(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178068
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】アルミニウム部材保護剤及びアルミニウム部材保護剤の塗布方法
(51)【国際特許分類】
C09D 183/06 20060101AFI20231207BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20231207BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231207BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20231207BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20231207BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C09D183/06
B05D7/14 101
B05D7/24 302Y
C09D7/20
C09D7/65
C23C26/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091118
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】397016828
【氏名又は名称】KeePer技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【弁理士】
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】谷 好通
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4D075BB67X
4D075CA33
4D075DA06
4D075DB07
4D075DC12
4D075EA07
4D075EB43
4D075EC33
4J038DL032
4J038DL051
4J038KA06
4J038PB07
4J038PC02
4K044AA06
4K044AB10
4K044BA21
4K044BB01
4K044BC02
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】自動車などの車両の外装に使用されるアルミニウム部材に生じる白錆の発生を抑制することができるアルミニウム部材保護剤及びアルミニウム部材保護剤の塗布方法を提供すること。
【解決手段】アルミニウム部材保護剤は、末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーを含むシリコーン成分と、有機溶媒と、を含有する。末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーが、有機溶媒で分散され、アルミニウム部材1に塗布された際に、アルミニウム部材1の表面を均一に被覆する。アルミニウム部材1の表面に塗布されたアルコキシオリゴマーは、互いの末端多官能アルコキシシリル基が加水分解縮合することによって、三次元的に架橋が進行する。三次元的に架橋したシリコーン成分は、アルミニウム部材の表面を緻密に被覆する保護被膜3を形成し、アルミニウム部材から白錆の発生原因物質を遮断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車などの車両の外装に使用されるアルミニウム部材に生じる白錆の発生を抑制するアルミニウム部材保護剤であって、
末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーを含むシリコーン成分と、有機溶媒と、を含有することを特徴とするアルミニウム部材保護剤。
【請求項2】
前記末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーが長鎖有機基を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム部材保護剤。
【請求項3】
前記有機溶媒が脂肪族鎖式飽和炭化水素を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム部材保護剤。
【請求項4】
シリコーンオイルを含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム部材保護剤。
【請求項5】
アルミニウム部材に、請求項1に記載のアルミニウム部材保護剤を塗布することを特徴とするアルミニウム部材保護剤の塗布方法。
【請求項6】
前記アルミニウム部材保護剤を塗布した後に、拭き取り仕上げを行なわないことを特徴とする請求項5に記載のアルミニウム部材保護剤の塗布方法。
【請求項7】
前記アルミニウム部材は、その表面がアルマイト処理されたものであることを特徴とする請求項5に記載のアルミニウム部材保護剤の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、自動車などの車両の外装に使用されるアルミニウム部材に生じる白錆の発生を抑制するアルミニウム部材保護剤及びアルミニウム部材保護剤の塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の外装として、例えば、ドアウィンドウ枠を構成するドアモール、屋根の上に設置され荷物などを積載するルーフレールなどに、金属光沢の装飾を兼ねたアルミニウム部材が使用されることがある。アルミニウム部材は、外的要因により、斑点状の白錆が表面に生ずることがある。特許文献1には、アルミニウム部材の表面に生じた白錆を研磨して除去するアルミ部材の研磨方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたアルミ部材の研磨方法は、アルミニウム部材の表面に生じた白錆を事後的に除去するものである。このため、車両の外装として使用されるアルミニウム部材に対して、白錆の発生を抑制させたいという要望が従来からあった。
【0005】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、自動車などの車両の外装に使用されるアルミニウム部材に生じる白錆の発生を抑制することができるアルミニウム部材保護剤及びアルミニウム部材保護剤の塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施形態に係るアルミニウム部材保護剤は、自動車などの車両の外装に使用されるアルミニウム部材に生じる白錆の発生を抑制するアルミニウム部材保護剤であって、
末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーを含むシリコーン成分と、有機溶媒と、を含有することを特徴とする。
【0007】
本明細書の実施形態に係るアルミニウム部材保護剤によれば、アルミニウム部材保護剤が有機溶媒を含有しているため、末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーが、有機溶媒で分散され、アルミニウム部材に塗布された際に、アルミニウム部材の表面を均一に被覆する。塗布された末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーは、アルミニウム部材の表面を緻密に被覆する保護被膜を形成する。このため、本明細書の実施形態に係るアルミニウム部材保護剤は、自動車などの車両の外装に使用されるアルミニウム部材に生じる白錆の発生を抑制することができる。
【0008】
ここで、上記アルミニウム部材保護剤において、前記末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーが長鎖有機基を含有するものとすることができる。
【0009】
これによれば、アルミニウム部材保護剤は、アルミニウム部材に塗布された際に、長鎖有機基により可とう性を有し、耐屈曲性を向上させることができる。
【0010】
また、上記アルミニウム部材保護剤において、前記有機溶媒が脂肪族鎖式飽和炭化水素を含有するものとすることができる。
【0011】
これによれば、脂肪族鎖式飽和炭化水素は、末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーを好適に分散させることができるため、アルミニウム部材保護剤がアルミニウム部材に塗布された際に、アルコキシオリゴマーをアルミニウム部材の表面により均一に被覆させることができる。
【0012】
また、上記アルミニウム部材保護剤において、シリコーンオイルを含有するものとすることができる。
【0013】
これによれば、アルミニウム部材保護剤がレベリング剤として作用するシリコーンオイルを含有しているため、アルミニウム部材保護剤がアルミニウム部材に塗布された際に、アルコキシオリゴマーをアルミニウム部材の表面により均一に被覆させることができ、アルミニウム部材保護剤から形成された保護被膜は、その表面形状を平滑なものとすることができる。
【0014】
本明細書の実施形態に係るアルミニウム部材保護剤の塗布方法は、アルミニウム部材に、上記のアルミニウム部材保護剤を塗布することを特徴とする。
【0015】
本明細書の実施形態に係るアルミニウム部材保護剤の塗布方法によれば、アルミニウム部材保護剤が有機溶媒を含有しているため、末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーが、有機溶媒で分散され、アルミニウム部材に塗布された際に、アルミニウム部材の表面を均一に被覆する。アルミニウム部材の表面に塗布された末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーは、互いの末端多官能アルコキシシリル基が加水分解縮合することによって、三次元的に架橋が進行する。三次元的に架橋したシリコーン成分は、アルミニウム部材の表面を緻密に被覆する保護被膜を形成し、アルミニウム部材から白錆の発生原因物質を遮断する。このため、本明細書の実施形態に係るアルミニウム部材保護剤の塗布方法によって、アルミニウム部材に生じる白錆の発生を抑制することができる。
【0016】
また、上記アルミニウム部材保護剤の塗布方法において、前記アルミニウム部材保護剤を塗布した後に、拭き取り仕上げを行なわないものとすることができる。
【0017】
これによれば、拭き取り仕上げを省略することができるため、簡便に仕上げることができる。
【0018】
また、上記アルミニウム部材保護剤の塗布方法において、前記アルミニウム部材は、その表面がアルマイト処理されたものとすることができる。
【0019】
これによれば、耐アルカリ性に劣るアルマイト処理されたアルミニウム部材を好適に保護することができる。
【発明の効果】
【0020】
本明細書の実施形態に係るアルミニウム部材保護剤によれば、自動車などの車両の外装に使用されるアルミニウム部材に生じる白錆の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本明細書の実施形態に係るアルミニウム部材保護剤から形成された保護被膜によって保護されるアルミニウム部材のモデル断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本明細書の実施形態に係るアルミニウム部材保護剤及びアルミニウム部材保護剤の塗布方法について説明する。なお、本発明の範囲は、実施形態で開示される範囲に限定されるものではない。実施形態のアルミニウム部材保護剤は、自動車のドアウィンドウ枠を構成するドアモール、屋根の上に設置され荷物などを積載するルーフレール、ドアノブ又はタイヤのホイールなどに使用されるアルミニウム部材1に塗布され、アルミニウム部材1に生じる白錆の発生を抑制する保護被膜3を形成する保護剤である。もちろん、本明細書の実施形態は、自動車への用途に限定されるものではなく、オートバイ、鉄道車両又は航空機などに対しても適用することが可能なものである。なお、本明細書において、アルミニウム部材保護剤の配合量や配合比を表す際は、特に断らない限り、質量単位であり、揮発分を含む塗料状態で表すものとする。また、配合単位を表す「%」は、特に断らない限り、「質量%」を意味するものとする。
【0023】
アルミニウム部材保護剤が塗装されるアルミニウム部材1の材質は、特に限定されるものではなく、アルミニウム(意図的に不純物が添加されていないアルミニウム)のみならずジュラルミン、超ジュラルミン及び超々ジュラルミンなどを含めたアルミニウム合金についても適用することができる。
【0024】
これらアルミニウム部材1は、強度や耐腐食性を高めるために、表面処理2が施されている。アルミニウム部材1の表面処理2は、特に限定されるものではなく、アルマイト処理(陽極酸化皮膜処理)、化成処理、メッキ処理又は塗装処理が施されたアルミニウム部材1について適用することができる。これら表面処理2の中でも、アルマイト処理が施されたアルミニウム部材1が、その表面に斑点状の白錆が生じやすい。斑点状の白錆は、大陸から飛来してくる黄砂やPM2.5に含まれるアルカリ成分と日本の高温多湿環境の条件によって生じるものと推測されている。
【0025】
実施形態に係るアルミニウム部材保護剤は、末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーを含むシリコーン成分と、有機溶媒と、を含有するものである。
【0026】
末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーは、末端に下記一般式(1)で表される多官能アルコキシシリル基を含有するモノマーが重合したアルコキシオリゴマーである。
(RO)n-Si- (1)
(式中、ROはメトキシ基又はエトキシ基であり、nは2又は3である。)
末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーは、多官能アルコキシシリル基がアルミニウム部材1の表面に結合するとともに、互いの多官能アルコキシシリル基が加水分解縮合することによって、三次元網目状に架橋が進行する。このため、末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーは、アルミニウム部材1に結合するとともに、その表面を緻密に被覆して、保護被膜3を形成し、アルミニウム部材1から白錆の発生原因物質を遮断する。このため、実施形態に係るアルミニウム部材保護剤は、自動車などの車両の外装に使用されるアルミニウム部材1に生じる白錆の発生を抑制することができる。
【0027】
末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーのアルコキシ基(RO)は、メトキシ基及び/又はエトキシ基であり、アルコキシ基は特に限定されるものではないが、別の実施形態として、加水分解縮合の速度が速く、被膜形成時間の促進が図れるメトキシ基とすることができる。
【0028】
アルコキシオリゴマーの多官能アルコキシシリル基は、式中のnによって2(ジアルコキシシリル基)及び/又は3(トリアルコキシシリル基)であり、特に限定されるものではない。別の実施形態として、アルコキシオリゴマーは、架橋を三次元的に形成しやすく、アルミニウム部材1の表面を緻密に被覆することができる、トリアルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマー(Tレジン)とすることができる。
【0029】
また、末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーは、モノマーとして、テトラアルコキシシラン(Q単位)を含有することができる。アルコキシオリゴマーがモノマーとしてテトラアルコキシシランを含有することにより、三次元網目状に形成される架橋の架橋密度を高め、アルミニウム部材保護剤から形成される保護被膜3の強度を高めることができる。末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーに対する、モノマーとしてのテトラアルコキシシランの含有量は、オリゴマーに対して1~10質量%とすることができる。テトラアルコキシシランの含有量がオリゴマーに対して1質量%未満である場合には、架橋密度を高める効果が確認できないおそれがある。一方、10質量%を超えると、架橋密度が高く、保護被膜3が固くなり、保護被膜3の耐屈曲性が劣るおそれがある。別の実施形態として、末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーに対する、モノマーとしてのテトラアルコキシシランの含有量は、オリゴマーに対して3~7質量%とすることができる。
【0030】
末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーは、アルキレンを含む長鎖有機基を有するものとすることができる。長鎖有機基を有することにより、末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーから形成される保護被膜3は、可撓性を備え、耐屈曲性を向上させることができる。
【0031】
長鎖有機基に含まれるアルキレンの炭素数は、10~20とすることができる。末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーから形成される保護被膜3が、適度な可撓性を有することができるためである。長鎖有機基に含まれるアルキレンの炭素数が10未満である場合には、保護被膜3が十分な可撓性を有することができず、保護被膜3の耐屈曲性が劣るおそれがある。一方、長鎖有機基に含まれるアルキレンの炭素数が20を超える場合には、保護被膜3が柔らかくなりすぎ、保護被膜3にゴミなどが付着しやすくなり、耐汚染性が劣るおそれがある。別の実施形態として、長鎖有機基に含まれるアルキレンの炭素数は、12~18とすることができる。
【0032】
アルコキシオリゴマーは、アルミニウム部材保護剤に対して、20~50質量%含有させることができる。アルミニウム部材保護剤から形成された保護被膜3がアルミニウム部材に生じる白錆の発生を好適に抑制することができるとともに、アルミニウム部材保護剤の塗布作業性が優れるものとすることができるためである。アルミニウム部材保護剤に対して、アルコキシオリゴマーの含有量が20質量%未満である場合には、被膜を形成しない揮発分である有機溶媒が多く、塗布量を要するため、アルミニウム部材保護剤が垂れやすくなり、塗布作業性が劣るおそれがある。一方、アルコキシオリゴマーの含有量が50質量%を超える場合には、アルミニウム部材保護剤の不揮発分が高く、アルミニウム部材保護剤の粘度が高くなり、これまた、塗布作業性が劣るおそれがある。別の実施形態として、アルミニウム部材保護剤に対して、アルコキシオリゴマーの含有量は、25~30質量%とすることができる。
【0033】
有機溶媒は、アルミニウム部材保護剤において、アルコキシオリゴマーを希釈し、分散させる溶媒であり、アルコキシオリゴマーを分散させることができるものであれば、有機溶媒の種類は特に限定されるものではない。別の実施形態として、有機溶媒は、脂肪族鎖式飽和炭化水素を使用することができる。脂肪族鎖式飽和炭化水素は、アルコキシオリゴマーを好適に分散させることができるため、アルミニウム部材保護剤がアルミニウム部材1に塗布された際に、アルコキシオリゴマーをアルミニウム部材1の表面により均一に被覆させることができる。また、脂肪族鎖式飽和炭化水素は、芳香族炭化水素と比較して、人の健康に悪影響を及ぼし難いため、アルミニウム部材保護剤を塗布する作業者の安全性に寄与することができる。
【0034】
有機溶媒は、アルミニウム部材保護剤に対して、50~80質量%を含有させることができる。アルミニウム部材保護剤の塗布作業性を向上させることができるためである。アルミニウム部材保護剤に対して、有機溶媒の含有量が50質量%未満である場合には、アルミニウム部材保護剤の不揮発分が高く、アルミニウム部材保護剤の粘度が高くなり、塗布作業性が劣るおそれがある。一方、有機溶媒の含有量が80質量%を超える場合には、被膜を形成しない揮発分である有機溶媒が多く、塗布量を要するため、アルミニウム部材保護剤が塗布中に垂れやすくなり、これまた、塗布作業性が劣るおそれがある。別の実施形態として、アルミニウム部材保護剤に対して、有機溶媒の含有量は、60~75質量%とすることができる。
【0035】
シリコーンオイルは、アルミニウム部材保護剤の表面張力を下げるものである。アルミニウム部材保護剤の表面張力を下げるため、シリコーンオイルは、レベリング剤として機能する。シリコーンオイルとして、ジメチルシリコーンオイル又はメチルフェニルシリコーンオイルを使用することができ、別の実施形態として、揮発性に優れるジメチルシリコーンオイルを使用することができる。
【0036】
シリコーンオイルは、アルミニウム部材保護剤に対して、3~10質量%含有させることができる。アルミニウム部材保護剤のレベリング性を好適に向上させることができるためである。アルミニウム部材保護剤に対するシリコーンオイルの含有量が3質量%未満である場合には、アルミニウム部材保護剤のレベリング性を好適に向上させることができないおそれがある。一方、10質量%を超える場合には、過剰な添加量となり、不経済となるおそれがある。別の実施形態として、アルミニウム部材保護剤に対するシリコーンオイルの含有量は、4~8質量%とすることができる。
【0037】
アルミニウム部材保護剤には、硬化を促進させるために、硬化触媒を添加させることができる。硬化触媒は、アルコキシオリゴマーの硬化反応を促進させることができるものであればよく、酸化物類、アミン類又は金属類を使用することができる。別の実施形態として、硬化触媒は、硬化特性に優れる金属類触媒を使用することができる。さらに別の実施形態として、金属類触媒の中でもチタン系触媒を使用することができ、チタン系触媒の中でもチタン有機金属化合物系触媒を使用することができる。
【0038】
硬化触媒は、アルミニウム部材保護剤に対して、0.5~5質量%を添加させることができる。アルミニウム部材保護剤の硬化性を好適に向上させることができるためである。アルミニウム部材保護剤に対する硬化触媒の添加量が0.5質量%未満である場合には、アルミニウム部材保護剤の硬化性を好適に向上させることができないおそれがある。一方、5質量%を超える場合には、過剰な添加量となり、不経済となるおそれがある。別の実施形態として、アルミニウム部材保護剤に対する硬化触媒の含有量は、0.8~2質量%とすることができる。
【0039】
アルミニウム部材保護剤は、硬化触媒を含有させる場合には、塗布直前に、硬化触媒をアルミニウム部材保護剤に混合させることができる、2剤型の材料(主剤と硬化剤)とすることができる。2剤型の材料とすることで、アルミニウム部材保護剤は、材料の保管時における硬化の促進を抑制することができる。この場合、主剤はアルコキシオリゴマーとシリコーンオイルの混合物、硬化剤は硬化触媒と有機溶媒の混合物とすることができる。
【0040】
次に、アルミニウム部材保護剤の塗布方法について説明する。アルミニウム部材1へのアルミニウム部材保護剤の塗布は、スプレ塗装、筆(刷毛)塗装、ウエスなどを用いた塗り広げ塗装などによって塗布することができる。別の実施形態として、塗布時にアルミニウム部材保護剤のはみ出しが少なく、マスキングテープによる養生を省略することができる筆塗装とすることができる。
【0041】
刷毛塗装に用いる筆は、特に限定されるものではないが、充填可能なカートリッジを用いた筆ペンとすることができる。塗布中に、カートリッジからアルミニウム部材保護剤を供給することができ、連続的に塗布することができるためである。筆の毛の材質は、獣毛、合成繊維を問わず使用することができるが、親油性の合成繊維とすることができる。筆にアルミニウム部材保護剤がなじみやすく、塗装したアルミニウム部材保護剤から形成される保護被膜3の表面を平滑にすることができるためである。親油性の合成繊維の中でも繊維の剛性が高く、より平滑にしやすいポリエステル樹脂とすることができ、別の実施形態として、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂とすることができる。
【0042】
アルミニウム部材保護剤の塗布量は、アルコキシオリゴマーの不揮発分換算で、0.1~20g/m2(膜厚:約0.1~20μm)とすることができる。好適にアルミニウム部材1を保護することができるためである。塗布量が0.1g/m2未満である場合には、塗布ムラによりアルミニウム部材1の表面を被覆できなく、アルミニウム部材1を十分に保護することができないおそれがある。一方、塗布量が20g/m2を超える場合には、塗布時に、アルミニウム部材保護剤が垂れて、塗布作業性が劣るおそれがある。別の実施形態として、アルミニウム部材保護剤の塗布量は、0.2~15g/m2(膜厚:約0.2~15μm)とすることができ、更に別の実施形態として、塗布量は、1~10g/m2(膜厚:約1~10μm)とすることができる。なお、膜厚は、便宜的に、アルコキシオリゴマーの不揮発分の密度を1g/cm3と定めて、求めたものである。
【0043】
塗布作業者は、アルミニウム部材保護剤の主剤と硬化剤とを混合した後に、筆ペンのカートリッジに充填し、筆ペンを用いてアルミニウム部材保護剤をアルミニウム部材1に塗布する。塗布の際、アルミニウム部材保護剤のレベリング性とアルミニウム部材保護剤を平滑にしやすい筆の毛の材質により、アルミニウム部材保護剤は、アルミニウム部材1に均一に塗布される。このため、アルミニウム部材保護剤の塗布後に、拭き取り仕上げを行なうことを必要とせず、保護被膜3を得ることができる。実施形態のアルミニウム部材保護剤は、拭き取り仕上げを省略することができるため、簡便に施工を行なうことができる。
【実施例0044】
実施形態のアルミニウム部材保護剤は、組成の異なるアルミニウム部材保護剤について、以下に記載する、試験体作成方法で試験体を作成するとともに塗布作業性試験を行ない、保護被膜3を形成させたのちに、仕上り評価試験及びアルカリ滴下試験を行ない、その評価を行なった。アルミニウム部材保護剤の原材料となるアルコキシオリゴマーの性状を表1に、有機溶媒の組成を表2に、シリコーンオイルの組成を表3に、硬化触媒の組成を表4に、それぞれ記載する。また、アルミニウム部材保護剤の塗布に用いる塗布具の種類を表5に記載する。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【表5】
試験体作成方法
試験体となる基材は、その表面が表面処理2としてアルマイト処理されたアルミニウム板を使用し、アルマイト処理された表面に、表5に記載の塗布具を用いてアルミニウム部材保護剤を塗布することによって、試験体を作成した。塗布の際、試験体となる基材は、地面に対して垂直に立てて、アルミニウム部材保護剤の塗布を行なった。塗布量管理は、塗布重量を管理することによって行なった。塗布重量は、アルコキシオリゴマーの不揮発分換算で、5g/m
2(膜厚:約5μm)となるように設定した。アルミニウム部材保護剤が、1剤型の材料である場合には、そのまま塗布具を用いて塗装し、2剤型の材料(主剤と硬化剤)である場合には、主剤と硬化剤とを混合し、速やかに塗布具を用いて塗装した。アルミニウム部材保護剤が塗布された試験体は、そのまま養生して、つまり、拭き取り仕上げを行なうことなく、試験体とした。
【0050】
塗布作業性試験
塗布作業性試験は、上記の試験体作成時に、地面に対して垂直に立てた基材に、アルミニウム部材保護剤を塗布し、アルミニウム部材保護剤を規定塗布量を載せた際の塗布作業性を評価することによって試験を行なった。そして、試験結果は、アルミニウム部材保護剤の垂れがなく、塗装面の表面が均一であるものを○、アルミニウム部材保護剤が垂れてはいないものの、塗装面の表面に垂れる直前の波紋状の模様の発生が確認できるものを△、アルミニウム部材保護剤が垂れたものを×、として評価した。
【0051】
仕上り評価試験
仕上り評価試験は、アルミニウム部材保護剤を塗布し、塗布作業性を確認した試験体を、標準条件(温度:23±2℃、湿度:50±5%)で2週間養生した後、仕上がりを目視で評価した。そして、試験結果は、塗装されたアルミニウム部材保護剤がレベリングし、保護被膜3の表面が均一な光沢を有しているものを○、レベリングが不十分で、保護被膜3表面の光沢が劣るものを△、保護被膜3に光沢がない又は保護被膜3表面が凹凸状になっているものを×、として評価した。
【0052】
アルカリ滴下試験
アルカリ滴下試験は、仕上り評価試験を終えた試験体の塗装面に、水酸化ナトリウム0.01質量%水溶液を0.1mL滴下し、80℃の熱風循環炉内で1時間静置し、アルカリによる変化を目視で評価した。そして、試験結果は、実体顕微鏡で確認しても試験体の塗装面に変化が見られないものを○、目視では確認できないが、実体顕微鏡では白い斑点(白錆)が確認できるものを△、目視で白い斑点が確認できるものを×、として評価した。
【0053】
アルミニウム部材保護剤の試験例を表6及び表7に記載する。試験例1~20が実施例であり、試験例21が対照(ブランク)である。なお、表6の試験例1~11は1剤型の材料であり、表7の試験例12~20は2剤型の材料(主剤と硬化剤)である。
【0054】
【0055】
【表7】
(試験例1~11)
試験例1~11は、1剤型のアルミニウム部材保護剤である。試験例1~7が、アルコキシオリゴマーと有機溶媒とを含有するものであり、試験例8~11が、さらにシリコーンオイルを含有するものである。
【0056】
試験例1は、炭素数12~18のアルキレンを有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分を有機溶媒のイソパラフィン(蒸留性状:80~140℃)で希釈したアルミニウム部材保護剤である。塗布作業性は、PBT筆(カートリッジ)での作業性に優れ、垂れがなく、塗装面の表面は均一なものであった。仕上り評価は、レベリングが不十分で、保護被膜3表面の光沢が劣るものであった。アルカリ滴下性は、実体顕微鏡で確認しても塗装面に変化が見られなく、良好なものであった。なお、表中での記載はないが、試験例1は、2剤型のアルミニウム部材保護剤(試験例13~21)と比較して、指触乾燥までの時間を要するものであった。
【0057】
試験例2は、試験例1からシリコーン成分を炭素数6~10のアルキレンを有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分に置き換えたアルミニウム部材保護剤である。評価は、シリコーン成分が耐屈曲性に劣る炭素数6~10のアルキレンを有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分であるため、形成された保護被膜3が硬く、表中の記載はないが、耐屈曲性が劣るものであった。その他の評価は、試験例1と同じであった。
【0058】
試験例3は、試験例1からシリコーン成分を炭素数12~18のアルキレンを有するジメトキシシランを含有するシリコーン成分に置き換えたアルミニウム部材保護剤である。評価は、アルカリ滴下性が、目視では確認できないが、実体顕微鏡では白い斑点(白錆)見られ、やや劣るものであった。試験例3は、ジメトキシシランであるため、三次元的ではなく、二次元的な架橋が多く形成され、被膜が緻密なものとならなかったものと推測される。その他の評価は、試験例1と同じであった。
【0059】
試験例4は、試験例1からシリコーン成分を炭素数12~18のアルキレンを有するトリエトキシシランを含有するシリコーン成分に置き換えたアルミニウム部材保護剤である。評価は、試験例1と同じであった。
【0060】
試験例5は、試験例1からシリコーン成分を炭素数12~18のアルキレンとその先端にメタクリロキシ基を有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分に置き換えたアルミニウム部材保護剤である。メタクリロキシ基による物性向上を期待したが、評価は、試験例1と同じであった。
【0061】
試験例6は、試験例1からシリコーン成分を炭素数12~18のアルキレンとその先端にグリシドキシ基を有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分に置き換えたアルミニウム部材保護剤である。評価は、試験例1と同じであったが、グリシドキシ基によって、被膜強度が向上していた。
【0062】
試験例7は、試験例1から有機溶媒のイソパラフィンを蒸留性状が140~180℃であるイソパラフィンに置き換えたアルミニウム部材保護剤である。評価は、試験例1と同じであったが、イソパラフィンの違いにより、若干、指触乾燥までの時間を要するものであった。
【0063】
試験例8は、試験例1にシリコーンオイル(動粘度(25℃):1mm2/s)を追加したアルミニウム部材保護剤である。評価は、仕上り評価が、シリコーンオイルによって、アルミニウム部材保護剤がレベリングし、保護被膜3の表面が均一な光沢を有し、良好なものであった。その他の評価は、試験例1と同じであった。
【0064】
試験例9は、試験例8からシリコーンオイルを動粘度(25℃)が5mm2/sであるものに置き換えたアルミニウム部材保護剤である。評価は、アルカリ滴下性が、目視では確認できないが、実体顕微鏡では白い斑点(白錆)が見られ、やや劣るものであった。動粘度(25℃)が5mm2/sであるシリコーンオイルの一部が揮発せずに被膜に残り、緻密な被膜が形成されなかったものと推測される。その他の評価は、試験例8と同じであった。
【0065】
試験例10は、試験例8からシリコーン成分を置き換えたアルミニウム部材保護剤である。シリコーン成分は、炭素数12~18のアルキレンを有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分と、炭素数12~18のアルキレンを有するジメトキシシランを含有するシリコーン成分を、1:1の比率で混合したものとした。評価は、試験例8と同じであった。
【0066】
試験例11は、試験例8からシリコーン成分を置き換えたアルミニウム部材保護剤である。シリコーン成分は、炭素数12~18のアルキレンを有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分と、炭素数12~18のアルキレンを有するジメトキシシランを含有するシリコーン成分を、7:17の比率で混合したものとした。評価は、アルカリ滴下性が、目視では確認できないが、実体顕微鏡では白い斑点(白錆)が見られ、やや劣るものであった。ジメトキシシランが多く、三次元的な架橋が多く形成されなかったものと推測される。その他の評価は、試験例8と同じであった。
【0067】
(試験例12~20)
試験例12~20は、2剤型(主剤と硬化剤)のアルミニウム部材保護剤である。試験例12~17が、含有させる原材料の変更を検討したものであり、試験例13及び18~20が、アルミニウム部材保護剤の塗布に用いる塗布具の変更を検討したものである。
【0068】
試験例12は、主剤が、炭素数12~18のアルキレンを有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分とシリコーンオイル(動粘度(25℃):1mm2/s)とを含有し、硬化剤が、有機溶媒としてのイソパラフィン(蒸留性状:80~140℃)と硬化触媒としてのチタンエチルアセトアセテートとを含有するものである。塗布作業直前に、主剤と硬化剤とを混合し、PBT筆(カートリッジ)で塗布作業を行なった。塗布作業性は、PBT筆での作業性に優れ、垂れがなく、塗装面の表面は均一なものであった。仕上り評価は、十分にレベリングし、保護被膜3の表面が均一な光沢を有していた。アルカリ滴下性は、実体顕微鏡で確認しても塗装面に変化が見られなく、良好なものであった。
【0069】
試験例13は、試験例12からシリコーン成分を炭素数12~18のアルキレンとその先端にメタクリロキシ基を有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分に置き換えたアルミニウム部材保護剤である。メタクリロキシ基による物性向上を期待したが、評価は、試験例12と同じであった。
【0070】
試験例14は、試験例12からシリコーン成分を炭素数12~18のアルキレンとその先端にグリシドキシ基を有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分に置き換えたアルミニウム部材保護剤である。評価は、試験例12と同じであったが、グリシドキシ基によって、被膜強度が向上していた。
【0071】
試験例15は、主剤が、炭素数12~18のアルキレンを有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分(モノマーとしてテトラメトキシシランをオリゴマーに対して5質量%含有)とシリコーンオイル(動粘度(25℃):1mm2/s)とを含有し、硬化剤が、有機溶媒としてのイソパラフィン(蒸留性状:140~180℃)と硬化触媒としてのアルミニウムトリスアセチルアセトネートとを含有するものである。塗布作業直前に、主剤と硬化剤とを混合し、PBT筆(カートリッジ)で塗布作業を行なった。塗布作業性は、PBT筆での作業性に優れ、垂れがなく、塗装面の表面は均一なものであった。仕上り評価は、十分にレベリングし、保護被膜3の表面が均一な光沢を有していた。アルカリ滴下性は、実体顕微鏡で確認しても塗装面に変化が見られなく、良好なものであった。また、シリコーン成分が、モノマーとしてテトラメトキシシランをオリゴマーに対して5質量%含有しているため、三次元網目状に形成される架橋の架橋密度が高められ、被膜強度が高められたものであった。
【0072】
試験例16は、試験例15からシリコーン成分を炭素数12~18のアルキレンとその先端にメタクリロキシ基を有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分(モノマーとしてテトラメトキシシランをオリゴマーに対して5質量%含有)に置き換えたアルミニウム部材保護剤である。メタクリロキシ基による物性向上を期待したが、評価は、試験例15と同じであった。
【0073】
試験例17は、試験例15からシリコーン成分を炭素数12~18のアルキレンとその先端にグリシドキシ基を有するトリメトキシシランを含有するシリコーン成分(モノマーとしてテトラメトキシシランをオリゴマーに対して5質量%含有)に置き換えたアルミニウム部材保護剤である。評価は、試験例15と同じであったが、グリシドキシ基によって、被膜強度がより高められていた。
【0074】
試験例18~20は、試験例13のアルミニウム部材保護剤を、塗布具を変えて評価を行なったものである。
【0075】
試験例18は、獣毛筆を用いて塗布を行ない、その評価を行なった。塗布作業性は、垂れがなく、塗装面の表面を均一に塗ることができたものの、塗装中に、カートリッジからアルミニウム部材保護剤を供給することができないため、PBT筆(カートリッジ)と比較すると、煩雑さを感じるものであった。その他の評価は、試験例13と同じであった。
【0076】
試験例19は、スポンジを用いて塗布を行ない、その評価を行なった。塗布作業性は、薄く塗ることができず、垂れが生じるものであった。このため、仕上がりは、不均一に被膜表面が凹凸状になっていた。しかしながら、アルカリ滴下性は、実体顕微鏡で確認しても塗装面に変化が見られなく、良好なものであり、アルミニウム部材保護剤としての性能は満たされていた。
【0077】
試験例20は、不織布を用いて塗布を行ない、その評価を行なった。塗布作業性は、薄く塗ることができず、垂れが生じるものであった。このため、仕上がりは、不均一に保護被膜3表面が凹凸状になっていた。しかしながら、アルカリ滴下性は、実体顕微鏡で確認しても塗装面に変化が見られなく、良好なものであり、アルミニウム部材保護剤としての性能は満たされていた。
【0078】
(試験例21)
試験例21は、対照(ブランク)である。試験例21は、表面がアルマイト処理されたアルミニウム板に、アルミニウム部材保護剤を塗布することなく、アルカリ滴下試験を行なったものである。アルカリ滴下試験の評価は、目視で白い斑点(白錆)が確認できた。
【0079】
実施形態のアルミニウム部材保護剤によれば、アルミニウム部材保護剤が有機溶媒を含有しているため、末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーが、有機溶媒で分散され、アルミニウム部材1に塗布された際に、アルミニウム部材1の表面を均一に被覆する。アルミニウム部材1の表面に塗布された末端多官能アルコキシシリル基を有するアルコキシオリゴマーは、互いの末端多官能アルコキシシリル基が加水分解縮合することによって、三次元的に架橋が進行する。三次元的に架橋したシリコーン成分は、アルミニウム部材1の表面を緻密に被覆する保護被膜3を形成し、アルミニウム部材1から白錆の発生原因物質を遮断する。このため、本明細書の実施形態に係るアルミニウム部材保護剤は、自動車などの車両の外装に使用されるアルミニウム部材1に生じる白錆の発生を抑制することができる。