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特開2023-17816胎盤接着性細胞を使用するリンパ浮腫および関連する状態の処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017816
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】胎盤接着性細胞を使用するリンパ浮腫および関連する状態の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/50 20150101AFI20230131BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20230131BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
A61K35/50
A61P7/10
A61P31/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022171085
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2019530089の分割
【原出願日】2017-12-06
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ジップロック
2.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】520169074
【氏名又は名称】セルラリティ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ハリリ,ロバート,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シュヤン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】通常は医療廃棄物として廃棄される胎盤を利用した、リンパ浮腫およびリンパ浮腫を処置することによって処置可能な疾患または障害を処置する方法を提供する。
【解決手段】患者に、組織培養プラスチックに接着し、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34、CD10、CD105及びCD200であり、骨形成又は軟骨形成細胞に分化する能力を有する胎盤接着性細胞を投与することを含む方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ浮腫またはリンパ浮腫によって引き起こされる疾患もしくは障害を有する個体を
処置する方法であって、治療有効量の胎盤接着性細胞を前記個体に投与することを含み、
前記治療有効量は、前記投与の前の個体と比較して、前記個体における前記リンパ浮腫ま
たはリンパ浮腫によって引き起こされる疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状または
続発症を低減または改善するのに十分な量である、方法。
【請求項2】
前記リンパ浮腫またはリンパ浮腫によって引き起こされる疾患もしくは障害の前記1つ
または複数の症状または続発症が、一方もしくは両方の脚の一部もしくは全ての腫れ、一
方もしくは両方の腕の一部もしくは全ての腫れ、腕もしくは脚のだるさもしくは緊張、脚
もしくは腕の非圧痛性の痘痕状浮腫、腕もしくは脚における動きの制限もしくは動きを制
限される感覚、腕もしくは脚における痛みもしくは不快感、皮内もしくは皮下の感染、蜂
巣炎、リンパ管炎、リンパ漏、罹患した腕もしくは脚の皮膚の紅斑、陽性のシュテンマー
サイン、ならびに/または罹患した腕もしくは脚の皮膚の硬化および/もしくは肥厚化で
ある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リンパ浮腫が、静脈不全、心不全、睡眠時無呼吸、または腎不全によって引き起こ
されるものまたはそれに関連するものではない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記リンパ浮腫またはリンパ浮腫によって引き起こされる疾患もしくは障害の前記1つ
または複数の症状または続発症が、感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記感染が、膿痂疹に付随して起こる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リンパ浮腫またはリンパ浮腫によって引き起こされる疾患もしくは障害の前記1つ
または複数の症状または続発症が、再発性丹毒後肬贅症(elephantiasis
nostra verrucosa)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リンパ浮腫が、脂肪性浮腫に属するリンパ浮腫である、請求項1から6のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項8】
前記リンパ浮腫が、部分的にまたは全体に、乳がんの手術によって引き起こされる、請
求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リンパ浮腫が、ステージ0のリンパ浮腫である、請求項1から8のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項10】
前記リンパ浮腫が、ステージ1のリンパ浮腫である、請求項1から8のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項11】
前記リンパ浮腫が、ステージ2のリンパ浮腫である、請求項1から8のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項12】
前記リンパ浮腫が、ステージ3のリンパ浮腫である、請求項1から8のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項13】
前記胎盤接着性細胞が、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34、CD
10、CD105およびCD200である、請求項1から12のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項14】
前記胎盤接着性細胞が、骨形成または軟骨形成細胞の1つまたは複数の特徴を有する細
胞に分化する能力を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記胎盤接着性細胞が、加えて、フローサイトメトリーおよび/またはRT-PCRに
よって検出可能な、CD38、CD45、CD80、CD86、CD133
HLA-DR、DP、DQ、SSEA3、SSEA4、CD29、CD44
CD73、CD90、CD105、HLA-A、B、C、PDL1、ABC-
、および/またはOCT-4の1つまたは複数である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記胎盤接着性細胞が、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34、CD
45、CD10、CD90、CD105およびCD200である、請求項1か
ら12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記胎盤接着性細胞が、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34、CD
45、CD10、CD80、CD86、CD90、CD105およびCD2
00である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記胎盤接着性細胞が、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34、CD
45、CD10、CD80、CD86、CD90、CD105およびCD2
00であり、加えてCD29、CD38、CD44、CD54、SH3また
はSH4の1つまたは複数である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記胎盤接着性細胞が、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34、CD
38、CD45、CD10、CD29、CD44、CD54、CD73
CD80、CD86、CD90、CD105、およびCD200である、請求
項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記CD34、CD10、CD105およびCD200の胎盤接着性細胞が、
加えて、CD117、CD133、KDR(VEGFR2)、HLA-A、B、
、HLA-DP、DQ、DR、もしくはプログラム細胞死-1リガンド(PDL1
の1つまたは複数、またはそれらのあらゆる組合せである、請求項13に記載の方法
【請求項21】
前記胎盤接着性細胞が、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34、CD
38、CD45、CD10、CD29、CD44、CD54、CD73
CD80、CD86、CD90、CD105、CD117、CD133、C
D200、KDR(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ
、DR、またはプログラム細胞死-1リガンド(PDL1)である、請求項1から1
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記胎盤接着性細胞が、加えて、フローサイトメトリーによって検出可能な、ABC-
であるか、またはRT-PCRによって決定可能な、OCT-4(POU5F1
)である、請求項13から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記胎盤接着性細胞が、加えて、フローサイトメトリーによって決定可能な、SSEA
またはSSEA4であり、SSEA3は、ステージ特異的胎児抗原3であり、SS
EA4は、ステージ特異的胎児抗原4である、請求項13から21のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項24】
前記胎盤接着性細胞が、等しい数の骨髄由来間葉系幹細胞より検出可能に高いレベルで
1つまたは複数の遺伝子を発現し、前記1つまたは複数の遺伝子は、ACTG2、ADA
RB1、AMIGO2、ARTS-1、B4GALT6、BCHE、C11orf9、C
D200、COL4A1、COL4A2、CPA4、DMD、DSC3、DSG2、EL
OVL2、F2RL1、FLJ10781、GATA6、GPR126、GPRC5B、
ICAM1、IER3、IGFBP7、IL1A、IL6、IL18、KRT18、KR
T8、LIPG、LRAP、MATN2、MEST、NFE2L3、NUAK1、PCD
H7、PDLIM3、PKP2、RTN1、SERPINB9、ST3GAL6、ST6
GALNAC5、SLC12A8、TCF21、TGFB2、VTN、およびZC3H1
2Aの1つまたは複数であり、前記骨髄由来間葉系幹細胞は、前記単離された胎盤接着性
細胞が受けた継代数に等しい回数の培養における継代を受けている、請求項13から21
のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.分野
本明細書では、胎盤接着性細胞と称される組織培養プラスチック接着性の胎盤接着性細
胞、例えば胎盤幹細胞を使用して、リンパ浮腫およびリンパ浮腫に関連する障害を処置す
る方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
2.背景
胎盤は、特に魅力的な幹細胞源である。哺乳類胎盤は豊富であり、通常は医療廃棄物と
して廃棄されるため、これらは、かけがえのない医学的に有用な幹細胞源の代表である。
このような単離された胎盤幹細胞、胎盤幹細胞の集団、およびそれを使用して、リンパ浮
腫およびリンパ浮腫を処置することによって処置可能な疾患または障害を処置する方法が
本明細書で提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8,637,409号
【特許文献2】米国特許第7,311,904号
【特許文献3】米国特許第7,311,905号
【特許文献4】米国特許第7,468,276号
【特許文献5】米国特許公開公報第2007/0275362号
【特許文献6】米国特許公開公報第2007/0190042号
【特許文献7】米国特許第5,372,581号
【特許文献8】米国特許第5,415,665号
【特許文献9】米国特許第7,147,626号
【特許文献10】米国特許第7,045,148号
【特許文献11】米国特許第7,255,729号
【特許文献12】米国特許公開公報第2004/0048796号
【特許文献13】特許出願第12/546,556号
【特許文献14】米国特許出願第12/622,352号
【特許文献15】米国特許第4,798,824号
【特許文献16】米国特許第5,552,267号
【特許文献17】米国特許出願公開第2004/0048796号
【特許文献18】米国特許公開公報第2002/0022676号
【特許文献19】米国特許第6,355,699号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ボスティアン(Bostian)およびベッツ(Betts),Biochem.J.,173,787,(1978)
【非特許文献2】カマーチ(Kamarch),1987,Methods Enzymol,151:150-165
【非特許文献3】アリカメッツ(Allikmets)et al.,Cancer Res.58(23):5337-9(1998)
【非特許文献4】サウサード(Southard)ら,Transplantation 49(2):251-257(1990)
【非特許文献5】ゴーデル(Goeddel);Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)
【非特許文献6】サムブルック(Sambrook)ら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory press(1989)
【非特許文献7】アンセス(Anseth)et al.,J.Control Release,78(1-3):199-209(2002)
【非特許文献8】ワン(Wang)et al.,Biomaterials,24(22):3969-80(2003)
【非特許文献9】ゴッセン(Gossen)ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-5551,1992
【非特許文献10】ホシマル(Hoshimaru)ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1518-1523,1996
【非特許文献11】リュー(Liu)ら,2014,Clin.Transl.Immunology 3(e14)
【非特許文献12】フランキ(Francki)ら,2015.J.Vasc.Surg.15:901-915
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
3.概要
組織培養プラスチック接着性の胎盤接着性細胞、例えば胎盤接着性細胞(以下のセクシ
ョン5.3に記載される胎盤接着性細胞)の投与を含む、対象、例えばヒト対象において
リンパ管形成を誘導する方法が本明細書で提供される。
【0006】
具体的な実施形態において、リンパ浮腫またはリンパ浮腫を処置することによって処置
可能な疾患もしくは障害を有する個体を処置する方法であって、リンパ浮腫または前記疾
患または障害の1つまたは複数の症状の検出可能な向上に十分な量および時間で、治療有
効量の組織培養プラスチック接着性の胎盤接着性細胞、例えば胎盤接着性細胞(以下のセ
クション5.3に記載される胎盤接着性細胞)を個体に投与することを含む、方法が本明
細書で提供される。ある特定の実施形態において、本方法は、一方もしくは両方の脚の一
部もしくは全ての腫れ、一方もしくは両方の腕の一部もしくは全ての腫れ、腕もしくは脚
のだるさもしくは緊張、脚もしくは腕の非圧痛性の痘痕状浮腫(pitted edem
a)、腕もしくは脚における動きの制限もしくは動きを制限される感覚、腕もしくは脚に
おける痛みもしくは不快感、皮内もしくは皮下の感染、蜂巣炎、リンパ管炎、リンパ漏、
膿痂疹、罹患した腕もしくは脚の皮膚の紅斑、陽性のシュテンマーサイン、または罹患し
た腕もしくは脚の皮膚の硬化および/もしくは肥厚化などの、リンパ浮腫に関連するまた
はリンパ浮腫によって引き起こされる症状または続発症の1つまたは複数の、前記胎盤接
着性細胞の投与前の個体と比較した向上に十分な量および時間で、胎盤接着性細胞を前記
個体に投与することを含む。ある特定の実施形態において、リンパ浮腫は、ステージ0、
ステージ1、ステージ2、またはステージ3のリンパ浮腫である。ある特定の他の実施形
態において、リンパ浮腫は、脂肪性浮腫に属する。
【0007】
ある特定の実施形態において、胎盤接着性細胞の投与によって処置される浮腫は、静脈
不全、心不全、睡眠時無呼吸、または腎不全によって引き起こされる浮腫またはそれに関
連する浮腫ではない。
【0008】
ある特定の実施形態では、対象においてリンパ管形成を誘導する、および/または対象
においてリンパ浮腫またはリンパ浮腫を処置することによって処置可能な疾患もしくは障
害を処置する胎盤接着性細胞の能力は、対象におけるLYVE-1(リンパ管内皮ヒアル
ロナン受容体-1)の発現レベルの測定によって確認される。
【0009】
リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載される処置方法の別の具体的な実施
形態において、胎盤接着性細胞は、注射によって、例えばリンパ浮腫に罹患した肢への注
射によって、個体に投与される。別の具体的な実施形態において、胎盤接着性細胞は、筋
肉内に投与される。
【0010】
リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載される処置方法の別の具体的な実施
形態において、胎盤接着性細胞は、静脈内注入によって個体に投与される。具体的な実施
形態において、前記静脈内注入は、約1から約8時間にわたる静脈内注入である。
【0011】
リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載される処置方法の他の具体的な実施
形態において、胎盤接着性細胞は、皮下、皮内、動脈内、クモ膜下、または腹腔内に投与
されるか、または胎盤接着性細胞を含むマトリックスまたは足場の前記個体への埋め込み
によって投与される。
【0012】
リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載される処置方法のある特定の実施形
態において、約1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×1
、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、ま
たは1×1010個の胎盤接着性細胞が個体に投与される。ある特定の実施形態において
、1×10から1×10、1×10から1×10、1×10から1×10
1×10から1×10、1×10から1×10、または1×10から1×10
10個の胎盤接着性細胞が個体に投与される。
【0013】
リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載される処置方法の別の具体的な実施
形態において、前記胎盤接着性細胞は、in vitroで、2、3、4、5、6、7、
8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、
22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、3
5、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48
、49または50回以下の集団倍加で増殖されている。別の具体的な実施形態において、
前記胎盤接着性細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、
12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20回、またはおよそそれ
らの回数、またはそれより多くの回数で継代された前記細胞の培養物からのものである。
【0014】
リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載される処置方法の別の実施形態にお
いて、前記胎盤接着性細胞は、低温保存されており、対象に投与される前に融解されてい
る。
【0015】
具体的な実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載される
処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、組織培養プラスチックに接着し、フロー
サイトメトリーによって検出可能な、CD34、CD10、CD105およびCD
200である。ある特定の実施形態において、胎盤接着性細胞は、骨形成または軟骨形
成細胞に分化する能力を有する。別の実施形態において、前記胎盤接着性細胞は、組織培
養プラスチックへの接着性を有し、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34
、CD10、CD105およびCD200であり、骨形成または軟骨形成細胞、
例えば骨細胞または軟骨細胞の特徴の1つまたは複数の特徴を有する細胞に分化する能力
を有する。他の実施形態において、胎盤接着性細胞は、加えて、神経系細胞または神経原
性細胞の1つまたは複数の特徴、例えばニューロンの特徴;グリア細胞の1つまたは複数
の特徴、例えばグリアまたは星状細胞の特徴;脂肪細胞系の細胞の1つまたは複数の特徴
、例えば脂肪細胞の特徴;膵臓細胞の1つまたは複数の特徴;および/または心細胞の1
つまたは複数の特徴を有する細胞に分化する能力を有する。
【0016】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、フローサイトメトリーおよび/または
RT-PCRによって検出可能な、CD34、CD10、CD105およびCD2
00、ならびにCD38、CD45、CD80、CD86、CD133、H
LA-DR、DP、DQ、SSEA3、SSEA4、CD29、CD44、C
D73、CD90、CD105、HLA-A、B、C、PDL1、ABC-p
、および/またはOCT-4の1つまたは複数である。別の実施形態において、前記
胎盤接着性細胞は、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34、CD45
、CD10、CD90、CD105およびCD200である。別の実施形態にお
いて、前記胎盤接着性細胞は、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34
CD45、CD10、CD80、CD86、CD90、CD105およびC
D200である。別の実施形態において、前記胎盤接着性細胞は、フローサイトメトリ
ーによって検出可能な、CD34、CD45、CD10、CD80、CD86
、CD90、CD105およびCD200であり、加えてCD29、CD38
、CD44、CD54、SH3またはSH4の1つまたは複数である。別の実施
形態において、前記胎盤接着性細胞は、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD
34、CD38、CD45、CD10、CD29、CD44、CD54
CD73、CD80、CD86、CD90、CD105、およびCD200
である。
【0017】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、CD34、CD10、CD105
およびCD200胎盤接着性細胞であり、加えて、CD117、CD133、K
DR(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR、もし
くはプログラム細胞死(プログラム死)-1リガンド(PDL1)の1つまたは複数、
またはそれらのあらゆる組合せである。別の具体的な実施形態において、前記胎盤接着性
細胞は、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD34、CD38、CD45
、CD10、CD29、CD44、CD54、CD73、CD80、CD
86、CD90、CD105、CD117、CD133、CD200、KD
(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR、または
プログラム細胞死-1リガンド(PDL1)である。
【0018】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、フローサイトメトリーによって検出可
能な、ABC-pであるか、もしくは加えてABC-pであるか、または例えばRT
-PCRによって決定可能な、OCT-4(POU5F1)であり、ABC-pは、
胎盤特異的なABC輸送体タンパク質(乳がん耐性タンパク質(BCRP)およびミトキ
サントロン耐性タンパク質(MXR)としても公知)である。別の実施形態において、本
明細書に記載される胎盤接着性細胞のいずれかは、加えて、例えばフローサイトメトリー
によって決定可能な、SSEA3またはSSEA4であり、SSEA3は、ステージ
特異的胎児抗原3であり、SSEA4は、ステージ特異的胎児抗原4である。別の実施形
態において、本明細書に記載される胎盤接着性細胞のいずれかは、加えて、SSEA3
およびSSEA4である。
【0019】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、加えて、MHC-I(例えば、HL
A-A、B、C)、MHC-II(例えば、HLA-DP、DQ、DR)またはH
LA-Gの1つまたは複数である。別の実施形態において、本明細書に記載される胎盤
接着性細胞のいずれかは、加えて、MHC-I(例えば、HLA-A、B、C)、M
HC-II(例えば、HLA-DP、DQ、DR)およびHLA-Gのそれぞれで
ある。
【0020】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、CD34、CD10、CD105
、CD200細胞であり、加えてCD29、CD38、CD44、CD54
、CD80、CD86、SH3またはSH4の1つまたは複数である。別の実施
形態において、胎盤接着性細胞は、加えて、CD44である。別の実施形態において、
CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、加えて、CD
13、CD29、CD33、CD38、CD44、CD45、CD54
CD62E、CD62L、CD62P、SH3(CD73)、SH4(CD
73)、CD80、CD86、CD90、SH2(CD105)、CD10
6/VCAM、CD117、CD144/VE-カドヘリンlow、CD184/C
XCR4、CD133、OCT-4、SSEA3、SSEA4、ABC-p
、KDR(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR
HLA-G、もしくはプログラム細胞死-1リガンド(PDL1)+の1つまたは複数
、またはそれらのあらゆる組合せである。別の実施形態において、CD34、CD10
、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、加えて、CD13、CD29
CD33、CD38、CD44、CD45、CD54/ICAM、CD62E
、CD62L、CD62P、SH3(CD73)、SH4(CD73)、
CD80、CD86、CD90、SH2(CD105)、CD106/VCA
、CD117、CD144/VE-カドヘリンdim、CD184/CXCR4
、CD133、OCT-4、SSEA3、SSEA4、ABC-p、KDR
(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR、HLA-G
、およびプログラム細胞死-1リガンド(PDL1)である。
【0021】
本明細書で開示された方法の他の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、C
D200およびHLA-G;CD73、CD105、およびCD200;CD
200およびOCT-4;CD73、CD105およびHLA-G;CD73
およびCD105;もしくはOCT-4;またはそれらのあらゆる組合せである。
【0022】
本明細書で開示された方法のある特定の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞
は、CD10、CD29、CD34、CD38、CD44、CD45、CD
54、CD90、SH2、SH3、SH4、SSEA3、SSEA4、O
CT-4、MHC-IまたはABC-pの1つまたは複数であり、ABC-pは、
胎盤特異的なABC輸送体タンパク質(乳がん耐性タンパク質(BCRP)およびミトキ
サントロン耐性タンパク質(MXR)としても公知)である。別の実施形態において、単
離された胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD34、CD38、CD4
、CD45、CD54、CD90、SH2、SH3、SH4、SSEA
、SSEA4、およびOCT-4である。別の実施形態において、単離された胎
盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD34、CD38、CD45、CD
54、SH2、SH3、およびSH4である。別の実施形態において、単離され
た胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD34、CD38、CD45
CD54、SH2、SH3、SH4およびOCT-4である。別の実施形態に
おいて、単離された胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD34、CD38
、CD44、CD45、CD54、CD90、MHC-1、SH2、SH
、SH4である。別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、OCT-
およびABC-pである。別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、
SH2、SH3、SH4およびOCT-4である。別の実施形態において、単離
された胎盤接着性細胞は、OCT-4、CD34、SSEA3、およびSSEA4
である。具体的な実施形態において、前記OCT-4、CD34、SSEA3
およびSSEA4細胞は、加えて、CD10、CD29、CD34、CD44
、CD45、CD54、CD90、SH2、SH3、およびSH4である。
別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、OCT-4およびCD34
あり、SH3またはSH4のいずれかである。別の実施形態において、単離された胎
盤接着性細胞は、CD34であり、CD10、CD29、CD44、CD54
、CD90、またはOCT-4のいずれかである。ある特定の実施形態において、単
離された胎盤接着性細胞は、CD10、CD34、CD105およびCD200
である。
【0023】
本明細書に記載される方法で使用される胎盤接着性細胞の上記の特徴のいずれかのある
特定の実施形態において、細胞マーカー(例えば、表面抗原分類または免疫原性マーカー
)の発現は、フローサイトメトリーによって決定可能である。ある特定の他の実施形態に
おいて、細胞マーカーの発現は、RT-PCRによって決定可能である。
【0024】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞、例えば、CD10、CD34、CD
105、CD200細胞は、等しい数の骨髄由来間葉系幹細胞(間葉幹細胞)より検
出可能に高いレベルで1つまたは複数の遺伝子を発現し、前記1つまたは複数の遺伝子は
、ACTG2、ADARB1、AMIGO2、ARTS-1、B4GALT6、BCHE
、C11orf9、CD200、COL4A1、COL4A2、CPA4、DMD、DS
C3、DSG2、ELOVL2、F2RL1、FLJ10781、GATA6、GPR1
26、GPRC5B、ICAM1、IER3、IGFBP7、IL1A、IL6、IL1
8、KRT18、KRT8、LIPG、LRAP、MATN2、MEST、NFE2L3
、NUAK1、PCDH7、PDLIM3、PKP2、RTN1、SERPINB9、S
T3GAL6、ST6GALNAC5、SLC12A8、TCF21、TGFB2、VT
N、およびZC3H12Aの1つまたは複数であり、前記骨髄由来間葉系幹細胞は、前記
単離された胎盤接着性細胞が受けた継代数に等しい回数の培養における継代を受けている
。ある特定の実施形態において、前記1つまたは複数の遺伝子の前記発現は、例えば、R
T-PCR、または例えばU133-Aマイクロアレイ(Affymetrix)を使用
するマイクロアレイ分析によって決定される。別の実施形態において、前記単離された胎
盤接着性細胞は、60%DMEM-LG(例えばGibcoより)および40%MCDB
-201(例えばSigmaより);2%ウシ胎児血清(例えばHyclone Lab
s.より);1×インスリン-トランスフェリン-セレニウム(ITS);1×リノール
酸-ウシ血清アルブミン(LA-BSA);10-9Mデキサメタゾン(例えばSigm
aより);10-4Mアスコルビン酸2-リン酸(例えばSigmaより);上皮増殖因
子10ng/mL(例えばR&D Systemsより);および血小板由来増殖因子(
PDGF-BB)10ng/mL(例えばR&D Systemsより)を含む培地中で
、約3から約35回の集団倍加で、例えばおよそ約3から約35回の集団倍加で培養した
場合、前記1つまたは複数の遺伝子を発現する。別の実施形態において、前記単離された
胎盤接着性細胞は、60%DMEM-LG(例えばGibcoより)および40%MCD
B-201(例えばSigmaより);2%ウシ胎児血清(例えばHyclone La
bs.より);1×インスリン-トランスフェリン-セレニウム(ITS);1×リノー
ル酸-ウシ血清アルブミン(LA-BSA);10-9Mデキサメタゾン(例えばSig
maより);10-4Mアスコルビン酸2-リン酸(Sigma);上皮増殖因子10n
g/mL(例えばR&D Systemsより);および血小板由来増殖因子(PDGF
-BB)10ng/mL(例えばR&D Systemsより)を含む培地中で、約3か
ら約35回の集団倍加培養した場合、前記1つまたは複数の遺伝子を発現する。
【0025】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、CD200およびARTS1(1型腫
瘍壊死因子のアミノペプチダーゼレギュレーター);ARTS-1およびLRAP(白血
球由来アルギニンアミノペプチダーゼ);IL6(インターロイキン-6)およびTGF
B2(トランスフォーミング増殖因子、ベータ2);IL6およびKRT18(ケラチン
18);IER3(前初期応答3)、MEST(中胚葉特異的転写物ホモログ)およびT
GFB2;CD200およびIER3;CD200およびIL6;CD200およびKR
T18;CD200およびLRAP;CD200およびMEST;CD200およびNF
E2L3(核内因子(赤血球由来2)様3);またはCD200およびTGFB2を、等
しい数の骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)より検出可能に高いレベルで発現し、前
記骨髄由来間葉系幹細胞は、前記単離された胎盤接着性細胞が受けた継代数に等しい回数
の培養における継代を受けている。他の実施形態において、胎盤接着性細胞は、ARTS
-1、CD200、IL6およびLRAP;ARTS-1、IL6、TGFB2、IER
3、KRT18およびMEST;CD200、IER3、IL6、KRT18、LRAP
、MEST、NFE2L3、およびTGFB2;ARTS-1、CD200、IER3、
IL6、KRT18、LRAP、MEST、NFE2L3、およびTGFB2;またはI
ER3、MESTおよびTGFB2を、等しい数の骨髄由来間葉系幹細胞BM-MSCよ
り検出可能に高いレベルで発現し、前記骨髄由来間葉系幹細胞は、前記単離された胎盤接
着性細胞が受けた継代数に等しい回数の培養における継代を受けている。
【0026】
ヒト細胞が使用される場合、遺伝子記号は、全体にわたり、ヒト配列を指し、当業者に
周知の通り、代表的な配列は、文献またはGenBankで見出すことができる。配列に
対するプローブは、公開された形で入手可能な配列によって、または商業的な供給源を介
して、例えば、特異的なTAQMAN(登録商標)プローブまたはTAQMAN(登録商
標)血管新生アレイ(Applied Biosystems、パーツ番号437871
0)を介して決定することができる。
【0027】
様々な実施形態において、本明細書で開示された方法において有用な前記単離された胎
盤接着性細胞、例えば胎盤幹細胞または胎盤複能性細胞は、細胞の集団中に含有され、そ
の細胞の、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45
%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95
%、98%または99%が、前記単離された胎盤接着性細胞である。ある特定の他の実施
形態において、前記細胞の集団中の胎盤接着性細胞は、母体の遺伝子型を有する細胞を実
質的に含まず、例えば、前記集団中の胎盤接着性細胞の、少なくとも40%、45%、5
0%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、9
8%または99%が胎児の遺伝子型を有し、すなわち胎児起源である。ある特定の他の実
施形態において、前記胎盤接着性細胞を含む細胞の集団は、母体の遺伝子型を有する細胞
を実質的に含まず、例えば、前記集団中の細胞の、少なくとも40%、45%、50%、
55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%ま
たは99%が胎児の遺伝子型を有し、すなわち胎児起源である。ある特定の他の実施形態
において、前記胎盤接着性細胞を含む細胞の集団は、母体の遺伝子型を有する細胞を含み
、例えば、前記集団中の細胞の、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、
35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、
85%、90%、95%、98%または99%が母体の遺伝子型を有し、すなわち母体起
源である。
【0028】
本明細書における胎盤接着性細胞(例えば、胎盤接着性細胞)の実施形態のいずれかの
実施形態において、胎盤接着性細胞は、胚様体の形成を可能にする条件下で前記集団が培
養される場合、例えば増殖条件下で培養される場合、前記単離された胎盤接着性細胞を含
む胎盤接着性細胞の集団における1つまたは複数の胚様体の形成を促進する)。
【0029】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される方法において有用な胎盤接着性細
胞は、免疫学的局在法によって検出可能な場合、4から21日にわたり1から100ng
/mLのVEGFに曝露した後、CD34を発現しない。具体的な実施形態において、前
記胎盤接着性細胞は、組織培養プラスチックへの接着性を有する。別の具体的な実施形態
において、前記細胞の集団は、例えばMATRIGEL(商標)などの基材上で、血管内
皮増殖因子(VEGF)、上皮性増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)
または塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)などの血管新生因子の存在下で培養される
場合、新芽または管状の構造を形成する。
【0030】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、VEGF、HGF、IL-8、MCP
-3、FGF2、フォリスタチン、G-CSF、EGF、ENA-78、GRO、IL-
6、MCP-1、PDGF-BB、TIMP-2、uPAR、またはガレクチン-1の1
つもしくは複数または全てを、例えば1つまたは複数の細胞が増殖する培養培地に分泌す
る。別の実施形態において、胎盤接着性細胞は、低酸素状態下(例えば、約5%O未満
)で、酸素正常条件下(例えば、約20%または約21%O)と比較して増加したレベ
ルのCD202b、IL-8および/またはVEGFを発現する。
【0031】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、内皮細胞の集団において、前記胎盤由
来の接着性細胞と接触させて、新芽または管状の構造の形成をもたらすことができる。具
体的な実施形態において、例えば胎盤のコラーゲンまたはMATRIGEL(商標)など
の基材中またはその上で、例えばI型ならびにIV型コラーゲンなどの細胞外マトリック
スタンパク質、および/または血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮性増殖因子(EGF
)、血小板由来増殖因子(PDGF)もしくは塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)な
どの血管新生因子の存在下で少なくとも4日間培養される場合、胎盤由来の血管新生細胞
は、ヒト内皮細胞と共培養されて、新芽または管状の構造を形成するか、または内皮細胞
の新芽を支持する。
【0032】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法で使用される胎盤接着性細胞は、ヒトである。
【0033】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、レシピエントにとって自己である。
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載される
処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞は、レシピエントにとって異種である。
【0034】
本明細書で提供される方法において有用な胎盤接着性細胞の細胞表面、分子および遺伝
子マーカーは、以下のセクション5.3で詳細に記載される。
【0035】
ある特定の実施形態において、リンパ管形成を誘導する方法および本明細書に記載され
る処置方法に従って使用される胎盤接着性細胞、前記単離された胎盤接着性細胞は、前記
個体に1回投与される。別の具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞
は、2回またはそれより多くの別々の投与で前記個体に投与される。別の具体的な実施形
態において、前記投与は、前記個体1キログラム当たり、約1×10から1×10
の間の単離された胎盤接着性細胞、例えば胎盤接着性細胞を投与することを含む。別の具
体的な実施形態において、前記投与は、前記個体1キログラム当たり、約1×10から
1×10個の間の単離された胎盤接着性細胞を投与することを含む。別の具体的な実施
形態において、前記投与は、前記個体1キログラム当たり、約1×10から1×10
個の間の単離された胎盤接着性細胞を投与することを含む。別の具体的な実施形態におい
て、前記投与は、前記個体1キログラム当たり、約1×10から1×10個の間の単
離された胎盤接着性細胞を投与することを含む。他の具体的な実施形態において、前記投
与は、前記個体1キログラム当たり、約1×10から約2×10個の間の単離された
胎盤接着性細胞;前記個体1キログラム当たり、約2×10から約3×10個の間の
単離された胎盤接着性細胞;前記個体1キログラム当たり、約3×10から約4×10
個の間の単離された胎盤接着性細胞;前記個体1キログラム当たり、約4×10から
約5×10個の間の単離された胎盤接着性細胞;前記個体1キログラム当たり、約5×
10から約6×10個の間の単離された胎盤接着性細胞;前記個体1キログラム当た
り、約6×10から約7×10個の間の単離された胎盤接着性細胞;前記個体1キロ
グラム当たり、約7×10から約8×10個の間の単離された胎盤接着性細胞;前記
個体1キログラム当たり、約8×10から約9×10個の間の単離された胎盤接着性
細胞;または前記個体1キログラム当たり、約9×10から約1×10個の間の単離
された胎盤接着性細胞を投与することを含む。別の具体的な実施形態において、前記投与
は、前記個体1キログラム当たり、約1×10から約2×10個の間の単離された胎
盤接着性細胞を前記個体に投与することを含む。別の具体的な実施形態において、前記投
与は、前記個体1キログラム当たり、約1.3×10から約1.5×10個の間の単
離された胎盤接着性細胞を前記個体に投与することを含む。別の具体的な実施形態におい
て、前記投与は、前記個体1キログラム当たり、約3×10個までの単離された胎盤接
着性細胞を前記個体に投与することを含む。具体的な実施形態において、前記投与は、約
5×10から約2×10個の間の単離された胎盤接着性細胞を前記個体に投与するこ
とを含む。別の具体的な実施形態において、前記投与は、約20ミリリットルの溶液中の
約150×10個の単離された胎盤接着性細胞を前記個体に投与することを含む。
【0036】
具体的な実施形態において、前記投与は、約5×10から約2×10個の間の単離
された胎盤接着性細胞を前記個体に投与することを含み、前記細胞は、10%のデキスト
ラン、例えばデキストラン-40、5%のヒト血清アルブミン、および任意選択で免疫抑
制剤を含む溶液に含有される。
【0037】
別の具体的な実施形態において、前記投与は、約5×10から3×10個の間の単
離された胎盤接着性細胞を静脈内投与することを含む。具体的な実施形態において、前記
投与は、約9×10個の単離された胎盤接着性細胞または約1.8×10個の単離さ
れた胎盤接着性細胞を静脈内投与することを含む。別の具体的な実施形態において、前記
投与は、約5×10から1×10個の間の単離された胎盤接着性細胞を皮下投与する
ことを含む。別の具体的な実施形態において、前記投与は、約9×10個の単離された
胎盤接着性細胞を皮下投与することを含む。
【0038】
本明細書で提供される方法で使用される胎盤接着性細胞は、ある特定の実施形態におい
て、血管新生を促進する1種または複数のタンパク質を産生するように遺伝子操作されて
いてもよい。ある特定の実施形態において、血管新生を促進する前記タンパク質は、肝細
胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)(例えば、VEGFD)、線維芽
細胞増殖因子(FGF)(例えば、FGF2)、アンギオゲニン(ANG)、上皮増殖因
子(EGF)、上皮由来好中球活性化タンパク質78(ENA-78)、フォリスタチン
、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、増殖制御発癌遺伝子(ongogene)タ
ンパク質(GRO)、インターロイキン-6(IL-6)、IL-8、レプチン、単球走
化性タンパク質-1(MCP-1)、MCP-3、血小板由来増殖因子サブユニット(s
ubmunit)B(PDGFB)、ランテス、トランスフォーミング増殖因子ベータ1
(TGF-β1)、トロンボポイエチン(thrombopoitein)(Tpo)、
メタロプロテイナーゼ組織阻害剤1(TIMP1)、TIMP2、および/またはウロキ
ナーゼ型プラスミノゲン活性化因子受容体(uPAR)の1つまたは複数である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
4.図面の簡単な説明
図1】胎盤由来の接着性細胞による選択された血管新生タンパク質の分泌を示す図である。
図2】ヒト内皮細胞(HUVEC)の管形成に対する胎盤由来の接着性細胞の馴化培地の血管新生作用を示す図である。
図3】ヒト内皮細胞の移動に対する胎盤由来の接着性細胞の馴化培地の血管新生作用を示す図である。
図4】ヒト内皮細胞の増殖に対する胎盤由来の接着性細胞の馴化培地の作用を示す図である。
図5】HUVECおよび胎盤由来の接着性細胞の管形成を示す図である。
図6】低酸素および酸素正常条件下での胎盤由来の接着性細胞によるVEGFおよびIL-8の分泌を示す図である。
図7】ニワトリ(chick)漿尿膜血管新生モデルにおける血管新生に対する胎盤接着性細胞の陽性の作用を示す図である。bFGF:塩基性線維芽細胞増殖因子(陽性対照)。MDAMB231:血管新生乳がん細胞株(陽性対照)。Y軸:血管形成の程度。
図8】ニワトリ漿尿膜血管新生モデルにおける血管新生に対する胎盤接着性細胞の陽性の作用の馴化培地(上清)を示す図である。bFGF:塩基性線維芽細胞増殖因子(陽性対照)。MDAMB231:血管新生乳がん細胞株(陽性対照)。Y軸:血管形成の程度。
図9A】db/dbマウスでの片側後肢虚血(HLI)モデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、動脈形成を強化することを示す図であって、結紮後の14、28および42日におけるレーザードップラー分析(n=9)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01を示す。N=動物の数。
図9B】db/dbマウスでの片側後肢虚血(HLI)モデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、動脈形成を強化することを示す図であって、HLI後の42日における大腿部におけるCD31血管の定量(n=4)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01を示す。N=動物の数。
図9C】db/dbマウスでの片側後肢虚血(HLI)モデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、動脈形成を強化することを示す図であって、HLI後の42日における大腿部におけるαSMA血管の定量(n=4)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01を示す。N=動物の数。
図9D】db/dbマウスでの片側後肢虚血(HLI)モデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、動脈形成を強化することを示す図であって、HLI後の42日における大腿部におけるαSMA血管のサイズ分布(n=4)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01を示す。N=動物の数。
図9E】db/dbマウスでの片側後肢虚血(HLI)モデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、動脈形成を強化することを示す図であって、HLI後の4、28および42日における肢の機能の半定量的評価(n=9)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01を示す。N=動物の数。
図9F】db/dbマウスでの片側後肢虚血(HLI)モデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、動脈形成を強化することを示す図である。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01を示す。N=動物の数。
図10A】db/dbマウスでの片側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、M2マクロファージの分化を促進することを示す図であって、HLI後の7、14および28日におけるCD68マクロファージの定量(n=4)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005;****、p<0.001を示す。N=動物の数。
図10B】db/dbマウスでの片側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、M2マクロファージの分化を促進することを示す図であって、HLI後の7、14および28日におけるCD68+Arg1+マクロファージの定量(n=4)。
図10C-E】db/dbマウスでの片側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、M2マクロファージの分化を促進することを示す図であって、LPS、IL-4および胎盤接着性細胞との48時間の共培養の前および後における、ヒトマクロファージのCD206(10C)、HLA-I(10D)、およびCD80(10E)表面表現型。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005;****、p<0.001を示す。N=動物の数。
図11A】CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞が媒介する動脈形成はT細胞依存性であることを示す図であって、野生型(WT)およびHLIモデルのヌードBalb/cマウス(WT:n=15;ヌード:n=9)におけるHLI後の14、28および42日におけるレーザードップラー分析。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005;****、p<0.001を示す。N=動物の数。
図11B】CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞が媒介する動脈形成はT細胞依存性であることを示す図であって、HLI後の42日における大腿部におけるCD31血管の定量(n=5)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005;****、p<0.001を示す。N=動物の数。
図11C】CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞が媒介する動脈形成はT細胞依存性であることを示す図であって、HLI後の42日における大腿部におけるαSMA血管の定量(n=5)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005;****、p<0.001を示す。N=動物の数。
図11D】CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞が媒介する動脈形成はT細胞依存性であることを示す図であって、T細胞再構成ヌードBalb/c HLIモデルマウスにおけるHLI後の7、14、21、28および35日におけるレーザードップラー分析(n=12)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005;****、p<0.001を示す。N=動物の数。
図12A】CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞によって誘導されたM2マクロファージの分化はT細胞依存性であることを示す図であって、HLI後の7日における大腿部におけるCD68+総マクロファージの定量(n=5)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005を示す。N=動物の数。
図12B】CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞によって誘導されたM2マクロファージの分化はT細胞依存性であることを示す図であって、HLI後の7日における大腿部におけるCD68Arg1M2マクロファージの定量(n=5)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005を示す。N=動物の数。
図13A】db/dbマウスでの両側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、全身性の動脈形成作用を有することを示す図であって、第1および第2の損傷した後肢におけるレーザードップラー分析(n=13)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005を示す。N=動物の数。
図13B】db/dbマウスでの両側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、全身性の動脈形成作用を有することを示す図であって、X線血管撮影法に基づく血管の定量(n=5)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005を示す。N=動物の数。
図13C-D】db/dbマウスでの両側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、全身性の動脈形成作用を有することを示す図であって、代表的なX線血管撮影写真。
図13E】db/dbマウスでの両側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、全身性の動脈形成作用を有することを示す図であって、第1の傷害後の64日における大腿部におけるCD31血管の定量(媒体:n=9;胎盤接着性細胞:n=13)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005を示す。N=動物の数。
図13F】db/dbマウスでの両側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、全身性の動脈形成作用を有することを示す図であって、第1の傷害後の64日における大腿部におけるαSMA血管の定量(媒体:n=9;胎盤接着性細胞:n=13)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005を示す。N=動物の数。
図13G】db/dbマウスでの両側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、全身性の動脈形成作用を有することを示す図であって、第1の傷害後の64日における大腿部におけるαSMA大血管のサイズ分布(媒体:n=9;胎盤接着性細胞:n=13)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005を示す。N=動物の数。
図13H】db/dbマウスでの両側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、全身性の動脈形成作用を有することを示す図であって、第1および第2の損傷した後肢におけるレーザードップラー分析(n=18)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005を示す。N=動物の数。
図13I】db/dbマウスでの両側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、全身性の動脈形成作用を有することを示す図であって、X線血管撮影法に基づく血管の定量(n=5)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005を示す。N=動物の数。
図13J】db/dbマウスでの両側HLIモデルにおいて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、全身性の動脈形成作用を有することを示す図であって、第2の傷害後の7日におけるCD68+Arg1+マクロファージの定量(n=4)。平均±s.e.m.、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.005を示す。N=動物の数。
【発明を実施するための形態】
【0040】
5.詳細な説明
5.1 定義
本明細書で使用される場合、用語「約」は、述べられた数値に対して言及される場合、
述べられていた数値のプラスまたはマイナス10%以内の値を示す。
【0041】
本明細書で使用されるように、用語「血管新生」は、本明細書に記載される胎盤由来の
接着性細胞に対して述べられる場合、細胞が血管または血管様の新芽を形成できること、
または細胞が、別の細胞の集団、例えば内皮細胞において、血管新生(例えば、血管また
は血管様構造の形成)を促進することができることを意味する。
【0042】
用語「血管新生」は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、内皮細胞
の活性化、移動、増殖、マトリックスのリモデリングおよび細胞の安定化を含む血管形成
のプロセスを指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「~由来(の)」は、何かから単離されているかまた
はそれ以外の方法で精製されていることを意味する。例えば、胎盤由来の接着細胞は、胎
盤から単離されている。用語「~由来(の)」は、組織、例えば胎盤から直接的に単離さ
れた細胞から培養される細胞、および初代単離物から培養または拡張された細胞を包含す
る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「免疫学的局在法」は、例えばフローサイトメトリー、蛍
光活性化細胞分類法、磁気セルソーティング、in situハイブリダイゼーション、
免疫組織化学的方法、または同種のもので、免疫タンパク質、例えば抗体またはその断片
を使用する、化合物、例えば細胞マーカーの検出を意味する。
【0045】
用語「SH2」は、本明細書で使用される場合、細胞マーカーCD105上のエピトー
プと結合する抗体を指す。したがってSH2と称される細胞は、CD105である。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「SH3」および「SH4’」は、細胞マーカーCD
73上に提示されるエピトープと結合する抗体を指す。したがって、SH3および/ま
たはSH4と称される細胞は、CD73である。
【0047】
胎盤は、その中で発達する胎児の遺伝子型を有するが、妊娠中において母体の組織とも
緊密に物理的接触している。したがって、用語「胎児の遺伝子型」は、本明細書で使用さ
れる場合、胎児の遺伝子型、例えば、胎児を身ごもっていた母親の遺伝子型とは異なり、
本明細書に記載されるようにして単離された特定の胎盤接着性細胞を得た胎盤に関連する
胎児の遺伝子型を意味する。用語「母体の遺伝子型」は、本明細書で使用される場合、胎
児を身ごもっていた母親の遺伝子型、例えば、本明細書に記載されるようにして単離され
た特定の胎盤接着性細胞を得た胎盤に関連する胎児を身ごもっていた母親の遺伝子型を意
味する。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「単離された細胞」、例えば、「単離された胎盤細胞
」、「単離された胎盤幹細胞」などは、幹細胞の由来となる組織、例えば胎盤の他の異な
る細胞から実質的に分離されている細胞を意味する。幹細胞に天然に付随する細胞、例え
ば非幹細胞、または異なるマーカープロファイルを提示する幹細胞の少なくとも50%、
60%、70%、80%、90%、95%、または少なくとも99%が、例えば幹細胞の
収集および/または培養中に幹細胞から除去される場合、細胞は「単離されている」。
【0049】
本明細書で使用される場合、「複能性」は、細胞を指す場合、細胞が、必ずしも全てで
はないがいくつかのタイプの体細胞に、または全てではないがいくつかのタイプの体細胞
の特徴を有する細胞に、または3つの胚葉のうち1種または複数の細胞に分化する能力を
有することを意味する。ある特定の実施形態において、例えば、以下のセクション5.3
に記載されるように、神経原性、軟骨形成および/または骨形成細胞の特徴を有する細胞
に分化する能力を有する単離された胎盤細胞(胎盤接着性細胞)は、複能性細胞である。
【0050】
用語「単離された細胞の集団」は、本明細書で使用される場合、細胞の集団の由来とな
る組織、例えば胎盤の他の細胞から実質的に分離された細胞の集団を意味する。
【0051】
用語「胎盤接着性細胞」は、本明細書で使用される場合、初代単離物として、または初
代培養後の継代数に関係なく培養細胞のいずれかとして、哺乳類の胎盤から単離される組
織培養プラスチック接着性の細胞を意味し、例えば、以下のセクション5.3に記載され
る胎盤接着性細胞である。しかしながら、用語「胎盤接着性細胞」は、本明細書で使用さ
れる場合、栄養膜、栄養膜細胞層、合胞栄養芽層(syncitiotrophobla
st)、血管芽細胞、血管芽細胞、胚性生殖細胞、胚性幹細胞、胚盤胞の内部細胞塊から
得られた細胞、または後期胚の生殖巣堤から得られた細胞、例えば、胚性生殖細胞を指さ
ず、本明細書で提供される方法で使用される胎盤接着性細胞は、それらではない。本明細
書に記載される胎盤接着性細胞、例えば胎盤接着性細胞はまた、その開示が参照によりそ
の全体が組み入れられる「羊膜由来の血管新生細胞(Amnion Derived A
ngiogenic Cells)」という名称の特許文献1に記載の羊膜由来の接着性
細胞でもない。細胞が、幹細胞の特性、例えば、1つまたは複数のタイプの幹細胞に関連
するマーカーまたは遺伝子発現プロファイル;培養中に少なくとも10~40回複製する
能力、および3つの胚葉の1つまたは複数の分化細胞の特徴を示す細胞に分化する能力を
示す場合、その細胞は「幹細胞」とみなされる。本明細書において別段の規定がない限り
、用語「胎盤」は、臍帯を含む。本明細書で開示された単離された胎盤接着性細胞は、あ
る特定の実施形態において、in vitroにおいて分化条件下で分化するか、in
vivoにおいて分化するか、またはその両方である。
【0052】
本明細書で使用される場合、特定のマーカーがバックグラウンドを超えて検出可能であ
る場合、胎盤細胞はそのマーカーに関して「陽性」である。特定のマーカーの検出は、例
えば、抗体の使用、またはマーカーをコードする遺伝子もしくはmRNAの配列に基づく
オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーのいずれかによって達成することができる
。例えば、CD73は胎盤接着性細胞においてバックグラウンドより多い検出可能な量で
(例えばアイソタイプ対照と比較して)検出可能であるため、胎盤細胞は、例えばCD7
3に関して陽性である。また、マーカーが、細胞を少なくとも1つの他の細胞型から区別
するのに使用できる場合、または細胞によって提示または発現される場合に細胞を選択し
たりまたは単離したりするのに使用できる場合、細胞はそのマーカーに関して陽性でもあ
る。例えば抗体媒介性検出の文脈において、「陽性」は、特定の細胞表面マーカーが存在
することを示す場合、そのマーカーに特異的な抗体、例えば蛍光標識された抗体を使用し
てマーカーを検出できることを意味し、「陽性」はまた、例えば血球計算器において、バ
ックグラウンドを超えて検出可能なシグナルを産生する量でマーカーを表示する細胞も指
す。例えば、細胞がCD200に特異的な抗体で検出可能に標識されており、抗体からの
シグナルが、対照(例えば、バックグラウンドまたはアイソタイプ対照)のシグナルより
検出可能に高い場合、細胞は、「CD200」である。逆に言えば、同じ文脈における
「陰性」は、対照(例えば、バックグラウンドまたはアイソタイプ対照)と比較して、そ
のマーカーに特異的な抗体を使用しても細胞表面マーカーが検出可能ではないことを意味
する。例えば、細胞が、対照(例えば、バックグラウンドまたはアイソタイプ対照)より
大きい程度に、CD34に特異的な抗体で再現性よく検出可能に標識されていない場合、
細胞は、「CD34」である。抗体を使用して検出されない、または検出不可能なマー
カーは、類似の方式で、適切な対照を使用して、陽性であるかまたは陰性であるかが決定
される。例えばRT-PCR、スロットブロットなどのRNAを検出する方法によって決
定される場合、細胞または細胞の集団からのRNAで検出されるOCT-4 RNAの量
が、バックグラウンドより多く検出可能である場合、その細胞または細胞の集団は、OC
T-4であると決定することができる。本明細書において別段の規定がない限り、表面
抗原分類(「CD」)マーカーは、抗体を使用して検出される。ある特定の実施形態にお
いて、RT-PCRを使用してOCT-4mRNAが検出可能である場合、OCT-4が
存在すると決定され、細胞は「OCT-4」である。
【0053】
本明細書で使用される場合、「低い」という表示は、フローサイトメトリーで検出可能
なマーカーの発現に対して述べられる場合、試験された細胞の10%未満でマーカーが発
現されること、または例えばフローサイトメトリーにおいて、マーカーに起因する可能性
がある蛍光が、バックグラウンドより1log未満であることを意味する。
【0054】
「処置する」は、本明細書で使用される場合、疾患、障害または状態、またはそれらの
あらゆるパラメーターもしくは症状の、改善、向上、重症度の軽減、または時間経過の低
減を含む。
【0055】
5.2 リンパ浮腫およびリンパ浮腫によって引き起こされる疾患または障害の処置
リンパ浮腫またはリンパ浮腫によって引き起こされる疾患もしくは障害を処置する方法
であって、有効量の接着性の胎盤接着性細胞、例えば、以下のセクション5.3に記載さ
れる胎盤接着性細胞を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。胎盤接着性細
胞は、リンパ系における、内皮細胞および内皮細胞集団、ならびに上皮細胞および上皮細
胞集団の増殖を支持することができる。
【0056】
ある特定の実施形態において、本方法は、一方もしくは両方の脚の一部もしくは全体の
腫れ、一方もしくは両方の腕の一部もしくは全体の腫れ、腕もしくは脚のだるさもしくは
緊張、脚もしくは腕の非圧痛性の痘痕状浮腫、腕もしくは脚における動きの制限もしくは
動きを制限される感覚、腕もしくは脚における痛みもしくは不快感、皮内もしくは皮下の
感染、蜂巣炎、リンパ管炎、リンパ漏、膿痂疹、罹患した腕もしくは脚の皮膚の紅斑、陽
性のシュテンマーサイン、または罹患した腕もしくは脚の皮膚の硬化および/もしくは肥
厚化などの、リンパ浮腫に関連するまたはリンパ浮腫によって引き起こされる症状または
続発症の1つまたは複数の、前記胎盤接着性細胞の投与前の個体と比較した向上に十分な
量および時間で、胎盤接着性細胞を前記個体に投与することを含む。ある特定の実施形態
において、リンパ浮腫は、ステージ0、ステージ1、ステージ2、またはステージ3のリ
ンパ浮腫である。ある特定の他の実施形態において、リンパ浮腫は、脂肪性浮腫に属する
【0057】
リンパ浮腫のステージ:リンパ浮腫は、一般的に、4つのステージで進行する。ステー
ジ0において、タンパク質が皮下に蓄積し始め、罹患した肢または領域において、局所的
な水分の蓄積とそれに付随するだるさまたは疲労の感覚を引き起こす。ステージ1のリン
パ浮腫において、足および/または手(体から最も遠くにある肢の一部)が腫れ始め、腫
れぼったい外観を呈する;くぼみまたは「圧痕」が明らかになる場合がある;皮膚を指で
押した場合でも小さい穴の形が残る。これは、「圧痕性浮腫」として知られている。この
ステージで、浮腫は、日中と比較して夜間で低減することがあり、罹患した肢を上にあげ
ることにより、浮腫が低減する可能性がある。ステージ2のリンパ浮腫では、肢の腫れが
スポンジのような硬さになり、圧痕は、ステージ1と比較して低減するかまたはなくなる
。リンパ浮腫は、上にあげても応答しない。この段階での腫れは、皮下の線維形成および
瘢痕組織に関連するかまたはそれによって引き起こされる。リンパうっ滞性象皮病として
も公知のステージ3において、罹患した肢は、かなり腫れた状態になる。皮膚は、典型的
には、乾燥して剥がれ落ちやすくなり、過角化症および硬化が進行する。皮膚から体液が
漏れることがあり、体液が充填された疱疹が形成されることもあり、経膚感染がよく起こ
る。
【0058】
接着性の胎盤接着性細胞、またはこのような細胞を含む治療用組成物の、それを必要と
するリンパ浮腫を有する個体への投与は、例えば、移植、埋め込み(例えば、細胞そのも
のまたはマトリックスと細胞との組合せの一部としての細胞の)、注射(例えば、疾患ま
たは状態を有する部位に直接、例えば、心筋梗塞を起こした個体の心臓における虚血性部
位に直接)、点滴、カテーテルを介した送達、または細胞療法を提供するための当業界に
おいて公知の他のあらゆる手段によって達成することができる。
【0059】
一実施形態において、治療用細胞組成物は、それを必要とする個体に提供され、例えば
個体における1つまたは複数の部位に注射によって提供される。具体的な実施形態におい
て、治療用細胞組成物は、心腔内注射によって、例えば心臓における虚血領域に提供され
る。他の具体的な実施形態において、細胞は、心臓の表面上に注射されるか、隣接する領
域に注射されるか、またはより離れた領域にも注射される。好ましい実施形態において、
細胞は、罹患したまたは損傷した領域にホーミングさせることができる。
【0060】
胎盤接着性細胞は、細胞が治療上の有益と予想されるあらゆるときに、リンパ浮腫を有
する個体に投与することができる。ある特定の実施形態において、例えば、本発明の胎盤
接着性細胞または治療用組成物は、リンパ浮腫の診断から、1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21
、22、23、または24時間以内に、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
0、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23
、24、25、26、27、28、29、または30日以内に、または1、2、3、4、
5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月以内に、または1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10、11、12年以内に投与される。
【0061】
また、リンパ浮腫の処置で使用するためのキットも本明細書で提供される。キットは、
例えば薬学的に許容される担体と混合することによって薬学的に許容される形態で調製で
きる、胎盤接着性細胞を含む治療用細胞組成物、およびアプリケーターを使用説明書と共
に提供する。理想的には、キットは、野外または枕元で、例えば医師の診察室で使用する
ことができる。
【0062】
具体的な実施形態において、本明細書で提供される処置方法は、胎盤接着性細胞、例え
ば胎盤接着性細胞を含む治療用組成物を、リンパ浮腫を有する患者に投与することを含み
、治療用細胞組成物は、マトリックス-細胞複合体として投与される。ある特定の実施形
態において、マトリックスは、少なくとも細胞を含む、足場、好ましくは生体吸収性足場
である。
【0063】
この目的を達成するために、リンパ管形成経路に沿って幹細胞または前駆細胞の分化を
刺激する1つまたは複数の因子と接触させた、例えば、それの存在下でインキュベートま
たは培養した胎盤接着性細胞の集団がさらに本明細書で提供される。このような因子とし
ては、これらに限定されないが、増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、細胞生成物、脱
メチル化剤などの因子、およびリンパ管形成経路または系統に沿って例えば幹細胞の分化
を刺激することがその時点でわかっているかまたは後で決定される他の因子が挙げられる
【0064】
ある特定の実施形態において、胎盤接着性細胞は、in vitroにおいて、脱メチ
ル化剤、BMP(骨形成タンパク質)、FGF(線維芽細胞増殖因子)、Wnt因子タン
パク質、ヘッジホッグタンパク質、および/または抗Wnt因子の少なくとも1種を含む
因子の存在下で細胞を培養することによってリンパ管形成経路または系統に沿って分化さ
せてもよい。
【0065】
胎盤接着性細胞およびこのような細胞の集団は、リンパ浮腫またはリンパ浮腫の症状も
しくは後遺症を有する個体に、治療的または予防的に提供することができる。
【0066】
ある特定の実施形態において、治療有効量の、胎盤接着性細胞、例えば胎盤接着性細胞
を含む細胞の集団中の胎盤接着性細胞が、個体に投与される。具体的な実施形態において
、集団は、約50%の胎盤接着性細胞を含む。別の具体的な実施形態において、集団は、
実質的に均一な胎盤接着性細胞の集団である。他の実施形態において、集団は、少なくと
も約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%
、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%
または99%の胎盤接着性細胞を含む。
【0067】
胎盤接着性細胞は、細胞および別の治療剤、例えば、インスリン様増殖因子(IGF)
、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(F
GF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン
18(IL-8)、抗血栓剤(例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、また
はPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)、
抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体
抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤
、および/または血小板阻害剤)、抗アポトーシス剤(例えば、エリスロポイエチン(E
po)、Epo誘導体もしくは類似体、またはそれらの塩、トロンボポイエチン(Tpo
)、IGF-I、IGF-II、肝細胞増殖因子(HGF)、またはカスパーゼ阻害剤)
、抗炎症剤(例えば、p38MAPキナーゼ阻害剤、スタチン、IL-6阻害剤、IL-
1阻害剤、ペミロラスト、トラニラスト、レミケード、シロリムス、および/または非ス
テロイド系抗炎症性化合物(例えば、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、テポキサリ
ン、トルメチン、またはスプロフェン))、免疫抑制剤または免疫調節剤(例えば、カル
シニューリン阻害剤、例えばシクロスポリン、タクロリムス、mTOR阻害剤、例えばシ
ロリムスまたはエベロリムス;増殖抑制剤、例えばアザチオプリンおよび/またはミコフ
ェノール酸モフェチル;コルチコステロイド、例えば、プレドニゾロンまたはヒドロコル
チゾン;モノクローナル抗IL-2Rα受容体抗体などの抗体、バシリキシマブ、ダクリ
ズマブ(Daclizuma)、ポリクローナル抗T細胞抗体、例えば抗胸腺細胞グロブ
リン(ATG)、抗リンパ球グロブリン(ALG)、および/またはモノクローナル抗T
細胞抗体OKT3)、および/または抗酸化剤(例えば、プロブコール;ビタミンA、C
および/またはE、補酵素Q-10、グルタチオン、Lシステイン、N-アセチルシステ
イン、または抗酸化剤誘導体、前述のもののいずれかの類似体もしくは塩)を含む治療用
組成物の形態で個体に投与されてもよい。ある特定の実施形態において、胎盤接着性細胞
を含む治療用組成物は、1種または複数の追加の細胞型、例えば、成体の細胞(例えば、
線維芽細胞または内胚葉細胞)、幹細胞および/または前駆細胞をさらに含む。このよう
な治療剤および/または1種または複数の追加のタイプの細胞は、個々に、または2種ま
たはそれより多くのこのような化合物または薬剤と組み合わせて、それらを必要とする個
体に投与することができる。
【0068】
ある特定の実施形態において、処置しようとする個体は、哺乳動物である。具体的な実
施形態において、処置しようとする個体は、ヒトである。
【0069】
5.3 単離された胎盤接着性細胞および単離された胎盤細胞集団
循環系の疾患または障害を有する個体の処置において有用な、単離された胎盤接着性細
胞、例えば胎盤接着性細胞は、胎盤またはそれらの一部から入手可能な、組織培養基材に
接着し、複能性細胞または幹細胞の特徴を有するが栄養膜ではない細胞である。ある特定
の実施形態において、本明細書で開示された方法において有用な単離された胎盤接着性細
胞は、非胎盤細胞型に分化する能力を有する。
【0070】
本明細書で開示された方法において有用な単離された胎盤接着性細胞は、胎児または母
体起源のいずれでもよい(すなわち、それぞれ胎児または母親のいずれかの遺伝子型を有
していてもよい)。好ましくは、単離された胎盤接着性細胞および単離された胎盤接着性
細胞集団は、胎児起源である。成句「胎児起源」または「非母体起源」は、本明細書で使
用される場合、単離された胎盤接着性細胞または単離された胎盤接着性細胞集団が、胎児
に付随する、すなわち胎児の遺伝子型を有する臍帯または胎盤構造から得られることを示
す。本明細書で使用される場合、語句「母体起源」は、細胞または細胞の集団が、母親に
関連する胎盤の構造、例えば、母体の遺伝子型を有する胎盤の構造から得られることを示
す。単離された胎盤接着性細胞、例えば胎盤接着性細胞、または単離された胎盤接着性細
胞を含む細胞の集団は、もっぱら胎児または母体起源の単離された胎盤接着性細胞を含ん
でいてもよいし、または胎児および母体起源の両方の単離された胎盤接着性細胞の混成の
集団を含んでいてもよい。単離された胎盤接着性細胞、および単離された胎盤接着性細胞
を含む細胞の集団は、以下で論じられる形態学的な、マーカーの、および培養物の特徴に
より同定および選択することができる。ある特定の実施形態において、胎盤接着性細胞の
いずれか、例えば本明細書に記載される胎盤幹細胞または胎盤複能性細胞は、レシピエン
ト、例えば循環系の疾患または障害を有する個体にとって自己である。ある特定の他の実
施形態において、胎盤接着性細胞のいずれか、例えば本明細書に記載される胎盤幹細胞ま
たは胎盤複能性細胞は、レシピエント、例えば循環系の疾患または障害を有する個体にと
って異種である。
【0071】
5.3.1 物理的および形態学的な特徴
本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞は、初代培養または細胞培養で培養さ
れる場合、組織培養基材、例えば、組織培養容器表面(例えば、組織培養プラスチック)
に接着するか、または細胞外マトリックスまたはリガンド、例えばラミニン、コラーゲン
(例えば、天然または変性)、ゼラチン、フィブロネクチン、オルニチン、ビトロネクチ
ン、および細胞外膜タンパク質(例えば、MATRIGEL(商標)(BD Disco
very Labware、Bedford、Mass.))などでコーティングされた
組織培養表面に接着する。培養中の単離された胎盤接着性細胞は、全体的に線維芽細胞様
であり、中央の細胞本体から伸長する多数の細胞質内プロセスにより星のような外観を呈
する。しかしながら、単離された胎盤接着性細胞はこのようなプロセスを線維芽細胞より
多く示すため、このような胎盤接着性細胞は、同じ条件下で培養された線維芽細胞と形態
学的に区別することができる。形態学的には、単離された胎盤接着性細胞はさらに、造血
幹細胞とも区別することができるが、これは、造血幹細胞は、培養中、より曲線的である
かまたは丸石のような形態を全体的に呈するためである。
【0072】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示された方法において有用な単離された胎
盤接着性細胞は、増殖培地で培養される場合、胚様体様体(embryoid-like
body)を発生させる。胚様体様体は、増殖中の単離された胎盤接着性細胞の接着層
の上面で成長できる隣接していない細胞の凝集塊である。用語「胚様体様」は、細胞の凝
集塊が、胚様体、すなわち胚幹細胞の培養物から成長する細胞の凝集塊に似ているために
使用される。単離された胎盤接着性細胞の増殖培養中に胚様体様体を発生させることがで
きる増殖培地としては、例えば、DMEM-LG(例えば、Gibcoから);2%ウシ
胎児血清(例えば、Hyclone Labs.から);1×インスリン-トランスフェ
リン-セレニウム(ITS);1×リノール酸-ウシ血清アルブミン(LA-BSA);
10-9Mデキサメタゾン(例えば、Sigmaから);10-4Mアスコルビン酸2-
ホスフェート(例えば、Sigmaから);上皮増殖因子10ng/mL(例えば、R&
D Systemsから);および血小板由来増殖因子(PDGF-BB)10ng/m
L(例えば、R&D Systemsから)を含む培地が挙げられる。
【0073】
5.3.2 細胞表面、分子および遺伝子マーカー
本明細書で開示された方法、例えば循環系の疾患または障害の処置方法において有用な
、単離された胎盤接着性細胞、例えば単離された複能性胎盤接着性細胞または単離された
胎盤幹細胞、およびこのような単離された胎盤接着性細胞の集団は、複能性細胞または幹
細胞の特徴を有し、幹細胞を含む細胞または細胞の集団を同定および/または単離するの
に使用できる複数のマーカーを発現する、組織培養プラスチック接着性のヒト胎盤接着性
細胞である。ある特定の実施形態において、胎盤接着性細胞は、例えばin vitro
またはin vivoにおいて、リンパ管形成性である。本明細書に記載される単離され
た胎盤接着性細胞および胎盤細胞集団(すなわち、2つまたはそれより多くの単離された
胎盤接着性細胞)としては、胎盤またはそのあらゆる部分(例えば、柔毛膜、胎盤絨毛叢
など)から直接得られた胎盤接着性細胞および胎盤細胞を含有する細胞集団が挙げられる
。また単離された胎盤細胞集団としては、培養中の(すなわち、2以上の)単離された胎
盤接着性細胞の集団、および容器、例えばバッグ中の集団も挙げられる。本明細書に記載
される単離された胎盤接着性細胞は、骨髄由来間葉細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、または
臍帯血、胎盤血もしくは末梢血液から得られた間葉細胞ではない。本明細書に記載される
方法および組成物において有用な胎盤細胞、例えば、複能性胎盤細胞および胎盤接着性細
胞が本明細書に記載されており、例えば、特許文献2;特許文献3;および特許文献4;
ならびに特許文献5に記載されており、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明
細書に組み入れられる。
【0074】
ある特定の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、単離された胎盤複能性細
胞である。一実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、フローサイトメトリーに
よって検出可能な、CD34、CD10、CD105およびCD200である。
別の具体的な実施形態において、単離されたCD34、CD10、CD105およ
びCD200胎盤接着性細胞は、神経系の表現型を有する細胞、骨形成性の表現型を有
する細胞、および/または軟骨形成性の表現型を有する細胞に分化する可能性を有する。
別の具体的な実施形態において、単離されたCD34、CD10、CD105胎盤
接着性細胞は、加えて、CD200である。別の具体的な実施形態において、単離され
たCD200胎盤接着性細胞は、加えて、フローサイトメトリーによって検出可能な、
CD45またはCD90である。別の具体的な実施形態において、単離されたCD2
00胎盤接着性細胞は、加えて、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD45
およびCD90である。別の具体的な実施形態において、単離されたCD34、C
D10、CD105およびCD200胎盤接着性細胞は、加えて、フローサイトメ
トリーによって検出可能な、CD45またはCD90である。別の具体的な実施形態
において、単離されたCD34、CD10、CD105およびCD200胎盤接
着性細胞は、加えて、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD45およびCD
90であり、すなわち細胞は、CD34、CD10、CD105およびCD20
、CD105およびCD200である。別の具体的な実施形態において、前記C
D34、CD10、CD105およびCD200、CD105、CD200
細胞は、加えて、CD80およびCD86である。
【0075】
ある特定の実施形態において、前記胎盤接着性細胞は、フローサイトメトリーまたはR
T-PCRによって検出可能な、CD34、CD10、CD105およびCD20
であり、CD38、CD45、CD80、CD86、CD133、HLA
-DR、DP、DQ、SSEA3、SSEA4、CD29、CD44、CD7
、CD90、CD105、HLA-A、B、C、PDL1、ABC-p
および/またはOCT-4の1つまたは複数である。他の実施形態において、上述され
るCD34、CD10、CD105細胞のいずれかは、加えて、CD29、CD
38、CD44、CD54、SH3またはSH4の1つまたは複数である。別
の具体的な実施形態において、細胞は、加えて、CD44である。別の具体的な実施形
態において、細胞は、加えて、CD44である。上記の単離されたCD34、CD1
、CD105およびCD200胎盤接着性細胞のいずれかの別の具体的な実施形
態において、細胞は、加えて、CD117、CD133、KDR(VEGFR2
)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR、もしくはプログラム細胞死-
1リガンド(PDL1)の1つまたは複数、またはそれらのあらゆる組合せである。
【0076】
別の実施形態において、CD34、CD10、CD105胎盤接着性細胞は、加
えて、CD13、CD29、CD33、CD38、CD44、CD45、C
D54、CD62E、CD62L、CD62P、SH3(CD73)、SH
(CD73)、CD80、CD86、CD90、SH2(CD105
、CD106/VCAM、CD117、CD144/VE-カドヘリンlow、CD
184/CXCR4、CD200、CD133、OCT-4、SSEA3、S
SEA4、ABC-p、KDR(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HL
A-DP、DQ、DR、HLA-G、もしくはプログラム細胞死-1リガンド(PD
L1)の1つまたは複数、またはそれらのあらゆる組合せである。他の実施形態におい
て、CD34、CD10、CD105細胞は、加えて、CD13、CD29
CD33、CD38、CD44、CD45、CD54/ICAM、CD62E
、CD62L、CD62P、SH3(CD73)、SH4(CD73)、
CD80、CD86、CD90、SH2(CD105)、CD106/VCA
、CD117、CD144/VE-カドヘリンlow、CD184/CXCR4
、CD200、CD133、OCT-4、SSEA4、SSEA4、ABC-
、KDR(VEGFR2)、HLA-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR
、HLA-G、およびプログラム細胞死-1リガンド(PDL1)である。
【0077】
別の具体的な実施形態において、本明細書に記載される胎盤接着性細胞のいずれかは、
加えて、フローサイトメトリーによって検出可能な、ABC-pであり、またはRT-
PCRによって決定可能な、OCT-4(POU5F1)であり、ABC-pは、胎
盤特異的なABC輸送体タンパク質(乳がん耐性タンパク質(BCRP)およびミトキサ
ントロン耐性タンパク質(MXR)としても公知)であり、OCT-4は、オクタマー-
4タンパク質(POU5F1)である。別の具体的な実施形態において、本明細書に記載
される胎盤接着性細胞のいずれかは、加えて、フローサイトメトリーによって決定可能な
、SSEA3またはSSEA4であり、SSEA3は、ステージ特異的胎児抗原3で
あり、SSEA4は、ステージ特異的胎児抗原4である。別の具体的な実施形態において
、本明細書に記載される胎盤接着性細胞のいずれかは、加えて、SSEA3およびSS
EA4である。
【0078】
別の具体的な実施形態において、本明細書に記載される胎盤接着性細胞のいずれかは、
加えて、MHC-I(例えば、HLA-A,B,C)、MHC-II(例えば、H
LA-DP,DQ,DR)またはHLA-Gの1つまたは複数である。別の具体的な
実施形態において、本明細書に記載される胎盤接着性細胞のいずれかは、加えて、MHC
-I(例えば、HLA-A,B,C)、MHC-II(例えば、HLA-DP,D
Q,DR)およびHLA-Gの1つまたは複数である。
【0079】
また、単離された胎盤接着性細胞の集団、または本明細書で開示された方法および組成
物において有用な、単離された胎盤接着性細胞を含む、例えば単離された胎盤接着性細胞
が濃縮されている、細胞集団、例えば胎盤接着性細胞集団も本明細書で提供される。好ま
しくは単離された胎盤接着性細胞を含む細胞集団であり、ここで細胞集団は、例えば、少
なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、
55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または98
%の単離されたCD10、CD105およびCD34胎盤接着性細胞を含み、すな
わち、前記集団中の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40
%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90
%、95%または98%の細胞が、単離されたCD10、CD105およびCD34
胎盤接着性細胞である。具体的な実施形態において、単離されたCD34、CD10
、CD105胎盤接着性細胞は、加えて、CD200である。別の具体的な実施形
態において、単離されたCD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着
性細胞は、加えて、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD90またはCD4
である。別の具体的な実施形態において、単離されたCD34、CD10、CD
105、CD200胎盤接着性細胞は、加えて、フローサイトメトリーによって検出
可能な、CD90およびCD45である。別の具体的な実施形態において、上述され
る単離されたCD34、CD10、CD105胎盤接着性細胞のいずれかは、加え
て、CD29、CD38、CD44、CD54、SH3またはSH4の1つ
または複数である。別の具体的な実施形態において、単離されたCD34、CD10
、CD105胎盤接着性細胞、または単離されたCD34、CD10、CD105
、CD200胎盤接着性細胞は、加えて、CD44である。上記の単離されたCD
34、CD10、CD105胎盤接着性細胞を含む細胞集団のいずれかの具体的な
実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、加えて、CD13、CD29、C
D33、CD38、CD44、CD45、CD54、CD62E、CD62
、CD62P、SH3(CD73)、SH4(CD73)、CD80
CD86、CD90、SH2(CD105)、CD106/VCAM、CD1
17、CD144/VE-カドヘリンlow、CD184/CXCR4、CD200
、CD133、OCT-4、SSEA3、SSEA4、ABC-p、KDR
(VEGFR2)、HLA-A,B,C、HLA-DP,DQ,DR、HLA-
、またはプログラム細胞死-1リガンド(PDL1)、またはそれらの1つまたは
複数のあらゆる組合せである。別の具体的な実施形態において、CD34、CD10
、CD105細胞は、加えて、CD13、CD29、CD33、CD38、C
D44、CD45、CD54/ICAM、CD62E、CD62L、CD62
、SH3(CD73)、SH4(CD73)、CD80、CD86、C
D90、SH2(CD105)、CD106/VCAM、CD117、CD1
44/VE-カドヘリンlow、CD184/CXCR4、CD200、CD133
、OCT-4、SSEA3、SSEA4、ABC-p、KDR(VEGFR
)、HLA-A,B,C、HLA-DP,DQ,DR、HLA-G、およびプ
ログラム細胞死-1リガンド(PDL1)である。
【0080】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な
単離された胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD34、CD38、CD
44、CD45、CD54、CD90、SH2、SH3、SH4、SSE
A3、SSEA4、OCT-4、およびABC-pの1つもしくは複数または全
てであり、前記単離された胎盤接着性細胞は、胎盤組織を物理的におよび/または酵素に
より破壊することにより得られる。具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細
胞は、OCT-4およびABC-pである。別の具体的な実施形態において、単離さ
れた胎盤接着性細胞は、OCT-4およびCD34であり、前記単離された胎盤接着
性細胞は、以下の特徴:CD10、CD29、CD44、CD45、CD54
、CD90、SH3、SH4、SSEA4、およびSSEA4の少なくとも1
つを有する。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、OCT-4
、CD34、CD10、CD29、CD44、CD45、CD54、CD
90、SH3、SH4、SSEA3、およびSSEA4である。別の実施形態
において、単離された胎盤接着性細胞は、OCT-4、CD34、SSEA4、お
よびSSEA4である。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は
、OCT-4およびCD34であり、SH2またはSH3のいずれかである。別
の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、OCT-4、CD34
、SH2、およびSH3である。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接
着性細胞は、OCT-4、CD34、SSEA3、およびSSEA4であり、S
H2またはSH3のいずれかである。別の具体的な実施形態において、単離された胎
盤接着性細胞は、OCT-4およびCD34である、SH2またはSH3のいず
れかであり、CD10、CD29、CD44、CD45、CD54、CD90
、SSEA3、またはSSEA4の少なくとも1つである。別の具体的な実施形態
において、単離された胎盤接着性細胞は、OCT-4、CD34、CD10、CD
29、CD44、CD45、CD54、CD90、SSEA3、およびSS
EA4であり、SH2またはSH3のいずれかである。
【0081】
別の実施形態において、本明細書で開示された方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、SH2、SH3、SH4およびOCT-4である。別の
具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、C
D44、CD54、CD90、CD34、CD45、SSEA4、またはS
SEA4である。別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、SH2、S
H3、SH4、SSEA4およびSSEA4である。別の具体的な実施形態にお
いて、単離された胎盤接着性細胞は、SH2、SH3、SH4、SSEA3およ
びSSEA4、CD10、CD29、CD44、CD54、CD90、OC
T-4、CD34またはCD45である。
【0082】
別の実施形態において、本明細書で開示された方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD34、CD44、CD45
、CD54、CD90、SH2、SH3、およびSH4であり、前記単離され
た胎盤接着性細胞は、加えて、OCT-4、SSEA4またはSSEA4の1つま
たは複数である。
【0083】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示された方法および組成物において有用な
単離された胎盤接着性細胞は、CD200またはHLA-Gである。具体的な実施形
態において、単離された胎盤接着性細胞は、CD200およびHLA-Gである。別
の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、加えて、CD73および
CD105である。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、加
えて、CD34、CD38またはCD45である。別の具体的な実施形態において
、単離された胎盤接着性細胞は、加えて、CD34、CD38およびCD45であ
る。別の具体的な実施形態において、前記幹細胞は、CD34、CD38、CD45
、CD73およびCD105である。別の具体的な実施形態において、前記単離さ
れたCD200またはHLA-G胎盤接着性細胞は、胚様体様体の形成を可能にする
条件下での、単離された胎盤接着性細胞を含む胎盤接着性細胞集団における胚様体様体の
形成を容易にする。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、幹細
胞または複能性細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形態にお
いて、前記単離された胎盤接着性細胞は、これらのマーカーを提示しない胎盤接着性細胞
から単離される。
【0084】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な細胞集
団は、CD200、HLA-G胎盤接着性細胞を含む細胞の集団、例えば、CD20
、HLA-G胎盤接着性細胞を豊富に含む細胞の集団である。具体的な実施形態に
おいて、前記集団は、胎盤接着性細胞集団である。様々な実施形態において、前記細胞集
団中の細胞の、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なく
とも約40%、少なくとも約50%、または少なくとも約60%は、単離されたCD20
、HLA-G胎盤接着性細胞である。好ましくは、前記細胞集団中の細胞の少なく
とも約70%は、単離されたCD200、HLA-G胎盤接着性細胞である。より好
ましくは、前記細胞の少なくとも約90%、95%、または99%は、単離されたCD2
00、HLA-G胎盤接着性細胞である。細胞集団の具体的な実施形態において、前
記単離されたCD200、HLA-G胎盤接着性細胞はまた、CD73およびCD
105でもある。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD200、HL
A-G胎盤接着性細胞はまた、CD34、CD38またはCD45でもある。別
の具体的な実施形態において、前記単離されたCD200、HLA-G胎盤接着性細
胞はまた、CD34、CD38、CD45、CD73およびCD105でもあ
る。別の実施形態において、前記細胞集団は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で培
養される場合、1つまたは複数の胚様体様体を産生する。別の具体的な実施形態において
、前記細胞集団は、幹細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形
態において、前記単離されたCD200、HLA-G胎盤接着性細胞は、これらのマ
ーカーを提示しない胎盤接着性細胞から単離される。
【0085】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、CD73、CD105、およびCD200である。別の具
体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、HLA-Gである。別の具体
的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、CD34、CD38またはC
D45である。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、CD3
、CD38およびCD45である。別の具体的な実施形態において、単離された
胎盤接着性細胞は、CD34、CD38、CD45、およびHLA-Gである。
別の具体的な実施形態において、単離されたCD73、CD105、およびCD20
胎盤接着性細胞は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で集団が培養される場合、
単離された胎盤接着性細胞を含む胎盤接着性細胞集団における1つまたは複数の胚様体様
体の形成を容易にする。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、
単離された胎盤接着性細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形
態において、単離された胎盤接着性細胞は、これらのマーカーを提示しない胎盤接着性細
胞から単離される。
【0086】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な細胞集
団は、単離されたCD73、CD105、CD200胎盤接着性細胞を含む、例え
ばそれらが濃縮されている細胞集団である。様々な実施形態において、前記細胞集団中の
細胞の、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約
40%、少なくとも約50%、または少なくとも約60%は、単離されたCD73、C
D105、CD200胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、前記細胞集団
中の少なくとも約70%の前記細胞は、単離されたCD73、CD105、CD20
胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、前記細胞集団中の細胞の、少なくと
も約90%、95%または99%は、単離されたCD73、CD105、CD200
胎盤接着性細胞である。前記集団の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性
細胞は、HLA-Gである。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細
胞は、加えて、CD34、CD38またはCD45である。別の具体的な実施形態
において、単離された胎盤接着性細胞は、加えて、CD34、CD38およびCD4
である。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、加えて、C
D34、CD38、CD45、およびHLA-Gである。別の具体的な実施形態
において、前記細胞集団は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養される場合、1
つまたは複数の胚様体様体を産生する。別の具体的な実施形態において、前記胎盤接着性
細胞集団は、幹細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形態にお
いて、前記胎盤接着性細胞集団は、これらの特徴を提示しない胎盤接着性細胞から単離さ
れる。
【0087】
ある特定の他の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、CD10、CD2
、CD34、CD38、CD44、CD45、CD54、CD90、S
H2、SH3、SH4、SSEA3、SSEA4、OCT-4、HLA-G
またはABC-pの1つまたは複数である。具体的な実施形態において、単離された
胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD34、CD38、CD44、C
D45、CD54、CD90、SH2、SH3、SH4、SSEA3、S
SEA4、およびOCT-4である。別の具体的な実施形態において、単離された胎
盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD34、CD38、CD45、CD
54、SH2、SH3、およびSH4である。別の具体的な実施形態において、
単離された胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD34、CD38、CD
45、CD54、SH2、SH3、SH4およびOCT-4である。別の具
体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD
34、CD38、CD44、CD45、CD54、CD90、HLA-G
、SH2、SH3、SH4である。別の具体的な実施形態において、単離された胎
盤接着性細胞は、OCT-4およびABC-pである。別の具体的な実施形態におい
て、単離された胎盤接着性細胞は、SH2、SH3、SH4およびOCT-4
ある。別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、OCT-4、CD34
、SSEA3、およびSSEA4である。具体的な実施形態において、前記単離され
たOCT-4、CD34、SSEA3、およびSSEA4胎盤接着性細胞は、加
えて、CD10、CD29、CD34、CD44、CD45、CD54、C
D90、SH2、SH3、およびSH4である。別の実施形態において、単離さ
れた胎盤接着性細胞は、OCT-4およびCD34であり、SH3またはSH4
のいずれかである。別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、CD34
あり、CD10、CD29、CD44、CD54、CD90、またはOCT-
のいずれかである。
【0088】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、CD200およびOCT-4である。具体的な実施形態にお
いて、単離された胎盤接着性細胞は、CD73およびCD105である。別の具体的
な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞は、HLA-Gである。別の具体
的な実施形態において、前記単離されたCD200、OCT-4胎盤接着性細胞は、
CD34、CD38またはCD45である。別の具体的な実施形態において、前記
単離されたCD200、OCT-4胎盤接着性細胞は、CD34、CD38およ
びCD45である。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD200、O
CT-4胎盤接着性細胞は、CD34、CD38、CD45、CD73、CD
105およびHLA-Gである。別の具体的な実施形態において、単離されたCD2
00、OCT-4胎盤接着性細胞は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で集団が
培養される場合、単離された細胞を含む胎盤接着性細胞集団によって、1つまたは複数の
胚様体様体の産生を容易にする。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD2
00、OCT-4胎盤接着性細胞は、幹細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される
。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD200、OCT-4胎盤接着
性細胞は、これらの特徴を提示しない胎盤接着性細胞から単離される。
【0089】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な細胞集
団は、CD200、OCT-4胎盤接着性細胞を含む、例えばそれらが濃縮されてい
る細胞集団である。様々な実施形態において、前記細胞集団中の細胞の、少なくとも約1
0%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約5
0%、または少なくとも約60%は、単離されたCD200、OCT-4胎盤接着性
細胞である。別の実施形態において、前記細胞の少なくとも約70%は、前記単離された
CD200、OCT-4胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、前記細胞集
団中の細胞の、少なくとも約80%、90%、95%、または99%は、前記単離された
CD200、OCT-4胎盤接着性細胞である。単離された集団の具体的な実施形態
において、前記単離されたCD200、OCT-4胎盤接着性細胞は、加えて、CD
73およびCD105である。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD
200、OCT-4胎盤接着性細胞は、加えて、HLA-Gである。別の具体的な
実施形態において、前記単離されたCD200、OCT-4胎盤接着性細胞は、加え
て、CD34、CD38およびCD45である。別の具体的な実施形態において、
前記単離されたCD200、OCT-4胎盤接着性細胞は、加えて、CD34、C
D38、CD45、CD73、CD105およびHLA-Gである。別の具体
的な実施形態において、細胞集団は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養される
場合、1つまたは複数の胚様体様体を産生する。別の具体的な実施形態において、前記細
胞集団は、単離されたCD200、OCT-4胎盤接着性細胞ではない胎盤接着性細
胞から単離される。別の具体的な実施形態において、前記細胞集団は、これらのマーカー
を提示しない胎盤接着性細胞から単離される。
【0090】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、CD73、CD105およびHLA-Gである。別の具体
的な実施形態において、単離されたCD73、CD105およびHLA-G胎盤接
着性細胞は、加えて、CD34、CD38またはCD45である。別の具体的な実
施形態において、単離されたCD73、CD105、HLA-G胎盤接着性細胞は
、加えて、CD34、CD38およびCD45である。別の具体的な実施形態にお
いて、単離されたCD73、CD105、HLA-G胎盤接着性細胞は、加えて、
OCT-4である。別の具体的な実施形態において、単離されたCD73、CD10
、HLA-G胎盤接着性細胞は、加えて、CD200である。別の具体的な実施
形態において、単離されたCD73、CD105、HLA-G胎盤接着性細胞は、
加えて、CD34、CD38、CD45、OCT-4およびCD200である
。別の具体的な実施形態において、単離されたCD73、CD105、HLA-G
胎盤接着性細胞は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で集団が培養される場合、前記
細胞を含む胎盤接着性細胞集団における胚様体様体の形成を容易にする。別の具体的な実
施形態において、前記単離されたCD73、CD105、HLA-G胎盤接着性細
胞は、単離されたCD73、CD105、HLA-G胎盤接着性細胞ではない胎盤
接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD73
、CD105、HLA-G胎盤接着性細胞は、これらのマーカーを提示しない胎盤接
着性細胞から単離される。
【0091】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な細胞集
団は、単離されたCD73、CD105およびHLA-G胎盤接着性細胞を含む、
例えばそれらが濃縮されている細胞集団である。様々な実施形態において、前記細胞集団
中の細胞の、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくと
も約40%、少なくとも約50%、または少なくとも約60%は、単離されたCD73
、CD105、HLA-G胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、前記細胞
集団中の細胞の少なくとも約70%は、単離されたCD73、CD105、HLA-
胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、前記細胞集団中の細胞の、少なくと
も約90%、95%または99%は、単離されたCD73、CD105、HLA-G
胎盤接着性細胞である。上記の集団の具体的な実施形態において、前記単離されたCD
73、CD105、HLA-G胎盤接着性細胞は、加えて、CD34、CD38
またはCD45である。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD73
、CD105、HLA-G胎盤接着性細胞は、加えて、CD34、CD38およ
びCD45である。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD73、CD
105、HLA-G胎盤接着性細胞は、加えて、OCT-4である。別の具体的な
実施形態において、前記単離されたCD73、CD105、HLA-G胎盤接着性
細胞は、加えて、CD200である。別の具体的な実施形態において、前記単離された
CD73、CD105、HLA-G胎盤接着性細胞は、加えて、CD34、CD
38、CD45、OCT-4およびCD200である。別の具体的な実施形態に
おいて、前記細胞集団は、CD73、CD105、HLA-G胎盤接着性細胞では
ない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形態において、前記細胞集団は、
これらのマーカーを提示しない胎盤接着性細胞から単離される。
【0092】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、CD73およびCD105であり、胚様体様体の形成を可能
にする条件下で集団が培養される場合、前記CD73、CD105細胞を含む単離さ
れた胎盤接着性細胞集団における1つまたは複数の胚様体様体の形成を容易にする。別の
具体的な実施形態において、前記単離されたCD73、CD105胎盤接着性細胞は
、加えて、CD34、CD38またはCD45である。別の具体的な実施形態にお
いて、前記単離されたCD73、CD105胎盤接着性細胞は、加えて、CD34
、CD38およびCD45である。別の具体的な実施形態において、前記単離された
CD73、CD105胎盤接着性細胞は、加えて、OCT-4である。別の具体的
な実施形態において、前記単離されたCD73、CD105胎盤接着性細胞は、加え
て、OCT-4、CD34、CD38およびCD45である。別の具体的な実施
形態において、前記単離されたCD73、CD105胎盤接着性細胞は、前記細胞で
はない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形態において、前記単離された
CD73、CD105胎盤接着性細胞は、これらの特徴を提示しない胎盤接着性細胞
から単離される。
【0093】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な細胞集
団は、CD73、CD105である単離された胎盤接着性細胞を含む、例えばそれら
が濃縮されている細胞集団であり、胚様体様体の形成を可能にする条件下で集団が培養さ
れる場合、前記細胞を含む単離された胎盤接着性細胞集団における1つまたは複数の胚様
体様体の形成を容易にする。様々な実施形態において、前記細胞集団中の細胞の、少なく
とも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なく
とも約50%、または少なくとも約60%は、前記単離されたCD73、CD105
胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、前記細胞集団中の細胞の少なくとも約7
0%は、前記単離されたCD73、CD105胎盤接着性細胞である。別の実施形態
において、前記細胞集団中の細胞の、少なくとも約90%、95%または99%は、前記
単離されたCD73、CD105胎盤接着性細胞である。上記の集団の具体的な実施
形態において、前記単離されたCD73、CD105胎盤接着性細胞は、加えて、C
D34、CD38またはCD45である。別の具体的な実施形態において、前記単
離されたCD73、CD105胎盤接着性細胞は、加えて、CD34、CD38
およびCD45である。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD73
CD105胎盤接着性細胞は、加えて、OCT-4である。別の具体的な実施形態に
おいて、前記単離されたCD73、CD105胎盤接着性細胞は、加えて、CD20
である。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD73、CD105
胎盤接着性細胞は、加えて、CD34、CD38、CD45、OCT-4および
CD200である。別の具体的な実施形態において、前記細胞集団は、前記単離された
CD73、CD105胎盤接着性細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される。別の
具体的な実施形態において、前記細胞集団は、これらのマーカーを提示しない胎盤接着性
細胞から単離される。
【0094】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、OCT-4であり、胚様体様体の形成を可能にする条件下で培
養される場合、前記細胞を含む単離された胎盤接着性細胞集団において1つまたは複数の
胚様体様体の形成を容易にする。具体的な実施形態において、前記単離されたOCT-4
胎盤接着性細胞は、加えて、CD73およびCD105である。別の具体的な実施
形態において、前記単離されたOCT-4胎盤接着性細胞は、加えて、CD34、C
D38、またはCD45である。別の具体的な実施形態において、前記単離されたO
CT-4胎盤接着性細胞は、加えて、CD200である。別の具体的な実施形態にお
いて、前記単離されたOCT-4胎盤接着性細胞は、加えて、CD73、CD105
、CD200、CD34、CD38、およびCD45である。別の具体的な実
施形態において、前記単離されたOCT-4胎盤接着性細胞は、OCT-4胎盤接着
性細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形態において、前記単
離されたOCT-4胎盤接着性細胞は、これらの特徴を提示しない胎盤接着性細胞から
単離される。
【0095】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な細胞集
団は、OCT-4である単離された胎盤接着性細胞を含む、例えばそれらが濃縮されて
いる細胞集団であり、胚様体様体の形成を可能にする条件下で集団が培養される場合、前
記細胞を含む単離された胎盤接着性細胞集団における1つまたは複数の胚様体様体の形成
を容易にする。様々な実施形態において、前記細胞集団中の細胞の、少なくとも約10%
、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%
、または少なくとも約60%は、前記単離されたOCT-4胎盤接着性細胞である。別
の実施形態において、前記細胞集団中の細胞の少なくとも約70%は、前記単離されたO
CT-4胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、前記細胞集団中の細胞の、少
なくとも約80%、90%、95%または99%は、前記単離されたOCT-4胎盤接
着性細胞である。上記の集団の具体的な実施形態において、前記単離されたOCT-4
胎盤接着性細胞は、加えて、CD34、CD38またはCD45である。別の具体
的な実施形態において、前記単離されたOCT-4胎盤接着性細胞は、加えて、CD3
、CD38およびCD45である。別の具体的な実施形態において、前記単離さ
れたOCT-4胎盤接着性細胞は、加えて、CD73およびCD105である。別
の具体的な実施形態において、前記単離されたOCT-4胎盤接着性細胞は、加えて、
CD200である。別の具体的な実施形態において、前記単離されたOCT-4胎盤
接着性細胞は、加えて、CD73、CD105、CD200、CD34、CD3
、およびCD45である。別の具体的な実施形態において、前記細胞集団は、前記
細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形態において、前記細胞
集団は、これらのマーカーを提示しない胎盤接着性細胞から単離される。
【0096】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、単離されたHLA-A,B,C、CD45、CD133
よびCD34胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、本明細書に記載される方
法および組成物において有用な細胞集団は、単離された胎盤接着性細胞を含む細胞集団で
あり、前記単離された細胞の集団中の細胞の少なくとも約70%、少なくとも約80%、
少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%は、単離されたHL
A-A,B,C、CD45、CD133およびCD34胎盤接着性細胞である。
具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞または単離された胎盤細胞の
集団は、HLA-A,B,C、CD45、CD133およびCD34胎盤接着性
細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形態において、前記単離
された胎盤接着性細胞は、非母体起源である。別の具体的な実施形態において、前記単離
された胎盤接着性細胞集団は、母体の要素を実質的に含まず、例えば、前記単離された胎
盤接着性細胞集団中の前記細胞の、少なくとも約40%、45%、5-0%、55%、6
0%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、95%、98%または99%
が非母体起源である。
【0097】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、単離されたCD10、CD13、CD33、CD45
CD117およびCD133胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、本明細書
に記載される方法および組成物において有用な細胞集団は、単離された胎盤接着性細胞を
含む細胞集団であり、前記細胞集団中の細胞の、少なくとも約70%、少なくとも約80
%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%は、単離された
CD10、CD13、CD33、CD45、CD117およびCD133
盤接着性細胞である。具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞または
単離された胎盤接着性細胞の集団は、前記単離された胎盤接着性細胞ではない胎盤接着性
細胞から単離される。別の具体的な実施形態において、前記単離されたCD10、CD
13、CD33、CD45、CD117およびCD133胎盤接着性細胞は、
非母体起源であり、すなわち胎児の遺伝子型を有する。別の具体的な実施形態において、
前記単離された胎盤接着性細胞集団の前記細胞の、少なくとも約40%、45%、50%
、55%、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、95%、98%
または99%は、非母体起源である。別の具体的な実施形態において、前記単離された胎
盤接着性細胞または単離された胎盤接着性細胞の集団は、これらの特徴を提示しない胎盤
接着性細胞から単離される。
【0098】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、単離されたCD10、CD33、CD44、CD45
およびCD117胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、本明細書に記載され
る方法および組成物において有用な細胞集団は、単離された胎盤接着性細胞を含む、例え
ばそれが濃縮されている細胞集団であり、前記細胞集団中の細胞の、少なくとも約70%
、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約9
9%は、単離されたCD10、CD33、CD44、CD45、およびCD11
胎盤接着性細胞である。具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞
または単離された胎盤接着性細胞の集団は、前記細胞ではない胎盤接着性細胞から単離さ
れる。別の具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞は、非母体起源で
ある。別の具体的な実施形態において、前記細胞集団中の前記細胞の、少なくとも約40
%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90
%、95%、98%または99%は、非母体起源である。別の具体的な実施形態において
、前記単離された胎盤細胞または単離された胎盤細胞の集団は、これらのマーカーを提示
しない胎盤接着性細胞から単離される。
【0099】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、単離されたCD10、CD13、CD33、CD45
およびCD117胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、本明細書に記載され
る方法および組成物において有用な細胞集団は、単離されたCD10、CD13、C
D33、CD45、およびCD117胎盤接着性細胞を含む、例えばそれらが濃縮
されている細胞集団であり、前記集団中の細胞の、少なくとも約70%、少なくとも約8
0%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%は、CD10
、CD13、CD33、CD45、およびCD117胎盤接着性細胞である。
具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞または単離された胎盤接着性
細胞の集団は、前記細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な実施形態
において、前記単離された胎盤接着性細胞は、非母体起源である。別の具体的な実施形態
において、前記細胞集団中の前記細胞の、少なくとも約40%、45%、50%、55%
、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、95%、98%または9
9%は、非母体起源である。別の具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性
細胞または単離された胎盤接着性細胞の集団は、これらの特徴を提示しない胎盤接着性細
胞から単離される。
【0100】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、HLA A、B、C、CD45、CD34、およびCD1
33であり、加えて、CD10、CD13、CD38、CD44、CD90
、CD105、CD200および/またはHLA-Gであり、および/またはCD
117陰性である。別の実施形態において、本明細書に記載される方法において有用な細
胞集団は、単離された胎盤接着性細胞を含む細胞集団であり、前記集団中の細胞の、少な
くとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、
65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または約99%は、
HLA A、B、C、CD45、CD34、CD133であり、加えて、CD1
0、CD13、CD38、CD44、CD90、CD105、CD200陽性であり、お
よび/またはCD117および/またはHLA-G陰性である単離された胎盤接着性細胞
である。具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞または単離された胎
盤接着性細胞の集団は、前記細胞ではない胎盤接着性細胞から単離される。別の具体的な
実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞は、非母体起源である。別の具体的な
実施形態において、前記細胞集団中の前記細胞の、少なくとも約40%、45%、50%
、55%、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、95%、98%
または99%は、非母体起源である。別の具体的な実施形態において、前記単離された胎
盤接着性細胞または単離された胎盤接着性細胞の集団は、これらのマーカーを提示しない
胎盤接着性細胞から単離される。
【0101】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、抗体結合によって決定可能な、CD200およびCD10
あり、抗体結合およびRT-PCRの両方によって決定可能な、CD117である、単
離された胎盤接着性細胞である。別の実施形態において、本明細書に記載される方法およ
び組成物において有用な単離された胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD5
、CD200、HLA-G、MHCクラスIおよびβ-2-ミクログロブリン
である、単離された胎盤接着性細胞、例えば胎盤幹細胞または複能性胎盤細胞である。
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離され
た胎盤接着性細胞は、少なくとも1つの細胞マーカーの発現が間充織幹細胞(例えば、骨
髄由来間充織幹細胞)の場合より少なくとも2倍高い胎盤接着性細胞である。別の具体的
な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞は、非母体起源である。別の具体的
な実施形態において、前記細胞集団中の前記細胞の、少なくとも約40%、45%、50
%、55%、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、95%、98
%または99%は、非母体起源である。
【0102】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD44、CD45、CD54/
ICAM、CD62E、CD62L、CD62P、CD80、CD86、C
D103、CD104、CD105、CD106/VCAM、CD144/VE
-カドヘリンlow、CD184/CXCR4、β2-ミクログロブリンlow、MH
C-IV、HLA-Glow、および/またはPDL1lowの1つまたは複数である、
単離された胎盤接着性細胞、例えば胎盤幹細胞または胎盤複能性細胞である。具体的な実
施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、少なくともCD29およびCD54
である。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、少なくともCD
44およびCD106である。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着
性細胞は、少なくともCD29である。
【0103】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な細胞集
団は、単離された胎盤接着性細胞を含み、前記細胞集団中の細胞の少なくとも50%、6
0%、70%、80%、90%、95%、98%または99%は、CD10、CD29
、CD44、CD45、CD54/ICAM、CD62-E、CD62-L
、CD62-P、CD80、CD86、CD103、CD104、CD105
、CD106/VCAM、CD144/VE-カドヘリンdim、CD184/CX
CR4、β2-ミクログロブリンdim、HLA-Idim、HLA-II、HLA
-Gdim、および/またはPDL1dimの1つまたは複数である単離された胎盤接着
性細胞である。別の具体的な実施形態において、前記細胞集団中の細胞の少なくとも50
%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%は、CD10、C
D29、CD44、CD45、CD54/ICAM、CD62-E、CD62
-L、CD62-P、CD80、CD86、CD103、CD104、CD
105、CD106/VCAM、CD144/VE-カドヘリンdim、CD184
/CXCR4、β2-ミクログロブリンdim、HLA-Idim、MHC-II
HLA-Gdim、およびPDL1dimである。
【0104】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離さ
れた胎盤接着性細胞は、CD10、CD29、CD34、CD38、CD44
、CD45、CD54、CD90、SH2、SH3、SH4、SSEA3
、SSEA4、OCT-4、およびABC-pの1つもしくは複数または全てであ
る単離された胎盤接着性細胞であり、ABC-pは、胎盤特異的なABC輸送タンパク質
(また、乳がん耐性タンパク質(BCRP)およびミトキサントロン耐性タンパク質(M
XR)としても公知である)であり、前記単離された胎盤接着性細胞は、臍帯血を引き出
し、潅流して、残留した血液を除去した、哺乳類、例えばヒトの胎盤を潅流することによ
り得られる。
【0105】
上記の特徴のいずれかの別の具体的な実施形態において、細胞マーカー(例えば、表面
抗原分類または免疫原性マーカー)の発現は、フローサイトメトリーによって決定可能で
あり、別の具体的な実施形態において、上記マーカーの発現は、RT-PCRによって決
定可能である。
【0106】
遺伝子プロファイリングから、単離された胎盤接着性細胞、および単離された胎盤接着
性細胞集団は、他の細胞、例えば間葉系幹細胞、例えば骨髄由来間葉系幹細胞と区別でき
ることが確認される。本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞は、1つまたは複
数の遺伝子の発現に基づき例えば間葉系幹細胞と区別することができ、これらの遺伝子の
発現は、単離された胎盤接着性細胞、またはある特定の単離された臍帯幹細胞において、
骨髄由来間葉系幹細胞と比較してより有意に高い。特定には、本明細書で提供される処置
の方法において有用な単離された胎盤接着性細胞は、1つまたは複数の遺伝子の発現に基
づき間葉系幹細胞からと区別することができ、これらの遺伝子の発現は、単離された胎盤
接着性細胞において、等しい数の骨髄由来間葉系幹細胞の場合より有意に高く(すなわち
、少なくとも2倍高く)、ここで1つまたは複数の遺伝子は、等しい条件下で細胞を成長
させる場合、ACTG2、ADARB1、AMIGO2、ARTS-1、B4GALT6
、BCHE、C11orf9、CD200、COL4A1、COL4A2、CPA4、D
MD、DSC3、DSG2、ELOVL2、F2RL1、FLJ10781、GATA6
、GPR126、GPRC5B、HLA-G、ICAM1、IER3、IGFBP7、I
L1A、IL6、IL18、KRT18、KRT8、LIPG、LRAP、MATN2、
MEST、NFE2L3、NUAK1、PCDH7、PDLIM3、PKP2、RTN1
、SERPINB9、ST3GAL6、ST6GALNAC5、SLC12A8、TCF
21、TGFB2、VTN、ZC3H12A、または前述のもののいずれかの組合せであ
る。例えば、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる特許文献5を参
照されたい。ある特定の具体的な実施形態において、前記1つまたは複数の遺伝子の前記
発現は、例えばRT-PCRまたはマイクロアレイ分析により、例えば、U133-Aマ
イクロアレイ(Affymetrix)を使用して決定される。別の具体的な実施形態に
おいて、DMEM-LG(例えば、Gibcoから);2%ウシ胎児血清(例えば、Hy
clone Labs.から);1×インスリン-トランスフェリン-セレニウム(IT
S);1×リノール酸-ウシ血清アルブミン(LA-BSA);10~9Mのデキサメタ
ゾン(例えば、Sigmaから);10~4Mのアスコルビン酸2-ホスフェート(例え
ば、Sigmaから);10ng/mLの上皮増殖因子(例えば、R&D System
sから);および10ng/mLの血小板由来増殖因子(PDGF-BB)(例えば、R
&D Systemsから)を含む培地中で、数回の集団倍加、例えば約3から約35回
の集団倍加で培養される場合、前記単離された胎盤接着性細胞は、前記1つまたは複数の
遺伝子を発現する。別の具体的な実施形態において、単離された胎盤細胞に特異的な、ま
たは単離された臍帯細胞特異的な遺伝子は、CD200である。
【0107】
これらの遺伝子に特異的な配列は、GenBankにおいて、2008年3月現在、受
託番号NM_001615(ACTG2)、BC065545(ADARB1)、(NM
_181847(AMIGO2)、AY358590(ARTS-1)、BC07488
4(B4GALT6)、BC008396(BCHE)、BC020196(C11or
f9)、BC031103(CD200)、NM_001845(COL4A1)、NM
_001846(COL4A2)、BC052289(CPA4)、BC094758(
DMD)、AF293359(DSC3)、NM_001943(DSG2)、AF33
8241(ELOVL2)、AY336105(F2RL1)、NM_018215(F
LJ10781)、AY416799(GATA6)、BC075798(GPR126
)、NM_016235(GPRC5B)、AF340038(ICAM1)、BC00
0844(IER3)、BC066339(IGFBP7)、BC013142(IL1
A)、BT019749(IL6)、BC007461(IL18)、(BC07201
7) KRT18、BC075839(KRT8)、BC060825(LIPG)、B
C065240(LRAP)、BC010444(MATN2)、BC011908(M
EST)、BC068455(NFE2L3)、NM_014840(NUAK1)、A
B006755(PCDH7)、NM_014476(PDLIM3)、BC12619
9(PKP-2)、BC090862(RTN1)、BC002538(SERPINB
9)、BC023312(ST3GAL6)、BC001201(ST6GALNAC5
)、BC126160またはBC065328(SLC12A8)、BC025697(
TCF21)、BC096235(TGFB2)、BC005046(VTN)、および
BC005001(ZC3H12A)で見出すことができる。
【0108】
ある特定の具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞は、ACTG2
、ADARB1、AMIGO2、ARTS-1、B4GALT6、BCHE、C11or
f9、CD200、COL4A1、COL4A2、CPA4、DMD、DSC3、DSG
2、ELOVL2、F2RL1、F1110781、GATA6、GPR126、GPR
C5B、HLA-G、ICAM1、IER3、IGFBP7、IL1A、IL6、IL1
8、KRT18、KRT8、LIPG、LRAP、MATN2、MEST、NFE2L3
、NUAK1、PCDH7、PDLIM3、PKP2、RTN1、SERPINB9、S
T3GAL6、ST6GALNAC5、SLC12A8、TCF21、TGFB2、VT
N、およびZC3H12Aのそれぞれを、等しい条件下で細胞を成長させる場合、等しい
数の骨髄由来間葉系幹細胞より検出できる程度に高いレベルで発現する。
【0109】
具体的な実施形態において、胎盤接着性細胞は、CD200およびARTS1(1型腫
瘍壊死因子のアミノペプチダーゼレギュレーター);ARTS-1およびLRAP(白血
球由来アルギニンアミノペプチダーゼ);IL6(インターロイキン-6)およびTGF
B2(トランスフォーミング増殖因子、ベータ2);IL6およびKRT18(ケラチン
18);IER3(前初期応答3)、MEST(中胚葉特異的転写物相同体)およびTG
FB2;CD200およびIER3;CD200およびIL6;CD200およびKRT
18;CD200およびLRAP;CD200およびMEST;CD200およびNFE
2L3(核内因子(赤血球由来2)様3);またはCD200およびTGFB2を、等し
い数の骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)より検出できる程度に高いレベルで発現し
、前記骨髄由来間葉系幹細胞は、培養中、前記単離された胎盤接着性細胞が受けた継代回
数に等しい継代回数を受けている。他の具体的な実施形態において、胎盤接着性細胞は、
ARTS-1、CD200、IL6およびLRAP;ARTS-1、IL6、TGFB2
、IER3、KRT18およびMEST;CD200、IER3、IL6、KRT18、
LRAP、MEST、NFE2L3、およびTGFB2;ARTS-1、CD200、I
ER3、IL6、KRT18、LRAP、MEST、NFE2L3、およびTGFB2;
またはIER3、MESTおよびTGFB2を、等しい数の骨髄由来間葉系幹細胞BM-
MSCより検出できる程度に高いレベルで発現し、前記骨髄由来間葉系幹細胞は、培養中
、前記単離された胎盤接着性細胞が受けた継代回数に等しい継代回数を受けている。
【0110】
上記で述べた遺伝子の発現は、標準的な技術により評価することができる。例えば、遺
伝子の配列に基づくプローブを、従来の技術によって個々に選択して構築することができ
る。遺伝子の発現は、例えば、遺伝子の1つまたは複数に対するプローブを含むマイクロ
アレイ、例えば、AffymetrixのGENECHIP(登録商標)ヒトゲノムU1
33A2.0アレイ、またはAffymetrixのGENECHIP(登録商標)ヒト
ゲノムU133プラス2.0(サンタクララ、カリフォルニア州)で評価することができ
る。これらの遺伝子の発現は、特定のGenBank受託番号の配列が修正されている場
合でも、修正された配列に特異的なプローブは周知の標準的な技術を使用して容易に生成
できるため、評価することができる。
【0111】
これらの遺伝子の発現レベルは、単離された胎盤接着性細胞集団の同一性を確認するの
に使用すること、細胞集団を、少なくとも複数の単離された胎盤接着性細胞を含むと同定
するのに使用することなどが可能である。同一性が確認されている単離された胎盤接着性
細胞の集団は、クローン性であってもよく、例えば、単一の単離された胎盤細胞から拡張
された単離された胎盤接着性細胞集団、または幹細胞の混成集団、例えば、複数の単離さ
れた胎盤接着性細胞から拡張された単離された胎盤接着性細胞を単独で含む細胞集団、ま
たは本明細書に記載されるような単離された胎盤接着性細胞と少なくとも1つの他のタイ
プの細胞とを含む細胞集団であってもよい。
【0112】
これらの遺伝子の発現レベルは、単離された胎盤接着性細胞集団を選択するのに使用す
ることができる。例えば、細胞、例えば、クローン的に拡張した細胞の集団は、上記で列
挙した遺伝子の1つまたは複数の発現が、その細胞集団からのサンプル中で等価な間葉系
幹細胞集団より有意に高い場合に選択することができる。このような選択は、複数の単離
された胎盤細胞集団からの集団の選択、その同一性が公知ではない複数の細胞集団からの
集団などの選択であってもよい。
【0113】
単離された胎盤接着性細胞は、例えば間充織幹細胞対照における前記1つまたは複数の
遺伝子における発現レベル、例えば、等しい数の骨髄由来間葉系幹細胞における前記1つ
または複数の遺伝子の発現のレベルと比較した場合の、1つまたは複数のこのような遺伝
子の発現レベルに基づき選択することができる。一実施形態において、等しい数の間葉系
幹細胞を含むサンプル中の前記1つまたは複数の遺伝子の発現レベルが、対照として使用
される。別の実施形態において、対照は、ある特定の条件下で試験された単離された胎盤
接着性細胞の場合、前記条件下での間葉系幹細胞における前記1つまたは複数の遺伝子の
発現レベルを表す数値である。
【0114】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される方法において有用な胎盤接着性細
胞(例えばplacental adherent cells(登録商標))は、免疫
学的局在法によって検出可能な場合、4から21日にわたり1から100ng/mLのV
EGFに曝露した後、CD34を発現しない。具体的な実施形態において、前記胎盤接着
性細胞は、組織培養プラスチックへの接着性を有する。別の具体的な実施形態において、
前記細胞の集団は、例えばMATRIGEL(商標)などの基材上で、血管内皮増殖因子
(VEGF)、上皮性増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)または塩基
性線維芽細胞増殖因子(bFGF)などのリンパ管形成因子の存在下で培養される場合、
新芽または管状の構造を形成するように内皮細胞を誘導する。
【0115】
別の態様において、本明細書で提供される胎盤接着性細胞、細胞の集団、例えば、胎盤
接着性細胞の集団、または前記単離された細胞の集団中の細胞の少なくとも約50%、6
0%、70%、80%、90%、95%または98%が胎盤接着性細胞である細胞の集団
は、VEGF、HGF、IL-8、MCP-3、FGF2、フォリスタチン、G-CSF
、EGF、ENA-78、GRO、IL-6、MCP-1、PDGF-BB、TIMP-
2、uPAR、またはガレクチン-1の1つもしくは複数または全てを、例えば1つまた
は複数の細胞が増殖する培養培地に分泌する。別の実施形態において、胎盤接着性細胞は
、低酸素状態下(例えば、約5%02未満)で、酸素正常条件下(例えば、約20%また
は約21%0)と比較して増加したレベルのCD202b、IL-8および/またはV
EGFを発現する。
【0116】
別の実施形態において、本明細書に記載される胎盤接着性細胞のいずれかまたは胎盤接
着性細胞を含む細胞の集団は、内皮細胞の集団において、前記胎盤由来の接着性細胞と接
触させて、新芽または管状の構造の形成をもたらすことができる。具体的な実施形態にお
いて、胎盤接着性細胞は、ヒト内皮細胞と共培養されて、それにより、例えば胎盤のコラ
ーゲンまたはMATRIGEL(商標)などの基材中またはその上で、I型およびIV型
コラーゲンなどの細胞外マトリックスタンパク質、ならびに/または血管内皮増殖因子(
VEGF)、上皮性増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)もしくは塩基
性線維芽細胞増殖因子(bFGF)などの血管新生因子の存在下で少なくとも4日間培養
される場合、新芽または管状の構造を形成するか、または内皮細胞の新芽の形成を支持す
る。別の実施形態において、本明細書に記載される胎盤由来の接着細胞を含む細胞集団の
いずれかは、血管新生因子、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(H
GF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ま
たはインターロイキン-8(IL-8)を分泌し、それによって、例えばIおよびIV型
コラーゲンなどの細胞外マトリックスタンパク質の存在下で、例えば胎盤のコラーゲンま
たはMATRIGEL(商標)などの基材中またはその上で培養される場合、ヒト内皮細
胞の芽または管状構造の形成を誘導することができる。
【0117】
別の実施形態において、上記の胎盤由来の接着性細胞(胎盤接着性細胞)を含む細胞の
集団のいずれかは、血管新生因子を分泌する。具体的な実施形態において、細胞の集団は
、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血小板由来増殖因子(P
DGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、および/またはインターロイキン-
8(IL-8)を分泌する。他の具体的な実施形態において、胎盤接着性細胞を含む細胞
の集団は、1つまたは複数の血管新生因子を分泌し、それによって、in vitroで
の創傷治癒アッセイにおいて、ヒト内皮細胞の移動を誘導する。他の具体的な実施形態に
おいて、胎盤由来の接着細胞を含む細胞集団は、ヒト内皮細胞、内皮前駆細胞、筋細胞ま
たは筋原細胞の成熟、分化または増殖を誘導する。
【0118】
本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞は、初代培養で、または例えばDME
M-LG(Gibco)、2%ウシ胎児血清(FCS)(Hyclone Labora
tories)、1×インスリン-トランスフェリン-セレニウム(ITS)、1×リノ
ール酸(lenolenic-acid)-ウシ-血清-アルブミン(LA-BSA)、
10~9Mのデキサメタゾン(Sigma)、10Mのアスコルビン酸2-ホスフェー
ト(Sigma)、10ng/mlの上皮増殖因子(EGF)(R&D Systems
)、10ng/mlの血小板由来増殖因子(PDGF-BB)(R&D Systems
)、および100Uのペニシリン/1000Uのストレプトマイシンを含む培地中での増
殖中に、上記の特徴(例えば、細胞表面マーカーおよび/または遺伝子発現プロファイル
の組合せ)を提示する。
【0119】
本明細書で開示された胎盤接着性細胞のいずれかのある特定の実施形態において、細胞
は、ヒトである。本明細書で開示された胎盤接着性細胞のいずれかのある特定の実施形態
において、細胞マーカーの特徴または遺伝子発現の特徴は、ヒトマーカーまたはヒト遺伝
子である。
【0120】
前記単離された胎盤接着性細胞または単離された胎盤接着性細胞を含む細胞集団の別の
具体的な実施形態において、前記細胞または集団は、拡張されており、例えば、少なくと
も、約、または最大で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13
、14、15、16、17、18、19、もしくは20回、またはそれより多く継代され
ているか、または少なくとも、約、または最大で、1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、
23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、3
6、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49
または50回の集団倍加で増殖されている。前記単離された胎盤接着性細胞または単離さ
れた胎盤接着性細胞を含む細胞集団の別の具体的な実施形態において、前記細胞または集
団は、初代単離物である。本明細書で開示される単離された胎盤接着性細胞、または単離
された胎盤接着性細胞を含む細胞集団の別の具体的な実施形態において、前記単離された
胎盤接着性細胞は、胎児起源である(すなわち胎児の遺伝子型を有する)。
【0121】
ある特定の実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞は、増殖培地中で、すな
わち、例えば増殖培地中で培養される間に増殖を促進するように配合された培地中で培養
される間、分化しない。別の具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞
は、増殖するためにフィーダー層を必要としない。別の具体的な実施形態において、前記
単離された胎盤接着性細胞は、培養中、フィーダー層の非存在下で、単にフィーダー細胞
層の欠如のために分化しない。
【0122】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な細胞は
、単離された胎盤接着性細胞であり、複数の前記単離された胎盤接着性細胞は、アルデヒ
ドデヒドロゲナーゼ活性アッセイにより評価された場合、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(
ALDH)陽性である。このようなアッセイは、当業界において公知である(例えば、非
特許文献5を参照)。具体的な実施形態において、前記ALDHアッセイは、アルデヒド
デヒドロゲナーゼ活性のマーカーとしてALDEFLUOR(登録商標)(Aldage
n,Inc.、アシュランド、オレゴン州)を使用する。具体的な実施形態において、前
記複数は、前記細胞集団中の細胞の約3%から約25%の間である。別の実施形態におい
て、単離された臍帯細胞、例えば単離された複能性臍帯細胞の集団が本明細書で提供され
、複数の前記単離された臍帯細胞は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性のインジケーター
としてALDEFLUOR(登録商標)を使用するアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性アッ
セイにより評価された場合、アルデヒドデヒドロゲナーゼ陽性である。具体的な実施形態
において、前記複数は、前記細胞集団中の細胞の約3%から約25%の間である。別の実
施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞または単離された臍帯細胞の集団は、ほ
ぼ同じ数の細胞を有し、同じ条件下で培養された骨髄由来間葉系幹細胞の集団より、少な
くとも3倍、または少なくとも5倍高いALDH活性を示す。
【0123】
本明細書に記載の単離された胎盤接着性細胞を含む細胞の集団のいずれかのある特定の
実施形態において、前記細胞の集団中の胎盤接着性細胞は、母体の遺伝子型を有する細胞
を実質的に含まず、例えば、前記集団中の胎盤接着性細胞の少なくとも40%、45%、
50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、
98%または99%が、胎児の遺伝子型を有する。本明細書に記載の単離された胎接着性
盤細胞を含む細胞の集団のいずれかのある特定の他の実施形態において、前記胎盤接着性
細胞を含む細胞の集団は、母体の遺伝子型を有する細胞を実質的に含まず、例えば、前記
集団中の細胞の少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、
75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%が、胎児の遺伝子型を有
する。
【0124】
上記の単離された胎盤接着性細胞または単離された胎盤接着性細胞の細胞集団のいずれ
かの具体的な実施形態において、前記集団中の細胞、または少なくとも細胞の約95%ま
たは約99%の核型は、正常である。上記の胎盤接着性細胞または細胞集団のいずれかの
別の具体的な実施形態において、細胞、または細胞集団中の細胞は、非母体起源である。
【0125】
上記のマーカーの組合せのいずれかを有する単離された胎盤接着性細胞または単離され
た胎盤接着性細胞集団は、あらゆる比率で組み合わせることができる。上記の単離された
胎盤細胞集団のいずれか2つ以上を組み合わせて、単離された胎盤細胞集団を形成するこ
とができる。例えば、単離された胎盤接着性細胞の集団は、上述したマーカーの組合せの
1つによって定義された第1の単離された胎盤接着性細胞集団、および上述したマーカー
の組合せの別のものによって定義された第2の単離された胎盤接着性細胞集団を含んでい
てもよく、前記第1および第2の集団は、約1:99、2:98、3:97、4:96、
5:95、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40
、70:30、80:20、90:10、95:5、96:4、97:3、98:2、ま
たは約99:1の比率で組み合わされる。同様の様式で、上述した単離された胎盤接着性
細胞または単離された胎盤接着性細胞集団のいずれか3つ、4つ、5つまたはそれより多
くを組み合わせることができる。
【0126】
本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離された胎盤接着性細胞は、
例えば胎盤組織の破壊により得ることができ、この破壊は、酵素による消化(5.4.3
章を参照)または潅流(5.4.4章を参照)を用いてもよいし、または用いなくてもよ
い。例えば、単離された胎盤接着性細胞集団は、臍帯血を引き出し、潅流して、残留した
血液を除去した哺乳類胎盤を潅流するステップ;前記胎盤を潅流溶液で潅流するステップ
;および前記潅流溶液を収集するステップであって、潅流後の前記潅流溶液は、単離され
た胎盤接着性細胞を含む胎盤接着性細胞集団を含む、ステップ;および前記細胞集団から
複数の前記単離された胎盤接着性細胞を単離するステップを含む方法に従って産生するこ
とができる。具体的な実施形態において、潅流溶液は、臍帯静脈と臍帯動脈の両方を通過
して、それが胎盤から滲出した後に収集される。別の具体的な実施形態において、潅流溶
液は、臍帯静脈を通過して臍帯動脈から収集されるか、または臍帯動脈を通過して臍帯静
脈から収集される。
【0127】
様々な実施形態において、胎盤の潅流から得られた細胞の集団内に含有される単離され
た胎盤接着性細胞は、前記胎盤接着性細胞の集団の少なくとも50%、60%、70%、
80%、90%、95%、99%または少なくとも99.5%である。別の具体的な実施
形態において、潅流によって収集された単離された胎盤接着性細胞は、胎児の細胞および
母体の細胞を含む。別の具体的な実施形態において、潅流によって収集された単離された
胎盤接着性細胞は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99
%または少なくとも99.5%が胎児細胞である。
【0128】
別の具体的な実施形態において、本明細書に記載されるように、潅流により収集された
単離された胎盤接着性細胞集団を含む組成物であって、前記組成物は、単離された胎盤接
着性細胞を収集するのに使用される潅流溶液の少なくとも一部を含む、組成物が本明細書
で提供される。
【0129】
本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞の単離された集団は、組織を破壊する
酵素で胎盤組織を消化して、細胞を含む胎盤接着性細胞集団を得ること、および前記胎盤
接着性細胞の残りから複数の胎盤接着性細胞を単離すること、または実質的に単離するこ
とによって産生することができる。胎盤の全体またはそのいずれか一部を消化して、本明
細書に記載される単離された胎盤接着性細胞を得ることができる。具体的な実施形態にお
いて、例えば、前記胎盤組織は、胎盤全体、羊膜、柔毛膜、羊膜と柔毛膜の組合せ、また
は前述のもののいずれかの組合せであってもよい。他の具体的な実施形態において、組織
を破壊する酵素は、トリプシンまたはコラゲナーゼである。様々な実施形態において、胎
盤を消化することから得られた細胞の集団内に含有される単離された胎盤接着性細胞は、
前記胎盤接着性細胞集団の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%
、99%または少なくとも99.5%である。
【0130】
上述した胎盤接着性細胞の単離された集団、および単離された胎盤接着性細胞の集団は
、一般的に、約1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×1
、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010
、1×1011個またはそれより多くの、少なくともそれらの個数の、またはそれらの個
数以下の、単離された胎盤接着性細胞を含んでいてもよい。本明細書に記載される処置方
法において有用な単離された胎盤接着性細胞の集団は、例えばトリパンブルー排除によっ
て決定可能な、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、
85%、90%、95%、98%、または99%の生存可能な単離された胎盤接着性細胞
を含む。
【0131】
5.3.3 培養における増殖
本明細書のセクション5.3に記載される単離された胎盤接着性細胞の増殖は、いずれ
の哺乳類細胞の場合と同様に、増殖のために選択された特定の培地に一部依存する。最適
な条件下で、単離された胎盤接着性細胞は、典型的には、約1日で数が2倍になる。培養
の間、本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞は、培養中の基材に、例えば組織
培養容器(例えば、組織培養皿プラスチック、フィブロネクチンでコーティングしたプラ
スチック、および同種のもの)の表面に接着して、単分子層を形成する。
【0132】
本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞を含む胎盤接着性細胞の集団は、適切
な条件下で培養される場合、胚様体を形成することができ、すなわち、細胞の3次元クラ
スターが接着性細胞層の頂上で増殖する。胚様体内の細胞は、ごく早期の幹細胞に関連す
るマーカー、例えば、OCT-4、Nanog、SSEA3およびSSEA4を発現する
ことができる。胚様体内の細胞は、典型的には、本明細書に記載される単離された胎盤接
着性細胞のように培養基材への接着性を有さないが、培養の間は接着性細胞に付着したま
まになる傾向がある。接着性の単離された胎盤接着性細胞の非存在下で胚様体が形成され
ないため、胚様体細胞は、生存能について接着性の単離された胎盤接着性細胞に依存して
いる。したがって接着性の単離された胎盤接着性細胞は、接着性の単離された胎盤接着性
細胞を含む胎盤接着性細胞の集団における1つまたは複数の胚様体の増殖を促進する。理
論に制限されることは望まないが、胚様体の細胞は、接着性の単離された胎盤接着性細胞
上でも、胚性幹細胞が細胞のフィーダー層上で増殖するのと同等に多く増殖すると考えら
れる。
【0133】
5.4 単離された胎盤細胞を得る方法
5.4.1 幹細胞収集組成物
さらに、上記の5.3章に記載される胎盤接着性細胞、例えば単離された胎盤接着性細
胞を収集および単離する方法が本明細書において提供される。一般的に、このような細胞
は、哺乳類胎盤から、生理的に許容できる溶液、例えば細胞収集組成物を使用して得られ
る。例示的な細胞収集組成物は、「Improved Medium for Coll
ecting Placental Stem Cells and Preservi
ng Organs」という表題の関連する特許文献6で詳細に記載されており、その開
示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0134】
細胞収集組成物は、細胞、例えば本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞の収
集および/または培養に好適なあらゆる生理的に許容できる溶液、例えば、塩類溶液(例
えば、リン酸緩衝塩類溶液、クレブス溶液、改変クレブス溶液、イーグル溶液、0.9%
NaClなど)、培養培地(例えば、DMEM、H.DMEMなど)、および同種のもの
を含んでいてもよい。
【0135】
細胞収集組成物は、収集時間から培養時間まで、単離された胎盤接着性細胞を保存する
傾向がある、すなわち、単離された胎盤接着性細胞が乾燥しないようにする、または単離
された胎盤接着性細胞の死を遅延させる、細胞集団中の死亡する単離された胎盤接着性細
胞の数を低減する等の1つまたは複数の要素を含んでいてもよい。このような要素は、例
えば、アポトーシス阻害剤(例えば、カスパーゼ阻害剤またはJNK阻害剤);血管拡張
剤(例えば、硫酸マグネシウム、抗高血圧薬、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコトロピン放出ホルモン、ニトロプルシドナトリウム、
ヒドララジン、アデノシン三リン酸、アデノシン、インドメタシンまたは硫酸マグネシウ
ム、ホスホジエステラーゼ阻害剤など);壊死阻害剤(例えば、2-(1H-インドール
-3-イル)-3-ペンチルアミノ-マレイミド、ピロリジンジチオカルバメート、また
はクロナゼパム);TNF-α阻害剤;および/または酸素運搬ペルフルオロカーボン(
例えば、ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロデシルブロミドなど)であり得る
【0136】
細胞収集組成物は、1つまたは複数の組織分解酵素、例えば、メタロプロテアーゼ、セ
リンプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、RNアーゼ、またはDNアーゼ、または同種のも
のを含んでいてもよい。このような酵素としては、これらに限定されないが、コラゲナー
ゼ(例えば、コラゲナーゼI、II、IIIまたはIV、クロストリジウム・ヒストリチ
カム(Clostridium histolyticum)由来のコラゲナーゼなど)
;ディスパーゼ、サーモリシン、エラスターゼ、トリプシン、LIBERASE、ヒアル
ロニダーゼ、および同種のものが挙げられる。
【0137】
細胞収集組成物は、殺菌的または静菌的に有効な量の抗生物質を含んでいてもよい。あ
る特定の非限定的な実施形態において、抗生物質は、マクロライド(例えば、トブラマイ
シン)、セファロスポリン(例えば、セファレキシン、セフラジン、セフロキシム、セフ
プロジル、セファクロル、セフィキシムまたはセファドロキシル)、クラリスロマイシン
、エリスロマイシン、ペニシリン(例えば、ペニシリンV)またはキノロン(例えば、オ
フロキサシン、シプロフロキサシンまたはノルフロキサシン)、テトラサイクリン、スト
レプトマイシンなどである。特定の実施形態において、抗生物質は、グラム(+)および
/またはグラム(-)細菌、例えば、緑膿菌(Pseudomonas aerugin
osa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などに対し
て活性である。一実施形態において、抗生物質は、ゲンタマイシンであり、例えば、培養
培地中約0.005%から約0.01%(w/v)である。細胞収集組成物はまた、以下
の化合物の1つまたは複数:アデノシン(約1mMから約50mM);D-グルコース(
約20mMから約100mM);マグネシウムイオン(約1mMから約50mM);20
,000ダルトンより大きい分子量を有する巨大分子、一実施形態において、内皮の完全
性および細胞の生存能を維持するのに十分な量で存在するもの(例えば、合成または天然
に存在するコロイド、多糖類、例えば約25g/lから約100g/l、または約40g
/lから約60g/lで存在するデキストランまたはポリエチレングリコールなど);抗
酸化剤(例えば、約25μMから約100μMで存在する、ブチルヒドロキシアニソール
、ブチルヒドロキシトルエン、グルタチオン、ビタミンCまたはビタミンE);還元剤(
例えば、約0.1mMから約5mMで存在するN-アセチルシステイン);細胞へのカル
シウム侵入を予防する薬剤(例えば、約2μMから約25μMで存在するベラパミル);
ニトログリセリン(例えば、約0.05g/Lから約0.2g/L);抗凝血剤、一実施
形態において、残留した血液の凝固の予防を助けるのに十分な量で存在する抗凝血剤(例
えば、約1000ユニット/lから約100,000ユニット/lの濃度で存在するヘパ
リンまたはヒルジン);またはアミロライド含有化合物(例えば、約1.0μMから約5
μMで存在する、アミロライド、エチルイソプロピルアミロライド、ヘキサメチレンアミ
ロライド、ジメチルアミロライドまたはイソブチルアミロライド)を含んでいてもよい。
【0138】
5.4.2 胎盤の収集および取り扱い
一般的に、ヒト胎盤は、出産後に排除された直後に回収される。好ましい実施形態にお
いて、胎盤は、インフォームドコンセントの後、および患者の完全な病歴を把握し、胎盤
と関連付けた後に、患者から回収される。好ましくは、病歴は、分娩後も継続する。この
ような病歴は、それに続く胎盤または胎盤から回収された単離された胎盤接着性細胞の使
用と連携させるのに使用することができる。例えば、単離されたヒト胎盤接着性細胞は、
病歴を考慮して、胎盤に関連する乳児のための、または乳児の親、兄弟もしくは他の親族
のための個別化薬に使用することができる。
【0139】
単離された胎盤接着性細胞の回収の前に、臍帯血および胎盤血は、好ましくは除去され
る。ある特定の実施形態において、分娩後、胎盤中の臍帯血が回収される。胎盤は、従来
の臍帯血回収プロセスに供することができる。典型的には、針またはカニューレを使用し
て、重力の助けによって胎盤放血させる(例えば、アンダーソン(Anderson)、
特許文献7;ヘッセル(Hessel)ら、特許文献8を参照)。通常、針またはカニュ
ーレを臍帯静脈中に置き、胎盤を穏やかに揉んで胎盤からの臍帯血の引き出しを助けるこ
とができる。このような臍帯血回収は商業的に実行することもでき、例えば、LifeB
ank USA、Cedar Knolls、N.J.である。好ましくは、臍帯血回収
中の組織の破壊が最小化されるように、胎盤は、さらなる操作を用いずに重力により引き
出される。
【0140】
典型的には、胎盤は、例えば潅流または組織解離による臍帯血の回収および幹細胞の収
集のために、分娩または出産室から別の場所、例えば実験室に輸送される。胎盤は、好ま
しくは、断熱された滅菌輸送デバイス(胎盤の温度を20~28℃の間に維持する)で、
例えば、滅菌ジップロックプラスチックバッグ中に近位の臍帯を固定して胎盤を置き、次
いでこれを断熱容器中に置くことにより輸送される。別の実施形態において、胎盤は、実
質的にその開示が参照により本明細書に組み入れられる係属中の特許文献9に記載される
ような臍帯血収集キットで輸送される。好ましくは、胎盤は、分娩後4から24時間で実
験室に届けられる。ある特定の実施形態において、近位の臍帯は、臍帯血回収の前に、盤
状胎盤(placental disc)への挿入部の、好ましくは4~5cm(センチ
メートル)以内に固定される。他の実施形態において、近位の臍帯は、臍帯血回収の後、
ただしさらなる胎盤加工の前に固定される。
【0141】
胎盤は、細胞収集の前に、滅菌条件下で、室温または5℃から25℃の温度のいずれか
で貯蔵することができる。胎盤は、胎盤を潅流して全ての残留した臍帯血を除去する前の
、4から24時間の期間にわたり、48時間まで、または48時間より長く、貯蔵しても
よい。一実施形態において、胎盤は、排除後、約0時間から約2時間の間に収穫される。
胎盤は、好ましくは、抗凝血剤溶液中で、5℃から25℃の温度で、貯蔵される。好適な
抗凝血剤溶液は当業界において周知である。例えば、ヘパリンまたはワルファリンナトリ
ウムの溶液を使用することができる。好ましい実施形態において、抗凝血剤溶液は、ヘパ
リンの溶液(例えば、1:1000溶液中、1%w/w)を含む。放血された胎盤は、好
ましくは胎盤接着性細胞を収集する前の36時間以下で貯蔵される。
【0142】
哺乳類胎盤またはその部分は、上述したようにひとたび一般的に収集され調製されたら
、あらゆる当業界公知の方式で処理することができ、例えば、潅流または破壊することに
より、例えば1つまたは複数の組織を破壊する酵素で消化することにより、単離された胎
盤接着性細胞を得ることができる。
【0143】
5.4.3 胎盤組織の物理的な破壊および酵素消化
一実施形態において、幹細胞は、臓器の一部または全ての物理的な破壊によって、哺乳
類胎盤から収集される。例えば、胎盤またはその部分を、例えば、粉砕する、剪断する、
細かく刻む、さいの目に切る、切り刻む、ほぐす等することができる。次いで組織を培養
して、単離された胎盤接着性細胞の集団を得ることができる。典型的には、例えば、培養
培地、塩類溶液、または幹細胞収集組成物(セクション5.4.1および以下を参照)を
使用して、胎盤組織を破壊する。
【0144】
胎盤は、物理的な破壊および/または酵素消化ならびに幹細胞の回収の前に要素に切り
分けることができる。単離された胎盤接着性細胞は、羊膜、柔毛膜、臍帯、胎盤絨毛叢の
全てまたは一部、または胎盤全体を含むそれらのいずれかの組合せから得ることができる
。好ましくは、単離された胎盤接着性細胞は、羊膜および柔毛膜を含む胎盤組織から得ら
れる。典型的には、単離された胎盤接着性細胞は、小さいブロックの胎盤組織の破壊、例
えば、体積が約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、
60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、
800、900または約1000立方ミリメートルの胎盤組織のブロックの破壊により得
ることができる。破壊方法が、例えばトリパンブルー排除によって決定可能な、前記臓器
中の細胞の複数、より好ましくは大部分、より好ましくは少なくとも60%、70%、8
0%、90%、95%、98%、または99%を生存可能なままにするという条件で、あ
らゆる物理的な破壊方法を使用することができる。
【0145】
単離された接着性胎盤接着性細胞は、一般的に、排除後の最初の3日以内のいつでも、
ただし好ましくは排除後約8時間から約18時間の間に、胎盤またはその一部から収集す
ることができる。
【0146】
具体的な実施形態において、破壊された組織は、単離された胎盤接着性細胞の増殖に好
適な組織培養培地中で培養される(例えば、胎盤接着性細胞、例えば胎盤接着性細胞の培
養を記載する以下のセクション5.5を参照)。
【0147】
別の具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、物理的な胎盤組織の破
壊によって収集され、物理的な破壊としては、1つまたは複数の組織消化酵素の使用によ
って達成できる酵素消化が挙げられる。また胎盤またはその部分を物理的に破壊し、1つ
または複数の酵素で消化してもよく、次いで得られた材料を細胞収集組成物中に浸すか、
またはそれに混合してもよい。
【0148】
好ましい細胞収集組成物は、1つまたは複数の組織を破壊する酵素を含む。胎盤組織を
破壊するのに使用できる酵素としては、パパイン、デオキシリボヌクレアーゼ、セリンプ
ロテアーゼ、例えばトリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼまたはエ
ラスターゼなどが挙げられる。セリンプロテアーゼは、血清中のアルファ2ミクログロブ
リンによって阻害される場合があるため、消化に使用される培地は通常、無血清である。
細胞回収効率を増加させるために、EDTAおよびDNアーゼが酵素消化手順において一
般的に使用される。粘性の消化物中への細胞の捕獲が回避されるように、消化されるもの
を好ましくは希釈する。
【0149】
組織消化酵素のあらゆる組合せを使用することができる。トリプシンを使用する消化の
ための典型的な濃度としては、0.1%から約2%のトリプシン、例えば約0.25%の
トリプシンが挙げられる。プロテアーゼは、組み合わせて使用してもよく、すなわち2つ
以上のプロテアーゼを同じ消化反応で使用してもよく、または胎盤接着性細胞、例えば胎
盤幹細胞および複能性胎盤細胞を遊離させるために逐次的に使用してもよい。例えば、一
実施形態において、胎盤またはその部分は、最初に、適切な量のコラゲナーゼIで、約1
から約2mg/mlで、例えば30分間消化され、それに続いてトリプシンで、約0.2
5%の濃度で、例えば10分間、37℃で消化される。セリンプロテアーゼは、好ましく
は、他の酵素の使用後に連続して使用することができる。
【0150】
別の実施形態において、幹細胞収集組成物を用いて幹細胞を単離する前に、キレート化
剤、例えば、エチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’N’
-四酢酸(EGTA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を、幹細胞を含む幹細
胞収集組成物に、またはその中で組織が破壊および/または消化される溶液に添加するこ
とによって、組織をさらに破壊することもできる。
【0151】
消化後、消化されたものを例えば培養培地で3回洗浄し、洗浄した細胞を培養フラスコ
に植え付ける。次いで細胞を示差的な接着により単離し、例えば生存能、細胞表面マーカ
ー、分化、および同種のものに関して特徴付ける。
【0152】
胎盤全体または胎盤の部分が胎児の細胞と母体の細胞の両方を含む(例えば、胎盤の部
分が柔毛膜または絨毛叢を含む場合)単離された胎盤接着性細胞は、胎児源と母体源の両
方に由来する胎盤接着性細胞の混合物を含むことができると理解されると予想される。胎
盤の部分が母体の細胞(例えば、羊膜)を含まないかごく少数しか含まない場合、それか
ら単離された胎盤接着性細胞は、ほぼ胎児の胎盤接着性細胞(すなわち、胎児の遺伝子型
を有する胎盤接着性細胞)のみを含むと予想される。
【0153】
胎盤細胞、例えば、上記の5.3章に記載される胎盤接着性細胞は、示差的なトリプシ
ン処理(以下の5.3.5章を参照)、それに続く1つまたは複数の新しい培養容器中に
おける新鮮な増殖培地中での培養、任意選択でそれに続く第2の示差的なトリプシン処理
工程によって、破壊された胎盤組織から単離することができる。
【0154】
5.4.4.胎盤の潅流
胎盤細胞、例えば、上記の5.3章に記載される胎盤接着性細胞はまた、哺乳類胎盤の
潅流によっても得ることができる。哺乳類の胎盤を潅流して胎盤接着性細胞を得る方法は
、例えば、それぞれの開示がこの参照によりそれらの全体が開示に組み入れられる、ハリ
リ(Hariri)、特許文献10および特許文献11、ならびに特許文献5および特許
文献6で開示されている。
【0155】
胎盤細胞は、潅流溶液として例えば細胞収集組成物を使用する、例えば胎盤の血管系を
介した潅流によって収集することができる。一実施形態において、哺乳類胎盤は、臍帯動
脈および臍帯静脈のいずれかまたはその両方に潅流溶液を通過させることによって潅流さ
れる。胎盤を通る潅流溶液の流動は、例えば胎盤への重力流を使用して達成することがで
きる。好ましくは、ポンプ、例えば蠕動ポンプを使用して、潅流溶液を胎盤に押し通す。
臍帯静脈に、例えば、滅菌接続器具、例えば滅菌管材料などに接続された、カニューレ、
例えばTEFLON(登録商標)またはプラスチックカニューレを挿入することができる
。滅菌接続器具は、潅流マニホールドに接続される。
【0156】
潅流の準備において、胎盤は、好ましくは、胎盤の最も高い地点に臍帯動脈および臍帯
静脈が配置されるような方式で方向付けられる(例えば、吊り下げられる)。潅流流体を
胎盤の血管系および周囲の組織を通過させることによって、胎盤を潅流することができる
。また、臍帯静脈への潅流流体の通過および臍帯動脈からの収集、または臍帯動脈への潅
流流体の通過および臍帯静脈からの収集によっても、胎盤を潅流することができる。
【0157】
一実施形態において、例えば、臍帯動脈および臍帯静脈は、例えばフレキシブルなコネ
クターを介して潅流溶液のリザーバに接続されているピペットに、同時に接続される。潅
流溶液は、臍帯静脈および動脈に注入される。潅流溶液は、血管壁からおよび/またはそ
れを通過して胎盤の周囲組織に滲出し、妊娠中に母親の子宮に付着していた胎盤の表面か
ら好適な開放血管に収集される。また潅流溶液を、臍帯の開口部を介して導入し、母体の
子宮壁との境界面である胎盤の壁中の開口部から流動または浸透させてもよい。この方法
は、「受け皿(pan)」方法と称することができ、それにより収集される胎盤細胞は、
典型的には胎児の細胞と母体の細胞との混合物である。
【0158】
別の実施形態において、潅流溶液は、臍帯静脈を通過し、臍帯動脈からから収集される
か、または臍帯動脈を通過し、臍帯静脈から収集される。この方法は、「閉回路」方法と
称することができ、それにより収集される胎盤細胞は、典型的にはほぼ胎児のみである。
【0159】
受け皿方法、すなわちそれによって潅流液が胎盤の母体側から滲出した後に収集される
方法を使用する潅流は、胎児の細胞と母体の細胞との混合物を生じることが理解されると
予想される。結果として、この方法によって収集された細胞は、胎児起源と母体起源の両
方の、混成の胎盤接着性細胞集団、例えば胎盤幹細胞または複能性胎盤細胞を含み得る。
対照的に、閉回路方法で胎盤の血管系のみを通る潅流、すなわちそれによって潅流流体が
1または2つの胎盤の血管を通過して残りの血管のみを通って収集される潅流は、ほぼ胎
児起源の胎盤接着性細胞の集団のみの収集がもたらされる。
【0160】
閉回路潅流方法は、一実施形態において、以下のように実行することができる。出産後
約48時間以内に産後の胎盤を得る。臍帯を固定し、クランプ上で切断する。臍帯は、捨
ててもよいし、または例えば臍帯幹細胞を回収するために加工したり、および/またはバ
イオマテリアル産生のために臍帯膜を加工したりすることもできる。羊膜は、潅流中に保
持されていてもよいし、または例えば指での鈍的剥離を使用して柔毛膜から分離されても
よい。羊膜が潅流の前に柔毛膜から分離される場合、羊膜は、例えば、捨ててもよいし、
または例えば、酵素消化によって幹細胞を得るために、または例えば羊膜バイオマテリア
ル、例えばその開示が参照によりその全体が本明細書に組み入れられる特許文献10に記
載のバイオマテリアルを産生するために加工されてもよい。全ての目に見える血餅や残留
した血液を例えば滅菌ガーゼを使用して胎盤からクリーニングした後、例えば臍帯膜を部
分的に切断して臍帯の断面を露出させることによって、臍帯血管を露出させる。血管を確
認して、例えば各血管の切断端部末端を通って閉じたワニ口クランプを進めることによっ
て開く。次いで潅流デバイスまたは蠕動ポンプに接続された器具、例えばプラスチック管
材料を、胎盤動脈のそれぞれに挿入する。ポンプは、目的に好適な、例えば蠕動ポンプで
あり得る。次いで、滅菌収集リザーバ、例えば血液バッグ、例えば250mL収集バッグ
などに接続されたプラスチック管材料は、胎盤静脈に挿入される。代替として、ポンプに
接続された管材料が胎盤静脈に挿入され、収集リザーバへの管は、胎盤動脈の一方または
両方に挿入される。次いで胎盤を、所定体積の潅流溶液、例えば、約750mlの潅流溶
液で潅流する。次いで潅流液中の細胞を、例えば遠心分離によって収集する。ある特定の
実施形態において、胎盤を潅流溶液、例えば100~300mLの潅流溶液で潅流して、
潅流の前に残留した血液を除去し、胎盤接着性細胞、例えば胎盤幹細胞および/または複
能性胎盤細胞を収集する。別の実施形態において、胎盤を潅流溶液で潅流せずに、潅流の
前に残留した血液を除去し、胎盤接着性細胞を収集する。
【0161】
一実施形態において、近位の臍帯は、潅流中固定され、より好ましくは、盤状胎盤(p
lacental disc)への臍帯の挿入部の4~5cm(センチメートル)以内に
固定される。
【0162】
放血プロセス中における哺乳類胎盤からの潅流流体の第1の収集物は、一般的に、臍帯
血および/または胎盤の血液の残留した赤血球で着色されている。潅流流体は、潅流が進
むにつれてより無色になり、残留した臍帯血細胞は胎盤から洗い落とされる。一般的に3
0から100ml(ミリリットル)の潅流流体が、初期に胎盤を放血させるのに十分であ
るが、観察された結果に応じてそれより多いまたは少ない潅流流体を使用してもよい。
【0163】
胎盤接着性細胞を単離するのに使用される潅流液体の体積は、収集しようとする細胞の
数、胎盤のサイズ、単一の胎盤から作製しようとする収集物の数などに応じて様々であり
得る。様々な実施形態において、潅流液体の体積は、50mLから5000mL、50m
Lから4000mL、50mLから3000mL、100mLから2000mL、250
mLから2000mL、500mLから2000mL、または750mLから2000m
Lであり得る。典型的には、胎盤は、放血後、700~800mLの潅流液体で潅流され
る。
【0164】
胎盤は、数時間または数日にわたり複数回潅流することができる。胎盤を複数回潅流し
ようとする場合、無菌条件下において容器または他の好適な入れ物中で維持または培養し
て、抗凝血剤(例えば、ヘパリン、ワルファリンナトリウム、クマリン、ビスヒドロキシ
クマリン)含有または非含有の、および/または抗微生物剤(例えば、β-メルカプトエ
タノール(0.1mM);抗生物質、例えばストレプトマイシン(例えば、40~100
μg/mlで)、ペニシリン(例えば、40U/mlで)、アンホテリシンB(例えば、
0.5μg/mlで)など)含有または非含有の、細胞収集組成物、または標準的な潅流
溶液(例えば、リン酸緩衝塩類溶液(「PBS」)などの通常の塩類溶液)で潅流しても
よい。一実施形態において、潅流および潅流液の収集前の1、2、3、4、5、6、7、
8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、
22、23、もしくは24時間、または2もしくは3日間またはそれより多くの日数にわ
たり胎盤が維持または培養されるように、単離された胎盤は、所定期間にわたり潅流液を
収集せずに維持または培養される。潅流された胎盤は、1または複数の追加の回、例えば
、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、
17、18、19、20、21、22、23、24時間またはそれより長い時間維持して
、2回目に、例えば700~800mLの潅流流体で潅流してもよい。胎盤は、1、2、
3、4、5回またはそれより多く、例えば1、2、3、4、5または6時間毎に1回潅流
することができる。好ましい実施形態において、胎盤の潅流および潅流溶液、例えば細胞
収集組成物の収集は、回収した有核細胞の数が細胞100個/ml未満に落ちるまで繰り
返される。異なるタイムポイントでの潅流液はさらに、時間依存的な細胞、例えば幹細胞
の集団を回収するために個々に加工することができる。異なるタイムポイントからの潅流
液はまた、プールすることもできる。好ましい実施形態において、胎盤接着性細胞は、排
除後の約8時間から約18時間の間の1つの時点または複数の時点で収集される。
【0165】
潅流は、好ましくは、前記溶液で潅流されておらず、胎盤接着性細胞を得るための別段
の処置(例えば、組織の破壊、例えば酵素消化による)がなされていない哺乳類胎盤から
入手可能な数より有意に多くの胎盤接着性細胞の収集をもたらす。この状況において、「
より有意に多く」は、少なくとも10%より多いことを意味する。潅流は、例えば胎盤ま
たはその一部を培養した培養培地から分離可能な胎盤接着性細胞の数より有意に多くの胎
盤接着性細胞を生じる。
【0166】
胎盤細胞は、1つまたは複数のプロテアーゼまたは他の組織を破壊する酵素を含む溶液
での潅流によって胎盤から単離することができる。具体的な実施形態において、胎盤また
はその部分(例えば、羊膜、羊膜および柔毛膜、胎盤小葉もしくは絨毛叢、臍帯、または
前述のもののいずれかの組合せ)を25~37℃にして、200mLの培養培地中の1つ
または複数の組織を破壊する酵素と共に30分インキュベートする。潅流液からの細胞を
収集し、4℃にして、5mMのEDTA、2mMジチオスレイトールおよび2mMベータ
-メルカプトエタノールを含む冷たい阻害剤混合物で洗浄する。数分後に冷たい(例えば
、4℃の)幹細胞収集組成物で胎盤接着性細胞を洗浄する。
【0167】
5.4.5 胎盤細胞の単離、ソーティング、および特徴付け
単離された胎盤接着性細胞、例えば上記の5.3章に記載される細胞は、潅流により得
られたか、または物理的な破壊、例えば酵素消化により得られたかにかかわらず、最初に
、Ficoll勾配遠心分離によって他の細胞から精製することができる(すなわち、そ
れから単離することができる)。このような遠心分離は、遠心分離速度などに関してどの
ような標準的なプロトコールに従っていてもよい。一実施形態において、例えば、胎盤か
ら収集された細胞を、5000×gで15分、室温での遠心分離によって潅流液から回収
し、それにより例えば混入している死細胞片および血小板から細胞を分離する。別の実施
形態において、胎盤潅流液を約200mlに濃縮し、穏やかにFicoll上に層化して
、約1100×gで20分、22℃で遠心分離し、さらなる加工のために低密度の細胞の
境界層を収集する。
【0168】
細胞ペレットは、新鮮な幹細胞収集組成物、または細胞の維持、例えば、幹細胞の維持
に好適な培地、例えば、2U/mlヘパリンおよび2mMのEDTA(GibcoBRL
、N.Y.)を含有するIMDM無血清培地に再懸濁することができる。総単核細胞画分
は、例えば、Lymphoprep(Nycomed Pharma、Oslo、Nor
way)を製造元の推奨された手順に従って使用して単離することができる。
【0169】
潅流または消化により得られた胎盤細胞は、例えば、さらに、または最初に、例えば0
.2%EDTA(Sigma、St.Louis Mo.)を含む0.05%トリプシン
溶液を使用する示差的なトリプシン処理によって単離することができる。単離された胎盤
接着性細胞は、組織培養プラスチック接着性であり、典型的には約5分以内にプラスチッ
ク表面から取り外されるため、示差的なトリプシン処理が可能であり、それに対して他の
接着性集団は、典型的には20~30分より長いインキュベーションを必要とする。取り
外された胎盤接着性細胞は、例えばトリプシン中和溶液(Trypsin Neutra
lizing Solution;TNS、Cambrex)を使用するトリプシン処理
およびトリプシン中和後、収穫することができる。接着細胞単離の一実施形態において、
例えば細胞約5~10×10個のアリコートを、数々のT-75フラスコ、好ましくは
フィブロネクチンでコーティングしたT75フラスコのそれぞれ中に入れる。このような
実施形態において、細胞を市販の間充織幹細胞増殖培地(MSCGM)(Cambrex
)で培養して、組織培養インキュベーター(37℃、5%CO)中に入れることができ
る。10から15日後、PBSで洗浄することによって非接着細胞をフラスコから除去す
る。次いでPBSをMSCGMで交換する。様々な接着細胞タイプの存在について、特定
には線維芽細胞様細胞のクラスターの同定および拡張について、フラスコを、好ましくは
毎日検査することができる。
【0170】
哺乳類胎盤から収集された細胞の数およびタイプは、例えば、例えばフローサイトメト
リー、セルソーティング、免疫細胞化学(例えば、組織特異的なまたは細胞-マーカー特
異的な抗体での染色)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、磁気活性化セルソー
ティング(MACS)などの標準的な細胞検出技術を使用して形態および細胞表面マーカ
ーの変化を測定することによって、光学または共焦点顕微鏡法を使用する細胞の形態の検
査によって、および/または例えばPCRおよび遺伝子発現プロファイリングなどの当業
界において周知の技術を使用して遺伝子発現の変化を測定することによってモニターする
ことができる。これらの技術はまた、1つまたは複数の特定のマーカーに関して陽性であ
る細胞を同定するのにも使用することができる。例えば、CD34に対する抗体を使用し
て、上記技術を使用して、細胞が検出可能な量のCD34を含むのかどうかを決定するこ
とができ、含む場合、細胞はCD34である。同様に、細胞が、RT-PCRによって
検出するのに十分なOCT-4 RNAを産生するか、または成体細胞より有意に多くの
OCT-4 RNAを産生する場合、その細胞は、細胞表面マーカー(例えば、CD34
などのCDマーカー)に対するOCT-4抗体であり、幹細胞特異的遺伝子、例えばO
CT-4などの配列は当業界において周知である。
【0171】
胎盤細胞、特にFicoll分離、示差的な接着、またはそれら両方の組合せによって
単離された細胞は、蛍光活性化セルソーター(FACS)を使用してソートされてもよい
。蛍光活性化セルソーティング(FACS)は、細胞などの粒子を、粒子の蛍光特性に基
づいて分離するための周知の方法である(非特許文献2)。個々の粒子の蛍光性部分のレ
ーザー励起は、混合物からの陽性および陰性粒子の電磁気分離を可能にする小さい電荷を
生じる。一実施形態において、細胞表面マーカー特異的な抗体またはリガンドは、別個の
蛍光標識で標識される。細胞をセルソーターを介して処理することにより、使用される抗
体に結合するそれらの能力に基づいて細胞の分離が可能になる。FACSでソートされた
粒子は、分離およびクローニングを容易にするために、96-ウェルまたは384-ウェ
ルプレートの個々のウェルに直接堆積させることができる。
【0172】
1つのソーティングスキームにおいて、胎盤からの細胞、例えば胎盤接着性細胞は、マ
ーカーCD34、CD38、CD44、CD45、CD73、CD105、OCT-4お
よび/またはHLA-Gの1つまたは複数の発現に基づきソートされる。これは、培養中
のそれらの接着特性に基づきこのような細胞を選択するための手順と共に達成することが
できる。例えば、組織培養プラスチックへの接着の選択は、マーカー発現に基づきソーテ
ィングの前または後に達成することができる。一実施形態において、例えば、細胞はまず
、それらのCD34発現に基づきソートされ、CD34細胞が保持されて、加えてCD
200およびHLA-GであるCD34細胞が、全ての他のCD34細胞から分
離される。別の実施形態において、胎盤からの細胞は、それらのマーカーCD200およ
び/またはHLA-Gの発現に基づきソートされ、例えば、CD200を提示しHLA-
Gが欠如した細胞が、さらなる使用のために単離される。具体的な実施形態において、例
えばCD200を発現し、および/または例えばHLA-Gがない細胞は、それらのCD
73および/もしくはCD105、または抗体SH2、SH3もしくはSH4によって認
識されるエピトープの発現、またはCD34、CD38もしくはCD45の発現の欠如に
基づきさらにソートすることができる。例えば、別の実施形態において、胎盤接着性細胞
は、CD200、HLA-G、CD73、CD105、CD34、CD38およびCD4
5の発現またはそれらの欠如によってソートされ、CD200、HLA-G、CD7
、CD105、CD34、CD38およびCD45である胎盤接着性細胞が
、さらなる使用のために他の胎盤接着性細胞から単離される。
【0173】
ソートされた胎盤接着性細胞の上記実施形態のいずれかの具体的な実施形態において、
ソーティング後に残存する細胞集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80
%、90%または95%が、前記単離された胎盤接着性細胞である。胎盤細胞は、上記の
5.3章に記載されるマーカーのいずれかの1つまたは複数によってソートすることがで
きる。
【0174】
具体的な実施形態において、例えば、(1)組織培養プラスチックに接着性であり、(
2)CD10、CD34およびCD105である胎盤接着性細胞が、他の胎盤接着
性細胞からソートされる(すなわち、それから単離される)。別の具体的な実施形態にお
いて、(1)組織培養プラスチックに接着性であり、(2)CD10、CD34、C
D105およびCD200である胎盤接着性細胞が、他の胎盤接着性細胞からソート
される(すなわち、それから単離される)。別の具体的な実施形態において、(1)組織
培養プラスチックに接着性であり、(2)CD10、CD34、CD45、CD9
、CD105およびCD200である胎盤接着性細胞が、他の胎盤接着性細胞か
らソートされる(すなわち、それから単離される)。
【0175】
胎盤接着性細胞のヌクレオチド配列ベースの検出に関して、本明細書に列挙したマーカ
ーの配列は、例えばGenBankまたはEMBLなどの公開された形で利用可能なデー
タベースで容易に入手可能である。
【0176】
胎盤接着性細胞、例えば胎盤幹細胞または複能性胎盤細胞の抗体媒介性検出およびソー
ティングに関して、特定のマーカーに特異的なあらゆる抗体が、細胞の検出およびソーテ
ィング(例えば、蛍光活性化セルソーティング)に好適なあらゆるフルオロフォアまたは
他の標識と組み合わせて使用することができる。特異的なマーカーに対する抗体/フルオ
ロフォアの組合せとしては、これらに限定されないが、HLA-G(Serotec、ロ
ーリー、ノースカロライナ州より入手可能)、CD10(BD Immunocytom
etry Systems、サンノゼ、カリフォルニア州より入手可能)、CD44(B
D Biosciences Pharmingen、サンノゼ、カリフォルニア州より
入手可能)、およびCD105(R&D Systems Inc.、ミネアポリス、ミ
ネソタ州より入手可能)に対するフルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジ
ュゲートモノクローナル抗体; CD44、CD200、CD117、およびCD13に
対するフィコエリトリン(PE)コンジュゲートモノクローナル抗体(BD Biosc
iences Pharmingen); CD33およびCD10に対するフィコエリ
トリン-Cy7(PECy7)コンジュゲートモノクローナル抗体(BD Biosci
ences Pharmingen); CD38に対するアロフィコシアニン(APC
)コンジュゲートストレプトアビジンおよびモノクローナル抗体(BD Bioscie
nces Pharmingen);およびビオチン化CD90(BD Bioscie
nces Pharmingen)が挙げられる。使用できる他の抗体としては、これら
に限定されないが、CD133-APC(Miltenyi)、KDR-ビオチン(CD
309、Abcam)、サイトケラチンK-Fitc(SigmaまたはDako)、H
LA ABC-Fitc(BD)、HLA DR、DQ、DP-PE(BD)、β-2-
ミクログロブリン-PE(BD)、CD80-PE(BD)およびCD86-APC(B
D)が挙げられる。使用できる他の抗体/標識の組合せとしては、これらに限定されない
が、CD45-PerCP(ペリジニン(peridin)クロロフィルタンパク質);
CD44-PE;CD19-PE;CD10-F(フルオレセイン);HLA-G-Fお
よび7-アミノ-アクチノマイシン-D(7-AAD);HLA-ABC-F;および同
種のものが挙げられる。この列挙は全てを網羅したわけではなく、他の供給元からの他の
抗体も商業的に利用可能である。
【0177】
本明細書で提供される単離された胎盤接着性細胞は、CD117またはCD133に関
して、例えば、フィコエリトリン-Cy5(PE Cy5)コンジュゲートストレプトア
ビジンと、CD117またはCD133に対するビオチンコンジュゲートモノクローナル
抗体とを使用してアッセイすることができる。しかしながら、このシステムを使用して、
細胞は、比較的高いバックグラウンドのために、CD117またはCD133それぞれに
関して陽性のように見える可能性がある。
【0178】
単離された胎盤接着性細胞は、単一のマーカーに対する抗体で標識して、検出および/
ソートすることができる。また胎盤細胞は、異なるマーカーに対する複数の抗体で同時に
標識することもできる。
【0179】
別の実施形態において、磁気ビーズを使用して、細胞を分離することができる。細胞は
、磁気ビーズ(直径0.5~100μm)と結合するそれらの能力に基づいて粒子を分離
するための方法である磁気活性化セルソーティング(MACS)技術を使用してソートす
ることができる。磁気マイクロスフェアに、特定の細胞表面分子またはハプテンを特異的
に認識する抗体の共有結合による付加などの様々な有用な改変を行ってもよい。次いでビ
ーズを細胞と混合して、結合を可能にする。次いで細胞を磁場に通過させて、特異的な細
胞表面マーカーを有する細胞を分離する。一実施形態において、次いでこれらの細胞を単
離して、追加の細胞表面マーカーに対する抗体にカップリングされた磁気ビーズと再混合
することができる。細胞を磁場に再度通過させて、両方の抗体に結合した細胞を単離する
。次いでこのような細胞を希釈して、別々のプレート、例えばクローン単離のためのマイ
クロタイタープレートなどに移すことができる。
【0180】
単離された胎盤接着性細胞はまた、細胞形態学および増殖特徴に基づいて特徴付けおよ
び/またはソートすることもできる。例えば、単離された胎盤接着性細胞は、培養中、例
えば線維芽細胞様の外観を有するとして特徴付けることができ、および/または線維芽細
胞様の外観に基づき選択することができる。単離された胎盤接着性細胞はまた、胚様体を
有するとして特徴付けることもでき、および/または胚様体を形成するそれらの能力に基
づき選択することもできる。一実施形態において、例えば、培養中、形状が線維芽細胞様
であり、CD73およびCD105を発現し、1つまたは複数の胚様体を産生する胎盤接
着性細胞が、他の胎盤接着性細胞から単離される。別の実施形態において、培養中1つま
たは複数の胚様体を産生するOCT-4胎盤接着性細胞が、他の胎盤接着性細胞から単
離される。
【0181】
別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、コロニー形成単位アッセイによ
って同定および特徴付けすることができる。コロニー形成単位アッセイは一般的に当業界
で公知であり、例えばMESENCULT(商標)培地(Stem Cell Tech
nologies,Inc.、Vancouver、British Columbia
)などである。
【0182】
単離された胎盤接着性細胞は、生存能、増殖可能性、および寿命に関して、例えばトリ
パンブルー排除アッセイ、フルオレセイン二酢酸取り込みアッセイ、ヨウ化プロピジウム
取り込みアッセイ(生存能を評価するため);およびチミジン取り込みアッセイ、MTT
(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム
ブロミド)細胞増殖アッセイ(増殖を評価するため)などの当業界において公知の標準的
な技術を使用して評価することができる。寿命は、当業界において周知の方法によって、
例えば長期の培養で集団倍加の最大回数を決定することによって決定することができる。
【0183】
単離された胎盤接着性細胞、例えば上記の5.3章に記載される単離された胎盤接着性
細胞はまた、当業界において公知の他の技術、例えば、所望の細胞の選択的な成長(陽性
選択)、不要な細胞の選択的な破壊(陰性選択);例えばダイズ凝集素を用いた場合のよ
うな混成の集団中の示差的な細胞の凝集力に基づく分離;凍結融解手順;濾過;従来のお
よびゾーン遠心分離;遠心水簸(対向流遠心分離(counter-streaming
centrifugation));単位重力分離;向流分配;電気泳動などを使用し
て、他の胎盤接着性細胞から分離することもできる。
【0184】
5.5 単離された胎盤細胞の培養
5.5.1 培養培地
単離された胎盤接着性細胞、または単離された胎盤接着性細胞の集団、または胎盤接着
性細胞が生じる細胞もしくは胎盤組織は、細胞培養を開始したりまたは植え付けたりする
のに使用することができる。細胞は、一般的に、コーティングされていない滅菌組織培養
容器、またはラミニン、コラーゲン(例えば、天然または変性)、ゼラチン、フィブロネ
クチン、オルニチン、ビトロネクチン、ポリリシン、CELLSTART(商標)、およ
び/または細胞外膜タンパク質(例えば、MATRIGEL(登録商標)(BD Dis
covery Labware、ベッドフォード、マサチューセッツ州))、または他の
好適な生体分子または合成模倣剤などの細胞外マトリックスまたはリガンドでコーティン
グされた滅菌組織培養容器のいずれかに移される。
【0185】
単離された胎盤接着性細胞は、当業界において細胞、例えば幹細胞の培養に許容できる
と認められているあらゆる培地中およびあらゆる条件下で培養することができる。好まし
くは、培養培地は、血清を含む。単離された胎盤接着性細胞は、例えば、ITS(インス
リン-トランスフェリン-セレニウム)、LA+BSA(リノール酸-ウシ血清アルブミ
ン)、デキサメタゾンL-アスコルビン酸、PDGF、EGF、IGF-1、およびペニ
シリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM-LG(ダルベッコ改変必須培地、低グ
ルコース)/MCDB201(ニワトリ線維芽細胞基礎培地);10%ウシ胎児血清(F
BS)を含むDMEM-HG(高グルコース);15%FBSを含むDMEM-HG;1
0%FBS、10%ウマ血清、およびヒドロコルチゾンを含むIMDM(イスコフ改変ダ
ルベッコ培地);1%から20%のFBS、EGF、およびヘパリンを含むM199;1
0%のFBS、GLUTAMAX(商標)およびゲンタマイシンを含むα-MEM(最小
必須培地);10%のFBS、GLUTAMAX(商標)およびゲンタマイシンを含むD
MEMなどの中で培養することができる。
【0186】
胎盤接着性細胞を培養するのに使用できる他の培地としては、DMEM(高または低グ
ルコース)、イーグル基礎培地、ハムF10培地(F10)、ハムF-12培地(F12
)、イスコフ改変ダルベッコ培地、間葉系幹細胞増殖培地(MSCGM)、ライボビッツ
L-15培地、MCDB、DMEM/F12、RPMI1640、アドバンストDMEM
(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)、およびCELL-GRO
FREEが挙げられる。
【0187】
培養培地には、例えば、血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、好ましくは約2~1
5%(v/v);ウマ科動物(ウマ)血清(ES);ヒト血清(HS));ベータ-メル
カプトエタノール(BME)、好ましくは約0.001%(v/v);1つまたは複数の
増殖因子、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、塩基性
線維芽細胞増殖因子(bFGF)、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)、白血病抑
制因子(LIF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、およびエリスロポイエチン(EPO
);L-バリンなどのアミノ酸;ならびに微生物汚染を制御するための1つまたは複数の
抗生物質および/または抗真菌剤、例えば、ペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン、ア
ンホテリシンB、ゲンタマイシン、およびナイスタチンなどの1つまたは複数の要素を、
単独で、または組み合わせてのいずれかで補充することができる。
【0188】
単離された胎盤接着性細胞は、標準的な組織培養条件で、例えば、組織培養皿またはマ
ルチウェルプレートで培養することができる。単離された胎盤接着性細胞はまた、懸滴方
法を使用して培養することもできる。この方法において、単離された胎盤接着性細胞を約
5mLの培地中に細胞約1×10個/mLで懸濁して、組織培養容器の蓋の内部に、例
えば、100mLペトリ皿の内部に、1滴または複数滴の培地を置く。液滴は、例えば単
一の液滴でもよいし、または例えばマルチチャネルピペッターからの複数の液滴でもよい
。蓋を慎重に逆転させて、培養皿雰囲気中の含水量を維持するのに十分な体積の液体、例
えば滅菌PBSを含有する培養皿底部の上に置き、幹細胞を培養する。
【0189】
一実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、単離された胎盤接着性細胞におけ
る未分化の表現型を維持するのに作用する化合物の存在下で培養される。具体的な実施形
態において、化合物は、置換3,4-ジヒドロピリミド(dihydropyridim
ol)[4,5-d]ピリミジンである。別の具体的な実施形態において、化合物は、以
下の化学構造を有する化合物である:
【0190】
【化1】
化合物は、例えば約1μMから約10μMの間の濃度で、単離された胎盤接着性細胞、
または単離された胎盤接着性細胞の集団と接触させることができる。
【0191】
5.5.2 胎盤細胞の拡張および増殖
胎盤細胞または単離された胎盤接着性細胞の集団が単離されたら(例えば、胎盤細胞ま
たは胎盤接着性細胞の集団が、in vivoにおいて幹細胞または幹細胞の集団が通常
付随する胎盤接着性細胞の少なくとも50%から分離されたら)、細胞または細胞の集団
をin vitroで増殖および拡張することができる。例えば、単離された胎盤接着性
細胞の集団は、組織培養容器、例えば培養皿、フラスコ、マルチウェルプレート、または
同種のものの中で、細胞が70~90%密集度に増殖するのに十分な時間にわたり、すな
わち、細胞およびそれらの後代が組織培養容器の培養表面積の70~90%を占有するま
で培養することができる。
【0192】
単離された胎盤接着性細胞は、培養容器中に細胞増殖を可能にする密度で植え付けるこ
とができる。例えば、細胞は、低密度(例えば、細胞約1,000から約5,000個/
cm)から高密度(例えば、1cm当たり細胞約50,000個またはそれより多く
)に植え付けてもよい。好ましい実施形態において、細胞は、空気中約0から約5パーセ
ント体積のCOの存在下で培養される。一部の好ましい実施形態において、細胞は、空
気中約2から約25パーセントのO、好ましくは空気中約5から約20パーセントO
で培養される。細胞は、好ましくは約25℃から約40℃で、好ましくは37℃で培養さ
れる。細胞は、好ましくはインキュベーター中で培養される。培養培地は、静止であって
もよいし、または例えばバイオリアクターを使用して撹拌されてもよい。胎盤細胞、例え
ば胎盤幹細胞または胎盤複能性細胞は、好ましくは、低い酸化的ストレス下で(例えば、
グルタチオン、アスコルビン酸、カタラーゼ、トコフェロール、N-アセチルシステイン
、または同種のものを添加して)増殖される。
【0193】
100%未満の、例えば70%から90%の密集度が達成されたら、細胞を継代しても
よい。例えば、細胞は、当業界において周知の技術を使用して、酵素処置、例えばトリプ
シン処理して、それらを組織培養表面から分離することができる。ピペッティングによっ
て細胞を除去して細胞を数えた後、約10,000~100,000個/cmの細胞が
、新鮮な培養培地を含有する新しい培養容器に継代される。典型的には、新しい培地は、
単離された胎盤接着性細胞を除去した培地と同じタイプの培地である。単離された胎盤接
着性細胞は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、
または20回、またはそれより多くの回数、少なくともそれらの回数、またはそれら以下
の回数で継代することができる。
【0194】
5.5.3 単離された胎盤細胞集団
また、本明細書に記載される方法および組成物において有用な、単離された胎盤接着性
細胞集団、例えば上記の5.3章に記載される単離された胎盤接着性細胞集団も本明細書
で提供される。単離された胎盤接着性細胞の集団は、1つまたは複数の胎盤から直接的に
単離することができ、すなわち細胞集団は、単離された胎盤接着性細胞を含む胎盤接着性
細胞集団であってもよく、単離された胎盤接着性細胞は、潅流液から得られるかもしくは
潅流液中に含有され、または破壊された胎盤組織、例えば胎盤組織の消化されたもの(す
なわち、胎盤またはその部分の酵素消化により得られた細胞の収集物)から得られるかも
しくはその中に含有される。また本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞を培養
および拡張して、単離された胎盤接着性細胞集団を産生することもできる。また単離され
た胎盤接着性細胞を含む胎盤接着性細胞集団を培養および拡張して、胎盤細胞集団を産生
することもできる。
【0195】
本明細書で提供される処置の方法において有用な胎盤細胞集団は、単離された胎盤接着
性細胞、例えば本明細書の5.3章に記載されたような単離された胎盤接着性細胞を含む
。様々な実施形態において、胎盤細胞集団中の細胞の、少なくとも10%、20%、30
%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%は、単離
された胎盤接着性細胞である。すなわち単離された胎盤接着性細胞集団は、例えば、1%
、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%も
の単離された胎盤接着性細胞ではない細胞を含んでいてもよい。
【0196】
本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離された胎盤細胞集団は、例
えば、酵素消化から得たのかまたは潅流から得たのかにかかわらず、特定のマーカーおよ
び/または特定の培養のまたは形態学的な特徴を発現する単離された胎盤接着性細胞を選
択することによって産生することができる。一実施形態において、例えば、(a)基材に
接着し、(b)CD200を発現し、HLA-Gの発現が欠如している胎盤接着性細胞を
選択すること;および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成することによっ
て細胞集団を産生する方法が本明細書で提供される。別の実施形態において、細胞集団は
、CD200を発現し、HLA-Gの発現が欠如している胎盤接着性細胞を選択すること
、および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成することによって産生される
。別の実施形態において、細胞集団は、(a)基材に接着し、(b)CD73、CD10
5、およびCD200を発現する胎盤接着性細胞を選択すること;および前記細胞を他の
細胞から単離して、細胞集団を形成することによって産生される。別の実施形態において
、細胞集団は、CD73、CD105、およびCD200を発現する胎盤接着性細胞を同
定すること、および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成することによって
産生される。別の実施形態において、細胞集団は、(a)基材に接着し、(b)CD20
0およびOCT-4を発現する胎盤接着性細胞を選択すること;および前記細胞を他の細
胞から単離して、細胞集団を形成することによって産生される。別の実施形態において、
細胞集団は、CD200およびOCT-4を発現する胎盤接着性細胞を選択すること、お
よび前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成することによって産生される。別
の実施形態において、細胞集団は、(a)基材に接着し、(b)CD73およびCD10
5を発現し、(c)前記集団が胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養される場合、
前記幹細胞を含む胎盤接着性細胞集団における1つまたは複数の胚様体様体の形成を容易
にする胎盤接着性細胞を選択すること;および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集
団を形成することによって産生される。別の実施形態において、細胞集団は、CD73お
よびCD105を発現し、前記集団が胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養される
場合、前記幹細胞を含む胎盤接着性細胞集団における1つまたは複数の胚様体様体の形成
を容易にする胎盤接着性細胞を選択すること、および前記細胞を他の細胞から単離して、
細胞集団を形成することによって産生される。別の実施形態において、細胞集団は、(a
)基材に接着し、(b)CD73およびCD105を発現し、HLA-Gの発現が欠如し
ている胎盤接着性細胞を選択すること;および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集
団を形成することによって産生される。別の実施形態において、細胞集団は、CD73お
よびCD105を発現し、HLA-Gの発現が欠如している胎盤接着性細胞を選択するこ
と、および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成することによって産生され
る。別の実施形態において、細胞集団を産生する方法は、(a)基材に接着し、(b)O
CT-4を発現し、(c)前記集団が胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養される
場合、前記幹細胞を含む胎盤接着性細胞集団における1つまたは複数の胚様体様体の形成
を容易にする胎盤接着性細胞を選択すること;および前記細胞を他の細胞から単離して、
細胞集団を形成することを含む。別の実施形態において、細胞集団は、OCT-4を発現
し、前記集団が胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養される場合、前記幹細胞を含
む胎盤接着性細胞集団における1つまたは複数の胚様体様体の形成を容易にする胎盤接着
性細胞を選択すること、および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成するこ
とによって産生される。
【0197】
別の実施形態において、細胞集団は、(a)基材に接着し、(b)CD10およびCD
105を発現し、CD34を発現しない胎盤接着性細胞を選択すること;および前記細胞
を他の細胞から単離して、細胞集団を形成することによって産生される。別の実施形態に
おいて、細胞集団は、CD10およびCD105を発現し、CD34を発現しない胎盤接
着性細胞を選択すること、および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成する
ことによって産生される。別の実施形態において、細胞集団は、(a)基材に接着し、(
b)CD10、CD105、およびCD200を発現し、CD34を発現しない胎盤接着
性細胞を選択すること;および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成するこ
とによって産生される。別の実施形態において、細胞集団は、CD10、CD105、お
よびCD200を発現し、CD34を発現しない胎盤接着性細胞を選択すること、および
前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成することによって産生される。別の具
体的な実施形態において、細胞集団は、(a)基材に接着し、(b)CD10、CD90
、CD105およびCD200を発現し、CD34およびCD45を発現しない胎盤接着
性細胞を選択すること;および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成するこ
とによって産生される。別の具体的な実施形態において、細胞集団は、CD10、CD9
0、CD105およびCD200を発現し、CD34およびCD45を発現しない胎盤接
着性細胞を選択すること、および前記細胞を他の細胞から単離して、細胞集団を形成する
ことによって産生される。
【0198】
上記の5.3章に記載されるマーカーの組合せのいずれかを有する胎盤接着性細胞を含
む細胞集団の選択物は、類似の様式で単離してもよいし、または入手してもよい。
【0199】
上記実施形態のいずれかにおいて、単離された細胞集団の選択は、加えて、ABC-p
(胎盤特異的なABC輸送タンパク質;例えば非特許文献3を参照)を発現する胎盤接着
性細胞を選択することを含んでいてもよい。本方法はまた、例えば間充織幹細胞に特異的
な少なくとも1つの特徴、例えばCD44の発現、CD90の発現、または前述のものの
組合せの発現を示す細胞を選択することを含んでいてもよい。
【0200】
上記の実施形態において、基材は、その上で細胞、例えば単離された胎盤接着性細胞の
培養および/または選択を達成することができるあらゆる表面であり得る。典型的には、
基材は、プラスチック、例えば、組織培養皿またはマルチウェルプレートプラスチックで
ある。組織培養プラスチックは、生体分子、例えば、ラミニンまたはフィブロネクチンで
コーティングされていてもよい。
【0201】
細胞、例えば単離された胎盤接着性細胞は、細胞選択の分野において公知のあらゆる手
段によって、胎盤細胞集団に関して選択することができる。例えば、細胞は、1つまたは
複数の細胞表面マーカーに対する抗体または抗体(複数)を使用して、例えば、フローサ
イトメトリーまたはFACSで選択することができる。選択は、抗体を磁気ビーズと共に
使用して達成することができる。ある特定の幹細胞に関連するマーカーに特異的な抗体は
、当業界において公知である。例えば、OCT-4に対する抗体(Abcam、ケンブリ
ッジ、マサチューセッツ州)、CD200(Abcam)、HLA-G(Abeam)、
CD73(BD Biosciences Pharmingen、サンディエゴ、カリ
フォルニア州)、CD105(Abeam;BioDesign Internatio
nal、ソーコ、メイン州)など。また他のマーカーに対する抗体も、商業的に入手可能
であり、例えば、CD34、CD38およびCD45は、例えば、StemCell T
echnologiesまたはBioDesign Internationalより入
手可能である。
【0202】
単離された胎盤細胞集団は、幹細胞ではない胎盤接着性細胞、または胎盤接着性細胞で
はない細胞を含んでいてもよい。
【0203】
本明細書に記載される胎盤由来の接着細胞を含む単離された細胞集団は、第2の細胞型
、例えば胎盤由来の接着細胞ではない胎盤接着性細胞、または例えば胎盤接着性細胞では
ない細胞を含んでいてもよい。例えば、単離された胎盤由来の接着細胞の集団は、第2の
タイプの細胞の集団を含んでいてもよく、例えば第2のタイプの細胞の集団と組み合わせ
てもよく、前記第2のタイプの細胞は、例えば、胚幹細胞、血液細胞(例えば、胎盤血、
胎盤血細胞、臍帯血、臍帯血細胞、末梢血液、末梢血液細胞、胎盤血、臍帯血、または末
梢血液由来の有核細胞など)、血液から単離された幹細胞(例えば、胎盤血、臍帯血また
は末梢血液から単離された幹細胞)、胎盤の潅流液由来の有核細胞、例えば、胎盤の潅流
液由来の総有核細胞;臍帯幹細胞、血液由来有核細胞の集団、骨髄由来間葉系間質細胞、
骨髄由来間葉系幹細胞、骨髄由来造血幹細胞、未加工の骨髄、成体(体性)幹細胞、組織
内に含有される幹細胞の集団、培養細胞、例えば培養された幹細胞、完全に分化した細胞
(例えば、軟骨細胞、線維芽細胞、羊膜細胞、骨芽細胞、筋肉細胞、心細胞など)の集団
、周皮細胞などである。具体的な実施形態において、胎盤由来の接着細胞を含む細胞集団
は、臍帯由来の胎盤幹細胞または幹細胞を含む。第2のタイプの細胞が血液または血液細
胞であるある特定の実施形態において、細胞集団から赤血球が除去されている。
【0204】
具体的な実施形態において、第2のタイプの細胞は、造血幹細胞である。このような造
血幹細胞は、例えば、未処理の胎盤血、臍帯血または末梢血液内;胎盤血、臍帯血または
末梢血液由来の総有核細胞中;単離された胎盤血、臍帯血または末梢血液由来のCD34
細胞の集団中;未処理の骨髄中;骨髄由来の総有核細胞中;単離された骨髄由来のCD
34細胞の集団中などに含有されていてもよい。
【0205】
別の実施形態において、単離された胎盤由来の接着細胞の集団は、血管系由来の複数の
成体または前駆細胞と組み合わされる。様々な実施形態において、細胞は、内皮細胞、内
皮前駆細胞、筋細胞、心筋細胞、周皮細胞、血管芽細胞、筋原細胞または心筋芽細胞であ
る。
【0206】
別の実施形態において、第2の細胞型は、胚幹細胞に関連する多能性および機能のマー
カーを発現させるために培養中に操作された、非胚細胞タイプである。
【0207】
上記の単離された胎盤由来の接着細胞の集団の具体的な実施形態において、胎盤由来の
接着細胞および第2のタイプの細胞のいずれかまたは両方は、意図された細胞のレシピエ
ントに対して、自己であるかまたは同種である。
【0208】
別の具体的な実施形態において、組成物は、胎盤由来の接着細胞、および胚幹細胞を含
む。別の具体的な実施形態において、組成物は、胎盤由来の接着細胞および間葉系間質ま
たは幹細胞、例えば、骨髄由来の間葉系間質または幹細胞を含む。別の具体的な実施形態
において、組成物は、骨髄由来造血幹細胞を含む。別の具体的な実施形態において、組成
物は、胎盤由来接着細胞および造血前駆細胞、例えば、骨髄、胎児血、臍帯血、胎盤血、
および/または末梢血液由来の造血前駆細胞を含む。別の具体的な実施形態において、組
成物は、胎盤由来の接着細胞および体性幹細胞を含む。より具体的な実施形態において、
前記体性幹細胞は、神経幹細胞、肝幹細胞、膵臓の幹細胞、内皮の幹細胞、心臓の幹細胞
、または筋肉の幹細胞である。
【0209】
他の具体的な実施形態において、第2のタイプの細胞は、前記集団中の細胞の、約10
%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、もしくは50%、少な
くとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、もしくは5
0%、または10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、もし
くは50%以下を構成する。他の具体的な実施形態において、前記組成物中の胎盤接着性
細胞は、前記組成物中の細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、7
5%、80%、85%または90%を構成する。他の具体的な実施形態において、胎盤由
来の接着細胞は、前記集団中の細胞の、約10%、15%、20%、25%、30%、3
5%、40%、もしくは45%、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、
35%、40%、もしくは45%、または10%、15%、20%、25%、30%、3
5%、40%、もしくは45%以下を構成する。
【0210】
単離された胎盤由来の接着細胞の集団中の細胞は、別のタイプの複数の細胞と、例えば
幹細胞集団と、各集団中の総有核細胞の数を比較して、約100,000,000:1、
50,000,000:1、20,000,000:1、10,000,000:1、5
,000,000:1、2,000,000:1、1,000,000:1、500,0
00:1、200,000:1、100,000:1、50,000:1、20,000
:1、10,000:1、5,000:1、2,000:1、1,000:1、500:
1、200:1、100:1、50:1、20:1、10:1、5:1、2:1、1:1
、1:2、1:5、1:10、1:100、1:200、1:500、1:1,000、
1:2,000、1:5,000、1:10,000、1:20,000、1:50,0
00、1:100,000、1:500,000、1:1,000,000、1:2,0
00,000、1:5,000,000、1:10,000,000、1:20,000
,000、1:50,000,000、または約1:100,000,000の比率で組
み合わせることができる。単離された胎盤由来の接着細胞の集団中の細胞は同様に、複数
の細胞型の複数の細胞と組み合わせることができる。
【0211】
他の実施形態において、本明細書に記載される胎盤接着性細胞、例えば上述した胎盤接
着性細胞の集団は、骨形成性胎盤接着性細胞(OPAC)、例えば、2009年8月24
日付けで出願された「Methods and Compositions for T
reatment of Bone Defects With Placental
Stem Cells」という表題の特許文献13に記載されるOPACと組み合わされ
るか、または羊膜由来の血管新生細胞(AMDAC)、例えば、「Amnion Der
ived Angiogenic Cells」という表題の特許文献14に記載される
AMDACと組み合わされ、これらの開示は、その全体が参照により組み入れられる。
【0212】
5.6 胎盤細胞バンクの産生
産後の胎盤から単離された細胞、例えば上記のセクション5.3に記載される単離され
た胎盤接着性細胞は、例えばロットのセットを産生するための様々な異なる方法で培養す
ることができ、ここでロットは、単離された胎盤接着性細胞の個別に投与可能な用量のセ
ットである。このようなロットは、例えば、胎盤潅流液からの細胞、または酵素消化され
た胎盤組織からの細胞から得ることができる。複数の胎盤から得られた胎盤接着性細胞の
ロットのセットは、例えば長期貯蔵のために、単離された胎盤接着性細胞のバンクに入れ
ることができる。一般的に、組織培養プラスチック接着性の胎盤接着性細胞を胎盤材料の
初期培養物から得て、種培養物を形成し、これを制御された条件下で拡張して、およそ同
数の倍加により細胞の集団を形成する。ロットは、好ましくは単一の胎盤の組織由来であ
るが、複数の胎盤の組織由来であってもよい。
【0213】
一実施形態において、胎盤細胞のロットは、以下のようにして得られる。まず胎盤組織
を、例えば細かく切り刻むことによって破壊し、好適な酵素、例えばトリプシンまたはコ
ラゲナーゼで消化する(上記のセクション5.4.3を参照)。胎盤組織は、好ましくは
、例えば、単一の胎盤からの羊膜全体、柔毛膜全体、またはその両方を含むが、羊膜また
は柔毛膜のいずれかの一部のみを含んでいてもよい。消化された組織を、例えば約1~3
週間、好ましくは約2週間培養する。非接着性細胞の除去後、形成された高密度のコロニ
ーを、例えばトリプシン処理によって収集する。これらの細胞を収集し、便利な体積の培
養培地に再懸濁し、次いで拡張培養物に植え付けるのに使用する。拡張培養物は、別個の
細胞培養器具、例えばNUNC(商標)によるCell Factoryのあらゆる配置
であり得る。細胞は、例えば、細胞1×10、2×10、3×10、4×10
5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、1×10
、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×
10、9×10、または10×10個/cmで拡張培養物に植え付けられるよう
なあらゆる程度にさらに分割することができる。好ましくは、各拡張培養物に植え付ける
ために、細胞約1×10から約1×10個/cmが使用される。拡張培養物の数は
、細胞が得られる特定の胎盤に応じてそれより多い数でもよいし、または少ない数でもよ
い。
【0214】
拡張培養物は、培養物中の細胞の密度がある特定の値、例えば細胞約1×10個/c
に到達するまで増殖させる。細胞は、この時点で、収集して低温保存するか、または
上述したような新しい拡張培養に継代するかのいずれでもよい。細胞は、使用前に、例え
ば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、1
7、18、19または20回継代することができる。集団倍加の累積回数の記録は、好ま
しくは、拡張培養中に維持される。培養物から細胞は、2、3、4、5、6、7、8、9
、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、
36、38もしくは40回の倍加、または60回までの倍加で拡張することができる。し
かしながら、好ましくは、集団倍加の回数は、細胞の集団を個々の用量に分割する前、約
15から約30回である。細胞は、拡張プロセスにわたり連続的に培養してもよいし、ま
たは拡張中の1つまたは複数の時点で凍結してもよい。
【0215】
個々の用量に使用される細胞は、後の使用のために、凍結することができ、例えば低温
保存することができる。個々の用量は、例えば、1ml当たり約100万から約5000
万個の細胞を含んでいてもよいし、合計で約10から約1010個の間の細胞を含んで
いてもよい。
【0216】
それゆえに、一実施形態において、胎盤細胞バンクは、ヒト産後胎盤からの初代培養胎
盤接着性細胞を第1の複数回の集団倍加で拡張すること;前記胎盤接着性細胞を低温保存
して、マスター細胞バンクを形成すること;マスター細胞バンクから複数の胎盤接着性細
胞を第2の複数回の集団倍加で拡張すること;前記胎盤接着性細胞を低温保存して、実用
細胞バンクを形成すること;実用細胞バンクから複数の胎盤接着性細胞を第3の複数回の
集団倍加で拡張すること;および前記胎盤接着性細胞を、集合的に胎盤細胞バンクを構成
する個々の用量で低温保存することを含む方法によって作製することができる。任意選択
で、前記第3の複数回の集団倍加からの複数の胎盤接着性細胞は、第4の複数回の集団倍
加で拡張し、集合的に胎盤細胞バンクを構成する個々の用量で低温保存することができる
【0217】
別の具体的な実施形態において、前記初代培養胎盤接着性細胞は、胎盤潅流液からの胎
盤接着性細胞を含む。別の具体的な実施形態において、前記初代培養胎盤接着性細胞は、
消化された胎盤組織からの胎盤接着性細胞を含む。別の具体的な実施形態において、前記
初代培養胎盤接着性細胞は、胎盤潅流液からの、および消化された胎盤組織からの胎盤接
着性細胞を含む。別の具体的な実施形態において、前記胎盤細胞の初代培養中の前記胎盤
接着性細胞の全ては、同じ胎盤に由来する。別の具体的な実施形態において、本方法は、
前記実用細胞バンクからの前記複数の前記胎盤接着性細胞から、CD200またはHL
A-G胎盤接着性細胞を選択して、個々の用量を形成する工程をさらに含む。別の具体
的な実施形態において、前記個々の用量は、約10から約10個の胎盤接着性細胞を
含む。別の具体的な実施形態において、前記個々の用量は、約10から約10個の胎
盤接着性細胞を含む。別の具体的な実施形態において、前記個々の用量は、約10から
約10個の胎盤接着性細胞を含む。別の具体的な実施形態において、前記個々の用量は
、約10から約10個の胎盤接着性細胞を含む。別の具体的な実施形態において、前
記個々の用量は、約10から約10個の胎盤接着性細胞を含む。別の具体的な実施形
態において、前記個々の用量は、約10から約1010個の胎盤接着性細胞を含む。
【0218】
好ましい実施形態において、胎盤が得られるドナー(例えば、母親)は、少なくとも1
つの病原体に関して試験される。母親が試験された病原体に関して陽性と試験されたら、
その胎盤からのロット全体が廃棄される。このような試験は、胎盤細胞ロットの産生中、
例えば拡張培養中のあらゆる時点で実行することができる。存在が試験される病原体とし
ては、これらに限定されないが、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、
ヒト免疫不全ウイルス(IおよびII型)、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、
および同種のものを挙げることができる。
【0219】
5.7 胎盤細胞の保存
単離された胎盤接着性細胞、例えば上記のセクション5.3に記載される単離された胎
盤接着性細胞は、保存することができ、すなわち、長期間の貯蔵を可能にする条件下、ま
たは例えばアポトーシスまたは壊死による細胞死を阻害する条件下に置くことができる。
【0220】
胎盤細胞は、例えば、その開示が参照によりその全体が本明細書に組み入れられる関連
する特許文献6に記載されるように、アポトーシス阻害剤、壊死阻害剤および/または酸
素運搬ペルフルオロカーボンを含む組成物を使用して保存することができる。一実施形態
において、本明細書に記載される方法および組成物において有用な細胞の集団を保存する
方法は、前記細胞の集団を、アポトーシス阻害剤および酸素運搬ペルフルオロカーボンを
含む細胞収集組成物と接触させることを含み、前記アポトーシス阻害剤は、アポトーシス
阻害剤と接触させていない細胞の集団と比較して、細胞の集団においてアポトーシスを低
減または予防するのに十分な量および時間で存在する。具体的な実施形態において、前記
アポトーシス阻害剤は、カスパーゼ阻害剤である。別の具体的な実施形態において、前記
アポトーシス阻害剤は、JNK阻害剤である。別の具体的な実施形態において、前記JN
K阻害剤は、前記細胞の分化または増殖をモジュレートしない。別の実施形態において、
前記細胞収集組成物は、前記アポトーシス阻害剤および前記酸素運搬ペルフルオロカーボ
ンを、別個の相中に含む。別の実施形態において、前記細胞収集組成物は、前記アポトー
シス阻害剤および前記酸素運搬ペルフルオロカーボンを、エマルジョン中に含む。別の実
施形態において、細胞収集組成物は加えて、乳化剤、例えばレシチンを含む。別の実施形
態において、前記アポトーシス阻害剤および前記ペルフルオロカーボンは、細胞を接触さ
せるときに、約0℃から約25℃の間である。別の具体的な実施形態において、前記アポ
トーシス阻害剤および前記ペルフルオロカーボンは、細胞を接触させるときに、約2℃か
ら10℃の間、または約2℃から約5℃の間である。別の具体的な実施形態において、前
記接触は、前記細胞の集団の輸送中に実行される。別の具体的な実施形態において、前記
接触は、前記細胞の集団の凍結および融解中に実行される。
【0221】
胎盤接着性細胞の集団は、例えば、前記細胞の集団を、アポトーシス阻害剤および臓器
保存化合物と接触させることを含み、前記アポトーシス阻害剤は、アポトーシス阻害剤と
接触させていない細胞の集団と比較して、細胞の集団においてアポトーシスを低減または
予防するのに十分な量および時間で存在する、方法によって保存することができる。具体
的な実施形態において、臓器保存化合物は、UW溶液(特許文献15に記載される;Vi
aSpanとしても公知;非特許文献4も参照)またはスターン(Stern)ら、特許
文献16に記載される溶液であり、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書
に組み入れられる。別の実施形態において、前記臓器保存化合物は、ヒドロキシエチルデ
ンプン、ラクトビオン酸、ラフィノース、またはそれらの組合せである。別の実施形態に
おいて、細胞収集組成物は加えて、2つの相中、またはエマルジョンとしてのいずれかで
酸素運搬ペルフルオロカーボンを含む。
【0222】
本方法の別の実施形態において、胎盤接着性細胞は、潅流中に、アポトーシス阻害剤お
よび酸素運搬ペルフルオロカーボン、臓器保存化合物、またはそれらの組合せを含む細胞
収集組成物と接触させる。別の実施形態において、前記細胞は、組織破壊、例えば酵素消
化のプロセス中に接触させる。別の実施形態において、胎盤接着性細胞は、潅流による収
集後、または組織破壊、例えば酵素消化による収集後に前記細胞収集化合物と接触させる
【0223】
典型的には、胎盤細胞の収集、濃縮および単離中に、低酸素症および機械的応力による
細胞ストレスを最小化するかまたはなくすことが好ましい。それゆえに、本方法の別の実
施形態において、細胞または細胞の集団は、収集、濃縮または単離中に、前記保存中に6
時間未満、低酸素状態に曝露され、ここで低酸素状態は、正常な血液酸素濃度より低い酸
素濃度である。別の具体的な実施形態において、前記細胞の集団は、前記保存中に2時間
未満、前記低酸素状態に曝露される。別の具体的な実施形態において、前記細胞の集団は
、収集、濃縮または単離中に、1時間未満、または30分未満、前記低酸素状態に曝露さ
れるか、または低酸素状態に曝露されない。別の具体的な実施形態において、前記細胞の
集団は、収集、濃縮または単離中に剪断応力に曝露されない。
【0224】
胎盤細胞は、小さい容器、例えばアンプルで、例えば低温保存培地中で低温保存するこ
とができる。好適な低温保存培地としては、これらに限定されないが、例えば増殖培地な
どの培養培地、または細胞凍結培地、例えば市販の細胞凍結培地、例えば、C2695、
C2639またはC6039(Sigma)が挙げられる。低温保存培地は、好ましくは
、DMSO(ジメチルスルホキシド)を、約2%から約15%(v/v)、例えば約10
%(v/v)の濃度で含む。低温保存培地は、追加の薬剤、例えばメチルセルロースおよ
び/またはグリセロールを含んでいてもよい。胎盤細胞は、好ましくは、低温保存中に約
1℃/分で冷却される。好ましい低温保存温度は、約-80℃から約-180℃、好まし
くは約-125℃から約-140℃である。低温保存された細胞は、使用のために融解す
る前に液体窒素に移すことができる。一部の実施形態において、例えば、アンプルが約-
90℃に達したら、それらは液体窒素貯蔵エリアに移される。低温保存はまた、速度制御
された冷凍庫を使用して行うこともできる。低温保存された細胞は、好ましくは、約25
℃から約40℃の温度で、好ましくは約37℃の温度に融解させる。
【0225】
5.8 単離された胎盤細胞を含む組成物
本明細書に、例えば5.3章に記載される胎盤接着性細胞は、本明細書に記載される方
法および組成物で使用するための、あらゆる生理的に許容できるまたは医学的に許容でき
る化合物、組成物またはデバイスと組み合わせることができる。本明細書で提供される処
置方法において有用な組成物は、本明細書に記載される胎盤接着性細胞のいずれか1つま
たは複数を含んでいてもよい(上記のセクション5.3を参照)。ある特定の実施形態に
おいて、組成物は、医薬的に許容できる担体中の、医薬的に許容できる組成物、例えば胎
盤接着性細胞を含む組成物である。
【0226】
ある特定の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞を含む組成物は、加えて、マ
トリックス、例えば、脱細胞化したマトリックスまたは合成マトリックスを含む。別の具
体的な実施形態において、前記マトリックスは、3次元の足場である。別の具体的な実施
形態において、前記マトリックスは、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチ
ン、ペクチン、オルニチン、またはビトロネクチンを含む。別のまたは具体的な実施形態
において、マトリックスは、羊膜または羊膜由来のバイオマテリアルである。別の具体的
な実施形態において、前記マトリックスは、細胞外膜タンパク質を含む。別の具体的な実
施形態において、前記マトリックスは、合成化合物を含む。別の具体的な実施形態におい
て、前記マトリックスは、生物活性化合物を含む。別の具体的な実施形態において、前記
生物活性化合物は、増殖因子、サイトカイン、抗体、または5,000ダルトン未満の有
機分子である。
【0227】
別の実施形態において、本明細書で提供される処置の方法において有用な組成物は、前
述の胎盤接着性細胞のいずれか、または前述の胎盤接着性細胞集団のいずれかによって馴
化した培地を含む。
【0228】
5.8.1 低温保存した単離された胎盤細胞
本明細書に記載される方法および組成物において有用な単離された胎盤細胞集団は、そ
の後の使用のために、保存することができ、例えば、低温保存することができる。細胞、
例えば幹細胞などの低温保存方法は当業界において周知である。単離された胎盤細胞集団
は、個体に容易に投与可能な形態で調製することができ、例えば、単離された胎盤細胞集
団は、医学的用途に好適な容器内に含有される。このような容器は、例えば、シリンジ、
滅菌プラスチックバッグ、フラスコ、ジャー、またはそれから単離された胎盤細胞集団を
容易に分配することができる他の容器であり得る。例えば、容器は、血液バッグ、または
レシピエントへの液体の静脈内投与に好適な他のプラスチックの医学的に許容できるバッ
グであり得る。ある特定の実施形態において、容器は、組み合わされた細胞集団の低温保
存を可能にするものである。
【0229】
低温保存した単離された胎盤細胞集団は、単一のドナー由来の、または複数のドナー由
来の単離された胎盤細胞を含んでいてもよい。単離された胎盤細胞集団は、意図したレシ
ピエントに対して完全にHLA適合であってもよいし、または部分的にまたは完全にHL
A不適合であってもよい。
【0230】
したがって、一実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、本明細書に記載され
る方法において、容器中の組織培養プラスチック接着性の胎盤細胞集団を含む組成物の形
態で使用することができる。具体的な実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、
低温保存される。別の具体的な実施形態において、容器は、バッグ、フラスコ、またはジ
ャーである。別の具体的な実施形態において、前記バッグは、滅菌プラスチックバッグで
ある。別の具体的な実施形態において、前記バッグは、例えば静脈内注入による前記単離
された胎盤細胞集団の静脈内投与に好適であるか、それを可能にするか、またはそれを容
易にする。バッグは、単離された胎盤接着性細胞と1つまたは複数の他の溶液、例えば薬
物とが投与の前または投与中に混合されるように相互連結された、複数の内腔または区画
を含んでいてもよい。別の具体的な実施形態において、組成物は、組み合わされた細胞集
団の低温保存を容易にする1つまたは複数の化合物を含む。別の具体的な実施形態におい
て、前記単離された胎盤細胞集団は、生理的に許容できる水溶液中に含有される。別の具
体的な実施形態において、前記生理的に許容できる水溶液は、0.9%のNaCl溶液で
ある。別の具体的な実施形態において、前記単離された胎盤細胞集団は、前記細胞集団の
レシピエントに対してHLA適合の胎盤接着性細胞を含む。別の具体的な実施形態におい
て、前記組み合わされた細胞集団は、前記細胞集団のレシピエントに対して少なくとも部
分的にHLA不適合の胎盤接着性細胞を含む。別の具体的な実施形態において、前記単離
された胎盤接着性細胞は、複数のドナー由来である。
【0231】
ある特定の実施形態において、容器中の単離された胎盤接着性細胞は、単離されたCD
10、CD34、CD105胎盤接着性細胞であり、前記細胞は、低温保存されて
おり、容器内に含有される。具体的な実施形態において、前記CD10、CD34
CD105胎盤接着性細胞はまた、CD200でもある。別の具体的な実施形態にお
いて、前記CD10、CD34、CD105、CD200胎盤接着性細胞はまた
、CD45またはCD90でもある。別の具体的な実施形態において、前記CD10
、CD34、CD105、CD200胎盤接着性細胞はまた、CD45および
CD90でもある。別の具体的な実施形態において、CD34、CD10、CD1
05胎盤接着性細胞は、加えて、CD13、CD29、CD33、CD38
CD44、CD45、CD54、CD62E、CD62L、CD62P、S
H3(CD73)、SH4(CD73)、CD80、CD86、CD90
、SH2(CD105)、CD106/VCAM、CD117、CD144/V
E-カドヘリンdim、CD184/CXCR4、CD200、CD133、OC
T-4、SSEA4、SSEA4、ABC-p、KDR(VEGFR2)、
HLA-A,B,C、HLA-DP,DQ,DR、HLA-G、またはプログラム
細胞死-1リガンド(PDL1)、またはそれらのあらゆる組合せの1つまたは複数で
ある。別の具体的な実施形態において、CD34、CD10、CD105胎盤接着
性細胞は、加えて、CD13、CD29、CD33、CD38、CD44、C
D45、CD54/ICAM、CD62E、CD62L、CD62P、SH3
(CD73)、SH4(CD73)、CD80、CD86、CD90、S
H2(CD105)、CD106/VCAM、CD117、CD144/VE-
カドヘリンdim、CD184/CXCR4+、CD200、CD133、OCT-
、SSEA3、SSEA4、ABC-p、KDR(VEGFR2)、HL
A-A、B、C、HLA-DP、DQ、DR、HLA-G、およびプログラム細胞
死-1リガンド(PDL1)である。
【0232】
ある特定の他の実施形態において、上記で述べた単離された胎盤接着性細胞は、単離さ
れたCD200、HLA-G胎盤接着性細胞であり、前記細胞は、低温保存されてお
り、容器内に含有される。別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、低温保
存されており、容器内に含有されるCD73、CD105、CD200細胞である
。別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、低温保存されており、容器内に
含有されるCD200、OCT-4幹細胞である。別の実施形態において、単離され
た胎盤接着性細胞は、低温保存されており、容器内に含有されるCD73、CD105
細胞であり、前記単離された胎盤接着性細胞は、胚様体様体の形成を可能にする条件下
で胎盤接着性細胞集団と共に培養される場合、1つまたは複数の胚様体様体の形成を容易
にする。別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、低温保存されており、容
器内に含有されるCD73、CD105、HLA-G細胞である。別の実施形態に
おいて、単離された胎盤接着性細胞は、低温保存されており、容器内に含有されるOCT
-4胎盤接着性細胞であり、前記細胞は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で胎盤
接着性細胞集団と共に培養される場合、1つまたは複数の胚様体様体の形成を容易にする
【0233】
別の具体的な実施形態において、上記で述べた単離された胎盤接着性細胞は、フローサ
イトメトリーによって検出可能な、CD34、CD10およびCD105である胎
盤幹細胞または胎盤複能性細胞(例えば、胎盤接着性細胞)である。別の具体的な実施形
態において、単離されたCD34、CD10、CD105胎盤接着性細胞は、神経
系の表現型を有する細胞、骨形成性の表現型を有する細胞、または軟骨形成性の表現型を
有する細胞に分化する能力を有する。別の具体的な実施形態において、単離されたCD3
、CD10、CD105胎盤接着性細胞は、加えて、CD200である。別の
具体的な実施形態において、単離されたCD34、CD10、CD105胎盤接着
性細胞は、加えて、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD90またはCD4
である。別の具体的な実施形態において、単離されたCD34、CD10、CD
105胎盤接着性細胞は、加えて、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD9
またはCD45である。別の具体的な実施形態において、CD34、CD10
、CD105、CD200胎盤接着性細胞は、加えて、フローサイトメトリーによっ
て検出可能な、CD90またはCD45である。別の具体的な実施形態において、C
D34、CD10、CD105、CD200細胞は、加えて、フローサイトメト
リーによって検出可能な、CD90およびCD45である。別の具体的な実施形態に
おいて、CD34、CD10、CD105、CD200、CD90、CD45
細胞は、加えて、フローサイトメトリーによって検出可能な、CD80およびCD8
である。別の具体的な実施形態において、CD34、CD10、CD105
胞は、加えて、CD29、CD38、CD44、CD54、CD80、CD8
、SH3またはSH4の1つまたは複数である。別の具体的な実施形態において
、細胞は、加えて、CD44である。上記の単離されたCD34、CD10、CD
105胎盤接着性細胞のいずれかの具体的な実施形態において、細胞は、加えて、CD
117、CD133、KDR(VEGFR2)、HLA-A,B,C、HLA
-DP,DQ,DR、および/またはPDL1の1つまたは複数である。
【0234】
前述の低温保存した単離された胎盤接着性細胞のいずれかの具体的な実施形態において
、前記容器は、バッグである。様々な具体的な実施形態において、前記容器は、約、少な
くとも、または最大で、1×10個の前記単離された胎盤接着性細胞、5×10個の
前記単離された胎盤接着性細胞、1×10個の前記単離された胎盤接着性細胞、5×1
個の前記単離された胎盤接着性細胞、1×10個の前記単離された胎盤接着性細胞
、5×10個の前記単離された胎盤接着性細胞、1×10個の前記単離された胎盤接
着性細胞、5×10個の前記単離された胎盤接着性細胞、1×1010個の前記単離さ
れた胎盤接着性細胞、または5×1010個の前記単離された胎盤接着性細胞を含む。前
述の低温保存した集団のいずれかの他の具体的な実施形態において、前記単離された胎盤
接着性細胞は、約、少なくとも、または最大で5回、最大で10回、最大で15回、また
は最大で20回継代されている。前述の低温保存した単離された胎盤接着性細胞のいずれ
かの別の具体的な実施形態において、前記単離された胎盤接着性細胞は、前記容器内で拡
張される。
【0235】
ある特定の実施形態において、胎盤由来の接着性細胞の単回単位用量は、様々な実施形
態において、約1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×1
、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010
、1×1011個またはそれより多くの、少なくともそれらの個数の、またはそれらの個
数以下の胎盤由来の接着性細胞を含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、本明
細書で提供される医薬組成物は、50%またはそれより多くの生存可能な細胞を含む(す
なわち、集団中の細胞の少なくとも50%が、機能的であるかまたは生きている)胎盤由
来の接着細胞の集団を含む。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも60%が、生存可能
である。より好ましくは、医薬組成物中の集団中の細胞の少なくとも70%、80%、9
0%、95%、または99%が、生存可能である。
【0236】
5.8.2 遺伝子操作された胎盤細胞
胎盤接着性細胞が、血管新生に関連する、または血管新生を促進する組換えまたは外因
性サイトカインを産生するように遺伝子操作されている、胎盤接着性細胞、例えば、上記
のセクション5.3に記載される胎盤複能性細胞もしくは胎盤接着性細胞のいずれか、ま
たはこのような胎盤接着性細胞を含む医薬組成物がさらに本明細書で提供される。ある特
定の実施形態において、血管新生を促進する前記タンパク質は、肝細胞増殖因子(HGF
)、血管内皮増殖因子(VEGF)(例えば、VEGFD)、線維芽細胞増殖因子(FG
F)(例えば、FGF2)、アンギオゲニン(ANG)、上皮増殖因子(EGF)、上皮
由来好中球活性化タンパク質78(ENA-78)、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺
激因子(G-CSF)、増殖制御発癌遺伝子タンパク質(GRO)、インターロイキン-
6(IL-6)、IL-8、レプチン、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、MC
P-3、血小板由来増殖因子サブユニットB(PDGFB)、ランテス、トランスフォー
ミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)、トロンボポイエチン(Tpo)、メタロプロ
テイナーゼ組織阻害剤1(TIMP1)、TIMP2、および/またはウロキナーゼ型プ
ラスミノゲン活性化因子受容体(uPAR)の1つまたは複数である。
【0237】
例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクタ
ー、ポリエチレングリコール、または当業者公知の他の方法で細胞を遺伝子操作するため
の方法を使用することができる。これらは、細胞中で核酸分子を輸送し発現する発現ベク
ターを使用することを含む。(非特許文献5を参照)。ベクターDNAは、従来の形質転
換またはトランスフェクション技術により原核または真核細胞に導入することができる。
宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための好適な方法は、非特許文献6、お
よび他の実験教本に見出すことができる。
【0238】
胎盤細胞、例えば上記のセクション5.3に記載される胎盤接着性細胞は、ウイルス移
行、例えば、DNAまたはRNAウイルスベクター、例えばレトロウイルス(レンチウイ
ルスを含む)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、シンドビスウイル
ス、およびウシパピローマウイルスの使用など;化学的移行、例えば、リン酸カルシウム
トランスフェクションおよびDEAEデキストラントランスフェクション方法など;例え
ば、DNAをローディングした膜小胞、例えばリポソーム、赤血球ゴースト、およびプロ
トプラストを使用する膜融合移行;または物理的な移行技術、例えばマイクロインジェク
ション、エレクトロポレーション、または裸のDNAの移行などの方法によって、細胞に
、DNAまたはRNA、例えば目的のタンパク質をコードするDNAまたはRNAを導入
することによって遺伝子改変されていてもよい。胎盤接着性細胞は、外因性DNAの挿入
によって、または細胞のゲノムのセグメントの外因性DNAでの置換によって遺伝子改変
することができる。外因性DNA配列の挿入は、例えば、相同組換えによって、または宿
主細胞ゲノムへのウイルス統合によって、またはプラスミド発現ベクターおよび核局在化
配列を使用して、細胞に、特にその核にDNAを取り込むことによって達成することがで
きる。DNAは、ある特定の化学物質/薬物、例えばテトラサイクリンを使用する目的の
タンパク質の発現の陽性または陰性誘導を可能にする1つまたは複数のプロモーターを含
んでいてもよく、プロモーターは、他の実施形態において、構成的プロモーターであって
もよい。
【0239】
リン酸カルシウムトランスフェクションを使用して、例えば目的のタンパク質をコード
するポリヌクレオチド配列を含有するプラスミドDNAを細胞に導入することができる。
ある特定の実施形態において、DNAを塩化カルシウムの溶液と合わせ、次いでリン酸緩
衝化溶液に添加する。沈殿が形成されたら、溶液を培養細胞に直接添加する。DMSOま
たはグリセロールでの処理を使用して、トランスフェクション効率を向上させることがで
き、安定な形質転換体のレベルは、ビスヒドロキシエチルアミノエタンスルホン酸(BE
S)を使用して向上させることができる。リン酸カルシウムトランスフェクション系は、
市販されている(例えば、PROFECTION(登録商標)、Promega Cor
p.、マディソン、ウィスコンシン州)。DEAE-デキストラントランスフェクション
も使用することができる。
【0240】
また単離された胎盤接着性細胞は、マイクロインジェクションによって遺伝子操作され
てもよい。ある特定の実施形態において、光学顕微鏡下でガラス製マイクロピペットを細
胞の核に導き、DNAまたはRNAを注射する。
【0241】
また胎盤細胞は、エレクトロポレーションを使用して遺伝子改変されてもよい。ある特
定の実施形態において、DNAまたはRNAを培養細胞の懸濁液に添加し、DNA/RN
A-細胞懸濁液を2つの電極間に置き、電気パルスに供して、膜を通る孔の出現によって
認められる細胞の外膜の一時的な透過化を引き起こす。
【0242】
細胞を遺伝学的に改変するためのDNAまたはRNAのリポソーム送達は、任意選択で
ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)またはジオレオイルホスファ
チジルコリン(DOPC)、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(Life T
echnologies,Inc.)を含むカチオン性リポソーム、を使用して実行する
ことができる。他の市販の送達系としては、EFFECTENE(商標)(Qiagen
)、DOTAP(Roche Molecular Biochemicals)、FU
GENE 6(商標)(Roche Molecular Biochemicals)
、およびTRANSFECTAM(登録商標)(Promega)が挙げられる。
【0243】
ウイルスベクターを使用して、胎盤接着性細胞を、例えば標的遺伝子、ポリヌクレオチ
ド、アンチセンス分子、またはリボザイム配列の細胞への送達によって遺伝学的に変更す
ることができる。レトロウイルスベクターは、急速に分裂する細胞を形質導入するのに効
果的であるが、非分裂細胞にDNAを効果的に移動させるための多数のレトロウイルスベ
クターも同様に開発されている。レトロウイルスベクターのためのパッケージング細胞株
が当業者公知である。ある特定の実施形態において、レトロウイルスDNAベクターは、
第1のLTRがSV40プロモーターに対して5’に配置され、SV40プロモーターが
、マルチクローニング部位にクローニングされた標的遺伝子配列、それに続いて3’にお
ける第2のLTRに作動的に連結されるように、2つのレトロウイルスLTRを含有する
。レトロウイルスDNAベクターが形成されたら、これを、これまでに記載されたように
して、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションを使用してパッケージング細胞株に移
す。ウイルス産生からおよそ48時間後、その時点で標的遺伝子配列を含有するウイルス
ベクターを回収する。レンチウイルスベクター、組換えヘルペスウイルス、アデノウイル
スベクター、またはアルファウイルスベクターを使用して細胞をトランスフェクトする方
法は、当業界において公知である。
【0244】
標的細胞のトランスフェクションまたは形質導入の成功は、当業者公知の技術において
遺伝子マーカーを使用して実証することができる。例えば、オワンクラゲ(Aequor
ea victoria)の緑色蛍光タンパク質が、遺伝子改変された造血細胞の同定お
よび追跡に有効なマーカーであることが示されている。代替の選択可能マーカーとしては
、β-Gal遺伝子、短縮型神経成長因子受容体、または薬物選択可能マーカー(これら
に限定されないが、NEO、MTX、またはハイグロマイシンなど)が挙げられる。
【0245】
5.8.3 医薬組成物
単離された胎盤接着性細胞、例えば胎盤接着性細胞の集団、または単離された胎盤接着
性細胞を含む細胞の集団は、in vivoでの、例えば、本明細書で提供される処置方
法での使用のための医薬組成物に製剤化することができる。このような医薬組成物は、薬
学的に許容される担体、例えば塩類溶液、またはin vivoでの投与のための他の容
認された生理的に許容できる溶液中に、単離された胎盤接着性細胞の集団、または単離さ
れた胎盤接着性細胞を含む細胞の集団を含む。本明細書に記載される単離された胎盤接着
性細胞を含む医薬組成物は、本明細書の他所に記載される単離された胎盤細胞集団または
単離された胎盤接着性細胞のいずれか、またはそれらのいずれかの組合せを含んでいても
よい。医薬組成物は、胎児の、母体の、または胎児および母体両方の単離された胎盤接着
性細胞を含んでいてもよい。本明細書で提供される医薬組成物は、単一の個体または胎盤
から、または複数の個体または胎盤から得られた、単離された胎盤接着性細胞をさらに含
んでいてもよい。
【0246】
本明細書で提供される医薬組成物は、あらゆる数の単離された胎盤接着性細胞を含んで
いてもよい。例えば、単離された胎盤接着性細胞の単回単位用量は、様々な実施形態にお
いて、約1×10×5、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10
、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1
×1011個またはそれより多くの、少なくともそれらの個数の、またはそれらの個数以
下の単離された胎盤接着性細胞を含んでいてもよい。
【0247】
本明細書で提供される医薬組成物は、50%またはそれより多くの生存可能な細胞を含
む細胞の集団を含む(すなわち、集団中の細胞の少なくとも50%が、機能的であるかま
たは生きている)。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも60%が、生存可能である。
より好ましくは、医薬組成物中の集団中の細胞の少なくとも70%、80%、90%、9
5%、または99%が、生存可能である。
【0248】
本明細書で提供される医薬組成物は、例えば生着を促進する1つまたは複数の化合物(
例えば、抗T細胞受容体抗体、免疫抑制剤、または同種のもの);安定剤、例えばアルブ
ミン、デキストラン40、ゼラチン、ヒドロキシエチルデンプン、プラズマライト(pl
asmalyte)、および同種のものを含んでいてもよい。
【0249】
注射用溶液として製剤化される場合、一実施形態において、医薬組成物は、約1%から
1.5%のHSAおよび約2.5%デキストランを含む。好ましい実施形態において、医
薬組成物は、5%HSAおよび10%デキストランを含み、任意選択で免疫抑制剤、例え
ばサイクロスポリンAを例えば10mg/kgで含む溶液中、1ミリリットル当たり約5
×10個の細胞から1ミリリットル当たり約2×10個の細胞を含む。
【0250】
他の実施形態において、医薬組成物、例えば溶液は、複数の細胞、例えば単離された胎
盤接着性細胞、例えば胎盤幹細胞または複能性胎盤細胞を含み、前記医薬組成物は、1ミ
リリットル当たり約1.0±0.3×10個から1ミリリットル当たり約5.0±1.
5×10個の間の細胞を含む。他の実施形態において、医薬組成物は、1ミリリットル
当たり約1.5×10個から1ミリリットル当たり約3.75×10個の間の細胞を
含む。他の実施形態において、医薬組成物は、1mL当たり約1×10個から1mL当
たり約50×10個の間の細胞、1mL当たり約1×10個から1mL当たり約40
×10個の間の細胞、1mL当たり約1×10個から1mL当たり約30×10
の間の細胞、1mL当たり約1×10個から1mL当たり約20×10個の間の細胞
、1mL当たり約1×10個から約15×1mL当たり10個の間の細胞、または1
mL当たり約1×10個から1mL当たり約10×10個の間の細胞を含む。ある特
定の実施形態において、医薬組成物は、目に見える細胞凝集塊を含まない(すなわち、大
きい細胞凝集塊を含まない)か、またはこのような目に見える凝集塊を実質的に含まない
。本明細書で使用される場合、「大きい細胞凝集塊」は、拡大せずに目に見える、例えば
肉眼で見える細胞の集合体を意味し、一般的に約150ミクロンより大きい細胞集合体を
指す。一部の実施形態において、医薬組成物は、約2.5%、3.0%、3.5%、4.
0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.
0%、8.5%、9.0%、9.5%または10%のデキストラン、例えばデキストラン
-40を含む。具体的な実施形態において、前記組成物は、約7.5%から約9%のデキ
ストラン-40を含む。具体的な実施形態において、前記組成物は、約5.5%のデキス
トラン-40を含む。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、約1%から約15%
のヒト血清アルブミン(HSA)を含む。具体的な実施形態において、医薬組成物は、約
1%、2%、3%、4%、5%、65、75、8%、9%、10%、11%、12%、1
3%、14%または15%のHSAを含む。具体的な実施形態において、前記細胞は、低
温保存および融解されている。別の具体的な実施形態において、前記細胞は、70μMか
ら100μMのフィルターに通過させて濾過されている。別の具体的な実施形態において
、前記組成物は、目に見える細胞凝集塊を含まない。別の具体的な実施形態において、前
記組成物は、細胞10個当たり約200個より少ない細胞凝集塊を含み、前記細胞凝集
塊は、顕微鏡、例えば光学顕微鏡下でのみ目に見える。別の具体的な実施形態において、
前記組成物は、細胞10個当たり約150個より少ない細胞凝集塊を含み、前記細胞凝
集塊は、顕微鏡、例えば光学顕微鏡下でのみ目に見える。別の具体的な実施形態において
、前記組成物は、細胞10個当たり約100個より少ない細胞凝集塊を含み、前記細胞
凝集塊は、顕微鏡、例えば光学顕微鏡下でのみ目に見える。
【0251】
具体的な実施形態において、医薬組成物は、1ミリリットル当たり約1.0±0.3×
10個の細胞、約5.5%デキストラン-40(w/v)、約10%HSA(w/v)
、および約5%DMSO(v/v)を含む。
【0252】
他の実施形態において、医薬組成物は、10%デキストラン-40を含む溶液中に、複
数の細胞、例えば複数の単離された胎盤接着性細胞を含み、医薬組成物は、1ミリリット
ル当たり約±0.3×10個から1ミリリットル当たり約5.0±1.5×10個の
間の細胞を含み、前記組成物は、肉眼で見える細胞凝集塊を含まない(すなわち、大きい
細胞凝集塊を含まない)。一部の実施形態において、医薬組成物は、1ミリリットル当た
り約1.5×10個から1ミリリットル当たり約3.75×10個の間の細胞を含む
。具体的な実施形態において、前記細胞は、低温保存および融解されている。別の具体的
な実施形態において、前記細胞は、70μmから100μmのフィルターを通過させて濾
過されている。別の具体的な実施形態において、前記組成物は、細胞10個当たり約2
00個より少ない極小の細胞凝集塊(すなわち、拡大しないと目に見えない細胞凝集塊)
を含む。別の具体的な実施形態において、医薬組成物は、細胞10個当たり約150個
より少ない極小の細胞凝集塊を含む。別の具体的な実施形態において、医薬組成物は、細
胞10個当たり約100個より少ない極小の細胞凝集塊を含む。別の具体的な実施形態
において、医薬組成物は、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8
%、7%、6%、5%、4%、3%、もしくは2%未満のDMSO、または1%、0.9
%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、もしく
は0.1%未満のDMSOを含む。
【0253】
さらに、細胞を含む組成物であって、前記組成物は、本明細書で開示された方法の1つ
によって産生される、組成物が本明細書において提供される。例えば、一実施形態におい
て、医薬組成物は、細胞を含み、医薬組成物は、胎盤接着性細胞、例えば胎盤幹細胞また
は複能性胎盤細胞を含む溶液を濾過して、濾過された細胞を含有する溶液を形成すること
;例えば低温保存の前に、濾過された細胞を含有する溶液を第1の溶液で、1ミリリット
ル当たり約1から50×10、1から40×10、1から30×10、1から20
×10、1から15×10、または1から10×10個の細胞に希釈すること;お
よび得られた濾過された細胞を含有する溶液を、デキストランを含むがヒト血清アルブミ
ン(HSA)を含まない第2の溶液で希釈して、前記組成物を産生することを含む方法に
よって産生される。ある特定の実施形態において、前記希釈は、1ミリリットル当たり約
15×10個の細胞以下への希釈である。ある特定の実施形態において、前記希釈は、
1ミリリットル当たり約10±3×10個の細胞以下への希釈である。ある特定の実施
形態において、前記希釈は、1ミリリットル当たり約7.5×10個の細胞以下への希
釈である。他のある特定の実施形態において、濾過された細胞を含有する溶液が、希釈前
に1ミリリットル当たり約15×10個未満の細胞を含む場合、濾過は、任意選択であ
る。他のある特定の実施形態において、濾過された細胞を含有する溶液が、希釈前に、1
ミリリットル当たり約10±3×10個未満の細胞を含む場合、濾過は、任意選択であ
る。他のある特定の実施形態において、濾過された細胞を含有する溶液が、希釈前に、1
ミリリットル当たり約7.5×10個未満の細胞を含む場合、濾過は、任意選択である
【0254】
具体的な実施形態において、細胞は、第1の希釈溶液での前記希釈から前記第2の希釈
溶液での前記希釈の間、低温保存される。別の具体的な実施形態において、第1の希釈溶
液は、デキストランおよびHSAを含む。第1の希釈溶液または第2の希釈溶液中のデキ
ストランは、あらゆる分子量を有するデキストランであってもよく、例えば約10kDa
から約150kDaの分子量を有するデキストランであってもよい。一部の実施形態にお
いて、前記第1の希釈溶液または前記第2の溶液中の前記デキストランは、約2.5%、
3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、
7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%または10%デキストラ
ンである。別の具体的な実施形態において、前記第1の希釈溶液または前記第2の希釈溶
液中のデキストランは、デキストラン-40である。別の具体的な実施形態において、前
記第1の希釈溶液および前記第2の希釈溶液中のデキストランは、デキストラン-40で
ある。別の具体的な実施形態において、前記第1の希釈溶液中の前記デキストラン-40
は、5.0%のデキストラン-40である。別の具体的な実施形態において、前記第1の
希釈溶液中の前記デキストラン-40は、5.5%のデキストラン-40である。別の具
体的な実施形態において、前記第2の希釈溶液中の前記デキストラン-40は、10%の
デキストラン-40である。別の具体的な実施形態において、HSAを含む前記溶液中の
前記HSAは、1から15%のHSAである。別の具体的な実施形態において、HSAを
含む前記溶液中の前記HSAは、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、
9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%のHSAである。別の具体
的な実施形態において、HSAを含む前記溶液中の前記HSAは、10%のHSAである
。別の具体的な実施形態において、前記第1の希釈溶液は、HSAを含む。別の具体的な
実施形態において、前記第1の希釈溶液中の前記HSAは、10%のHSAである。別の
具体的な実施形態において、前記第1の希釈溶液は、凍結防止剤を含む。別の具体的な実
施形態において、前記凍結防止剤は、DMSOである。別の具体的な実施形態において、
前記第2の希釈溶液中の前記デキストラン-40は、約10%のデキストラン-40であ
る。別の具体的な実施形態において、前記細胞を含む組成物は、約7.5%から約9%の
デキストランを含む。別の具体的な実施形態において、医薬組成物は、1ミリリットル当
たり約1.0±0.3×10個の細胞から1ミリリットル当たり約5.0±1.5×1
個の細胞を含む。別の具体的な実施形態において、医薬組成物は、1ミリリットル当
たり約1.5×10個の細胞から1ミリリットル当たり約3.75×10個の細胞を
含む。
【0255】
別の実施形態において、医薬組成物は、(a)低温保存の前に、胎盤接着性細胞を含む
細胞を含有する溶液、例えば胎盤幹細胞または複能性胎盤細胞を濾過して、濾過された細
胞を含有する溶液を産生すること;(b)濾過された細胞を含有する溶液中の細胞を、1
ミリリットル当たり約1から50×10個、1から40×10個、1から30×10
個、1から20×10個、1から15×10個、または1から10×10個の細
胞で低温保存すること;(c)細胞を融解すること;および(d)濾過された細胞を含有
する溶液を、デキストラン-40溶液で約1:1から約1:11(v/v)に希釈するこ
とを含む方法によって作製される。ある特定の実施形態において、ステップ(a)の前に
細胞の数が1ミリリットル当たり細胞約10±3×10個未満である場合、濾過は、任
意選択である。別の具体的な実施形態において、ステップ(b)における細胞は、1ミリ
リットル当たり約10±3×10個の細胞で低温保存される。別の具体的な実施形態に
おいて、ステップ(b)における細胞は、約5%から約10%のデキストラン-40およ
びHSAを含む溶液中で低温保存される。ある特定の実施形態において、ステップ(b)
における前記希釈は、1ミリリットル当たり約15×10個の細胞以下への希釈である
【0256】
別の実施形態において、医薬組成物は、(a)10%HSAを含む5.5%デキストラ
ン-40溶液中に、胎盤接着性細胞、例えば胎盤幹細胞または複能性胎盤細胞を懸濁して
、細胞を含有する溶液を形成すること;(b)細胞を含有する溶液を、70μmフィルタ
ーを介して濾過すること;(c)細胞を含有する溶液を、5.5%デキストラン-40、
10%HSA、および5%DMSOを含む溶液で、1ミリリットル当たり約1から50×
10個、1から40×10個、1から30×10個、1から20×10個、1か
ら15×10個、または1から10×10個の細胞に希釈すること;(d)細胞を低
温保存すること;(e)細胞を融解すること;および(f)細胞を含有する溶液を10%
デキストラン-40で1:1から1:11(v/v)に希釈することを含む方法によって
作製される。ある特定の実施形態において、ステップ(c)における前記希釈は、1ミリ
リットル当たり約15×10個の細胞以下への希釈である。ある特定の実施形態におい
て、ステップ(c)における前記希釈は、細胞約10±3×10個/mL以下への希釈
である。ある特定の実施形態において、ステップ(c)における前記希釈は、細胞約7.
5×10個/mL以下への希釈である。
【0257】
別の実施形態において、細胞を含む組成物は、(a)複数の細胞を遠心分離して、細胞
を収集するステップ;(b)5.5%デキストラン-40に細胞を再懸濁するステップ;
(c)細胞を遠心分離して、細胞を収集するステップ;(d)10%HSAを含む5.5
%デキストラン-40溶液に細胞を再懸濁するステップ;(e)細胞を、70μmフィル
ターを介して濾過するステップ;(f)細胞を、5.5%デキストラン-40、10%H
SA、および5%DMSOで、細胞1ミリリットル当たり約1から50×10、1から
40×10、1から30×10、1から20×10、1から15×10、または
1から10×10個に希釈するステップ;(g)細胞を低温保存するステップ;(h)
細胞を融解するステップ;および(i)細胞を10%のデキストラン-40で1:1から
1:11(v/v)に希釈するステップを含む方法によって作製される。ある特定の実施
形態において、ステップ(f)における前記希釈は、1ミリリットル当たり約15×10
個の細胞以下への希釈である。ある特定の実施形態において、ステップ(f)における
前記希釈は、約10±3×10個/mLの細胞以下への希釈である。ある特定の実施形
態において、ステップ(f)における前記希釈は、約7.5×10個/mLの細胞以下
への希釈である。他のある特定の実施形態において、細胞の数が1ミリリットル当たり細
胞約10±3×10個未満である場合、濾過は、任意選択である。
【0258】
組成物、例えば、本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞を含む医薬組成物は
、本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞のいずれかを含んでいてもよい。
【0259】
細胞生成物の投与に好適な他の注射製剤が使用されてもよい。
【0260】
一実施形態において、医薬組成物は、実質的または完全に非母体起源である、すなわち
胎児の遺伝子型を有する、例えば、少なくとも約90%、95%、98%、99%または
約100%が非母体起源である、単離された胎盤接着性細胞を含む。例えば、一実施形態
において、医薬組成物は、単離された胎盤接着性細胞の集団を含み、該単離された胎盤接
着性細胞の集団は、CD200およびHLA-G;CD73、CD105、およ
びCD200;CD200およびOCT-4;CD73、CD105およびH
LA-G;CD73およびCD105であり、前記胎盤接着性細胞の集団が胚様体
の形成を可能にする条件下で培養される場合、単離された胎盤細胞の前記集団を含む胎盤
接着性細胞の集団において1つまたは複数の胚様体の形成を促進するか;またはOCT-
であり、前記胎盤接着性細胞の集団が胚様体の形成を可能にする条件下で培養される
場合、単離された胎盤細胞の前記集団を含む胎盤接着性細胞の集団において1つまたは複
数の胚様体の形成を促進するか;または前述の組合せであり、前記単離された胎盤接着性
細胞の少なくとも70%、80%、90%、95%または99%が、非母体起源である。
別の実施形態において、医薬組成物は、単離された胎盤接着性細胞の集団を含み、該単離
された胎盤接着性細胞の集団は、CD10、CD105およびCD34;CD10
、CD105、CD200およびCD34;CD10、CD105、CD2
00、CD34およびCD90またはCD45の少なくとも1つ;CD10
CD90、CD105、CD200、CD34およびCD45;CD10
CD90、CD105、CD200、CD34およびCD45;CD200
およびHLA-G;CD73、CD105、およびCD200;CD200
よびOCT-4;CD73、CD105およびHLA-G;CD73およびC
D105であり、前記胎盤接着性細胞の集団が胚様体の形成を可能にする条件下で培養
される場合、前記単離された胎盤接着性細胞を含む胎盤接着性細胞の集団において1つま
たは複数の胚様体の形成を促進するか;OCT-4であり、前記胎盤接着性細胞の集団
が胚様体の形成を可能にする条件下で培養される場合、前記単離された胎盤接着性細胞を
含む胎盤細胞の集団において1つまたは複数の胚様体の形成を促進するか;またはCD1
17、CD133、KDR、CD80、CD86、HLA-A,B,C、H
LA-DP、DQ、DR、および/またはPDL1の1つまたは複数であるか;また
は前述の組合せであり、前記単離された胎盤接着性細胞の少なくとも70%、80%、9
0%、95%または99%が、非母体起源である。具体的な実施形態において、医薬組成
物は加えて、胎盤から得られたものではない幹細胞を含む。
【0261】
本明細書で提供される組成物、例えば医薬組成物中の単離された胎盤接着性細胞は、単
一のドナー由来、または複数のドナー由来の胎盤接着性細胞を含んでいてもよい。単離さ
れた胎盤接着性細胞は、意図されたレシピエントに対して完全にHLA適合であってもよ
いし、または部分的または完全にHLA不適合であってもよい。
【0262】
5.8.4 単離された胎盤細胞を含むマトリックス
さらに、胎盤細胞または単離された胎盤接着性細胞の集団を含むマトリックス、ヒドロ
ゲル、足場、および同種のものを含む組成物が本明細書において提供される。このような
組成物は、液体懸濁液中の細胞の代わりに、またはそれに加えて使用することができる。
【0263】
本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞は、天然マトリックス、例えば羊膜材
料などの胎盤のバイオマテリアル上に植え付けることができる。このような羊膜材料は、
例えば、哺乳類胎盤から直接切り出された羊膜;固定または加熱処理された羊膜、実質的
に乾燥した(すなわち、<20%HO)羊膜、絨毛膜、実質的に乾燥した絨毛膜、実質
的に乾燥した羊膜および絨毛膜、ならびに同種のものであり得る。その上に単離された胎
盤接着性細胞を植え付けることができる好ましい胎盤のバイオマテリアルは、その開示は
参照によりその全体が本明細書に組み入れられるハリリ(Hariri)、特許文献17
に記載される。
【0264】
本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞は、例えば注射に好適なヒドロゲル溶
液に懸濁することができる。このような組成物に好適なヒドロゲルとしては、自己集合ペ
プチド、例えばRAD16などが挙げられる。一実施形態において、細胞を含むヒドロゲ
ル溶液は、例えばモールド中で硬化させて、埋め込みのための細胞を分散させたマトリッ
クスを形成することができる。このようなマトリックス中の単離された胎盤接着性細胞は
また、埋め込み前に細胞が有糸分裂によって拡張されるように培養することもできる。ヒ
ドロゲルは、例えば、水分子を封じ込めてゲルを形成する3次元の開放格子構造を作り出
すために、共有結合、イオン結合、または水素結合を介して架橋された有機ポリマー(天
然または合成)である。ヒドロゲルを形成する材料としては、例えばアルギネートおよび
それらの塩などの多糖類、ペプチド、ポリホスファジン(polyphosphazin
e)、およびイオン架橋されたポリアクリレート、または例えばそれぞれ温度またはpH
によって架橋されたポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマ
ーなどのブロックポリマーが挙げられる。一部の実施形態において、ヒドロゲルまたはマ
トリックスは、生分解性である。
【0265】
一部の実施形態において、製剤は、in situにおいて重合性のゲルを含む(例え
ば、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる特許文献13;非特許文
献7;非特許文献8を参照)。
【0266】
一部の実施形態において、ポリマーは、例えば水、緩衝化された塩溶液、または電荷を
有する側基またはその1価イオン性塩を有する水性アルコール溶液などの水溶液中で、少
なくとも部分的に可溶性である。カチオンと反応できる酸性側基を有するポリマーの例は
、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸とメ
タクリル酸とのコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、およびスルホン化ポリマー、例えばス
ルホン化ポリスチレンなどである。アクリル酸またはメタクリル酸とビニルエーテル単量
体またはポリマーとの反応によって形成された酸性側基を有するコポリマーも、使用する
ことができる。酸性基の例は、カルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化(好ましくは、
フッ素化)アルコール基、フェノール系OH基、および酸性OH基である。
【0267】
具体的な実施形態において、マトリックスは、フェルトであり、これは、生体吸収性材
料、例えばPGA、PLA、PCLコポリマーもしくはブレンド、またはヒアルロン酸か
ら作製されるマルチフィラメントヤーンで構成することができる。ヤーンは、クリンピン
グ、カッティング、カーディングおよびニードリングからなる標準的な繊維加工技術を使
用してフェルトになる。別の好ましい実施形態において、本発明の細胞は、複合構造であ
り得る発泡体の足場上に植え付けられる。加えて3次元フレームワークを、例えば修復、
置き換え、または増大させようとする体内の具体的な構造などの有用な形状に成形するこ
とができる。使用できる足場の他の例としては、不織布マット、多孔質発泡体、または自
己集合ペプチドが挙げられる。不織布マットは、グリコール酸と乳酸との合成吸収性コポ
リマー(例えば、PGA/PLA)(VICRYL、Ethicon,Inc.、サマー
ビル、ニュージャージー州)で構成される繊維を使用して形成することができる。フリー
ズドライまたは凍結乾燥などのプロセスによって形成された例えばポリ(ε-カプロラク
トン)/ポリ(グリコール酸)(PCL/PGA)コポリマーで構成される発泡体(例え
ば、特許文献19を参照)も、足場として使用することができる。
【0268】
本明細書に記載される単離された胎盤接着性細胞またはそれらの共培養物は、3次元フ
レームワークまたは足場上に植え付けて、in vivoで埋め込むことができる。この
ようなフレームワークは、いずれか1つまたは複数の増殖因子、細胞、薬物または例えば
組織形成を刺激する他の要素と組み合わせて埋め込むことができる。
【0269】
使用できる足場の例としては、不織布マット、多孔質発泡体、または自己集合ペプチド
が挙げられる。不織布マットは、グリコール酸と乳酸との合成吸収性コポリマー(例えば
、PGA/PLA)で構成される繊維(VICRYL、Ethicon,Inc.、So
merville、N.J.)を使用して形成することができる。例えばフリーズドライ
または凍結乾燥などのプロセスによって形成された例えばポリ(ε-カプロラクトン)/
ポリ(グリコール酸)(PCL/PGA)コポリマーで構成される発泡体(例えば、特許
文献19を参照)も、足場として使用することができる。
【0270】
別の実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、フェルト上に植え付けてもよい
し、またはフェルトと接触させてもよく、このようなフェルトは、例えばPGA、PLA
、PCLコポリマーもしくはブレンド、またはヒアルロン酸などの生体吸収性材料から作
製されるマルチフィラメントヤーンで構成することができる。
【0271】
本明細書で提供される単離された胎盤接着性細胞は、別の実施形態において、複合構造
であり得る発泡体の足場上に植え付けることができる。このような発泡体の足場は、有用
な形状、例えば修復、置き換えまたは増大させようとする体内の具体的な構造の部分の形
状などに成形することができる。一部の実施形態において、フレームワークは、例えば0
.1M酢酸で処理され、続いて細胞の付着を強化するために、細胞の植え付けの前にポリ
リシン、PBS、および/またはコラーゲン中でインキュベートされる。細胞の付着また
は増殖および組織の分化を向上させるために、マトリックスの外部表面を、例えば、マト
リックスを血漿でコーティングすること、または1つまたは複数のタンパク質(例えば、
コラーゲン、弾性線維、細網線維)、糖タンパク質、グリコサミノグリカン(例えば、ヘ
パリン硫酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、
ケラチン硫酸など)、細胞マトリックス、ならびに/または例えば、これらに限定されな
いが、ゼラチン、アルギネート、寒天、アガロース、および植物ゴムなどの他の材料を付
加することによって改変することができる。
【0272】
一部の実施形態において、足場は、それを非血栓形成性にする材料を含むか、またはそ
れで処理される。これらの処理および材料も、内皮増殖、移動、および細胞外マトリック
ス堆積を促進および維持する可能性がある。これらの材料および処理の例としては、これ
らに限定されないが、天然材料、例えばラミニンおよびIV型コラーゲンなどの基底膜タ
ンパク質、例えばEPTFEなどの合成材料、ならびにセグメント化ポリウレタン尿素シ
リコーン、例えばPURSPAN(商標)(The Polymer Technolo
gy Group,Inc.、Berkeley、Calif.)などが挙げられる。足
場はまた、例えばヘパリンなどの抗血栓剤を含んでいてもよく、足場はまた、単離された
胎盤接着性細胞での植え付けの前に、表面電荷を変更するように処理することもできる(
例えば、血漿でのコーティング)。
【0273】
本明細書で提供される胎盤接着性細胞(例えば、胎盤接着性細胞)はまた、生理的に許
容できるセラミック材料の上に植え付けてもよいし、またはそれと接触させてもよく、こ
のような材料としては、これらに限定されないが、リン酸モノ、ジ、トリ、アルファ-ト
リ、ベータ-トリ、およびテトラカルシウム、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイ
ト、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグ
ネシウムカルシウム、生物学的に活性なガラス、例えばBIOGLASS(登録商標)、
およびそれらの混合物などが挙げられる。現在市販されている多孔質生体適合性セラミッ
ク材料としては、SURGIBONE(登録商標)(CanMedica Corp.、
Canada)、ENDOBON(登録商標)(Merck Biomaterial
France、France)、CEROS(登録商標)(Mathys,AG、Bet
tlach、Switzerland)、ならびに石灰化コラーゲン骨移植製品、例えば
HEALOS(商標)(DePuy,Inc.、Raynham、Mass.)およびV
ITOSS(登録商標)、RHAKOSS(商標)、およびCORTOSS(登録商標)
(Orthovita、Malvern、Pa.)などが挙げられる。フレームワークは
、天然および/または合成材料の混合物、ブレンドまたは複合材料であってもよい。
【0274】
一実施形態において、単離された胎盤接着性細胞は、細胞約0.5×10から約8×
10個/mLで、好適な足場上に植え付けてもよいし、または好適な足場と接触させて
もよい。
【0275】
5.9 不死化胎盤細胞株
増殖を促進する遺伝子、すなわち、増殖を促進するタンパク質の産生および/または活
性を外来因子によって調節できるように、適切な条件下でトランスフェクトされた細胞の
増殖を促進するタンパク質をコードする遺伝子を含有するあらゆる好適なベクターでトラ
ンスフェクトすることによって、哺乳類胎盤接着性細胞、例えば胎盤接着性細胞を条件的
に不死化することができる。好ましい実施形態において、増殖を促進する遺伝子は、例え
ば、これらに限定されないが、v-myc、N-myc、c-myc、p53、SV40
ラージT抗原、ポリオーマラージT抗原、E1aアデノウイルスまたはヒトパピローマウ
イルスのE7タンパク質などの腫瘍遺伝子である。
【0276】
増殖を促進するタンパク質の外部の調節は、増殖を促進する遺伝子を、外部から調節可
能なプロモーター、例えばトランスフェクトされた細胞の温度または細胞と接触する培地
の組成を改変することによってその活性を制御することができるプロモーターの制御下に
置くことによって達成することができる。一実施形態において、テトラサイクリン(te
t)調節性遺伝子発現系を採用することができる(非特許文献9;非特許文献10を参照
)。tetの非存在下で、このベクター内のtet調節性転写活性化因子(tTA)は、
phCMV*1、tetオペレーター配列に融合したヒトサイトメガロウイルス由来の最
小プロモーターからの転写を強く活性化する。tTAは、大腸菌(Escherichi
a coli)のトランスポゾン-10由来tet耐性オペロンのリプレッサー(tet
R)と、単純疱疹ウイルスのVP16の酸性ドメインとの融合タンパク質である。低い非
毒性の濃度のtet(例えば、0.01~1.0μg/mL)は、tTAによって転写促
進をほぼ完全に壊滅する。
【0277】
一実施形態において、ベクターは、選択可能マーカー、例えば薬剤耐性を付与するタン
パク質をコードする遺伝子をさらに含有する。細菌のネオマイシン耐性遺伝子(neo
)は、本発明の方法で採用され得るこのようなマーカーの1つである。neoを有する
細胞は、例えば増殖培地への100~200μg/mLのG418の添加などの当業者公
知の手段によって選択することができる。
【0278】
トランスフェクションは、これに限定されないが、レトロウイルス感染などの当業者公
知の様々な手段のいずれかによって達成することができる。一般的に、細胞培養は、ベク
ターのためのプロデューサー細胞株から収集された馴化培地とN2サプリメントを含有す
るDMEM/F12との混合物と共にインキュベートすることによってトランスフェクト
することができる。例えば、上述したように調製された胎盤細胞培養物は、1容量部の馴
化培地および2容量部のN2サプリメントを含有するDMEM/F12中の約20時間の
インキュベーションにより、in vitroで例えば5日後に、感染させることができ
る。次いで選択可能マーカーを有するトランスフェクトされた細胞を上述したように選択
することができる。
【0279】
トランスフェクション後、増殖を許容する、例えば、24時間中に細胞の少なくとも3
0%の倍加を可能にする表面上で、培養物を継代する。好ましくは、基材は、ポリオルニ
チン(10μg/mL)および/またはラミニン(10μg/mL)でコーティングされ
た組織培養プラスチック、ポリリシン/ラミニン基材またはフィブロネクチンで処理した
表面からなるポリオルニチン/ラミニン基材である。次いで培養物に、増殖培地を3~4
日ごとに供給し、ここで増殖培地は、1つまたは複数の増殖促進因子が補充されていても
よいし、または補充されていなくてもよい。増殖促進因子は、培養物が50%未満の密集
度であるときに増殖培地に添加してもよい。
【0280】
条件的不死化胎盤細胞株は、80~95%の密集度のときに、例えばトリプシン処理な
どによる標準的な技術を使用して継代することができる。およそ20回の継代まで、一部
の実施形態において、選択(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子を含有する細胞の場合、G
418の添加による)を維持することが、有益である。細胞はまた、長期間貯蔵のために
液体窒素中で凍結されてもよい。
【0281】
クローン細胞株は、上述したように調製された条件的不死化ヒト胎盤細胞株から単離す
ることができる。一般的に、このようなクローン細胞株は、限界希釈などによる標準的な
技術を使用して、またはクローニングリングを使用して単離して、拡張することができる
。クローン細胞株は、一般的に、上述したように供給および継代することができる。
【0282】
条件的不死化ヒト胎盤細胞株は、クローン性であってもよいが、必ずしもクローン性で
なくてもよく、一般的に、分化を促進する培養条件下で増殖を促進するタンパク質の産生
および/または活性を抑制することによって分化するように誘導することができる。例え
ば、増殖を促進するタンパク質をコードする遺伝子が、外部から調節可能なプロモーター
の制御下にある場合、条件、例えば培地の温度または組成は、増殖を促進する遺伝子の転
写を抑制するように改変することができる。上記で論じられたテトラサイクリン調節性遺
伝子発現系の場合、分化は、増殖を促進する遺伝子の転写を抑制するためのテトラサイク
リンの添加によって達成することができる。一般的に、4~5日での1μg/mLのテト
ラサイクリンが、分化を開始させるのに十分である。さらなる分化を促進するために、追
加の薬剤が、増殖培地に含まれていてもよい。
【0283】
5.10 キット
別の態様において、循環系の疾患または障害を有する個体の処置に好適なキットであっ
て、残りのキット内容物から分離された容器中に、組織培養プラスチック接着性の複能性
胎盤接着性細胞、例えば、胎盤幹細胞または胎盤複能性細胞、例えば、上記のセクション
5.3に記載される細胞(胎盤接着性細胞)、および使用説明書を含む、キットが本明細
書で提供される。好ましくは、胎盤接着性細胞は、薬学的に許容される溶液中に、例えば
、病巣内投与に好適な溶液または静脈内投与に好適な溶液中に提供される。ある特定の実
施形態において、胎盤幹細胞または胎盤複能性細胞は、本明細書に記載されるCD10
、CD34、CD105胎盤接着性細胞、例えば、CD10、CD34、CD1
05、CD200胎盤接着性細胞またはCD10、CD34、CD45、CD
90、CD105、CD200胎盤接着性細胞のいずれかである。
【0284】
ある特定の実施形態において、キットは、個体への胎盤接着性細胞の送達を促進する1
つまたは複数の要素を含む。例えば、ある特定の実施形態において、キットは、個体への
胎盤接着性細胞の病巣内送達を促進する要素を含む。このような実施形態において、キッ
トは、例えば、個体への細胞の送達に好適なシリンジおよび針、および同種のものを含ん
でいてもよい。このような実施形態において、胎盤接着性細胞は、バッグ中のキットに、
または1つまたは複数のバイアルに含有されていてもよい。ある特定の他の実施形態にお
いて、キットは、個体への胎盤接着性細胞の静脈内または動脈内送達を促進する要素を含
む。このような実施形態において、胎盤接着性細胞は、例えば、ボトルまたはバッグ(例
えば、約1.5Lまでの細胞を含む溶液を含有することができる血液バッグまたは類似の
バッグ)中に含有されていてもよく、キットは加えて、個体への細胞の送達に好適な管材
料および針を含む。
【0285】
加えて、キットは、個体における痛みまたは炎症を低減する1つまたは複数の化合物(
例えば、鎮痛薬、ステロイド性または非ステロイド性抗炎症化合物、または同種のもの)
を含んでいてもよい。キットはまた、抗細菌性または抗ウイルス性化合物(例えば、1つ
または複数の抗生物質)、個体における不安を低減する化合物(例えば、アルプラゾラム
(alaprazolam))、個体における免疫応答を低減する化合物(例えば、サイ
クロスポリンA)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、ロラタジン、デスロラタジン
、クエチアピン、フェキソフェナジン、セチリジン、プロメタジン、クロルフェニラミン
(chlorepheniramine)、レボセチリジン、シメチジン、ファモチジン
、ラニチジン、ニザチジン、ロキサチジン、ラフチジン、または同種のもの)を含んでい
てもよい。
【0286】
加えて、キットは、使い捨て用品、例えば、滅菌拭き取り繊維、使い捨ての紙用品、グ
ローブ、または同種のものを含んでいてもよく、これらは、送達のための個体の準備を容
易にしたり、または胎盤接着性細胞投与の結果としての個体における感染の見込みを低減
したりする。
【実施例0287】
6.実施例
6.1 実施例1:胎盤由来の接着性細胞の表現型の特徴付け
この実施例は、胎盤接着性細胞(CD10、CD34、CD105、CD200
胎盤幹細胞、胎盤接着性細胞とも称される)による血管新生因子の分泌を実証する。
【0288】
胎盤由来の接着性細胞の血管新生の効力の評価のためのセクレトームプロファイリング
MulitplexBeadアッセイ:6回の継代における胎盤由来の接着性細胞を、
増殖培地中に等しい細胞数でプレーティングし、48時間後に馴化培地を収集した。血清
、血漿、および細胞/組織培養上清を含む様々なマトリックスにおける血管新生バイオマ
ーカーの測定を可能にするアッセイである、磁気ビーズベースのマルチプレックスアッセ
イ(Bio-Plex Pro(商標)、Bio-Rad、CA)を使用して、細胞馴化
培地中の複数の血管新生サイトカイン/増殖因子の同時定性分析を実行した。これらの9
6-ウェルプレートフォーマットのビーズベースのアッセイの原理は、捕獲サンドイッチ
イムノアッセイに類似している。所望の血管新生標的に対して向けられた抗体は、内部染
色されたビーズに共有結合でカップリングされる。カップリングされたビーズは、血管新
生の標的を含有するサンプルと反応することができる。一連の洗浄によって未結合のタン
パク質を除去した後、異なるエピトープに特異的なビオチン化検出抗体を反応に添加する
。その結果、血管新生の標的の周りに抗体のサンドイッチが形成される。次いでストレプ
トアビジン-PEを添加して、ビーズ表面上のビオチン化検出抗体に結合させる。簡単に
言えば、マルチプレックスアッセイを製造元の説明書に従って実行し、馴化培地中のそれ
ぞれの血管新生増殖因子の量を評価した。
【0289】
ELISA:細胞馴化培地中の単一の血管新生サイトカイン/増殖因子の定量分析を、
R&D Systems(ミネアポリス、ミネソタ州)からの市販のキットを使用して実
行した。簡単に言えば、ELISAアッセイを製造元の説明書に従って実行し、馴化培地
中のそれぞれの血管新生増殖因子の量を評価した。
【0290】
図1に、胎盤接着性細胞による様々な血管新生タンパク質の分泌のレベルを示す。
【0291】
【表1】
【0292】
別の実験で、胎盤接着性細胞は、アンギオポイエチン-1、アンギオポイエチン-2、
PECAM-1(CD31;血小板内皮細胞接着分子)、ラミニンおよびフィブロネクチ
ンも分泌することを確認した。
【0293】
6.2 実施例2:胎盤細胞の機能的な特徴付け
この実施例は、血管新生および分化能力に関連する胎盤接着性細胞(CD10、CD
34、CD105、CD200胎盤幹細胞、胎盤接着性細胞とも称される)の異な
る特徴を実証する。
【0294】
6.2.1 胎盤接着性細胞の血管新生の効力の評価のためのHUVECの管形成
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、3日間にわたりEGM-2培地(Cambr
ex、イーストラザフォード、ニュージャージー州)中での3回またはそれ未満の継代で
二次培養し、およそ70%~80%の密集度で回収した。HUVECを基礎培地/抗生物
質(DMEM/F12(Gibco))で1回洗浄し、同じ培地に所望の濃度で再懸濁し
た。HUVECを、調製から1時間以内に使用した。ヒト胎盤コラーゲン(HPC)を、
10mMのHCl(pH2.25)中で1.5mg/mLの濃度にし、これを緩衝液でp
H7.2に中和し、使用されるまで氷上で維持した。HPCを、細胞4000個/μLの
最終的な細胞濃度でHUVEC懸濁液と合わせた。得られたHUVEC/HPC懸濁液を
、3μL/ウェルで、即座にピペットで96-ウェルプレートに取った(プレートの外周
は、蒸発を回避するために滅菌PBSで前もって充填されていなければならない。条件1
つ当たりn=5)。HUVECの液滴を、コラーゲンが重合できるように、培地の添加な
しで37℃および5%COで75~90分間インキュベートした。「乾式」インキュベ
ーションが終わったら、各ウェルを、200μLの馴化胎盤接着性細胞培地(n=2つの
細胞株)または対照培地(例えば、陰性対照としてDMEM/F12、および陽性対照と
してEGM-2)で穏やかに充填し、37℃および5%COで20時間インキュベート
した。6回の継代で胎盤接着性細胞を増殖培地中に4~6時間インキュベートすることに
よって馴化培地を調製し、付着させ塗り広げた後、培地を24時間にわたりDMEM/F
12に交換した。インキュベーション後、HUVECの液滴を乱さずにウェルから培地を
除去し、ウェルをPBSで1回洗浄した。次いでHUVECの液滴を10秒かけて固定し
、Diff-Quik細胞染色キットを使用して1分間染色し、その後滅菌水で3回濯い
だ。染色した液滴を空気乾燥させ、ZeissのSteReo Discovery V
8顕微鏡を使用して各ウェルの画像を獲得した。次いでコンピューターソフトウェアパッ
ケージImageJおよび/またはMatLabを使用して画像を分析した。画像を、カ
ラーから8ビットのグレースケール画像に変換し、閾値処理して白黒画像に変換した。次
いで粒子分析機構を使用して画像を分析して、カウント(個々の粒子の数)、合計面積、
平均サイズ(個々の粒子の)、およびアッセイ中の内皮管形成の量に匹敵する面積比を含
むピクセル密度データを得た。
【0295】
馴化培地は、管形成の誘導によって実証されたように、内皮細胞に血管新生作用を発揮
した(図2を参照)。
【0296】
6.2.2 HUVEC移動アッセイ
この実験は、胎盤由来の接着性細胞の血管新生能力を実証した。HUVECを、フィブ
ロネクチン(FN)でコーティングされた12-ウェルプレート中で単分子層の密集度に
増殖させ、単分子層を1mLのプラスチックピペットチップで「創傷を与え」、ウェルに
わたり無細胞ラインを作り出した。増殖の3日後に胎盤接着性細胞から得られた無血清馴
化培地(EBM2;Cambrex)と共に「創傷を与えた」細胞をインキュベートする
ことによって、HUVECの移動を試験した。細胞非含有のEBM2培地を、対照として
使用した。15時間後、倒立顕微鏡を使用して無細胞領域への細胞移動を記録した(n=
3)。次いで、コンピューターソフトウェアパッケージImageJおよび/またはMa
tLabを使用して写真を分析した。画像を、カラーから8ビットのグレースケール画像
に変換し、閾値処理して白黒画像に変換した。次いで粒子分析機構を使用して画像を分析
して、カウント(個々の粒子の数)、合計面積、平均サイズ(個々の粒子の)、およびア
ッセイ中の内皮の移動量に匹敵する面積比を含むピクセル密度データを得た。初期に記録
した創傷ラインのサイズに対する細胞移動の程度をスコア付けし、結果を細胞1×10
個に正規化した。
【0297】
胎盤由来の接着性細胞によって分泌された栄養因子は、細胞移動の誘導によって実証さ
れたように、内皮細胞に血管新生作用を発揮した(図3)。
【0298】
別の実験で、HUVECを、24ウェル-プレートの底部で、EGM2中で一晩定着さ
せて培養し、続いてEBM中で半日飢餓状態にした。同時に、培地で培養された胎盤接着
性細胞を融解させ、トランスウェル(8μM)中で一晩培養した。EC飢餓後、馴化無血
清DMEMを、一晩の増殖のためにトランスウェルを伴ってEC上に移した。各実験には
4つの複製を含め、PromegaのCell Titer Gloアッセイで24時間
後の増殖を評価した。EBM-2培地を陰性対照として使用し、EGM-2を陽性対照と
して使用した。エラーバーは、分析の複製(n=3)の平均標準偏差を示す。
【0299】
胎盤接着性細胞によって分泌された栄養因子は、HUVEC増殖の指標であるHUVE
C細胞数の増加をもたらした。図4を参照されたい。
【0300】
6.2.3 胎盤由来の接着性細胞の血管新生の効力の評価のための管形成
胎盤接着性細胞を、VEGF非含有の増殖培地中またはVEGF含有のEGM2-MV
中のいずれかで増殖させて、全般的に細胞の血管新生の効力に加えて細胞の分化能へのV
EGFの作用を評価した。HUVECを、管形成の対照細胞として、EGM2-MV中で
増殖させた。細胞を、それぞれの培地中で、それらが70~80%の密集度に達するまで
4から7日間培養した。冷(4℃)MATRIGEL(商標)溶液(50A;BD Bi
osciences)を12-ウェルプレートのウェルに分配し、プレートを37℃で6
0分インキュベートして、溶液をゲル状にした。胎盤接着性細胞およびHUVEC細胞を
トリプシン処理し、適切な培地(VEGF含有および非含有)に再懸濁し、100μLの
希釈した細胞(細胞1から3×10個)をMATRIGEL(商標)含有ウェルのそれ
ぞれに添加した。重合MATRIGEL(商標)上の細胞を、0.5から100ngのV
EGFの存在または非存在下で、37℃で4から24時間、5%COインキュベーター
に置いた。インキュベーション後、標準的な光学顕微鏡法を使用して、管形成の兆候に関
して細胞を評価した。
【0301】
胎盤接着性細胞は、VEGFの非存在下で最小の管形成を示したが、VEGFでの刺激
を介して管状の構造を形成するように誘導/分化した。図5を参照されたい。
【0302】
6.2.4 胎盤由来の接着性細胞の血管新生の効力の評価のための低酸素応答性
内皮細胞および/または内皮前駆体の血管新生の機能を評価するために、低酸素および
酸素正常条件下で血管新生増殖因子を分泌するその能力に関して、細胞を評価することが
できる。低酸素状態下での培養は通常、内皮細胞または内皮前駆細胞のいずれかによる血
管新生増殖因子の分泌の増加を誘導し、これは、馴化培地中で測定することができる。胎
盤由来の接着性細胞を、その標準的な増殖培地中に等しい細胞数でプレーティングし、お
よそ70~80%の密集度に増殖した。その後、細胞の培地を無血清培地(EBM-2)
に交換し、正常酸素圧(21%O)または低酸素(1%O)条件下で24時間インキ
ュベートした。馴化培地を収集し、R&D Systemsからの市販のELISAキッ
トを使用して血管新生増殖因子の分泌を分析した。ELISAアッセイを製造元の説明書
に従って実行し、馴化培地中のそれぞれの血管新生増殖因子の量(VEGFおよびIL-
8)を細胞1×10個に正規化した。
【0303】
胎盤由来の接着性細胞は、低酸素状態下で様々な血管新生増殖因子の分泌の上昇を示し
た。図6を参照されたい。
【0304】
6.2.5 胎盤接着性細胞の馴化培地に対するHUVEC応答
胎盤接着性細胞を、60%DMEM-LG(Gibco);40%MCBD-201(
Sigma);2%FBS(Hyclone Labs)、1×インスリン-トランスフ
ェリン-セレニウム(ITS);10ng/mLリノール酸-ウシ血清アルブミン(LA
-BSA);1n-デキサメタゾン(Sigma);100μMアスコルビン酸2-リン
酸(Sigma);10ng/mL上皮増殖因子(R&D Systems);および1
0ng/mL血小板由来増殖因子(PDGF-BB)(R&D Systems)を含有
する増殖培地中で48時間培養し、次いで無血清培地中で追加の48時間培養した。胎盤
接着性細胞培養物からの馴化培地を収集し、これを使用して、血清飢餓HUVECを5、
15、および30分刺激した。その後HUVECを溶解させ、BD(商標)CBA(Cy
tometric Bead Assay)細胞シグナル伝達フレックスキット(BD
Biosciences)で、血管新生経路のシグナル伝達において役割を果たすことが
わかっているリンタンパク質に関して染色した。胎盤接着性細胞は、HUVECにおける
、AKT-1(これは、アポトーシスプロセスを阻害する)、AKT-2(これは、イン
スリンシグナル伝達経路における重要なシグナル伝達タンパク質である)、およびERK
1/2細胞増殖経路の強い活性化剤であることが見出された。これらの結果はさらに、胎
盤接着性細胞の血管新生能力を実証する。
【0305】
6.3 実施例3:胎盤接着性細胞による血管新生の誘導
この実施例は、ニワトリ漿尿膜(CAM)を使用したin vivoでのアッセイにお
いて、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞が、上記の
実施例1に記載されたように血管新生を促進することを実証する。
【0306】
2つの別個のCAMアッセイを実行した。第1のCAMアッセイにおいて、胎盤接着性
細胞の異なる調製物からの無傷細胞ペレットを評価した。第2のCAMアッセイにおいて
、異なる胎盤接着性細胞調製物の上清を評価した。線維芽細胞増殖因子(bFGF)を陽
性対照として使用し、MDA-MB-231ヒト乳がん細胞を参照として使用し、媒体お
よび培地対照を陰性対照として使用した。研究のエンドポイントは、全ての処置および対
照グループの血管密度を決定することであった。
【0307】
6.3.1 胎盤接着性細胞を使用したCAMアッセイ
上記の実施例1に記載されたように調製し低温保存した胎盤接着性細胞を使用した。胎
盤接着性細胞を投与のために融解させ、CAMに投与された細胞の数を決定した。
【0308】
研究設計:各グループが10個の胎芽を含む5つのグループを研究に含めた。表2に、
研究の設計を記載する。
【0309】
【表2】
【0310】
CAMアッセイ手順:新鮮な有精卵を、標準的な卵インキュベーター中で、37℃で3
日間インキュベートした。3日目に滅菌条件下で卵を割り、胎芽を20個の100mmプ
ラスチックプレートに置き、底部の棚に水のリザーバを備えた胎芽インキュベーター中で
、37℃で培養した。インキュベーター中の湿度が一定に維持されるように、水のリザー
バに小さいポンプを使用して空気を連続的にバブリングした。6日目に、各CAM上に滅
菌シリコン「O」リングを置き、次いで、滅菌フード中で、胎盤接着性細胞を、培地/M
ATRIGEL(商標)混合物(1:1)40μL当たり細胞7.69×10個の密度
で各「O」リングに送達した。表2に、投与につき使用された細胞の数および各細胞調製
物に添加された培地の量を記載する。媒体対照胎芽は、40μLの媒体(PBS/MAT
RIGEL(商標)、1:1)を受け、陽性対照は、40μLのDMEM培地/MATR
IGEL(商標)混合物(1:1)中の100ng/mlのbFGFを受け、培地対照は
、40μLのDMEM培地単独を受けた。各投与が完了した後、胎芽をインキュベーター
に戻した。8日目に、胎芽をインキュベーターから取り出し、室温で維持しながら、画像
捕獲システムを100×の倍率で使用して各「O」リング下で血管密度を決定した。
【0311】
CAM上の処置部位に存在する血管の数を示すために、計算上の数値である0から5、
または指数関数的な数値である1から32を使用した血管新生スコア付けシステムによっ
て、血管密度を測定した。より高いスコアの数値は、より高い血管密度を示し、一方で0
は血管新生がないことを示した。それぞれ個々の実験につき、その部位で記録されたスコ
アを対照サンプルから得られた平均スコアで割ることを使用して、各投与部位における阻
害パーセントを計算した。その用量に関して8~10個の胎芽から得られた全ての結果を
プールすることによって、所与の化合物の各用量の阻害パーセントを計算した。
【0312】
【表3】
【0313】
結果:図7に血管密度スコアの結果を示す。結果は、明らかに、胎盤接着性細胞懸濁液
、または100ng/mLのbFGF、またはMDAMB231乳がん細胞懸濁液で処理
したニワトリ漿尿膜の血管密度スコアが、媒体対照CAMのスコアと比較して統計学的に
有意に高いことを示す(P<0.001、スチューデントの「t」検定)。胎盤接着性細
胞(陰性対照)を培養するために使用された培地は、血管密度に対してまったく作用を有
さなかった。さらに、胎盤接着性細胞調製物の血管密度の誘導は、多少のばらつきを示し
たが、このばらつきは統計学的に有意ではなかった。
【0314】
6.3.2 胎盤接着性細胞上清を使用したCAMアッセイ
第2のCAMアッセイに、MDA-MB-231細胞および胎盤接着性細胞からの上清
サンプルを上述したように使用した。bFGFおよびMDA-MB-231上清を、陽性
対照として使用し、培地および媒体を陰性対照として使用した。
【0315】
研究設計:各グループが10個の胎芽を含む5つのグループを研究に含めた。表4に、
研究の設計を記載する。
【0316】
【表4】
【0317】
CAMアッセイ手順:アッセイ手順は、上記のセクション5.3.1に記載したのと同
じであった。唯一の差は、各幹細胞調製物からの上清またはMDA-MB-231細胞か
らの上清を、試験材料として使用したことであった。投与のために、各上清をMATRI
GEL(商標)(体積で1:1)と混合し、40μLの混合物を各胎芽に投与した。
【0318】
結果:血管密度スコア(図8を参照)は、各幹細胞調製物の上清による血管形成の誘導
が異なっていたことを示す。胎盤接着性細胞からの上清サンプルは、血管誘導への有意な
作用を示し、それぞれP<0.01、P<0.001、およびP<0.02(スチューデ
ントの「t」検定)であった。予想通りに、陽性対照bFGFも、上記の第1のCAMア
ッセイからわかるように血管形成の有力な誘導を示した(P<0.001、スチューデン
トの「t」検定)。しかしながら、MDA-MB-231ヒト乳がん細胞からの上清は、
媒体対照と比較して有意な血管形成への誘導を示さなかった。これまでに示したように、
培養培地単独では、まったく作用を有さなかった。
【0319】
6.4 実施例4:内皮および筋肉細胞への胎盤接着性細胞の全身性作用
6.4.1材料および方法
研究設計:レーザードップラー血液フロー分析および行動試験には、グループ1つ当た
り少なくとも9匹のマウスのサンプルサイズを使用し、X線血管撮影法には、グループ1
つ当たり4から5匹のマウスのサンプルサイズを使用し、組織学的な評価には、グループ
1つ当たり4から5匹のマウスのサンプルサイズを使用した。動物をランダムに実験グル
ープに割り当て、実験者を実験グループの正体に対して盲検化し、一方でこの研究におい
て複数のエンドポイントを試験した。異常値を排除せず、全ての収集されたデータを統計
分析に使用した。
【0320】
マウス:Db/dbマウス(10~11週齢)およびBalb/c、野生型および無胸
腺ヌードマウス(10から12週齢)を、Charles Rivers(ボストン,マ
サチューセッツ州、米国)から購入した。全ての動物実験は、National Ins
titute of Health(NIH)およびAssociation for
Assessment and Accreditation of Laborato
ry Animal Care(AAALAC)のガイドラインに適合していた。
【0321】
胎盤接着性細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(HDF)の調製:CD34、CD10
、CD105、CD200胎盤接着性細胞を、実施例1および非特許文献11に記載
されたように、正常な満期産から得られたヒト胎盤組織の機械的なおよび酵素による消化
によって調製した。胎盤接着性細胞を、商標付きの培地中での6回の継代まで拡張し、そ
の後、これまでに記載されたようにしてin vivoでの研究に使用した(非特許文献
12)。HDF細胞をLonza(ウォーカーズビル、メリーランド州、米国)から得て
、これを製造元の説明書に従って培養により拡張した。
【0322】
後肢虚血(HLI)のマウスモデル:db/dbマウスでの片側HLIモデルにおいて
、右大腿動脈を2ヶ所(大腿深動脈の近位)で結紮し、結紮糸の間を横方向に切開した。
媒体、HDF(細胞3×10個)、または胎盤接着性細胞(細胞3×10個)を、結
紮後の24時間に、筋肉内の2つの部位、すなわち外科創傷の近位および遠位側(各部位
に25μl、マウス1匹当たり合計50μl)に投与した。db/dbマウスでの両側H
LIモデルにおいて、右大腿動脈を2ヶ所(大腿深動脈の遠位)で結紮し、結紮糸の間を
横方向に切開した。動物を、結紮後の48時間に、媒体、VEGF(3.3μg/動物;
Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、米国)または胎盤接着性細胞
(細胞5×10個)で処置した。右後肢の大腿動脈の結紮および横方向への切開の23
日後、左後肢に、2回目の傷害、大腿動脈の結紮(大腿深動脈の近位)を実行した。
【0323】
T細胞再構成実験において、CD4T細胞を野生型Balb/cマウスの脾臓から単
離し、5×10個のCD4T細胞を、無胸腺ヌードBalb/cレシピエントマウス
の静脈内に移した。CD4T細胞移植の2週間後、レシピエントマウスを片側HLIに
供し、続いて24時間後に媒体または胎盤接着性細胞(細胞5×10個)処置に供した
【0324】
血流の測定:ベースライン時に、手術の直後に、および連続的に6週間にわたり、目的
の領域(ふくらはぎの領域)にわたる繰り返しの後肢血流測定を、非接触型のレーザード
ップラーを使用して得た。片側HLIモデルにおいて、血流は、各タイムポイントにおけ
る右(虚血)から左(正常)肢における血流の比率として表される。両側結紮モデルにお
いて、血流は、HLI傷害前のベースライン時における血流に対する特定のタイムポイン
トでの後肢における血流の比率として表される。
【0325】
血管撮影法:マウスをケタミン/キシラジンで麻酔した。近位大動脈および下大静脈の
結紮の後、大動脈に硫酸バリウム溶液(2.5ml)を注入し、造影剤が充填された血管
の数を、X線レントゲンアッセイを使用して決定した。血管撮影写真の造影剤が充填され
た血管とグリッド線との交差の定量は、放射線不透過性色素で充填されたグリッド上のブ
ロックの数と定義されるアンギオスコアとして提示される。
【0326】
組織学および免疫組織化学:後四肢筋を除去し、HOPE(Hepes-グルタミン酸
緩衝媒介有機溶媒保護作用)固定剤(Polysciences,Inc、ウォーリント
ン、ペンシルベニア州)中で固定し、パラフィンに包埋した。パラフィンブロックを30
分かけて20℃に冷却し、マイクロトームを使用して厚さ5μmに薄片化した。2つの連
続する薄片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色することにより筋肉の解剖学的構造を
可視化し、形態学的な変化に関して顕微鏡で評価した。免疫染色のために、まず大腿部筋
肉の薄片を、PBS中の10%ウマ・ロバ血清2×カゼインで、室温で30分ブロッキン
グし、次いで一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、二次抗体と共に室温で30分
インキュベートした。一次抗体について、ラット抗CD31(1:100、Abcam、
ケンブリッジ、マサチューセッツ州、米国)、ウサギ抗αSMA(1:100、Abca
m)、ラット抗CD68(1:100、ABD Serotec、ローリー、ノースカロ
ライナ州、米国)、およびヤギ抗アルギナーゼ1(1:100、Santa Cruz、
ダラス、テキサス州、米国)を使用した。適切な二次抗体は、ヤギ抗ラットIgGコンジ
ュゲートAlexa Fluor488(1:500、Invitrogen、カールス
バッド、カリフォルニア州、米国)、ヤギ抗ウサギIgG Alexa Fluor59
4(1:500、Invitrogen)、ニワトリ抗ラットIgYコンジュゲートAl
exa Fluor488(1:500、Invitrogen)、およびロバ抗ヤギI
gGコンジュゲートAlexa Fluor594(1:500、Invitrogen
)を含んでいた。核染色のために、600nMのDAPI溶液(Sigma、セントルイ
ス、ミズーリ州、米国)を適用した。免疫組織化学画像を、画像捕獲およびアーカイブ化
のためのNISエレメントソフトウェアを備えたPCに連結された高解像度デジタルカメ
ラNikon DXM1200Fを備えたNikon Eclipseの顕微鏡モデルE
800を用いて捕獲した。血管密度および形態測定分析のために、1つの処置グループ当
たり4から5つの代表的な動物のそれぞれからの3つの薄片を評価した。各薄片内で、3
つのオーバーラップしないフィールドをランダムに選択し、20×の倍率でデジタルで捕
獲した。測定された平均断面積は0.35mm/フィールドであった。
【0327】
in vitroでのヒトマクロファージの分化:ヒト単球を、CD14磁気ビーズ
(Miltenyi、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を使用して血液から単離
した。単球を、100ng/mlのM-CSFが補充されたRPMI1640培地中で、
100cm培養皿プレーティングし、7~8日間培養し、M0マクロファージを誘導した
。その後細胞をACCUTASE(登録商標)で回収し、6ウェルプレートに細胞5×1
個/ウェルでプレーティングした。アッセイ対照として、選択ウェルを100ng/
mlのLPSまたは20ng/mlのIL-4で48時間処理して、マクロファージをそ
れぞれM1およびM2に分極させた。M0マクロファージをRPMI1640培地で培養
し続けた。胎盤接着性細胞を、トランスウェル中で、M0マクロファージと1:1の比率
で共培養した。48時間の処理後、マクロファージをACCUTASE(登録商標)で回
収し、フローサイトメトリーによってCD206、CD80およびHLA-Iの平均蛍光
強度(MFI)に関して分析した。
【0328】
フローサイトメトリー:フローサイトメトリー染色のための全ての抗体を、BD Bi
osciences(Biosciences、サンノゼ、カリフォルニア州、米国)か
ら購入した。マクロファージをFACS洗浄緩衝液(2%FBSを含むPBS)で洗浄し
、4℃で30分インキュベートすることによって抗体で標識した。フローサイトメトリー
分析をFACS Canto II(BD Biosciences)で実行した。デー
タをFACSDivaソフトウェア(BD Biosciences)で獲得し、Flo
wJoフローサイトメトリーソフトウェア(Tree Star、アシュランド、オレゴ
ン州、米国)を使用して分析した。
【0329】
統計的分析:データは、平均±SEMとして表される。全てのex vivo研究にお
いて。統計的有意性を、両側スチューデント「t」検定によって決定した。P値<0.0
5を統計学的に有意とみなした。繰り返しの測定による二元分散分析(ANOVA)を使
用して、in vivoにおけるマウスのグループ間の差を分析した。処理に関連する有
意な作用が観察されたとき(ANOVA;P<0.05)、ペアワイズ最小有意差(LS
D)事後分析を実行した。
【0330】
流入領域リンパ節細胞の調製および分析:db/dbマウスで実行された片側HLI実
験において、大腿動脈の結紮および横方向への切開後の3、7または14日目に、鼠径部
のdLNを収集した。OctoMACSディソシエーター(Miltenyi、サンディ
エゴ、カリフォルニア州、米国)を製造元の説明書に基づき使用した機械的な解離によっ
て、dLNからの単一細胞懸濁液を得た。遺伝子発現およびサイトカイン産生を測定する
ために、dLN細胞を、PMA/イオノマイシンを含む不完全RPMI(eBiosci
ences、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)でそれぞれ2および24時間刺激
した。MilliporeのマウスMAPサイトカイン/ケモカイン磁気ビーズパネル(
MCYTMAG-70K-PX32)を使用して上清を分析した。
【0331】
定量PCR分析:遺伝子発現のために、マウス用の個々のTaqman遺伝子発現アッ
セイを、Gata3、Tbet(Applied Biosystems)に使用した。
相対的な遺伝子発現を、GAPDH発現を使用して正規化し、変化倍率を、2-ΔΔCt
方法を使用して計算した。
【0332】
db/dbマウスのHLIモデルにおける流入領域リンパ節細胞の移植:dLN細胞移
植実験において、db/dbマウスの右後肢における大腿動脈の片側結紮および横方向へ
の切開によって、HLIを作り出し、動物を、HLIの24時間後に、媒体、HDF(細
胞5×10個)または胎盤接着性細胞(細胞5×10個)で処置した。処置の14日
後、動物を殺し、これらのドナー動物から鼠径部のdLNを単離した。dLN細胞(細胞
1×10個/動物)を、24時間前に片側HLIに供されたレシピエントマウスの筋肉
内に投与した。血流をレーザードップラーによって測定し、CD31+またはαSMA+
血管の密度を免疫組織化学によって決定した。
【0333】
6.4.2 結果
CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞は血液潅流および
側副血管形成を向上させる。
媒体で処置したマウスにおいて、損傷を受けた肢の血流は、HLI後、急速に10%未
満に低下し、14および42日目にそれぞれおよそ20%および35%に回復した。胎盤
接着性細胞処置は、媒体と比較して、28日目に血流を有意に向上させた(図9A)。ヒ
ト皮膚線維芽細胞細胞(HDF)は、ヒト細胞株対照として使用されたが、これは、検査
したいずれの時点でも媒体と比較して血流を向上させなかったことから、胎盤接着性細胞
によって誘導された動脈形成は非特異的な異種反応によって引き起こされる修復によるも
のではいことが示唆される。またX線血管撮影法からも、胎盤接着性細胞で処置した動物
は、媒体またはHDF処置動物より多くの数の血管を有していたことが示された(図9B
)。
【0334】
42日目における上肢筋(四頭筋および内転筋)の組織学的な分析から、胎盤接着性細
胞は、媒体およびHDFと比較して平滑筋アルファアクチン(αSMA)血管の数を有
意に増加させることが解明された(図9C)。αSMA血管のサイズ分布分析から、胎
盤接着性細胞は、小血管(<100μm)の数に加えて大血管(100~300μmおよ
び>300μm)も増加させることが示された示した(図9D)。胎盤接着性細胞処置お
よび側副血管発達の時間経過をよりよく理解するために、3、14および42日目からの
上肢筋を、αSMAおよび内皮マーカーCD31に関して組織学的に検査した。3日目に
、胎盤接着性細胞で処置した動物と媒体で処置した動物との間でCD31またはαSM
血管密度における差はなかった。しかしながら、胎盤接着性細胞は、14および42
日目に、CD31またはαSMA血管密度を、媒体処置した動物の上記密度よりおよ
そ3倍高く増加させた(図9E~F)。さらに、胎盤接着性細胞は、損傷を受けた肢にお
いて、筋線維再生の顕著な特徴である中心に核が配置された筋線維の数を増加させたこと
から、胎盤接着性細胞処置は、血液潅流において向上をもたらしたことに加えて、筋肉修
復も強化したことが示唆される。
【0335】
CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞はM2表現型への
マクロファージの分化をモジュレートする
胎盤接着性細胞によって強化された動脈形成が、虚血性障害中に免疫応答の要素のモジ
ュレーションに関連する可能性があるのかどうかを理解するために、db/dbマウスの
上肢虚血組織における、それぞれそれらのCD68およびアルギナーゼ1(Arg1)の
発現による全浸潤性マクロファージおよびM2様マクロファージの表現型および組織密度
を分析した。7日目において、胎盤接着性細胞で処置したまたは媒体で処置した動物にお
いて、CD68の全マクロファージの数における有意差は検出されなかった。CD68
マクロファージの数は、媒体で処置した動物において、7日目の104±20.4/m
から14日目の8±2.3/mmに劇的に減少したが、それに対して胎盤接着性細
胞で処置した動物では、より有意に多い数(46±8.3/mm)のCD68+マクロ
ファージが14日目まで持続した(図10A)。さらに、胎盤接着性細胞処置は、7日目
および14日目の両方で、CD68Arg1M2様マクロファージの密度を、媒体対
照グループと比較して有意に増加させた(図10B)。
【0336】
in vitroにおけるM2表現型へのヒトマクロファージの分化を促進する胎盤接
着性細胞の能力を分析した。末梢血単核細胞(PBMC)から誘導されたM0マクロファ
ージを、トランスウェルプレート中で胎盤接着性細胞と共に48時間培養した。胎盤接着
性細胞との共培養の後、M0マクロファージは、IL-4によって誘導されたM2マクロ
ファージの検出に類似したCD206発現の有意な増加を示した(図10C)。さらに、
HLA-I(図10D)およびCD80(図10E)の発現もIL-4によって誘導され
たM2マクロファージに類似しており、LPSによって誘導されたM1マクロファージで
検出されたレベルより有意に低いレベルであった(図10D~E)。
【0337】
T細胞は、CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞が媒介
する動脈形成およびM2表現型へのマクロファージのモジュレーションにおいて重要な役
割を果たす
上記の観察された結果におけるT細胞の役割を評価するために、片側HLIに供された
Balb/c野生型およびヌードマウスにおける胎盤接着性細胞の動脈形成作用を検査し
た。胎盤接着性細胞は、28日目に、野生型マウスにおいて血流を有意に増加させたが、
ヌードマウスでは胎盤接着性細胞によって血流は向上しなかった(図11A)。組織学的
な分析から、ヌードマウスにおける媒体と比較して、胎盤接着性細胞は、CD31(図
11B)またはαSMA図11C)血管密度を増加させることができなかったことが
確認された。胎盤接着性細胞が媒介する動脈形成におけるT細胞の要件をさらに確認する
ために、T細胞再構成されたヌードマウスのHLIモデルにおける胎盤接着性細胞の効能
を評価した。レーザードップラー分析から、胎盤接着性細胞は、これらの動物において2
1日目から35日目にかけて血流を有意に強化したことが示され(図11D)、これは、
ヌードマウスにおいて、T細胞再構成が胎盤接着性細胞の効能を回復させたを示す。さら
に、胎盤接着性細胞処置は、野生型およびT細胞再構成されたヌードマウスにおける媒体
と比較して、HLIの7日後に、CD68Arg1M2様マクロファージの数を有意
に増加させたが、ヌードマウスでは作用はなかった。(図12Aおよび12B)。
【0338】
追加の実験を実行して、機能的なT細胞応答に対する胎盤接着性細胞の作用の相関的な
バイオマーカーを、胎盤接着性細胞処置後の虚血組織に流れるリンパ節における機能的な
T細胞表現型の変化を分析することによって同定した。簡単に言えば、胎盤接着性細胞処
置は、サイトカインの誘導およびTh2応答の遺伝子発現シグネチャーに関連し、HLI
モデルにおいて、得られた流入領域リンパ節細胞が、筋肉内投与後に胎盤接着性細胞の動
脈形成促進性の作用を繰り返したことが、データから実証された。
【0339】
総合すると、これらのデータから、T細胞は、虚血組織において、胎盤接着性細胞が媒
介する動脈形成および胎盤接着性細胞によって誘導されたM2マクロファージの分化にと
って重要であり、動脈形成促進性のリンパ球表現型およびTh2型応答のバイオマーカー
の誘導と相関することが示される。
【0340】
CD34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞処置は全身性の動
脈形成をもたらす
これらのデータから、T細胞およびマクロファージの免疫修飾は、胎盤接着性細胞が媒
介する動脈形成の基礎となる主要なメカニズムであることが解明される。胎盤接着性細胞
が、虚血性障害に応答してM2マクロファージのスキューイングを介した全身性の動脈形
成作用をもたらすことができるかどうかを評価するために、第1のHLI傷害の23日後
および第1の損傷した後肢への細胞注射の21日後に、第2のHLIを反対側の後肢に施
した両側HLIモデルを発育させた。第2のHLIのタイミングは、第1の損傷を受けた
肢を完全ではないが十分に回復させ、細胞のin vivoにおける持続性の事前に特徴
付けられた持続時間に基づいて、胎盤接着性細胞がもはや動物に存在しなくなるのを確実
にした(非特許文献12)。
【0341】
第1の損傷を受けた肢において、手術後48時間に注射された胎盤接着性細胞は、媒体
と比較して、14日目から64日目にかけて血流を有意に増加させた。驚くべきことに、
これらの動物は、第2の反対側の傷害においても35日目(第2のHLIの14日後)か
ら64日目にかけて有意に向上した血流を実証したが、血流の回復の程度は、第1の損傷
を受けた肢の回復の程度より弱かった(図13A)。血管撮影法から、胎盤接着性細胞は
、両方の損傷を受けた肢で血管の数を増加させたことが確認された(図13B~D)。組
織学的な分析から、胎盤接着性細胞は、両方の損傷を受けた肢の虚血組織において、CD
31、αSMA血管密度およびαSMA大血管を増加させたことが示された(それ
ぞれ図13E~G)。両側HLIモデルにおける胎盤接着性細胞とVEGFとの動脈形成
性の効能も比較した。細胞の投与は、両方の損傷を受けた肢における血流およびアンギオ
スコアを有意に増加させたが、それに対してVEGFの作用は、それが注射された第1の
損傷を受けた肢に限定された(図13H~I)。CD68Arg1M2様マクロファ
ージは、胎盤接着性細胞で処置した動物において、HLIの7日後に第2の損傷を受けた
肢で、媒体またはVEGFで処置した動物と比較してより有意に高かった(図13J)。
これは、第2の損傷を受けた肢における動脈形成が、第1の損傷を受けた肢と同じメカニ
ズムを共有することを示す。
【0342】
6.5 実施例5:胎盤接着性細胞はリンパ管形成を誘導する
LYVE-1(リンパ管内皮のヒアルロナン受容体-1)は、リンパ管に特徴的なタン
パク質であり、リンパ管を血管と区別するのに使用することができる。db/dbマウス
を上述したようにHLIに供し、24時間後、同側後肢に、およそ50,000個のCD
34、CD10、CD105、CD200胎盤接着性細胞または媒体を注射した
。免疫組織化学的検査のために、鼠径部の流入領域リンパ節を3および14日目に収集し
た。胎盤接着性細胞を受けたマウスは、媒体で処置したマウスと比較して、流入領域リン
パ節におけるLYVE-1発現の増加を実証し、これは、内皮細胞活性およびリンパ管形
成の増加を示す。
【0343】
均等物:
本発明の開示は、本明細書に記載される具体的な実施形態によって範囲が限定されない
ものとする。実際に、当業者には、記載されたものに加えて、本明細書で提供される主題
の様々な改変が、前述の説明および添付の図面から明らかになると予想される。このよう
な改変は、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0344】
様々な刊行物、特許および特許出願が本明細書に引用されており、これらの開示は、参
照によりそれらの全体が組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C-E】
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C-D】
図13E
図13F
図13G
図13H
図13I
図13J
【手続補正書】
【提出日】2022-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に実質的に記載された、新規な物、方法及び製造方法。
【外国語明細書】