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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178114
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20231207BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091187
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】相田 孝光
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 公孝
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200GA12
2H200JC04
2H200JC13
2H200JC15
2H200JC17
2H200LA02
2H200MA03
2H200MC06
2H270KA04
2H270KA09
2H270LA18
2H270LD03
2H270MB11
2H270MB27
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
(57)【要約】
【課題】光学的特性が異なる領域を有する中間転写体上に形成されたトナーを光学的センサで検知する場合に、検知精度を向上させること。
【解決手段】非重複部229と、非重複部229とは光学的な特性が異なる重複部228と、を有する無端状の中間転写ベルト205と、中間転写ベルト205上にテスト画像503を形成する画像形成部と、濃度センサと、濃度センサにより検知された結果に基づいて中間転写ベルト205上のテスト画像503の有無を判断する検知動作を行うために、画像形成部により中間転写ベルト205上にテスト画像503を形成するように制御するプリンタ制御部と、を備え、プリンタ制御部は、検知動作において、テスト画像503の移動方向における第1長さL1が重複部228の移動方向における第2長さL2よりも長くなるように、画像形成部により中間転写ベルト204上にトテスト画像503を形成するよう制御する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動方向における第1部分と、前記移動方向における前記第1部分とは光学的な特性が異なる第2部分と、を有する無端状の中間転写体と、
前記中間転写体上にトナー像を形成する画像形成手段と、
前記中間転写体の表面又は前記中間転写体上に形成された前記トナー像に光を照射する光源を有し、前記光源から前記中間転写体又は前記中間転写体上に形成された前記トナー像に前記光を照射することによって前記中間転写体又は前記中間転写体上に形成された前記トナー像により反射される反射光を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された結果に基づいて前記中間転写体上の前記トナー像の有無を判断する検知動作を行うために、前記画像形成手段により前記中間転写体上に前記トナー像を形成するように制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記検知動作において、前記トナー像の前記移動方向における第1長さが前記第2部分の前記移動方向における第2長さよりも長くなるように、前記画像形成手段により前記中間転写体上に前記トナー像を形成するよう制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検知動作において、前記検知手段により検知した結果と、前記中間転写体の移動に伴い前記トナー像が前記検知手段を通過する第1時間と、前記中間転写体の移動に伴い前記第2部分が前記検知手段を通過する第2時間と、に基づいて、前記中間転写体上の前記トナー像の有無を判断することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検知手段により前記トナー像の先端からの反射光が検知されるタイミングよりも前記第2時間早いタイミングから、前記検知手段により前記トナー像の後端からの反射光が検知されたタイミングよりも前記第2時間遅いタイミングまでの間に前記検知手段により検知された結果を用いて前記トナー像の有無を判断することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記第2部分又は前記トナー像からの反射光を検知したときに、前記第1部分からの反射光を検知したときとは異なる電圧を出力し、
前記制御手段は、前記検知手段から出力された電圧値が連続して所定値を下回った時間が、前記第1時間以上かつ前記第1時間と前記第2時間との和以下の範囲である場合に、前記トナー像が前記中間転写体上に形成されていると判断することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記第2部分又は前記トナー像からの反射光を検知したときに、前記第1部分からの反射光を検知したときとは異なる電圧を出力し、
前記制御手段は、前記検知手段から出力された電圧値が連続して所定値を下回った時間が、前記第1時間よりも短い場合に、前記トナー像が前記中間転写体上に形成されていないと判断することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記検知手段は、前記第2部分又は前記トナー像からの反射光を検知したときに、前記第1部分からの反射光を検知したときとは異なる電圧を出力し、
前記制御手段は、前記検知手段から出力された電圧値が連続して所定値を下回った時間が、前記第1時間と前記第2時間との和よりも長い場合に、前記トナー像が前記中間転写体上に形成されたか否かが不明であると判断することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
静電潜像が形成される像担持体と、
トナーと、前記像担持体上の前記静電潜像を前記トナーにより現像しトナー像を形成する現像手段と、を有する現像部と、
を備え、
前記現像部は、前記画像形成装置に対して着脱が可能であり、
前記制御手段は、前記現像部が前記画像形成装置に装着されているか否かを判断するために、前記検知動作を行うように制御することを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記中間転写体は、前記トナー像が形成される面に研磨加工が施され、
前記第2部分は、前記第1部分に前記研磨加工が施された回数よりも多い回数の前記研磨加工が施されることにより、前記第1部分とは前記光学的な特性が異なることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記中間転写体は、前記トナー像が形成される面に、前記移動方向に直交する方向に凹部及び凸部が交互に連続するように形成される凹凸加工が施され、
前記第2部分は、前記移動方向に直交する方向において、前記第1部分に形成された前記凹部が占める割合よりも多い割合の前記凹部が形成されることにより、前記第1部分とは前記光学的な特性が異なることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、例えば、印刷装置、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用した画像形成装置として、無端状の中間転写体を用いた画像形成装置がある。トナー像は中間転写体から転写材へ転写されるが、トナー像の全てが転写材へ転写されるわけではない。このため、中間転写体上に残留したトナーを除去(クリーニング)する必要がある。クリーニング方式としてはブレードを用いたクリーニング方式が広く採用されている。例えば特許文献1では、クリーニングブレードと中間転写体と間の滑り性を向上させるため、中間転写体表面に凹凸形状を付与する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-71275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、特許文献1には、一部の領域で凹凸形状が重複して施された中間転写体の表面構成が開示されている。この凹凸形状が重複した領域(重複領域)とそれ以外の領域では、表面状態が異なることから、その影響で光学的な特性(例えば反射率)も異なる可能性がある。このため、例えば光学的センサなどを用いてトナー像有無の検知工程を実施する場合に、重複領域の位置を考慮せずにトナー像を形成すると以下のような課題が発生するおそれがある。すなわち、光学センサの検知結果によっては、重複領域なのか、トナー像なのかを正確に判別できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、光学的特性が異なる領域を有する中間転写体上に形成されたトナーを光学的センサで検知する場合に、検知精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
(1)移動方向における第1部分と、前記移動方向における前記第1部分とは光学的な特性が異なる第2部分と、を有する無端状の中間転写体と、前記中間転写体上にトナー像を形成する画像形成手段と、前記中間転写体の表面又は前記中間転写体上に形成された前記トナー像に光を照射する光源を有し、前記光源から前記中間転写体又は前記中間転写体上に形成された前記トナー像に前記光を照射することによって前記中間転写体又は前記中間転写体上に形成された前記トナー像により反射される反射光を検知する検知手段と、前記検知手段により検知された結果に基づいて前記中間転写体上の前記トナー像の有無を判断する検知動作を行うために、前記画像形成手段により前記中間転写体上に前記トナー像を形成するように制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検知動作において、前記トナー像の前記移動方向における第1長さが前記第2部分の前記移動方向における第2長さよりも長くなるように、前記画像形成手段により前記中間転写体上に前記トナー像を形成するよう制御することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光学的特性が異なる領域を有する中間転写体上に形成されたトナーを光学的センサで検知する場合に、検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1、2の画像形成装置の概略構成図
図2】実施例1の中間転写ベルトの拡大模式図、研磨装置を示す図
図3】実施例1、2の濃度センサ及びセンサ出力電圧の概略説明図
図4】実施例1、2のセンサ出力電圧の詳細説明図
図5】実施例1、2のセンサ出力電圧の詳細説明図
図6】実施例1、2のハードウェア構成図
図7】実施例1、2の機能ブロック図
図8】実施例1の装着判断処理を示すフローチャート
図9】実施例1の出力減少時間を解析する方法の説明図
図10】実施例1のセンサ出力電圧の詳細説明図
図11】実施例1の比較例としての装着判断処理を示すフローチャート
図12】実施例2の中間転写ベルトの拡大模式図、インプリント加工端部の概略説明図
図13】実施例2の装着判断処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。ただし特に記載の無い限り、実施形態に記載する構成部品の材質、形状、相対的位置等、限定する趣旨のものではない。
【実施例0010】
[画像形成装置の構成の説明]
図1は、実施例1の画像形成装置200の概略構成図である。画像形成装置200は、例えば、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザープリンタである。画像形成装置200は、コントローラ202から入力される画像情報に従って、記録材203にフルカラー画像を形成する。画像形成装置200は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色毎に画像形成ステーションSY、SM、SC、SKを有する。なお、色を示す符号の添え字Y、M、C、Kは、以降、特定の色の部材について説明する場合を除き、省略する場合もある。
【0011】
画像形成ステーションSは、カートリッジ204と、中間転写体である回転可能な中間転写ベルト205(Intermediate Transfer Belt)と、1次転写ローラ206とを有する。中間転写ベルト205は、無端状のベルトであり、図示矢印A方向(反時計回り方向)に回転する。1次転写ローラ206は、中間転写ベルト205を介してカートリッジ204と反対側に配置されている。各画像形成ステーションSY、SM、SC、SKは中間転写ベルト205の回転方向に並んで配置されており、形成する色が異なることを除いて実質的に同じである。
【0012】
画像形成装置200に対して着脱可能なカートリッジ204は、像担持体である感光ドラム301を有する。言い換えれば、感光ドラム301が画像形成装置200に対して取り外し可能に装着されている。画像形成装置200は、感光ドラム301を露光するための露光装置であるスキャナユニット207を有する。なお、露光装置としては、発光ダイオード(LED)を用いた露光装置を用いることもできる。
【0013】
感光ドラム301はドラムモータ731(図6参照)により回転駆動される。帯電ローラ302は高電圧電源721(図6参照)から高電圧を印加されることで感光ドラム301表面を均一に帯電する。帯電ローラ302には例えば-1200Vの帯電電圧が印加されており、感光ドラム301の表面は例えば-700Vに帯電されている。次に、スキャナユニット207がコントローラ202に入力される画像情報を元に感光ドラム301へレーザー光を照射し、感光ドラム301表面に静電潜像を形成する。感光ドラム301上(像担持体上)でレーザー光により露光された箇所の電位は例えば-100Vとなる。
【0014】
トナー容器307はトナーを収容する。トナー容器307内のトナーは、撹拌機(不図示)によって、現像ローラ303へ供給される。現像ローラ303は現像モータ711(図6参照)によって回転している。現像ローラ303の表面にコートされた例えば負電荷を帯びたトナーが、高電圧電源721により、例えば-350Vの現像電圧を印加することで、感光ドラム301表面の静電潜像に沿って付着し、静電潜像が可視像になる。以下、トナーによる可視像をトナー像と表記する。ここで、現像部というときには、トナーと、感光ドラム301上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像手段である現像ローラ303と、が現像部に含まれる。現像部は、画像形成装置200に対して着脱が可能であり、実施例1では、カートリッジ204に現像部が含まれる。すなわち、カートリッジ204が画像形成装置200に装着されている状態であれば、画像形成動作によって中間転写ベルト205上にトナー像が形成される。一方、カートリッジ204が画像形成装置200に装着されていない状態では、画像形成動作が行われても中間転写ベルト205上にトナー像が形成されないこととなる。
【0015】
感光ドラム301の基層は接地されており、1次転写ローラ206は高電圧電源721によりトナーと逆極性の電圧、例えば+1000Vが印加されている。そのため1次転写ローラ206と感光ドラム301との間のニップ部で電界が形成され、トナー像が感光ドラム301から中間転写ベルト205へ転写される。中間転写ベルト205上に転写されずに感光ドラム301表面に残ったトナーは、クリーニングブレード304によって感光ドラム301から除去され、廃トナー容器305に集められる。クリーニングブレード304は、例えば、板金で支持されたウレタンゴムなどから成る弾性ブレードであり、感光ドラム301に対し、所定の加圧力で、感光ドラム301の回転方向に対し、カウンタの向きで接触している。
【0016】
中間転写ベルト205が図示矢印A方向に回転することで、各色の画像形成ステーションSで生成されたトナー像が中間転写ベルト205上に順次重畳して転写され(1次転写)、フルカラーのトナー像が形成されて搬送される。中間転写ベルト205は、駆動ローラ217によって駆動される。駆動ローラ217の回転軸線方向は、中間転写ベルト205の回転軸線方向と呼ぶことができる。中間転写ベルト205上(中間転写体上)にトナー像を形成する画像形成手段である画像形成部には、スキャナユニット207、感光ドラム301、現像ローラ303、1次転写ローラ206が含まれる。
【0017】
給紙カセット208には記録材203が積載収納されている。給紙スタート信号に基づき給紙ローラ209が駆動されることで記録材203は搬送路に給紙される。記録材203はレジストレーションローラ対(以下、レジストローラ対という)210を介して転写部材である2次転写ローラ211と2次転写対向ローラ212との当接ニップ部(以下、2次転写部ともいう)に所定のタイミングで搬送される。具体的には、中間転写ベルト205上のトナー像の先端部と記録材203の先端部とが重なるタイミングで記録材203は搬送される。
【0018】
記録材203が2次転写ローラ211と2次転写対向ローラ212との間で狭持搬送される間、2次転写ローラ211には電源装置(不図示)からトナーと逆極性の電圧が印加される。2次転写対向ローラ212が接地されているため、2次転写ローラ211と2次転写対向ローラ212との間には電界が形成される。この電界により中間転写ベルト205から記録材203へとトナー像が転写される(2次転写)。
【0019】
記録材203は2次転写ローラ211と2次転写対向ローラ212との間のニップ部を通過した後、定着装置213によって加熱及び加圧処理を受ける。これにより記録材203上の未定着のトナー像は記録材203に定着する。その後、記録材203が排出口214から排出トレイ215へ搬送され、画像形成プロセスが完了となる。
【0020】
一方、2次転写部で記録材203に転写されず中間転写ベルト205上に残ったトナーはクリーニングブレード216によって中間転写ベルト205から除去され、中間転写ベルト205は再び画像形成が可能な状態にリフレッシュ(清掃)される。クリーニングブレード216は例えば弾性体のクリーニングブレードを採用しており、中間転写ベルト205に当接するように押圧されている。中間転写ベルト205が回転しているのに対しクリーニングブレード216は停止しているため、クリーニングブレード216と中間転写ベルト205との間の当接面は摺動されている。この摺擦により中間転写ベルト205上に残るトナーは剥ぎ取られる。
【0021】
また、ユーザは、画像形成装置200のアクセスドア(不図示)を開けることでカートリッジ204にアクセス可能になる。ユーザは、アクセスドアを開けてカートリッジ204を図1の手前側に引き抜くことで、カートリッジ204を画像形成装置200から取り外すことができる。また、ユーザは、カートリッジ204を画像形成装置200に装着することが可能である。画像形成装置200は、カートリッジ204(又は感光ドラム301、現像部)が装着されているか否かを検知し、装着状態を通知するメッセージを表示部230に表示する。さらに、画像形成装置200は、後述する濃度センサ218を有している。
【0022】
[中間転写ベルトの構成の説明]
ここで、中間転写ベルト205について詳細に説明する。実施例1では、中間転写ベルト205として、例えば体積抵抗率が1×1010Ω・cm、表面抵抗率が1×1012Ω/sqで、厚み75μmの熱可塑性ポリフッ化ビニリデンのシームレスベルトを使用した。電気抵抗は、温度が23℃、相対湿度が50%RHの環境で、アドバンテスト製R8340A測定器と、主電極外径50mm、ガード電極70mmのプローブを使用し、印加電圧100V、チャージ時間が10秒の条件で測定した。なお、中間転写体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を用いてもよい。電気抵抗は、体積抵抗率が1×10~1×1011Ω・cm、表面抵抗率が1×1011~1×1013Ω/sqが適している。
【0023】
長期使用に伴うクリーニングブレード216表面の耐摩耗性を向上するため、中間転写ベルト205表面には、微細な凹凸形状(以下、微細凹凸形状という)が形成されている。微細凹凸形状の加工方法として、例えば研磨加工、切削加工、インプリント加工などが一般的に知られているが、実施例1の構成では加工コストや生産性、形状の精度等の観点から研磨加工を採用する。
【0024】
実施例1では、10点平均粗さが中間転写ベルト205の幅方向で0.5μm、周方向が0.3μmとなるようにした。ここで、中間転写ベルト205の幅方向とは、感光ドラム301等の回転軸方向であり、周方向とは、中間転写ベルト205の移動方向であり矢印A方向である。10点平均粗さ(JIS B0601:2001付属書記載)の測定には、株式会社小坂研究所製表面粗さ測定機SE3500を使用し、カットオフ値が0.8mm、測定長さが4mm、測定速度が0.1mm/秒の条件で測定した。
【0025】
図2(a)に中間転写ベルト205の表面の一部を拡大した概略説明図を記す。研磨加工では研磨フィルムを中間転写ベルト205の表面に押し当て、研磨フィルムと中間転写ベルト205を同じ回動方向に動かすことで加工が行われる。中間転写ベルト205において、研磨加工の開始位置226からH方向に研磨加工を開始し、研磨加工の終了位置227まで加工を行う。研磨加工の終了位置227は、開始位置226を超えた位置に配置されるため、中間転写ベルト205の周方向において、第1部分である研磨加工の非重複部229と、第2部分である研磨加工の重複部228が形成される。非重複部229に対して重複部228では2回の研磨加工が行われているため、研磨目がより多く形成される。これらの理由より、重複部228では非重複部229と比べて、光学センサである濃度センサ218から光を照射したときに正反射光量が減少する。すなわち、中間転写ベルト205は、移動方向における第1部分である非重複部229と、移動方向における第1部分とは光学的な特性が異なる第2部分である重複部228と、を有する無端状のベルトである。ただし、研磨加工により形成された微細な凹凸形状の深さは、中間転写ベルト205の層厚に対してかなり小さいこともあり、重複部228と非重複部229とで転写性に差はない。
【0026】
(研磨装置)
図2(b)に、中間転写ベルト205の研磨加工に用いられる研磨装置600の一例を示す。研磨装置600は、研磨フィルム601、研磨ヘッド602を備えている。研磨加工時、中間転写ベルト205は、3つのローラ603、604、605によって張架されるとともに、矢印方向に回転される。研磨フィルム601は研磨ヘッド602を介して2つのローラ606、607より搬送・回収される。研磨ヘッド602は、所定の加圧力で研磨フィルム601と中間転写ベルト205とが当接するように作用し、中間転写ベルト205は研磨フィルム601によって研磨される。実施例1においては、研磨の条件を、中間転写ベルト205の送り速度が250mm/秒、研磨フィルム601の送り速度が0.5mm/秒、押付け圧が5kg/400mmとし、目的の表面粗さを得た。この研磨加工によって、中間転写ベルト205の表面には、研磨目が形成される。
【0027】
このように、実施例1の中間転写ベルト205は、トナー像が形成される面に研磨加工が施される。第2部分であえる重複部228は、第1部分である非重複部229に研磨加工が施された回数(例えば1回)よりも多い回数(例えば2回)の研磨加工が施されることにより、第1部分とは光学的な特性が異なる。
【0028】
[濃度センサ構成]
図3(a)は、光学的な検知手段である濃度センサ218の概略構成図であり、中間転写ベルト205の回動方向に直交する、濃度センサ218が配置された位置における断面図である。濃度センサ218は、中間転写ベルト205上のトナーの有無を、光学的に検知することができる。トナー像Tは画像形成ステーションSによって中間転写ベルト205表面に転写された後、中間転写ベルト205の回転に伴って駆動ローラ217の位置まで搬送される。中間転写ベルト205を介して駆動ローラ217と逆側に濃度センサ218が配置されている。濃度センサ218は、後述するテスト画像の検知工程において用いられる。なお、濃度センサ218の配置はこの位置に限定されない。濃度センサ218は、中間転写ベルト205の回動方向において最も下流に位置する画像形成ステーション(実施例1ではSK)よりも回動方向における下流側であって2次転写部よりも上流側に配置されればよい。
【0029】
中間転写ベルト205の回転方向に対して直交する方向は、中間転写ベルト205の回転軸線方向と同じである。以下、濃度センサ218の構成を説明する。濃度センサ218は、中間転写ベルト205の表面又は後述する画像パターンに光を照射する照射部と反射光を受光する受光部とを有し、中間転写ベルト205の表面又は画像パターンを光学的に検知する。なお、中間転写ベルト205の表面を光学的に検知することを、以降、中間転写ベルト205を検知する、ともいう。
【0030】
具体的には、濃度センサ218は主に照射部である発光素子219と受光部である正反射用の受光素子220及び乱反射用の受光素子221から構成される。発光素子219が例えば赤外光を発光し、その光がトナー像Tの表面で反射する。正反射用の受光素子220は、トナー像Tの位置に対し正反射方向に配置されており、トナー像Tの位置での正反射光を検知する。乱反射用の受光素子221は、トナー像Tに対し正反射方向以外の位置に配置されており、トナー像Tの位置での乱反射光を検知する。以降、正反射用の受光素子220で受光(検知)され受光素子220から出力された電圧値を正反射出力といい、乱反射用の受光素子221で受光(検知)され受光素子221から出力された電圧値を乱反射出力という。
【0031】
以上、濃度センサ218は、中間転写ベルト205の表面及び中間転写ベルト205上に形成されたトナー像に光を照射する光源である発光素子219を有する。濃度センサ218は、発光素子219から中間転写ベルト205又は中間転写ベルト205上に形成されたトナー像に光を照射することによって、中間転写ベルト205又は中間転写ベルト205上に形成されたトナー像により反射される反射光を検知する。
【0032】
図3(b)は、濃度に対する正反射出力の変動と乱反射出力の変動、及びそれらから算出される出力電圧の変動を示す概略説明図である。図3(b)のグラフにおいて、横軸は濃度を示し、縦軸は濃度センサ218の出力電圧(センサ出力電圧)を示す。また、正反射出力を破線401で示し、乱反射出力を点線402で示し、濃度センサ218の出力を実線403で示す。
【0033】
濃度センサ218は、トナー像Tのトナー量が少ない場合は、平滑な中間転写ベルト205表面からの反射を多く検知するため、正反射出力は大きくなる。トナー像Tのトナーが増えると正反射出力は小さくなっていく。トナー像Tのトナー層数が1層以上になると中間転写ベルト205表面からの正反射成分がほぼ無くなるが、正反射出力には正反射成分に加えて乱反射成分も含まれるため、濃度が高い領域では正反射出力は単調には減少しない。一方、乱反射出力はトナー量に応じて単調に増加していくが、正反射出力に比べて変化量が小さい。正反射出力から乱反射出力をもとに得られる乱反射成分を除くことで、濃度に対して相関のある出力(実線403)が得られる。以下、このようにして得られた濃度センサ218の出力(実線403)を、センサ出力やセンサ出力電圧ともいう。濃度センサ218のセンサ出力は、後述するプリンタ制御部700に出力され、プリンタ制御部700によるトナー像の有無検知や濃度検知等に用いられる。
【0034】
図4(a)は、画像形成装置200において、中間転写ベルト205にトナー像を形成したときの概略説明図である。図4(a)の矢印は中間転写ベルト205の回動方向(以下、回転方向ともいう)における位置(回転方向位置)[mm]を示し、中間転写ベルト205上の基準となる位置(以下、基準位置という)を0mmとしている。501は中間転写ベルト205上に形成されたトナー像を示す。ここでは、トナー像501と研磨加工による重複部228とのそれぞれにおけるセンサ出力を示すため、トナー像501を重複部228と重ならないよう形成した。なお、重複部228の長さは実施例1では20mmとする。トナー像501は40mmであり、重複部228の長さよりも長い。いずれの長さも、中間転写ベルト205の回転方向における長さである。
【0035】
図4(b)は、図4(a)の状態における、中間転写ベルト205全面での位置毎のセンサ出力を示している。図4(b)において、横軸は中間転写ベルト205の回転方向位置[mm]を示し、縦軸はセンサ出力電圧[V]を示す。横軸は図4(a)の横軸に対応している。トナー像501が形成された400mm付近では、センサ出力電圧が減少している。また、重複部228の位置に相当する600mm付近におけるセンサ出力電圧も減少している。これらの部分を除き、中間転写ベルト205全周でのセンサ出力電圧が約2.5V程度である。それに対して、トナー像501と重複部228の箇所では、センサ出力電圧が1.3V程度まで落ち込んでいる。すなわち、濃度センサ218は、第2部分である重複部228又はトナー像501からの反射光を検知したときに、第1部分である非重複部229からの反射光を検知したときとは異なる電圧を出力する。
【0036】
また図示しないが、トナー像が重複部228と重なった場合でも、センサ出力電圧は1.3V程度まで落ち込む。すなわち、センサ出力電圧の値を見ただけでは、電圧の低下がトナー像501に起因するものか重複部228に起因するものか、さらにトナー像と重複部228とが重複した領域に起因するものか、を判断することができない。
【0037】
図5(a)は、画像形成装置200において、想定外の外乱要因によって中間転写ベルト205の反射率が低下したときの概略説明図である。回転方向位置の範囲は、研磨工程による重複部228を含まない、非重複部229の一部の領域(約100mm~約500mm)である。図4(a)と同様の構成には同じ符号を用いている。502は形成したトナー像を示し、長さは図4(a)のトナー像501と同様40mmである。
【0038】
図5(b)は、図5(a)の状態における、図5(a)同様の回転方向位置の範囲における位置毎のセンサ出力電圧[V]を示している。縦軸、横軸等が示すものは図4(b)と同様である。なお想定外の外乱要因としては、長期使用により、トナー、外添剤が中間転写ベルト205に過剰に付着すること等がある。また例えば、付着物は中間転写ベルト205上の全面に必ずしも均一には付着しないため、センサ出力電圧の低下量も中間転写ベルト205上の位置によってばらつくことがある。ここでは、トナー像502と、想定外の外乱要因によってセンサ出力電圧が低下した領域のそれぞれにおけるセンサ出力電圧を示すため、トナー像502はセンサ出力電圧の低下が少ない領域に形成されている。
【0039】
トナー像502が形成された250mm付近では、センサ出力電圧が減少している。また、外乱要因によるセンサ出力電圧の低下が、150mm付近と350mm付近をピークに見られる。トナー像502が無く、外乱要因によるセンサ出力電圧の低下が少ない450mm付近でのセンサ出力電圧が約2.3V程度である。それに対して、トナー像502の箇所では、トナー像502が無ければ450mm付近同様約2.3V程度であるが、1.3V程度まで落ち込んでいる。また、外乱要因によるセンサ出力電圧の低下のピーク150mm付近と350mm付近では1.5V程度まで落ち込んでいる。
【0040】
センサ出力電圧の低下を、所定の電圧閾値、例えば1.8V(図5(b)中破線)を下回ることで判断するとしたとする。この場合、トナー像502によるセンサ出力電圧の低下と外乱要因によるセンサ出力電圧の低下は、いずれも同様にセンサ出力電圧が低下した領域として判断される。また図示しないが、トナー像502が外乱要因によるセンサ出力電圧の低下がある部分と重なった場合でも同様にセンサ出力電圧は落ち込む。すなわち、センサ出力電圧の値を見ただけでは、電圧の低下がトナー像502に起因するものか、外乱要因に起因するものか、さらにそれらが重複したことに起因するものかを区別して判断することができない。この意味で、外乱要因のためにセンサ出力電圧が低下する領域も、第2部分に含まれる。
【0041】
[ハードウェアブロック図]
図6は、実施例1の画像形成装置200のハードウェアブロック図である。プリンタ制御部700は、CPU703、ROM704、RAM705、ビデオインターフェイス702などの回路を有し、画像形成装置200内の各装置を制御するプログラムを実行する。例えば、CPU703は、ROM704に記憶されたプログラムに従ってRAM705を一時的な作業領域として使用しつつ、画像形成装置200を制御する。
【0042】
コントローラ202は、ビデオインターフェイス702を介してプリンタ制御部700と接続され、有線又は無線のネットワークやプリンタケーブル等を介してホストコンピュータ701の設定に従いプリンタ制御部700への画像形成開始指示などを行う。コントローラ202は、ホストコンピュータ701からの印刷命令に従って、ビデオインターフェイス702を介してプリンタ制御部700へ、画像形成予約コマンドを送信する。コントローラ202は、画像形成可能な状態となったタイミングで、プリンタ制御部700へ画像形成開始コマンドを送信する。
【0043】
表示部230は、コントローラ202及びプリンタ制御部700と通信が可能となっている。表示部230はプリンタ制御部700が示したメッセージを表示する。なお、表示部230は、ユーザが情報を入力するタッチパネルや各種キー等の入力部を有し、操作部として機能してもよい。プリンタ制御部700は、コントローラ202からの画像形成予約コマンドの順に画像形成の実行準備を行い、コントローラ202からの画像形成開始コマンドを待つ。プリンタ制御部700は、画像形成開始コマンドを受信すると、コントローラ202に、ビデオ信号の出力の基準タイミングとなる/TOP信号を出力し、画像形成予約コマンドに従って印刷動作を開始する。
【0044】
次にCPU703に接続される各アクチュエータについて説明する。CPU703にはIOポート706を介して、現像モータ711の駆動回路710、高電圧電源721の駆動回路720、ドラムモータ731の駆動回路730が接続される。またCPU703には、スキャナユニット207の駆動回路740、ベルトモータ751の駆動回路750、濃度センサ218の入出力回路760も接続される。
【0045】
駆動回路710は、現像モータ711を駆動し、現像ローラ303を回転させる。駆動回路720は、高電圧電源721を駆動し、高電圧を現像ローラ303、帯電ローラ302、1次転写ローラ206(図6には不図示)に印加する。駆動回路730は、ドラムモータ731を駆動し、感光ドラム301及び帯電ローラ302を回転させる。駆動回路740は、スキャナユニット207を駆動し、感光ドラム301表面にレーザー光を照射する。駆動回路750は、ベルトモータ751を駆動し、中間転写ベルト205を回転させる。
【0046】
入出力回路760は、濃度センサ218の発光素子219を発光させ、正反射光及び乱反射光を受光素子220及び受光素子221で受光する。受光した光は入出力回路760で電圧値に変換され正反射出力及び乱反射出力として、IOポート706を介して、プリンタ制御部700、具体的にはCPU703に入力される。
【0047】
[機能ブロック図]
トナー像(又はテスト画像)の検知工程の1つである、カートリッジ204の有無の検知工程におけるプリンタ制御部700の機能について、図7の機能ブロック図を用いて説明する。プリンタ制御部700の機能は、CPU703がROM704に記憶されているプログラムやRAM705に記憶されているデータ等に基づき実行する。機能の詳細を順に説明する。画像パターン形成部807は、カートリッジ204及びスキャナユニット207を制御する。画像パターン形成部807は、カートリッジ204及びスキャナユニット207を駆動し、後述する画像パターンのトナー像を中間転写ベルト205に形成する。画像パターン形成部807は、中間転写ベルト205の表面に少なくとも1つのトナー像を含む画像パターンを形成する手段として機能する。ベルト制御部808は、中間転写ベルト205を回転させる。トナー検知部809は、濃度センサ218のセンサ出力電圧[V]を取得する。トナー像有無の判断手段としての装置判断部801は、トナー検知部809のセンサ出力電圧が所定の閾値よりも低いときに、中間転写ベルト205の表面にトナー像が有ると判断する。表示制御部810は、装置判断部801の判断結果を受け、プリンタ制御部700としてのメッセージを決め、表示部230に表示する。
【0048】
[実施例1のテスト画像の検知工程の説明]
制御手段であるプリンタ制御部700は、濃度センサ218により検知された結果に基づいて中間転写ベルト205上のトナー像の有無を判断する検知動作を行うために、上述した画像形成部により中間転写ベルト205上にトナー像を形成するように制御する。なお、ここで形成されるトナー像は、記録材203上に形成されるためのトナー像ではなく、テスト画像である。なお、記録材203上に形成されるためのトナー像をテスト画像として用いてもよい。プリンタ制御部700は、検知動作において、テスト画像の移動方向における第1長さ(後述するL1)が第2部分(重複部228)の移動方向における第2長さ(後述するL2)よりも長くなるように、テスト画像を形成するよう制御する。
【0049】
ここで、実施例1では、プリンタ制御部700は、カートリッジ204(現像部)が画像形成装置200に装着されているか否かを判断するために検知工程を行うよう制御する。画像形成装置200は、カートリッジ204が画像形成装置200に装着されていない状態で動作させてしまい、画像形成できないこと等がないよう、カートリッジ204装着の有無を確認することを目的として、テスト画像の検知工程を行う。以下、テスト画像の検知工程(検知動作)について説明する。
【0050】
図8は、印刷などの動作の指示(以下、動作指示)を受けたときの処理を示したフローチャートである。なお、テスト画像の周方向の長さを第1長さであるL1、研磨工程による重複部228の周方向の長さを第2長さであるL2とする。テスト画像の長さL1は、重複部の長さL2より長く設定する(L1>L2)。実施例1では長さL1を40mm、長さL2を20mmとする。また、中間転写ベルト205が長さL1分を回動する時間を第1時間であるテスト画像の回動時間TL1とする。中間転写ベルト205が長さL2分を回動する時間を第2時間である重複部228の回動時間TL2とする。なお、以下において、中間転写ベルト205の回動は同じ速度で行うものとする。そのため、回動距離と回動時間の大小関係は同じ(L1>L2、TL1>TL2)である。
【0051】
プリンタ制御部700は、検知動作において、濃度センサ218により検知した結果と、第1時間(TL1)と、第2時間(TL2)と、に基づいて、中間転写ベルト205上のテスト画像の有無を判断する。第1時間である回動時間TL1は、中間転写ベルト205の移動に伴いテスト画像が濃度センサ218を通過する時間である。第2時間である回動時間TL2は、中間転写ベルト205の移動に伴い第2部分である重複部228が濃度センサ218を通過する時間である。
【0052】
コントローラ202からプリンタ制御部700が動作指示を受けると、プリンタ制御部700はステップ(以下、Sとする)101以降の処理を開始する。S101でプリンタ制御部700は、カートリッジ204の装着有が確定できるか否かを判断する。例えば、カートリッジ204が記憶手段、例えばICタグを有しているとき、ICタグにプリンタ制御部700がアクセスできた場合を、装着有確定とし、アクセスできなかった場合を装着状態不明と判断する。なお、カートリッジ204の装着有無の確定方法は他の公知の方法が用いられてもよい。
【0053】
S101でプリンタ制御部700は、装着有確定と判断した場合、処理をS102に進める。S102でプリンタ制御部700は、指示を受けた動作に移行し、処理を終了する。S101でプリンタ制御部700は、装着有を確定できない、すなわち、カートリッジ204の装着状態が不明であると判断した場合、処理を103以降のテスト画像の検知工程に進める。S103でプリンタ制御部700は、ベルトモータ751、ドラムモータ731、現像モータ711や高電圧電源721を起動し、各モータの回転速度が安定したところで、テスト画像の形成を行う。
【0054】
ここで、テスト画像は、例えば画像形成ステーションSKにより、所定の大きさを有するベタ画像として形成される。画像形成ステーションSKは、中間転写ベルト205の回動方向における最も下流側に設けられており、形成されたテスト画像が濃度センサ218に到達するまでの時間を短くすることができる。また、画像形成ステーションSKのみでテスト画像を形成することにより、トナーの消費を抑制することができる。さらに、画像形成ステーションSK、すなわちブラックのトナーをテスト画像に用いることで、センサ出力電圧の低下を大きくすることができる。なお、テスト画像は、他の画像形成ステーションSを用いて形成されてもよいし、テスト画像の大きさ、形状、濃度等についても、テスト画像の検知工程の目的を達成することができる範囲で種々のテスト画像として形成されてよい。テスト画像は、感光ドラム301上で現像され、中間転写ベルト205に1次転写された後、濃度センサ218の対向部を通過する。感光ドラム301上のテスト画像(トナー像)が中間転写ベルト205に1次転写される位置を1次転写部という。
【0055】
S104でプリンタ制御部700は、テスト画像の先端から後端までが通過する回動時間TL1に、その前後の回動時間TL2を加算した合計TL1+2×TL2の時間にわたり、出力電圧プロファイルPを取得する。プリンタ制御部700は、テスト画像の先端が検知されるタイミングよりも第2時間早いタイミングから、テスト画像の後端が検知されたタイミングよりも第2時間遅いタイミングまでの間の濃度センサ218による検知結果を用いてテスト画像の有無を判断する。なお、プリンタ制御部700は、テスト画像の形成を開始してから1次転写されたテスト画像が濃度センサ218に到達するまでの時間を予測することができる。例えば、プリンタ制御部700は、/TOPタイミング、1次転写部と濃度センサ218との位置関係、感光ドラム301及び中間転写ベルト205の回転速度等に基づき、テスト画像が濃度センサ218に到達する時間を予測することができる。
【0056】
ここで、出力電圧プロファイルPとは、センサ出力の電圧プロファイルをいう。プリンタ制御部700は、時間TL1+2×TL2中に、所定の時間間隔で濃度センサ218からのセンサ出力電圧を取得する、すなわち、所定のサンプリング間隔でサンプリングデータを取得する。S105でプリンタ制御部700は、出力電圧プロファイルPの取得が終わり次第、停止工程に移行する。すなわち、プリンタ制御部700は、ベルトモータ751、ドラムモータ731、現像モータ711等を停止する。なお、停止工程には、クリーニングブレード216による中間転写ベルト205上のテスト画像の除去が含まれてもよい。
【0057】
S106でプリンタ制御部700は、S104で取得した出力電圧プロファイルPを解析して、センサ出力電圧が所定値以下となる区間(I=1~n個)を抽出する。なお、nは出力電圧プロファイルPのサンプリング数であり、正の整数である。各区間(I)の時間を、出力減少時間Td(I)とする。出力減少時間Td(I)については、後述する。
【0058】
S107でプリンタ制御部700は、回動時間TL1以上、時間TL1+TL2以下の範囲内となる出力減少時間Td(I)が存在する(TL1≦Td(I)≦(TL1+TL2))か否かを判断する。S107でプリンタ制御部700は、TL1≦Td(I)≦(TL1+TL2)となる時間Td(I)が存在すると判断した場合、処理をS108に進め、存在しないと判断した場合、処理をS109に進める。S108でプリンタ制御部700は、装置判断部801によってテスト画像が正常に検知された(検知有)と判断し、カートリッジ204が装着されている(装着有)と判断して、処理をS102に進める。プリンタ制御部700は、濃度センサ218から出力された電圧値が連続して所定値(閾値1.8V)を下回った時間が、第1時間以上かつ第1時間と第2時間との和以下の範囲である場合に、テスト画像が中間転写ベルト205上に形成されていると判断する。
【0059】
S109でプリンタ制御部700は、テスト画像の検知結果について、後述する『検知無』又は『検知不明』のどちらかであると判断する。S110でプリンタ制御部700は、表示部230にカートリッジ204がないこと(カートリッジ無)又は検知不明であることを報知して、その後次の処理は行わず終了する。なおS106の開始は、S105の動作中であってもよい。また本工程の実行タイミングは、プリンタ制御部700が動作指示を受けた場合以外であってもよい。
【0060】
(S107の判断処理を行う理由)
S107でいずれかの出力減少時間Td(I)が、所定の範囲内(TL1≦Td(I)≦(TL1+TL2))であるか否かを確認する理由を、表1を用いて説明する。表1は、特定の区間における出力減少時間Td(I)が所定の範囲内又は範囲外にある場合のそれぞれにおける、テスト画像の検知有無について、装置判断部801による判断内容を示したものである。
【表1】
表1は、1列目に出力減少時間Tdを示し、2列目に各範囲に付した区分名(R1、R2、R3)を示し、3列目に具体的な範囲(領域)を示し、4列目に各範囲におけるテスト画像の検知状況(検知無、検知有、検知不明)を示す。ここで、区分R1はTd(I)がTL1未満の範囲にある場合とし(Td<TL1)、区分R2はTd(I)がTL1以上「TL1+TL2」以下の範囲にある場合とする(TL1≦Td≦TL1+TL2)。区分R3はTd(I)がTL1+TL2よりも大きい範囲にある場合とする(TL1+TL2<Td)。
【0061】
出力減少時間Td(I)がTL1未満の区分R1の場合は、装置判断部801は、出力減少時間Td(I)をテスト画像より短い外乱、具体的には重複部228を含む外乱であると判断し、トナー像が無い『検知無』と判断する(S109)。プリンタ制御部700は、濃度センサ218から出力された電圧値が連続して所定値を下回った時間が、第1時間よりも短い場合に、テスト画像が中間転写ベルト205上に形成されていないと判断する。
【0062】
出力減少時間Td(I)が「TL1+TL2」より長い区分R3の場合は、装置判断部801は、出力減少時間Td(I)を想定外の要因による外乱の影響を受けていると判断する。装置判断部801は、出力減少時間Td(I)の中でテスト画像が形成されていたか否かの判断ができないため、トナー像が有るか否かについて判断不能とする『検知不明』と判断する(S109)。プリンタ制御部700は、濃度センサ218から出力された電圧値が連続して所定値を下回った時間が、第1時間と第2時間との和よりも長い場合に、テスト画像が中間転写ベルト205上に形成されたか否かが不明であると判断する。
【0063】
なお、中間転写ベルト205表面の反射率低下の想定外の要因としては、例えば長期使用により、トナー、外添剤等が中間転写ベルト205に過剰に付着すること等が挙げられる。一方、出力減少時間Td(I)が、TL1≦Td(I)≦TL1+TL2である区分R2の場合は、装置判断部801は、テスト画像の『検知有』と判断する。
【0064】
(出力減少時間Td(I)の導出について)
次に、出力電圧プロファイルPを解析して出力減少時間Td(I)を導出する、S106の具体的な方法について説明する。図9(a)は中間転写ベルト205のほぼ1周分(0mm~800mm)のセンサ出力電圧を示している。図9(a)は横軸に中間転写ベルト205上の所定の位置を基準とした周方向の位置(周方向位置)[mm]を示し、縦軸に各周方向位置において得られたセンサ出力電圧[V]を示す。グラフの◇は濃度センサ218により得られたサンプリングデータを示す。
【0065】
前述した通り、中間転写ベルト205の位置によってセンサ出力電圧が変動しており、また、図9(a)中破線で示す枠内の領域で重複部228におけるセンサ出力電圧が大きく減少している。図9(b)は、図9(a)の破線枠で示す領域近傍のセンサ出力電圧を拡大した図と、その周方向位置に対応する中間転写ベルト205上の領域を示す概略図である。図9(b)も横軸に中間転写ベルト205の周方向位置[mm](500mm~600mm)、縦軸にセンサ出力電圧[V]を示し、グラフの上部にその周方向位置に対応する中間転写ベルト205を示す。センサ出力電圧[V]は、非重複部229でおおまかに2.5V程度であるのに対し、重複部228では約1.3V程度まで落ち込んでいる。出力減少時間Td(I)は、所定の閾値、例えば1.8Vを下回った状態で中間転写ベルト205が回動する時間を測定することで求めることができる。
【0066】
S106では、出力電圧プロファイルP、すなわち前述の時間(TL1+2×TL2)の時間帯中において、同様に出力減少時間Td(I)が求められる。例えば、重複部228のみが濃度センサ218により検知されたとすると、出力電圧プロファイルPを解析して得られる出力減少時間Td(I)は、図9(b)に示すTd1ということになる。そして、プリンタ制御部700は、Td1がTL1未満であるために、『検知無』と判断することとなる。
【0067】
(テスト画像の『検知有』判断)
次に、出力減少時間Td(I)が、区分R2のTL1≦Td(I)≦TL1+TL2である場合に、テスト画像の『検知有』と判断する理由を説明する。図10(a)は、テスト画像を形成したときの、中間転写ベルト205上の出力電圧プロファイルPを取得する領域PTの概略説明図である。503は形成したテスト画像を示し、長さは40mmである。TL1、TL2は長さL1、L2にそれぞれ対応した時間を示し、上述した回動時間である。また、横軸には中間転写ベルト205の周方向位置[mm]も示す。
【0068】
前述のように、領域PTの回動時間は、テスト画像503が濃度センサ218の対向部を通過する回動時間TL1と、その前後の回動時間TL2との和である、時間(TL1+2×TL2)である(PT=TL1+2×TL2)。図10(b)は区分R2の場合の一例としての出力電圧プロファイルP1を示している。Td2は、この例の場合に、センサ出力電圧が連続して閾値1.8Vを下回った時間を示し、出力電圧プロファイルP1を解析して得られる出力減少時間Td(I)である。図10(b)は、横軸に周方向位置[mm]を示し、縦軸にセンサ出力電圧[V]を示す。また、図10(b)には閾値1.8Vも破線で示す。さらに、図10(b)には、図10(a)の周方向位置に対応する縦の破線も示している。
【0069】
ここで、時間Td2が回動時間TL1より長くなっているが(Td2>TL1)、これは、図10(a)で示す位置に重複部228があることが理由であると推察される。図10(a)では、重複部228の一部とテスト画像503の一部とが重なっている。なおテスト画像503と重複部228との位置関係について、ここではTL1<Td2<TL1+TL2と検知されたため、一部が重複していると予想された。
【0070】
一方、他の状況として、Td2=TL1、Td2=TL1+TL2と検知された場合は、それぞれ、次のように推察することができる。まず、Td2=TL1と検知された場合は、重複部228が領域PT内に無い場合である、又は、重複部228がテスト画像503に含まれる(テスト画像503の下に隠れている)場合であると推察することができる。
【0071】
また、Td2=TL1+TL2と検知された場合は、重複部228がテスト画像503の前か後において端部同士でつながった場合であると推察することができる。ここで、テスト画像503の前において端部同士がつながったとは、中間転写ベルト205の周方向(回転方向)において、テスト画像503の先端に重複部228の後端が連続しているような状態をいう。また、テスト画像503の後において端部同士がつながったとは、中間転写ベルト205の周方向(回転方向)において、テスト画像503の後端に重複部228の先端が連続しているような状態をいう。以上のように、領域PTのどの位置に重複部228があったとしても、TL1≦Td2≦TL1+TL2であれば、テスト画像503が検知できていると推察される。
【0072】
[従来のテスト画像の検知工程の説明]
続いて、比較例として、従来における、テスト画像の検知工程について、図11を用いて説明する。図11は、比較例としての従来のテスト画像の検知工程が実行される処理を示すフローチャートである。なお、図11のS201~S203は、図8のS101~S103と同様の処理であり、説明を省略する。
【0073】
テスト画像が現像、1次転写され、濃度センサ218の対向部を通過する回動時間TL1において、S204でプリンタ制御部700は、出力電圧プロファイルP2を取得する。S205の処理は図8のS105の処理と同様であり、説明を省略する。S206でプリンタ制御部700は、S204で取得した出力電圧プロファイルP2を解析し、センサ出力電圧がこの時間帯内で常時(連続して)所定値以下まで減少しているか否かを判断する。S206でプリンタ制御部700は、センサ出力電圧が常時所定値以下まで減少していると判断した場合、処理をS207に進める。なお、S207の処理は図8のS108の処理と同様であり、説明を省略する。一方、S206でプリンタ制御部700は、センサ出力電圧が常時所定値以下まで減少していないと判断した場合、処理をS208に進める。なお、S208、S209の処理は、図8のS109、S110の処理と同様であり、説明を省略する。なお、S206の処理の開始はS205の動作中であってもよい。
【0074】
[比較例と実施例1の制御による正確性の比較]
次にテスト画像の検知工程に移行したときの、比較例である従来の制御(図11)と実施例1のテスト画像の検知(図8)における正確性の比較について説明する。表2は、実施例1と従来例の制御方法における、テスト画像の誤検知発生の可能性についての比較を示したものである。
【表2】
表2は、1列目にテスト画像の長さ(テスト画像長)L1と重複部228の長さ(研磨重複部長)L2との関係(L1>L2、L1≦L2)を示し、2列目にテスト画像の誤検知発生の可能性を示す。2列目には、実施例1、比較例のそれぞれについて、重複部228との誤検知の有無(ある、ない)と、反射率変化領域との誤検知発生の可能性(高い、低い)について長さL1、L2の2つの関係のそれぞれについて示した。
【0075】
比較例の制御においては、L1≦L2の場合、重複部228と反射率変化領域とのどちらに対しても、テスト画像が重なったときの区別がつかないため、誤検知発生の可能性は高い。またL1>L2の場合、テスト画像と重複部228との誤検知はない。しかし、反射率変化領域については、反射率の変化が進み、言い換えれば反射率変化領域でのセンサ出力電圧の低下が進んで閾値以下となり、その周方向における長さが長さL1以上になってしまうと、誤検知が発生する。すなわち、長さL1以上となった領域のうちのどこか一部の長さL1の領域が、濃度センサ218により出力電圧プロファイルP2を取得する時間帯に通過しさえすれば、テスト画像として誤検知されてしまう。すなわち反射率の変化が進むほど誤検知する確率が高くなり、誤検知発生の可能性は高い。
【0076】
一方、実施例1においては、L1≦L2を満たすことはなく、L1>L2としているため、テスト画像と重複部228との誤検知はない。また、反射率変化領域については、反射率の変化が進み、その長さがちょうど表1の区分R2の範囲に入っているときのみにおいて、かつその領域が出力電圧プロファイルPを取得する時間帯に通過したときのみしか誤検知されないため、誤検知発生の可能性は低い。
【0077】
以上総合すると、比較例に対して、実施例1の制御によって、誤検知発生の確率を減らし、テスト画像の検知工程における信頼性を向上させることができる。実施例1ではテスト画像の検知工程によりカートリッジ204の装着有無を判断する例を示したが、テスト画像検知の目的はこれに限ったものではなく、検知有無を他の判断のために用いてもよい。
【0078】
また、以上説明したテスト画像の長さL1の設定の比較対象は、製造時などにおいて発生する中間転写ベルト上の光学的特性が異なる領域であれば、研磨工程による重複部に限定されず、反射率が異なる全てのケースに適用される。また、正反射光量に限らず乱反射光量の異なる領域でもよい。すなわち、中間転写ベルト205上の光学的特性が異なる領域に対して適用可能である。また、反射光量の変化は減少に限らず、増加でもよい。なお研磨工程による重複部の研磨回数については、前述のように1回と2回の差には限らず、異なりさえすればよい。さらに以上の説明では、検知時間を(TL1+2×TL2)としたが、厳密にこの時間でなくてもよく、検知誤差を考慮してマージンを持たせてもよい。例えば2mmのマージンを持たせて判断する構成も、本発明に含まれる。
【0079】
上述した実施例の制御によれば、中間転写ベルト上に、加工の重複領域や、長期使用によって反射率の変化した領域があっても、テスト用のトナー像の誤検知の発生確率を減らし、テスト画像検知の信頼性を向上させることができる。中間転写ベルトは、表面処理の重複領域によって反射率が低下したり、長期間使用によってトナー等が過剰に付着して、広範囲にわたって反射率が低下したりする場合がある。このような中間転写ベルトを用いた場合でも、トナー像を誤検知する発生確率を減らし、テスト画像検知の信頼性を向上させることができる。
【0080】
以上、実施例1によれば、光学的特性が異なる領域を有する中間転写体上に形成されたトナーを光学的センサで検知する場合に、検知精度を向上させることができる。
【実施例0081】
実施例2では、テスト画像の検知工程において、テスト画像の検知結果が不明であるときの動作を明確にすることで、さらにテスト画像検知の信頼性を向上させる方法を説明する。なお、実施例1と同じ構成には同じ符号を用い、説明を省略する。
【0082】
[中間転写ベルト構成の説明]
図12(a)は中間転写ベルト205の断面方向から見た拡大模式図である。中間転写ベルト205は無端形状であり、基層242と、表層243からなる。実施例1では、表層243がクリーニングブレード216と接し、基層242は駆動ローラ217、2次転写対向ローラ212と接する。基層242はポリエチレンナフタレート樹脂が基材であり、導電材を混合し、体積抵抗率が1×1010Ω・cmになるように調整している。なお、体積抵抗率は、JIS法K6911に準拠した測定プローブを用い、ADVANTEST社製高抵抗計R2340にて、温度は25℃、相対湿度は50%で、50~100Vを印加して得た値である。
【0083】
また、中間転写ベルト205の層厚は例えば70μmである。なお、実施例2の構成では、ポリエチレンナフタレート樹脂を基材として採用したがこれに限定されるものではない。基材としては、適正な電荷減衰特性を有すること、当接部材の形状に沿う形に変形するため耐屈曲性を有すること等の条件があり、熱可塑性樹脂が一般的に採用される。具体的には、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、等の単独又は混合樹脂が挙げられる。
【0084】
表層243はアクリル樹脂が基材であり、電気抵抗調整剤として酸化亜鉛を分散している。また、層厚は例えば3μm程度である。表層243は、耐摩耗性、耐クラック性など強度の観点から硬化性材料の中でも樹脂材料(硬化性樹脂)が望ましく、特に不飽和二重結合含有アクリル共重合体を硬化させて得られるアクリル樹脂が望ましい。長期使用に伴うクリーニングブレード216表面の耐摩耗性を向上するため、中間転写ベルト205の表層243には、微細凹凸形状を施されたものが用いられる。実施例2の構成では、加工コストや生産性、形状の精度等の観点からインプリント加工を採用する。
【0085】
図12(b)に中間転写ベルト205表面一部を拡大した概略説明図を記す。Hは回動方向を示し、Iは回動方向Hに直交する方向を示す。インプリント加工の金型を中間転写ベルト205の表面に押し当て、その後中間転写ベルト205を回動方向に動かすことでインプリント加工は行われる。これにより、中間転写ベルト205の表面には、中間転写ベルト205の移動方向に沿った溝(凹部245)であって、中間転写ベルト205の幅方向に関して所定の間隔で溝(凹部245)が形成されている。言い換えると、インプリント加工された中間転写ベルト205は、回動方向Hに対してほぼ一律でかつI方向においては周期的である凸部244と、溝を有する領域としての凹部245を持つ。凸部244と凸部244(又は凹部245と凹部245)の間隔をwとする。
【0086】
中間転写ベルト205への溝形状(凹凸形状)の付与は、インプリント加工の開始位置246からH方向にインプリント加工が開始され、インプリント加工の終了位置247まで加工が行われる。すなわち、本実施例におけるインプリントの加工によれば、中間転写ベルト205の移動方向に関して、加工の開始位置246から終了位置247までして溝(凹部245)が形成される。また、図12(a)に示すように、所定の金型を表面に押し当てることで凹凸形状を付与するインプリント加工を行ったことで、中間転写ベルト205の表面には、凹部245に隣接する位置の凸部244に突起部244aが形成される。この突起部244aは、金型を押し付けることによって表層243が盛り上がって形成されるものであり、本実施例におけるインプリント加工方法によって得られる構成である。突起部244aは、中間転写ベルト205の移動方向と直交する中間転写ベルト205の幅方向に関して凹部245に隣接する凸部244の端部に設けられており、凸部244の中心位置の高さで定義される中間転写ベルト205の表面から突出している。ここで、図12(a)における仮想線L11は、凸部244の中心位置の高さで定義される中間転写ベルト205の表面の高さ位置を示している。
【0087】
インプリント加工の終了位置247は開始位置246を超えた位置に配置されるため、第1部分である非重複部249と、光学的に第1部分とは特性が異なる領域である第2部分である重複部248が形成される。重複部248における凹部245は高い確率でI方向にズレが生じる。これはインプリント加工中に中間転写ベルト205がI方向に動いてしまうことに起因する。このズレが生じると非重複部249に対して重複部248では全面に対して凹部245の割合、すなわち溝の専有面積比率が増加する。また、重複部248では2回のインプリント加工が行われているため、凹部245の深さがより深くなる。これらの理由より、重複部248では非重複部249と比べて光を照射したときに正反射光量が減少する。ただし、深さは層厚に対してかなり小さいこともあり両者で転写性に差はない。
【0088】
このように、実施例2の中間転写ベルト205は、トナー像が形成される面に、移動方向に直交する方向に凹部245及び凸部244が交互に連続するように形成される凹凸加工が施される。第2部分である重複部248は、移動方向に直交する方向において、第1部分である重複部248に形成された凹部245が占める割合よりも多い割合の凹部245が形成されることにより、第1部分とは光学的な特性が異なる。
【0089】
[実施例2におけるテスト画像の検知工程の説明]
以下、実施例2におけるテスト画像の検知工程について説明する。図13は、動作指示を受けたときの処理を示すフローチャートである。なお、テスト画像の周方向の長さをL3、重複部248の周方向の長さをL4とする。テスト画像の長さL3は、重複部248の長さL4よりも長く設定する(L3>L4)。実施例2では、長さL3を例えば40mm、長さL4を長さ15mmとする。また、中間転写ベルト205が、長さL3分を回動するために要する時間を回動時間TL3、長さL4分回動するために要する時間を回動時間TL4とする。テスト画像の検知を行った回数をリトライ回数K1とする。リトライ回数K1は、例えばプリンタ制御部700がカウンタ(不図示)を用いて管理する。
【0090】
図13のS301、S302の処理は図8のS101、S102の処理と同様であり、説明を省略する。プリンタ制御部700は、カートリッジ204の装着有を確定できないと判断した場合、処理をS303に進める。S303でプリンタ制御部700は、リトライ回数K1を初期値に、すなわち0に設定する。なお、S304~S309の処理は、図8のS103~S108の処理と同様であり、説明を省略する。ただし、図8において回動時間TL1としていたところを回動時間TL3、回動時間TL2としていたところを回動時間TL4、出力減少時間Td(I)としていたところを出力減少時間Td(I2)と読み替える。また、図8において出力電圧プロファイルPとしていたところを、出力電圧プロファイルP3と読み替える。
【0091】
S308でプリンタ制御部700は、回動時間TL3以上かつ回動時間(TL3+TL4)以下の範囲内となる出力減少時間Td(I2)が存在しないと判断した場合、処理をS310に進める。S310でプリンタ制御部700は、回動時間(TL3+TL4)より大きい出力減少時間Td(I2)が存在するか否かを判断する。S310でプリンタ制御部700は、回動時間(TL3+TL4)より大きい出力減少時間Td(I2)が存在しないと判断した場合、処理をS311に進める。S311でプリンタ制御部700は、テスト画像の検知無と判断する。S312でプリンタ制御部700は、表示部230にカートリッジ無である旨を報知して、処理を終了する。
【0092】
S310でプリンタ制御部700は、回動時間(TL3+TL4)より大きい出力減少時間Td(I2)が存在すると判断した場合、処理をS313に進める。S313でプリンタ制御部700は、リトライ回数K1が1であるか(K1=1)否かを判断する。S313でプリンタ制御部700は、リトライ回数K1が1であると判断した場合、処理をS314に進める。S314でプリンタ制御部700は、テスト画像の検知不明と判断する。S315でプリンタ制御部700は、表示部230にカートリッジの検知不明である旨を報知し、処理を終了する。S313でプリンタ制御部700は、リトライ回数K1が1ではないと判断した場合、処理をS316に進める。S316でプリンタ制御部700は、リトライ回数K1に1を足して更新し(K=K+1)、処理をS304に戻す。実施例2では、S313の判断処理で条件をK1=1とすることで、リトライ回数K1を1回に設定した。なお、リトライ回数K1は1回に限定されず、他の回数に設定されてもよい。
【0093】
以上のように、リトライ回数K1を所定の回数に設定し、1回目のテスト画像の検知工程においてカートリッジ検知不明であったときに、テスト画像の検知工程を複数回実行する。複数回の検知工程を実施することで、中間転写ベルト205上の異なる位置にテスト画像が形成される。これにより、テスト画像の検知の精度を上げ、図13の制御が終了したときに、さらに信頼性の高い検知結果を得ることができる。なお、実施例1の研磨加工を行った中間転写ベルト205に対して、実施例2の制御を適用してもよい。また、実施例2のインプリント加工を行った中間転写ベルト205に対して、実施例1の制御を適用してもよい。
【0094】
以上、実施例2によれば、光学的特性が異なる領域を有する中間転写体上に形成されたトナーを光学的センサで検知する場合に、検知精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0095】
205 中間転写ベルト
207 スキャナユニット
218 濃度センサ
301 感光ドラム
303 現像ローラ
700 プリンタ制御部
図1
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図13