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特開2023-178184常温駆動型全固体電池及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178184
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】常温駆動型全固体電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20231207BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20231207BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20231207BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20231207BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20231207BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M4/66 A
H01M4/134
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198220
(22)【出願日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】10-2022-0067307
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】イム、ジェミン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ホンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンファ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ヒス
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ヨンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、サンワン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017AS10
5H017BB16
5H017CC01
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE05
5H017EE06
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH05
5H017HH08
5H017HH10
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM12
5H029AM16
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029CJ16
5H029DJ07
5H029DJ16
5H029EJ01
5H029EJ04
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ12
5H029HJ14
5H029HJ17
5H029HJ18
5H029HJ19
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA04
5H050FA02
5H050FA17
5H050GA18
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA12
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】常温駆動が可能な全固体電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】全固体電池は、負極集電体、前記負極集電体上に位置する中間層20’、前記中間層上に位置する固体電解質層、前記固体電解質層上に位置し、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極活物質を含む正極活物質層及び前記正極活物質層上に位置する正極集電体を含み、中間層は、炭素材21’及びリチウム合金22’を含んでもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、
前記負極集電体上に位置する中間層と、
前記中間層上に位置する固体電解質層と、
前記固体電解質層上に位置し、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極活物質を含む正極活物質層と、
前記正極活物質層上に位置する正極集電体と、を含み、
前記中間層は、炭素材及びリチウム合金を含む、全固体電池。
【請求項2】
前記リチウム合金は、
リチウムと、
金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、及びこれらの組み合わせからなる群れから選択された少なくとも1つを含む金属との合金を含む、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記リチウム合金の粒度(D50)は、50nm以下である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記中間層は、放電状態で前記リチウム合金を含む、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記中間層は、
前記炭素材30重量%~85重量%及び、
前記リチウム合金15重量%~70重量%を含む、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記中間層は、それぞれ前記炭素材及びリチウム合金を含む複数の層から構成されたことである、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記複数の層は、層間界面で互いに区分されており、
前記層間界面は、リチウムイオンは通過させ、前記リチウム合金は通過させないことである、請求項6に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記中間層の厚さは、3μm~30μmである、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項9】
駆動温度が40℃以下である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項10】
負極集電体、前記負極集電体上に位置し、炭素材及びリチウムと合金を形成し得る金属を含む前駆体層、前記前駆体層上に位置する固体電解質層、前記固体電解質層上に位置し、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極活物質を含む正極活物質層及び前記正極活物質層上に位置する正極集電体を含む積層体を準備するステップと、
前記積層体を充電して前記金属とリチウムとの合金反応を起こすことによって、前記炭素材及びリチウム合金を含む中間層を形成するステップと、を含む、全固体電池の製造方法。
【請求項11】
前記金属は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、及びこれらの組み合わせからなる群れから選択された少なくとも1つを含む、請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項12】
前記積層体を45℃~60℃で充電することである、請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項13】
前記積層体を2.5V~4.25Vの電圧範囲で、0.1C~1Cの充電率で、SoC(State of charge)10%以下で充電して金属とリチウムとの合金反応を起こすことである、請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項14】
前記リチウム合金の粒度(D50)は、50nm以下である、請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項15】
前記中間層は、放電状態で前記リチウム合金を含む、請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項16】
前記中間層は、
前記炭素材30重量%~85重量%及び、
前記リチウム合金15重量%~70重量%を含む、請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項17】
前記前駆体層をそれぞれ前記炭素材及び金属を含む複数の層から構成して、前記中間層をそれぞれ前記炭素材及びリチウム合金を含む複数の層から形成することである、請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項18】
前記中間層の複数の層は、層間界面で互いに区分されており、
前記層間界面は、リチウムイオンは通過させ、前記リチウム合金は通過させないことである、請求項17に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項19】
前記中間層の厚さは、3μm~30μmである、請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項20】
駆動温度が40℃以下である、請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温駆動が可能な全固体電池及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全固体電池は、正極集電体に接合された正極活物質層と負極集電体に接合された負極活物質層、並びに正極活物質層と負極活物質層との間に固体電解質層が配置された3段積層体である。
【0003】
一般に、前記負極活物質層は、黒鉛などの負極活物質の他に、リチウムイオンの移動のための固体電解質を含む。前記固体電解質は、液体電解質に比べて比重が大きいため、全固体電池のエネルギー密度は液体電解質を用いるリチウムイオン電池に比べて低い。
【0004】
前記問題を克服し、全固体電池のエネルギー密度を高めるために、負極にリチウム金属を適用する研究が進められている。しかし、界面接合、リチウムデンドライトの成長などの研究的技術問題から、価格、大面積化などの産業的技術問題まで商用化のために克服すべき障害物が多く存在する。
【0005】
近年、負極を除去し、リチウムイオン(Li)を負極集電体上にリチウム金属などに直接析出させる貯蔵型方式の無負極全固体電池に関する研究も進められている。ただし、無負極全固体電池は、リチウムイオンが負極集電体上に均一に析出されないため、不活性リチウム(Dead lithium)が形成されるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2020-0052707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、常温でも正常に充放電が可能な無負極全固体電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の目的は、前述の目的に制限されない。本発明の目的は、以下の説明によりさらに明らかになり、特許請求の範囲に記載された手段及びその組み合わせによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例に係る全固体電池は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する中間層と、前記中間層上に位置する固体電解質層と、前記固体電解質層上に位置し、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極活物質を含む正極活物質層と、前記正極活物質層上に位置する正極集電体と、を含み、前記中間層は、炭素材及びリチウム合金を含んでもよい。
【0010】
前記リチウム合金は、リチウムと、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、及びこれらの組み合わせからなる群れから選択された少なくとも1つを含む金属との合金を含んでもよい。
【0011】
前記リチウム合金の粒度(D50)は、50nm以下であってもよい。
【0012】
前記中間層は、放電状態で前記リチウム合金を含んでもよい。
【0013】
前記中間層は、前記炭素材30重量%~85重量%及び、前記リチウム合金15重量%~70重量%を含んでもよい。
【0014】
前記中間層は、それぞれ前記炭素材及びリチウム合金を含む複数の層から構成されたものであってもよい。
【0015】
前記中間層の各層は、層間界面で互いに区分されており、前記層間界面は、リチウムイオンは通過させ、前記リチウム合金は通過させないものであってもよい。
【0016】
前記中間層の厚さは、3μm~30μmであってもよい。
【0017】
前記全固体電池は、駆動温度が40℃以下のものであってもよい。
【0018】
本発明の一実施例に係る全固体電池の製造方法は、負極集電体、前記負極集電体上に位置し、炭素材及びリチウムと合金を形成し得る金属を含む前駆体層、前記前駆体層上に位置する固体電解質層、前記固体電解質層上に位置し、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極活物質を含む正極活物質層及び前記正極活物質層上に位置する正極集電体を含む積層体を準備するステップと、前記積層体を充電して前記金属とリチウムとの合金反応を起こすことによって、前記炭素材及びリチウム合金を含む中間層を形成するステップと、を含んでもよい。
【0019】
前記金属は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、及びこれらの組み合わせからなる群れから選択された少なくとも1つを含んでもよい。
【0020】
前記製造方法は、前記積層体を45℃~60℃で充電するものであってもよい。
【0021】
前記製造方法は、前記積層体を2.5V~4.25Vの電圧範囲で、0.1C~1Cの充電率で、SoC(State of charge)10%以下で充電して金属とリチウムとの合金反応を起こすことであってもよい。
【0022】
前記製造方法は、前記前駆体層をそれぞれ前記炭素材及び金属を含む複数の層から構成して、前記中間層をそれぞれ前記炭素材及びリチウム合金を含む複数の層から形成することであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、常温でも正常に充放電が可能な無負極全固体電池を得ることができる。
本発明の効果は、前述の効果で限定されない。本発明の効果は、以下の説明で推論可能な全ての効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に係る全固体電池を示すものである。
図2図2は、本発明に係る中間層の第1実施例を示すものである。
図3図3は、本発明に係る中間層の第2実施例を示すものである。
図4図4は、本発明に係る全固体電池の製造方法を説明するための参考図である。
図5図5は、実施例1に係る全固体電池の断面を走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope、SEM)及びエネルギー分散X線分光法(Energy dispersive X-Ray spectrometer、EDS)で分析した結果である。
図6図6は、実施例2に係る全固体電池の断面を走査電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散X線分光法(EDS)で分析した結果である。
図7a図7aは、比較例に係る全固体電池を充電した後、その断面をイオンビーム断面加工機-走査電子顕微鏡(Cross section polisher-Scanning electron microscope、CP-SEM)で分析した結果である。
図7b図7bは、実施例1に係る全固体電池を充電した後、その断面をイオンビーム断面加工機-走査電子顕微鏡(CP-SEM)で分析した結果である。
図7c図7cは、実施例2に係る全固体電池を充電した後、その断面をイオンビーム断面加工機-走査電子顕微鏡(CP-SEM)で分析した結果である。
図8図8は、実施例1、実施例2及び比較例に係る全固体電池の容量を測定した結果である。
図9図9は、実施例1、実施例2及び比較例に係る全固体電池の耐久性を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び利点は、添付の図面に関連する以下の好ましい実施例を通じて容易に理解することができる。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態で具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示された内容が徹底かつ完全になるように、そして、通常の技術者に本発明の思想が 十分に伝達されるようにするために提供されるものである。
【0026】
各図面を説明しながら、類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用した。添付の図面において、構造物の寸法は、本発明の明確性のために実際よりも拡大して示されている。第1、第2などの用語は様々な構成要素を説明するために使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはいけない。前記用語は、ある一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。例えば、本発明の権利の範囲から外れることなく、第1構成要素は第2構成要素として命名されてもよく、同様に、第2構成要素も第1構成要素として命名されてもよい。単数の表現は、文脈上明確に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0027】
本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、本明細書上に記載の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」あるとする場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分「下に」あるとする場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合だけでなく、その中間に別の部分がある場合も含む。
【0028】
特に明示されない限り、本明細書で使用される成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表現するすべての数字、値及び/または表現は、このような数字が本質的に他のもののうち、このような値を得るために生じる測定の様々な不確実性が反映された近似値であるので、すべての場合、「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。さらに、本記載で数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、特に指摘されない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までのすべての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指す場合、特に指摘されない限り、
【0029】
最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含むすべての整数が含まれる。
図1は、本発明に係る全固体電池を示すものである。これを参照すると、前記全固体電池は、負極集電体10、前記負極集電体10上に位置する中間層、前記中間層20上に位置する固体電解質層30、前記固体電解質層30上に位置する正極活物質層40及び前記正極活物質層40上に位置する正極集電体50を含んでもよい。
【0030】
図1は、前記全固体電池の放電状態を示すものである。前記全固体電池を充電すると、前記正極活物質層40から放出されたリチウムイオン(Li)は、前記固体電解質層30を介して前記中間層20に移動する。その後、前記リチウムイオンは、前記負極集電体10と中間層20との間及び/または前記中間層20の内部に析出及び貯蔵されてリチウム金属層(図示せず)を形成することができる。
【0031】
前記負極集電体10は、電気伝導性のある板状の基材であってもよい。具体的には、前記負極集電体10は、シート、薄膜またはホイルの形態を有するものであってもよい。
【0032】
前記負極集電体10は、リチウムと反応しない素材を含んでもよい。具体的には、前記負極集電体10は、Ni、Cu、SUS(Stainless steel)、及びこれらの組み合わせからなる群れから選択された少なくともいずれか一つを含んでもよい。
【0033】
従来技術で負極集電体上に炭素材、金属などを含むコーティング層を形成すると、負極集電体上にリチウム金属を均一に析出することができるという結果が報告されている。具体的には、充放電の初期にリチウムイオンと金属のリチウム化(Lithiation)反応が起こって合金が形成され、前記合金がリチウムイオンの円滑な伝導及び均一な析出を誘導するということである。ただし、前記のようなリチウム化反応は、約45℃以上の高温でのみ起こるため、約25℃の常温では、前記のような無負極全固体電池が正常に駆動しない。
【0034】
図2は、本発明に係る中間層20の第1実施例を示すものである。本発明は、前記従来技術の問題点を解決するために、前記負極集電体10上に炭素材21及びリチウム合金22を含む中間層20を適用したことを特徴とする。
【0035】
前記リチウム合金22は、前記中間層20内でリチウムイオンの移動経路を提供することができる。特に、前記中間層20は、放電状態で前記リチウム合金22を含んでもよい。すなわち、従来技術に係る無負極全固体電池とは異なり、本発明は、充電の初期に前記リチウム合金22を形成するためのリチウムイオンと金属とのリチウム化反応を必要としない。したがって、本発明に係る全固体電池を常温で充電するとき、リチウムイオンは、前記中間層20内で前記リチウム合金22を介して円滑に移動することができる。ここで、「放電状態」とは、前記全固体電池の容量残量が15%以下、または10%以下、または5%以下、またはゼロとなる状態を意味する。
【0036】
前記リチウム合金22は、リチウムと、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、及びこれらの組み合わせからなる群れから選択された少なくとも1つを含む金属との合金を含んでもよい。前記リチウムと金属の比率は特に制限されない。例えば、前記リチウム合金は、前記リチウムと金属が0.1~99.9:0.1~99.9の重量比で合金化したものであってもよい。
【0037】
前記リチウム合金22の粒度D50は、50nm以下であってもよい。前記粒度D50の下限は、特に制限されず、例えば、5nm以上、または10nm以上、または20nm以上であってもよい。
【0038】
前記炭素材21は、非晶質炭素(Amorphous carbon)を含んでもよい。前記非晶質炭素は特に制限されないが、例えば、ファーネスブラック(furnace black)、アセチレンブラック(acetylene black)、ケッチェンブラック(ketjen black)などを含んでもよい。
【0039】
前記中間層20は、30重量%~85重量%の炭素材21及び15重量%~70重量%のリチウム合金22を含んでもよい。前記リチウム合金22の含有量が15重量%未満であると、前記中間層20内のリチウムイオンの移動が滑らかでないことがあり、その含有量が70重量%を超えると、分散性が低下することもある。
【0040】
一方、具体的なメカニズムは究明されていないが、前記リチウム合金22は、その形成過程で前記中間層20内に均一に分布せず、図2のように前記負極集電体10側に移動する様子を示す。したがって、前記中間層20は、その厚さ方向に前記リチウム合金22の含有量が高い部分と低い部分とに区分される。結果として、前記中間層20のうち、リチウム合金22の含有量が低い部分ではリチウムイオンの移動が滑らかでないことがある。
【0041】
図3は、本発明に係る中間層20’の第2実施例を示すものである。これを参照すると、前記中間層20’は、それぞれ前記炭素材21’及びリチウム合金22’を含む複数の層から構成されたものであってもよい。図3は、前記中間層20’を2つの層で示しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、層の個数は全固体電池の仕様、目的とする特性に応じて適宜調節することができる。
【0042】
前記中間層20’の複数の層は、層間界面Aで互いに区分されてもよい。前記層間界面Aは、抽象的または観念的な構成ではなく、各層を物理的に区分する界面を意味する。したがって、前記中間層20’の製造過程において、各層に含まれたリチウム合金22’が負極集電体10側に移動する挙動が見せても、前記層間界面Aを通過することはできない。結果として、第2実施例に係る中間層20’は、その厚さ方向にリチウム合金22’の含有量の分布に大きく差がないため、リチウムイオンが円滑に移動することができる。また、リチウム合金22’が負極集電体10側に移動して各層内にリチウム合金22’の含有量が低い部分が生じても、その距離が短いため、全体としてのリチウムイオンの伝導度には大きな影響を与えない。
【0043】
一方、前記リチウム合金22’は、層間界面Aを通過できないだけで、前記層間界面Aの周囲に分布しているため、リチウムイオンは前記層間界面Aを通過することができる。
【0044】
前記中間層20の厚さは、3μm~30μmであってもよい。前記厚さが3μm未満であると、リチウムイオンの均一な析出及び貯蔵が難しく、30μmを超えると、リチウムイオンの移動が円滑でなく、全固体電池のエネルギー密度が低くなることがある。
【0045】
前述のように、本発明に係る全固体電池は、放電状態で前記中間層20にリチウムイオンを伝導できるリチウム合金22が存在するため、高温で充放電をする必要がない。すなわち、前記全固体電池の駆動温度は40℃以下であってもよい。前記駆動温度の下限は、特に制限されず、本発明の属する技術分野において、通常考慮される電池の駆動温度の下限と同一または類似していてもよい。
【0046】
前記固体電解質層30は、前記正極活物質層40から前記中間層20にリチウムイオンを伝導する構成であってもよい。
【0047】
前記固体電解質層30は、リチウムイオン伝導性のある固体電解質を含んでもよい。
【0048】
前記固体電解質は、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、高分子電解質、及びこれらの組み合わせからなる群れから選択された少なくとも1つを含んでもよい。ただし、リチウムイオン伝導度の高い硫化物系固体電解質を用いることが好ましい。前記硫化物系固体電解質は、特に制限されないが、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(ただし、m、nは、正の数、Zは、Ge、Zn、Gaのうち、1つ)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(ただし、x、yは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのうち、1つ)、Li10GeP12などを含んでもよい。
【0049】
前記酸化物系固体電解質は、ペロブスカイト型(perovskite)LLTO(Li3xLa2/3-xTiO)、リン酸塩(phosphate)系のナシコン(NASICON)型LATP(Li1+xAlTi2-x(PO)などを含んでもよい。
前記高分子電解質は、ゲル高分子電解質、固体高分子電解質などを含んでもよい。
【0050】
前記正極活物質層40は、正極活物質、固体電解質、伝導材、バインダーなどを含んでもよい。
【0051】
前記正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出する構成である。前記正極活物質は、酸化物活物質または硫化物活物質を含んでもよい。
【0052】
前記酸化物活物質は、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、Li1+xNi1/3Co1/3Mn1/3などの岩塩層型活物質、LiMn、Li(Ni0.5Mn1.5)Oなどのスピネル型活物質、LiNiVO、LiCoVOなどの逆スピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPOなどのオリビン型活物質、LiFeSiO、LiMnSiOなどのケイ素含有活物質、LiNi0.8Co(0.2-x)Al(0<x<0.2)のように遷移金属の一部を異種金属で置換した岩塩層型活物質、Li1+xMn2-x-y(Mは、Al、Mg、Co、Fe、Ni、Znのうち少なくとも一種であり、0<x+y<2)のように、遷移金属の一部を異種金属で置換したスピネル型活物質、LiTi12などのチタン酸リチウムを含んでもよい。
前記硫化物活物質は、銅シェブレル、硫化鉄、硫化コバルト、硫化ニッケルなどを含んでもよい。
【0053】
前記固体電解質は、酸化物固体電解質または硫化物固体電解質を含んでもよい。ただし、リチウムイオン伝導度の高い硫化物系固体電解質を用いることが好ましい。前記硫化物系固体電解質は、特に制限されないが、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(ただし、m、nは、正の数、Zは、Ge、Zn、Gaのうち、1つ)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(ただし、x、yは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのうち、1つ)、Li10GeP12などであってもよい。
【0054】
前記導電材は、カーボンブラック(Carbon black)、伝導性グラファイト(Conducting graphite)、エチレンブラック(Ethylene black)、グラフェン(Graphene)などであってもよい。
前記バインダーは、 BR(Butadiene rubber)、NBR(Nitrile butadiene rubber)、HNBR(Hydrogenated nitrile butadiene rubber)、PVDF(polyvinylidene difluoride)、PTFE(polytetrafluoroethylene)、CMC(carboxymethylcellulose)であってもよい。
【0055】
前記正極集電体50は、電気伝導性のある板状の基材であってもよい。前記正極集電体50は、アルミニウム薄板(Aluminium foil)を含んでもよい。
【0056】
図4は、本発明に係る全固体電池の製造方法を説明するための参考図である。図1及び図4を参照すると、前記製造方法は、負極集電体10、前記負極集電体10上に位置し、炭素材及びリチウムと合金を形成し得る金属を含む前駆体層60、前記前駆体層60上に位置する固体電解質層30、前記固体電解質層30上に位置する正極活物質層40及び前記正極活物質層40上に位置する正極集電体50を含む積層体を準備するステップと、前記積層体を充電して前記金属とリチウムとの合金反応を起こすことによって前記炭素材及びリチウム合金を含む中間層20を形成するステップと、を含んでもよい。
【0057】
前記積層体の各層を製造する方法は、特に制限されず、乾式または湿式で製造してもよい。例えば、各層の材料を粉末状態で混合した後、一定の圧力で加圧するか、スラリーに作った後、基材上に塗布及び乾燥して製造してもよい。
【0058】
前記金属は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、及びこれらの組み合わせからなる群れから選択された少なくとも1つを含んでもよい。
【0059】
前記前駆体層60をそれぞれ前記炭素材及び金属を含む複数の層から構成すると、図3のように複数の層から構成された中間層20’を形成することができる。
【0060】
図4を参照すると、前記積層体を充電すると、前記正極活物質層40から放出されたリチウムイオンが固体電解質層30を介して前駆体層60に移動する。前記リチウムイオンは、前記前駆体層60の金属とリチウム化反応してリチウム合金を形成する。
【0061】
前記リチウム化反応を起こすために、前記積層体の充電は45℃~60℃で行ってもよい。前記積層体を45℃未満の温度で充電すると、リチウム合金が形成されないこともある。
【0062】
また、前記積層体の充電は、2.5V~4.25Vの電圧範囲、0.1C~1Cの充電率、10%以下のSoC(State of charge)の条件で行ってもよい。ここで、「SoC」は、充電状態を意味し、現在、使用可能な電池の容量を総容量で割って百分率で表現したものであってもよい。前記SoCは、電圧測定法または電流積分法によって測定することができる。前記電圧測定法は、電池の電圧を測定し、放電曲線と対照して計算するものであってもよい。前記電流積分法は、電池の電流を測定した後、時間に応じて積分して計算することができる。
【0063】
前記リチウム合金を形成するリチウムイオンは、以降、全固体電池の常温駆動時に再び正極活物質に戻ることなく、リチウム合金として存在する。したがって、前記積層体の充電をSoC10%超過条件で行うと、正極活物質に残っているリチウムイオンの量が減り、電池の容量が低下することがある。また、前記のような問題点を解決するために、リチウム合金を過量投入するか、正極活物質のローディング量を高めることもできる。特に、正極活物質のローディング量を高めて正極の容量が負極に比べて大きくなると、正極容量が全て発現しても負極の電位がリチウム合金が分解する電位まで上がらないため、前記のような問題が生じることを効果的に防止することができる。
【0064】
以下、実施例を通じて本発明の他の形態をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解のための例示に過ぎず、本発明の範囲は、これに限定されるものではない。
【0065】
実施例1
図4のような積層体を準備した。具体的には、負極集電体上に炭素材及び銀(Ag)を含む前駆体層を形成した。前記前駆体層上に、硫化物系固体電解質を含む固体電解質層を形成した。前記固体電解質層上にニッケル-コバルト-マンガン正極活物質を含む正極活物質層を形成した。前記正極活物質層上に正極集電体を付着して積層体を作製した。
【0066】
前記積層体を、約50℃で、2.5V~4.25Vの電圧範囲、及び0.33Cの充電率で充電してリチウム-銀合金を含み、厚さが約5μm~10μmであり、単層である中間層を形成した。前記中間層を含む全固体電池を実施例1として設定した。
【0067】
実施例2
前駆体層を2層から形成したことを除いては、実施例1と同様の方法で積層体を製造した。
前記積層体を実施例1と同一の条件で充電してリチウム-銀合金を含み、厚さが約5μm~10μmであり、2層である中間層を形成した。前記中間層の各層の厚さは互いに同一に調節した。前記中間層を含む全固体電池を実施例2として設定した。
【0068】
比較例
実施例1の積層体を比較例として設定した。
図5は、実施例1に係る全固体電池の断面を走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope、SEM)及びエネルギー分散X線分光法(Energy dispersive X-Ray spectrometer、EDS)で分析した結果である。
【0069】
図6は、実施例2に係る全固体電池の断面を走査電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散X線分光法(EDS)で分析した結果である。
【0070】
図5のEDS結果を参照すると、実施例1は、中間層の厚さ方向に負極集電体側に銀(Ag)元素が多く存在することが分かる。すなわち、実施例1の中間層は、リチウム-銀合金がその製造過程で負極集電体側に移動して含有量の勾配が生じたことが分かる。
【0071】
これに対し、図6のEDS結果を参照すると、実施例2は、中間層の厚さ方向に銀(Ag)元素が均一に分布することが分かる。すなわち、実施例2では、層間界面によりリチウム-銀合金の移動が抑制され、前記中間層の厚み方向にリチウム-銀合金が均一に存在する。
【0072】
実施例1、実施例2及び比較例に係る全固体電池を、約25℃で、SoC100%となるように充電した。
【0073】
図7aは、比較例に係る全固体電池を充電した後、その断面をイオンビーム断面加工機-走査電子顕微鏡(Cross section polisher-Scanning electron microscope、CP-SEM)で分析した結果である。これを参照すると、比較例は、リチウムイオンが前駆体層を通過することができず、固体電解質層と中間層との間で電着したことが分かる。これは、常温充電により、リチウムイオンが比較例の前駆体層に含まれた銀(Ag)とリチウム化反応ができなかったためである。リチウムイオンが固体電解質層と中間層との間に電着すると、樹脂状リチウムが成長して電池の短絡が生じる可能性がある。
【0074】
図7bは、実施例1に係る全固体電池を充電した後、その断面をイオンビーム断面加工機-走査電子顕微鏡(CP-SEM)で分析した結果である。これを参照すると、実施例1は、リチウムイオンが中間層に移動してその内部に電着したことが分かる。したがって、実施例1に係る全固体電池は、常温でも樹脂状リチウムの成長を抑制しながら、可逆的な充放電が可能であることを確認することができる。
【0075】
図7cは、実施例2に係る全固体電池を充電した後、その断面をイオンビーム断面加工機-走査電子顕微鏡(CP-SEM)で分析した結果である。これを参照すると、実施例2は、リチウムイオンが中間層と負極集電体との間に高密度に電着したことが分かる。これは、実施例2の中間層には、リチウム合金が均一に分布するため、リチウムイオンが前記中間層内で円滑に移動したためである。
【0076】
図8は、実施例1、実施例2及び比較例に係る全固体電池の容量を測定した結果である。前記容量は、各全固体電池を、約25℃で、2.5V~4.25Vの電圧範囲で充放電して測定した。これを参照すると、実施例1及び実施例2が、比較例に比べて充電容量が高く、抵抗が低いことが分かる。これは、実施例1及び実施例2が比較例に比べてリチウムイオンの伝導性が高く、電着特性が改善されたためである。
【0077】
図9は、実施例1、実施例2及び比較例に係る全固体電池の耐久性を評価した結果である。各全固体電池を、約25℃で、2.5V~4.25Vの電圧範囲で充放電し、各サイクルにおける容量保持率を測定した。これを参照すると、実施例1及び実施例2が比較例に比べて容量保持率が高いことが分かる。これは、実施例1及び実施例2においてリチウムが均一に電着するためである。特に、実施例2は、30回の充放電を基準として約95%に達する容量保持率を示す。これは、図7cから分かるように、実施例2は、リチウムが中間層と負極集電体との間にリチウムが高密度に電着して可逆性が高いためである。
【0078】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は前述の実施例に限定されず、以下の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の種々の変形及び改良形態も、本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10:負極集電体
20:中間層
30:固体電解質層
40:正極活物質層
50:陽極集電体
60:前駆体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9