IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

特開2023-178112飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法
<>
  • 特開-飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法 図1
  • 特開-飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法 図2
  • 特開-飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法 図3
  • 特開-飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法 図4
  • 特開-飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法 図5
  • 特開-飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法 図6
  • 特開-飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法 図7
  • 特開-飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法 図8
  • 特開-飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178112
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 45/00 20060101AFI20231207BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20231207BHJP
   B64C 29/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B64D45/00 Z
B64D27/24
B64C29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091182
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】竹村 優一
(72)【発明者】
【氏名】福士 正人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 啓太
(57)【要約】
【課題】飛行用モータに異常が発生した場合に電動飛行体の安全性を高めることができる飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法を提供する。
【解決手段】飛行制御装置は、eVTOLを飛行させるための飛行制御処理を行う。飛行制御装置は、飛行制御処理のステップS104~S106にて、eVTOLを安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する。ステップS104では、異常モータの駆動が停止してもeVTOLを安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。ステップS105,S106では、異常モータの駆動が継続されてもeVTOLを安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。eVTOLを安定姿勢に維持可能と判断された場合、飛行制御装置40は、ステップS107~S110にて、eVTOLを安定姿勢に維持するように正常モータ及び異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)を安定姿勢に維持するように、前記飛行用モータの駆動を制御する飛行制御装置(40)であって、
前記飛行用モータに異常が発生した場合に、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生した異常モータの駆動が停止された状態、及び前記異常モータの駆動が継続された状態の少なくとも一方について、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能か否かを判定する維持判定部(S104~S106,S404~S407)と、
前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能と判断された場合に、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持するように、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生していない正常モータ及び前記異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う出力調整部(S107~S110,S301~S303,S408~S413)と、
を備えている飛行制御装置。
【請求項2】
前記出力調整部は、
前記維持判定部により、前記異常モータの駆動が停止された状態では前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能ではないと判断された場合に、前記出力調整として前記異常モータの駆動を継続させる駆動継続部(S108,S109,S409,S410)、を有している請求項1に記載の飛行制御装置。
【請求項3】
前記維持判定部により、前記異常モータの駆動が停止された状態では前記電動飛行体を安定姿勢に維持可能ではないと判断された場合に、前記異常モータの出力が過大であるか否かを判定する過大判定部(S106,S407)、を備え、
前記出力調整部は、
前記過大判定部により過大と判断された場合に、前記出力調整として前記異常モータの出力が低下するように前記異常モータの駆動を継続させる低下継続部(S109,S411)、を有している請求項1又は2に記載の飛行制御装置。
【請求項4】
前記低下継続部は、前記異常モータの出力が低下するように前記異常モータの駆動を断続的に継続させる、請求項3に記載の飛行制御装置。
【請求項5】
前記出力調整部は、
前記過大判定部により過大ではないと判断された場合に、前記異常モータの駆動を連続的に継続させる連続駆動部(S108,S409)、を有している請求項3に記載の飛行制御装置。
【請求項6】
前記出力調整部は、
前記維持判定部により、前記異常モータの駆動を停止した状態で前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能であると判断された場合に、前記異常モータの駆動を停止させる駆動停止部(S107,S408,S412)、を有している請求項1又は2に記載の飛行制御装置。
【請求項7】
前記出力調整部が前記出力調整を行っても、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持しながらの飛行が可能でない場合、前記電動飛行体を退避させるように要請する退避要請部(S206,S207)、を備えている請求項1又は2に記載の飛行制御装置。
【請求項8】
前記退避要請部は、
前記電動飛行体が着陸可能な着陸可能地が前記電動飛行体の下方にあり、且つ前記電動飛行体が垂直着陸する際に前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能である場合に、前記電動飛行体を前記着陸可能地に垂直着陸させるように要請する着陸要請部(S206)、を有している請求項7に記載の飛行制御装置。
【請求項9】
前記退避要請部は、
前記電動飛行体が着陸可能な着陸可能地が前記電動飛行体の下方にない場合、または前記電動飛行体が垂直着陸する際に前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能ではない場合に、前記着陸可能地を探索するように要請する探索要請部(S207)、を有している請求項7に記載の飛行制御装置。
【請求項10】
前記維持判定部は、
前記異常モータの駆動が停止された状態で前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する停止判定部(S104,S404,S405)と、
前記異常モータの駆動が継続された状態で前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する継続判定部(S105,S106,S406、S407)と、
を有している請求項1又は2に記載の飛行制御装置。
【請求項11】
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)が安定姿勢で飛行するように、前記飛行用モータの駆動を制御する飛行制御プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサ(41)を、
前記飛行用モータに異常が発生した場合に、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生した異常モータの駆動を停止した状態、及び前記異常モータの駆動を継続した状態の少なくとも一方について、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する維持判定部(S104~S106,S404~S407)と、
前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能と判断された場合に、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持するように、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生していない正常モータ及び前記異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う出力調整部(S107~S110,S301~S303,S408~S413)と、
として機能させる飛行制御プログラム。
【請求項12】
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)が安定姿勢で飛行するように、前記飛行用モータの駆動を制御する飛行制御方法であって、
少なくとも1つのプロセッサ(41)にて実行される処理に、
前記飛行用モータに異常が発生した場合に、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生した異常モータの駆動を停止した状態、及び前記異常モータの駆動を継続した状態の少なくとも一方について、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能であるか否かを判定し(S104~S106,S404~S407)、
前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能と判断された場合に、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持するように、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生していない正常モータ及び前記異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う(S107~S110,S301~S303,S408~S413)、
というステップを含む飛行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の回転翼により飛行する飛行体について記載されている。このドローンには、回転翼を駆動回転させるモータが複数設けられている。複数のモータは、複数の回転翼を個別に駆動回転させる。このドローンにおいては、モータが正常な回転を行っているか否かの監視がフライトコントローラにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-196440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、モータに異常が発生した場合、異常が発生したモータの回転が正常でなくなったことがフライトコントローラの監視結果に含まれる、と考えられる。しかしながら、モータに異常が発生すると、飛行体の姿勢が安定せずに飛行体の安全性が低下することが懸念される。
【0005】
本開示の1つの目的は、飛行用モータに異常が発生した場合に電動飛行体の安全性を高めることができる飛行制御装置、飛行制御プログラム及び飛行制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するため、開示された態様は、
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)を安定姿勢に維持するように、飛行用モータの駆動を制御する飛行制御装置(40)であって、
飛行用モータに異常が発生した場合に、複数の飛行用モータのうち異常が発生した異常モータの駆動が停止された状態、及び異常モータの駆動が継続された状態の少なくとも一方について、電動飛行体を安定姿勢に維持可能か否かを判定する維持判定部(S104~S106,S404~S407)と、
電動飛行体を安定姿勢に維持可能と判断された場合に、電動飛行体を安定姿勢に維持するように、複数の飛行用モータのうち異常が発生していない正常モータ及び異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う出力調整部(S107~S110,S301~S303,S408~S413)と、
を備えている飛行制御装置である。
【0008】
上記飛行制御装置によれば、飛行用モータに異常が発生した場合、異常モータの駆動が停止された状態、及び異常モータの駆動が継続された状態の少なくとも一方について、電動飛行体を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。このため、実際に異常モータの駆動が停止又は継続されなくても、電動飛行体の姿勢を推定できる。
【0009】
しかも、電動飛行体を安定姿勢に維持可能であると判断された場合、電動飛行体が安定姿勢に維持されるように、異常モータ及び正常モータの少なくとも一方の出力が調整される。このため、実際に異常モータの駆動が停止又は継続されても、異常モータ及び正常モータにより電動飛行体を安定姿勢に維持することが可能である。
【0010】
以上により、飛行用モータに異常が発生した場合に電動飛行体の安全性を高めることができる。
【0011】
開示された態様は、
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)が安定姿勢で飛行するように、飛行用モータの駆動を制御する飛行制御プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサ(41)を、
飛行用モータに異常が発生した場合に、複数の飛行用モータのうち異常が発生した異常モータの駆動を停止した状態、及び異常モータの駆動を継続した状態の少なくとも一方について、電動飛行体を安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する維持判定部(S104~S106,S404~S407)と、
電動飛行体を安定姿勢に維持可能と判断された場合に、電動飛行体を安定姿勢に維持するように、複数の飛行用モータのうち異常が発生していない正常モータ及び異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う出力調整部(S107~S110,S301~S303,S408~S413)と、
として機能させる飛行制御プログラムである。
【0012】
上記飛行制御プログラムによれば、上記飛行制御装置と同様に、飛行用モータに異常が発生した場合に電動飛行体の安全性を高めることができる。
【0013】
開示された態様は、
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)が安定姿勢で飛行するように、飛行用モータの駆動を制御する飛行制御方法であって、
少なくとも1つのプロセッサ(41)にて実行される処理に、
飛行用モータに異常が発生した場合に、複数の飛行用モータのうち異常が発生した異常モータの駆動を停止した状態、及び異常モータの駆動を継続した状態の少なくとも一方について、電動飛行体を安定姿勢に維持可能であるか否かを判定し(S104~S106,S404~S407)、
電動飛行体を安定姿勢に維持可能と判断された場合に、電動飛行体を安定姿勢に維持するように、複数の飛行用モータのうち異常が発生していない正常モータ及び異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う(S107~S110,S301~S303,S408~S413)、
というステップを含む飛行制御方法である。
【0014】
上記飛行制御方法によれば、上記飛行制御装置と同様に、飛行用モータに異常が発生した場合に電動飛行体の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態におけるeVTOLの構成を示す図。
図2】飛行システム及びEPUの電気的な構成を示すブロック図。
図3】飛行制御処理の手順を示すフローチャート。
図4】第2実施形態における報知処理の手順を示すフローチャート。
図5】第3実施形態における飛行制御処理の手順を示すフローチャート。
図6】第4実施形態における飛行システム及びEPUの電気的な構成を示すブロック図。
図7】飛行制御処理の手順を示すフローチャート。
図8】第5実施形態における飛行システム及びEPUの電気的な構成を示すブロック図。
図9】飛行制御処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0017】
<第1実施形態>
図1に示す飛行システム30は、eVTOL10に搭載されている。eVTOL10は、電動垂直離着陸機である。電動垂直離着陸機は、電動式の垂直離着陸機であり、垂直離着陸することが可能である。eVTOLは、electric Vertical Take-Off and Landing aircraftの略称である。eVTOL10は、大気中を飛行する電動式の航空機であり、電動飛行体及び電動航空機に相当する。eVTOL10は、乗員が乗る有人飛行体、乗員が乗らない無人飛行体のいずれでもよい。eVTOL10は、操縦者としてのパイロットにより操縦される。パイロットは、乗員としてeVTOL10を操縦してもよく、eVTOL10に乗らずにeVTOL10を遠隔操作してもよい。飛行システム30は、eVTOL10を飛行させるために駆動するシステムである。飛行システム30は、推進システムと称されることがある。
【0018】
eVTOL10は、機体11及びロータ20を有している。機体11は、機体本体12及び翼13を有している。機体本体12は、機体11の胴体であり、例えば前後に延びた形状になっている。機体本体12は、乗員が乗るための乗員室を有している。翼13は、機体本体12から延びており、機体本体12に複数設けられている。翼13は固定翼である。複数の翼13には、主翼、尾翼などが含まれている。
【0019】
eVTOL10においては、機体本体12がロール軸AXに沿って延びている。eVTOL10においては、ロール軸AXが機体11の前後方向に延び、ピッチ軸AYが機体11の幅方向に延び、ヨー軸AZが機体11の上下方向に延びている。ロール軸AXとピッチ軸AYとヨー軸AZとは互いに直交しており、いずれも機体重心Gpを通っている。機体重心Gpは、eVTOL10の重心であり、例えば空虚重量時でのeVTOL10の重心である。
【0020】
ロータ20は、機体11に複数設けられている。eVTOL10は、少なくとも3つのロータ20を有するマルチコプタである。例えばロータ20は、機体11に少なくとも4つ設けられている。ロータ20は、機体本体12及び翼13のそれぞれに設けられている。ロータ20は、ロータ軸線を中心に回転する。ロータ軸線は、例えばロータ20の中心線である。ロータ20は、回転翼であり、eVTOL10に推力及び揚力を生じさせることが可能である。なお、eVTOL10が上昇する際に生じる力が推力と称されることがある。また、ロータ20は、プロペラと称されることがある。
【0021】
ロータ20は、ブレード21、ロータヘッド22及びロータシャフト23を有している。ブレード21は、ロータ軸線の周方向に複数並べられている。ロータヘッド22は、複数のブレード21を連結している。ブレード21は、ロータヘッド22からロータ軸線の径方向に延びている。ブレード21は、ロータシャフト23と共に回転する羽根である。ロータシャフト23は、ロータ20の回転軸であり、ロータヘッド22からロータ軸線に沿って延びている。
【0022】
eVTOL10の飛行態様には、垂直離陸、垂直着陸、クルーズ及びホバリング等が含まれている。eVTOL10は、垂直離陸として、例えば滑走を行わずに垂直方向に上昇することで離陸地点から離陸することが可能である。eVTOL10は、垂直着陸として、例えば垂直方向に下降することで滑走せずに着陸地点に着地することが可能である。eVTOL10は、クルーズとして、例えば水平方向に移動するように飛行することが可能である。eVTOL10は、ホバリングとして、例えば空中の所定位置に停止したかのように飛行することが可能である。
【0023】
eVTOL10は、チルトロータ機である。eVTOL10においては、ロータ20を傾けることが可能になっている。すなわち、ロータ20のチルト角が調整可能になっている。例えば、eVTOL10が上昇する場合には、ロータ軸線が上下方向に延びるようにロータ20の向きが設定される。この場合、ロータ20は、eVTOL10に揚力を生じさせるためのリフト用ロータとして機能する。リフト用ロータは、eVTOL10をホバリングさせるためのホバリング用ロータとしても機能する。また、リフト用ロータは、eVTOL10を下降させることも可能である。なお、ホバリング用ロータはホバー用ロータと称されることがある。
【0024】
eVTOL10が前方に進む場合には、ロータ軸線が前後方向に延びるようにロータ20の向きが設定される。この場合、ロータ20は、eVTOL10に推力を生じさせるためのクルーズ用ロータとして機能する。本実施形態では、パイロットにとっての前方をeVTOL10にとっての前方としている。なお、パイロットにとっての前方に関係なく、水平方向のうちeVTOL10が進む向きを前方としてもよい。
【0025】
eVTOL10は、図示しないチルト機構を有している。チルト機構は、モータ等を含んで構成されており、ロータ20のチルト角を調整するために駆動する。チルト機構は、チルト駆動部と称されることがある。例えば、eVTOL10においては、翼13を機体本体12に対して相対的に傾けることが可能になっている。すなわち、翼13ごとロータ20を傾けることが可能になっている。このeVTOL10においては、機体本体12に対する翼13の傾斜角度が調整されることで、ロータ20のチルト角が調整される。このeVTOL10においては、翼13の傾斜角度を調整する機構がチルト機構である。
【0026】
なお、eVTOL10においては、ロータ20が機体11に対して相対的に傾くことが可能になっていてもよい。例えば、翼13に対するロータ20の相対的な傾斜角度が調整されることで、ロータ20のチルト角が調整されてもよい。
【0027】
図1図2に示すように、飛行システム30は、バッテリ31、分配器32、姿勢センサ35、飛行制御装置40、EPU50を有している。EPU50は、回転センサ55、電流センサ56、電圧センサ57、モータ温度センサ58、インバータ温度センサ59を有している。飛行制御装置40は、プロセッサ41及びメモリ42を有している。図2では、姿勢センサ35をPS、飛行制御装置40をFCD、プロセッサ41をPRO、メモリ42をFSD、と図示している。また、回転センサ55をRS、電流センサ56をIS、電圧センサ57をVS、モータ温度センサ58をMTS、インバータ温度センサ59をITS、と図示している。
【0028】
EPU50は、ロータ20を駆動回転させるために駆動する装置であり、駆動装置に相当する。EPUは、Electric Propulsion Unitの略称である。EPU50は、電駆動装置と称されることがある。EPU50は、複数のロータ20のそれぞれに対して個別に設けられている。EPU50は、ロータ軸線に沿ってロータ20に並べられている。複数のEPU50はいずれも、機体11に固定されている。EPU50は、ロータ20を回転可能に支持している。EPU50は、ロータシャフト23に接続されている。
【0029】
ロータ20は、EPU50を介して機体11に固定されている。EPU50は、ロータ20に対して相対的に傾くということが生じないようになっている。EPU50は、ロータ20と共に傾くことが可能になっている。ロータ20のチルト角が調整される場合、ロータ20と共にEPU50の向きが設定されることになる。
【0030】
EPU50は、モータ装置80及びインバータ装置60を有している。モータ装置80は、モータ81を有している。EPU50は、1つのモータ装置80を有していることで、1つのモータ81を有している。モータ装置80においては、モータ81がモータハウジングに収容されている。モータ81は、複数相の交流モータであり、例えば3相や6相の交流方式の回転電機である。モータ81は、eVTOL10の飛行駆動源であり、電動機として機能する。モータ81は、ロータ20を駆動回転させることでeVTOL10を飛行させることが可能である。モータ81は、eVTOL10を飛行させるための飛行用モータである。モータ81は、バッテリ31の電力により駆動される。EPU50は、モータ81の駆動によりロータ20を駆動回転させる。モータ81としては、例えばブラシレスモータが用いられている。
【0031】
モータ81は、モータステータ82、モータロータ83及びモータシャフト84を有している。モータシャフト84は、モータロータ83と共にモータステータ82に対して駆動回転する。モータシャフト84は、ロータシャフト23に接続されており、ロータシャフト23と共に回転する。モータ装置80は、モータ81の駆動回転に伴ってロータ20を駆動回転させることが可能である。モータロータ83は、モータ軸線を中心に回転する。モータ軸線は、モータ81の中心線である。EPU50においては、モータ装置80とインバータ装置60とがモータ軸線に沿って並べられている。
【0032】
モータステータ82は、複数相のコイル85を有している。コイル85は、複数のコイル部により形成されている。コイル部は、電線等のコイル線が巻回されることで形成されている。例えば、複数のコイル部がモータ軸線の周方向に並べられることで、複数相のコイル85が形成されている。本実施形態では、モータ81として3相モータが用いられており、コイル85として3相コイルが用いられている。
【0033】
インバータ装置60は、インバータ回路61及びモータ制御部62を有している。インバータ装置60においては、インバータ回路61及びモータ制御部62がインバータハウジングに収容されている。インバータ回路61は、モータ81に供給する電力を変換することでモータ81を駆動する。インバータ回路61は、駆動部と称されることがある。インバータ回路61は、モータ81に供給される電力を直流から交流に変換する。インバータ回路61は、電力を変換する電力変換部である。インバータ回路61は、複数相の電力変換部であり、複数相のそれぞれについて電力変換を行う。インバータ回路61は、例えば3相インバータであり、単にインバータと称されることがある。モータ81は、インバータ回路61から供給される電圧及び電流に応じて駆動する。
【0034】
モータ制御部62は、インバータ回路61を介してモータ制御を行う。モータ制御部62は、インバータ回路61の制御を行うことでモータ81の制御を行う。モータ制御部62は、飛行制御装置40に電気的に接続されており、飛行制御装置40からの信号に応じてモータ制御を行う。
【0035】
回転センサ55は、モータ81の回転数をモータ回転数として検出する。回転センサ55は、例えばエンコーダやレゾルバなどを含んで構成されている。電流センサ56は、モータ81に流れる電流をモータ電流として検出する。電流センサ56は、例えば複数相のそれぞれについてモータ電流を検出する。電圧センサ57は、モータ81に入力される電圧をモータ電圧として検出する。回転センサ55、電流センサ56及び電圧センサ57は、例えばモータ装置80に設けられている。なお、回転センサ55、電流センサ56及び電圧センサ57は、インバータ装置60に設けられていてもよい。
【0036】
モータ温度センサ58は、例えばモータ装置80に設けられており、モータ温度としてモータ装置80の温度をモータ温度として検出する。モータ温度センサ58は、例えば、モータ装置80の内部においてモータ81の駆動に伴って温度が上昇しやすい部位の温度を検出する。モータ温度センサ58は、温度が上昇しやすい部位として、例えばモータステータ82やモータロータ83の温度を検出する。
【0037】
インバータ温度センサ59は、例えばインバータ装置60に設けられており、インバータ温度としてインバータ装置60のインバータ温度を検出する。インバータ温度センサ59は、例えば、インバータ装置60の内部においてインバータ回路61の駆動に伴って温度が上昇しやすい部位の温度を検出する。インバータ温度センサ59は、温度が上昇しやすい部位として、例えばインバータ回路61の温度を検出する。
【0038】
バッテリ31は、複数のEPU50に電気的に接続されている。バッテリ31は、EPU50に電力を供給する電力供給部であり、電源部に相当する。バッテリ31は、EPU50に直流電圧を印加する直流電圧源である。バッテリ31は、充放電可能な2次電池を有している。この2次電池としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などがある。なお、電源部としては、バッテリ31に加えて又は代えて、燃料電池や発電機などが用いられてもよい。バッテリ31は、電力を蓄えることが可能であり、蓄電装置に相当する。
【0039】
分配器32は、バッテリ31及び複数のEPU50に電気的に接続されている。分配器32は、バッテリ31からの電力を複数のEPU50に分配する。バッテリ31は、分配器32を介して複数のEPU50に電気的に接続されている。バッテリ31は、分配器32を介してEPU50に電力を供給する。なお、バッテリ31の電力が複数のEPU50に供給される構成であれば、分配器32がなくてもよい。分配器32がなくてもよい構成としては、例えば、複数のEPU50のそれぞれに個別に電源部が設けられた構成がある。
【0040】
eVTOL10は、推進装置135を有している。推進装置135は、ロータ20及びEPU50を有している。推進装置135は、EPU50がロータ20を駆動回転することでeVTOL10を推進させることが可能である。推進装置135は、ロータ20とEPU50とが一体化された装置である。
【0041】
姿勢センサ35は、eVTOL10の姿勢を検出する。eVTOL10の姿勢は、機体姿勢と称されることがある。eVTOL10が飛行している場合には、eVTOL10の姿勢が飛行姿勢と称されることがある。姿勢センサ35は、eVTOL10の姿勢に応じた検出信号を出力する。eVTOL10は、姿勢センサ35として、スピードセンサ、ジャイロセンサ及び高度センサの少なくとも1つを有している。
【0042】
スピードセンサは、eVTOL10の速度を検出する速度センサである。スピードセンサは、例えばロール軸AXが延びた方向、ピッチ軸AYが延びた方向、ヨー軸AZが延びた方向の少なくとも1つについてeVTOL10の速度を検出する。ジャイロセンサは、eVTOL10の角速度を検出する角速度センサである。ジャイロセンサは、例えばロール方向、ピッチ方向及びヨー方向のそれぞれについてeVTOL10の角速度を検出する。ロール方向はロール軸AXの周方向であり、ピッチ方向はピッチ軸AYの周方向であり、ヨー方向はヨー軸AZの周方向である。高度センサは、eVTOL10の高度を検出するセンサである。
【0043】
センサ35,55~59は、飛行制御装置40に電気的に接続されている。センサ35,55~59は、飛行制御装置40に対して検出信号を出力する。なお、センサ35,55~59は、モータ制御部62に電気的に接続されていてもよい。この構成では、センサ35,55~59の検出信号がモータ制御部62を介して飛行制御装置40に入力される。
【0044】
図2に示す飛行制御装置40は、例えばECUであり、eVTOL10を飛行させるための飛行制御を行う。飛行制御装置40は、飛行システム30を制御する制御装置であり、例えばEPU50を制御する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。飛行制御装置40は、コンピュータを主体として構成されている。このコンピュータは、プロセッサ41、メモリ42、入出力インターフェース、これらを接続するバス等を有している。飛行制御装置40は、メモリ42に記憶された制御プログラムをプロセッサ41により実行することで、飛行制御を行うための飛行制御処理等の各種処理を実行する。
【0045】
プロセッサ41は、メモリ42に結合された演算処理のためのハードウェアである。プロセッサ41は、メモリ42へのアクセスにより飛行制御処理等の各種処理を実行する。メモリ42は、制御プログラム等を記憶した記憶媒体である。例えば、メモリ42は、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、non-transitory tangible storage mediumであり、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。メモリ42には、飛行制御を行うための制御プログラムなどが記憶されている。飛行制御を行うための制御プログラムが飛行制御プログラムに相当する。メモリ42は、記憶部と称されることがある。
【0046】
飛行制御装置40は、EPU50に電気的に接続されている。飛行制御装置40は、各種センサの検出結果などに応じて飛行制御を行う。この飛行制御には、EPU50を駆動するためのEPU制御などが含まれている。EPU制御には、モータ81を駆動するためのモータ制御などが含まれている。各種センサの検出結果には、センサ35,55~59の検出結果が含まれている。
【0047】
飛行制御装置40は、eVTOL10が安定姿勢で飛行するようにモータ81及びEPU50の駆動を制御する。安定姿勢は、eVTOL10の角度が正常角度で安定した状態の姿勢である。eVTOL10の角度が許容範囲に含まれていれば、eVTOL10の角度が正常角度である。eVTOL10の角度としては、例えばロール方向での角度、ピッチ方向での角度、及びヨー方向での角度がある。ロール方向での角度、ピッチ方向での角度、及びヨー方向での角度のそれぞれが許容範囲に含まれていれば、eVTOL10の角度が正常角度である。安定姿勢では、eVTOL10の角度変化が許容範囲に含まれている。角度変化は、例えば角速度で示される。安定姿勢では、eVTOL10においてロール方向での角速度、ピッチ方向での角速度、ヨー方向での角速度のそれぞれが許容範囲に含まれている。
【0048】
eVTOL10の姿勢には、正常な正常姿勢と、正常ではない異常姿勢と、が含まれている。安定姿勢は、正常姿勢に含まれる。eVTOL10の姿勢が安定している場合は、eVTOL10が安定姿勢になっている。eVTOL10の姿勢が安定していない場合は、eVTOL10が安定姿勢になっていない。この場合、eVTOL10は例えば異常姿勢になっている。
【0049】
eVTOL10の飛行制御について、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。飛行制御装置40は、飛行制御処理を所定の制御周期で繰り返し実行する。飛行制御装置40は、飛行制御処理の各ステップの処理を実行する機能を有している。飛行制御処理により実行される制御方法が飛行制御方法に相当する。
【0050】
飛行制御装置40は、図3に示すステップS101にて、モータ81の状態をモータ状態として取得する。飛行制御装置40は、全てのモータ81についてモータ状態を取得する。飛行制御装置40は、センサ55~59の検出信号等を用いてモータ状態を取得する。モータ状態は、モータ81の駆動状態であり、例えばモータ出力である。モータ出力は、モータ81の出力であり、例えばモータ81の仕事量やトルク、回転速度などである。モータ出力は、モータ回転数、モータ電流、モータ電圧及びモータ温度の少なくとも1つを用いて算出される。モータ出力は、センサ55~58の検出信号などを用いて算出された検出値である。モータ出力は、都度の検出値であり、例えば瞬時値である。モータ81は、モータ出力に応じた推力や揚力を発生させる。モータ81に供給される電力は、モータ81に推力や揚力を発生させるための電力である。
【0051】
飛行制御装置40は、モータ状態を取得することでEPU状態を取得することになる。EPU状態は、EPU50の駆動状態であり、例えばEPU出力である。EPU出力は、モータ出力により決まる。本実施形態では、1つのEPU50が1つのモータ81を有しているため、EPU出力はモータ出力のことである。
【0052】
飛行制御装置40は、ステップS102にて、モータ異常が発生したか否かの判定を行う。飛行制御装置40は、全てのモータ81について、モータ異常が発生したか否かの判定を行う。この判定には、例えばモータ状態が用いられる。モータ異常は、モータ装置80の異常である。モータ異常には、モータ81の異常が含まれている。モータ異常としては、モータ出力の過不足、モータ温度の高温異常などが挙げられる。飛行制御装置40は、例えば所定タイミングでのモータ出力が過大であるか否かの判定、及び所定タイミングでのモータ出力が過小であるか否かの判定などを行う。飛行制御装置40は、例えば所定タイミングでのモータ出力が許容範囲よりも大きい場合に、モータ出力が過大であるとして、モータ異常が発生したと判断する。また、飛行制御装置40は、所定タイミングでのモータ出力が許容範囲よりも小さい場合に、モータ出力が過小であるとして、モータ異常が発生したと判断する。また、飛行制御装置40は、所定タイミングでのモータ温度が許容範囲よりも高温である場合に、モータ温度が高温であるとして、モータ異常が発生したと判断する。モータ異常が発生した場合、飛行制御装置40は、異常が発生したモータ81の位置及び数などを取得する。
【0053】
モータ異常が発生する原因としては、モータ装置80及びインバータ装置60などで発生する、物理的な異常、機械的な異常、制御系の異常及び電源系の異常、などがある。モータ異常が発生した場合、異常モータ及び異常EPUの存在に起因してeVTOL10の機体姿勢が不安定になることがある。異常モータは、異常が発生したモータ81である。異常EPUは、異常モータを有するEPU50である。所定タイミングでの異常モータの出力が過大である場合、異常モータにより駆動回転するロータ20が過回転し、過剰推力や過剰揚力が発生することがある。このように異常モータの出力が過剰に大きくなると、機体姿勢が不安定になりやすい。一方、所定タイミングでの異常モータの出力が過小である場合、異常モータにより駆動回転するロータ20の回転が不足し、推力や揚力が不足することがある。また、所定タイミングでの異常モータの温度が許容範囲よりも高温である場合、異常モータの連続駆動を継続することが困難になり、異常モータの出力を制限する必要が生じることがある。そして、異常モータの出力を制限すると、異常モータの出力が過小になって、推力や揚力が不足することがある。これらのように異常モータの出力が不足すると、機体姿勢が不安定になりやすい。
【0054】
モータ異常が発生していない場合、飛行制御装置40は、ステップS112に進み、正常時姿勢処理を行う。正常時姿勢処理では、eVTOL10の飛行姿勢が安定姿勢になるように正常モータ及び正常EPUの出力を調整する。正常モータは、異常が発生していないモータ81である。正常EPUは、異常モータを有していないEPU50である。正常時姿勢処理では、eVTOL10に搭載された全てのモータ81が正常モータであるとして、正常モータの出力が調整される。
【0055】
正常時姿勢処理には、出力設定処理及び出力調整処理が含まれている。出力設定処理では、eVTOL10を飛行させるために必要な全体出力と、eVTOL10を安定姿勢に維持するために必要な個別出力と、が算出される。全体出力は、全てのモータ81が発生させる出力について、全てのモータ81に要求される要求出力の合計である。個別出力は、全てのモータ81のそれぞれが発生させる出力について、全てのモータ81のそれぞれに個別に要求される要求出力である。飛行制御装置40は、モータ81に対して指令信号を出力することなどにより、モータ81に出力要求を行う。要求出力は、操作部に対する操作態様などに応じて算出される。操作部は、パイロットにより操作される操作レバー等の操作対象である。
【0056】
出力調整処理では、全てのモータ81が個別出力を発生するように、全てのモータ81のそれぞれについて目標出力が設定される。出力調整処理では、全てのモータ81のそれぞれについて、モータ出力が目標出力になるように出力調整が行われる。出力調整処理では、例えばトルクや電流などが目標出力として設定される。
【0057】
異常が発生したモータ81が1つでも存在する場合、飛行制御装置40は、モータ異常が発生したとして、ステップS103に進む。飛行制御装置40は、ステップS103にて、異常モータを駆動可能であるか否かを判定する。飛行制御装置40は、例えば、異常モータへの電力供給が可能であるか否かの判定、異常モータが駆動に耐え得るか否かの判定、などを行う。また、飛行制御装置40は、例えば異常モータの駆動に伴って2次的な異常が発生するか否かの判定を行う。異常モータの出力が過大である場合、2次的な異常としては、異常モータの出力が更に大きくなることなどがある。また、異常モータの温度が高温である場合、2次的な異常としては、異常モータの温度が更に上昇することなどがある。2次的な異常が発生するか否かの判定には、センサ55~59の検出信号などが用いられる。
【0058】
異常モータを駆動可能でない場合、飛行制御装置40は、ステップS107に進み、駆動停止処理を行う。駆動停止処理では、異常モータの駆動を停止させるための処理が行われる。駆動停止処理では、例えば異常モータへの電力供給を停止させることで異常モータの駆動を停止させる。
【0059】
飛行制御装置40は、ステップS107の後、ステップS110にて、異常時姿勢処理を行う。異常時姿勢処理では、異常モータの駆動が停止された状態で、eVTOL10が安定姿勢に維持されるように、正常モータの出力が調整される。例えば、eVTOL10の右翼側に異常モータが存在する場合、飛行制御装置40は、右翼側に残った正常モータの出力を増加させる。この場合、飛行制御装置40は、eVTOL10の右翼側と左翼側とで出力をバランスさせることが可能になる。このため、異常モータの駆動が停止していても、eVTOL10が安定姿勢になりやすい。
【0060】
飛行制御装置40は、ステップS111にて、報知処理を行う。飛行制御装置40は、報知処理として、モータ異常が発生したことを報知する異常報知を行う。報知処理では、モータ異常が発生したことがパイロットなどに通知される。報知処理では、異常モータに関する異常モータ情報が報知される。異常モータ情報としては、eVTOL10での異常モータの位置及び数を示す情報がある。また、異常モータ情報としては、異常モータの駆動停止を示す情報、異常モータの駆動継続を示す情報、及び異常モータの出力を示す情報、などがある。報知処理では、モータ異常の発生が音声及び画像等により報知される。
【0061】
報知処理では、eVTOL10の姿勢に関する姿勢情報などが報知されてもよい。姿勢情報としては、eVTOL10が安定姿勢に維持されていることを示す情報、及びeVTOL10が安定姿勢ではないことを示す情報、などがある。
【0062】
異常モータが駆動可能である場合、飛行制御装置40は、ステップS104~S106にて、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する。飛行制御装置40におけるステップS104~S106の処理を実行する機能が維持判定部に相当する。eVTOL10を安定姿勢に維持可能である場合、飛行制御装置40は、ステップS107~S110にて、eVTOL10を安定姿勢に維持するように正常モータ及び異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う。飛行制御装置40におけるステップS107~S109の処理を実行する機能が出力調整部に相当する。
【0063】
飛行制御装置40は、ステップS104にて、異常モータの駆動を停止するか否かの判定を行う。この判定では、異常モータの駆動が停止してもeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。飛行制御装置40は、異常モータの駆動を停止させたと仮定し、正常モータ情報及び異常モータ情報などを用いて、eVTOL10を安定姿勢に維持できるか否かを判定する。正常モータ情報としては、全ての正常モータについての、駆動状態を示す情報、現在の出力の大きさを示す情報、及び出力可能な最大出力などがある。例えば、eVTOL10の右翼側に異常モータが存在する場合、飛行制御装置40は、この異常モータの駆動を停止させたと仮定し、右翼側の正常モータの出力を増加させることなどによりeVTOL10を安定姿勢に維持できるか、などの判定を行う。飛行制御装置40におけるステップS104の処理を実行する機能は停止判定部に相当する。
【0064】
異常モータの駆動が停止してもeVTOL10を安定姿勢に維持可能である場合、飛行制御装置40は、異常モータの駆動を停止するとして、ステップS107に進む。この場合、飛行制御装置40は、異常モータを駆動可能でない場合と同様に、ステップS107にて駆動停止処理を行う。飛行制御装置40におけるステップS107の処理を実行する機能が駆動停止部に相当する。飛行制御装置40は、ステップS107の後、ステップS110,S111の処理を行う。
【0065】
異常モータの駆動が停止するとeVTOL10を安定姿勢に維持可能でない場合、飛行制御装置40は、ステップS104にて、異常モータの駆動を停止しないと判断する。異常モータの駆動を停止しない場合、飛行制御装置40は、ステップS105,S106にて、異常モータの駆動が継続されてもeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定を行う。飛行制御装置40におけるステップS105,S106の処理を実行する機能が継続判定部に相当する。また、異常モータの駆動を停止しない場合、飛行制御装置40は、ステップS108,S109にて、異常モータの駆動を継続させる。飛行制御装置40におけるステップS108,S109の処理を実行する機能が駆動継続部に相当する。
【0066】
飛行制御装置40は、ステップS105にて、異常モータの連続駆動を行うか否かを判定する。この判定では、異常モータを連続駆動させた場合にeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。連続駆動は、異常モータの駆動が連続的に継続されることである。飛行制御装置40は、異常モータを連続駆動させたと仮定し、異常モータ情報及び正常モータ情報などを用いて、eVTOL10を安定姿勢に維持できるか否かを判定する。例えば、異常モータがeVTOL10の右翼側に存在する場合、飛行制御装置40は、この異常モータを連続駆動させたと仮定し、右翼側の正常モータの出力を増減させることなどによりeVTOL10を安定姿勢に維持できるか、などの判定を行う。
【0067】
異常モータを連続駆動する場合、飛行制御装置40は、ステップS108に進み、連続駆動処理を行う。連続駆動処理では、異常モータを連続駆動させるための処理が行われる。連続駆動処理では、例えば異常モータへの電力供給が連続的に行われることで異常モータが連続駆動させる。飛行制御装置40におけるステップS108の処理を実行する機能が連続駆動部に相当する。飛行制御装置40は、ステップS108の後、異常モータの駆動を停止させた場合と同様に、ステップS110,S111の処理を行う。
【0068】
異常モータを連続駆動しない場合、飛行制御装置40は、異常モータを連続駆動させてもeVTOL10を安定姿勢に維持できないとして、ステップS106に進む。飛行制御装置40は、ステップS106にて、異常モータの断続駆動を行うか否かを判定する。この判定では、異常モータを断続駆動させた場合にeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。断続駆動は、異常モータの駆動が断続的に行われることである。断続駆動では、異常モータの駆動実行と停止とが所定周期で繰り返し行われる。異常モータを連続駆動させてもeVTOL10を安定姿勢に維持できない場合としては、異常モータの出力が過大である場合や、異常モータの出力が過小である場合がある。飛行制御装置40は、所定タイミングでの異常モータの出力が過大であるか否かを判定し、異常モータの出力が過大である場合に、異常モータの断続駆動を行うと判断する。飛行制御装置40におけるステップS106の処理を実行する機能が過大判定部に相当する。
【0069】
例えば、異常モータがeVTOL10の右翼側に存在する場合、飛行制御装置40は、この異常モータを断続駆動させたと仮定し、右翼側の正常モータの出力を増減させることなどによりeVTOL10を安定姿勢に維持できるか、などの判定を行う。
【0070】
異常モータを断続駆動しない場合、飛行制御装置40は、異常モータの出力が過大ではないとして、ステップS108に進み、連続駆動処理を行う。この場合、連続駆動される異常モータの出力が過小であっても、eVTOL10を安定姿勢に維持するために異常モータの出力を活用可能になる。飛行制御装置40は、ステップS108の後、ステップS110に進み、異常時姿勢処理を行う。飛行制御装置40は、異常時姿勢処理にて、連続駆動される異常モータの出力を活用してeVTOL10を安定姿勢に維持するように、正常モータの出力を調整する。
【0071】
異常モータを断続駆動する場合、飛行制御装置40は、異常モータの出力が過大であるとして、ステップS109に進み、断続駆動処理を行う。断続駆動処理では、異常モータを断続駆動させるための処理が行われる。断続駆動処理では、例えば異常モータへの電力供給を断続的に行うことで異常モータを断続駆動させる。異常モータの断続駆動が行われた場合、異常モータの連続駆動が行われた場合に比べて、単位時間当たりにおける異常モータの平均出力が小さくなる。飛行制御装置40は、断続駆動処理を行うことで、連続駆動処理を行った場合に比べて、異常モータの出力を低下させる。飛行制御装置40におけるステップS109の処理を実行する機能が低下継続部に相当する。
【0072】
飛行制御装置40は、ステップS109の後、ステップS110に進み、異常時姿勢処理を行う。飛行制御装置40は、異常時姿勢処理にて、断続駆動される異常モータの出力を活用してeVTOL10を安定姿勢に維持するように、正常モータの出力を調整する。
【0073】
異常モータ及び正常モータによるeVTOL10の姿勢維持について、まとめて説明する。eVTOL10においては、少なくとも1つのモータ81が異常モータになっても、異常モータ及び正常モータのそれぞれの駆動が個別に制御されることで、機体姿勢の維持に必要なモータ出力を確保できる。例えば、異常モータを停止すると、正常モータの出力を調整しても機体姿勢を維持できない場合には、機体姿勢を維持するために異常モータへの電力供給が継続される。一方、異常モータを停止し、正常モータの出力を調整すれば機体姿勢を安定姿勢に維持できる場合には、機体姿勢を維持するために異常モータへの電力供給が停止される。正常時のように異常モータに連続的な通電が行われると出力過大によって機体姿勢を維持できない場合には、異常モータへの通電の停止及び再開が周期的に繰り返される。通電停止及び通電再開の繰り返しにより、異常モータにより生じる平均的なモータ出力が調整されることで、機体姿勢を安定させることができる。
【0074】
モータ81に異常が発生した場合、異常モータの駆動を継続させると2次的な異常が発生することが懸念される場合は、機体姿勢を維持できるか否かに関係なく異常モータの駆動が停止される。特に、モータ81の異常が出力過大異常である場合、異常モータの回転数、電流及び温度などが過剰に大きくなるため、2次的な異常が発生するリスクが高くなりやすい。また、2次的な異常としては、異常モータの異常だけでなく、異常モータの異常が波及してeVTOL10の他の部位などで異常が発生することなどがある。
【0075】
異常モータの過回転は異常な状態である。このため、異常モータの駆動を停止しても機体姿勢を維持できるのであれば、異常モータの駆動を停止した方が良い。しかし、異常モータの駆動を停止することで機体姿勢の安定が保てないことが懸念される場合、安全な範囲で異常モータへの電力供給を継続する。メモリ42等には、複数のモータ81のそれぞれについて故障等の異常が発生した時に機体姿勢を維持できるか否かを判定するためのプログラム等があらかじめ記憶されていてもよい。また、異常モータの駆動を停止した場合、機体姿勢が不安定化する兆候が検出されたことを条件として、異常モータへの電力供給を再開してもよい。
【0076】
異常モータの過回転異常が発生した場合、飛行制御装置40が通常の出力制御を行うことができず、異常モータの駆動により過剰な出力が発生した状態になる。このため、正常時のように異常モータへの電力供給を連続的に行うと、異常モータの出力が大きくなりすぎて他の正常モータの出力調整だけでは機体姿勢を安定させることができないことが懸念される。この場合、異常モータについて電力供給のオンオフを繰り返すことで出力の平均値を強制的に下げ、機体姿勢を少しでも安定させることが好ましい。
【0077】
複数の飛行用モータを備えた航空機において、一部の飛行用モータに出力異常が発生した場合、機体姿勢を安定させるには残りの飛行用モータの出力を調整する必要がある。このため、飛行用モータに異常が発生した場合に、残り全ての飛行用モータの出力を調整する操作をパイロットが手動で行うことは現実的ではない。このため、飛行用モータに異常が発生した場合には、機体姿勢を安定させるための制御を自動で行うことが好ましい。
【0078】
ここまで説明した本実施形態によれば、モータ81に異常が発生した場合に、異常モータの駆動が停止された状態、及び異常モータの駆動が継続された状態の少なくとも一方について、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。このため、実際に異常モータの駆動が停止又は継続されなくても、eVTOL10の姿勢を推定できる。しかも、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であると判断された場合、eVTOL10が安定姿勢に維持されるように、異常モータ及び正常モータの少なくとも一方の出力が調整される。このため、実際に異常モータの駆動が停止又は継続されても、異常モータ及び正常モータによりeVTOL10の飛行姿勢を安定姿勢に維持することができる。したがって、モータ81に異常が発生した場合にeVTOL10の安全性を高めることができる。
【0079】
本実施形態によれば、異常モータの駆動が停止された状態ではeVTOL10を安定姿勢に維持可能ではない場合、異常モータの駆動が継続される。この構成では、異常モータの駆動に伴う2次的な異常が発生しない範囲で、eVTOL10を安定姿勢に維持するために異常モータの駆動を活用することができる。このため、異常モータの発生に伴ってeVTOL10の安全性が低下することを、異常モータの駆動により抑制することができる。
【0080】
本実施形態によれば、異常モータの駆動が停止された状態ではeVTOL10を安定姿勢に維持可能ではなく、且つ異常モータの出力が過大である場合、異常モータの出力が低下するように異常モータの駆動が継続される。この構成では、異常モータの出力が過大であることに起因して2次的な異常が発生する、ということを異常モータの出力を低下させることで抑制できる。このため、異常モータの駆動に伴う2次的な異常が発生することを抑制しつつ、eVTOL10を安定姿勢に維持するために異常モータの駆動を活用することができる。
【0081】
本実施形態によれば、異常モータの駆動が断続的に継続されることで、異常モータの出力低下が実現される。この構成では、異常モータの駆動が断続的に継続されるため、異常モータの駆動が連続的に継続された場合に比べて、異常モータの平均出力が小さくなる。このため、例えば異常モータの異常態様が出力の瞬時値を小さくすることができない態様であっても、異常モータの駆動及び停止さえ可能であれば異常モータの出力を実質的に低下させることができる。したがって、異常モータの出力が過大であることに起因して、eVTOL10を安定姿勢に維持することが困難であったとしても、異常モータの出力を実質的に低下させることでeVTOL10を安定姿勢に維持することが可能になる。このように、異常モータの駆動が断続的に継続されることにより、eVTOL10の安全性が低下することを抑制できる。
【0082】
異常モータの出力が過大ではない場合、異常モータの出力が過小であり、eVTOL10を安定姿勢に維持するには異常モータの出力が不足することになる。これに対して、本実施形態によれば、異常モータの駆動が停止された状態ではeVTOL10を安定姿勢に維持可能ではなく、且つ異常モータの出力が過剰ではない場合、異常モータの駆動が連続的に継続される。これにより、異常モータの出力が過小であることに起因してeVTOL10を安定姿勢に維持可能でなかったとしても、異常モータの出力を活用することでeVTOL10を安定姿勢に近づけることが可能になる。
【0083】
本実施形態によれば、異常モータの駆動が停止された状態でeVTOL10を安定姿勢に維持可能である場合、異常モータの駆動が停止される。この構成では、異常モータの駆動を継続させて2次的な異常が発生するということを回避しつつ、正常モータの駆動によりeVTOL10を安定姿勢に維持することができる。
【0084】
本実施形態によれば、異常モータの駆動が停止された状態、及び異常モータの駆動が継続された状態の両方について、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。このため、実際に異常モータの駆動が停止されなくても、異常モータの駆動が停止された場合を想定して、eVTOL10の姿勢を推定できる。同様に、実際に異常モータの駆動が継続されなくても、異常モータの駆動が継続された場合を想定して、eVTOL10の姿勢を推定できる。したがって、異常モータの駆動停止及び駆動継続のいずれが行われても、異常モータ及び正常モータによりeVTOL10の飛行姿勢を安定姿勢に維持することができる。
【0085】
<第2実施形態>
第2実施形態では、モータ異常が発生した場合に実行される報知処理において、異常報知に加えて、パイロットへのeVTOL10の退避要請が行われる。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第2本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0086】
本実施形態では、飛行制御装置40が、上記第1実施形態のステップS111において、eVTOL10の退避をパイロットに要請するための要請処理を行う。飛行制御装置40がステップS111にて行う報知処理について、図4のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0087】
飛行制御装置40は、図4に示すステップS201にて、異常報知処理を行う。飛行制御装置40は、異常報知処理において、上記第1実施形態のステップS111と同様に、モータ異常が発生したことを報知する。なお、異常報知処理では、eVTOL10の姿勢情報などが報知されてもよい。
【0088】
飛行制御装置40は、ステップS202にて、eVTOL10が安定姿勢で飛行可能であるか否かの飛行判定を行う。飛行判定では、eVTOL10を安定姿勢に維持しながらクルーズ可能であるか否かの判定が行われる。eVTOL10を安定姿勢に維持可能である場合の飛行態様としては、クルーズ、ホバリング及び垂直着陸などがある。モータ異常が発生した場合、eVTOL10を安定姿勢に維持するには、例えばクルーズが可能である一方で、垂直着陸は可能ではない、という状況が生じ得る。飛行判定では、eVTOL10を安定姿勢に維持しながらクルーズ可能であることを、eVTOL10が安定姿勢で飛行可能であるとする。
【0089】
飛行制御装置40は、飛行判定をステップS110での異常時姿勢処理の後に行うことになる。すなわち、eVTOL10を安定姿勢に維持するためのモータ81の出力調整が行われている状態で、飛行判定が行われる。eVTOL10を安定姿勢に維持しながらクルーズ可能である場合、飛行制御装置40は、eVTOL10が安定姿勢で飛行可能であるとして、ステップS205に進む。
【0090】
飛行制御装置40は、ステップS205にて、飛行許可処理を行う。飛行許可処理では、eVTOL10の飛行継続を許可する飛行継続許可が報知される。飛行継続許可は、パイロットなどに通知される。飛行許可処理により報知される情報としては、モータ81の出力調整が行われていることでeVTOL10が安定姿勢で飛行可能になっていること、などがある。飛行許可処理では、飛行継続許可が音声及び画像等により報知される。
【0091】
飛行制御装置40は、ステップS205の後、ステップS208に進み、手動処理を行う。手動処理は、パイロットがeVTOL10を操縦可能な状態にするための処理である。例えば、eVTOL10の操縦が自動に設定されていた場合には、手動処理によりeVTOL10の操縦が自動から手動に切り替えられる。手動処理では、eVTOL10を飛行させるための操縦の少なくとも1つの操縦が自動から手動に切り替えられる。手動処理では、例えばeVTOL10の進行方向を変更する操縦が自動から手動に切り替えられる。自動は、eVTOL10の操縦が飛行制御装置40により行われることである。なお、eVTOL10を正常姿勢に維持するための操縦は、自動から手動には切り替えられない。eVTOL10を正常姿勢に維持するための操縦には、少なくともステップS102~S110の処理により行われる操縦が含まれている。
【0092】
eVTOL10が安定姿勢に維持しながら飛行可能でない場合、飛行制御装置40は、ステップS203,S204,S206,S207にて、eVTOL10を退避させるための処理を行う。飛行制御装置40は、ステップS203,S204にて、eVTOL10を退避させるための退避方法を判定する処理を行う。飛行制御装置40は、ステップS206,S207にて、eVTOL10を退避させるように要請する処理を行う。この処理では、eVTOL10の退避をパイロット等に要請するための処理が行われる。飛行制御装置40におけるステップS206,S207の処理を実行する機能が退避要請部に相当する。
【0093】
eVTOL10を安定姿勢に維持しながらクルーズ可能でない場合、飛行制御装置40は、ステップS203に進む。飛行制御装置40は、ステップS203にて、eVTOL10が安定姿勢で着陸可能であるか否かを判定する。この判定では、eVTOL10を安定姿勢に維持しながら垂直着陸させることが可能であるか否かの判定が行われる。
【0094】
eVTOL10を安定姿勢に維持しながら垂直着陸可能であれば、飛行制御装置40は、eVTOL10が安定姿勢で着陸可能であるとして、ステップS204に進む。飛行制御装置40は、ステップS204にて、eVTOL10の下方に着陸可能地があるか否かを判定する。着陸可能地としては、正規の着陸場、及び非正規の着陸場などがある。正規の着陸場は、例えば国や自治体が認めた着陸場である。非正規の着陸場は、例えば国や自治体が認めていない着陸場である。
【0095】
eVTOL10の下方に着陸可能地がある場合、飛行制御装置40は、ステップS206に進み、着陸要請処理を行う。着陸要請処理では、eVTOL10を下方の着陸可能地に着陸させるための着陸要請が行われる。着陸要請処理では、退避要請として、着陸要請がパイロット等に通知される。着陸要請処理では、着陸要請が音声及び画像等により報知される。着陸要請により報知される情報としては、eVTOL10の下方に着陸可能地があること、eVTOL10が安定姿勢で垂直着陸可能であること、などである。着陸調整処理では、異常発生に伴うeVTOL10の退避として、eVTOL10を直ちに着陸させることが選択される。飛行制御装置40におけるステップS206の処理を実行する機能が着陸要請部に相当する。飛行制御装置40は、ステップS206の後、ステップS208に進み、手動処理を行う。
【0096】
eVTOL10が安定姿勢で着陸可能である一方で、eVTOL10の下方に着陸可能地がない場合、飛行制御装置40は、ステップS207に進み、探索要請処理を行う。探索要請処理では、着陸可能地を探索させるための探索要請が行われる。探索要請処理では、退避要請として、探索要請がパイロット等に通知される。探索要請処理では、探索要請が音声及び画像等により報知される。探索要請により報知される情報としては、eVTOL10の下方に着陸可能地がないこと、eVTOL10が安定姿勢で垂直着陸可能であること、などである。探索要請処理では、探索により着陸可能地が発見された場合について、着陸可能地の上方までeVTOL10を移動させるように要請する処理が行われる。探索要請処理では、異常発生に伴うeVTOL10の退避として、eVTOL10を着陸可能地まで移動させて着陸させることが選択される。飛行制御装置40におけるステップS207の処理を実行する機能が探索要請部に相当する。
【0097】
飛行制御装置40は、ステップS207の後、ステップS208に進み、手動処理を行う。探索により着陸可能地が発見された場合、パイロットは、安定姿勢に維持された状態のeVTOL10を着陸可能地に着陸させるための操縦を手動で行う。
【0098】
eVTOL10が安定姿勢で着陸可能ではない場合、飛行制御装置40は、ステップS207に進み、探索要請処理を行う。この探索要請処理では、eVTOL10の垂直着陸に際してeVTOL10を安定姿勢に維持可能ではないこと、などが報知される。eVTOL10が安定姿勢で着陸可能でない場合に、ステップS208にて手動処理が行われると、パイロットは、安定姿勢に維持可能ではないeVTOL10を着陸可能地に着陸させるための操縦を手動で行うことになる。
【0099】
モータ異常が発生した場合の要請処理について、まとめて説明する。異常が発生したeVTOL10は、速やかに安全な場所に着陸することが望ましい。特に、eVTOL10が安定姿勢で正常な飛行を行うことができない場合は、できるだけ早くeVTOL10を着陸させることが好ましい。eVTOL10が垂直着陸可能な状況であれば垂直着陸することが最も速やかに着陸する方法である。一方、eVTOL10が垂直着陸可能ではない状況の場合、安全に着陸できる場所の探索をパイロットに指示することで、異常事態の発生を抑制できる。eVTOL10が垂直着陸可能ではない場合としては、eVTOL10が安定姿勢を保った状態で垂直着陸が難しい場合、eVTOL10が急斜面や住宅街など着陸できない場所を飛行している場合、などがある。異常事態としては、eVTOL10を異常姿勢で飛行を継続すること、及びeVTOL10を不安定な姿勢で垂直着陸させることなどがある。
【0100】
ただし、最終的にどうするかはパイロットの判断に委ねられることが好ましい。このため、eVTOL10にてモータ異常が発生した場合、機体姿勢の維持は自動制御で行われ、着陸や飛行の操縦はパイロットに委ねられることが好ましい。
【0101】
本実施形態によれば、異常モータ及び正常モータの少なくとも一方の出力が調整されても、eVTOL10を安定姿勢に維持しながらの飛行が可能でない場合、eVTOL10を退避させるように要請される。この構成では、eVTOL10を安定姿勢で飛行可能でない場合に、パイロットはeVTOL10の着陸など退避のための操縦を直ちに行うことができる。このため、eVTOL10を安定姿勢で飛行可能ではないという状況が継続してeVTOL10の安全性が低下する、ということを回避できる。
【0102】
本実施形態によれば、eVTOL10の下方に着陸可能地があり、且つeVTOL10が垂直着陸する際にeVTOL10を安定姿勢に維持可能である場合、eVTOL10を着陸可能地に垂直着陸させるように要請される。この場合、パイロットは、eVTOL10を着陸可能地に垂直着陸させるための操作を直ちに行うことができる。パイロットは、eVTOL10を着陸可能地に着陸させることで、eVTOL10を安全姿勢で飛行可能ではないという状況を解消できる。
【0103】
本実施形態によれば、eVTOL10の下方に着陸可能地にない場合、またはeVTOL10が垂直着陸する際にeVTOL10を安定姿勢に維持可能ではない場合、着陸可能地を探索するように要請される。この場合、パイロットは、着陸可能地を探索するための操作を直ちに行うことができる。パイロットは、着陸可能地の探索結果を知ることで、eVTOL10を安定姿勢で着陸可能ではないという状況を脱しやすくなる。
【0104】
<第3実施形態>
上記第1実施形態では、異常モータの駆動が停止及び継続のいずれになっても、ステップS110にて異常時姿勢処理が行われるようになっていた。これに対して、第3実施形態では、異常モータの駆動態様に応じて異なる処理が行われる。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1、第2実施形態と同様である。第3本実施形態では、上記第1、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0105】
飛行制御装置40が行う飛行制御処理について、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。本実施形態では、上記第1実施形態のステップS110に代えてステップS301,S302,S303が行われる。飛行制御装置40におけるステップS301,S302,S303の処理を実行する機能が出力調整部に相当する。なお、飛行制御装置40においては、ステップS110を実行する機能に、ステップS301,S302,S303の処理を実行する機能が含まれている。
【0106】
飛行制御装置40は、ステップS107にて駆動停止処理を行った後、ステップS301に進み、停止姿勢処理を行う。停止姿勢処理では、異常モータの駆動が停止された状態でeVTOL10を安定姿勢に維持するように、正常モータの出力が調整される。停止姿勢処理は、eVTOL10を安定姿勢に維持するために駆動停止処理に合わせて行われる処理である。
【0107】
飛行制御装置40は、ステップS108にて連続駆動処理を行った後、ステップS302に進み、連続姿勢処理を行う。連続姿勢処理では、異常モータの駆動が連続的に継続された状態でeVTOL10を安定姿勢に維持するように、正常モータの出力が調整される。連続姿勢処理は、eVTOL10を安定姿勢に維持するために連続駆動処理に合わせて行われる処理である。
【0108】
飛行制御装置40は、ステップS109にて断続駆動処理を行った後、ステップS303に進み、断続姿勢処理を行う。断続姿勢処理では、異常モータの駆動が断続的に継続された状態でeVTOL10を安定姿勢に維持するように、正常モータの出力が調整される。断続姿勢処理は、eVTOL10を安定姿勢に維持するために断続駆動処理に合わせて行われる処理である。
【0109】
<第4実施形態>
上記第1実施形態では、EPU50がモータ81を1つ有している。これに対して、第4実施形態では、EPU50がモータ81を複数有している。第4実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第4本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0110】
図6に示すEPU50は、モータ装置80及びインバータ装置60を複数ずつ有している。EPU50は、モータ装置80を複数有していることでモータ81を複数有している。EPU50においては、複数のモータ81が個別に駆動可能になっている。EPU50においては、複数のモータ81のそれぞれに対してインバータ回路61及びモータ制御部62が個別に設けられている。複数のモータ81においては、それぞれのモータシャフト84が共通化されている。例えば、複数のモータ81のそれぞれが有するモータシャフト84は、1つのシャフトになるように互いに接続されている。
【0111】
EPU50は、クラッチ101を有している。クラッチ101は、モータ81からロータ20への駆動力の伝達を遮断可能である。クラッチ101は、ワンウェイクラッチ及び電磁クラッチなどを有している。クラッチ101は、例えばモータ装置80に設けられている。クラッチ101は、伝達状態と遮断状態とに移行可能である。クラッチ101が伝達状態にある場合、モータ81の駆動力がロータ20に伝達される。この場合、モータ81と共にロータ20が回転する。クラッチ101が遮断状態にある場合、モータ81の駆動力がロータ20に伝達されない。この場合、モータ81が回転してもロータ20が回転しない。
【0112】
クラッチ101は、複数のモータ81のそれぞれに設けられている。複数のクラッチ101は、複数のモータ81のそれぞれがロータ20に対して個別に回転することを可能にしている。例えば、複数のクラッチ101は、複数のモータ81とモータシャフト84との間に設けられている。
【0113】
EPU50においては、複数のモータ装置80のそれぞれにセンサ55~58が設けられている。EPU50においては、複数のモータ装置80のそれぞれが有するセンサ55~58が飛行制御装置40に対して検出信号を出力する。EPU50においては、複数のインバータ装置60にインバータ温度センサ59が設けられている。EPU50においては、複数のインバータ装置60のそれぞれが有するインバータ温度センサ59が飛行制御装置40に対して検出信号を出力する。
【0114】
EPU50は、例えば2つのモータ81として、第1モータ81A及び第2モータ81Bを有している。第1モータ81Aは、第1モータ装置80Aに含まれている。第2モータ81Bは、第2モータ装置80Bに含まれている。第1モータ81Aは、第1インバータ装置60Aにより駆動される。第2モータ81Bは、第2インバータ装置60Bにより駆動される。飛行制御装置40は、第1モータ81Aと第2モータ81Bとを個別に制御可能である。第1モータ81A及び第2モータ81Bは、互いに独立して回転することが可能になっている。第1モータ81A及び第2モータ81Bのそれぞれにクラッチ101が設けられている。これらクラッチ101は、第1モータ81Aと第2モータ81Bとの相対的な回転を可能にしている。第1モータ81A及び第2モータ81Bは、飛行用モータに相当する。
【0115】
eVTOL10の飛行制御について、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。飛行制御装置40は、図7に示すステップS401にて、上記第1実施形態のステップS101と同様に、全てのモータ81についてモータ状態を取得する。飛行制御装置40は、1つのEPU50が有する複数のモータ81のそれぞれについてモータ状態を個別に取得する。飛行制御装置40は、全てのEPU50についてEPU状態を取得する。飛行制御装置40は、モータ状態及びEPU状態としてモータ出力及びEPU出力を取得する。本実施形態では、1つのEPU50が複数のモータ81を有しているため、1つのEPU50においては複数のモータ出力の合計がEPU出力になる。
【0116】
飛行制御装置40は、ステップS402にて、上記第1実施形態のステップS102と同様に、モータ異常が発生したか否かの判定を行う。飛行制御装置40は、1つのEPU50が有する複数のモータ81のそれぞれについて、モータ異常が発生したか否かの判定を行う。モータ異常が発生していない場合、飛行制御装置40は、ステップS415に進み、上記第1実施形態のステップS112と同様に、正常時姿勢処理を行う。
【0117】
モータ異常が発生した場合、飛行制御装置40は、ステップS403に進む。モータ異常が発生した場合としては、1つのEPU50が異常モータ及び正常モータの両方を有している場合がある。例えば1つのEPU50において、第1モータ81A及び第2モータ81Bのうち一方が異常モータであり、他方が正常モータである場合がある。飛行制御装置40は、ステップS403にて、上記第1実施形態のステップS103と同様に、異常モータを駆動可能であるか否かを判定する。
【0118】
異常モータを駆動可能ではない場合、飛行制御装置40は、ステップS412に進み、モータ停止処理を行う。モータ停止処理は、上記第1実施形態のステップS107にて行われる駆動停止処理と同様に、異常モータの駆動を停止させるための処理である。異常モータにおいて第1モータ81A及び第2モータ81Bのうち一方が異常モータであり他方が正常モータである場合、飛行制御装置40は、異常モータの駆動を停止させる一方で、正常モータの駆動は停止させない。
【0119】
飛行制御装置40は、ステップS412の後、ステップS413に進み、EPU調整処理を行う。EPU調整処理では、異常EPUのEPU出力が異常発生前のEPU出力になるように、正常モータの出力が調整される。異常モータの停止に伴って異常EPUのEPU出力が低下した場合、飛行制御装置40は、この低下分を補うように正常モータの出力を増加させる。この場合、飛行制御装置40は、異常EPUのEPU出力が低下しないようにすることで、eVTOL10を安定姿勢に維持する。飛行制御装置40は、ステップS413の後、ステップS414に進み、上記第1実施形態のステップS111と同様に報知処理を行う。
【0120】
異常モータが駆動可能である場合、飛行制御装置40は、ステップS404~S407にて、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する。飛行制御装置40におけるステップS404~S407の処理を実行する機能が維持判定部に相当する。eVTOL10を安定姿勢に維持可能である場合、飛行制御装置40は、ステップS408~S413にて、eVTOL10を安定姿勢に維持するように正常モータ及び異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う。飛行制御装置40におけるステップS408~S413の処理を実行する機能が出力調整部に相当する。
【0121】
飛行制御装置40は、ステップS404,S405にて、異常モータの駆動が停止してもeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定を行う。この判定は、異常モータが駆動可能である場合に行われる。飛行制御装置40におけるステップS404,S405の処理を実行する機能が停止判定部に相当する。
【0122】
飛行制御装置40は、ステップS404にて、異常EPUのEPU出力を維持可能であるか否かを判定する。この判定では、異常モータの駆動が停止されたと仮定し、異常モータの駆動停止に伴ってEPU出力が低下した分を正常モータの出力増加により補うことが可能か否かの判定が行われる。飛行制御装置40は、異常EPUのEPU出力を維持可能であるか否かを判定することで、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する。異常EPUのEPU出力を維持可能である場合、飛行制御装置40は、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であると判断する。異常EPUのEPU出力を維持可能でない場合、飛行制御装置40は、eVTOL10を安定姿勢に維持可能でないと判断する。
【0123】
異常モータの駆動が停止しても異常EPUのEPU出力を維持可能である場合、飛行制御装置40は、異常モータの駆動を停止するとして、ステップS412に進む。飛行制御装置40は、ステップS412にて、異常モータを駆動可能でない場合と同様に、駆動停止処理を行う。飛行制御装置40におけるステップS412の処理を実行する機能が駆動停止部に相当する。飛行制御装置40は、ステップS412の後、ステップS413,S414の処理を行う。
【0124】
異常モータの駆動が停止すると異常EPUのEPU出力を維持可能でない場合、飛行制御装置40は、ステップS405~S413の処理を行う。飛行制御装置40は、ステップS405~S413にて、異常EPU及び正常EPUの少なくとも一方によりeVTOL10を正常姿勢に維持するための処理を行う。ステップS405~S411は、基本的に上記第1実施形態のステップS104~S110に対応している。
【0125】
飛行制御装置40は、ステップS405にて、異常EPUの駆動を停止するか否かの判定を行う。この判定では、異常EPUにおいて異常モータ及び正常モータのそれぞれの駆動を停止するか否かの判定が行われる。飛行制御装置40は、異常EPUの駆動を停止させてもeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定を行う。この判定では、上記第1実施形態のステップS104と同様に、正常モータ情報及び異常モータ情報などが用いられる。
【0126】
異常EPUの駆動が停止してもeVTOL10を安定姿勢に維持可能である場合、飛行制御装置40は、異常EPUを停止するとして、ステップS408に進む。飛行制御装置40は、ステップS408にて、EPU停止処理を行う。EPU停止処理では、異常EPUを停止させるための処理が行われる。EPU停止処理では、異常EPUが有する異常モータ及び正常モータのそれぞれの駆動が停止される。EPU停止処理では、例えば異常EPUへの電力供給が停止される。飛行制御装置40におけるステップS408の処理を実行する機能が駆動停止部に相当する。飛行制御装置40は、ステップS408の後、ステップS411,S414の処理を行う。
【0127】
異常EPUの駆動が停止するとeVTOL10を安定姿勢に維持可能でない場合、飛行制御装置40は、異常EPUの駆動を停止しないと判断する。異常EPUの駆動を停止しない場合、飛行制御装置40は、ステップS406,S407にて、異常EPUの駆動が継続されてもeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定を行う。飛行制御装置40におけるステップS406,S407の処理を実行する機能が継続判定部に相当する。また、異常EPUの駆動を停止しない場合、飛行制御装置40は、ステップS409,S410にて、異常EPUの駆動を継続させる。飛行制御装置40におけるステップS409,S410の処理を実行する機能が駆動継続部に相当する。
【0128】
飛行制御装置40は、ステップS406にて、異常EPUの連続駆動を行うか否かを判定する。この判定では、異常EPUを連続駆動させた場合にeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。飛行制御装置40は、異常EPUを連続駆動させたと仮定し、異常モータ情報及び正常モータ情報などを用いて、eVTOL10を安定姿勢に維持できるか否かを判定する。例えば、異常EPUがeVTOL10の右翼側に存在する場合、飛行制御装置40は、この異常EPUを連続駆動させたと仮定し、右翼側の正常EPUのEPU出力を増減させることなどによりeVTOL10を安定姿勢に維持できるか、などの判定を行う。
【0129】
異常EPUを連続駆動する場合、飛行制御装置40は、ステップS409に進み、異常EPUの連続駆動処理を行う。この連続駆動処理では、異常EPUを連続駆動させるための処理が行われる。飛行制御装置40は、異常EPUにおいて異常モータ及び正常モータのそれぞれを連続駆動させる。飛行制御装置40におけるステップS409の処理を実行する機能が連続駆動部に相当する。飛行制御装置40は、ステップS409の後、ステップS411,S414の処理を行う。
【0130】
異常EPUを連続駆動しない場合、飛行制御装置40は、異常EPUを連続駆動させてもeVTOL10を安定姿勢に維持できないとして、ステップS407に進む。飛行制御装置40は、ステップS407にて、異常EPUの断続駆動を行うか否かを判定する。この判定では、異常EPUを断続駆動させた場合にeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。飛行制御装置40は、異常EPUのEPU出力が過大であるか否かを判定し、異常EPUのEPU出力が過大である場合に、異常EPUの断続駆動を行うと判断する。飛行制御装置40におけるステップS407の処理を実行する機能が過大判定部に相当する。
【0131】
例えば、異常EPUがeVTOL10の右翼側に存在する場合、飛行制御装置40は、この異常EPUを断続駆動させたと仮定し、右翼側の正常EPUのEPU出力を増減させることなどによりeVTOL10を安定姿勢に維持できるか、などの判定を行う。
【0132】
異常EPUを断続駆動しない場合、飛行制御装置40は、異常EPUのEPU出力が過大ではなく過小であるとして、ステップS409に進み、連続駆動処理を行う。この場合、連続駆動される異常EPUのEPU出力が過小であっても、eVTOL10を安定姿勢に維持するために異常EPUのEPU出力を活用できる。飛行制御装置40は、ステップS409の後、ステップS411に進み、異常時姿勢処理を行う。飛行制御装置40は、異常時姿勢処理にて、連続駆動される異常EPUのEPU出力を活用してeVTOL10を安定姿勢に維持するように、正常EPUのEPU出力を調整する。
【0133】
異常EPUを断続駆動する場合、飛行制御装置40は、異常EPUのEPU出力が過大であるとして、ステップS410に進み、異常EPUの断続駆動処理を行う。この断続駆動処理では、異常EPUを断続駆動させるための処理が行われる。飛行制御装置40は、異常EPUにおいて異常モータ及び正常モータのそれぞれを断続駆動させる。飛行制御装置40におけるステップS410の処理を実行する機能が低下継続部に相当する。
【0134】
飛行制御装置40は、ステップS410の後、ステップS411に進み、異常時姿勢処理を行う。飛行制御装置40は、断続駆動される異常EPUのEPU出力を活用してeVTOL10を安定姿勢に維持するように、正常EPUのEPU出力を調整する。
【0135】
本実施形態によれば、EPU50に異常が発生した場合に、異常EPUの駆動が停止された状態、及び異常EPUの駆動が継続された状態の少なくとも一方について、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。このため、実際に異常EPUの駆動が停止又は継続されなくても、eVTOL10の姿勢を推定できる。しかも、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であると判断された場合、eVTOL10が安定姿勢に維持されるように、異常EPU及び正常EPUの少なくとも一方のEPU出力が調整される。このため、実際に異常EPUの駆動が停止又は継続されても、異常EPU及び正常EPUによりeVTOL10の飛行姿勢を安定姿勢に維持することができる。したがって、EPU50に異常が発生した場合にeVTOL10の安全性を高めることができる。
【0136】
なお、本実施形態では、異常EPUにおいて異常モータ及び正常モータの駆動態様が同じでもよく、同じでなくてもよい。例えば、ステップS408のEPU停止処理では、異常EPUにおいて異常モータの駆動が停止される一方で、正常モータの駆動は停止されなくてもよい。ステップS409の連続駆動処理では、異常EPUにおいて異常モータの連続駆動が行われる一方で、正常モータは断続駆動されてもよく、停止されてもよい。ステップS410の断続駆動処理では、異常EPUにおいて異常モータの断続駆動が行われる一方で、正常モータは連続駆動されてもよく、停止されてもよい。
【0137】
また、本実施形態では、モータ81に対してクラッチ101が設けられていなくてもよい。すなわち、複数のモータ81が互いに独立して回転することが可能でなくてもよい。この構成では、第1モータ81A及び第2モータ81Bのうち一方が正常モータとして駆動継続され、他方が異常モータとして駆動停止された場合、正常モータの駆動継続によるモータシャフト84の回転に伴って異常モータも回転する。この場合、正常モータの駆動継続に伴って異常モータが回転することになるが、この異常モータは、電力供給に伴う駆動を行っているわけではない。
【0138】
<第5実施形態>
第5実施形態では、コイル85が電気的に複数のコイルに分割可能になっている。第5実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第5本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0139】
図8に示すモータ81においては、コイル85が第1コイル85A及び第2コイル85Bを有している。コイル85においては、電気的に分割可能な複数のコイルに、第1コイル85A及び第2コイル85Bが含まれている。例えば、第1コイル85A及び第2コイル85Bはいずれも3相コイルである。コイル85においては、第1コイル85A及び第2コイル85Bという2つの3相コイルにより6相コイルが形成されている。モータ81は、第1コイル85A及び第2コイル85Bの両方に通電されることで6相駆動する。6相駆動では、モータ81が6相モータとして駆動する。モータ81は、第1コイル85A及び第2コイル85Bのうち一方だけに通電されることで3相駆動する。3相駆動では、モータ81が3相モータとして駆動する。モータ81においては、第1コイル85Aを形成する複数のコイル部と、第2コイル85Bを形成する複数のコイル部とが、例えばモータ軸線の周方向に交互に並べられている。
【0140】
eVTOL10の飛行制御について、図9のフローチャートを参照しつつ説明する。飛行制御装置40は、飛行制御処理としてステップS501~S514の処理を行う。ステップS501~S514は、基本的に上記第4実施形態のステップS401~S414に対応している。
【0141】
飛行制御装置40は、図9に示すステップS501にて、全てのモータ81についてモータ状態を取得する。飛行制御装置40は、モータ状態としてモータ81の通電状態を取得する。この通電状態には、コイル85の通電状態として、第1コイル85A及び第2コイル85Bのそれぞれの通電状態が含まれている。通電状態としては、コイル85A,85Bについての電流値、電圧値及び温度などがある。
【0142】
飛行制御装置40は、ステップS502にて、モータ異常が発生したか否かの判定を行う。モータ異常としては、コイル異常などがある。コイル異常は、異常モータが有するコイル85に関する異常である。異常モータでは、第1コイル85A及び第2コイル85Bのうち一方が異常コイルになることがある。異常コイルは、コイル異常が発生したコイルである。コイル異常としては、異常コイルに流れる電流が過大になること及び過小になることなどがある。モータ異常が発生していない場合、飛行制御装置40は、ステップS515に進み、正常時姿勢処理を行う。
【0143】
モータ異常が発生した場合、飛行制御装置40は、ステップS503に進む。飛行制御装置40は、ステップS503にて、異常モータの6相駆動が可能か否かを判定する。6相駆動では、異常モータが6相モータとして駆動される。6相駆動では、第1コイル85A及び第2コイル85Bのそれぞれへの通電が行われる。飛行制御装置40は、異常モータが有する第1コイル85A及び第2コイル85Bのそれぞれが通電可能であるか否かを判定する。第1コイル85A及び第2コイル85Bのそれぞれが通電可能である場合、飛行制御装置40は、異常モータの6相駆動が可能であると判断する。第1コイル85A及び第2コイル85Bのうち一方が、異常コイルであることなどに起因して通電可能でない場合、飛行制御装置40は、異常モータの6相駆動が可能ではないと判断する。飛行制御装置40は、異常コイルへの通電に伴って2次的な異常が発生するか否かの判定を行う。飛行制御装置40は、異常コイルへの通電に伴って2次的な異常が発生すると判断した場合に、異常コイルが通電可能ではないとする。
【0144】
異常モータの6相駆動が可能ではない場合、飛行制御装置40は、ステップS512に進み、異常モータの3相駆動処理を行う。3相駆動処理では、異常モータを3相モータとして駆動させるための処理である。異常モータにおいて第1コイル85A及び第2コイル85Bのうち一方が異常コイルであり他方が正常コイルである場合、飛行制御装置40は、異常コイルへの通電を停止し、正常コイルへの通電を停止しない。この場合、異常モータは、正常コイルへの通電により3相駆動する。正常コイルは、コイル異常が発生していないコイルである。
【0145】
飛行制御装置40は、ステップS512の後、ステップS513に進み、モータ調整処理を行う。モータ調整処理では、異常モータのモータ出力が異常発生前のモータ出力になるように、3相駆動する異常モータのモータ出力が調整される。6相駆動から3相駆動への変更に伴って異常モータの出力が低下した場合、飛行制御装置40は、この低下分を補うように3相駆動する異常モータの出力を増加させる。例えば、飛行制御装置40は、正常コイルへの通電量を増加させることで、3相駆動する異常モータの出力を増加させる。この場合、飛行制御装置40は、異常モータの出力が低下しないようにすることで、eVTOL10を安定姿勢に維持する。飛行制御装置40は、ステップS513の後、ステップS514に進む。
【0146】
異常モータの6相駆動が可能ではない場合、飛行制御装置40は、ステップS504~S507にて、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する。飛行制御装置40におけるステップS504~S507の処理を実行する機能がコイル判定部に相当する。eVTOL10を安定姿勢に維持可能である場合、飛行制御装置40は、ステップS508~S513にて、eVTOL10を安定姿勢に維持するように、異常モータによる6相駆動及び3相駆動の少なくとも一方の出力調整を行う。飛行制御装置40におけるステップS508~S513の処理を実行する機能がコイル調整部に相当する。
【0147】
飛行制御装置40は、ステップS504,S505にて、異常モータの駆動が停止してもeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定を行う。この判定は、異常モータの6相駆動が可能である場合に行われる。
【0148】
飛行制御装置40は、ステップS504にて、異常モータの出力を維持可能であるか否かを判定する。この判定では、異常コイルへの通電が停止されたと仮定し、6相駆動から3相駆動への変更に伴って異常モータの出力が低下した分を3相駆動する異常モータの出力増加により補うことが可能か否かの判定が行われる。飛行制御装置40は、異常モータの出力を維持可能であるか否かを判定することで、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する。異常モータの出力を維持可能である場合、飛行制御装置40は、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であると判断する。異常モータの出力を維持可能でない場合、飛行制御装置40は、eVTOL10を安定姿勢に維持可能でないと判断する。
【0149】
異常モータが6相駆動から3動駆動に変更されても異常モータの出力を維持可能である場合、飛行制御装置40は、異常モータを3相駆動させるとして、ステップS512に進む。飛行制御装置40は、ステップS512にて、異常モータの6相駆動が可能でない場合と同様に、3相駆動処理を行う。飛行制御装置40は、ステップS512の後、ステップS513,S514の処理を行う。
【0150】
異常モータが6相駆動から3相駆動に変更されると異常モータの出力を維持可能でない場合、飛行制御装置40は、ステップS505~S513の処理を行う。飛行制御装置40は、ステップS505~S513にて、異常モータ及び正常モータの少なくとも一方によりeVTOL10を正常姿勢に維持するための処理を行う。ステップS505~S511は、基本的に上記第1実施形態のステップS104~S110に対応している。
【0151】
飛行制御装置40は、ステップS505にて、異常モータの駆動を停止するか否かの判定を行う。この判定では、異常モータの駆動を停止させるか否かの判定が行われる。飛行制御装置40は、異常モータの駆動を停止してもeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定を行う。
【0152】
異常モータの駆動が停止してもeVTOL10を安定姿勢に維持可能である場合、飛行制御装置40は、異常モータを停止するとして、ステップS508に進む。飛行制御装置40は、ステップS508にて、モータ停止処理を行う。モータ停止処理では、異常モータを停止させるための処理が行われる。モータ停止処理では、異常モータが有する異常コイル及び正常コイルのそれぞれへの通電が停止される。モータ停止処理では、異常コイル及び正常コイルへの通電態様の調整として、異常コイル及び正常コイルへの通電態様が停止状態に設定される。モータ停止処理では、異常モータによる3相駆動及び6相駆動の両方が行われない。飛行制御装置40は、ステップS508の後、ステップS511,S514の処理を行う。
【0153】
異常モータの駆動が停止するとeVTOL10を安定姿勢に維持可能でない場合、飛行制御装置40は、ステップS505にて、異常モータの駆動を停止しないと判断する。異常モータの駆動を停止しない場合、飛行制御装置40は、ステップS506,S507にて、異常モータの6相駆動が継続されてもeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定を行う。また、異常モータの駆動を停止しない場合、飛行制御装置40は、ステップS509,S510にて、異常モータの6相駆動を継続させる。
【0154】
飛行制御装置40は、ステップS506にて、異常モータの6相連続駆動を行うか否かを判定する。この判定では、異常モータを6相連続駆動させた場合にeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。6相連続駆動は、異常モータを6相駆動で連続的に駆動させることである。飛行制御装置40は、異常モータを6相連続駆動させたと仮定し、異常モータ情報及び正常モータ情報などを用いて、eVTOL10を安定姿勢に維持できるか否かを判定する。例えば、異常モータがeVTOL10の右翼側に存在する場合、飛行制御装置40は、この異常モータを6相連続駆動させたと仮定し、右翼側の正常モータの出力を増減させることなどによりeVTOL10を安定姿勢に維持できるか、などの判定を行う。
【0155】
異常モータを6相連続駆動する場合、飛行制御装置40は、ステップS509に進み、異常モータの6相連続駆動処理を行う。この6相連続駆動処理では、異常モータを6相連続駆動させるための処理が行われる。飛行制御装置40は、異常モータにおいて異常コイル及び正常コイルのそれぞれに連続的に通電する。6相連続駆動処理では、異常コイル及び正常コイルへの通電態様の調整として、異常コイル及び正常コイルへの通電態様が連続通電に設定される。飛行制御装置40は、ステップS509の後、ステップS511,S514の処理を行う。
【0156】
異常モータを6相連続駆動しない場合、飛行制御装置40は、異常モータを6相連続駆動させてもeVTOL10を安定姿勢に維持できないとして、ステップS507に進む。飛行制御装置40は、ステップS507にて、異常モータの6相断続駆動を行うか否かを判定する。この判定では、異常モータを6相断続駆動させた場合にeVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。6相断続駆動は、異常モータを6相駆動で断続的に駆動させることである。飛行制御装置40は、所定タイミングでの異常モータの6相駆動による出力が過大であるか否かを判定する。そして、所定タイミングでの異常モータの出力が過大である場合に、飛行制御装置40は、異常モータの6相断続駆動を行うと判断する。
【0157】
例えば、異常モータがeVTOL10の右翼側に存在する場合、飛行制御装置40は、この異常モータを6相断続駆動させたと仮定し、右翼側の正常モータの出力を増減させることなどによりeVTOL10を安定姿勢に維持できるか、などの判定を行う。
【0158】
異常モータを6相断続駆動しない場合、飛行制御装置40は、異常モータの出力が過大ではなく過小であるとして、ステップS509に進み、6相連続駆動処理を行う。この場合、6相連続駆動される異常モータの出力が過小であっても、eVTOL10を安定姿勢に維持するために異常モータの出力を活用できる。飛行制御装置40は、ステップS509の後、ステップS511に進み、異常時姿勢処理を行う。飛行制御装置40は、異常時姿勢処理にて、6相連続駆動される異常モータの出力を活用してeVTOL10を安定姿勢に維持するように、正常モータの出力を調整する。
【0159】
異常モータを6相断続駆動する場合、飛行制御装置40は、異常モータの出力が過大であるとして、ステップS510に進み、異常モータの6相断続駆動処理を行う。この6相断続駆動処理では、異常モータを6相断続駆動させるための処理が行われる。飛行制御装置40は、異常モータにおいて異常コイル及び正常コイルのそれぞれに断続的に通電する。6相断続駆動処理では、異常コイル及び正常コイルへの通電状態の調整として、異常コイル及び正常コイルへの通電態様が断続通電に設定される。
【0160】
飛行制御装置40は、ステップS510の後、ステップS511に進み、異常時姿勢処理を行う。飛行制御装置40は、6相断続駆動される異常モータの出力を活用してeVTOL10を安定姿勢に維持するように、正常モータの出力を調整する。
【0161】
本実施形態によれば、モータ81に異常が発生した場合に、異常コイルへの通電が停止された状態、及び異常コイルへの通電が継続された状態の少なくとも一方について、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの判定が行われる。このため、実際に異常コイルへの通電が停止又は継続されなくても、eVTOL10の姿勢を推定できる。しかも、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であると判断された場合、eVTOL10が安定姿勢に維持されるように、異常コイル及び正常コイルの少なくとも一方の通電態様が調整される。このため、実際に異常コイルへの通電が停止又は継続されても、異常モータ及び正常モータによりeVTOL10の飛行姿勢を安定姿勢に維持することができる。したがって、モータ81が有するコイル85に異常が発生した場合にeVTOL10の安全性を高めることができる。
【0162】
なお、本実施形態では、異常モータにおいて異常コイル及び正常コイルへの通電態様が同じでもよく、同じでなくてもよい。例えば、ステップS508のモータ停止処理では、異常モータにおいて異常コイルへの通電が停止される一方で、正常コイルへの通電は停止されなくてもよい。ステップS509の6相連続駆動処理では、異常モータにおいて異常コイルへの連続通電が行われる一方で、正常コイルへの通電は断続的に継続されてもよく、停止されてもよい。ステップS510の6相断続駆動処理では、異常モータにおいて異常コイルへの断続通電が行われる一方で、正常コイルへの通電は連続的に継続されてもよく、停止されてもよい。
【0163】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、又は組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0164】
上記各実施形態において、eVTOL10を安定姿勢に維持可能であるか否かの維持判定は、モータ81の出力調整が行われる前後の少なくとも一方で行われてもよい。例えば上記第1実施形態において、維持判定は、ステップS104に加えて、ステップS107の駆動停止処理により異常モータの駆動が停止された後に行われてもよい。
【0165】
上記各実施形態において、飛行制御装置40は、異常モータの駆動を継続させる機能として、異常モータを連続駆動させる機能と断続駆動させる機能とのうち一方だけを有していてもよい。例えば上記第1実施形態において、飛行制御装置40は、ステップS108の連続駆動処理を実行する機能とステップS109の断続駆動処理を実行する機能のうち一方だけを有していてもよい。
【0166】
上記各実施形態において、異常モータの出力を低下させる低下継続部は、所定タイミングでの異常モータの出力が小さくなるように異常モータの出力を調整してもよい。例えば上記第1実施形態のステップS109において、所定タイミングでの異常モータの出力が小さくなるように、異常モータへの通電量が小さくされてもよい。なお、異常モータの異常態様が所定タイミングでのモータ出力を調整できない態様である場合、異常モータの平均出力が小さくされることが好ましい。
【0167】
上記各実施形態において、報知処理では、モータ異常が発生したことなどが通知される通知先として、パイロットの他に、飛行制御装置40と通信可能な外部装置などがあってもよい。外部装置としては、管制センタに設けられた管制装置、eVTOL10を遠隔操作可能な遠隔装置などがある。
【0168】
上記各実施形態において、eVTOL10は、チルトロータ機でなくてもよい。すなわち、1つのロータ20がリフト用ロータ及びクルーズ用ロータを兼用する構成でなくてもよい。例えば、1つのロータ20がリフト用ロータ及びクルーズ用ロータのうち一方だけとして機能する構成とする。この構成では、eVTOL10において、複数のロータ20に、リフト用ロータとクルーズ用ロータとが含まれている。このeVTOL10では、上昇する場合にはリフト用ロータが駆動し、前方に進む場合にはクルーズ用ロータが駆動する。リフト用ロータはホバー用ロータと称されることがある。
【0169】
上記各実施形態において、飛行制御装置40が搭載される垂直離着陸機は、少なくとも1つのロータ20を少なくとも1つのEPU50が駆動するという電動式の垂直離着陸機であればよい。例えば、1つのロータ20を複数のEPU50が駆動する構成でもよく、複数のロータ20を1つのEPU50が駆動する構成でもよい。
【0170】
上記各実施形態において、飛行制御装置40が搭載される飛行体は、電動式であれば、垂直離着陸機でなくてもよい。例えば、飛行体は、電動航空機として、滑走を伴う離着陸が可能な飛行体でもよい。さらに、飛行体は、回転翼機又は固定翼機でもよい。飛行体は、人が乗らない無人飛行体でもよい。
【0171】
上記各実施形態において、飛行制御装置40は、少なくとも1つのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、ハードウェアである少なくとも1つのプロセッサを含む。このプロセッサをハードウェアプロセッサと称すると、ハードウェアプロセッサは、下記(i)、(ii)、又は(iii)により提供することができる。
【0172】
(i)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニットを含むデジタル回路によって提供される。論理ユニットは例えばゲート回路である。デジタル回路は、プログラム及びデータの少なくとも一方を格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
【0173】
(ii)ハードウェアプロセッサは、少なくとも1つのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアは、例えばCPUと称される。メモリは、記憶媒体とも称される。メモリは、プロセッサによって読み取り可能な「プログラム及びデータの少なくとも一方」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。
【0174】
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、又は共通のチップの上に配置される。
【0175】
すなわち、飛行制御装置40が提供する手段及び機能の少なくとも一方は、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又はそれらの組み合わせにより提供することができる。
【0176】
技術的思想の開示
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0177】
技術的思想1
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)を安定姿勢に維持するように、前記飛行用モータの駆動を制御する飛行制御装置(40)であって、
前記飛行用モータに異常が発生した場合に、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生した異常モータの駆動が停止された状態、及び前記異常モータの駆動が継続された状態の少なくとも一方について、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能か否かを判定する維持判定部(S104~S106,S404~S407)と、
前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能と判断された場合に、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持するように、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生していない正常モータ及び前記異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う出力調整部(S107~S110,S301~S303,S408~S413)と、
を備えている飛行制御装置。
【0178】
技術的思想2
前記出力調整部は、
前記維持判定部により、前記異常モータの駆動が停止された状態では前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能ではないと判断された場合に、前記出力調整として前記異常モータの駆動を継続させる駆動継続部(S108,S109,S409,S410)、を有している技術的思想1に記載の飛行制御装置。
【0179】
技術的思想3
前記維持判定部により、前記異常モータの駆動が停止された状態では前記電動飛行体を安定姿勢に維持可能ではないと判断された場合に、前記異常モータの出力が過大であるか否かを判定する過大判定部(S106,S407)、を備え、
前記出力調整部は、
前記過大判定部により過大と判断された場合に、前記出力調整として前記異常モータの出力が低下するように前記異常モータの駆動を継続させる低下継続部(S109,S411)、を有している技術的思想1又は2に記載の飛行制御装置。
【0180】
技術的思想4
前記低下継続部は、前記異常モータの出力が低下するように前記異常モータの駆動を断続的に継続させる、技術的思想3に記載の飛行制御装置。
【0181】
技術的思想5
前記出力調整部は、
前記過大判定部により過大ではないと判断された場合に、前記異常モータの駆動を連続的に継続させる連続駆動部(S108,S409)、を有している技術的思想3又は4に記載の飛行制御装置。
【0182】
技術的思想6
前記出力調整部は、
前記維持判定部により、前記異常モータの駆動を停止した状態で前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能であると判断された場合に、前記異常モータの駆動を停止させる駆動停止部(S107,S408,S412)、を有している技術的思想1~5のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【0183】
技術的思想7
前記出力調整部が前記出力調整を行っても、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持しながらの飛行が可能でない場合、前記電動飛行体を退避させるように要請する退避要請部(S206,S207)、を備えている技術的思想1~6のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【0184】
技術的思想8
前記退避要請部は、
前記電動飛行体が着陸可能な着陸可能地が前記電動飛行体の下方にあり、且つ前記電動飛行体が垂直着陸する際に前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能である場合に、前記電動飛行体を前記着陸可能地に垂直着陸させるように要請する着陸要請部(S206)、を有している技術的思想7に記載の飛行制御装置。
【0185】
技術的思想9
前記退避要請部は、
前記電動飛行体が着陸可能な着陸可能地が前記電動飛行体の下方にない場合、または前記電動飛行体が垂直着陸する際に前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能ではない場合に、前記着陸可能地を探索するように要請する探索要請部(S207)、を有している技術的思想7又は8に記載の飛行制御装置。
【0186】
技術的思想10
前記維持判定部は、
前記異常モータの駆動が停止された状態で前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する停止判定部(S104,S404,S405)と、
前記異常モータの駆動が継続された状態で前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する継続判定部(S105,S106,S406、S407)と、
を有している技術的思想1~9のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【0187】
技術的思想11
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)が安定姿勢で飛行するように、前記飛行用モータの駆動を制御する飛行制御プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサ(41)を、
前記飛行用モータに異常が発生した場合に、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生した異常モータの駆動を停止した状態、及び前記異常モータの駆動を継続した状態の少なくとも一方について、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能であるか否かを判定する維持判定部(S104~S106,S404~S407)と、
前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能と判断された場合に、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持するように、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生していない正常モータ及び前記異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う出力調整部(S107~S110,S301~S303,S408~S413)と、
として機能させる飛行制御プログラム。
【0188】
技術的思想12
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)が安定姿勢で飛行するように、前記飛行用モータの駆動を制御する飛行制御方法であって、
少なくとも1つのプロセッサ(41)にて実行される処理に、
前記飛行用モータに異常が発生した場合に、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生した異常モータの駆動を停止した状態、及び前記異常モータの駆動を継続した状態の少なくとも一方について、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能であるか否かを判定し(S104~S106,S404~S407)、
前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能と判断された場合に、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持するように、複数の前記飛行用モータのうち前記異常が発生していない正常モータ及び前記異常モータの少なくとも一方の出力調整を行う(S107~S110,S301~S303,S408~S413)、
というステップを含む飛行制御方法。
【0189】
技術的思想13
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)を安定姿勢に維持するように、前記飛行用モータの駆動を制御する飛行制御装置(40)であって、
前記飛行用モータに異常が発生した場合に、前記飛行用モータが有する複数のコイル(85A,85B)のうち異常が発生した異常コイルへの通電が停止された状態、及び前記異常コイルへの通電が継続された状態の少なくとも一方について、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能か否かを判定するコイル判定部(S504~S507)と、
前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能と判断された場合に、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持するように、複数の前記コイルのうち前記異常が発生していない正常コイル及び前記異常コイルの少なくとも一方へ通電態様を調整するコイル調整部(S508~S513)と、
を備えている飛行制御装置。
【0190】
技術的思想14
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)を安定姿勢に維持するように、前記飛行用モータの駆動を制御する飛行制御プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサ(41)を、
前記飛行用モータに異常が発生した場合に、前記飛行用モータが有する複数のコイル(85A,85B)のうち異常が発生した異常コイルへの通電が停止された状態、及び前記異常コイルへの通電が継続された状態の少なくとも一方について、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能か否かを判定するコイル判定部(S504~S507)と、
前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能と判断された場合に、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持するように、複数の前記コイルのうち前記異常が発生していない正常コイル及び前記異常コイルの少なくとも一方の出力調整を行うコイル調整部(S508~S513)と、
として機能させる飛行制御プログラム。
【0191】
技術的思想15
複数の飛行用モータ(81,81A,81B)を備えた電動飛行体(10)を安定姿勢に維持するように、前記飛行用モータの駆動を制御する飛行制御方法であって、
少なくとも1つのプロセッサ(41)にて実行される処理に、
前記飛行用モータに異常が発生した場合に、前記飛行用モータが有する複数のコイル(85A,85B)のうち異常が発生した異常コイルへの通電が停止された状態、及び前記異常コイルへの通電が継続された状態の少なくとも一方について、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能か否かを判定し(S504~S507)、
前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持可能と判断された場合に、前記電動飛行体を前記安定姿勢に維持するように、複数の前記コイルのうち前記異常が発生していない正常コイル及び前記異常コイルの少なくとも一方の出力調整を行う(S508~S513)、
というステップを含む飛行制御方法。
【符号の説明】
【0192】
10…電動飛行体としてのeVTOL、40…制御装置としての飛行制御装置、41…プロセッサ、81‥飛行用モータとしてのモータ、81A…飛行用モータとしての第1モータ、82A…飛行用モータとしての第2モータ、S104…維持判定部及び停止判定部、S105…維持判定部及び継続判定部、S106…維持判定部、過大判定部及び継続判定部、S107…出力調整部及び駆動停止部、S108,S109…出力調整部、駆動継続部及びS108…出力調整部、駆動継続部及び連続駆動部、S109…出力調整部、駆動継続部及び低下継続部、S110…出力調整部、S206…退避要請部及び着陸要請部、S207…退避要請部及び探索要請部、S301~S303…出力調整部、S404…維持判定部及び停止判定部、S405…維持判定部及び停止判定部、S406…維持判定部及び継続判定部、S407…維持判定部、過大判定部及び継続判定部、S408…出力調整部及び駆動停止部、S409…出力調整部、駆動継続部及び連続駆動部、S410…出力調整部、駆動継続部及び低下継続部、S411…出力調整部、S412…出力調整部及び駆動停止部、S413…出力調整部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9