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2023-178070眼科情報処理装置、眼科装置、眼科情報処理方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178070
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】眼科情報処理装置、眼科装置、眼科情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20231207BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A61B3/10
A61B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091120
(22)【出願日】2022-06-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月14日 第126回 日本眼科学会総会
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】大原 龍一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 潤
(72)【発明者】
【氏名】青木 弘幸
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA07
4C316AA09
4C316AA13
4C316AA24
4C316AB11
4C316AB16
4C316AB19
4C316FA08
4C316FA18
4C316FB05
4C316FB21
4C316FY05
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】被検眼の視度に応じて変化する被検眼の画像のアーチファクトを簡素な処理で除去するための新たな技術を提供する。
【解決手段】眼科情報処理装置は、眼科装置を用いて取得された被検眼の画像のアーチファクトを除去する。眼科情報処理装置は、特定部と、補正部とを含む。特定部は、被検眼の視度に基づいて、画像における補正領域を特定する。補正部は、被検眼の視度に対応した補正量に基づいて、特定部により特定された補正領域の輝度を補正する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科装置を用いて取得された被検眼の画像のアーチファクトを除去する眼科情報処理装置であって、
前記被検眼の視度に基づいて、前記画像における補正領域を特定する特定部と、
前記被検眼の視度に対応した補正量に基づいて、前記特定部により特定された前記補正領域の輝度を補正する補正部と、
を含む、眼科情報処理装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記画像におけるアーチファクトの位置、形状、及び強度を事前に算出することにより得られた視度毎のアーチファクト情報に基づいて、前記補正領域を特定し、
前記補正部は、前記視度毎のアーチファクト情報に基づいて、前記補正領域の輝度を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科情報処理装置。
【請求項3】
前記被検眼の視度に基づいて特定される2以上の視度のアーチファクト情報を、前記被検眼の視度に基づいて補間する補間部を含み、
前記特定部は、前記補間部により得られた補間アーチファクト情報に基づいて前記補正領域を特定し、
前記補正部は、前記補間アーチファクト情報に基づいて前記補正領域の輝度を補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の眼科情報処理装置。
【請求項4】
前記アーチファクトは、前記眼科装置に設けられた黒点により形成される黒点影であり、
前記補正部は、前記補正領域の輝度を上げる
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の眼科情報処理装置。
【請求項5】
前記アーチファクトは、前記眼科装置に設けられた対物レンズにより形成される中心ゴーストであり、
前記補正部は、前記補正領域の輝度を下げる
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の眼科情報処理装置。
【請求項6】
前記被検眼の視度と、前記眼科装置の光学系における光学的条件とに基づいて、前記画像における基準位置から前記被検眼の視度に応じて変化する前記基準位置のずれ分だけシフトした解析領域を特定する解析領域特定部と、
前記被検眼の視度に基づいて、前記補正領域の補正量を特定する補正量特定部と、
を含み、
前記補正部は、前記解析領域特定部により特定された前記解析領域において前記特定部により特定された前記補正領域の輝度を前記補正量に基づいて補正する
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の眼科情報処理装置。
【請求項7】
前記眼科装置は、光学系の光軸方向に移動可能な合焦レンズを含み、
前記特定部は、前記合焦レンズの光軸上の位置に基づいて前記被検眼の視度に対応した前記補正領域を特定し、
前記補正部は、前記合焦レンズの光軸上の位置に基づいて前記補正領域の輝度を補正する
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の眼科情報処理装置。
【請求項8】
前記被検眼に照明光を照射する照明光学系と、
前記被検眼からの前記照明光の戻り光を受光することにより前記被検眼の画像を取得する撮影光学系と、
前記撮影光学系により取得された前記画像のアーチファクトを除去する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の眼科情報処理装置と、
を含む、眼科装置。
【請求項9】
眼科装置を用いて取得された被検眼の画像のアーチファクトを除去する眼科情報処理方法であって、
前記被検眼の視度に基づいて、前記画像における補正領域を特定する特定ステップと、
前記被検眼の視度に対応した補正量に基づいて、前記特定ステップにおいて特定された前記補正領域の輝度を補正する補正ステップと、
を含む、眼科情報処理方法。
【請求項10】
前記特定ステップは、前記画像におけるアーチファクトの位置、形状、及び強度を事前に算出することにより得られた視度毎のアーチファクト情報に基づいて、前記補正領域を特定し、
前記補正ステップは、前記視度毎のアーチファクト情報に基づいて、前記補正領域の輝度を補正する
ことを特徴とする請求項9に記載の眼科情報処理方法。
【請求項11】
前記被検眼の視度に基づいて特定される2以上の視度のアーチファクト情報を、前記被検眼の視度に基づいて補間する補間ステップを含み、
前記特定ステップは、前記補間ステップにおいて得られた補間アーチファクト情報に基づいて前記補正領域を特定し、
前記補正ステップは、前記補間アーチファクト情報に基づいて前記補正領域の輝度を補正する
ことを特徴とする請求項10に記載の眼科情報処理方法。
【請求項12】
前記アーチファクトは、前記眼科装置に設けられた黒点により形成される黒点影であり、
前記補正ステップは、前記補正領域の輝度を上げる
ことを特徴とする請求項9~請求項11のいずれか一項に記載の眼科情報処理方法。
【請求項13】
前記アーチファクトは、前記眼科装置に設けられた対物レンズにより形成される中心ゴーストであり、
前記補正ステップは、前記補正領域の輝度を下げる
ことを特徴とする請求項9~請求項11のいずれか一項に記載の眼科情報処理方法。
【請求項14】
前記被検眼の視度と、前記眼科装置の光学系における光学的条件とに基づいて、前記画像における基準位置から前記被検眼の視度に応じて変化する前記基準位置のずれ分だけシフトした解析領域を特定する解析領域特定ステップと、
前記被検眼の視度に基づいて、前記補正領域の補正量を特定する補正量特定ステップと、
を含み、
前記補正ステップは、前記解析領域特定ステップにおいて特定された前記解析領域において前記特定ステップにおいて特定された前記補正領域の輝度を前記補正量に基づいて補正する
ことを特徴とする請求項9~請求項11のいずれか一項に記載の眼科情報処理方法。
【請求項15】
前記眼科装置は、光学系の光軸方向に移動可能な合焦レンズを含み、
前記特定ステップは、前記合焦レンズの光軸上の位置に基づいて前記被検眼の視度に対応した前記補正領域を特定し、
前記補正ステップは、前記合焦レンズの光軸上の位置に基づいて前記補正領域の輝度を補正する
ことを特徴とする請求項9~請求項11のいずれか一項に記載の眼科情報処理方法。
【請求項16】
コンピュータに、請求項9~請求項11のいずれか一項に記載の眼科情報処理方法の各ステップを実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科情報処理装置、眼科装置、眼科情報処理方法、及びプログラム
【背景技術】
【0002】
眼の診断には、眼科撮影装置等の眼科装置を用いて取得される被検眼の画像が有用である。眼科情報処理装置は、取得された被検眼の画像を解析することで、眼を診断するための補助的な情報を生成することができる。それにより、眼の診断精度を向上させることが可能になる。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3には、スリット状の光を用いて被検眼をパターン照明し、その戻り光をイメージセンサで検出することで、眼底画像を取得するように構成された眼科装置が開示されている。この眼科装置は、照明パターンと、イメージセンサによる受光タイミングとを調整することにより、簡素な構成で被検眼の眼底画像を取得することが可能である。
【0004】
このような眼科装置を用いて取得される画像には、眼科装置が備える光学系を構成する光学素子や光学系の配置等の装置由来のアーチファクトが描出されることが知られている。例えば、特許文献3には、対物レンズ等による照明光の反射光に起因したアーチファクトのみが描出された補正用画像を取得し、補正用画像に対して処理内容を変更しつつ変換処理を複数回実行することで複数の変換画像を取得し、取得された複数の変換画像のそれぞれと眼底画像との複数の差分画像のうちアーチファクトの影響が基準以下まで抑制された差分画像を探索し、探索された差分画像を高画質画像として取得する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7831106号明細書
【特許文献2】米国特許第8237835号明細書
【特許文献3】特開2021-104229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示された手法では、補正用画像を事前に取得する必要がある。それにより、アーチファクトを除去するための工程が増加する上に、アーチファクトを除去するための処理負荷が重くなるという問題がある。更に、アーチファクトの除去精度が補正用画像に描出されるアーチファクトの状態に依存してしまい、被検眼の視度によって変化するアーチファクトの除去精度が変化してしまう。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、被検眼の視度に応じて変化する被検眼の画像のアーチファクトを簡素な処理で除去するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の1つの態様は、眼科装置を用いて取得された被検眼の画像のアーチファクトを除去する眼科情報処理装置である。眼科情報処理装置は、前記被検眼の視度に基づいて、前記画像における補正領域を特定する特定部と、前記被検眼の視度に対応した補正量に基づいて、前記特定部により特定された前記補正領域の輝度を補正する補正部と、を含む。
【0009】
実施形態の別の態様は、前記被検眼に照明光を照射する照明光学系と、前記被検眼からの前記照明光の戻り光を受光することにより前記被検眼の画像を取得する撮影光学系と、前記撮影光学系により取得された前記画像のアーチファクトを除去する上記に記載の眼科情報処理装置と、を含む、眼科装置である。
【0010】
実施形態の更に別の態様は、眼科装置を用いて取得された被検眼の画像のアーチファクトを除去する眼科情報処理方法である。眼科情報処理方法は、前記被検眼の視度に基づいて、前記画像における補正領域を特定する特定ステップと、前記被検眼の視度に対応した補正量に基づいて、前記特定ステップにおいて特定された前記補正領域の輝度を補正する補正ステップと、を含む。
【0011】
実施形態の更に別の態様は、コンピュータに、上記に記載の眼科情報処理方法の各ステップを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、被検眼の視度に応じて変化する被検眼の画像のアーチファクトを簡素な処理で除去するための新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】実施形態に係る眼科システムの第1構成例を示す概略図である。
図1B】実施形態に係る眼科システムの第2構成例を示す概略図である。
図1C】実施形態に係る眼科システムの第3構成例を示す概略図である。
図1D】実施形態に係る眼科システムの第4構成例を示す概略図である。
図1E】実施形態に係る眼科システムの第5構成例を示す概略図である。
図2】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図3】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
図4】実施形態に係る眼科装置の構成の説明図である。
図5】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図6】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図7】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図8】実施形態に係る眼科装置の説明図である。
図9】実施形態に係る眼科装置の制御系の構成例を示す概略図である。
図10】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図11】実施形態に係る眼科装置の制御系の構成例を示す概略図である。
図12】実施形態に係る眼科装置の制御系の構成例を示す概略図である。
図13】実施形態に係る眼科装置の制御系の構成例を示す概略図である。
図14】実施形態に係る眼科装置の動作例のフロー図である。
図15A】実施形態に係る眼科装置の動作例の説明図である。
図15B】実施形態に係る眼科装置の動作例の説明図である。
図16】実施形態に係る眼科装置の動作例のフロー図である。
図17】実施形態に係る眼科装置の動作例のフロー図である。
図18A】実施形態に係る眼科装置の動作例の説明図である。
図18B】実施形態に係る眼科装置の動作例の説明図である。
図18C】実施形態に係る眼科装置の動作例の説明図である。
図18D】実施形態に係る眼科装置の動作例の説明図である。
図19】実施形態に係る眼科装置の動作例の説明図である。
図20】実施形態の変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係る眼科情報処理装置、眼科装置、眼科情報処理方法、及びプログラムの実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0015】
実施形態に係る眼科情報処理装置は、被検眼の画像に描出され被検眼の状態に応じて変化するアーチファクトの形状に対応した画像内の補正領域を被検眼の状態に基づいて特定し、被検眼の状態に対応した補正量で特定された補正領域を補正することが可能である。
【0016】
被検眼の状態の例として、被検眼の視度(屈折度)、被検眼の眼底の形状がある。被検眼の画像の例として、眼底画像(正面画像)、前眼部画像、後眼部画像、断層画像がある。
【0017】
アーチファクトの例として、被検眼の画像を取得する眼科装置由来のアーチファクトがある。眼科装置由来のアーチファクトは、眼科装置を構成する光学系における光学的条件(光学配置、光学素子の特性)に起因するアーチファクトを意味する。このようなアーチファクトの例として、黒点影、中心ゴーストがある。黒点影は、対物レンズからの反射に起因した反射ゴーストを除去するために光学系に配置された黒点(黒点板)が照明光の一部を遮ることで撮影画像内に映り込む影である。中心ゴーストは、対物レンズの光軸付近からの照明光の反射光が撮影画像内に映り込むゴースト又はアーチファクトである。黒点影は、被検眼の視度に応じて、位置、形状、及び強度(影の色、濃淡)が変化する。中心ゴーストは、被検眼の視度に応じて、位置、形状、及び強度(フレアの色、明るさ)が変化する。補正の例として、画素の輝度値を補正する輝度補正などがある。
【0018】
これにより、簡素な処理で、被検眼の状態に応じて変化するアーチファクトを高精度に除去したり、アーチファクトの影響を大幅に抑制したりすることが可能になる。
【0019】
いくつかの実施形態では、眼科情報処理装置は、画像内のアーチファクトの位置、形状、及び強度を特定するためのアーチファクト情報を視度毎に記憶しておき、被検眼の視度に対応したアーチファクト情報に基づいて画像内の補正領域を特定し、当該アーチファクト情報に基づいて補正領域の輝度を補正する。例えば、アーチファクト情報は、被検眼の画像を取得する眼科装置が備える光学系における光学的条件に対応したシミュレーション条件下で実行された光学シミュレーションを視度毎に事前に実行することにより算出される。例えば、アーチファクト情報は、被検眼の画像を取得する眼科装置を用いて視度毎に事前に測定することにより得られる。
【0020】
いくつかの実施形態では、被検眼の視度と、被検眼の画像を取得する眼科装置の光学系における光学的条件とに基づいて、画像における基準位置から被検眼の視度に応じて変化する基準位置のずれ分だけシフトした解析領域が特定される。画像における基準位置の例として、眼科装置の光学系の光軸に相当する位置、画像の中心位置などがある。例えば、補正領域は、特定された解析領域内で特定される。
【0021】
実施形態に係る眼科情報処理装置は、例えば、眼科撮影装置の機能を有する眼科装置から被検眼の画像を取得する。また、実施形態に係る眼科情報処理装置は、例えば、合焦制御が可能な眼科撮影装置の機能を有する眼科装置から被検眼の視度を取得することが可能である。この場合、眼科情報処理装置は、眼科装置における合焦制御結果、又は合焦制御結果に対応した視度を取得する。合焦制御結果の例として、光軸方向に移動可能な合焦レンズが合焦制御の結果として得られた合焦レンズの合焦位置がある。或いは、実施形態に係る眼科情報処理装置は、屈折力測定機能を有する眼科装置から被検眼の視度を取得してもよい。いくつかの実施形態では、眼科装置は、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能を有する。
【0022】
実施形態に係る眼科情報処理方法は、実施形態に係る眼科情報処理装置においてプロセッサ(コンピュータ)により実行される処理を実現するための1以上のステップを含む。実施形態に係るプログラムは、プロセッサに実施形態に係る眼科情報処理方法の各ステップを実行させる。実施形態に係る記録媒体(記憶媒体)は、実施形態に係るプログラムが記録(記憶)されたコンピュータより取り可能な非一時的な記録媒体(記憶媒体)である。
【0023】
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0024】
以下の実施形態では、主として、被検眼の視度に応じて変化するアーチファクトを除去する場合について説明する。しかしながら、視度以外の被検眼の状態に応じて変化するアーチファクトを除去する場合にも、以下の実施形態を適用することが可能である。
【0025】
<眼科システム>
実施形態に係る眼科システムは、少なくとも実施形態に係る眼科情報処理装置の機能を実現する。更に、眼科システムは、所定の通信手段を介して、被検眼の画像、及び被検眼の視度を含む視度情報を眼科情報処理装置に送信する1以上の眼科装置を含むことができる。被検眼の画像を眼科情報処理装置に送信する眼科装置は、例えば、特許文献1~特許文献3のいずれかに開示された構成を有する眼科撮影装置と同様の光学系を有する。被検眼の視度情報を眼科情報処理装置に送信する眼科装置は、例えば、合焦制御結果を視度情報として送信可能な眼科撮影装置、又は、特開昭61-293430号公報又は特開2010-259495号公報に開示されているような屈折力測定光学系の構成を有する屈折力測定装置と同様の光学系を有する。
【0026】
図1Aに、実施形態に係る眼科システムの第1構成例の機能ブロック図を示す。
【0027】
第1構成例に係る眼科システム1000は、眼科装置1を含む。眼科装置1は、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能と眼科撮影装置の機能とを実現する。
【0028】
眼科装置1は、光学系2と、制御部100と、データ処理部200とを含む。光学系2は、被検眼の画像を撮影するための光学系を含む。制御部100は、眼科装置1の各部(光学系2、データ処理部200)を制御する。制御部100の機能は、例えば、プロセッサにより実現される。データ処理部200は、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能を実現する。すなわち、データ処理部200は、被検眼の視度に基づいて、被検眼の画像に描出されたアーチファクトの形状に対応した画像内の補正領域を特定し、被検眼の視度に対応した補正量で補正領域を補正するアーチファクト除去処理を実行する。このようなデータ処理部200の機能は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0029】
光学系2は、照明光学系20と、撮影光学系40とを含む。照明光学系20は、光源からの照明光で被検眼を照明する。いくつかの実施形態では、照明光学系20は、光源を含む。撮影光学系40は、制御部100からの制御を受けて光軸方向に移動可能な合焦レンズを含み、被検眼からの照明光の戻り光を撮像装置に導く。制御部100は、合焦レンズに対する合焦制御結果から被検眼の視度を特定することが可能である。いくつかの実施形態では、撮影光学系40は、撮像装置を含む。
【0030】
このような眼科システム1000では、制御部100からの制御を受け、被検眼(撮影部位)に対する合焦制御が実行された後、光学系2を用いて被検眼の画像が取得される。具体的には、照明光学系20により被検眼が照明光で照明され、被検眼からの照明光の戻り光は、撮影光学系40において合焦レンズを通過して撮像装置により受光される。制御部100は、データ処理部200を制御して、上記の光学系2に対する合焦制御結果に対応した被検眼の視度に基づいて、光学系2を用いて取得された被検眼の画像に対する上記のアーチファクトの除去処理を実行させる。
【0031】
図1Bに、実施形態に係る眼科システムの第2構成例の機能ブロック図を示す。図1Bにおいて、図1Aと同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0032】
第2構成例に係る眼科システム1000aは、眼科装置1aと、屈折力測定装置300とを含む。眼科装置1aは、眼科装置1と同様に、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能と眼科撮影装置の機能とを実現する。屈折力測定装置300は、例えば、特開昭61-293430号公報、特開2010-259495号公報又は特開2017-42312号公報に開示されているような公知の方法で被検眼の視度(屈折力)を測定する。
【0033】
眼科装置1aが眼科装置1と異なる点は、眼科装置1aが屈折力測定装置300から被検眼の視度を取得する点である。すなわち、被検眼の画像と別途に被検眼の視度が取得される。
【0034】
このような眼科システム1000aでは、制御部100aからの制御を受け、光学系2を用いて被検眼の画像が取得される。制御部100aは、データ処理部200を制御して、屈折力測定装置300から取得された被検眼の視度に基づいて、光学系2を用いて取得された被検眼の画像に対する上記のアーチファクトの除去処理を実行させる。
【0035】
図1Cに、実施形態に係る眼科システムの第3構成例の機能ブロック図を示す。図1Cにおいて、図1Aと同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0036】
第3構成例に係る眼科システム1000bは、眼科装置1bを含む。眼科装置1bは、眼科装置1と同様に、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能と眼科撮影装置の機能とを実現する。
【0037】
眼科装置1bが眼科装置1と異なる点は、眼科装置1bの光学系2bが屈折力測定装置300の機能を実現する屈折力測定光学系60を含む点である。データ処理部200bは、データ処理部200の機能に加えて、例えば特開2017-42312号公報に開示されているような公知の方法で被検眼の屈折力(視度)を算出する。
【0038】
このような眼科システム1000bでは、制御部100bからの制御を受け、光学系2bを用いて被検眼の画像が取得されると共に被検眼の視度が算出される。制御部100bは、データ処理部200bを制御して、屈折力測定光学系60を用いて算出された被検眼の視度に基づいて、光学系2bを用いて取得された被検眼の画像に対する上記のアーチファクトの除去処理を実行させる。
【0039】
図1Dに、実施形態に係る眼科システムの第4構成例の機能ブロック図を示す。図1Dにおいて、図1Aと同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0040】
第4構成例に係る眼科システム1000cは、眼科装置1cと、眼科情報処理装置400とを含む。眼科装置1cは、眼科撮影装置の機能を実現する。眼科情報処理装置400は、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能を実現する。
【0041】
眼科装置1cは、光学系2と、制御部100cとを含む。光学系2は、照明光学系20と、撮影光学系40とを含む。制御部100cは、眼科装置1cの各部を制御する。制御部100cは、制御部100と同様に、撮影光学系40の合焦レンズに対する合焦制御結果から被検眼の視度を特定することが可能である。制御部100cの機能は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0042】
眼科情報処理装置400は、データ処理部200と同様に、被検眼の視度に基づいて、被検眼の画像に描出されたアーチファクトの形状に対応した画像内の補正領域を特定し、被検眼の視度に対応した補正量で補正領域を補正するアーチファクト除去処理を実行する。このような眼科情報処理装置400の機能は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0043】
このような眼科システム1000cでは、制御部100cからの制御を受け、被検眼(撮影部位)に対する合焦制御が実行された後、光学系2を用いて被検眼の画像が取得される。眼科情報処理装置400は、制御部100cにより実行された光学系2に対する合焦制御結果に対応した被検眼の視度に基づいて、光学系2を用いて取得された被検眼の画像に対する上記のアーチファクトの除去処理を実行する。
【0044】
図1Eに、実施形態に係る眼科システムの第5構成例の機能ブロック図を示す。図1Eにおいて、図1B又は図1Dと同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0045】
第5構成例に係る眼科システム1000dは、眼科装置1cと、屈折力測定装置300と、眼科情報処理装置400dとを含む。眼科情報処理装置400dは、眼科情報処理装置400と同様に、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能を実現する。
【0046】
眼科情報処理装置400dが眼科情報処理装置400と異なる点は、眼科情報処理装置400dが屈折力測定装置300から被検眼の視度を取得する点である。すなわち、被検眼の画像と別途に被検眼の視度が取得される。
【0047】
このような眼科システム1000dでは、制御部100cからの制御を受け、光学系2を用いて被検眼の画像が取得される。眼科情報処理装置400dは、屈折力測定装置300から取得された被検眼の視度に基づいて、眼科装置1cの光学系2を用いて取得された被検眼の画像に対する上記のアーチファクトの除去処理を実行させる。
【0048】
以下、実施形態に係る眼科情報処理装置、及び眼科装置について説明する。なお、以下の実施形態では、眼科装置が、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能を実現するものとする。
【0049】
<眼科装置>
以下、第1構成例に係る眼科装置を例に具体的に説明する。しかしながら、第2構成例~第5構成例において実現される実施形態に係る眼科情報処理装置の機能は、第1構成例と同様に実現することが可能である。
【0050】
例えば、実施形態に係る眼科装置は、スリットスキャン方式で被検眼の画像を取得する。具体的には、実施形態に係る眼科装置は、スリット状の照明光の照射位置(照射範囲)を移動させながら被検眼の所定部位を照明し、1次元的に又は2次元的に受光素子が配列されたイメージセンサを用いて所定部位からの戻り光を受光する。戻り光の受光結果は、照明光の照射位置の移動タイミングに同期して、照明光の照射位置に対応した戻り光の受光位置における受光素子から読み出される。いくつかの実施形態では、所定部位は、前眼部、又は後眼部である。前眼部には、角膜、虹彩、水晶体、毛様体、チン小帯などがある。後眼部には、硝子体、眼底又はその近傍(網膜、脈絡膜、強膜など)などがある。
【0051】
以下、実施形態に係る眼科装置が、主に、被検眼の眼底画像を取得し、眼底画像に描出された黒点影をアーチファクトとして除去する場合について説明する。
【0052】
[光学系の構成]
図2図4に、実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。図2は、実施形態に係る眼科装置1の光学系の構成例を表す。図3は、光軸Oの方向からみたときの図2の虹彩絞り21の構成例を模式的に表す。図4は、側面又は上面からみたときの図2の虹彩絞り21と図2のスリット22の構成例を表す。なお、図2では、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置である眼底共役位置をPとして図示され、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置である虹彩共役位置をQとして図示され、黒点と光学的に略共役な位置である黒点共役位置をRとして図示されている。図2図4において、図1Aと同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0053】
眼科装置1は、光源10と、照明光学系20と、光スキャナ30と、投影光学系35と、撮影光学系40と、撮像装置50とを含む。いくつかの実施形態では、照明光学系20は、光源10、光スキャナ30、及び投影光学系35の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、撮影光学系40は、撮像装置50を含む。いくつかの実施形態では、投影光学系35又は照明光学系20は、光スキャナ30を含む。
【0054】
(光源10)
光源10は、可視領域の光を発生する可視光源を含む。例えば、光源10は、420nm~700nmの波長範囲の中心波長を有する光を発生する。このような光源10は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、ハロゲンランプ、又はキセノンランプを含む。いくつかの実施形態では、光源10は、白色光源又はRGBの各色成分の光を出力可能な光源を含む。いくつかの実施形態では、光源10は、赤外領域の光又は可視領域の光を切り換えて出力することが可能な光源を含む。光源10は、眼底Ef及び虹彩のそれぞれと光学的に非共役な位置に配置される。
【0055】
いくつかの実施形態では、合焦状態において、被検眼Eからの戻り光の波長範囲(中心波長)にかかわらず被検眼Eからの戻り光が撮像装置50のイメージセンサ51の受光面に結像するように、後述の撮影光学系40は、光源10が出力する光の波長範囲(中心波長)に応じて戻り光の光路に対して挿脱可能な補正レンズ等の光学素子を含む。
【0056】
(照明光学系20)
照明光学系20は、光源10からの光を用いてスリット状の照明光を生成する。照明光学系20は、生成された照明光を光スキャナ30に導く。
【0057】
照明光学系20は、虹彩絞り21と、スリット22と、リレーレンズ23とを含む。光源10からの光は、虹彩絞り21に形成された開口部を通過し、スリット22に形成された開口部を通過し、リレーレンズ23を透過する。リレーレンズ23は、1以上のレンズを含む。リレーレンズ23を透過した光は、光スキャナ30に導かれる。
【0058】
(虹彩絞り21)
虹彩絞り21(具体的には、後述の開口部)は、被検眼Eの虹彩(瞳孔)と光学的に略共役な位置に配置可能である。虹彩絞り21には、光軸Oから離れた位置に1以上の開口部が形成されている。例えば、図3に示すように、虹彩絞り21には、光軸Oと中心とする円周方向に沿って所定の厚さを有する開口部21A、21Bが形成されている。虹彩絞り21に形成された開口部は、被検眼Eの虹彩における照明光の入射位置(入射形状)を規定する。例えば、図3に示すように開口部21A、21Bを形成することにより、光軸Oに被検眼Eの瞳孔中心が配置されたとき、瞳孔中心から偏心した位置(具体的には、瞳孔中心を中心とする点対称の位置)から照明光を眼内に入射させることが可能である。
【0059】
いくつかの実施形態では、図4に示すように、光源10と虹彩絞り21との間には、光学素子24が配置される。光学素子24は、虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能である。光学素子24は、光源からの光を偏向する。光学素子24は、虹彩絞り21に形成された開口部21A(又は開口部21B)とスリット22に形成された開口部とを結ぶ方向の光量分布が最大になるように光源10からの光を偏向する。このような光学素子の例として、プリズム、マイクロレンズアレイ、又はフレネルレンズなどがある。図4では、虹彩絞り21に形成された開口部ごとに光学素子24が設けられているが、1つの素子で虹彩絞り21に形成された開口部21A、21Bを通過する光を偏向するように構成されていてもよい。
【0060】
また、光源10と虹彩絞り21に形成された開口部との間の相対位置を変更することにより、虹彩絞り21に形成された開口部を通過する光の光量分布を変更することが可能である。
【0061】
(スリット22)
スリット22(具体的には、後述の開口部)は、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置に配置可能である。例えば、スリット22には、後述するイメージセンサ51からローリングシャッター方式で読み出されるライン方向(ロウ方向)に対応した方向に開口部が形成されている。スリット22に形成された開口部は、被検眼Eの眼底Efにおける照明光の照射パターンを規定する。
【0062】
スリット22は、移動機構(後述の移動機構22D)により照明光学系20の光軸方向に移動可能である。移動機構は、後述の制御部100からの制御を受け、スリット22を光軸方向に移動する。例えば、後述の制御部100は、被検眼Eの状態に応じて移動機構を制御する。これにより、被検眼Eの状態(具体的には、視度(屈折度)、眼底Efの形状)に応じてスリット22の位置を移動することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、スリット22は、被検眼Eの状態に応じて、光軸方向に移動されることなく開口部の位置及び形状の少なくとも1つを変更可能に構成される。このようなスリット22の機能は、例えば液晶シャッターにより実現される。
【0064】
虹彩絞り21に形成された開口部を通過した光源10からの光は、スリット22に形成された開口部を通過することによりスリット状の照明光として出力される。スリット状の照明光は、リレーレンズ23を透過して、光スキャナ30に導かれる。
【0065】
(光スキャナ30)
光スキャナ30は、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置される。光スキャナ30は、リレーレンズ23を透過するスリット状の照明光(スリット22に形成された開口部を通過したスリット状の光)を偏向する。具体的には、光スキャナ30は、被検眼Eの虹彩又はその近傍をスキャン中心位置として所定の偏向角度範囲内で偏向角度を変更しつつ、眼底Efの所定の照明範囲を順次に照明するためのスリット状の照明光を偏向し、投影光学系35に導く。光スキャナ30は、照明光を1次元的又は2次元的に偏向することが可能である。
【0066】
1次元的に偏向する場合、光スキャナ30は、所定の偏向方向を基準に所定の偏向角度範囲で照明光を偏向するガルバノスキャナを含む。2次元的に偏向する場合、光スキャナ30は、第1ガルバノスキャナと、第2ガルバノスキャナとを含む。第1ガルバノスキャナは、照明光学系20の光軸に直交する水平方向に照明光の照射位置を移動するように照明光を偏向する。第2ガルバノスキャナは、照明光学系20の光軸に直交する垂直方向に照明光の照射位置を移動するように、第1ガルバノスキャナにより偏向された照明光を偏向する。光スキャナ30による照明光の照射位置を移動するスキャン態様としては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャンなどがある。
【0067】
(投影光学系35)
投影光学系35は、光スキャナ30により偏向された照明光を被検眼Eの眼底Efに導く。実施形態では、投影光学系35は、後述の光路結合部材としての穴鏡45により撮影光学系40の光路と結合された光路を介して、光スキャナ30により偏向された照明光を眼底Efに導く。
【0068】
投影光学系35は、リレーレンズ41、黒点(黒点板)42、反射ミラー43、リレーレンズ44を含む。リレーレンズ41、44のそれぞれは、1以上のレンズを含む。いくつかの実施形態では、投影光学系35は、更に、フォーカス指標光学系36を含む。
【0069】
(黒点42)
黒点42は、対物レンズ46のレンズ表面で照明光が反射されることにより形成される中心ゴーストの位置と光学的に略共役な位置に配置される。図2の構成では、黒点42は、対物レンズ46のレンズ表面からの照明光の反射光によって形成される穴鏡45の像(撮影絞り像)の位置と光学的に略共役な位置に配置される。
【0070】
(フォーカス指標光学系36)
フォーカス指標光学系36は、被検眼Eの眼底Efにフォーカス指標を投影する。例えば、フォーカス指標光学系36は、フォーカス指標光源と、スプリット指標板と、2孔絞りと、指標投影レンズとを含む。
【0071】
フォーカス指標光源から出力された光(フォーカス光)は、スプリット視標板により2つの光束に分離され、2孔絞りを通過し、指標投影レンズにより、被検眼Eの眼底Efに投影される。フォーカス調整を行う際には、例えば、投影光学系35(照明光学系20)の光路上(例えば、リレーレンズ41と黒点42との間)に反射棒の反射面が斜設され、指標投影レンズを通過したフォーカス指標光が照明光と同様の光路を経由して、被検眼Eの眼底Efに投影される。反射棒は、例えば、投影光学系35の光路上の眼底共役位置Pに配置可能であってよい。
【0072】
フォーカス指標光の眼底反射光は、穴鏡45に形成された孔部を通過して、撮像装置50のイメージセンサ51により検出される。イメージセンサ51による受光像(スプリット指標)は、図示しない表示手段に表示される。例えば、後述の制御部100は、シャイネルの原理に従ってスプリット指標の位置を解析して後述の合焦レンズ47及びフォーカス指標光学系36のそれぞれを光軸方向に移動させてピント合わせを行う(オートフォーカス機能)。また、スプリット指標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
【0073】
このような投影光学系35では、光スキャナ30により偏向された照明光は、リレーレンズ41を透過し、黒点42を通過し、反射ミラー43により穴鏡45に向けて反射される。フォーカス調整を行う際には、照明光の光路に対して斜設された反射棒の反射面で反射されたフォーカス指標光学系36からのフォーカス指標光は、黒点42を通過し、反射ミラー43により穴鏡45に向けて反射される。
【0074】
(撮影光学系40)
撮影光学系40は、投影光学系35を導かれてきた照明光(又はフォーカス指標光)を被検眼Eの眼底Efに導くと共に、眼底Efからの照明光の戻り光(又はフォーカス指標光の眼底反射光)を撮像装置50に導く。
【0075】
撮影光学系40では、投影光学系35からの照明光の光路と、眼底Efからの照明光の戻り光の光路とが結合される。これらの光路を結合する光路結合部材として穴鏡45を用いることで、照明光とその戻り光とを瞳分割することが可能である。
【0076】
撮影光学系40は、穴鏡45、対物レンズ46、合焦レンズ47、リレーレンズ48、及び結像レンズ49を含む。リレーレンズ48のそれぞれは、1以上のレンズを含む。
【0077】
(穴鏡45)
穴鏡45には、撮影光学系40の光軸に配置される孔部が形成される。穴鏡45の孔部は、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置される。穴鏡45は、孔部の周辺領域において、投影光学系35からの照明光を対物レンズ46に向けて反射する。このような穴鏡45は、撮影絞りとして機能する。
【0078】
すなわち、穴鏡45は、照明光学系20(投影光学系35)の光路と孔部を通過する光軸の方向に配置された撮影光学系40の光路とを結合すると共に、孔部の周辺領域において反射された照明光を眼底Efに導くように構成される。
【0079】
(合焦レンズ47)
合焦レンズ47は、図示しない移動機構により撮影光学系40の光軸方向に移動可能である。移動機構は、後述の制御部100からの制御を受け、合焦レンズ47を光軸方向に移動する。これにより、被検眼Eの状態に応じて、穴鏡45の孔部を通過した照明光の戻り光を撮像装置50のイメージセンサ51の受光面に結像させることができる。
【0080】
このような撮影光学系40では、投影光学系35からの照明光(又はフォーカス指標光)は、穴鏡45に形成された孔部の周辺領域において対物レンズ46に向けて反射される。穴鏡45の周辺領域において反射された照明光は、対物レンズ46により屈折されて、被検眼Eの瞳孔を通じて眼内に入射し、被検眼Eの眼底Efを照明する。同様に、穴鏡45の周辺領域において反射されたフォーカス指標光は、対物レンズ46により屈折されて、被検眼Eの瞳孔を通じて眼内に入射し、被検眼Eの眼底Efに投影される。
【0081】
眼底Efからの照明光の戻り光(又はフォーカス指標光の眼底反射光)は、対物レンズ46により屈折され、穴鏡45の孔部を通過し、合焦レンズ47を透過し、リレーレンズ48を透過し、結像レンズ49により撮像装置50のイメージセンサ51の受光面に結像される。
【0082】
(撮像装置50)
撮像装置50は、撮影光学系40を通じて被検眼Eの眼底Efから導かれてきた照明光の戻り光を受光するイメージセンサ51を含む。撮像装置50は、後述の制御部100からの制御を受け、戻り光の受光結果の読み出し制御を行うことが可能である。
【0083】
(イメージセンサ51)
イメージセンサ51は、ピクセル化された受光器としての機能を実現する。イメージセンサ51の受光面(検出面、撮像面)は、眼底Efと光学的に略共役な位置に配置可能である。
【0084】
イメージセンサ51による受光結果は、後述の制御部100からの制御を受け、ローリングシャッター方式により読み出される。
【0085】
このようなイメージセンサ51は、CMOSイメージセンサを含む。この場合、イメージセンサ51は、ロウ方向に配列された複数のピクセル(受光素子)群がカラム方向に配列された複数のピクセルを含む。具体的には、イメージセンサ51は、2次元的に配列された複数のピクセルと、複数の垂直信号線と、水平信号線とを含む。各ピクセルは、フォトダイオード(受光素子)と、キャパシタとを含む。複数の垂直信号線は、ロウ方向(水平方向)に直交するカラム方向(垂直方向)のピクセル群毎に設けられる。各垂直信号線は、受光結果に対応した電荷が蓄積されたピクセル群と選択的に電気的に接続される。水平信号線は、複数の垂直信号線と選択的に電気的に接続される。各ピクセルは、戻り光の受光結果に対応した電荷を蓄積し、蓄積された電荷は、例えばロウ方向のピクセル群毎に順次読み出される。例えば、ロウ方向のライン毎に、各ピクセルに蓄積された電荷に対応した電圧が垂直信号線に供給される。複数の垂直信号線は、選択的に水平信号線と電気的に接続される。垂直方向に順次に上記のロウ方向のライン毎の読み出し動作を行うことで、2次元的に配列された複数のピクセルの受光結果を読み出すことが可能である。
【0086】
このようなイメージセンサ51に対してローリングシャッター方式で戻り光の受光結果を取り込む(読み出す)ことにより、ロウ方向に延びる所望の仮想的な開口形状に対応した受光像が取得される。このような制御については、例えば、米国特許第8237835号明細書等に開示されている。
【0087】
図5に、実施形態に係る眼科装置1の動作説明図を示す。図5は、眼底Efに照射されるスリット状の照明光の照射範囲IPと、イメージセンサ51の受光面SRにおける仮想的な開口範囲OPとを模式的に表す。
【0088】
例えば、後述の制御部100は、照明光学系20により形成されたスリット状の照明光を光スキャナ30を用いて偏向する。それにより、眼底Efにおいて、スリット状の照明光の照射範囲IPがスリット方向(例えば、ロウ方向、水平方向)と直交する方向(例えば、垂直方向)に順次に移動される。
【0089】
イメージセンサ51の受光面SRでは、後述の制御部100によって読み出し対象のピクセルをライン単位で変更することによって、仮想的な開口範囲OPが設定される。開口範囲OPは、受光面SRにおける照明光の戻り光の受光範囲IP´又は受光範囲IP´より広い範囲であることが望ましい。後述の制御部100は、照明光の照射範囲IPの移動制御に同期して、開口範囲OPの移動制御を実行する。それにより、不要な散乱光の影響を受けることなく、簡素な構成で、コントラストが強い眼底Efの高画質の画像を取得することが可能である。
【0090】
図6及び図7に、イメージセンサ51に対するローリングシャッター方式の制御タイミングの一例を模式的に示す。図6は、イメージセンサ51に対する読み出し制御のタイミングの一例を表す。図7は、照明光の照射範囲IP(受光範囲IP´)の移動制御タイミングを図6の読み出し制御タイミングに重畳させて表したものである。図6及び図7において、横軸はイメージセンサ51のロウ数、縦軸は時間を表す。
【0091】
なお、図6及び図7では、説明の便宜上、イメージセンサ51のロウ数が1920であるものとして説明するが、実施形態に係る構成はロウ数に限定されるものではない。また、図7において、説明の便宜上、スリット状の照明光のスリット幅(ロウ方向の幅)が40ロウ分であるものとする。
【0092】
ロウ方向の読み出し制御は、リセット制御と、露光制御と、電荷転送制御と、出力制御とを含む。リセット制御は、ロウ方向のピクセルに蓄積されている電荷の蓄積量を初期化する制御である。露光制御は、フォトダイオードに光を当てて、受光量に対応した電荷をキャパシタに蓄積させる制御である。電荷転送制御は、ピクセルに蓄積された電荷量を垂直信号線に転送する制御である。出力制御は、複数の垂直信号線に蓄積された電荷量を水平信号線を介して出力する制御である。すなわち、図6に示すように、ロウ方向のピクセルに蓄積された電荷量の読み出し時間Tは、リセット制御に要する時間Tr、露光制御に要する時間(露光時間)Te、電荷転送制御に要する時間Tc、出力制御に要する時間Toutの和である。
【0093】
図6では、ロウ単位で読み出し開始タイミング(時間Tcの開始タイミング)をシフトさせることで、イメージセンサ51における所望の範囲のピクセルに蓄積された受光結果(電荷量)が取得される。例えば、図6に示すピクセル範囲が1フレーム分の画像である場合、フレームレートFRが一意に決まる。
【0094】
この実施形態では、複数のロウ数分のスリット幅を有する照明光の眼底Efにおける照射位置を、眼底Efにおいてカラム方向に対応する方向に順次にシフトさせる。
【0095】
例えば、図7に示すように、所定のシフト時間Δt毎に、照明光の眼底Efにおける照射位置をカラム方向に対応する方向にロウ単位でシフトさせる。シフト時間Δtは、イメージセンサ51におけるピクセルの露光時間Teを照明光のスリット幅(例えば、40)で分割することにより得られる(Δt=Te/40)。この照射位置の移動タイミングに同期させて、シフト時間Δt単位でロウ毎にピクセルの各ロウの読み出し開始タイミングを遅延させて開始させる。これにより、簡素な制御で、且つ、短時間に、コントラストが強い眼底Efの高画質の画像を取得することが可能になる。
【0096】
いくつかの実施形態では、イメージセンサ51は、1以上のラインセンサにより構成される。
【0097】
以上のような構成を有する眼科装置1において、中心ゴーストを除去するために配置された黒点42が、眼底Efを均一に照明するための照明光の一部を遮ることで、眼底画像に黒点影と呼ばれるアーチファクトが発生する場合がある。特に、黒点影の形状、強度(影の濃さ)、及び眼底画像内の発生位置は、照明光束の広がり具合に応じて変化する。
【0098】
図8に、照明光束の広がりの変化に対する黒点影の形状、及び濃さの変化を模式的に示す。図8において、横軸は、照明光の広がり対応するディオプタ位置を表す。
【0099】
黒点共役位置である位置p1では、黒点42の像そのものが黒点影となり、黒点影の濃さが最も濃い。位置p1から離れるほど照明光束が広がるため、黒点影の画像内の位置、形状、及び濃さが変化する。例えば、眼底共役位置である位置p2では、黒点影の径が大きくなり、黒点影の濃さが薄くなる。更に、照明光束が広がると、虹彩絞り21に形成された開口部21A、21Bに対応した2つの像に分離して影の形状が変化していく。虹彩共役位置である位置p3では、影の濃さが薄い2つの黒点影となる。図8では図示されないが、照明光束の広がり具合に応じて、眼底画像内の黒点影の位置も変化する。
【0100】
すなわち、被検眼の視度に応じて照明光束の広がり具合が変化するため、被検眼の視度に応じて、黒点影の画像内の位置、形状、及び強度が変化する。照明光束の広がり具合は光学系における光学的条件で決定されるため、黒点42の形状(黒点径)及び被検眼の視度が既知であれば、眼底画像内の黒点影の位置、形状、及び強度を特定することが可能である。眼底画像内で特定された黒点影の位置、形状、及び強度に応じて、画素の輝度値を高くするように補正することで、黒点影を高精度に除去したり、黒点影の影響を大幅に低減したりすることが可能になる。
【0101】
同様に、アーチファクトが中心ゴーストである場合でも、被検眼の視度に応じて照明光束の広がり具合が変化するため、被検眼の視度に応じて、眼底画像内の中心ゴーストの位置、形状、及び強度が変化する。照明光束の広がり具合は光学系における光学的条件で決定されるため、眼底画像内で特定された中心ゴーストの位置、形状、及び強度に応じて、画素の輝度値を低くするように補正することで、中心ゴーストを高精度に除去したり、中心ゴーストの影響を大幅に低減したりすることが可能になる。
【0102】
[制御系の構成]
図9に、実施形態に係る眼科装置1の制御系の構成例のブロック図を示す。図9において、図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0103】
図9に示すように、眼科装置1の制御系(処理系)は、制御部100を中心に構成されている。なお、制御系の構成の少なくとも一部が眼科装置1に含まれていてもよい。
【0104】
(制御部100)
制御部100は、眼科装置1の各部を制御する。制御部100は、主制御部101と、記憶部102とを含む。主制御部101は、プロセッサを含み、記憶部102に記憶されたプログラムに従って処理を実行することで、眼科装置1の各部の制御処理を実行する。
【0105】
(主制御部101)
主制御部101は、光源10、移動機構10Dの制御、照明光学系20の制御、フォーカス指標光学系36の制御、光スキャナ30の制御、撮影光学系40の制御、撮像装置50の制御、及びデータ処理部200の制御を行う。
【0106】
光源10の制御には、光源の点灯や消灯(又は光の波長領域)の切り替え、光源の光量の変更制御が含まれる。
【0107】
移動機構10Dは、公知の機構により、光源10の位置及び向きの少なくとも1つを変更する。主制御部101は、虹彩絞り21及びスリット22に対する光源10の相対位置及び相対向きの少なくとも1つを変更することが可能である。
【0108】
照明光学系20の制御には、移動機構22Dの制御が含まれる。移動機構22Dは、スリット22を照明光学系20の光軸方向に移動する。主制御部101は、被検眼Eの状態に応じて移動機構22Dを制御することにより、被検眼Eの状態に対応した位置にスリット22を配置する。被検眼Eの状態として、眼底Efの形状、視度(屈折度)、眼軸長などがある。視度は、例えば、後述するフォーカス指標光学系36と合焦レンズ47とを用いた合焦制御により合焦状態と判断されたときの合焦レンズ47の光軸上の位置から特定可能である。或いは、視度は、例えば、特開昭61-293430号公報又は特開2010-259495号公報に開示されているような公知の眼屈折力測定装置から取得可能である。眼軸長は、公知の眼軸長測定装置、又は光干渉断層計の測定値から取得可能である。
【0109】
例えば、視度に対して照明光学系20の光軸におけるスリット22の位置があらかじめ関連付けられた第1制御情報が記憶部102に記憶されている。主制御部101は、第1制御情報を参照して視度に対応したスリット22の位置を特定し、特定された位置にスリット22が配置されるように移動機構22Dを制御する。
【0110】
ここで、スリット22の移動に伴い、スリット22に形成された開口部を通過する光の光量分布が変化する。このとき、上記のように、主制御部101は、移動機構10Dを制御することにより、光源10の位置及び向きを変更することが可能である。
【0111】
図10に、実施形態に係る主制御部101の制御内容の説明図を示す。図10は、側面又は上面からみたときの光源10、虹彩絞り21、スリット22との位置関係を模式的に表したものである。図10において、図2図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0112】
上記のように、被検眼Eの状態に応じて、移動前のスリット22´の位置からスリット22の位置が移動される。これにより、スリット22に形成された開口部を通過する光の光量分布が変化する。
【0113】
このとき、主制御部101が移動機構10Dを制御することにより、虹彩絞り21と光源10との相対位置が変化する。虹彩絞り21に形成された開口部21A、21Bと光源10との相対位置を変更することで、開口部21A、21Bを通過する光の光量分布が変更される。更に、スリット22に形成された開口部における、虹彩絞り21の開口部21A、21Bを通過した光の光量分布が変更される。
【0114】
主制御部101は、被検眼Eの状態としての被検眼Eの視度、スリット22の移動後の位置(又は基準位置に対するスリット22の移動方向及び移動量)に基づいて移動機構10Dを制御することが可能である。
【0115】
例えば、視度、スリット22の移動後の位置(又は基準位置に対するスリット22の移動方向及び移動量)に対して光源10の位置及び向きの少なくとも1つがあらかじめ関連付けられた第2制御情報が記憶部102に記憶されている。主制御部101は、第2制御情報を参照して、視度又はスリット22の移動後の位置に対応した光源10の位置及び向きの少なくとも1つを特定し、特定された位置又は向きに光源10が配置されるように移動機構10Dを制御する。
【0116】
図9において、光スキャナ30の制御には、スキャン範囲(スキャン開始位置及びスキャン終了位置)及びスキャン速度の制御が含まれる。
【0117】
フォーカス指標光学系36の制御には、フォーカス指標光源の制御、フォーカス指標光学系36からフォーカス指標光の光路を投影光学系35の光路に結合するための上記の反射棒の挿入制御(及び退避制御)が含まれる。
【0118】
フォーカス指標光源の制御には、フォーカス指標光源の点灯や消灯の切り替え、光源の光量の変更制御が含まれる。反射棒の挿脱制御には、フォーカス調整を行うときに図示しない移動機構を制御して投影光学系35の光路に対して反射棒の反射面を配置する制御、フォーカス調整を行わないとき図示しない移動機構を制御して投影光学系35の光路から反射棒の反射面を退避させる制御が含まれる。
【0119】
撮影光学系40の制御には、移動機構47Dの制御(合焦制御)が含まれる。移動機構47Dは、合焦レンズ47を撮影光学系40の光軸方向に移動する。主制御部101は、イメージセンサ51を用いて取得された画像の解析結果に基づいて移動機構47Dを制御することが可能である。例えば、フォーカス調整を行うとき、主制御部101は、上記のようにフォーカス指標光学系36を制御してフォーカス指標光を被検眼Eの眼底Efに投影させ、イメージセンサ51を用いて取得された画像に描出された2つのスプリット指標像を特定し、特定された2つのスプリット指標像の位置関係からシャイネルの原理に従って移動機構47Dを制御する。いくつかの実施形態では、主制御部101は、フォーカス指標光学系36を用いることなく、イメージセンサ51を用いて取得された画像を解析して合焦状態を特定し、特定された合焦状態に応じて移動機構47Dを制御する。また、主制御部101は、後述の操作部110を用いたユーザの操作内容に基づいて移動機構47Dを制御することが可能である。
【0120】
撮像装置50の制御には、イメージセンサ51の制御(ローリングシャッター制御)が含まれる。イメージセンサ51の制御には、リセット制御、露光制御、電荷転送制御、出力制御などが含まれる。また、リセット制御に要する時間Tr、露光制御に要する時間(露光時間)Te、電荷転送制御に要する時間Tc、出力制御に要する時間Tout等を変更することが可能である。
【0121】
データ処理部200の制御には、イメージセンサ51から取得された受光結果に対する各種の画像処理や解析処理が含まれる。画像処理には、受光結果に対するノイズ除去処理、受光結果に基づく受光像に描出された所定の部位を識別しやすくするための輝度補正処理がある。解析処理には、上記の合焦制御のためのスプリット指標像の特定処理及びシャイネルの原理に従った合焦レンズ47(移動機構47D)に対する制御結果の特定処理、合焦状態の特定処理などがある。合焦レンズ47(移動機構47D)に対する制御結果の特定処理には、合焦レンズ47の光軸上の位置の特定処理などがある。合焦状態の特定処理には、画像のコントラストに基づく合焦レンズ47の制御結果の特定処理、画像内で最も明るい領域の明るさに基づく合焦レンズ47の制御結果の特定処理などがある。
【0122】
データ処理部200は、主制御部101(制御部100)からの制御を受けてローリングシャッター方式によりイメージセンサ51から読み出された受光結果に基づいて、任意の開口範囲に対応した受光像を形成することが可能である。データ処理部200は、開口範囲に対応した受光像を順次に形成し、形成された複数の受光像から被検眼Eの画像を形成することが可能である。
【0123】
データ処理部200は、プロセッサを含み、記憶部等に記憶されたプログラムに従って処理を行うことで、上記の機能を実現する。
【0124】
いくつかの実施形態では、光源10は、2以上の光源を含む。この場合、2以上の光源のそれぞれは、虹彩絞り21に形成された2以上の開口部に対応して設けられる。主制御部101は、2以上の光源のそれぞれに対応して設けられた移動機構を制御することにより、各光源の位置及び向き(光量分布が最大になる方向の向き)の少なくとも1つを変更することが可能である。
【0125】
いくつかの実施形態では、光学素子24は、虹彩絞り21に形成された開口部に対して、位置及び向きの少なくとも1つを変更可能である。例えば、主制御部101は、光学素子24を移動させる移動機構を制御することにより、位置及び向きの少なくとも1つを変更することが可能である。
【0126】
(記憶部102)
記憶部102は、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。コンピュータプログラムには、眼科装置1を制御するための演算プログラムや制御プログラムが含まれる。
【0127】
この実施形態では、記憶部102には、視度毎に事前に算出されたアーチファクト情報を記憶する。アーチファクト情報は、眼底画像内に描出された黒点影の位置、形状、及び強度の少なくとも1つを特定するための情報である。
【0128】
いくつかの実施形態では、アーチファクト情報は、眼科装置の機種(光学系の構成が実質的に同一の眼科装置)毎に共用される第1アーチファクト情報と、眼科装置毎に用いられる第2アーチファクト情報とを含む。第1アーチファクト情報の例として、眼底画像内のアーチファクトの形状、及び強度を特定するための情報がある。第2アーチファクト情報の例として、眼底画像内のアーチファクトの位置を特定するための情報がある。第1アーチファクト情報は、被検眼の画像を取得する眼科装置の機種に共通のパラメータであるものとし、同一機種の複数の眼科装置によって共用されることが望ましい。第2アーチファクト情報は、眼科装置固有のパラメータであるものとし、眼科装置毎に用意されることが望ましい。
【0129】
アーチファクト情報は、眼底画像を取得する眼科装置の光学系における光学的条件に対応したシミュレーション条件下でシミュレーションを視度毎に事前に実行することにより得られる。いくつかの実施形態では、アーチファクト情報は、眼底画像を取得する眼科装置を用いて事前に視度毎に測定することにより得られる。
【0130】
例えば、記憶部102は、「-10D(ディオプタ)」から「+10D」の間の「2D」毎の11種類のアーチファクト情報を記憶する。この場合、被検眼Eの視度に対応した2以上のアーチファクト情報を特定し、特定された2以上のアーチファクト情報を補間することで得られた補間アーチファクト情報を、被検眼Eの視度に関連付けられたアーチファクト情報として特定することが可能である。
【0131】
(操作部110)
操作部110は、操作デバイス又は入力デバイスを含む。操作部110には、眼科装置1に設けられたボタンやスイッチ(たとえば操作ハンドル、操作ノブ等)や、操作デバイス(マウス、キーボード等)が含まれる。また、操作部110は、トラックボール、操作パネル、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてよい。
【0132】
(表示部120)
表示部120は、データ処理部200により生成された被検眼Eの画像を表示させる。表示部120は、LCD(Liquid Crystal Display)等のフラットパネルディスプレイなどの表示デバイスを含んで構成される。また、表示部120は、眼科装置1の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0133】
なお、操作部110と表示部120は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。例えばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部110は、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部110に対する操作内容は、電気信号として制御部100に入力される。また、表示部120に表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部110とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。いくつかの実施形態では、表示部120及び操作部110の機能は、タッチスクリーンにより実現される。
【0134】
(データ処理部200の構成例)
データ処理部200は、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能を実現する。
【0135】
図11図13に、図9のデータ処理部200の構成例を示す。図11は、図9のデータ処理部200の機能ブロック図を表す。図12は、図11のアーチファクト情報生成部210の機能ブロック図を表す。図13は、図11のアーチファクト除去処理部220の機能ブロック図を表す。
【0136】
図11に示すように、データ処理部200は、アーチファクト情報生成部210と、アーチファクト除去処理部220とを含む。アーチファクト情報生成部210は、アーチファクト除去処理部220によるアーチファクト除去処理の実行前にアーチファクト情報を生成する。アーチファクト除去処理部220は、アーチファクト情報生成部210により次元に生成されたアーチファクト情報を用いて、被検眼Eの眼底画像に対してアーチファクト除去処理を実行する。
【0137】
図12に示すように、アーチファクト情報生成部210は、光学シミュレーション処理部211と、正規化部212と、サイズ調整部213とを含む。
【0138】
光学シミュレーション処理部211は、図2に示す眼科装置1の光学系(図1Aの光学系2)における光学的条件を模したシミュレーション条件下で視度毎に光学シミュレーションを実行して、黒点像の位置、形状、及び強度を表すシミュレーションデータを視度毎に生成する。眼科装置1の光学系には、光源10、照明光学系20、光スキャナ30、投影光学系35、撮影光学系40、及び撮像装置50が含まれる。
【0139】
正規化部212は、視度毎に生成されたシミュレーションデータを正規化する。正規化の例として、各シミュレーションデータにおける強度の最大値を「1」にする処理などがある。
【0140】
サイズ調整部213は、正規化部212により正規化され視度に応じて黒点像のサイズが異なるシミュレーションデータを、イメージセンサ51の受光面(撮像面)における黒点像を表すようにサイズ調整を行う。
【0141】
図13に示すように、アーチファクト除去処理部220は、アーチファクト情報特定部221と、補間部222と、解析領域特定部223と、補正領域特定部224と、補正量特定部225と、補正部226とを含む。
【0142】
アーチファクト情報特定部221は、記憶部102にあらかじめ格納されている視度毎のアーチファクト情報から、被検眼Eの視度に対応した1以上のアーチファクト情報を特定する。被検眼Eの視度は、上記のように、合焦制御の結果として合焦状態と判断されたときの合焦レンズ47の光軸上の位置(又は、移動機構47Dを移動するアクチュエータの制御結果)、又は、外部の屈折力測定装置における測定結果から特定可能である。
【0143】
記憶部102に格納されている視度毎のアーチファクト情報のうち、被検眼Eの視度に関連付けられたアーチファクト情報が格納されているとき、アーチファクト情報特定部221は、被検眼Eの視度に関連付けられたアーチファクト情報を特定する。記憶部102に格納されている視度毎のアーチファクト情報のうち、被検眼Eの視度に関連付けられたアーチファクト情報が格納されていないとき、アーチファクト情報特定部221は、記憶部102に格納されている視度毎のアーチファクト情報のうち、被検眼Eの視度を中間とする2以上の視度のそれぞれに対応した2以上のアーチファクト情報を特定する。
【0144】
アーチファクト情報特定部221は、記憶部102に記憶されている第1視度に関連付けられたアーチファクト情報に基づいて所定の近似式に従って第2視度に関連付けられたアーチファクト情報を特定してもよい。
【0145】
アーチファクト情報特定部221により被検眼Eの視度に関連付けられたアーチファクト情報が特定されたとき、補間部222は、アーチファクト情報の補間処理を行わない。アーチファクト情報特定部221により被検眼Eの視度を中間とする2以上のアーチファクト情報が特定されたとき、補間部222は、特定された2以上のアーチファクト情報に対して補間処理を行い、被検眼Eの視度に関連付けられた補間アーチファクト情報を生成する。2以上のアーチファクト情報の補間処理の例として、重み付け平均化、線形補間(内挿又は外挿)、ラグランジュ補間、スプライン補間などがある。例えば、被検眼Eの視度が「-5D」のとき、「-4D」に対応した第1アーチファクト情報と「-6D」に対応した第2アーチファクト情報とを記憶部102から読み出し、読み出された第1アーチファクト情報と第2アーチファクト情報とに対して重み付け平均化して得られた補間アーチファクト情報を、「-5D」に関連付けられたアーチファクト情報として特定することができる。
【0146】
解析領域特定部223は、アーチファクト情報特定部221により特定されたアーチファクト情報、又は補間部222により得られた補間アーチファクト情報に基づいて、被検眼Eの眼底画像における解析領域を特定する。具体的には、解析領域特定部223は、アーチファクト情報又は補間アーチファクト情報に基づいて、眼底画像における基準位置から被検眼の視度に応じて変化する基準位置のずれ分だけシフトした解析領域を特定する。この実施形態では、画像における基準位置の例として、眼科装置の光学系の光軸に相当する位置がある。すなわち、解析領域特定部223は、被検眼Eの視度と、眼科装置1の光学系における光学的条件とに基づいて、眼底画像における基準位置から被検眼Eの視度に応じて変化する基準位置のずれ分だけシフトした解析領域を特定することが可能である。
【0147】
補正領域特定部224は、アーチファクト情報特定部221により特定されたアーチファクト情報、又は補間部222により得られた補間アーチファクト情報に基づいて、被検眼Eの眼底画像における補正領域を特定する。すなわち、補正領域特定部224は、被検眼Eの視度に基づいて、眼底画像における補正領域を特定することが可能である。解析領域特定部223により解析領域が特定されているとき、補正領域特定部224は、特定された解析領域内で補正領域を特定する。
【0148】
補正量特定部225は、アーチファクト情報特定部221により特定されたアーチファクト情報、又は補間部222により得られた補間アーチファクト情報に基づいて、補正領域特定部224により特定された補正領域の輝度の補正量を特定する。すなわち、補正量特定部225は、被検眼Eの視度に基づいて、眼底画像に置いて特定された補正領域の輝度の補正量を特定することが可能である。
【0149】
補正部226は、アーチファクト情報特定部221により特定されたアーチファクト情報、又は補間部222により得られた補間アーチファクト情報に基づいて、補正領域の輝度を補正する。具体的には、補正部226は、補正量特定部225により特定された補正量に基づいて、補正領域特定部225により特定された補正領域の輝度を補正する。すなわち、補正部226は、被検眼Eの視度に対応した補正量に基づいて、補正領域の輝度を補正することが可能である。
【0150】
アーチファクトが黒点影の場合、補正部226は、補正領域の輝度を上げるように補正領域内の画素の輝度値を補正する。アーチファクトが中心ゴーストの場合、補正部226は、補正領域の輝度を下げるように補正領域内の画素の輝度値を補正する。
【0151】
(その他の構成)
いくつかの実施形態では、眼科装置1は、更に、固視投影系を含む。例えば、固視投影系の光路は、図2に示す光学系の構成において、撮影光学系40の光路に結合される。固視投影系は、内部固視標又は外部固視標を被検眼Eに提示することが可能である。内部固視標を被検眼Eに提示する場合、固視投影系は、制御部100からの制御を受けて内部固視標を表示するLCDを含み、LCDから出力された固視光束を被検眼Eの眼底に投影する。LCDは、その画面上における固視標の表示位置を変更可能に構成されている。LCDにおける固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの眼底における固視標の投影位置を変更することが可能である。LCDにおける固視標の表示位置は、操作部110を用いることによりユーザが指定可能である。
【0152】
いくつかの実施形態では、眼科装置1は、アライメント系を含む。いくつかの実施形態では、アライメント系は、XYアライメント系と、Zアライメント系とを含む。XYアライメント系は、装置光学系(対物レンズ46)の光軸に交差する方向に装置光学系と被検眼Eとの位置合わせを行うために用いられる。Zアライメント系は、眼科装置1(対物レンズ46)の光軸の方向に装置光学系と被検眼Eとの位置合わせを行うために用いられる。
【0153】
例えば、XYアライメント系は、被検眼Eに輝点(赤外領域又は近赤外領域の輝点)を投影する。データ処理部200は、輝点が投影された被検眼Eの前眼部像を取得し、取得された前眼部像に描出された輝点像とアライメント基準位置との変位を求める。制御部100は、求められた変位がキャンセルされるように図示しない移動機構により装置光学系と被検眼Eとを光軸の方向と交差する方向に相対的に移動させる。
【0154】
例えば、Zアライメント系は、装置光学系の光軸から外れた位置から赤外領域又は近赤外領域のアライメント光を投影し、被検眼Eの前眼部で反射されたアライメント光を受光する。データ処理部200は、装置光学系に対する被検眼Eの距離に応じて変化するアライメント光の受光位置から、装置光学系に対する被検眼Eの距離を特定する。制御部100は、特定された距離が所望の作動距離になるように図示しない移動機構により装置光学系と被検眼Eとを光軸の方向に相対的に移動させる。
【0155】
いくつかの実施形態では、アライメント系の機能は、装置光学系の光軸から外れた位置に配置された2以上の前眼部カメラにより実現される。例えば、特開2013-248376号公報に開示されているように、データ処理部200は、2以上の前眼部カメラで実質的に同時に取得された被検眼Eの前眼部像を解析して、公知の三角法を用いて被検眼Eの3次元位置を特定する。制御部100は、装置光学系の光軸が被検眼Eの軸に略一致し、かつ、被検眼Eに対する装置光学系の距離が所定の作動距離になるように図示しない移動機構により装置光学系と被検眼Eとを3次元的に相対的に移動させる。
【0156】
移動機構22Dは、実施形態に係る「第1移動機構」の一例である。移動機構10Dは、実施形態に係る「第2移動機構」の一例である。光学素子24の位置及び向きの少なくとも1つを変更する移動機構(不図示)は、実施形態に係る「第3移動機構」の一例である。データ処理部200は、実施形態に係る「眼科情報処理装置」の一例である。被検眼の眼底画像は、実施形態に係る「被検眼の画像」の一例である。補正領域特定部224は、実施形態に係る「特定部」の一例である。
【0157】
[動作]
次に、眼科装置1の動作について説明する。
【0158】
この実施形態では、まず、アーチファクトの除去処理の前にアーチファクト情報を生成し、生成されたアーチファクト情報を用いて眼底画像に対するアーチファクト除去処理が実行される。
【0159】
図14に、実施形態に係る眼科装置1におけるアーチファクト情報の生成処理のフロー図の一例を示す。記憶部102には、図14に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部101は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、図14に示す処理を実行する。
【0160】
図15A及び図15Bに、図14の各ステップの動作を説明するためのシミュレーションデータの一例を表す。図15Aは、視度が「-4D」、「-6D」であるときのステップS1~ステップS2の動作を説明するためのシミュレーションデータの一例を表す。図15Bは、視度が「-4D」、「-6D」であるときのステップS4の動作を説明するためのシミュレーションデータの一例を表す。
【0161】
(S1:視度毎に光学シミュレーションを実行)
まず、主制御部101は、光学シミュレーション処理部211を制御して、所定の視度を有する公知の模型眼を用いて光学シミュレーションを実行させる。これにより、当該視度について、黒点影の位置、形状、及び強度を表すシミュレーションデータが取得される。
【0162】
(S2:全視度について終了?)
続いて、主制御部101は、あらかじめ決められた視度の範囲内の全視度について光学シミュレーションを実行したか否かを判定する。
【0163】
全視度について光学シミュレーションを実行したと判定されたとき(ステップS2:Y)、眼科装置1の動作はステップS3に移行する。全視度について光学シミュレーションを実行したと判定されなかったとき(ステップS2:N)、眼科装置1の動作はステップS1に移行する。ステップS1に移行されたとき、あらかじめ決められた視度の間隔で、次の視度について光学シミュレーションが実行される。
【0164】
あらかじめ決められた視度の間隔毎にあらかじめ決められた視度の範囲内でステップS1及びステップS2を繰り返すことで、黒点影の位置、形状、及び強度を表すシミュレーションデータが視度毎に取得される。例えば、「-10D」から「+10D」までの間で「2D」毎に11種類のシミュレーションデータが取得される。例えば、「-4D」、「-6D」の視度について、図15Aに示すようなシミュレーションが取得される。
【0165】
(S3:正規化)
次に、主制御部101は、正規化部212を制御して、ステップS1及びステップS2を繰り返すことで取得された視度毎のシミュレーションデータを正規化させる。
【0166】
(S4:アーチファクトのサイズを調整)
次に、主制御部101は、サイズ調整部213を制御して、ステップS3において正規化された視度毎のシミュレーションデータについて、黒点影のサイズがイメージセンサ51の受光面(撮像面)における黒点像のサイズになるようにサイズ調整を実行させる。いくつかの実施形態では、サイズ調整部213は、サイズ調整の結果、所定の領域に収まらない場合には領域内に収まらないデータを削除したり、所定の領域より小さくなる場合には領域内を最大値で埋めたりする。
【0167】
例えば、「-4D」、「-6D」の視度について、図15Bに示すようなシミュレーションが取得される。
【0168】
(S5:保存)
次に、主制御部101は、ステップS4においてサイズ調整が行われた視度毎のシミュレーションデータを視度に関連付けて記憶部102に保存する。
【0169】
以上で、アーチファクト情報を生成する処理は終了である(エンド)。
【0170】
次に、実施形態に係る眼科装置1による眼底画像の取得処理について説明する。
【0171】
図16に、実施形態に係る眼科装置1による眼底画像の取得処理のフロー図の一例を示す。記憶部102には、図16に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部101は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、図16に示す処理を実行する。
【0172】
ここでは、図示しないアライメント系により被検眼Eに対して装置光学系のアライメントが完了し、図示しない固視投影系により所望の固視位置に導くように被検眼Eの眼底に対して固視標が投影され、且つ、フォーカス指標光学系36と合焦レンズ47とを用いた合焦制御により合焦状態に設定されているものとする。
【0173】
(S11:視度を取得)
まず、主制御部101は、視度を取得する。例えば、主制御部101は、合焦状態に設定された合焦レンズ47の光軸上の位置(又は移動機構47Dを駆動するアクチュエータの制御結果)から視度を特定する。主制御部101は、外部の眼科測定装置又は電子カルテから被検眼Eの視度を取得するようにしてもよい。
【0174】
(S12:スリットの位置を変更)
次に、主制御部101は、ステップS11において取得された被検眼Eの視度に応じて、照明光学系20の光軸におけるスリット22の位置を変更する。
【0175】
具体的には、主制御部101は、記憶部102に記憶された第1制御情報を参照して視度に対応したスリット22の位置を特定し、特定された位置にスリット22が配置されるように移動機構22Dを制御する。
【0176】
(S13:光源の位置又は向きを変更)
続いて、主制御部101は、ステップS12において光軸における位置が変更されたスリット22の新たな位置に応じて、光源10の位置及び向きの少なくとも1つを変更する。
【0177】
具体的には、主制御部101は、記憶部102に記憶された第2制御情報を参照して、視度又はスリット22の移動後の位置に対応した光源10の位置及び向きの少なくとも1つを特定する。その後、主制御部101は、特定された位置又は向きに光源10が配置されるように移動機構10Dを制御する。
【0178】
(S14:照明光を照射)
次に、主制御部101は、照明光学系20によりスリット状の照明光を生成させ、光スキャナ30の偏向制御を開始させることにより、眼底Efにおける所望の照射範囲に対する照明光の照射を開始させる。照明光の照射が開始されると、上記のように、スリット状の照明光が所望の照射範囲内で順次に照射される。
【0179】
(S15:受光結果を取得)
主制御部101は、上記のように、ステップS14において実行された眼底Efにおける照明光の照射範囲に対応したイメージセンサ51の開口範囲におけるピクセルの受光結果を取得する。
【0180】
(S16:次の照射位置?)
主制御部101は、次に照明光で照射すべき照射位置があるか否かを判定する。主制御部101は、順次に移動される照明光の照射範囲があらかじめ決められた眼底Efの撮影範囲を網羅したか否かを判定することにより、次に照明光で照射すべき照射位置があるか否かを判定することが可能である。
【0181】
次に照明光で照射すべき照射位置があると判定されたとき(S16:Y)、眼科装置1の動作はステップS14に移行する。次に照明光で照射すべき照射位置があると判定されなかったとき(S16:N)、眼科装置1の動作はステップS17に移行する。
【0182】
(S17:眼底画像を形成)
ステップS16において、次に照明光で照射すべき照射位置がないと判定されたとき(S16:N)、主制御部101は、ステップS15において照明光の照射範囲を変更しつつ繰り返し取得された受光結果から被検眼Eの眼底画像をデータ処理部200に形成させる。
【0183】
例えば、データ処理部200は、ステップS14~ステップS16の処理の繰返し回数分の互いに照明光の照射範囲(イメージセンサ51の受光面SRにおける開口範囲)が異なる複数の受光結果を照射範囲の移動順序に基づいて合成する。それにより、眼底Efの1フレーム分の眼底画像が形成される。
【0184】
いくつかの実施形態では、ステップS14では、隣接する照射範囲との重複領域が設けられるように設定された照射範囲に照明光が照射される。それにより、ステップS17では、互いの重複領域が重なるように眼底画像を合成することで1フレーム分の眼底画像が形成される。
【0185】
以上で、眼科装置1による眼底画像の取得処理は終了である(エンド)。
【0186】
続いて、図14に示すフローに従って作成された視度毎のアーチファクト情報を用いた、図16に示すフローに従って形成された眼底画像に対するアーチファクト除去処理について説明する。
【0187】
図17に、実施形態に係る眼科装置1による眼底画像に対するアーチファクト除去処理のフロー図の一例を示す。記憶部102には、図17に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部101は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、図17に示す処理を実行する。
【0188】
(S21:視度を取得)
まず、主制御部101は、視度を取得する。主制御部101は、ステップS11と同様に視度を取得することが可能である。
【0189】
(S22:アーチファクト情報を特定)
次に、主制御部101は、アーチファクト情報特定部221を制御して、図14に示すフローに従って生成された視度毎のアーチファクト情報の中から、ステップS21において取得された被検眼Eの視度に対応したアーチファクト情報を特定させる。
【0190】
アーチファクト情報特定部221は、上記のように、記憶部102に記憶されている視度毎のアーチファクト情報の中から、ステップS21において取得された視度に関連付けられたアーチファクト情報、又はステップS21において取得された視度を中間とする2以上のアーチファクト情報を特定する。
【0191】
(S23:補間?)
次に、主制御部101は、ステップS22におけるアーチファクト情報の特定処理の結果から、アーチファクト情報の補間処理を行うか否かを判定する。
【0192】
例えば、主制御部101は、ステップS21において取得された視度に関連付けられたアーチファクト情報が記憶部102に保存されているとき、アーチファクト情報の補間処理を行わないと判定することができる。一方、主制御部101は、ステップS21において取得された視度に関連付けられたアーチファクト情報が記憶部102に保存されていないとき、アーチファクト情報の補間処理を行うと判定することができる。
【0193】
ステップS23において、アーチファクト情報の補間処理を行うと判定されたとき(ステップS23:Y)、眼科装置1の動作は、ステップS24に移行する。一方、ステップS23において、アーチファクト情報の補間処理を行わないと判定されたとき(ステップS23:N)、眼科装置1の動作は、ステップS25に移行する。
【0194】
(S24:補間処理を実行)
ステップS23において、アーチファクト情報の補間処理を行うと判定されたとき(ステップS23:Y)、主制御部101は、補間部222を制御して、ステップS22において特定された2以上のアーチファクト情報に対して補間処理を実行させて、補間アーチファクト情報を取得させる。
【0195】
例えば、補間部222は、「-5D」の視度に対して、図15Bに示すような「-4D」に関連付けられたアートファクト情報と「-6D」に関連付けられたアーチファクト情報とに対して重み付け平均化を実行し、「-5D」に対応した補間アーチファクト情報を生成する。補間部222は、生成された補間アーチファクト情報を図18Aに示すような補正データ(補正倍率データ)として取得する。
【0196】
(S25:補正データとして保存)
ステップS24に続いて、又は、ステップS23において、アーチファクト情報の補間処理を行わないと判定されたとき(ステップS23:N)、主制御部101は、ステップS24において得られた補間アーチファクト情報、又はステップS22において特定された視度に関連付けられたアーチファクト情報を補正データとして記憶部102又は図示しない記憶装置に保存する。
【0197】
(S26:マスクデータを生成)
次に、主制御部101は、補正領域特定部224を制御して、ステップS25において保存された補正データからマスクデータを生成する。
【0198】
例えば、補正領域特定部224は、ステップS25において保存された補正データを2値化し、2値化された補正データに対してラベリング処理を行うことで補正データにおける連結領域を特定し、所定サイズ未満の連結領域を削除する(図18B)。その後、補正領域特定部224は、所定サイズ以上の連結領域を有する補正データに対して膨張処理を施すことで、図18Cに示すような、補正すべき黒点影の形状に対応した形状を有するマスクデータを生成する。
【0199】
(S27:マスク処理を実行)
続いて、主制御部101は、ステップS25において保存された補正データに対して、ステップS26において生成されたマスクデータを用いたマスク処理を施すことで、図18Dに示すような最終的な補正データを生成する。
【0200】
(S28:解析領域を特定)
次に、主制御部101は、解析領域特定部223を制御して、ステップS24において得られた補間アーチファクト情報、又はステップS22において特定された視度に関連付けられたアーチファクト情報から、眼底画像内の解析領域を特定させる。
【0201】
解析領域特定部223は、補間アーチファクト情報又はアーチファクト情報から、眼科装置固有の眼底画像内の黒点影の位置を含む解析領域を特定する。これにより、虹彩絞り21、スリット22、及び穴鏡45等の装置固有の光学配置の誤差に起因して開口部のエッジ付近を通過する光の入射方向がシフトすることによって黒点影等のアーチファクトの位置のずれが生ずる影響を抑えつつ、アーチファクトを高精度に除去することが可能になる。
【0202】
例えば、解析領域特定部223によって特定される解析領域のサイズ(水平方向のサイズ及び垂直方向のサイズ)は、補正データのサイズと同等である。
【0203】
(S29:補正処理を実行)
続いて、主制御部101は、補正量特定部225を制御して、ステップS27において生成された最終的な補正データから補正領域の補正量を特定させる。その後、主制御部101は、補正部226を制御して、ステップS28において特定された解析領域内のマスクデータの形状に対応した形状を有する補正領域の画素の輝度値を、特定された補正量で補正する。
【0204】
この実施形態では、補正部226は、輝度が高くなるようにマスクデータに対応した領域内の画素の輝度値を補正する。なお、アーチファクトが中心ゴーストの場合、補正部226は、輝度が低くなるようにマスクデータに対応した領域内の画素の輝度値を補正する。
【0205】
以上で、眼底画像に対するアーチファクト除去処理は終了である(エンド)。
【0206】
図19に、実施形態に係る眼科装置1における黒点影の除去処理の動作説明図を示す。
【0207】
上記のように、眼科装置1は、図14に示すフローに従って、視度毎のアーチファクト情報を事前に生成する。眼科装置1は、図16に示すフローに従って合焦状態で眼底画像IMGを取得すると、合焦状態における合焦レンズ47の位置から被検眼Eの視度を特定し、視度毎のアーチファクト情報から被検眼Eの視度に対応したアーチファクト情報(補間アーチファクト情報)を特定する。
【0208】
次に、眼科装置1は、特定されたアーチファクト情報に基づいて、眼底画像IMG内の解析対象領域ARを特定すると共に、被検眼Eの視度に対応した補正データ(最終的な補正データ)CDと、解析領域AR内の被検眼Eの視度に対応した黒点影の形状を有する補正領域とを特定する。眼科装置1は、補正データCDを用いてから補正領域の画素の輝度値を補正することで、眼底画像IMG内で被検眼Eの視度に応じて変化する画像領域OG内の補正領域の黒点影を除去して、黒点影が除去された画像領域OG1を取得する。
【0209】
<変形例>
実施形態に係る眼科装置1は、光スキャナ30がスリット状の光を偏向しつつ眼底Efを照明する構成を有する場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。例えば、実施形態に係る眼科装置1は、いわゆる眼底カメラの構成を有してしてもよい。
【0210】
以下、実施形態の変形例に係る眼科装置について、実施形態に係る眼科装置との相違点を中心に説明する。
【0211】
図20に、実施形態の変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。図20において、図2と同様の部分には同一符号を付して、適宜説明を省略する。
【0212】
実施形態の変形例に係る眼科装置1eの構成が実施形態に係る眼科装置1の構成と異なる点は、照明光学系20及び投影光学系35に代えて、照明光学系20eが設けられている点である。
【0213】
照明光学系20eは、投影光学系35における光学素子と、照明光学系20における虹彩絞り21とを含む。
【0214】
このような眼科装置1eは、スリット状の光の偏向制御が省略されている点を除いて、実施形態に係る眼科装置1の制御系と同様の制御系を含むことができる。
【0215】
[作用]
実施形態に係る眼科情報処理装置、眼科装置、眼科情報処理方法、及びプログラムについて説明する。
【0216】
いくつかの実施形態の第1態様は、眼科装置(1、1a、1b、1c、1e)を用いて取得された被検眼(E)の画像(眼底画像)のアーチファクト(黒点像、中心ゴースト)を除去する眼科情報処理装置(400、400d、データ処理部200)である。眼科情報処理装置は、特定部(補正領域特定部224)と、補正部(226)とを含む。特定部は、被検眼の視度(屈折度)に基づいて、画像における補正領域を特定する。補正部は、被検眼の視度に対応した補正量に基づいて、特定部により特定された補正領域の輝度を補正する。
【0217】
このような態様によれば、被検眼の視度に応じて変化する被検眼の画像のアーチファクトを簡素な処理で除去することが可能になる。
【0218】
いくつかの実施形態の第2態様では、第1態様において、特定部は、画像におけるアーチファクトの位置、形状、及び強度を事前に算出することにより得られた視度毎のアーチファクト情報に基づいて、補正領域を特定する。補正部は、視度毎のアーチファクト情報に基づいて、補正領域の輝度を補正する。
【0219】
このような態様によれば、眼科装置に応じて光学的条件が異なる場合でも、被検眼の視度に応じて変化する画像のアーチファクトを簡素な処理で除去することができるようになる。
【0220】
いくつかの実施形態の第3態様は、第2態様において、被検眼の視度に基づいて特定される2以上の視度のアーチファクト情報を、被検眼の視度に基づいて補間する補間部(222)を含む。特定部は、補間部により得られた補間アーチファクト情報に基づいて補正領域を特定する。補正部は、補間アーチファクト情報に基づいて補正領域の輝度を補正する。
【0221】
このような態様によれば、被検眼の視度に関連付けられたアーチファクト情報がない場合でも、既存の視度に関連付けられたアーチファクト情報を補間することで補間アーチファクト情報を特定することにより、特定された補間アーチファクト情報に基づいて補正領域を特定してアーチファクトを除去することができるようになる。
【0222】
いくつかの実施形態の第4態様では、第1態様~第3態様のいずれかにおいて、アーチファクトは、眼科装置に設けられた黒点(42)により形成される黒点影である。補正部は、補正領域の輝度を上げる。
【0223】
このような態様によれば、被検眼の視度に応じて変化する、被検眼の画像に描出される黒点影を簡素な処理で除去したり、黒点影の影響を大幅に低減したりすることが可能になる。
【0224】
いくつかの実施形態の第5態様では、第1態様~第3態様のいずれかにおいて、アーチファクトは、眼科装置に設けられた対物レンズ(46)により形成される中心ゴーストである。補正部は、補正領域の輝度を下げる。
【0225】
このような態様によれば、被検眼の視度に応じて変化する、被検眼の画像に描出される中心ゴーストを簡素な処理で除去したり、中心ゴーストの影響を大幅に低減したりすることが可能になる。
【0226】
いくつかの実施形態の第6態様は、第1態様~第3態様のいずれかにおいて、解析領域特定部(223)と、補正量特定部(225)とを含む。解析領域特定部は、被検眼の視度と、眼科装置の光学系(2、2b、光源10、照明光学系20、20e、光スキャナ30、撮影光学系40、及び撮像装置(30))における光学的条件とに基づいて、画像における基準位置(光軸に相当する位置、画像の中心位置)から被検眼の視度に応じて変化する基準位置のずれ分だけシフトした解析領域を特定する。補正量特定部は、被検眼の視度に基づいて、補正領域の補正量を特定する。補正部は、解析領域特定部により特定された解析領域において特定部により特定された補正領域の輝度を補正量に基づいて補正する。
【0227】
このような態様によれば、照明光又は撮影光の光路に配置される光学素子(絞り、開口部)の装置固有の光学配置の誤差に起因して絞り、開口部等のエッジ付近を通過することにより光の入射方向がシフトすることによって生ずるアーチファクトの位置のずれの影響を抑えつつ、アーチファクトを高精度に除去することが可能になる。
【0228】
いくつかの実施形態の第7態様では、第1態様~第3態様のいずれかにおいて、眼科装置は、光学系の光軸方向に移動可能な合焦レンズ(47)を含む。特定部は、合焦レンズの光軸上の位置に基づいて被検眼の視度に対応した補正領域を特定する。補正部は、合焦レンズの光軸上の位置に基づいて補正領域の輝度を補正する。
【0229】
このような態様によれば、合焦レンズの光軸上の位置に基づいて被検眼の視度を特定するようにしたので、簡素な構成で、被検眼の視度に応じて変化する被検眼の画像のアーチファクトを簡素な処理で除去することが可能になる。
【0230】
いくつかの実施形態の第8態様は、被検眼に照明光を照射する照明光学系(20、20e)と、被検眼からの照明光の戻り光を受光することにより被検眼の画像を取得する撮影光学系(40)と、撮影光学系により取得された画像のアーチファクトを除去する第1態様~第3態様のいずれかに記載の眼科情報処理装置(400、400d、データ処理部200)と、を含む、眼科装置(1、1a、1b、1c、1e)である。
【0231】
このような態様によれば、被検眼の視度に応じて変化する被検眼の画像のアーチファクトを簡素な処理で除去することが可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0232】
いくつかの実施形態の第9態様は、眼科装置(1、1a、1b、1c、1e)を用いて取得された被検眼(E)の画像(眼底画像)のアーチファクト(黒点像、中心ゴースト)を除去する眼科情報処理方法である。眼科情報処理方法は、特定ステップと、補正ステップとを含む。特定ステップは、被検眼の視度(屈折度)に基づいて、画像における補正領域を特定する。補正ステップは、被検眼の視度に対応した補正量に基づいて、特定ステップにおいて特定された補正領域の輝度を補正する。
【0233】
このような態様によれば、被検眼の視度に応じて変化する被検眼の画像のアーチファクトを簡素な処理で除去することが可能になる。
【0234】
いくつかの実施形態の第10態様では、第9態様において、特定ステップは、画像におけるアーチファクトの位置、形状、及び強度を事前に算出することにより得られた視度毎のアーチファクト情報に基づいて、補正領域を特定する。補正ステップは、視度毎のアーチファクト情報に基づいて、補正領域の輝度を補正する。
【0235】
このような態様によれば、眼科装置に応じて光学的条件が異なる場合でも、被検眼の視度に応じて変化する画像のアーチファクトを簡素な処理で除去することができるようになる。
【0236】
いくつかの実施形態の第11態様は、第10態様において、被検眼の視度に基づいて特定される2以上の視度のアーチファクト情報を、被検眼の視度に基づいて補間する補間ステップを含む。特定ステップは、補間ステップにおいて得られた補間アーチファクト情報に基づいて補正領域を特定する。補正ステップは、補間アーチファクト情報に基づいて補正領域の輝度を補正する。
【0237】
このような態様によれば、被検眼の視度に関連付けられたアーチファクト情報がない場合でも、既存の視度に関連付けられたアーチファクト情報を補間することで補間アーチファクト情報を特定することにより、特定された補間アーチファクト情報に基づいて補正領域を特定してアーチファクトを除去することができるようになる。
【0238】
いくつかの実施形態の第12態様では、第9態様~第11態様のいずれかにおいて、アーチファクトは、眼科装置に設けられた黒点(42)により形成される黒点影である。補正ステップは、補正領域の輝度を上げる。
【0239】
このような態様によれば、被検眼の視度に応じて変化する、被検眼の画像に描出される黒点影を簡素な処理で除去したり、黒点影の影響を大幅に低減したりすることが可能になる。
【0240】
いくつかの実施形態の第13態様では、第9態様~第11態様のいずれかにおいて、アーチファクトは、眼科装置に設けられた対物レンズ(46)により形成される中心ゴーストである。補正ステップは、補正領域の輝度を下げる。
【0241】
このような態様によれば、被検眼の視度に応じて変化する、被検眼の画像に描出される中心ゴーストを簡素な処理で除去したり、中心ゴーストの影響を大幅に低減したりすることが可能になる。
【0242】
いくつかの実施形態の第14態様は、第9態様~第11態様のいずれかにおいて、解析領域特定ステップと、補正量特定ステップとを含む。解析領域特定ステップは、被検眼の視度と、眼科装置の光学系(2、2b、光源10、照明光学系20、20e、光スキャナ30、撮影光学系40、及び撮像装置(30))における光学的条件とに基づいて、画像における基準位置(光軸に相当する位置、画像の中心位置)から被検眼の視度に応じて変化する基準位置のずれ分だけシフトした解析領域を特定する。補正量特定ステップは、被検眼の視度に基づいて、補正領域の補正量を特定する。補正ステップは、解析領域特定ステップにおいて特定された解析領域において特定ステップにおいて特定された補正領域の輝度を補正量に基づいて補正する。
【0243】
このような態様によれば、照明光又は撮影光の光路に配置される光学素子(絞り、開口部)の装置固有の光学配置の誤差に起因して絞り、開口部等のエッジ付近を通過することにより光の入射方向がシフトすることによって生ずるアーチファクトの位置のずれの影響を抑えつつ、アーチファクトを高精度に除去することが可能になる。
【0244】
いくつかの実施形態の第15態様では、第9態様~第11態様のいずれかにおいて、眼科装置は、光学系の光軸方向に移動可能な合焦レンズ(47)を含む。特定ステップは、合焦レンズの光軸上の位置に基づいて被検眼の視度に対応した補正領域を特定する。補正ステップは、合焦レンズの光軸上の位置に基づいて補正領域の輝度を補正する。
【0245】
このような態様によれば、合焦レンズの光軸上の位置に基づいて被検眼の視度を特定するようにしたので、簡素な構成で、被検眼の視度に応じて変化する被検眼の画像のアーチファクトを簡素な処理で除去することが可能になる。
【0246】
いくつかの実施形態の第16態様は、コンピュータに、第9態様~第11態様のいずれかに記載の眼科情報処理方法の各ステップを実行させるプログラムである。
【0247】
このような態様によれば、被検眼の視度に応じて変化する被検眼の画像のアーチファクトを簡素な処理で除去することが可能なプログラムを提供することができるようになる。
【0248】
以上に示された実施形態又はその変形例は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【0249】
上記の実施形態において、眼科装置は、例えば、眼軸長測定機能、眼圧測定機能、光干渉断層撮影(OCT)機能、超音波検査機能など、眼科分野において使用可能な任意の機能を有していてもよい。なお、眼軸長測定機能は、光干渉断層計等により実現される。また、眼軸長測定機能は、被検眼に光を投影し、当該被検眼に対する光学系のZ方向(前後方向)の位置を調整しつつ眼底からの戻り光を検出することにより、当該被検眼の眼軸長を測定するようにしてもよい。眼圧測定機能は、眼圧計等により実現される。OCT機能は、光干渉断層計等により実現される。超音波検査機能は、超音波診断装置等により実現される。また、このような機能のうち2つ以上を具備した装置(複合機)に対してこの発明を適用することも可能である。
【0250】
いくつかの実施形態では、上記の眼科情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。このようなプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な非一時的な(non-transitory)任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD-ROM/DVD-RAM/DVD-ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。
【符号の説明】
【0251】
1、1a、1b、1c、1e 眼科装置
2、2b 光学系
10 光源
20、20e 照明光学系
21 虹彩絞り
22 スリット
23、44、48 リレーレンズ
30 光スキャナ
35 投影光学系
40 撮影光学系
42 黒点
43 反射ミラー
45 穴鏡
46 対物レンズ
47 合焦レンズ
49 結像レンズ
50 撮像装置
51 イメージセンサ
60 屈折力測定光学系
100、100a、100b、100c 制御部
101 主制御部
102 記憶部
200 データ処理部
210 アーチファクト情報生成部
211 光学シミュレーション処理部
212 正規化部
213 サイズ調整部
220 アーチファクト除去処理部
221 アーチファクト情報特定部
222 補間部
223 解析領域特定部
224 補正領域特定部
225 補正量特定部
226 補正部
300 屈折力測定装置
400、400d 眼科情報処理装置
1000、1000a、1000b、1000c、1000d 眼科システム
E 被検眼
Ef 眼底
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20