IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井金属アクト株式会社の特許一覧

特開2023-178088車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組
<>
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図1
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図2
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図3
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図4
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図5
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図6
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図7
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図8
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図9
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図10
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図11
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図12
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図13
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図14
  • 特開-車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178088
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/02 20140101AFI20231207BHJP
   E05B 79/08 20140101ALI20231207BHJP
   E05B 81/34 20140101ALI20231207BHJP
   E05B 81/20 20140101ALI20231207BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
E05B85/02
E05B79/08
E05B81/34
E05B81/20 B
B60J5/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091151
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 巧士
(72)【発明者】
【氏名】横田 佳明
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ10
2E250JJ39
2E250JJ42
2E250JJ49
2E250KK02
2E250LL05
2E250QQ10
2E250RR13
(57)【要約】
【課題】製作性に優れコストダウンの容易な車両のバックドアのラッチ装置を提供する。
【解決手段】車両のバックドアのラッチ装置は、車両のストライカに噛合う噛合い機構と、噛合い機構を収容する第1のハウジングと、を有する噛合いユニットと、モータと、モータに連結され、噛合い機構のストライカとの噛合いをモータの動力によって解除する動力式噛合い解除部と、モータと動力式噛合い解除部とを収容する第2のハウジングと、を有する噛合い解除ユニットと、噛合いユニットと噛合い解除ユニットとを支持するカバープレートと、を有している。第1のハウジングと第2のハウジングは互いに独立しており、噛合いユニットと噛合い解除ユニットは互いに隣接してカバープレートの一つの面に支持されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバックドアのラッチ装置であって、
前記車両のストライカに噛合う噛合い機構と、前記噛合い機構を収容する第1のハウジングと、を有する噛合いユニットと、
モータと、前記モータに連結され、前記噛合い機構の前記ストライカとの噛合いを前記モータの動力によって解除する動力式噛合い解除部と、前記モータと前記動力式噛合い解除部とを収容する第2のハウジングと、を有する噛合い解除ユニットと、
前記噛合いユニットと前記噛合い解除ユニットとを支持するカバープレートと、を有し、
前記第1のハウジングと前記第2のハウジングは互いに独立しており、
前記噛合いユニットと前記噛合い解除ユニットは互いに隣接して前記カバープレートの一つの面に支持されている、ラッチ装置。
【請求項2】
前記噛合い機構は前記ストライカに噛合い可能なラッチと、前記ラッチを回転可能に支持するラッチ軸と、前記ラッチに噛合い可能なラチェットと、前記ラチェットを回転可能に支持するラチェット軸と、を有し、
前記動力式噛合い解除部は前記モータの動力を前記噛合い機構に伝達する歯車伝達経路を有し、
前記歯車伝達経路は少なくとも一つの歯車と、前記少なくとも一つの歯車を回転可能に支持する少なくとも一つの回転軸と、を有し、
前記ラッチ軸と前記ラチェット軸と前記少なくとも一つの回転軸は前記カバープレートに直接支持されている、請求項1に記載のラッチ装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの歯車は複数の歯車を有し、
前記複数の歯車のうちの少なくとも一つの歯車と前記モータとを仕切る仕切板を有する、請求項2に記載のラッチ装置。
【請求項4】
前記モータは、モータ本体と、前記モータ本体に連結され前記歯車伝達経路との接続部を備えた出力軸と、を有し、
前記噛合い解除ユニットは、前記出力軸が通る部分を備え前記モータ本体と前記接続部とを仕切る隔離壁と、前記モータ本体を覆うトッププレートと、を有する、請求項2または3に記載のラッチ装置。
【請求項5】
車両のバックドアのラッチ装置の組であって、
前記ラッチ装置の組は第1のラッチ装置と第2のラッチ装置とを有し、
前記第1のラッチ装置と前記第2のラッチ装置はそれぞれ、
前記車両のストライカに噛合う噛合い機構を有する噛合いユニットと、
前記噛合いユニットを支持するカバープレートと、を有し、
前記第1及び第2のラッチ装置のうち、前記第1のラッチ装置のみが前記ストライカを前記噛合い機構に引き込むシンチング機能を備え、
前記カバープレートと前記噛合いユニットは、前記第1及び第2のラッチ装置において実質的に共通である、ラッチ装置の組。
【請求項6】
前記第1及び第2のラッチ装置の前記噛合いユニットは前記噛合い機構を収容する第1のハウジングを有し、前記噛合い機構は前記ストライカに噛合い可能なラッチと、前記ラッチに噛合い可能なラチェットと、を有し、
前記ラッチと前記ラチェットと前記第1のハウジングは、前記第1及び第2のラッチ装置において共通である、請求項5に記載のラッチ装置の組。
【請求項7】
前記バックドアの閉扉状態で、前記第1のラッチ装置の前記カバープレートの車両後端部は前記第1のラッチ装置の車両後端部と一致し、
前記バックドアの閉扉状態で、前記第2のラッチ装置の前記カバープレートの車両後端部は前記第2のラッチ装置の車両後端部と一致する、請求項5または6に記載のラッチ装置の組。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のバックドアのラッチ装置とラッチ装置の組に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のバックドアのラッチ装置には、モータの動力でバックドアの開扉を行うものが知られている。このようなラッチ装置は、車両のストライカに噛合う噛合い機構を備えた噛合いユニットと、噛合い機構のストライカとの噛合いをモータの動力によって解除する動力式噛合い解除部を備えた噛合い解除ユニットと、を有している。特許文献1には、噛合いユニットが支持部材の一方の面に支持され、噛合い解除ユニットが支持部材の他方の面に支持されたラッチ装置が開示されている。特許文献1に開示されたラッチ装置は、ハーフラッチ状態のラッチをモータの動力によってフルラッチ状態にするパワーシンチング機構をさらに備えている。パワーシンチング機構は噛合い解除ユニットと一体化され、支持部材の他方の面に噛合い解除ユニットとともに支持されている。特許文献2には、噛合いユニットと噛合い解除ユニットが共通のハウジングに収容されたラッチ装置が開示されている。特許文献2に開示されたラッチ装置はパワーシンチング機構を備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-195796号公報
【特許文献2】特許第5824767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたラッチ装置は、支持部材の一方の面に噛合いユニットを取り付け、噛合いユニットが取り付けられた支持部材を反転させて、他方の面に噛合い解除ユニットを取り付けることが必要であり(逆の順序でもよい)、製作性の改善が難しい。特許文献1,2に開示されているように、車両のバックドアのラッチ装置には、パワーシンチング機構を備えたものと備えないものの2種類がある。特許文献2に開示されたラッチ装置は、噛合いユニットと噛合い解除ユニットが共通のハウジング内で一体化されているため、2種類のラッチ装置を個別に設計し製造する必要があり、コストダウンが難しい。
【0005】
本発明は、製作性に優れコストダウンの容易な車両のバックドアのラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両のバックドアのラッチ装置は、車両のストライカに噛合う噛合い機構と、噛合い機構を収容する第1のハウジングと、を有する噛合いユニットと、モータと、モータに連結され、噛合い機構のストライカとの噛合いをモータの動力によって解除する動力式噛合い解除部と、モータと動力式噛合い解除部とを収容する第2のハウジングと、を有する噛合い解除ユニットと、噛合いユニットと噛合い解除ユニットとを支持するカバープレートと、を有している。第1のハウジングと第2のハウジングは互いに独立しており、噛合いユニットと噛合い解除ユニットは互いに隣接してカバープレートの一つの面に支持されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製作性に優れコストダウンの容易な車両のバックドアのラッチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両のバックドアに取り付けられた第1及び第2のラッチ装置の側方図である。
図2】第1及び第2のラッチ装置の分解側方図である。
図3】第1のラッチ装置の主要要素の機能関連図である。
図4】第1のラッチ装置の斜視図である。
図5】第1のラッチ装置の分解斜視図である。
図6】第1のラッチ装置の噛合い機構の分解斜視図である。
図7】第1のラッチ装置の仕切板の上部の分解斜視図である。
図8】第1のラッチ装置の歯車伝達経路の構成図である。
図9】第1のラッチ装置の手動切断部の近傍の分解側方図である。
図10】第1のラッチ装置の第1のハウジングの斜視図である。
図11】第1のラッチ装置のラチェットの斜視図である。
図12】第1のラッチ装置の第3の歯車と噛合い解除部材の斜視図である。
図13】第1のラッチ装置のレバー部材の斜視図である。
図14】第2のラッチ装置の噛合い機構と歯車伝達経路の斜視図である。
図15】第2のラッチ装置の噛合い機構とメモリーレバーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明は2種類のバックドア用ラッチ装置(第1及び第2のラッチ装置1,101)に適用される。第1及び第2のラッチ装置1,101のうち、第1のラッチ装置1だけがストライカSを噛合い機構31にモータ動力で引き込むシンチング機能を備えている。第2のラッチ装置101はシンチング機能を備えていない。第1のラッチ装置1と第2のラッチ装置101は、車種やグレードによってそのいずれかだけが一つの車両に搭載される。本明細書では便宜上、第1のラッチ装置1と第2のラッチ装置101をラッチ装置の組と呼ぶ。しかし、第1のラッチ装置1と第2のラッチ装置101は、別々に製造され別々に流通してもよいことに留意されたい。以下の説明において、「時計回り方向」「反時計回り方向」「上面」等の用語は、特記ない場合上方視で定義される。上方視という用語は、水平面にあるカバープレート2と垂直な方向において上方からみることを意味する。図中のX方向は車幅方向を、Y方向は車両前後方向を、Z方向は鉛直方向を示し、これらはカバープレート2が水平面にある状態で定義される。
【0010】
図1(a)はバックドアDに搭載された第1のラッチ装置1の側方図を、図1(b)はバックドアDに搭載された第2のラッチ装置101の側方図を示している。図2(a)はカバープレート2が水平面にある第1のラッチ装置1の分解側方図を、図2(b)はカバープレート2が水平面にある第2のラッチ装置101の分解側方図を示している。第1及び第2のラッチ装置1,101は、噛合いユニット3と、噛合い解除ユニット6と、カバープレート2と、を有する。カバープレート2の両側には、第1及び第2のラッチ装置1,101をバックドアDに取り付けるための取付部21が設けられている(図4も参照)。第1及び第2のラッチ装置1,101は取付部21の貫通孔にボルト(図示せず)を挿通することでバックドアDに取り付けられる。噛合いユニット3と噛合い解除ユニット6は互いに隣接してカバープレート2の一つの面23に支持されている。製作時には、カバープレート2の一つの面23に様々な部品を取り付けていくことが可能であるため、製作性が向上する。
【0011】
噛合いユニット3とカバープレート2はバックドアDから露出している。噛合い解除ユニット6は一部がバックドアDから露出し、残部がバックドアDに収容されている。以下の説明において、バックドアDから露出した部分を第1の部分P1といい、バックドアDに収容された部分を第2の部分P2という。第1の部分P1は噛合い解除ユニット6の一部と、噛合いユニット3と、カバープレート2とに相当し、第2の部分P2は噛合い解除ユニット6の残部に相当する。次に、第1のラッチ装置1について説明する。図3に主要要素の機能関連図を示す。
【0012】
(第1のラッチ装置1)
(噛合いユニット3)
図4~6を参照すると、噛合いユニット3は、車両のストライカSに噛合う噛合い機構31と、噛合い機構31を収容する第1のハウジング51と、を有する。噛合い機構31はストライカSに噛合い可能なラッチ32と、Z方向に延びラッチ32を回転可能に支持するラッチ軸33と、を有している。ラッチ32はストライカ噛合い溝34と、ハーフラッチ噛合い部35と、フルラッチ噛合い部36と、を有している。上方視で、ラッチ32はラッチばね(図示せず)によってストライカSを解放する方向(反時計回り方向)に付勢されている。ラッチ軸33はカバープレート2に直接支持されている。噛合い機構31はラッチ32に噛合い可能なラチェット41と、Z方向に延びラチェット41を回転可能に支持するラチェット軸42と、を有している。ラチェット41はラッチ32のハーフラッチ噛合い部35及びフルラッチ噛合い部36と噛合い可能な爪部43を有している。上方視で、ラチェット41はラチェットばね(図示せず)によってラッチ32と噛合いする方向(時計回り方向)に付勢されている。ラチェット軸42はカバープレート2に直接支持されている。バックドアDの閉扉時にはストライカSがラッチ32のストライカ噛合い溝34に進入し、ラッチ32を時計回り方向に回転させる。ラチェット41の爪部43はハーフラッチ噛合い部35を通りフルラッチ噛合い部36に達し、フルラッチ噛合い部36と噛合う。これによって、バックドアDは噛合い機構31(ラッチ32)によってロックされる。ラチェット41はさらに手動式噛合い解除部44(後述)を有している。
【0013】
噛合い機構31は第1のハウジング51に収容されている。第1のハウジング51は樹脂で作成されている。主に図10を参照すると、第1のハウジング51はストライカSが進入するストライカ進入溝52を有している。第1のハウジング51の上面53には、手動式噛合い解除部44の第1及び第2のメイン手動操作部44A,44B(後述)をそれぞれ操作するための第1及び第2の開口54,55が設けられている。第1のハウジング51の上面53にはさらに、ラッチ軸33が貫通する第3の開口56とラチェット軸42が貫通する第4の開口57とが設けられている。ラッチ軸33とラチェット軸42は第1のハウジング51の上面53に取り付けられたカバー部材58に固定されている。ラッチ軸33とラチェット軸42は、第1のハウジング51とカバープレート2とカバー部材58とによって支持される。
【0014】
(手動式噛合い解除部44)
手動式噛合い解除部44は、噛合い機構31のストライカSとの噛合いを手動で解除する。この操作をA操作と呼ぶ。車両のバッテリー上がりやモータ61の故障といったエマージェンシー時には、ラッチ32とラチェット41の噛合いを動力式噛合い解除部7(後述)によって解除してバックドアDを開けることができない。また、工場でバッテリーを車両に搭載する前に第1のラッチ装置1を取付ける際も、ラッチ32とラチェット41の噛合いを動力式噛合い解除部7によって解除することができない。このため、第1のラッチ装置1はラッチ32とラチェット41の噛合いを手動で解除する手動式噛合い解除部44を有している。手動式噛合い解除部44はラチェット41と一体形成された第1及び第2のメイン手動操作部44A,44Bを有する。第1及び第2のメイン手動操作部44A,44Bは第1の部分P1に設けられている。このため、第1及び第2のメイン手動操作部44A,44Bは車内から容易に操作することができる。バックドアDの閉扉時において、第1のメイン手動操作部44Aは第2のメイン手動操作部44Bより車両の前方に配置されている。
【0015】
図6,11を参照すると、第1及び第2のメイン手動操作部44A,44Bは、ラチェット軸42の両側に設けられラチェット41の上面から概ね上方に延びる突起である。第1及び第2のメイン手動操作部44A,44Bはそれぞれ、第1のハウジング51の第1の開口54と第2の開口55を介して操作可能である。第1のメイン手動操作部44Aは第1のハウジング51の内側に設けられている。第1のメイン手動操作部44Aを操作するためには、車両のキーや棒状の部材を第1の開口54に差し込み、図11に矢印で示すように第1のメイン手動操作部44Aを下方に押し付ける。第1のメイン手動操作部44Aの上面には時計回り方向に下り傾斜44Cが付けられている。第1のメイン手動操作部44Aを下方に押し付けることでラチェット41が反時計回り方向に回転し、ラッチ32がラチェット41から離脱する。第2のメイン手動操作部44Bは第1のハウジング51を貫通し、その先端は第1のハウジング51の外側に突き出している。第2のメイン手動操作部44Bを操作するためには第2のメイン手動操作部44Bの先端を手で反時計回り方向に押す。これによってラチェット41が反時計回り方向に回転し、ラッチ32がラチェット41から離脱する。
【0016】
第1のメイン手動操作部44Aが設けられる部位は、車両によっては見栄えの向上や水分や塵埃の浸入を防ぐため、意匠カバーが設置されることがある。このため、第1のメイン手動操作部44Aは意匠カバーを設置できるようにするため、第1のハウジング51の内側に設けられている。しかし、第1のメイン手動操作部44Aを第2のメイン手動操作部44Bと同様、第1のハウジング51から突き出すように設けてもよい。この場合、誤操作を避けるため、第1のメイン手動操作部44Aを覆う取り外し式または開閉式の保護カバーを設けてもよい。これに対して、第2のメイン手動操作部44Bが設けられる部位は第1のメイン手動操作部44Aより上にあるため水分や塵埃が浸入し難く、意匠カバーが設置される可能性が低い。このため、第2のメイン手動操作部44Bは操作性を考慮して第1のハウジング51から突き出すように設けている。しかし、第2のメイン手動操作部44Bを第1のメイン手動操作部44Aと同様、第1のハウジング51の内部に設けてもよい。2つのメイン手動操作部を設けたことで、車両のレイアウトに応じ、ユーザは第1及び第2のメイン手動操作部44A,44Bのうちの操作しやすいほうを選択することができる。第1及び第2のメイン手動操作部44A,44Bのいずれかを省略することも可能であり、少なくとも一つのメイン手動操作部44Aまたは44Bが設けられていればよい。
【0017】
(噛合い解除ユニット6)
噛合い解除ユニット6は、モータ61と、動力式噛合い解除部7と、第2のハウジング81と、トッププレート85と、を有する。第1のハウジング51と第2のハウジング81は互いに独立した筐体である。なお、第1のハウジング51と第2のハウジング81を総称してハウジングという場合がある。図7に示すように、モータ61は、モータ本体62と、モータ本体62に連結された出力軸63と、を有している。出力軸63には歯車伝達経路(後述)との接続部64を構成するピニオン歯車64が形成されている。
【0018】
(動力式噛合い解除部7)
動力式噛合い解除部7は、噛合い機構31(ラッチ32)のストライカSとの噛合いをモータ61の動力によって解除する。動力式噛合い解除部7は、モータ61の動力をラチェット41に伝達する歯車伝達経路71を有している。歯車伝達経路71はモータ61の出力軸63の接続部64(ピニオン歯車64)を介してモータ61に連結されている。歯車伝達経路71はモータ61の回転を減速する減速機構としての機能も有し、本実施形態では複数の歯車を有している。図3,8に示すように、歯車伝達経路71は第1~第3の歯車72~74を有し、第1の歯車72と第2の歯車73が互いに噛み合うとともに、第2の歯車73と第3の歯車74が互いに噛み合っている。第1の歯車72と第2の歯車73はそれぞれ大径部72A,73Aと小径部72B,73Bを有している。第1の歯車72の小径部72Bが第2の歯車73の大径部73Aと噛合い、第2の歯車73の小径部73Bが第3の歯車74と噛み合っている。第3の歯車74には噛合い解除部材75がスプラインによって連結されている。第1の歯車72と第3の歯車74と噛合い解除部材75はZ方向に延びる共通の第1の回転軸R1の周りを回転し、第2の歯車73はZ方向に延びる第2の回転軸R2の周りを回転する。このように、動力式噛合い解除部7は複数の歯車72~74を回転可能に支持する複数の回転軸R1,R2を有している。各回転軸R1,R2はカバープレート2に直接支持されている。
【0019】
図7,8,12を参照すると、第3の歯車74は第1の突出し部76を有している。第1の突出し部76は第1の回転軸R1から径方向外側に延びている。ラチェット41の端部には第1の突出し部76と同じ高さ位置に作用部45が設けられている。バックドアDを開扉する際は、モータ61を起動し接続部64を介して第1~第3の歯車72~74を回転させる。第3の歯車74は上方視で時計回り方向に回転し、第1の突出し部76が作用部45を押し、ラチェット41が反時計回り方向に回転する。これによってラッチ32のラチェット41との噛合いが外れ、バックドアDの開扉が可能となる。
【0020】
バックドアDを閉扉する際にラッチ32がハーフラッチ状態で止まったときは、この状態がセンサ(図示せず)で検出され、モータ61が反対方向に回転する。噛合い解除部材75は第2の突出し部77を備えている。第2の突出し部77は第1の突出し部76と異なる高さ位置を、第1の回転軸R1から径方向外側に延びている。第2の突出し部77はラチェット41の作用部45と異なる高さ位置に設けられている。このため、開扉時に第2の突出し部77がラチェット41の作用部45と当接することはない。ラッチ32の上方にはラッチ32と同軸でシンチング部材78が配置されている。シンチング部材78はラッチ32と独立してラッチ軸33の周りを回転することできる。第2の突出し部77はシンチング部材78の端部79に当接し、シンチング部材78を反時計回り方向に回転させる。ラッチ32は上方に突き出す作用部37を備えており、シンチング部材78が作用部37を押すことでラッチ32が時計回り方向に回転する。これによってラッチ32はストライカSを引込み、フルラッチ状態となる。第1の突出し部76はシンチング部材78と異なる高さ位置にあるので、第1の突出し部76がシンチング部材78と当接することはない。
【0021】
(手動切断部9)
モータ61が止まっている位置によっては、ラッチ32とラチェット41の噛合いを手動式噛合い解除部44で解除できない場合がある。例えば、パワーシンチング機構が動作し、バックドアDがモータ61の動力で全閉状態へ引き込まれた状態でモータ61が故障し止まった場合(クローズ固着)、手動式噛合い解除部44によってラッチ32とラチェット41の噛合いを解除することができない可能性がある。すなわち、ラッチ32がシンチング部材78で拘束され、シンチング部材78が第2の突出し部77で拘束され、第2の突出し部77が歯車伝達経路71を介してモータ61に接続されているため、ラッチ32を動かすためにはモータ61の抵抗力に抗してラチェット41を回転させる必要がある。しかし、モータ61が固着しているため、ラチェット41を回転させることができない。そこで、第1のラッチ装置1は、動力式噛合い解除部7の歯車伝達経路71を手動で切断する手動切断部9を有する。
【0022】
図9,13を参照すると、手動切断部9はレバー部材91を有している。レバー部材91は、一端にサブ手動操作部92を備えた第3の回転軸R3と、第3の回転軸R3から概ね径方向に延びるアーム部93と、を有している。第3の回転軸R3は第2のハウジング81に回転可能に支持されて、第1の回転軸R1と異なるY方向、本実施形態では第1の回転軸R1と直交する方向に延びている。アーム部93は第1の歯車72の大径部72Aの下面72Cに当接可能な少なくとも一つの当接部94A,94Bを有している。サブ手動操作部92は操作面95にスリット96を有している。スリット96に車両のキーなどの操作具を差し込み、図9においてサブ手動操作部92を時計回り方向に回転させることで、アーム部93が第3の回転軸R3の周りを回転する。この操作をB操作と呼ぶ。当接部94A,94Bは第3の回転軸R3の周りを回動して上昇し第1の歯車72を押し上げる。これによって第1の歯車72が上方に移動ないし持ち上げられ、第1の歯車72の小径部72Aと第2の歯車73の大径部73Aの噛合いが切断される。モータ61の拘束力がなくなるため、第1~第3の歯車72~74及び噛合い解除部材75が回転可能な状態となる。この状態で手動式噛合い解除部44を操作することで(A操作)、ラッチ32とラチェット41の噛合いを解除することができる。アーム部93は第1の歯車72の大径部72Aの下面72Cに互いに異なる場所で当接する複数の当接部94A,94Bを有しているため、第1の歯車72を確実に上方に持ち上げることができる。さらに、本実施形態では2つの当接部94A,94Bが第1の歯車72の第1の回転軸R1の両側に設けられているため、第1の歯車72をより確実に上Z方向に沿って方に持ち上げることができる。この結果、B操作を行ったときに第1の歯車72と第2の歯車73の損傷が生じにくくなる。
【0023】
レバー部材91は第1の歯車72を移動させた(持ち上げた)後に第1の歯車72を保持する第1及び第2の保持部材97A,97Bを有する。第1及び第2の保持部材97A,97Bは第3の回転軸R3の周りを概ね周方向に延びるアーム状の部材であり、可撓性を有している。レバー部材91を構成する第3の回転軸R3とアーム部93と第1及び第2の保持部材97A,97Bは、樹脂または金属で一体形成される。第1の保持部材97Aは第3の回転軸R3の上方に延び、第2の保持部材97Bは第3の回転軸R3の下方に延びている。第1の保持部材97Aの先端はトッププレート85の内面と対向し、第2の保持部材97Bの先端は仕切板82(後述)の上面と対向している。通常は、第1の保持部材97Aはトッププレート85の内面から離隔し、第2の保持部材97Bは仕切板82の上面から離隔している。仕切板82の上面の第2の保持部材97Bと対向する部分は、第2の保持部材97Bの形状に合わせた湾曲面83となっており、湾曲面83の端部に凹部84が接続されている。
【0024】
図9においてレバー部材91が第3の回転軸R3の周りを時計回り方向に回転すると、第1及び第2の保持部材97A,97Bも第3の回転軸R3の周りを時計回り方向に回転する。第1の保持部材97Aの先端はトッププレート85の内面と摺接し、第3の回転軸R3に向けて弾性変形する。第2の保持部材97Bの先端は第3の回転軸R3に対して横方向にずれているため、レバー部材91の回転に伴い下方に移動する。第2の保持部材97Bの先端はトッププレート85の内面と摺接し、第3の回転軸R3に向けて弾性変形する。レバー部材91がさらに回転すると、第2の保持部材97Bの先端が仕切板82の凹部84に嵌り込み、レバー部材91の反時計回り方向の回転を防止する。第1の保持部材97Aと第2の保持部材97Bは摩擦力によっても保持されるため、凹部84は省略することも可能である、また、同様の理由から第1の保持部材97Aと第2の保持部材97Bのいずれかを省略することも可能である。しかし、レバー部材91の姿勢(アーム部93の高さ位置)を確実に維持するためには、第1の保持部材97Aと第2の保持部材97Bの両者を設けることが好ましい。
【0025】
レバー部材91の姿勢を維持することで、ラッチ32とラチェット41の噛合いを解除する操作が容易となる。第1の歯車72はトッププレート85と第1の歯車72との間に設けられたばね86によって、下向きに付勢されている。なお、図9は便宜上トッププレート85を仕切板82から離して示している。第1及び第2の保持部材97A,97Bが設けられていない場合、第1の歯車72と第2の歯車73の噛合いを解除した後に操作具を外すと、第1の歯車72がばね86の反力で落下して第2の歯車73と再び噛合う可能性がある。このため、一方の手で操作具によってサブ手動操作部92を操作しながら(B操作)他方の手でラチェット41を動かす操作(A操作)が必要となる。本実施形態ではB操作を行った後に第1の歯車72が落下して第2の歯車73と再び噛合うことがないため、A操作によってラッチ32とラチェット41の噛合いを確実に解除できる。第1の歯車72と第2の歯車73の噛合いがB操作によって解除された後、サブ手動操作部92から操作具を外すことができるため、操作性も向上する。
【0026】
上述の通り、第1及び第2の保持部材97A,97Bがない場合、第1の歯車72を持ち上げた後に、第1の歯車72が落下して第2の歯車73と再び噛合う可能性がある。この際、第1の歯車72が位置ずれを起こし、噛合いが適切に行われず、新たな故障を誘発する可能性がある。この様な事態を防止するためには、一旦B操作をした後は、車両工場等で第1のラッチ装置1の点検修理、動作確認、交換等を行うことが望ましい。本実施形態では第1の歯車72と第2の歯車73の噛合いが解除された状態が保持され、以降はモータ61による開扉及び閉扉が不可能となる(A操作だけが可能となる)ため、第1のラッチ装置1の故障がよりユーザに認識ないし記憶されやすくなる。さらに、レバー部材91が仕切板82の凹部84に嵌った場合は、通常の操作ではレバー部材91を初期位置に戻すことができないため、第1の歯車72が落下することがより確実に防止される。仕切板82に凹部84を設けることで、第1のラッチ装置1の故障がより一層ユーザに認識ないし記憶されやすくなる。なお、B操作を行わない限り、A操作を行った後に整備工場等で第1のラッチ装置1の点検修理、動作確認、交換等を行う必要はない。
【0027】
上述の通り、B操作は整備工場等での点検修理等を伴うため、A操作が成功しなかった場合のバックアップとして行うことが望ましい。本実施形態では、サブ手動操作部92は第2の部分P2に設けられている。図1(a)に示すように、バックドアDの車室側のサブ手動操作部92と対向する部位には開口D1が設けられ、開口D1は開閉可能なカバーCで閉じられている。サブ手動操作部92を操作するためにはカバーCを開けてサブ手動操作部92を露出させる必要がある。従って、モータ61によるバックドアDの開扉ができない場合、第1のラッチ装置1はA操作を優先的に行うように車両のユーザを誘導することができる。
【0028】
B操作は第1の歯車72と第2の歯車73の対ではなく、第2の歯車73と第3の歯車74の対に対して行うこともできる。しかし、図7から分かる通り、第1の歯車72の上方は空間部となっているため、第1の歯車72を持ち上げることで手動切断部9の構造が簡略化できる。なお、第1の歯車72と第2の歯車73の噛合いを解除するためにモータ61の取付ボルトを外し、モータ61と歯車の噛合いを外すことも考えられる。しかし、この方法はモータ61を外す必要があり、解除操作に手間がかかる。本実施形態ではモータ61を動かす必要がないため、動力式噛合い解除部7の歯車伝達経路71の切断を容易に行うことができる。
【0029】
(第2のハウジング81)
第2のハウジング81は動力式噛合い解除部7とモータ61と手動切断部9とを収容する。第2のハウジング81は樹脂で作成されている。前述の通り、第1のハウジング51と第2のハウジング81は別々の筐体である。このため、雨水等の水分や塵埃がストライカ噛合い溝34から第1のラッチ装置1の内部に浸入した場合でも、ほとんどの水分や塵埃は第1のハウジング51にとどまり、水分や塵埃の第2のハウジング81への浸入が抑制される。
【0030】
第2のハウジング81の内部には水平方向に広がる仕切板82が設けられている。仕切板82は複数の歯車のうちの少なくとも一つの歯車(本実施形態では第2の歯車73と第3の歯車74)とモータ61とを仕切る。すなわち、図8に模式的に示すように、仕切板82は第2のハウジング81を、モータ61が収容される上部領域83Aと、主に歯車が収容される下部領域83Bとに分割する。第1のハウジング51と第2のハウジング81の下部領域83Bは、ラッチ32及びラチェット41を収容するために連通しており、完全に仕切られていない。しかし、仕切板82は上部領域83Aと下部領域83Bとを実質的に仕切ることができるため、第2のハウジング81の下部領域83Bに浸入した水分や塵埃がモータ61の近傍に達することが抑制される。図7に示すように、第2のハウジング81の上部領域83Aには、モータ61の出力軸63が通る部分を備えた隔離壁84が設けられている。隔離壁84はモータ本体62と接続部64とを仕切るため、水分や塵埃がモータ本体62に達することがさらに抑制される。モータ本体62と第2のハウジング81の上部領域83Aはトッププレート85で覆われるため、モータ61はトッププレート85と仕切板82と第2のハウジング81の側壁で囲まれた実質的な密閉空間に設置される。これによって、水分や塵埃をモータ本体62に達することがさらに抑制される。
【0031】
(第2のラッチ装置101)
図14,15を参照して第2のラッチ装置101について説明する。第2のラッチ装置101はシンチング機能を備えないことを除いて、第1のラッチ装置1と同様の構成を有する。以下、第1のラッチ装置1との相違点を中心に説明する。説明を省略した構成や効果は第1のラッチ装置1と同様である。
【0032】
第2のラッチ装置101の噛合いユニット3は第1のラッチ装置1の噛合いユニット3と実質的に共通である。すなわち、第2のラッチ装置101の噛合い機構31のラッチ32及びラチェット41並びに第1のハウジング51は第1のラッチ装置1と共通である。手動式噛合い解除部44の構成も第1のラッチ装置1と同様である。ただし、第2のラッチ装置101はシンチング機能を有さないため、第2のラッチ装置101のラッチ32の作用部37は削除してもよい。第2のラッチ装置101ではシンチング部材78は省略されている。カバープレート2も第1のラッチ装置1と第2のラッチ装置101で共通である。これらの部品を共通化することで、部品のコスト低減が可能となる。第1及び第2のラッチ装置1,101を設計する際も、噛合いユニット3については設計の共通化が可能となるため、設計コストの低減や設計時間の短縮が可能である。カバープレート2が共通化されることで、組立時に用いるカバープレート2の治具などの製造設備の共通化も可能となる。
【0033】
第2のラッチ装置101の噛合い解除ユニット6は、モータ61と、動力式噛合い解除部7と、第2のハウジング81と、トッププレート85と、を有する。ただし、動力式噛合い解除部7の歯車伝達経路71の構成は簡素化されており、図14に示すように第1の歯車172だけが設けられている。第1の歯車172はピニオン歯車64と噛み合う大径部172Aだけしか設けられていない。第1の歯車172には、第1の突出し部176を備えた噛合い解除部材175が連結されている。手動切断部9も省略されている。動力式噛合い解除部7の構成が第1のラッチ装置1と大きく異なるため、第2のハウジング81及びトッププレート85の構成も第1のラッチ装置1と異なる。このように、第1のラッチ装置1の噛合い解除ユニット6と第2のラッチ装置101の噛合い解除ユニット6については共通化できる部品が少ないため、個別に設計製作する。本実施形態の第1及び第2のラッチ装置1,101では、部品の共通性の高い噛合いユニット3を部品の共通性の低い噛合い解除ユニット6から独立したユニットとしているため、第1及び第2のラッチ装置1,101全体でみたときの製造性の向上やコストダウンが可能となる。
【0034】
(メモリーレバー10)
バックドアDの持ち上がり量が不十分である場合、バックドアDが十分に開く前に、ラチェット41がラッチ32のフルラッチ噛合い部36やハーフラッチ噛合い部35と再び噛合い、バックドアDが開かないことがある。このような現象は、例えば、車両が前下がり姿勢で駐車したとき、ウェザーストリップの反発力が低下したとき、バックドアDの周縁部が凍結したときなどに生じる。この問題に対処するためメモリーレバー10が設けられている。メモリーレバー10はラチェット41の上方にばねで支持されている。メモリーレバー10はばねで反時計回り方向に付勢され、ラチェット41の突起状の第2のメイン手動操作部44Bと当接している。開扉時にラチェット41が反時計回り方向に回転すると、メモリーレバー10は第2のメイン手動操作部44Bと摺動しながらラチェット41に対して相対的に右側に移動し、端部11が第2のメイン手動操作部44Bに設けられたポケット46と噛合う。これによって、ラチェット41の時計回り方向の回転が阻止され、ラチェット41がラッチ32と噛合うことが防止され、バックドアDをさらに開くことが可能となる。バックドアDがさらに開くとラッチ32が回転し、ラッチ32の上面に設けられた突起38がメモリーレバー10を押す。これによってメモリーレバー10とポケット46との噛合いが解除され、メモリーレバー10は元の状態に復帰する。なお、メモリーレバー10は第1の実施形態にも適用可能である。
【0035】
再び図1を参照すると、第1及び第2のラッチ装置1,101は、これらが取り付けられたバックドアDの閉扉状態で、カバープレート2の車両後端部24が第1及び第2のラッチ装置1,101の車両後端部と一致している。すなわち、取付状態でカバープレート2の車両後端部24から鉛直線Lを引いた場合に、第1及び第2のラッチ装置1,101の全体が鉛直線Lより車室側(車両前方側)にある。バックドアDの厚さは車両の軽量化や車内スペースの拡大のため薄くなる傾向があり、しかもバックドアDの後部はスイッチなどの電気部品や取手などが取り付けられるため、ラッチ装置の設置場所は主にバックドアDの車室側に限られている。本実施形態の第1及び第2のラッチ装置1,101はバックドアDの後方に張り出すことがないため、様々な車両への適合性が高い。
【符号の説明】
【0036】
1,101 第1、第2のラッチ装置
D 車両のバックドア
P1,P2 第1、第2の部分
R1~R3 第1~第3の回転軸
S ストライカ
2 カバープレート
3 噛合いユニット
31 噛合い機構
32 ラッチ
33 ラッチ軸
41 ラチェット
42 ラチェット軸
44 手動式噛合い解除部
44A,44B 第1、第2のメイン手動操作部
51 第1のハウジング
54 第1の開口
55 第2の開口
6 噛合い解除ユニット
61 モータ
62 モータ本体
63 出力軸
64 接続部
7 動力式噛合い解除部
71 歯車伝達経路
72~74 第1~第3の歯車
81 第2のハウジング
82 仕切板
84 隔離壁
85 トッププレート
9 手動切断部
91 レバー部材
92 サブ手動操作部
94A,94B 当接部
95 操作面
96 スリット
97A,97B 保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15