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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178066
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】サーバおよび車両
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/32 20060101AFI20231207BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H04N1/327
H04N1/00 127A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091115
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中西 優
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】榎本 光洋
【テーマコード(参考)】
5C062
【Fターム(参考)】
5C062AA11
5C062AB38
5C062AB40
5C062AC25
5C062AC38
5C062AE15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カメラを備えた車両からサーバへの画像データの送信を、画像データの送信時間に関する要求に応じて行えるようにするサーバ及び車両を提供する。
【解決手段】車両と、サーバと、車両とサーバとの通信を中継する。中継機器3を備え、交通参加者の情報を収集するためのシステムにおいて、車両1は、サーバ2と通信する通信部11と、車両の外側および内側の少なくとも一方を撮影し画像データを生成するカメラ12と、サーバから、画像データの送信時間の上限値である許容送信時間を含む制約情報を取得する取得部141と、制約情報に基づいて画像データの圧縮率を決定する決定部143と、決定された圧縮率で画像データを圧縮し圧縮画像データを生成する圧縮部144と、圧縮画像データをサーバへ送信するよう通信部を制御する送信制御部145と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバと通信する通信部を備える車両であって、
前記車両の外側および内側の少なくとも一方を撮影し画像データを生成するカメラと、
前記サーバから、前記画像データの送信時間の上限値である許容送信時間を含む制約情報を取得する取得部と、
前記制約情報に基づいて前記画像データの圧縮率を決定する決定部と、
前記圧縮率で前記画像データを圧縮し圧縮画像データを生成する圧縮部と、
前記圧縮画像データを前記サーバへ送信するよう前記通信部を制御する送信制御部と、
を備える車両。
【請求項2】
前記取得部は、前記許容送信時間、および前記圧縮画像データを用いて物体を検知する場合の圧縮後検知精度の下限値である許容検知精度を含む前記制約情報を取得する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記取得部は、前記許容送信時間、前記許容検知精度、および前記サーバとの通信を中継する中継機器のスループットを含む前記制約情報を取得する、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記画像データから、前記物体のバウンディングボックスを検知し、当該バウンディングボックスのサイズを示すBB情報を生成する生成部を備え、
前記決定部は、前記制約情報および前記BB情報に基づいて前記圧縮率を決定する、
請求項2または3に記載の車両。
【請求項5】
前記決定部は、
前記制約情報に基づいて、前記画像データを前記サーバへ送信するのに要する送信時間を算出する算出部と、
前記送信時間が前記許容送信時間よりも短いか否かを判断する判断部と、
を備え、
前記決定部は、前記送信時間が前記許容送信時間よりも短いと前記判断部が判断した場合、前記圧縮率を1に決定する、
請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記決定部は、前記送信時間が前記許容送信時間よりも長いと前記判断部が判断した場合、前記圧縮率を1未満に決定する、
請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記決定部は、
現状の圧縮率で圧縮された前記圧縮画像データを用いて物体を検知した場合の検知精度の圧縮後検知精度を算出する第二算出部と、
前記圧縮後検知精度が前記許容検知精度よりも高いか否かを判断する第二判断部と、
を備え、
前記圧縮後検知精度が前記許容検知精度よりも高いと前記第二判断部が判断した場合、前記圧縮率を、前記現状の圧縮率よりも低い値に変更する、
請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記決定部は、
前記圧縮率を段階的に引き下げることにより変更するよう構成されており、
現状の圧縮率が、所定の下限段階に達しているか否かを判断する第三判断部を備え、
前記現状の圧縮率が前記下限段階に達していると前記第三判断部が判断した場合、前記現状の圧縮率を、最終的な圧縮率として決定する、
請求項7に記載の車両。
【請求項9】
画像データを生成するカメラを備える車両と通信する通信部と、
前記画像データの送信時間の上限値である許容送信時間を含む制約情報を前記車両へ送信するよう前記通信部を制御する送信制御部と、
前記車両から、前記カメラが生成した画像データ、または前記制約情報に基づいて生成された圧縮画像データを受信するよう前記通信部を制御する受信制御部と、
を備えるサーバ。
【請求項10】
前記送信制御部は、前記許容送信時間、および前記圧縮画像データを用いて物体を検知する場合の検知精度の圧縮後検知精度の上限値である許容検知精度を含む前記制約情報を前記車両へ送信するよう前記通信部を制御する、請求項9に記載のサーバ。
【請求項11】
前記サーバとの通信を中継する中継機器のスループットを測定する測定部を備え、
前記送信制御部は、前記許容送信時間、前記許容検知精度、および前記スループットを含む前記制約情報を前記車両へ送信するよう前記通信部を制御する、請求項10に記載のサーバ。
【請求項12】
前記画像データまたは前記圧縮画像データを解析する解析部を備える、
請求項9~11のいずれか一項に記載のサーバ。
【請求項13】
前記解析部は、少なくとも前記許容送信時間を、解析する内容に応じて決定する、
請求項12に記載のサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データの送信側となる装置と、受信側となる装置と、を備え、送信側となる装置が受信側となる装置の必要に応じて画像データを圧縮し、それを受信側となる装置に送信するための各種技術が提案されている。例えば下記特許文献1には、画像伝送に先立ち、受信側となる装置が送信側となる装置に利用目的情報を送信し、送信側となる装置は利用目的情報に従って、送信すべき画像を圧縮し、受信側となる装置へ送信する画像伝送システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-189105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、カメラを搭載した少なくとも一台の車両を画像の送信側、サーバを受信側とし、カメラが生成した画像データを、サーバで解析するシステムが出てきている。このサーバが行う解析の中には、画像データの送信を急ぐもの(例えば、交通事故の状況や原因を探るための解析等)と、そうでないもの(交通参加者の属性の統計を取るための解析等)がある。しかし、上記のような従来技術は、テーブルを参照して画素数に対応する圧縮率を選択するものでしかなく、画像データの送信時間に関する要求に対応することはできなかった。また、画像データの圧縮率を送信時間に応じて決定しようとすると、処理が比較的複雑になることがある。こうした処理を、一のサーバが複数の車両について行おうとする場合、サーバにかなりの負担をかけることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る車両は、サーバと通信する通信部を備える車両であって、前記車両の外側および内側の少なくとも一方を撮影し画像データを生成するカメラと、前記サーバから、前記画像データの送信時間の上限値である許容送信時間を含む制約情報を取得する取得部と、前記制約情報に基づいて前記画像データの圧縮率を決定する決定部と、前記圧縮率で前記画像データを圧縮し圧縮画像データを生成する圧縮部と、前記圧縮画像データを前記サーバへ送信するよう前記通信部を制御する送信制御部と、を備える。
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係るサーバは、画像データを生成するカメラを備える車両と通信する通信部と、前記画像データの送信時間の上限値である許容送信時間を含む制約情報を前記車両へ送信するよう前記通信部を制御する送信制御部と、前記車両から、前記カメラが生成した画像データ、または前記制約情報に基づいて生成された圧縮画像データを受信するよう前記通信部を制御する受信制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第一(第二)実施形態に係るサーバおよび車両によって構成されるシステムの概略構成を示すブロック図である。
図2】第一実施形態に係る車両の機能的構成を示すブロック図である。
図3】同車両が行う処理の内容を示すフローチャートである。
図4】第一実施形態に係るサーバの機能的構成を示すブロック図である。
図5】第二実施形態に係る車両の機能的構成を示すブロック図である。
図6】第一実施形態に係るサーバの機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第一実施形態>
はじめに、本発明の実施形態に係るシステム100の詳細について説明する。
【0009】
本実施形態に係るシステム100は、交通参加者の情報を収集するためのシステムである。
システム100は、図1に示したように、車両1と、サーバ2と、を備えている。本実施形態に係るシステム100は、中継機器3を更に備えている。中継機器3は、車両1とサーバ2との通信を中継する。中継機器3には、セルラー通信を行うための基地局、Wi-Fi(登録商標)通信を行うためのアクセスポイント等が含まれる。また、本実施形態に係るシステム100は、車両1を複数備えている。
【0010】
[車両の構成]
車両1は、図2に示したように、車両側通信部11と、カメラ12と、車両側記憶部13と、車両側制御部14と、を備える。
【0011】
〔車両側通信部〕
車両側通信部11は、上記サーバ2と通信する。本実施形態に係る車両側通信部11は、通信モジュールで構成されている。本実施形態に係る車両側通信部11は、無線通信モジュールで構成されている。すなわち、車両側通信部11は、中継機器3を介してサーバ2と無線で通信する。
【0012】
〔カメラ〕
カメラ12は、車両1の外側および内側の少なくとも一方を撮影し画像データを生成する。本実施形態に係るカメラ12の撮影方式は、動画撮影であってもよいし、静止画撮影であってもよい。すなわち、画像データには、動画データおよび静止画データの少なくとも一方が含まれる。動画撮影の場合、カメラ12は、車両1が走行している間撮影を継続する。一方、静止画撮影の場合、カメラ12は、車両1が走行している間、撮影を繰り返す。本実施形態に係るカメラ12は、生成した画像データを、車両側制御部14の生成部142(詳細後述)に出力するとともに、車両側記憶部13に記憶させる。
【0013】
〔車両側記憶部〕
本実施形態に係る車両側記憶部13は、各種データ、各種情報を記憶可能に構成されている。本実施形態に係る車両側記憶部13は、半導体メモリ、ハードディスクドライブ等で構成されている。
【0014】
〔車両側制御部〕
本実施形態に係る車両側制御部14は、取得部141と、生成部142と、決定部143と、圧縮部144と、車両側送信制御部145(送信制御部)と、を備える。
【0015】
(取得部)
取得部141は、サーバ2から、制約情報を取得する。制約情報は、許容送信時間を含む。許容送信時間は、車両1からサーバ2へ画像データを送信する際の、画像データの送信時間の上限値である。本実施形態に係る取得部141が取得する制約情報は、許容検知精度を更に含む。許容検知精度は、サーバ2が圧縮画像データを用いて物体を検知する場合の検知精度である圧縮後検知精度の下限値である。なお、個々の検知精度の具体的な算出方法については後述する。取得部141がこのような制約情報を取得することにより、車両1は、検知精度を考慮して圧縮された圧縮画像データを、送信時間を考慮してサーバ2へ送信することができるようになる。
【0016】
また、本実施形態に係る取得部141が取得する制約情報は、中継機器3のスループットを更に含む。取得部141がこのような制約情報を取得することにより、車両1は、検知精度を考慮して圧縮された圧縮画像データを、中継機器3を介して通信する他の通信機器の使用状況が変化する等して、通信速度が低下した場合であっても、許容送信時間を超えないようにサーバ2へ送信することができるようになる。
【0017】
(生成部)
生成部142は、カメラ12が生成した画像データから、物体のバウンディングボックス(以下、BB)を検知し、当該BBのサイズを示すBB情報を生成する。本実施形態に係る生成部142は、道路上の交通に関する物体のBBを検知する。本実施形態に係る生成部142が検知する「交通に関する物体」には、交通参加者(自動車、二輪車、自転車、歩行者等)、交通設備(信号機、交通標識等)等が含まれる。上述したように、本実施形態に係るカメラ12は、車両1が走行している間、動画撮影を継続する、または静止画撮影を繰り返す。このため、本実施形態に係る生成部142は、BB情報を定期的に生成する。本実施形態に係る生成部142は、生成したBB情報を車両側記憶部13に記憶させる。
【0018】
(決定部)
決定部143は、取得部141が取得した制約情報に基づいて画像データの圧縮率を決定する。「圧縮率」は、圧縮画像データのデータ量が、画像データのデータ量に対する、圧縮画像データのデータ量の比であり、下記数1で表される。
【0019】
数1:圧縮率=(圧縮画像データのデータ量/画像データのデータ量)
【0020】
本実施形態に係る決定部143は、図3に示したような流れで圧縮率を決定する。具体的には、決定部143は、まず、制約情報に基づいて、画像データをサーバ2へ送信するのに要する送信時間を算出する(ステップS1)。本実施形態に係る決定部143は、例えば下記数2に、各種値を代入することにより送信時間を算出する。決定部143は、このステップS1の動作を行うことにより、算出部143aを備えていることになる。なお、最初にステップS1を行うときの現状の圧縮率は1である。
【0021】
数2:送信時間={画像データのデータ量×現状の圧縮率/中継機器3のスループット}
【0022】
送信時間を算出した後、決定部143は、算出した送信時間が、取得部141が取得した制約情報に含まれる許容送信時間よりも短いか否かを判断する(ステップS2)。決定部143は、このステップS2の動作を行うことにより、判断部143bを備えていることになる。
【0023】
送信時間が許容送信時間よりも長い(画像データを圧縮しなければ許容送信時間内に送信できない)と判断部143bが判断した場合(ステップS2:NO)、決定部143は、圧縮率を1未満(圧縮部144において圧縮)に決定する(ステップS3)。本実施形態に係る決定部143は、ステップS3を少なくとも1回行うことにより、圧縮率を1未満に決定する。
【0024】
このステップS3において、決定部143は、まず、現状の圧縮率が、所定の下限段階に達しているか否かを判断する(ステップS31)。下限段階は、これ以上低下することが許されない圧縮率の下限値である。決定部143は、このステップS31の動作を行うことにより、第三判断部143cを備えていることになる。
【0025】
現状の圧縮率が下限段階に達していない(圧縮率を引き下げる余地がある)と第三判断部143cが判断した場合(ステップS31:NO)、決定部143は、圧縮率を一段階引き下げる(ステップS32)。本実施形態に係る決定部143は、圧縮率を段階的に引き下げることにより変更するよう構成されている。具体的には、本実施形態に係る決定部143は、圧縮を一段階行う度に、圧縮画像データの画素数が、画像データの画素数の1/nずつ少なくなっていくように、圧縮率を引き下げる。例えば、例えば、画像データの画素数が1280p、n=4である場合、一段階圧縮した後の圧縮画像データの画素数が、320p(1280pの1/4)少なくなるように(1280p-320p=960pとなるように)、圧縮率を引き下げる。画素数が圧縮前の3/4になった(一段階引き下げ後の)圧縮画像データの圧縮率は0.84程度となる。同様に、画素数が圧縮前の2/4になった(二段階引き下げ後の)圧縮画像データの圧縮率は0.57程度、画素数が圧縮前の1/4になった(三段階引き下げ後の)圧縮画像データの圧縮率は0.33程度となる。このため、現状の圧縮率が1であった場合、一段階引き下げ後の圧縮率は0.84となる。
【0026】
圧縮率を一段階引き下げた後、決定部143は、現状の(引き下げ後の)圧縮率で圧縮された圧縮画像データを用いて物体を検知した場合の圧縮後検知精度を算出する(ステップS33)。具体的には、決定部143は、まず、生成部142が生成した圧縮画像データのBB情報を、下記数3~5のうち、対応する圧縮率の引き下げ段階のものに代入し、各BBにおける物体の検知確率を算出する。そして、得られた各検知確率を、下記数6に代入することにより、圧縮後検知精度を算出する。なお、下記数3~5の中の具体的数値は、特定のデータセットから得られた一例であり、カメラ12の精度や設置位置により変わってくる場合がある。決定部143は、このステップS34の動作を行うことにより、第二算出部143dを備えていることになる。
【0027】
数3:検知確率(一段階引き下げ後)=0.0488ln(BB情報)+1.0418
数4:検知確率(二段階引き下げ後)=0.06ln(BB情報)+1.0711
数5:検知確率(三段階引き下げ後)=0.0759ln(BB情報)+1.0704
数6:圧縮後検知精度(期待値)=(1/画像内のBBの数)×Σ各BB内の物体の検知確率
【0028】
また、本実施形態に係る第二算出部143dは、現状の(引き下げ後の)圧縮率で圧縮された圧縮画像データをサーバ2へ送信するのに要する送信時間を算出する。算出は、上記数1に代入する圧縮率の値を変更することにより行う。
【0029】
圧縮後検知精度を算出した後、決定部143は、第二算出部143dが算出した圧縮後検知精度が、サーバ2から受信した制約情報に含まれる許容検知精度よりも高いか否かを判断する(ステップS34)。決定部143は、このステップS35の動作を行うことにより、第二判断部143eを備えていることになる。
【0030】
圧縮後検知精度が許容検知精度よりも高い(圧縮率をさらに下げても解析可能である)と第二判断部143eが判断した場合(ステップS34:YES)、決定部143は、ステップS31の処理を再び実行する。そして、このステップS31において、圧縮率が下限段階に達していないと第三判断部143cが判断した場合(ステップS31:NO)、決定部143は、ステップS32において、圧縮率を、現状の圧縮率よりも低い値に変更する(一段階引き下げる)ことになる。
【0031】
一方、ステップS34において、圧縮後検知精度が許容検知精度以下である(これ以上圧縮率を下げると解析が困難になる)と第二判断部143eが判断した場合(ステップS34:NO)、決定部143は、ステップS2以降の処理を再び実行する。
【0032】
上記ステップS2において、ステップS1またはステップS33で算出した送信時間が許容送信時間よりも短い(画像データまたは圧縮画像データを許容送信時間内で送信可能)と判断部143bが判断した場合(ステップS2:YES)、または上記ステップS31において、現状の圧縮率が下限段階に達していると第三判断部143cが判断した場合(ステップS31:YES)、決定部143は、現状の圧縮率を、最終的な圧縮率として決定する(ステップS4)。初回のステップS2において、送信時間が許容送信時間よりも短いと判断部143bが判断した場合(ステップS2:YES)は、圧縮率の引き下げが行われない(現状の圧縮率は1である)。このため、この場合、決定部143は、圧縮率を1(圧縮部144において圧縮せず)に決定する(ステップS3)。これにより、車両1は、許容送信時間を超えない時間で送信できる画像データについては、圧縮せずに送信することになる。このため、サーバ2は、物体の検出精度を下げずに済む。
【0033】
上述したように、ステップS33で算出される圧縮後検知精度は、BB情報に基づいて算出される。このため、本実施形態に係る決定部143は、制約情報および生成部142が生成したBB情報に基づいて圧縮率を決定することになる。これにより、車両1は、圧縮画像データを、検知したBBのサイズを考慮してサーバ2へ送信することができるようになる。
【0034】
決定部143が以上説明してきた動作をすることにより、車両1は、検知精度を考慮して圧縮された圧縮画像データを、許容送信時間を超えないようにサーバ2へ送信することができるようになる。また、これにより、画像データが過度に圧縮されて、サーバ2側で利用できなくなってしまう状況が生じるのを防ぐことができる。
【0035】
(圧縮部)
圧縮部144は、決定部143が決定した圧縮率で画像データを圧縮し圧縮画像データを生成する。圧縮方法は特に限定されるものではなく、従来知られた各種方法を用いることができる。本実施形態に係る圧縮部144は、決定部143が圧縮率を1に決定した場合、画像データの圧縮を行わない。なお、圧縮部144は、画像データが動画データである場合、各フレームのデータ量を下げるのではなく、例えば一部(冒頭または終盤)のフレームを削除することによりデータ量を下げるよう構成されていてもよい。このようにすれば、画質を低下させることなく、圧縮画像データを生成することができる。
【0036】
(送信制御部)
車両側送信制御部145は、図2に示したように、圧縮部144が生成した圧縮画像データをサーバ2へ送信するよう車両側通信部11を制御する。本実施形態に係る車両側送信制御部145は、圧縮部144が画像データの圧縮を行わなかった場合、画像データをそのままサーバ2へ送信するよう車両側通信部11を制御する。
【0037】
[車両の作用効果]
本実施形態に係るシステム100は、交通参加者の情報を収集するためのものである。このため、後述するサーバ2は、画像データの送信を急がないが、比較的高い画質の画像を必要とする解析を行う。このため、本実施形態に係る車両1が受信する制約情報に含まれる許容送信時間は相対的に(後述する第二実施形態よりも)長く、許容低下率が相対的に高い。しかし、以上説明してきた車両1によれば、サーバ2への画像データの送信を、画像データの送信時間に関する要求に応じて行うことができる。すなわち、車両1は、許容送信時間を超えない送信時間で送信でき、かつ圧縮率ができるだけ大きい(データ量が大きい、圧縮後検知精度が高い)圧縮画像データをサーバ2へ送信することができる。
【0038】
[サーバの構成]
サーバ2は、図4に示したように、サーバ側通信部21(通信部)と、サーバ側記憶部22と、出力部23と、サーバ側制御部24と、を備えている。
【0039】
〔サーバ側通信部〕
サーバ側通信部21は、上記車両1と通信する。本実施形態に係るサーバ側通信部21は、無線通信モジュールで構成されている。すなわち、サーバ側通信部21は、中継機器3を介して各車両1と無線で通信する。
【0040】
〔サーバ側記憶部〕
サーバ側記憶部22は、各種データ、各種情報を記憶可能に構成されている。本実施形態に係るサーバ側記憶部22は、半導体メモリ、ハードディスクドライブ等で構成されている。
【0041】
〔出力部〕
出力部23は、他の装置(表示装置等)へデータや信号を送信する通信モジュール、他の装置と接続される端子、記録媒体へ情報を書き込むドライブ、および画像を表示する表示装置の少なくともいずれかで構成されている。
【0042】
〔サーバ側制御部〕
本実施形態に係るサーバ側制御部24は、測定部241と、サーバ側送信制御部242(送信制御部)と、受信制御部243と、解析部244と、出力制御部245と、を備える。
【0043】
(測定部)
測定部241は、サーバ2との通信を中継する中継機器3のスループットを測定する。
【0044】
(サーバ側送信制御部)
サーバ側送信制御部242は、制約情報を車両1へ送信するようサーバ側通信部21を制御する。上述したように、制約情報は、許容送信時間を含む。許容送信時間は、解析部244(詳細後述)が解析する内容に応じて予め決定されている。本実施形態に係るサーバ側送信制御部242は、画像を解析する必要が生じたことを契機として、画像データを要求する旨の要求情報を車両1へ送信するようサーバ側通信部21を制御する。本実施形態に係るサーバ側送信制御部242が制約情報を送信するための制御を開始する契機となる「画像を解析する必要が生じたこと」には、例えば、システム100のオペレータ(サーバ2のユーザ)が、サーバ2に所定の画像要求操作を行ったこと等が含まれる。本実施形態に係るサーバ側送信制御部242は、制約情報を、要求情報と共に、または要求情報の一部として、車両1へ送信するようサーバ側通信部21を制御する。なお、要求情報は、制約情報そのものであってもよい。
【0045】
本実施形態に係るサーバ側送信制御部242の制御によってサーバ側通信部21が送信する制約情報は、許容検知精度を更に含む。これにより、サーバ2は、車両1から検知精度および送信時間が考慮された画像データ受信することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るサーバ側送信制御部242の制御によってサーバ側通信部21が送信する制約情報は、測定部241が測定したスループットを更に含む。これにより、サーバ2は、車両1から、検知精度が考慮された画像データを、中継機器3を介して通信する他の通信機器の使用状況が変化する等して、通信速度が低下した場合であっても、許容送信時間を超えないように受信することができる。
【0047】
(受信制御部)
受信制御部243は、車両1から、画像データ、または圧縮画像データを受信するようサーバ側通信部21を制御する。圧縮画像データは、制約情報に基づいて生成されたものである。車両1が圧縮画像データを生成しなかった場合、本実施形態に係る受信制御部243は、車両1から、圧縮画像データを受信するようサーバ側通信部21を制御する。本実施形態に係る受信制御部243は、サーバ側通信部21が受信した画像データまたは圧縮画像データを、サーバ側記憶部22に記憶させる。
【0048】
(解析部)
解析部244は、サーバ側通信部21が受信した画像データまたは圧縮画像データを解析する。これにより、画像データまたは圧縮画像データから、用途に応じた情報を抽出することができる。本実施形態に係る解析部244は、画像データまたは圧縮画像データを解析し、画像に映る車両の車種、歩行者の属性(年齢、性別等)等の各種情報を抽出する。これにより、いつどこをどのような車両が走行した、どのような歩行者が歩行した、といった統計情報を得ることができる。本実施形態に係る解析部244は、解析結果を、サーバ側記憶部22に記憶させる。
【0049】
なお、解析部244は、少なくとも許容送信時間を、解析する内容に応じて自動的に決定するよう構成されていてもよい。このようにすれば、送信時間に関する制約を人が設定する手間を省くことができる。これは、サーバ2が複数種類の解析に対応しているような場合、特に効果的である。
【0050】
(出力制御部)
出力制御部245は、解析部244による解析結果を出力するよう出力部23を制御する。これにより、出力部23が通信モジュールまたは端子である場合、出力部23が解析結果のデータを他の装置へ送信する。また、出力部23がドライブである場合、出力部23が解析結果のデータを記録媒体へ書き込む。また、出力部23が表示装置である場合、出力部23が解析結果を表示する。
【0051】
[サーバその他]
なお、サーバ2は、ユーザが操作可能な操作部(キーボード、マウス、タッチパネル等)を備えていてもよい。その場合、サーバ側制御部24は、ユーザにより操作部になされた操作に応じて制約情報の少なくとも一部を設定するよう構成されていてもよい。
【0052】
[サーバの作用効果]
本実施形態に係るサーバ2は、画像データの送信を急がないが、比較的高い画質の画像を必要とする解析を行う。しかし、以上説明してきたサーバ2によれば、車両1からの画像データの受信を、画像データの送信時間に関する要求に応じて行うことができる。すなわち、サーバ2は、車両1から、許容送信時間を超えない送信時間で送信でき、かつ圧縮率ができるだけ大きい(データ量が大きい、圧縮後検知精度が高い)圧縮画像データを受信することができる。
【0053】
<第二実施形態>
次に、本発明の実施形態に係るシステム100Aの詳細について説明する。
【0054】
本実施形態に係るシステム100Aは、発生した交通事故の状況を分析するためのシステムである。
システム100は、図1に示したように、中継機器3の他に、車両1Aと、サーバ2Aと、を備えている。本実施形態に係るシステム100Aは、上記第一実施形態に係るシステム100と同様、車両1Aを複数備えている。
【0055】
[車両の相違点]
本実施形態に係る車両1Aは、図5に示したように、車両側通信部11、カメラ12および車両側記憶部13の他に、車両側制御部14Aを備えている。
【0056】
〔車両側制御部〕
本実施形態に係る車両側制御部14Aは、取得部141、生成部142、決定部143A、圧縮部144および車両側送信制御部145の他に、通知部146を備える。
【0057】
(通知部)
通知部146は、車両1Aが交通事故の発生を検知した場合に、その旨を示す事故発生情報を、サーバ2Aへ送信するよう車両側通信部11を制御する。本実施形態に車両1Aが交通事故の発生を検知する方法には、例えば、所定以上の衝撃を検知すること、所定以上の音を検知すること、図示しない操作部に乗員による所定操作がなされること等が含まれる。
【0058】
[車両の作用効果]
本実施形態に係るシステム100Aは、発生した交通事故の状況を分析するためのものである。このため、後述するサーバ2Aは、画像データの画質についてはある程度の低下を許容するが、画像データの送信を急ぐ解析を行う。このため、本実施形態に係る車両1Aが受信する制約情報に含まれる許容送信時間は相対的に(上記第一実施形態よりも)短く、許容低下率が相対的に低い。しかし、以上説明してきた車両1Aによれば、上記第一実施形態に係る車両1と同様、サーバ2への画像データの送信を、画像データの送信時間に関する要求に応じて行うことができる。すなわち、車両1Aは、検知精度の圧縮後検知精度が許容検知精度を超えない範囲で、できるだけ圧縮された(データ量が小さい)圧縮画像データをサーバ2Aへ送信することができる。また、車両1Aによれば、交通事故の発生をサーバ2Aへ通知するため、画像データまたは圧縮画像データを、交通事故が発生した直後に直ちにサーバ2Aへ送信することができる。
【0059】
[サーバの相違点]
サーバ2は、図6に示したように、サーバ側通信部21、サーバ側記憶部22および出力部23の他に、サーバ側制御部24Aを備えている。
【0060】
〔サーバ側制御部〕
サーバ側制御部24Aは、測定部241、受信制御部243および出力制御部245の他に、サーバ側送信制御部242Aと、解析部244Aと、を備える。
【0061】
(サーバ側送信制御部)
サーバ側送信制御部242Aは、上記第一実施形態に係るサーバ側送信制御部242と同様、制約情報を車両1へ送信するようサーバ側通信部21を制御する。本実施形態に係るサーバ側送信制御部242Aが制約情報を送信するための制御を開始する契機となる「画像を解析する必要が生じたこと」には、サーバ側通信部21が車両1Aから事故発生情報を受信したこと等が含まれる。また、本実施形態に係るサーバ側送信制御部242Aの制御によって車両1Aへ送信される制約情報は、許容送信時間が第一実施形態に係る許容送信時間よりも短い、および許容検知精度が第一実施形態に係る許容送信時間よりも低い、の少なくともいずれかとなっている。
【0062】
(解析部)
本実施形態に係る解析部244Aは、画像データまたは圧縮画像データを解析し、画像に映る被害を受けた交通参加者(歩行者、車両)、建物等の状態、被害を与えた車両の状態、事故に至るまでの被害を受けた交通参加者の動き、事故に至るまでの被害を与えた車両等の動き等の各種情報を抽出する。これにより、どのような交通事故が起こったのかを知ることができるとともに、どのような原因によって交通事故が起こったのかを探ることができる。その結果、サーバ2のユーザが、例えば保険会社のオペレータ等である場合、交通事故の関係者への対応に収集することができるようになる。
【0063】
[サーバの作用効果]
本実施形態に係るサーバ2Aは、画像データの画質についてはある程度の低下を許容するが、画像データの送信を急ぐ解析を行う。しかし、以上説明してきたサーバ2Aによれば、上記第一実施形態に係るサーバ2と同様、車両1Aからの画像データの受信を、画像データの送信時間に関する要求に応じて行うことができる。すなわち、サーバ2Aは、車両1Aから、検知精度の圧縮後検知精度が許容検知精度を超えない範囲で、できるだけ圧縮された(データ量が小さい)圧縮画像データを受信することができる。また、サーバ2Aによれば、車両1から交通事故の発生を通知されたことを契機として制約情報を車両1Aへ送信するため、画像データまたは圧縮画像データを、交通事故が発生した直後に直ちにサーバ2Aへ送信することができる。
【0064】
<その他>
上記車両1、1Aおよびサーバ2、2A(以下、「装置等」と呼ぶ)の機能は、当該装置等としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置等の各制御ブロック(特に車両側制御部14、14A、サーバ側制御部24、24Aに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。この場合、上記装置等は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置等が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置等に供給されてもよい。
【0065】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0066】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
100、100A システム
1、1A 車両
11 車両側通信部(通信部)
12 カメラ
13 車両側記憶部
14、14A 車両側制御部
141 取得部
142 生成部
143、143A 決定部
143a 算出部
143b 判断部
143c 第三判断部
143d 第二算出部
143e 第二判断部
144 圧縮部
145 車両側送信制御部(送信制御部)
146 通知部
2、2A サーバ
21 サーバ側通信部
22 サーバ側記憶部
23 出力部
24、24A サーバ側制御部
241 測定部
242、242A サーバ側送信制御部
243 受信制御部
244、244A 解析部
245 出力制御部
3 中継機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6