(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178148
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】センサ装置およびこれを備えた制御システム
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20231207BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B25J19/06
G01B7/00 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091239
(22)【出願日】2022-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 繁年
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝男
(72)【発明者】
【氏名】山野 雅丈
(72)【発明者】
【氏名】上條 雄樹
【テーマコード(参考)】
2F063
3C707
【Fターム(参考)】
2F063AA01
2F063BA22
2F063DA01
2F063DA05
2F063HA04
3C707BS10
3C707BS15
3C707HS27
3C707JU03
3C707KS31
3C707KS36
3C707KV04
3C707LV15
3C707MS27
3C707MS29
3C707MT01
(57)【要約】
【課題】 簡単な構成で検出対象の近接および接触を検出できるセンサ装置を提供する。
【解決手段】 センサ装置10であって、検出対象DOを検出するための1つのセンサCSと、センサCSに接続された2本の出力線L1、L2と、各出力線L1、L2にそれぞれ接続され、センサCSのアナログ出力信号をそれぞれ検出するとともに、互いに異なる閾値が設定され、各閾値に基づいてセンサCSのアナログ出力信号をそれぞれデジタル信号に変換して出力する第1、第2の検出・変換回路11、12とを設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ装置であって、
検出対象を検出するための1つのセンサと、
前記センサに設けられた少なくとも2本の出力線と、
前記各出力線にそれぞれ接続され、前記センサのアナログ出力信号をそれぞれ検出するとともに、互いに異なる閾値が設定され、前記各閾値に基づいて前記センサの前記アナログ出力信号をそれぞれデジタル信号に変換して出力する検出・変換部と、
を備えたセンサ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記閾値のうちの一つが前記検出対象の近接を検出するためのものであり、前記閾値のうちの他の一つが前記検出対象の接触を検出するためのものである、
ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサ装置を備えた制御システムであって、
前記検出・変換部が、第1の閾値に基づいて第1のデジタル出力信号を出力する第1の検出・変換部と、第1の閾値より大きな第2の閾値に基づいて第2のデジタル出力信号を出力する第2の検出・変換部とから構成されており、
前記第1の検出・変換部からの前記第1のデジタル出力信号に基づいて機械の可動部を減速させ、前記第2の検出・変換部からの前記第2のデジタル出力信号に基づいて前記機械の前記可動部を停止させるように制御している、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサ装置を備えた制御システムであって、
機械の可動部を停止させるための停止スイッチを備え、
前記停止スイッチが、手動により押込み操作前の位置から押込み操作後の位置に押込み操作可能な停止ボタンと、前記停止ボタンを前記押込み操作前の位置から前記押込み操作後の位置に押込み操作可能な作動部とを有し、
前記検出・変換部が、第1の閾値に基づいて第1のデジタル出力信号を出力する第1の検出・変換部と、第1の閾値より大きな第2の閾値に基づいて第2のデジタル出力信号を出力する第2の検出・変換部とから構成されており、
前記第1の検出・変換部からの前記第1のデジタル出力信号に基づいて前記機械の前記可動部を減速させ、前記第2の検出・変換部からの前記第2のデジタル出力信号に基づいて前記停止スイッチの前記作動部を作動させることにより、前記停止ボタンを前記押込み操作して前記機械の前記可動部を停止させるように制御している、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記停止ボタンが、手動のみにより前記押込み操作後の位置から前記押込み操作前の位置に復帰操作可能になっている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項6】
請求項4において、
前記作動部の作動による前記停止ボタンの前記押込み操作後の押込み状態は、手動による前記復帰操作がなされない限り維持されている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項7】
請求項4において、
前記作動部の作動による前記停止ボタンの前記押込み操作後の押込み状態は、前記各検出・変換部のすべての前記デジタル出力信号がLowとならない限り維持されている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項8】
請求項4において、
前記作動部が電磁ソレノイドから構成されており、前記電磁ソレノイドへの電流供給は、前記各検出・変換部のすべての前記デジタル出力信号がLowとならない限り維持されている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項9】
請求項1に記載のセンサ装置を備えた制御システムであって、
機械の可動部を停止させるための停止スイッチを備え、
前記停止スイッチが、手動により押込み操作前の位置から押込み操作後の位置に押込み操作可能な停止ボタンと、前記停止ボタンを前記押込み操作前の位置から前記押込み操作後の位置に押込み操作可能な作動部とを有し、
前記検出・変換部が、第1の閾値に基づいて第1のデジタル出力信号を出力する第1の検出・変換部と、第1の閾値より大きな第2の閾値に基づいて第2のデジタル出力信号を出力する第2の検出・変換部とから構成されており、
前記第1の検出・変換部からの前記第1のデジタル出力信号に基づいて前記機械の前記可動部を停止させた後、前記第1の検出・変換部の前記デジタル出力信号がLowとなった場合には前記機械の前記可動部の再起動を許容し、
前記第2の検出・変換部からの前記第2のデジタル出力信号に基づいて前記停止スイッチの前記作動部を作動させ、前記停止ボタンを前記押込み操作して前記機械の前記可動部を停止させた後は、前記第2の検出・変換部の前記デジタル出力信号がLowとなっても前記作動部の作動による前記停止ボタンの前記押込み操作後の押込み状態を維持するように制御している、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項10】
請求項4において、
前記停止スイッチが非常停止スイッチである、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項11】
請求項3または4において、
前記機械が、作業者と協働して作業を行う協働ロボットまたは無人搬送車である、
ことを特徴とする制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象の近接および接触を検出するためのセンサ装置およびこれを備えた制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006-43792号公報には、人間や障害物との衝突を防止する衝突防止機能付ロボットが開示されている。当該ロボットは、アーム(7)に設けられ、周辺の人間や物との距離を検出する距離センサ(8)と、距離センサ(8)の検出信号に基づいて周辺の人間や物の近接の有無をチェックする近接チェック部(3)と、近接チェック部(3)によりアーム(7)と周辺の人間や物とが近接したと判断された際に、アーム(7)が人間や物との距離を一定値以上に保つように制御するアーム制御部(5)とを備えている(同公報の段落[0004]、[0007]、[0008]および
図1ないし
図3等参照)。
【0003】
上記公報によれば、アーム(7)と周辺の人間や物との距離が一定値以上に保たれることにより、アーム(7)と周辺の人間や物との衝突を未然に防止することができると記載されている(同公報の段落[0005]、[0007]、[0008]参照)。
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、距離センサ(8)により周辺の人間や物との距離を常時検出するだけでなく、人間や物の近接時には、アーム(7)と人間や物との距離が常時一定値以上に保たれるようにアーム制御部(5)によりアーム(7)を制御する必要があるため、リアルタイムの煩雑な制御が必要になる(同公報の段落[0007]、[0008]および
図4参照)。
【0005】
一方、特開2018-149673号公報には、ロボットのアームに対する人等の接近を検出する非接触センサ装置が開示されている。当該センサ装置(1)は、静電容量型近接スイッチ(4、6)を有し、ロボット(100)のアーム(101)に巻付可能に設けられている(同公報の段落[0018]、[0021]、[0025]および
図1ないし
図5参照)。
【0006】
上記センサ装置(1)のセンサ検出範囲に人等が進入すると、センサ装置(1)が検出信号を出力し、これがコントロールボックス(50)に入力されることにより、アーム(101)が緊急停止しまたは減速運転等されるようになっている(同公報の段落[0030]および
図8参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、静電容量型センサは、人等の検出対象が検出領域に対して進入または退避したとき、検出用電極の静電容量が変化(つまり増加または減少)することを利用して、検出対象の検出または非検出を行うものである。そして、静電容量型センサのアナログ出力は、センサ用コントローラにより、予め設定された閾値を超えたか否かに応じてON/OFFのデジタル信号に変換されて出力されている。
【0008】
このような静電容量型センサをロボットアームに設けた場合、静電容量型センサのセンサ用コントローラからONのデジタル信号が出力されれば、ロボットコントローラは、作業者等がロボットアームに近接していて危険状態にあると判断し、ロボットアームを減速または停止させる。
【0009】
ところで、静電容量型センサのセンサ用コントローラにおいて、2つ以上の閾値の設定および各閾値に応じた閾値処理が可能であれば、ロボットアームが作業者に対して近接状態にある近接検出信号と、ロボットアームが作用者に接触した接触検出信号とをそれぞれ出力し、ロボットコントローラがこれらの信号に応じてロボットアームを減速または停止させるように制御することが考えられる。
【0010】
しかしながら、この場合、センサ用コントローラからは、設定した閾値ごとにON/OFFのデジタル信号が出力されるため、ロボットコントローラでは、センサ用コントローラから一旦出力されたデジタル信号に基づいてロボットアームの駆動制御を行った後、再びセンサ用コントローラから出力される別のデジタル信号に基づいて、ロボットアームの駆動制御を別途行う必要がある。そのため、ロボットアームの駆動制御プログラムが複雑になるという問題がある。また、この場合、センサ用コントローラから出力されるすべての信号が正常であるか否かを確認しようとすると、さらに煩雑な処理が必要になる。
【0011】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、簡単な構成で検出対象の近接および接触を検出できるセンサ装置を提供することにある。また本発明は、簡単な構成で検出対象の近接および接触を検出できるとともに、検出対象の検出時に機械の可動部を減速/停止できる制御システムを提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るセンサ装置は、検出対象を検出するための1つのセンサと、センサに設けられた少なくとも2本の出力線と、各出力線にそれぞれ接続され、センサのアナログ出力信号をそれぞれ検出するとともに、互いに異なる閾値が設定され、各閾値に基づいてセンサのアナログ出力信号をそれぞれデジタル信号に変換して出力する検出・変換部とを備えている。
【0013】
本発明によれば、センサにより検出対象が検出されると、センサからの検出出力が各出力線に出力される。そして、各出力線にそれぞれ接続された検出・変換部において、センサのアナログ出力信号がそれぞれ検出されるとともに、各々設定された閾値に基づいて閾値処理がなされ、デジタル信号が出力される。これにより、検出対象の近接および接触を検出できる。
【0014】
この場合には、各検出・変換部において互いに異なる閾値が設定されていることにより、それぞれ異なる閾値処理がなされており、各出力線から出力されるのは1出力だけである。そのため、検出対象の近接を検出する検出出力と、検出対象の接触を検出する検出出力とは、それぞれ異なる出力線から出力される。これにより、1出力1制御の態様にすることができ、プログラム構成を簡略化できるので、簡単な構成で検出対象の近接および接触を検出できる。しかも、この場合には、出力が2系統以上あることから、安全に関わる機能を冗長化でき、安全性を向上できる。
【0015】
本発明では、閾値のうちの一つが検出対象の近接を検出するためのものであり、閾値のうちの他の一つが検出対象の接触を検出するためのものである。
【0016】
本発明に係る制御システムは、上述したセンサ装置を備え、検出・変換部が、第1の閾値に基づいて第1のデジタル出力信号を出力する第1の検出・変換部と、第1の閾値より大きな第2の閾値に基づいて第2のデジタル出力信号を出力する第2の検出・変換部とから構成されており、第1の検出・変換部からの第1のデジタル出力信号に基づいて機械の可動部を減速させ、第2の検出・変換部からの第2のデジタル出力信号に基づいて機械の可動部を停止させるように制御している。
【0017】
本発明によれば、第1、第2の検出・変換部からの第1、第2のデジタル出力信号に基づいて、機械の可動部が減速または停止するように制御される。これにより、簡単な構成で検出対象の近接および接触を検出できるばかりでなく、生産性の低下を抑制しつつ作業者の安全を確保できる。
【0018】
本発明に係る制御システムは、上述したセンサ装置を備え、機械の可動部を停止させるための停止スイッチを備えている。停止スイッチは、手動により押込み操作前の位置から押込み操作後の位置に押込み操作可能な停止ボタンと、停止ボタンを押込み操作前の位置から押込み操作後の位置に押込み操作可能な作動部とを有している。検出・変換部は、第1の閾値に基づいて第1のデジタル出力信号を出力する第1の検出・変換部と、第1の閾値より大きな第2の閾値に基づいて第2のデジタル出力信号を出力する第2の検出・変換部とから構成されており、第1の検出・変換部からの第1のデジタル出力信号に基づいて機械の可動部を減速させ、第2の検出・変換部からの第2のデジタル出力信号に基づいて停止スイッチの作動部を作動させることにより、停止ボタンを押込み操作して機械の可動部を停止させるように制御している。
【0019】
本発明によれば、第1の検出・変換部からの第1のデジタル出力信号に基づいて機械の可動部が減速し、第2の検出・変換部からの第2のデジタル出力信号に基づいて作動部が作動する。作動部の作動時には、停止スイッチの停止ボタンが押込み操作前の位置から押込み操作後の位置に押込み操作されて、機械の可動部が停止する。これにより、簡単な構成で検出対象の近接および接触を検出できるばかりでなく、生産性の低下を抑制しつつ作業者の安全を確保できる。しかも、この場合、検出対象が機械の可動部にたとえば接触した際には、作動部により機械の可動部を即座に停止させることができるので、安全性を一層向上できる。
【0020】
本発明では、停止ボタンが、手動のみにより押込み操作後の位置から押込み操作前の位置に復帰操作可能になっている。
【0021】
本発明では、作動部の作動による停止ボタンの押込み操作後の押込み状態は、手動による復帰操作がなされない限り維持されている。
【0022】
本発明によれば、停止ボタンの手動による復帰操作を作動部による可動部の停止後の再起動の条件とすることにより、作業者の意図しない可動部の再起動を防止できる。
【0023】
本発明では、作動部の作動による停止ボタンの押込み操作後の押込み状態は、各検出・変換部のすべてのデジタル出力信号がLowとならない限り維持されている。
【0024】
本発明によれば、各検出・変換部のすべてのデジタル出力信号がLowである(すなわち、作業者や物等の検出対象が近接も接触もしていない)ことを作動部による可動部の停止後の再起動の条件とすることにより、作業者等が可動部の周囲に位置している状態で可動部が再起動するのを防止できる。
【0025】
本発明では、作動部が電磁ソレノイドから構成されており、電磁ソレノイドへの電流供給は、各検出・変換部のすべてのデジタル出力信号がLowとならない限り維持されている。
【0026】
本発明によれば、各検出・変換部のすべてのデジタル出力信号がLowである(すなわち、作業者や物等の検出対象が近接も接触もしていない)ことを電磁ソレノイドへの電流供給の停止の条件とすることにより、作業者等が可動部の周囲に位置している状態で電磁ソレノイドへの電流供給が停止するのを防止でき、停止ボタンの不用意な復帰操作がなされるのを防止できる。
【0027】
本発明に係る制御システムは、上述したセンサ装置を備え、機械の可動部を停止させるための停止スイッチを備えている。停止スイッチは、手動により押込み操作前の位置から押込み操作後の位置に押込み操作可能な停止ボタンと、停止ボタンを押込み操作前の位置から押込み操作後の位置に押込み操作可能な作動部とを有している。検出・変換部は、第1の閾値に基づいて第1のデジタル出力信号を出力する第1の検出・変換部と、第1の閾値より大きな第2の閾値に基づいて第2のデジタル出力信号を出力する第2の検出・変換部とから構成されている。第1の検出・変換部からの第1のデジタル出力信号に基づいて機械の可動部を停止させた後、第1の検出・変換部のデジタル出力信号がLowとなった場合には機械の可動部の再起動を許容し、第2の検出・変換部からの第2のデジタル出力信号に基づいて停止スイッチの作動部を作動させ、停止ボタンを押込み操作して機械の可動部を停止させた後は、第2の検出・変換部のデジタル出力信号がLowとなっても作動部の作動による停止ボタンの押込み操作後の押込み状態を維持するように制御している。
【0028】
本発明によれば、第1の検出・変換部からの第1のデジタル出力信号に基づいて機械の可動部が一旦停止し、その後、第1の検出・変換部のデジタル出力信号がLowとなった場合には機械の可動部の再起動が許容される。また、第2の検出・変換部からの第2のデジタル出力信号に基づいて停止スイッチの作動部が作動し、停止ボタンが押込み操作されて機械の可動部が停止した後は、第2の検出・変換部のデジタル出力信号がLowとなっても作動部の作動による停止ボタンの押込み操作後の押込み状態が維持される。
【0029】
これにより、簡単な構成で検出対象の近接および接触を検出できるばかりでなく、検出対象の接近を検出した際には、機械の可動部を一旦停止させ、接近検出のデジタル信号がLowとなったことが確認され次第、機械の可動部を再起動できるので、生産性の低下を抑制しつつ作業者の安全を確保できる。また、検出対象の接触を検出した際には、作動部により機械の可動部を即座に停止させ、その後、接触検出のデジタル出力信号がLowとなっても作動部の作動による停止ボタンの押込み操作後の押込み状態が維持されるので、安全性を一層向上でき、作業者の安全を担保できる。
【0030】
本発明では、停止スイッチが非常停止スイッチである。
【0031】
本発明では、機械が作業者と協働して作業を行う協働ロボットまたは無人搬送車である。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明によれば、簡単な構成で検出対象の近接および接触を検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施例によるセンサを有するロボットの正面図である。
【
図2】本発明の第1の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成図である。
【
図3】前記制御システム(
図2)の一部詳細図である。
【
図4】本発明の第2の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成図である。
【
図5】前記制御システム(
図4)の一部詳細図である。
【
図6】前記センサ装置(
図4)に設けられた停止スイッチの縦断面概略構成図であって、当該停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図7】前記停止スイッチ(
図6)の操作時(手動または作動部による押込み操作時)の状態を示している。
【
図8】本発明の第4の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成図である。
【
図9】本発明の第5の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成図である。
【
図10】前記制御システム(
図9)において、作業者が携帯する発信器とロボットアームに設置された受信器との距離を横軸にとり、受信器が受信する受信信号の強度を縦軸にとって、両者の関係を表したグラフの一例である。
【
図11】本発明の第6の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例によるセンサを説明するための図である。ここでは、センサとして、静電容量型近接センサを例にとる。また、センサが設けられる機械の可動部として、垂直多関節ロボット、とくに、作業者と協働して作業を行う協働ロボットのアームを例にとる。
【0035】
図1には、本実施例によるセンサ(静電容量型近接センサ)CSがロボットRのアームに巻き付けられた状態が示されている。ロボットRは、3本のアームRa
1、Ra
2、Ra
3を有しており、センサCSはこれら3本のアームのうちのいずれかのアーム、たとえばアームRa
1に設けられている。センサCSは、アームRa
1の外周面の周方向に環状に巻き付けられた巻付状態(
図1)と、平面上に展開された展開状態(図示せず)とをとり得るようになっている。センサCSは、作業者等の人Pや物体(図示せず)等の検出対象のロボットRに対する近接および接触を検出するためのものである。
【0036】
〔第1の実施例〕
図2は、本発明の第1の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成を示している。同図に示すように、センサ(静電容量型近接センサ)CSは、検出対象DOの近接および接触を検出するためのセンサ電極CS1と、センサ電極CS1との間に所定間隔を隔てて対向配置され、接地されたグランド電極CS2とを有している。同図中、符号CPは、センサ電極CS1と検出対象DOとの間の静電容量を表している。静電容量CPは、検出対象DOの近接状態(つまり、センサ電極CS1に対して検出対象DOがどれだけ接近しているか)に応じて変化し、検出対象DOが接近しているほど大きくなり、検出対象DOが離れるにつれて小さくなる。
【0037】
センサ電極CS1には、2本の出力線L1、L2が接続されている。出力線L1は、第1の検出・変換回路(第1の検出・変換部)11に接続され、出力線L2は、第2の検出・変換回路(第2の検出・変換部)12に接続されている。また、グランド電極CS2には、2本のグランド線G1、G2が接続されている。グランド線G1は第1の検出・変換回路11に接続され、グランド線G2は第2の検出・変換回路12に接続されている。
【0038】
第1の検出・変換回路11は、センサCSのアナログ出力信号を検出するとともに、予め設定された第1の閾値に基づいて、センサCSのアナログ出力信号をデジタル信号に変換して出力するためのものである。同様に、第2の検出・変換回路12は、センサCSのアナログ出力信号を検出するとともに、第1の検出・変換回路11の第1の閾値とは異なる、予め設定された第2の閾値に基づいて、センサCSのアナログ出力信号をデジタル信号に変換して出力するためのものである。
【0039】
この例では、第2の閾値は第1の閾値よりも大きな値に設定されている。第1の閾値は、検出対象DOの近接を検出するためのものであり、第2の閾値は、検出対象DOの接触を検出するためのものである。第1の検出・変換回路11は、検出対象DOの接近による静電容量の変化に基づいて、ON信号を出力する。同様に、第2の検出・変換回路12は、検出対象DOの接触による静電容量の変化に基づいて、ON信号を出力する。上述したセンサCS、第1の検出・変換回路11および第2の検出・変換回路12により、本発明によるセンサ装置10が構成されている。
【0040】
第1の検出・変換回路11および第2の検出・変換回路12の各出力は、制御部13に入力されている。制御部13には、ロボットR(
図1)の各アームRa
1、Ra
2、Ra
3が接続されている。各アームRa
1、Ra
2、Ra
3は、たとえばサーボモータ(図示せず)等の駆動手段により駆動可能になっている。これにより、ロボットRの各アームRa
1、Ra
2、Ra
3は、第1の検出・変換回路11および第2の検出・変換回路12の各出力に基づいて駆動制御されるようになっている。上述したセンサ装置10および制御部13により、本発明による制御システム1が構成されている。
【0041】
検出対象DOの近接時には、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3がたとえば減速運転され、検出対象DOの接触時には、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3がたとえば停止させられるように制御される。
【0042】
また、第1の検出・変換回路11および第2の検出・変換回路12には、第1の表示部14および第2の表示部15がそれぞれ設けられている。これらの表示部14、15は、たとえば照光することにより、センサCSの外部から視認可能になっている。第1の表示部14は、第1の検出・変換回路11による検出およびデジタル出力がなされていることを表示するためのものであり、同様に、第2の表示部15は、第2の検出・変換回路12による検出およびデジタル出力がなされていることを表示するためのものである。
【0043】
図3は、制御システム1の一部詳細図である。同図に示すように、センサCSのVCC1およびSOUT1は、第1の検出・変換回路11に接続されており、第1の検出・変換回路11の出力は、制御部13のロボットコントローラ13Aに接続されている。制御部13の電源13Bは、第1の検出・変換回路11に接続されるとともに、センサCSのGND1に接続されている。同様に、センサCSのVCC2およびSOUT2は、第2の検出・変換回路12に接続されており、第2の検出・変換回路12の出力は、制御部13のロボットコントローラ13Aに接続されている。制御部13の電源13Bは、第2の検出・変換回路12に接続されるとともに、センサCSのGND2に接続されている。また、ロボットRの各アームRa
1、Ra
2、Ra
3は、制御部13のロボットコントローラ13Aに接続されている。
【0044】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
検出対象DOがロボットRに接近すると、センサCSにより検出対象DOが検出される。すると、センサCSからの検出出力が出力線L1、L2に出力され、第1、第2の検出・変換回路11、12に入力されて検出される。ここで、第1、第2の検出・変換回路11、12では、センサCSからのアナログ出力信号を閾値処理するための第1、第2の閾値がそれぞれ設定されており、第1の閾値は第2の閾値よりも小さくなっている。
【0045】
いま、検出対象DOがセンサCSから離れた位置にあって、センサCSの検出出力が第1の閾値より小さい場合には、第1の検出・変換回路11からHighのデジタル出力信号は出力されず、同様に第2の検出・変換回路12からもHighのデジタル出力信号は出力されず、いずれのデジタル出力信号もLowのままである。このとき、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3は、減速されず(また停止することなく)、制御プログラムにしたがって通常運転される。また、このとき、各表示部14、15は消灯状態にある。
【0046】
次に、検出対象DOがセンサCSに接近した位置にあって、センサCSの検出出力が第1の閾値より大きくかつ第2の閾値より小さい場合には、第1の検出・変換回路11からHighのデジタル出力信号(第1のデジタル出力信号)が出力される。これにより、検出対象DOがセンサCSに接近した位置にある(つまり近接状態にある)ことが検出される。このとき、第1の表示部14がたとえば緑色に照光する。一方、第2の検出・変換回路12からHighのデジタル出力信号は出力されず、Lowのままである。このとき、第2の表示部15は消灯したままである。第1の検出・変換回路11から出力されたHighのデジタル出力信号(第1のデジタル出力信号)は、制御部13のロボットコントローラ13Aに入力される。その結果、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が駆動制御されて、減速運転モードに移行する。
【0047】
次に、検出対象DOがセンサCSにさらに接近した位置(または接触した位置)にあって、センサCSの検出出力が第2の閾値より大きい場合には、第2の検出・変換回路12からHighのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)が出力される。これにより、検出対象DOがセンサCSにさらに接近した位置(つまり近接状態)または接触した位置(つまり接触状態)にあることが検出される。このとき、第2の表示部15がたとえば赤色に照光するとともに、第1の表示部14が消灯する。第2の検出・変換回路12から出力されたHighのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)は、制御部13のロボットコントローラ13Aに入力される。その結果、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が駆動制御されて停止する。
【0048】
なお、このとき、センサCSの検出出力は第1の閾値に対しても大きくなっているので、第1の検出・変換回路11からもHighのデジタル出力信号が出力されるようにしてもよいが、その場合、ロボットコントローラ13Aにおいては、第1、第2の検出・変換回路11、12の双方からHighのデジタル出力信号が出力されたとき、第2の検出・変換回路12からのHighのデジタル出力信号の方を優先して処理する(たとえばオーバーライド制御を行う)ようになっている。その結果、第2の検出・変換回路12からのHighのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)に基づき、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が駆動制御されて停止する。
【0049】
また、センサCSの検出出力が第2の閾値より大きくなったとき、第1の検出・変換回路11からすでに一度Highのデジタル出力信号(第1のデジタル出力信号)が出力されていた場合には、第1の検出・変換回路11による閾値処理機能を一旦無効化することにより、第1の検出・変換回路11からはHighのデジタル出力信号が出力されないようにして、第2の検出・変換回路12のみからHighのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)が出力されるようにしてもよい。この場合においても、第2の検出・変換回路12からのHighのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)に基づき、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が駆動制御されて停止する。
【0050】
このように本実施例によれば、第1、第2の検出・変換回路11、12において互いに異なる閾値が設定可能になっていてそれぞれ異なる閾値処理がなされており、出力線L1、L2から出力されるのはそれぞれ1出力だけである。そのため、検出対象DOの近接を検出する検出出力(第1の信号)と、検出対象DOの接触を検出する検出出力(第2の信号)とは、それぞれ異なる出力線L1、L2から出力される。これにより、ロボットコントローラ13Aは、入力された第1の信号または第2の信号に基づいた制御(つまり減速制御/停止制御)を行えばよく、1出力1制御の態様にすることができ、プログラム構成を簡略化できるので、簡単な構成で検出対象の近接および接触を検出できる。しかも、この場合には、出力が2系統以上あることから、安全に関わる機能を冗長化でき、安全性を向上できる。
【0051】
本実施例では、第1、第2の検出・変換回路11、12からのデジタル出力信号がいずれもLowとならない限り、ロボットRの再起動が許可されないように制御されている。これにより、ロボットRの近くに作業者Pがいる場合に作業者Pの安全を確保できる。
【0052】
本実施例では、検出対象DOとロボットRとの距離に応じた減速/停止処理のそれぞれの距離設定を行う際に、ロボットコントローラ13A側で距離設定を行わなくても、第1、第2の検出・変換回路11、12において個々に閾値を設定することにより、簡易に距離設定を行うことが可能になる。
【0053】
本実施例では、第1、第2の検出・変換回路11、12に第1、第2の表示部14、15がそれぞれ設けられるので、センサCSをロボットRに取り付ける際には、第1、第2の表示部14、15の表示状態を確認しながら、第1、第2の検出・変換回路11、12の各閾値を比較しつつ調整して距離設定を行うようにすれば、簡易に距離設定を行えるようになる。
【0054】
〔第2の実施例〕
図4は、本発明の第2の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成を示しており、
図5は、
図4の制御システムの一部詳細図である。各図において、前記第1の実施例の
図2、
図3と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0055】
この第2の実施例においても、センサ電極CS1には、2本の出力線L1、L2が接続されており、出力線L1は、第1の検出・変換回路(第1の検出・変換部)11に接続され、出力線L2は、第2の検出・変換回路(第2検出・変換部)12に接続されている。また、第1の検出・変換回路11は、センサCSのアナログ出力信号を検出し、予め設定された第1の閾値に基づき、センサCSのアナログ出力信号をデジタル信号に変換して出力する。同様に、第2の検出・変換回路12は、センサCSのアナログ出力信号を検出し、第1の閾値より大きい第2の閾値に基づき、センサCSのアナログ出力信号をデジタル信号に変換して出力する。検出対象DOの近接時には、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が減速運転され、検出対象DOの接触時には、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が停止させられるように制御される。
【0056】
第2の実施例では、停止スイッチ(好ましくは非常停止スイッチ)2が設けられている点が前記第1の実施例と異なっている。停止スイッチ2は、第2の検出・変換回路12からのデジタル出力信号に基づいて、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3を停止(好ましくは非常停止)させるためものである。第2の検出・変換回路12のデジタル出力信号は、停止スイッチ2に入力されており、停止スイッチ2の出力信号は、制御部13のロボットコントローラ13Aに入力されている。
【0057】
次に、停止スイッチ2の内部構造について、
図6および
図7を用いて説明する。
図6は停止スイッチの非操作時の状態を、
図7は停止スイッチの操作時の状態をそれぞれ示している。これらの図では、図示の便宜上ハッチングを省略している。
【0058】
図6および
図7に示すように、停止スイッチ2は、ケース(ハウジング)20と、ケース20の一端側に設けられ、ケース20に軸方向スライド可能に支持されるとともに、作業者Pが押し込み操作(手動操作)するための押圧面(手動操作面)21aを有し、手動により押込み操作前の位置から押込み操作後の位置に押込み操作可能な停止ボタン21と、停止ボタン21の押圧面21aと逆側の裏面に連結され、ケース20の内部において軸方向に延びる軸部22と、軸部22の略中央に取り付けられ、軸部22とともに移動する可動接点23と、ケース20の内壁面に固定され、可動接点23に対向配置されて可動接点23が接離可能な固定接点24と、ケース20の内部においてケース20の他端側に設けられた電磁ソレノイド(作動部)3とを備えている。
【0059】
電磁ソレノイド3の電磁コイル部30には、第2の検出・変換回路12(
図4、
図5)からのデジタル出力信号による励磁信号に基づいて電流が供給されるようになっている。固定接点24に対する可動接点23の接離時に発生するオン/オフ信号は、制御部13のロボットコントローラ13A(
図5)に入力されるようになっている。
【0060】
軸部22は、その略中央において外周側に張り出すフランジ部22aを有しており、フランジ部22aにはコイルばね25の一端が当接している。コイルばね25の他端はケース20の内壁面から内周側に張り出す張出し部20aに当接している。また軸部22は、停止ボタン21の近傍において外周側に突出する突部22bを有している。突部22bは縦断面が台形形状をしており、一対の傾斜面を有している。一方、ケース20の内部には、一対の係合部材26が設けられている。各係合部材26は、突部22bの各傾斜面と係合し得る一対の傾斜面を有している。各係合部材26は、ケース20の内部に配設されたばね27の弾性反発力により、対応する各突部22bの側に付勢されている。
図6に示す非操作時の状態では、突部22bの図示右側の傾斜面に係合部材26の図示左側の傾斜面が係合しており、
図7に示す操作時の状態では、突部22bの図示左側の傾斜面に係合部材26の図示右側の傾斜面が係合している。
【0061】
軸部22の先端には、被係合部22Aが設けられている。被係合部22Aは、この例では、軸部22よりも大径の円柱形状を有している。電磁ソレノイド3の電磁コイル部30の内部には、プランジャ31がスライド自在に挿通しており、プランジャ31は軸部22と同心に配置されている。プランジャ31の一端には、軸部22の被係合部22Aに係合し得る係合部31Aが設けられている。係合部31Aは、この例では、プランジャ31よりも大径の円筒形状を有している。軸部22の先端の被係合部22Aは、プランジャ31の係合部31Aの内部の穴に挿入されて係合している。この構成により、軸部22およびプランジャ31は連結されており、両者が一体となって移動するようになっている。電磁ソレノイド3は、停止ボタン21を押込み操作前の位置から押込み操作後の位置への押込み操作可能に設けられている。
【0062】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
検出対象DOがセンサCSから離れた位置にある場合、および、検出対象DOがセンサCSに接近した位置にあって、センサCSの検出出力が第1の閾値より大きくかつ第2の閾値より小さい場合における制御システム1の作動については、前記第1の実施例の場合と同様である。
【0063】
すなわち、検出対象DOがセンサCSから離れた位置にあるとき、第1、第2の検出・変換回路11、12からHighのデジタル出力信号は出力されず、いずれのデジタル出力信号もLowのままであって、このとき、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3は、減速されず(また停止することなく)、制御プログラムにしたがって通常運転されており、第1、第2の表示部14、15は消灯状態にある。また、検出対象DOがセンサCSに接近した位置にあって、センサCSの検出出力が第1の閾値より大きくかつ第2の閾値より小さいとき、第1の検出・変換回路11からはHighのデジタル出力信号(第1のデジタル出力信号)が出力されるが、第2の検出・変換回路12のデジタル出力信号はLowのままである。このとき、第1の表示部14が緑色に照光しており、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3は減速運転される。
【0064】
次に、検出対象DOがセンサCSにさらに接近した位置(または接触した位置)にあって、センサCSの検出出力が第2の閾値より大きい場合には、第2の検出・変換回路12からHighのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)が出力される。このとき、第2の表示部15が赤色に照光し、第1の表示部14は消灯する。第2の検出・変換回路12から出力されたHighのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)は、停止スイッチ2に入力される(
図4ないし
図6参照)。これにより、電磁ソレノイド3の電磁コイル部30に電流が供給されて電磁コイル部が励磁される。
【0065】
すると、
図6→
図7に示すように、プランジャ31が引き込まれて図示右側に移動し、それに伴って、プランジャ31に連結された軸部22も同様に図示右側に移動して、停止ボタン21が押込み操作前の位置から押込み操作後の位置に押込み操作される。このとき、軸部22の移動にともない、軸部22の突部22bの傾斜面がこれと係合する係合部材26の傾斜面をばね27の弾性反発力に抗して乗り越え、
図7に示すように、軸部22の突部22bの他方の傾斜面が係合部材26の他方の傾斜面と係合する。また、軸部22とともに可動接点23が移動することにより、可動接点23が固定接点24から開離して、接点がオフとなる。このオフ信号は、制御部13のロボットコントローラ13Aに入力される(
図5参照)。その結果、ロボットRの各アームRa
1、Ra
2、Ra
3が停止する。
【0066】
このように本実施例によれば、出力線がL1、L2の2系統設けられ、そのうちのいずれかの出力線(本実施例では、出力線L2)に非常停止機能を追加している。すなわち、検出対象DOの接触がセンサCSにより検出されると、第2の検出・変換回路12から第2のデジタル出力信号が出力され、これが停止スイッチ2に入力されることで電磁ソレノイド3が作動し、停止ボタン21が押込み操作される。これにより、非常時において、作業者Pが停止スイッチ2の停止ボタン21を直接押し込むことができない状況下(たとえば、作業者PがロボットRから離れた位置にいる場合や、ロボットRが誘導走行型ロボットまたは自律走行型ロボットの場合等)においても、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3を自動で即座に緊急停止させることができるようになる。
【0067】
本実施例では、停止スイッチ2の停止ボタン21の押込み操作後の位置から押込み操作前の位置への復帰操作は、手動のみにより可能になっている。すなわち、作業者Pが停止ボタン21を手前側(
図7左側)に引っ張ることによってのみ、停止ボタン21の復帰操作が可能になっている。よって、
図7に示す状態において、電磁ソレノイド3の電磁コイル部30への電流供給が停止しても、停止ボタン21は押込み状態を維持しており、電磁ソレノイド3の作動による停止ボタン21の押込み操作後の押込み状態は、手動による復帰操作がなされない限り維持されている。これにより、停止ボタン21の手動による復帰操作を電磁ソレノイド3による各アームRa
1、Ra
2、Ra
3の停止後の再起動の条件とすることによって、作業者の意図しない各アームRa
1、Ra
2、Ra
3の再起動を防止できる。
【0068】
また、本実施例においては、停止スイッチ2の電磁ソレノイド3の電磁コイル部30への励磁信号が、ロボットコントローラ13Aから供給されるようにしてもよく、電磁ソレノイド3への電流供給が、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号(第1および第2のデジタル出力信号)がLowとならない限り維持されるようにしてもよい。これにより、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号がLowである(すなわち、作業者や物等の検出対象が近接も接触もしていない)ことを電磁ソレノイド3への電流供給の停止の条件とすることによって、作業者等がアームRa1、Ra2、Ra3の周囲に位置している状態で電磁ソレノイド3への電流供給が停止するのを防止でき、停止ボタン21の不用意な復帰操作がなされるのを防止できる。さらに、この場合、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号がLowであっても、作業者Pが停止ボタン21を押込み操作後の位置から押込み操作前の位置に復帰操作しない限り、停止ボタン21の押込み操作後の押込み状態が維持され、ロボットRを再起動させることができない。
【0069】
なお、本実施例においては、停止スイッチ2の電磁ソレノイド3の電磁コイル部30への励磁信号が、ロボットコントローラ13Aから供給されるようにしてもよく、電磁ソレノイド3の作動による停止ボタン21の押込み操作後の押込み状態が、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号(第1および第2のデジタル出力信号)がLowとならない限り維持されるようにしてもよい。これにより、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号がLowである(すなわち、作業者や物等の検出対象が近接も接触もしていない)ことを電磁ソレノイド3による各アームRa1、Ra2、Ra3の停止後の再起動の条件とすることによって、作業者等が各アームRa1、Ra2、Ra3の周囲に位置している状態で各アームRa1、Ra2、Ra3が再起動するのを防止できる。さらに、この場合、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号がLowであっても、作業者Pが停止ボタン21を押込み操作後の位置から押込み操作前の位置に復帰操作しない限り、停止ボタン21の押込み操作後の押込み状態が維持され、ロボットRを再起動させることができない。
【0070】
〔第3の実施例〕
本発明の第3の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成は、前記第2の実施例の
図4、
図5と同様であり、停止スイッチ(好ましくは非常停止スイッチ)の構成も前記第2の実施例の
図6、
図7と同様であるが、この第3の実施例では、検出対象DOの近接/接触時におけるロボットRの各アームRa
1、Ra
2、Ra
3の制御の仕方が前記第2の実施例と異なっている。
【0071】
第3の実施例では、検出対象DOの近接時には、予め設定された第1の閾値に基づき閾値処理を行った第1の検出・変換回路11からのデジタル出力信号(第1のデジタル出力信号)に基づいて、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が一旦停止する。その後、第1の検出・変換回路11のデジタル出力信号がLowとなると、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3の再起動が許容され、再起動可能な状態になる。また、検出対象DOの接触時には、第1の閾値より大きな第2の閾値に基づき閾値処理を行った第2の検出・変換回路12からのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)に基づいて、停止スイッチ2が作動し、電磁ソレノイド3により停止ボタン21が押込み操作されてロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が停止する。その後、第2の検出・変換回路12のデジタル出力信号がLowとなっても停止スイッチ2の作動による停止ボタン21の押込み操作後の押込み状態は維持される。
【0072】
このように本実施例によれば、簡単な構成で検出対象DOの近接および接触を検出できるばかりでなく、検出対象DOの接近を検出した際には、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3を一旦停止させ、接近検出のデジタル信号(第1のデジタル出力信号)がLowとなったことが確認され次第、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3を再起動できるようになるので、生産性の低下を抑制しつつ作業者の安全を確保できる。また、検出対象DOの接触を検出した際には、停止スイッチ2によりロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3を即座に停止させ、その後、接触検出のデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)がLowとなっても停止スイッチ2の作動による停止ボタン21の押込み操作後の押込み状態を維持できるので、安全性を一層向上でき、作業者の安全を担保できるようになる。
【0073】
〔第4の実施例〕
図8は、本発明の第4の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成を示している。同図において、前記第1、第2の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0074】
この第4の実施例においては、前記第1、第2の実施例と同様に、センサ電極CS1に2本の出力線L1、L2が接続されており、出力線L1は第1の検出・変換回路(第1の検出・変換部)11に接続され、出力線L2は第2の検出・変換回路(第2検出・変換部)12に接続されている。第1の検出・変換回路11は、センサCSのアナログ出力信号を検出し、予め設定された第1の閾値に基づき、センサCSのアナログ出力信号をデジタル信号に変換して出力する。同様に、第2の検出・変換回路12は、センサCSのアナログ出力信号を検出し、第1の閾値より大きい第2の閾値に基づき、センサCSのアナログ出力信号をデジタル信号に変換して出力する。検出対象DOの近接時には、第1の検出・変換回路11からのデジタル出力信号(第1のデジタル出力信号)に基づいてロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が減速運転され、検出対象DOの接触時には、第2の検出・変換回路12からのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)に基づいてロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が停止させられるように制御される。
【0075】
前記第1、第2の実施例では、第1の検出・変換回路11のデジタル出力信号が有線で制御部13に入力され、第2の検出・変換回路12のデジタル出力信号が有線で停止スイッチ2に入力された例を示したが、この第4の実施例では、各デジタル出力信号が無線で送受信されるように構成されている点が前記第1、第2の実施例と異なっている。
【0076】
すなわち、
図8に示すように、第1の検出・変換回路11のデジタル出力は第1の発信器16に入力されている。第1の検出・変換回路11および第1の発信器16には、第1のバッテリー13B
1が接続されている。制御部13の側には、第1の受信器18が設けられており、第1の発信器16および第1の受信器18は無線で通信可能になっている。第1の受信器18は制御部13に接続されている。
【0077】
同様に、第2の検出・変換回路12のデジタル出力は第2の発信器17に入力されている。第2の検出・変換回路12および第2の発信器17には、第2のバッテリー13B2が接続されている。制御部13の側には、第2の受信器19が設けられており、第2の発信器17および第2の受信器19は無線で通信可能になっている。第2の受信器19は停止スイッチ(好ましくは非常停止スイッチ)2に接続されており、停止スイッチ2の出力信号は制御部13に接続されている。停止スイッチ2は、第2の検出・変換回路12からの第2のデジタル出力信号に基づいて、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3を停止(好ましくは非常停止)させるためのものであって、その構成は前記第2の実施例のものと同様である。
【0078】
このように本実施例によれば、出力線がL1、L2の2系統設けられ、そのうちのいずれかの出力線(本実施例では、出力線L2)の側に非常停止機能を追加している。すなわち、検出対象DOの接触がセンサCSにより検出されると、第2の検出・変換回路12から第2のデジタル出力信号が出力され、これが第2の発信器17および第2の受信器19を介して停止スイッチ2に入力されることで電磁ソレノイドが作動し、停止ボタンが押込み操作される。これにより、非常時において、作業者Pが停止スイッチ2の停止ボタンを直接押し込むことができない状況下(たとえば、作業者PがロボットRから離れた位置にいる場合や、ロボットRが誘導走行型ロボットまたは自律走行型ロボットの場合等)においても、ロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3を自動で即座に緊急停止させることができるようになる。
【0079】
本実施例によれば、第2の検出・変換回路12からの第2のデジタル出力信号が第2の発信器17および第2の受信器19を介して無線で送受信されるだけでなく、第1の検出・変換回路11からの第1のデジタル出力信号が第1の発信器16および第1の受信器18を介して無線で送受信されている。その結果、検出対象DOがセンサCSに接触した位置にあるときに第2の検出・変換回路12から出力される第2のデジタル出力信号を無線化できるだけでなく、検出対象DOがセンサCSに接近した位置にあるときに第1の検出・変換回路11から出力される第1のデジタル出力信号についても無線化できる。これにより、センサCSの設置場所の制限を緩和でき、制御システム全体のコードレス化が可能になる。
【0080】
本実施例では、前記第2の実施例と同様に、停止スイッチ2の停止ボタンの押込み操作後の位置から押込み操作前の位置への復帰操作は、手動のみにより可能になっている。よって、停止スイッチ2の電磁ソレノイドへの電流供給が停止しても、停止ボタンは押込み状態を維持しており、電磁ソレノイドの作動による停止ボタンの押込み操作後の押込み状態は、手動による復帰操作がなされない限り維持されている。
【0081】
また、本実施例においては、停止スイッチ2の電磁ソレノイドへの励磁信号が、制御部13から供給されるようにしてもよく、電磁ソレノイドへの電流供給が、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号(第1および第2のデジタル出力信号)がLowとならない限り維持されるようにしてもよい。さらに、この場合、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号がLowであっても、作業者Pが停止ボタンを押込み操作後の位置から押込み操作前の位置に復帰操作しない限り、停止ボタンの押込み操作後の押込み状態が維持され、ロボットRを再起動させることができない。
【0082】
なお、本実施例においては、停止スイッチ2の電磁ソレノイドへの励磁信号が、制御部13から供給されるようにしてもよく、電磁ソレノイドの作動による停止ボタンの押込み操作後の押込み状態が、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号(第1および第2のデジタル出力信号)がLowとならない限り維持されるようにしてもよい。さらに、この場合、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号がLowであっても、作業者Pが停止ボタンを押込み操作後の位置から押込み操作前の位置に復帰操作しない限り、停止ボタンの押込み操作後の押込み状態が維持され、ロボットRを再起動させることができない。
【0083】
〔第5の実施例〕
図9は、本発明の第5の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成を示している。同図において、前記第1、第2および第4の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0084】
この第5の実施例では、前記第2の実施例のセンサCSの代わりに、発信器1(CSt1)、発信器2(CSt2)および受信器CSrが設けられている点が前記第2の実施例と異なっている。受信器CSrは、ロボットアームに設置されており、異なる作業者が各々携帯する発信器1(CSt1)および発信器2(CSt2)からそれぞれ無線で送信された電波信号を受信してその強度(受信信号強度)を測定するためのものであって、距離センサ(センサ)として機能している。無線通信規格としては、たとえばBluetooth(登録商標)が用いられる。受信信号強度は、一般に、RSSI(Received Signal Strength Indication)を用いて表され、RSSI値が高いと各発信器1、2から受信器(センサ)CSrまでの距離が近く、逆にRSSI値が低いと各発信器1、2から受信器(センサ)CSrまでの距離が遠い。
【0085】
第5の実施例においては、前記第1、第2および第4の実施例と同様に、受信器(センサ)CSrに2本の出力線L1、L2が接続されており、出力線L1は第1の検出・変換回路(第1の検出・変換部)11に接続され、出力線L2は第2の検出・変換回路(第2検出・変換部)12に接続されている。第1の検出・変換回路11は、受信器CSrのアナログ出力信号を検出し、予め設定された第1の閾値に基づき、受信器CSrのアナログ出力信号をデジタル信号に変換して出力する。同様に、第2の検出・変換回路12は、受信器CSrのアナログ出力信号を検出し、第1の閾値より大きい第2の閾値に基づき、受信器CSrのアナログ出力信号をデジタル信号に変換して出力する。検出対象DOの近接時には、第1の検出・変換回路11からのデジタル出力信号(第1のデジタル出力信号)に基づいてロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が減速運転され、検出対象DOの接触時には、第2の検出・変換回路12からのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)に基づいてロボットRの各アームRa1、Ra2、Ra3が停止させられるように制御される。
【0086】
図10は、制御システム1(
図9)において、発信器1、2を携帯する作業者と受信器CSrが設置されたロボットアームとの距離(m)を横軸にとり、受信器CSrが受信する受信信号強度RSSI(dBm)を縦軸にとって、両者の関係を表したグラフの一例である。同図に示すように、距離が小さくなるほど受信信号強度RSSIが大きくなっている。この例では、距離が4m以上離れた領域をロボットが通常運転される安全領域とし、距離が2m以上4m未満の領域をロボットが減速運転される減速領域(ロボットの可動範囲外の領域ではあるが、作業者が立ち入り可能な領域であってロボットの監視対象領域に相当する領域)とし、距離が0m以上2m未満の領域をロボットが停止させられる停止領域(ロボットの可動範囲内の領域であって、作業者が立ち入り禁止の領域)とした。よって、第1の検出・変換回路11に設定される第1の閾値は、距離4mに相当する受信信号強度-45(dBm)であり、第2の検出・変換回路12に設定される第2の閾値は、距離2mに相当する受信信号強度-40(dBm)である。
【0087】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
作業者PがロボットRに接近すると、受信器CSrにより、作業者Pが携帯する発信器1、2が検出される。すると、受信器CSrからの検出出力が出力線L1、L2に出力され、第1、第2の検出・変換回路11、12に入力されて検出--される。ここで、第1、第2の検出・変換回路11、12では、受信器CSrからのアナログ出力信号を閾値処理するために第1、第2の閾値がそれぞれ設定されており、第1の閾値は第2の閾値よりも小さくなっている。
【0088】
いま、たとえば発信器2(CSt2)を携帯する作業者が受信器CSrから4m以上離れた位置にいるとき、発信器2の検出出力は第1の閾値より小さいので、第1の検出・変換回路11からHighのデジタル出力信号は出力されず、同様に第2の検出・変換回路12からもHighのデジタル出力信号は出力されず、いずれのデジタル出力信号もLowのままである。このとき、ロボットアームは、減速されず(また停止することなく)、制御プログラムにしたがって通常運転される。また、このとき、各表示部14、15は消灯状態にある。
【0089】
次に、発信器2を携帯する作業者Pが受信器CSrから2m以上4m未満離れた位置にいるとき、受信器CSrの検出出力が第1の閾値より大きくかつ第2の閾値より小さいので、第1の検出・変換回路11からHighのデジタル出力信号(第1のデジタル出力信号)が出力される。このとき、第1の表示部14がたとえば緑色に照光する。一方、第2の検出・変換回路12からHighのデジタル出力信号は出力されず、Lowのままである。このとき、第2の表示部15は消灯した状態にある。第1の検出・変換回路11から出力されたHighのデジタル出力信号(第1のデジタル出力信号)は、制御部13に入力される。その結果、ロボットアームが駆動制御されて、減速運転モードに移行する。なお、この減速運転モードについては、さらに細分化することにより、低速運転モードや中速運転モードを設けるようにしてもよい。
【0090】
次に、発信器1(CSt1)を携帯する作業者が受信器CSrから0m以上2m未満離れた位置にいるとき、受信器CSrの検出出力が第2の閾値より大きいので、第2の検出・変換回路12からHighのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)が出力される。このとき、第2の表示部15がたとえば赤色に照光するとともに、第1の表示部14が消灯する。第2の検出・変換回路12から出力されたHighのデジタル出力信号(第2のデジタル出力信号)は、停止スイッチ2に入力される。その結果、ロボットアームが駆動制御されて停止する。
【0091】
このように本実施例によれば、出力線がL1、L2の2系統設けられ、そのうちのいずれかの出力線(本実施例では、出力線L2)の側に非常停止機能を追加している。すなわち、作業者Pのロボットアームへの接触が受信器CSrにより検出されると、第2の検出・変換回路12から第2のデジタル出力信号が出力され、これが停止スイッチ2に入力されることで電磁ソレノイドが作動し、停止ボタンが押込み操作される。これにより、非常時において、作業者Pが停止スイッチ2の停止ボタンを直接押し込むことができない状況下(たとえば、作業者PがロボットRから離れた位置にいる場合や、ロボットRが誘導走行型ロボットまたは自律走行型ロボットの場合等)においても、ロボットアームを自動で即座に緊急停止させることができるようになる。
【0092】
本実施例においても、停止スイッチ2の停止ボタンの押込み操作後の位置から押込み操作前の位置への復帰操作は、手動のみにより可能になっている。停止スイッチ2の電磁ソレノイドへの電流供給が停止しても、停止ボタンは押込み状態を維持しており、電磁ソレノイドの作動による停止ボタンの押込み操作後の押込み状態は、手動による復帰操作がなされない限り維持されている。
【0093】
本実施例においても、停止スイッチ2の電磁ソレノイドへの励磁信号が制御部13から供給されるようにしてもよく、電磁ソレノイドへの電流供給は、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号(第1および第2のデジタル出力信号)がLowとならない限り(すなわち、作業者全員が受信器CSrから4m以上離れない限り)、維持されるようにしてもよい。これにより、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号がLowである(すなわち、作業者Pが近接も接触もしていない)ことを電磁ソレノイドへの電流供給の停止の条件とすることによって、作業者がロボットアームの周囲に位置している状態で電磁ソレノイドへの電流供給が停止するのを防止でき、停止ボタンの不用意な復帰操作がなされるのを防止できる。さらに、この場合、第1、第2の検出・変換回路11、12のすべてのデジタル出力信号がLowであっても、作業者Pが停止ボタンを押込み操作後の位置から押込み操作前の位置に復帰操作しない限り、停止ボタンの押込み操作後の押込み状態が維持され、ロボットRを再起動させることができない。
【0094】
なお、本実施例においては、停止スイッチ2は、受信器CSrから4m以上離れた位置に配置されているのが好ましい。この場合には、作業者Pの手動による停止スイッチ2の復帰操作の際に作業者Pが安全領域で作業を行うことになるので、作業上の安全性を向上でき、安全な位置からのロボットRの再起動が可能になる。
【0095】
また、本実施例は、作業者Pと協働して作業を行う協働ロボットよりも、安全柵で囲まれた領域内で作業者Pから離れて作業を行う従来のロボットに好適である。というのは、非常停止後、作業者全員が安全柵の外側に退避した後に(このとき、作業者全員の発信器からの受信信号強度が小さくなっている)、安全柵の外側に設置された停止スイッチ2の復帰操作を可能とすることにより、安全柵の内側に作業者Pが留まるリスクを低減できる。
【0096】
〔第6の実施例〕
図11は、本発明の第6の実施例によるセンサ装置を備えた制御システムの概略ブロック構成を示している。同図において、前記第1、第2、第4および第5の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0097】
この第6の実施例は、前記第5の実施例に通票ユニット兼充電ユニット(以下、単に「ユニット」と呼称する)4を追加した構成を有している。ユニット4には、発信器1(CSt1)、発信器2(CSt2)、発信器3(CSt3)が物理的に接続可能かつ取外し可能に設けられている。個々の作業者Pは、安全柵内に進入する際にそれぞれ発信器1~3をユニット4から取り外して携帯しなければならず、発信器1~3は、安全柵内に作業者Pが立ち入る際の通票(許可票)として機能している。安全柵のゲートは、作業者Pがいずれかの発信器1~3を携帯し、かつ停止スイッチ2がオフの状態になっていなければ、開放が許可されないようになっている。なお、一人の作業者Pが複数の発信器1~3を携帯することで各発信器の距離が近い場合には、警告表示を出して作業者Pの注意を喚起したり、ロボットの再起動を許可しないようにしたりしてもよい。
【0098】
ユニット4には、図示していないが、前記第5の実施例の受信器CSrに相当する受信器が接続されており、発信器1~3がユニット4から取り外された後、受信器は、発信器1~3からそれぞれ無線で送信された電波信号を受信してその強度(受信信号強度)を測定しており、距離センサ(センサ)として機能している。また、図示していないが、受信器には、発信器1~3からの各受信信号を閾値処理するための第1ないし第3の検出・変換回路が接続されており、それぞれ異なる閾値が設定されている。作業者がロボットに接近した際には、受信器により発信器1~3が検出され、第1ないし第3の検出・変換回路により受信器からのアナログ出力信号を閾値処理してデジタル出力することにより、ロボットアームが駆動制御されている。
【0099】
ユニット4は、停止スイッチ2の端子に接続されている。安全柵内での作業完了後、安全柵内から作業者全員が退出してすべての発信器1~3をユニット4に接続した後、安全柵のゲートの閉鎖による安全スイッチ(インターロック装置)からの安全出力、および、停止スイッチ2の手動復帰操作による安全信号出力が検出されない限り、ロボットRの再起動が許可されないようになっている。
【0100】
なお、停止スイッチ2が安全柵内のロボットRの近傍に配置されている場合には、安全柵のゲートの閉鎖による安全スイッチ(インターロック装置)からの安全出力、および、すべての発信器1~3のユニット4への接続が行われた場合に限り、停止スイッチ2の復帰操作を無線等の遠隔操作で行うようにしてもよい。
【0101】
ユニット4には、IDリーダー40が接続されている。発信器1~3のユニット4からの取り外しの際に作業者Pの固有IDを要求するようにした場合には、作業者Pの固有IDと発信器1~3の各固有IDとを紐付けして登録するとともに、作業者Pの固有IDをIDリーダー40により読み込むようにしてもよい。また、発信器1~3をユニット4に戻す際にも作業者Pの固有IDを再度要求するようにすれば、作業完了後に安全柵の内部に作業者Pが残るリスクを低減できる。
【0102】
〔第1の変形例〕
前記第1ないし第5の実施例では、センサCSまたは受信器(センサ)CSrに2本の出力線L1、L2が接続された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されず、センサには、3本以上の出力線が接続されるようにしてもよい(前記第5の実施例参照)。
【0103】
〔第2の変形例〕
前記各実施例では、センサとして、ロボットアームに巻付け可能なものを例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。シート状のセンサを展開状態のままロボットRに貼り付けるようにしてもよい。
【0104】
〔第3の変形例〕
本発明によるセンサとして、前記第1ないし第4の実施例では静電容量型近接センサを例にとり、前記第5、第6の実施例では距離センサを例にとって説明したが、本発明の適用はこれらに限定されるものではなく、本発明は、その他の近接センサ(たとえば磁気型等)や各種非接触センサ、RFIDにも適用可能である。
【0105】
〔その他の変形例〕
上述した各実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【0106】
〔他の適用例〕
前記各実施例および前記各変形例では、本発明によるセンサ装置が適用される機械の可動部として、垂直多関節ロボットのアームを例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。本発明によるセンサ装置は、その他のロボット、たとえば水平多関節ロボットやスカラロボット、各種ロボットのアームに設けるようにしてもよく、油圧ショベルのバケット等の産業車両の可動部に設けるようにしてもよい。また、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle または AMR:Autonomous Mobile Robot)のバンパー等に設けるようにしてもよい。無人搬送車の場合、バンパー自体が車両本体に対して可動するのではないが、バンパーが車両とともに動くため、可動部に含められる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、機械の可動部に対する人等の検出対象の近接を検出するセンサ装置に有用であり、とくに、構造の簡略化を要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0108】
1: 制御システム
10: センサ装置
11: 第1の検出・変換回路(第1の検出・変換部)
12: 第2の検出・変換回路(第2の検出・変換部)
13: 制御部
2: 非常停止スイッチ(停止スイッチ)
21: 停止ボタン
3: 電磁ソレノイド(作動部)
DO: 検出対象
CS: センサ
CSr: 距離センサ(センサ)
L1、L2: 出力線
R: ロボット(機械)
Ra1~Ra3: アーム(可動部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2006-43792号公報(段落[0004]、[0005]、[0007]、[0008]および
図1ないし
図4参照)
【特許文献2】特開2018-149673号公報(段落[0018]、[0021]、[0025]、[0030]および
図1ないし
図5、
図8参照)