(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178231
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】腸溶性硬質カプセルの製造のためのバンディング溶液とこれを利用して製造した腸溶性硬質カプセル
(51)【国際特許分類】
A61K 47/36 20060101AFI20231207BHJP
A61K 9/52 20060101ALI20231207BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231207BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20231207BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20231207BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20231207BHJP
A61P 1/12 20060101ALN20231207BHJP
A61K 35/744 20150101ALN20231207BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/52
A61K47/10
A23L5/00 C
A23L29/256
A23L29/231
A61P1/12
A61K35/744
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085631
(22)【出願日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0068153
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523195290
【氏名又は名称】ソフン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジュファン
【テーマコード(参考)】
4B035
4B041
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B035LC04
4B035LE01
4B035LE04
4B035LG05
4B035LG21
4B035LG22
4B035LG25
4B035LK04
4B035LP36
4B041LC04
4B041LD01
4B041LE02
4B041LH05
4B041LH10
4B041LK06
4B041LP14
4C076AA54
4C076AA59
4C076BB05
4C076CC16
4C076DD37
4C076DD38
4C076EE30
4C076EE36
4C076EE38
4C076FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087CA09
4C087MA05
4C087MA37
4C087MA52
4C087NA03
4C087NA12
4C087ZA73
(57)【要約】
【課題】本発明は、腸溶性硬質カプセルの製造のためのバンディング溶液とこれを用いてバンディング処理した腸溶性硬質カプセルに関するもので、具体的には、胃での滞留時間の間、胃酸により結合されたカプセル上部とカプセル下部の隙間が発生することやカプセル上部とカプセル下部が分離されることを防止するようにした腸溶性硬質カプセルの製造のためのバンディング溶液とこれを用いてバンディング処理した腸溶性硬質カプセルに関するものである。
【解決手段】バンディング溶液は、カプセル上部110とカプセル下部120が結合して結合部130を形成する腸溶性硬質カプセル100の結合部130の境界133を含む領域に塗布されるバンディング溶液において、前記バンディング溶液は、精製水90~96重量部及びアルギン酸塩3~5重量部を含む。腸溶性硬質カプセル100は、バンディング溶液を結合部133の境界133を含む領域に塗布したものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル上部とカプセル下部が結合して結合部を形成する腸溶性硬質カプセルの結合部の境界を含む領域に塗布されるバンディング溶液において、
前記バンディング溶液は、精製水90~96重量部及びアルギン酸塩3~5重量部を含むことを特徴とする、バンディング溶液。
【請求項2】
前記アルギン酸塩は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、及びアルギン酸カリウムで構成される群から1以上選択されることを特徴とする、請求項1に記載のバンディング溶液。
【請求項3】
前記バンディング溶液は、トウモロコシ澱粉ベースのポリマー1.0~4.0重量部をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のバンディング溶液。
【請求項4】
前記バンディング溶液は、ペクチン1.5~2.5重量部をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のバンディング溶液。
【請求項5】
前記バンディング溶液は、ペクチン1.5~2.5重量部及びトウモロコシ澱粉ベースのポリマー1.0~3.0重量部をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のバンディング溶液。
【請求項6】
カプセル上部とカプセル下部が結合して結合部を形成する腸溶性硬質カプセルの結合部の境界を含む領域に塗布されるバンディング溶液において、
前記バンディング溶液は、精製水75~85重量部、ペクチン2.5~6重量部、可塑剤0.05~2重量部、及びアルコール10~20重量部を含むことを特徴とする、バンディング溶液。
【請求項7】
前記可塑剤は、グリセリンであり、
前記アルコールは、エタノールであることを特徴とする、請求項6に記載のバンディング溶液。
【請求項8】
前記バンディング溶液は、着色剤0.05~1.5重量部をさらに含むことを特徴とする、請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載のバンディング溶液。
【請求項9】
請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載のバンディング溶液を結合部の境界を含む領域に塗布したことを特徴とする、腸溶性硬質カプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸溶性硬質カプセルの製造のためのバンディング溶液とこれを使ってバンディング処理した腸溶性硬質カプセルに関するもので、より具体的には、胃での滞留時間の間、胃酸により結合されたカプセル上部とカプセル下部の隙間が発生することやカプセル上部とカプセル下部が分離されることを防止するようにした腸溶性硬質カプセルの製造のためのバンディング溶液とこれを利用してバンディング処理した腸溶性硬質カプセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人々は、疾病の治療、健康の改善などのために薬物、健康機能食品などを服用している。服用する薬物又は健康機能食品の剤型としては、錠剤形態が最も一般的であり、錠剤は、大きくタブレットとカプセル剤に分けられ、カプセル剤は、軟質カプセル(ソフトカプセル)と硬質カプセル(ハードカプセル)に分けられる。
【0003】
タブレットは、固形化された薬剤をコーティングして体内で溶解して吸収されるようにした形態である。軟質カプセル(ソフトカプセル)は、一般的にゼラチンを使って製造され、ゼラチン成分で作った2個のシートの間に有効成分と添加剤などを入れてシートに圧力を加えて成形する仕方で製造される。したがって、軟質カプセルは、分離できるものや割れた隙間のない一体型で形成される。硬質カプセル(ハードカプセル)は、上下部が結合される外皮を持って内部に有効成分と添加剤を入れる方式で製造される。一般的に硬質カプセルの製造が軟質カプセルの製造より容易であり費用の発生が少ない。
【0004】
一方、錠剤は、特別な処理がなければ、胃での滞留時間(2時間以内)の間、胃酸により崩壊して有効成分が胃で放出され、その結果、有効成分は、胃酸に曝されて胃で吸収されることができる。しかし、有効成分が酸により活性を失うか、腸における吸収が必要であるか、その他の必要があるために、胃酸で崩壊しない形態の錠剤が要求されている。このような有効成分の例としては、アスピリン、乳酸菌、オメガ3などがある。アスピリンの場合、胃炎と胃潰瘍などの胃膓疾患がある患者に悪影響を与えることがあるので、腸から吸収される必要があり、乳酸菌の場合、胃酸に曝されると効果が低くなるため、胃酸により崩壊してはならず、オメガ3の場合、特有の生臭さがあるため、消費者は、胃ではなく腸の中で崩壊する錠剤を好む。だから、胃で滞留する2時間の間、胃酸により崩壊しないと共に腸で30分又は60分以内に崩壊する錠剤である腸溶性剤型の製造が必要である。従来の腸溶性剤型としては、腸溶性物質をコーティングした錠剤と腸溶性物質で構成された軟質カプセルがあり、製造が容易であり費用の発生が少ない長所によって腸溶性硬質カプセルを製造しようとする試みがある。
【0005】
しかし、従来試みられた腸溶性硬質カプセルは、硬質カプセル自体は胃酸に溶けなくても胃酸と接触する硬質カプセル部位は水溶性成分が水分を吸収し膨れる一方、胃酸と直接的に接しない硬質カプセルの結合部位の内部は膨らまないため、カプセル上部とカプセル下部の結合部に隙間が発生するとか、カプセル上部とカプセル下部が分離されて有効成分が流出される構造的問題が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、胃での滞留時間の間、胃酸によりカプセル上部とカプセル下部の結合部に隙間が発生するとか、カプセル上部とカプセル下部が分離されることを防止するための硬質カプセルのバンディング処理のためのバンディング溶液を提供する。
【0008】
本発明は、胃での滞留時間の間、胃酸によりカプセル上部とカプセル下部の結合部に隙間が発生したり、カプセル上部とカプセル下部が分離されたりしないバンディング処理された腸溶性硬質カプセルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、腸溶性硬質カプセルの結合部の境界を含む領域に塗布されるバンディング溶液を提供する。
【0010】
本発明において、バンディング溶液は、精製水90~96重量部及びアルギン酸塩3~5重量部を含む。
【0011】
本発明において、アルギン酸塩は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、及びアルギン酸カリウムで構成される群から1以上選択される。
【0012】
本発明において、バンディング溶液は、トウモロコシ澱粉ベースのポリマー1~4重量部をさらに含む。
【0013】
本発明において、バンディング溶液は、ペクチン1.5~2.5重量部をさらに含む。
【0014】
本発明において、バンディング溶液は、ペクチン1.5~2.5重量部及びトウモロコシ澱粉ベースのポリマー1.0~3.0重量部をさらに含む。
【0015】
本発明において、バンディング溶液は、精製水75~90重量部、ペクチン2.5~6重量部、可塑剤0.05~2重量部、及びアルコール10~20重量部を含む。
【0016】
本発明において、可塑剤は、グリセリンであり、アルコールは、エタノールである。
【0017】
本発明において、バンディング溶液は、着色剤0.05~1.5重量部をさらに含む。
【0018】
前記課題を解決するために、バンディング溶液を結合部の境界を含む領域に塗布した腸溶性硬質カプセルを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、硬質カプセルを摂取して胃で滞留する2時間の間、胃酸により結合部の境界に隙間が発生するとか、カプセル上部とカプセル下部が分離されて有効成分が流出されることを防止する腸溶性カプセルの製造のためのバンディング溶液を製造することができる。
【0020】
本発明によると、バンディング溶液の塗布及び乾燥を通じて腸溶性硬質カプセルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】一実施例によるバンディング溶液を塗布して乾燥した腸溶性硬質カプセルを示す。
【
図3】一実施例によるバンディング溶液を塗布して乾燥した腸溶性硬質カプセルを胃酸条件で2時間の間、崩壊試験した結果を示す。
【
図4】バンディング溶液を塗布しない硬質カプセルを胃酸条件で崩壊試験した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、下記の説明によって全て達成され得る。下記の説明は、本発明の具体例を記述することで理解すべきであり、本発明が必ずしもこれに限定されるものではない。また、添付された図面は、理解を助けるためのものであって、本発明がこれに限定されるものではないことを理解すべきである。
【0023】
本開示内容の実施例は、多様な変更を加えることができ、多様な形態で実施することができる。したがって、本開示内容の思想及び技術的特徴の同一性が認められる範囲の全ての変更、均等物乃至代替物を含むことで理解すべきである。
【0024】
まず、本発明による腸溶性硬質カプセルに対して説明する。
図1は、本発明による腸溶性硬質カプセル100を概略的に示した図である。
図1を参照すると、腸溶性硬質カプセル100は、カプセル上部110、カプセル下部120で構成され、カプセル上部110とカプセル下部120が結合して結合部130を形成する。結合部130は、外部に露出されてカプセル上部110の一部に該当する外部結合部131と、外部に露出せずカプセル下部の一部に該当する内部結合部132を含む。腸溶性硬質カプセル100の内部には、有効成分が存在する。前記有効成分の例示として、乳酸菌、オメガ3、アスピリン、腸疾患治療剤などがあり、これらに限定されない。腸溶性硬質カプセル100は、胃での滞留時間(約2時間)の間、胃酸により崩壊せず、腸で30分~60分以内に崩壊する硬質カプセルである。腸溶性硬質カプセル100を製造するための素材は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、オイドラギット(Eudragit)、ゼイン(Zein)、アクリル酸共重合体及びシェラック(shellac)、ペクチン、ゲランガム、アルギン酸塩で構成された群から少なくとも一つ以上を含むことができ、これらに限定されない。
【0025】
本発明による腸溶性硬質カプセル100は、腸溶性硬質カプセル100の結合部130の一部を含む領域、より具体的には、結合部の境界133を含む領域にバンディング溶液が塗布されて乾燥したことを一つの特徴とする。このようなバンディング溶液が塗布されないと、腸溶性硬質カプセルが胃で滞留する2時間の間、胃酸により硬質カプセル自体が溶けないが、胃酸と接触する外部結合部131は水溶性成分が水分を吸収し膨れる一方、胃酸と直接的に接触しない内部結合部132は膨れないため、カプセル上部とカプセル下部の結合部に隙間が発生するとか、カプセル上部とカプセル下部が分離されて硬質カプセル内部の有効成分が流出する恐れがあるからである(
図4)。しかし、バンディング溶液が結合部130の一部を含む領域に塗布された場合には、腸溶性硬質カプセル100が胃で滞留する間バンディング溶液により処理された部分が胃酸に接触するため、バンディング溶液により処理された部分の外部結合部が水溶性物質を吸収して膨れることを防止することができる。したがって、カプセル上部とカプセル下部の結合部に隙間が発生するか、カプセル上部とカプセル下部が分離されることによって、有効成分が流出されることがないという長所がある。また、結合部130を含む領域、より具体的には、結合部の境界133を含む領域だけバンディング溶液を塗布して、バンディング溶液を硬質カプセル全体に塗布することより経済的であり、体積の増加が少ないため運搬及び摂取に容易である。また、硬質カプセルを製造した後でバンディング溶液を塗布して乾燥することができるので、既存の製造工程に容易にバンディング溶液の塗布及び乾燥工程を追加することができる。
【0026】
以下では、本発明の一実施例によるバンディング溶液に対して説明する。
【0027】
本発明の一実施例によるバンディング溶液は、精製水90~96重量部及びアルギン酸塩3~5重量部を含む。
【0028】
アルギン酸塩は、バンディング溶液の粘度を高め、バンディング溶液の耐酸性を高めて腸溶性硬質カプセル100の耐酸性を補完することができる。アルギン酸塩は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、及びアルギン酸カリウムで構成される群から1以上選択され得る。
【0029】
アルギン酸塩のアルギン酸は、褐藻類から由来する高分子化合物であり、β-1,4結合のD-マンヌロン酸[β-1,4-D-mannuronic acid]とα-1,4結合のL-グルロン酸[α-1,4-L-guluronic acid]の間の直鎖型の共有結合を形成してアルドース(aldose)の一級アルコール基の代わりにカルボキシル基(-COOH、-CO2H)が導入された弱酸性のウロン酸(uronic acid)重合体である。
【0030】
一方、バンディング溶液は、製造及び円滑な塗布のために最適の粘度を備えることが非常に重要である。それと関連して、本発明の発明者らが何度も実験を行った結果、アルギン酸塩の含量が3重量部未満である場合には、要求される耐酸性を備えるのに十分ではないため、バンディング溶液を使って腸溶性硬質カプセルを製造しても、結合部の境界に隙間が発生するか、カプセル上部とカプセル下部が分離される問題を解決することができなかった。また、バンディング溶液が薄いため、硬質カプセルに塗布してもバンディング溶液が流れる現象があって、所望する領域に塗布することが難しいため、製品製造に問題が発生した。反対に、アルギン酸塩の含量が5重量部を超過する場合には、粘度が過度に高くなって、機械装置内でバンディング溶液の移動が円滑に行われないという問題があるか、手作業などで硬質カプセルに塗布しても所望する領域に塗布されず、塗布してもよく乾燥されないため、製品製造に問題が発生することを確認した。
【0031】
本発明の一実施例によるバンディング溶液は、精製水及びアルギン酸塩以外にトウモロコシ澱粉ベースのポリマーをさらに含むことができる。
【0032】
トウモロコシ澱粉ベースのポリマーは、腸溶性硬質カプセル100の耐酸性を補完することができる。トウモロコシ澱粉ベースのポリマーは、商用製品を利用することができ、例えば、エボニック社(Evonik)のEudraguard(登録商標) naturalを用いることができる。
【0033】
トウモロコシ澱粉ベースのポリマーを含む一実施例で、バンディング溶液は、精製水90~96重量部、アルギン酸塩3~5重量部、及びトウモロコシ澱粉ベースのポリマー1~4重量部を含むことができる。
【0034】
本発明の一実施例によるバンディング溶液は、精製水及びアルギン酸塩以外にペクチン(pectin)をさらに含むことができる。ペクチンは、バンディング溶液の粘度を高め、バンディング溶液の耐酸性を高めることができる。
【0035】
ペクチンは、柑橘類(citrus系列)やリンゴ類のような食用植物を抽出して得られる水溶性高分子多糖類である。ペクチンは、エステル化程度(DE、degree of esterification)によってエステル化程度が50%以上であるものをHM(high methoxyl)ペクチン、エステル化程度が50%未満であるものをLM(low methoxyl)ペクチンと言う。また、LMペクチンをアルカリ条件でアンモニアで処理して得られるペクチンをLMアミドペクチンと言う。このとき、本発明の一実施例によるバンディング溶液に用いられるペクチンは、LMペクチン又はLMアミドペクチンであってもよい。
【0036】
ペクチンを含む一実施例で、バンディング溶液は、精製水90~96重量部、アルギン酸塩3~5重量部、及びペクチン1.5~2.5重量部を含むことができる。
【0037】
本発明の一実施例によるバンディング溶液は、精製水及びアルギン酸塩以外にトウモロコシ澱粉ベースのポリマー及びペクチンをさらに含むことができる。
【0038】
トウモロコシ澱粉ベースのポリマー及びペクチンを含む一実施例で、バンディング溶液は、精製水90~96重量部、アルギン酸塩3~5重量部、ペクチン1.5~2.5重量部、及びトウモロコシ澱粉ベースのポリマー1.0~3.0重量部を含むことができる。
【0039】
一方、本発明の一実施例によるバンディング溶液は、着色剤をさらに含むことができる。着色剤は、バンディング溶液の0.05~1.5重量部を含むことができる。着色剤を含む場合、色を有したバンディング溶液を製造することができ、バンディング溶液が塗布される部分を可視化するか、硬質カプセルと同一な色相で製造することができる。着色剤は、緑色3号、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、青色1号、青色2号、黄色4号、黄色5号、及びアルミニウムレーキからなる群より選択された1以上の色素を用いることができ、これらに限定されない。
【0040】
以下、本発明の他の実施例によるバンディング溶液に対して説明する。
【0041】
本発明の他の実施例によるバンディング溶液は、精製水75~85重量部、ペクチン2.5~6重量部、可塑剤0.05~2重量部、及びアルコール10~20重量部を含むことができる。
【0042】
ペクチンは、バンディング溶液の粘度を高め、バンディング溶液の耐酸性を高めて腸溶性硬質カプセル100の耐酸性を補完することができる。
【0043】
一方、バンディング溶液は、製造及び円滑な塗布のための最適の粘度を備えることが非常に重要である。それと関連して、本発明の発明者らが何度も実験を行った結果、ペクチンの含量が2.5重量部未満である場合には、要求される耐酸性を備えるのに十分ではないため、バンディング溶液を用いて腸溶性硬質カプセルを製造しても、結合部の境界に隙間が発生するか、カプセル上部とカプセル下部が分離される問題を解決することができなかった。また、バンディング溶液が薄いため、硬質カプセルに塗布してもバンディング溶液が流れる現象があって、所望する領域に塗布することが難しいため、製品製造に問題が発生した。反対に、ペクチンの含量が6重量部を超過する場合には、粘度が過度に高くなって、機械装置内でバンディング溶液の移動が円滑に行われない問題があるか、手作業などで硬質カプセルに塗布しても所望する領域に塗布されず、塗布してもよく乾燥されないため、製品製造に問題が発生することを確認した。
【0044】
可塑剤は、バンディング溶液の加工性を向上させることができる。可塑剤の例示としては、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ポリエステル、エポキシ化ダイズ油、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル、カオリン、及びクエン酸トリエチルがあり、これらに限定されない。
【0045】
アルコールは、バンディング溶液の成分が溶解されることを助ける役目をして、バンディング溶液の塗布過程以後に速い乾燥を可能にする。アルコール類の例示としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、及びブタノールがあり、これらに限定されない。
【0046】
一方、本発明の他の実施例によるバンディング溶液は、着色剤をさらに含むことができる。着色剤は、バンディング溶液の0.05~1.5重量部を含むことができる。着色剤を含む場合、色を有したバンディング溶液を製造することができ、バンディング溶液が塗布される部分を可視化するか、硬質カプセルと同一な色相で製造することができる。着色剤は、緑色3号、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、青色1号、青色2号、黄色4号、黄色5号、及びアルミニウムレーキからなる群より選択された1以上の色素を用いることができ、これに限定されない。
【0047】
本発明の一実施例による腸溶性硬質カプセルは、耐酸性を持っている硬質カプセルの結合部130を含む領域、より具体的には、結合部の境界133を含む領域にバンディング溶液を塗布する段階及び乾燥する段階を経て製造される。耐酸性を持っている硬質カプセルは、通常の製造方法を通じて製造することができる。
【0048】
以下、実施例と比較例を通じて本開示内容をより詳細に説明する。ただし、このような実施例によって本開示内容が限定されるものではない。
【0049】
<実験例>
乳酸菌が充填された耐酸性を持っている硬質カプセル(SUHEUNG EMBO CAPS-AP、0号)を胃酸(pH1.2)条件で1時間の間、崩壊試験した。
図4は、バンディング溶液を塗布しない硬質カプセルを胃酸条件で崩壊試験した図である。崩壊試験結果、硬質カプセルのカプセル上部とカプセル下部が分離されてカプセル内部の製剤が流出することを確認した。
【0050】
<実施例1、2>
70℃の精製水にアルギン酸ナトリウム(Sodium Alginate)を入れて撹拌した、その後、色素(青色1号)を投入して撹拌した。製造したバンディング溶液を常温で冷ましたとき、層分離なしによく混ざったことを確認した。乳酸菌が充填された耐酸性を持っている硬質カプセル(SUHEUNG EMBO CAPS-AP、0号)に製造したバンディング溶液を手動で塗布した後に乾燥した。製造した腸溶性硬質カプセルを胃酸(pH1.2)条件で2時間の間、崩壊試験した後に観察した結果、硬質カプセルのカプセル上部とカプセル下部が分離されないことを確認し、胃酸条件で崩壊試験した後に精製水で崩壊試験した結果、30分以内に崩壊することを確認した。
【0051】
<比較例1、2>
70℃の精製水にアルギン酸ナトリウム(Sodium Alginate)を入れて撹拌した。その後、色素(青色1号)を投入して撹拌した。製造したバンディング溶液を常温で冷ましたとき、 粘度が低かったり高くなったりするためバンディング溶液の塗布が不可能なので、崩壊試験ができなかった。
【0052】
【0053】
<実施例3、4>
70℃の精製水にアルギン酸ナトリウム(Sodium Alginate)、Eudraguard(登録商標) naturalを入れて撹拌した。その後、色素(青色1号)を投入して撹拌した。製造したバンディング溶液を常温で冷ましたとき、層分離なしによく混ざったことを確認した。乳酸菌が充填された耐酸性を持っている硬質カプセル(SUHEUNG EMBO CAPS-AP、0号)に製造したバンディング溶液を手動で塗布した後に乾燥した。製造した腸溶性硬質カプセルを胃酸(pH1.2)条件で2時間の間、崩壊試験した後に観察した結果、硬質カプセルのカプセル上部とカプセル下部が分離されないことを確認し、胃酸条件で崩壊試験した後に精製水で崩壊試験した結果、30分以内に崩壊することを確認した。
【0054】
<比較例3、4>
70℃の精製水にアルギン酸ナトリウム(Sodium Alginate)、Eudraguard(登録商標) naturalを入れて撹拌した。その後、色素(青色1号)を投入して撹拌した。製造したバンディング溶液を常温で冷ましたとき、粘度が低いか高いためバンディング溶液の塗布が不可能なので、崩壊試験ができなかった。
【0055】
【0056】
<実施例5、6>
70℃の精製水にアルギン酸ナトリウム(Sodium Alginate)、ペクチン(LM Amide Pectin)を入れて撹拌した。その後、色素(青色1号)を投入して撹拌した。製造したバンディング溶液を常温で冷ましたとき、層分離なしによく混ざったことを確認した。乳酸菌が充填された耐酸性を持っている硬質カプセル(SUHEUNG EMBO CAPS-AP、0号)に製造したバンディング溶液を手動で塗布した後に乾燥した。製造した腸溶性硬質カプセルを胃酸(pH1.2)条件で2時間の間、崩壊試験した後に観察した結果、硬質カプセルのカプセル上部とカプセル下部が分離されないことを確認し、胃酸条件で崩壊試験した後に精製水で崩壊試験した結果、30分以内に崩壊することを確認した。
【0057】
<比較例5、6>
70℃の精製水にアルギン酸ナトリウム(Sodium Alginate)、ペクチン(LM Amide Pectin)を入れて撹拌した。その後、色素(青色1号)を投入して撹拌した。製造したバンディング溶液を常温で冷やしたとき、粘度が低いか高いためバンディング溶液の塗布が不可能なので、崩壊試験ができなかった。
【0058】
【0059】
<実施例7、8>
70℃の精製水にアルギン酸ナトリウム(Sodium Alginate)、ペクチン(LM Amide Pectin)、Eudraguard(登録商標) naturalを入れて撹拌した。その後、色素(青色1号)を投入して撹拌した。製造したバンディング溶液を常温で冷ましたとき、層分離なしによく混ざったことを確認した。乳酸菌が充填された耐酸性を持っている硬質カプセル(SUHEUNG EMBO CAPS-AP、0号)に製造したバンディング溶液を手動で塗布した後で乾燥した。製造した腸溶性硬質カプセルを胃酸(pH1.2)条件で2時間の間、崩壊試験した後に観察した結果、硬質カプセルのカプセル上部とカプセル下部が分離されないことを確認し、胃酸条件で崩壊試験した後に精製水で崩壊試験した結果、30分以内に崩壊することを確認した。
【0060】
<比較例7、8>
70℃の精製水にアルギン酸ナトリウム(Sodium Alginate)、ペクチン(LM Amide Pectin)、Eudraguard(登録商標) naturalを入れて撹拌した。その後、色素(青色1号)を投入して撹拌した。製造したバンディング溶液を常温で冷ましたとき、粘度が低かったり高くなったりするためバンディング溶液の塗布が不可能なので崩壊試験ができなかった。
【0061】
【0062】
<実施例9、10>
70℃の精製水にペクチン(LM Amide Pectin)を入れて撹拌した。また、グリセリンを入れて撹拌し、色素(青色1号)を投入した。その後、60℃を維持してエタノールを投入して撹拌した。製造したバンディング溶液を常温で冷ましたとき、層分離なしによく混ざったことを確認した。乳酸菌が充填された耐酸性を持っている硬質カプセル(SUHEUNG EMBO CAPS-AP、0号)に製造したバンディング溶液を手動で塗布した後で乾燥した。製造した腸溶性硬質カプセルを胃酸(pH1.2)条件で2時間の間、崩壊試験した後に観察した結果、硬質カプセルのカプセル上部とカプセル下部が分離されないことを確認し、胃酸条件において崩壊試験した後に精製水で崩壊試験した結果、30分以内に崩壊することを確認した。
【0063】
<比較例9、10>
70℃の精製水にペクチン(LM Amide Pectin)を入れて撹拌した。また、グリセリンを入れて撹拌し、色素(青色1号)を投入した。その後、60℃を維持してエタノールを投入して撹拌した。製造したバンディング溶液を常温で冷ましたとき、粘度が低いか高いためバンディング溶液の塗布が不可能なので、崩壊試験ができなかった。
【0064】
【符号の説明】
【0065】
100 硬質カプセル
110 カプセル上部
120 カプセル下部
130 結合部
131 外部結合部
132 内部結合部
133 結合部の境界