(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178267
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】層構造を備えたダイヤフラム装置
(51)【国際特許分類】
G01L 7/08 20060101AFI20231207BHJP
G01L 9/06 20060101ALI20231207BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G01L7/08
G01L9/06
C23C14/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091463
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】10 2022 114 193.4
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】316012511
【氏名又は名称】ヴィーカ アレクサンダー ヴィーガント ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】WIKA Alexander Wiegand SE & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Alexander-Wiegand-Strasse 30,D-63911 Klingenberg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】コンラート シュヴァニッツ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ツェラー
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツ ケーラー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ランゲンシュヴァルツ
【テーマコード(参考)】
2F055
4K029
【Fターム(参考)】
2F055AA31
2F055BB20
2F055CC02
2F055DD01
2F055EE12
2F055FF38
2F055GG12
4K029BA02
4K029BA03
4K029BA07
4K029BA11
4K029BA17
4K029BA35
4K029BA43
4K029BA54
4K029BB02
4K029BC05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プロセス媒体および/もしくは他の環境影響による損傷の影響を受けにくいか、またはプロセス媒体および/もしくは他の環境影響による損傷からより良好に保護されたダイヤフラム装置を提供すること。
【解決手段】可撓性のダイヤフラム区分110を備え、ダイヤフラム区分の第1の側111が、プロセス媒体に曝されており、ダイヤフラム区分の第2の側112が、層構造120を有する、ダイヤフラム装置100に関する。ダイヤフラム装置は、層構造が、少なくとも第1の層121と第2の層122とを備え、第1の層が、ダイヤフラム区分の熱膨張係数の値と第2の層の熱膨張係数の値との間にある値の熱膨張係数を有し、第2の層が、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分に対して、ダイヤフラム区分の対応する透過率よりも低い透過率を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラム装置(100)であって、可撓性のダイヤフラム区分(110)を備え、前記ダイヤフラム区分の第1の側(111)が、プロセス媒体(200)に曝されているか、またはプロセス媒体(200)に曝されるように設けられており、前記ダイヤフラム区分の第2の側(112)が、層構造(120)を有する、ダイヤフラム装置(100)において、
前記層構造(120)は、少なくとも第1の層(121)と第2の層(122)とを備え、
- 前記第1の層は、ダイヤフラム区分(110)の熱膨張係数の値と第2の層(122)の熱膨張係数の値との間にある値の熱膨張係数を有し、
- 前記第2の層(122)は、前記プロセス媒体(200)または前記プロセス媒体(200)の成分に対して、前記ダイヤフラム区分(110)の対応する透過率よりも低い透過率を有し、
- 前記第1の層(121)は、前記ダイヤフラム区分(110)に直接または間接的に被着されており、前記第2の層(122)は、前記第1の層(121)に直接または間接的に被着されている
ことを特徴とする、ダイヤフラム装置(100)。
【請求項2】
前記プロセス媒体(200)または前記プロセス媒体(200)の成分に対する前記第2の層(122)または前記第2の層(122)に含まれるサブ層(122’,122’’,122’’’)の前記透過率は、前記ダイヤフラム区分(110)の対応する透過率よりも少なくとも係数100だけ、好ましくは少なくとも係数1000だけ、とりわけ好ましくは少なくとも係数106だけ低い、請求項1記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項3】
前記第1の層(121)または前記第1の層(121)に含まれるサブ層(121’,121’’,121’’’)は、前記ダイヤフラム区分(110)および前記第2の層(122)の同じ構造定数の値の間にある値の構造定数を有し、
前記構造定数は、特に、格子定数または平均原子間距離である、
請求項1または2記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項4】
前記第1の層(121)または前記第1の層(121)に含まれるサブ層(121’,121’’,121’’’)は、前記プロセス媒体(200)または前記プロセス媒体(200)の成分に対して、前記ダイヤフラム区分(110)の対応する透過率よりも低い透過率を有し、
前記プロセス媒体(200)または前記プロセス媒体(200)の成分に対する前記第1の層(121)または前記第1の層(121)に含まれるサブ層(121’,121’’,121’’’)の前記透過率は、特に、前記ダイヤフラム区分(110)の対応する透過率および/または前記第2の層(122)の対応する透過率よりも少なくとも係数100だけ、好ましくは少なくとも係数1000だけ、とりわけ好ましくは少なくとも係数106だけ低い、
請求項1から3までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項5】
前記第1の層(121)または前記第1の層(121)に含まれるサブ層(121’,121’’,121’’’)は、前記プロセス媒体(200)または前記プロセス媒体(200)の成分に対して、前記ダイヤフラム区分(110)の対応する透過率よりも高い透過率を有し、
前記プロセス媒体(200)または前記プロセス媒体(200)の成分に対する前記第1の層(121)または前記第1の層(121)に含まれるサブ層(121’,121’’,121’’’)の前記透過率は、特に、前記ダイヤフラム区分(110)の対応する透過率および/または前記第2の層(122)の対応する透過率よりも少なくとも係数100だけ、好ましくは少なくとも係数1000だけ、とりわけ好ましくは少なくとも係数106だけ高い、
請求項1から3までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項6】
前記第1の層(121)は、少なくとも2つのサブ層(121’,121’’,121’’’)を備え、前記少なくとも2つのサブ層(121’,121’’,121’’’)の熱膨張係数は、前記ダイヤフラム区分(110)および前記第2の層(122)の熱膨張係数の値の間にあり、
前記サブ層(121’,121’’,121’’’)は、前記ダイヤフラム区分の前記第2の側(112)に最も近いサブ層(121’)の熱膨張係数と前記ダイヤフラム区分の熱膨張係数との差が最も小さく、後続の各サブ層(121’’,121’’’)の熱膨張係数と前記ダイヤフラム区分(110)の熱膨張係数との差が、それぞれ先行のサブ層よりも大きくなるように、前記ダイヤフラム区分(110)に順次被着されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項7】
前記第1の層(121)は、10nm~5000nm、特に10nm~500nm、特に20nm~200nmの厚さを有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項8】
前記第2の層(122)または前記第2の層(122)に含まれるサブ層(121’,121’’,121’’’)は、10MOhmよりも大きい、特に100MOhmよりも大きい電気抵抗を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項9】
- 前記第2の層(122)に直接または間接的に被着された導体路層(123)と、
- 前記導体路層(123)に直接または間接的に被着されていて、前記導体路層(123)を少なくとも部分的に覆う保護層(124)と
を備えることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項10】
前記プロセス媒体(200)または前記プロセス媒体(200)の成分は水素である、請求項1から9までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項11】
前記第2の層(122)または前記第2の層(122)に含まれるサブ層(122’,122’’,122’’’)を構成する材料が、式AlxSiy(O,N)1-x-yで表され、式中、
- xおよびyは、0~1の原子分率であり、合計で常に1以下であり、
- Siはケイ素であり、
- Alはアルミニウムであり、
- Oは酸素であり、
- Nは窒素である、
請求項1から10までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項12】
前記ダイヤフラム区分(110)を構成する材料が、
- 特殊鋼、特にオーステナイト系鋼、または
- 特殊合金、特にエルジロイ、ハステロイ、316Lまたは1.4404である、
請求項1から11までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項13】
前記第1の層(121)または前記第1の層(121)に含まれるサブ層(121’,121’’,121’’’)を構成する材料が、式MxNyOzC1-x-y-zで表され、式中、
- x、y、およびzは、0~1の原子分率であり、合計で常に1以下であり、
- Nは窒素であり、
- Oは酸素であり、
- Cは炭素であり、
- Mは、以下の元素:Al、Cr、Ti、Mo、W、Hf、またはZrのいずれかであり、
かつ/または前記第1の層(121)または前記第1の層(121)に含まれるサブ層(121’,121’’,121’’’)を構成する材料が、
- 金属Be、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ce、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、PtもしくはThのいずれかであるか、または
- Fe-C合金、Ni基合金、特殊鋼、Ti合金もしくはコバールであるか、または
- Si3N4、SiC、TiN、TiC、AlN、Al2O3、ZrO2、BaTiO3、Cr2O3、TiAlNもしくはZrNのいずれかである、
請求項1から12までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)を備える圧力センサ(400)。
【請求項15】
前記プロセス媒体(200)である水素または水素含有プロセス媒体(200)に対する、請求項1から13までのいずれか1項記載のダイヤフラム装置(100)の使用であって、前記第2の層(122)および/または前記第1の層(121)は、水素に対して、前記ダイヤフラム区分(110)の対応する透過率よりも低い透過率を有する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムの少なくとも一部に被着された層構造を備えたダイヤフラム装置に関する。
【0002】
層構造は、一般に、種々異なる材料からなる層のスタックまたは列を指し、これらは、例えば、薄膜技術または厚膜技術の方法によって製造可能である。物理蒸着または化学蒸着などの対応する方法、ならびにフォトリソグラフィまたはレーザトリミングなどの、対応する層を処理するための更なるプロセスは、先行技術に基づき公知である。
【0003】
例示的な構成では、層構造は薄膜層構造である。これは、以下のセクションで説明される特徴および例が、薄膜技術の方法によって、とりわけ選択的に実施され得るので有利である。
【0004】
層構造が被着または施与されたダイヤフラム区分は、この文脈、特に本明細書の範囲内では、基材とも呼ばれる。
【0005】
層構造を備えたダイヤフラム装置は、例えば、測定技術の技術分野で使用される。例えば、独国特許出願公開第102007047707号明細書に基づき、圧力測定セルが公知である。このセルは、まず絶縁層が施与された基材を有している。絶縁層には、導体路を備えた測定層が続き、この導体路は、最後にパッシベーション層または保護層で少なくとも部分的に覆われる。この場合、圧力測定セルの可撓性のダイヤフラム区分が基材と呼ばれ、この基材は、圧力測定セルの剛性の縁区分によって全周にわたって支持されている。
【0006】
このようなダイヤフラム装置は、工業用プロセス設備における圧力測定に使用されることが多い。この場合、層構造から離れた位置にある可撓性のダイヤフラム区分の側は、プロセス媒体、例えば、圧力下にあるガスまたは圧力下にある液体に曝される。プロセス媒体の圧力が変化すると、可撓性のダイヤフラム区分に異なる強さの撓みが生じる。撓みによって生じる可撓性のダイヤフラム区分の伸長または圧縮は、層構造に組み込まれた歪み抵抗器によって検出することができる。
【0007】
しかしながら、特に、プロセス媒体が揮発性および/または反応性の成分を含む場合、層構造中のダイヤフラムまたは測定回路が損傷することがある。
【0008】
発明の課題
こうした背景から、本発明の課題は、プロセス媒体および/もしくは他の環境影響による損傷の影響を受けにくいか、またはプロセス媒体および/もしくは他の環境影響による損傷からより良好に保護されたダイヤフラム装置を提供することである。また、本発明の課題は、これらの利点も同様に達成される圧力センサおよびダイヤフラム装置の使用を提供することである。
【0009】
この課題は、ダイヤフラム装置に関して、請求項1の特徴を実現するダイヤフラム装置によって解決される。ダイヤフラム装置の有利な改良形態は、従属請求項の対象である。
【0010】
圧力センサに関して、この課題は、請求項14に記載の対応する装置によって、使用に関して、請求項15に記載のものによって解決される。
【0011】
発明の概要
本発明の第1の態様は、ダイヤフラム装置であって、可撓性のダイヤフラム区分を備え、ダイヤフラム区分の第1の側が、プロセス媒体に曝されているか、またはプロセス媒体に曝されるように設けられており、ダイヤフラム区分の第2の側が、層構造を有する、ダイヤフラム装置に関する。すなわち、層構造は、可撓性のダイヤフラム区分の第2の側の表面上に被着されているか、その表面上に配置されているか、またはその側の表面内に埋め込まれている。ダイヤフラム区分の第1の側および第2の側は、ダイヤフラム区分の互いに反対の側である。この場合、可撓性のダイヤフラム区分は、先行技術に関して説明したように、例えば蒸着プロセスによって層構造が配置または被着される基材と呼ぶこともできる。
【0012】
層構造は、少なくとも第1の層および第2の層を備える。第1の層は、ダイヤフラム区分の熱膨張係数の値と第2の層の熱膨張係数の値との間にある値の熱膨張係数を有する。熱膨張係数(実際には、熱膨張率または単に膨張係数とも呼ばれることがある)は、関連する材料でできたボディが加熱されたときにどのくらい膨張するかを表す材料パラメータである。熱膨張係数は、通常、単位[K-1]で示される。熱膨張係数が高いということは、関連する材料が加熱されると強く膨張するか、もしくは冷却されると強く収縮することを意味する。例えば、第2の層が可撓性のダイヤフラム区分の材料よりも低い熱膨張係数を有する場合、第1の層は、第2の層の熱膨張係数よりも高く、同時に可撓性のダイヤフラム区分の熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を有することが望ましい。
【0013】
第2の層は、プロセス媒体またはプロセス媒体の少なくとも1つの成分に対して、同じプロセス媒体またはプロセス媒体の同じ成分に対するダイヤフラム区分の対応する透過率よりも低い透過率を有する。この場合、透過率は、関連する材料でできたボディが、ボディの2つの側(例えば、ボディの前後)に対して濃度勾配または圧力勾配を有する特定のガスまたは特定の液体の原子または分子に対して透過性がどの程度あるかを表す材料特性値である。原子または分子が材料を透過する(つまり材料を浸透する)物質、つまり気体または液体は、この文脈では透過物とも呼ばれ、そのプロセスは透過とも呼ばれる。所与の厚さの材料層の透過に関しては、ほとんどの材料で、透過は層の厚さの増加とともに減少するが、層の両側の間の透過物の圧力差または濃度差の増加とともに増加することを確認することができる。さらに、材料の透過率は温度に依存することがある。加えて、透過率は、透過物が異なれば異なることもあり、これは、選択的透過率と呼ばれることも多い。こうした透過率の様々な依存性のために、透過率は、いわゆる透過率係数によって定量化されることもあるが、実際には多くの異なる単位で規定されており、それらの単位は、通常、材料指数を測定する方法に依存する。したがって、絶対値は供給源によって異なる可能性があり、異なる材料の値が同じ方法によって測定された場合、その値の比に大きな関連性がある。本明細書では、透過物の原子または分子に関する表現を一部省略し、例えば、透過物が材料を透過もしくは浸透すること、またはある材料もしくは層が特定の透過物に対して特定の透過率を有することを簡略化して表現している。つまり、本発明によれば、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分に対する第2の層の透過率が可撓性のダイヤフラム区分の透過率よりも低くなるように第2の層の材料が選択される場合、これは、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分の原子または分子が可撓性のダイヤフラム区分を透過するよりも第2の層をゆっくりとしか、もしくは少ない程度しか透過できないことを意味する。
【0014】
本発明によれば、第1の層は、ダイヤフラム区分に直接または間接的に被着されており、第2の層は、第1の層に直接または間接的に被着されている。本明細書の目的上、一方の層が他方の層に直接被着される場合、これは、2つの層の間に別の層またはレイヤが存在しないことを意味する。一方の層が他方の層に間接的に被着される場合、これも本明細書の目的上、2つの層の間に別の層またはレイヤが配置されることを意味する。
【0015】
本発明によるダイヤフラム構造は、有利には、プロセス媒体による損傷に対する高い耐性を達成することができる。プロセス媒体またはプロセス媒体の成分の透過は、実質的に防止され、少なくとも大幅に減速または制御することができる。さらに、可撓性のダイヤフラム区分の表面上の不均一な透過が防止されるか、または透過は、層構造によって覆われた可撓性のダイヤフラム区分の表面上で少なくとも著しく均一に行われる。したがって、ダイヤフラム構造の耐久性または他の機能を損なうことにもなりかねない、局所的に異なる強さの損傷が回避される。
【0016】
これらの利点は、本発明がいくつかの効果を革新的な方法で組み合わせているために達成することができる。第1の層の熱膨張係数を選択することで、第1の層は、可撓性のダイヤフラム区分と第2の層との間の熱膨張作用に対する緩衝域として効果的に機能する。したがって、可撓性のダイヤフラム区分と第2の層との間に第1の層が配置されていない場合、温度変化時に通常大きく異なる熱膨張係数のために可撓性のダイヤフラム区分と第2の層との間に発生し得る機械的応力が劇的に低減される。このような機械的応力は、以下では熱応力とも呼ばれる。熱応力は、隣接する層または材料の熱膨張係数の差が大きいほど顕著になる。第1の層により、可撓性のダイヤフラム区分と第2の層との熱膨張係数の差の合計は、2つの界面にいわば分散され、各々の差はより小さく、ひいては熱応力もより低くなる。第2の層の選択された透過率と組み合わせて、この効果は、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分の透過による損傷をとりわけ効率的に低減することにつながる。第1の層による熱応力の緩衝作用により、第2の層は長期的に高い品質を維持することができ、すなわち、第2の層は、長期的にあるいは層構造の製造中でさえも、熱応力により発生する可能性がある微小亀裂もしくは他の損傷の影響を受けないか、または少なくとも大幅に少なくすることができる。このような微小亀裂もしくは損傷は、層構造の表面にわたって透過を不均一にする可能性がある。したがって、第1の層は、第2の層がその低い透過率を層構造の全表面にわたって均一に発揮できるようにするために不可欠な役割を果たす。
【0017】
ダイヤフラム装置の例示的な構成では、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分に対する第2の層または第2の層に含まれるサブ層の透過率は、ダイヤフラム区分の対応する透過率の少なくとも係数100だけ、好ましくは少なくとも係数1000だけ、とりわけ好ましくは少なくとも係数106だけ低い。この構成により、透過に対する第2の層のバリア効果をとりわけ効率的に達成することができる。
【0018】
本明細書において、第1の層または第2の層について言及される場合、これは、特定の材料からなる少なくとも1つの均質な層が、各々の場合において意味される。一方、前のセクションと次のセクションのように、第1の層または第2の層の1つまたは複数のサブ層について言及する場合、これは、異なる材料でできた層スタックからの1つまたは複数の層が、各々の場合において意味される。したがって、このような例示的な実施形態では、第1の層または第2の層は、異なるサブ層のスタックを各々の場合において含むことができるが、各サブ層は、個々の第1の層または第2の層も満たさなければならないすべての要件を常に満たす。
【0019】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、第1の層または第1の層に含まれるサブ層は、ダイヤフラム区分および第2の層の同じ構造定数の値の間にある値の構造定数を有する。特に、この構造定数は、堆積した層の格子定数または層内の平均原子間距離であってよい。このように、第2の層は、構造定数が異なるために可撓性のダイヤフラム区分と第2の層との間に発生し得る機械的応力を効果的に防止するか、少なくとも劇的に低減することができる。このような機械的応力は、温度変化による膨張特性の違いによって初めて現れるのではなく、基本的には、隣接する層または材料が異なる構造定数を有する場合に境界層で発生する。したがって、以下では、こうした機械的応力を固有応力とも呼ぶ。上述した熱応力の緩衝層としての第1の層の作用形態と同様に、本構成における第1の層は、固有応力の緩衝層としてもさらに作用するため、微小亀裂やその他の損傷の更なる原因を排除するか、少なくともその影響を大幅に低減することができる。
【0020】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、第1の層または第1の層に含まれるサブ層は、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分に対して、ダイヤフラム区分の対応する透過率よりも低い透過率を有する。その結果、第1の層または第1の層の対応するサブ層は、既にバリア効果を発揮することができ、つまり、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分の透過を効率的に防止するかまたは少なくとも大幅に遅延させることができる。その結果、第2の層をさらに一層効率的に保護することができ、ダイヤフラム構造は、その耐久性および他の機能においてさらに改善されることができる。
【0021】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分に対する第1の層または第1の層に含まれるサブ層の透過率は、ダイヤフラム区分の対応する透過率および/または第2の層の対応する透過率よりも少なくとも係数100だけ、好ましくは少なくとも係数1000だけ、とりわけ好ましくは少なくとも係数106だけ低い。この構成により、透過に対する第1の層のバリア効果をとりわけ効率的に達成することができる。
【0022】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、第1の層または第1の層に含まれるサブ層は、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分に対して、ダイヤフラム区分の対応する透過率よりも高い透過率を有する。その結果、第1の層の浸透を増加させ、加速させることができ、使用時に、ダイヤフラム区分の第1の側がプロセス媒体に曝されると、ある時間を経過したら、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分の原子または分子による第1の層の実質的に均質で均一な浸透が起こることになる。これによりまた、第2の層への、または第2の層を通る、より均一な透過がもたらされる。このように、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分による第2の層の不均一な、すなわち、局所的に異なる強さで生じる透過または損傷を効率的に防止することができるか、または少なくとも大幅に低減することができる。この結果、ダイヤフラム装置全体、特に第2の層の耐久性および他の機能が改善される。
【0023】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分に対する第1の層または第1の層に含まれるサブ層の透過率は、ダイヤフラム区分の対応する透過率および/または第2の層の対応する透過率よりも少なくとも係数100だけ、好ましくは少なくとも係数1000だけ、とりわけ好ましくは少なくとも係数106倍だけ高い。この構成により、前のセクションで説明した、より均一な透過をとりわけ効率的に達成することができる。
【0024】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、第1の層または第1の層に含まれるサブ層は、定着層である。定着層は、種々異なる材料の2つの層の間に配置されていて、両方の層において、つまり、2つの隣接する層への各々の界面において安定した付着作用を発揮することを特徴とする。この場合、定着層は、例えば、可撓性のダイヤフラム区分に直接配置され、したがって、第1の層の更なるサブ層または次の第2の層が互いに安定的に付着し、ひいては最終的に可撓性のダイヤフラム区分に安定的に付着するという事実に有利に寄与することができる。したがって、個々の層の剥離などの層構造の損傷を効率的に防止または低減することができる。
【0025】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、第1の層は、少なくとも2つのサブ層を備え、これらは、熱膨張係数は異なるが、両方ともダイヤフラム区分および第2の層の熱膨張係数の値の間にある。サブ層は、ダイヤフラム区分の第2の側に最も近いサブ層の熱膨張係数とダイヤフラム区分の熱膨張係数との差が最も小さく、後続の各サブ層の熱膨張係数とダイヤフラム区分の熱膨張係数との差が、それぞれ先行のサブ層よりも大きくなるように、ダイヤフラム区分に順次被着されている。本構成により、ダイヤフラム区分と第2の層との間の熱応力に関する緩衝効果を、第1の層によってさらに一層向上させることができる。可撓性のダイヤフラム区分と第2の層との間の熱膨張係数の差の合計は、ここでは、(単層の第1の層のみを有する構成と比較して)さらに一層多くの中間ステップまたは中間界面に分散され、その結果、第1の層のサブ層と第2の層との間の個々の界面で、熱膨張係数の各々の差、ひいては熱応力もさらに一層低減することができる。
【0026】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、第1の層は、10nm~5000nmの厚さを有する。このような層厚さは、前のセクションで説明した、第1の層に関連して生じ得る効果および利点をとりわけ効果的に達成することができる。
【0027】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、第2の層または第2の層に含まれるサブ層は、10MOhmよりも大きい、特に100MOhmよりも大きい電気抵抗を有する(MOhmは、1,000,000Ωの意)。第2の層または第2の層に含まれるサブ層の電気抵抗とは、第1の層に向かっている各々の層の下側と、第1の層から離れている各々の層の上側との間の抵抗を意味する。このような第2の層または第2の層のサブ層は、絶縁層とも呼ぶことができる。有利には、この絶縁層は、第2の層に続く、例えば導体路層などの更なる層を、その下にある、場合によっては導電性の層から、または可撓性のダイヤフラム区分から、効率的に電気的に絶縁することができる。例えば、絶縁層はSiO2から形成することができ、これはさらに、例えば水素のような揮発性物質に対する透過率が非常に低い。
【0028】
ダイヤフラム装置の先行する構成の例示的な改良形態では、導体路層は、絶縁層として形成されたかまたは絶縁層を含む第2の層に直接または間接的に被着されている。その結果、有利には、ダイヤフラム装置に更なる機能を提供することができる。例えば、導体路層によって測定ブリッジを作製することができ、この測定ブリッジは、可撓性のダイヤフラム区分の表面の局所的な歪みまたは伸長を測定可能な電気変数に変換する。その結果、ダイヤフラム装置の第1の側が加圧プロセス媒体に曝され、弾性的に変形する場合に、ダイヤフラム装置を圧力測定用のセンサ素子として使用することができる。
【0029】
このような用途では、ダイヤフラム装置の特性をとりわけ有利に活用することができる。熱応力および場合によってはまた固有応力に対する第1の層の緩衝効果は、ダイヤフラム装置の様々な構成に関して前のセクションで既に説明したが、まず第1に、ダイヤフラム装置によって形成されたセンサ素子の、温度変動などの環境影響に対する感度を一般的に低減する。その結果、このようなセンサ素子は、より高い信頼性、安定性、および測定精度を達成することができる。
【0030】
さらに、ダイヤフラム装置の様々な構成に関して前のセクションで既に説明したように、第1および第2の層の組み合わせは、プロセス媒体またはプロセス媒体の成分の透過に対して非常に有効なバリア効果を達成するか、または透過を少なくとも大幅に低減させることができる。さらにまたは代替的に、局所的に不均一な透過を低減することができ、すなわち、第2の層およびその上に配置された導体路層は、より均一に透過される。このように、透過効果に起因する第2の層の上に配置された導体路層の損傷を大幅に低減することができ、ダイヤフラム構造によって形成されたセンサ素子は、大幅に優れた長期安定性および測定精度を達成することができる。
【0031】
ダイヤフラム装置の前述の構成の例示的な改良形態では、第1の層は、10nm~500nmの厚さ、特に20nm~200nmの間の厚さを有する。このような層厚さでは、さらに一層大きな層厚さ範囲を有する先行する別の例示的な構成に関連して既に説明したように、前のセクションで説明した、第1の層に関連して生じ得る効果および利点をとりわけ効果的に達成することができる。さらに、ここでより狭く定義された層厚さ範囲は、導体路層と関連してのみ明らかになる、更なる有利な特性を発揮することができる。既に説明したように、いわゆるレーザトリミングは先行技術に基づき公知である。この方法は、本明細書の文脈では、導体路層の導体路を操作するために使用される。例えば、抵抗路の相互接続によって導体路層にホイートストンブリッジが形成される場合、レーザ光線によって抵抗路にいわゆるトリムカットを導入することにより、レーザトリミングによって個々の抵抗路の抵抗値を精密に調整することができる。この方法では、レーザ光線の一部が、通常、導体路層の下にある層にも当たる。第2の層のために透過バリアおよび絶縁層として使用できる材料は、一般に、レーザ光線に対して透明であり、これは、特にSiO2(二酸化ケイ素)に当てはまる。このように、レーザ光線の一部は、下にある第1の層に当たる。第1の層がこの改良形態に応じた層厚さを有していれば、レーザ光線によって第1の層が加熱され、強い加熱の結果として損傷することを効率的に防止することができる。代わりに、レーザ光線によって導入された熱は、第1の層の下にある基材、すなわちダイヤフラム区分に効果的に放散することができる。このように、ダイヤフラム区分はヒートシンクとして機能する。一方、第1の層の構成が厚すぎる場合、熱は十分に速く排出することができず、第1の層に損傷が発生する。また、第1の層が薄すぎると、第1の層の所望の効果、特に熱応力および/または固有応力の効果的な低減が十分な程度に達成されなくなる。
【0032】
ダイヤフラム装置の上述の構成の更なる例示的な改良形態では、ダイヤフラム装置は、保護層を備え、この保護層は、導体路層に直接または間接的に被着されていて、導体路層を少なくとも部分的に覆っている。その結果、導体路層を損傷から効果的に保護することができる。この場合、個々の表面部分は、例えば、導体路層の電気的接触のための接触面へのアクセスを提供するために、保護層から解放しておくことができる。保護層は、例えば薄膜技術によって導体路層上に施与されるラッカーまたはパッシベーション層であってよい。
【0033】
ダイヤフラム装置の例示的な構成では、前のセクションで言及したプロセス媒体、または少なくとも言及したプロセス媒体の成分は、水素、特に気体水素である。この元素は、多数の産業プロセスの重要な構成部分である。先行技術に基づき公知であるようなダイヤフラム装置は、水素の透過によって、特に局所的に不均一な透過によって悪影響を受ける可能性がある。例えば、このようなダイヤフラム装置がセンサ素子を形成する場合、導体路層によって形成されたこのセンサ素子の測定回路は、透過効果によって離調または変化し、測定精度および信号安定性が長期的に脅かされる可能性がある。ダイヤフラム装置のこの例示的な構成によれば、第2の層は、可撓性のダイヤフラム区分の対応する透過率よりも低い水素分子に対する透過率を有する。第2の層における様々な形態の望ましくない機械的応力(つまり、例えば熱応力および/または固有応力)を効率的に低減し、ひいては微小亀裂および他の損傷の形成を打ち消す第1の層との組み合わせにより、第2の層は、水素の透過に対するバリア効果を最適に発揮することができる。
【0034】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、第2の層または第2の層に含まれるサブ層を構成する材料は、式AlxSiy(O,N)1-x-yで表され、xおよびyは、0~1の原子分率であり、合計して常に1以下である。ここで、Si、Al、OおよびNは、化学元素のケイ素、アルミニウム、酸素および窒素を表す。この式の(O,N)という表記は、酸素または窒素のいずれかが化合物の一部であることを意味する。この式に対応する材料またはこの材料群は、他の多くの物質と比較して非常に低い透過率を有するため、ダイヤフラム装置の第2の層に使用するのにとりわけ適している。プロセス媒体が水素であるか、または水素がプロセス媒体の成分であり、層構造を透過するのを防止したい用途では、例えば二酸化ケイ素(SiO2)は、水素に対する透過率が低く、同時に薄膜技術において既に非常に確立されており、ひいては費用対効果の高い使用ができるため、とりわけ有利に使用することができる。
【0035】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、可撓性のダイヤフラム区分を構成する材料は、特殊鋼、特にオーステナイト鋼、または特殊合金、特にエルジロイ、ハステロイ、316Lまたは1.4404である。これらの材料は、高い機械抵抗および/または化学抵抗を特徴としており、したがって、ダイヤフラム装置のその第1の側が、高温および/または高圧の、あるいは化学的および/または機械的に研磨作用を有するプロセス媒体と接触するダイヤフラム装置に有利に使用することができる。
【0036】
ダイヤフラム装置の更なる例示的な構成では、第1の層または第1の層に含まれる少なくとも1つのサブ層を構成する材料は、式MxNyOzC1-x-y-zで定義され、x、yおよびzは、0~1の原子分率であり、合計で常に1以下である。記号N,OおよびCは、化学元素の窒素、酸素、炭素を表す。記号Mは、元素のアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、またはジルコニウム(Zr)を表す。このように定義された材料群は、ダイヤフラム区分と第2の層との多数の材料の組み合わせに対して、少なくとも熱膨張係数に関する条件を満たすことができるため、第1の層として使用するのにとりわけ適している。これは、特に、可撓性のダイヤフラム区分と第2の層との各々の材料が、上述の材料群から選択される場合に当てはまる。適切な選択は、文献値または実験的な測定に基づいて行うことができる。
【0037】
代替的には、第1の層または第1の層に含まれる少なくとも1つのサブ層を構成する材料は、化学元素記号Be、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ce、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、PtまたはThの金属のいずれか、または鉄-炭素合金、ニッケル基合金、特殊鋼、チタン合金またはコバール、化学結合記号Si3N4、SiC、TiN、TiC、AlN、Al2O3、ZrO2、BaTiO3、Cr2O3、TiAlNまたはZrNの材料のいずれかであってもよい。また、これらの材料は、ダイヤフラム区分と第2の層との多数の材料の組み合わせに対して、少なくとも熱膨張係数に関する条件を満たすことができるため、第1の層としてとりわけ適している。これは、特に、可撓性のダイヤフラム区分と第2の層との各々の材料が、上述の材料群から選択される場合に当てはまる。適切な選択は、文献値または実験的な測定に基づいて行うことができる。チタンまたは窒化チタンの使用がとりわけ好ましく、この材料は、例えば、定着層としても適しており、特に可撓性のダイヤフラム区分に対して前述の特殊合金を使用する場合に適しているからである。
【0038】
本発明の別の態様は、本発明の第1の態様に係るダイヤフラム装置、または前述したダイヤフラム装置の例示的な構成もしくは改良形態のうちの1つを含む圧力ゲージに関する。
【0039】
本発明の別の態様は、本発明の第1の態様に係るダイヤフラム装置、または言及されたダイヤフラム装置の例示的な構成もしくは改良形態のうちの1つを含む圧力センサに関する。好ましくは、圧力センサのダイヤフラム装置は、特殊鋼または特殊合金からなる可撓性のダイヤフラム区分と、チタンまたは窒化チタンからなる第1の層と、二酸化ケイ素からなる第2の層とを備える。このような材料の選択により、前のセクションで説明した本発明およびその例示的な構成の利点がとりわけ効果的に実現されることができ、同時に、薄膜技術の方法によって層構造を安価かつ効率的に製造することができる。さらに、圧力センサは、第2の層上に間接的または直接的に配置される導体路層を含む。これは、可撓性のダイヤフラム区分の表面の局所的な歪みまたは伸張を測定可能な電気変数に変換する測定ブリッジを形成することができる。層構造により、この導体路層は、プロセス媒体またはプロセス媒体の少なくとも1つの成分の透過による損傷の影響から効果的に保護することができる。この圧力センサは、特に上述の例示的な材料の組み合わせで、プロセス媒体である水素または水素含有プロセス媒体と一緒に使用するのに特に有利に適し、層構造を通る水素の透過を防止するか、少なくとも大幅に低減することができる。
【0040】
したがって、本発明の別の態様は、水素であるかまたは水素を含むプロセス媒体とともに、またはそれに対する、本発明の第1の態様に係るダイヤフラム装置の使用、または本発明のさらに言及された態様に係るダイヤフラム装置、圧力ゲージおよび/または圧力センサの例示的な構成または改良形態の1つも含む。このような水素用途で使用される場合、前のセクションで示した本発明の様々な態様、構成および改良形態の効果、作用および利点を、とりわけ効果的に使用することができる。
【0041】
本明細書の開示内容は、上述した例に限定されるものではなく、論理的に相互に排他的でない限り、それらのすべての組み合わせも含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の例示的な構成および実施例を、図面を参照しながら以下により詳細に説明する。
【
図3】ダイヤフラム装置を備えた圧力センサの断面図を示す。
【
図4A】ダイヤフラム装置を備えた圧力センサの斜視図を示す。
【
図4B】ダイヤフラム装置を備えた圧力センサの断面図を示す。
【
図5】圧力センサを備えた圧力測定装置の概略的な断面図を示す。
【0043】
互いに対応する部材には、すべての図において同じ参照符号を付している。
【0044】
図面の詳細な説明
図1および
図2は、可撓性のダイヤフラム区分110が部分的に示されたダイヤフラム装置100を示す。ダイヤフラム区分110の第2の側112には、第1の層121および第2の層122を有する層構造120が配置される。ダイヤフラム区分110の第1の側111は、詳細には図示されない形式でプロセス媒体200に曝されていてよい。
【0045】
図2では、第1の層121および第2の層122は、各々の場合において、複数のサブ層121’,121’’,121’’’,122’,122’’,122’’’を備える。
【0046】
図3、
図4Aおよび
図4Bは、各々の場合において、ダイヤフラム装置100を備える圧力センサ400を示す。この場合、圧力センサ400は、圧力測定カプセルの形態で形成されている。中空円筒の形をした強固で剛性の縁領域410が、可撓性のダイヤフラム区分110を支持する。
【0047】
図3では、層構造120が断面図でより詳細に示されている。第2の層122の上に導体路層123が被着されており、その上にまた保護層124が被着されている。
【0048】
図5は、圧力測定装置500の概略的な断面図である。これは、接続部分510と測定装置ハウジング520とを備える。接続部分510を介して、圧力測定装置500は、例えばねじ接続を介して、プロセス設備600の測定接続部610に接続される。接続部分510は、アクセス開口511を有し、それを介して、プロセス設備600からのプロセス媒体200が圧力センサ400に供給される。この場合、圧力センサ400は、
図4Aおよび
図4Bに従って構成されていてよい。圧力センサ400は、層構造120を備えた可撓性のダイヤフラム区分110を備え、層構造120は、例えば、
図3の実施形態に従って形成される。層構造120の導体路層123には、ピエゾ抵抗路を有する測定ブリッジが形成されており、これにより、プロセス媒体200がダイヤフラム区分110の第1の側111に接触していることに起因するダイヤフラム区分110の変形の測定技術的な検出が可能になる。導体路層123は、概略的に示された線路、例えばいわゆるボンディングワイヤによって、圧力測定装置500の概略的に示された評価電子機器530に接続されており、この評価電子機器は、測定ブリッジの電気特性を測定し、そこから測定値、特にプロセス媒体200の圧力を導出する。この測定値を表す測定値信号は、通信インタフェース540を介して、例えば電子接点を有するプラグソケットを介して、または無線信号として提供される。
【0049】
本発明は、先の実施例に限定されるものではない。以下の特許請求の範囲内で変更することができる。同様に、従属請求項からの個々の態様は、論理的に相互に排他的でない限り、互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
100 ダイヤフラム装置
110 ダイヤフラム区分
111 ダイヤフラム区分の第1の側
112 ダイヤフラム区分の第2の側
120 層構造
121 第1の層
121’,121’’,121’’’ 第1の層のサブ層
122 第2の層
122’,122’’,122’’’ 第2の層のサブ層
123 導体路層
124 保護層
200 プロセス媒体
300 圧力ゲージ
400 圧力センサ
410 縁領域
500 圧力測定装置
510 接続部分
511 アクセス開口
520 測定装置ハウジング
530 評価電子機器
540 通信インタフェース
600 プロセス設備
610 測定接続部
【外国語明細書】