(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178096
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】エネルギー消費量推定装置、エネルギー消費量推定方法、プログラム及びモデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20231207BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20231207BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20231207BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20231207BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20231207BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20231207BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06Q10/04
G06Q50/10
G16Y40/60
G16Y20/20
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091162
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】笠井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】小野 敬俊
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA06
5H181AA14
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC27
5H181EE02
5H181EE10
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF18
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181MA22
5H181MC03
5H181MC24
5H181MC27
5L049AA04
5L049CC20
(57)【要約】
【課題】高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能なエネルギー消費量推定装置、エネルギー消費量推定方法、プログラム及びモデルの生成方法が提供される。
【解決手段】エネルギー消費量推定装置(10)は、車両(20)のエネルギー消費量推定装置であって、説明変数から目的変数を得るためのモデルを生成するモデル生成部(131)と、生成されたモデルを用いて、車両のエネルギー消費量を推定するエネルギー消費量推定部(132)と、を備え、モデルは、複数の説明変数のそれぞれに係数を有する重回帰モデルであって、目的変数として車両のエネルギー消費量を含み、説明変数として車両の走行情報、車両の荷重情報及び車両のタイヤ情報を含み、モデル生成部は、説明変数に対する目的変数が示された車両の実績データを用いて、係数を決定することによってモデルを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエネルギー消費量推定装置であって、
説明変数から目的変数を得るためのモデルを生成するモデル生成部と、
生成された前記モデルを用いて、前記車両のエネルギー消費量を推定するエネルギー消費量推定部と、を備え、
前記モデルは、複数の前記説明変数のそれぞれに係数を有する重回帰モデルであって、前記目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、前記説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含み、
前記モデル生成部は、前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを用いて、前記係数を決定することによって前記モデルを生成する、エネルギー消費量推定装置。
【請求項2】
前記モデルは、前記説明変数として前記車両の単位距離当たりの停車及び発車の回数である停発車情報を含む、請求項1に記載のエネルギー消費量推定装置。
【請求項3】
前記車両の荷重情報は、前記車両の乗降人数に基づいて定められる、請求項1又は2に記載のエネルギー消費量推定装置。
【請求項4】
前記エネルギー消費量推定部は、タイヤの種類に応じた前記車両のエネルギー消費量を推定する、請求項1又は2に記載のエネルギー消費量推定装置。
【請求項5】
車両のエネルギー消費量推定装置が実行するエネルギー消費量推定方法であって、
説明変数から目的変数を得るためのモデルを生成するモデル生成工程と、
生成された前記モデルを用いて、前記車両のエネルギー消費量を推定するエネルギー消費量推定工程と、を備え、
前記モデルは、複数の前記説明変数のそれぞれに係数を有する重回帰モデルであって、前記目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、前記説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含み、
前記モデル生成工程は、前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを用いて、前記係数を決定することによって前記モデルを生成する、エネルギー消費量推定方法。
【請求項6】
車両のエネルギー消費量推定装置に、
説明変数から目的変数を得るためのモデルを生成するモデル生成工程と、
生成された前記モデルを用いて、前記車両のエネルギー消費量を推定するエネルギー消費量推定工程と、を実行させて、
前記モデルは、複数の前記説明変数のそれぞれに係数を有する重回帰モデルであって、前記目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、前記説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含み、
前記モデル生成工程は、前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを用いて、前記係数を決定することによって前記モデルを生成する、プログラム。
【請求項7】
車両のエネルギー消費量推定装置であって、
説明変数から目的変数を得るためのモデルを生成するモデル生成部と、
生成された前記モデルを用いて、前記車両のエネルギー消費量を推定するエネルギー消費量推定部と、を備え、
前記モデルは、前記目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、前記説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含む、機械学習モデルであり、
前記モデル生成部は、前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを用いて、機械学習によって前記モデルを生成する、エネルギー消費量推定装置。
【請求項8】
コンピュータが実行する、車両のエネルギー消費量推定のためのモデルの生成方法であって、
前記モデルは、目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含む、機械学習モデルであり、
前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを取得することと、
前記実績データを用いた機械学習を行うことと、を含む、モデルの生成方法。
【請求項9】
コンピュータに、車両のエネルギー消費量推定のためのモデルを生成させるプログラムであって、
前記モデルは、目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含む、機械学習モデルであり、
前記コンピュータに、
前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを取得することと、
前記実績データを用いた機械学習を行うことと、を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギー消費量推定装置、エネルギー消費量推定方法、プログラム及びモデルの生成方法に関する。本開示は、特に車両のエネルギー消費量を推定するエネルギー消費量推定装置、エネルギー消費量推定方法、プログラム及びモデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の燃費などのエネルギー消費量を推定する技術が提案されている。例えば、特許文献1は、車両から運転履歴に伴う燃料消費量及び走行距離を取得する他に、運転者個人の運転状況パターン毎の燃費傾向に基づいて、走行予定経路の燃料消費量を推定するシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両の燃費などのエネルギー消費量は、走行状況及び装備などの様々な因子によって変化する。特許文献1などの従来技術は、走行予定経路の情報から燃費を推定するが、例えば車両の装備変更などによる燃費の変化を推定することができなかった。そのため、車両のエネルギー消費量について、さらなる推定精度の向上が求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能なエネルギー消費量推定装置、エネルギー消費量推定方法、プログラム及びモデルの生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係るエネルギー消費量推定装置は、車両のエネルギー消費量推定装置であって、説明変数から目的変数を得るためのモデルを生成するモデル生成部と、生成された前記モデルを用いて、前記車両のエネルギー消費量を推定するエネルギー消費量推定部と、を備え、前記モデルは、複数の前記説明変数のそれぞれに係数を有する重回帰モデルであって、前記目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、前記説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含み、前記モデル生成部は、前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを用いて、前記係数を決定することによって前記モデルを生成する。
この構成により、高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能になる。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、前記モデルは、前記説明変数として前記車両の単位距離当たりの停車及び発車の回数である停発車情報を含む。
この構成により、特に公共交通機関の車両について、さらに高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能になる。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、前記車両の荷重情報は、前記車両の乗降人数に基づいて定められる。
この構成により、特に公共交通機関の車両について、さらに高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能になる。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、前記エネルギー消費量推定部は、タイヤの種類に応じた前記車両のエネルギー消費量を推定する。
この構成により、タイヤ変更によるエネルギー消費量の変化を高精度に推定することが可能になる。
【0010】
(5)本開示の一実施形態に係るエネルギー消費量推定方法は、車両のエネルギー消費量推定装置が実行するエネルギー消費量推定方法であって、説明変数から目的変数を得るためのモデルを生成するモデル生成工程と、生成された前記モデルを用いて、前記車両のエネルギー消費量を推定するエネルギー消費量推定工程と、を備え、前記モデルは、複数の前記説明変数のそれぞれに係数を有する重回帰モデルであって、前記目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、前記説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含み、前記モデル生成工程は、前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを用いて、前記係数を決定することによって前記モデルを生成する。
この構成により、高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能になる。
【0011】
(6)本開示の一実施形態に係るプログラムは、車両のエネルギー消費量推定装置に、説明変数から目的変数を得るためのモデルを生成するモデル生成工程と、生成された前記モデルを用いて、前記車両のエネルギー消費量を推定するエネルギー消費量推定工程と、を実行させて、前記モデルは、複数の前記説明変数のそれぞれに係数を有する重回帰モデルであって、前記目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、前記説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含み、前記モデル生成工程は、前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを用いて、前記係数を決定することによって前記モデルを生成する。
この構成により、高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能になる。
【0012】
(7)本開示の一実施形態に係るエネルギー消費量推定装置は、車両のエネルギー消費量推定装置であって、エネルギー消費量推定装置は、説明変数から目的変数を得るためのモデルを生成するモデル生成部と、生成された前記モデルを用いて、前記車両のエネルギー消費量を推定するエネルギー消費量推定部と、を備え、前記モデルは、前記目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、前記説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含む、機械学習モデルであり、前記モデル生成部は、前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを用いて、機械学習によって前記モデルを生成する。
この構成により、高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能になる。
【0013】
(8)本開示の一実施形態に係るモデルの生成方法は、コンピュータが実行する、車両のエネルギー消費量推定のためのモデルの生成方法であって、前記モデルは、目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含む、機械学習モデルであり、前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを取得することと、前記実績データを用いた機械学習を行うことと、を含む。
この構成により、高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能なモデルを生成できる。
【0014】
(9)本開示の一実施形態に係るプログラムは、コンピュータに、車両のエネルギー消費量推定のためのモデルを生成させるプログラムであって、前記モデルは、目的変数として前記車両のエネルギー消費量を含み、説明変数として前記車両の走行情報、前記車両の荷重情報及び前記車両のタイヤ情報を含む、機械学習モデルであり、前記コンピュータに、前記説明変数に対する前記目的変数が示された前記車両の実績データを取得することと、前記実績データを用いた機械学習を行うことと、を実行させる。
この構成により、高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能なモデルを生成できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、高精度に車両のエネルギー消費量を推定することが可能なエネルギー消費量推定装置、エネルギー消費量推定方法、プログラム及びモデルの生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るエネルギー消費量推定装置を含むエネルギー消費量推定システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のエネルギー消費量推定システムの構成例を示す別の図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るエネルギー消費量推定方法の例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3のモデル生成工程の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図3のエネルギー消費量推定工程の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係るエネルギー消費量推定装置、エネルギー消費量推定方法、プログラム及びモデルの生成方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0018】
図1及び
図2は、本実施形態に係るエネルギー消費量推定装置10を含むエネルギー消費量推定システムの構成例を示す図である。
図1はエネルギー消費量推定装置10の内部構成例を含むブロック図である。
図2はエネルギー消費量推定システムの全体構成を示す。
【0019】
エネルギー消費量推定装置10は、車両20のエネルギー消費量推定のための装置である。本実施形態において、エネルギー消費量推定装置10は、モデルを生成し、生成したモデルを用いて車両20のエネルギー消費量を推定する。ここで、エネルギー消費量推定装置10は、モデルを生成する機能のみを備えてよいし、車両20のエネルギー消費量を推定する機能のみを備えてよい。エネルギー消費量は、車両20が走行のために消費するエネルギーの量であって、客観的に比較可能なように、一定の基準当たりで示されるものをいう。エネルギー消費量は、例えば車両20がガソリンを用いるものであれば、燃費(ガソリン1L当たりの走行距離)であってよい。本実施形態において、エネルギー消費量は燃費であるとして説明するが、これに限定されない。例えばエネルギー消費量は、車両20が電気自動車であれば、電費であってよい。また、例えばエネルギー消費量は、車両20が水素を用いるものであれば、単位走行距離当たりの水素の使用量であってよい。また、例えばエネルギー消費量は、単位走行距離当たりの車両20の二酸化炭素の排出量などであってよい。
【0020】
エネルギー消費量推定装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、モデル生成部131と、エネルギー消費量推定部132と、を備える。エネルギー消費量推定装置10は、ハードウェア構成として、例えばコンピュータであってよい。エネルギー消費量推定装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0021】
エネルギー消費量推定装置10は、ネットワーク40で接続される運行管理装置60とともに、エネルギー消費量推定システムを構成してよい。ネットワーク40は、例えばインターネットであるが、LAN(Local Area Network)などであってよい。
【0022】
運行管理装置60は、車両20の運行を管理する装置である。運行管理装置60は、例えばエネルギー消費量推定装置10とは別のコンピュータで構成される。車両20は、特定の用途のものに限定されるものでなく、例えば乗用車、タクシー、トラック等であり得るが、本実施形態においてバスであるとして説明される。つまり、本実施形態において、運行管理装置60は、公共交通機関であるバスとしての車両20を管理する装置である。運行管理装置60は、車両20の走行状態、荷重の状態、さらに装着しているタイヤ30の状態などを管理する。また、運行管理装置60は、車両20の重量などのデータ、車両20の走行ルート(路線)の地図情報などを管理し、渋滞情報及び天候の情報などをネットワーク40経由で取得してよい。運行管理装置60は、車両20の運行に関する情報をデータベースとして蓄積して、アクセス可能な記憶装置に記憶してよい。また、運行管理装置60は、エネルギー消費量推定装置10が車両20のエネルギー消費量を推定できるように、データベースの情報をエネルギー消費量推定装置10に提供する。
【0023】
本実施形態において、バスである車両20は、検出装置70及び運行記録計80を備える。検出装置70は、車両20の走行状態を示す情報である車両運行情報を検出して運行記録計80に出力する。検出装置70は、例えば加速度センサを含み、車両運行情報として車両20の加速度の情報を出力してよい。検出装置70は、例えば速度センサを含み、車両運行情報として車両20の速度の情報を出力してよい。検出装置70は、例えばタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)を含み、車両運行情報として車両20が装着するタイヤ30の内圧の情報を出力してよい。本実施形態において、検出装置70は、運賃を支払うためのICカードのリーダを含み、車両運行情報として車両20の乗降人数を出力する。
【0024】
運行記録計80は、車両運行情報を運行管理装置60に出力する車載装置である。運行記録計80は例えばデジタルタコグラフであってよいが、デジタルタコグラフに限定されない。運行記録計80は、ネットワーク40を介して、運行管理装置60と通信可能であるように構成される。運行管理装置60に出力された車両運行情報は、実績データとして運行管理装置60のデータベースに蓄積される。
【0025】
ここで、実績データ(運行記録計80を介して運行管理装置60に出力された車両運行情報)は、運行管理装置60によって車両20の実際の燃費と関連付けられてデータベースに蓄積される。車両20の実際の燃費は、例えば車両20の給油の情報と走行距離の情報に基づいて運行管理装置60が計算してよい。また、実績データは運行管理装置60によってタイヤ30の種類と関連付けられてデータベースに蓄積される。また、実績データは車両20による分類が可能であるようにデータベースに蓄積される。ここで、車両20による分類は、個別の車両20での分類であってよいし、バスである車両20の運行系統での分類であってよいし、運行地域ごとの分類であってよいし、バスの運営会社ごとの分類であってよい。
【0026】
以下、エネルギー消費量推定装置10の構成要素の詳細が説明される。通信部11は、ネットワーク40に接続する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。通信部11は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば有線のLAN規格(一例として1000BASE-T)に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば無線のLAN規格(一例としてIEEE802.11)に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0027】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えばエネルギー消費量推定装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介してエネルギー消費量推定装置10によって外部からアクセスされる構成も可能である。
【0028】
記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。本実施形態において、記憶部12は、生成されたモデルを記憶する。
【0029】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、エネルギー消費量推定装置10の全体の動作を制御する。
【0030】
ここで、エネルギー消費量推定装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。エネルギー消費量推定装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、制御部13をモデル生成部131及びエネルギー消費量推定部132として機能させる。
【0031】
モデル生成部131は、車両20のエネルギー消費量(本実施形態において燃費)を推定するために用いられるモデルを生成する。モデルは、説明変数から目的変数を得るように構成されていれば、特定のものに限定されない。本実施形態において、モデルは、複数の説明変数のそれぞれに係数を有する重回帰モデル(重回帰式)である。目的変数は車両20の燃費である。また、説明変数は車両20の走行情報、車両20の荷重情報及び車両20のタイヤ情報を含む。上記のように、運行管理装置60のデータベースに蓄積された実績データは、車両20の実際の燃費と関連付けられている。つまり、実績データは、車両20の走行情報、荷重情報及びタイヤ情報に対する燃費を示すものである。モデル生成部131は、車両20の実績データを用いて、係数を決定することによってモデルを生成する。
【0032】
ここで、車両20の走行情報は、実績データにおける車両20の加速度及び速度の少なくとも1つを含んでよい。また、モデル生成部131は、車両20の速度の情報及び走行の時間帯などに基づいて、道路の渋滞の状態を判定して、車両20の走行情報に含めてよい。
【0033】
また、車両20の荷重情報は、運行管理装置60によって管理される車両20の重量の情報を含んでよい。本実施形態において、車両20の荷重情報は、車両20の乗降人数に基づいて定められる。車両20の荷重が、車両20の重量だけで固定的に定められるのでなく、乗降人数に基づく変動が考慮されることによって、正確に車両20の荷重が算出される。モデル生成部131は、乗降人数に基づく車両20の正確な荷重を用いることによって、さらに高精度に車両20の燃費を推定するためのモデルを生成できる。特に、本実施形態のように、乗降が頻繁である公共交通機関の車両20では、乗降人数を考慮してモデルを生成し、乗降人数を考慮したモデルを用いて燃費を推定することによって、燃費推定の精度を高めることができる。
【0034】
また、車両20のタイヤ情報は、タイヤ30の種類を少なくとも含む。車両20のタイヤ情報は、さらに内圧を含んでよい。また、モデル生成部131は、内圧に基づいて公知の推定方法によってタイヤ30の摩耗状態を計算し、車両20のタイヤ情報にタイヤ30の摩耗状態を含めてよい。ここで、一般にタイヤ30の種類及び状態が燃費に影響することが知られている。モデル生成部131は、車両20が装着するタイヤ30の種類などを含むタイヤ情報を用いることによって、さらに高精度に車両20の燃費を推定するためのモデルを生成できる。また、タイヤ30の種類などを考慮したモデルを用いて燃費を推定することによって、例えばタイヤ30の変更による燃費の変化などを高精度に推定できる。
【0035】
さらに、モデルは、説明変数として車両20の単位距離(一例として10km)当たりの停車及び発車の回数である停発車情報を含んでよい。モデル生成部131は、車両20の速度及び走行距離に基づいて停発車情報を計算してよい。本実施形態のように、乗客の乗せる公共交通機関の車両20では、通常の交通信号機による停発車に加えて、乗降場所で停発車が行われる。そのため、モデル生成部131は、車両20の停発車情報を用いることによって、さらに高精度に車両20の燃費を推定するためのモデルを生成できる。また、停発車を考慮したモデルを用いて燃費を推定することによって、燃費推定の精度を高めることができる。
【0036】
ここで、モデル生成部131は、モデル生成に用いる実績データを、例えばタイヤ30の種類、車両20の運行系統などで分類してよい。モデル生成部131は、分類された実績データのそれぞれを用いて、複数のモデルを生成してよい。例えば実績データがタイヤ30の種類Aと種類Bとで分類された場合に、種類Aのタイヤ30に対応するモデルと種類Bのタイヤ30に対応するモデルが生成されてよい。例えば実績データが運行系統である系統X、系統Y又は系統Zで分類された場合に、系統Xを走行する車両20に対応するモデルと、系統Yを走行する車両20に対応するモデルと、系統Zを走行する車両20に対応するモデルと、が生成されてよい。モデル生成部131は、生成したモデルを記憶部12に記憶させてよい。
【0037】
エネルギー消費量推定部132は、モデル生成部131によって生成されたモデルを用いて、車両20のエネルギー消費量(本実施形態において燃費)を推定する。エネルギー消費量推定部132は、通信部11を介してエネルギー消費量推定装置10の外部から推定実行の指示及び推定の条件(入力データ)を受け取った場合に、燃費の推定を実行してよい。モデル生成部131によって複数のモデルが生成された場合に、エネルギー消費量推定部132は、入力データに応じてモデルを選択してよい。例えば、入力データがタイヤ30の種類Aと種類Bとの比較を要求する内容である場合に、エネルギー消費量推定部132は、タイヤ30の種類に応じた2つのモデルを選択して、それぞれの推定(計算)の結果を対比するように出力してよい。
【0038】
図3は、本実施形態に係るエネルギー消費量推定装置10が実行するエネルギー消費量推定方法の例を示すフローチャートである。モデル生成部131は、車両20の燃費を推定するためのモデルを生成するモデル生成工程(ステップS1)を実行する。また、エネルギー消費量推定部132は、生成されたモデルを用いて、車両20の燃費を推定するエネルギー消費量推定工程(ステップS2)を実行する。エネルギー消費量推定工程は、モデル生成工程と連続して実行されてよいが、モデル生成工程の後に一定の時間が経過してから実行されてよい。
【0039】
図4は、
図3のモデル生成工程の詳細を示すフローチャートである。モデル生成部131は、運行管理装置60のデータベースに蓄積された実績データを取得する(ステップS11)。モデル生成部131は、取得した実績データを分類する(ステップS12)。本実施形態において、モデル生成部131は、少なくともタイヤ30の種類に応じて実績データを分類する。そして、モデル生成部131はモデルを生成する(ステップS13)。本実施形態において、モデル生成部131は、複数の説明変数のそれぞれに係数を有する重回帰モデルの係数を決定することによってモデルを生成する。決定された係数は、それぞれの説明変数の燃費(目的変数)に対する寄与度を示す。また、決定された係数の相対的な大きさを計算することによって、それぞれの説明変数の燃費に対する寄与率を求めることができる。
【0040】
図5は、
図3のエネルギー消費量推定工程の詳細を示すフローチャートである。エネルギー消費量推定部132は、エネルギー消費量推定装置10の外部から推定実行の指示を受け取ると、記憶部12からモデルを取得し(ステップS21)、入力データを取得する(ステップS22)。入力データは、上記のように推定の条件を示すデータである。エネルギー消費量推定部132は、複数のモデルが生成されている場合に、入力データに基づいて推定に用いるモデルを選択してよい。また、ステップS21とステップS22の順番を入れ替えたフローが実行されてよい。このとき、エネルギー消費量推定部132は、入力データに基づいて必要と判定したモデルだけを、記憶部12から取得してよい。そして、エネルギー消費量推定部132は、モデルを用いて燃費を推定し、推定結果を出力する(ステップS23)。
【0041】
例えば入力データが、車両20が装着している種類Aのタイヤ30を、種類Bのタイヤ30に変更した場合の燃費の推定を要求するものである場合に、
図6のように推定結果が出力されてよい。推定結果は、ネットワーク40を介して送信されて、燃費推定を要求した者(例えばバスの運行管理者)が見ることができるディスプレイに表示されてよい。例えば
図6の左図のように、種類Aのタイヤ30と種類Bのタイヤ30の複数の燃費計算の結果と種類毎の平均(Ave.)が示されてよい。そして、
図6の右図のように、種類Bのタイヤ30に変更する場合に向上する燃費が、どのような因子に基づくかが寄与率とともに示されてよい。本実施形態において、複数の説明変数のそれぞれに係数を有する重回帰モデルが推定に用いられるため、それぞれの説明変数(因子)が燃費にどの程度寄与しているかを定量的に示すことが可能である。ここで、入力データが指定する条件はタイヤ30の種類に限定されず、例えば運行系統、道路の渋滞の状態などであってよい。エネルギー消費量推定部132は、指定された条件に応じてモデルを選択して、例えば運行系統が異なる場合の燃費の変化、道路の渋滞の状態が異なる場合の燃費の変化などを、燃費推定を要求した者に対して示してよい。
【0042】
以上のように、本実施形態に係るエネルギー消費量推定装置10及びエネルギー消費量推定方法は、車両20のタイヤ情報などの多様な因子を考慮したモデルを用いるものであって、上記の構成及び工程によって、高精度に車両20のエネルギー消費量を推定することが可能である。
【0043】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0044】
例えば
図1及び
図2に示されるエネルギー消費量推定装置10及びエネルギー消費量推定システムの構成は一例であって、
図1及び
図2の構成に限定されるものでない。例えばエネルギー消費量推定システムは、エネルギー消費量推定装置10と運行管理装置60とが一体化された構成であってよい。この場合に、エネルギー消費量推定装置10が運行管理装置60の機能も実行し、エネルギー消費量推定装置10が単体でエネルギー消費量推定システムとして機能してよい。
【0045】
また、モデル生成部131と、エネルギー消費量推定部132と、が異なるコンピュータに含まれる構成であってよい。例えば、モデル生成部131は、エネルギー消費量推定装置10と通信可能であって、記憶部12にもアクセス可能な別のコンピュータに含まれてよい。この場合に、エネルギー消費量推定装置10は、別のコンピュータで生成されて記憶部12に記憶されたモデルを用いて、車両20のエネルギー消費量を推定してよい。モデルは上記と同様に生成されてよい。つまり、別のコンピュータが、車両20の実績データを取得し、実績データを用いてモデルを生成してよい。
【0046】
また、上記の実施形態において、重回帰モデルが用いられたが、機械学習モデルが用いられてよい。つまり、モデルは、目的変数として車両20のエネルギー消費量を含み、説明変数として車両20の走行情報、車両20の荷重情報及び車両20のタイヤ情報を含む、機械学習モデルであってよい。機械学習の手法は、限定されないが、例えばニューラルネットワークなどであってよい。この場合に、モデル生成部131は、車両20の実績データを取得して、実績データを用いた機械学習を行ってモデルを生成する。例えばモデル生成部131による分類処理などによって、適切な実績データを用いて機械学習を実行することによって、高精度に車両20のエネルギー消費量を推定することが可能なモデルが生成される。また、そのモデルを用いて高精度な推定が可能になる。ここで、機械学習モデルが用いられる場合においても、モデル生成部131と、エネルギー消費量推定部132と、が異なるコンピュータに含まれる構成であってよい。つまり、別のコンピュータが機械学習モデルを生成し、エネルギー消費量推定装置10が別のコンピュータで生成されて記憶部12に記憶されたモデルを用いて、車両20のエネルギー消費量を推定してよい。
【符号の説明】
【0047】
10 エネルギー消費量推定装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
20 車両
30 タイヤ
40 ネットワーク
60 運行管理装置
70 検出装置
80 運行記録計
131 モデル生成部
132 エネルギー消費量推定部