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特開2023-178106生体生物輸送コンテナの空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178106
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】生体生物輸送コンテナの空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/26 20060101AFI20231207BHJP
   B60H 1/24 20060101ALI20231207BHJP
   B60H 1/08 20060101ALI20231207BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20231207BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20231207BHJP
   B60P 3/04 20060101ALI20231207BHJP
   B65D 88/74 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B60H1/26 631Z
B60H1/26 671Z
B60H1/24 661A
B60H1/24 661B
B60H1/08 611A
B60H1/22 651Z
B60H1/00 103Z
B60P3/04
B65D88/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091174
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】522222560
【氏名又は名称】アオイ・トータル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093506
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 洋二
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】徳重 勝美
【テーマコード(参考)】
3E170
3L211
【Fターム(参考)】
3E170AA21
3E170AA23
3E170AB30
3E170CA04
3E170CA05
3E170CC04
3E170CC05
3E170DA08
3E170EA01
3E170EA04
3E170EA06
3E170EA10
3E170VA16
3E170WE01
3E170WE02
3E170WE03
3L211AA08
3L211BA09
3L211BA12
3L211BA56
3L211DA03
3L211DA17
3L211DA22
3L211DA42
3L211DA75
3L211DA82
3L211DA83
3L211EA12
3L211EA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】適性な生存環境を維持して遠隔地まで安全に輸送できる生体生物輸送コンテナの空調システムを提供する。
【解決手段】荷室環境管理室103と荷室102の間に塵埃ろ過材(フィルタ)109が設置されてなり、筐体101の天井102aの運搬車両による輸送方向に沿って冷暖房装置で快適化処理された空気流を荷室の後内壁102bに向けて供給するダクト118を備える。筐体の荷室の天井を貫通し、外気を当該荷室内に吸気する後方吸気口105を有する。筐体の荷室の天井を貫通し、前側に設けられて当該荷室の一部の空気を外界に放出する前方排気口106を有する。荷室と荷室環境管理室を循環する主たる気流115が、荷室の上方領域から筐体の後内壁を床面102c方向に降流して当該荷室の下方領域方向に変路し、荷室の前内壁102dを昇流して当該荷室の上方領域に戻る循環経路を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の生体生物を入れた運搬籠を並列多段に積載可能な荷室と、この荷室に隣接して区画された荷室環境管理室を備える筐体を有し、運搬車両の荷台に積載して輸送するための生体生物輸送コンテナの空調システムであって、
前記荷室環境管理室は前記荷室に対して前記運搬車両の通常走行による輸送方向に関して前側に配置されており、
前記荷室環境管理室に冷暖房装置が設けられ、当該荷室環境管理室と前記荷室の間に塵埃ろ過材が設置されてなり、かつ前記筐体の天井の前記運搬車両による輸送方向に沿って前記冷暖房装置で快適化処理された空気流を前記荷室の後内壁に向けて供給するダクトを備え、
前記筐体の前記荷室の天井を貫通し、前記運搬車両による前記輸送方向に関して後側に設けられて外気を当該荷室内に吸気する後方吸気口を有し、
前記筐体の前記荷室の天井を貫通し、前記運搬車両による前記輸送方向に関して前側に設けられて当該荷室の一部の空気を外界に放出する前方排気口を有し、
前記荷室と前記荷室環境管理室を循環する主たる気流が、前記荷室の上方領域から前記筐体の後内壁を床面方向に降流して当該荷室の下方領域方向に変路し、前記荷室の前内壁を昇流して当該荷室の上方領域に戻る循環経路を形成することを特徴とする生体生物輸送コンテナの空調システム。
【請求項2】
前記荷室環境管理室の前記前側で、前記前内壁を貫通して外気を導入する前方補助吸気口を有し、
前記荷室の前記筐体の後内壁を貫通して前記主たる気流の一部を外界に放出する後方補助排気口を備えたことを特徴とする請求項1に記載の生体生物輸送コンテナの空調システム。
【請求項3】
前記荷室環境管理室に設けられる前記冷暖房装置は、エアヒータとエバポレータを備え、前記荷室の複数個所に温度と二酸化炭素濃度等の必要な室内環境情報を取得するセンサが設置されており、
前記センサの検知信号に基づいて前記荷室に流入する気流による室内環境を生体生物の生存のための適性値に調整する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の生体生物輸送コンテナの空調システム。
【請求項4】
前記ダクトに、前記荷室環境管理室から流入して前記主たる気流を構成する気流の流通方向と交差する方向に噴出させる複数の空気吐出口を有し、
前記主たる気流と前記空気吐出口から吐出する気流との合成により、前記荷室内の空気に容積移動を生起させることで、当該荷室の全体空気を常に新鮮な状態に維持することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載の生体生物輸送コンテナの空調システム。
【請求項5】
前記荷室の前後方向中間部内側の天井に中間ファンを備え、当該荷室の内部空気を撹拌して、空気の局部的な偏りを低減することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1に記載の生体生物輸送コンテナの空調システム。
【請求項6】
前記筐体の主壁構成材をFRPとしたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1に記載の生体生物輸送コンテナの空調システム。
【請求項7】
前記荷室環境管理室に備えるエアヒータは、前記運搬車両のエンジン冷却水を暖房熱媒体として用いることを特徴とする請求項3に記載の生体生物輸送コンテナの空調システム。
【請求項8】
前記荷室環境管理室に備える前記エバボレータへの冷媒は、前記運搬車両の荷台側に備えるコンプレッサ/コンデンサから冷媒路を通して供給されることを特徴とする請求項3に記載の生体生物輸送コンテナの空調システム。
【請求項9】
前記筐体の空調システムの制御装置は、前記運搬車両に搭載され、その操作卓とモニタは当該運搬車両の操縦席に設置されており、この制御装置と前記筐体の空調機器の制御信号線、温水循環パイプは連結/解除が可能に設置されていることを特徴とする請求項3に記載の生体生物輸送コンテナの空調システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記筐体の前記荷室環境管理室に設置され、その操作卓は当該運搬車両の操縦席に設置されていることを特徴とする請求項3に記載の生体生物輸送コンテナの空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体生物の輸送技術に係り、孵化後の多数の生体生物を安全に輸送するための対策を施した生体生物輸送コンテナの空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家畜(生体生物)を生きたまま遠隔地に輸送する手段として、荷台に当該家畜を収容する荷室を構成した有蓋ボックス(筐体、以下コンテナボックスとも称する)を積載した車両、所謂コンテナトラックが多く用いられている。
例えば、多数羽のひよこ等の小型家畜を遠隔輸送するものでは、コンテナボックスにひよこ等を入れた運搬籠(ひよこ籠)を並列多段に積載可能な荷室を設け、この荷室に外気を導入し、あるいは空調設備で処理した空気を荷室に導入し、循環するようにしたものは既知である。
【0003】
ひよこは、一羽の体温が高く(40℃と言われている)、二酸化炭素等のひよこが排出するガス(ひよこガス)の量も多い。また、通常輸送では20,000羽前後の大量のひよこをコンテナボックスに収容するため、二酸化炭素の廃棄処理も重要な解決課題となる。
【0004】
生きた家畜(生体生物)などを輸送する手段としてのこの種のコンテナトラックに関する従来技術を開示したものとして、特許文献1、特許文献2、特許文献3などを挙げることができる。特許文献1は、家畜室(荷室)の屋根板の内側に空気吹き出し口を有する天井板を設け、屋根板の先端側に設けた開口から導入した外気を空気吹き出し口から家畜室に導入し、側面から排気をするようにした家畜輸送車を開示する。
【0005】
また、特許文献2開示された家畜輸送トラックは、特にひよこの多数羽輸送に用いるコンテナトラックである。このコンテナトラックは、ひよこを収容した多数の籠(ひよこ籠)を多段かつ平面視で進行方向に開いたV字状に集積し、コンテナボックス(筐体)の進行方向前方上端に空気取り入れ口を設けると共に、後端の側壁に縦形排気口を設けて、良好にひよこ籠を空調処理するようにしている。
【0006】
そして、特許文献3は、実験生物を収容する荷室内にフィルタを介して空気が循環する温調設備室を設けて無菌状態で輸送する空調車両を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60-163130号公報
【特許文献2】米国特許公開第2016/0106073 A1
【特許文献3】特開2018-176969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記したように、多数の生体生物、特に多数羽のひよこを遠隔地に輸送する際の課題として、第1に温度管理、第2にひよこガス(二酸化炭素)の対策がある。ひよこ一羽の体温を40℃とし、20,000羽を共通の荷室に集積した場合、放熱がないと温度がどんどん上昇し、室内は高温になり、荷室の中に籠ったままでは、ひよこは全滅する。また、ひよこ自身では体温調節がうまくできず、逆に20℃を下回ると弱体してしまう。
さらに、ひよこが排出するガス(二酸化炭素)の量も大量であり、換気をうまくしないと酸欠になってしまうので、速やかな二酸化炭素排出を行うことが重要である。
【0009】
前記した何れの先行技術も、荷室に外気を導入し、荷室内に外界から空気を吸入し、その空気を、あるいは空調手段を通した空気を荷室に送り込み、荷室を通った空気を排気するという単純なシステムである。これらの先行技術では、荷室に収容したひよこ籠のそれぞれの温度調整に関しても、また二酸化炭素等のガス排出についての具体的な技術手段の考慮はなされていない。すなわち、先行技術では、荷室の中に空気流を流通させることで空調を行うことを開示してあるが、荷室の内部の温度にバラツキがあることの問題点の指摘もなく、それを解消する手段について何も考慮がされていない。また、ひよこガス排出課題についての具体的な手段も明確ではない。
【0010】
本発明の目的は、多数の生体生物、特にひよこ籠に入れた多数羽のひよこを共通の荷室に収容して運送するに際して発生する上記した課題を解消し、適性な生存環境を維持して遠隔地まで安全に輸送できる生体生物輸送コンテナの空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る生体生物輸送コンテナの空調システムの代表的な構成群を以下に記述する。なお、ここでは、本発明の理解を容易にするために、後述する実施例の図面に用いられる参照符号を付してあるが、本発明は、この参照符号で示される構成に限定されるものではない。
【0012】
すなわち、本発明に係る生体生物輸送コンテナの空調システム100は、多数の生体生物200を入れた運搬籠210を並列多段に積載可能な荷室102と、この荷室に隣接して区画された荷室環境管理室103を備える筐体101を有し、運搬車両140の荷台153に積載して輸送するためのものであり、その特徴は、
(1)前記荷室環境管理室103は前記荷室102に対して前記運搬車両140の通常走行による輸送方向に関して前側に配置されており、
前記荷室環境管理室103に冷暖房装置(エアヒータ110,エバポレータ112)が設けられ、当該荷室環境管理室103と前記荷室102の間に、剥離した生体生物の体毛(羽毛など)を空気循環路から除去するための塵埃ろ過材(フィルタ)109が設置されてなり、かつ前記筐体101の天井102aの前記運搬車両140による輸送方向に沿って前記冷暖房装置で快適化処理された空気流を前記荷室102の後内壁102bに向けて供給するダクト118を備え、
前記筐体101の前記荷室102の天井を貫通し、前記運搬車両140による前記輸送方向に関して後側に設けられて外気を当該荷室102内に吸気する後方吸気口105を有し、
前記筐体101の前記荷室102の天井102aを貫通し、前記運搬車両140による前記輸送方向に関して前側に設けられて当該荷室102の一部の空気を外界に放出する前方排気口106を有し、
前記荷室102と前記荷室環境管理室103を循環する主たる気流115が、前記荷室102の上方領域から前記筐体101の後内壁102bを床面102c方向に降流して当該荷室102の下方領域方向に変路し、前記荷室102の前内壁102dを昇流して当該荷室102の上方領域に戻る循環経路を形成したことにある。
【0013】
(2)また、前記(1)において、前記荷室環境管理室103の前記前側で、前記前内壁102dを貫通して外気を導入する前方補助吸気口104を有し、
前記荷室102の前記筐体101の後内壁102bを貫通して前記主たる気流115の一部を外界に放出する後方補助排気口107を備えたことにある。
【0014】
(3)また、前記(1)又は(2)において、前記荷室環境管理室103に設けられる前記冷暖房装置は、エアヒータ110とエバポレータ112を備え、前記荷室102の複数個所に温度や二酸化炭素濃度などの必要な室内環境情報を取得するセンサ300が設置されており、
前記センサの検知信号に基づいて前記荷室に流入する気流による室内環境を生体生物の生存のための適性値に調整する制御装置150を備えたことにある。
【0015】
(4)また、前記(1)乃至(3)の何れかにおいて、前記ダクト118に、前記荷室環境管理室103から流入して前記主たる気流115を構成する気流の流通方向と交差する方向に噴出させる複数の空気吐出口118aを有し、
前記主たる気流115と前記空気吐出口118aから吐出する気流との合成により、前記荷室102内の空気に容積移動を生起させることで、当該荷室の全体空気を常に新鮮な状態に維持することにある。
【0016】
(5)また、前記(1)乃至(4)の何れかにおいて、前記荷室102の前後方向中間部内側の天井102aに中間撹拌ファン108を備え、当該荷室の内部空気を撹拌して、空気の局部的な偏りを低減することにある。中間攪拌ファン108は天井の中央部に一基設置するだけでなく、天井の長さ方向両側にそれぞれ一基ずつ設置してよい。
【0017】
(6)また、前記(1)乃至(5)の何れかにおいて、前記筐体101の主壁構成材を繊維強化プラスチック(FRP)としたことにある。FRPとしては、カーボン繊維やケブラー繊維等をポリエステル樹脂あるいはエポキシ樹脂などの樹脂で固めたものが好適である。もしくは、廉価版としてガラス繊維を用いたものでもいい。なお、本発明はアルミや鉄系などのFRP以外の材料で筐体を構成したものにも適用できることは言うまでもない。
【0018】
(7)また、前記(3)において、前記荷室環境管理室103に備えるエアヒータ110は、前記運搬車両140のエンジン冷却水を暖房熱媒体として用いることにある。なお、筐体に加熱手段を取り付けてもよい。
【0019】
(8)また、前記(3)において、前記荷室環境管理室103に備える前記エバポレータ112への冷媒は、前記運搬車両140の荷台底部等に備えるコンプレッサ113a、コンデンサ113から冷媒路114を通して供給されるようにしたことにある。コンプレッサ113a、コンデンサ113は、荷室の大きさに応じて複数取り付けることもできる。
【0020】
(9)また、前記(3)において、前記筐体101の空調システムの制御装置150は、前記運搬車両140に搭載され、その操作卓503とモニタ504は当該運搬車両の操縦席140aに設置されており、この制御装置と前記筐体101の空調機器の制御信号線(図示せず)、温水循環パイプ111は連結/解除が可能に設置されていることにある。コンテナ筐体を別の車両に載せ換える場合に有用である。
【0021】
(10)そして、前記(3)において、前記制御装置150は、前記筐体101の前記荷室環境管理室103に設置され、その操作卓503は当該運搬車両の操縦席140aに設置されていることにある。操作卓503やモニタ504を筐体側に設置してもよいが、設定や監視のために運転席から降りなければならず、不便である。
【0022】
本発明は、上記の構成および後述する実施の形態で説明される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る生体生物輸送コンテナの空調システムを上記の如く構成したことにより、主たる循環経路115が荷室102の天井にある後方吸気口105の領域から荷室の後壁102bで床面102cに降流し、床面102cを前側に流れ、前壁102dを昇流して荷室102の天井にある前方排気口106の領域の戻る循環経路を形成する。この循環経路を流れる気流は、回りの空気を巻き込んで荷室内部の空気ボリュームを3次元的に移動(荷室の前後方向に直交する全断面の前方向への移動)させることで、荷室の内部に空気の淀みが生じるのを防止し、温度分布のよどみと二酸化炭素の滞留が防止される。そして、中間撹拌ファン108を設けたことによって、荷室の中に空気のよどみの発生をさらに防止し、温度分布の偏在と二酸化炭素の偏在領域の発生を効果的に抑制できる。
【0024】
筐体の主構造材として断熱効果の高いFRPを用いることで、外界に対する荷室内の断熱効果を向上できる。また、FRPが軽量かつ機械的に高強度であるため、鉄製やアルミ製の筐体を超える筐体を低コストで構成することができる。さらに、表面塗装が必須でないことから荷室の内外の洗浄や消毒も容易であり、消毒液による防錆効果も高く、ひよこなどの生体生物の運搬ボックスとして好ましい。
【0025】
操作卓やモニタを運転席に設置することで、荷室の状態をリアルタイムで監視でき、筐体にアクセスすることなく必要に応じて適性なパラメータ設定を迅速におこなうことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る生体生物輸送コンテナの空調システムを搭載した筐体を運搬車両の荷台に積載した状態をコンテナ輸送の前後方向でみた模式断面図
図2】本発明に係る生体生物輸送コンテナを運搬車両に積載した状態を説明する(a)上面要部透視図、(b)側面要部透視図、(c)背面要部透視図
図3】本発明に係る生体生物輸送コンテナを運搬車両に積載した状態で要部構成を説明する側面透視図
図4】本発明に係る生体生物輸送コンテナの空調システムの制御系の概要を説明する機能例のブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る生体生物輸送コンテナの空調システムの実施形態を実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例0028】
図1は、本発明に係る生体生物輸送コンテナの空調システムを搭載した筐体を運搬車両の荷台に積載した状態をコンテナ輸送の前後方向で横からみた模式断面図である。生体生物輸送コンテナの空調システム100は輸送車両の荷台153に積載される。一般には、輸送トラックのフレームに本発明に係る生体生物輸送コンテナの空調システムを装荷した筐体(ボックス)101を艤装するが、既製の荷台に筐体101を載置固定したり、あるいはトレーラーとして構成してトラックヘッドが牽引する構成とすることもできる。この実施例では、本発明に係る生体生物輸送コンテナの空調システム100を装荷した筐体101を輸送車両の荷台153(又はフレーム)に積載したものとして説明する。
【0029】
また、図2図1に示した筐体を運送車両に積載した状態の(a)上面要部透視図、(b)側面要部透視図、(c)背面要部透視図である。図1において、本実施例に係る生体生物輸送コンテナの空調システム100は、多数の生体生物200を入れた運搬籠210(図2参照)を並列多段に積載可能な荷室102と、この荷室に隣接して区画された荷室環境管理室103を備える筐体101を有し、運搬車両140の荷台153に積載して輸送するためのものである。参照符号151は前輪、152は後輪を示す。
【0030】
図3は、図1に示した本発明に係る生体生物輸送コンテナを運搬車両に積載した状態で要部構成を説明する側面透視図である。
図3に示したように、荷室環境管理室103は荷室102に対して運搬車両140の通常走行による輸送方向に関して前側に配置されている。
この荷室環境管理室103には冷暖房装置(エアヒータ110,エバポレータ112)が設けられており、当該荷室環境管理室103と荷室102の間に、剥離した生体生物の体毛(羽毛)、ひよこ籠等の運搬籠や床材から出た塵などを空気循環路から除去するための塵埃ろ過材(ここでは面フィルタ)109が設置されている。
【0031】
筐体101の天井102aの運搬車両140による輸送方向に沿って冷暖房装置(エアヒータ110あるいはエバポレータ112)で温調された空気流を荷室102の後内壁102bに向けて供給するダクト118を備えている。
そして、筐体101の荷室102の天井102aを貫通し、運搬車両140による輸送方向に関して後側に設けられて外気を主吸気120として当該荷室102内に導入する後方吸気口105を有している。後方吸気口105には、吸入量調整弁105aとファン105bが設置されている。
【0032】
また、筐体101の荷室102の天井102aを貫通し、運搬車両140による輸送方向に関して前側に設けられて当該荷室102を循環した空気を主排気130として外界に放出する前方排気口106を有している。前方排気口106には、排気量調整弁106aとファン106bが設置されている。前方排気口からの排気が後方吸気口に再吸入される量は拡散され無視できる程度であるが、この再吸入を回避したい場合には、前方排気口106に排気方向が直接後方吸気口105に向かわないようにする整流板などを設ければよい。
【0033】
荷室102と荷室環境管理室103を循環する主たる気流(主循環気流)115は、荷室102の上方領域から筐体101の後内壁102bを床面102c方向に降流して当該荷室102の下方領域方向に変路し、フィルタ109を通って荷室環境管理室103に入り、荷室102に形成された荷室環境管理室103の前内壁102dを昇流して冷暖房装置(エアヒータ110,エバポレータ112)を通過し、当該荷室102の上方領域に戻る循環経路を形成している。
【0034】
また、荷室環境管理室103の前側で、その前内壁102dを貫通して外気119を補助給気121として導入する前方補助吸気口104を有している。この前方補助吸気口104には外気導入量を調整する統制弁104aを有している。
【0035】
また、荷室102の筐体101の後内壁102bを貫通して主たる気流115の一部を補助排気131として外界に放出する後方補助排気口107を備えている。この後方補助排気口107にも排気量を調整する排気ファン107aを備えている。
【0036】
荷室環境管理室103に設けられる前記冷暖房装置は、エアヒータ110とエバポレータ112を備えている。本実施例では、エアヒータ110には運搬車両のエンジン冷却水を温水循環パイプ111で取り出して熱源に利用している。なお、熱源として他のエネルギー源(バッテリ電源、ソーラー発電など)とすることも可能である。
【0037】
また、筐体101の底部にコンプレッサ113a、コンデンサ113が設置されており、冷媒循環パイプ114を通してエバポレータ112に冷媒を循環させている。このコンプレッサの駆動は、運搬車両140のエンジンベルトの駆動を動力とすることができる。また、電動モータを備え、運搬車両140から電力を供給してもよい。
なお、冷暖房装置の駆動力や電力は、運搬車両140の電力を利用できるが、冷暖房装置の駆動力や電力を得る手段として運搬車両140に依存しない独自のエネルギー発生手段を筐体101の底部あるいは頂部、その他の適宜の個所に設置することを排除するものではない。
【0038】
荷室102の複数個所には、温度センサや二酸化炭素センサなどの荷室の室内環境情報を取得する複数のセンサ300が設置されている。センサ設置個所は荷室102を囲む筐体101の内壁に、当該荷室内部の環境情報を適性に把握できる配置とされる。本システムには、これらの複数センサ300の検知信号に基づいて荷室102に流入する気流による室内環境を生体生物の生存のための適性値に調整する制御装置150を備えている。
本実施例では、この制御装置150を運搬車両140のヘッド(運転席140aの領域)に設置してあり、制御装置を構成する操作卓503と液晶パネルなどで構成したモニタ504が運転席の付近に設置されている。
【0039】
荷室102の天井に設けたダクト118には、荷室環境管理室103から流入して主たる気流115を構成する気流の流通方向と交差する方向(略横方向)に一部の気流を噴出させる複数の空気吐出口118aを有している。さらに、ダクト118には下向きで空気を撹拌するこの中間ファン(中間撹拌ファン)108が設置されている。中間ファン108は天井の中央部に一基設置するだけでなく、天井の長さ方向両側にそれぞれ一基ずつ設置してよい。この中間ファン108と上記空気吐出口118aからの空気は中間循環気流116、117を起こす。これにより、荷室102の内部空気を撹拌して、さらに空気の局部的な偏りを低減させることができる
【0040】
主たる気流115と空気吐出口118aから吐出する気流との合成により、またさらに中間ファン108の撹拌作用で、荷室102内の空気に容積移動を生起させ、空気の局部的な停留が解消され、荷室102の全体空気を常に新鮮な状態に維持することができる。
生体生物200から発生した二酸化炭素と熱は主たる気流115で荷室環境管理室103方向に向かい、フィルタ109を通過することで産毛や羽、塵埃が除去されて荷室環境管理室103に流入する。荷室環境管理室103に流入した気流は冷暖房装置で空調されて荷室に戻る。このとき、必要に応じて前方補助吸気口104から外気を補助給気として導入し混合する。
【0041】
本実施例では、筐体101の主壁構成材をFRPとした。FRPとしては、カーボン繊維やケブラー繊維をポリエステル樹脂あるいはエポキシ樹脂で固めたもの、もしくは廉価版としてガラス繊維を強化剤として用いたもの等が好適である。
FRPは軽量で機械的強度が鉄、アルミ材よりも各段に高く、かつ、低コストである。
筐体の主構造材としてFRPを用いることで、外界に対する荷室内の断熱効果を向上できる。さらに、表面塗装が必須でなく、荷室の内外の洗浄や消毒も容易であるため、ひよこなどの生体生物の運搬ボックスとして好ましい。
【0042】
筐体101の空調システムの制御装置150は、運搬車両140に搭載され、その操作卓503とモニタ504は当該運搬車両の操縦席140aに設置されており、この制御装置と前記筐体101の空調機器の制御信号線(図示せず)、温水循環パイプ111は連結/解除が可能に設置することもできる。
【0043】
図4は本発明に係る生体生物輸送コンテナの空調システムの制御系の概要を説明する機能例のブロック構成図である。この制御系500のメイン部は中央演算装置(CPU)501、メモリ(RAM/ROM)502、AI機能部505と、操作卓503およびモニタ504で構成される。
そして、荷室に設置された調整弁(空気量制御バルブ)104a,105a,106a,・・・を駆動するアクチュエータ506を制御するバルブ制御手段510、各種センサ300の検出値を処理してCPU501に送出するセンサ信号処理手段511、中間撹拌ファン108,後方給気口ファン105b,前方排気ファン106b,その他のファン(エアヒータ、エバポレータ、他)の回転を調整するファン制御手段512を有する。
【0044】
生体生物の積み込み段階で、オペレータ(運転者等)は、積み込む生体生物の数、気候条件などと、モニタ504に示される荷室の環境状態を見ながら操作卓503で荷室環境条件の各種パラメータ(温度、循環風量、等)を初期設定する。
また、運搬中には、常にモニタ504で荷室の状態を監視し、必要に応じて設定値の修正を行う。
【0045】
また、本発明に係るシステムは、AI機能を備えるものであってもよい。AI機能505は回帰、分類、クラスタリング処理等のタスクを用いてこの制御システムを発展させるもので、生体生物の運搬を繰り返しながら荷室の環境情報(履歴)をメモリ502に時系列で蓄積していき、この環境情報を用いてAI機能505が最適環境を維持するための適性条件(生体生物の生存のための適性値)を学習していく。AI機能505は学習した適性条件を維持するように各バルブ104a,105a,106a,・・・、ファン108,105a,106a,・・・を制御する。このAI機能は、初期的には目的値(調整閾値等)をオペレータが設定する機械学習にとどまらず、深層学習に進化させることでオペレータの負担を大幅に軽減することができる。
【0046】
本実施例の構成としたことにより、季節や天候条件が変化しても多数の生体生物を適性な生存環境を維持して遠隔地まで安全に輸送することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
100・・・コンテナ空調システム
101・・・筐体(ボックス)
102・・・荷室
102a・・・天井
102b・・・後内壁
102c・・・床面
102d・・・前内壁
103・・・荷室環境管理室
104・・・前方補助給気口
104a・・・調整弁(バルブ)
105・・・後方吸気口
105a・・・調整弁(バルブ)
105b・・・ファン
106・・・前方排気口
106a・・・調整弁(バルブ)
106b・・・ファン
107・・・後方補助排気口
107a・・・排気ファン
108・・・中間撹拌ファン
109・・・塵埃等の濾過材(フィルタ)
110・・・エアヒータ
111・・・温水循環パイプ
112・・・エバポレータ
113・・・コンデンサ
113a・・・コンプレッサ
114・・・冷媒循環パイプ
115・・・主たる気流
116,117・・・中間循環
118・・・ダクト
118a・・・空気吐出口
119・・・外気流
120・・・主吸気
121・・・補助吸気
130・・・主排気
131・・・補助排気
140・・・運搬車両
140a・・・運転席
150・・・制御装置
151・・・前輪
152・・・後輪
153・・・荷台
200・・・生体生物
210・・・運搬籠(ひよこ籠/箱)
300・・・センサ
500・・・制御系
501・・・ 中央演算装置(CPU)
502・・・ メモリ(RAM/ROM)
503・・・ 操作卓
504・・・ モニタ
505・・・ AI機能部
506・・・ アクチュエータ
510・・・ バルブ制御手段
511・・・ センサ信号処理手段
512・・・ ファン制御手段
図1
図2
図3
図4