3)によって算出することができる。X,Yは、i番目の頂点、すなわちi番目の境界位置座標であり、Σは全頂点に関する総和を示す。
S=(1/2)Σ(Xi+1-Xi+1) ・・・(3)
【0049】
図5の説明に戻る。次に、浸水把握装置4は、標高データを用いて、浸水域の水深、すなわち浸水深を算出する(ステップS7)。詳細には、浸水深算出部47は、境界位置座標リストと標高データとを用いて浸水深を算出し、算出した浸水深を浸水情報記憶部49に格納する。図10は、本実施の形態の浸水深の算出方法を説明するための図である。図10に示した例では、境界位置から求めた多角形74の範囲に対応する標高データをデータ点75として三角形の図形で示している。符号を省略した三角形も標高データにおけるデータ点75である。標高データは、例えば、上述したようにメッシュごとの標高であり、データ点75は、各メッシュの標高を示している。浸水深算出部47は、例えば、図10に示すように、水面の標高と多角形74に対応する範囲の各メッシュの標高との差76を浸水深として算出する。なお、浸水深の算出は、例えば、標高データのメッシュ単位で行われるが、メッシュより広いエリアを単位として浸水深が算出されてもよいし、メッシュより細かいエリアを単位として浸水深が算出されてもよい。メッシュより広いエリアを単位として算出される場合には、例えば、浸水深算出部47は、エリア内の標高の最大値、平均値、中央値などを用いて浸水深を算出する。メッシュより細かいエリアを単位として浸水深が算出される場合には、例えば、浸水深算出部47は、メッシュ単位の標高を補間することで各エリアの標高を算出し、算出した標高を用いて浸水深を算出する。
【0050】
図5の説明に戻る。次に、浸水把握装置4は、水量を算出し(ステップS8)、処理を終了する。詳細には、水量算出部48が、浸水深算出部47によって算出された浸水深を用いて水量を算出し、算出した水量を浸水情報記憶部49に格納する。水量算出部48は、例えば、メッシュ(または上述した算出の単位であるエリア)の面積と浸水深との積の総和を水量として算出する。
【0051】
以上述べた処理により、浸水情報記憶部49には、浸水情報として、浸水域の面積と、浸水深、水量が格納される。また、面積算出部46または浸水深算出部47が、境界位置座標リストを浸水情報として浸水情報記憶部49に格納する。表示データ生成部52は、浸水情報を用いて表示データを生成し、出力部53へ出力する。出力部53は、表示データを表示する。上述したように、出力部53は、図示しない表示装置へ表示データを送信してもよい。これにより、浸水把握装置4は、浸水の規模に関する情報である浸水情報を提供することができる。なお、出力部53は、浸水情報を、テキスト形式など数値の情報として出力してもよい。
【0052】
表示データ生成部52は、例えば、地図と浸水域を示す多角形とを重畳して表示するための表示データを生成する。これにより、多角形で示される浸水域が地図上に表示される。このとき、浸水域の面積および水量のうちの少なくとも一方が、多角形とともに表示されてもよい。
【0053】
また、表示データ生成部52は、例えば、地図と各位置の浸水深とを重畳して表示するための表示データを生成してもよい。これにより、浸水深が地図上に表示される。図11は、本実施の形態の浸水深の表示画面の一例を示す図である。図11に示した例では、地図上に浸水深が示されており、河川201の左側に、浸水深ごとの浸水域が領域202~204として算出される。例えば、領域202~204は、浸水深ごとに色分けされて表示される。この色は、例えば、国土交通省の「洪水浸水域想定区域図作成マニュアル」に従って決定されるが、この例に限定されない。また、図11に例示した図に、水量、浸水域の面積のうち少なくとも一方が重畳されて表示されてもよい。図11は一例であり、具体的な表示方法は、図11に示した例に限定されない。
【0054】
次に、本実施の形態の浸水把握装置4のハードウェア構成について説明する。本実施の形態の浸水把握装置4は、コンピュータシステム上で、浸水把握装置4における処理が記述されたプログラム(コンピュータプログラム)が実行されることにより、コンピュータシステムが浸水把握装置4として機能する。図12は、本実施の形態の浸水把握装置4を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。図12に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
【0055】
図12において、制御部101は、例えば、CPU等のプロセッサであり、本実施の形態の浸水把握装置4における処理が記述されたプログラムを実行する。入力部102は、たとえばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムの使用者が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ、などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、ディスプレイ、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムの使用者に対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部106は、プリンタ、スピーカなどである。なお、図12は、一例であり、コンピュータシステムの構成は図12の例に限定されない。例えば、コンピュータシステムは出力部106を備えていなくてもよい。
【0056】
ここで、本実施の形態のプログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、プログラムの実行時に、記憶部103から読み出されたプログラムが記憶部103の主記憶領域に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態の浸水把握装置4としての処理を実行する。
【0057】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、浸水把握装置4における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0058】
例えば、本実施の形態のプログラムは、コンピュータシステムに、航空機1に搭載されたカメラ装置14によって撮影されたカメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置と、標高データとを用いて、浸水の規模に関する情報である浸水情報を算出するステップと、浸水情報を出力するステップと、を実行させる。
【0059】
図1に示した静止画抽出部44、境界算出部45、面積算出部46、浸水深算出部47、水量算出部48、画像内位置検出部51および表示データ生成部52は、図12に示した記憶部103に記憶されたプログラムが図12に示した制御部101により実行されることにより実現される。静止画抽出部44、境界算出部45、面積算出部46、浸水深算出部47、水量算出部48、画像内位置検出部51および表示データ生成部52の実現には、図12に示した記憶部103も用いられる。図1に示した映像取得部41およびヘリ情報取得部42は、図12に示した通信部105により実現される。図1に示した標高データ記憶部43および浸水情報記憶部49は、図12に示した記憶部103の一部である。図1に示した出力部53は、図12に示した表示部104および通信部105のうち少なくとも一方により実現される。図1に示した入力受付部50は、図12に示した入力部102により実現される。浸水把握装置4は複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。例えば、浸水把握装置4は、クラウドシステムにより実現されてもよい。
【0060】
<変形例>
以上で説明した例では、浸水域の境界位置をユーザが指定したが、これに限らず、浸水域の境界位置は自動で抽出されてもよい。図13は、本実施の形態の変形例にかかる浸水把握装置4aの構成例を示す図である。変形例にかかる浸水把握システムは、浸水把握装置4の代わりに浸水把握装置4aを備える以外は、図1に示した例と同様である。
【0061】
浸水把握装置4aは、入力受付部50および画像内位置検出部51の代わりに浸水域判別部54を備える以外は、図1に示した浸水把握装置4と同様である。浸水域判別部54は、カメラ映像から抽出された静止画を用いて画像解析によって浸水域を判別し、浸水域の境界の画像位置座標を複数算出し、境界算出部45へ出力する。浸水域判別部54は、例えば、画像の各画素のRGB値に基づいたしきい値判定などによって浸水域と非浸水域との境界を判別してもよいし、機械学習によって浸水域と非浸水域との境界を判別してもよい。例えば、浸水域判別部54は、浸水域が既知である画像と浸水域を示す正解データとを用いて、教師あり学習によって学習済モデルを生成しておき、当該学習済モデルにカメラ映像から抽出された静止画を入力することで、浸水域と非浸水域との境界を判別してもよい。なお機械学習の方法はこの例に限定されない。
【0062】
境界算出部45は、浸水域判別部54によって算出された複数の画像位置座標を用いて、図1に示した浸水把握装置4と同様に、境界位置座標リストを生成する。浸水把握装置4aにおける以上述べた以外の動作は、図1に示した浸水把握装置4と同様である。変形例では、境界位置は、浸水域判別部54によって判別された浸水域の境界を示す複数の位置に対応するカメラ装置14への光の入射方向と、標高データが示す地表面との交点として算出される。
【0063】
以上述べたように、本実施の形態の浸水把握装置4は、航空機1に搭載されたカメラ装置14によって取得されたカメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置と、ヘリ情報と、標高データとを用いて、浸水の規模を示す情報の一例である浸水深を算出して出力する。これにより、浸水の規模に関する情報を提供することができる。
【0064】
また、カメラ装置14によって斜め方向に撮影を行うと、直下の撮影に比べて広い範囲を撮影できるとともに標高方向の情報を取得することができる。また、浸水把握装置4は、浸水深を用いて水量を算出することで、ポンプ車の派遣の計画の策定に水量を反映させることができる。また、境界位置がユーザによって指定される場合には、簡易な処理で浸水の規模を示す情報を算出することができ、浸水の規模を示す情報を速やかに提供することができる。また、ヘリ情報がカメラ映像に重畳されて送信されることで、浸水把握装置4は、航空機1の位置、姿勢などに関する情報をカメラ映像と別に取得して同期処理を行うといった処理が必要なく、リアルタイム性の高い情報を提供することができる。
【0065】
実施の形態2.
図14は、実施の形態2にかかる浸水把握システムの構成例を示す図である。本実施の形態の浸水把握システム100aは、受信システム2と、ヘリ情報分岐装置3と、浸水把握装置4bとを備える。浸水把握システム100aは、浸水把握装置4の代わりに浸水把握装置4bを備える以外は、実施の形態1の浸水把握システム100と同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0066】
浸水把握装置4bは、浸水域推定部55が追加される以外は、実施の形態1の浸水把握装置4と同様である。境界算出部45は、実施の形態1と同様に境界位置座標リストを算出し、境界位置座標リストを浸水域推定部55へ出力する。浸水域推定部55は、境界算出部45によって算出された境界位置座標リストにおける水面の高さと、標高データとを用いて、撮影されていない範囲を含む浸水域を推定する。
【0067】
本実施の形態では、浸水情報は、撮影されていない範囲の浸水域を含む推定浸水域を示す情報を少なくとも含む。浸水域推定部55は浸水情報算出部の一例であり、境界位置を用いてカメラ映像の撮影範囲の浸水域である第1の浸水域の水位の高さを算出し、水位の高さと標高データとを用いて撮影範囲外の浸水域である第2の浸水域を推定し、第2の浸水域と第1の浸水域とを併せた推定浸水域を算出する。
【0068】
図15は、本実施の形態の浸水域の推定を説明するための図である。図15に示した例では、浸水域の一部が、撮影領域として撮影され、浸水域のうち撮影されていない領域も存在している。本実施の形態では、浸水域の水面の高さは共通であることを利用し、撮影領域が撮影されたカメラ映像を用いて実施の形態1と同様に境界位置座標リストを算出し、境界位置座標リストにおける水面の高さと標高データとを用いて、境界位置座標リストにおける水面の高さに対応する標高以下の領域を浸水域であると推定する。
【0069】
図16は、本実施の形態の浸水把握装置4bにおける浸水把握処理の一例を示すフローチャートである。ステップS1~ステップS5は、実施の形態1と同様である。ステップS5の後、浸水把握装置4bは、浸水域の水面の標高を決定する(ステップS11)。詳細には、浸水域推定部55は、境界位置座標リストにおける水面の高さを水面の標高とすることで、水面の標高を決定する。
【0070】
次に、浸水把握装置4bは、標高データと水面の標高とを用いて浸水域を推定する(ステップS12)。詳細には、浸水域推定部55は、例えば、標高データのメッシュごとに、境界位置座標リストにおける緯度経度によって示される、撮影領域における浸水域に連続するメッシュであって、水面の標高より標高が低い領域を、撮影されていない範囲における推定される浸水域とする。そして、浸水把握装置4bは、撮影範囲における浸水域と撮影されていない範囲における推定される浸水域とを合わせた浸水域を推定される浸水域(推定浸水域)とし、推定浸水域を示す情報として推定浸水域の境界を示す推定境界位置座標を算出し、算出した推定境界位置座標のリストを面積算出部46および浸水深算出部47へ出力する。ステップS6~ステップS8は実施の形態1と同様である。すなわち、本実施の形態では、面積算出部46は、推定浸水域を示す情報を用いて推定浸水域の面積を算出する。また、浸水深算出部47は、推定浸水域を示す情報と標高データとを用いて推定浸水域の浸水深を算出する。
【0071】
図17は、本実施の形態の推定浸水域の一例を示す図である。図17に示した例では、各格子は標高データにおけるメッシュを示し、推定浸水域がハッチングされている。図17に示した例では、撮影領域における境界位置の標高から水面の標高が算出され、当該標高以下の標高に対応するメッシュが推定浸水域として推定されている。図17では、標高データにおけるメッシュ単位で標高が水面の標高と比較されるが、これに限らず、実施の形態1の浸水深を算出する場合と同様に、メッシュより細かいエリア単位、またはメッシュより広いエリア単位で標高が水面の標高と比較されてもよい。
【0072】
本実施の形態の浸水把握装置4bは、実施の形態1で述べた浸水把握装置4と同様に、例えば、図12に示したコンピュータシステムにより実現される。浸水域推定部55は、図12に示した制御部101により実現される。
【0073】
なお、図14では、実施の形態1の図1に示した浸水把握装置4に浸水域推定部55を追加する例を説明したが、図13に示した変形例の浸水把握装置4aに浸水域推定部55を追加して、浸水域を推定してもよい。
【0074】
また、図14では、面積算出部46、浸水深算出部47および水量算出部48を備える例を説明したが、面積算出部46、浸水深算出部47および水量算出部48のうち一部または全部を備えなくてもよい。すなわち、浸水把握装置4bは、撮影領域における浸水域の水面の高さと標高データとを用いて、撮影されていない範囲の浸水域を推定すればよく、浸水域、浸水深および水量のうち全部または一部を算出しなくてもよい。同様に、図13に示した変形例の浸水把握装置4aに浸水域推定部55を追加した場合も、面積算出部46、浸水深算出部47および水量算出部48のうち一部または全部を備えなくてもよい。
【0075】
以上のように、本実施の形態の浸水把握装置4bは、撮影領域における浸水域の水面の高さと標高データとを用いて、撮影されていない範囲の浸水域を推定する。これにより、撮影されていない範囲も含む浸水域を、浸水の規模を示す情報として提供することができる。
【0076】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0077】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0078】
(付記1)
航空機に搭載されたカメラ装置によって撮影されたカメラ映像を用いて決定された浸水域の境界位置と、標高データとを用いて、浸水の規模に関する情報である浸水情報を算出する浸水情報算出部と、
前記浸水情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする浸水把握装置。
(付記2)
前記境界位置と標高データとを用いて浸水深を算出する浸水深算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記浸水深を含むことを特徴とする付記1に記載の浸水把握装置。
(付記3)
前記境界位置を用いて浸水域の面積を算出する面積算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記面積を含むことを特徴とする付記2に記載の浸水把握装置。
(付記4)
前記浸水深を用いて浸水域の水量を算出する水量算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記水量を含むことを特徴とする付記2または3に記載の浸水把握装置。
(付記5)
前記浸水情報算出部は、前記境界位置を用いて前記カメラ映像の撮影範囲の浸水域である第1の浸水域の水位の高さを算出し、前記水位の高さと標高データとを用いて前記撮影範囲外の浸水域である第2の浸水域を推定し、前記第2の浸水域と前記第1の浸水域とを併せた推定浸水域を算出し、
前記浸水情報は、前記推定浸水域を示す情報を含むことを特徴とする付記1に記載の浸水把握装置。
(付記6)
前記推定浸水域を示す情報と標高データとを用いて前記推定浸水域の浸水深を算出する浸水深算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記浸水深を含むことを特徴とする付記5に記載の浸水把握装置。
(付記7)
前記推定浸水域を示す情報を用いて前記推定浸水域の面積を算出する面積算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記面積を含むことを特徴とする付記6に記載の浸水把握装置。
(付記8)
前記浸水深を用いて浸水域の水量を算出する水量算出部、
を備え、
前記浸水情報は、前記水量を含むことを特徴とする付記5または6に記載の浸水把握装置。
(付記9)
前記境界位置は、表示された前記カメラ映像における位置としてユーザから指定された指定位置に対応する前記カメラ装置への光の入射方向と、前記標高データが示す地表面との交点として算出されることを特徴とする付記1から8のいずれか1つに記載の浸水把握装置。
(付記10)
前記カメラ映像から画像解析により浸水域を判別する浸水域判別部、
を備え、
前記境界位置は、前記浸水域判別部によって判別された前記浸水域の境界を示す複数の位置に対応する前記カメラ装置への光の入射方向と、前記標高データが示す地表面との交点として算出されることを特徴とする付記1から8のいずれか1つに記載の浸水把握装置。
(付記11)
前記カメラ装置は、前記航空機の鉛直斜め下方を撮影することを特徴とする付記1から10のいずれか1つに記載の浸水把握装置。
(付記12)
前記境界位置は、航空機の位置および姿勢を示す情報を含む航空機情報を用いて算出され、前記航空機情報は、前記カメラ映像に重畳されて前記航空機から送信されることを特徴とする付記1から11のいずれか1つに記載の浸水把握装置。
【符号の説明】
【0079】
1 航空機、2 受信システム、3 ヘリ情報分岐装置、4,4a,4b 浸水把握装置、11 GPS受信機、12 ジャイロ、13 ヘリ情報作成装置、14 カメラ装置、15 ヘリ情報重畳装置、16 送信システム、17 送信処理装置、18,21 アンテナ、22 受信処理装置、41 映像取得部、42 ヘリ情報取得部、43 標高データ記憶部、44 静止画抽出部、45 境界算出部、46 面積算出部、47 浸水深算出部、48 水量算出部、49 浸水情報記憶部、50 入力受付部、51 画像内位置検出部、52 表示データ生成部、53 出力部、54 浸水域判別部、55 浸水域推定部、100,100a 浸水把握システム、451 ヘリ情報分離部、452 撮影方向ベクトル算出部、453 境界位置座標特定部、454 装置情報記憶部、455 境界位置方向ベクトル算出部。
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