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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178093
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】表示装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/344 20180101AFI20231207BHJP
   H04N 13/383 20180101ALI20231207BHJP
   H04N 13/128 20180101ALI20231207BHJP
   H04N 13/239 20180101ALI20231207BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20231207BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20231207BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H04N13/344
H04N13/383
H04N13/128
H04N13/239
H04N5/64 511A
G09G5/00 550C
G09G5/36 510V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091156
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 総一郎
【テーマコード(参考)】
5C061
5C182
【Fターム(参考)】
5C061AA01
5C061AB14
5C061AB18
5C182AA02
5C182AA05
5C182AA22
5C182AA26
5C182AA31
5C182AB35
5C182AC02
5C182AC03
5C182AC46
5C182BA01
5C182BA14
5C182BA29
5C182BA56
5C182CB12
5C182CB42
5C182CB47
5C182CC24
5C182DA02
5C182DA04
5C182DA14
(57)【要約】
【課題】 メニューアイコン等の虚像を、ユーザーがより鮮明に見ることが可能な表示装置を提供すること。
【解決手段】 表示する虚像の奥行き位置を制御する表示装置であって、画像から奥行き情報を取得する第1の取得手段と、ユーザーの両眼の輻輳情報を取得する第2の取得手段と、前記虚像の奥行き位置を決定する奥行き決定手段と、を有し、前記奥行き決定手段は、前記第1の取得手段で取得した奥行き情報に基づいて奥行き位置を決定する第1の決定手段と、前記第2の取得手段で取得した輻輳情報に基づいて奥行き位置を決定する第2の決定手段と、を有し、表示する虚像に応じて、前記第1の決定手段と第2の決定手段とを切り替えて、奥行き位置を決定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示する虚像の奥行き位置を制御する表示装置であって、
画像から奥行き情報を取得する第1の取得手段と、
ユーザーの両眼の輻輳情報を取得する第2の取得手段と、
前記虚像の奥行き位置を決定する奥行き決定手段と、を有し、
前記奥行き決定手段は、
前記第1の取得手段で取得した奥行き情報に基づいて奥行き位置を決定する第1の決定手段と、
前記第2の取得手段で取得した輻輳情報に基づいて奥行き位置を決定する第2の決定手段と、を有し、
表示する虚像に応じて、前記第1の決定手段と第2の決定手段とを切り替えて、奥行き位置を決定する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
画像を撮像する撮像手段を有し、
前記第1の取得手段は、前記撮像手段が撮像した画像に基づいて、奥行き情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記撮像手段が撮像した画像から被写体を検出する被写体検出手段を有し、
前記第1の取得手段は、前記被写体の奥行き情報を取得する
ことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1の決定手段は、前記第1の取得手段が取得した奥行き位置から所定の距離範囲内の位置を前記虚像の奥行き位置とする
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2の決定手段は、前記第2の取得手段が取得した輻輳位置から所定の距離範囲内の位置を前記虚像の奥行き位置とする
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1の取得手段は、前記画像の奥行きの3次元座標を取得し、
前記第2の取得手段は、前記両眼の輻輳位置の3次元座標を取得し、
前記奥行き決定手段は、前記虚像の3次元座標を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2の決定手段は、前記第2の取得手段が取得した輻輳位置の3次元座標から所定の距離範囲内の座標を前記虚像の座標とする
ことを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記奥行き決定手段は、前記第1の取得手段が取得した奥行きの3次元座標とは異なる座標を前記虚像の3次元座標として決定する
ことを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項9】
表示装置に表示する虚像の奥行き位置を制御する制御方法であって、
画像から奥行き情報を取得する第1の取得工程と、
ユーザーの両眼の輻輳情報を取得する第2の取得工程と、
前記虚像の奥行き位置を決定する奥行き決定工程と、を有し、
前記奥行き決定工程は、
前記第1の取得手段で取得した奥行き情報に基づいて奥行き位置を決定する第1の決定工程と、
前記第2の取得手段で取得した輻輳情報に基づいて奥行き位置を決定する第2の決定工程と、を有し、
表示する虚像に応じて、前記第1の決定工程と第2の決定工程とを切り替えて、奥行き位置を決定する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実空間に虚像を重畳して表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立体画像を表示する技術開発が進み、奥行きを持った立体画像を表示することが可能なヘッドマウントディスプレイ(以下「HMD」と記載する)が普及してきており、光学透過型のHMDも開発されている。光学透過型のHMDは、ホログラフィック素子やハーフミラー等を用いて、仮想的な立体画像であるAR(Augmented Reality)イメージを表示しつつ、HMD外の実空間の様子をシースルーで表示可能である。この時、ARイメージである虚像は、実空間に重畳して表示される。
【0003】
このARイメージである虚像が実空間の物体と違和感なく調和し、実空間に存在するかのように見えるように、虚像の立体感を向上させる様々な技術が開発されている。例えば、特許文献1では、取得した実空間の奥行き情報をもとに、表示する虚像の奥行き位置を自由に変更可能にすることで、より実空間に調和した虚像の表示を可能にしている。この虚像の奥行き位置を制御する技術により、ユーザーが虚像を見ている時は虚像が鮮明に見え、虚像とは異なる奥行き位置の実空間の物体を見ている時は虚像が自然にぼやけて見える為、ユーザーは虚像に対して実物体のような自然な奥行き感を得る事ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-24273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来技術では、ユーザーが実空間を見ながら同時にメニューアイコンや付加情報等の虚像を見たい場合、ユーザーが見ている実空間の物体の奥行き位置と、表示している虚像の奥行き位置が一致していないと虚像がぼやけて見えてしまう。ユーザーが虚像に視線を合わせると、ユーザーが見ていた実空間の物体は虚像とは異なる奥行き位置である為、ぼやけて見えてしまい、実空間の物体と表示される虚像を同時に見ることが困難になってしまう。ユーザーが実空間の物体と虚像を同時に見たい場合に、それぞれの奥行き位置に合わせて視線の奥行き位置を変更する事はユーザーにとって大きな負荷になる。また、虚像を常にユーザーから鮮明に見えるように表示すると、虚像が実空間に存在するかのように表示したい場合に、ユーザーが視線を変えても虚像は自然にぼやけて見えない為、実物体のような自然な奥行き感を得る事が出来なくなってしまう。このように、従来技術では、虚像の立体感が向上するように実空間の奥行き情報に基づいて虚像の表示奥行き位置を制御しつつ、メニューアイコン等の虚像をユーザーが見ている実空間の物体と常に同時に鮮明に見ることが困難であるという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、メニューアイコン等の虚像を、ユーザーがより鮮明に見ることが可能な表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するために、本発明の一側面としての表示装置は、表示する虚像の奥行き位置を制御する表示装置であって、画像から奥行き情報を取得する第1の取得手段と、ユーザーの両眼の輻輳情報を取得する第2の取得手段と、前記虚像の奥行き位置を決定する奥行き決定手段と、を有し、前記奥行き決定手段は、前記第1の取得手段で取得した奥行き情報に基づいて奥行き位置を決定する第1の決定手段と、前記第2の取得手段で取得した輻輳情報に基づいて奥行き位置を決定する第2の決定手段と、を有し、表示する虚像に応じて、前記第1の決定手段と第2の決定手段とを切り替えて、奥行き位置を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表示装置によれば、メニューアイコン等の虚像を、ユーザーがより鮮明に見ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る、立体画像表示装置のシステム構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る、実空間画像情報に基づいた虚像の表示方法を説明する図である。
図3】本発明の実施形態に係る、ユーザーの視線情報に基づいた虚像の表示方法を説明する図である。
図4】本発明の実施形態に係る、立体画像表示装置の外観構成図である。
図5】本発明の実施形態に係る、虚像の奥行き位置の制御方法を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係る、ユーザーの視線奥行き情報の取得方法を説明する図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る、虚像表示シーケンスである。
図8】本発明の第2の実施形態に係る、ユーザーの視線情報に基づいた虚像の表示を説明する図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る、虚像表示シーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態1]
本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0011】
図4は、本実施例における立体画像表示装置100の外観構成の一例を示す図である。
【0012】
102は、実空間の画像情報を取得する撮像部であり、左右2つの画像情報を同時に取得可能である。この取得した2つの画像の視差情報から、立体画像表示装置100と実空間の物体との距離を算出することが可能である。例えば、左右2つの撮像部102の間の距離(基線長)と、撮像部102の焦点距離、2つの画像の視差情報から、一般的な三角測量の手法を用いて実空間の物体との距離情報を算出することが出来る。111は、撮像部で取得した実空間の画像に、虚像を重畳させて表示する表示部である。表示部111は、左目用の視差画像と右目用の視差画像を表示することで、奥行き感を持った立体的な画像を表示することが出来る。
【0013】
図2は、本実施例における、実空間の画像の奥行き情報に基づいて虚像を表示する場合の虚像表示方法を説明する図である。
【0014】
図2(a)は、立体画像表示装置100を使用したユーザーが、虚像を重畳していない実空間の物体200を見ている様子を示す図である。立体画像表示装置100は、撮像部102で撮像した実空間の画像に対して、仮想的な3次元直交座標系を設定している。立体画像表示装置100は、撮像部102で撮像した画像から被写体を認識し、各被写体の仮想的な3次元直交座標系における座標を算出する。立体画像表示装置100は、撮像部102で撮像した2つの画像の視差情報から被写体の奥行き位置を算出し、算出した奥行き位置と、撮像した画像における被写体の水平・垂直位置とから、仮想的な3次元座標系における被写体の座標位置を算出する。本実施例では、立体画像表示装置100は、実空間の物体200を認識し、物体200の奥行きL1を算出して、仮想的な3次元直交座標系における物体200の座標を算出している。
【0015】
図2(b)は、立体画像表示装置100が、実空間の画像に虚像201を重畳して表示する様子を示す図である。本実施例では、立体画像表示装置100に予め登録された複数の虚像の中からユーザーに表示を指示された虚像201を表示している。立体画像表示装置100は、物体200の上に虚像201が置かれているように見せる為に、算出した物体200の奥行きL1と同じ奥行き位置に虚像201を表示している。本実施例では、立体画像表示装置100が実空間の画像から検出した被写体は物体200の1つのみだが、複数の被写体が存在しても良い。立体画像表示装置100が複数の被写体を検出した場合は、複数の被写体の中から選択した1つの被写体の奥行き位置と、虚像201の奥行き位置が一致するように虚像201を表示する。立体画像表示装置100が実空間の画像から被写体を1つも検出しなかった場合は、予め設定された奥行き位置に虚像201を表示する。また、立体画像表示装置100は、撮像部102が撮像した被写体を人・動物・物体等、複数の種類に分類して認識可能である。本実施例では、表示する虚像毎に、どの分類の被写体のどの位置に重畳して表示するかが予め設定されている。例えば、皿の虚像は実空間の机の上に置かれているように重畳し、帽子の虚像は実空間の人が頭にかぶっているように重畳する。実空間画像の奥行き情報に基づいて虚像を表示する場合、立体画像表示装置100は、設定した仮想的な3次元直交座標系の絶対座標位置に虚像を表示し、ユーザーから虚像の再表示や表示位置の移動を指示されない限り、虚像の表示座標は変更しない。よって、ユーザーが顔の向きを変えると虚像はユーザーの視界から外れ、顔の向きを元に戻すと虚像は再び見えるようになる。また、ユーザーが視線を虚像とは異なる奥行き位置に変更すると、虚像は自然とぼやけて見え、視線を再び虚像に合わせると虚像は鮮明に見ることが出来る。このような表示方法を実施することで、実空間に虚像が存在するかのように表示することが出来る。
【0016】
図3は、本実施例における、ユーザーの視線情報に基づいて虚像を表示する場合の虚像表示方法を説明する図である。図3は、立体画像表示装置100を使用したユーザーが、実空間の被写体300を見ながら同時にメニューアイコンや付加情報等の虚像301を見たい場合における、虚像301の表示方法を示している。本実施例では、立体画像表示装置100に予め登録された複数の虚像の中からユーザーに表示を指示された虚像301を表示している。立体画像表示装置100は、ユーザーが見ている視線の奥行き情報を算出可能であり、図3では算出した視線奥行き位置に基づいて虚像を表示している。本実施例では、図2で示したように実空間画像の奥行き情報に基づいて虚像を表示するか、図3で示すようにユーザーの視線情報に基づいて虚像を表示するか、が表示する虚像毎に予め設定されている。例えば、実空間に存在するかのように表示したい虚像は、実空間画像の奥行き情報に基づいて表示し、メニューアイコンや付加情報等の虚像は、ユーザーの視線奥行き情報に基づいて表示する。立体画像表示装置100は、算出したユーザーの視線奥行きL2と同じ奥行き位置に虚像301を表示している。立体画像表示装置100は、ユーザーの視線奥行き情報を常に算出しており、ユーザーの視線奥行き位置が変化したら、虚像301の奥行き位置も常に視線奥行き位置と一致するように虚像301の表示位置を変更する。よって、ユーザーが実空間で見たい被写体を変更しても、常に虚像301はユーザーの視線奥行き位置と同じ奥行き位置に表示される為、ユーザーは虚像301と実空間で見たい被写体を常に同時に鮮明に見ることが出来る。
【0017】
図1は、本実施例における立体画像表示装置100のシステム構成図である。
【0018】
101は、立体画像表示装置100全体の制御を司るCPUである。102は、実空間の画像情報を取得する撮像部であり、フォーカス調節や露出調節を行う結像光学部や、光学像を電気信号に変換する撮像素子等で構成される。103は、撮像した画像データに対して、ノイズ低減処理等の各種画像処理を施す画像処理部である。106は、撮像した画像から被写体を検出する被写体検出部である。104は、画像データを一時的に格納する為のメモリとなるDRAMである。105は、表示する各虚像情報や各種設定値を記憶するメモリとなるROMである。107は、撮像した画像データから3次元座標を算出する画像3次元座標算出部であり、画像奥行き算出部108は、検出した被写体等の奥行き位置を算出する。109は、ユーザーの視線先の3次元座標を算出する視線3次元座標検出部であり、視線奥行き算出部110は、ユーザーの視線奥行き位置を算出する。112は、ユーザーから表示を指示された虚像の表示位置を決定する虚像3次元座標決定部であり、113は、画像奥行き算出部108の算出結果と、視線奥行き算出部110の算出結果から、表示する虚像の奥行き位置を決定する虚像奥行き決定手段である。111は、ユーザーから表示を指示された虚像を、虚像3次元座標決定部112が決定した表示位置に表示する表示部である。
【0019】
図5は、本実施例における、表示する虚像の奥行き位置の制御方法を説明する図である。
【0020】
視点500の視線方向にZ軸が定められており、Z軸上に凸レンズ501の光軸とZ軸が一致するように凸レンズ501は配置されている。凸レンズ501の焦点距離はFである。502、503は透過型有機EL等の透過型表示素子であり、不図示のモータ等によって凸レンズ501からの距離A1、A2はそれぞれ変更可能である。尚、図5では502、503の2枚しか図示していないが、3枚以上の複数の透過型表示素子を備えても良い。透過型表示素子502、503は、それぞれ独立して異なる画像504、505を表示することが可能である。透過型表示素子502、503は、可視光を透過可能な部材である。透過型表示素子502、503によって表示される画像は、視点500から見ると重畳されて見える。透過型表示素子502、503は、凸レンズ501の焦点の内側に配置されており、視点500から表示画像504を見ると、表示画像504は凸レンズ501から距離B1離れた位置に、虚像506として観察される。このとき、距離A1、B1、および焦点距離Fの関係は、以下の式(1)で示す既知のレンズの公式によって規定される。
1/A1 - 1/B1 = 1/F ・・・・ 式(1)
【0021】
また、表示画像504の大きさP1に対する虚像506の大きさQの割合は、以下の式(2)で表される。
Q/P1 = B1/A1 ・・・・ 式(2)
【0022】
また、式(1)を変形することにより、距離A1を距離B1の関数として、以下の式(3)のように表すことが出来る。
A1 = FB1/(F+B1) = F/(1+F/B1) ・・・・ 式(3)
【0023】
式(3)により、凸レンズ501からの距離B1の位置に虚像506を表示する為に、画像504を表示する透過型表示素子502を配置すべき位置A1を求めることが出来る。
【0024】
また、式(2)に式(1)を代入して変形すると、以下の式(4)のように表すことが出来る。
P1 = QF/(B1+F) ・・・・ 式(4)
【0025】
式(4)により、距離B1の位置にQの大きさの虚像506を表示する為に表示画像504として表示すべき大きさP1を求めることが出来る。次に、凸レンズ501からの距離B1とは異なる距離B2に、虚像506と同じ大きさQの虚像507を表示したい場合の制御方法について説明する。凸レンズ501と、透過型表示素子503との距離A2は、式(3)より、以下の式(5)で表すことが出来る。
A2 = F/(1+F/B2) ・・・・ 式(5)
【0026】
式(5)により、凸レンズ501からの距離B2の位置に虚像507を表示する為に、画像505を表示する透過型表示素子503を配置すべき位置A2を求めることが出来る。
【0027】
また、表示すべき画像505の大きさP2は、式(4)より以下の式(6)で表すことが出来る。
P2 = QF/(B2+F) ・・・・ 式(6)
【0028】
式(6)により、距離B2の位置にQの大きさの虚像507を表示する為に表示画像505として表示すべき大きさP2を求めることが出来る。このように、透過型表示素子502、503の凸レンズ501からの距離A1、A2、及び表示する大きさP1、P2を変更することで、表示する虚像506、507の視点500からの奥行き位置Z1、Z2と大きさQを制御することが出来る。
【0029】
図6は、ユーザーの視線奥行き情報の取得方法を説明する図である。図5で説明したように、500は視点、501は凸レンズ、502、503は透過型表示素子である。600は、視線方向検出器であり、ユーザーの左右両眼の視線が交差する角度、すなわち輻輳角θを輻輳情報として検出することが出来る。視線方向検出器600の視線方向検出方法は、一般的な様々な方法で実現可能である。例えば、左右両眼について、近赤外光を眼球に照射してその反射光を黒眼の両側に配置した光検出器で検出し、その黒眼と白眼の境界で光量の変化を捉えて視線方向ないし眼球運動を検出する方法がある。他の方法として、スポット光を眼球に照射し、その反射光を2次元光位置検出器で捉えるようにし、あるいは微小テレビジョンカメラを用いて黒眼の位置情報を得ることで眼球運動を検出することが出来る。図6のIは、瞳孔間隔である。輻輳角θと、瞳孔間隔Iより、視点500から視線が交差する輻輳位置、すなわち視線の奥行き位置Zは、以下の式(7)で表すことが出来る。(輻輳角θの単位はラジアン)
Z = I/θ ・・・・ 式(7)
【0030】
このようにして、ユーザーの視線の奥行き位置を算出出来る為、図5で説明した制御により、ユーザーの視線奥行き位置に虚像を表示することが出来る。
【0031】
図7は、本実施例における虚像表示シーケンスである。
【0032】
CPU101は、ユーザーから虚像の表示を指示されたら(S701)、ユーザーに表示を指示された虚像が、撮像した画像奥行き情報から算出した固定座標位置に表示する虚像なのか、ユーザー視線奥行き位置に表示する虚像なのか判断する。本実施例では、どちらの方法で算出した奥行き位置に表示すべきか表示する虚像毎に予め設定されている。撮像した画像奥行き情報から算出した固定座標位置に表示すべき虚像の場合は(S702)、撮像した画像から検出した被写体の奥行き位置を算出する(S703)。ユーザー視線奥行き位置に表示すべき虚像の場合は、ユーザーの視線奥行き位置を算出する(S704)。虚像奥行き決定手段113は、算出した被写体の奥行き位置、および算出したユーザーの視線奥行き位置を用いて、表示する虚像の奥行き位置を決定する(S705)。表示部111は、決定した奥行き位置に虚像を表示する(S706)。ユーザーから虚像表示の停止を指示されなければ上記虚像表示のシーケンスを繰り返し、虚像表示の停止を指示されたら(S707)、CPU101は虚像の表示を停止する(S708)。
【0033】
以上、上記本実施例の制御により、虚像が実空間に存在するかのように虚像の奥行き位置を制御しつつ、かつ、メニューアイコン等の虚像は、ユーザーが見ている実空間の物体と常に同時に鮮明に見ることが出来る。
【0034】
尚、本実施例では、撮像した画像の奥行き情報のみ、もしくはユーザーの視線奥行き情報のみのどちらか一方を用いて表示する虚像の奥行き位置を決定したが、両方の情報を元に表示する虚像の奥行き位置を決定しても良い。例えば、撮像した画像から複数の被写体を検出し、検出した複数の被写体から1つの被写体を選択する際、ユーザーの視線奥行き位置に一番近い奥行き位置の被写体を選択し、選択した被写体と同じ奥行き位置に虚像を表示しても良い。
【0035】
また、本実施例では、撮像した画像の奥行き、及びユーザーの視線奥行きと同じ奥行き位置に虚像を表示したが、撮像した画像の奥行き、及びユーザーの視線奥行きから予め設定された距離内の奥行き位置に虚像を表示しても良い。
【0036】
また、本実施例では、撮像した画像の奥行き位置に基づいて虚像を表示する場合は固定の奥行き位置に虚像を表示したが、ユーザーの指示によって虚像の表示位置を変更可能な構成であっても良い。
【0037】
[実施形態2]
本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0038】
本実施例では、ユーザーの視線情報に基づいた虚像の表示方法、虚像表示シーケンスが第1実施例と異なる。他の構成は第1実施例と同様である為、説明を省略する。
【0039】
図8は、本実施例における、ユーザーの視線情報に基づいた虚像表示方法を説明する図である。図8は、立体画像表示装置100を使用したユーザーが、実空間の被写体300を見ながら同時にメニューアイコンや付加情報等の虚像301を見たい場合における、虚像301の表示方法を示している。本実施例では、立体画像表示装置100に予め登録された複数の虚像の中からユーザーに表示を指示された虚像301を表示している。本実施例では、図2で示したように実空間画像の奥行き情報に基づいて虚像を表示するか、図8で示すようにユーザーの視線情報に基づいて虚像を表示するか、が表示する虚像毎に予め設定されている。立体画像表示装置100は、算出したユーザーの視線奥行きL2と同じ奥行き位置に虚像301を表示している。立体画像表示装置100は、仮想的な3次元直交座標系を設定しており、設定した3次元座標系におけるユーザーの視線先の座標を算出している。本実施例では、ユーザーの視線先の奥行きL2だけでなく、算出した3次元座標上におけるユーザー視線先座標に近い位置に虚像301を表示している。これは、ユーザーの視線先と同じ奥行きL2に虚像を表示すれば実空間の被写体と虚像を同時に鮮明に見る事が出来るが、被写体と虚像が離れているとユーザーは視線を移動する必要があり、被写体と虚像を同時に見る事が出来なくなる可能性がある為である。但し、ユーザーが見ている被写体300と同じ座標位置に虚像を表示してしまうと、被写体300を見る事が出来なくなってしまう為、ユーザーが見ている被写体300とは異なる位置に虚像を表示する。本実施例では、撮像した画像に被写体が存在するか被写体検出部106で検出する。ユーザーの視線先座標に被写体が存在しない場合は、3次元座標上におけるユーザー視線先の座標位置に虚像を表示する。ユーザーの視線先座標に被写体が存在する場合は、3次元座標上における視線先座標から所定距離範囲内で、ユーザーが見ていない他の被写体も存在しない座標位置に虚像301を表示する。この所定距離範囲の値は予め設定されており、所定距離範囲内に被写体が存在しない領域がない場合は、所定距離範囲を拡大して被写体が存在しない領域に虚像を表示する。所定距離範囲を拡大しても被写体が存在しない領域がない場合は、ユーザーが見ていない被写体と同じ位置に虚像を表示する。また、本実施例では、所定距離範囲内の中でユーザーが視線位置を移動しても、虚像301の表示位置は変更しない。これは、ユーザーが虚像301を見る為に視線位置を被写体300から虚像301へ移動した時に虚像301も移動してしまい、ユーザーが虚像301を見る事が出来なくなってしまうからである。ユーザーの視線先位置が所定距離範囲を超えて移動した場合は、視線移動先から所定距離範囲内に虚像301を表示するように、虚像301の表示位置を変更する。本実施例では、ユーザーの視線先が移動している最中は虚像301の表示位置は変更せず、ユーザーの視線先の移動が停止してから予め設定された所定時間経過後に、虚像301の表示位置を変更する。これは、ユーザーが視線を激しく移動している最中に、虚像301も連動して激しく表示位置を変更すると、ユーザーにとって虚像の表示が煩わしく見えてしまう為である。
【0040】
以上の制御を実施することにより、ユーザーは視線位置を大きく移動することなく、実空間で見たい被写体と虚像を常に同時に鮮明に見ることが出来る。
【0041】
図9は、本実施例における虚像表示シーケンスである。
【0042】
CPU101は、ユーザーから虚像の表示を指示されたら(S901)、指示された虚像が、撮像した画像3次元座標から算出した固定座標位置に表示する虚像なのか、ユーザー視線3次元座標から算出した座標位置に表示する虚像なのか判断する。本実施例では、どちらの方法で算出した座標位置に表示すべきか表示する虚像毎に予め設定されている。撮像した画像3次元座標から算出した固定座標位置に表示すべき虚像の場合は(S902)、撮像した画像から検出した被写体の3次元座標位置を算出する(S903)。虚像3次元座標決定部112は、算出した被写体の3次元座標位置を用いて、表示する虚像の3次元座標位置を決定する(S904)。表示部111は、決定した3次元座標位置に虚像を表示する(S920)。ユーザー視線3次元座標から算出した座標位置に表示すべき虚像の場合は、ユーザーの視線先の3次元座標位置を算出する(S910)。画像3次元座標算出部107は、被写体検出部106で検出した被写体の座標位置を算出する(S911)。虚像3次元座標決定部112は、前フレームでユーザー視線3次元座標に基づいた位置に虚像を表示したか判断する(S912)。前フレームで表示していない場合、虚像3次元座標決定部112は、視線先座標から所定距離内、かつ被写体が存在しない領域を虚像の表示座標位置として算出する(S915)。前フレームで表示していた場合、虚像3次元座標決定部112は、前フレームで算出した所定距離範囲内に、現在のユーザーの視線先座標が存在するかを判断する(S913)。現在のユーザーの視線先座標位置が、前フレームで算出した所定距離範囲外であった場合は、現在の視線先座標から所定距離内、かつ被写体が存在しない領域を虚像の表示座標位置として算出する(S915)。現在のユーザーの視線先座標位置が、前フレームで算出した所定距離範囲内であった場合は、虚像表示位置に被写体が存在しないか判断する(S914)。虚像表示位置に被写体が存在する場合は、現在の視線先座標から所定距離内、かつ被写体が存在しない領域を虚像の表示座標位置として算出する(S915)。虚像表示位置に被写体が存在しない場合は、表示する虚像の座標位置は、前フレームで表示した虚像位置から変更しない(S916)。表示部111は、虚像3次元座標決定部112が決定した3次元座標位置に虚像を表示する(S920)。ユーザーから虚像表示の停止を指示されなければ上記虚像表示のシーケンスを繰り返し、虚像表示の停止を指示されたら(S921)、CPU101は虚像の表示を停止する(S922)。
【0043】
以上、上記本実施例の制御により、虚像が実空間に存在するかのように虚像の奥行き位置を制御しつつ、かつ、メニューアイコン等の虚像は、ユーザーが視線位置を大きく移動することなく、実空間で見たい被写体と虚像を常に同時に鮮明に見ることが出来る。
【0044】
尚、撮像した画像の3次元情報に基づいて虚像を表示する場合、ユーザーの視線情報も用いて虚像の表示位置を決定しても良い。例えば、撮像した画像から複数の被写体を検出し、検出した複数の被写体から1つの被写体を選択する際、ユーザーの視線座標位置に一番近い座標の被写体を選択し、選択した被写体の座標位置に基づいて虚像を表示しても良い。
【0045】
また、本実施例では、撮像した画像の奥行きと同じ奥行き位置に虚像を表示したが、撮像した画像の奥行きから予め設定された距離内の奥行き位置に虚像を表示しても良い。
【0046】
また、本実施例では、撮像した画像の奥行き位置に基づいて虚像を表示する場合は固定の奥行き位置に虚像を表示したが、ユーザーの指示によって虚像の表示位置を変更可能な構成であっても良い。
【0047】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
100 立体画像表示装置
101 CPU
102 撮像部
103 画像処理部
104 DRAM
105 ROM
106 被写体検出部
107 画像3次元座標算出部
108 画像奥行き算出部
109 視線3次元座標算出部
110 視線奥行き算出部
111 表示部
112 虚像3次元座標決定部
113 虚像奥行き決定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9