(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178245
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】超膨張ポリマーマイクロスフェアを有するCMPパッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20231207BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20231207BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B24B37/24 B
B24B37/24 C
B24B37/10
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023088515
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】17/805037
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ナン-ロン・チョウ
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA04
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB12
3C158EB20
3C158EB28
3C158EB29
5F057AA17
5F057AA24
5F057BA11
5F057BB23
5F057BB25
5F057BB26
5F057BB37
5F057DA03
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5F057EB06
5F057EB07
5F057EB08
5F057EB09
5F057EB30
5F057FA25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】化学機械研磨のための研磨パッドを提供する。
【解決手段】イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマーと、二つ以上のポリアミン硬化剤を含む硬化剤ブレンドとの反応生成物であるポリマーマトリックスを含む研磨層を含み、前記ポリマーマトリックス中に気孔が存在し、そのような気孔は、予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアの膨張によって形成されたものであり、そのような膨張は、前記イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマーと前記二つ以上の硬化剤との反応の間に発生したものであり、前記研磨層は、少なくとも5:1の、104℃での剪断損失弾性率(G''):150℃での剪断損失弾性率(G'')の比;並びに研磨層の比重が、前記イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマー、硬化剤ブレンド及び前記予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアに関する計算比重の95%以下である;の一つ以上を特徴とする、研磨パッド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマーと、二つ以上のポリアミン硬化剤を含む硬化剤ブレンドとの反応生成物であるポリマーマトリックスを含む研磨層を含む、化学機械研磨のための研磨パッドであって、前記ポリマーマトリックス中に気孔が存在し、そのような気孔は、予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアの膨張によって形成されたものであり、そのような膨張は、前記イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマーと前記二つ以上の硬化剤との反応の間に発生したものであり、前記研磨層は、
少なくとも5:1の、104℃での剪断損失弾性率(G''):150℃での剪断損失弾性率(G'')の比;
研磨層の比重が、前記イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマー、硬化剤ブレンド及び前記予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアに関する計算比重の95%以下である;
の一つ以上を特徴とする、研磨パッド。
【請求項2】
軟質セグメント領域がポリウレタン軟質セグメントであり、硬質セグメント領域がポリウレア-ポリウレタン硬質セグメントである、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記硬化剤ブレンドが、単環芳香族ポリアミン硬化剤と、二つ以上の芳香環を有するポリアミン硬化剤とを含む、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記単環芳香族ポリアミン硬化剤が、ジメチルチオトルエンジアミン、モノメチルチオトルエンジアミン又は両方を含み、前記二つ以上の芳香環を有するポリアミン硬化剤が、4,4′-メチレン-ビス-o-クロロアニリン、4,4′-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)又は両方を含む、請求項3記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマーが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記単環芳香族ポリアミン硬化剤:前記二つ以上の芳香環を有するポリアミン硬化剤のモル比が30:70~70:30である、請求項3記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記研磨層が0.72g/cm3未満の比重を有する、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記研磨層が、予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアの孔径よりも10%大きい平均孔径を有する、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項9】
タングステンを含む基板を提供する工程、請求項1記載の研磨パッドを使用して前記基板を研磨する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、半導体基板又は磁気ディスクなどの基板を研磨し、平坦化するのに有用な研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械平坦化(CMP)は、三次元多層回路を正確に構築するために集積回路の構造物の層を平らにする、すなわち平坦化するために使用される研磨プロセスである。研磨される層は、多くの場合、下にある基板に堆積された薄膜(たとえば10,000オングストローム未満)である。CMPの目的は、ウェーハ表面上の過剰な材料を除去して、均一な厚みの極めて平らな層を生成することであり、この均一性は、ウェーハ領域全体にわたって広がる。除去速度の制御及び除去の均一性が最重要である。
【0003】
CMPは、基板(たとえばウェーハ)を研磨するために研磨パッド及び研磨流体(たとえばスラリー)を使用する。流体又はスラリーは通常、ナノサイズの粒子を含有する。研磨パッドは、回転するプラテンに取り付けることができる。基板(たとえばウェーハ)は、別個の回転手段を有することができる別個の固定具、すなわちキャリヤに取り付けることができる。研磨パッド及び基板は、制御された荷重の下、高い相対運動速度(すなわち、高い剪断速度)で互いに押し当てられる。スラリーが研磨パッドと基板との間に提供される。この剪断及びパッド/ウェーハ接合部に閉じ込められたスラリー粒子が基板表面を摩耗させて、基板からの材料の除去を生じさせる。
【0004】
研磨パッドは、複数の層;(a)ウェーハと接触して研磨作用を提供する上層(すなわち研磨層)、(b)パッド-ウェーハコンプライアンスを調節するために組み込まれる、より高い圧縮性の一つ以上のサブ層、及び(c)任意選択で、(a)と(b)を接合し、パッド全体を回転プラテンに取り付けるために使用される接着層を含むことができる。上にある研磨層が、CMPプロセスの成功にとってきわめて重要である。
【0005】
多くのCMPパッドにおける研磨層は、ポリオールをイソシアネートと反応させてイソシアネート末端化プレポリマーを形成したのち、硬化剤及びポリマー微小要素と混合することにより、それが、研磨層を形成するための反応を導くことによって形成される独立気泡ポリウレタンを含む。たとえば、米国特許第5,578,362号及び第10,391,606号を参照すること。米国特許第9,586,304号は、予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアと膨張していない流体充填ポリマーマイクロスフェアとの混合物がポリマーマイクロスフェア分布の均一性を改善し、相対的に低い比重及び密度をパッドに提供し得ることを開示している。しかし、予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェア及び膨張していない流体充填ポリマーマイクロスフェアの使用は、最終的なパッド中の気孔の二峰性分布を招くおそれがある(たとえば、膨張していない流体充填ポリマーマイクロスフェアが、予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアとは異なるサイズまで膨張する場合)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
孔径分布及び比重の一つ以上を含む特性のばらつきの度合いが低い研磨層を一貫して効率的に製造し得ることが望ましいであろう。また、低い比重及び単峰性の孔径分布を有する研磨層を有する研磨パッドを有することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示されるものは、イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマーと、二つ以上のポリアミン硬化剤を含む硬化剤ブレンドとの反応生成物であるポリマーマトリックスを含む研磨層を含む、化学機械研磨のための研磨パッドであって、ポリマーマトリックス中に気孔が存在し、そのような気孔は、予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアの膨張によって形成されたものであり、そのような膨張は、イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマーと二つ以上の硬化剤との反応の間に発生したものであり、研磨層は、(a)少なくとも5:1の、104℃での剪断損失弾性率(G''):150℃での剪断損失弾性率(G'')の比;及び(b)研磨層の比重が、イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマー、硬化剤ブレンド及び予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアに関する計算比重の95%以下である;の一つ以上を特徴とする、研磨パッドである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1a】
図1aは、様々な調合物の場合に硬化した流し込み成形ブロックからカットされた一連の研磨層中の各研磨層の比重を示すグラフである。
【
図1b】
図1bは、様々な調合物の場合に硬化した流し込み成形ブロックからカットされた一連の研磨層中の各研磨層の比重を示すグラフである。
【
図2a】
図2aは、従来技術の研磨層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図2b】
図2bは、本明細書に開示される例示的な研磨層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明者らは、一貫した特性、たとえば比重及び孔径分布の一つ以上を有する研磨層を含む研磨パッドの効率的な製造を可能にする方法を見いだした。そのうえ、方法は、相対的に低い比重及び/又は単峰性の孔径分布を有する研磨層の形成を可能にする。方法は、予備膨張ポリマーマイクロスフェアの存在下、特定の硬化剤のブレンドをプレポリマーと反応させる工程を含む。プレポリマーと硬化剤が反応してポリマーマトリックスを形成する。硬化剤のブレンドは、ポリマーマイクロスフェアのさらなる超膨張を促進して、驚くほど低い比重を生じさせる。方法は、プレポリマーと、予備膨張ポリマーマイクロスフェアと、硬化剤ブレンドとの混合物を型に流し込む工程、型の中で組成物を硬化させて多孔性ポリマーブロックを形成する工程、及び多孔性ポリマーブロックを一連の研磨層へとカットする工程を含む。一連の研磨層は、ブロックの中心部分からカットされたその一部分が、ブロックの縁部からカットされた研磨層の比重よりも5%超低い比重を有することを特徴とすることができる。追加的又は代替的に、一連の研磨層は、その一部分が、0.03g/cm3未満、0.02g/cm3未満又は0.01g/cm3未満しか変化しない比重を有することを特徴とすることができる。追加的又は代替的に、一連の研磨層は、その一部分が、3%未満しか変化しない比重を有することを特徴とすることができる。
【0010】
本明細書中で使用される場合、比重とは、試料の体積に対する重量の比である。
【0011】
本明細書に開示される研磨パッドは、予備膨張ポリマーマイクロスフェアの存在下、イソシアネート末端化プレポリマーを硬化剤のブレンドと反応させることによって形成された研磨層を有する。硬化剤のブレンドは、一つ以上の単環芳香族ポリアミン及び二つ以上の芳香環を有する一つ以上のポリアミンを含む。研磨パッドは、以下の一つ以上を特徴とすることができる:単峰性のサイズ分布、及び研磨層が0.70g/cm3未満の比重を有する;少なくとも5の、150℃での剪断損失弾性率(G'')に対する104℃での剪断損失弾性率(G'')の比;研磨層の比重が、イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマー、硬化剤ブレンド及び予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアに関する計算比重の95%以下である。
【0012】
理論によって拘束されることを望まないが、硬化剤系とイソシアネート末端化プレポリマーとの反応によって発生する熱は、ポリマーマイクロスフェアのさらなる膨張を支援することができると同時に、硬化剤のブレンドの存在が、より高い温度でのより大きな剪断損失弾性率低下によって示されるポリマーの硬化を遅らせることができ、その硬化は、ポリマーマイクロスフェアのさらなる膨張を効果的に防ぐと同時に、実質的に剛性になって、ポリマーマイクロスフェアのさらなる膨張によって形成される気孔の崩壊又は破裂を回避させると考えられる。この方法において、所望の低い比重、単峰性の孔径分布又は両方を、膨張していないポリマーマイクロスフェアを調合物に含めることなく得ることができる。
【0013】
本発明者らは、動的機械分析によって(たとえばASTM D5279-08(2008)にしたがって)測定して5:1よりも大きい、5.5:1よりも大きい、7:1よりも大きい、9:1よりも大きい、10:1よりも大きい、12:1よりも大きい、又は15:1よりも大きい、硬化温度(たとえば104℃)又は硬化温度をわずかに超える温度での剪断損失弾性率(G''):150℃での剪断損失弾性率G''の比を有する研磨層が、最終的なパッドにおけるより低い比重によって示されるように、超膨張ポリマーマイクロスフェアを有し得ることを見いだした。動的機械分析によって(たとえばASTM D5279-08(2008)にしたがって)測定される、硬化温度(たとえば104℃)又は硬化温度をわずかに超える温度での剪断損失弾性率(G''):150℃での剪断損失弾性率G''の比はまた、たとえば、30:1未満又は25:1未満であることができる。弾性に加えて、これらの研磨層は、流し込み成形中にマイクロスフェアのより大きな膨張を可能にし、研磨中に研磨パッドを湿らせる(dampen)粘性を有する。
【0014】
本明細書に開示されるパッドは、研磨層の計算平均比重の97%未満、96%未満、95%未満、94%未満、93%未満、92%未満、91%未満又は90%未満である研磨層の実比重を有することができる。研磨層の実比重はまた、同時に、たとえば、研磨層の計算比重の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%又は少なくとも75%であることもできる。実比重は、試料の重量及び体積を測定し、試料の重量を体積で割ることによって決定することができる。計算比重は、(プレポリマー+硬化剤+予備膨張ポリマーマイクロスフェアの総重量)を(プレポリマー重量÷プレポリマー比重)+(ポリマーマイクロスフェアの重量÷予備膨張ポリマーマイクロスフェアの比重)+硬化剤ごとの(その硬化剤の重量÷その硬化剤の比重)の合計で割ったものである。大部分の系の場合、さらなる膨張がいくらか起こるが、本明細書に開示される硬化剤ブレンドは、単一硬化剤系よりも大きな膨張を生じさせて、超膨張ポリマーマイクロスフェアをもたらす。
【0015】
プレポリマーは、硬化剤との反応のために少なくとも二つのイソシアネート基を含む。換言するならば、各プレポリマーは少なくとも二つのイソシアネート末端基を有する。イソシアネート基はプレポリマー上の末端基であることができる。たとえば、プレポリマーが、分岐又はイソシアネートペンダント基を有しない直鎖状プレポリマーである場合、二つの末端イソシアネート末端基が存在することができる。
【0016】
プレポリマー系は、一つのプレポリマー又は二つ以上のプレポリマーの混合物を含むことができる。重量%未反応イソシアネート基(NCO)範囲は、プレポリマーとそのプレポリマーポリオールとのブレンドによって調節することができる。プレポリマー系は、任意選択で、より低分子量の種、たとえばモノマー、ダイマーなどを含むこともできる。
【0017】
プレポリマーは、多官能芳香族イソシアネート(たとえば芳香族ポリイソシアネート)及びプレポリマーポリオールから形成することができる。
【0018】
本明細書の趣旨に関して、プレポリマーポリオールという語は、ジオール、ポリオール、ポリオールジオール、それらのコポリマー及びそれらの混合物を含む。プレポリマーポリオールの例は、ポリエーテルポリオール、たとえばポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール及びそれらの混合物、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びそれらの混合物を含む。前述のポリオールは、低分子量ポリオール、たとえばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びそれらの混合物と混合していることができる。プレポリマーポリオールは、たとえば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール[PTMEG]、ポリエチレングリコール[PEG](ポリエチレンオキシド[PEO]とも知られる)、ポリプロピレンエーテルグリコール[PPG](ポリプロピレンオキシド[PPO]とも知られる)、エステル系ポリオール、たとえばエチレン又はブチレンアジペート、それらのコポリマー及びそれらの混合物を含む群から選択することができる。
【0019】
多官能芳香族イソシアネートの例は、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4′-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、パラ-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、それらの混合物及びそれらの異性体を含む。多官能芳香族イソシアネートは、脂肪族イソシアネート、たとえばジシクロヘキシルメタン4,4′-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びシクロヘキサンジイソシアネートを20重量%未満有することができる。多官能芳香族イソシアネートは、脂肪族イソシアネートを15重量%未満又は12重量%未満有することができる。
【0020】
プレポリマーポリオールがPTMEG、そのコポリマー又はその混合物(たとえば、PTMEGとPPG又はPEGとの混合物)を含む場合、イソシアネート末端化反応生成物は、プレポリマーポリオールの総重量に基づいて4.0~30.0重量%又は6.0~10.0重量%の重量%未反応NCO範囲を有することができる。PTMEGファミリーポリオールの具体例は、以下のとおりである:LyondellBasellのPOLYMEG(登録商標)2900、2000、1000、650;Gantradeから市販されているPTMEGポリオール220、650、1000、1400、1800、2000及び3000;BASFのPolyTHF(登録商標)650、1000、2000、ならびにより低分子量の種、たとえば1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール及び1,4-ブタンジオール。プレポリマーポリオールがPPG/PO、そのコポリマー又はその混合物である場合、イソシアネート末端化反応生成物は、4.0~30.0重量%又は6.0~10.0重量%の重量%未反応NCO範囲を有することができる。PPGポリオールの具体例は、以下のとおりである:CovestroのArcol(登録商標)PPG-425、725、1000、1025、2000、2025、3025及び4000;DowのVoranol(登録商標)1010L、2000L及びP400;いずれもCovestroの製品ラインであるDesmophen(登録商標)1110BD、Acclaim(登録商標)ポリオール12200、8200、6300、4200、2200。プレポリマーポリオールがエステル、そのコポリマー又はその混合物である場合、イソシアネート末端化反応生成物は、6.5~13.0の重量%未反応NCO範囲を有することができる。エステルポリオールの具体例は、以下のとおりである:Polyurethane Specialities Company, Inc.のMillester 1、11、2、23、132、231、272、4、5、510、51、7、8、9、10、16、253;CovestroのDesmophen(登録商標)1700、1800、2000、2001KS、2001K2、2500、2501、2505、2601、PE65B;CovestroのRucoflex S-1021-70、S-1043-46、S-1043-55。
【0021】
好ましくは、プレポリマー反応生成物は、未反応NCOを2.0~15.0重量%、5~13重量%、7~11重量%又は8~10重量%有する。この未反応NCO範囲内の適切なプレポリマーの例は、COIM USA, Inc.製のImuthane(登録商標)プレポリマーPST-80A、PST-85A、PST-90A、PST-95A、PET-85A、PET-90A、PET-91A、PET-93A、PET-95A、PET-60D、PET-70D、PET-75D、PHP-80A、PHP-85A、PHP-60D、PHP-75D、PHP-80D、PPT-80A、PPT-90A、PPT-95A、PPT-65D、PPT-75D、PCM-95A、PCM-75D、APC-504、APC-722及びAPI-470ならびにLanxess製のAdiprene(登録商標)プレポリマーLFG740D、LF700D、LF750D、LF751D、LF753D、L325、LF600D、LFG963A及びLF950Aを含む。加えて、上述したもの以外の他のプレポリマーのブレンドを使用して、ブレンドの結果として適切な%未反応NCOレベルに到達することもできる。上述のプレポリマーの多く、たとえばLFG740D、LF700D、LF750D、LF751D、LF753D、LF600D、LFG963A、LF950A、PST-80A、PST-85A、PST-90A、PST-95A、PET-85A、PET-90A、PET-91A、PET-93A、PET-95A、PET-60D、PET-70D、PET-75D、PHP-80A、PHP-85A、PHP-60D、PHP-75D、PHP-80D、PPT-80A、PPT-90A、PPT-95A、PPT-65D、PPT-75D、PCM-95A及びPCM-75Dは、遊離トルエンジイソシアネート(TDI)モノマーを0.1重量%未満しか有さず、従来のプレポリマーよりも一貫したプレポリマー分子量分布を有する低遊離イソシアネートプレポリマーであり、したがって、優れた研磨特性を有する研磨パッドの形成を容易にする。この改善されたプレポリマー分子量一貫性及び低遊離イソシアネートモノマーが、より規則的なポリマー構造を与え、改善された研磨パッド一貫性に寄与する。大部分のプレポリマーの場合、低遊離イソシアネートモノマーは、好ましくは0.5重量%未満である。さらには、通常はより高いレベルの反応(すなわち、各端部をジイソシアネートによって蓋をされた二つ以上のポリオール)及びより高いレベルの遊離トルエンジイソシアネートプレポリマーを有する「従来の」プレポリマーは、同様な結果を出すはずである。加えて、低分子量ポリオール添加物、たとえばジエチレングリコール、ブタンジオール及びトリプロピレングリコールは、プレポリマー反応生成物の重量%未反応NCOの制御を容易にする。
【0022】
一例として、プレポリマーは、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びジオールを有するポリテトラメチレングリコールの反応生成物であることができる。もっとも好ましくは、ジオールは1,4-ブタンジオール(BDO)である。好ましくは、プレポリマー反応生成物は、未反応NCOを6~13重量%有する。この未反応NCO範囲を有する適切なポリマーの例は、以下を含む:COIM USAのImuthane 27-85A、27-90A、27-95A、27-52D、27-58D及びAnderson Development CompanyのAndur(登録商標)IE-75AP、IE80AP、IE90AP、IE98AP、IE110APプレポリマー。
【0023】
硬化剤ブレンドは、一つ以上の単環芳香族アミン硬化剤と、二つ以上の芳香環を有する一つ以上のポリアミン硬化剤とを含む。ポリアミンはジアミンであることができる。単環芳香族ポリアミン硬化剤としては、たとえば、一つ以上のアルキルチオトルエンジアミン(たとえばジメチルチオトルエンジアミン[DMTDA]、ジエチルチオトルエンジアミン[DETDA];モノメチルチオトルエンジアミン、モノエチルチオトルエンジアミン又はそれらの二つ以上の組み合わせ)、アルキルクロロトルエンジアミン(たとえばジメチルクロロトルエンジアミン、ジエチルクロロトルエンジアミン、4-クロロ-3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン)、トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキシドジ-p-アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキシドモノ-p-アミノベンゾエート;ポリプロピレンオキシドジ-p-アミノベンゾエート;ポリプロピレンオキシドモノ-p-アミノベンゾエート、イソブチル4-クロロ-3,5-ジアミノベンゾエート;5-tert-ブチル-2,4-及び3-tert-ブチル-2,6-トルエンジアミン;5-tert-アミル-2,4-及び3-tert-アミル-2,6-トルエンジアミンならびにクロロトルエンジアミンを挙げることができる。二つ以上の芳香環を有するポリアミン硬化剤としては、たとえば、4,4′-メチレン-ビス-o-クロロアニリン[MOCA]、4,4′-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)[MCDEA];1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン;4,4′-メチレン-ビス-アニリン;メチレン-ビス-メチルアントラニレート[MBNA]の一つ以上を挙げることができる。
【0024】
二つ以上の芳香環を有するポリアミン硬化剤(たとえばMOCA):単環芳香族ポリアミン硬化剤(たとえばEthacure(商標)300)のモル比は、たとえば、20:80~80:20;25:75~75:25;30:70~70:30;35:65~65:35;40:60~60:40;45:55~55:45又は約50:50であることができる。
【0025】
硬化剤に対するプレポリマーの比は、化学量論比にしたがって決定することができる。本明細書中で使用される場合、反応混合物の「化学量論比」(Stoich)とは、プレポリマー中の遊離NCO基に対する硬化剤中の(遊離OH+遊離NH2基)のモル当量(たとえば、100×(硬化剤ブレンド中のアミン及びOH基の総モル数/プレポリマー又はプレポリマーブレンド中のNCO基の総モル数))を指す。化学量論比は、たとえば、80%~120%、好ましくは87%~105%の範囲であることができる。
【0026】
硬化剤とイソシアネート官能性プレポリマーとの重合反応ののち、得られるポリマーは硬質相及び軟質相(又は、硬質セグメント及び軟質セグメント)を含む。硬質相は、規則的及び/又はランダムに配設され、パッキングされて硬質セグメント領域を形成することができる。
【0027】
予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、気体、液体又は気体と液体との組み合わせであることができる流体を充填される。流体が液体である場合、好ましい流体は水、たとえば偶発的な不純物しか含有しない蒸留水である。本出願の趣旨に関して、マイクロスフェアという語は、完璧とはいえない球形を有するシェルを含む。たとえば、これらのシェルは、切開し、SEMで見たとき半球形(semi-hemispherical)に見える形を有する。流体が気体である場合、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素又はそれらの組み合わせが好ましい。一部のマイクロスフェアの場合、気体は有機気体、たとえばイソブタンであってもよい。好ましくは、流体は、イソブタン、イソペンタン又はイソブタンとイソペンタンとの組み合わせである。ポリマーマイクロスフェア中に閉じ込められたイソブタンは、ポリマーシェル中の内圧に依存して、室温(25℃)以上で気体である。ポリマーマイクロスフェア中に閉じ込められたイソペンタンは、室温で液体と気体との混合物である。約30℃以上の温度で、イソペンタンは、ポリマーシェル中の内圧に依存して、気体になる。ポリマーシェルは流体を保持し;通常、気体を加圧下に保持する。ポリマーシェルの具体例は、ポリアクリロニトリル/メタクリロニトリルシェル及びポリ(ビニリデンジクロリド)/ポリアクリロニトリル、たとえばポリ(アクリロニトリル-co-ビニリデンクロリド-co-メチルメタクリレート)シェルを含む。さらに、これらのシェルは、無機粒子、たとえばシリケート、カルシウム含有又はマグネシウム含有粒子を組み込んでいてもよい。これらの粒子はポリマーマイクロスフェアの分離を促進する。予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、プレポリマーと合わせる前に、公称径まで膨張させたものである。一般的な公称径は、10~60ミクロン、15~50ミクロン又は17~45ミクロンの範囲である。たとえば、公称径は20ミクロン又は40ミクロンであることができる。予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、20~150ミクロンの最終平均直径まで10~60%増大することができる。しかし、本発明者らは、プレポリマーと硬化剤との反応によって形成されるポリマーマトリックス中の実膨張はポリマーマトリックスの硬化によって抑制され得ることを見いだした。たとえば、単一の硬化剤(単環芳香族アミン硬化剤又は多環芳香族アミン硬化剤)を使用すると、さらなる膨張は抑制される、又は部分的な気孔収縮が起こり得る。しかし、本発明者らは、フェニルジアミン硬化剤と多環芳香族ジアミン硬化剤とのブレンドを使用することにより、マトリックスは膨張を抑制しにくくなり、同時に、気孔崩壊又は破裂が回避され、それにより、より低い比重の達成が可能になることを見いだした。
【0028】
予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、プレポリマー、硬化剤及び予備膨張ポリマーマイクロスフェアの重量に基づいて0.5重量%以上、0.75重量%以上、1重量%以上、1.25重量%以上、1.5重量%以上、1.75重量%以上又は2重量%以上の量で混合物に加えることができる。予備膨張ポリマーマイクロスフェアの量はまた、同時に、プレポリマー、硬化剤及び予備膨張ポリマーマイクロスフェアの重量に基づいて7重量%以下、5重量%以下、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下又は3.0重量%以下であることができる。便宜上、予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、硬化剤の添加の前に、プレポリマーとプレブレンドすることができる。
【0029】
予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、0.01~0.2g/cm3、0.02~0.15g/cm3、0.05~0.1g/cm3又は0.070~0.096g/cm3の比重を有することができる。適切な予備膨張ポリマーマイクロスフェアの例は、Nouryon製のExpancel(登録商標)551DE40d42、551DE20d60、461DE20d70、461DE40d60、461DET80d25、092DET100d25、920DE40d30、920DET40d25及び920DE80d30、ならびに松本油脂製薬株式会社製のマイクロスフェアー(登録商標)FN-80SDE、F-65DE、F-80DE、FN-100SSDE及びF-190DEを含む。
【0030】
本明細書に開示される研磨層は、任意選択で、1.0g/cm3未満又は0.99g/cm3以下もしくは0.98g/cm3以下もしくは0.97g/cm3以下もしくは0.96g/cm3以下もしくは0.95g/cm3以下もしくは0.94g/cm3以下もしくは0.93g/cm3以下もしくは0.92g/cm3以下もしくは0.91g/cm3以下もしくは0.90g/cm3以下もしくは0.89g/cm3以下もしくは0.88g/cm3以下もしくは0.87g/cm3以下もしくは0.86g/cm3以下もしくは0.85g/cm3以下もしくは0.84g/cm3以下もしくは0.83g/cm3以下もしくは0.82g/cm3以下もしくは0.81g/cm3以下もしくは0.80g/cm3以下もしくは0.79g/cm3以下もしくは0.78g/cm3以下もしくは0.77g/cm3以下もしくは0.76g/cm3以下もしくは0.75g/cm3以下もしくは0.74g/cm3以下もしくは0.73g/cm3以下の比重を有することができる。有利には、本明細書に開示される研磨層は、任意選択で、0.72g/cm3以下又は0.71g/cm3以下又は0.70g/cm3以下又は0.69g/cm3以下又は0.68g/cm3以下又は0.67g/cm3以下又は0.66g/cm3以下又は0.65g/cm3以下又は0.64g/cm3以下又は0.63g/cm3以下又は0.62g/cm3以下又は0.61g/cm3以下又は0.60g/cm3以下又は0.59g/cm3以下又は0.58g/cm3以下又は0.57g/cm3以下又は0.56g/cm3以下又は0.55g/cm3以下又は0.54g/cm3以下又は0.53g/cm3以下又は0.52g/cm3以下又は0.51g/cm3以下又は0.50g/cm3以下又は0.49g/cm3以下又は0.48g/cm3以下の比重を有することができる。比重は一般に、少なくとも0.3g/cm3、少なくとも0.4g/cm3又は少なくとも0.45g/cm3であることができる。本明細書中で使用される比重とは、試料の体積あたりの重量であり、たとえば、ASTM D1622-08(2008)に記載されているように測定することができる。そのような研磨層は、同時に、単峰性の孔径分布を有することができる。
【0031】
硬化した研磨層中の気孔のサイズは、約5ミクロン~約80ミクロンの範囲であることができ、20ミクロンの公称サイズを有する予備膨張多孔性マイクロスフェアから出発するとき、測定される平均孔径は少なくとも23ミクロンである。予備膨張ポリマーマイクロスフェアが40ミクロンの公称サイズを有するとき、硬化した研磨層の平均孔径は少なくとも45ミクロンであることができる。平均孔径は、予備膨張ポリマーマイクロスフェアの公称サイズよりも少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%又は少なくとも20%大きい孔径であることができる。
【0032】
プレポリマー、硬化剤ブレンド及び予備膨張ポリマーマイクロスフェアを合わせ、混合したのち、型に流し込むことができる。混合と同時に反応が起こるため、混合物を速やかに型に流し込むことが重要である。型を適切な高さまで満たしたのち、型中の混合物を加熱する(たとえば、オーブン中で硬化させる)。型中の混合物の高さは、少なくとも2.5cm、少なくとも3.5cm、少なくとも5cm、少なくとも6.5cm、少なくとも7.5cm、少なくとも9.0cm、少なくとも10.0cm、少なくとも11.5cm、少なくとも12.5cm、少なくとも13.0cm、少なくとも13.5cm、少なくとも14.0cm、少なくとも14.5cm又は少なくとも15.0cm及び所望の高さ、たとえば30又は25又は20cm以下であることができる。硬化温度は、少なくともプレポリマー及び硬化剤の最低硬化温度に設定される。硬化温度は、たとえば、約100~120℃又は102~110℃又は104℃であることができる。硬化時間は5~20又は10~15時間であることができる。型は、硬化した調合物ブロック又はケーキを提供するために望ましい寸法の研磨層を提供するための寸法(幅及び長さ、又は直径)を有することができる。型は、硬化した調合物から複数のブロック又はケーキをカットすることができるよう、幅、長さ及び直径が大きめであることもできる。
【0033】
硬化した調合物を型から取り出し、ブロック又はケーキを元の厚さ(たとえば5cm)から所望の研磨層厚さ(たとえば0.10~0.35又は0.125~0.20cm)へとスライスする。本発明者らは、この方法が、研磨層の最上部から最下部までで均一な気孔特性と、混合物から単一の研磨層が直接形成される場合よりも低い全体比重とを有する複数の研磨層の製造を可能にすることを見いだした。ブロック又はケーキの最上部及び最下部からカットされた研磨層は所望の特性を満たさない場合もある。したがって、ブロック又はケーキスラブの元の厚さからスライスが作られる場合、最初の3~5枚のスライス及び最後の3~5枚のスライスは所望の均一性及び低い比重を示さないことがある。しかし、±0.1g/cm3未満、±0.05g/cm3未満、±0.03g/cm3未満、±0.02g/cm3未満又は±0.01g/cm3未満しか変化しない比重を有する10以上、12以上又は15以上の研磨層を単一のブロック又はスラブから形成することができる。これら10(又は12又は15)以上の研磨層は、同じブロックの上縁又は下縁からカットされた研磨層の比重よりも少なくとも0.04g/cm3小さい比重を有する。ブロックの中心部分からカットされた一連の研磨層は、ブロックの縁部からカットされた研磨層の比重よりも、ブロックの縁部の比重に基づいて少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%(又は、ブロックの中心部の比重に基づいて少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも17%又は少なくとも20%)小さい比重を有することができる。加えて、この方法は、同じ調合物を個々の研磨層として直接流し込み成形することによって達成することができる比重よりも低い比重の達成を可能にする。たとえば、研磨層の比重は、ブロックとして流し込み成形され、ブロックからカットされるのではなく、単一の研磨層として流し込み成形された同じ調合物の研磨層の比重よりも少なくとも0.02g/cm3、少なくとも0.03g/cm3、少なくとも0.04g/cm3、少なくとも0.05g/cm3、少なくとも0.06g/cm3、少なくとも0.07g/cm3、少なくとも0.08g/cm3、少なくとも0.09g/cm3、少なくとも0.10g/cm3、少なくとも0.11g/cm3、少なくとも0.12g/cm3小さい比重であることができる。
【0034】
本明細書に開示されるパッドは、同じスラリー、同じプレポリマー、同じ予備膨張ポリマーマイクロスフェア、予備膨張ポリマーマイクロスフェアの同じ重量%、同じ化学量論比、同じ加工条件、同じ溝、同じ構成、同じパッド厚さ、同じ比重、同じ研磨機、同じコンディショニングディスク及び同じ研磨レシピを用いて研磨するとき、単環芳香族ポリアミン硬化剤を用いて作られた類似のパッドと比べ、金属及び酸化物の除去速度における少なくとも10%の改善を示す。本明細書に開示されるパッドは、同じスラリーを用いて研磨するとき、単環芳香族ポリアミン硬化剤を用いて形成された研磨層を有する類似のパッドと比べ、タングステン除去速度における少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%及び少なくとも40%の改善を示す。本明細書に開示されるパッドは、同じスラリーを用いて研磨するとき、単環芳香族ポリアミン硬化剤を用いて形成された研磨層を有する類似のパッドと比べ、銅除去速度における少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%の改善を示す。本明細書に開示されるパッドは、同じスラリーを用いて研磨するとき、単環芳香族ポリアミン硬化剤を用いて作られた研磨層を有する類似のパッドと比べ、酸化物除去速度における少なくとも10%及び少なくとも15%の改善を示す。
【実施例0035】
使用した材料:
L325は、LanxessのAdiprene(商標)プレポリマーL325である。
LFG740Dは、LanxessのAdiprene(商標)プレポリマーLFG740Dである。
LF750Dは、LanxessのAdiprene(商標)プレポリマーLF750Dである。
MOCAは、4,4′-メチレン-ビス-(2-クロロアニリン)である。
Ethacure(商標)300は、Albemarle Co.のジメチルチオトルエンジアミン/モノメチルチオトルエンジアミンの混合物である。
予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、約20μmの平均直径を有する予備膨張ポリ(アクリロニトリル-co-ビニリデンクロリド-co-メチルメタクリレート)マイクロスフェアであった。
【0036】
実施例1
ポリイソシアネートプレポリマーを、20ミクロンの公称粒子径を有する予備膨張ポリマーマイクロスフェアとブレンドしてプレブレンドを形成した。プレブレンドの十分な流動性を保証するためにプレブレンドを52℃に加熱した。硬化剤を予熱した(MOCAは115℃、Ethacure(商標)300は46℃)。次いで、高速剪断ミキサ中で硬化剤をプレブレンドと混合し、ミキサヘッドから直接、約2~5分の期間をかけて、直径86.36cm(34インチ)の平底ポリテトラフルオロエチレン(PTFEコート付き)円形型の中へ流し込んで、約6~15cmの全流し込み厚さを得た。型を約107℃に予熱した。流し込みを完了してから約15分後、型を硬化オーブンに入れた。次いで、オーブン中、以下のサイクルを使用して組成物を加熱した:周囲温度から設定温度104℃まで30分間昇温、次いで104℃で15.5時間保持、次いで104℃から21℃まで2時間降温。
【0037】
次いで、硬化したポリマーブロックを型から取り出し、厚さ約7.62cm(3インチ)の硬化ポリマーブロックを、70~90℃の温度で、固定ブレードを使用して、厚さ2.032mm(80mil)のシート約35枚又は厚さ1.651mm(65mil)のシート45枚又は厚さ1.27mm(50mil)のシート55枚へとカットした。カットは、各ブロックの最上部から始めて35、45又は55枚のシートがブロックの厚さから漸次にカットされるよう、ブロックに対して水平に実施した。
【0038】
ASTM D1622-08(2008)にしたがって測定された、カットされたシートごとの比重は、シート全体での測定、すなわち、カットされたシートの全重量をカットされたシートの全体積で割ったものであった。シートの体積は、直径及び厚さを計測することによって求めた。
図1aに報告する比重データは、多様な硬化剤とのプレポリマーL325ブレンドに関し、シートの比重データを、各ブロックの上縁から切り出したシート、ブロックの中間部から切り出したシート及び各ブロックの下縁から切り出したシートの順で示す(各ドットが1枚のシートの比重であり、シートは、左から右に、ドットと対応して上縁から下縁の順である)。
図1bは、多様な硬化剤とのLFG740DとLF750Dとの重量比4:1のプレポリマーブレンドに関し、シートの比重データを各ブロックの上縁から各ブロックの下縁までで示す。見てとれるように、上縁及び下縁から切り出されたシートは、中間部から切り出されたシートよりも高い比重を有し、ブレンドされた硬化剤を用いて作られたシートは、その中間部において、単一の硬化剤、たとえばMOCA又はEthacure(商標)300硬化剤をのみ用いて作られたシートよりも低い比重を有する。
【0039】
比較として、MOCAが唯一の硬化剤であるとき、スカイビングされたシートの比重のプロファイルは有意なピークを示さず、比重は上縁及び下縁でより高くなる。
【0040】
さらなる比較として、ポリマーマイクロスフェア及びEthacure(商標)300硬化剤とMOCA硬化剤とのブレンドを用いたプレポリマーの調合物を厚さ2.032mm(80mil)の単一の研磨層として直接流し込み成形したとき、その研磨層は0.76g/cm3の比重を有したが、同じ調合物をブロックとして流し込み成形し、次いでカットする方法を使用したとき、0.70g/cm3の比重が得られた。
【0041】
実施例2
実質的に実施例1におけるように、表1に記載する調合物を使用して研磨層を作製した。表1に報告される実比重は、
図1a及び1bに示すようなピーク領域中のシートを除外したものである。すなわち、上縁及び下縁に近い領域からカットされた薄いポリマー層又はシートを除外したものである。G''として測定された剪断損失弾性率は、剪断動的機械分析(DMA)(ASTM D5279-08(2008))によって測定した。すべての剪断損失弾性率値(G'')は、Ares G2モデル計器(TA Instruments)上、36mm×6.5mmの寸法を有する試料をクランプ間距離20mmで使用して得たものである。計器設定は以下のとおりであった。
窒素雰囲気
開始温度 -100℃ 固有設定値:オフ
ソーク時間:20.0秒 温度の待機:オン
ランプレート 3.0℃/分
ランプ後ソーク時間 0.0秒
完了までの推定時間 1:23:00 時:分:秒
サンプリング間隔 10s/pt
ひずみ率 0.2%
一点
角周波数 10rad/s
収集モード:相関を選択
遅延サイクル 0.5
遅延時間 3.0秒
サンプリングサイクル 半サイクル二つ
相関に基づく周波数:オフ 波形をセーブ(点表示):オフ イメージをセーブ:オフ
反復ひずみ
調節:オフ 追加の高調波を使用:オフ
定常剪断速度をスーパーインポーズ:オフ 収集中に軸力を維持:オン
有効化:オフ 有効化:オフ 有効化:オフ
【0042】
150℃でのG''に対する104℃でのG''の比を表1に報告する。計算比重は上記のように決定した。結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
実施例3
実質的に実施例1に記載したように、LFG740DとLF750Dとの重量比4:1のブレンドをプレポリマーとして使用し、MOCAとEthacure(商標)300とのブレンド(モル比2:3及びモル比1:1)を硬化剤として使用して、化学量論比87%で、公称サイズ20ミクロンの予備膨張ポリマーマイクロスフェアを様々な添加量で用いて、研磨層を作製した。比重を計算し、測定した。結果を表2に示す。
【0045】
【0046】
実施例4
L325をプレポリマーとして使用した特定の試料に関し、孔径及び孔径分布を試験した。モル比50/50のMOCA/Ethacure(商標)300のブレンドを使用すると、24.5ミクロンの平均孔径が得られ(予備膨張ポリマーマイクロスフェアの公称孔径に対して約22.5%増)、Ethacure(商標)のみを使用すると、22.7ミクロンの平均孔径が得られた(予備膨張ポリマーマイクロスフェアの公称孔径に対して約13.5%増)。
【0047】
実施例5
米国特許第9,586,304号に開示されている、予備膨張マイクロスフェアと膨張していないマイクロスフェアとの組み合わせを用いて作られた研磨層の走査型電子顕微鏡写真が
図2aに示されている(従来技術)。本明細書に開示される例示的な研磨層の走査型電子顕微鏡写真が
図2bに示されている。
【0048】
実施例6
Suba(商標)IV又はSP2310サブパッド上に研磨層を使用して研磨パッドを調製した。すべてのパッド例のための研磨層は、円形(1010)及び放射状(R32)のオーバレイ溝(1010+R32)及び円形(K7D)溝を付けて完成させた。円形の1010溝は、幅0.46mm(18mil)、深さ0.76mm(30mil)及びピッチ3.05mm(120mil)であった。R32放射状溝は、幅0.76mm(30mil)及び深さ0.81mm(32mil)を有する等間隔に放射状の32の溝であった。円形(K7D)溝は、幅0.36mm(14mil)、深さ1.02mm(40mil)及びピッチ1.78mm(70mil)であった。円形(K7)溝は、幅0.46mm(18mil)、深さ0.76mm(30mil)及びピッチ1.78mm(70mil)であった。
【0049】
予備膨張ポリマーマイクロスフェアとブレンドし、Ethacure(商標)300と反応させたL325プレポリマーから本明細書に記載されるように形成された研磨層を用いて上記のように作られた比較用パッドは、低選択比スラリーでタングステンを研磨するとき、2285オングストローム/分(Å/min)のタングステン除去速度を示した。予備膨張ポリマーマイクロスフェアとブレンドし、モル比1:1のEthacure(商標)300:MOCAである硬化剤と反応させたL325プレポリマーから作られた研磨層を有するパッドは、同じスラリー及び条件で、2558Å/minのタングステン除去速度(12%の改善)を示した。同じタイプのパッドは、ブレンドされた硬化剤の場合、銅除去速度における6%の改善を示した。
【0050】
予備膨張ポリマーマイクロスフェアとブレンドし、MOCAと反応させたL325プレポリマーから本明細書に記載されるように形成された研磨層を用いて上記のように作られた比較用パッドは、高選択比スラリーでタングステンを研磨するとき、2358Å/minのタングステン除去速度を示した。予備膨張ポリマーマイクロスフェアとブレンドし、モル比1:1のEthacure(商標)300:MOCAである硬化剤と反応させたL325プレポリマーから作られた研磨層を有するパッドは、同じスラリー及び条件で、2635Å/minのタングステン除去速度及び12%の改善を示した。
【0051】
本開示はさらに以下の態様を包含する。
【0052】
態様1:イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマーと、二つ以上のポリアミン硬化剤を含む硬化剤ブレンドとの反応生成物であるポリマーマトリックスを含む研磨層を含む、化学機械研磨のための研磨パッドであって、ポリマーマトリックス中に気孔が存在し、そのような気孔は、予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアの膨張によって形成されたものであり、そのような膨張は、イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマーと二つ以上の硬化剤との反応の間に発生したものであり、研磨層は、(a)少なくとも5:1の、好ましくは5.5:1よりも大きい、より好ましくは6:1よりも大きい、さらに好ましくは7:1よりも大きい、もっとも好ましくは8:1よりも大きい、104℃での剪断損失弾性率(G''):150℃での剪断損失弾性率(G'')の比;及び(b)研磨層の比重が、イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマー、硬化剤ブレンド及び予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアに関する計算比重の95%以下である;の一つ以上を特徴とする、研磨パッド。
【0053】
態様2:軟質セグメント領域がポリウレタン軟質セグメントであり、硬質セグメント領域がポリウレア-ポリウレタン硬質セグメントである、態様1の研磨パッド。
【0054】
態様3:硬化剤ブレンドが、単環芳香族ポリアミン硬化剤と、二つ以上の芳香環を有するポリアミン硬化剤とを含む、態様1又は2の研磨パッド。
【0055】
態様4:単環芳香族ポリアミン硬化剤:二つ以上の芳香環を有するポリアミン硬化剤のモル比が、20:80~80:20、好ましくは25:75~75:25;より好ましくは30:70~70:30;さらに好ましくは35:65~65:35;又はなおさらに好ましくは40:60~60:40である、態様3の研磨パッド。
【0056】
態様5:単環芳香族ポリアミン硬化剤が、ジメチルチオトルエンジアミン、モノメチルチオトルエンジアミン又は両方を含む、前記態様のいずれか一つの研磨パッド。
【0057】
態様6:二つ以上の芳香環を有するポリアミン硬化剤が、4,4′-メチレン-ビス-o-クロロアニリン;4,4′-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)又は両方を含む、前記態様のいずれか一つの研磨パッド。
【0058】
態様7:イソシアネート末端化オリゴマー又はポリマーが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート又はそれらの組み合わせを含む、前記態様のいずれか一つの研磨パッド。
【0059】
態様8:気孔が少なくとも23ミクロンの平均孔径を有する、前記態様のいずれか一つの研磨パッド。
【0060】
態様9:孔径が、予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアの孔径よりも10%大きい、前記態様のいずれか一つの研磨パッド。
【0061】
態様10:研磨層が、1.0g/cm3未満、好ましくは0.8g/cm3未満、より好ましくは0.75g/cm3未満、さらに好ましくは0.72g/cm3未満、なおさらに好ましくは0.70g/cm3未満、なおさらに好ましくは0.68g/cm3未満の比重を有する、前記態様のいずれか一つの研磨パッド。
【0062】
態様11:金属、好ましくはタングステン、銅、ルテニウム又は酸化物、より好ましくはタングステンを含む基板を提供する工程及び前記態様のいずれか一つの研磨パッドを使用して基板を研磨する工程を含む方法。
【0063】
本明細書に開示されるすべての範囲は終点を含み、終点は、独立して、互いに組み合わせ可能である(たとえば、「25重量%以下、又はより具体的には5重量%~20重量%」の範囲は、「5重量%~25重量%」の範囲の終点及びすべての中間値を含む、など)。そのうえ、述べられる上限及び下限を組み合わせて範囲を形成することもできる(たとえば、「少なくとも1重量%又は少なくとも2重量%」と「10又は5重量%以下」とを組み合わせて、「1~10重量%」又は「1~5重量%」又は「2~10重量%」又は「2~5重量%」の範囲を形成することもできる)。
【0064】
本開示は、択一的に、本明細書に開示される適切な構成要素を含むこともできるし、それらからなることもできるし、それらから本質的になることもできる。本開示は、追加的又は代替的に、従来技術の組成物に使用される、又は他のやり方では本開示の機能及び/又は目的の達成にとって必要ではない構成要素、材料、成分、補助剤又は種を含まない、又は実質的に含まないように調合されることもできる。
【0065】
引用されるすべての特許、特許出願及び他の参考文献は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。しかし、本出願におけるある語が、組み入れられる参考文献中の語と矛盾する、又は相容れないならば、本出願からの語が、組み入れられる参考文献からの相容れない語よりも優先する。
【0066】
本明細書中で別段の指定がない限り、すべての試験規格は、本出願の出願日の時点又は、優先権が主張されるならば、試験規格が記されている最先の優先権出願の出願日の時点で効力のある最新の規格である。