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特開2023-178207異常予兆検知装置、異常予兆の検知方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178207
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】異常予兆検知装置、異常予兆の検知方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/30 20060101AFI20231207BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20231207BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20231207BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20231207BHJP
【FI】
G06F11/30
G05B23/02 302R
G05B23/02 302Z
G06Q50/04
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058311
(22)【出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2022090862
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南百▲瀬▼ 勇
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 晋
【テーマコード(参考)】
3C223
5B042
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA11
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB02
3C223EB07
3C223FF02
3C223FF04
3C223FF12
3C223FF22
3C223FF24
3C223FF26
3C223FF33
3C223FF35
3C223FF42
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH29
5B042JJ06
5B042JJ29
5B042MA08
5B042MA14
5B042MC08
5L049AA04
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】属人的な経験に頼ることなく、監視対象の異常予兆を精度良く検知する。
【解決手段】検知方法は、生産システムの状態を示す複数のパラメータの計測値を取得するステップ(1)と、複数のパラメータの標準値に対する計測値の類似度を表す第1統計量を算出するステップ(2)と、複数のパラメータを説明変数とし、第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを複数のパラメータから選択するステップ(3)と、複数の有効パラメータの標準値に対する計測値の類似度を表す第2統計量を算出するステップ(4)と、第2統計量と管理範囲との比較結果に基づいて、生産システムの異常予兆を検知するステップ(5)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位区間ごとに、当該単位区間における監視対象の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得する取得部と、
前記監視対象が正常に動作しているときの前記複数のパラメータの標準値に対する前記複数のパラメータの前記計測値の類似度を表す第1統計量を算出する第1算出部と、
前記複数のパラメータを説明変数とし、前記第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを前記複数のパラメータの中から選択する選択部と、
前記複数の有効パラメータの前記標準値に対する前記複数の有効パラメータの前記計測値の類似度を表す第2統計量を算出する第2算出部と、
前記第2統計量と管理範囲との比較結果に基づいて、前記監視対象の異常予兆を検知する検知部と、を備える異常予兆検知装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記単位区間ごとに、当該単位区間において前記監視対象で発生したイベントの種類を示すイベント情報をさらに取得し、
前記第2算出部は、
前記単位区間ごとに算出した前記第2統計量の経時変化を示すグラフを提供し、
前記グラフにおいて、前記単位区間ごとの前記イベント情報によって示されるイベントの種類を示す、請求項1に記載の異常予兆検知装置。
【請求項3】
前記単位区間ごとの前記複数の有効パラメータおよび前記第2統計量を用いた主成分分析を行ない、分析結果を提供する分析部をさらに備える、請求項1に記載の異常予兆検知装置。
【請求項4】
前記分析結果は、前記単位区間ごとの第1主成分および第2主成分の主成分得点の散布図を含み、
前記散布図には、前記複数の有効パラメータと前記第2統計量との各々における主成分負荷量を示すベクトルが重ねて表示される、請求項3に記載の異常予兆検知装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記単位区間において前記監視対象で発生したイベントの種類を示すイベント情報をさらに取得し、
前記散布図の点の表示形式は、対応する前記単位区間の前記イベント情報によって示されるイベントの種類に応じて異なる、請求項4に記載の異常予兆検知装置。
【請求項6】
前記選択部は、前記複数の有効パラメータを説明変数とし、前記第2統計量を目的変数とするT法推定モデルの決定係数を提供する、請求項1に記載の異常予兆検知装置。
【請求項7】
前記第1統計量および前記第2統計量は、標準SN比である、請求項1に記載の異常予兆検知装置。
【請求項8】
前記単位区間は、所定時間長さを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の異常予兆検知装置。
【請求項9】
前記監視対象は、対象動作を繰り返し実行し、
前記単位区間は、前記対象動作が実行されている期間である、請求項1から7のいずれか1項に記載の異常予兆検知装置。
【請求項10】
前記監視対象は、製造装置を含み、
前記複数のパラメータは、前記製造装置に設置された加速度センサによって計測された振動波形から抽出される、請求項1から7のいずれか1項に記載の異常予兆検知装置。
【請求項11】
単位区間ごとに、当該単位区間における監視対象の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得するステップと、
前記監視対象が正常に動作しているときの前記複数のパラメータの標準値に対する前記複数のパラメータの前記計測値の類似度を表す第1統計量を算出するステップと、
前記複数のパラメータを説明変数とし、前記第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを前記複数のパラメータの中から選択するステップと、
前記複数の有効パラメータの前記標準値に対する前記複数の有効パラメータの前記計測値の類似度を表す第2統計量を算出するステップと、
前記第2統計量と管理範囲との比較結果に基づいて、前記監視対象の異常予兆を検知するステップと、を備える異常予兆の検知方法。
【請求項12】
異常予兆の検知方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記検知方法は、
単位区間ごとに、当該単位区間における監視対象の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得するステップと、
前記監視対象が正常に動作しているときの前記複数のパラメータの標準値に対する前記複数のパラメータの前記計測値の類似度を表す第1統計量を算出するステップと、
前記複数のパラメータを説明変数とし、前記第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを前記複数のパラメータの中から選択するステップと、
前記複数の有効パラメータの前記標準値に対する前記複数の有効パラメータの前記計測値の類似度を表す第2統計量を算出するステップと、
前記第2統計量と管理範囲との比較結果に基づいて、前記監視対象の異常予兆を検知するステップと、を含むプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常予兆検知装置、異常予兆の検知方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産効率を高めるために、生産システムの異常予兆を早期に検知することが望まれる。特開2019-177783号公報(特許文献1)は、鉄道車両に設けられた加速度センサから得られる特性データと予め取得された単位データとの間のマハラノビス距離の増加から鉄道車両の乗り心地の悪化を検知する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-177783号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】田村希志臣、「第5回方向判定のできるMTシステム-TS法,T法」、標準化と品質管理、2009年、Vol.62、No.2
【非特許文献2】田口玄一、「目的機能と基本機能(6)-T法による総合予測-」、品質工学、2005年、13巻3号、p.5-10
【非特許文献3】「開発設計段階における品質工学の考え方と活用-試作レス・試験レスによるシステム評価と改善-」、[online]、[2023年3月22日検索]、インターネット<https://foundry.jp/bukai/wp-content/uploads/2012/07/e4806f10b0797ec0932d9317dd92a533.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術を生産システムに適用することが考えられる。しかしながら、生産システムから得られるデータには多くのノイズ因子が含まれ得る。そのため、当該データを用いた異常予兆の検知では高い精度が得られない。従って、従来、熟練者の経験および知識による属人的なデータ選別が必要であった。
【0006】
本開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、属人的な経験に頼ることなく、監視対象の異常予兆を精度良く検知することができる異常予兆検知装置、異常予兆の検知方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例によれば、異常予兆検知装置は、取得部と、第1算出部と、選択部と、第2算出部と、検知部と、を備える。取得部は、単位区間ごとに、当該単位区間における監視対象の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得する。第1算出部は、監視対象が正常に動作しているときの複数のパラメータの標準値に対する複数のパラメータの計測値の類似度を表す第1統計量を算出する。選択部は、複数のパラメータを説明変数とし、第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを複数のパラメータの中から選択する。第2算出部は、複数の有効パラメータの標準値に対する複数の有効パラメータの計測値の類似度を表す第2統計量を算出する。検知部は、第2統計量と管理範囲との比較結果に基づいて、監視対象の異常予兆を検知する。
【0008】
上記の開示によれば、複数の有効パラメータの第1統計量への影響度は、残りのパラメータの第1統計量への影響度よりも大きい。このことは、有効パラメータに含まれるノイズ因子の割合が残りのパラメータに含まれるノイズ因子の割合よりも小さいことを意味する。このような複数の有効パラメータを用いて算出される第2統計量は、正常に動作しているときの監視対象の状態に対する類似度を精度良く表す。また、複数の有効パラメータは、複数のパラメータを説明変数とし、第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度に基づいて選択される。そのため、属人的な経験に頼ることなく、正常に動作しているときの監視対象の状態に対する類似度を精度良く表す複数の有効パラメータを選択できる。以上から、異常予兆検知装置は、属人的な経験に頼ることなく、監視対象の異常予兆を精度良く検知できる。
【0009】
上述の開示において、取得部は、単位区間ごとに、当該単位区間において監視対象で発生したイベントの種類を示すイベント情報をさらに取得する。第2算出部は、単位区間ごとに算出した第2統計量の経時変化を示すグラフを提供し、グラフにおいて、単位区間ごとのイベント情報によって示されるイベントの種類を示す。
【0010】
上記の開示によれば、ユーザは、グラフを確認することにより、第2統計量が変動するタイミングにおいて発生しているイベントの種類を把握でき、異常の原因を特定しやすくなる。
【0011】
上述の開示において、異常予兆検知装置は、単位区間ごとの複数の有効パラメータおよび第2統計量を用いた主成分分析を行ない、分析結果を提供する分析部をさらに備える。
【0012】
上記の開示によれば、ユーザは、分析結果を確認することにより、異常の原因を特定しやすくなる。
【0013】
上述の開示において、分析結果は、単位区間ごとの第1主成分および第2主成分の主成分得点の散布図を含む。散布図には、複数の有効パラメータと第2統計量との各々における主成分負荷量を示すベクトルが重ねて表示される。
【0014】
上記の開示によれば、ユーザは、複数の有効パラメータの中から、第2統計量のベクトルの方向と平行な成分の相対的に大きい有効パラメータが異常に関係していると判断できる。ユーザは、異常に関係している有効パラメータに基づいて、異常の原因を特定しやすくなる。
【0015】
上述の開示において、取得部は、単位区間において監視対象で発生したイベントの種類を示すイベント情報をさらに取得する。散布図の点の表示形式は、対応する単位区間のイベント情報によって示されるイベントの種類に応じて異なる。
【0016】
上記の開示によれば、ユーザは、異常に関係している有効パラメータのベクトルの方向に集中しているイベントの種類を把握でき、異常の原因を特定しやすくなる。
【0017】
上述の開示において、選択部は、複数の有効パラメータを説明変数とし、第2統計量を目的変数とするT法推定モデルの決定係数を提供する。
【0018】
上記の開示によれば、ユーザは、決定係数に基づいて、複数の有効パラメータの有効性の有無を判断できる。
【0019】
上述の開示において、第1統計量および第2統計量は、標準SN比である。これにより、第1統計量および第2統計量は、標準値に対する計測値の類似度を適格に表す。
【0020】
上述の開示において、単位区間は、所定時間長さを有する。あるいは、監視対象は、対象動作を繰り返し実行する。単位区間は、対象動作が実行されている期間である。
【0021】
上述の開示において、監視対象は、製造装置を含む。複数のパラメータは、製造装置に設置された加速度センサによって計測された振動波形から抽出される。
【0022】
加速度センサによって計測される振動波形にはノイズ因子が多く含まれやすい。しかしながら、上記の開示によれば、振動波形から抽出される複数のパラメータから、ノイズ因子の割合が相対的に小さい複数の有効パラメータが選択される。その結果、複数の有効パラメータを用いて、異常予兆を精度良く検知できる。
【0023】
本開示の別の例によれば、異常予兆の検知方法は、第1~第5のステップを備える。第1のステップは、単位区間ごとに、当該単位区間における監視対象の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得するステップである。第2のステップは、監視対象が正常に動作しているときの複数のパラメータの標準値に対する複数のパラメータの計測値の類似度を表す第1統計量を算出するステップである。第3のステップは、複数のパラメータを説明変数とし、第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを複数のパラメータの中から選択するステップである。第4のステップは、複数の有効パラメータの標準値に対する複数の有効パラメータの計測値の類似度を表す第2統計量を算出するステップである。第5のステップは、第2統計量と管理範囲との比較結果に基づいて、監視対象の異常予兆を検知するステップである。
【0024】
本開示の別の例によれば、プログラムは、上記の異常予兆の検知方法をコンピュータに実行させる。これらの開示によっても、異常予兆の検知方法またはプログラムは、属人的な経験に頼ることなく、監視対象の異常予兆を精度良く安定して検知することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、異常予兆検知装置、異常予兆の検知方法またはプログラムは、属人的な経験に頼ることなく、生産システムの異常予兆を精度良く安定して検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施の形態に係る異常予兆の検知方法を示す概略図である。
図2】実施の形態に係る異常予兆検知装置を含むシステムの全体構成を示す模式図である。
図3】実施の形態に係る異常予兆検知装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
図4】実施の形態に係る異常予兆検知装置の機能構成の一例を示す図である。
図5】記憶部に含まれるデータベースの一例を示す図である。
図6】複数のパラメータの全てを用いたT法推定モデルにおける、各パラメータの第1標準SN比への寄与度の一例を示す図である。
図7】選択部によって選択された複数の有効パラメータの一例を示す図である。
図8】異常予兆検知装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】複数のパラメータの全てを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルを用いたときの目的変数の推定値と実測値との散布図の一例を示す図である。
図10】複数の有効パラメータを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルを用いたときの目的変数の推定値と実測値との散布図の一例を示す図である。
図11】第1標準SN比の経時変化の一例を示す図である。
図12】第2標準SN比の経時変化の一例を示す図である。
図13】ステップS22において提供される分析結果の一例を示す図である。
図14】異常予兆検知装置の運用例を示す図である。
図15】監視対象の別の例を示す図である。
図16】射出成形動作が実行される期間における、センサ群によって計測される物理量の推移を示す図である。
図17】射出成形機の状況を示す複数のパラメータの標準値および計測値を示す図である。
図18】射出成形動作ごとに算出された第2統計量の推移を示す図である。
図19】射出成形動作ごとの複数の有効パラメータおよび第2標準SN比を用いた主成分分析の結果を示す図である。
図20】監視対象のさらに別の例を示す図である。
図21】接合動作ごとに算出された第2統計量の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0028】
§1 適用例
図1を参照して、本発明が適用される場面の一例について説明する。図1は、実施の形態に係る異常予兆の検知方法を示す概略図である。図1に示されるように、検知方法は、ステップ(1)~(5)を備える。図1には、生産システム2を異常予兆の監視対象の一例とする検知方法が示される。なお、監視対象は、生産システム2に限定されない。
【0029】
ステップ(1)は、単位期間ごとに、当該単位期間における生産システム2の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得するステップである。複数のパラメータは、例えば、生産システム2に含まれる製造装置の状態、生産システム2によって製造される中間品または最終製品の品質などを示す。
【0030】
ステップ(2)は、生産システム2が正常に動作しているときの複数のパラメータの標準値に対する複数のパラメータの計測値の類似度を表す第1統計量を算出するステップである。以下、第1統計量として第1標準SN比が算出される例について説明する。ただし、第1統計量は、第1標準SN比に限定されず、複数の変数についての標準値と実績値との類似度を表すパラメータであればよい。第1標準SN比は、複数のパラメータの標準値によって定義される第1基準空間に対する類似度を表す。生産システム2が正常に動作しているときの複数のパラメータの標準値は、生産システム2から予め取得される。
【0031】
ステップ(3)は、複数のパラメータを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを複数のパラメータから選択するステップである。これにより、目的変数である第1標準SN比への影響度が相対的に大きい複数の有効パラメータを選択できる。
【0032】
ステップ(4)は、複数の有効パラメータの標準値に対する複数の有効パラメータの計測値の類似度を表す第2統計量を算出するステップである。以下、第2統計量として第2標準SN比が算出される例について説明する。ただし、第2統計量は、第2標準SN比に限定されず、複数の変数についての標準値と実績値との類似度を表すパラメータであればよい。第2標準SN比は、複数の有効パラメータの標準値によって定義される第2基準空間に対する類似度を表す。第2標準SN比は、計測値が取得されるごとに算出される。
【0033】
ステップ(5)は、第2標準SN比と管理範囲との比較結果に基づいて、生産システム2の異常予兆を検知する。例えば、第2標準SN比の移動平均が管理範囲から外れたことに応じて、生産システム2の異常予兆が検知される。生産システム2の異常予兆には、生産システム2に含まれる製造装置の異常予兆、生産システム2によって製造される中間品または最終製品の品質の異常予兆などが含まれる。
【0034】
複数の有効パラメータの第1標準SN比への影響度は、残りのパラメータの第1標準SN比への影響度よりも大きい。このことは、有効パラメータに含まれるノイズ因子の割合が残りのパラメータに含まれるノイズ因子の割合よりも小さいことを意味する。このような複数の有効パラメータを用いて算出される第2標準SN比は、正常に動作しているときの生産システム2の状態に対する類似度を精度良く表す。
【0035】
また、複数の有効パラメータは、複数のパラメータを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルの推定精度に基づいて選択される。そのため、属人的な経験に頼ることなく、正常に動作しているときの生産システム2の状態に対する類似度を精度良く表す複数の有効パラメータが選択される。
【0036】
以上から、本実施の形態に係る異常予兆の検知方法によれば、属人的な経験に頼ることなく、生産システム2の異常予兆を精度良く検知できる。
【0037】
§2 具体例
<システム構成>
図2は、実施の形態に係る異常予兆検知装置を含むシステムの全体構成を示す模式図である。図2に示されるように、システム1は、生産システム2と、異常予兆検知装置100と、を備える。
【0038】
生産システム2は、部材供給装置2Aと、プレス加工機2Bと、検査装置2Cと、を含む。部材供給装置2Aは、金属部材をプレス加工機2Bに供給する。プレス加工機2Bは、金属部材に対して、せん断加工、絞り加工および圧着加工を施すことにより、所定形状の製品を製造する製造装置である。検査装置2Cは、製品の外観および性能等を検査する。
【0039】
プレス加工機2Bには、加速度センサ5が設置されている。加速度センサ5は、プレス加工機2Bに生じる振動波形を計測し、計測結果を示す計測信号を出力する。
【0040】
プレス加工機2Bは、せん断加工、絞り加工および圧着加工のいずれかにおいてイベントが発生したことに応じて、イベント信号を出力する。イベントは、例えば、プレス加工機2Bの一時的な停止をもたらす不具合である。イベント信号は、せん断加工、絞り加工および圧着加工のいずれにおいてイベントが発生したかを示す。
【0041】
異常予兆検知装置100は、上記の異常予兆の検出方法を実行する。具体的には、異常予兆検知装置100は、加速度センサ5によって計測される振動波形から取得される複数のパラメータの計測値を用いて、プレス加工機2Bの異常予兆を検知する。異常予兆検知装置100は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)または汎用のコンピュータによって構成される。
【0042】
さらに、異常予兆検知装置100は、プレス加工機2Bの異常予兆を検知したときに、異常の原因の特定を支援するための支援情報を提供する。例えば、異常予兆検知装置100は、プレス加工機2Bから出力されるイベント信号に基づいて支援情報を生成する。
【0043】
なお、異常予兆検知装置100は、プレス加工機2Bからイベント信号を直接受けてもよいし、図示しない装置(例えばPLC)を介してプレス加工機2Bからイベント信号を受けてもよい。
【0044】
<異常予兆検知装置のハードウェア構成>
図3は、実施の形態に係る異常予兆検知装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。図3に示されるように、異常予兆検知装置100は、典型的には、汎用的なコンピュータアーキテクチャに従う構造を有する。具体的には、異常予兆検知装置100は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、表示コントローラ104と、入力インターフェイス105と、増幅器106と、通信インターフェイス107と、を含む。これらの各部は、バスを介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0045】
プロセッサ101は、ストレージ103に記憶されている各種のプログラムをメモリ102に展開して実行することで、本実施の形態に従う各種処理を実現する。
【0046】
メモリ102は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置であり、ストレージ103から読み出されたプログラム、プログラムに実行により生成される各種のデータなどを記憶する。
【0047】
ストレージ103は、典型的には、ハードディスクトライブなどの不揮発性の磁気記憶装置である。ストレージ103は、プロセッサ101で実行される、検知プログラム131およびデータ蓄積プログラム132を記憶する。ストレージ103にインストールされる各種のプログラムは、メモリカードなどに格納された状態で流通する。
【0048】
ストレージ103は、さらに、検知プログラム131およびデータ蓄積プログラム132の実行によって生成される各種のデータを記憶してもよい。
【0049】
表示コントローラ104は、表示装置70と接続されており、プロセッサ101からの内部コマンドに従って、各種の情報を表示するための信号を表示装置70へ出力する。
【0050】
入力インターフェイス105は、プロセッサ101とキーボード、マウス、タッチパネル、専用コンソールなどの入力装置75との間のデータ伝送を仲介する。すなわち、入力インターフェイス105は、ユーザが入力装置75を操作することで与えられる指示を受け付ける。
【0051】
増幅器106は、加速度センサ5からの計測信号を増幅する。通信インターフェイス107は、プロセッサ101と外部機器(例えばプレス加工機2B)との間におけるデータ伝送を仲介する。通信インターフェイス107は、典型的には、イーサネット(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)などを含む。なお、ストレージ103に格納される各種のプログラムは、通信インターフェイス107を介して、配信サーバなどからダウンロードされてもよい。
【0052】
上述のような汎用的なコンピュータアーキテクチャに従う構造を有するコンピュータを利用する場合には、本実施の形態に係る機能を提供するためのアプリケーションに加えて、コンピュータの基本的な機能を提供するためのOS(Operating System)がインストールされていてもよい。この場合には、本実施の形態に係るプログラムは、OSの一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の順序およびタイミングで呼出して処理を実行するものであってもよい。すなわち、本実施の形態に係るプログラム自体は、上記のようなモジュールを含んでおらず、OSと協働して処理が実行される場合もある。
【0053】
なお、代替的に、検知プログラム131およびデータ蓄積プログラム132の実行により提供される機能の一部もしくは全部を専用のハードウェア回路として実装してもよい。
【0054】
<異常予兆検知装置の機能構成>
図4は、実施の形態に係る異常予兆検知装置の機能構成の一例を示す図である。図4に示されるように、異常予兆検知装置100は、記憶部10と、データベース構築部11と、取得部12と、第1算出部13と、選択部14と、第2算出部15と、検知部16と、分析部17と、を備える。記憶部10は、メモリ102およびストレージ103によって実現される。データベース構築部11は、増幅器106と通信インターフェイス107とデータ蓄積プログラム132を実行するプロセッサ101とによって実現される。取得部12、第1算出部13、選択部14、第2算出部15、検知部16、および分析部17は、プロセッサ101が検知プログラム131を実行することにより実現される。
【0055】
データベース構築部11は、加速度センサ5からの計測信号およびプレス加工機2Bからのイベント信号に基づいて、記憶部10に含まれるデータベース10aを構築する。
【0056】
図5は、記憶部に含まれるデータベースの一例を示す図である。図5に示されるように、データベース10aは、テーブル形式を有し、1以上のレコード10a1を含む。
【0057】
レコード10a1は、所定時間長さ(例えば1分、5分、20分など)を有する単位期間ごとに追加される。各レコード10a1は、フィールド10a2~10a5を含む。フィールド10a2には、対応する単位期間の開始時刻が記述される。フィールド10a3には、対応する単位期間の終了時刻が記述される。フィールド10a4には、対応する単位期間中に加速度センサ5によって計測された振動波形を示す波形データ10bの格納場所が記述される。フィールド10a5には、対応する単位期間中に受けたイベント信号によって示されるイベントの種類(「せん断加工イベント」、「絞り加工イベント」および「圧着加工イベント」のいずれか)が記述される。
【0058】
データベース構築部11は、単位期間が終了するたびに、新たなレコード10a1をデータベース10aに追加する。データベース構築部11は、新たなレコード10a1のフィールド10a2,10a3に、対応する単位期間の開始時刻および終了時刻をそれぞれ記述する。
【0059】
データベース構築部11は、単位期間が終了するたびに、当該単位期間中に加速度センサ5によって計測された振動波形を示す波形データ10bを生成し、生成した波形データ10bを記憶部10に格納する。データベース構築部11は、当該単位期間に応じて追加された新たなレコード10a1のフィールド10a4に、生成した波形データ10bの格納場所を記述する。例えば、波形データ10bの格納場所は、フォルダ名およびファイル名によって示される。
【0060】
データベース構築部11は、単位期間が終了すると、当該単位期間中にイベント信号を受けたか否かを判断する。データベース構築部11は、イベント信号を受けていない場合、単位期間に応じて追加された新たなレコード10a1のフィールド10a5に「null」を記述する。データベース構築部11は、イベント信号を受けた場合、単位期間に応じて追加された新たなレコード10a1のフィールド10a5に、当該イベント信号によって示されるイベントの種類を記述する。
【0061】
図4に示す取得部12は、単位期間ごとに、当該単位期間におけるプレス加工機2Bの状態を示す複数のパラメータの計測値を取得する。具体的には、取得部12は、単位期間ごとに、当該単位期間に対応するレコード10a1をデータベース10aから特定し、特定したレコード10a1のフィールド10a4に記述された格納場所に格納された波形データ10bを読み出す。取得部12は、読み出した波形データ10bによって示される振動波形の特徴を表す複数のパラメータの計測値を算出する。複数のパラメータは、例えば、振動波形の各周波数成分に関する情報などを示す。
【0062】
さらに、取得部12は、単位期間ごとに、当該単位期間において生産システム2のプレス加工機2Bで発生したイベントの種類を示すイベント情報を取得する。具体的には、取得部12は、単位期間ごとに、当該単位期間に対応するレコード10a1をデータベース10aから特定し、特定したレコード10a1のフィールド10a5に記述されたイベントの種類を示すイベント情報を取得する。
【0063】
第1算出部13は、単位期間ごとに、プレス加工機2Bが正常に動作しているときの複数のパラメータの標準値に対する複数のパラメータの計測値の第1標準SN比を算出する。第1標準SN比は、「「開発設計段階における品質工学の考え方と活用-試作レス・試験レスによるシステム評価と改善-」、[online]、[2022年1月4日検索]、インターネット<https://foundry.jp/bukai/wp-content/uploads/2012/07/e4806f10b0797ec0932d9317dd92a533.pdf>」(非特許文献3)に基づいて算出される。プレス加工機2Bが正常に動作しているときの複数のパラメータの標準値は、記憶部10に格納される正常データセット10cによって示される。正常データセット10cは、予め作成される。
【0064】
選択部14は、複数のパラメータを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを複数のパラメータから選択する。
【0065】
T法は、統計学者の田口玄一氏によって提供された多変量解析手法の1つであり、複数の説明変数の値から1つの目的変数の値を推定する手法である(非特許文献1参照)。
【0066】
選択部14は、単位期間ごとの複数のパラメータの計測値と第1標準SN比の値とを示すデータセットに対してT法のデータ処理を実行することにより、T法推定モデルを生成する。T法のデータ処理は、説明変数ごとに単回帰を行ない、説明変数ごとに加重平均を行なうことにより目的変数の推定値を算出するT法推定モデルを生成する。T法のデータ処理によって得られる推定モデルは、以下の式(1)によって表される。
【0067】
【数1】
【0068】
式(1)において、Xijは、i番目の単位期間に対応するj番目の説明変数の規準化処理後の値である。規準化処理は、データセットによって示されるパラメータの計測値の平均値を差し引く処理である。ηjは、j番目の説明変数のSN比を示す。SN比ηjは、j番目の説明変数の値と目的変数の値との間の線形性を示し、目的変数の値の推定精度を表す。βjは、単回帰の比例定数を示す。Miは、i番目の単位期間の目的変数の規準化処理後の推定値である。
【0069】
例えば、選択部14は、2水準系の直交表を用いて、目的変数の推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを複数のパラメータから選択する。選択部14は、例えば非特許文献2に記載の方法を用いて複数の有効パラメータを選択する。2水準系の直交表を用いた複数の有効パラメータの選択(「項目選択」とも称される。)により、説明変数(「項目」とも称される。)ごとに、目的変数の推定精度の向上に効果のある説明変数が選択されるとともに、目的変数の推定精度に悪影響のある(推定精度を下げる)説明変数を除外することができる。さらに、2水準系の直交表を用いることにより、項目間で相互作用がある場合の影響を考慮できる。具体的には、非特許文献2に記載の方法によれば、複数の説明変数(項目)の各々について使用するか使用しないかの2水準のいずれかが与えられた直交表が作成され、直交表の各行について総合SN比が算出される。選択部14は、各項目を使用した場合および使用しない場合の総合SN比に基づいて、当該項目の目的変数の推定効果および目的変数の推定に対する悪影響の有無を判断する。選択部14は、判断結果に基づいて、複数のパラメータから複数の有効パラメータを選択する。
【0070】
あるいは、選択部14は、2水準系の直交表を用いることなく、複数のパラメータのうちの2以上のパラメータの組み合わせを示す複数のパターンを生成してもよい。そして、選択部14は、各パターンによって示される2以上のパラメータの実績値を説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルを生成し、生成したT法推定モデルの総合SN比の大小に基づいて、複数の有効パラメータを選択してもよい。例えば、選択部14は、総合SN比が最大となるパターンに含まれる2以上のパラメータを有効パラメータとして選択する。
【0071】
図6は、複数のパラメータの全てを用いたT法推定モデルにおける、各パラメータの第1標準SN比への寄与度の一例を示す図である。図6に示すグラフ30は、35個のパラメータの寄与度を示す。寄与度が相対的に小さいパラメータは、第1標準SN比への影響度が小さい。これは、寄与度が相対的に小さいパラメータにはノイズ因子が多く含まれているためである。そのため、寄与度が相対的に小さいパラメータは有効パラメータとして選択されないことが好ましい。
【0072】
図7は、選択部によって選択された複数の有効パラメータの一例を示す図である。図7に示すグラフ32は、2水準系の直交表を用いて選択された15個の有効パラメータの寄与度を示す。図7の縦軸は、当該15個の有効パラメータを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルにおける各パラメータの寄与度を示す。当該15個の有効パラメータは、残りのパラメータと比較して、第1標準SN比に対して大きな影響度を有する。すなわち、当該15個の有効パラメータにおけるノイズ因子が占める割合は、残りのパラメータにおけるノイズ因子が占める割合よりも小さい。
【0073】
選択部14は、選択結果に関する情報を提供する。具体的には、選択部14は、選択結果に関する情報を示す画面を表示装置70に表示させる。
【0074】
第2算出部15は、単位期間ごとに、複数の有効パラメータの標準値に対する複数の有効パラメータの計測値の第2標準SN比を算出する。第2標準SN比は、非特許文献2に基づいて算出される。上述したように、選択部14によって選択された複数の有効パラメータにおけるノイズ因子が占める割合は、残りのパラメータにおけるノイズ因子が占める割合よりも小さい。そのため、複数の有効パラメータを用いて算出される第2標準SN比は、第1標準SN比と比較して、正常に動作しているときのプレス加工機2Bの状態に対する類似度をより精度良く表す。
【0075】
第2算出部15は、単位期間ごとの第2標準SN比の経時変化を示すグラフを提供する。具体的には、第2算出部15は、当該グラフを表示装置70に表示させる。
【0076】
検知部16は、第2標準SN比と管理範囲との比較結果に基づいて、プレス加工機2Bの異常予兆を検知する。管理範囲は、予め定められる。検知部16は、単位期間ごとの第2標準SN比が管理範囲から外れたことに応じて、プレス加工機2Bの異常予兆を検知してもよい。ただし、検知部16は、第2標準SN比のばらつきを考慮して、第2標準SN比の移動平均が管理範囲から外れたことに応じて、プレス加工機2Bの異常予兆を検知することが好ましい。
【0077】
分析部17は、検知部16によって異常予兆が検知されたことに応じて、単位期間ごとの複数の有効パラメータと第2標準SN比とを用いた主成分分析を行ない、分析結果を提供する。具体的には、分析部17は、分析結果を示す画面を表示装置70に表示させる。分析結果は、異常の原因の特定に利用される。
【0078】
<異常予兆検知装置の処理の流れ>
図8は、異常予兆検知装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8に示されるように、異常予兆検知装置100の処理は、事前準備フェーズと、モニタリングフェーズと、分析フェーズとを含む。
【0079】
事前準備フェーズは、生産システム2の試運転期間または生産システム2の運用開始直後の一定期間に実行される。また、事前準備フェーズは、生産システム2のメンテナンス後の一定期間に実行されてもよい。
【0080】
事前準備フェーズにおいて、まず異常予兆検知装置100のプロセッサ101は、監視対象であるプレス加工機2Bが正常に動作しているときの複数のパラメータの標準値を示す正常データセット10cを読み出す(ステップS1)。
【0081】
次に、プロセッサ101は、単位期間ごとの複数のパラメータの計測値を取得する(ステップS2)。具体的には、プロセッサ101は、データベース10aの各レコード10a1について、当該レコード10a1のフィールド10a3に記述された格納場所の波形データ10bを読み出す。プロセッサ101は、読み出した波形データ10bから複数のパラメータの計測値を算出する。
【0082】
次に、プロセッサ101は、単位期間ごとに、複数のパラメータの標準値に対する複数のパラメータの計測値の第1標準SN比を算出する(ステップS3)。
【0083】
次に、プロセッサ101は、複数のパラメータを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを複数のパラメータから選択する(ステップS4)。
【0084】
次に、プロセッサ101は、ステップS4の選択結果に関する情報を提供する(ステップS5)。ユーザは、提供された情報に基づいて、選択結果の妥当性を確認する。ステップS5において提供される情報の詳細について後述する。
【0085】
ユーザは、選択結果が妥当であると判断すると、モニタリングフェーズへの移行指示を入力装置75に入力する。
【0086】
ユーザは、選択結果が妥当ではないと判断すると、正常データセット10cを見直したり、データベース10aにおけるデータ量が所望量まで蓄積されるまで待機したりする。その後、ユーザは、事前準備のリトライ指示を入力装置75に入力する。
【0087】
次に、プロセッサ101は、入力装置75への入力指示を確認する(ステップS6)。入力装置75にリトライ指示が入力された場合、処理はステップS1に戻る。入力装置75にモニタリングフェーズへの移行指示が入力された場合、処理はモニタリングフェーズに移る。
【0088】
モニタリングフェーズにおいて、まずプロセッサ101は、新たな単位期間の複数のパラメータの計測値を取得する(ステップS11)。具体的には、プロセッサ101は、データベース10aに新たに追加されたレコード10a1のフィールド10a4に記述された格納場所の波形データ10bを読み出し、読み出した波形データ10bから複数のパラメータの計測値を算出する。
【0089】
さらに、プロセッサ101は、新たな単位期間においてイベントが発生している場合、当該イベントの種類を示すイベント情報を取得する(ステップS12)。具体的には、プロセッサ101は、データベース10aに新たに追加されたレコード10a1のフィールド10a5に記述されたイベントの種類を示すイベント情報を取得する。
【0090】
次に、プロセッサ101は、複数の有効パラメータの標準値に対する、ステップS11で取得した複数の有効パラメータの計測値の第2標準SN比を算出する(ステップS13)。さらに、プロセッサ101は、第2標準SN比の経時変化を示すグラフを提供する(ステップS14)。具体的には、プロセッサ101は、当該グラフを表示装置70に表示させる。これにより、ユーザは、第2標準SN比の変動を確認できる。
【0091】
次に、プロセッサ101は、ステップS12において算出された第2標準SN比と管理範囲との比較結果に基づいて、プレス加工機2Bの異常予兆があるか否かを判断する(ステップS15)。具体的には、プロセッサ101は、第2標準SN比の値(または第2標準SN比の移動平均)が管理範囲内である場合に、プレス加工機2Bの異常予兆がないと判断する。プロセッサ101は、第2標準SN比の値(または第2標準SN比の移動平均)が管理範囲外である場合に、プレス加工機2Bの異常予兆を検知する。
【0092】
プレス加工機2Bに異常予兆がない場合(ステップS15でNO)、処理はステップS11に戻る。
【0093】
プレス加工機2Bに異常予兆がある場合(ステップS15でYES)、処理は分析フェーズに移る。
【0094】
分析フェーズにおいて、まずプロセッサ101は、単位期間ごとの複数の有効パラメータと第2標準SN比とを用いた主成分分析を行なう(ステップS21)。主成分分析の対象は、異常の発生が検知されたタイミングを含む対象期間に含まれる複数の単位期間の各々の複数の有効パラメータの計測値および第2標準SN比の値を示すデータセットである。
【0095】
次に、プロセッサ101は、分析結果を提供する(ステップS22)。具体的には、プロセッサ101は、分析結果を示す画面を表示装置70に表示させる。ステップS22において提供される分析結果の詳細について後述する。
【0096】
ユーザは、分析結果に基づいて、異常の原因を特定する。ユーザは、特定した原因が解消されるように、プレス加工機2Bのメンテナンスを実行する。
【0097】
プレス加工機2Bのメンテナンスを実行すると、プレス加工機2Bが正常に動作しているときの複数のパラメータの値が変動し得る。そのため、ユーザは、メンテナンス後において、プレス加工機2Bが正常に動作しているときの複数のパラメータの値によって定義される基準空間と、現状の正常データセット10cによって示される複数のパラメータの標準値によって定義される基準空間との差を確認する。ユーザは、当該差が閾値未満であれば、正常データセット10cの変更が不要と判断し、モニタリングの継続指示を入力装置75に入力する。
【0098】
一方、当該差が閾値以上である場合、ユーザは、正常データセット10cの変更が必要と判断する。そして、ユーザは、プレス加工機2Bが正常に動作しているときの複数のパラメータの標準値を示す新たな正常データセット10cを作成し、異常予兆検知装置100が記憶する正常データセット10cを新たな正常データセット10cに置換する。その後、ユーザは、事前準備フェーズへの移行指示を入力装置75に入力する。
【0099】
次に、プロセッサ101は、入力装置75への入力指示を確認する(ステップS23)。入力装置75にモニタリングの継続指示が入力された場合、処理はステップS11に戻る。入力装置75に事前準備フェーズへの移行指示が入力された場合、処理はステップS1に戻る。
【0100】
<選択結果に関する情報の例>
ステップS5において提供される、選択結果に関する情報について説明する。プロセッサ101は、選択結果に関する情報として、例えば、複数の有効パラメータを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルを用いたときの目的変数の推定値と実測値との散布図を提供する。さらに、プロセッサ101は、有効パラメータの有効性を確認するために、比較対象として、複数のパラメータの全てを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルを用いたときの目的変数の推定値と実測値との散布図を提供してもよい。
【0101】
図9は、複数のパラメータの全てを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルを用いたときの目的変数の推定値と実測値との散布図の一例を示す図である。図10は、複数の有効パラメータを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルを用いたときの目的変数の推定値と実測値との散布図の一例を示す図である。
【0102】
図9および図10に示されるように、複数のパラメータの全てを説明変数として用いたときの散布図34に比べて、複数の有効パラメータを説明変数として用いたときの散布図36のばらつきが小さい。これは、複数の有効パラメータに含まれるノイズ因子の割合が残りのパラメータに含まれるノイズ因子の割合よりも少ないためである。そのため、複数の有効パラメータは、プレス加工機2Bの正常状態に対する類似度を精度良く表す。
【0103】
さらに、図9および図10に示されるように、プロセッサ101は、説明変数が目的変数を説明する度合いを表す決定係数R2を提供することが好ましい。ユーザは、決定係数R2によりT法推定モデルの推定精度を評価できる。
【0104】
ユーザは、散布図および決定係数R2を確認することにより、選択結果が妥当であるか否かを判断できる。
【0105】
さらに、プロセッサ101は、選択結果に関する情報として、図6,7に示すグラフ30,32を提供してもよい。これにより、ユーザは、各パラメータの寄与度を把握できる。
【0106】
<第2標準SN比を用いることのメリット>
図11は、第1標準SN比の経時変化の一例を示す図である。図12は、第2標準SN比の経時変化の一例を示す図である。図11には、2021年5月31日から6月3日までの単位期間ごとの第1標準SN比の経時変化が示される。図12には、2021年5月31日から6月3日までの単位期間ごとの第2標準SN比の経時変化が示される。
【0107】
図11および図12において、各単位期間に対応する標準SN比を示す点の表示形式は、当該単位期間において発生したイベントの種類に対応している。すなわち、何らイベントが発生していない単位期間に対応する点が丸形状で表され、せん断加工においてイベントが発生した単位期間に対応する点が三角形状で表され、絞り加工においてイベントが発生した単位期間に対応する点が四角形状で表され、圧着工程においてイベントが発生した単位期間に対応する点がプラス形状で表されている。図11および図12に示されるように、2021年5月31日において圧着加工イベントが複数回発生し、2021年6月1日に圧着加工イベントが再度連続して発生し、同日の終盤に圧着加工の不具合が絞り加工にも広がって絞り加工イベントが発生している。その後、2021年6月3日にプレス加工機2Bが故障に至っている。
【0108】
図11の枠線20に示されるように、プレス加工機2Bに故障が発生した6月3日よりも前の6月1日において、第1標準SN比が大きく変動していることがわかる。そのため、第1標準SN比を用いたとしても、ある程度、故障の発生前にプレス加工機2Bの異常予兆を検知可能である。
【0109】
これに対し、図12の枠線22に示されるように、6月1日よりもさらに前の5月31日において、第2標準SN比が大きく変動していることがわかる。すなわち、5月31日の第2標準SN比の変動は、6月3日の故障の予兆として現われている。このように、ノイズ因子の割合が相対的に少ない複数の有効パラメータを用いることにより、プレス加工機2Bの異常予兆をより早期に検知することができる。
【0110】
第2算出部15として動作するプロセッサ101は、ステップS14において、図12に示すグラフ38、すなわち、単位期間ごとに算出した第2標準SN比の経時変化を示すグラフ38を表示装置70に表示させる。これにより、ユーザは、第2標準SN比の変動を視認できる。
【0111】
プロセッサ101は、図12に示されるように、第2標準SN比の経時変化を示すグラフ38において、ステップS12において取得したイベント情報によって示されるイベントの種類を示す。すなわち、上述したように、プロセッサ101は、グラフ38において、各単位期間に対応する標準SN比を示す点の表示形式を、当該単位期間に対応するイベント情報によって示されるイベントの種類に応じて異ならせる。これにより、ユーザは、第2標準SN比が変動している時間帯において発生しているイベントの種類を特定できる。その結果、ユーザは、プレス加工機2Bの異常の原因を特定しやすくなる。
【0112】
<分析結果の例>
プレス加工機2Bの異常の発生が検知されると、プロセッサ101は、主成分分析の対象となる対象期間を選択する。具体的には、プロセッサ101は、異常の発生が検知されたタイミングを含む対象期間を選択する。具体的には、プロセッサ101は、第2標準SN比が変動し始める前の一定期間および第2標準SN比が変動し始めてから現時刻までの期間を対象期間として選択する。
【0113】
プロセッサ101は、対象期間に含まれる単位期間ごとの複数の有効パラメータの計測値と第2標準SN比の値とに対して主成分分析を行ない、分析結果を提供する。
【0114】
図13は、ステップS22において提供される分析結果の一例を示す図である。図13には、主成分分析により得られるバイプロット50が示される。バイプロット50は、対象期間に含まれる単位期間ごとの第1主成分および第2主成分の主成分得点の散布図と、当該散布図に重ねて表示される、複数の有効パラメータと第2標準SN比との各々における主成分負荷量を示すベクトルとを含む。なお、図13に示す例では、第2標準SN比に対応するベクトルv0と、複数の有効パラメータのうちの一部の有効パラメータに対応するベクトルv1~v6とが示され、残りの有効パラメータに対応するベクトルの表示が省略されている。
【0115】
プロセッサ101は、主成分得点の散布図の各点の表示形式を、当該点に対応する単位期間において発生したイベントの種類に応じて異ならせてもよい。図13に示す例では、何らイベントが発生していない単位期間に対応する点が丸形状で表され、せん断加工においてイベントが発生した単位期間に対応する点が三角形状で表され、絞り加工においてイベントが発生した単位期間に対応する点が四角形状で表され、圧着工程においてイベントが発生した単位期間に対応する点がプラス形状で表されている。
【0116】
図13において、枠線40は、何らイベントが発生していない単位期間に対応する点の信頼区間を示す。枠線41は、せん断加工においてイベントが発生した単位期間に対応する点の信頼区間を示す。枠線42は、絞り加工においてイベントが発生した単位期間に対応する点の信頼区間を示す。枠線43は、圧着加工においてイベントが発生した単位期間に対応する点の信頼区間を示す。図13に示すバイプロット50において、イベントの種類ごとの信頼区間が分離されていることがわかる。
【0117】
ユーザは、バイプロット50を確認することにより、第2標準SN比の低下に影響を与えている変数を把握できる。すなわち、ユーザは、複数の有効パラメータの各々の主成分負荷量を示すベクトルのうち、第2標準SN比の主成分負荷量を示すベクトルv0と平行な成分の大きいベクトルに対応する変数を、標準SN比の低下に影響を与えている変数として特定できる。例えば、図13に示すバイプロット50において、ユーザは、ベクトルv0の方向に平行な成分が相対的に大きいベクトルv1,v2,v4,v5に対応する変数fp10,fp19,fp13,ip02を、第2標準SN比の低下に影響を与えている変数として特定できる。一方、ユーザは、ベクトルv0の方向に平行な成分が相対的に小さいベクトルv3,v6にそれぞれ対応する変数ip01,fp03を、第2標準SN比の低下にそれほど影響を与えていない変数として特定できる。
【0118】
さらに、ユーザは、第2標準SN比の低下に影響を与えている変数のベクトルの方向に存在する信頼区間に対応するイベントの種類が異常の原因に関連していると推定できる。例えば、図13に示す例では、ベクトルv2の方向に枠線43によって示される信頼区間が存在する。そのため、ユーザは、異常の原因の候補として、圧着加工に関係する部材を挙げることができる。
【0119】
ユーザは、第2標準SN比の低下に影響を与えている変数によって表される振動波形の特徴に基づいて、異常の原因を特定できる。例えば、振動波形の高周波数成分の特徴を示す変数が第2標準SN比の低下に影響を与えている場合、ユーザは、異常の原因の候補として金属部品を挙げることができる。
【0120】
<運用例>
図14は、異常予兆検知装置の運用例を示す図である。図14において横軸は時間を示す。図14に示す例では、タイミングT1において、第2標準SN比の移動平均が管理範囲外となり、プレス加工機2Bの異常予兆が検知される。当該異常予兆の検知に応じて、ユーザは、分析結果に基づいて、異常の原因を特定し、プレス加工機2Bのメンテナンスを実行する。
【0121】
メンテナンスが完了したタイミングT2において、ユーザは、メンテナンス前後における、プレス加工機2Bが正常に動作しているときの複数のパラメータの値から定義される基準空間の類似度を特定する。ユーザは、メンテナンス前後の基準空間の類似度に応じて、正常データセット10cの更新の要否を判断する。そして、判断結果に応じて、正常データセット10cの更新が実施される。正常データセット10cが更新されることにより、図8に示す事前準備フェーズが実施され、複数の有効パラメータも更新される。
【0122】
さらに、正常データセット10cの更新の要否は、定期的に判断されてもよい。例えば、ユーザは、タイミングT3において、プレス加工機2Bが正常に動作しているときの複数のパラメータの値を取得する。そして、ユーザは、取得した複数のパラメータの値によって定義される基準空間と、正常データセット10cが示す複数のパラメータの標準値によって定義される基準空間との類似度を特定する。ユーザは、特定した類似度に応じて、正常データセット10cの更新の要否を判断し、必要に応じて、正常データセット10cの更新を実施する。正常データセット10cが更新されることにより、図8に示す事前準備フェーズが実施され、複数の有効パラメータも更新される。
【0123】
<変形例1>
上記の説明では、取得部12は、所定時間長さ(例えば1分、5分、20分など)を有する単位期間(単位区間)ごとに、監視対象の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得するものとした。しかしながら、取得部12は、所定時間長さを有しない単位区間ごとに、監視対象の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得してもよい。例えば、単位区間は、監視対象であるプレス加工機2Bにおいて対象動作が実行されている期間であってもよい。対象動作は、例えば、1つの金属部材に対するせん断加工、絞り加工および圧着加工の一連の動作である。あるいは、対象動作は、1つの金属部材に対するせん断加工、絞り加工および圧着加工から選択される1つの加工動作であってもよい。
【0124】
<変形例2>
上記の実施の形態に係る異常予兆検知装置100において、異常予兆の監視対象は、生産システム2(特にプレス加工機2B)である。しかしながら、監視対象は、生産システム2に限定さない。
【0125】
(監視対象の別の例)
図15は、監視対象の別の例を示す図である。図15には、監視対象として、射出成形機6が示される。射出成形機6は、成形型61と、シリンダー62と、スクリュー63と、ホッパー64と、スクリュー駆動装置65と、センサ群66と、を含む。
【0126】
シリンダー62は、円筒状の部材であり、樹脂が供給される内部空間を有している。ホッパー64は、シリンダー62の内部空間に樹脂を供給する。シリンダー62の内部空間には、スクリュー63が挿入される。スクリュー63の基端部には、スクリュー駆動装置65が接続されている。スクリュー63は、スクリュー駆動装置65による制御によって回転するとともに、シリンダー62の長手方向に移動可能である。センサ群66は、射出成形機6の状況を示す各種の物理量を計測する。
【0127】
射出成形機6は、射出成形動作を繰り返し実行する。射出成形動作は、図15の上部の状態から下部の状態までスクリュー63を移動させることにより、シリンダー62の内部空間に収容された樹脂を成形型61に射出する動作である。
【0128】
図16は、射出成形動作が実行される期間における、センサ群によって計測される物理量の推移を示す図である。以下、射出成形動作が実行される期間は、「射出成形期間」と称される。図16に示すグラフにおいて、横軸は、射出成形動作の開始時からの経過時間を示し、縦軸は、センサ群66によって計測される各種の物理量の値を示す。図16に示されるように、センサ群66は、射出成形機6の状況を示す物理量として、スクリュー位置 、射出圧力および射出速度を計測する。スクリュー位置は、例えば、シリンダー62の先端とスクリュー63の先端との距離D(図15参照)によって表される。図16において、線67は、射出成形期間におけるスクリュー位置の推移を示す。線68は、射出圧力の推移を示す。線69は、射出速度の推移を示す。
【0129】
監視対象が射出成形機6である場合、正常データセット10cは、射出成形機6が正常に動作しているときの、射出成形期間における射出成形機6の状況を示す複数のパラメータの標準値を示す。正常データセット10cは、予め作成され、記憶部10に格納される。複数のパラメータは、例えば、射出成形期間の開始からの経過時間がt1,t2,・・・,tnの各々におけるスクリュー位置、射出圧力および射出速度を含む。この場合、複数のパラメータは、3×n個のパラメータを含む。
【0130】
監視対象が射出成形機6である場合、取得部12は、射出成形期間ごとに、射出成形機6の状況を示す複数のパラメータの計測値を取得する。取得部12は、センサ群66から複数のパラメータの計測値を取得してもよいし、射出成形機6を制御する図示しない制御装置(例えばPLC)から複数のパラメータの計測値を取得してもよい。
【0131】
図17は、射出成形機の状況を示す複数のパラメータの標準値および計測値を示す図である。線67aは、射出成形期間の開始からの経過時間t1,t2,・・・,tnのスクリュー位置(n個の変数)の標準値を表す。線68aは、経過時間t1,t2,・・・,tnの射出圧力(n個の変数)の標準値を表す。線69aは、経過時間t1,t2,・・・,tnの射出速度(n個の変数)の標準値を表す。線67bは、射出成形期間の開始からの経過時間t1,t2,・・・,tnのスクリュー位置(n個の変数)の計測値を表す。線68bは、経過時間t1,t2,・・・,tnの射出圧力(n個の変数)の計測値を表す。線69bは、経過時間t1,t2,・・・,tnの射出速度(n個の変数)の計測値を表す。
【0132】
第1算出部13、選択部14、第2算出部15、検知部16、および分析部17は、図17に示す3×n個のパラメータの標準値および計測値を用いて、上記の実施の形態において説明した処理を行なう。
【0133】
具体的には、図17に示されるように、第1算出部13は、3×n個のパラメータの標準値に対する3×n個のパラメータの計測値の類似度を表す第1統計量として第1標準SN比を算出する。選択部14は、3×n個のパラメータを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを3×n個のパラメータから選択する。そして、第2算出部15は、複数の有効パラメータの標準値に対する複数の有効パラメータの計測値の第2標準SN比を算出する。検知部16は、第2標準SN比と管理範囲との比較結果に基づいて、射出成形機6の異常予兆を検知する。分析部17は、検知部16によって異常予兆が検知されたことに応じて、射出成形期間ごとの複数の有効パラメータと第2標準SN比とを用いた主成分分析を行ない、分析結果を提供する。
【0134】
図18は、射出成形動作ごとに算出された第2統計量の推移を示す図である。図18には、射出成形動作の番号を横軸とし、第2算出部15によって算出された第2統計量(第2標準SN比)を縦軸とするグラフが示される。グラフ中の各点に対応する7桁の数字は、射出成形動作によって製造された製品の番号を表す。枠線50a,50bによって囲まれる領域内の点の第2標準SN比は、管理範囲外である。枠線50aによって囲まれる領域内の点に対応する射出成形動作によって製造された製品は、不良品であった。一方、枠線50bによって囲まれる領域内の点に対応する射出成形動作によって製造された製品は、良品であった。枠線50bによって囲まれる領域内の点に対応する射出成形動作は、枠線50aによって囲まれる領域内の点に対応する射出成形動作よりも前に実行されている。このことから、ユーザは、検知部16によって検知された異常予兆に基づいて、不良品の発生を事前に抑制できる。
【0135】
図19は、射出成形動作ごとの複数の有効パラメータおよび第2標準SN比を用いた主成分分析の結果を示す図である。図19には、分析部17によって選定された2つの主成分PC1,PC2のバイプロットが示される。図19に示すバイプロットにおいて、射出成形動作ごとの、複数の変数パラメータの計測値から得られる2つの主成分の各々の主成分得点に対応する点がプロットされる。第2標準SN比が管理範囲となる射出成形動作に対応する点は、枠線51a内に集中している。これに対し、第2標準SN比が管理範囲外となる射出成形動作に対応する点は、枠線51b内に集中している。このことから、ユーザは、図19に示すバイプロットを確認することにより、製品の異常を引き起こしうる射出成形動作を容易に特定することができる。
【0136】
さらに、ユーザは、図19に示すバイプロットを確認することにより、異常の発生メカニズムを考察できる。図19に示すバイプロットにおいて、変数「Speed_time_315(経過時間t315における射出速度)」,「Pressure_time_315(経過時間t315における射出圧力)」,「Speed_time_316(経過時間t316における射出速度)」,「Speed_time_317(経過時間t317における射出速度)」,「Cylinder_time_318(経過時間t318におけるスクリュー位置)」にそれぞれ対応するベクトルv10,v11,v12,v13,v14が他の変数に対応するベクトルとは異なる方向を向いている。そのため、ユーザは、経過時間t315~t318付近の射出速度およびスクリュー位置が射出成形機6の異常に大きく寄与していることを把握できる。
【0137】
(監視対象のさらに別の例)
図20は、監視対象のさらに別の例を示す図である。図20には、監視対象として、実装機8が示される。実装機8は、チャック84と、駆動装置85と、センサ群86と、を含む。
【0138】
チャック84は、バンプ83が付着されたチップ82を保持する。駆動装置85は、超音波の発生制御、チャック84の昇降移動、および、チャック84によるチップ82の保持力の制御を行なう。センサ群86は、実装機8の状況を示す各種の物理量の値を計測する。
【0139】
図20に示されるように、駆動装置85は、チップ82を保持しているチャック84を下降させる。バンプ83が基板81に接触すると、実装機8は、バンプ83と基板81とを接合させる接合動作を実行する。具体的には、駆動装置85は、超音波を発生させてバンプ83と基板81との接合を促すとともに、荷重をかけながらチャック84をさらに下降させる。バンプ83が所定量まで変形すると、駆動装置85は、超音波の発生を停止するとともに、チャック84によるチップ82の保持力を低下させる。これにより、接合動作が終了する。その後、駆動装置85は、チャック84を上昇させる。実装機8は、チャック84が新たなチップ82を保持するたびに、上記の接合動作を実行する。
【0140】
センサ群86は、実装機8の状況を示す物理量として、駆動装置85に印加される電流および電圧と、バンプ83の変形量とを計測する。バンプ83の変形量は、チップ82と基板81との距離によって表される。
【0141】
監視対象が実装機8である場合、正常データセット10cは、実装機8が正常に動作しているときの、接合動作期間における実装機8の状況を示す複数のパラメータの標準値を示す。正常データセット10cは、予め作成され、記憶部10に格納される。複数のパラメータは、例えば、接合動作期間の開始からの経過時間がt1,t2,・・・,tmの各々における電圧、電流および変形量を含む。この場合、複数のパラメータは、3×m個のパラメータを含む。
【0142】
監視対象が実装機8である場合、取得部12は、接合動作期間ごとに、実装機8の状況を示す複数のパラメータの計測値を取得する。取得部12は、センサ群86から複数のパラメータの計測値を取得してもよいし、実装機8を制御する図示しない制御装置(例えばPLC)から複数のパラメータの計測値を取得してもよい。
【0143】
第1算出部13、選択部14、第2算出部15、検知部16、および分析部17は、3×m個のパラメータの標準値および計測値を用いて、上記の実施の形態において説明した処理を行なう。
【0144】
具体的には、第1算出部13は、3×m個のパラメータの標準値に対する3×m個のパラメータの計測値の類似度を表す第1統計量として第1標準SN比を算出する。選択部14は、3×m個のパラメータを説明変数とし、第1標準SN比を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを3×m個のパラメータから選択する。そして、第2算出部15は、複数の有効パラメータの標準値に対する複数の有効パラメータの計測値の第2標準SN比を算出する。検知部16は、第2標準SN比と管理範囲との比較結果に基づいて、実装機8の異常予兆を検知する。分析部17は、検知部16によって異常予兆が検知されたことに応じて、接合動作期間ごとの複数の有効パラメータと第2標準SN比とを用いた主成分分析を行ない、分析結果を提供する。
【0145】
図21は、接合動作ごとに算出された第2統計量の推移を示す図である。図17には、接合動作の番号(実装No.)を横軸とし、第2算出部15によって算出された第2統計量(第2標準SN比)を縦軸とするグラフが示される。第2標準SN比が管理範囲外であった接合動作によって製造された製品の一部は、不良品であった。このことから、ユーザは、検知部16によって検知された異常予兆に基づいて、不良品の発生を事前に抑制できる。
【0146】
(単位区間の別の例)
上記の例では、単位区間は、所定時間長さを有する期間、または、監視対象の動作(射出成形動作または接合動作)が実行される期間とした。しかしながら、単位区間は、これに限定されない。例えば、単位区間は、製造装置の物理量が取りうる範囲に含まれる複数の区間の各々であってもよい。
【0147】
例えば、監視対象が図15に示す射出成形機6である場合、スクリュー位置は、図15の上部に示すスクリュー63の位置(距離D1で表される)から図15の下部に示すスクリュー63の位置(距離D2で表される)までの範囲を取りうる。この場合、距離D1~距離D2までの範囲に含まれる複数の区間の各々が単位区間として設定される。例えば、距離DがD1~D3となる区間と、距離DがD3~D2となる区間とが単位区間として設定される。
【0148】
あるいは、生産現場に設置される引張試験機または圧縮試験機から得られる物理量が特定の範囲になる区間が単位区間として設定されてもよい。例えば、応力-ひずみ線図で見られるひずみ量が所定範囲となる区間が単位区間として設定される。あるいは、生産現場において加熱された金属の冷却速度と硬度との関係において、冷却速度が所定範囲となる区間が単位区間として設定されてもよい。
【0149】
§3 付記
以上のように、本実施の形態は以下のような開示を含む。
【0150】
(構成1)
単位期間ごとに、当該単位期間における生産システム(2)の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得する取得部(101,12)と、
前記生産システムが正常に動作しているときの前記複数のパラメータの標準値に対する前記複数のパラメータの前記計測値の類似度を表す第1統計量を算出する第1算出部(101,13)と、
前記複数のパラメータを説明変数とし、前記第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを前記複数のパラメータから選択する選択部(101,14)と、
前記複数の有効パラメータの前記標準値に対する前記複数の有効パラメータの前記計測値の類似度を表す第2統計量を算出する第2算出部(101,15)と、
前記第2統計量と管理範囲との比較結果に基づいて、前記生産システム(2)の異常予兆を検知する検知部(101,16)と、を備える異常予兆検知装置(100)。
【0151】
(構成2)
単位区間ごとに、当該単位区間における監視対象(2,2B,6,7)の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得する取得部(101,12)と、
前記監視対象(2,2B,6,7)が正常に動作しているときの前記複数のパラメータの標準値に対する前記複数のパラメータの前記計測値の類似度を表す第1統計量を算出する第1算出部(101,13)と、
前記複数のパラメータを説明変数とし、前記第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを前記複数のパラメータから選択する選択部(101,14)と、
前記複数の有効パラメータの前記標準値に対する前記複数の有効パラメータの前記計測値の類似度を表す第2統計量を算出する第2算出部(101,15)と、
前記第2統計量と管理範囲との比較結果に基づいて、前記監視対象(2,2B,6,7)の異常予兆を検知する検知部(101,16)と、を備える異常予兆検知装置(100)。
【0152】
(構成3)
前記取得部(101,12)は、前記単位区間(または前記単位期間)ごとに、当該単位区間(または前記単位期間)において前記監視対象(2,2B,6,7)(または前記生産システム(2))で発生したイベントの種類を示すイベント情報をさらに取得し、
前記第2算出部(101,15)は、
前記単位区間(または前記単位期間)ごとに算出した前記第2統計量の経時変化を示すグラフ(38)を提供し、
前記グラフ(38)において、前記単位区間(または前記単位期間)ごとの前記イベント情報によって示されるイベントの種類を示す、構成1または2に記載の異常予兆検知装置(100)。
【0153】
(構成4)
前記単位区間(または前記単位期間)ごとの前記複数の有効パラメータおよび前記第2統計量を用いた主成分分析を行ない、分析結果を提供する分析部(101,17)をさらに備える、構成1から3のいずれかに記載の異常予兆検知装置(100)。
【0154】
(構成5)
前記分析結果は、前記単位区間(または前記単位期間)ごとの第1主成分および第2主成分の主成分得点の散布図を含み、
前記散布図には、前記複数の有効パラメータと前記第2統計量との各々における主成分負荷量を示すベクトルが重ねて表示される、構成4に記載の異常予兆検知装置(100)。
【0155】
(構成6)
前記取得部(101,12)は、前記単位区間(または前記単位期間)において前記監視対象(2,2B,6,7)(または前記生産システム(2))で発生したイベントの種類を示すイベント情報をさらに取得し、
前記散布図の点の表示形式は、対応する前記単位区間(または前記単位期間)の前記イベント情報によって示されるイベントの種類に応じて異なる、構成5に記載の異常予兆検知装置(100)。
【0156】
(構成7)
前記選択部(101,14)は、前記複数の有効パラメータを説明変数とし、前記第2統計量を目的変数とするT法推定モデルの決定係数を提供する、構成1から6のいずれかに記載の異常予兆検知装置(100)。
【0157】
(構成8)
前記第1統計量および前記第2統計量は、標準SN比である、構成1から7のいずれかに記載の異常予兆検知装置(100)。
【0158】
(構成9)
前記単位区間(または前記単位期間)は、所定時間長さを有する、構成1から8のいずれかに記載の異常予兆装置(100)。
【0159】
(構成10)
前記監視対象(2,2B,6,7)(または前記生産システム(2))は、対象動作を繰り返し実行し、
前記単位区間(または前記単位期間)は、前記対象動作が実行されている期間である、構成1から8のいずれかに記載の異常予兆装置。
【0160】
(構成11)
前記監視対象(または前記生産システム(2))は、製造装置(2B)を含み、
前記複数のパラメータは、前記製造装置(2B)に設置された加速度センサ(5)によって計測された振動波形から抽出される、構成1から8のいずれかに記載の異常予兆検知装置(100)。
【0161】
(構成12)
単位区間(または単位期間)ごとに、当該単位区間(または単位期間)における監視対象(2,2B,6,7)(または生産システム(2))の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得するステップ(S2,S11)と、
前記監視対象(2,2B,6,7)(または前記生産システム(2))が正常に動作しているときの前記複数のパラメータの標準値に対する前記複数のパラメータの前記計測値の類似度を表す第1統計量を算出するステップ(S3)と、
前記複数のパラメータを説明変数とし、前記第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを前記複数のパラメータから選択するステップ(S4)と、
前記複数の有効パラメータの前記標準値に対する前記複数の有効パラメータの前記計測値の類似度を表す第2統計量を算出するステップ(S13)と、
前記第2統計量と管理範囲との比較結果に基づいて、前記監視対象(2,2B,6,7)(または前記生産システム(2))の異常予兆を検知するステップ(S15)と、を備える異常予兆の検知方法。
【0162】
(構成13)
異常予兆の検知方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記検知方法は、
単位区間(または単位期間)ごとに、当該単位区間(または前記単位期間)における監視対象(2,2B,6,7)(または生産システム(2))の状態を示す複数のパラメータの計測値を取得するステップ(S2,S11)と、
前記監視対象(2,2B,6,7)(または前記生産システム(2))が正常に動作しているときの前記複数のパラメータの標準値に対する前記複数のパラメータの前記計測値の類似度を表す第1統計量を算出するステップ(S3)と、
前記複数のパラメータを説明変数とし、前記第1統計量を目的変数とするT法推定モデルの推定精度の向上に有効な複数の有効パラメータを前記複数のパラメータから選択するステップ(S4)と、
前記複数の有効パラメータの前記標準値に対する前記複数の有効パラメータの前記計測値の類似度を表す第2統計量を算出するステップ(S13)と、
前記第2統計量と管理範囲との比較結果に基づいて、前記監視対象(2,2B,6,7)(または前記生産システム(2))の異常予兆を検知するステップ(S15)と、を含むプログラム。
【0163】
本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0164】
1 システム、2 生産システム、2A 部材供給装置、2B プレス加工機、2C 検査装置、5 加速度センサ、6 射出成形機、7 実装機、10 記憶部、10a データベース、10a1 レコード、10a2~10a4 フィールド、10b 波形データ、10c 正常データセット、11 データベース構築部、12 取得部、13 第1算出部、14 選択部、15 第2算出部、16 検知部、17 分析部、30,32,38 グラフ、34,36 散布図、50 バイプロット、61 成形型、62 シリンダー、63 スクリュー、64 ホッパー、65 スクリュー駆動装置、66,86 センサ群、70 表示装置、75 入力装置、81 基板、82 チップ、83 バンプ、84 チャック、85 駆動装置、100 異常予兆検知装置、101 プロセッサ、102 メモリ、103 ストレージ、104 表示コントローラ、105 入力インターフェイス、106 増幅器、107 通信インターフェイス、131 検知プログラム、132 データ蓄積プログラム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21