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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178212
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】継手付パイプ
(51)【国際特許分類】
   F16L 13/14 20060101AFI20231207BHJP
   F16L 27/093 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F16L13/14
F16L27/093
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066218
(22)【出願日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2022090268
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】前田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】桝野 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】橋本 典幸
【テーマコード(参考)】
3H013
3H104
【Fターム(参考)】
3H013FA02
3H013FA03
3H104JA04
3H104JB04
(57)【要約】
【課題】シール性を確保し、且つ、継手の筒状部を従来よりも小径化した継手付パイプを提供すること。
【解決手段】継手付パイプ101は、軸方向に沿う方向の断面視において複数の溝(第1溝9)を端部の外周面に有するパイプ1と、パイプ1の端部が挿入されるパイプ挿入孔8が形成された筒状部5を有する継手2と、パイプ1の外周面とパイプ挿入孔8の内周面との間に配置される筒状のシール部材3であって、樹脂製またはゴム製のシール部材3と、を備える。パイプ1の外周面と、パイプ挿入孔8の内周面との間に、複数の溝(第1溝9)を覆うようにしてシール部材3が配置された状態で、筒状部5が、筒状部5の径方向外方から加締められている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿う方向の断面視において複数の溝を端部の外周面に有するパイプと、
前記パイプの前記端部が挿入されるパイプ挿入孔が形成された筒状部を有する継手と、
前記パイプの前記外周面と、前記パイプ挿入孔の内周面との間に配置される筒状のシール部材であって、樹脂製またはゴム製のシール部材と、
を備え、
前記パイプの前記外周面と、前記パイプ挿入孔の内周面との間に、前記複数の溝を覆うようにして前記シール部材が配置された状態で、前記筒状部が、前記筒状部の径方向外方から加締められている、
継手付パイプ。
【請求項2】
請求項1に記載の継手付パイプにおいて、
前記筒状部のパイプ挿入側の端部、および前記筒状部の中途部が、前記筒状部の径方向外方から加締められている、
継手付パイプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の継手付パイプにおいて、
前記パイプの前記外周面に、第2溝がさらに形成されている、
継手付パイプ。
【請求項4】
請求項3に記載の継手付パイプにおいて、
前記第2溝に接着剤が充填されている、
継手付パイプ。
【請求項5】
請求項3に記載の継手付パイプにおいて、
前記第2溝は、前記パイプの軸方向において、前記パイプ挿入孔のパイプ挿入側の端部に位置している、
継手付パイプ。
【請求項6】
請求項3に記載の継手付パイプにおいて、
前記パイプの前記端部は、先端側から順に、
前記複数の溝が形成された第1部分と、
前記第1部分を拡径する段差部と、
前記第2溝が形成された第2部分であって、前記第1部分よりも径が大きい第2部分と、を有し、
前記第1部分と、前記パイプ挿入孔の内周面との間に前記シール部材が配置されている、
継手付パイプ。
【請求項7】
請求項6に記載の継手付パイプにおいて、
前記段差部は、前記第2部分側から前記第1部分側へ向かって先細りのテーパ形状とされている、
継手付パイプ。
【請求項8】
請求項1または2に記載の継手付パイプにおいて、
前記複数の溝は、前記パイプの軸方向において相互に独立した複数の溝とされている、
継手付パイプ。
【請求項9】
請求項1または2に記載の継手付パイプにおいて、
前記筒状部の軸方向に沿う方向の断面視において、前記パイプ挿入孔の内周面に複数の継手側溝を有する、
継手付パイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプと継手とを接続してなる継手付パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
パイプと継手とを接続するための次のような方法が、特許文献1に記載されている。端部にフレア部が形成されたパイプを継手の筒状部に挿入する。パイプ本体と継手の筒状部との間に治具を挿入する。この治具を用いて筒状部の内壁の一部を塑性変形させ、パイプのフレア部を筒状部の内面に固定する。その後、治具を抜き、筒状部とパイプ本体との間に弾性部材(例えば、ゴムチューブ)を配置する。弾性部材を配置した状態で、筒状部を径方向外方から加締める。この方法により、継手付パイプが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-204391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の上記継手付パイプを構成するパイプは、パイプ本体の外径よりも幅広なフレア部を有する。そのため、当該フレア部が挿入される継手の筒状部の径は、フレア部の外径を考慮したものとする必要があり、その分、大きくなってしまう。一方、継手付パイプは、自動車のエンジンルーム内などの狭所に配置されることがある。このような場合、筒状部の径が大きいと、周辺部品と筒状部とが干渉してしまうことがある。フレア部は、シール面を形成する部分なので、フレア部を単に無くすと、シール性を確保することができない。
【0005】
本発明の目的は、シール性を確保し、且つ、継手の筒状部を従来よりも小径化した継手付パイプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本願で開示する継手付パイプは、軸方向に沿う方向の断面視において複数の溝を端部の外周面に有するパイプと、前記パイプの前記端部が挿入されるパイプ挿入孔が形成された筒状部を有する継手と、前記パイプの前記外周面と、前記パイプ挿入孔の内周面との間に配置される筒状のシール部材であって、樹脂製またはゴム製のシール部材と、を備える。前記パイプの前記外周面と、前記パイプ挿入孔の内周面との間に、前記複数の溝を覆うようにして前記シール部材が配置された状態で、前記筒状部が、前記筒状部の径方向外方から加締められている。
【0007】
(2)(1)に記載の継手付パイプにおいて、前記筒状部のパイプ挿入側の端部、および前記筒状部の中途部が、前記筒状部の径方向外方から加締められていてもよい。
【0008】
(3)(1)または(2)に記載の継手付パイプにおいて、前記パイプの前記外周面に、第2溝がさらに形成されていてもよい。
【0009】
(4)(3)に記載の継手付パイプにおいて、前記第2溝に接着剤が充填されていてもよい。
【0010】
(5)(3)または(4)に記載の継手付パイプにおいて、前記第2溝は、前記パイプの軸方向において、前記パイプ挿入孔のパイプ挿入側の端部に位置していてもよい。
【0011】
(6)(3)から(5)のいずれかに記載の継手付パイプにおいて、前記パイプの前記端部は、先端側から順に、前記複数の溝が形成された第1部分と、前記第1部分を拡径する段差部と、前記第2溝が形成された第2部分であって、前記第1部分よりも径が大きい第2部分と、を有し、前記第1部分と、前記パイプ挿入孔の内周面との間に前記シール部材が配置されてもよい。
【0012】
(7)(6)に記載の継手付パイプにおいて、前記段差部は、前記第2部分側から前記第1部分側へ向かって先細りのテーパ形状とされてもよい。
【0013】
(8)(1)から(7)のいずれかに記載の継手付パイプにおいて、前記複数の溝は、前記パイプの軸方向において相互に独立した複数の溝とされてもよい。
【0014】
(9)(1)から(8)のいずれかに記載の継手付パイプにおいて、前記筒状部の軸方向に沿う方向の断面視において、前記パイプ挿入孔の内周面に複数の継手側溝を有していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記継手付パイプによれば、シール性を確保しつつ、継手の筒状部を従来よりも小径化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の継手付パイプの側断面図である。
図2図1に示す継手付パイプの平面図である。
図3】継手付パイプを構成するパイプの単品図であって、主にパイプの端部を示す、パイプの側断面図である。
図4】継手の単品図であって、継手の側断面図である。
図5図4に示す継手の平面図である。
図6図1、2に示す継手付パイプの組み立て手順を説明するための図である。
図7】第2実施形態の継手付パイプの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
以下の説明では、継手付パイプ101を構成する継手2として、アイジョイント(めがね金具)と呼ばれる継手2を用いた場合の実施形態を示している。なお、継手は、アイジョイントに限定されることはない。継手付パイプを構成する継手として、様々な形状の継手を用いることが可能である。
【0019】
図1に示すように、継手付パイプ101は、パイプ1と、継手2と、筒状のシール部材3とを備えている。継手付パイプ101は、油圧配管などに用いられる。
【0020】
図4および図5に示すように、継手2は、環状の継手本体部4(めがね部)と、継手本体部4の側面から突出する筒状部5(ソケット部)とを有する。継手本体部4の孔4aには、ボルトなどが挿通される。継手本体部4の周壁には、孔4aよりも小径の孔4bが形成されている。孔4bは、継手本体部4の径方向に延び、継手本体部4の周壁を貫通する。孔4aと孔4bとは直交し、且つ、連通している。
【0021】
筒状部5は、継手本体部4側の第1筒状部6と、継手本体部4側とは反対側の第2筒状部7とを有する。第1筒状部6には、その軸方向に延びる孔6aが形成されている。孔6aと継手本体部4の孔4bとは一体的に形成される。孔6aおよび孔4bは連続する孔であり、流体の流路となる孔である。
【0022】
第2筒状部7は、パイプ1が挿入される部分である。第2筒状部7には、パイプ1の端部が挿入されるパイプ挿入孔8が形成されている。パイプ挿入孔8は、孔6aよりも径が大きい。パイプ挿入孔8の軸心と孔6aの軸心とは同じであり、パイプ挿入孔8と孔6aとは同じ軸方向に延びる。パイプ挿入孔8にパイプ1が挿入されると、孔6aとパイプ1とが連通する。
【0023】
第2筒状部7の軸方向に沿う方向の断面視において、パイプ挿入孔8は、その内周面に複数の継手側溝8aを有する。複数の継手側溝8aは、第2筒状部7の軸方向に沿う方向の断面視において、軸方向に沿って繰り返す複数の溝とされている。複数の継手側溝8aは、第2筒状部7の軸方向において、パイプ挿入孔8のほぼ全長にわたって設けられている。複数の継手側溝8aは、第2筒状部7の軸方向において相互に独立した複数のリング状の溝とされてもよい。また、複数の継手側溝8aは、パイプ挿入孔8の内周面に形成された螺旋状に延びる1本の溝、または複数本の溝で形成されてもよい。
【0024】
継手2は、金属製である。継手2の材料は、例えば、鉄である。継手2の材料は、鉄に限られることはなく、ステンレス、真鍮、銅などの鉄以外の金属材料であってもよい。継手2は、鍍金されてもよいし、樹脂コーティングされてもよい。
【0025】
図3は、パイプ挿入孔8に挿入されるパイプ1の端部を示す図である。パイプ1は、軸方向に沿う方向の断面視において複数の第1溝9(溝)を端部の外周面に有する。複数の第1溝9は、パイプ1の軸方向に沿う方向の断面視において、軸方向に沿って繰り返す複数の溝とされている。複数の第1溝9は、パイプ1の軸方向において相互に独立した複数のリング状の溝とされてもよい。また、複数の第1溝9は、パイプ1の外周面に形成された螺旋状に延びる1本の溝、または複数本の溝で形成されてもよい。本実施形態では、複数の第1溝9は、パイプ1の軸方向において相互に独立した複数のリング状の溝とされている。
【0026】
パイプ1の端部の外周面には、上記第1溝9に加えて、さらに第2溝10が形成されている。第2溝10は、第1溝9とは独立したリング状の溝とされている。第2溝10には、接着剤14が充填される。第2溝10の幅は、第1溝9の幅よりも広い。なお、第2溝10の幅は、第1溝9の幅と同じであってもよいし、第1溝9の幅よりも狭くてもよい。第2溝10は、本実施形態のように1つだけ形成されてもよいし、複数、形成されてもよい。
【0027】
パイプ1の端部は、先端側から順に、上記の複数の第1溝9が形成された第1部分11と、第1部分11を拡径する段差部12と、上記の第2溝10が形成された第2部分13と、を有する。
【0028】
第1部分11の外径は、第2部分13の外径よりも小さい。第1部分11の内径は、第2部分13の内径よりも小さい。すなわち、第1部分11の径は、第2部分13の径よりも小さい。なお、第1部分11の外径は、第1溝9が形成されていない部分の第1部分11の外周面における径である。第1部分11の内径は、第1溝9によって内に膨らんでいない部分の第1部分11の内周面における径である。
【0029】
段差部12は、第2部分13側から第1部分11側へ向かって先細りのテーパ形状とされている。段差部12は、先細りのテーパ形状(径が徐々に小さくなっていく形状)ではなく、第1部分11の径が第2部分13の径よりも小さくなる単なる段差とされてもよい。
【0030】
本実施形態の第1部分11には、軸方向に沿う方向の断面視において、その全長にわたって複数の第1溝9は形成されていない。第1部分11の中央部付近から先端にかけて、複数の第1溝9が形成されている。なお、軸方向に沿う方向の断面視において、複数の第1溝9が、第1部分11の全長にわたって形成されてもよい。
【0031】
パイプ1は、金属製である。パイプ1の材料は、例えば、鉄である。パイプ1の材料は、鉄に限られることはなく、ステンレス、真鍮、銅などの鉄以外の金属材料であってもよい。パイプ1は、鍍金されてもよいし、樹脂コーティングされてもよい。
【0032】
シール部材3は、パイプ1の端部の外周面と、継手2のパイプ挿入孔8の内周面との間に配置される。シール部材3は、樹脂製またはゴム製である。シール部材3は、例えば、フッ素樹脂製である。変形する前のシール部材3が、図6に示されている。
【0033】
継手付パイプ101の製造方法について説明する。
【0034】
まず、パイプ1の材料であるパイプ(素管)の先端部分を縮径加工する。これにより、第1溝9のない第1部分11、先細りのテーパ形状である段差部12、および第2溝10のない第2部分13を端部に有するパイプが形成される。
【0035】
上記パイプの縮径した部分(第1部分11)に、転造加工などによって、複数の第1溝9を形成する。また、上記パイプの縮径していない部分(第2部分13)に、第2溝10を形成する。これにより、先端側から順に、複数の第1溝9が形成された第1部分11と、第1部分11を拡径する段差部12と、第2溝10が形成された第2部分13と、を端部に有するパイプ1が得られる。
【0036】
別途、図4、5に示す継手2を準備する。また、樹脂製またはゴム製の筒状部材(不図示)を切断して、シール部材3を準備する。
【0037】
図6に示すように、パイプ1の第1部分11にシール部材3を挿入することで、第1部分11の外周面にシール部材3を装着する。その後、第2部分13の第2溝10に接着剤14を充填する。第2溝10の全周にわたって接着剤14を充填する。なお、第2溝10に接着剤14を充填してから、パイプ1の第1部分11にシール部材3を装着してもよい。また、第2溝10の全周にわたって接着剤14を充填するのではなく、第2溝10の一部分のみに接着剤14を充填してもよい。
【0038】
シール部材3が装着されるとともに、第2溝10に接着剤14が充填されたパイプ1の端部を、継手2のパイプ挿入孔8に挿入する。パイプ挿入孔8の最奥部までパイプ1の端部が到達すると、パイプ1の外周面(第1部分11の外周面)と、パイプ挿入孔8の内周面との間に、複数の第1溝9を覆うようにしてシール部材3が配置された状態となる。また、図6の中の一番下に示すように、第2溝10は、パイプ1の軸方向において、パイプ挿入孔8のパイプ挿入側の端部に位置した状態となる。
【0039】
なお、パイプ挿入孔8にシール部材3を挿入した後、第2溝10に接着剤14が充填されたパイプ1の端部を、パイプ挿入孔8(パイプ挿入孔8に挿入された状態のシール部材3)に挿入してもよい。
【0040】
次に、継手2の筒状部5の第2筒状部7を、筒状部5の径方向外方から加締める(加締め工程)。図1、2に矢印で、第2筒状部7の加締め位置および加締め方向を示している。筒状部5のパイプ挿入側の端部P2、および筒状部5の中途部P1が、筒状部5の径方向外方から加締められる。筒状部5のパイプ挿入側の端部P2を加締めて、当該端部P2をパイプ1に固定することを、スカート締結という。加締めは、加締め部を八方から加締める八方加締め、六方から加締める六方加締めなどが用いられる。なお、八方加締め、六方加締めに限定されることはなく、筒状部5の径方向外方のうちの複数方向から第2筒状部7を加締めればよい。
【0041】
第2筒状部7のうちの、(1)複数の第1溝9が形成されたパイプ1の第1部分11が内側に位置する箇所(中途部P1)、および(2)第2溝10が形成されたパイプ1の第2部分13が内側に位置する箇所(端部P2)を、筒状部5の径方向外方から加締める。
【0042】
第2筒状部7のうちの、複数の第1溝9が形成されたパイプ1の第1部分11が内側に位置する箇所が加締められると、シール部材3は変形し、シール部材3の一部が第1溝9に強く深く入り込む(食い込む)。また、パイプ挿入孔8の内周面に形成された隣り合う継手側溝8a同士の間の凸部が、シール部材3に強く深く入り込む(食い込む)。
【0043】
ここで、パイプ1の端部の第1部分11の外周面と、シール部材3の内周面とが接触する部分は、シール面を形成する。シール部材3が変形して、シール部材3の一部がパイプ1の第1溝9に食い込むと、パイプ1に対してシール部材3が強く押し付けられた状態となる。また、シール面は、パイプ1の軸方向において、真っすぐな面ではなく、迷路状(別の言い方では波状)の面になる。これらの結果、パイプ1内の流体は外部へ漏れにくくなる、すなわち、シール性が確保される。
【0044】
シール部材3の外周面と、パイプ挿入孔8の内周面とが接触する部分も、シール面を形成する。パイプ挿入孔8の内周面に形成された隣り合う継手側溝8a同士の間の凸部がシール部材3に食い込むと、シール部材3に対して第2筒状部7が強く押し付けられた状態となる。また、シール面は、パイプ1の軸方向において、真っすぐな面ではなく、迷路状(別の言い方では波状)の面になる。これらの結果、パイプ1内の流体は外部へ漏れにくくなる、すなわち、シール性が向上する。
【0045】
第2筒状部7のうちの、第2溝10が形成されたパイプ1の第2部分13が内側に位置する箇所が加締められると、第2筒状部7が変形して、接着剤14が充填された第2溝10部分に対して第2筒状部7が密着した状態となる。
【0046】
その後、接着剤14を硬化させるため、加熱処理を行う。これにより、継手付パイプ101は完成する。
【0047】
継手付パイプ101は、軸方向に沿う方向の断面視において複数の溝(第1溝9)を端部の外周面に有するパイプ1と、パイプ1の端部が挿入されるパイプ挿入孔8が形成された筒状部5(第2筒状部7)を有する継手2と、パイプ1の外周面とパイプ挿入孔8の内周面との間に配置される筒状のシール部材3であって、樹脂製またはゴム製のシール部材3と、を備える。パイプ1の外周面と、パイプ挿入孔8の内周面との間に、複数の第1溝9を覆うようにしてシール部材3が配置された状態で、第2筒状部7が、第2筒状部7の径方向外方から加締められている。
【0048】
継手付パイプ101は、特許文献1(特開2020-204391号公報)に記載の継手付パイプが有するフレア部を備えていない。そのため、継手付パイプ101は、継手2の筒状部5を従来よりも小径化することができている。
【0049】
パイプ1の外周面と、パイプ挿入孔8の内周面との間に、複数の第1溝9を覆うようにしてシール部材3が配置された状態で、第2筒状部7が、第2筒状部7の径方向外方から加締められると、シール部材3が変形して、シール部材3の一部がパイプ1の第1溝9に食い込む。これにより、パイプ1に対してシール部材3が強く押し付けられた状態となる。また、パイプ1の外周面とシール部材3の内周面とが接触する部分であるシール面は、パイプ1の軸方向において、真っすぐな面ではなく、迷路状(別の言い方では波状)の面になる。これらの結果、パイプ1内の流体は外部へ漏れにくくなる、すなわち、特許文献1(特開2020-204391号公報)に記載のようなフレア部がなくても、良好なシール性を確保することができる。また、パイプ1の外周面とシール部材3の内周面とが接触する部分が、パイプ1の軸方向において、迷路状(別の言い方では波状)の面になることで摩擦力が増加し、パイプ1などに引張力が加わった場合に、継手2の筒状部5からパイプ1が抜けにくくなる。すなわち、継手付パイプ101の引張強度を確保することができる。
【0050】
筒状部5のパイプ挿入側の端部P2、いわゆるスカート部が加締められる。筒状部5の中途部P1だけでなく、端部P2も加締められることで、継手付パイプ101の引張強度はより高まる。
【0051】
継手付パイプ101では、パイプ1の外周面に、複数の溝(第1溝9)に加えて、第2溝10がさらに形成されている。この第2溝10に接着剤が充填されている。この構成によると、パイプ1内の流体は外部へより漏れにくくなり、継手2とパイプ1との間の良好なシール性を、より確保することができる。また、継手2の筒状部5からパイプ1が、より抜けにくくなる。
【0052】
第2溝10の幅は、第1溝9の幅よりも広くされている。この構成によると、接着剤による接着面積が大きくなるので、継手2の筒状部5とパイプ1とがより強固に固定され、パイプ1内の流体は外部へ、より漏れにくくなり、シール性および引張強度は、より優れたものとなる。
【0053】
接着剤が充填されている第2溝10は、パイプ1の軸方向において、パイプ挿入孔8のパイプ挿入側の端部に位置している。この構成によると、筒状部5の端部が、外力によってめくり上がったりすることを防止することができる。また、筒状部5の端部をパイプ1の外周面に固定することができるので、シール性および引張強度は、より優れたものとなる。
【0054】
パイプ1の端部は、先端側から順に、複数の溝(第1溝9)が形成された第1部分11と、第1部分11を拡径する段差部12と、第2溝10が形成された第2部分13であって、第1部分11よりも径が大きい第2部分13と、を有する。第1部分11と、パイプ挿入孔8の内周面との間にシール部材3が配置されている。この構成によると、シール部材3が装着されたパイプ1の端部を、継手2のパイプ挿入孔8に挿入する際に、段差部12がストッパー的役割をはたし、複数の第1溝9が形成された第1部分11からシール部材3がずれることを抑制することができる。
【0055】
段差部12は、第2部分13側から第1部分11側へ向かって先細りのテーパ形状とされている。この構成によると、パイプ1に外力が作用した際の、第1部分11と第2部分13との境界部分における応力集中を低減することができるので、パイプ1の強度を確保しやすい。また、転造加工などによって、段差部12を容易に形成することができる。
【0056】
複数の溝(第1溝9)は、パイプ1の軸方向において相互に独立した複数の溝とされている。この構成によると、複数の第1溝9が、螺旋状に延びる1本の溝で形成された場合に比べて、シール性を向上させることができる。
【0057】
継手2は、筒状部5の軸方向に沿う方向の断面視において、パイプ挿入孔8の内周面に複数の継手側溝8aを有する。この構成によると、隣り合う継手側溝8a同士の間の凸部がシール部材3に食い込み、シール部材3に対して第2筒状部7が強く押し付けられた状態となる。また、シール面は、パイプ1の軸方向において、真っすぐな面ではなく、迷路状(別の言い方では波状)の面になる。これらの結果、パイプ1内の流体は外部へ漏れにくくなる、すなわち、シール性が向上する。
【0058】
図7は、第2実施形態の継手付パイプ102の側断面図である。第2実施形態の継手付パイプ102を構成する各部材について、第1実施形態の継手付パイプ101を構成する各部材と同様の部材については、同じ符号を付している。
【0059】
第2実施形態の継手付パイプ102において、第2筒状部7の内周面に形成された継手側溝8bは、パイプ挿入孔8の全長にわたって設けられていない。継手側溝8bは、パイプ挿入孔8の軸方向の中央部付近からパイプ挿入孔8の奥側端部までの部分に設けられている。第1実施形態における継手側溝8aの断面形状が台形であるのに対し、継手側溝8bの断面形状は半円形である。複数の継手側溝8bは、第2筒状部7の軸方向において、相互に独立した複数のリング状の溝である。複数の継手側溝8bが、相互に独立した複数のリング状の溝であることで、継手側溝が螺旋状に延びる1本の溝で形成された場合に比べて、シール性が向上する。
【0060】
第2実施形態において、パイプ1の外周面に第2溝10は形成されていない。第2溝10が形成されていないので、第2実施形態では、接着剤14は用いられていない。
【0061】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0062】
上記実施形態は、例えば、次のように変更可能である。
【0063】
第1実施形態において、複数の継手側溝8aは、パイプ挿入孔8のほぼ全長にわたって設けられているが、複数の継手側溝8aは、例えば、第2実施形態における継手側溝8bのように、パイプ挿入孔8のほぼ全長にわたって設けられてなくてもよい。さらには、複数の継手側溝8aは無くてもよい。
【0064】
第1実施形態において、接着剤14は無くてもよい。言い換えれば、第2溝10に接着剤14が充填されていなくてもよい。第2溝10に接着剤14が充填されていなくても、第2溝10自体により、第2溝10が無い場合に比べて、継手付パイプ101の引張強度は高くなる。筒状部5(第2筒状部7)が加締められることで、パイプ挿入孔8の内周面が、第2溝10部分に強く押し付けられ、パイプ1は抜けにくくなる。なお、第2実施形態のように、第2溝10は無くてもよい。
【0065】
第2実施形態において、第1実施形態のように、パイプ1の外周面に第2溝10が形成されてもよい。第2溝10が形成された場合、第2溝10に接着剤14が充填されてもよいし、されなくてもよい。
【0066】
第2実施形態において、複数の継手側溝8bは、パイプ挿入孔8のほぼ全長にわたって設けられてもよい。複数の継手側溝8bは、無くてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1:パイプ
2:継手
3:シール部材
5:筒状部
8:パイプ挿入孔
8a、8b:継手側溝
9:第1溝(溝)
10:第2溝
11:第1部分
12:段差部
13:第2部分
14:接着剤
101、102:継手付パイプ
P1:中途部
P2:端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7