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特開2023-178249コーティング層を有するソフトコンタクトレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178249
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】コーティング層を有するソフトコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20231207BHJP
   C08G 81/02 20060101ALI20231207BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20231207BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20231207BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20231207BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20231207BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20231207BHJP
   A61L 27/26 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G02C7/04
C08G81/02
C08F226/06
C08F220/26
A61L27/44
A61L27/52
A61L27/16
A61L27/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089308
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2022090441
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】五反田 龍矢
(72)【発明者】
【氏名】岩切 規郎
【テーマコード(参考)】
2H006
4C081
4J031
4J100
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB07
2H006BB10
2H006BC07
4C081AB23
4C081CA011
4C081CA081
4C081DA02
4C081DA12
4C081DC04
4C081EA05
4C081EA06
4J031AA20
4J031AA22
4J031AA25
4J031AA27
4J031AB02
4J031AC07
4J031AD03
4J031AE02
4J031AE03
4J031AE12
4J031AE13
4J031AF21
4J031AF30
4J100AA02Q
4J100AA03Q
4J100AB02P
4J100AB02Q
4J100AB03P
4J100AB03Q
4J100AB07P
4J100AB07Q
4J100AB08P
4J100AC03Q
4J100AC04Q
4J100AC23Q
4J100AE03Q
4J100AE04Q
4J100AE76P
4J100AG02Q
4J100AG04Q
4J100AG08Q
4J100AJ01Q
4J100AJ02Q
4J100AJ03Q
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4J100AJ09Q
4J100AJ10Q
4J100AK03Q
4J100AK08Q
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100AL04P
4J100AL04Q
4J100AL05P
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL09P
4J100AL10P
4J100AL11Q
4J100AL66P
4J100AL67P
4J100AL75P
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4J100AM15P
4J100AM15Q
4J100AM19P
4J100AM21Q
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4J100BA03P
4J100BA03Q
4J100BA04P
4J100BA05Q
4J100BA08P
4J100BA08Q
4J100BA14P
4J100BA15P
4J100BA16P
4J100BA16Q
4J100BA29P
4J100BA31P
4J100BA32P
4J100BA56P
4J100BA56Q
4J100BA63P
4J100BA64P
4J100BA81P
4J100BB18Q
4J100BC04P
4J100BC04Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA01
4J100DA37
4J100DA50
4J100DA62
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA28
4J100JA34
4J100JA50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表面に2層のコーティング層を形成し、長期間、連続的に装用された場合でも該表面に十分な親水性及び潤滑性を有するソフトコンタクトレンズを提供することである。
【解決手段】ヒドロゲル、オキサゾリン基を有する第1のコーティング層又はオキサゾリン基及び該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を有する第1のコーティング層、並びに、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する第2のコーティング層を含むソフトコンタクトレンズが、上記の課題を解決できるとの知見を見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)(2)(3)又は(1‘)(2‘)(3‘)を含む、ソフトコンタクトレンズであって、
(1)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するヒドロゲル(P1)、
(2)該ヒドロゲル(P1)の表面に形成されているオキサゾリン基を有する第1のコーティング層、ここで、該第1のコーティング層はオキサゾリン基含有モノマー由来の構成単位を含む第1の重合体(P2)を含み、
(3)該第1のコーティング層の表面に形成されているカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2のコーティング層、ここで、該第2のコーティング層は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位、並びに、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位及び/又はフェノール性水酸基含有モノマー由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)又はカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する連鎖移動剤若しくはカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する開始剤存在下で重合された2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)を含み、
ここで、該ヒドロゲル(P1)のカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が該第1のコーティング層のオキサゾリン基と共有結合を介して結合されており、及び、該第1のコーティング層のオキサゾリン基が該第2のコーティング層のカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基と共有結合を介して結合されている、
又は、
(1‘)ヒドロゲル(P1‘)、
(2‘)該ヒドロゲル(P1‘)の表面に形成されているオキサゾリン基及び該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を有する第1のコーティング層、ここで、該第1のコーティング層はオキサゾリン基含有モノマー由来の構成単位を含み、かつ該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を結合した第1の重合体(P2‘)を含む、
(3‘)該第1のコーティング層の表面に形成されているカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2のコーティング層、ここで、該第2のコーティング層は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位、並びに、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位及び/又はフェノール性水酸基含有モノマー由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)又はカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する連鎖移動剤若しくはカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する開始剤存在下で重合された2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)を含み、
ここで、該ヒドロゲル(P1‘)は該脂肪酸を取り込むことにより第1のコーティング層と結合されており、及び、該第1のコーティング層のオキサゾリン基が該第2のコーティング層のカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基と共有結合を介して結合されている、
ソフトコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記ヒドロゲル(P1)又は(P1‘)が(メタ)アクリル酸由来の構成単位若しくはポリ(メタ)アクリル酸を含み、及び/又は、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、請求項1に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記脂肪酸は、炭素数6~30の飽和脂肪酸及び炭素数6~30の不飽和脂肪酸から選択される1種類以上である請求項1に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記第1のコーティング層が2-イソプロペニル-2-オキサゾリン由来の構成単位を含む第1の重合体(P2)又は(P2´)からなる、請求項1~3のいずれか1に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記第2のコーティング層が(メタ)アクリル酸由来の構成単位、及び/又は、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)からなる、請求項1~3のいずれか1に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記第2のコーティング層が2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)からなる、請求項1~3のいずれか1に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1に記載のソフトコンタクトレンズの製造方法であって、以下の工程を含む、製造方法。
(1)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するヒドロゲル(P1)を、オキサゾリン基を有する第1の重合体(P2)を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
(2)(1)の浸漬後の第1のコーティング層が形成されたヒドロゲルを、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2の重合体(P3)を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1に記載のソフトコンタクトレンズの製造方法であって、以下の工程を含む、製造方法。
(1)ヒドロゲル(P1)を、オキサゾリン基及び該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を有する第1の重合体(P2´)を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
(2)(1)の浸漬後の第1のコーティング層が形成されたヒドロゲルを、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2の重合体(P3)を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面親水性及び潤滑性に優れるコーティング層を有するソフトコンタクトレンズ及び該レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトコンタクトレンズは、使用時の手軽さや便利さゆえに装用者が急増したが、その手軽さや便利さ故に、若年層を中心にソフトコンタクトレンズ装用の長時間化が進んでいることが報告されている(非特許文献1)。ソフトコンタクトレンズ装用の長時間化によって課題となるのは、ソフトコンタクトレンズ装用による装用者の角膜への酸素不足と装用による不快感である。
【0003】
シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズは、十分な酸素を角膜に浸透することができるため、角膜の健康に対する悪影響を最小限にすることを可能にする。しかし、その疎水性のため、装用者に乾燥感や不快感等を与えることとなるため、コンタクトレンズ表面の親水化が不可欠である。
【0004】
親水化の方法として、特許文献1、2は、「ソフトコンタクトレンズ用処理液へポリエチレングリコールやセルロース系高分子等を配合することでソフトコンタクトレンズ表面に親水性を付与、増強し、装用感を改善する技術」を開示している。
特許文献3は、「生体膜に由来するリン脂質類似構造を有しており非常に親水性および保湿性が高いことが知られている、ホスホリルコリン基含有単量体とブチルメタクリレー卜との共重合体を、ソフトコンタクトレンズ用処理液に添加することで装用感を改善した技術」を開示している。
これらの方法は、優れた親水性をソフトコンタクトレンズに付与することできるものの、コンタクトレンズ表面へは物理的相互作用のみで吸着していることから、終日装用した場合は親水性が不十分となる懸念があった。
【0005】
特許文献4は、「ソフトコンタクトレンズにプラズマ処理を施す技術」を開示している。
特許文献5は、「反応性基を有するソフトコンタクトレンズと反応性基を有する親水性ポリマーとを化学的に結合させてソフトコンタクトレンズ表面を親水化する技術」を開示している。
これらの方法では、ソフトコンタクトレンズ自体に処理を施すことで、終日装用した場合でも、ソフトコンタクトレンズ表面は十分な親水性を付与することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Walline J. J., 2013, Long-term Contact Lens Wear of Children and Teens, Eye & Contact Lens, 39, 283-289.
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2009/032122
【特許文献2】WO2012/098653
【特許文献3】US2009/0100801
【特許文献4】WO2010/092686
【特許文献5】WO2001/074932
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4に記載の方法は、表面処理工程が複雑であることから、高度に管理された製造設備が必要となり経済的に不利となる面もあった。特許文献5に記載の方法では、コーティングの耐久性に関する評価はなされておらず、長期間、連続的に装用した場合に親水性が不十分となる懸念があった。
【0009】
本発明は、表面に2層のコーティング層を形成し、長期間、連続的に装用された場合でも該表面に十分な親水性及び潤滑性を有するソフトコンタクトレンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、ヒドロゲル、オキサゾリン基を有する第1のコーティング層又はオキサゾリン基及び該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を有する第1のコーティング層、並びに、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する第2のコーティング層を含むソフトコンタクトレンズが、上記の課題を解決できるとの知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.以下の(1)(2)(3)又は(1‘)(2‘)(3‘)を含む、ソフトコンタクトレンズであって、
(1)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するヒドロゲル(P1)、
(2)該ヒドロゲルの表面に形成されているオキサゾリン基を有する第1のコーティング層、ここで、該第1のコーティング層はオキサゾリン基含有モノマー由来の構成単位を含む第1の重合体(P2)を含み、
(3)該第1のコーティング層の表面に形成されているカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2のコーティング層、ここで、該第2のコーティング層は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位、並びに、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位及び/又はフェノール性水酸基含有モノマー由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)又はカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する連鎖移動剤若しくはカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する開始剤存在下で重合された2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)を含み、
ここで、該ヒドロゲルのカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が該第1のコーティング層のオキサゾリン基と共有結合を介して結合されており、及び、該第1のコーティング層のオキサゾリン基が該第2のコーティング層のカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基と共有結合を介して結合されている、
又は、
(1‘)ヒドロゲル(P1‘)、
(2‘)該ヒドロゲルの表面に形成されているオキサゾリン基及び該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を有する第1のコーティング層、ここで、該第1のコーティング層はオキサゾリン基含有モノマー由来の構成単位を含み、かつ該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を結合した第1の重合体(P2‘)を含む、
(3‘)該第1のコーティング層の表面に形成されているカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2のコーティング層、ここで、該第2のコーティング層は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位、並びに、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位及び/又はフェノール性水酸基含有モノマー由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)又はカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する連鎖移動剤若しくはカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する開始剤存在下で重合された2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)を含み、
ここで、該ヒドロゲルは該脂肪酸を取り込むことにより第1のコーティング層と結合されており、及び、該第1のコーティング層のオキサゾリン基が該第2のコーティング層のカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基と共有結合を介して結合されている、
ソフトコンタクトレンズ。
2.前記ヒドロゲル(P1)又は(P1‘)が(メタ)アクリル酸由来の構成単位若しくはポリ(メタ)アクリル酸を含み、及び/又は、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、前項1に記載のソフトコンタクトレンズ。
3.前記脂肪酸は、炭素数6~30の飽和脂肪酸及び炭素数6~30の不飽和脂肪酸から選択される1種類以上である前項1に記載のソフトコンタクトレンズ。
4.前記第1のコーティング層が2-イソプロペニル-2-オキサゾリン由来の構成単位を含む第1の重合体(P2)又は(P2´)からなる、前項1~3のいずれか1に記載のソフトコンタクトレンズ。
5.前記第2のコーティング層が(メタ)アクリル酸由来の構成単位、及び/又は、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)からなる、前項1~3のいずれか1に記載のソフトコンタクトレンズ。
6.前記第2のコーティング層が2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)からなる、前項1~3のいずれか1に記載のソフトコンタクトレンズ。
7.前項1~3のいずれか1に記載のソフトコンタクトレンズの製造方法であって、以下の工程を含む、製造方法。
(1)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するヒドロゲル(P1)を、オキサゾリン基を有する第1の重合体(P2)を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
(2)(1)の浸漬後の第1のコーティング層が形成されたヒドロゲルを、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2の重合体(P3)を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
8.前項1~3のいずれか1に記載のソフトコンタクトレンズの製造方法であって、以下の工程を含む、製造方法。
(1)ヒドロゲル(P1)を、オキサゾリン基及び該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を有する第1の重合体(P2´)を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
(2)(1)の浸漬後の第1のコーティング層が形成されたヒドロゲルを、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2の重合体(P3)を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
【発明の効果】
【0012】
本発明のソフトコンタクトレンズは、長期間、連続的に装用された場合でも表面に十分な親水性及び潤滑性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ソフトコンタクトレンズ及び該レンズの製造方法)
本発明は、以下の(1)(2)(3)又は(1‘)(2‘)(3‘)を含むソフトコンタクトレンズ及び該レンズの製造方法に関する。
(1)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するヒドロゲル(P1)、
(2)該ヒドロゲルの表面に形成されているオキサゾリン基を有する第1のコーティング層、ここで、該第1のコーティング層はオキサゾリン基含有モノマー由来の構成単位を含む第1の重合体(P2)を含み、
(3)該第1のコーティング層の表面に形成されているカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2のコーティング層、ここで、該第2のコーティング層は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位、並びに、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位及び/又はフェノール性水酸基含有モノマー由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)又はカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する連鎖移動剤若しくはカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する開始剤存在下で重合された2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)を含み、
ここで、該ヒドロゲルのカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が該第1のコーティング層のオキサゾリン基と共有結合を介して結合されており、及び、該第1のコーティング層のオキサゾリン基が該第2のコーティング層のカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基と共有結合を介して結合されている、
又は、
(1‘)ヒドロゲル(P1‘)、
(2‘)該ヒドロゲルの表面に形成されているオキサゾリン基及び該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を有する第1のコーティング層、ここで、該第1のコーティング層はオキサゾリン基含有モノマー由来の構成単位を含み、かつ該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を結合した第1の重合体(P2‘)を含む、
(3‘)該第1のコーティング層の表面に形成されているカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2のコーティング層、ここで、該第2のコーティング層は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位、並びに、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位及び/又はフェノール性水酸基含有モノマー由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)又はカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する連鎖移動剤若しくはカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する開始剤存在下で重合された2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位を含む第2の重合体(P3)を含み、
ここで、該ヒドロゲルは該脂肪酸を取り込むことにより第1のコーティング層と結合されており、及び、該第1のコーティング層のオキサゾリン基が該第2のコーティング層のカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基と共有結合を介して結合されている。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、濃度の範囲)を段階的に記載した場合、各下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは90以下」という記載において、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90とを組み合わせて、「10以上90以下」とすることができる。また、例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載においても、同様に「10~90」とすることができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、他の類似用語についても同様である。
【0014】
<ヒドロゲルについて>
本発明のヒドロゲル(P1)は、1)1つ以上のモノマー(単量体)に、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する化合物(1)を混合したヒドロゲル用モノマー組成物を重合し、得られたヒドロゲル用重合体を含水させることで得られる。
本発明のヒドロゲル(P1‘)は、化合物(1)を含まないヒドロゲル用モノマー組成物を重合し、得られたヒドロゲル用重合体を含水させることで得られる。
本発明のヒドロゲルは、各モノマーに基づく又は各モノマーから誘導される各モノマー由来の構成単位を含む。
モノマーは、親水性モノマー、疎水性モノマー、シリコーン含有モノマー、架橋剤、UV吸収ビニルモノマー等である。
【0015】
カルボキシル基を有する化合物(1)としては、N,N-2-アクリルアミドグリコール酸、β-メチル-アクリル酸(クロトン酸)、β-アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、1-カルボキシ-4-フェニル-1,3-ブタジエン、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸、ビニル安息香酸などのモノマーや、ポリ(メタ)アクリル酸、アルギン酸、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガム、ペクチン、カラギナン、カラヤガム、スクシノグリカン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などのポリマーが挙げられる
これらの化合物の1種又は2種以上を用いることができ、好ましくは(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸、アルギン酸、ヒアルロン酸である。
カルボキシル基を有する化合物(A)の含有量は、ヒドロゲルを構成するモノマー組成物100質量%に対して、通常0.1~20質量%、好ましくは0.5~10質量%である。
【0016】
フェノール性水酸基を有する化合物(1)としては、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート(4-ヒドロキシフェニルメタクリレート)、N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、4-ヒドロキシフェニルマレイミドなどのモノマーや、カテキン、アントシアニン、プロアントシアニジン、タンニンルチン、イソフラボン、オレウロペイン、リグニン、クルクミンなどのポリフェノールが挙げられる。
これらの化合物の1種又は2種以上を用いることができ、好ましくは4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、タンニンである。
フェノール性水酸基を有する化合物(A)の含有量は、ヒドロゲルを構成するモノマー組成物100質量%に対して、通常0.1~20質量%、好ましくは1~10質量%である。
【0017】
親水性モノマー(単量体)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)クリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等のイオン性基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド等の含窒素単量体;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
親水性モノマーはこれらの1種又は2種以上を用いることができる。親水性モノマーの含有量は、ヒドロゲルを構成するモノマー組成物100質量%に対して、通常10~99.9質量%、好ましくは20~99質量%、より好ましくは30~98質量%である。
【0018】
疎水性モノマー(単量体)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の疎水性ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられる。
疎水性モノマーはこれらの1種又は2種以上を用いることができる。
疎水性モノマーの含有量は、ヒドロゲルを構成するモノマー組成物100質量%に対して、通常1~20質量%、好ましくは5~10質量%である。
【0019】
シリコーン含有モノマー(単量体)としては、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、メタクリル酸2-ヒドロキシ-3-[3-[メチルビス(トリメチルシロキシ)シリル]プロポキシ]プロピル、2-(メタクリロイルオキシ)エチル=3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル=スクシナート、(メタ)アクリルポリジメチルシロキサン、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレートなどが挙げられる。シリコーン含有モノマーはこれらの1種又は2種以上を用いることができる。
シリコーン含有モノマーの含有量は、ヒドロゲルを構成するモノマー組成物100質量%に対して、通常20~90質量%、好ましくは25~80質量%、より好ましくは30~70質量%である。
【0020】
架橋剤(単量体)としては、例えば、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビニルメタクリレート、エチレンジアミンジ-(メタ)アクリルアミド、グリセロールジメタクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、アリル(メタ)アクリレート、N-アリル-(メタ)アクリルアミド、1,3-ビス(メタクリルアミドプロピル)-1,1,3,3-テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジヒドロキシエチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
架橋剤は、これらの1種又は2種以上を用いることができ、好ましくはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテルである。
架橋剤の含有量はヒドロゲルを構成するモノマー組成物100質量%に対して、通常0.01~10質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~5質量%である。
【0021】
上記以外のモノマーとしてUV吸収ビニルモノマー(単量体)をヒドロゲル用モノマー組成物に配合しても良い。
UV吸収ビニルモノマーとしては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-ビニルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-アクリリルオキシ(acrylyloxy)フェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルアミドメチル-5-tertオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリルアミドフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリルアミドフェニル)-5-メトキシベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリルオキシプロピル-3’-t-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリルオキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-5-メトキシ-3-(5-(トリフルオロメチル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)ベンジルメタクリレート、2-ヒドロキシ-5-メトキシ-3-(5-メトキシ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)ベンジルメタクリレート、3-(5-フルオロ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-メトキシベンジルメタクリレート、3-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-メトキシベンジルメタクリレート、3-(5-クロロ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-メトキシベンジルメタクリレート、2-ヒドロキシ-5-メトキシ-3-(5-メチル-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)ベンジルメタクリレート、2-ヒドロキシ-5-メチル-3-(5-(トリフルオロメチル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)ベンジルメタクリレート、4-アリル-2-(5-クロロ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-6-メトキシフェノール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-tert-5’[3”-(4”-ビニルベンジルオキシ)プロポキシ]フェニル}-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、フェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-エテニル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリルオキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2-プロペン酸、2-メチル-、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]エチルエステル、Norbloc)、2-{2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-[3’-メタクリロイルオキシプロポキシ]フェニル}-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(3’-アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]-5-トリフルオロメチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリルアミドフェニル)-5-メトキシベンゾトリアゾール、2-(3-アリル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-メタリル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-3’-t-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(3”-ジメチルビニルシリルプロポキシ)-2’-ヒドロキシ-フェニル)-5-メトキシベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルプロピル-3’-tert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-アクリロイルプロピル-3’-tert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-メチルアクリル酸3-[3-tert-ブチル-5-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]-プロピルエステル(CAS#96478-15-8)、2-(3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-(5-メトキシ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェノキシ)エチルメタクリレート;フェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-メトキシ-4-(2-プロペン-1-イル)(CAS#1260141-20-5);2-[2-ヒドロキシ-5-[3-(メタクリロイルオキシ)プロピル]-3-tert-ブチルフェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール;フェノール、2-(5-エテニル-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-、ホモポリマー(9CI)(CAS#83063-87-0)等が挙げられる。
UV吸収ビニルモノマーの含有量は、ヒドロゲルを構成するモノマー組成物100質量部に対して、通常0.1~30質量部、好ましくは0.2~20質量部、より好ましくは0.3~10質量部である。
【0022】
前記ヒドロゲル用モノマー組成物には、必要に応じて溶媒を含有させることもできる。溶媒としては重合条件下で反応しないものが使用でき、例えば、水、テトラヒドロフラン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテルジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、塩化メチレン、クロロホルム、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノール、メントール、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、exo-ノルボルネオール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、3-メチル-2-ブタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、2-ノナノール、2-デカノール、3-オクタノール、ノルボルネオール、tert-ブタノール、tert-アミルアルコール、2-メチル-2-ペンタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3-メチル-3-ペンタノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチル-2-ヘキサノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-クロロ-2-メチル-2-プロパノール、2-メチル-2-ヘプタノール、2-メチル-2-オクタノール、2-2-メチル-2-ノナノール、2-メチル-2-デカノール、3-メチル-3-ヘキサノール、3-メチル-3-ヘプタノール、4-メチル-4-ヘプタノール、3-メチル-3-オクタノール、4-メチル-4-オクタノール、3-メチル-3-ノナノール、4-メチル-4-ノナノール、3-メチル-3-オクタノール、3-エチル-3-ヘキサノール、3-メチル-3-ヘプタノール、4-エチル-4-ヘプタノール、4-プロピル-4-ヘプタノール、4-イソプロピル-4-ヘプタノール、2,4-ジメチル-2-ペンタノール、1-メチルシクロペンタノール、1-エチルシクロペンタノール、1-エチルシクロペンタノール、3-ヒドロキシ-3-メチル-1-ブテン、4-ヒドロキシ-4-メチル-1-シクロペンタノール、2-フェニル-2-プロパノール、2-メトキシ-2-メチル-2-プロパノール2,3,4-トリメチル-3-ペンタノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、2-フェニル-2-ブタノール、2-メチル-1-フェニル-2-プロパノールおよび3-エチル-3-ペンタノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-メチル-2-プロパノール、1-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
前記ヒドロゲル用モノマー組成物の重合は従来公知の方法により行えばよい。例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤等既知の重合開始剤を使用して行うことができる。
熱重合開始剤は、当業者に公知であり、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジハイドレート、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-{1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル}プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などのアゾ系重合開始剤、およびベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシヘキサノエート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
安全性と入手性の点でアゾ系重合開始剤が好ましく、反応性の面から、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、および2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)が特に好ましい。
【0024】
光重合開始剤は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4-ベンゾイル安息香酸、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-エチルアントラキノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-N-プロピルフェニルホスフィンオキシド、およびビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-N-ブチルフェニルホスフィンオキシド、Darocur(登録商標)およびIrgacur(登録商標)タイプなどが挙げられる。
好ましくは、Darocur(登録商標)1173およびDarocur(登録商標)2959、Irgacur(登録商標)819である。例えば、マクロマーに組み込まれ得るかまたは特殊なモノマーとして使用され得る反応性光開始剤も好適である。
【0025】
ヒドロゲル用重合体は、当業者に周知の方法で得ることができ、例えば、ポリプロピレン製などの疎水性表面を有するモールド(金型)を用い、ヒドロゲル用モノマー組成物を該モールドに充填して重合させることにより製造する。
【0026】
重合反応は、大気中で行ってもよいが、重合率を向上させる目的で窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。不活性ガス雰囲気中で重合する場合、重合系中の圧力は1kgf/cm以下とすることが望ましい。
【0027】
上記で得られたヒドロゲル用重合体は、モールドから公知の方法で剥離し、乾燥状態で取り出すことができる。また、ヒドロゲル用重合体をモールドとともに溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、および、これらの混合溶液)中に浸漬し、コンタクトレンズ基材を膨潤させ、剥離することもできる。
さらに、これら溶媒に繰り返し浸漬するなどして洗浄し、各成分の残渣や残留物、副生成物等を取り除くことができる。洗浄は、例えば、重合体を10~40℃下で、上記アルコールあるいは30質量%以上の濃度のアルコール水溶液に浸漬することで洗浄できる。
洗浄後、さらにアルコール濃度20~50質量%のアルコール水溶液に10分間~5時間浸漬する洗浄を加えるなどしてもよい。
なお、洗浄の際に、第1の重合体を添加することで、精製と第1層のコーティング処理を同時に行うことも可能である。
アルコール洗浄後、水に10分間~5時間浸漬することで、本発明のヒドロゲルを得ることができる。
【0028】
また、水洗浄の前に、アルコール濃度20~50質量%のアルコール水溶液に10分間~5時間浸漬する洗浄を加えてもよい。水としては、RO水、イオン交換水、蒸留水などの純水が好ましい。
【0029】
<第1のコーティング層について>
第1のコーティング層を構成する(に含まれる)第1の重合体(P2)は、オキサゾリン基含有モノマー由来の構成単位を含む重合体又はオキサゾリン基含有モノマー由来の構成単位を含み、かつ該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を結合した第1の重合体(P2‘)であれば特に限定されない。
なお、構成単位とは、各モノマーに基づく又は各モノマーから誘導される重合体に含まれる化合物の単位を意味する。
オキサゾリン基含有モノマー(オキサゾリン基含有化合物)としては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンを挙げることができ、これらの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができ、好ましくは2-イソプロペニル-2-オキサゾリンである。
第1の重合体は、上記のオキサゾリン基含有モノマー以外のその他のモノマーとの共重合体であることが好ましく、その他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸パーフルオロアルキルエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-アミノエチル及びその塩、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、メタクリル酸2-アミノエチル及びその塩等のメタクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等の(メタ)アクリル酸塩類;(メタ)アクリルニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β-不飽和単量体類;スチレン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β-不飽和芳香族単量体類が挙げられる。好ましくは、アクリル酸エチル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールである。
また、オキサゾリン基含有モノマー由来の構成単位を含み、かつ該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を結合した第1の重合体(P2´)は、オキサゾリン基を有するポリマーに、炭素数6~30の飽和脂肪酸、炭素数6~30の不飽和脂肪酸を反応させることで得ることができる。
反応例としては、オキサゾリン基が脂肪酸のカルボキシル基と共有結合(アミドエステル結合)する。
炭素数が6~30の飽和脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、イソカプロン酸、イソエナント酸、イソカプリル酸、イソペラルゴン酸、イソカプリン酸、イソラウリン酸、イソミリスチン酸、イソペンタデシル酸、イソパルミチン酸、イソマルガリン酸、イソステアリン酸、イソアラキジン酸、イソヘンイコシル酸、イソベヘン酸、イソリグノセリン酸、イソセロチン酸、イソモンタン酸、イソメリシン酸が挙げられる。
炭素数が6~30の不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸が挙げられ、好ましくは、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソカプリン酸、イソラウリン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸であり、さらに好ましくは、イソステアリン酸、オレイン酸である。
【0030】
上記第1の重合体は、オキサゾリン基含有単量体由来の構成単位が、全構成単位100モル%に対して、10~95モル%であることが好ましく、より好ましくは20~90モル%であり、更に好ましくは25~80モル%である。
上記第1の重合体の重量平均分子量は、5,000~150,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~100,000である。
また、第1の重合体は、市販の重合体を用いてもよく、好ましい市販のオキサゾリン基含有ポリマーとしては、日本触媒(株)のエポクロス(登録商標) WS-300、エポクロス(登録商標) WS-700等である。
【0031】
<第2のコーティング層について>
第2のコーティング層を構成する(に含まれる)第2の重合体(P3)は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位、並びに、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位及び/又はフェノール性水酸基含有モノマー由来の構成単位を含む重合体、又は、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する連鎖移動剤若しくはカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する開始剤存在下で重合された2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び/若しくはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート由来の構成単位を含む重合体であれば特に限定されない。
なお、構成単位とは、各モノマーに基づく又は各モノマーから誘導される重合体に含まれる化合物の単位を意味する。
【0032】
カルボキシル基含有モノマー(カルボキシル基含有化合物)としては、例えば、β-メチル-アクリル酸(クロトン酸)、β-アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、1-カルボキシ-4-フェニル-1,3-ブタジエン、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、ビニル安息香酸等を例示することができる。好ましくは、(メタ)アクリル酸であり、より好ましくは、メタクリル酸である。
カルボキシル基を有するポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸、アルギン酸、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガム、ペクチン、カラギナン、カラヤガム、スクシノグリカン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などを主成分として含む。
別のカルボキシル基を有するポリマーは、末端に1つのカルボキシル基を持つポリエチレングリコール(PEG)(例えば、HO-PEG-COOH、H3CO-PEG-COOH)、両末端にカルボキシル基を持つPEG(HOOC-PEG-COOH)、1つ以上のカルボキシル基を持つマルチアームPEG、PEGデンドリマーなどを主成分として含む。
カルボキシル基を有するポリマーは、好ましくはカルボキシル基を有するモノマー以外の親水性モノマーとの重合反応で得られる共重合体である。カルボキシル基を有するモノマー以外の親水性モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)クリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等のイオン性基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド等の含窒素単量体;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カルボキシル基を有するモノマー以外の親水性モノマーとしては、これらの1種又は2種以上を用いることができ、好ましくは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N-ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートであり、より好ましくは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである。
【0033】
フェノール性水酸基含有モノマー(フェノール性水酸基含有化合物)としては、例えば、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート(4-ヒドロキシフェニルメタクリレート)、N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、4-ヒドロキシフェニルマレイミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート(4-ヒドロキシフェニルメタクリレート)である。
フェノール性水酸基を有するモノマー以外の親水性のモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)クリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等のイオン性基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド等の含窒素単量体;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。フェノール性水酸基を有するモノマー以外の親水性のモノマーは、これらの1種又は2種以上を用いることができ、好ましくは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N-ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートであり、より好ましくは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである。
【0034】
カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する連鎖移動剤としては、例えば、2-(((ドデシルチオ)カルボノチオイル)チオ)プロピオン酸、3-((((1-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)プロピオン酸、4-((((2-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)-4-シアノペンタン酸、4-シアノ-4-(((ドデシルチオ)カルボノチオイル)チオ)ペンタン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)―2-メチルプロピオン酸、3-(((ベンジルチオ)カルボノチオイル)チオ)プロピオン酸、S-(チオベンゾイル)チオグリコール酸、4-シアノ-4-((フェニルカルボノチオイル)チオ)ペンタン酸等が挙げられる。
カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含有する開始剤としては、例えば、ヨード酢酸、2-ヨードプロピオン酸、2-ヨードブタン酸、2-ヨード-2-フェニル酢酸等が挙げられる。
【0035】
上記第2の重合体に含まれるカルボキシル基含有又はフェノール性水酸基含有モノマー由来の構成単位は、全構成単位100モル%に対して、5~95モル%であることが好ましく、より好ましくは7~90モル%であり、更に好ましくは10~80モル%である。
【0036】
第2の重合体の重量平均分子量は1,000~5,000,000であり、好ましくは10,000~3,000,000、より好ましくは20,000~2,000,000、更に好ましくは50,000~1,500,000である。
重量平均分子量が1,000未満であると親水性、潤滑性が不十分となる恐れがあり、重量平均分子量が5,000,000を超える場合は、粘度が増大して取扱いが困難となるおそれがある。
【0037】
<重合反応>
上記第1の重合体(第1のコーティング層)および第2の重合体(第2のコーティング層)を得るための重合反応は、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスで置換または雰囲気においてラジカル重合、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の公知の方法により行うことができる。精製等の観点から好ましくは溶液重合が挙げられる。ポリマーの精製は、再沈殿法、透析法、限外濾過法など一般的な精製方法により行うことができる。
【0038】
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系ラジカル重合開始剤、有機過酸化物、過硫酸化物、ヨウ素系重合開始剤等を挙げることができる。
【0039】
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロピル)二塩酸塩、2,2-アゾビス(2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)二塩酸塩、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2-アゾビスイソブチルアミド二水和物、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。
【0040】
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルペルオキシネオデカノエート(パーブチル(登録商標)ND)、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、コハク酸ペルオキシド(=サクシニルペルオキシド)等が挙げられる。
【0041】
過硫酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
ヨウ素系重合開始剤としては、例えば、ヨード酢酸、2-ヨードプロピオン酸、2-ヨードブタン酸、2-ヨード-2-フェニル酢酸等が挙げられる。
【0043】
これらのラジカル重合開始剤は、単独で用いることができ、また、2種以上を混合して用いることもできる。重合開始剤の使用量は、親水性ポリマーの単量体組成物100質量部に対して通常0.001~10質量部、好ましくは0.01~5.0質量部である。
【0044】
重合反応は、連鎖移動剤の存在下行うことができ、該連鎖移動剤としては、例えば、2-(((ドデシルチオ)カルボノチオイル)チオ)プロピオン酸、3-((((1-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)プロピオン酸、4-((((2-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)-4-シアノペンタン酸、4-シアノ-4-(((ドデシルチオ)カルボノチオイル)チオ)ペンタン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)―2-メチルプロピオン酸、3-(((ベンジルチオ)カルボノチオイル)チオ)プロピオン酸、S-(チオベンゾイル)チオグリコール酸、4-シアノ-4-((フェニルカルボノチオイル)チオ)ペンタン酸等が挙げられる。
【0045】
重合反応は、溶媒の存在下行うことができ、該溶媒としては、単量体組成物を溶解し、反応しないものが使用できる。該溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒;エチルセルソルブ、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン等の直鎖または環状のエーテル系溶媒;アセトニトリル、ニトロメタン等の含窒素系溶媒が挙げられる。好ましくは、水、またはアルコ-ル又はそれらの混合溶媒が挙げられる。
【0046】
<ソフトコンタクトレンズの製造方法について>
本発明のソフトコンタクトレンズの製造方法は、ヒドロゲルと第1の重合体を共有結合により結合させる又はヒドロゲルが第1の重合体の脂肪酸を取り込むことによりヒドロゲルと第1のコーティング層が結合される工程、さらに、第1の重合体と第2の重合体を共有結合により結合させる工程を含めば、特に限定されない。例えば、以下の工程を例示することができる。
(1)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するヒドロゲルを、オキサゾリン基を有する第1のコーティング層を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
(2)(1)の浸漬後の第1のコーティング層が形成されたヒドロゲルを、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2のコーティング層を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
又は
(1)ヒドロゲルを、オキサゾリン基及び該オキサゾリン基と共有結合した脂肪酸を有する第1のコーティング層を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
(2)(1)の浸漬後の第1のコーティング層が形成されたヒドロゲルを、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する第2のコーティング層を溶解させた溶液中に浸漬させる工程
【0047】
<ヒドロゲルと第1のコーティング層の反応>
ヒドロゲルと第1のコーティング層(第1の重合体)は、ヒドロゲルのカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基と、第1の重合体中のオキサゾリン基を反応させることで共有結合を介して結合する。
または、ヒドロゲルと第1のコーティング層(第1の重合体)は、ヒドロゲルが第1の重合体中の脂肪酸を取り込むことにより結合する。
【0048】
上記反応は、第1の重合体を溶解させた溶液中にヒドロゲルを浸漬させ、約20~約90℃の温度で、約0.2時間~約24時間、好ましくは約0.5時間~約12時間、さらに好ましくは、約1時間~6時間行われる。
【0049】
第1の重合体を溶解させる溶媒は、第1の重合体が溶解し、反応しない溶媒であれば特に限定しないが、好ましくは水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、あるいはこれらの混合溶媒である。
【0050】
上記反応は、ヒドロゲル用重合体の洗浄工程と一緒に行うこともできる。例えば、ヒドロゲルを、第1の重合体を溶解した洗浄液に浸漬させ、約20~約90℃の温度で、約0.2時間~約24時間、好ましくは約0.5時間~約12時間、さらに好ましくは、約1時間~6時間洗浄することで行われる。
【0051】
<第1のコーティング層と第2のコーティング層の反応>
第1のコーティング層と第2のコーティング層の反応は、第1の重合体中のオキサゾリン基と、第2の重合体中のカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を反応させることで共有結合を介して結合する。
【0052】
上記反応は、第2の重合体を溶解させた溶液中に第1の重合体を反応させたヒドロゲルを浸漬させ、約20~約125℃の温度で、約0.2時間~約24時間、好ましくは約0.5時間~約12時間、さらに好ましくは、約1時間~6時間行う。
【0053】
第2の重合体を溶解させる溶媒は、第2の重合体が溶解し、反応しない溶媒であれば特に限定しないが、好ましくは水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、あるいはこれらの混合溶媒である。
【0054】
上記反応は、第1の重合体と反応させたヒドロゲルの洗浄工程と一緒に行うこともできる。例えば、第1の重合体と反応させたヒドロゲルを、第2の重合体を溶解した洗浄液に浸漬させ、約20~約90℃の温度で、約0.2時間~約24時間、好ましくは約0.5時間~約12時間、さらに好ましくは、約1時間~6時間洗浄することで行われる。
【0055】
また、上記反応は、第1の重合体と反応させたヒドロゲルの滅菌工程と一緒に行うこともできる。例えば、第1の重合体を反応させたヒドロゲルを、第2の重合体を溶解させた生理食塩水とともにレンズパッケージまたは密閉可能なバイアルに浸漬する。その後、約118℃~約125℃の温度で約20~90分間オートクレーブ処理することにより行う。
【0056】
<本発明のソフトコンタクトレンズの構成例>
本発明のソフトコンタクトレンズの構成例は、以下の組み合わせを例示することができるが、特に限定されない。
(1)ヒドロゲルは2-ヒドロキシエチルメタクリレート及びメタクリル酸由来の構成単位を含み、第1のコーティング層は2-イソプロペニル-2-オキサゾリン由来の構成単位を含み、及び、第2のコーティング層はメタクリル酸由来の構成単位を含む。
(2)ヒドロゲルはメタクリル酸由来の構成単位を含み、第1のコーティング層は2-イソプロペニル-2-オキサゾリン由来の構成単位を含み、及び、第2のコーティング層はメタクリル酸由来の構成単位を含む。
(3)ヒドロゲルは4-ヒドロキシフェニルメタクリレート由来の構成単位を含み、第1のコーティング層は2-イソプロペニル-2-オキサゾリン由来の構成単位を含み、及び、第2のコーティング層は4-ヒドロキシフェニルメタクリレート由来の構成単位を含む。
(4)ヒドロゲルはポリアクリル酸(好ましい重量平均分子量は5,000~1,000,000である)を含み、第1のコーティング層はエポクロスWS-300を含み、及び、第2のコーティング層はメタクリル酸由来の構成単位を含む。
(5)第1のコーティング層はエポクロスWS-300及びオレイン酸を含み、及び、第2のコーティング層はメタクリル酸由来の構成単位を含む。
【0057】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
合成例、実施例及び比較例で用いた成分を以下に示す。
IPO:2-イソプロペニル-2-オキサゾリン
MAA:メタクリル酸
PAA:ポリアクリル酸
4-HPMA:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
HBMA:2-ヒドロキシブチルメタクリレート
NVP:N-ビニルピロリドン
DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド
MMA:メタクリル酸メチル
ETS:2-(メタクリロイルオキシ)エチル=3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル=スクシナート
SiGMA:メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート
TRIS:トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート
MCR-M11:分子量約1,000のポリジメチルシロキサン片末端メタクリレート
TEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート
EtOH:エタノール
NPA:1-プロパノール(ノルマルプロパノール)
IPA:2-プロパノール(イソプロパノール)
HeOH:ヘキサノール
AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)
I-819:Irgacur(登録商標)819フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
MPC:2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン
PME-1000:分子量約1,000のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート
EA:エチルアクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
PB-ND:t-ブチルペルオキシネオデカノエート
V-50:2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩
【0059】
[ヒドロゲルの調整]
<合成例1-1>
MAA 2.0質量%、HBMA 22.5質量%、NVP 20.0質量%、SiGMA 20.0質量%、MMA 5.0質量%、MCR-M11 30.0質量%、TEGDMA 0.50質量%、およびNPA 10.0質量部を混合した。続いて、AIBN 0.5質量部を溶解してヒドロゲル用組成物を得た。
前記ヒドロゲル用組成物をモールドへと分注し、100℃に設定した重合用オーブンで2時間加熱することで、ヒドロゲル用重合体を得た。
前記重合体をモールドから取り出し、2-プロパノール:イオン交換水=1:1溶液約20gに4時間浸漬後、イオン交換水約20gに2時間浸漬することでカルボキシル基を有するヒドロゲルを得た。
【0060】
<合成例1-2~1-4>
組成物中の各成分の配合割合、及び重合条件を表1に記載のとおりに変更した以外は、合成例1-1と同様にして、ヒドロゲルを調整した。
合成例1-2では、モールドへと分注したヒドロゲル用組成物をUV-LED照射器(照射光波長 405nm)内に入れ、室温下で1.5mW/cmの照射強度で30分間、UV照射を行うことにより、ヒドロゲル用重合体を得た。
合成例1―2のヒドロゲルはフェノール性水酸基を有する。
合成例1―3のヒドロゲルはカルボキシル基を有する。なお、PAAの平均分子量は250,000である。
合成例1-4のヒドロゲルはカルボキシル基及びフェノール性水酸基を有さない。
【0061】
[第1の重合体溶液の調整]
<合成例2-1>
IPO 16.3g、EA 3.7gを、水 180.0gに溶解し重合溶液を得た。
重合溶液を窒素雰囲気下で60℃まで昇温したのち、V-50 0.50gを添加して重合を開始し、9時間反応することで共重合体溶液を得た。得られた重合体溶液は透析精製により不純物を除去したのち、第1の重合体の濃度が5質量%になるように水で希釈することで、第1の重合体水溶液を得た。
得られた共重合体の重量平均分子量の測定方法は以下の通りである。なお、合成例2―2~合成例3-1~3-4も同様に測定した。
共重合体1mgを精製水1gへ溶解した。
カラム:SB-802.5 HQ+SB-806MN HQ
移動相:20mMリン酸緩衝液(pH7.0)
標準物質:ポリエチレングリコール/オキシド
計測機器:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
重量平均分子量の算出法:分子量計算プログラム(EcoSEC Date Anal
ysis)
流量:毎分0.5mL
注入量:100μL
カラムオーブン:45℃
測定時間:70分間
【0062】
<合成例2-2>
IPO 4.0g、PME-1000 15.1g、EA 0.9gを、水 180.0gに溶解し重合溶液を得た。重合溶液を窒素雰囲気下で60℃まで昇温したのち、V-50 0.50gを添加して重合を開始し、9時間反応することで共重合体溶液を得た。得られた重合体溶液は透析精製により不純物を除去したのち、第1の重合体の濃度が5質量%になるように水で希釈することで、第1の重合体水溶液を得た。
【0063】
<合成例2-3>
エポクロス(登録商標) WS-300 5.0gに、IPA 5.0gおよびオレイン酸 0.2gを加え、60℃で12時間加熱し、エポクロス(登録商標) WS-300のオキサゾリン基にオレイン酸を部分的に結合させた。その後、反応溶液に吸着剤 2.0gを加えて室温で2時間撹拌し、未反応のオレイン酸を除去した。ろ過によって吸着剤を取り除くことで、精製した反応溶液を得た。精製した反応溶液を濃縮することで、オキサゾリン基及び該オキサゾリン基にオレイン酸が結合した第1の重合体溶液を得た。
【0064】
<合成例2-4>
第1の重合体としては市販の重合体を用いることもできる。エポクロス(登録商標) WS-300を用いて第1の重合体の濃度が5質量%になるように水で希釈することで、第1の重合体溶液を得た。
【0065】
[第2の重合体溶液の調整]
<合成例3-1>
MAA 1.7g、MPC 20.0g、BMA 1.4gを、水 46.0g、エタノール 46.0gの混合溶媒に溶解し重合溶液を得た。重合溶液を窒素雰囲気下で55℃まで昇温したのち、PB-ND 0.29gを添加して重合を開始した。3時間後、温度を75℃まで昇温しさらに2時間反応することで、共重合体溶液を得た。得られた重合体溶液は透析精製により不純物を除去したのち、第2の重合体の濃度が5質量%になるように水で希釈することで、第2の重合体水溶液を得た。
【0066】
<合成例3-2~3-4>
重合溶液中の各成分量および重合条件を表2に記載のとおりに変更した以外は、合成例3-1と同様にして、第2の重合体水溶液を得た。
【0067】
[評価]
<透明性>
ヒドロゲル(コーティング前)、コンタクトレンズ(コーティング後)の透明性を目視で評価した。
【0068】
<含水率>
ヒドロゲル、コンタクトレンズの含水率はISO18369-4に記載の手法に従って測定した。
【0069】
<破断伸び>
ヒドロゲル、コンタクトレンズの破断伸びは、山電社製BAS-3305(W)破断強度解析装置を用い、JIS-K7127に従って測定した。ロードセルは2Nのものを使用した。測定試料として、ヒドロゲル、コンタクトレンズを幅2mmに切断したものを用い、クランプ間6mmとして1mm/秒の速度で引張り、破断した位置から破断伸びを評価した。
【0070】
<酸素透過係数(Dk)>
コンタクトレンズの酸素透過係数は、ISO18369-4に記載の手法に従って測定した。
【0071】
<WBUT:Water film Breaking Up Time>
ヒドロゲル、コンタクトレンズのWBUTは、ヒドロゲル、コンタクトレンズを静かに取り出し、表面の水膜が切れるまでの時間をストップウォッチで計測した。
WBUTが10秒以上であれば、濡れ性が良好であると判断した。
【0072】
<潤滑性>
比較用にpolymacon(2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を主成分とするソフトコンタクトレンズ)とomafilcon A(2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを主成分とするソフトコンタクトレンズ)の指先での潤滑性を官能評価により評価した。
10段階で評価を行い、polymaconの表面潤滑性を2、omafilcon Aの表面潤滑性を8として以下のように点数をつけた。
1:最も潤滑性が低い
10:最も潤滑性が高い
6点以上であれば潤滑性が良好であると判断した。
【0073】
<耐久性>
コンタクトレンズを、生理食塩液ですすいでから、利き手と反対の手のひらの上にレンズの内側を上にして乗せ、生理食塩液を1mL滴下した。利き手の人差し指の腹をコンタクトレンズの内側に当てて軽く押え、レンズを前後左右に動かして、30回こすって洗浄した。本操作を14回および30回繰り返した後、それぞれで潤滑性および濡れ性を評価した。
〇:濡れ性と潤滑性は低下しなかった。
△:濡れ性または潤滑性のいずれかが低下した。
×:濡れ性と潤滑性が低下した。
【0074】
<実施例1>
ヒドロゲルとしてMethafilcon A(HEMAとMAAの共重合体からなるコンタクトレンズ)を用いた。ヒドロゲルを合成例2-1で調整した第1の重合体溶液に浸漬させ、75℃で2時間加熱することでヒドロゲルと第1の重合体を共有結合により結合し、第1のコーティング層をヒドロゲルの表面に形成した。
次いで、合成例3-1で調整した第2の重合体溶液に前記第1のコーティング層を有するヒドロゲルを浸漬させ、75℃で2時間加熱することで、第1の重合体に第2の重合体を共有結合により結合し、表面に親水性コーティング層を有するコンタクトレンズを得た。
得られたコンタクトレンズは、水で十分に洗浄したのち、ISO18369-3に従い調整した生理食塩水に浸漬させ、121℃、20分の条件で滅菌処理し、各評価を行った。
【0075】
<実施例2~4>
ヒドロゲル、第1の重合体、および第2の重合体を表3に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして表面に親水性コーティング層を有するコンタクトレンズを得て、各評価を行った。
【0076】
<実施例5>
ヒドロゲルとして合成例1-4のヒドロゲルを用いた。ヒドロゲルを、合成例2-3で調整したオキサゾリン基及び該オキサゾリン基にオレイン酸が結合した第1の重合体溶液に、室温で1時間浸漬することで、第1のコーティング層を形成した。次いで、合成例3-4で調整した第2の重合体溶液に前記第1のコーティング層を有するヒドロゲルを浸漬させ、75℃で2時間加熱することで、第1の重合体に第2の重合体を共有結合により結合し、表面に親水性コーティング層を有するコンタクトレンズを得た。
得られたコンタクトレンズは、水で十分に洗浄したのち、ISO18369-3に従い調整した生理食塩水に浸漬させ、121℃、20分の条件で滅菌処理し、各評価を行った。
【0077】
<比較例1>
ヒドロゲルとしてPolymacon(HEMAを主成分とするソフトコンタクトレンズ)を用いた。ヒドロゲルを、エポクロス(登録商標) WS-300を用いて調整した第1の重合体溶液(合成例2-4)に浸漬させ、75℃で2時間加熱した。この際、ヒドロゲルと第1の重合体は結合を形成していない。
次いで、合成例3-1で調整した第2の重合体溶液に前記ヒドロゲルを浸漬させ、75℃で2時間加熱した。
得られたコンタクトレンズは、水で十分に洗浄したのち、ISO18369-3に従い調整した生理食塩水に浸漬させ、121℃、20分の条件で滅菌処理し、各評価を行った。
【0078】
<比較例2>
合成例1-1で調整したヒドロゲルを用いた。ヒドロゲルを、合成例2-2で調整した第1の重合体溶液に浸漬させ、75℃で2時間加熱することで、ヒドロゲルに第1の重合体を共有結合で結合し、表面に第1の重合体のみがコーティングされたコンタクトレンズを得た。
得られたコンタクトレンズは、水で十分に洗浄したのち、ISO18369-3に従い調整した生理食塩水に浸漬させ、121℃、20分の条件で滅菌処理し、各評価を行った。
【0079】
<比較例3>
合成例1-2で調整したヒドロゲルを用いた。ヒドロゲルを、合成例3-2で調整した第2の重合体溶液に浸漬させ、75℃で2時間加熱した。この際、ヒドロゲルと第2の重合体は結合を形成していない。
得られたコンタクトレンズは、水で十分に洗浄したのち、ISO18369-3に従い調整した生理食塩水に浸漬させ、121℃、20分の条件で滅菌処理し、各評価を行った。
【0080】
実施例1~5のコンタクトレンズは、第1の重合体と第2の重合体をコーティングする前のヒドロゲルと比較して、透明性、含水率、破断伸び、およびDkに差異はなかった。
さらに、実施例1~5のコンタクトレンズは、第1の重合体と第2の重合体をコーティングする前のヒドロゲルとは異なり、濡れ性及び潤滑性が良好であった。
加えて、実施例1~5のコンタクトレンズは、耐久性が良好であった。
すなわち、実施例1~5のコンタクトレンズは、長期間、連続的に装用された場合でも、コンタクトレンズ表面は十分な親水性及び潤滑性を有しているので、使用者が該コンタクトレンズを不快感なく長時間使用することができる。
【0081】
比較例1のコンタクトレンズは、第2の重合体のみヒドロゲルに結合しており、第1の
重合体が結合していないため、コンタクトレンズ表面の親水化ができておらず、処理後の
コンタクトレンズは濡れ性と潤滑性が劣っていた。
比較例2のコンタクトレンズは、第1の重合体のみヒドロゲルに結合しており、処理後
のコンタクトレンズの濡れ性と潤滑性は良好であったものの、洗浄14回で潤滑性が低下
し、さらに洗浄30回では濡れ性も低下したため、コーティングの耐久性が十分でなかっ
た。
比較例3のコンタクトレンズは、第1の重合体でコーティング処理していないためにヒ
ドロゲルと第2の重合体が結合できず、コンタクトレンズ表面は親水化していなかった。
よって、コーティング処理後のコンタクトレンズは濡れ性と潤滑性が劣っていた。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0086】
長期間、連続的に装用された場合でも表面に十分な親水性及び潤滑性を有するソフトコンタクトレンズを提供することである。