IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マックス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178163
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】結束機
(51)【国際特許分類】
   B65B 13/34 20060101AFI20231207BHJP
   B65B 13/18 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B65B13/34
B65B13/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143600
(22)【出願日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2022090662
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田口 聡
【テーマコード(参考)】
3E052
【Fターム(参考)】
3E052AA05
3E052BA02
3E052BA20
3E052CA11
3E052CB05
3E052CB07
3E052HA13
3E052JA01
3E052LA05
(57)【要約】
【課題】新たな連結体を継ぎ足した際においても、ステープルを適切に送り込むことのできる結束機、を提供する。
【解決手段】結束機10は、ステープル80を袋BGに向けて押し出すよう、第1位置から第2位置まで移動するドライバ30と、押し出されたステープル80をドライバ30と共に挟み込むことで、ステープル80を変形させるクリンチャ400と、複数のステープル80が互いに連結された連結体800を、ドライバ30の可動範囲内の所定位置に向けて送り込む送り部材280と、を備える。ドライバ30には、第2位置から第1位置へと戻る際に、連結体800の並び方向に沿って最も所定位置側にあるステープル80に対し、第1位置側に向けた力を加えるための傾斜面33が設けられている。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステープルによって被結束物を結束する結束機であって、
前記ステープルを前記被結束物に向けて押し出すよう、第1位置から第2位置まで移動するドライバと、
押し出された前記ステープルを前記ドライバと共に挟み込むことで、前記ステープルを変形させるクリンチャと、
複数の前記ステープルが互いに連結された連結体を、前記ドライバの可動範囲内の所定位置に向けて送り込む送り機構と、を備え、
前記ドライバには、
前記第2位置から前記第1位置へと戻る際に、前記連結体の並び方向に沿って最も前記所定位置側にある前記ステープルに対し、第1位置側に向けた力を加えるための作用部が設けられている、結束機。
【請求項2】
前記作用部は、前記ドライバのうち、前記第2位置に移動する際において前記連結体と対向する面の一部であって、
前記作用部によって前記ステープルに加えられる力の方向は、前記ドライバの移動方向に対し垂直ではない、請求項1に記載の結束機。
【請求項3】
前記作用部は、前記ステープルに加える力の方向が前記ドライバの移動方向に対し垂直ではなく、且つ、前記ドライバの移動方向に対し平行でもないように形成された傾斜面である、請求項2に記載の結束機。
【請求項4】
前記ドライバのうち前記連結体と対向する面には、前記連結体とは反対側に向けて後退する凹部が形成されており、
前記作用部は、前記凹部のうち最も前記クリンチャ側となる位置に形成された面である、請求項2又は3に記載の結束機。
【請求項5】
前記連結体において互いに隣り合う前記ステープルの間は、接続部によって接続されており、
前記作用部は、前記接続部の一部として前記ステープルに形成された突起に当接することにより、当該突起に繋がる前記ステープルに対し力を加える、請求項1に記載の結束機。
【請求項6】
前記ステープルは、先端側において互いに離間している一対の脚部を有し、
前記作用部は、前記ステープルのうち前記脚部に当接することにより、当該ステープルに対し力を加える、請求項1に記載の結束機。
【請求項7】
一方の前記脚部に力を加えることにより、前記連結体を、前記ドライバの可動範囲内の所定位置に向けて送り込む送り爪、を更に備え、
前記作用部は、前記ステープルのうち、前記送り爪によって力を加えられる方の前記脚部に当接することにより、当該ステープルに対し力を加える、請求項6に記載の結束機。
【請求項8】
前記作用部は、前記ステープルのうち前記脚部の先端部に当接することにより、当該ステープルに対し力を加える、請求項6又は7に記載の結束機。
【請求項9】
前記ドライバの先端から前記作用部までの距離は、前記第1位置から前記第2位置まで前記ドライバが移動する距離よりも短い、請求項1に記載の結束機。
【請求項10】
前記ドライバが前記第1位置から前記第2位置まで移動する途中において、前記作用部が前記先端部の位置を超えて移動する、請求項8に記載の結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被結束物を結束する結束機に関する。
【背景技術】
【0002】
結束機は、例えば青果を入れる袋の入り口部分を、ステープルを用いて結束するための装置である。結束機は、ステープルを被結束物に向けて押し出すように動作するドライバと、ドライバと共にステープルを挟み込んで変形させるクリンチャと、を備える。被結束物の結束を連続して行い得るように、複数のステープルは予め互いに連結された状態となっており、結束機のうち所定の位置へと順次送り込まれる。下記特許文献1には、互いに連結された状態のステープル(連鎖クリップ)を用いて、繰り返し結束を行うことのできる結束装置について記載されている。互いに連結された複数のステープルのことを、以下では「連結体」とも称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3840401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
連結体に含まれるステープルの数は有限である。従って、当該ステープルの数が少なくなってくると、これまで送り込まれていた連結体に続けて、新たな連結体を継ぎ足すように送り込む必要がある。ただし、2つの連結体の境界部分においては、互いに隣り合う一対のステープルの間が連結されていない。これに起因して、結束機におけるステープルの送り込みが適切には行われないことがある。例えば、2つのステープルがドライバによって同時に押し出されてしまい、ステープルの一部が結束機の内部で詰まってしまうような事態が生じ得る。
【0005】
本発明は、新たな連結体を継ぎ足した際においても、ステープルを適切に送り込むことのできる結束機、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る結束機は、ステープルによって被結束物を結束する結束機であって、ステープルを被結束物に向けて押し出すよう、第1位置から第2位置まで移動するドライバと、押し出されたステープルをドライバと共に挟み込むことで、ステープルを変形させるクリンチャと、複数のステープルが互いに連結された連結体を、ドライバの可動範囲内の所定位置に向けて送り込む送り機構と、を備える。ドライバには、第2位置から第1位置へと戻る際に、連結体の並び方向に沿って最も所定位置側にあるステープルに対し、第1位置側に向けた力を加えるための作用部が設けられている。
【0007】
上記構成の結束機では、ドライバが第2位置から第1位置へと戻る際に、先頭のステープルに対し、第1位置側に向けた力がドライバの作用部によって加えられる。これにより、上記ステープルの位置が、継ぎ足された連結体に含まれる複数のステープルと直線状に並ぶ位置となるように修正される。その結果、次にドライバが第2位置に向けて移動する際には、ドライバによって先頭のステープルのみが押し出されることとなるので、引き続きステープルを適切に送り込むことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新たな連結体を継ぎ足した際においても、ステープルを適切に送り込むことのできる結束機、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る結束機の外観を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る結束機の外観を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る結束機の外観を示す図である。
図4図4は、入り口部分が結束された状態の被結束物、を示す図である。
図5図5は、ステープルの構成を示す図である。
図6図6は、複数のステープルが互いに連結された連結体、の構成を示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係る結束機の外観を示す図である。
図8図8は、第1実施形態に係る結束機のうち、連結体を案内する部分の構成を示す図である。
図9図9は、第1実施形態に係る結束機の内部構成を示す図である。
図10図10は、第1実施形態に係る結束機の内部構成を示す図である。
図11図11は、ドライバの構成を示す図である。
図12図12は、比較例に係る結束機において、ドライバによってステープルが送り出されるときの各部の動作を説明するための図である。
図13図13は、比較例に係る結束機において、ドライバによってステープルが送り出されるときの各部の動作を説明するための図である。
図14図14は、比較例に係る結束機において、ドライバによってステープルが送り出されるときの各部の動作を説明するための図である。
図15図15は、比較例に係る結束機において、ドライバによってステープルが送り出されるときの各部の動作を説明するための図である。
図16図16は、比較例に係る結束機において、ドライバによってステープルが送り出されるときの各部の動作を説明するための図である。
図17図17は、比較例に係る結束機において、ドライバによってステープルが送り出されるときの各部の動作を説明するための図である。
図18図18は、第1実施形態に係る結束機において、ドライバによってステープルが送り出されるときの各部の動作を説明するための図である。
図19図19は、第1実施形態に係る結束機において、ドライバによってステープルが送り出されるときの各部の動作を説明するための図である。
図20図20は、第1実施形態に係る結束機において、ドライバによってステープルが送り出されるときの各部の動作を説明するための図である。
図21図21は、第2実施形態に係る結束機の、ドライバの構成を示す図である。
図22図22は、第2実施形態に係る結束機において、ドライバによってステープルが送り出されるときの各部の動作を説明するための図である。
図23図23は、ステープルの形状について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る結束機10は、青果等を入れる袋の入り口部分を結束するための装置であって、例えばスーパーのバックヤード等において使用されるものである。図1乃至図3には、結束機10の外観が示されている。
【0012】
図4には、結束機10を用いて結束が行われた後の袋BGが示されている。袋BGは、内部に青果等を収容した状態で、その入り口部分がステープル80によって結束されている。ステープル80は、例えば樹脂により形成された略棒状の部材である。ステープル80は、結束機10によって袋BGの入り口部分に巻き付けられ、当該入り口部分を結束する。尚、結束の対象である被結束物は、本実施形態のように袋BGでもよいが、それ以外の物であってもよい。以下に説明する結束機10の構成は、例えば、複数の部材を一つに束ねるための結束機等にも適用することができる。
【0013】
図5には、結束前の当初の状態におけるステープル80の形状が示されている。同図に示されるように、ステープル80は、一対の脚部81を接続部82で繋いだ形状を有しており、全体が略U字型となっている。接続部82の反対側においては、それぞれの脚部81の間が開放されている。このように、ステープル80は、先端側(図5では下方側)において互いに離間している一対の脚部81を有している。
【0014】
結束機10による結束を連続して行い得るように、ステープル80は、図5における紙面奥行き方向に沿って複数個並んだ状態で、それぞれの間が接続部83を介して互いに連結されている。換言すれば、複数のステープル80が、接続部83を介して互いに連結され一本の紐状となるように、全体が一体に成形されている。連結され紐状となった複数のステープル80のことを、以下では「連結体800」とも称する。連結体800は、図6に示されるようなボビン700に巻き付けられた状態で、結束機10の連結体保持部170(図1を参照)によって保持される。
【0015】
図1等を参照しながら、結束機10の構成について説明する。尚、図1においては、紙面左側から右側へと向かう方向をx方向としており、当該方向に沿ってx軸を設定してある。また、x方向に対し垂直な方向であって、紙面奥側から手前側に向かう方向をy方向としており、当該方向に沿ってy軸を設定してある。更に、x方向及びy方向のいずれに対しても垂直な方向であって、紙面下方から紙面上方に向かう方向をz方向としており、当該方向に沿ってz軸を設定してある。他の図においても、図1と対応するようにx軸、y軸、及びz軸の各軸を設定してある。以下においては、上記の「x方向」、「y方向」、及び「z方向」を適宜用いながら説明を行う。図1は、結束機10をy方向側から見て描いた図であり、図2は、結束機10を-y方向側から見て描いた図であり、図3は、結束機10をx方向側から見て描いた図である。
【0016】
先ず、結束機10のうち外観に表れている部分の構成について説明する。結束機10は、本体フレーム100と、連結体保持部170と、モーターユニット20と、蓄電池ユニット60と、カッターユニット500と、を備えている。
【0017】
本体フレーム100は、結束機10の本体部分であって、結束機10の各構成部材を保持している。本体フレーム100は、図1の紙面に平行な略平板状の部材等を、複数組み合わせることにより構成されている。本体フレーム100の上端には、結束機10の使用者によって把持される取手150が設けられている。
【0018】
本体フレーム100には、その上端から下方側に向かって伸びるように案内溝110が形成されている。案内溝110の下端部にはスイッチ部材111が設けられている。結束機10の使用者は、袋BGのうち結束したい部分を案内溝110に通した状態で、袋BGを案内溝110に沿って下降させて行く。袋BGがスイッチ部材111に当たり、スイッチ部材111を回動させると、内部のドライバ30(図1においては不図示、図9を参照)等が後に説明するように動作して、袋BGの入り口部分をステープル80によって結束する。
【0019】
連結体保持部170は、連結体800が巻き付けられたボビン700を保持する部分である。連結体保持部170は、y方向(つまり、結束機10の幅方向)に沿って伸びる棒状の軸として形成されており、図1における奥側の端部が本体フレーム100に接続されている。図6に示されるように、ボビン700の中央には貫通穴701が形成されている。図1に示されるように、ボビン700は、貫通穴701を連結体保持部170に通すことによって結束機10に対し取り付けられる。その結果、連結体800は、連結体保持部170の周りにおいて巻回された状態で保持される。尚、結束機10の使用時においては、図7に示されるように、ボビン700から引き出された連結体800がローラー161や案内レール162まで伸びているのであるが、図1乃至図3においてはその図示が省略されている。
【0020】
ローラー161及び案内レール162は、いずれも、上記のようにボビン700から引き出された連結体800を、本体フレーム100の所定位置まで導くための部材である。図1及び図3に示されるように、ローラー161及び案内レール162は、本体フレーム100のy方向側となる位置に設けられている。
【0021】
図8には、図3のうちローラー161や案内レール162及びその近傍部分の構成が拡大して示されると共に、これらによって案内される連結体800も併せて示されている。尚、図8においては、連結体800を視認しやすくするために、図3にある構造物のうち一部の図示が省略されている。
【0022】
ローラー161は、略円柱形状の回転体であって、その回転中心軸をz方向に沿わせた状態で配置されている。連結体800は、ボビン700から引き出され概ねx方向側に引き出された後、ローラー161の側面に沿って概ね-y方向側へと向きを変えるように案内される。図8に示されるように、連結体800は、それぞれのステープル80の接続部82を内側に向け、脚部81の先端を外側に向けた状態で、ローラー161によって案内される。
【0023】
図1に示されるように、案内レール162は、ローラー161よりも僅かにx方向側となる位置に配置されている。図8に示されるように、案内レール162は、ローラー161の近傍から-y方向側に向かって直線状に伸びている。案内レール162は、概ね平板状の部材であって、その法線方向をz方向に沿わせた状態で配置されている。
【0024】
連結体800は、ステープル80が有する一対の脚部81の間に、案内レール162をx方向側から入り込ませた状態とされる。これにより、連結体800は、案内レール162に沿って-y方向側へとスライド可能な状態で保持される。連結体800のうち最も先端にあるステープル80は、本体フレーム100のうち、後述のドライバ30が通過する領域(つまり、ドライバ30の可動範囲内の領域)に配置されており、次の動作時において袋BGの結束に供される。案内レール162は、連結体保持部170から引き出された連結体800を、幅方向(y方向)に沿ってドライバ30の可動範囲内へと案内するもの、ということができる。
【0025】
図8に示されるように、案内レール162の上方側には送り部材280が設けられており、案内レール162の下方側には逆止部材290が設けられている。
【0026】
送り部材280は、その先端に送り爪282が形成された板状の部材である。送り部材280は、軸281を介してリンク部材270に取り付けられている。送り部材280は、軸281の周りにおいて回転可能となっており、不図示のばねによって図8における時計回り方向に付勢されている。
【0027】
リンク部材270は、本体フレーム100に対し動作可能な状態で取り付けられた部材である。リンク部材270のうち送り部材280が取り付けられている部分は、不図示のばねにより-y方向側へと付勢されている。送り部材280は、送り爪282を連結体800の一部に入り込ませた状態で、上記のように-y方向側へと付勢されている。このため、連結体800も、送り爪282からの力によって-y方向側へと付勢されている。
【0028】
結束機10による結束が行われると、連結体800のうち最も先端側にあったステープル80が存在しなくなるので、送り爪282からの力によって連結体800は-y方向側へと送り込まれる。その後、不図示の機構によってリンク部材270がy方向側へと移動する。送り爪282は、リンク部材270と共にy方向側へと移動しながら、連結体800から一度外れた後、前回よりも一段y方向側となる位置において、連結体800の一部に再び入り込んだ状態となる。
【0029】
逆止部材290は、その先端に逆止爪292が形成された板状の部材である。逆止部材290は、軸291を介してベース部材102に取り付けられている。ベース部材102は、本体フレーム100に対し取り付けられた部材である。逆止部材290は、軸291の周りにおいて回転可能となっており、不図示のばねによって図8における反時計回り方向に付勢されている。逆止部材290は、逆止爪292を連結体800の一部に入り込ませた状態となっている。
【0030】
結束機10による結束が行われると、先に述べたように送り爪282が動作して、連結体800が-y方向側へと送り込まれる。逆止部材290は、その際において連結体800が逆方向へと移動してしまうことを、逆止爪292によって防止するための部材である。
【0031】
上記のように、結束のためにドライバ30が動作すると、これに続いてリンク部材270や送り爪282等が動作し、連結体800を本体フレーム100の内部へと送り込む。ローラー161、案内レール162、送り部材280、リンク部材270、及び逆止部材290は、複数のステープル80が互いに連結された連結体800を、ドライバ30の可動範囲内の所定位置に向けて送り込むための機構、を構成している。当該機構は、本実施形態における「送り機構」に該当する。
【0032】
送り爪282は、ステープル80が有する一対の脚部81のうち、一方の脚部81に対してのみ当接し、上記のように送り込むための力を加える。説明の便宜上、送り爪282によって直接力が加えられる方の脚部81のことを、以下では「脚部81A」とも称する。また、送り爪282によって力が加えられないもう一方の脚部81のことを、以下では「脚部81B」とも称する。
【0033】
図1に戻って説明を続ける。モーターユニット20は、その内部に電動モーター50等を収容するものである。電動モーター50は、結束機10を動作させるための駆動源として設けられた回転電機である。電動モーター50は、蓄電池ユニット60から電力の供給を受けて動作し、後述のドライバ30を駆動する。モーターユニット20の内部には、電動モーター50の他、結束機10の動作を制御するための制御基板(不図示)も収容されている。
【0034】
モーターユニット20は、本体フレーム100のうち、y方向側であり且つ下方側の部分に設けられている。モーターユニット20のうちy方向側の側面には、スイッチ25が設けられている。使用者によってスイッチ25が操作されると、上記の制御基板が起動し、結束機10はスタンバイ状態となる。
【0035】
蓄電池ユニット60は、結束機10の動作に必要な電力を蓄えておくための蓄電池(例えばリチウムイオンバッテリー)に、当該蓄電池の充放電を制御するための制御基板62(図3を参照)等を組み合わせてユニット化したものである。蓄電池ユニット60は、外部の充電器によって予め充電された後、結束機10が備える電池取り付け部600に装着される。電池取り付け部600を介して蓄電池ユニット60から供給される電力は、電動モーター50に供給されるほか、結束機10の動作を制御するための制御基板にも供給される。図3に示されるように、蓄電池ユニット60の外表面には、表示部61が設けられている。表示部61は、蓄電池の残量等の情報を、LEDの点灯状態により表示するものである。
【0036】
電池取り付け部600は、本実施形態ではモーターユニット20の一部として結束機10に設けられている。具体的には、モーターユニット20のうちx方向側であり且つ-y方向側の部分が、電池取り付け部600として構成されている。図3に示されるように、電池取り付け部600と本体フレーム100との間には、蓄電池ユニット60を配置するための空間が形成されている。使用者は、蓄電池ユニット60を、電池取り付け部600に対して-y方向側から対向させながら、-x方向側へとスライドさせて行くことで、蓄電池ユニット60を電池取り付け部600に取り付けることができる。蓄電池ユニット60は、その内部の制御基板62がy方向(幅方向)に対し垂直となっている状態で、電池取り付け部600によって保持される。
【0037】
カッターユニット500は、袋BGの結束が完了した後に、袋BGのうちステープル80から先の余剰部分を切断するためのものである。カッターユニット500には、直線状の溝501が形成されており、溝501の内面に沿って刃510が設けられている。
【0038】
袋BGの結束が完了すると、使用者は、案内溝110に沿って袋BGを引き上げた後、そのまま袋BGを溝501の内側へと移動させ、刃510によって袋BGの余剰部分を切断することができる。尚、袋BGの結束が完了した後、不図示の機構によって袋BGの切断まで自動的に行われるような構成であってもよい。
【0039】
結束機10の内部構成について、図9を主に参照しながら説明する。同図に示されるように、結束機10は、減速ギヤ210、220と、カムギヤ230と、クランク240と、結合リンク250と、ドライバ30と、クリンチャ400と、を備えている。これらはいずれも、本体フレーム100の内側に配置されており、本体フレーム100によって保持されている。
【0040】
減速ギヤ210、220は、互いに噛み合った一対の歯車であって、電動モーター50の駆動軸51の回転を、減速しながら後述のカムギヤ230へと伝達するものである。駆動軸51は、その長手方向を幅方向(y方向)に沿わせた状態で設けられており、その一部が本体フレーム100の内側に入り込んでいる。尚、駆動軸51のうち本体フレーム100の内側に入り込んでいる部分には、減速ギヤ210に噛み合うギヤが設けられているのであるが、図9においては当該ギヤの図示が省略されている。
【0041】
カムギヤ230は、減速ギヤ220から力を受けることにより回転し、クランク240を動作させるための部材である。カムギヤ230の外周側近傍となる位置には、軸231を介して、クランク240が回転可能な状態で取り付けられている。カムギヤ230が回転すると、クランク240はその角度を適宜変化させながら、x軸に沿って往復する。図9に示されるのは、クランク240が最も-x方向側にあるときの状態であり、図10に示されるのは、クランク240が最もx方向側にあるときの状態である。結束が行われる前の待機状態においては、図9の状態となっている。
【0042】
結合リンク250は、クランク240とドライバ30との間を繋ぐ部材である。結合リンク250の一端は、クランク240のうち軸231とは反対側の端部に対し、軸251を介して回転可能な状態で取り付けられている。結合リンク250の他端は、ドライバ30のうち-x方向側の端部に対し、軸261を介して回転可能な状態で取り付けられている。クランク240からの力は、結合リンク250を介してドライバ30へと伝達される。
【0043】
ドライバ30は、ステープル80を、案内溝110に通された袋BG(被結束物)に向けて押し出すための部材である。本体フレーム100の内側には、z方向に沿って互いに対向する一対のガイド部材121、122が設けられており、両者の間にドライバ30の一部が挟み込まれている。ガイド部材121、122により、ドライバ30は、x軸に沿った方向にのみ移動可能な状態で保持されている。つまり、ドライバ30の移動方向はx軸に沿った方向となっている。ガイド部材121、122が設けられている位置は、図9の状態において、ドライバ30のうちx方向側の先端部分を上下に挟み込む位置であって、先に述べた案内レール162に対応する位置となっている。
【0044】
電動モーター50の駆動力によってクランク240が動作すると、ドライバ30は、図9の位置から図10の位置まで移動する。このとき、ドライバ30のうちx方向側の端部は、連結体800のうち最も先端(つまり、最も-y方向側)にあるステープル80に当たり、当該ステープル80をx方向側へと押し出す。当該ステープル80は、接続部83が切断されることによって他のステープル80から分離された後、ドライバ30の先端と共にx方向側へと移動する。図9に示されるドライバ30の位置は、本実施形態における「第1位置」に該当する。図10に示されるドライバ30の位置は、本実施形態における「第2位置」に該当する。
【0045】
クリンチャ400は、上記のように押し出されたステープル80をドライバ30と共に挟み込むことで、ステープル80を変形させるための部材である。図9に示されるように、クリンチャ400が設けられている位置は、ドライバ30の先端に対してx方向側から対向する位置であり、且つ、案内溝110よりも更にx方向側となる位置である。クリンチャ400のうち-x方向側の面、すなわち、ドライバ30の先端と対向するクリンチ面には、ステープル80の脚部81の変形を案内するための不図示の溝が形成されている。
【0046】
ステープル80は、脚部81の先端をクリンチャ400側に向けた状態で、ドライバ30によってx方向に押し出される。ドライバ30が、その可動範囲のうち最もx方向側の第2位置まで到達したときには、脚部81の先端はクリンチャ400のクリンチ面に当たり、クリンチ面の溝に案内されながら所定形状となるよう変形する。このとき、脚部81の間には袋BGの入り口部分が挟み込まれた状態となっている。従って、袋BGの入り口部分は、変形したステープル80によって結束され、図4に示される状態となる。
【0047】
本体フレーム100の内側には、上記のようなドライバ30やクリンチャ400等に加えて、収束部材300と、リンク部材260と、が更に設けられている。
【0048】
収束部材300は、袋BG(被結束物)のうち案内溝110に通されている部分を、ステープル80の脚部81の間に挟み込まれ得る程度の大きさとなるよう、結束前において予め収束させておくための部材である。収束部材300は、x-z平面に平行な略平板状となっている。収束部材300のうちその長手方向に沿った一端側には、袋BGに当接し押圧する部分である押圧部320が設けられている。収束部材300のうちその長手方向に沿った他端側の部分には回転穴が形成されており、当該回転穴に軸311が通されている。軸311は、y方向に沿って伸びる円柱形状の軸であり、そのy方向側の端部が本体フレーム100に取り付けられている。収束部材300は、軸311の周りにおいて回転可能な状態で支持されている。
【0049】
略平板状である収束部材300には、これをy方向に貫く長穴312が形成されている。長穴312は、軸311側から押圧部320側に向かって伸びるように形成された細長い穴である。長穴312には、後述のリンク部材260に設けられた軸262が挿通されている。収束部材300は、軸262から受ける力によって、軸311の周りにおいて回転する。尚、結束動作が行われる前の待機時(図9)においては、収束部材300は、ばね351からの力によって、可動範囲のうち最も時計周り方向側となる位置において待機している。当該状態においては、収束部材300の全体は案内溝110と重なっておらず、押圧部320が案内溝110の上方側に配置された状態となっている。
【0050】
リンク部材260は、ドライバ30の動作に連動して収束部材300を動作させるための部材である。リンク部材260は、x軸に沿った方向にのみ平行移動し得る状態で保持されている。リンク部材260は、収束部材300と同様に、x-z平面に平行な略平板状となっている。リンク部材260のうちその長手方向に沿った一端側の部分は、収束部材300の一部に対しy方向側から重なっている。当該部分には、先に述べた軸262が設けられており、この軸262が長穴312に挿通されている。
【0051】
リンク部材260のうちその長手方向に沿った他端側の部分には、円形の穴が形成されており、当該穴には軸261が挿通されている。軸261は、先に述べたように、結合リンク250とドライバ30のとの間を回転可能な状態で繋いでいる軸である。
【0052】
以上のような構成において、ドライバ30がx方向側に移動すると、ドライバ30と共にリンク部材260もx方向側に移動する。リンク部材260の軸262は、収束部材300の長穴312に挿通された状態のままx方向側に移動する。収束部材300は、長穴312の縁がリンク部材260から受ける力によって、ばね351の力に抗しながら図9における反時計回り方向に回転する。これにより、収束部材300の押圧部320は、案内溝110に沿って下方側へと移動して行き、図10の状態となる。
【0053】
結束機10が袋BGを結束する際における一連の動作について、改めて説明する。使用者が、袋BG分を案内溝110に通して下降させ、スイッチ部材111を回動させると、電動モーター50が駆動される。電動モーター50の駆動力により、カムギヤ230やクランク240が動作することで、ドライバ30がx方向側に移動する。ドライバ30は、図9に示される待機状態の第1位置から、図10に示される結束完了状態の第2位置まで移動する。
【0054】
これと並行して、ドライバ30と共にリンク部材260がx方向側へと移動することで、収束部材300が反時計回り方向に回転する。収束部材300の押圧部320は、案内溝110に沿って下方側へと移動し、その先端が袋BGに当接する。袋BGのうち案内溝110に通されている部分は、押圧部320から押圧されることによって変形し、ステープル80が到達するよりも前の時点において予め収束した状態となる。
【0055】
ドライバ30は、上記のようにx方向側へと移動しながら、連結体800の先端にあったステープル80をx方向側へと押し出す。当該ステープル80は、脚部81の先端をクリンチャ400に向けた状態で、x方向側にある袋BGに向かって移動する。
【0056】
ステープル80が袋BGの位置に到達する時点においては、袋BGは、上記のように押圧部320から押圧されることによって収束しており、脚部81の間に挟まれ得る程度の大きさとなっている。このため、ステープル80は、脚部81の間に袋BGを入り込ませながらクリンチャ400の位置に到達する。その後、ステープル80は、ドライバ30とクリンチャ400との間で挟み込まれることによって変形し、袋BGを結束した状態となる。
【0057】
結束が完了した後も、電動モーター50は引き続き動作を継続する。ドライバ30は、図10の第2位置から-x方向側へと移動する。それに伴い、収束部材300は時計回り方向に回転する。最終的には、図9に示される待機状態の位置まで各部材が戻り、この時点で電動モーター50が動作を停止する。結束のために電動モーター50が動作し始めてから停止するまでの期間においては、カムギヤ230は360度回転することとなる。
【0058】
ドライバ30、及びその近傍における更に具体的な構成について説明する。図11に示されるように、ドライバ30のうちy方向側の面、すなわち、案内レール162に沿って送り込まれる連結体800と対向する方の面31には、-y方向側(つまり、連結体800とは反対側)に向けて後退する凹部32が形成されている。凹部32は、x方向に沿って直線状に伸びるように形成されている。凹部32の深さは、ステープル80の厚さよりも小さい。
【0059】
凹部32を区画する内側面のうちx方向側の端部の面(つまり、クリンチャ400側の面)は、図18等にも示されるように傾斜した面となっている。当該面のことを、以下では「傾斜面33」とも称する。尚、ここでいう「傾斜した面」とは、x方向に対し平行ではなく、且つ、垂直でもない面であることを意味する。つまり、傾斜面33は、その法線方向がドライバ30の移動方向(つまりx方向)に対し垂直ではなく、且つ、ドライバ30の移動方向に対し平行でもない面として形成されている。
【0060】
ドライバ30を上記のような構成としたことの利点を説明するために、先ず、比較例の動作について説明する。図12には、比較例に係る結束機10の待機状態が示されている。この比較例では、ドライバ30の面31に凹部32や傾斜面33が形成されていない点、においてのみ本実施形態と異なっている。
【0061】
図12に示されるように、この比較例でも本実施形態と同様に、案内レール162等によって連結体800が-y方向側へと送り込まれている。また、連結体800のうち最も-y方向側にあるステープル80は、ドライバ30の可動範囲内の所定位置に配置されている。尚、図12において符号「163」が付されているのは、案内レール162と対向する位置に配置され、案内レール162と共に連結体800を案内するための部材である。当該部材のことを、以下では「ガイド部材163」とも称する。後の図18等にも示されるように、ガイド部材163は、本実施形態に係る結束機10にも設けられている。
【0062】
図13には、図12の待機状態から、ドライバ30がx方向側へと移動し始めた直後の状態が示されている。上記の所定位置にあったステープル80は、ドライバ30の先端が当たることによって連結体800から分離され、ドライバ30と共にx方向側へと移動し始めている。当該ステープル80が連結体800から分離される際には、接続部83が切断されることに伴って、残りの連結体800にはx方向側に向けた力が加えられる。連結体800は、当該力によってx方向側へと僅かに移動し、案内レール162に当接した状態となっている。
【0063】
図13の後、ドライバ30が第2位置まで到達し結束が完了すると、ドライバ30は元の第1位置に向けて-x方向側へと移動する。連結体800には、リンク部材270及び送り部材280により、-y方向側に向けて力が加えられている。このため、ドライバ30は、面31にy方向側から連結体800が押し付けられた状態のまま、-x方向側へと移動する。連結体800には、ドライバ30から-x方向側に向けた摩擦力が加えられる。
【0064】
図14には、ドライバ30が元の位置(第1位置)まで戻った直後の状態が示されている。連結体800の先にドライバ30が存在しなくなったことにより、連結体800は、リンク部材270及び送り部材280からの力によって-y方向へと移動している。これにより、ドライバ30の可動範囲内の所定位置には、連結体800の端部にあるステープル80が再び配置されている。
【0065】
尚、連結体800は、ドライバ30が第2位置に戻る際の上記摩擦力によって、-x方向側へと僅かに移動している。その結果、図14に示されるように、連結体800はガイド部材163に当接した状態となっている。
【0066】
図12乃至図14に示される動作が繰り返されることで、袋BGの結束が連続して行われる。結束が繰り返されることに伴って、連結体800に含まれるステープル80の数は次第に減少して行く。ステープル80の数が数個程度にまで減少すると、連結体保持部170に取り付けられていたボビン700が新しいものに交換され、当該ボビン700から別の連結体800が案内レール162に沿って補充される。
【0067】
説明の便宜上、それまで使用されておりステープル80の数が少なくなった連結体800のことを、以下では「連結体800A」とも称する。また、新たに補充された方の連結体800のことを、以下では「連結体800B」とも称する。
【0068】
図15には、待機状態の比較例において、連結体800Aに含まれるステープル80の数が2となり、新たな連結体800Bが補充された直後の状態、が示されている。図15の状態においては、連結体800Aに対しy方向に沿って直線状に並ぶ位置に、連結体800Bが配置されている。つまり、連結体800Aと連結体800Bとが、x方向において互いにずれることなく配置されている。尚、図15においては、連結体800Aと連結体800Bとを区別し得るように、それぞれの断面に付されたハッチングを互いに異ならせてある。図16以降の他の図においても同様である。
【0069】
図16には、図15の待機状態から、ドライバ30がx方向側へと移動し始めた直後の状態が示されている。連結体800Aの-y方向側端部にあったステープル80は、連結体800Aから分離され、ドライバ30の先端と共にx方向側へと移動し始めている。連結体800Aの残りのステープル80(この例では1つだけである)は、接続部83が切断される際の力によってx方向側へと僅かに移動し、案内レール162に当接した状態となっている。この点については図13に示される状態と同じである。
【0070】
ただし、図16の例では、案内レール162に沿って送り込まれている連結体800の全体が一体となってはおらず、連結体800Aと連結体800Bとの間が分離されている。このため、ドライバ30からの摩擦力によって移動するのは連結体800Aのみであり、連結体800Bはx方向側に移動しない。その結果、図16に示されるように、連結体800Aと連結体800Bとが、x方向において互いにずれた状態となっている。
【0071】
図16の後、ドライバ30が第2位置まで到達し結束が完了すると、ドライバ30は元の第1位置に向けて-x方向側へと移動する。このとき、連結体800Aには、ドライバ30から-x方向側に向けた摩擦力が加えられる。従って、連結体800Aは、摩擦力によって-x方向側に移動し、連結体800Bと直線状に並んだ状態となるようにも思われる。しかしながら実際には、図17に示されるように、ドライバ30が第1位置に戻り結束機10が待機状態となったときにも、連結体800A及び連結体800Bは、x方向において互いにずれた状態のままとなっている。
【0072】
その理由について説明する。連結体800のうち、並び方向に沿った端部のステープル80には、切断された接続部83の残りである突起が形成されている。図17のように案内レール162に沿って連結体800が取り付けられている状態において、ステープル80のうち-y方向側の面に形成された上記突起のことを、以下では「突起831」とも称する。また、ステープル80のうちy方向側の面に形成された上記突起のことを、以下では「突起832」とも称する。突起831は、接続部83の一部としてステープル80に形成された突起、ともいうことができる。
【0073】
図16に示されるように、連結体800Aと連結体800Bとが、x方向において互いにずれた状態となっているときには、連結体800Aと連結体800Bとの境界部分において、連結体800A側にある突起832と、連結体800B側にある突起831とが、x方向においてずれた状態で互いに当接している。
【0074】
突起832の全体が、突起831よりもx方向側にある場合には、それぞれの突起は側面において互いに当接する。この場合、連結体800Aに、ドライバ30から-x方向側に向けた摩擦力が加えられても、突起同士の引っ掛かりにより、連結体800Aは-x方向側へと移動することができない。
【0075】
また、それぞれの突起の先端面は、多くの場合平坦面とはなっていない。このため、突起832の先端面と、突起831の先端面とが(x方向に僅かにずれた状態で)互いに当接していたとしても、摩擦力程度の力では、連結体800Aはやはり-x方向側へと移動することができない。また、この場合であっても、ドライバ30がいなくなり連結体800が-y方向側に移動した際の衝撃で、連結体800Aと連結体800Bとが、図17のように大きくずれた状態となってしまう場合が多い。更に、仮に、ステープル80に突起831が形成されていなかったとしても、互いに隣り合うステープル80の間に働く摩擦力の影響で、連結体800Aの移動が妨げられ、連結体800Aと連結体800Bとが互いにずれたままとなってしまう可能性が有る。特に、ステープル80の表面に湾曲部が形成されていると、当該湾曲部において摩擦力等の部分抵抗が大きくなりやすい。
【0076】
以上の理由により、ドライバ30が第1位置に戻った後も、図17に示されるように、連結体800A及び連結体800Bは、x方向において互いにずれた状態のままとなっている。
【0077】
説明の便宜上、連結体800Bのうち-y方向側の端部にあるステープル80のことを、以下では「ステープル80B」とも称する。ステープル80Bと連結体800Aとの間のy方向に沿った距離は、一つの連結体800において互いに隣り合うステープル80同士の距離よりも短くなっている。これは、ステープル80Bと連結体800Aとの間では、接続部83が切断されており、且つ、突起831と突起832とが互いにずれているからである。
【0078】
従って、図17の待機状態においては、ステープル80Bの位置が通常時よりも-y方向側となっており、ステープル80Bの一部が、ドライバ30の可動範囲に入り込んでしまっている。従って、図17の待機状態から、次の結束動作時においてドライバ30がx方向側へと移動すると、所定位置にあった連結体800Aのステープル80と、連結体800Bのステープル80Bとが、ドライバ30によって同時に押し出されてしまうこととなる。その結果、いずれかもしくは両方のステープル80が、結束機10の内部で詰まってしまうような事態が生じ得る。
【0079】
そこで、本実施形態に係る結束機10では、ドライバ30を図11に示される形状とすることで、上記のような問題を解消している。
【0080】
ドライバ30に傾斜面33等を形成したことの効果について説明する。図18に示されるのは、本実施形態に係る結束機10において、図15と同様に連結体800Bが予め補充された後、結束動作が開始された直後の状態である。すなわち、比較例の図16と対応する本実施形態の状態である。
【0081】
本実施形態でも比較例と同様に、ドライバ30によってステープル80が送り出された直後では、連結体800Aと連結体800Bとが、x方向において互いにずれた状態となっている。また、本実施形態では、連結体800Aが、ドライバ30に形成された凹部32の内側に入り込んだ状態となる。連結体800Aが凹部32の内側に入り込んだ後も、連結体800A及び連結体800Bは互いにずれた状態のままである。
【0082】
図18の後は、ドライバ30は更にx方向側へと移動する。ドライバ30が第2位置まで到達し結束が完了した時点でも、連結体800Aは凹部32の内側に入り込んだままである。換言すれば、結束が完了した時点でもそのような状態となるように、凹部32のx方向に沿った長さが十分に確保されている。
【0083】
ドライバ30が第2位置まで到達し結束が完了すると、ドライバ30は元の第1位置に向けて-x方向側へと移動する。図19には、ドライバ30が-x方向側へと移動している途中の状態であって、凹部32の端部にある傾斜面33が、連結体800Aのステープル80に当たる直前の状態が示されている。
【0084】
図19の状態から、ドライバ30が更に-x方向側に移動すると、傾斜面33は連結体800Aのステープル80に当たり、ステープル80は傾斜面33から力を受ける。傾斜面33は、x方向側に行くほどy方向側に向かうような傾斜面となっている。このため、ステープル80は、移動する傾斜面33に沿ってy方向側へと持ち上げられながら、-x方向側に向かう力を受ける。これにより、連結体800Aは、その全体(この例では単一のステープル80)が-x方向側に移動して、連結体800Bと同様にガイド部材163に当接した状態となる。つまり、連結体800Aと連結体800Bとの間のずれが解消され、両者がy方向に沿って直線状に並んだ状態となる。その後、ドライバ30が更に-x方向側に移動し、第1位置まで戻ると、図20に示される状態となる。
【0085】
図20の状態においては、連結体800Aと連結体800Bとの間のずれが解消されているので、連結体800Bの端部にあるステープル80Bは、ドライバ30の可動範囲に入り込んでいない。従って、次の結束動作時においてドライバ30がx方向側へと移動した際には、連結体800Aの1つのステープル80のみがドライバ30によって送り出されるので、先に述べたような詰まりが発生することはない。
【0086】
以上に説明したように、本実施形態に係る結束機10では、ドライバ30が第2位置から第1位置へと戻る際において、最も-y方向側にあるステープル80に対し、ドライバ30の傾斜面33が当たって-x方向側(つまり第1位置側)に向けた力を加えることで、当該ステープル80を同方向側へと強制的に移動させる。このように機能するドライバ30の傾斜面33は、本実施形態における「作用部」に該当する。傾斜面33が設けられていることにより、送り部材280等の送り機構は、ドライバ30の可動範囲内の所定位置に向けてステープル80を適切に送り込むことができる。
【0087】
傾斜面33は、ドライバ30が第2位置から-y方向側に移動し始めた後であり、且つ、ドライバ30が第1位置に戻るよりも前のタイミングにおいて、最も-y方向側にあるステープル80に力を加えその位置を調整する。このような動作は、ドライバ30のうちx方向側先端から傾斜面33までのx方向に沿った距離が、第1位置から第2位置までドライバ30が移動する距離よりも短くなっていること、により実現されている。
【0088】
ドライバ30の面31の一部に設けられる「作用部」は、本実施形態のように傾斜面33として形成されていてもよいが、その他の面として形成されてもよい。例えば、その法線方向がドライバ30の移動方向と平行な面(つまり、x方向に対し垂直な面)として作用部が形成されていてもよい。いずれの場合であっても、その法線方向がドライバ30の移動方向に対し垂直とはなっていない面であれば、傾斜面33と同様の作用部として機能させることができる。作用部によってステープル80に加えられる力の方向は、ドライバ30の移動方向に対し垂直ではない方向となっていればよい。ただし、ステープル80の損傷を防止し、ステープル80をスムーズに-x方向側へと移動させるためには、本実施形態のような傾斜面33として作用部を設けることが好ましい。傾斜面33の傾斜角度は、傾斜面33の全体において均一であってもよいが、傾斜面33の場所により変化してもよい。例えば、傾斜面33の一部が湾曲しているような構成であってもよい。
【0089】
尚、作用部は、本実施形態のように最も-y方向側にあるステープル80に対し直接当接して力を加えてもよいが、例えば、当該ステープル80の突起831に当接して力を加えてもよい。例えば、凹部32の幅方向(この場合はz方向の寸法)を、ステープル80の全体が入り込むことはできない程度の狭い寸法とし、且つ、突起831のみが凹部32に入り込むような寸法としておけば、作用部は、突起831のみに当接して力を加えることとなり、ステープル80の本体には当接しなくなる。このような構成においては、作用部からの力が、ステープル80の本体部分には直接加えられないので、ステープル80の変形や欠損等を確実に防止することができる。また、接続部83が切断される際、残った突起831の長さが変化したとしても、作用部のからの力が突起831に対し確実に作用する、という利点も得られる。
【0090】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0091】
本実施形態では、ドライバ30の形状について第1実施形態と異なっている。図21に示されるように、本実施形態のドライバ30においても、連結体800と対向する方の面31には凹部32が形成されている。ただし、本実施形態の凹部32は、面31のうち、z方向側の端部に至るまでの範囲に形成されている。
【0092】
図21に示されるステープル80は、連結体800の端部にあるステープル80であって、ドライバ30が動作しているときに、ドライバ30の面31に当たっている状態のステープル80である。同図に示されるように、ステープル80は、一方の脚部81Aのみが凹部32の内側に入り込み、他方の脚部81Bについては凹部32の内側には入り込まない。換言すれば、連結体800の端部にあるステープル80がこのような状態となるように、凹部32の範囲が調整されている。
【0093】
尚、本実施形態では図8に示されるように、脚部81Aから脚部81Bに向かう方向が、連結体800の長手方向(つまり、複数のステープル80が並んでいる方向)に対して傾斜するように、連結体800が形成されている。図8図21のように、結束機10に取り付けられた状態の連結体800のうち、ステープル80側の端部近傍においては、脚部81Bは、同じステープル80が有する脚部81Aよりも、僅かに-y方向側の位置にある。面31のうち、凹部32よりも-z方向側の部分は、上記のような形状のステープル80と干渉することの無いように、-z方向側に行くほど-y側に向かうように傾斜している。
【0094】
図22には、ドライバ30が-x方向側へと移動している途中の状態が、第1実施形態における図19と同様の視点で描かれている。ただし、図22の断面は、図19の断面よりも僅かにz方向側の断面であって、脚部81Aの中心軸を含む面で各部を切断した場合の断面となっている。
【0095】
図22でも図19と同様に、傾斜面33が、連結体800Aのステープル80に当たる直前の状態が示されている。ただし、本実施形態では、脚部81Aの長手方向に沿った全体が凹部32に入り込んでいるので、図22の直後においては、傾斜面33(つまり作用部)は、連結体800Aのステープル80のうち脚部81Aの先端部810に当たることとなる。脚部81Aの先端部810が傾斜面33から受ける力によって、連結体800Aのステープル80が-x方向側へと移動し、連結体800Aと連結体800Bとの間のずれが解消される。
【0096】
以上のような動作は、ドライバ30が第1位置(図9)から第2位置(図10)まで移動する途中において、傾斜面33(つまり作用部)が、先端部810の位置を超えて移動するように構成されていること、により実現されている。
【0097】
このように、本実施形態では、作用部である傾斜面33が、連結体800の端部にあるステープル80のうち脚部81Aの先端部810に当接することにより、当該ステープル80に対し力を加えるように構成されている。
【0098】
図23には、図22に示されるものと同様のステープル80の断面が示されている。図23に示される点P0は、脚部81Aの断面のうち最もx方向側となる点である。脚部81Aの断面の外形は、点P0を含む一定の範囲において曲線状となっている。図23に示される点P1及び点P2は、当該範囲の端部を示す点である。
【0099】
傾斜面33が当接する「脚部81Aの先端部810」とは、脚部81Aのうち最もx方向側にある一点(つまり点P0)のみを示すのではなく、点P0もしくはその近傍の部分のいずれかのことを示す。例えば、図23に示される断面の外形のうち、点P1から点P0を経由して点P2に至るまでのいずれかの部分に対し、傾斜面33が当接するように構成されていることが好ましい。
【0100】
脚部81Aの先端部810に対し傾斜面33を当接させる構成とすることで、第1実施形態のように突起831に対し傾斜面33を当接させる場合に比べて、ステープル80が傾斜面33から受ける力の大きさを概ね一定とすることができる。
【0101】
尚、連結体800の端部にあるステープル80に対し、-x方向側に向かう力をある程度加え得るのであれば、脚部81Aのうち、上記以外の部分に傾斜面33が当たるような構成としてもよい。
【0102】
傾斜面33によって力を加えられる脚部81Aは、先に述べたように、送り爪282によって-y方向に向けた力が加えられる方の脚部81である。脚部81Bではなく、このような脚部81Aの方に対して傾斜面33からの力が加えられるようにすることで、傾斜面33からステープル80に加えられる-x方向の力をより大きくすることができる。これにより、連結体800Aと連結体800Bとの間のずれをより確実に解消することができる。
【0103】
凹部32や傾斜面33の形状等を変更することにより、脚部81A及び脚部81Bの両方に対し、傾斜面33からの力が加えられることとしてもよい。また、脚部81に加えて突起831に対しても、傾斜面33からの力が加えられることとしてもよい。
【0104】
以上のような、傾斜面33からの力を脚部81に加える構成は、脚部81Aから脚部81Bに向かう方向が、連結体800の長手方向に対して傾斜していない(つまり垂直である)場合にも適用することができる。傾斜面33を含むドライバ30の全体の形状は、連結体800に含まれるステープル80の形状に合わせて、適宜変更することができる。
【0105】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0106】
10:結束機
30:ドライバ
32:凹部
33:傾斜面
80:ステープル
81、81A、81B:脚部
810:先端部
83:接続部
162:案内レール
270:リンク部材
280:送り部材
282:送り爪
290:逆止部材
400:クリンチャ
800:連結体
831:突起
BG:袋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23