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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178264
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】外科用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/15 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
A61B17/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091037
(22)【出願日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10 2022 205 693.0
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-ペーター ファームバッハ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェニア アンホーン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】近位脛骨切断の位置合わせを改良でき、同時にシンプルな設計を達成または維持することを意図する、膝関節置換術に使用する外科用器具を提供する。
【解決手段】外科用器具は、近位脛骨上の切断ガイド用の脛骨切断ブロックに取り外し可能に固定するように構成された本体部と、第1端部と第2端部の間で細長い、第1スタイラスと第2スタイラスとを備え、第1端部はそれぞれ、脛骨プラトーに接触する基準面を有し、2つのスタイラスのうちの1つに選択的に取り付けるために設けられ、差込部と接触面を有する少なくとも1つの代償要素が存在し、第1端部が代償要素の差込部に取り外し可能に接続するように構成された補完差込部を有し、代償要素がスタイラスに取り付けられている状態において、接触面は、基準面の代わりに脛骨プラトーに接触するように構成され、基準面から厚み寸法分だけ離間して接触方向に沿って配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節置換術に使用される外科用器具(1)であって、
近位脛骨(T)上の切断ガイド用の脛骨切断ブロック(400)に取り外し可能に固定するように構成された本体部(100)と、
第1スタイラス(200)と第2スタイラス(300)であって、それぞれ前記本体部(100)に相対的に移動可能に取り付けられ、第1端部(201、301)と第2端部(202、302)の間で細長い、第1スタイラス(200)と第2スタイラス(300)と、
を備え、
前記第1端部(201、301)のそれぞれは、接触方向(K1、K2)に沿って前記脛骨(T)の脛骨プラトー(TP)に接触するように構成された基準面(203、303)を有し、
前記2つのスタイラス(200、300)のうちの1つに選択的に取り付けるために設けられ、差込部(501)と接触面(502)を有する少なくとも1つの代償要素(500)が存在し、前記第1端部(201、301)のそれぞれが、前記代償要素(500)の前記差込部(501)に形状適合および/または力嵌めにより取り外し可能に接続するように構成された補完差込部(204、304)を有し、
前記代償要素(500)がそれぞれの前記スタイラス(200、300)に取り付けられている状態において、前記接触面(502)は、それぞれの前記基準面(203、303)の代わりに前記脛骨プラトー(TP)に接触するように構成され、それぞれの前記基準面(203、303)から厚み寸法(t1)分だけ離間して前記接触方向(K1、K2)に沿って配置されている、
外科用器具(1)。
【請求項2】
前記差込部(501)は、差込方向(S)に沿って、それぞれの前記補完差込部(204、304)と共に差し込むことができ、前記差込方向(S)は、それぞれの前記スタイラス(200、300)の長手方向軸(L1、L2)に対して平行であり、および/または前記接触方向(K1、K2)に対して直交することを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項3】
前記差込部(501)および/または前記補完差込部(204、304)がそれぞれ回転非対称断面を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の外科用器具(1)。
【請求項4】
前記補完差込部(204、304)は、それぞれ、細長い受入れスロット(2041)を備え、これは、前記差込部(501)を力嵌めおよび/または形状適合により受け入れるために構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項5】
前記受入れスロット(2041)が、挿入開口部(2042)と停止部(2043)との間で、その長手方向に沿って細長いことを特徴とする、
請求項4に記載の外科用器具(1)。
【請求項6】
前記受入れスロット(2041)は、その長手方向に対して横方向である垂直方向において、前記基準面(203)から、それぞれの前記第1端部(201、301)の後面(205)まで達し、前記後面(205)は、前記接触方向(K1、K2)に沿って前記基準面(203)の反対側に位置することを特徴とする、請求項4または5に記載の外科用器具(1)。
【請求項7】
前記受入れスロット(2041)が、それぞれの前記第1端部(201、301)の2つの、好ましくはバネ弾性を有するプロング部(2044、2045)の間に形成され、前記プロング部(2044、2045)は、前記受入れスロット(2041)の前記長手方向を横切る横方向において互いに反対側に位置することを特徴とする、請求項4から6のいずれか1項に記載の外科用器具(1)。
【請求項8】
前記差込部(501)は、前記代償要素(500)の後面(503)から突出しており、前記後面は、前記接触方向(K1、K2)に沿って前記接触面(502)の反対側に位置することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項9】
前記差込部がシャンク(5011)とヘッド(5012)を有し、前記シャンク(5011)は、前記代償要素(500)の前記後面(503)と前記ヘッド(5012)との間で細長く、それぞれの前記第1端部(201,301)の前記補完差込部(204,304)と共に、その長手方向の範囲に関して横方向に差し込まれ、前記ヘッド(5012)は、前記シャンク(5011)よりも大きな直径を有することを特徴とする、請求項8に記載の外科用器具(1)。
【請求項10】
前記シャンク(5011)及び/又は前記ヘッド(5012)が回転非対称断面を有することを特徴とする、請求項9に記載の外科用器具(1)。
【請求項11】
前記接触面(502)が凸状に湾曲していることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの代償要素(500)が、前記接触面(502)を形成する球状ドーム(505)を有する球状セグメント部(504)を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項13】
前記2つのスタイラス(200、300)に選択的に取り付けるための複数の異なる代償要素(500、500a、500b)が存在し、
前記複数の異なる代償要素(500、500a、500b)は、それぞれの前記厚み寸法(t1、t2、t3)および/またはそれぞれの前記接触面(502、502a、502b)の直径(d1、d2、d3)および/またはそれぞれの前記接触面(502、502a、502b)の曲率(W1、W2、W3)に関して、好ましくは他のいずれとも異なることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項14】
膝関節置換術で使用するための外科用器具システム(10)であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の外科用器具(1)と、
脛骨切断ブロック(400)と、を有し、
前記脛骨切断ブロック(400)には前記外科用器具(1)が取り外し可能に固定され、
前記脛骨切断ブロック(400)に取り外し可能に固定される髄外アライメントロッド(600)を有する、外科用器具システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節置換術に使用する外科用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節置換術、すなわち全膝関節置換術(TKA)では、摩耗したり、病気や怪我によって影響を受けたりした大腿骨および/または脛骨の関節面が、膝関節プロテーゼの人工関節面によって置換される。このような膝関節プロテーゼは通常、大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントから構成される。大腿骨コンポーネントは、大腿骨の遠位端に移植される。脛骨コンポーネントは脛骨の近位端に移植される。
【0003】
プロテーゼコンポーネントを移植する前に、遠位大腿骨と近位脛骨を切除する。このために、外科医はさまざまな切除カットを行い、それぞれの骨から骨および/または軟骨材を分離する。この切除により、それぞれの骨の形状を、受け入れるプロテーゼコンポーネントに適合させることができる。
【0004】
切除は様々なコンセプトに基づいて行われる。そのひとつは、関節を動かす際に膝の靭帯にかかる応力のバランスを保つことを目的としたものである。これは膝関節プロテーゼの機能を向上させることを目的としている。このコンセプトは一般に「ギャップ・バランシング」と呼ばれている。他のコンセプトでは、外科医は切除術により一定量の骨と軟骨材を取り除く。このようなコンセプトは一般的に「メジャード リセクション(measureed resection)」と呼ばれている。患者の解剖学的構造に対する切除カットの位置合わせは、その後の移植コンポーネントの位置合わせを決定し、その結果、プロテーゼ関節軸の方向も決定する。したがって、切除カットの位置合わせは特に重要である。
【0005】
切除カットの位置合わせは、機械的アプローチ、解剖学的アプローチ、運動学的アプローチの3つのアプローチに主に区別される。機械的位置合わせでは、近位脛骨を脛骨軸の長手方向軸に垂直に切除する。遠位大腿骨の切除は、対応した方法で行われる。必要であれば靭帯の剥離も行う。解剖学的位置合わせでは、脛骨を3°の内反で切除しようとする。大腿骨切除と靭帯剥離は、脚の股関節-膝関節-足関節軸をまっすぐに保つために行われる。運動学的位置合わせの目的は、プロテーゼコンポーネントの人工関節面を、関節炎発症前の欠損のない自然な関節面のレベルに移植することである。臨床研究は、運動学的位置合わせを行うことで、人工膝関節の機能が極めて自然であると認識されるため、患者の満足度が向上することが多いことを示した。
【0006】
このような背景から、可能な限り正確で、使い方が簡単で、コスト効率の良い、運動学的アライメントを実現するための外科用器具が根本的に求められている。
【0007】
本発明はこの種の外科用器具に関するものである。具体的には、本発明は、脛骨切除を位置合わせするための外科用器具に関する。このような器具は、(脛骨)アライメント器具または脛骨切除ガイド器具とも呼ばれる。この種の様々な外科用器具が従来技術から知られている。
【0008】
PCT国際出願第2020/049421号は、本体部と2つのスタイラスを備えた脛骨アライメント器具を開示している。本体部はペグ状に構成され、この目的のために構成された脛骨切断ブロックの部分に固定可能である。2つのスタイラスは、それぞれ本体部に相対的に移動可能なように取り付けられ、第1端部と第2端部の間で細長い。第1端部はそれぞれ近位脛骨、より正確には脛骨プラトーに接触するように構成されている。2つのスタイラスはそれぞれ、本体部に対して異なる近位遠位位置に取り付けることができる。これは、脛骨プラトーの骨および/または軟骨の欠損を寸法的に代償することを意図する。
【0009】
米国出願公開特許第2019/0231365号は、脛骨切断を位置合わせするための更なる外科用器具を開示している。前述の器具の2つのスタイラスの第1端部は、調整機構によって脛骨プラトーに対する相対位置を調整可能である。この調整機構は、各スタイラスにラチェットを有する直線ガイドを備える。設計はかなり複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術と比較して利点を有し、特に近位脛骨切断の位置合わせを改良でき、同時にシンプルな設計を達成または維持することを意図する、膝関節置換術に使用する外科用器具を提供することである。
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を有する外科用器具を利用可能にすることによって達成される。
【0012】
本発明による外科用器具は、近位脛骨上の切断ガイド用の脛骨切断ブロックに取り外し可能に固定するように構成された本体部と、第1スタイラスと第2スタイラスであって、それぞれ本体部に相対的に移動可能に取り付けられ、第1端部と第2端部の間で細長い、第1スタイラスと第2スタイラスと、を備え、第1端部はそれぞれ、接触方向に沿って脛骨の脛骨プラトーに接触するように構成された基準面を有し、2つのスタイラスのうちの1つに選択的に取り付けるために設けられ、差込部と接触面を有する少なくとも1つの代償要素が存在し、第1端部のそれぞれは、代償要素の差込部に形状適合および/または力嵌めにより取り外し可能に接続するように構成された補完差込部を有し、代償要素がそれぞれのスタイラスに取り付けられている状態において、接触面は、それぞれの基準面の代わりに脛骨プラトーに接触するように構成され、それぞれの基準面から厚み寸法分だけ離間して接触方向に沿って配置されている。本発明による解決策により、簡単な方法で脛骨プラトーの欠陥を寸法的に代償することが可能になる。この目的のために、少なくとも1つの代償要素があり、代償要素は第1スタイラスまたは第2スタイラスに、より具体的にはその第1端部に選択的に取り付けることができる。従来技術から知られ、スタイラスの調整機構または位置変更によって代償を行う解決策と比較して、本発明による解決策は、特に過誤が発生しにくい。なぜなら、外科医は、代償されているかどうかを簡単かつ明確に識別できるからである。少なくとも1つの代償要素が2つのスタイラスの一方に取り付けられていれば、代償がなされている。そうでない場合は、代償されていない。先行技術から知られている解決法の場合、特定が困難な誤った調整がされる可能性がある。さらに、本発明による外科用器具はシンプルな設計である。これは、第1端部の位置を調整可能な既知の解決策とは対照的である。シンプルな設計は、コスト効率の良い取り付けと取り外しも可能にする。後者は、特に洗浄の目的で行われる。洗浄自体も、シンプルな設計によって容易になる。少なくとも1つの代償要素は、第1スタイラスの第1端部または第2スタイラスの第1端部と一緒に選択的に差し込むことができる。このため、少なくとも1つの代償要素は前述の差込部を備えている。2つの第1端部はそれぞれ補完差込部を有する。取り付け状態では、差込部とそれぞれの補完差込部は、取り外し可能な差込接続を形成する。この差込接続は、工具やその他の補助具を使用することなく、純粋に手動で行うことができる。差込接続は、代償要素とそれぞれの第1端部との間に直接形成される。追加の接続手段はない。少なくとも1つの代償要素がどちらのスタイラスにも取り付けられていない外科用器具の状態では、基準面はいずれも脛骨プラトーに当接する。例えば、第1スタイラスの基準面は内側脛骨プラトーに、第2スタイラスの基準面は外側脛骨プラトーにそれぞれ当接する。少なくとも1つの代償要素が第1スタイラスに取り付けられている外科用器具の状態では、代償要素の接触面が(内側の)脛骨プラトーに接触する。この接触は第1スタイラスの基準面の代わりに行われる。言い換えれば、接触面は基準面に重なり、ここでは前述の厚み寸法によって基準面から離開されている。厚み寸法は、代償対象の欠陥に適合している。好ましい実施形態では、外科用器具は、脛骨プラトー上の様々な大きさの欠損を代償するための複数の異なる代償要素を備える。好ましい実施形態では、2つの第1端部の基準面は共通の基準平面に配置される。基準面はそれぞれ実際の面、線、または点とすることができる。例えば、第1端部が尖っている場合は常に点であり、従って第1スタイラス先端部と第2スタイラス先端部と呼ぶことも可能である。基準面は、好ましくは、脛骨プラトーに面するそれぞれの第1端部の好ましくは平坦な前面によって形成される。異なる実施形態では、接触面は異なり、例えば、平坦面、円錐面または凹面である。
【0013】
本明細書で使用される位置および方向の表記は、患者の身体、特に患者の脛骨に関するものであり、この限りにおいて、通常の解剖学的意味に従って理解されるものとする。その結果、「前方」は前方、または前方に向け存在することを表し、「後方」は後方、または後方に向け存在することを表し、「内側」は内側、または内側に向け存在することを表し、「外側」は外側、または外側に向け存在することを表し、「近位」は身体の中心に向かっていることを表し、「遠位」は身体の中心から離れていることを表す。さらに、「近位遠位」は、近位遠位軸に沿い、好ましくは、近位遠位軸に平行であり、「前後」は、前後軸に沿い、好ましくは、前後に平行であり、「内外」は、内外軸に沿い、好ましくは、内外軸に平行であることを示す。前述の軸は互いに直交しており、もちろん、患者の解剖学的構造に関連しないX軸、Y軸およびZ軸に関連して理解することができる。例えば、近位遠位軸は、X軸として代替的に指定することができる。内外軸はY軸として指定することができる。前後軸はZ軸として指定することができる。以下では、より分かりやすく説明するため、また呼称を簡単にするために、前述の解剖学的位置および方向の呼称を主に使用する。さらに、外科用器具のコンポーネントまたは一部の「後面」、例えば代償要素の「後面」、といった呼称は、遠位を向く視認方向に関して使用される。対照的に、「前面」などの呼称は、近位を向く視線方向に関して使用される。
【0014】
本発明の一実施形態では、差込部は、差込方向に沿って、それぞれの補完差込部と共に差し込むことができ、差込方向は、それぞれのスタイラスの長手方向軸に対して平行であり、および/または接触方向に対して直交する。このような差込方向は、少なくとも1つの代償要素を特に人間工学的に取り外しすることを可能にする。外科用器具の使用中、スタイラスの長手方向軸は少なくとも実質的に前後方向を向いている。接触方向は少なくとも実質的に遠位を向く。接触方向に直交する差込方向により、差込部および各補完差込部は、脛骨プラトーの領域に2つのスタイラスがすでに配置されている場合にも、一緒に差込する(および互いから取り外す)ことができる。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、差込部および/または補完差込部はそれぞれ回転非対称断面を有する。回転非対称断面は、差込部と関連する補完差込部との間の不注意な相対回転を防ぐ。ここでいう回転対称とは、差込部をそれぞれの補完差込部と一緒に差し込むことができる差込方向に関する。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、補完差込部は、それぞれ細長い受入れスロットを備え、これは、差込部を力嵌めおよび/または形状適合により受け入れるために構成されている。差込部は、少なくとも部分的に受入れスロットを補完するように構成されている。一の実施形態において、代償要素の差込部は、受入れスロットに、その長手方向範囲に沿って差し込むことができる。さらなる実施形態において、差込部は、受入れスロットの長手方向範囲に対して横方向に、好ましくは直交方向に、受入れスロットに差し込むことができる。受入れスロットは、製造が比較的シンプルであり、また、特にシンプルで徹底的な洗浄が可能である。受入れスロットは、好ましくは、直線状に細長い。一実施形態では、受入れスロットは一端が開口している。さらなる実施形態では、受入れスロットは両側が閉じられている。さらに、両側が開いている構成も考えられる。さらに、スロットは、片側の端部の基部によって、溝のように垂直方向に画定することができる。あるいは、受入れスロットは、その垂直方向に沿って両端部が開いている、すなわち貫通スロットとすることもできる。
【0017】
本発明のさらなる実施形態では、受入れスロットは、挿入開口部と停止部との間で、その長手方向に沿って細長い。その結果、受入れスロットは、長手方向において一端が開き、他端が閉じている。挿入開口部は、人間工学に基づき、差込部を受入れスロットの長手方向に差し込むことを可能にする。停止部は差込部の挿入深さを制限する。この停止部により、着脱を繰り返しても、スタイラスに関する代償要素の位置が一定に保たれる。
【0018】
本発明のさらなる実施形態では、受入れスロットは、その長手方向に対して横方向である垂直方向において、基準面から、それぞれの第1端部の後面まで達し、後面は、接触方向に沿って基準面の反対側に位置する。外科用器具の使用中、接触方向は少なくとも実質的に遠位を向いており、即ち、関連する第1端部の基準面が脛骨プラトーに遠位方向に当接する。同じことが、変えるべきところは変えて、少なくとも1つの代償要素の接触面にも、2つのスタイラスの一方に取り付けられている場合に当てはまる。後面は、接触方向に沿って、すなわち実質的に近位方向において、基準面の反対側に位置する。受入れスロットの垂直方向は、その長手方向に対して横方向、好ましくは直交方向を向いている。使用中、垂直方向は結果的に近位遠位方向に向けられる。この実施形態では、受入れスロットはその垂直方向に沿って第1端部を通って延び、後面から基準面まで達する。受入れスロットのこのような連続的な構成は、特に洗浄をさらに簡略化できる。特に、このように連続した受入れスロットは、少なくとも1つの代償要素が関連する第1端部に取り付けられていない場合、脛骨プラトーの視認性を向上させる。視認性が向上することで、基準面と脛骨プラトーの接触状態を正確に視覚的に確認することができる。
【0019】
本発明のさらなる実施形態では、受入れスロットが、それぞれの第1端部の2つの、好ましくはバネ弾性を有するプロング部の間に形成され、プロング部は、受入れスロットの長手方向を横切る横方向において互いに反対側に位置する。本発明のこの実施形態では、第1端部は結果的にフォーク状の構成を有する。プロング部がバネ弾性を有するように構成されている場合、これは、差込部と受入れスロットとの間の確実な接続を補助する。
【0020】
本発明のさらなる実施形態では、差込部は、代償要素の後面から突出しており、後面は、接触方向に沿って接触面の反対側に位置する。外科用器具の使用中、後面は近位方向を向いている。後面は好ましくは平坦である。後面に差込部を配置することで、視認性が向上する。これにより、差込接続を特にシンプルに視覚的に確認することができる。
【0021】
本発明のさらなる実施形態では、差込部がシャンクとヘッドを有し、シャンクは、代償要素の後面とヘッドとの間で細長く、それぞれの第1端部の補完差込部と共に、その長手方向の範囲に関して横方向に差し込まれ、ヘッドは、シャンク部よりも大きな直径を有する。簡略化して表現すると、この実施形態では、差込部は、マッシュルームヘッドの形状および/またはマッシュルームヘッドとして構成されている。シャンクは、一端が後面に接続され、他端がヘッドに接続されている。シャンクは直線状に細長い。外科用器具の使用中、シャンクは近位遠位方向に向けられ、後面から近位方向に突出する。ヘッドはシャンクの近位端に配置される。ヘッドは差込部の端部を形成する。それぞれの補完差込部と一緒に差し込むために、シャンクは、例えばヘッドを前にするのではなく、その長手方向の範囲に対して横方向に、好ましくは直交するように、補完差込部と一体化される。ヘッドは、追加的な保持要素として作用し、シャンクが補完差込部に対して不用意に相対的に伸長するのを阻止する。この目的のため、ヘッドはシャンクよりも大きな直径を有する。この実施形態は、2つのスタイラスの補完差込部がそれぞれ受入れスロットを持つ場合に特に有利である。
【0022】
本発明のさらなる実施形態では、シャンク及び/又はヘッドが回転非対称断面を有する。回転非対称断面は、差込部、特にシャンクおよび/またはヘッドと、それぞれの補完差込部との間の不用意な相対回転を打ち消す。
【0023】
本発明のさらなる実施形態では、接触面は凸状に湾曲している。この接触面の凸状の湾曲により、特に、代償要素と脛骨プラトーとの間の接触状態の視認性が向上する。これにより、外科医の視覚的確認が向上する。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも1つの代償要素が、接触面を形成する球状ドームを有する球状セグメント部を有する。球状セグメント部は、代償要素の前面に配置されている。球状ドームは円形の縁を有する。これに伴い、接触面も同様である。この実施形態には特別な利点がある。
【0025】
本発明のさらなる実施形態では、2つのスタイラスに選択的に取り付けるための複数の異なる代償要素が存在し、複数の異なる代償要素は、それぞれの厚み寸法および/またはそれぞれの接触面の直径および/またはそれぞれの接触面の曲率に関して、好ましくは他のいずれとも異なる。異なる代償要素により、脛骨プラトー上の異なる顆欠損を代償することができる。代償は、遠位方向の欠損の程度に応じて、比較的厚いまたは薄い代償要素を用いて行われる。代償は、欠損の近位遠位方向および/または前後方向の範囲に応じて、比較的小さいまたは大きい(外側の)直径を用いて行われる。異なる曲率により、存在する欠損の形状に代償を特に正確に適合させることができる。異なる代償要素は、それぞれの差込部に関して同一である。言い換えれば、異なる代償要素は、同一の構成および/または形状の差込部を有する。この手段により、異なる代償要素のそれぞれを、第1スタイラスまたは第2スタイラスに選択的に取り付けることができる。
【0026】
本発明はまた、膝関節置換術で使用するための外科用器具システムであって、先行する実施形態の1つによる外科用器具と、脛骨切断ブロックとを有し、脛骨切断ブロックには外科用器具が取り外し可能に固定され、脛骨切断ブロックに取り外し可能に固定される髄外アライメントロッドを有する、外科用システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のさらなる利点および特徴は、特許請求の範囲および図面を参照して図示される本発明の好ましい例示的実施形態の以下の説明から明らかになる。
図1図1は、本発明による外科用器具の一実施形態を示す概略透視図である。
図2図2は、外科用器具が近位脛骨上に配置されている例示的な術中状況における、図1による外科用器具のさらなる概略透視図である。
図3図3は、図1および図2による外科用器具のさらなる概略透視図である。
図4図4は、図1から図3による外科用器具の概略平面図である。
図5図5は、代償要素が取り外し可能に取り付けられている、スタイラス端部の領域における外科用器具の詳細を示す拡大透視図である。
図6図6は、スタイラス端部から代償要素が取り外された状態の、図5による詳細領域のさらなる説明図である。
図7図7は、外科用器具の複数の異なる代償要素の概略透視図である。
図8図8は、図7による異なる代償要素を概略側面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1図4によれば、外科用器具1は膝関節置換術に使用され、本体部100、第1スタイラス200、第2スタイラス300、および少なくとも1つの代償要素500を備える。
【0029】
図1を参照した構成では、外科用器具1は、まだ詳細に説明されていない方法で脛骨切断ブロック400に取り外し可能に固定されている。髄外アライメントロッド600が脛骨切断ブロック400に取り外し可能に固定されている。脛骨切断ブロック400および髄外アライメントロッド600とともに、外科用器具1は外科用器具システム10を形成する。
【0030】
脛骨切断ブロック400は、固定部402を有する。固定部402は、髄外アライメントロッド600に取り外し可能に固定するために、当業者に公知の方法で構成されている。この目的のために、髄外アライメントロッド600は、特に図示しない方法で固定部402と相互作用する固定機構601を有する。さらに、脛骨切断ブロック400は、通路ボア404(図3)を有する。通路ボア404は、脛骨切断ブロック400を近位脛骨Tに固定することを可能にする。このため、脛骨切断ブロック400が位置合わせされた後、固定用ネジまたはピンが通路ボア404を通って近位脛骨Tに導入される。
【0031】
本体部100は、脛骨切断ブロック400に取り外し可能に固定できるように構成されている。この目的のために、図示の実施形態では、本体部100は固定機構101を備えている。固定機構101は、特に図示しない方法で、この目的のために設けられた脛骨切断ブロック400の一部と相互作用する。本体部100の脛骨切断ブロック400への取り外し可能な固定の種類および方法は、本発明に関して実質的に重要ではない。したがって、この点に関するさらなる詳細は省略する。
【0032】
第1スタイラス200は、第1端部201と第2端部202との間に延びている。第1スタイラス200は、第1長手方向軸L1に沿って延びている。第1長手方向軸L1は、第1スタイラス200の範囲の主要な方向を規定する。第1スタイラス200は、本体部100に相対的に移動可能に取り付けられている。図示の実施形態では、第1スタイラスは、第1揺動軸D1を中心に本体部100に対して揺動可能である。さらに、第1スタイラス200は、本体部100に対してその第1長手方向軸L1に沿って直線的に移動可能に案内される。第1スタイラス200の揺動可能かつ直線移動可能な案内の具体的な実施態様は、本発明の本質的な態様ではない。したがって、この点に関するさらなる詳細は省略することができる。第1スタイラス200の第1端部201は、基準面203を有する(図5図6参照)。基準面203は、脛骨プラトーTP(図2参照)に接触するように構成されている。
【0033】
第2スタイラス300は、第1端部301と第2端部302との間で細長い。第2スタイラス300は、第2長手方向軸L2を有する。第2長手方向軸L2は、第2スタイラス300の主要な範囲の方向を規定する。第2スタイラス300は、本体部100に対して第2揺動軸D2を中心に揺動可能に本体部100に取り付けられている。さらに、第2スタイラス300は、本体部100に対してその長手方向軸L2に沿って直線的に移動可能に案内される。第1スタイラス200に関して述べたことは、変更すべきところは変更して、第2スタイラス300にも適用される。本体部100に対する第2スタイラス300の揺動可能かつ直線移動可能な取付けの種類および態様は、本発明に関して実質的に重要ではない。したがって、さらなる詳細については説明しない。第2スタイラス300の第1端部301は、基準面303を有する。第2スタイラス300の基準面303は、脛骨プラトーTPに接触するように構成されている。
【0034】
少なくとも1つの代償要素500は、2つのスタイラス200、300の一方に選択的に取り付けられるように構成されている。図1から図4を参照した構成では、代償要素500は第1スタイラス200に取り付けられている。代償要素500は、脛骨プラトーTPで起こり得る骨および/または軟骨の摩耗の寸法代償のために使用される。これは、まだ詳細に説明されていない方法で行われる。代償要素500は、以下では第1代償要素とも呼ばれる。さらに、図1図4による外科用器具1の構成では、第2スタイラス300に第2代償要素500aが取り付けられている。異なる構成が考えられ、ここで提供される。例えば、第2代償要素500aの代わりに第1代償要素500を第2スタイラスに取り付けることもでき、その逆も可能である。あるいは、代償要素500、500aの一方のみを2つのスタイラス200、300の一方に取り付けることもできる。さらに、代償要素500、500aを取り付けずに、外科用器具1を使用することもできる。外科用器具1の機能と設計をさらに説明するために、まず代償要素500、500aのないこの種の構成について以下に説明する。これは、図2に図示される、術中の状況を参照して説明され、ここでは近位脛骨Tの脛骨プラトーTPに外科用器具1が配置される。
【0035】
図2を参照する状況では、2つの揺動軸D1、D2はそれぞれ近位遠位方向に配置されている。2つのスタイラス200、300の第1長手方向軸L1と第2長手方向軸L2は、共通の平面(参照符号なし)に配置されている。前述の平面は、内外方向および前後方向に延びており、この限りにおいて横断面である。2つのスタイラス200、300の基準面203、303は、共通の基準面(参照符号なし)に配置されている。基準面は内外方向および前後方向に伸びており、結果的に横断面となっている。
【0036】
図2に示された状況から出発して、まず、以下の説明のために、(第1)代償要素500も第2代償要素500aもスタイラス200、300に取り付けられていないと仮定する。この場合、本体部100は、前述の固定機構101によって脛骨切断ブロック400に取り外し可能に固定される。脛骨切断ブロック400は、当業者に原理的に知られている構成および機能を有する。脛骨切断ブロック400は、近位脛骨Tの切除の際に切断ガイドとして使用される。このような切除の際、脛骨プラトーTPは規定の方法で切断される。この目的のために、脛骨切断ブロック400は、鋸刃を受け入れて案内するように構成された受入れスロット401を有する。近位脛骨Tの解剖学的ランドマークに対する脛骨切断ブロック400の位置合わせ、したがって受入れスロット401の位置合わせは、切除後の(人工)脛骨プラトーのその後の位置合わせを決定する。人工脛骨プラトーは、人工膝関節置換術のその後の方向およびその関節軸を決定する。外科用器具1により、脛骨切断ブロック400、より正確には受入れスロット401を近位脛骨Tに対して定められた方法で位置合わせすることができる。
【0037】
この位置合わせはまず、髄外アライメントロッド600(図2では図式的な記載なし)を用いて行われる。髄外アライメントロッド600は長手方向軸Aを有する。長手方向軸Aは脛骨Tの長手方向軸A’(図2参照)に沿って位置合わせされる。図1および図2に示す解剖学的軸に対して、長手方向軸Aを近位遠位方向に位置合わせする。さらなるステップでは、スタイラス200、300を脛骨プラトーTPに対して相対的に位置合わせする。
【0038】
さらなる説明のために、以下における出発点は、脛骨プラトーTPの第1状態と脛骨プラトーTPの第2状態である。第1状態では、脛骨プラトーTPは、その軟骨および/または骨構造に、摩耗がないか、実質的に関連する摩耗がない。この第1状態では、既に説明したように、外科用器具1は代償要素500、500aなしで使用される。さらなる位置合わせのため、2つのスタイラス200、300の基準面203、303を脛骨プラトーTPに接触させる。基準面203、303と脛骨プラトーTPとの間の接触は、受入れスロット401の近位遠位位置を規定する。さらに、前後軸を中心とする脛骨切断ブロック400の回転は、脛骨プラトーTPを参照して決定される。前述の回転は、移植される人工膝関節代替物の内反/外反位置合わせを決定する。
【0039】
図示の実施形態では、基準面203、303はいずれも平坦である。図示されていない実施形態では、基準面はこの目的のために異なって構成される。例えば、基準面を湾曲させたり、角度をつけたり、他の方法で平坦でなくしたりすることができる。さらに、基準面は直線状および/または点状とすることもできる。例えば後者は、2つのスタイラスの第1端部が尖った形状をしていることによる。
【0040】
現在の場合、すなわち、代償要素のない(想像上の)構成では、基準面203、303はそれぞれの法線方向に沿って脛骨プラトーTPと接触している。第1基準面203は、第1接触方向K1に沿って脛骨プラトーと接触している。第2基準面303は、第2接触方向K2に沿って脛骨プラトーTPと接触している。2つの接触方向K1,K2は、ここでは互いに平行である。2つの接触方向K1,K2は、ここでは近位遠位方向に並んでいる。
【0041】
既に説明した2つのスタイラス200、300の相対的な可動性により、基準面203、303は、要件を満たすように、かつ脛骨プラトーTP上に正確に位置決めすることができる。
【0042】
上述したように脛骨プラトーTPを参照することにより、いわゆるキネマティック・アライメント・アプローチ(KA)が追求される。このアプローチの目的は、関節炎を発症する前に、人工膝関節の関節面を欠損のない自然な関節面のレベルで移植することにある。欠陥がある場合は、外科用器具1によって簡単な方法でつり合いをとることができる。
【0043】
図2を参照して示される脛骨プラトーTPの第2(欠陥のある)状態では、第1スタイラス200の基準面203の領域における代償は、第1代償要素500によって行われる。第2スタイラス300の基準面303の領域では、代償は第2代償要素500aによって行われる。さらなる説明のために、以下では主に第1代償要素500および第1代償要素500の第1スタイラス200との相互作用について言及する。この点に関して開示されたことは、第2代償要素および第2代償要素と第2スタイラス300との相互作用に関しても変更すべきところは変更して適用される。
【0044】
第1スタイラス200に取り外し可能に固定するために、代償要素500は差込部501と接触面502を有する(図5図6)。代償要素500の取り付け状態では、基準面203の代わりに、接触面502が脛骨プラトーTPに接触する。第1端部201は、補完差込部204を有する。差込部501および補完差込部204は、互いに形状適合および/または力嵌めにより取り外し可能に連結するように構成されている。相互に接続された状態では、差込部501と補完差込部204は、取り外し可能な差込接続を形成する。第1端部201と代償要素500との間の差込接続は、工具なしで作り出され、また取り外すことができる。すなわち、外科医が工具を使用することなく、純粋に手動で、第1スタイラス200に代償要素500を取り付け、代償要素500を取り外すことができる。
【0045】
代償要素の取り付け状態(図5)では、接触面502は、第1接触方向K1に関して基準面203の下方に配置される。この場合、接触面502は、第1接触方向K1に沿って、厚み寸法t1(図8参照)分だけ基準面203から離間している。厚み寸法t1は、まだ詳細に説明されない方法で、代償対象の欠陥の範囲に調整される。
【0046】
図示の実施形態では、前述の差込接続は差込方向Sを有し、これは第1スタイラス200の第1長手方向軸L1に平行であり、さらに第1接触方向K1に直交する向きである。差込方向Sは差込軸とも呼ばれる。外科用器具1の使用中、差込方向Sは、横断面(特に図示しない)内に配置される。
【0047】
図示の実施形態では、補完差込部204は細長い受入れスロット2041を有する。受入れスロット2041は、差込部501の力嵌めおよび/または形状適合により受入れるために構成されている。受入れスロット2041の長手方向軸(参照符号なし)は、第1スタイラス200の第1長手方向軸L1と平行である。受入れスロット2041の長手方向の範囲は、ここでは差込方向Sを規定する。受入れスロット2041は矩形で細長い。
【0048】
図示の実施形態では、受入れスロット2041は、一端に挿入開口部2042を有し、他端に停止部2043を有する。代償要素500の差込部501は、挿入開口部2042を通して受入れスロット2041に挿入することができる。停止部2043は、挿入深さを形状適合により制限するために使用される。
【0049】
受入れスロット2041は、基準面203から第1端部201の後面205まで達している。後面205は、第1接触方向K1に沿って基準面203の反対側にある。後面205はここでは平坦である。後面205の法線方向は、外科用器具1の使用中、近位方向に向いている。その結果、受入れスロット2041は、垂直方向に沿って、基準面203と後面205との間の全範囲に達する。図示しない実施形態では、受入れスロット2041は、代わりに、垂直方向の片側が制限され、溝のように設計されている。代償要素500が取り付けられていない状態において、受入れスロット2041が途切れず延在することにより、脛骨プラトーTPの可視性が改善される。これにより、外科医は、基準面203が脛骨プラトーTPに接触しているかどうかを、改善された方法で視覚的に確認することができる。
【0050】
図示の実施形態では、受入れスロット2041は、2つのプロング部2044、2045の間に形成されている。プロング部2044、2045は、第1プロング部2044および第2プロング部2045とも呼ぶことができる。2つのプロング部2044、2045は、受入れスロット2041の横方向に沿って互いに対向している。プロング部2044、2045はそれぞれ、第1長手方向軸L1に平行に細長い。プロング部2044、2045の端部(特に図示せず)は、挿入開口部2042を境界づける。プロング部2044,2045により、ここでの第1端部201は、フォーク状又はフォーク形状を有する。プロング部2044,2045は、可撓性バネの態様で受入れスロット2041の横方向に弾力性を有する。前述の弾力性は、他の実施形態において異なる。一実施形態では、弾力性はないか、または実質的に関連する弾力性がない。
【0051】
第2スタイラス300も第1端部301において同様に補完差込部304があることは言うまでもない。第1スタイラス200の補完差込部204について述べたことは、補完差込部304にも変更すべきところは変更して適用される。この場合、第2スタイラス300の補完差込部304は、第1スタイラス200の補完差込部204と同一である。
【0052】
代償要素500の差込部501は、第1接触方向K1に沿って接触面502の反対側にある。差込部501は、代償要素の後面503から突出している。差込部501は、第1接触方向K1に沿って後面503から突出している。図示の実施形態では、後面503は平坦である。後面503の法線方向(参照符号なし)は、第1接触方向K1に平行であり、したがって、外科用器具1の使用中は近位を向いている(図2参照)。
【0053】
図示の実施形態では、差込部501はシャンク5011とヘッド5012を有する。シャンク5011は、一端が後面503に隣接し、他端がヘッド5012に隣接している。シャンク5011は、第1接触方向K1に沿って細長い。シャンク5011は、受入れスロット2041と寸法において調整されており、その逆も同様である。代償要素500の取り付け状態において、シャンク5011は、受入れスロット2041に力嵌めおよび/または形状適合により保持される。シャンク5011の長手方向の範囲は、差込方向Sに対して直交している。その後、シャンク5011は、その長手方向の範囲に対して横方向に受入れスロット2041に挿入され、そこから取り外される。
【0054】
ヘッド5012は、シャンク5011に固定して連結され、シャンク5011の直径よりも大きい直径(特に図示しない)を有する。ヘッド5012によって、シャンク5011は、第1端部201において、第1接触方向K1に沿って形状適合により遠位方向に保持される。シャンク5011は、後面503によって、第1端部201において形状適合により近位方向に保持される。代償要素500の取り付け状態では、後面503は結果的に基準面203に当接する。ヘッド5012(図8参照)の前側部5013は、第1端部201の後面205に当接する。
【0055】
図示の実施形態では、シャンク5011は、回転非対称の断面(特に図示しない)を有する。シャンク5011の回転非対称の断面形状は、図示のヘッド5012の端面の形状に対応している。シャンク5011の回転非対称の断面形状は、第1端部201に対する代償要素500の不用意な回転を阻止する。
【0056】
接触面502は、図示の実施形態では凸状である。接触面502が凸状に湾曲していることにより、代償要素500と脛骨プラトーTPとの接触の視覚的確認を改善することができる。
【0057】
図示の実施形態では、代償要素500は、球状ドーム505を有する球状セグメント部504を有する。球状ドーム505は、接触面502を形成する。
【0058】
図7を参照して示すように、図示の実施形態では、外科用器具1は複数の異なる代償要素500、500a、500bを有する。代償要素500、500a、500bは、以下では、第1代償要素500、第2代償要素500a、第3代償要素500bとも呼ばれる。異なる代償要素500、500a、500bは、異なるサイズおよび/または形状の欠陥の代償を可能にする。ここで、代償要素500、500a、500bは、それぞれの厚み寸法t1、t2、t3に関して異なる(図8参照)。第1代償要素500は第1厚み寸法t1を有する。第2代償要素500aは第2厚み寸法t2を有する。第3代償要素500bは第3厚み寸法t3を有する。本実施例では、第2厚み寸法t2は第1厚み寸法t1より小さく、第3厚み寸法t3より小さい。第1厚み寸法t1は、第2厚み寸法t2よりも大きく、第3厚み寸法t3よりも小さい。第3厚み寸法t3は、第1厚み寸法t1より大きく、第2厚み寸法t2より大きい。外科医は、脛骨プラトーTPの欠陥が比較的弱い(小さい)か比較的強い(大きい)かに応じて、異なる厚み寸法t1、t2、t3のうち比較的小さいか比較的大きいものを選択する。
【0059】
異なる代償要素500、500a、500bは、それぞれの差込部の構成に関して同一である。その結果、異なる代償要素500、500a、500bのそれぞれは、ここでは、シャンク5011とヘッド5012を備えている。異なる代償要素500、500a、500bの差込部501が同一の構成であるため、交換性が保証される。言い換えれば、それぞれの代償要素500、500a、500bは、必要に応じて第1スタイラス200の第1端部201または第2スタイラス300の第1端部301に取り付けることができる。
【0060】
さらに、本実施例における異なる代償要素500、500a、500bは、それぞれの接触面502、502a、502bが異なる直径d1、d2、d3を有する。さらに、接触面502、502a、502bは、異なる曲率W1、W2、W3を有する。具体的には、第1代償要素は第1直径d1を有する。第2代償要素500aは第2直径d2を有する。第3代償要素500bは第3直径d3を有する。直径d1、d2、d3は、(接触面の)外径と呼ぶこともできる。本実施例では、第1直径d1は第2直径d2よりも小さく、第3直径d3よりも小さい。第2直径d2は、第1直径d1よりも大きく、第3直径d3よりもわずかに小さい。第3直径d3は、第1直径d1よりも大きく、第2直径d2よりもわずかに大きい。
【0061】
現在の異なる代償要素500、500a、500bの数は、純粋に一例として理解されるべきであることは言うまでもない。もちろん、異なる実施形態では、外科用器具1は、ここに示した3つの異なる代償要素500、500a、500bより多いかまたは少ない代償要素を有してもよい。一実施形態では、代償要素は1つだけである。さらなる実施形態では、複数の、例えば10個、20個、30個の、異なる代償要素が存在する。
【0062】
本出願に開示される技術的特徴が、以下に列挙される。
特徴1. 膝関節置換術に使用される外科用器具(1)であって、
近位脛骨(T)上の切断ガイド用の脛骨切断ブロック(400)に取り外し可能に固定するように構成された本体部と(100)、
第1スタイラス(200)と第2スタイラス(300)であって、それぞれ前記本体部(100)に相対的に移動可能に取り付けられ、第1端部(201、301)と第2端部(202、302)の間で細長い、第1スタイラス(200)と第2スタイラス(300)と、を備え、
前記第1端部(201、301)のそれぞれは、接触方向(K1、K2)に沿って前記脛骨(T)の脛骨プラトー(TP)に接触するように構成された基準面(203、303)を有し、
前記2つのスタイラス(200、300)のうちの1つに選択的に取り付けるために設けられ、差込部(501)と接触面(502)を有する少なくとも1つの代償要素(500)が存在し、前記第1端部(201、301)のそれぞれが、前記代償要素(500)の前記差込部(501)に形状適合および/または力嵌めにより取り外し可能に接続するように構成された補完差込部(204、304)を有し、
前記代償要素(500)がそれぞれの前記スタイラス(200、300)に取り付けられている状態において、前記接触面(502)は、それぞれの前記基準面(203、303)の代わりに前記脛骨プラトー(TP)に接触するように構成され、それぞれの前記基準面(203、303)から厚み寸法(t1)分だけ離間して前記接触方向(K1、K2)に沿って配置されている、
外科用器具(1)。
特徴2. 前記差込部(501)は、差込方向(S)に沿って、それぞれの前記補完差込部(204、304)と共に差し込むことができ、前記差込方向(S)は、それぞれの前記スタイラス(200、300)の長手方向軸(L1、L2)に対して平行であり、および/または前記接触方向(K1、K2)に対して直交することを特徴とする、特徴1に記載の外科用器具(1)。
特徴3. 前記差込部(501)および/または前記補完差込部(204、304)がそれぞれ回転非対称断面を有することを特徴とする、特徴1または2に記載の外科用器具(1)。
特徴4. 前記補完差込部(204、304)は、それぞれ細長い受入れスロット(2041)を備え、これは、前記差込部(501)を力嵌めおよび/または形状適合により受け入れるために構成されていることを特徴とする、特徴1から3のいずれか1つに記載の外科用器具(1)。
特徴5. 前記受入れスロット(2041)が、挿入開口部(2042)と停止部(2043)との間で、その長手方向に沿って細長いことを特徴とする、特徴4に記載の外科用器具(1)。
特徴6. 前記受入れスロット(2041)は、その長手方向に対して横方向である垂直方向において、前記基準面(203)から、それぞれの前記第1端部(201、301)の後面(205)まで達し、前記後面(205)は、前記接触方向(K1、K2)に沿って前記基準面(203)の反対側に位置することを特徴とする、
特徴4または5に記載の外科用器具(1)。
特徴7. 前記受入れスロット(2041)が、それぞれの前記第1端部(201、301)の2つの、好ましくはバネ弾性を有するプロング部(2044、2045)の間に形成され、前記プロング部(2044、2045)は、前記受入れスロット(2041)の前記長手方向を横切る横方向において互いに反対側に位置することを特徴とする、特徴4から6のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
特徴8. 前記差込部(501)は、前記代償要素(500)の後面(503)から突出しており、前記後面は、前記接触方向(K1、K2)に沿って前記接触面(502)の反対側に位置することを特徴とする、特徴1から7のいずれか1つに記載の外科用器具(1)。
特徴9. 前記差込部がシャンク(5011)とヘッド(5012)を有し、前記シャンク(5011)は、前記代償要素(500)の前記後面(503)と前記ヘッド(5012)との間で細長く、それぞれの前記第1端部(201,301)の前記補完差込部(204,304)と共に、その長手方向の範囲に関して横方向に差し込まれ、前記ヘッド(5012)は、前記シャンク部(5011)よりも大きな直径を有することを特徴とする、特徴8に記載の外科用器具(1)。
特徴10. 前記シャンク(5011)及び/又は前記ヘッド(5012)が回転非対称断面を有することを特徴とする、特徴9に記載の外科用器具(1)。
特徴11. 前記接触面(502)が凸状に湾曲していることを特徴とする、特徴1から10のいずれか1つに記載の外科用器具(1)。
特徴12. 前記少なくとも1つの代償要素(500)が、前記接触面(502)を形成する球状ドーム(505)を有する球状セグメント部(504)を有することを特徴とする、特徴1から11のいずれか1つに記載の外科用器具(1)。
特徴13. 前記2つのスタイラス(200、300)に選択的に取り付けるための複数の異なる代償要素(500、500a、500b)が存在し、
前記複数の異なる代償要素(500、500a、500b)は、それぞれの前記厚み寸法(t1、t2、t3)および/またはそれぞれの前記接触面(502、502a、502b)の直径(d1、d2、d3)および/またはそれぞれの前記接触面(502、502a、502b)の曲率(W1、W2、W3)に関して、好ましくは他のいずれとも異なることを特徴とする、特徴1から12のいずれか1つに記載の外科用器具(1)。
特徴14. 膝関節置換術で使用するための外科用器具システム(10)であって、特徴1から13のいずれか1つに記載の外科用器具(1)と、脛骨切断ブロック(400)とを有し、前記脛骨切断ブロック(400)には前記外科用器具(1)が取り外し可能に固定され、前記脛骨切断ブロック(400)に取り外し可能に固定される髄外アライメントロッド(600)を有する、外科用器具システム(10)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】