(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017824
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20230131BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20230131BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230131BHJP
G01S 7/53 20060101ALI20230131BHJP
G01C 3/00 20060101ALI20230131BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/931
G08G1/16 C
G01S7/53
G01C3/00 120
G01C3/06 140
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171499
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2021078388の分割
【原出願日】2018-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2017099151
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】後藤田 明
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】永田 宏
(57)【要約】
【課題】車両に搭載されたセンサの状態を把握する技術を提供する。
【解決手段】制御装置100は、第1車両の周囲の対象物を検出するための第1センサ300と通信可能であり、当該第1車両500に搭載される。制御装置100は第1取得部、第2取得部、検知部および判断部を有する。第1取得部は、第1車両500に搭載された第1センサ300から、当該第1車両500の周囲の対象物を検出した結果であるセンシング結果を取得する。第2取得部は、第1センサ300の性能測定用の対象物である特定対象物の位置情報を取得する。検知部は、第1車両500の位置情報および特定対象物の位置情報を用いて、第1車両500から基準距離内に存在する特定対象物を検出する。判断部は、第1センサ300による特定対象物のセンシング結果に基づいて、第1センサ300の性能を判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車両に搭載された第1センサから、前記第1車両の周囲の対象物を検出した結果であるセンシング結果を取得する第1取得部と、
前記第1センサの性能測定用の対象物である特定対象物の位置情報を取得する第2取得部と、
前記第1車両の位置情報および前記特定対象物の位置情報を用いて、前記第1車両から基準距離内に存在する前記特定対象物を検知する検知部と、
前記第1センサによる前記特定対象物のセンシング結果を用いて、前記第1センサの性能を判断する判断部と、
を有する制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、走査システム、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される各種センサからの出力を用いて、当該車両の挙動を自動で制御する、所謂自動運転技術の研究および開発が進められている。
【0003】
自動運転技術に関する技術の一例が、下記特許文献1に開示されている。下記特許文献1には、自律運転の制御に用いられるセンサの検出結果に基づいて危険度を判定し、その判定した危険度に基づいて、運転者に自律運転を解除させるための情報を出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサのセンシング性能は、経年や何らかの不具合によって劣化し得る。上述の特許文献1の技術は、センサによるセンシングが正確に行われていることを前提とするものであって、このような問題に対する解決手段を提供していない。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、車両に搭載されたセンサの状態を把握する技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、
第1車両に搭載された第1センサから、前記第1車両の周囲の対象物を検出した結果であるセンシング結果を取得する第1取得部と、
前記第1センサの性能測定用の対象物である特定対象物の位置情報を取得する第2取得部と、
前記第1車両の位置情報および前記特定対象物の位置情報を用いて、前記第1車両から基準距離内に存在する前記特定対象物を検知する検知部と、
前記第1センサによる前記特定対象物のセンシング結果を用いて、前記第1センサの性能を判断する判断部と、
を有する制御装置である。
【0008】
第2の発明は、
前記制御装置と、
前記第1車両の周囲に位置する対象物を検出するセンサと、
を有する走査システムである。
【0009】
第3の発明は、
コンピュータによって実行される制御方法であって、
第1車両に搭載された第1センサから、前記第1車両の周囲の対象物を検出した結果であるセンシング結果を取得する工程と、
前記第1センサの性能測定用の対象物である特定対象物の位置情報を取得する工程と、
前記第1車両の位置情報及び前記特定対象物の位置情報を用いて、前記第1車両から基準距離内に存在する前記特定対象物を検知する工程と、
前記第1センサによる前記特定対象物のセンシング結果を用いて、前記第1センサの性能を判断する工程と、
を含む制御方法である。
【0010】
第4の発明は、
コンピュータを、
第1車両に搭載された第1センサから、前記第1車両の周囲の対象物を検出した結果であるセンシング結果を取得する手段、
前記第1センサの性能測定用の対象物である特定対象物の位置情報を取得する手段、
前記第1車両の位置情報及び前記特定対象物の位置情報を用いて、前記第1車両から基準距離内に存在する前記特定対象物を検知する手段、および、
前記第1センサによる前記特定対象物のセンシング結果を用いて、前記第1センサの性能を判断する手段、
として機能させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0012】
【
図1】本発明に係る制御装置の概要を説明するための図である。
【
図2】第1実施形態における制御装置の機能構成を概念的に示すブロック図である。
【
図3】制御装置のハードウエア構成を例示する図である。
【
図4】第1実施形態における制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】基準性能データを記憶する記憶部の一例を示す図である。
【
図6】傾きと補正データとの対応関係を定義するテーブルの一例を示す図である。
【
図7】第2実施形態における制御装置の機能構成を概念的に示すブロック図である。
【
図8】第3実施形態の制御装置の機能構成を概念的に示すブロック図である。
【
図9】各車両のセンシング結果を履歴として記憶するテーブルの一例を示す図である。
【
図10】第3実施形態における制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図11】履歴データ(基準性能データ)を生成する処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図12】履歴データ(基準性能データ)の一例を示す図である。
【
図13】履歴データを用いて第1センサの性能を判断する処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、特に説明する場合を除き、ブロック図における各ブロックは、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位の構成を表している。
【0014】
[概要説明]
図1は、本発明に係る制御装置100の概要を説明するための図である。本発明に係る制御装置100は、車両500(以下、「第1車両500」とも表記)に搭載される装置であってもよいし、車外の通信網を介して第1車両500と通信可能に接続される外部の装置であってもよい。また、以下で説明する制御装置100の各機能のうち、一部の機能が第1車両500に搭載される装置で実現され、残りの機能が外部の装置で実現されてもよい。
図1では、制御装置100は第1車両500に搭載される例が示されている。また、制御装置100は、第1車両500に搭載されるセンサ300(図示せず、以下、「第1センサ300」とも表記)と通信可能に接続される。第1センサ300は、第1車両500の周囲に位置する対象物を検出するための各種センサである。第1センサ300による対象物のセンシング結果は、後述のセンサの性能測定以外にも、周囲の障害物を検知するための既知のアルゴリズムや、第1車両500の自己位置および姿勢を推定するための既知のアルゴリズムのインプットとしても利用され得る。ここで、第1センサ300のセンシング性能は、経年劣化やセンサの内部温度といったセンサの状態あるいは外部環境(雨、霧、砂塵、雪、西日など)によって低下し得る。また、第1センサ300のセンシング性能の低下は、センシング結果の特性(例えば、SN比や信号強度など)の変動といった形で表われる。本発明に係る制御装置100は、第1センサ300の性能を測定するために利用される対象物(以下、「特定対象物」とも表記)のセンシング結果の特性に基づいて、第1センサ300の性能を判断する機能を少なくとも有する。
【0015】
以下の各実施形態において、制御装置100の具体的な構成や動作について述べる。
【0016】
[第1実施形態]
〔機能構成〕
図2は、第1実施形態における制御装置100の機能構成を概念的に示すブロック図である。
図2に示されるように、本実施形態の制御装置100は、第1取得部110、第2取得部120、検知部130、および判断部140を備える。
【0017】
第1取得部110は、第1車両500の周囲の対象物を検出するための第1センサ300から対象物のセンシング結果を取得する。また、第2取得部120は、特定対象物の位置情報を取得する。特定対象物は、上述したように、第1センサ300の性能測定に利用される対象物である。特定対象物は、各車両に搭載されるセンサの性能を判断するために設けられた専用の物体であってもよいし、一般的な物体あってもよい。後者の場合、特定対象物は、例えば、道路に対して設置された設置物(例:信号機、デリネーター、ガードレール、道路標識、方面看板など)や道路上の標示(規制標示または指示標示)などである。なお、設置物や道路上の標示は各車両の位置や姿勢の推定処理にも利用されることもある。検知部130は、第1車両500の位置情報及び特定対象物の位置情報を用いて、第1車両500から基準距離内に存在する特定対象物を検知する。判断部140は、第1センサ300による特定対象物のセンシング結果を用いて、第1センサ300の性能を判断する。
【0018】
〔制御装置100のハードウエア構成〕
制御装置100の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、制御装置100の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0019】
図3は、制御装置100のハードウエア構成を例示する図である。計算機200は、制御装置100を実現する計算機である。制御装置100が車載用の装置である場合、計算機200は、例えば、第1車両500に搭載されるECU(Electronic Control Unit)などである。制御装置100が、車外に位置するサーバ装置などである場合、計算機200は一般的なコンピュータとして構築される。計算機200は、バス202、プロセッサ204、メモリ206、ストレージデバイス208、入出力インタフェース210、及びネットワークインタフェース212を有する。バス202は、プロセッサ204、メモリ206、ストレージデバイス208、入出力インタフェース210、及びネットワークインタフェース212が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ204などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ204は、マイクロプロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)などを用いて実現される演算処理装置である。メモリ206は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス208は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現される補助記憶装置である。ただし、ストレージデバイス208は、RAMなど、主記憶装置を構成するハードウエアと同様のハードウエアで構成されてもよい。
【0020】
ストレージデバイス208は、制御装置100の各機能構成部を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ204は、このプログラムモジュールをメモリ206に読み出して実行することで、制御装置100の機能を実現する。ストレージデバイス208は、検知部110で利用される地図情報を記憶していてもよい。
【0021】
入出力インタフェース210は、計算機200を周辺機器と接続するためのインタフェースである。
図3において、入出力インタフェース210には、第1車両500に搭載される第1センサ300が接続されている。第1センサ300は、第1車両500の周囲の対象物を検出するためのセンサである。第1センサ300は、例えば、光(例えば、光のパルス波など)を用いて第1車両から対象物までの距離および方角を測定する光センサである。また、第1センサ300は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いたイメージセンサ、或いは、圧電振動子を用いた音波センサなどであってもよい。また、本発明は、制御装置100と第1センサ300とを含む走査システムとして提供されてもよい。第1センサが光を用いるセンサである場合、この走査システムは所謂Lidar(Light Detection and Ranging)システムと呼ぶことができる。
【0022】
ネットワークインタフェース212は、計算機200を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えばCAN(Controller Area Network)通信網やWAN(Wide Area Network)などである。ネットワークインタフェース212が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。制御装置100は、ネットワークインタフェース212を介して、例えば、第1車両500のECUや図示しないサーバ装置と通信することが可能となる。
【0023】
上述した本実施形態の構成により、第1車両500に搭載された第1センサ300の性能を判断することが可能となる。また、上述した本実施形態の構成では、第1車両500の走行中にリアルタイムで第1センサ300の性能を判断することが可能となる。
【0024】
〔動作例〕
以下、具体的な動作例を挙げて、第1実施形態の構成を更に詳細に説明する。
図4は、第1実施形態における制御装置100の動作例を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、例えば、第1車両500の走行中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0025】
第1取得部110は、第1センサ300から、第1車両500の周囲に位置する対象物のセンシング結果を取得する(S102)。次に、第2取得部120は、特定対象物の位置情報を取得する(S104)。各特定対象物の位置情報は、例えば、所定のテーブルに格納され、所定の記憶装置に記憶されている。またその他にも、特定対象物の位置情報は、地図情報に関連付けて記憶されていてもよい。例えば、地図情報に含まれる対象物の情報の1つとして、その対象物が特定対象物か否かを示すフラグ情報や特定対象物を識別可能な情報(特定対象物の識別子など)を用意しておくことにより、特定対象物の位置情報を地図情報に関連付けることができる。なお、特に限定されないが、特定対象物は、道路に対して設置された公共物(例:信号機、デリネーター、ガードレール、道路標識、方面看板など)や道路上の標示(規制標示または指示標示)などである。第1センサ300が光を用いる場合には、反射光を効率良く受光できるという点から、再帰性反射材が使われている道路標識や方面看板が特定対象物として好ましい。
【0026】
なお、第2取得部120は、第1車両500(第1センサ300)と特定対象物との相対的な位置情報を取得してもよい。例えば、第1車両500の装備品のメンテナンスなどを行う工場内において、第1車両500を停める位置から所定距離の位置に特定対象物を設置しておき、第2取得部120は、その所定距離を示す情報を「第1車両500(第1センサ300)と特定対象物との相対的な位置情報」として取得する。この場合、所定距離に応じた基準性能(SN比や信号強度など)が所定の記憶領域に予め用意されており、判断部140は、当該記憶領域から読み出した基準性能と比較することによって、第1センサ300の性能を評価することができる。また、第2取得部120は、工場内の地図情報および特定対象物の位置情報(または位置姿勢情報)を取得してもよい。この場合、工場内の地図情報および特定対象物の位置情報(または位置姿勢情報)は、例えば、所定のサーバ装置に記憶されており、第2取得部120は、当該サーバ装置と通信することによって、上述の地図情報、及び、特定対象物の位置情報または位置姿勢情報を取得することができる。判断部140は、それらの情報と工場内で推定される自車両の位置情報とに基づいて比較すべき基準性能データを所定の記憶領域から読み出し、その基準性能データと実際の計測結果とを比較することによって第1センサ300の性能を評価することができる。
【0027】
検知部130は、第1車両500の位置情報を取得する(S106)。検知部130は、ベイズ推定に基づいて自己位置や姿勢を推定する既知のアルゴリズムを用いて第1車両500の位置情報を算出可能に構成されていてもよいし、図示しない他の処理部で生成された第1車両500の位置情報を取得可能に構成されていてもよい。
【0028】
そして、検知部130は、第1車両500の位置情報と特定対象物それぞれの位置情報とに基づいて、第1車両500から基準距離内に位置する特定対象物が存在するか否かを判定する(S108)。第1車両500から基準距離内に特定対象物が存在しない場合(S108:NO)、以降の処理は実行されない。一方、第1車両500から基準距離内に特定対象物が存在する場合(S108:YES)、検知部130は、当該特定対象物を識別可能な情報(例えば、各特定対象物に対して一意に割り当てられた識別子など)を判断部140に出力する(S110)。
【0029】
ここで、基準距離を示す情報は、例えばメモリ206やストレージデバイス208といった記憶装置に予め記憶されている。また、検知部130は、車両の速度に応じて基準距離を変更するように構成されていてもよい。一例として、検知部130は、第1車両500のCANを介して第1車両500の走行速度を取得し、当該走行速度に基づいて記憶装置に記憶されている基準距離を補正して使用することができる。この場合、検知部130は、車両の速度が速いほど基準距離が長くなるように補正する。また、車両の速度に応じた複数の基準距離が、メモリ206やストレージデバイス208といった記憶装置に予め記憶されており、検知部130は、取得した第1車両500の速度に応じた基準距離を読み出すように構成されていてもよい。このようにすることで、車両の速度に応じた距離の中で第1センサ300の性能を判断することが可能となる。
【0030】
判断部140は、S102の処理で取得した第1車両500の周囲に位置する対象物のセンシング結果の中から、S110の処理で検出された特定対象物のセンシング結果を取得する(S112)。なお、判断部140は、第1車両500の位置や姿勢を示す情報と地図情報とに基づいて、第1センサ300のセンシング範囲における特定対象物の推定位置を算出することができ、その推定位置を基に第1センサ300の出力信号の中から特定対象物に関する領域の信号を抽出することができる。また、判断部140は、第1車両500の位置や姿勢を示す情報及び地図情報(特定対象物の位置)を基準として、第1センサ300のセンシング範囲において特定対象物のセンシング結果が含まれる大まかな領域を推定した後、実際のセンシング結果に基づいて、その推定した領域を補正することもできる。例えば、判断部140は、特定対象物に関する第1センサ300の出力について予想される検出距離や信号強度と、実際のセンシング結果との空間的な連続性などから、大まかに推定した領域を補正することができる。第1センサ300による特定対象物のセンシング結果は、第1車両500から特定対象物までの距離を示す情報と、第1センサ300の出力信号の特性(例えば、SN比や信号強度)を示す情報とを含む。ここで、特定対象物のセンシング結果は、特定対象物の面上の複数の点に対する情報として得られる。判断部140は、特定対象物の面上の複数の点におけるセンシング結果の平均値を特定対象物のセンシング結果として利用することができる。また、判断部140は、特定対象物の面上の複数の点に対するセンシング結果の中から、基準距離に最も近い距離のセンシング結果を選択し、後述する第1センサ300の性能判断処理に利用してもよい。
【0031】
そして、判断部140は、検知部130により検出された特定対象物に関連付けられている基準性能データを取得する(S114)。特定対象物それぞれに対応する基準性能データは、例えば、
図5に示すように、特定対象物を識別可能な情報(特定対象物の識別子など)と関連付けて記憶されている。
図5は、基準性能データを記憶する記憶部の一例を示す図である。判断部140は、検知部130から取得した特定対象物の識別子を基に、基準性能データを読み出すことができる。
【0032】
ここで、基準性能データは、特定対象物までの距離に応じた第1センサ300の出力信号のSN比や信号強度を示すデータであり、所定のテーブルや関数といった形で特定対象物ごとに関連付けられている。
図5の例では、基準性能データは関数の形式で関連付けられている。なお、基準性能データは、車両に搭載されるセンサ毎に異なるため、センサまたはそのセンサを搭載する装置別に用意されていてもよい。本明細書では、説明の簡便化のため、同一のセンサを用いるケースを想定している。
【0033】
判断部140は、S102の処理で取得したセンシング結果に含まれる距離基準性能データを取得することができる。なお、第1センサ300の種類によっては、センシング結果に第1車両500から特定対象物までの距離が含まれていないこともある。例えば、第1センサ300が一般的な単眼カメラなどである場合、センシング結果(イメージデータ)に特定対象物までの距離情報が含まれないこともある。このような場合において、判断部140は、S104の処理で取得した特定対象物の位置情報とS106の処理で取得した第1車両500の位置情報との差分距離を算出し、その差分距離に応じた基準性能データを取得することができる。また、判断部140は、イメージデータ上での特定対象物の大きさ(イメージデータの幅と高さに対する相対的な大きさ)に基づいて第1センサ300からその特定対象物までの距離を推定し、その推定した距離を第1車両500から特定対象物までの距離として利用してもよい。
【0034】
基準性能データは、例えば、所定の外部環境(試験環境)下における、第1センサ300による特定対象物のセンシング結果に基づくデータである。一つの例として、基準性能データは、理想状態での第1センサ300による特定対象物の試験計測データである。ここで、理想状態とは、第1センサ300の性能に対する外部環境による影響(例えば、外部光(西日)、雨、霧、砂塵、雪などによる影響)がなく、かつ、センサの経年劣化がない状態(例えば、初期出荷時の状態)を意味する。基準性能データは、1回の試験結果を基に定められてもよいし、複数回の試験計測結果の統計値(最大値、中央値、最頻値、平均値など)を基に定められてもよい。また、条件の異なる様々な試験環境下で計測することによって、複数の基準性能データが用意されていてもよい。例えば、理想状態での試験計測によって得られる第1の基準データ、暗室での試験計測によって得られる第2の基準性能データ、夜間を想定した環境下での試験計測によって得られる第3の基準性能データ、昼間の曇りを想定した環境下での第4の基準性能データといった、複数の基準性能データが用意されていてもよい。また、基準性能データは、第1センサ300の製品仕様から理論的に導き出される性能値に基づいて決定されていてもよい。
【0035】
また、
図5の例に限らず、特定対象物それぞれの個体の物理的特性を示す情報(光の反射率など)が地図情報などに関連付けて保持されている場合、判断部140は、特定対象物それぞれの個体の物理的特性を示す情報を用いて基準性能データを算出することもできる。この場合、特定対象物の物理的特性を示す情報を用いて基準性能データを算出する関数やテーブルがメモリ206やストレージデバイス208に予め用意される。判断部140は、検知部130が検知した特定対象物に関連付けられた物理的特性を示す情報を当該関数やテーブルの入力として用いることにより、特定対象物の基準性能データを導出することができる。このようにすることで、同じ種類の特定対象物であっても、それぞれの個体別に物理的特性が保持されるため、特定対象物の劣化などにも対応することが可能となる。
【0036】
そして、判断部140は、S112の処理で取得した特定対象物の実際のセンシング結果と、S114の処理で取得した当該特定対象物に関連付けられた基準性能データとを比較した結果を基に、第1センサ300の性能を判断する(S116)。判断部140は、基準性能データが示す特定対象物までの距離に応じたSN比や信号強度を基準として第1センサ300の性能の推定値(例えば、デシベル値や比率など)を判断し、その判断結果を示す情報を出力することができる。具体的には、判断部140は、「基準性能に対してN[dB]低下している」といった旨を示す情報を出力することができる。
【0037】
〔第1の変形例〕
例えば各特定対象物の状態(例えば、汚れの付着、変形、表面の劣化など)や周囲の環境などによって、特定対象物が第1センサ300の性能測定に適さなくなる可能性もある。検知部130は、そのような、第1センサ300の性能測定に適さない特定対象物を検知対象から除外する機能を備えていてもよい。
【0038】
一例として、検知部130は、特定対象物のセンシング結果の履歴データを用いて、所定の基準を満たさない特定対象物を検知対象から除外することができる。ここで所定の基準は、例えば、「特定対象物に関連付けられる基準性能データが示すSN比や信号強度と同等(例えば90%以上)のセンシング結果が得られる確率が、一定の割合(例えば30%など)以下」などである。検知部130は、このような特定対象物を検知対象から除外することで、第1センサ300の性能測定精度を向上させることができる。
【0039】
なお、制御装置100が車載用の装置である場合には、特定対象物のセンシング結果の履歴データは、例えば、外部ネットワーク上のサーバ装置(図示せず)に保持されている。また、制御装置100が外部のサーバ装置である場合、特定対象物のセンシング結果の履歴データは、制御装置100を実現する計算機200のメモリ206やストレージデバイス208に保持されている。各車両に搭載されるセンサがある特定対象物をセンシングすると、そのセンシング結果(特定対象物までの距離、および、信号のSN比や信号強度)はその特定対象物の識別情報と共にサーバ装置に送られる。各車両に搭載されるセンサによる特定対象物のセンシング結果をサーバ装置として機能する制御装置100或いは外部ネットワーク上のサーバ装置が蓄積することにより、その特定対象物のセンシング結果の履歴データが生成および更新される。また、特定対象物をセンシングした時間や天候を示す情報や、センサを識別する情報がサーバ装置として機能する制御装置100或いは外部ネットワーク上のサーバ装置に更に送信されてもよい。この場合、検知部130は、天候や時刻などの条件によって、履歴データを絞り込み、特定対象物が第1センサ300の性能測定に適するか否かを精度よく判定することができる。また、センシングを行ったセンサの劣化状態を示す情報がサーバ装置として機能する制御装置100或いは外部ネットワーク上サーバ装置に更に送信されてもよい。検知部130は、センサの劣化状態を示す情報を基に、劣化したセンサに関連するデータを除外することができる。このように、基準性能データと同等のセンシング結果が得られない原因が少なくともセンサの劣化にある場合のデータを除外することにより、特定対象物が第1センサ300の性能測定に適するか否かをより精度よく判断することができる。
【0040】
またその他の例として、検知部130は、特定対象物の傾きを示す情報を用いて、検知対象とする特定対象物を選別することができる。具体的には、検知部130は、第1車両500もしくは第1車両500が走行している道路に対する特定対象物の傾きに基づいて、検知対象物とする特定対象物を選別することができる。例えば、検知部130は、第1センサ300やその他の慣性計測装置を用いて第1車両500の現在の姿勢(第1車両500が向いている方角)を特定し、その第1車両500の姿勢に関する情報と地図情報に記憶される特定対象物の向きを示す情報とに基づいて、第1車両500に対する特定対象物の傾き度合を算出することができる。この方法は、第1車両500に対する特定対象物の傾き度合をより正確に算出できるため、高精度化の面で効果的である。その他にも、検知部130は、第1車両500が現在走行している道路の延伸方向を第1車両500の姿勢と見做して、道路に対する特定対象物の傾き度合を、第1車両500に対する特定対象物の傾き度合として簡易的に算出してもよい。この場合、検知部130は、第1車両500の現在位置を示す情報及び地図情報に記憶される道路に関する情報を基に、第1車両500が現在走行している道路の延伸方向を特定することができる。この方法は、前者の方法よりも簡易な処理で実装できるという長所がある。また、検知部130は、これらの方法を場所や状況に応じて切り替えて使用してもよい。例えば、検知部130は、第1車両500の姿勢に関する情報の確からしさの度合が所定の基準よりも低い場合に、道路の延伸方向を第1車両500の姿勢と見做して特定対象物の傾き度合を算出する方法に切り替えるように構成されていてもよい。特定対象物が傾いている場合には、特定対象物に反射されて戻ってくるセンサ波を効率よく受信できず、第1センサ300の性能測定精度が低下する可能性がある。検知部130は、このような特定対象物を検知対象から除外することで、第1センサ300の性能測定精度を向上させることができる。
【0041】
また、特定対象物が第1センサ300に対して傾いている場合、その傾きの度合いに応じて第1センサ300の性能に影響が出ることもある。この場合において、判断部140は、第1センサ300と特定対象物との相対的な傾き度合に応じて、当該特定対象物のセンシング結果を補正する機能を更に備えていてもよい。具体的には、判断部140は、第1センサ300に対する傾き度合と補正データとの対応関係を示す式やテーブル(例:
図6)を参照して第1センサ300に対する傾き度合に応じた補正データを読み出し、その補正データを用いてセンシング結果を補正することができる。
図6は、傾きと補正データとの対応関係を定義するテーブルの一例を示す図である。なお、このテーブルにおける傾きは、基準性能データ取得時のセンサと対象物とがなす角度からの変化量を示している。
図6に例示するようなテーブルなどから補正データを導出する際に必要な第1センサ300と特定対象物との相対的な傾き度合について、判断部140は、例えば、地図情報などに記憶されている各特定対象物の位置および傾きと、既知のアルゴリズムを用いて算出できる自車両の位置および傾き(姿勢)とに基づいて、第1センサ300と特定対象物との相対的な傾き度合を算出することができる。また、第1センサ300が特定対象物の形状を検出可能なセンサである場合、センシング結果が示す特定対象物の形状(姿勢)から自車両に対する姿勢(傾き度合)を推定することもできる。
【0042】
〔第2の変形例〕
また、判断部140は、上述の基準距離の範囲内で予め定義される、複数の距離において第1センサ300の性能を判断してもよい。例えば、基準距離dの範囲において、2つの距離d1およびd2(d1≦d、d2≦d、d1≠d2)が予め定義されており、判断部140は、第1の距離d1におけるセンシング結果と第2の距離d2におけるセンシング結果に基づいて、第1センサ300の性能を判断することができる。例えば、判断部140は、複数の距離それぞれにおける特定対象物のセンシング結果の統計値(平均値、最頻値、中央値など)を算出する。このように、複数の距離におけるセンシング結果を用いることにより、第1センサ300の性能を判断する精度を向上させることができる。
【0043】
[第2実施形態]
本実施形態では、以下の点を除き、第1実施形態と同様である。
【0044】
図7は、第2実施形態における制御装置100の機能構成を概念的に示すブロック図である。本実施形態の制御装置100は、第1実施形態の構成に加え、制御部150を更に備える。制御部150は、判断部140により判断された第1センサ300の性能を基に、第1車両500の動作を制御する。
【0045】
一例として、制御部150は、判断部140により判断された第1センサ300の性能を用いて、第1車両500の自動運転時の制御パラメータを制御することができる。この場合、制御部150は、例えば第1センサ300の性能の判断結果に応じた制御パラメータの設定(パラメータ値またはパラメータ変動量など)に関する指示を、第1車両500に搭載されるECUに通知する。第1車両500のECUは、制御部150からの指示に応じて自動運転時のパラメータを制御する。具体的な例として、制御部150は、判断部140により判断された第1センサ300の性能の推定値を取得し、その推定値に応じた第1車両500の上限速度の指示をECUに通知する。この場合、ECUは、当該指示に応じて速度の制御パラメータを変更する。また他の例として、判断部140により判断された第1センサ300の性能が所定の閾値以下となった場合に、制御部150は、徐々に減速して第1車両500を停車させる指示をECUに通知する。この場合、ECUは当該指示に応じて、車道の端によりつつ、徐々に減速するように第1車両500を制御する。また他の例として、判断部140により判断された第1センサ300の性能が所定の閾値以下となった場合に、制御部150は、手動運転に切り替える指示をECUに通知する。この場合、ECUは、ドライバー用のディスプレイやスピーカー装置から、手動運転に切り替える旨のメッセージなどを出力する。
【0046】
〔ハードウエア構成〕
本実施形態の制御装置100は、第1実施形態と同様のハードウエア構成(例:
図3)を有する。本実施形態のストレージデバイス208は、上述の判断部140の機能を実現するプログラムモジュールを更に記憶しており、プロセッサ204がこのプログラムモジュールを実行することによって、上述の本実施形態の機能が実現される。
【0047】
以上、本実施形態によれば、第1センサ300の性能の判断結果に応じて、第1車両500の動作を制御することが可能となる。
【0048】
[第3実施形態]
本実施形態は、以下の点を除き、上述の各実施形態と同様である。なお、ここで例示する構成は、第1実施形態の構成をベースとしている。
【0049】
〔機能構成〕
図8は、第3実施形態の制御装置100の機能構成を概念的に示すブロック図である。本実施形態の制御装置100は、第1実施形態の構成に加えて、アラーム出力部160を更に有する。
【0050】
本実施形態の判断部140は、第1センサ300による特定対象物のセンシング結果と、性能比較用の追加情報とを用いて、第1センサ300の劣化状態を推定する。以下、いくつか具体例を挙げ、判断部140による劣化状態の推定処理について説明する。
【0051】
<第1の例>
一例として、略同時刻に同一の特定対象物を利用してセンサの性能測定を行なった、第1車両500とは異なる車両(以下、「第2車両」とも表記)の情報が、性能比較用の追加情報として利用できる。具体的には、性能比較用の追加情報は、第2車両に搭載されたセンサ(以下、「第2センサ」とも表記)による同一の特定対象物のセンシング結果であって、第1センサ300と比較したときのセンシング時間の差分が所定の閾値以内であるセンシング結果と、その第2センサの劣化状態を含む情報である。
【0052】
制御装置100が外部のサーバ装置である場合、制御装置100は、判断部140は、各車両に搭載されるセンサによるセンシング結果を各車両から収集して、例えば、
図9に示すような形式で保持している。
図9は、各車両のセンシング結果を履歴として記憶するテーブルの一例を示す図である。判断部140は、第1センサ300がセンシングを行った時間および特定対象物の識別子を用いて
図9に示すようなテーブルを参照して、略同時刻における同一の特定対象物のセンシング結果を示す第2センサのデータを特定することができる。また、判断部140は、特定した第2センサのデータに紐付けられている第2センサの劣化状態を取得することができる。なお、制御装置100が車載用の装置である場合、判断部140は、外部サーバや第1車両500の前後を走る第2車両と車車間通信することによって、上述したような追加情報を取得することができる。また、車車間通信で前後の第2車両から情報を取得する場合、判断部140は、第2車両に特定対象物の識別子を含むデータ送信要求を送信することによって、第2センサによるセンシング結果と第2センサの劣化状態とを含むデータを第2車両から直接取得することができる。
【0053】
以下、上述の追加情報を利用して、第1センサ300の劣化状態を推定する具体的な流れについて説明する。
【0054】
まず、特定対象物Aに関連付けられている基準性能データをRA、第1センサ300のセンシング時の外部環境(例えば、太陽光といった外部光や、雨、霧、砂塵といった障害物など)によるセンシング性能に対する影響をα1、第2センサのセンシング時の外部環境によるセンシング性能に対する影響をα2、第1センサ300の劣化状態をβ1、第2センサの劣化状態をβ2と置く。すると、第1センサ300による特定対象物Aのセンシング結果S1、および、第2センサによる特定対象物Aのセンシング結果S2は、以下の式(1)および式(2)によりそれぞれ表される。
【0055】
【0056】
ここで、上記式(2)は以下の式(3)に示すように変換できる。なお、第2センサによる特定対象物のセンシング結果S2と共に第2センサの劣化状態β2が既知の情報として取得されれば、下記の式(3)の左辺部分を求めることができる。
【0057】
【0058】
そして、上記式(1)と上記式(3)に基づいて、以下の式(4)を導き出すことができる。
【0059】
【0060】
ここで、「センサの性能を測定するために同一の特定対象物を略同時刻に利用した」という前提によれば、外部環境による影響の大きさは略等しいものと見なすことができる。すなわち、第1センサ300のセンシング時の外部環境による性能に対する影響α1と、第2センサのセンシング時の外部環境による性能に対する影響α2が等しくなるため、上記式(4)の「β1+α1-α2」は「β1」として扱うことができる。
【0061】
このように、判断部140は、略同時刻に同一の特定対象物を利用してセンサの性能測定を行なった第2車両のデータ(第2センサによる同一特定対象物のセンシング結果および第2センサの劣化状態)を比較用の情報として用いて、第1センサの劣化状態を求めることができる。
【0062】
<第2の例>
また、他の例としては、第1の例における追加情報に加え、第1センサ300が特定対象物をセンシングした後に検知部130により検知された、1以上の特定対象物のセンシング結果を含む追加情報が利用できる。1以上の特定対象物のセンシング結果について、特定対象物は同一のものであっても異なるものであってもよい。判断部140は、例えば、以下のようにして、第1センサ300の劣化状態を推定することができる。
【0063】
まず、判断部140は、第1の例で説明したように求められるβ1を、第1センサ300の劣化量と仮定する。そして、判断部140は、β1を求めてから所定期間内に検知部130により検出された1以上の特定対象物それぞれのセンシング結果と、1以上の特定対象物それぞれに関連付けられた基準性能データとを比較する。比較した結果、所定の基準(例えば、基準性能データとの差分がβ1以上である割合が70%以上など)が満たされる場合、判断部140は、β1を正式な第1センサ300の劣化量とする。
【0064】
アラーム出力部160は、上述のように判断部140により推定された第1センサ300の劣化状態に基づいて、第1センサ300に関するアラームの出力要否を決定する。アラーム出力部160は、例えば第1センサ300の劣化状態(劣化度合い)が所定の閾値以上である場合に、第1センサ300のメンテナンスや交換を促すメッセージをディスプレイやスピーカーから出力するためのアラームを生成する。
【0065】
また、アラーム出力部160は、あるタイミングで判断部140により推定された第1センサ300の劣化状態(第1の劣化状態)と、それよりも前に判断部140により推定された第1センサ300の劣化状態(第2の劣化状態)との比較結果に基づいて、前記アラームの出力要否を決定するように構成されていてもよい。この場合、アラーム出力部160は、例えば、第1の劣化状態と第2の劣化状態とを比較した結果、劣化量の差分が所定の閾値以上である場合に、アラームの出力が必要と判断する。
【0066】
〔ハードウエア構成〕
本実施形態の制御装置100は、第1実施形態と同様のハードウエア構成(例:
図3)を有する。本実施形態のストレージデバイス208は、上述の判断部140およびアラーム出力部160の機能をそれぞれ実現する各プログラムモジュールを更に記憶しており、プロセッサ204がこれら各プログラムモジュールを実行することによって、上述の本実施形態の機能が実現される。
【0067】
〔動作例〕
図10を用いて、本実施形態の制御装置100がアラームを出力する動作を説明する。
図10は、第3実施形態における制御装置100の動作例を示すフローチャートである。
図10の処理は、例えば、
図4のS116の処理の後に実行される。
【0068】
判断部140は、上述したように、第1センサ300の劣化状態を推定する(S202)。判断部140は、推定した第1センサ300の劣化状態をアラーム出力部160に通知する。
【0069】
そして、アラーム出力部160は、S202の処理で推定された第1センサ300の劣化状態が基準の閾値以上であるか否かを判定する(S204)。ここで用いられる基準の閾値は、メモリ206やストレージデバイス208に予め記憶されている。
【0070】
第1センサ300の劣化状態が基準の閾値未満である場合(S204:NO)、後述の処理は実行されない。一方、第1センサ300の劣化状態が基準の閾値以上である場合(S204:YES)、アラーム出力部160は、アラーム情報を生成する(S206)。アラーム情報は、例えば、第1センサ300のメンテナンスや第1センサ300の交換を勧告するメッセージを含む。そして、アラーム出力部160は、第1車両500に搭載されるディスプレイ(例えば、図示しないカーナビゲーション装置やメーターパネル)やスピーカー装置を介してアラーム情報を出力し、第1センサ300に関するアラーム情報を第1車両500の乗員に通知する(S208)。
【0071】
以上、本実施形態によれば、第1センサ300の劣化状態を推定することができる。また、第1センサ300の劣化状態に基づいて、第1センサ300に関するアラーム情報が第1車両500の乗員に対して出力される。これにより、第1センサ300のメンテナンスや交換の必要性を、第1車両500の乗員に知らせることが可能となる。
【0072】
また、上述の実施形態では、アラーム出力部160が第1車両500内の乗員に向けてアラーム情報を通知する例を示したが、これに限らず、アラーム出力部160は、例えば、各車両を管理するセンタ等にアラーム情報を通知するように構成されていてもよい。その他にも、アラーム出力部160は、第1車両500の乗員(例えば、運転者やその家族)が使用する端末(例えば、スマートフォンやタブレットといった携帯端末など)にアラーム情報を通知するように構成されていてもよい。この場合、アラームの通知先である端末のアドレス情報は、例えば、事前の登録処理によってメモリ206やストレージデバイス208に予め記憶される。またその他にも、アラーム出力部160は、第1センサ300に関するアラーム情報を、自動運転時のルートを変えるトリガー或いは指示として、制御部150や自動運転機能を制御するその他のECUに対して通知するように構成されていてもよい。この場合、制御部150やECUは、例えば、アラーム出力部160からのアラーム情報の通知に応じて、最寄りの整備工場へ向かう自動運転ルートを選択することができる。
【0073】
以上、図面を参照して実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0074】
例えば、センサの経年劣化の判断については即時性よりも正確性が重要となるため、判断部140は、第1センサ300のセンシング結果の履歴データを統計処理して、第1センサ300の劣化状態を判断するように構成されていてもよい。
【0075】
一つの例として、判断部140は、所定期間(または所定回数)のセンシング結果の履歴データと基準性能データとの差分の統計値(最大値、中央値、最頻値、平均値など)を、第1センサ300の劣化量として求めてもよい。
【0076】
また、通常、センシングに用いるセンサには温度特性(温度による出力の変動)があり、第1センサ300の出力は、センシングを行ったときの温度に影響され得る。そのため、第1センサ300の出力として異常な(基準性能に対して劣化した)センシング結果が得られた場合に、その異常の原因が、第1センサ300そのものの性能劣化によるものなのか、または第1センサ300がセンシングを行った際の温度によるものなのかが判別できないことも考えられる。そこで、判断部140は、第1センサ300の温度を示す温度情報を用いて、統計処理に使用するデータを選別可能に構成されていてもよい。例えば、判断部140は、第1センサ300からセンシング結果を取得する際、例えば第1センサ300に内蔵された温度センサ(図示せず)により、第1センサ300の温度を示す温度情報を更に取得する。そして、判断部140は、第1センサ300の温度が所定の温度範囲(例:第1センサ300の適正使用温度の範囲)にあるか否かを判断する。なお、第1センサ300の適正使用温度の範囲は、第1センサ300を構成する各部材の特性などに基づいて第1センサ300の設計段階で予め決定されるものである。また、所定の温度範囲に関する情報は、メモリ206やストレージデバイス208などに予め記憶されている。第1センサ300の温度が所定の温度範囲に無い場合、判断部140は、この時の第1センサ300によるセンシング結果を、第1センサ300の劣化判定に用いないデータと判断してもよい。これにより、第1センサ300の性能が劣化しているか否かについて、誤った判定がされることを抑制できる。また、温度センサは第1センサ300の近傍に設けられていてもよい。なお、ここでいう「近傍」とは、例えば、第1センサと温度センサとの距離が5ミリメートル以内となる範囲である。
【0077】
また他の例として、履歴データにセンシング時の天候や時刻を示す情報が含まれている場合、判断部140は、それらの情報に基づいて、統計処理に使用するデータを選別可能に構成されていてもよい。具体的には、判断部140は、天候を示す情報に基づいて、履歴データに含まれるセンシング結果の中から「夜間」のセンシング結果を選別し、夜間を想定した環境で試験測定された基準性能データと比較して、第1センサ300の劣化状態を推定することができる。これにより、太陽光などの外乱の影響が少ないデータで、第1センサ300の劣化状態を推定することができる。また、判断部140は、天候および時刻を示す情報に基づいて、履歴データに含まれるセンシング結果の中から「昼間の曇り」のセンシング結果を選別し、「昼間の曇り」を想定した環境で試験測定された基準性能データと比較して、第1センサ300の劣化状態を推定することができる。また、判断部140は、このように選別して推定した第1センサ300の劣化状態を統計処理して、最終的な第1センサ300の劣化状態を決定してもよい。また、判断部140は、時刻を示す情報から、履歴データに含まれるセンシング結果を「昼間」のセンシング結果と「夜」のセンシング結果とに選別し、昼間と夜のセンシング結果の違いを示すデータを用いて各センシング結果を補正した上で統計処理を実行してもよい。なお、この場合において、昼間と夜のセンシング結果の違いを示すデータは、昼夜それぞれの試験測定の結果に基づいて作成することができる。なお、天候に関しても、同様の処理を行うことができる。
【0078】
また他の例として、判断部140は、他車両に搭載されるセンサによる同一対象物のセンシング結果を用いて、第1センサ300のセンシング結果の履歴データの中から外部環境により性能が劣化しているデータを特定し、そのようなデータを統計処理に用いるデータから除外してもよい。判断部140は、例えば、次のように外部環境により性能が劣化しているデータを特定して統計処理に用いるデータの中から除外することができる。まず、判断部140は、第1センサ300のセンシング結果の履歴データの中のある特定対象物のセンシング結果(劣化状態判断用の候補データ)に対して、その特定対象物を第1センサ300がセンシングした時間と比較的(例えば、数十分オーダー程度)近い同一対象物の他車両のセンサでのセンシング結果を収集する。そして、判断部140は、収集した他車両のセンサでのセンシング結果と基準性能データとの差分(性能低下)を算出する。ここで、収集した他車両のセンサでのセンシング結果のうち、基準以上の性能低下が算出されたセンシング結果が一定の割合以上発生していた場合は、これらのセンシング結果と比較的近いタイミングで取得されたセンシング結果も外部環境による影響を同様に受けていると推測され、第1センサ300の劣化状態を判断するためのデータとして適さない可能性がある。そのため、判断部140は、基準以上の性能低下が算出されたセンシング結果が一定の割合以上発生していた場合は、上述の劣化状態判断用の候補データを除外する。
【0079】
また、判断部140は、走行履歴および特定対象物のセンシング履歴から頻繁に検知される特定対象物を選定して、当該選定した特定対象物のセンシング結果の統計データ(変遷)を基に、第1センサ300の劣化性能を判断してもよい。このように、第1センサ300の性能判断に用いるデータを、頻繁に検知される特定対象物のデータに絞り込むことにより、特定対象物毎の特性(例えば、特定対象物の素材や設置場所の環境等)の差異が性能判断の結果に与える影響を軽減し、第1センサ300の劣化状態をより精度よく判断することができる。
【0080】
また、他の例として、判断部140は、特定対象物のセンシング履歴及び特定対象物をセンシングした際の車両の走行状態に基づいて生成されるデータを基準性能データとして取得してもよい。車両の走行状態は、例えば、センシング時の特定対象物までの距離、車両の進行方向に対する特定対象物の方向、車両の速度等である。また、基準性能データは、センシング結果と、当該センシング結果を得たときの車両の走行状態を示す走行状態情報とを関連付けた履歴データである。判断部140は、第1センサ300のセンシング結果に対して、距離、方向、速度が一致または所定の範囲内の値を持つ距離、方向、速度に関連づいている走行状態を用いることで、第1センサ300の性能を判断する。以下、図を用いて、具体的な処理の流れの一例について説明する。
【0081】
図11は、履歴データ(基準性能データ)を生成する処理の流れを例示するフローチャートである。なお、ここでは、制御装置100を搭載する第1車両500が
図11の処理を実行する例を示すが、
図11に示される処理は、制御装置100を搭載していない他の車両によって実行されてもよい。
【0082】
まず、目的とする特定対象物の周囲のルートを第1車両500が試走することにより、制御装置100によって履歴データ生成用の情報が収集される(S302)。具体的には、制御装置100は、第1センサ300のセンシング結果(特定対象物までの距離を示すデータ、第1車両500の走行方向に対して特定対象物が位置する方向を示すデータ、および、信号のSN比や信号強度など)を取得することができる。また、制御装置100は、CANなどを介して、第1車両500の走行状態情報(例えば、ステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダルを制御する信号、および、車両速度に関する信号などから得られる情報など)を取得することができる。そして、制御装置100は、取得された走行状態情報とセンシング結果とを関連付けた履歴データ(例:
図12)を基準性能データとして記憶装置に出力(記憶)する(S304)。
図12は、履歴データ(基準性能データ)の一例を示す図である。制御装置100は、
図12に例示されるような履歴データを、例えば、ストレージデバイス208などに記憶する。制御装置100は、
図12に例示されるような履歴データを、第1車両500の外部に位置する外部サーバ装置(図示せず)などに出力してもよい。このように生成された履歴データを用いて、例えば
図13に示されるような、センサの性能を判断する処理が実行される。
【0083】
図13は、履歴データを用いて第1センサ300の性能を判断する処理の流れを例示するフローチャートである。
【0084】
まず、判断部140は、第1センサ300による特定対象物のセンシング結果を取得する(S402)。また、判断部140は、S402の処理で第1センサ300のセンシング結果を取得する時に、CANなどを介してこの時の車両(第1車両500)の走行状態情報を取得する(S404)。そして、判断部140は、
図12に例示されるような履歴データ(基準性能データ)の中から、S402で取得したセンシング結果を取得したときの第1センサ300の観測条件(車両から特定対象物までの距離、車両の走行方向に対して特定対象物が位置する方向、車両の走行速度など)が等しい又は近い履歴データ(基準性能データ)を選択する(S406)。なお、判断部140は、例えば、車両から特定対象物までの距離、車両の走行方向に対して特定対象物が位置する方向、車両の走行速度などに基づく類似度を算出することによって、観測条件が近い履歴データ(基準性能データ)を判別することができる。そして、判断部140は、選択した履歴データ(基準性能データ)と、S402の処理で取得したセンシング結果とを比較することで、第1センサ300の性能を判断する(S408)。観測条件が近い基準性能データと比較する構成とすることによって、第1センサ300の性能劣化をより高精度に判断することが可能となる。
【0085】
また、他の例として、特定対象物に対してより精度の高いセンシング結果を得るために、特定対象物に接近したときに車両の走行を制御してもよい。図示しない車両制御部は、検知部130が取得した第1車両500の位置情報が示す位置が特定対象物の位置から所定範囲内である場合に、第1センサ300がより精度高く特定対象物を検知できるよう、第1車両の走行を制御する。より精度高く特定対象物を検知できるような第1車両の走行とは、例えば、特定対象物と正対するようなレーンを走行させる、所定値以下の速度で走行させる、一定の速度で走行させる、等である。また、車両制御部が車両の走行を制御するかわりに、運転者に対し、走行するレーンを指示する等の情報を出力してもよい。
【0086】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【0087】
上記の実施形態の一部又は全部は、特に限定されないが、例えば以下の付記のようにも記載され得る。
1.
第1車両の周囲の対象物を検出するための第1センサから、前記第1センサの性能測定用の対象物である特定対象物のセンシング結果を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記特定対象物のセンシング結果を用いて、前記第1センサの性能を判断する判断部と、
を備える制御装置。
2.
コンピュータにより実行される制御方法であって、
第1車両の周囲の対象物を検出するための第1センサから、前記第1センサの性能測定用の対象物である特定対象物のセンシング結果を取得する工程と、
前記取得部により取得された前記特定対象物のセンシング結果を用いて、前記第1センサの性能を判断する工程と、
を含む制御方法。
3.コンピュータを、
第1車両の周囲の対象物を検出するための第1センサから、前記第1センサの性能測定用の対象物である特定対象物のセンシング結果を取得する手段、及び、
前記取得部により取得された前記特定対象物のセンシング結果を用いて、前記第1センサの性能を判断する手段、
として機能させるためのプログラム。
【0088】
この出願は、2017年5月18日に出願された日本出願特願2017-099151号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。