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特開2023-178233精密なインデックスアセンブリーシステムを備える計時器用規制メンバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178233
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】精密なインデックスアセンブリーシステムを備える計時器用規制メンバー
(51)【国際特許分類】
   G04B 18/02 20060101AFI20231207BHJP
   G04B 17/32 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G04B18/02 Z
G04B17/32
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023085922
(22)【出願日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】22177059.7
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22215645.7
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・メルテナ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・クリスタン
(57)【要約】
【課題】 非常に高い精度で規制メンバーのレートを設定することができるインデックスアセンブリーシステムを提供する。
【解決手段】 本発明は、計時器用ムーブメントのための規制メンバー(1)に関し、バランス(23)のような慣性錘と、バランスばね(25)と、バランスばね(25)のレートを調整するためのインデックスアセンブリーシステム(20、60)とを備え、バランスばね(25)は、コイル状細長材(2)と、コイル状細長材(2)と直列に配置された弾性要素(5)が取り付けられた、バランスばねの剛性を調整する調整手段とを備え、インデックスアセンブリーシステム(20)は、1秒/日以下、好ましくは0.5秒/日以下、可能性としては0.1秒/日以下の精度で、規制メンバーのレートを調整するように構成している。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用ムーブメントのための規制メンバー(1、40)であって、
バランス(23)のような慣性錘と、
バランスばね(25)と、
前記バランスばね(25)のレートを調整するためのインデックスアセンブリーシステム(20、60)とを備え、
前記バランスばね(25)は、コイル状細長材(2)と、前記コイル状細長材(2)と直列に配置された弾性要素(5)が取り付けられた、前記バランスばねの剛性を調整する調整手段(30、50)とを備え、
前記インデックスアセンブリーシステム(20、60)は、1秒/日以下、好ましくは0.5秒/日以下、可能性としては0.1秒/日以下の精度で、前記規制メンバー(1、40)のレートを調整するように構成している
ことを特徴とする規制メンバー。
【請求項2】
前記インデックスアセンブリーシステム(20、60)は、前記精度に対応する設定基準(29、49)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の規制メンバー。
【請求項3】
前記インデックスアセンブリーシステム(20、60)は、前記弾性要素(5)に機械的に連結されるスタッドホルダー(31、51)を備え、
前記スタッドホルダー(31、51)は、第1のスタッド(34)と第2のスタッド(35)を担持し、
前記弾性要素(5)は、前記第1のスタッド(34)と前記第2のスタッド(35)の間に配置され、
前記第1のスタッド(34)は、前記第2のスタッド(35)に対して動くことができ、
この前記第1のスタッド(34)の動きによって前記バランスばねの剛性が変わる
ことを特徴とする請求項1に記載の規制メンバー。
【請求項4】
前記スタッドホルダーには、前記第1のスタッド(34)がある第1の部分(32、52)と、前記第2のスタッド(35)がある第2の部分(33、53)があり、
前記第1の部分(32、52)は、前記第2の部分(33、53)に対して動いて前記第1のスタッド(34)を動かすことができる
ことを特徴とする請求項3に記載の規制メンバー。
【請求項5】
前記第1の部分(32、52)と前記第2の部分(33、53)は、重なり合っている
ことを特徴とする請求項4に記載の規制メンバー。
【請求項6】
前記インデックスアセンブリーシステム(20)は、前記第1の部分(32)が回転するときに動くことができるように前記第1の部分(32)と連係する偏心機構(36)を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の規制メンバー。
【請求項7】
前記インデックスアセンブリーシステム(60)は、前記第1の部分(52)に配置されるアーム(63)と、前記アーム(63)と連係するカム(55)とを備え、前記カム(55)の作動によって前記第2の部分(53)に対して前記第1の部分(52)が動く
ことを特徴とする請求項4に記載の規制メンバー。
【請求項8】
前記インデックスアセンブリーシステム(60)は、前記第1の部分(52)と前記第2の部分(53)の間に力を与えて前記第1の部分(52)の前記アーム(63)を前記カム(55)に対して保持するばねを備える
ことを特徴とする請求項7に記載の規制メンバー。
【請求項9】
前記第1の部分(32、52)は、回転するように前記第2の部分(33、53)に対して動くことができる
ことを特徴とする請求項4に記載の規制メンバー。
【請求項10】
前記第1のスタッド(34)は、回転するように動くことができる
ことを特徴とする請求項3に記載の規制メンバー。
【請求項11】
前記調整手段(30、50)は、可変な力又はトルクを前記弾性要素(5)に与えるための予応力手段(6)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の規制メンバー。
【請求項12】
前記予応力手段(6)は、前記第1のスタッド(34)と前記第2のスタッド(35)の間に配置され、
前記第2のスタッド(35)に対する前記第1のスタッド(34)の運動が、前記予応力手段(6)を作動させる
ことを特徴とする請求項11に記載の規制メンバー。
【請求項13】
前記予応力手段(6)は、前記弾性要素(5)に接続されるレバー(14)を備え、
前記第1のスタッドは、前記レバー(14)の自由端(15)に固定される
ことを特徴とする請求項11に記載の規制メンバー。
【請求項14】
予応力手段(6)には、前記弾性要素(5)と並列に準剛体構造があり、
前記レバー(14)は、前記準剛体構造に接続される
ことを特徴とする請求項11に記載の規制メンバー。
【請求項15】
前記弾性要素(5)は、剛体支持体(17)に接続され、
前記第2のスタッド(35)は、前記剛体支持体(17)に固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の規制メンバー。
【請求項16】
請求項1に記載の規制メンバー(1、40)を備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【請求項17】
請求項16に記載の計時器用ムーブメントを備える
ことを特徴とする携行型時計のような計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器の分野に関し、特に、動力エネルギーが規制メンバーによって規制される機械式計時器の分野に関する。特に、本発明は、精密なインデックスアセンブリーシステムを備える規制メンバー、このような規制メンバーを備える計時器用ムーブメント、及びこのような計時器用ムーブメントを備える計時器に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの機械式の携行型時計(例、腕時計、懐中時計)において、針の回転に必要なエネルギー(例えば、分針と時針)がバレルに蓄えられ、そして、ばね仕掛けバランスシステムによって伝えられる。このばね仕掛けバランスシステムは、バランスばねと呼ばれる渦巻き状に巻かれた細長材の形態であるばねと関連づけられた、バランスと呼ばれるフライホイールを備える。
【0003】
バランスばねは、その内側端において、回転するようにバランスに固定されるシャフトに固定される。バランスばねは、その外側端において、スタッドホルダーに取り付けられたスタッドに固定される。このスタッドホルダー自体は、固定されたブリッジ(又はコック)に固定される。
【0004】
バランスは、パレットレバーを備えるエスケープ機構によって、回転が維持され、回転数がカウントされる。このパレットレバーには、振幅が小さい振動運動を行うように動きエスケープ車の歯に作用する2つのパレット石がある。このように作用されて衝突されると、エスケープ車に、ステップごとの回転運動が与えられ、その振動数は、パレットレバーの振動数によって決まる。このパレットレバーの振動数自体は、ばね仕掛けバランスの振動数に設定される。
【0005】
伝統的なエスケープ機構において、振動数は、約4Hz、すなわち、約28800振動/時(vph)である。優れた腕時計技師の目標の1つは、バランスの振動の等時性と規則性(すなわち、レートが一定であること)を確実にすることである。
【0006】
バランスのレートは、バランスばねの有効長を調整することによって公知の方法で規制される。このバランスばねの有効長は、バランスばねの外側端の近傍に位置し、典型的にはインデックスアセンブリーシステムに取り付けられたキーによって担持される一対の当接体によって定められる、バランスばねの内側端とカウント点の間の曲線の長さとして定められる。
【0007】
動作中に、このインデックスアセンブリーシステムは、バランスばねの軸のまわりを回転するように固定される。しかし、その角位置は、ねじ回しを用いてインデックスアセンブリーシステムに対するカムのように作用する偏心機構を回転させることなどによって、手動介入によって微調整することができる。
【0008】
ブリッジ、インデックスアセンブリーシステム、キー、スタッドホルダー、スタッド、シャフト、ばね、及びバランスを含む組み合わせは、一般的に「規制メンバー」と呼ばれる。規制メンバーの例が、国際特許出願WO2016/192957及び欧州特許EP2876504によって提案されている。これらはいずれも携行型時計メーカーのETAによって出願されている。
【0009】
コイルの一端が固定されたスタッドホルダーを備えるインデックスアセンブリーシステムであって、そのインデックスアセンブリーシステムのキーがバックラッシュを発生させてコイルが2つの当接体の間を動くことができるようにするものがある。しかし、クロノメーター的性質、特に、振幅依存性の非等時性は、インデックスキーの遊びの影響を非常に受けやすいが、この遊びを精密に制御することは難しい。
【0010】
一部のデバイスにおいて、特にバランスばねの動作中に、バランスばねを収縮するように当接体を調整して、遊びをなくすことができる。このような場合、まず、インデックスキーを動かしてレートを調整し、その後に、バランスばねをキーに押しつけて収縮する。しかし、バランスばねをインデックスキーに押しつけて収縮させることによってバランスばねに歪みを発生させて、特に巻きが中心から外れることによって、クロノメーター的な欠陥を発生させてしまうことがある。また、遊びをなくすことによってもレートが変わり、バランスばねが収縮した後には、レートの微調整を完了させるためにインデックスキーをバランスばねに沿って動かすことができなくなる。
【0011】
他のバランスばねには、一体型規制デバイスが含まれる。このようなバランスばねにおいて、バランスばねの有効長を変えることによってレートが規制されるのではなく、バランスばねと直列に配置される弾性要素に力又はトルクを与えることによってレートが規制される。このようにして、弾性要素の剛性、すなわち、バランスばね全体の剛性、を変えることができる。バランスばねの剛性を調整することによって、規制メンバーのレートを規制することができる。このような弾性要素を備えるバランスばねは、例えば、欧州特許出願EP21202213.1に記載されている。
【0012】
しかし、このような場合、バランスばね規制デバイスとともに用いることができないので、このような典型的なインデックスアセンブリーシステムを用いることができない。また、レートが非常に細かく規制されるので、バランスばねと、そのインデックスアセンブリーとの相互作用領域との間に遊びがないことが必要となる。なぜなら、逆に、バランスばねが衝撃を受けた後にまったく同じように自身を再配置しなければ、衝撃を受けた場合にレートを変えてしまうリスクがあるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、この種の規制デバイスとともに用いることができるインデックスアセンブリーシステムを提供することによって、上述の課題の一部又は全部を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このために、本発明は、計時器用ムーブメントのための規制メンバーに関し、環状のバランスのような慣性錘と、バランスばねと、前記バランスばねのレートを調整するためのインデックスアセンブリーシステムとを備え、前記バランスばねは、コイル状細長材と、前記コイル状細長材と直列に配置された弾性要素が設けられた、前記バランスばねの剛性を調整する調整手段とを備える。
【0015】
本発明は、前記インデックスアセンブリーシステムが、1秒/日以下、好ましくは0.5秒/日以下、可能性としては0.1秒/日以下の精度で、前記規制メンバーのレートを調整するように構成している、という点で画期的である。
【0016】
本発明のおかげで、今までに知られていないような非常に高い精度で規制メンバーのレートを設定することができるインデックスアセンブリーシステムを得ることができる。
【0017】
実際に、このインデックスアセンブリーシステムを作動させることによって、弾性要素の剛性を、この弾性要素に与えられる力又はトルクを変えることによって、変える。
【0018】
また、このようなインデックスアセンブリーシステムは、使用することが容易であり、計時器用ムーブメントに組み付けるために大きな変更を必要としない。なぜなら、このようなインデックスアセンブリーシステムの組み付けは、伝統的なバランスばねのために典型的に用いられるインデックスアセンブリーシステムの組み付けとあまり変わらないからである。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、前記インデックスアセンブリーシステムは、前記精度に対応する設定基準を備える。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、前記インデックスアセンブリーシステムは、前記弾性要素に機械的に連結されるスタッドホルダーを備え、前記スタッドホルダーは、第1のスタッドと第2のスタッドを担持し、前記弾性要素は、前記第1のスタッドと前記第2のスタッドの間に配置され、前記第1のスタッドは、前記第2のスタッド35に対して動くことができ、この前記第1のスタッド34の動きによって前記バランスばねの剛性が変わる。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、前記スタッドホルダーには、前記第1のスタッドがある第1の部分と、前記第2のスタッドがある第2の部分があり、前記第1の部分は、前記第2の部分に対して動いて前記第1のスタッドを動かすことができる。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の部分と前記第2の部分は、重なり合っている。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、前記インデックスアセンブリーシステムは、前記第1の部分が回転するときに動くことができるように前記第1の部分と連係する偏心機構を備える。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、前記インデックスアセンブリーシステムは、前記第1の部分に配置されるアームと、前記アームと連係するカムとを備え、前記カムの作動によって前記第2の部分に対して前記第1の部分が動く。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、前記インデックスアセンブリーシステムは、前記第1の部分と前記第2の部分の間に力を与えて前記第1の部分の前記アームを前記カムに対して保持するばねを備える。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の部分は、回転するように前記第2の部分に対して動くことができる。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のスタッドは、回転するように動くことができる。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、前記弾性要素は、前記第1のスタッドと前記第2のスタッドの間に配置され、前記第1のスタッド34の動きによって前記弾性要素の剛性が変わる。
【0029】
本発明の特定の実施形態において、前記調整手段は、可変な力又はトルクを前記弾性要素に与えるための予応力手段を備える。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記第1のスタッドと前記第2のスタッドの間に配置され、前記第2のスタッドに対する前記第1のスタッドの運動が、前記予応力手段を作動させる。
【0031】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記弾性要素に接続されるレバーを備え、前記第1のスタッドは、前記レバーの自由端に固定される。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、前記弾性要素は、剛体支持体に接続され、前記第2のスタッドは、前記剛体支持体に固定される。
【0033】
本発明の特定の実施形態において、予応力手段には、前記弾性要素と並列に配置される準剛体構造があり、前記レバーは、前記準剛体構造に接続される。
【0034】
本発明は、さらに、前記のような規制メンバーを備える計時器用ムーブメントに関する。
【0035】
本発明は、さらに、前記のような計時器用ムーブメントを備える、携行型時計のような計時器に関する。
【0036】
添付の図面を参照しながら例としてのみ与えられるいくつかの実施形態についての説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴が明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】計時器用ムーブメント内に配置されている本発明の第1の実施形態に係る規制メンバーの概略斜視図である。
図2】バランスブリッジとインデックスアセンブリーシステムを描いていない、第1の実施形態に係る図1の規制メンバーの一部の概略斜視図である。
図3】規制メンバーのバランスばねの概略上面図である。
図4】計時器用ムーブメント内に配置されている本発明の第2の実施形態に係る規制メンバーの一部の概略斜視図である。
図5】第2の実施形態に係る図4の規制メンバーの概略斜視図である。
図6】第2の実施形態の1つの変異形態に係るスタッドホルダーの概略斜視図である。
図7図6の変異形態に係るスタッドホルダーの第2の部分の概略斜視図である。
図8】バランスブリッジに取り付けられたスタッドホルダーの第2の部分の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1及び2は、計時器用ムーブメント10内に配置された規制メンバー1の第1の実施形態の概略図を示している。計時器用ムーブメント10には、プレート21と、慣性錘と、この慣性錘を振動させるように構成している、慣性錘のための弾性戻し要素と、バランスコック22がある。
【0039】
規制メンバー1は、さらに、インデックスアセンブリーシステム20と、慣性錘としてはたらく環状のバランス23と、バランススタッフ24と、弾性戻し要素としてはたらくバランスばね25とを備える。
【0040】
プレート21には、規制メンバー1を受けるための凹部26があり、この凹部26内にて、下から順に、バランス23、バランスばね25、バランスブリッジ22及びインデックスアセンブリーシステム20が重なり合っている。
【0041】
バランススタッフ24は、凹部26内にてセンタリングされており、バランス23、バランスばね25及びバランスコック22の中心を通り抜ける。バランススタッフ24は、このバランススタッフ24の2つの端に配置される2つの耐衝撃性ベアリング28によって保持される。第1のベアリングは、凹部26の底部に配置され、第2のベアリング28は、凹部26の上に配置されて、バランスコック22によって保持される。このバランスコック22は、凹部26の中心軸を通って凹部26の上部を通り抜ける。バランスブリッジ22には、ここでは貫通穴である穴があり、この穴内にて第2のベアリング28が保持される。インデックスアセンブリーシステム20は、バランスブリッジ22に取り付けられ、この実施形態において、凹部26の中心軸に沿って配置される。
【0042】
図2及び3に示しているように、バランスばね25は、好ましくは、実質的に一平面内にて延在している。バランスばね25には、自らのまわりにいくつかの巻き数の分コイル状に巻かれたフレキシブルな細長材2があり、細長材2は所定の剛性を有する。細長材2の内端9は、一般的にコレットと呼ばれる支持体3と一体的に形成される、又は支持体3と一体的に組み付けられる。支持体3は、実質的に三角形の形状であり、バランススタッフ24のまわりにねじ込まれる。
【0043】
バランスばね25は、さらに、その剛性を調整する手段を備える。例えば、この調整手段は、特に、規制メンバーが計時器用ムーブメントのプレートに取り付けられているときに、ユーザーが作動させることができる。
【0044】
調整手段は、細長材2と直列に配置されるフレキシブル要素5を備え、細長材2の端4、9の一方に固定される。このフレキシブル要素5は、前記細長材2の端4、9の一方を剛体支持体17に接続する。フレキシブル要素5は、細長材2の外端4と一体的となっている。弾性要素5は、細長材2とは異なる要素である。
【0045】
フレキシブル要素5は、細長材2の剛性に追加の剛性を与える。フレキシブル要素5は、好ましくは、細長材2の剛性よりも高い剛性を有する。フレキシブル要素5は、この場合、細長材2の続きに配置される。好ましくは、調整手段と細長材2は、一体的に作られ、又はさらには、同じ材料、例えばケイ素、によって作ることができる。
【0046】
バランスばね25のフレキシブル要素5には、非交差の曲げピボットがある。このピボットには、2つのフレキシブルな非交差のブレード11、12と、剛体部分18がある。これらのフレキシブルブレード11、12は、一方では、剛体支持体17に横方向にて、他方では、互いの方へと動くことによって剛体部分18に、結合される。したがって、好ましくは、フレキシブルブレード11、12は、剛体部分18から剛体支持体17まで、互いから離れる。細長材2の外端4は、剛体部分18に接合される。剛体支持体17は、プレート21に対して動くことができない。剛体支持体17は、L字形の形状であり、L字の第1の分岐46は、フレキシブルブレード11、12との接続としてはたらき、L字の第2の分岐47は、非交差のピボットと反対側の方を向いており、この非交差のピボットを計時器用ムーブメント10に組み付けることを可能にする。
【0047】
バランスばね25を調整する手段は、さらに、可変な力又はトルクをフレキシブル要素5に与えるための予応力手段6を含む。したがって、バランスばねの剛性を調整することができる。トルク又は力は、予応力手段6によって連続的に調整することができる。すなわち、トルク又は力は、点値に制限されない。したがって、5の剛性を高い精度で調整することが可能となる。
【0048】
予応力手段6は、非交差のピボットの続きにて剛体部分18の反対側に配置される二次フレキシブルブレード19を備える。二次フレキシブルブレード19は、外端4において細長材2に対して接線方向に配置される。
【0049】
二次フレキシブルブレード19は、他端において、細長材2のまわりに延在する曲がったレバー14に接続される。レバー14は、二次フレキシブルブレード19の他に、剛体支持体17に接続される準剛体構造27に接続される。準剛体構造27は、レバー14が力又はトルクによって作動するときに部分的に変形する。
【0050】
この力又はトルクは、レバー14の自由端15に与えられる。したがって、予応力手段6のレバー14は、力又はトルクを二次フレキシブルブレード19と準剛体構造27を通してフレキシブル要素5に伝達して、バランスばね25の剛性を変える。
【0051】
可変な力又はトルクをバランスばね25に与えることができるようにするために、規制メンバーは、本発明に係る特定のインデックスアセンブリーシステム20を備える。
【0052】
図1及び2の第1の実施形態において、インデックスアセンブリーシステム20は、第1の部分32と第2の部分33である2つの部分においてスタッドホルダー31を備える。スタッドホルダー31の第1の部分32は、第1のスタッド34をつるし、スタッドホルダー31の第2の部分33には第2のスタッド35がある。スタッドホルダー31は、弾性要素5に機械的にリンクしているが、細長材2をブロックしない。
【0053】
スタッドホルダー31の第1の部分32は、バランスブリッジ22と接触する、スタッドホルダー31の第2の部分33の上に部分的に配置される。インデックスアセンブリーシステム20には、2つの偏心機構36、37がある。第1の偏心機構36は、スタッドホルダー31の第2の部分33に取り付けられ、スタッドホルダー31の2つの部分の間の角度設定を可能にし、これによって、レートを設定することができる。第2の偏心機構37は、バランスブリッジ22に取り付けられ、プレート21に対するスタッドホルダー31の角位置を設定することを可能にし、これによって、基準を設定することができる。スタッドホルダー31の2つの部分は、ダンパー28によって保持されポジショニングされる。
【0054】
規制メンバー1は、さらに、ムーブメントのプレート21に対してスタッドホルダー31の第2の部分33を特定の角位置においてブロックするように構成しているロック手段を備える。ロック手段は、第2の偏心機構37を備える。
【0055】
したがって、インデックスアセンブリーシステム20を取り付けるときに、可動であるスタッドホルダー31の第2の部分33は、まず、ポジショニングされ、そして、第2の偏心機構37のおかげでブロックされて、プレート21に対して動くことができないままとなる。その後で、スタッドホルダー31の第1の部分32がポジショニングされ、そして、第1の偏心機構36のおかげで角度的にブロックされて、第2の部分33に対して動くことができないままとなる。この結果、第2の偏心機構37を作動させることによって、スタッドホルダー31全体が、バランスの軸を中心に回転して、基準を設定する。第1の部分32のブロックを解除して動かすために、第1の偏心機構36を作動させる。この場合、スタッドホルダー31の第1の部分32のみがバランスの軸を中心に回転し、これによって、第1のスタッド34を動かし、弾性要素5に作用してレートを変えることが可能になる。
【0056】
したがって、スタッドホルダー31の第1の部分32のみが、取り付け後にバランスブリッジ22に対して動くことができ、これによって、第1のスタッド34を動かし、弾性要素5に作用することができるようにする。
【0057】
2つの部分32、33は、第2のベアリング28を囲む。このために、各部分32、33には、第2のベアリング28のまわりに配置される中央リング38、39があり、これらの2つの中央リング38、39どうしは重なり合う。
【0058】
第1の部分32には、中央リング38から半径方向に延在している2つの突起41、42があり、その第1の突起41は、第1のねじ74を用いて凹部26内にて第1のスタッド34を下方に保持し、第2の突起42は、第1の偏心機構36と連係する円弧状である。
【0059】
第2の部分33は、中央リング39から延在している3つの突起43、44、45を備える。第1の突起43は、第2のねじ75と、第1の偏心機構36のまわりに延在している第2の突起44と、第2の偏心機構37と連係する円弧状である第3の突起45とを用いて、凹部26内において第2のスタッド35を下方に保持する。
【0060】
基準構成において、第1のスタッド34と第2のスタッド35は、例えば、バランス24のシャフトに対して実質的に対称に配置される。
【0061】
第1のスタッド34は、レバー14の自由端15と連係し、第2のスタッド35は、剛体支持体17の第2の分岐47と連係する。したがって、予応力手段6と弾性要素5は、インデックスアセンブリーシステム20によって支持され、このインデックスアセンブリーシステム20からつられる。
【0062】
2つのスタッド34、35は、予応力手段6と弾性要素5の両方の側に配置される。また、2つのスタッド34、35は、レバー14と剛体支持体17に剛接続される。すなわち、第1のスタッド34と第2のスタッド35はそれぞれ、自由端15によってレバー14に、第2の分岐47によって剛体支持体17に、固定される。これらのスタッドとバランスばね25は、例えば、ボンディング、ろう付け、溶接、金属性ガラス変形、又は機械的固定によって組み付けられる。
【0063】
第1のスタッド34は、第2のスタッド35に対して動くことができる。このために、第1の部分32は、第2の部分33に対して動くことができる。第1の部分32は、第2のベアリング28のまわりを回転するように動くことができる。したがって、第1のスタッド34は、第1の部分32とともに動き、第1のスタッド34は、第2のベアリング28のまわりを回転するように動くことができる。例えば、第1のスタッド34は、20°や10°の角度範囲にわたって動くことができる。
【0064】
第2のスタッド35に対する第1のスタッド34の運動は、弾性要素5の剛性を変える。なぜなら、この運動は、予応力手段6のレバー14に大きい力又はトルクを与えたり小さい力又はトルクを与えたりして、弾性要素5の剛性が変わって、バランスばね25全体の剛性が変わるようになるためである。したがって、インデックスアセンブリーシステム20は、規制メンバー1のレートを規制するために用いることができる。
【0065】
このために、インデックスアセンブリーシステム20は、第1の部分32の円弧状の第2の突起42、及び第1の偏心機構36のおかげで、第2のスタッド35に対する第1のスタッド34の位置を変えることを可能にする。この円弧は、第1の偏心機構36の頭部よりもわずかに小さい直径を有し、これによって、第1の偏心機構36の運動は、第2のベアリング28のまわりの環状の第2の部分33に対する、第2の突起42の運動を発生させ、したがって、第1の部分32の運動を発生させる。第2の部分33は、第1の部分32が作動されているときに、その位置に留まる。したがって、第1の偏心機構36を回転させることによって、円弧状の第2の突起42は、第2のベアリング28のまわりを環状に動く。第1の部分32は、第2の部分33に対して動き、これによって、第1のスタッド34は、第2のスタッド35に対して動いて、バランスばね25の予応力手段6に与えられる力又はトルクを変える。偏心機構36、37と円弧42、45の間にバックラッシュがないことによって、ヒステリシスがない設定が可能になる。
【0066】
第1の偏心機構36のまわりにて円弧状の第2の突起42上に、設定基準29が配置される。したがって、インデックスアセンブリーシステム20を設定するために、第1の偏心機構36は、選択される基準に従う方向を向く。
【0067】
インデックスアセンブリーシステム20は、1秒/日以下、好ましくは0.5秒/日以下、可能性としては0.1秒/日以下の精度で、規制メンバー1のレートを調整するように構成している。したがって、インデックスアセンブリーシステム20は、作動することによってこのような精度を可能にするように較正される。前記のような規制メンバー1の構成のおかげで、このような精度を達成することができる。
【0068】
好ましくは、設定基準29は、精度に対応する。すなわち、2つの連続する基準の間の差は、1秒、0.5秒、可能性としては0.1秒/日に対応する。
【0069】
図4及び5の規制メンバー40の第2の実施形態において、規制メンバー40の特徴は、インデックスアセンブリーシステム60の設定を除いて、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0070】
インデックスアセンブリーシステム60の第1の部分52には、単一平面内において第1の部分52から半径方向外側に延在するアーム63がある。第2の部分53には、円弧状の突起がない。
【0071】
インデックスアセンブリーシステム60は、第1の偏心機構の代わりに、回転可能なカム55を備える。カム55は、第1の部分52のアーム63と連係して、このアーム63を第2のベアリング28を中心に回転させる。好ましくは、アーム63の端56は、カム55の回転がカム55の角位置に応じてアーム63に運動を与えるように、カム55と常に接触する。したがって、インデックスアセンブリーシステム60の第1の部分52は、第1の実施形態の形態と同様に動く。このようなカム55が取り付けられたインデックスアセンブリーシステム60のおかげで、バランスばね25の剛性を線形的に変えることができる。
【0072】
第1の部分52のアーム63とカム55との接触を保持するために、インデックスアセンブリーシステム60は、第1の部分52に付勢力を与えるばね57を備える。ばね57は、ロック用ねじ77を包囲するように実質的にU字形であり、このU字の第1の端58は、インデックスアセンブリーシステム20の第2の部分53とともに組み付けられ、U字の第2の端59は、第1の部分52にある保持フック61によって保持される。ばね57は、第2のベアリング28を中心としてカム55に対称にスタッドホルダー31の第2の部分上に配置される。
【0073】
したがって、ばね57は、インデックスアセンブリーシステム60の2つの部分52、53に戻し力を与え、この戻し力は、第1の部分52のアーム63と、カム55との接触を常に保持するように設計されている。カム55が作用するときに、ばね57によって付与される戻し力を受けつつ、第1の部分52が回転して、第2のスタッド35に対して第1のスタッド34を動かし、これによって、特にカム55の周壁64がアーム63から離れるときに、第1の部分52のアーム63がカム55と接触することを可能にする。
【0074】
本発明によると、インデックスアセンブリーシステム60は、1秒/日以下、好ましくは0.5秒/日以下、可能性としては0.1秒/日以下の精度で、規制メンバー40のレートを調整するように構成している。前記のような規制メンバー40の構成のおかげで、このような精度を達成することができる。
【0075】
規制メンバー40は、さらに、ムーブメントのバランス22に対してスタッドホルダー51の第2の部分53を1つの位置においてブロックするように構成しているロック手段を備える。ロック手段は、ロック用プレート62と、ロック用プレート62を第2の部分53に組み付けてロック用プレート62の位置をロックするためのロック用ねじ77とを備える。
【0076】
好ましくは、ロック用プレート62は、一方の側でバランスブリッジ72と連係し他方の側で第2のベアリング28と連係する形状を有する。ロック用ねじ77は、ロック用プレート62を通り抜けて、ロック用プレート62の下にあるバランスブリッジ72にねじ込まれる。したがって、ロック用ねじ77を締めることによって、ロック用プレート62は、スタッドホルダー51の第2の部分53上に載置される、ばね57のU字の第1の端58のシュー78において、スタッドホルダー51の第2の部分53上に少なくとも部分的に力を与える。
【0077】
したがって、インデックスアセンブリーシステム20を取り付けるときに、可動であるスタッドホルダー51の第2の部分53は、まず、ポジショニングされ、そして、ロック用プレート62とロック用ねじ77のおかげでブロックされて、バランスブリッジ72に対して動くことができないままになる。取り付けの後に、第1の部分52のみがバランスブリッジ72に対して動くことができるように維持されて、第1のスタッド34を動かし弾性要素5に作用することができるようにする。
【0078】
また、カム55上に設定基準49も配置される。したがって、インデックスアセンブリーシステム60を設定するために、カム55は、カム55上にある回転可能な設定ボタン(図4及び5には示していない)などを用いて動く。したがって、インデックスアセンブリーシステム60を設定するために、カム55は、選択した基準に従って向きを合わされる。
【0079】
好ましくは、設定基準49は、精度に対応する。すなわち、2つの連続する基準の間の差によって、1秒/日、0.5秒/日、可能性としては0.1秒/日の分、レートを変えることが可能になる。図6において、設定基準49の精度は、0.1秒/日である。
【0080】
図6及び7において、スタッドホルダー51は、第2の実施形態の変異形態であり、第2の部分53には、一方の側にて曲がったアーム70があり、他方の側にて一対のピン71があり、中央に実質的に円形である貫通オリフィス68がある。曲がったアーム70は、ロック用プレート62と連係するように意図されている。一対のピン71は、カムの軸を保持し、ムーブメントのバランスブリッジ72上に載置されるように意図されている。
【0081】
貫通オリフィス68のおかげで、バランスの緩衝ベアリング28を挿入することができ、そのまわりにスタッドホルダー51が取り付けられ保持される。貫通オリフィス68は、溝69によって開いており、オリフィス68の境界を形成する区画73に柔軟性を与える。したがって、ベアリング28を、オリフィス68内に取り付け、保持することができる。この柔軟性のおかげで、区画73は、離れて、オリフィス68内にベアリング28を挿入して、そのベアリング28を保持するために十分な力を与えることができる。オリフィス68と緩衝ベアリング28の形状は、互いに連係するように構成しており、ベアリング28の形状は、好ましくは、オリフィス68の形状よりもわずかに大きい。
【0082】
また、オリフィス68の形状のおかげで、スタッドホルダー51を回転ガイドすることができる。実際に、フレキシブルな区画73のおかげで、バランスの軸(図示せず)の同心性を保持しつつ、緩衝ベアリング28のまわりにスタッドホルダーを回転ガイドすることができる。
【0083】
図6において、周部に本発明に係る設定基準66がある回転式の設定ボタン65がカムに取り付けられる。
【0084】
図8は、ロック手段がどのようにバランスブリッジ72上のスタッドホルダー51の第2の部分53をブロックするのかを示している。ロック用プレート62は、曲がったアーム70に支持される。ロック用ねじ77は、ロック用プレート62を通り抜けて、曲がったアーム70を通過し、その下に位置するバランスブリッジ72に到達する。したがって、スタッドホルダー51の第2の部分53は、ロック用プレート62とバランスブリッジ72の間に挟まれる。また、ロック用プレート62は、ばね57を保持する。
【0085】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明した規制メンバーの実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱せずに代替形態を考えることができる。
【符号の説明】
【0086】
1、40 規制メンバー
2 コイル状細長材
5 弾性要素
6 予応力手段
14 レバー
15 自由端
17 剛体支持体
20、60 インデックスアセンブリーシステム
23 バランス
25 バランスばね
29、49 設定基準
30、50 調整手段
31、51 スタッドホルダー
32、52 第1の部分
33、53 第2の部分
34 第1のスタッド
35 第2のスタッド
36 偏心機構
55 カム
63 アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】