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  • 特開-構造物の変位計測器 図1
  • 特開-構造物の変位計測器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178156
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】構造物の変位計測器
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022099220
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】518038308
【氏名又は名称】構造物設計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】夏川 亨介
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059GG39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】線条体を不動点間に張架して、その中間部にて計測対象構造物に設けた変位計では、線条体の所定部位からの変位を計測する場合、線条体の張架距離が数十メートルに及ぶことが多く、線条体は風等の気象条件の影響で常時不定量的に振れ続けることを考慮して相当の張力(たとえば重錘を吊り下げる)をかける。しかしながら計測器を現場にて設置する際、200Nの重錘を手操作により線条体に連結して重錘を所定位置に留めることは極めて困難であった。さらに設置した直後から数日は線条体の伸びが発生するため、重錘の再連結操作を繰り返し行う必要があった。
【解決手段】不動点となる2点間において、一端部を一方の不動点に設けられた重錘に連結するとともに他端部を他方の不動点に設けられた巻取機に連結され懸架した線条体と、上記不動点の中間に位置する計測対象となる構造物に設けられ上記線条体からの変位を計測する変位計とから構成するようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動点となる2点間において、一端部を一方の不動点に設けられた重錘に連結するとともに他端部を他方の不動点に設けられた巻取機に連結され懸架した線条体と、上記不動点の中間に位置する計測対象となる構造物に設けられ上記線条体からの変位を計測する変位計とから構成される構造物の変位計測器。
【請求項2】
変位計を透過型センサとした請求項1の構造物の変位計測器。
【請求項3】
変位計を2セット用いて鉛直方向および水平方向の変位を同時に計測するようにした請求項1の構造物の変位計測器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【001】
本発明は環境影響により変形、変位した構造物の実態を確認するために利用される計測器に関するものであり、たとえば老朽化した橋梁の診断、近接工事等における既設構造物への影響診断等に採用され、これらの挙動を把握し、既設構造物の現状安全性および既設構造物に係る工事の安全性を維持するために用いられるものである。
【背景技術】
【002】
従来この種の計測は、距離の離れた場所からカメラ等の画像処理、光軸を利用した距離計を使用することが一般的であった。しかし、対象測点から少なくとも10~20m離間することが多く、このため、計測精度が著しく悪いものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【003】
上記計測手法の他、線条体を不動点間に張架して、その中間部にて計測対象構造物に設けた変位計で、上記線条体の所定部位からの変位を計測するものは一般的に使用されている。しかし、この種の変位計測器は主に構造物を対象としているため、線条体の張架距離が数十メートルに及ぶことが多く、線条体は風等の気象条件の影響で常時不定量的に振れ続けることを考慮して相当の張力(たとえば200N)を重錘を吊り下げることで構成している。
【004】
しかしながら上記計測器を現場にて設置する際、200Nの重錘を手操作により線条体に連結して重錘を所定位置に留めることは極めて困難であった。さらに設置した直後から数日は線条体の伸びが発生するため、重錘の再連結操作を繰り返し行う必要があった。
【課題を解決するための手段】
【005】
不動点となる2点間において、一端部を一方の不動点に設けられた重錘に連結するとともに他端部を他方の不動点に設けられた巻取機に連結され懸架した線条体と、上記不動点の中間に位置する計測対象となる構造物に設けられ上記線条体からの変位を計測する変位計とから構成するようにした。
【発明の効果】
【006】
本発明による変位計測器は、その構成上すこぶる重要な線条体の一端部に巻取機を連結したため、あらかじめ他端部に重錘を連結して、後、巻取機にて巻上操作するだけで、簡単に重錘を吊り上げ、所定位置に設置することができ、現場での作業が迅速かつ安全に行えるだけでなく、時間経過後に線条体の伸びに起因する重錘の下降を随時簡単に修正することができる等実用上の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【007】
図1】本実施例に係る設置状況図
図2】本実施例に係る装置詳細図
【発明を実施するための形態】
【008】
以下、本発明の実施形態を図1および図2を参照しながら説明する。
【009】
図1は本発明による変位計測器を高架橋の柱天端に設置した状況を示す。図2は本変位計測器の構成詳細を示す。図中1は高架橋、2は梁、3および5は基本変動しない不動点としての柱である。4は変動が予測される柱であり柱1と柱3の中間に位置する。
【010】
ここでは柱4の挙動を計測するために本発明による変位計測器を用いるケースを説明する。本発明による変位計測器は第一固定部6、計測部7、第二固定部8、巻取機9とから構成される。第一固定部6は柱3の天端部に設置されている。計測部7は柱4の天端部に設置されている。第二固定部8および巻取機9は柱5の天端部に設置されている。
【011】
10は線条体たとえば樹脂製ストリングであり、一端を第一固定部6のプーリ11を介して重錘12(たとえば200N)に連結されている。線条体10の他端は第二固定部8のプーリ13を介して巻取機9に巻取固定されている。計測部7は変位計14を有し、この変位計14は近接する線条体10の水平方向の変位量を検知するたとえばレーザ式透過型センサ(水平成分)15と近接する線条体10の鉛直方向の変位量を検知するたとえばレーザ式透過型センサ(鉛直成分)16により構成されている。
【012】
なお、線条体10を懸架する手順としては、線条体10を柱3―5間に緩めた状態で渡し、柱3天端にてベースに置いた重錘12に線条体10の一端を連結固定する。その後、緩めたままの状態で線条体10の他端を柱5天端にて第二固定部8のプーリ13を介して巻取機9のドラムに固定して暫定的に2~3回程度巻き付ける。
【013】
さらに、巻取機9を手操作にて巻上げ、第一固定部6の重錘12が所定の高さになるまで引き上げる。ここで巻取機9は巻戻し方向にストッパ機構を有したものを使用する。
こうして、計測準備が完了し、計測開始となる。
【014】
このように、線条体10に重錘12の荷重による張力をすこぶる簡単に、しかも安全に懸架することができる。
【015】
次に本発明による変位計測器の作用をレーザ式透過センサ(水平成分)15,レーザ式透過センサ(鉛直成分)16の出力値をイニシャルする。その後、柱4が図2のA方向に変位すると、これに伴ってレーザ式透過センサ(水平成分)15が位置変化するため、イニシャル値からの変位量を出力する。
【016】
また柱4が図2のB方向に変位すると、これに伴ってレーザ式透過センサ(鉛直成分)16が位置変化するため、イニシャル値からの変位量を出力する。計測中に線条体10の弛みが発生した場合、重錘12が下降して底部がベースに接触すると、線条体10の張力が変化し、変位出力値に誤差を生じるため、必要に応じて適宜線条体10の巻上を行うことが求められる。
【017】
本発明によれば、このような場合にも巻取機9を操作して線条体10を必要量巻上ることで速やかに対処できるものである。さらには、現場の予測できない事態で線条体10が切断しても、その張替えは容易であり実用上の効果は大きい。
【符号の説明】
【018】
1・・・・・・・・高架橋
2・・・・・・・・桁
3・・・・・・・・柱
4・・・・・・・・柱
5・・・・・・・・柱
6・・・・・・・・第一固定部
7・・・・・・・・計測部
8・・・・・・・・第二固定部
9・・・・・・・・巻取機
10・・・・・・・線条体
11・・・・・・・プーリ
12・・・・・・・重錘
13・・・・・・・プーリ
14・・・・・・・変位計
15・・・・・・・レーザ式透過センサ(水平成分)
16・・・・・・・レーザ式透過センサ(鉛直成分)
図1
図2