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特開2023-178277ストークスベクトル測定を用いた光多入力多出力(MIMO)レシーバ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178277
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ストークスベクトル測定を用いた光多入力多出力(MIMO)レシーバ
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/60 20130101AFI20231207BHJP
   H04J 14/06 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H04B10/60
H04J14/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023092517
(22)【出願日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】17/832,533
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】523206747
【氏名又は名称】アロエ セミコンダクター インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー アール. ドエル
(72)【発明者】
【氏名】イング ズハオ
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA52
5K102AD15
5K102AH02
5K102AH11
5K102AH24
5K102AH26
5K102KA01
5K102KA39
5K102LA02
5K102LA32
5K102LA52
5K102MA02
5K102MB09
5K102MB12
5K102MC06
5K102MC11
5K102MD01
5K102MD02
5K102MH03
5K102MH19
5K102MH22
5K102PH01
5K102PH22
5K102PH37
5K102PH42
5K102PH49
5K102PH50
5K102RB01
5K102RD11
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】偏光モードの異なる信号同士が受信される時に、多入力多出力(multiple-input-multiple-output:MIMO)多重分離を介して、レシーバで信号を分離する光MIMOレシーバを提供する。
【解決手段】光MIMOレシーバは、入力光を受信する入力ポートと、ストークスパラメータの測定値を生成するストークス測定装置と、入力光及びストークス測定装置によって生成されたストークスパラメータの測定値に基づいて、複数の多重分離された出力光信号を生成する光MIMOデマルチプレクサと、光MIMOデマルチプレクサによって生成された複数の多重分離された出力光信号を出力する複数の出力ポートと、を含む。特に、ストークス測定装置は、光MIMOデマルチプレクサに並列配置で接続されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光を受け取るように構成された入力ポート;
ストークスパラメータの測定値を生成するように構成されたストークス測定装置;
(i)該入力光および(ii)該ストークス測定装置によって生成された該ストークスパラメータの測定値に基づいて、複数の多重分離された出力光信号を生成するように構成された光MIMOデマルチプレクサ;および
該光MIMOデマルチプレクサによって生成された該複数の多重分離された出力光信号を出力するように構成された複数の出力ポート
を備え、
該ストークス測定装置が該ストークスパラメータを測定するように構成されているときのアナログ帯域幅が、該多重分離された出力光信号のアナログ帯域幅よりも小さい、光多入力多出力(MIMO)レシーバ。
【請求項2】
前記ストークス測定装置は、複数のバランスドフォトダイオード対を備え、
該複数のバランスドフォトダイオード対は、多重分離された出力光信号のアナログ帯域幅よりも小さい受信帯域幅を有するように構成されている、請求項1に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項3】
前記ストークス測定装置は、前記光MIMOデマルチプレクサと同じ基板上に集積されている、請求項1に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項4】
前記ストークス測定装置と前記光MIMOデマルチプレクサは、偏光ビームスプリッタ(PBS)を共有する、請求項1に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項5】
前記光MIMOデマルチプレクサは、前記ストークス測定装置から電気信号を受信するように構成されており、かつ、
前記ストークス測定装置から受信した該電気信号の帯域幅は、前記多重分離された出力光信号のアナログ帯域幅よりも小さい、請求項1に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項6】
前記ストークス測定装置は、前記光MIMOデマルチプレクサの光入力または前記光MIMOデマルチプレクサの光出力から前記ストークスパラメータを測定するように構成されている、請求項1に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項7】
前記ストークス測定装置は、前記ストークスパラメータの前記測定値を、フィードフォワード構成またはフィードバック構成で前記光MIMOデマルチプレクサに提供するように構成されている、請求項6に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項8】
前記入力光にマーカトーンが存在するか否かを検出するように構成された電気的フィルタをさらに備える、請求項1に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項9】
入力光を受け取るように構成された入力ポート;
ストークスパラメータの測定値を生成するように構成されたストークス測定装置;
(i)該入力光および(ii)該ストークス測定装置によって生成された該ストークスパラメータの測定値に基づいて、複数の多重分離された出力光信号を生成するように構成された光MIMOデマルチプレクサ;および
該光MIMOデマルチプレクサによって生成された該複数の多重分離された出力光信号を出力するように構成された複数の出力ポート
を備え、
該ストークス測定装置が、光MIMOデマルチプレクサに並列配置で接続されている、光多入力多出力(MIMO)レシーバ。
【請求項10】
前記光MIMOデマルチプレクサは、前記ストークス測定装置からの電気信号を介して前記ストークスパラメータの測定値を受信するようにさらに構成されている、請求項9に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項11】
前記ストークス測定装置は、前記光MIMOデマルチプレクサの入力または前記光MIMOデマルチプレクサの出力に接続される光タップに接続されている、請求項9に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項12】
前記ストークス測定装置が、
前記光MIMOデマルチプレクサの前記入力または前記出力からタップされる2つの光入力;および
前記ストークスパラメータの測定値を出力するように構成された少なくとも3つの電気出力を備える、請求項9に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項13】
前記ストークス測定装置の少なくとも3つの電気出力は、前記光MIMOデマルチプレクサを制御するように構成された処理装置に接続されている、請求項12に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項14】
前記ストークス測定装置は、第1のバランスドフォトダイオード対および光ハイブリッドに接続された2つの1x2光カプラを更に備え、
該光ハイブリッドは、さらに、第2のバランスドフォトダイオード対と第3のバランスドフォトダイオード対に接続され、
該第1のバランスドフォトダイオード対は、第1の電気出力を通じて第1のストークスパラメータの測定値を出力するように構成され、
該第2のバランスドフォトダイオード対は、第2の電気出力を通じて第2のストークスパラメータの測定値を出力するように構成され、かつ、
該第3のバランスドフォトダイオード対は、第3の電気出力を通じて第3のストークスパラメータの測定値を出力するように構成される、請求項12に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項15】
前記第1のバランスドフォトダイオード対、前記第2のバランスドフォトダイオード対、および前記第3のバランスドフォトダイオード対は、前記光MIMOデマルチプレクサによって多重分離された信号帯域幅よりも小さい受信アナログ帯域幅を有するように構成されている、請求項14に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項16】
各1x2光カプラは、0.1%~25%のタップ比を有するタップカプラである、請求項14に記載の光MIMOレシーバ。
【請求項17】
光多入力多出力(MIMO)多重分離を実行する方法であって、
入力ポートを通して入力光を受信すること;
ストークスパラメータの測定値を生成すること;
該入力光に対して、該ストークスパラメータの該測定値に基づいて制御される適応型光MIMO多重分離を実行して、複数の多重分離された出力光信号を生成すること;かつ
出力ポートを通して、該複数の多重分離された出力光信号を出力すること、
を含み、
該ストークスパラメータが測定されるときの第1のアナログ帯域幅が、多重分離された光信号の第2のアナログ帯域幅よりも小さい、前記方法。
【請求項18】
前記適応型光MIMO多重分離は、フィードフォワード制御またはフィードバック制御として提供される前記ストークスパラメータの前記測定値に基づいて実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記入力光を、異なる偏光の第1の入力光と第2の入力光に分割すること、をさらに含み、かつ、
前記適応型光MIMO多重分離は、前記ストークスパラメータの前記測定値に基づいて、前記第1の入力光と前記第2の入力光との間に相対位相シフトを適用するために、複数のステージの光位相シフトを実行すること、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のステージの光位相シフトが、第1の光位相シフトステージ、それに続く第2の光位相シフトステージ、それに続く第3の光位相シフトステージを含む、正確に3つのステージの光位相シフトからなり、かつ、
前記第2の光位相シフトステージと前記第3の光位相シフトステージが、前記ストークスパラメータの前記測定値に依存する相対位相シフトを適用する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記適応型光MIMO多重分離を実行することは、前記ストークスパラメータの前記測定値に基づいて、前記第2の光位相シフトステージと前記第3の光位相シフトステージによって適用される光位相シフト量の解析解を決定する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記適応型光MIMO多重分離は、前記ストークスパラメータの前記測定値に基づく非反復制御を用いて実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記入力光を、異なる偏光の第1の入力光と第2の入力光に分割すること、をさらに含み、かつ、
前記適応型光MIMO多重分離を実行することは、さらに、前記第1の入力光と前記第2の入力光との間に相対減衰を適用すること、を含み、
前記相対減衰の量は、前記ストークスパラメータの前記測定値に基づいてプログレッシブ探索アルゴリズムを用いて制御される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記入力光は、前記第1の入力光と前記第2の入力光とを含み、かつ、
前記適応型光MIMO多重分離を実行することは、
前記第1の入力光から、トランスミッタにおいて第1のデータストリーム上に配置された第1のマーカ信号を検出すること;
前記第2の入力光から、第2のデータストリームに対応する第2のマーカ信号を検出すること;かつ、
前記第1のマーカ信号および前記第2のマーカ信号の検出に基づいて、前記第1の入力光および前記第2の入力光が、それぞれ前記第1のデータストリームおよび前記第2のデータストリームを伝送していると判定すること、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記適応型光MIMO多重分離を実行することは、
ストークスパラメータ S3= 2Im(eX・eY *)の平均値〈S3〉を決定すること(ここで、eXおよびeYは、前記第1の入力光および前記第2の入力光の偏光の光波場を示す);
〈S3〉=±1か否かを判定すること;かつ、
〈S3〉=±1という判定に基づいて、〈S3〉=±1を回避するために前記第2の光位相シフトステージによって適用される前記光位相シフト量の解析解を再決定すること、を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記ストークスパラメータの前記測定値は、前記光MIMOデマルチプレクサの入力または前記光MIMOデマルチプレクサの出力に接続されている光タップからの光に基づいて生成される、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
偏光スプリッタ/ローテータ;
該偏光スプリッタ/ローテータの出力に接続された一連のカプラおよび位相シフタ;
該一連のカプラおよび位相シフタの第1の出力に接続された第1の光タップ;
該一連のカプラおよび位相シフタの第2の出力に接続された第2の光タップ;
該第1の光タップの後、該第1の出力に接続された第1のフォトダイオード;
該第2の光タップの後、該第2の出力に接続された第2のフォトダイオード;
該第1の光タップに接続された第1の1x2カプラ;
該第2の光タップに接続された第2の1x2カプラ;
該第1の1x2カプラの第1の出力と該第2の1x2カプラの第1の出力の両方に接続された第1のバランスドフォトダイオード;
該第1の1x2カプラの第2の出力と該第2の1x2カプラの第2の出力の両方に接続された光ハイブリッドであって、20度から160度の該光ハイブリッド;および
該光ハイブリッドの出力に接続された第2のバランスドフォトダイオードと第3のバランスドフォトダイオード、を備える光多入力多出力(MIMO)レシーバ。
【請求項28】
偏光スプリッタ/ローテータ;
該偏光スプリッタ/ローテータの第1の出力に接続された第1の光タップ;
該偏光スプリッタ/ローテータの第2の出力に接続された第2の光タップ;
該第1の光タップと該第2の光タップの後、該偏光スプリッタ/ローテータの該第1の出力と該第2の出力の両方に接続された一連のカプラと位相シフタ;
該第1の光タップに接続された第1の1x2カプラ;
該第2の光タップに接続された第2の1x2カプラ;
該第1の1x2カプラの第1の出力と該第2の1x2カプラの第1の出力の両方に接続された第1のバランスドフォトダイオード;
該第1の1x2カプラの第2の出力と該第2の1x2カプラの第2の出力の両方に接続された光ハイブリッドであって、20度から160度の該光ハイブリッド;および
該光ハイブリッドの出力に接続された第2のバランスドフォトダイオードと第3のバランスドフォトダイオード、を備える光多入力多出力(MIMO)レシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、光レシーバとデマルチプレクサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信システムでは、多重化技術(偏光分割多重化(polarization-division multiplexing:PDM)など)によって、異なる信号を異なるチャネル(例えば、同じ搬送周波数の異なる偏光モード)で多重化し、単一のファイバを介して同時に伝送することで通信容量および/または光子効率を向上させることができる。しかしながら、PDMを使用する際の課題は、偏光モードが光通信システム内を伝播するときに、例えば、ガラスファイバの応力(曲げおよびねじれ)、周囲の温度変化、またはその他の通信システムの非理想的性質によって、ランダムで予測できない回転および損失を受ける傾向があることである。その結果、偏光モードの異なる信号同士が、それらが受信される時に混在することとなる。このようなシナリオでは、多入力多出力(multiple-input-multiple-output:MIMO)多重分離を介して、レシーバで信号を分離する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の実装は、一般に、測定されたストークスパラメータに基づいて光信号の多重分離を実行する光多入力多出力(MIMO)デマルチプレクサに向けられている。
【0004】
1つの一般的な態様には、入力光を受信するように構成された入力ポートと、ストークスパラメータの測定値を生成するように構成されたストークス測定装置と、(i)入力光および(ii)ストークス測定装置によって生成されたストークスパラメータの測定値に基づいて、複数の多重分離された出力光信号を生成するように構成された光MIMOデマルチプレクサと、光MIMOデマルチプレクサによって生成された複数の多重分離された出力光信号を出力するように構成された複数の出力ポートと、を含む光多入力多出力(MIMO)レシーバが含まれる。特に、ストークス測定装置がストークスパラメータを測定するように構成されているときのアナログ帯域幅は、多重分離された出力光信号のアナログ帯域幅よりも小さい。
【0005】
実装には、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。ストークス測定装置が複数のバランスドフォトダイオード対を含む光MIMOレシーバ。複数のバランスドフォトダイオード対が、多重分離された出力光信号のアナログ帯域幅よりも小さい受信帯域幅を有するように構成されている光MIMOレシーバ。ストークス測定装置が、光MIMOデマルチプレクサと同じ基板上に集積されている光MIMOレシーバ。ストークス測定装置と光MIMOデマルチプレクサが、偏光ビームスプリッタ/ローテータ(PBSR)を共有する光MIMOレシーバ。光MIMOデマルチプレクサが、ストークス測定装置から電気信号を受信するように構成されている光MIMOレシーバ。ストークス測定装置から受信した電気信号の帯域幅が、多重分離された出力光信号のアナログ帯域幅よりも小さい光MIMOレシーバ。ストークス測定装置が、光MIMOデマルチプレクサの光入力または光MIMOデマルチプレクサの光出力からストークスパラメータを測定するように構成されている光MIMOレシーバ。ストークス測定装置が、ストークスパラメータの測定値を、フィードフォワード構成またはフィードバック構成で光MIMOデマルチプレクサに提供するように構成されている光MIMOレシーバ。入力光上のマーカトーンの存在を検出するように構成された電気的フィルタをさらに含む光MIMOレシーバ。記載された技術の実装は、ハードウェア、方法またはプロセス、またはコンピュータアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含み得る。
【0006】
1つの一般的な態様には、入力光を受信するように構成された入力ポートと、ストークスパラメータの測定値を生成するように構成されたストークス測定装置と、(i)入力光および(ii)ストークス測定装置によって生成されたストークスパラメータの測定値に基づいて、複数の多重分離された出力光信号を生成するように構成された光MIMOデマルチプレクサと、光MIMOデマルチプレクサによって生成された複数の多重分離された出力光信号を出力するように構成された複数の出力ポートと、を含む光多入力多出力(MIMO)レシーバが含まれる。特に、ストークス測定装置は、光MIMOデマルチプレクサに並列配置で接続されている。
【0007】
実装には、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。光MIMOデマルチプレクサが、ストークス測定装置からの電気信号を介してストークスパラメータの測定値を受信するようにさらに構成されている光MIMOレシーバ。ストークス測定装置が、光MIMOデマルチプレクサの入力または光MIMOデマルチプレクサの出力に接続される光タップに接続されている光MIMOレシーバ。ストークス測定装置が、ストークスパラメータをパラメータのセットから計算できるように、光MIMOデマルチプレクサの入力または出力から取り出される2つの光入力と、ストークスパラメータの測定値またはストークスパラメータの線形結合のセットを出力するように構成された少なくとも3つの電気出力と、を含む光MIMOレシーバ。ストークス測定装置の少なくとも3つの電気出力は、光MIMOデマルチプレクサを制御するように構成された処理装置に接続されている光MIMOレシーバ。ストークス測定装置が、第1のバランスドフォトダイオード対および光ハイブリッドに接続された2つの1x2光カプラをさらに含み、光ハイブリッドが、第2のバランスドフォトダイオード対および第3のバランスドフォトダイオード対にさらに接続され、第1のバランスフォトダイオード対が、第1の電気出力を通して第1のストークスパラメータの測定値を出力するように構成され、第2のバランスドフォトダイオード対が、第2の電気出力を通して第2のストークスパラメータの測定値を出力するように構成され、第3のバランスドフォトダイオード対が、第3の電気出力を通して第3のストークスパラメータの測定値を出力するように構成される、光MIMOレシーバ。第1のバランスドフォトダイオード対、第2のバランスドフォトダイオード対、および第3のバランスドフォトダイオード対は、光MIMOデマルチプレクサによって多重分離された信号帯域幅よりも小さい受信アナログ帯域幅を有するように構成されている光MIMOレシーバ。各1x2光カプラは、0.1%~25%のタップ比を有するタップカプラである光MIMOレシーバ。記載された技術の実装は、ハードウェア、方法またはプロセス、またはコンピュータアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含み得る。未使用の1つの入力ポートを有する2x2カプラが、1x2カプラの可能な一実施形態であることに留意されたい。
【0008】
1つの一般的な態様は、光多入力多出力(MIMO)多重分離を実行する方法を含み、この方法は、入力ポートを通して入力光を受信すること;ストークスパラメータの測定値を生成すること;入力光に対して、ストークスパラメータの測定値に基づいて制御される適応型光MIMO多重分離を実行して、複数の多重分離された出力光信号を生成すること;出力ポートを通して複数の多重分離された出力光信号を出力することを含む。特に、ストークスパラメータが測定されるときの第1のアナログ帯域幅は、多重分離された光信号の第2のアナログ帯域幅よりも小さい。
【0009】
実装には、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。適応型光MIMO多重分離が、フィードフォワード制御またはフィードバック制御として提供されるストークスパラメータの測定値に基づいて実行される方法。入力光を、異なる偏光の第1の入力光と第2の入力光とに分割することをさらに含み、適応型光MIMO多重分離が、ストークスパラメータの測定値に基づいて、第1の入力光と第2の入力光との間に相対位相シフトを適用するために、複数のステージの光位相シフトを実行することを含む方法。複数のステージの光位相シフトが、第1の光位相シフトステージ、それに続く第2の光位相シフトステージ、それに続く第3の光位相シフトステージを含む、正確に3つのステージの光位相シフトからなり、第2の光位相シフトステージと第3の光位相シフトステージが、ストークスパラメータの測定値に依存する相対位相シフトを適用する方法。適応型光MIMO多重分離を実行することが、ストークスパラメータの測定値に基づいて、第2の光位相シフトステージと第3の光位相シフトステージによって適用される光位相シフト量の解析解を決定することを含む方法。適応型光MIMO多重分離が、ストークスパラメータの測定値に基づく非反復制御を用いて実行される方法。入力光を、異なる偏光の第1の入力光と第2の入力光とに分割することをさらに含み、適応型光MIMO多重分離を実行することが、さらに第1の入力光と第2の入力光との間に相対減衰を適用することを含み、相対減衰の量は、ストークスパラメータの測定値に基づいてプログレッシブ探索アルゴリズムを用いて制御される方法。入力光が第1の入力光および第2の入力光を含み、適応型光MIMO多重分離を実行することが、第1の入力光から、トランスミッタにおいて第1のデータストリーム上に配置された第1のマーカ信号を検出すること;第2の入力光から、第2のデータストリームに対応する第2のマーカ信号を検出すること;および第1のマーカ信号および第2のマーカ信号の検出に基づいて、第1の入力光および第2の入力光が、それぞれ第1のデータストリームおよび第2のデータストリームを伝送していると判定すること、を含む方法。適応型光MIMO多重分離を実行することが、ストークスパラメータ S3= 2Im(eX・eY *)の平均値〈S3〉を決定すること(ここで、eXおよびeYは、第1の入力光および第2の入力光の偏光の光波場を示す);〈S3〉=±1であるか否かを判定すること;および〈S3〉=±1という判定に基づいて、〈S3〉=±1を回避するために第2の光位相シフトステージによって適用される光位相シフト量の解析解を再決定すること、を含む方法。ストークスパラメータの測定値は、光MIMOデマルチプレクサの入力または光MIMOデマルチプレクサの出力に接続されている光タップからの光に基づいて生成される方法。記載された技術の実装は、ハードウェア、方法またはプロセス、またはコンピュータアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含み得る。
【0010】
1つの一般的な態様は、偏光スプリッタ/ローテータ;偏光スプリッタ/ローテータの出力に接続された一連のカプラおよび位相シフタ;一連のカプラおよび位相シフタの第1の出力に接続された第1の光タップ;一連のカプラおよび位相シフタの第2の出力に接続された第2の光タップ;第1の光タップの後、第1の出力に接続された第1のフォトダイオード;第2の光タップの後、第2の出力に接続された第2のフォトダイオード;第1の光タップに接続された第1の1x2カプラ;第2の光タップに接続された第2の1x2カプラ;第1の1x2カプラの第1の出力と第2の1x2カプラの第1の出力の両方に接続された第1のバランスドフォトダイオード;第1の1x2カプラの第2の出力と第2の1x2カプラの第2の出力の両方に接続された光ハイブリッドであって、20度から160度の光ハイブリッド;および光ハイブリッドの出力に接続された第2のバランスドフォトダイオードと第3のバランスドフォトダイオード、を含む光多入力多出力(MIMO)レシーバを含む。この態様の他の実施形態は、各々が方法の動作を実行するように構成された、1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録された、対応するコンピュータシステム、デバイス、およびコンピュータプログラムを含む。
【0011】
1つの一般的な態様は、偏光スプリッタ/ローテータ;偏光スプリッタ/ローテータの第1の出力に接続された第1の光タップ;偏光スプリッタ/ローテータの第2の出力に接続された第2の光タップ;第1の光タップおよび第2の光タップの後に、偏光スプリッタ/ローテータの第1の出力および第2の出力の両方に接続された一連のカプラおよび位相シフタ;第1の光タップに接続された第1の1x2カプラ;第2の光タップに接続された第2の1x2カプラ;第1の1x2カプラの第1の出力と第2の1x2カプラの第1の出力の両方に接続された第1のバランスドフォトダイオード;第1の1x2カプラの第2の出力と第2の1x2カプラの第2の出力の両方に接続された光ハイブリッドであって、20度から160度の光ハイブリッド;および光ハイブリッドの出力に接続された第2のバランスドフォトダイオードと第3のバランスドフォトダイオード、を含む光多入力多出力(MIMO)レシーバを含む。この態様の他の実施形態は、各々が方法の動作を実行するように構成された、1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録された、対応するコンピュータシステム、デバイス、およびコンピュータプログラムを含む。
【0012】
本開示の主題の1つ以上の実装の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。主題の他の特徴、態様および利点は、詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、ストークス測定装置の一般的な例を示す図である。
【0014】
図1B図1Bは、ポワンカレ球上で数学的に表現されるストークスベクトルの一例を示す図である。
【0015】
図2図2A、2B、2Cは、光信号のストークスパラメータを測定できる異なる装置の例を示す図である。
【0016】
図3図3は、光波形上で変調されるデータのストークス空間表現の一例を示す図である。
【0017】
図4図4は、ストークス測定装置が信号レートで動作するMIMOデマルチプレクサ(本明細書では「シリアル構成」と呼ぶ)の一例を示す図である。
【0018】
図5図5は、本開示の実施形態に係る、ストークス測定装置とMIMOデマルチプレクサのパラレル構成の一例を示す図である。
【0019】
図6図6Aおよび6Bは、媒体を介して伝搬することによって影響を受けた受信光波形を表す、受信ストークス空間コンステレーションおよび受信信号強度の例を示す図である。
【0020】
図7図7Aおよび7Bは、多重分離ストークス空間コンステレーションと多重分離信号強度の例を示す図である。
【0021】
図8A図8Aは、ストークス測定装置と光MIMOデマルチプレクサのフィードフォワード配置の一例を示す図である。
【0022】
図8B図8Bは、ストークス測定装置と光MIMOデマルチプレクサのフィードバック配置の一例を示す図である。
【0023】
図9図9は、強度変調直接検波(IM-DD)システムにおけるストークスベクトル支援光偏光MIMO多重分離の一例を示す図である。
【0024】
図10A図10Aは、3つのベクトル
【数1】
をストークス空間でコプラナーにする第2の位相シフトφ2のストークス空間表現の一例を示す図である。
【0025】
図10B図10Bは、〈S1〉=0を作る第3の位相シフト値φ3のストークス空間表現の一例を示す図である。
【0026】
図11図11は、適応的に制御された可変光減衰器(VOA)を用いたストークスベクトル支援アナログ偏光多重分離の一例を示す図である。
【0027】
図12A図12Aは、光MIMO多重分離における極性の曖昧さの一例を示す図である。
【0028】
図12B図12Bは、光MIMO多重分離における特異性の一例を示す図である。
【0029】
図13図13は、本開示の実施形態に係る、ストークスパラメータ測定値に基づいて光偏光デマルチプレクサを制御する一例を示すフローチャートである。
【0030】
図14図14Aおよび図14Bは、コヒーレント検波とIMDDを利用した2重偏光通信システムの一例を示す図である。
【0031】
図15図15は、2つの位相シフト制御信号を有する光偏光デマルチプレクサの一例を示す図である。
【0032】
図16図16は、本開示の実施形態に係る、3つの位相シフト制御信号を有する光偏光デマルチプレクサの一例を示す図である。
【0033】
図17図17は、本開示の実施形態に係る、3つの位相シフト制御信号と2つのVOA制御信号を有する光偏光デマルチプレクサの一例を示す図である。
【0034】
図18図18Aおよび18Bは、基準信号(例えば、パイロットトーン)を送信するように構成されたトランスミッタの例を示す図である。
【0035】
図19図19は、パイロットトーンを検出し、受信したパイロットトーンの誤差を測定するためのレシーバ構造の例を示す図である。
図20図20A、20Bは、パイロットトーンを検出し、受信したパイロットトーンの誤差を測定するためのレシーバ構造の例を示す図である。
【0036】
図21図21は、本開示の実施形態に係る光偏光デマルチプレクサを制御する一例を示すフローチャートである。
【0037】
図22図22は、本開示の実施形態に係る光偏光デマルチプレクサにおける相対位相シフト値を制御する一例を示すフローチャートである。
【0038】
図23図23は、本開示の実施形態に係る光偏光デマルチプレクサにおける相対減衰値を制御する一例を示すフローチャートである。
【0039】
図24図24は、本開示の実施形態に係るPDM MIMOデマルチプレクサの動作を示すシミュレーション結果の例を示す図である。
【0040】
図25図25は、ストークス測定値に基づいて光MIMOデマルチプレクサの適応制御を実行するシステムの1つ以上のコンポーネントを実装するために使用することができる、コンピューティングシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(詳細な説明)
本開示の実施形態は、測定されたストークスパラメータをフィードバックまたはフィードフォワード情報として使用して、光信号の適応型MIMO多重分離を実行する光レシーバに向けられている。いくつかの実施形態では、ストークスパラメータ測定装置とMIMOデマルチプレクサが、様々な技術的利点を達成できる構成に配置される。例えば、いくつかのシナリオでは、光信号の適応型MIMO多重分離は、信号の帯域幅よりも低い帯域幅で測定されるストークスパラメータを使用して実行され得る。いくつかのシナリオでは、MIMOデマルチプレクサは、信号帯域幅よりも小さい帯域幅で提供されるストークスパラメータ測定値の形式で制御フィードバックを使用することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、光レシーバは、ストークスパラメータ測定装置がMIMOデマルチプレクサと並列に配置された構造を使用する。ストークスパラメータ測定装置は、MIMOデマルチプレクサの入力または出力のいずれかに並列に接続することができる。このような構造の一例が図5に示されており、光信号からストークスパラメータを測定するストークス測定装置502が、光信号の多重分離を行う強度変調直接検波(IMDD)/コヒーレントレシーバ504と並列に実装されている。このようなパラレル構成により、ストークス測定装置502は、光レシーバの帯域幅よりも狭い帯域幅を必要とする構成要素を用いて、受信した光波形からストークスパラメータを抽出することができる。これにより、ストークス測定装置のハードウェアと複雑さの要件を低減することができる。図5の詳細については以下でさらに説明する。
【0043】
本開示の実施形態は、様々な技術分野で使用することができる。例えば、実施形態は、直接検波とコヒーレントファイバ伝送リンクの両方など、光ファイバ通信システムで使用することができる。いくつかのシナリオでは、実施形態は、光レシーバ内で適応型偏光多重分離を実行するために使用することができる。例えば、本開示の実施形態は、光信号処理および光電変換に基づく光偏光デマルチプレクサに使用することができる。いくつかの実施形態では、受信した光波形から抽出されたストークスパラメータは、プログレッシブ探索アルゴリズムまたはプログレッシブ検索アルゴリズムに依存しない直接計算などによって、デマルチプレクサの設定を導出するために使用することができる。いくつかの他のシナリオでは、実施形態は、光レシーバ内で適応型偏光制御を実行するために使用することができる。例えば、本開示の実施形態は、光の入射状態を安定化させるために単一偏光光レシーバで使用することができる。また、パイロットトーンまたは他の識別波形を受信した光波形にトランスミッタで追加し、ストークスパラメータ測定を改善し、および/または信号の曖昧さを除去することができる。
【0044】
光ファイバ通信システムの信号伝達は、一般に、直接検波(DD)技術とコヒーレント検波技術の2つのカテゴリに分類される。直接検波技術は、通常、複雑度が低く、短距離のアプリケーションに使用され、一方、コヒーレント検波技術は、大容量かつ長距離のアプリケーションにおいて普及している。強度変調直接検波(IM-DD)システムのような直接検波システムは、光強度のみを利用して情報を伝送するため、スペクトル効率が低下する可能性があるが、トランスミッタとレシーバの設計が簡単になるという利点がある。コヒーレント検波システムは、情報を伝送するために光波場全体を利用することができ、データレートを2倍にすることができるが、受信と多重分離を実行するための複雑な多入力多出力(MIMO)デジタル信号処理(DSP)アルゴリズムを犠牲にしている。
【0045】
以下の説明では、例えば各偏光を個別のデータチャネルとして利用することにより、複数の異なる光の偏光で情報を変調するMIMOシステムに焦点を当てる。しかし、説明した特徴および概念は、マルチモードファイバ内の複数の空間モードを別個のデータチャネルとして使用するなど、他のタイプのMIMOシステムにも適応できる。
【0046】
偏光MIMOデマルチプレクサとストークス測定装置は、シリコンフォトニクスのような集積光学系で構成するのが有利である。一般に、このような構造では、入射光を2つの偏光部分に分割し、干渉および/または光検出できるように、光集積回路内で同じ偏光になるように各部分の偏光を調整する必要がある。
【0047】
光波形のストークスベクトル表現
【0048】
光波の偏光状態(SOP)は、光パワーの単位を有する3つの符号付き実数値であるストークスパラメータによって表すことができる。ストークスパラメータは、ストークスベクトル
【数2】
によってベクトル形式で表すことができる。
【0049】
【数3】
【0050】
ここで、eXとeYはX偏光とY偏光の光波場(調和振動状態)、Re(・)とIm(・)は複素数の実部と虚部、(・)*は複素共役を表す。正規化された波の場合、ストークスベクトルは球面上にあるため、独立したストークスパラメータの大きさは2つしかないが、球面上の点を特定するためには、符号の曖昧さのため、3つのストークスパラメータの全て必要である。
【0051】
ストークス測定装置は、入力光信号のストークスパラメータを測定する装置である。図1Aは、ストークス測定装置の一般的な例を示す図である。この例では、X偏光とY偏光の光波場eXとeYとからなる入力光102が、受光され、上記の式1に従って処理され、(S1,S2,S3)のようなストークスパラメータ104が得られる。いくつかの表現では、ストークスパラメータは、(独立ではない)第4のパラメータ
【数4】
を含むことができる。しかし、一般性を損なうことなく、本開示では、ストークスベクトルのスケーリングファクタとして機能する第4パラメータS0で式1の3次元ストークスベクトル表現を参照する。
【0052】
図1Bは、ポワンカレ球上で数学的に表現されるストークスベクトルの一例を示す図である。このような表現は、光波形が光ファイバコンポーネントのような異なる媒体を伝搬する際の偏光の変化を効果的にモデル化し、解析するのに役立つ。例えば、直線水平偏光は球面上の座標(1,0,0)の点で表すことができ、直線垂直偏光は点(-1,0,0)で表すことができる。
【0053】
図2A、2B、2Cは、光信号のストークスパラメータを測定できる異なる装置の例を示す図である。一般に、ストークスパラメータ(S1,S2,S3)は、様々な技術を用いて光波形から抽出することができる。図2Aの例は、光ハイブリッドと3つのバランスド光検出器を使用している。図2Bおよび2Cの例は、シングルエンドフォトダイオードの実施形態を使用している。しかし、本開示の実施形態は、特定のストークス測定装置の構造に限定されるものではなく、一般に、光波形からストークスパラメータ(S1,S2,S3)を抽出するために、任意の適切な構成を使用することができる。
【0054】
図2Aの例では、2つの1x2光カプラ204および206が、光ハイブリッド208および第1のバランスドフォトダイオード対210に接続されている。光ハイブリッド208は、90度の光ハイブリッドとすることができ、より一般的には、20度から160度の光ハイブリッドとすることができる。光ハイブリッド208は、さらに、第2のバランスドフォトダイオード対212と第3のバランスドフォトダイオード対214に接続されている。第1のバランスドフォトダイオード対210は、第1の電気出力216を通じて第1のストークスパラメータS1の測定値を出力するように構成されている。同様に、第2のバランスドフォトダイオード対212は、第2の電気出力218を通じて第2のストークスパラメータS2の測定値を出力するように構成され、第3のバランスドフォトダイオード対214は、第3の電気出力220を通じて第3のストークスパラメータS3の測定値を出力するように構成されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、各1x2光カプラ204および206は、0.1%~25%のタップ比を有するタップカプラである。いくつかのシナリオでは、1x2カプラは、未使用の入力ポートを有する2x2カプラとして実装することができる。
【0056】
我々は、ストークス測定装置を、少なくとも3つの光検出信号を測定し、これらの信号に対して数学演算を実行して3つのストークスパラメータを抽出することができる素子の集合体として定義する。これには一般に、入力信号を2つの偏光部分と、2つの部分間で位相の異なる少なくとも2つの干渉に分離する偏光スプリッタ・ローテータ(PBSR)が必要である。
【0057】
図3は、光波形上で変調されるデータのストークス空間表現の一例を示す図である。コンステレーションの異なるポイントは、光波形上で変調される、異なる可能なデータ値を表す。
【0058】
特に、図3は、小さな消光比を有するDP IM-DDシステムのストークス空間信号コンステレーションの一例を示している。DP IM-DDシステムの場合、データは光強度によって伝送され、直流(DC)成分が存在するため(eXとeYが実数の正数であるため)、光ファイバに入る前の伝送データのコンステレーションは、歪みによって乱されることなく、〈S1〉=0と〈S2〉=1を含むS3=0の平面上の任意の場所に位置する。ここで、〈・〉は数値平均を示す。具体的には、図3の例は、2重偏光(DP)パルス振幅変調(PAM)-4 信号コンステレーションを示しており、これは(0,1,0)点を中心とするS3=0の平面上に位置する16個のデータ点のクラスタである。このコンステレーションは、実際には(-,-,0)の平面上のどこにでも存在する可能性がある。便宜上、コンステレーション面の法線ベクトルをDP-PAM4信号の固有ベクトルとし、図3に示すように、法線ベクトル(0,0,1)とする。
【0059】
データストリームをストークス空間内の対応するコンステレーションにマッピングすることにより、データは光波形のストークスパラメータ表現によって完全に特徴付けることができる。さらに、媒体を介して伝搬する(例えば、ファイバ伝送を介する)光波形の偏光の変化は、ストークス空間におけるデータコンステレーションの3次元回転として表すことができる。このような回転は、以下の式2に示すように、ストークス空間の行列変換のチェーンとして数学的に表現することができる。
【0060】
【数5】
【0061】
ここで、
【数6】
は、媒体(ファイバなど)を介した伝送後のストークス空間における受信されたデータコンステレーションを示す。行列TRot,iとTRet,iは、ローテータ行列とリターダ行列を表し、次式で定義される。
【0062】
【数7】
【0063】
および
【0064】
【数8】
【0065】
ここで、θiはファイバステージiの回転角度、φiはファイバステージiのリタード位相である。したがって、式2は、光波形が媒体(ファイバリンクなど)を介して伝搬する際のデータコンステレーションの変化を表している。受信時にこのようなデータを復調するために、レシーバはローテータ/リターダ行列チェーンの逆行列を使用することができ、これは以下の式3のように表すことができる。
【0066】
【数9】
【0067】
式3は、偏光多重分離の動作を特徴づけるもので、MIMOレシーバが媒体を介してランダムな回転と遅延を受けた光波形からデータを復元することを可能にする。
【0068】
ストークス測定装置とMIMOデマルチプレクサのシリアル構成
【0069】
図4は、ストークス測定装置が信号レートで使用されるMIMOデマルチプレクサ(本明細書では「シリアル構成」と呼ぶ)の一例を示す図である。この例では、ストークス測定装置402は、信号レートで入力光からストークスパラメータを抽出し、その後、ストークスパラメータがアナログからデジタルに変換され、偏光信号がデマルチプレクサ404によってデジタル的に多重分離される。例えば、デマルチプレクサ404は、適切なデジタル信号処理(DSP)アルゴリズムを使用して、式3で表される多重分離動作を実装することができる。
【0070】
しかし、図4のシリアル構成には多くの課題がある。例えば、シリアル構成は、一般に、ストークス測定装置402(例えば、ストークス測定装置内の高帯域幅フォトダイオード(PD))と、ストークスコンステレーションの受信用のアナログ/デジタル変換器(ADC)406の両方に、大きなアナログ電気帯域幅を必要とする。特に、シリアル構成のため、ストークス測定装置402およびADC406の必要なアナログ電気帯域幅は、良好な伝送性能を確保するために、受信データレートと同等である必要がある。例えば、106GbpsのPAM4伝送システムは、40GHzを超えるアナログ電気帯域幅を必要とする。また、3つの高速信号の測定が必要となる。
【0071】
この課題をさらに悪化させるのは、高速データスループットを確保するために、デマルチプレクサ404がシンボルレートで動作して多重分離演算(例えば、式3の行列演算)を実行することである。その結果、図4のシリアル構成は、非常に複雑で高価になる可能性がある。
【0072】
さらに、ストークス受信は本質的にeXおよびeY(上記の式1によって示されるように)の非線形動作であるため、ストークス測定装置402およびADC406は、通常、受信した光波形から十分なストークス情報を効果的に抽出するために、さらに大きなアナログ電気帯域幅を必要とする。さらに、デマルチプレクサ404では、DSPがサンプルごとにストークス空間で計算を実行し、復調のためにストークス空間表現をジョーンズ空間に戻す変換を行うため、従来の線形レシーバに比べて複雑さが大幅に増加する。そのため、シリアル構成に関する上記の多くの課題が、通常、実用的なシステムにおけるストークスベースのデマルチプレクサの実装の妨げとなっている。
【0073】
このように、図4に示されるシリアル構成は、これらの複雑なストークス空間演算をデータ信号上で直接動作させる必要があるため、図4のシリアル構成におけるストークス測定装置402およびデマルチプレクサ404は、光通信システムにおけるデータ信号の帯域幅(通常はGHzオーダー)に一致させることができる非常に高速な電子機器およびDSPを使用して実装する必要がある。
【0074】
対照的に、このような制約を受けないパラレル構成について、以下、図5~13を参照して説明する。以下に説明するように、図5~13を参照して説明される本開示の実施形態は、ストークス測定装置の動作を、データ伝送光信号を多重分離する動作から本質的に切り離す。そのため、ストークス測定装置は、光信号中の偏光の変動をトラッキングするのに十分な低帯域幅で動作する低速電子機器を実装することができるが、光信号中の実際のデータを復調するのに必要な速度に合わせる必要はない。
【0075】
前述のように、一般的なリンクでは、伝送チャネルを通って伝播する光信号の偏光の変化の時間スケールは、光信号自体のデータレートよりもはるかに遅い。例えば、ローカルエリアネットワーク(データセンターなど)のような短距離通信では、偏光の変動ははるかに少ない頻度、例えばkHzまたはMHzのオーダーで発生する。長距離ファイバのような長距離通信の場合、偏光の変動はより高い頻度で発生し得るが、それでもデータを送信するのに通常必要なGHzの帯域幅よりも低い。したがって、以下の図5~13を参照して説明される本開示の実施形態は、高速データ信号の多重分離のために偏光変動の正確なトラッキングを依然として可能にしながら、大幅に低い複雑さ、消費電力、およびコストでストークス測定装置の実装を可能にする。
【0076】
ストークス測定装置とMIMOデマルチプレクサのパラレル構成
【0077】
図5は、本開示の実施形態に係る、ストークス測定装置とMIMOデマルチプレクサのパラレル構成の一例を示す図である。この例では、ストークス測定装置502は、リニアレシーバ504と並列に配置されている。リニアレシーバ504は、ストークス測定装置502によって提供されるストークスパラメータ測定値の支援を受けて、MIMO多重分離(例えば、光MIMO多重分離)を実行することができる。いくつかの実施形態では、ストークス測定装置502は、リニアレシーバ504(MIMOデマルチプレクサ)と同じ基板またはチップ上に集積することができる。
【0078】
図5のパラレル構造は、シリアル構成と比較してさまざまな利点を提供することができる。例えば、パラレル構造は、ストークス測定装置502をリニアレシーバ504の補助ユニットとして実装することにより、ストークス測定装置502のハードウェア要件を低減することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ストークス測定装置502は、リニアレシーバ504によって多重分離されたデータのはるかに広い帯域幅に合わせる必要はなく、ストークス空間における偏光の変化をトラッキングするのに十分な帯域幅で動作するだけでよい。図5に示すように、主多重分離経路は、光強度(IMDDシステム)または光波場(コヒーレント検波システム)をリニアに抽出するために、ジョーンズ空間内のリニアレシーバ504によって実行することができる。この意味で、主経路内のリニアレシーバ504における光検出のアナログ帯域幅の要件は、従来のリニアレシーバと同じにすることができる。これと並行して、ストークス測定装置502は、比較的遅い態様で(S1,S2,S3)を計算することができる。特に、ストークス測定装置502は、データ復調を行う必要がなく、単に偏光変動情報を抽出することができる。多くのシナリオでは、偏光は、データレートに比べてはるかに遅い態様で変化する(例えば、典型的にはkHzのオーダー)ため、ストークス測定装置502のハードウェア要件は、主多重分離経路内のリニアレシーバ504のハードウェア要件よりもはるかに低くすることができる。具体的には、ストークス測定装置502のアナログ帯域幅は、kHzまたはMHzのレベルまで劇的に減少させることができる。一例として、図2Aの例示的なストークス測定装置200に戻って参照すると、いくつかの実施形態では、第1のバランスドフォトダイオード対210、第2のバランスドフォトダイオード対212、および第3のバランスドフォトダイオード対214は、光MIMOデマルチプレクサによって多重分離された信号帯域幅よりも小さい受信アナログ帯域幅を有するように構成されている。
【0079】
したがって、ストークス測定装置502の出力は、リニアレシーバ504によって多重分離されたデータストリームよりも大幅に低い帯域幅を有する信号となり得る。例えば、ストークス測定装置502の出力は、受信した光波形の偏光の動的な変化を十分に表現するのに十分な情報を含むことができるが、データ復調を実行するのに必要な完全な情報を含む必要はない。例えば、いくつかのシナリオでは、ストークス測定装置502の出力の約MHzレベルのアナログ帯域幅は、一般的に、ほとんどの実用的なアプリケーションのニーズをコスト効率よく満たすのに十分である。しかしながら、本開示の実施態様は、ストークス測定装置502の特定の帯域幅に限定されない。
【0080】
このように、本開示の実施形態によれば、受信光の偏光変化のストークス空間測定値を利用しながら、受信光のMIMO信号の光多重分離をジョーンズ空間で実行することができる。光のストークス空間表現とジョーンズ空間表現は、上記の式1で関連付けられているため、例えばDSPを使ってこの2つを相互に変換することができる。本明細書に開示されるパラレル構造の実施形態では、偏光変化のストークス空間測定値が、多重分離の速度に比べて比較的遅い態様で更新されることを考慮すると、ストークス空間測定値をサンプルごとにジョーンズ空間に戻す変換は不要である。代わりに、いくつかの実施形態では、ジョーンズ空間でのより遅いブロックごとの動作を、より少ないコストで実行できる。これは、例えば、特にDSP動作をより効率的に指示するためのフィードフォワード構造において有用な機能となり得る。
【0081】
図6Aおよび6Bは、媒体を介して伝搬することによって影響を受けた受信光波形を表す、受信ストークス空間コンステレーションおよび受信信号強度の例を示す図である。ファイバチャネルなどの光学媒体を介する偏光ダイナミクスは、式2に関して前述した回転と遅延から生じる、ストークス空間での形状の変化によって記述することができる。例えば、DP-PAM4信号の場合、図3の例に示したような送信コンステレーションは、様々な回転と遅延を受ける可能性があり、その結果、図6Aの例に示したような受信コンステレーションが得られる。図6Aの受信コンステレーションは、ポワンカレ球に接する法線ベクトルを有する平面によって特徴付けられる。リンク条件が異なると、光波形に異なる面で影響を与え、図6Aにおいて異なる色の平面で示すように、異なる受信コンステレーションをもたらす可能性がある。図6Bのグラフは、2つの偏光のそれぞれにおける受信信号強度を示しており、歪んだ受信波形を示している。
【0082】
受信波形からストークスパラメータを抽出すると(例えば、図5のストークス測定装置502を使用して)、デマルチプレクサ(例えば、図5のリニアレシーバ504に実装されている)は、抽出されたストークパラメータを使用して、受信した光波形の適応型偏光多重分離を実行することができる。多重分離動作は、以下に述べるストークス空間で視覚化することができる。
【0083】
図7Aおよび7Bは、多重分離ストークス空間コンステレーションと多重分離信号強度の例を示す図である。偏光多重分離を実行するために、デマルチプレクサの動作は、ポワンカレ球上の受信コンステレーション面の移動として視覚化することができる。したがって、デマルチプレクサの目的は、図7Aの例に示すように、コンステレーションの法線ベクトルがS1=0の平面上に収まる目的の状態を達成することとして表すことができる。この所望の目的の状態を達成するためにデマルチプレクサを制御する具体的な詳細について、さらに後述する。図7Bの例では、2つの偏光のそれぞれにおける多重分離信号強度が示されており、より識別可能な変調パターンを示している。
【0084】
ストークスパラメータ(例えば、(S1,S2,S3)形式)は、デマルチプレクサの入力(フィードフォワード構成の場合)またはデマルチプレクサの出力(フィードバック構成の場合)のいずれかから抽出できる。両構成については、次に説明する。
【0085】
図8Aは、ストークス測定装置802によって抽出された偏光情報が、レシーバの主経路にあるMIMOデマルチプレクサ804にフィードフォワードされ、MIMO処理の実行に役立つフィードフォワード構造の一例を示している。例えば、レシーバ800において、ストークス測定装置802は、MIMOデマルチプレクサ804の入力からストークス情報を抽出し、抽出されたストークス情報は、受信光信号808のMIMO多重分離の実行を支援するために、MIMOデマルチプレクサ804のコントローラ806にフィードフォワードされる。コントローラ806は、MIMOデマルチプレクサ804の一部として、または別個のコンポーネントとして実装することもできる。
【0086】
図8Bは、ストークス測定装置812によって抽出された偏光情報が、レシーバの主経路にあるMIMOデマルチプレクサ814にフィードバックされるフィードバック構造の一例を示している。例えば、レシーバ810において、ストークス測定装置812は、MIMOデマルチプレクサ814の入力からストークス情報を抽出し、抽出されたストークス情報は、受信光信号818のMIMO多重分離の実行を支援するために、MIMOデマルチプレクサ814のコントローラ816にフィードバックされる。コントローラ816は、MIMOデマルチプレクサ814の一部として、または別個のコンポーネントとして実装することもできる。
【0087】
図8Aおよび8Bの両方のシナリオにおいて、MIMOデマルチプレクサ(例えば、MIMOデマルチプレクサ804または814)内の偏光制御ユニットは、集積光学系、自由空間バルクデバイス、またはファイバコンポーネントに基づくことができる。しかし、本開示の実施形態は、MIMOデマルチプレクサの特定の実施形態に限定されない。さらに、本開示の実施形態は、フィードフォワード構造またはフィードバック構造のいずれかで実装することができる。
【0088】
IM-DDシステム用ストークスベクトル支援アナログ偏光デマルチプレクサ
【0089】
図9は、本開示の実施形態に係る、IM-DDシステム用のストークスベクトル支援光偏光MIMO多重分離の一例を示す図である。
【0090】
図9の光レシーバ900の例では、図2Aを参照して説明したように、ストークス測定装置902は、光波形からストークスパラメータ(S1,S2,S3)を抽出するために、集積された光ハイブリッドとバランスドPDに基づいて実装されている。しかし、図2Bおよび2Cのような、ストークス測定装置902の他の実施態様を使用することもできる。抽出されたストークスパラメータ(S1,S2,S3)は、IMDDレシーバ904によって実行される主経路に電気信号910として供給される。特に、電気信号910は、集積されたMIMO偏光デマルチプレクサ905のコントローラ906にフィードバック方式で供給することができる。いくつかの実施形態では、ストークス測定装置902から受信した電気信号910の帯域幅が、MIMO偏光デマルチプレクサ905の出力ポート912および914から出力される多重分離された出力光信号のアナログ帯域幅よりも小さい。図9の例では、ストークス測定装置902がMIMOデマルチプレクサ905の光出力からストークスパラメータ(S1,S2,S3)を測定するフィードバック構造を示しているが、いくつかの実施形態では、ストークス測定装置902が光MIMOデマルチプレクサ905の光入力からストークスパラメータ(S1,S2,S3)を測定するフィードフォワード構造を実装することができる。
【0091】
図9の例では、コントローラ906は、入力ポート908を介して受信される入力光に対して光偏光MIMO多重分離を実行し、出力ポート912および914を介して出力される2つの多重分離された出力光信号を生成するように、集積されたMIMO偏光デマルチプレクサ905を制御する。出力ポート912および914を介して出力される多重分離された出力光信号は、その後、フォトダイオード916によって検出され、レシーバ回路918によって処理される電気信号を生成する。これによって、復調と様々なデジタル信号処理(DSP)動作を実行して、送信されたデータを復元することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、ストークス測定装置902およびMIMO偏光デマルチプレクサ905は、入力光を2つの伝送路に分割する偏光ビームスプリッタ・ローテータ(PBSR)909を共有する。この例では、集積されたMIMO偏光デマルチプレクサ905は、2つの伝送路における光の3ステージ相対位相シフトを適応的に実行する3ステージ光偏光MIMO多重分離構造を実装している。3ステージの光偏光MIMO多重分離構造の詳細については、図16~24を参照して以下でさらに説明する。3つのステージ(920、922、および924)のそれぞれは、2つの光伝送路(例えば、図9における上側伝送路と下側伝送路)を有し、一方の光伝送路に実装された1つの位相シフタ(または両方の光伝送路にプッシュプル構成で実装された2つの位相シフタが)と、次のステージのために2つの光伝送路を結合する2x2カプラと、を有する。各ステージにおいて、位相シフタは、そのステージ内の2つの光伝送路間の相対位相差を制御する。したがって、3つのステージにおける3つの位相差の値(図9中、φ12またはφ3)は、各ステージの対応する位相シフタによって適用される。位相シフタには、熱光学式(熱光学位相シフタ、TOPS)、電気光学式(電気光学位相シフタ、EOPS)、または他のタイプの位相シフタを使用して実装できる。3ステージ位相シフトMIMO偏光デマルチプレクサの更なる詳細については、図16~24を参照して以下に提供される。
【0093】
図9の3つの位相シフタは、コントローラ906によって制御され、3つの位相シフティングステージで適用する位相シフト(φ123)の量を決定する。いくつかの実施形態では、第1の位相シフタ値φ1は、デジタル制御であり、-π/2またはπ/2のいずれかである。第2および第3の位相シフタ値、φ2およびφ3は、アナログ制御とすることができる。コントローラ906の動作は、以下の2つの要素が考慮される。(1) デマルチプレクサ905の光出力(912および914)からストークス測定装置902によって抽出された、測定されたストークスパラメータ910に基づいて、第2および第3の位相シフトφ2およびφ3を高速に計算すること、および(2) 位相シフタの一方がその範囲の端に達したときに連続的に多重分離を行うこと(以下の図16から24を参照して説明するような多重分離のいわゆる「エンドレス」特性)。
【0094】
要素(1)の解決策として、図10Aの例に示すように、3つのベクトル
【数10】
がストークス空間で共平面となるように、第2の位相シフトφ2が計算される。共平面条件の解析式は、式4で与えられる。
【0095】
【数11】
【0096】
ここで、
【数12】
【0097】
【数13】
【0098】
ここで、
【数14】
は、
【数15】
の初期値である。回転行列TおよびT'は、次式で示される。
【0099】
【数16】
【0100】
【数17】
【0101】
ここで、
【0102】
【数18】
【0103】
【数19】
【0104】
【数20】
【0105】
式4の結果、所望の第2位相シフト値φ2,optは、次式で決定される。
【0106】
【数21】
【0107】
ここで、f(・)は、S1(0),S2(0),S3(0)、およびφ3(0)の既知のパラメータを有する1次関数である。いくつかの実施形態では、式5の解φ2,optは、事前に計算されたルックアップテーブル(LUT)によって実装することができ、または高速解析近似技術を使用して実装することもできる。
【0108】
次に、図10Bに示すように、〈S1〉=0となる第3の位相シフト値φ3を計算する。所望の第3の位相シフタ値φ3,optは、次式で決定される。
【0109】
【数22】
【0110】
ここで、S1(0)'およびS2(0)'は、第2の位相シフトφ2調整後の初期ストークスベクトル要素である。
【0111】
したがって、式5と式6を解くことにより、デマルチプレクサ出力は、図7Aを参照して説明したような多重分離条件を満たすことができる。いくつかの実施形態では、所望の第2および第3の位相値φ2,optおよびφ3,optを解析的に解くことで、ストークスパラメータを一度だけ取得すればよいため、大きな利点が得られる。これにより、多重分離処理が大幅に簡素化され、トラッキング速度が向上する。いくつかの実施形態では、所望の第2および第3の位相値φ2,optおよびφ3,optを解くために、プログレッシブ探索アルゴリズムを使用することができるが、シナリオによっては、ストークスパラメータを複数回取得する必要があるため、複雑さが増し、トラッキング速度が低下する可能性がある。
【0112】
位相の循環的および周期的性質のため、式5および式6は複数の解を有する。第2の位相シフトについては、所望の値φ2,optは、2πの周期の解を有する。第3の位相シフトについては、所望の値φ3,optは、πの周期の解を有する。エンドレスの多重分離制御の要素(前述の要素2)を考慮すると、第2の位相シフトの所望の値φ2,optは、複数の解から選択することができ、実用的な動作範囲は[-π、π]に制限される。第3の位相シフトの所望の値φ3,optは、複数の解から選択することができ、第1の位相シフトの値がφ1=π/2の場合は、[-π,0]の動作範囲に制限され、φ1=-π/2の場合は、[0,π]の動作範囲に制限される。エンドレス多重分離制御の更なる詳細については、以下の図16~24を参照して説明する。
【0113】
いくつかの実施形態では、ストークス測定装置(例えば、図9のストークス測定装置902)の帯域幅は、ストークスベクトルの信号対雑音比(SNR)とハードウェアの複雑さのバランスをとることによって構成することができる。例えば、ストークスベクトルSNRを高め、および/または曖昧さを回避するために、以下の図18A~20Bを参照して説明するように、データストリームにオーバーヘッドまたはパイロットトーンを含めて低周波強度を高めることができる。いくつかの実施形態では、特定の信号帯域を選択し、ノイズをフィルタリングするために、図9に示すように、無線周波数(RF)バンドパスフィルタ(BPF)を実装することができる。しかしながら、本開示の実施形態は、オーバーヘッド、パイロットトーン、またはバンドパスフィルタを実装することに限定されない。いくつかの実施形態では、オーバーヘッド、パイロットトーン、および/またはバンドパスフィルタ方式のいずれか1つ以上を使用するか、または1つも使用しなくてもよい。
【0114】
偏光依存損失(PDL)の存在下におけるストークスベースの多重分離
【0115】
光通信システムでは、偏光ドリフトに加えて、異なる偏光モードを異なる方法で増幅または減衰させる偏光依存損失(polarization dependent loss:PDL)などの他の非理想性がパフォーマンスを低下させる可能性がある。PDLは、ファイバ伝送リンク、ファイバカップリング、またはレシーバのコンポーネント(PBSRなど)で発生する可能性がある。PDLが存在する場合、ローテータ行列とリターダ行列TRot,iおよびTRet,iは、もはやユニタリではないため、非対称なコンステレーション面が生じる。この場合、位相シフト制御による多重分離だけでは、2つの偏光モードが混在した信号を完全に分離するには不十分である場合がある。代わりに、例えば可変光減衰器(VOA)を使用することにより、光位相シフタと光減衰器の組み合わせをデマルチプレクサに実装することができる。PDLおよびPDLに対抗するためのVOAの使用についての詳細について、図16から24を参照して、さらに後述する。
【0116】
図11は、本開示の実施形態に係る、PDLを補償するために適応的に制御されたVOAを組み込む、IM-DDシステム用のストークスベクトル支援アナログ偏光多重分離の一例を示す図である。
【0117】
図11の例示的な光レシーバ1100では、ストークス測定装置1102は、図9に示したものと同様の態様で実装され、ストークスパラメータ(S1,S2,S3)を生成する。一方、デマルチプレクサ1105は、図9の例と同様に、コントローラ1106を用いた3つのステージの位相シフト制御を実装する。したがって、ストークス測定装置1102およびMIMOデマルチプレクサ1105の詳細な説明は、図9のそれらと同様である。
【0118】
また、デマルチプレクサ1105は、デマルチプレクサ1105の異なる部分で光伝送路に光減衰値(a1,a2)を適用するVOA1121および1123を用いた光減衰制御も実装する。図11の例では2つのVOAを示しているが、一般的に、いくつかの実施形態では、より多くの数のVOAが使用されてもよく、例えば、デマルチプレクサ1105の第2および第3の位相シフトステージに2つの追加のVOAを有する4つのVOAが使用されてもよい。PDLのさまざまな原因に対処するために、さまざまなVOAを実装することができる。図11の例では、VOA1121(減衰a1を適用する)はレシーバにおけるPDL(送信後に発生したPDL)を打ち消すものであり、VOA1123(減衰a2を適用する)はトランスミッタにおけるPDL(送信前に発生したPDL)を打ち消すものである。いくつかの実施形態では、デマルチプレクサ1105の第2および第3の位相シフトステージに実装されるVOAなどの追加のVOAは、ファイバリンクを介した伝送中に光に発生するPDLを打ち消すことができる。トランスミッタおよび/またはレシーバのPDLが時間とともに大きく変化する可能性がないシナリオでは、対応するVOA1121(減衰a1を適用する)および/またはVOA1123(減衰a2を適用する)は、動的トラッキング制御を必要とせず、代わりに、例えば、全自動モード、または時々更新されるモードにおいて、一定の値を有するように構成されてもよい。
【0119】
図11の例では、コントローラ1106は、VOA1121および1123を制御することができる。この例では、単一のコントローラ1106が、VOAを制御するとともに、位相シフトステージを制御する(例えば、単一のコントローラ1106は、両方の機能を実装する)。しかし、いくつかの実施形態では、位相シフトステージとVOAを制御するために、別個のコントローラを実装することができる。例えば、このようなコントローラの1つは、少なくとも1つのメモリに格納された命令を実行する少なくとも1つのプロセッサによって実装されてもよい。また、コントローラ1106は、MIMOデマルチプレクサ1105の一部として、または別個のコンポーネントとして実装することもできる。
【0120】
VOA1121および1123の減衰値a1およびa2は、フィードバックにおける測定誤差を低減または最小化するように設計された最適化プロセスまたは擬似最適化プロセスを使用して、コントローラ1106によって制御され得る。いくつかの実施形態では、上述の図9を参照して説明した第2ステージおよび第3ステージの位相シフト値φ2およびφ3の解析解の前または後のいずれかにおいて、a1およびa2の所望の値を見つけるために、プログレッシブ探索アルゴリズムを使用することができる。コントローラ1106を駆動するために使用されるフィードバック信号1111(例えば、測定誤差)は、ストークス測定装置1102(ストークス測定ブランチ)またはMIMOデマルチプレクサ1105(主多重分離ブランチ)によって多重分離される受信データのいずれかから得ることができる。フィードバック信号1111がストークス測定装置1102から取り出される場合、いくつかの実施形態では、一例として、直線偏光クロストーク(XとYの相関係数)またはコンステレーション形状歪みをフィードバック信号1111として使用することができる。フィードバック信号1111が、レシーバ回路1118(送信データを復元するために復調および他のDSP演算を実行する)などのデータブランチから取り出される場合、一例として、直線偏光クロストークまたはビット誤り率(BER)をフィードバック信号1111として使用することができる。一般に、所与のフィードバック信号1111(例えば、測定誤差)に対して、コントローラ1106は、PDLの影響を軽減するように、VOA1121および1123の減衰値a1およびa2を適応させてエラー関数を所望の値に向けて駆動する。一般的なエラー関数に対するPDLと、PDLに対抗するためのVOAの使用についての詳細について、図16から24を参照して後述する。
【0121】
ストークス多重分離の曖昧さと特異性を軽減する技術
【0122】
第3ステージの位相シフト値φ3を制御するために〈S1〉=0の目標を使用する多重分離動作の実装では、多重分離された信号が極性の曖昧さおよび特異性を有する可能性がある。図12Aの例に示すように、極性の曖昧さは、
【数23】
軸を中心にコンステレーション面を180°反転させることに起因し、光波形の2つの偏光状態における2つのデータストリーム間の物理的な入れ替えにつながる。図12Bの例に示すように、特異性は、
【数24】
ベクトルが
【数25】
(ポワンカレ球の北極または南極のいずれか)と重なるときに発生する。この場合、第3ステージの位相シフト値φ3がどれだけ変化しても、〈S1〉=0の目標は常に満たされる。これは、著しい偏光クロストークにつながる可能性があり、さらに悪いことに、すべてのコンステレーションがS1=0平面にあるため、2つの偏光状態の2つのデータストリームが同一の出力をもたらすことになる。
【0123】
このような曖昧さを軽減するために、いくつかの実施形態では、2つの偏光上(例えば、2つの偏光によって伝送される2つのデータストリーム上)の識別子を使用することができる。例えば、考えられる1つの識別子は、各データストリームにマーカ信号(例えばディザトーン)を追加することである。例えば、光の2つの偏光を区別するために、トランスミッタで2つの異なるマーカ信号(例えば、周波数トーン)を適用することができる。このような周波数パイロットトーンを使用する実施例については、図18A~20Bを参照してさらに後述する。ストークス測定装置で2つの異なるマーカ信号を検出することによって、2つの偏光を区別することができ、曖昧さを回避することができる。
【0124】
特異性を軽減するために、いくつかの実施形態では、第2ステージの位相シフト値φ2の最適化の後に、
【数26】
がポワンカレ球の北極にあるか、または南極にあるかを決定できるように、追加の制限を追加することができる。例えば、これは〈S3〉を計算することで実装できる。〈S3〉=±1と判定された場合、この特定の状態を回避するために第2ステージの位相シフト値φ2が再度最適化される。そのため、特異性を効果的に排除することができる。
【0125】
図13は、本開示の実施形態に係る、ストークスパラメータ測定値に基づいて光偏光デマルチプレクサを制御する例示的な方法1300を示すフローチャートである。説明の目的のため、方法1300の説明は、図9の光レシーバ900を参照して提供される。
【0126】
ステップ1302では、入力光が入力ポート(例えば、図9の入力ポート908)を介して受信される。ステップ1304では、入力光に対して、ステップ1306で生成されるストークスパラメータの測定値に基づいて制御される適応型光MIMO多重分離を実行して、複数の多重分離された出力光信号を生成する。例えば、ストークスパラメータは、フィードフォワード制御またはフィードバック制御として提供することができる。特に、ステップ1306において、ストークスパラメータの測定値は、入力光を処理することによって(例えば、フィードフォワード方式で)、またはMIMOデマルチプレクサの出力からの多重分離された出力光信号を処理することによって(例えば、フィードバック方式で)生成することができる。ストークスパラメータの測定は、例えば、上記の図1A~3の説明に従って実行することができる。
【0127】
ステップ1304では、適応型光MIMO多重分離は、例えば、上記の図5~12Bを参照して説明したように、入力光を異なる偏光の第1の入力光信号と第2の入力光信号とに分割し、ストークス測定装置によって生成されたストークスパラメータの測定値に基づいて、第1の入力光信号と第2の入力光信号との間に相対位相シフトを適用するために複数ステージ(例えば、3ステージ)の光位相シフトを使用することによって実行することができる。このような実施形態では、上記の図5~12Bを参照して説明したように、MIMO多重分離は、例えば、ストークスパラメータの測定値に基づいて、第2の光位相シフトステージと第3の光位相シフトステージによって適用される光位相シフト量を決定するための解析解を使用することによって、非反復制御を使用して実行することができる。さらに、いくつかの実施形態では、PDLを補償するために、上記の図11を参照して説明したように、第1の入力光信号と第2の入力光信号との間に相対減衰を適用することができる。
【0128】
ステップ1308では、複数の多重分離された出力光信号が、出力ポート(例えば、出力ポート912および914)を介して出力される。
【0129】
多段光偏光MIMOデマルチプレクサ
【0130】
以下では、本開示の実施形態で使用することができる適応型光偏光MIMOデマルチプレクサの追加の詳細が提供される。このようなマルチプレクサは、例えば、上記の実施形態で説明したMIMOデマルチプレクサ(例えば、図5のリニアレシーバ502、図8Aおよび8BのMIMOデマルチプレクサ804および814、図9のMIMOデマルチプレクサ905、および図11のMIMOデマルチプレクサ1105)を実装するために使用することができる。例えば、以下に説明する光偏光MIMOデマルチプレクサは、上記のようなストークス測定装置と共に使用することができ、フィードフォワード構成またはフィードバック構成で配置されたストークス測定装置によって提供されるストークスパラメータ測定値に基づいて、入力光の適応型光MIMO多重分離を実行することができる。このようなストークスパラメータ測定が光MIMO多重分離を支援するためにどのように使用されるかの詳細は、上記(例えば、図1~13を参照)で説明されており、以下では繰り返さない。
【0131】
さらに、多段光偏光MIMOデマルチプレクサの例をIMDDシステムについて以下に説明するが、一般に、上記の図1A図13を参照して説明したストークスベースの多重分離技術は、IMDDシステムとコヒーレントシステムの両方、およびより一般的な光MIMO多重分離技術に適用可能である。
【0132】
以下に説明する多段光偏光MIMOデマルチプレクサは、データ損失率を低く抑えながら、大幅に改善された効率と速度を達成することができる。これは、データ受信の中断のリセットを必要とせずに、適応型多重分離の「エンドレス」特性を可能にする実装によって達成される。いくつかの実施形態では、これは適応型3ステージ位相シフトデマルチプレクサ構造によって達成され、第1のステージの位相シフタはバイナリ値を適用するように制御され、第2および第3のステージの位相シフトは位相シフト値の有限範囲(例えば、連続範囲)で動作するように制御される。3つのステージの位相シフトの制御は、信号受信を中断する位相シフトのリセットを必要とせずに、受信した偏光のランダムで予測できない回転および損失に適応するように調整されており、デマルチプレクサの「エンドレス」動作と呼ばれる特性になっている。
【0133】
一般に、多偏光検出は、光波形が通信システムを通過するときに偏光状態がドリフトする傾向があるため(例えば、ファイバ伝送線の複屈折がランダムに変化するため)、困難とされている。長距離システムでは、このようなランダムな偏光のドリフトが際限なく徐々に蓄積される。偏光分割多重化(polarization division multiplexing:PDM)を用いて2つの偏光モードで異なる信号を送信する光通信システムでは、ランダムで未知の偏光ドリフトにより、レシーバで2つの偏光モードの適切な方向を正確に検出することが難しく、結果としてレシーバで異なる信号が混在(「クロストーク」と呼ばれることもある)してしまうことになる。したがって、信号が1つの偏光モードで送信されたとしても、信号は実際にはレシーバで両方の偏光モードで受信される場合がある。光通信システムでは、偏光ドリフトに加えて、異なる偏光モードを異なる方法で増幅または減衰させる偏光依存損失(polarization dependent loss:PDL)などの他の非理想性がパフォーマンスを低下させる可能性がある。
【0134】
偏光ドリフトおよびその他の非理想性を補償するために、多偏光レシーバは、2つの偏光モードで送信される信号を分離および混合解除するために、一定の適応型MIMO多重分離を行う必要がある。このようなMIMO多重化は、光位相シフタを使用する光領域で、またはデジタル信号処理(digital signal processing:DSP)によるエレクトロニクス領域で実行することができる。光MIMO多重分離は、DSPベースのMIMO多重分離と比較して様々な利点がある。例えば、光多重分離は、消費電力、複雑さ、およびシンボルレートに対する感度を低減することができる。一方、DSPベースの多重分離は、通常、高い消費電力を必要とし、高いシンボルレートまたは大きなモード数のシステムでは非常に複雑になる可能性がある。
【0135】
さらに、光偏光多重分離は、パルス振幅変調(Pulse Amplitude Modulation:PAM)などの、強度変調・直接検波(Intensity Modulation and Direct Detection:IMDD)伝送方式(光電界の大きさの2乗のみで情報を送信する)と組み合わせて使用することができる。これは、光の2つの偏光モードを分離する光学素子を用いて、光に対して光検出が実行される前に光多重分離が実行できるためである。一方、IMDDでは光直接検波の非線形性により、DSP技術だけでは復元できない情報の損失が発生するため、DSPベースの偏光多重分離ではIMDDを組み合わせて使用することができない。代わりに、DSPベースの多重分離では通常、コヒーレントな受信が必要となる。このようなシステムでは、まず光の2つの偏光モードがコヒーレント検出によって分離され、次に各偏光の全フィールドが検出されるため、DSPは2つの偏光モードで受信した信号に対して処理を実行することができる。この区別の一例について、以下、図14Aおよび14Bを参照して説明する。
【0136】
図14Aおよび14Bは、それぞれ、コヒーレント検波と強度変調直接検波(IMDD)を利用した2重偏光通信システム1400および1450の例を示す図である。トランスミッタ(1402および1452)は、まずレーザ入力光(1404および1454)を2つの変調器(つまり、第1の変調器(1406および1456)と第2の変調器(1408および1458))に導く2つの光伝送路に分割することによって、偏光分割多重化を実行する。第1の変調器(1406および1456)は、一方の光伝送路の光を第1のデータストリームxまたはX(1410および1460)で変調し、第2の変調器(1408および1428)は、他方の光伝送路の光を第2のデータストリームyまたはY(1412および1462)で変調する。コヒーレントな場合、xとyは光波場(optical field)を表す複素数であるが、IMDDの場合、XとYは光パワー(optical power)を表す実数である。本開示では、小文字で複素数(フィールド)、大文字で実数(パワー)を表す。一方がx(X)で変調され、他方がy(Y)で変調された2つの変調された光波形は、偏光ビームスプリッタ・ローテータ(PBSR)(1414および1464)で合成され、一方の光波形を直交偏光に変換する。PBSRの後、x(X)とy(Y)を搬送する2つの光波形は、同じ光伝送路内に共存するが、直交する偏光を有している。
【0137】
この2重偏光(DP)光波形は、ファイバリンク(1416および1466)を通過する。DP波形がファイバ内を通過すると、ファイバ内の様々な未知の複屈折とねじれによって、2つの波形の偏光が変化することがある。ファイバリンク(1416および1466)に大きな偏光依存損失(PDL)がない場合、2つの偏光は直交したままである。例えば、x(X)は直線水平偏光から右回りの円偏光に変化することがあり、これはy(Y)が直線垂直偏光から左回りの円偏光に変化することを意味する。しかしながら、PDLが存在すると、DP光波形の偏光の直交性が低下し、x(X)とy(Y)の多重分離が複雑になる。
【0138】
レシーバ(1418および1468)では、DP波形がPBSR(1420および1470)に入り、DP波形を、直交する偏光を有するhとvの2つの波形に分割する。光通信システムの非理想性により、PBSRの出力hとvは、それぞれxとyの線形直交結合となる(より正確には、受信した信号はシステム内の加法的なノイズにより、xとyのノイズの多いバージョンとなるが、この説明ではノイズのないシナリオを仮定する)。特に、hはxとyの線形結合であり、同様にvはxとyの線形結合である。例えば、h = (x ‐ y)/sqrt(2) であり、v = (x + y)/sqrt(2) である。MIMO多重分離の目的は、受信したhとvから元の信号xとyを抽出することである。これは、DSPベースの多重分離(例えば、コヒーレント検出のために図14Aのデマルチプレクサ1430を使用する)、または光多重分離(直接検波/IMDDのために図14Bのデマルチプレクサ1480を使用する)を介して行うことができる。
【0139】
図14Aのコヒーレントな場合では、2つの光ハイブリッド(1424および1426)において、hとvが干渉されるローカルオシレータ(LO)レーザ(1422)が存在する。ハイブリッド1424および1426からの出力波形は、光検出器1428によって光検出され、得られた電気信号は、例えば、MIMO信号処理を使用して信号x'(1432)とy'(1434)を分離する多重分離を実行する、MIMOデマルチプレクサ1430に供給される。このように、図14Aのコヒーレント受信の例では、光波場の大きさと位相の両方がレシーバ1418によって検出されるため、MIMO多重分離は、光検出器1428による検出後にデマルチプレクサ1430によって行われる必要がある。
【0140】
これに対し、図14BのIMDD受信の例では、レシーバ1468は、光パワーを検出する。この非線形性により、情報の損失が発生する。つまり、IMDDシステムでは、光検出の前に光学系でMIMO多重分離を行う必要がある。これは、IMDDの場合、光検出で光位相情報が失われるため、いくら電気信号処理を行っても、常にxとyを復元することはできないからである。図14Bの例では、hとvはそれぞれ、xとyの線形直交結合である。したがって、最初に多重分離を行わずに、IMDDを使用してhとvを直接検出すると、基本的な情報が損失する可能性がある。しかしながら、光検出の前に、hとvが光学的にx'(1478)とy'(1479)に多重分離され、電気信号出力X'(1482)とY'(1484)が得られるのであれば、情報の損失はない。
【0141】
直交する2つの偏光状態の場合、PDM光通信システムは、2x2光多入力多出力(MIMO)チャネルとして表すことができる。したがって、光伝送は、2×2の行列Fとしてモデル化できる。行列Fは、トランスミッタからレシーバまでの通信の偏光の影響および色分散を表す伝達関数である。例えば、行列Fは、トランスミッタとレシーバを接続するファイバの影響、およびトランスミッタとレシーバ自体の光学部品の影響をモデル化することができる。本開示の目的のために、行列Fは、「チャネル」が、例えば、ファイバ伝送線およびトランスミッタおよび/またはレシーバのコンポーネントのような光通信システムの様々な影響を表すことができるという理解の下に、「チャネル行列F」と呼ばれる。
【0142】
【数27】
【0143】
受信した信号hとvから原信号xとyを推定するために、光デマルチプレクサDがレシーバに適用され、推定値x′とy′を生成する。
【0144】
【数28】
【0145】
そして、x′=ax、かつy′=bx(「a」、「b」は複素定数)であれば、レシーバは偏光を正常に多重分離する。
【0146】
ほとんどの短い光ファイバリンクにほぼ当てはまる、ロスレスシステム(光チャネル行列Fがユニタリである)の単純な場合を考えてみる。このようなシナリオでは、ファイバの損失、特にファイバの偏光依存損失(PDL)は無視できる。そして、チャネル行列Fは、4つの実数で特徴付けることができる。レシーバは、正常に多重分離を行うために、x′=ax、かつy′=bxを達成するだけでよいため、多重分離行列Dは、2つの実数で特徴付けることができる。したがって、ロスレスシナリオでは、チャネル行列Fの4つの実数は、多重分離行列Dによって補償されるべき、独立して制御される2つの実数パラメータとしてのみ表すことができる。
【0147】
したがって、ユニタリシステム(ロスレスシナリオ)の場合、光デマルチプレクサ(すなわち、上記の行列D)は、チャネル行列Fの影響を逆転させて多重分離するために、少なくとも2つの位相制御信号の理論上の最小値を必要とする。以下、図15を参照して、2ステージデマルチプレクサの一例を説明する。しかしながら、デマルチプレクサで2つの位相制御信号のみを使用すると、「エンドレス」特性を実現するために多重分離で無限の範囲の位相シフトが必要となり、実用的な位相シフタを使用して実現できないという問題があった。代わりに、実用的な位相シフタは、位相シフトの範囲に有限の極限を有している。したがって、ファイバ内のランダムに変化する位相歪みを通過した光信号を多重分離する際に、2ステージデマルチプレクサ内の位相シフタがその実用範囲の境界に達し、データ受信の中断および/または遅延を引き起こす可能性がある「リセット」をする必要がある。この問題の一例を、図15を参照して後述する。
【0148】
図15は、2つの制御信号を有する光偏光デマルチプレクサ1500の一例を示す図である。デマルチプレクサ1500は、偏光スプリッタ・ローテータ(PBSR)1502、2つの50/50カプラ1504および1506、ならびに2つの位相シフタ1508および1510(例えば、差動位相シフタ)からなる。2つの位相シフタ1508および1510は、別個の制御信号φ1(1512)およびφ2(1514)によって制御される。図15の例では、位相シフタ1508および1510のそれぞれは、差動位相シフタである。例えば、位相シフタ1508は、干渉計の一方のアームで一方向に光位相を調整し、他方のアームで反対方向に光位相を調整する2つの個別の位相シフト素子(1508aおよび1508b)を有する干渉計として実装される。位相シフタ1510についても同様の構造を示している。あるいは、いくつかの実施形態では、位相シフタ1508および1510のそれぞれは、単一のアームに1つの位相シフト素子だけを有する非差動位相シフタとして実装することができる。図15に示される差動実装は、非差動実装と比較していくつかの利点がある。例えば、差動実装には、位相シフタごとに必要な範囲が小さくなるという利点がある。さらに、熱光学位相シフタの場合、差動位相シフタは単相位相シフタと比較して、最悪の場合の消費電力が半分になり、さらに総消費電力が一定になり、熱過渡を軽減するという利点もある。本開示の目的のために、差動位相シフタ(例えば、位相シフタ1508)は、2つの位相シフタ(例えば、位相シフタ素子1508aおよび1508b)で実装されているが、1つの制御信号(例えば、φ1、1512)であるという理解の下に、1つの位相シフタと見なされる。
【0149】
この構造により、デマルチプレクサ1500は、行列D(偏光のためのミューラー表記を使用)で表すことができる。
【0150】
【数29】
【0151】
しかしながら、上述したように、図15のデマルチプレクサ1500の構成では、「エンドレス」特性を達成するために、多重分離がφ1(1512)に対して無限の範囲の位相シフトを必要とするという大きな問題がある。実用的なシステムでは、これは、デマルチプレクサ1500がランダムに変化するファイバを介して受信した信号を多重分離するときに、位相シフト制御φ1(1512)が最終的にその実用範囲の境界に到達することを意味する。例えば、位相シフタ1508および1510を熱光学位相シフタとして実装する場合、入力電流量に実用上の制限がある。チャネルFに起因するランダムにドリフトする位相が、φ1が連続的に増加させることを必要とする場合、φ1の入力制限により、ある時点で位相シフタ1508を2πだけ減少する必要がある(いわゆる「リセット」)。しかしながら、このリセット中は信号の受信を中断しなければならないため、データの損失が発生する可能性があり、高速通信において重大なエラーバーストが発生する可能性がある。
【0152】
この問題に対処するため、デマルチプレクサは2ステージ以上の位相シフタを実装することができる。しかしながら、位相シフトのステージ数が多くなると(ユニタリデマルチプレクサを使用するロスレスシナリオの場合)、アルゴリズムと制御が複雑になり、多数の位相シフト変数の制御速度が低下する。さらに、任意の入力に対して、位相シフト制御が動作中に特定の状態に「トラップ」されない(および、位相シフタがその限界を超えない限りトラップ状態から抜け出せない)ことを保証することは困難な場合がある。加えて、より複雑な制御システムでは、望ましい(例えば、最適でない)多重化動作ではない局所的な状態に収束するリスクの増加に直面する可能性がある。この複雑さと不確実性のため、2重偏光IMDDシステムの設計が困難な場合がある。
【0153】
さらに、偏光依存損失(PDL)が存在する場合、これが課題を複雑にする場合がある。PDLとは、異なって減衰される2つの直交偏光を指し、その結果、非ユニタリチャネル行列Fが生成される。PDLはファイバでは無視できる場合もあるが、PDLは増幅器や波長分割マルチプレクサなどのディスクリートデバイスでは重要な場合がある。非ユニタリ光デマルチプレクサを設計することは困難である。一般に、非ユニタリデマルチプレクサは、4つの実数で特徴付けることができ、理論上の最小制御セットは、2つの光位相シフタと2つの光減衰器から構成される。
【0154】
本明細書では、PDLなしのロスレスシナリオのために、有限範囲位相シフトのわずか3つのステージを使用して光MIMO偏光多重分離の「エンドレス」特性を実現する実装が開示されており、その一例が、以下の図16を参照して説明される。加えて、PDLのシナリオのために、本明細書では、わずか3つのステージの有限範囲位相シフトと2つのステージの光減衰を使用して「エンドレス」特性を実現する実装が開示されており、その一例が、以下の図17を参照して説明される。
【0155】
図16は、本開示の実施形態に係る光偏光デマルチプレクサ1600の一例を示す図である。デマルチプレクサ1600は、直接検波レシーバ(例えば、図14Bのレシーバ1468)の一部として実装することができる。いくつかの実施形態では、デマルチプレクサ1600は、バルク光学系と比較してコストを削減することができる集積フォトニクスを介して実装される。
【0156】
デマルチプレクサ1600は、位相シフトの3つのステージ(1602、1604、および1606)を含む。各ステージは位相シフト制御信号で制御される。例えば、第1のステージ1602は第1の制御信号1608によって制御され、第2のステージ1604は第2の制御信号1610によって制御され、第3のステージ1606は第3の制御信号1612によって制御される。各制御信号は、それぞれの位相シフトステージで実施される位相シフトの量を制御する。
【0157】
図16の例では、各ステージは、1対の光伝送路で動作する位相シフタと、2x2カプラと、を有している。例えば、第1のステージ1602は、1対の伝送路1614および1616、光位相シフト素子1618および1620(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ1622を有する。同様に、第2ステージ1604は、1対の伝送路1624および1626、光位相シフト素子1628および1630(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ1632を有する。最後に、第3ステージ1606は、1対の伝送路1634および1636、光位相シフト素子1638および1640(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ1642を有する。
【0158】
図16の例では、位相シフタの差動実装を示しているが、いくつかの実施形態では、ステージ内にただ1つの光位相シフト素子(1つの伝送路内に)を有する非差動実装を使用してもよい。本開示を通じて、位相シフトが差動位相シフタ(すなわち、図16の例に示すように、+/-φ/2でシフトするように設計された差動ペアの各位相シフト素子)によって実装されるか、または非差動位相シフタ(一方の伝送路だけの光の位相を他方の伝送路の光に対して+/-φの量だけシフトする)によって実装されるかにかかわらず、(ステージ内の)2つの光伝送路間の位相差は、単に「φ」と呼ばれる。このように、「位相シフタ」という用語は、差動位相シフタまたは非差動位相シフタに適用できる。
【0159】
位相シフタには、熱光学式(熱光学位相シフタ、TOPS)、電気光学式(電気光学位相シフタ、EOPS)、または他のタイプがあり得る。TOPSは、一般的に最も応答速度が遅いが、金属で覆う、および/またはヒートシンクまでの距離を短くすることで高速化することができる。光伝送路が加熱された領域を複数回通過することで、TOPSの消費電力を低減することができる。EOPSは、例えば、電流注入、キャリア枯渇、またはポッケルス効果で動作させることができる。各位相シフタは、応答速度は速いが消費電力が大きいタイプの位相シフタのセクションと、応答速度は遅いが消費電力を抑えたタイプの位相シフタのセクションなど、複数のセクションで構成できる。
【0160】
2x2カプラは、例えば、方向性カプラ、マルチモード干渉カプラ、または断熱カプラによって実装することができる。
【0161】
上述のように、デマルチプレクサ1600の3つのステージ(1602、1604、1606)は、デマルチプレクサ1600がいずれの位相シフタのリセットも必要とせずに、多重分離の「エンドレス」特性を達成できるように、特定の範囲または動作値内で協調して制御される。特に、図16の例では、第1のステージ1602の第1の制御信号φ1は、-π/2または+π/2のいずれかの値を有するデジタル信号である。第2のステージ1604の第2の制御信号φ2は、-πと+πの間の連続的または離散的な値のセットで動作する、アナログまたはデジタル信号である。第3のステージ1606の第3の制御信号φ3は、第1の制御信号φ1に依存する範囲内の連続的または離散的な値のセットで動作する、すなわちφ1が-π/2のとき、0と+πの間で動作し、φ1が+π/2のとき、-πと0の間で動作する、アナログまたはデジタル信号である。
【0162】
デマルチプレクサ1600の動作中、ファイバを通過した光は、まず、入力光を2つの光伝送路1614および1616に分割する、PBSR1646などのスプリッタに入る。PBSRは、入力光を2つの偏光に分割し、PBSRの両出力が同じ偏光になるように、一方の偏光を回転させる。したがって、光伝送路1614は、PBSRに入射したときに一方の偏光であった光を含み、光伝送路1616は、PBSRに入射したときに直交偏光であった光を含むが、光伝送路1614および1616に一旦入ると、両光伝送路1614および1616の光は同じ偏光になる。図16の例では、PBSR1646によって実装されたスプリッタを示しているが、偏光分離型グレーティングカプラ(polarization splitting grating coupler:PSGC)などの受動光集積デバイスを含む、他のタイプのスプリッタを使用することができる。
【0163】
分割された入力光は、第1のステージ1602の2つの光伝送路1614および1616に入り、一方の光伝送路の光が他方の光伝送路の光に対してφ1の量だけ位相シフトするように、位相シフト素子1618および1620を介して、相対的な位相シフトを受ける。この相対位相シフト量φ1は、制御信号1608によって制御される。次に、2つの光伝送路内の位相シフトされた光は、相対的に位相シフトされた光を結合する2x2カプラ1622に入る。このプロセスは、制御信号φ2(1610)およびφ3(1612)によって制御される異なる位相シフトを受けながら、第2のステージ1604および第3のステージ1606を介して繰り返される。
【0164】
コントローラ1644は、制御信号1608、1610、および1612を介して、3つのステージ1602、1604、および1606の相対位相シフト量を制御する。閉ループフィードバックのシナリオでは、この制御はフィードバック情報1648に基づくことができる。例えば、コントローラがストークス測定装置からフィードバックを受信する実施形態では(上記の図1A図13を参照して説明したように)、フィードバック1648は、ストークスパラメータの測定値であってもよく、この場合、コントローラ1644は、制御信号1608、1610、および1612を調整するために、上記の図9を参照して説明した制御技術を実装することができる。他の実施形態では、信号1608、1610、および1612を制御するためにコントローラ1644によってプログレッシブ検索技術を使用することができ、これについては、図21~23を参照して後述する。図16は、デマルチプレクサ1600の一部としてコントローラ1644を示しているが、いくつかの実施形態では、コントローラ1644は、レシーバに別々に実装されてもよい(図14Bのレシーバ1468の別の構成要素として)。
【0165】
上述したように、デマルチプレクサ1600は、光通信システムによってもたらされる歪みによって引き起こされる、光の偏光を回転させるランダムな複屈折の変化を補償する。位相シフトの補償に加えて、デマルチプレクサは、偏光依存損失(PDL)などの他の非理想性を補償するように設計することもできる。ほとんどの短い光ファイバリンクでは、PDLは無視できる程度かもしれないが、ファイバの長さが長くなると、PDLは光信号の適切な受信に、より大きな影響を与える可能性がある。
【0166】
偏光依存損失(PDL)のシナリオでは、光の2つの偏光モードのそれぞれで発生する損失の量が異なる場合があり、例えば、横磁気(TM)モードでの損失は横電気(TE)モードでの損失よりも大きい/小さい場合がある。この結果、非ユニタリであるチャネル行列Fが得られる。この場合、位相シフト制御による多重分離だけでは、2つの偏光モードが混在した信号を完全に分離するには不十分である場合がある。代わりに、以下で図17を参照して説明するように、光位相シフタと光減衰器の組み合わせがデマルチプレクサに実装される。一般に、PDLは、ファイバ線自体によって、またはファイバコネクタ、アイソレータ、増幅器、スプリッタ、ファイバカプラ、PBSRなどの通信システムの他の要素によって引き起こされる可能性がある。
【0167】
図17は、本開示の実施形態に係る光偏光デマルチプレクサ1700の一例を示す図である。デマルチプレクサ1700は、直接検波レシーバ(例えば、図14Bのレシーバ1468)の一部として実装することができる。いくつかの実施形態では、デマルチプレクサ1700は、バルク光学系と比較してコストを削減することができる集積フォトニクスを介して実装される。デマルチプレクサ1700は、受信した光波形のPDLを補償するために、2つの偏光モード間の相対減衰制御と相対位相シフト制御の両方を提供する。
【0168】
デマルチプレクサ1700は、相対位相シフト制御および/または光減衰制御の3つのステージ(1702、1704、および1706)を含む。各ステージは、1つ以上の制御信号によって制御される。例えば、第1のステージ1702は、第1の減衰制御信号1708と、第1の位相シフト制御信号1710とによって制御される。第2のステージ1704は、第2の位相シフト制御信号1712で制御される。第3のステージ1706は、第2の減衰制御信号1714と、第3の位相シフト制御信号1716とによって制御される。各制御信号は、それぞれのステージで実装される位相シフトまたは光減衰の量を制御する。
【0169】
図17の例では、第1のステージ1702は、第1および第2の光伝送路1718および1720、第1および第2の光減衰器1722および1724(共に差動減衰器を形成する)、第1および第2の位相シフト素子1726および1728(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ1730を有している。同様に、第2のステージ1704は、第1および第2の光伝送路1732および1734、第1および第2の位相シフト素子1736および1738(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ1740を有する。最後に、第3のステージ1706は、第1および第2の光伝送路1742および1744、第1および第2の光減衰器1746および1748(共に差動減衰器を形成する)、第1および第2の位相シフト素子1750および1752(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ1754を有している。
【0170】
図17の例では、光減衰器と光位相シフタの差動実装を示しているが、いくつかの実施形態では、1つのステージに、1つの光減衰器(1つの光伝送路内の)と1つの位相シフト素子(1つの光伝送路内の)のみを有する非差動実装を使用してもよい。本開示を通じて、減衰が差動減衰器(すなわち、図17の例に示すように、差動ペアの各減衰器が、+/-a/2だけ光を減衰するように設計されている)、または単一の光減衰器(一方の光伝送路だけの光を他方の光伝送路の光に対して+/-aの量だけ減衰する)によって実装されるかどうかにかかわらず、2つの光伝送路間の相対光学減衰は単に「a」と呼ばれる。光減衰器の減衰量「a」は、光の透過に対する実際の影響が「a」において指数関数的である指数損失など、減衰の任意の適切な尺度を表す(例えば、フィールドがφ/2と記された位相シフタを通過するときにexp{-iφ/2}によって乗算されるのと同様に、a/2と記された光減衰器を通過するときにexp{-a/2}によって乗算される)。
【0171】
同様に、相対位相シフトが差動位相シフタ(すなわち、図3の例に示すように、+/- φ/2でシフトするように設計された差動ペアの各位相シフト素子)によって実装されるか、または非差動位相シフタ(一方の光伝送路だけの光の位相を他方の光伝送路の光に対して+/- φの量だけシフトする)によって実装されるかにかかわらず、2つの光伝送路間の相対位相差は、単に「φ」と呼ばれる。
【0172】
上述のように、デマルチプレクサ1700の3つのステージは、デマルチプレクサ1700がいずれの位相シフタのリセットも必要とせずに、多重分離の「エンドレス」特性を達成できるように、特定の範囲または動作値内で協調して制御される。位相シフト制御については、図17の例では、第1のステージ1702の第1の位相シフト制御信号φ1(1710)は、-π/2または+π/2のいずれかの値を有するデジタル信号である。第2のステージ1704の第2の位相シフト制御信号φ2(1712)は、-πと+πの間の連続的または離散的な値のセットで動作する、アナログまたはデジタル信号である。第3のステージ1706の第3の位相シフト制御信号φ3(1716)は、第1の制御信号φ1(1710)に依存する範囲内の連続的または離散的な値のセットで動作する、すなわちφ1が-π/2のとき、0と+πの間で動作し、φ1が+π/2のとき、-πと0の間で動作する、アナログまたはデジタル信号である。減衰制御については、第1の減衰制御信号a1(1708)と第2の減衰制御信号a2(1714)のそれぞれは、範囲内の連続的または離散的な値のセットで動作する。例えば、範囲は、(-3, +3)であってもよい。例えば、範囲は、(-1, +1)であってもよい。さらに別の例として、範囲は、約-5.2 dBから+5.2 dBに相当する、(-0.6, +0.6)であってもよい。他の適切な範囲が使用されてもよい。
【0173】
デマルチプレクサ1700の動作中、ファイバを通過した光は、まず、入力光を2つの光伝送路1718および1720に分割する、PBSR1758などのスプリッタに入る。図17の例では、PBSR1758によって実装されたスプリッタを示しているが、偏光分離型グレーティングカプラ(polarization splitting grating coupler:PSGC)などの受動光集積デバイスを含む、他のタイプのスプリッタを使用することができる。分割された入力光は、第1のステージ1702の2つの光伝送路1718および1720に入り、一方の光伝送路の光が他方の光伝送路の光に対して減衰するように、光減衰器1722および1724を介して、相対的な減衰を受ける。この相対減衰量a1は、減衰量制御信号1708によって制御される。
【0174】
そして、2つの光伝送路内の相対的に減衰した光は、一方の光伝送路の光の位相が他方の光伝送路の光の位相に対してシフトするように、位相シフト素子1726および1728(差動位相シフタを形成する)を介して、相対的な位相シフトを受ける。この相対位相シフト量φ1は、制御信号1710によって制御される。次に、2つの光伝送路内の位相シフトされた光は、相対的に位相シフトされた光を結合する2x2カプラ1730に入る。このプロセスは、光の2つの偏光が、位相制御信号1712および1716、ならびに減衰制御信号1714によって制御される相対的な位相シフトおよび/または相対的な減衰を受けるように、第2のステージ1704および第3のステージ1706を通って継続される。
【0175】
コントローラ1756は、制御信号1708、1710、1712、1714、および1716を介して、異なるステージ1702、1704、および1706の相対減衰量および相対位相シフト量を制御する。光の2つの偏光間の相対減衰と相対位相シフトの両方を制御することにより、デマルチプレクサ1700は、ランダム位相シフトとPDL(非ユニタリチャネル行列F)の両方を補償することができる。閉ループフィードバックのシナリオでは、この制御は、例えば、受信した信号内の誤差の測定であるフィードバック情報1760に基づくことができる。例えば、コントローラがストークス測定装置からフィードバックを受信する実施形態では(上記の図1A図13を参照して説明したように)、フィードバック1760は、直線偏光クロストーク(XとYの相関係数)またはコンステレーション形状歪みなどのストークスパラメータの測定値に基づいてもよい。制御信号1708、1710、1712、1714、および1716を制御および調整するために、コントローラ1756によって使用される特定のアルゴリズムについて、以下の図21~23を参照して説明する。図17は、デマルチプレクサ1700の一部としてコントローラ1756を示しているが、いくつかの実施形態では、コントローラ1756は、レシーバに別々に実装されてもよい(図14Bのレシーバ1468の別の構成要素として)。
【0176】
一般に、制御(例えば、図16のコントローラ1644または図17の1756による)は、光波形の2つの偏光モードで受信される信号間のクロストーク量を低減するように設計される。フィードバック制御のシナリオでは、コントローラは、フィードバック情報(例えば、図16のフィードバック1648および図17のフィードバック1760)に基づいて制御を調整することができる。フィードバック情報には、例えば、受信した波形内の誤差の測定を含めることができる。コントローラは、制御信号を調整して測定された誤差を減らすように設計され得る。誤差の測定は、さまざまな方法で実装できる。例えば、誤差の測定は、光の2つの偏光モードの信号間のクロストーク量を反映することができる。
【0177】
クロストーク量を測定するために、いくつかの実施形態では、通信システムは、情報を搬送する信号に加えて送信される基準信号(例えば、パイロットトーンまたはパイロット信号)を利用することができる。基準信号は、トランスミッタとレシーバの両方に既知の波形特性を有しており、レシーバは通信チャネルのランダムな影響を推定し補償することができる。
【0178】
図18Aおよび18Bは、基準信号(例えば、パイロットトーン)を送信するように構成された、本開示の実施形態に係るトランスミッタ1800および1820の例を示す図である。図18Aのトランスミッタ1800は、パイロットトーン1802(A)および1804(B)を、レーザ入力のそれぞれの光偏光モードで送信する。いくつかの実施形態では、パイロットトーン1802および1804は低周波トーンであり、2つの偏光に対して異なるトーン周波数を有することができる。例えば、第1のパイロットトーン1802は、1MHzの周波数で送信することができ、第2のパイロットトーン1804は、2MHzの周波数で送信することができる。パイロットトーン1802および1804の変調度は、信号平均パワーの割合であり、例えば、パイロットトーン1802および1804の変調度は、信号平均パワーの2%であり得る。
【0179】
図18Aの例では、パイロットトーン1802(A)および1804(B)は、各導波路のレーザ入力を変調する前に、それぞれ電気信号1806(X)および1808(Y)に付加される。例えば、パイロットトーン1802(A)および1804(B)は、デジタル/アナログコンバータ(DAC)出力にデジタル的にトーンを付加することによって適用することができる。あるいは、パイロットトーン1802(A)および1804(B)は、変調器1810および1812のドライバの入力に、または変調器1810および1812のドライバの内部に、または変調器1810および1812のドライバの出力にアナログ的にそれらを付加することによって適用することができる。
【0180】
図18Bは、変調およびパイロットトーンのさらなる詳細を示すトランスミッタ1820の一例を示している。この例では、パイロットトーン1822(A)および1824(B)は、それぞれ、変調器1830および1832のドライバ1834および1836の出力で、それぞれアナログ方式で変調信号1826(X)および1828(Y)に付加することによって適用される。図18Bの例では、変調器1830および1832は、マッハツェンダー干渉計(MZI)変調器として実装されて示されているが、他の適切な光変調器が使用されてもよい。
【0181】
したがって、図18Aおよび18Bのトランスミッタ1800および1820では、パイロットトーンAおよびBがそれぞれ入力信号XおよびYに付加され、ファイバを介した送信のためにPBSR1814および1838で結合される。特に、パイロットトーンAおよび信号Xは、光の一方の偏光モードで送信され、パイロットトーンBと信号Yは、光の他方の偏光モードで送信される。結合された光PDM波形は、通信システムを介してレシーバに向かって伝搬するが、この間、システム内の様々な非理想性により、2つの偏光モードのランダムで予測不可能な回転ドリフトと、偏光依存損失(PDL)が発生する。これらの非理想性は、各偏光モードで伝搬するパイロットトーンと信号の両方に影響を与える。パイロットトーン(AおよびB)は既知であるため、レシーバは元のパイロットトーン(AおよびB)と比較して受信したパイロットトーンの偏差(または誤差)を測定することができ、これによりレシーバは信号XおよびY自体の誤差を推定することができる。そして、誤差推定に基づいて、レシーバは偏光ドリフトとPDLを補償することができ、信号XおよびYをより正確に復元する。
【0182】
パイロットトーンを検出し、受信したパイロットトーンの誤差を測定するためのレシーバ構造の例について、以下、図19、20A、および20Bを参照して説明する。相対位相シフトおよび/または相対減衰のフィードバック制御においてこのような誤差測定を使用する例について、以下、図22および23を参照して説明する。
【0183】
図19は、フィードバック情報を生成するためにパイロットトーンを受信するように構成された、本開示の実施形態に係るデマルチプレクサ1900の一例を示す図である。レシーバ1900では、受信した光の2つの偏光の受信波形1914および1916がパイロットトーン検出器1902で処理され、各偏光モード1914および1916の受信したパイロットトーンのパワーを検出する。次いで、パイロットトーン検出器1902は、1つ以上のパイロットトーン測定値1904をフィードバック情報として(例えば、図16のフィードバック1648および図17のフィードバック1760として)コントローラ1906に提供する。コントローラ1906は、これらのパイロットトーン測定値1904を使用して、受信した光信号に相対位相シフトおよび/または相対減衰を適用する制御信号(1908、1910、1912)を適合させる。
【0184】
図19は、デマルチプレクサ1900の一部としてコントローラ1906およびパイロットトーン検出器1902を示しているが、いくつかの実施形態では、コントローラ1906および/またはパイロットトーン検出器1902は、レシーバに別々に実装されてもよい(図14Bのレシーバ1468の別の構成要素として)。さらに、図19は、コントローラ1906およびパイロットトーン検出器1902を別個のモジュールとして示しているが、いくつかの実施形態では、コントローラ1906およびパイロットトーン検出器1902は、別個のモジュールに分離されることなく、集積回路によって実装されてもよい。さらに、図19の例では、制御信号1908、1910、および1912を介して相対位相シフトのみを適応させるシナリオを示しているが(例えば、図16のデマルチプレクサ1600のように)、これらの技術は、相対位相シフトおよび相対減衰の両方を適応させるために適用することもできる(例えば、図17のデマルチプレクサ1700のように)。
【0185】
図19の例では、第1のパイロットトーン(A)が第1の偏光モード(Xとする)で送信され、第2のパイロットトーン(B)が第2の偏光モード(Yとする)で送信されたと仮定している。レシーバでは、受信した偏光モード(H、V)が、H=X、およびV=Yを満たすことが望まれる。しかしながら、光波形が通信システムを通過するとき、偏光ドリフトおよびPDLにより、2つのパイロットトーン(AおよびB)を搬送する2つの偏光モードがランダムで予測不可能な回転を受ける可能性がある。したがって、これらのランダムに回転した偏光モードを受信すると、デマルチプレクサ1900がパイロットトーンAおよびBを検出しようとするとき、デマルチプレクサ1900は、実際には各偏光モードHおよびVでパイロットトーンAおよびBの相互混合を検出することができる。
【0186】
この相互混合の影響を推定するために、レシーバは2つの偏光モード(HおよびV)のそれぞれで各パイロットトーン(AおよびB)のパワーを検出することができる。例えば、図19では、パイロットトーン検出器1902は、偏光モードHにおけるトーンAのパワー(PHAとする)、偏光モードHにおけるトーンBのパワー(PHBとする)、偏光モードVにおけるトーンAのパワー(PVAとする)、および偏光モードVにおけるトーンBのパワー(PVBとする)の4つの異なる量を検出することができる。これらの4つの量のうち、PHBおよびPVAは、2つの偏光モードHおよびVにおけるパイロットトーンAとBの間のクロストーク量を表している。
【0187】
次に、コントローラ1910は、これらの受信したパイロットトーン成分に基づいて誤差信号を計算し、通信システムの非理想性によって引き起こされた2つの偏光モード間のクロストーク量を推定する。例えば、いくつかの実施形態では、誤差は次のように計算することができる。
【0188】
【数30】
【0189】
しかしながら、2つの偏光モード(HおよびV)におけるパイロットトーン(AおよびB)間のクロストーク量を推定するために、誤差の他の尺度を使用することができる。一般に、誤差の尺度は、PHBおよび/またはPVAの値が増加するにつれて大きくなるはずである。誤差の尺度は、コントローラ1906が制御信号(例えば、1908、1910、および1912)をどの程度うまく適合させて、2つの偏光モードHおよびV間の相対位相シフトおよび/または相対減衰を調整し、ランダムな偏光ドリフトおよびPDLを補償するかの推定を提供する。したがって、コントローラ1906は、フィードバック制御ループにおいてこの誤差測定を使用して、制御信号(例えば、1908、1910、および1912)を動的に調整し、誤差をさらに低減させることができる。例示的なフィードバックアルゴリズムの詳細について、以下、図22および23を参照して説明する。
【0190】
パイロットトーンAおよびBは、受信プロセスの様々なポイントで受信した波形から検出することができ、その例については、以下、図20Aおよび図20Bを参照して説明する。
【0191】
図20Aおよび20Bは、パイロットトーンを受信して処理するように構成された、本開示の実施形態に係るデマルチプレクサの異なる実施形態の例を示す図である。具体的には、図20Aおよび20Bは、受信プロセスの異なるポイントでパイロットトーン(AおよびB)を検出する例を示している。上述したように、2つの偏光モード(HおよびV)のそれぞれにおける各パイロットトーンAおよびBのパワーが検出される必要がある。図20Aのデマルチプレクサ2000の例では、トランスインピーダンスアンプ(transimpedance amplifier:TIA)2004およびTIA2006の出力で受信波形からパイロットトーン(AおよびB)が検出される。あるいは、図20Bのデマルチプレクサ2020の例に示されるように、パイロットトーン(AおよびB)は、光領域で受信した波形から(具体的には、光カプラを介して受信した光信号に結合される別個のフォトダイオード2024および2026の出力で)検出される。
【0192】
図20Aおよび20Bの両方の例において、パイロットトーン成分の様々な受信パワーは、例えば、受信した信号にパイロットトーン周波数でサインおよび/またはコサインを乗算し、結果を合計するか、または狭帯域電気的フィルタで結果をフィルタリングするなど、フーリエ変換技術を使用することによって検出することができる。
【0193】
次に、相対位相シフトおよび/または相対減衰のフィードバック制御において誤差測定を使用する例について、以下、図21~23を参照して説明する。制御システムは、受信した光波形で測定された誤差を最小化するように機能する。誤差が最小化されると、PDM信号のそれぞれは、最小のクロストークでそれぞれの偏光モードで受信される(例えば、信号Xは偏光モードHで受信され、信号Yは偏光モードVで受信される)。
【0194】
図21は、本開示の実施形態に係る光偏光デマルチプレクサを制御する方法2100の一例を示すフローチャートである。方法2100は、図16のデマルチプレクサ1600などのデマルチプレクサにおける相対位相シフトを制御するために使用することができる。
【0195】
ステップ2102では、光が、1対のMIMO入力を介して、第1の1対の光伝送路(例えば、図16の1614、1616)に受信される。ステップ2104では、第1の光位相シフタ(例えば、図16の1618および1620によって形成される差動位相シフタ)が、第1の1対の光伝送路(例えば、図16の1614、1616)の間に第1の相対位相シフトを適用するように制御される。いくつかの実施形態では、第1の光位相シフタは、例えば、値(c+π/2)および(c-π/2)のバイナリ方式で制御することができ、ここで「c」は、オフセットを反映する実数である。この制御は、フィードバック情報(例えば、パイロットトーンを使用して)に基づくことができる。
【0196】
ステップ2106では、第1の1対の光伝送路(例えば、図16の1614、1616)が第1の2x2光カプラ(例えば、図16の1622)と結合して、第2の1対の光伝送路(例えば、図16の1624、1626)を出力する。
【0197】
ステップ2108では、第2の光位相シフタ(例えば、図16の1628および1630によって形成される差動位相シフタ)が、第2の1対の光伝送路(例えば、図16の1624、1626)の間に第2の相対位相シフトを適用するように制御される。いくつかの実施形態では、第2の光位相シフタは、-nπと+nπを含む有限の値の範囲内で制御することができ、ここで「n」は整数である。例えば、これは、範囲(-nπ、+nπ)内でのアナログ動作によって可能である。この制御は、フィードバック情報(例えば、パイロットトーンを使用して)に基づくことができる。
【0198】
ステップ2110では、第2の1対の光伝送路(例えば、図16の1624、1626)が第2の2x2光カプラ(例えば、図16の1632)と結合して、第3の1対の光伝送路(例えば、図16の1634、1636)を出力する。
【0199】
ステップ2112では、第3の光位相シフタ(例えば、図16の1638および1640によって形成される差動位相シフタ)が、第3の1対の光伝送路(例えば、図16の1634、1636)の間に第3の相対位相シフトを適用するように制御される。いくつかの実施形態では、第3の光位相シフタは、第1の相対位相シフトの値に依存する有限の範囲内で制御することができる。例えば、上述したように、第3の光位相シフタは、第1の相対位相シフトが(c-π/2)に等しい場合、0と+nπの間で動作し、第1の相対位相シフトが(c+π/2)に等しい場合、-nπと0の間で動作するよう制御することができ、ここで「n」は整数である。これは、範囲(0, +nπ)および(-nπ, 0)内でのアナログ動作によって実行できる。この制御は、フィードバック情報(例えば、パイロットトーンを使用して)に基づくことができる。
【0200】
ステップ2114では、第3の1対の光伝送路(例えば、図16の1634、1636)が第3の2x2光カプラ(例えば、図16の1642)と結合して、第4の1対の光伝送路(例えば、図16の1650、1652)を出力する。ステップ2116では、第4の1対の光伝送路(例えば、1650、1652)が1対のMIMO出力を介して出力される。
【0201】
図21の例示的な方法2100は、ステップの特定の順序を示しているが、これらのステップの1つ以上は、異なる順序で実行することができる。例えば、第1、第2、第3の光位相シフタの制御は、異なる順序で実行することができる。3つの位相シフタを制御および調整する特定の例について、図22を参照して説明する。
【0202】
図22は、本開示の実施形態に係る光偏光デマルチプレクサにおける相対位相シフト値を制御する方法2200の一例を示すフローチャートである。方法2200は、第1、第2、第3の位相シフタを調整して、有限範囲位相シフトの3つのステージだけを使用して光MIMO偏光多重分離の「エンドレス」特性を達成する、特定の方法を示すものである(PDLがないロスレスシナリオの場合)。説明の目的のため、方法2200の説明は、図16のデマルチプレクサ1600を参照して提供される。
【0203】
方法2200は、相対位相シフト制御信号1608、1610、および1612を適応させて、測定されたフィードバック誤差(例えば、図16のフィードバック1648、または図19のフィードバック1904)を徐々に減少させる反復プロセスである。例えば、コントローラがストークス測定装置からフィードバックを受信する実施形態では(上記の図1A図13を参照して説明したように)、フィードバック1648は、直線偏光クロストーク(XとYの相関係数)またはコンステレーション形状歪みなどのストークスパラメータの測定値に基づいてもよい。
【0204】
ステップ2202では、反復の開始時に、デマルチプレクサは、3つの制御信号1608、1610、および1612の相対位相シフト値を初期化する。例えば、いくつかの実施形態では、第1の制御信号φ1(1608)は、バイナリ(デジタル)値であり、最初に-π/2または+π/2のいずれかに設定される。第2の制御信号φ2(1610)は、連続値(アナログ)または離散値(デジタル)であり、最初に-πと+πの間のいずれかの値に設定される。第3の制御信号φ3(1612)も連続値(アナログ)または離散値(デジタル)であり、第1の制御信号φ1(1608)が-π/2に設定されていた場合、0と+πの間のいずれかの値に設定され、それ以外の場合、第3の制御信号φ3(1612)は、第1制御信号φ1(1608)が+π/2に設定されていた場合、-πと0との間のいずれかの値に設定される。第3の制御信号φ3(1612)と第1の制御信号φ1(1608)との間のこの関係は、方法2200の制御プロセスを通して維持される。
【0205】
ステップ2204では、第3の制御信号φ3(1612)が、フィードバック(例えば、図16のフィードバック1648)における測定された誤差を低減するように(その現在の範囲内で)調整される。第3の制御信号φ3(1612)の調整は、測定された誤差を最小化または低減しようとする最適化または疑似最適化アルゴリズム(例えば、勾配降下アルゴリズム)によって実行することができる。例えば、第3の制御信号φ3(1612)の調整は、第3の制御信号φ3(1612)の現在値の局所近傍内で検索して、測定された誤差を低減する新しい値を見つけることによって実行することができる。具体例として、第3の制御信号φ3(1612)を+/- Δφ3ステップで調整し、測定された誤差を小さくする値を求める場合について説明する。ステップサイズΔφ3は、各反復において動的に調整することができる。第3の制御φ3(1612)の値がその範囲の境界からΔφ3以内(すなわち、0、+π、または-πのいずれかのΔφ3以内)にある場合、第3の制御信号φ3(1612)は変化しない。そうでなければ、第3の制御信号φ3(1612)は、まずΔφ3だけ増加され、フィードバック1648の結果として生じる誤差が測定される。次に、第3の制御信号f3(1612)を2Δφ3だけ減少させ(すなわち、元の値からΔφ3だけ減少させ)、フィードバック1648の結果として生じる誤差を再び測定する。誤差が小さくなった第3の制御信号φ3(1612)の値が、第3の制御信号φ3(1612)の新たな調整された値として割り当てられる。
【0206】
ステップ2206では、第2の制御信号φ2(1610)が、測定された誤差を低減するように調整される。第2の制御信号φ2(1610)の調整は、測定された誤差を最小化または低減しようとする最適化または疑似最適化アルゴリズム(例えば、勾配降下アルゴリズム)によって実行することができる。例えば、第2の制御信号φ2(1610)の調整は、第2の制御信号φ2(1610)の現在値の局所近傍内で探索して、測定された誤差を低減する新しい値を見つけることによって実行することができる。具体例として、第2の制御信号φ2(1610)を+/- Δφ2ステップで調整し、測定された誤差を小さくする値を求める場合について説明する。ステップサイズΔφ2は、各反復において動的に調整することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ステップサイズΔφ2は、(第3の制御信号1612の)値sin2(φ3)が小さくなるにつれて増加するように構成され得る。ステップ2206の探索プロセスでは、第2の制御信号φ2(1610)は、まずΔφ2だけ増加され、フィードバック1648の結果として生じる誤差が測定される。次に、第2の制御信号φ2(1610)を2Δφ2だけ減少させ(すなわち、元の値からΔφ2だけ減少させ)、フィードバック1648の結果として生じる誤差を再び測定する。誤差が小さくなった第2の制御信号φ2(1610)の値は、(この説明の目的のため)φ2′として示される。
【0207】
ステップ2208では、デマルチプレクサは、値φ2′ < -π(すなわち、下限外)であるか否かを判定する。そうである場合、ステップ2210において、第2の制御信号φ2(1610)の新たな調整された値が-2π - φ2′に設定される。さらに、ステップ2212では、第1の制御信号φ1(1608)と第3の制御信号φ3(1612)の値が反転される。すなわち、第1の制御信号(1608)の値がφ1 = -π/2(第3の制御信号1612が0と+πの範囲内にあることを意味する)である場合、次に、πの値が同時に第1の制御信号φ1(1608)に加算され、第3の制御信号φ3(1612)から減算される。あるいは、第1の制御信号(1608)の値がφ1 = +π/2(第3の制御信号1612が-πと0の範囲内にあることを意味する)である場合、次に、πの値が同時に第1の制御信号φ1(1608)から減算され、第3の制御信号φ3(1612)に加算される。この同時加算と同時減算の間、制御ループは一時停止する必要がある。いくつかの実施形態では、πの同時加算および減算は、順次実行されてもよい(例えば、第1の制御信号φ1(1608)を調整し、次に第3の制御信号φ3(1612)を調整する、またはその逆も同様)。それにもかかわらず、上述した第1の制御信号φ1(1608)と第3の制御信号φ3(1612)を調整する手順は、制御システムに長い停止時間および制御遅れが生じないように、迅速に実行される必要がある。
【0208】
ステップ2208で、φ2′が下限外でないと判定されると、ステップ2214で、デマルチプレクサは、φ2′ > +π(すなわち、上限外)か否かをチェックする。そうである場合、ステップ2216において、第2の制御信号φ2(1610)の新たな調整された値が+2π - φ2′に設定される。さらに、ステップ2212では(上述のように)、第1の制御信号φ1(1608)と第3の制御信号φ3(1612)の値が反転される。
【0209】
ステップ2214において、φ2′が上限外ではないと判定された場合(φ2′が-π~+πの範囲内にあることを意味する)、ステップ2218において、第2の制御信号φ2(1610)の新しい調整された値がφ2′に設定される。この場合、第1の制御信号φ1(1608)と第3の制御信号φ3(1612)は反転されない。次に、ステップ2204に戻り、制御信号を調整する次の反復が実行される。
【0210】
方法2200の制御プロセスは、データ受信のリセットまたは中断を必要とせずに、多重分離の「エンドレス」動作を達成することができる。この特性は、第2の制御信号φ2(1610)が境界点(+πまたは-π)のいずれかに到達すると、第2のステージの位相シフト(図16の1604)がパススルーとして動作することによって可能となる。このとき、第2の制御信号φ2(1610)がその範囲の境界点にあるときは、πが第1の制御信号φ1(1608)と第3の制御信号φ3(1612)に同時に加算または減算される(ステップ2212で上述したように)。同様に、制御信号φ3(1612)がその範囲の終点にあるときは、φ2(1610)に+πまたは-πが加算される。このように、データ受信のリセットまたは中断を必要とせずに、偏光多重分離の「エンドレス」動作が実現される。
【0211】
図22の例示的な方法2200は、ステップの特定の順序を示しているが、これらのステップの1つ以上は、異なる順序で実行することができる。例えば、ステップ2208および2214、すなわち第2の制御信号φ2(1610)が範囲-π~+πの下限および上限内にあるかどうかをチェックすることは、逆にすることができる。
【0212】
さらに、ステップ2202で説明した具体的な数値の範囲は変更することができる。例えば、第1の制御信号φ1(1608)の取り得る値は、(-π/2+c)または(+π/2+c)のシフトしたバイナリ値となるように、固定オフセットを有することができる。第2の制御信号φ2(1610)の取り得る値は、その範囲の境界点が上述したパススルー特性を可能にする限り、2πの整数倍だけシフトすることができる。また、第3の制御信号φ3(1612)の取り得る値も、2πの整数倍だけシフすることができる。
【0213】
図23は、本開示の実施形態に係る光偏光デマルチプレクサにおける相対減衰値を制御する方法2300の一例を示すフローチャートである。方法2300は、図17のデマルチプレクサ1700における相対減衰制御信号a1(1708)およびa2(1714)などの相対減衰信号を制御するために使用することができる。説明の目的のため、方法2300の説明は、図17のデマルチプレクサ1700を参照して提供される。
【0214】
例示的な方法2300は、相対減衰制御信号a1(1708)およびa2(1714)の両方の制御を示しているが、いくつかのシナリオでは、信号のうちの1つだけが実装される。例えば、いくつかの実施形態では、第1の制御信号a1のみが実装される。これは、例えば、PDLレベルが中程度のシナリオ(例えば、PDLの唯一の発生源がファイバ伝送線自体ではなく、レシーバにあるシナリオ)において適切な場合がある。さらに、PDL値が経時的に大きく変化しないことが予想される場合、制御値a1は、動作の開始時(例えば、工場内で)に一度設定し、変更されないままにすることもできる。
【0215】
あるいは、方法2300に示すように、光減衰制御信号a1およびa2の両方を、例えば可変光減衰器(VOA)を使用して(例えば、連続的に)調整することができる。これは、例えば、PDLレベルがより重要であるシナリオ(例えば、PDLがレシーバとファイバ伝送線の両方で発生するシナリオ)において適切な場合がある。
【0216】
一般に、相対減衰信号a1(1708)およびa2(1714)は、フィードバック(例えば、図17のフィードバック1760、または図19のフィードバック1904)の測定された誤差を低減または最小化するように設計された最適化または疑似最適化プロセスを使用して制御することができる。例えば、いくつかの実施形態では、相対減衰制御信号a1(1708)およびa2(1714)は、同時最適化によって同時に制御することができる。図23の方法2300に示される別の例として、反復プロセスを実装し、相対減衰制御信号a1(1708)およびa2(1714)を適応させて、測定されたフィードバック誤差を徐々に減少させることができる。
【0217】
ステップ2302では、反復の開始時に、デマルチプレクサは、2つのVOA制御信号a1(1708)およびa2(1714)を初期値、例えば、ゼロ値に初期化する。
【0218】
ステップ2304では、第1のVOA制御信号a1(1708)が(-3~+3などのその許容範囲内で)調整されて、フィードバックにおける測定された誤差を低減させる。第1のVOA制御信号a1(1708)の調整は、測定された誤差を最小化または低減しようとする最適化または疑似最適化アルゴリズム(例えば、勾配降下アルゴリズム)によって実行することができる。例えば、第1のVOA制御信号a1(1708)の調整は、第1のVOA制御信号a1(1708)の現在値の局所近傍内で探索して、測定された誤差を低減する新しい値を見つけることによって実行することができる。具体例として、第1のVOA制御信号a1(1708)を+/- Δa1ステップで調整し、測定された誤差を小さくする値を求める場合について説明する。ステップサイズΔa1は、各反復において動的に調整することができる。第1のVOA制御信号a1(1708)は、まずΔa1だけ増加され、フィードバック1760の結果として生じる誤差が測定される。次に、第1のVOA制御信号a1(1708)を2Δa1だけ減少させ(すなわち、元の値からΔa1だけ減少させ)、フィードバック1760の結果として生じる誤差を再び測定する。誤差が小さくなった第1のVOA制御信号a1(1708)の値が、第1のVOA制御信号a1(1708)の新たな調整された値として割り当てられる。
【0219】
ステップ2306では、第2のVOA制御信号a2(1714)が(-3~+3などのその許容範囲内で)調整されて、測定された誤差を低減させる。第2のVOA制御信号a2(1714)の調整は、測定された誤差を最小化または低減しようとする最適化または疑似最適化アルゴリズム(例えば、勾配降下アルゴリズム)によって実行することができる。例えば、第2のVOA制御信号a2(1714)の調整は、第2のVOA制御信号a2(1714)の現在値の局所近傍内で探索して、測定された誤差を低減する新しい値を見つけることによって実行することができる。具体例として、第2のVOA制御信号a2(1714)を+/- Δa2ステップで調整し、測定された誤差を小さくする値を求める場合について説明する。ステップサイズΔa2は、各反復において動的に調整することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ステップサイズΔa2は、(第1のVOA制御信号1708の)値sin2(a1)が小さくなるにつれて増加するように構成され得る(逆もまた同様)。ステップ2306の探索プロセスでは、第2のVOA制御信号a2(1714)は、まずΔa2だけ増加され、フィードバック1760の結果として生じる誤差が測定される。次に、第2のVOA制御信号a2(1714)を2Δa2だけ減少させ(すなわち、元の値からΔa2だけ減少させ)、フィードバック1760の結果として生じる誤差を再び測定する。誤差が小さくなった第2のVOA制御信号a2(1714)の値が、第2のVOA制御信号a2(1714)の新たな調整された値として割り当てられる。次に、ステップ2304に戻り、制御信号を調整する次の反復が実行される。
【0220】
図23の例示的な方法2300は、ステップの特定の順序を示しているが、これらのステップの1つ以上は、異なる順序で実行することができる。例えば、ステップ2304と2306は逆にすることができる。さらに、具体的な数値の範囲も変更することができる。例えば、第1および第2のVOA制御信号の、-3~+3の値の範囲を異なる値の範囲に変更することができる。
【0221】
いくつかの実施形態では、光MIMO偏光多重分離について本明細書に記載された技術は、一般的な2x2光MIMO多重分離に適用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載された技術は、PBSRとは別に、またはPBSRなしで実装することができる。
【0222】
図24は、本開示の実施形態に係るPDM MIMOデマルチプレクサの動作を示すシミュレーション結果の例を示す図である。図24のシミュレーション結果において、デマルチプレクサに入力される光(ファイバ伝送線から受信される擬似光)は、連続的かつランダムに偏光スクランブルされる。次いで、デマルチプレクサ(例えば、図16のデマルチプレクサ1600)は、受信した信号を連続的に多重分離するように制御される。
【0223】
グラフ2402は、3つの制御信号φ1(1608)、φ2(1610)、およびφ3(1612)が制御アルゴリズムによって調整されるときの経時変化の一例を示している。グラフ2400は、その結果得られるクロストーク量、すなわち上述した誤差「e」の一例を示している。
【0224】
図25は、ストークス測定値に基づいて光MIMOデマルチプレクサの適応制御を実行するシステムの1つ以上のコンポーネントを実装するために使用することができる、例示的なコンピューティングシステム2500を示す図である。コンピューティングシステム2500は、本明細書に記載された技術を実装するために使用することができる。例えば、コントローラ(例えば、図8Aのコントローラ806、図8Bのコントローラ816、図9のコントローラ906、図11のコントローラ1106、図16のコントローラ1644、図17のコントローラ1756、図19のコントローラ1906)および/またはパイロットトーン検出器(例えば、図19のパイロットトーン検出器1902)の1つ以上の部分は、ここで説明されるコンピューティングシステム2500の構成要素によって実装され得る。
【0225】
コンピューティングシステム2500は、ラップトップ、デスクトップ、ワークステーション、パーソナルデジタルアシスタント、サーバ、ブレードサーバ、メインフレーム、および他の適切なコンピュータなどのデジタルコンピュータを含む様々なシステムを表すことを意図している。ここに示した構成要素、それらの接続および関係、および機能は単なる例であり、限定することを意図したものではない。
【0226】
コンピューティングシステム2500は、プロセッサ2502、メモリ2504、記憶装置2506、メモリ2504および複数の高速拡張ポート2510に接続する高速インタフェース2508、並びに、低速拡張ポート2514および記憶装置2506に接続する低速インタフェース2512を含む。プロセッサ2502、メモリ2504、記憶装置2506、高速インタフェース2508、高速拡張ポート2510、低速インタフェース2512のそれぞれは、様々なバスを使用して相互に接続されており、共通のマザーボードに搭載されてもよいし、必要に応じてその他の態様で搭載されてもよい。プロセッサ2502は、メモリ2504または記憶装置2506に格納された命令を含む、コンピューティングシステム2500内で実行するための命令を処理して、高速インタフェース2508に結合されたディスプレイ2516などの外部入出力デバイスにGUI用のグラフィック情報を表示することができる。他の実施形態では、複数のプロセッサおよび/または複数のバスが、必要に応じて複数のメモリおよび各種メモリとともに使用され得る。さらに、複数のコンピューティングデバイスが接続され、各デバイスが動作の一部を提供することもできる(例えば、サーバーバンク、ブレードサーバ群、またはマルチプロセッサーシステムとして)。いくつかの実施形態では、プロセッサ2502は、シングルスレッドプロセッサである。いくつかの実施形態では、プロセッサ2502は、マルチスレッドプロセッサである。いくつかの実施形態では、プロセッサ2502は、量子コンピュータである。
【0227】
メモリ2504は、コンピューティングシステム2500内の情報を格納する。いくつかの実施形態では、メモリ2504は、1つまたは複数の揮発性メモリユニットである。いくつかの実施形態では、メモリ2504は、1つまたは複数の不揮発性メモリユニットである。また、メモリ2504は、磁気ディスクまたは光ディスクなどの、コンピュータ可読媒体の別の形態であってもよい。
【0228】
記憶装置2506は、コンピューティングシステム2500に大容量記憶装置を提供することができる。いくつかの実施形態では、記憶装置2506は、フロッピーディスク装置、ハードディスク装置、光ディスク装置、またはテープ装置、フラッシュメモリまたは他の同様の固体メモリ装置、またはストレージエリアネットワークまたは他の構成における装置を含むデバイスアレイなどのコンピュータ可読媒体であってもよいし、それらを含んでもよい。命令は、情報媒体に格納され得る。命令は、1つ以上の処理装置(例えば、プロセッサ2502)によって実行されるとき、上述したような1つ以上の方法を実行する。命令は、コンピュータ可読媒体または機械可読媒体(例えば、メモリ2504、記憶装置2506、またはプロセッサ2502上のメモリ)などの1つ以上の記憶装置によって格納され得る。高速インタフェース2508は、コンピューティングシステム2500の帯域幅集約型の動作を管理し、低速インタフェース2512はより低い帯域幅集約型の動作を管理する。このような機能の割り当ては一例にすぎない。いくつかの実施形態では、高速インタフェース2508は、メモリ2504、ディスプレイ2516(例えば、グラフィックプロセッサまたはアクセラレータを介して)、および様々な拡張カード(図示せず)を受け入れることができる高速拡張ポート2510に結合される。本実施形態では、低速インタフェース2512は、記憶装置2506および低速拡張ポート2514に結合される。様々な通信ポート(例えば、USB、Bluetooth、イーサネット、無線イーサネット)を含むことができる低速拡張ポート2514は、キーボード、ポインティングデバイス、スキャナ、またはスイッチもしくはルータなどのネットワーキングデバイス(例えば、ネットワークアダプタを介して)などの1つ以上の入力/出力装置に結合されてもよい。
【0229】
コンピューティングシステム2500は、図に示すように、いくつかの異なる形態で実装され得る。例えば、それは、標準的なサーバ2520として、またはそのようなサーバ群を複数回に分けて実装されてもよい。さらに、それは、ノートパソコン2522などのパーソナルコンピュータに実装されてもよい。また、それは、ラックサーバシステム2524の一部として実装されてもよい。
【0230】
本開示で使用される「システム」という用語は、例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータを含む、データを処理するためのすべての装置、デバイス、および機械を包含し得る。処理システムは、ハードウェアに加えて、当該コンピュータプログラムの実行環境を構築するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはそれらの1つ以上の組合せを構成するコードを含むことができる。
【0231】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェア・アプリケーション、スクリプト、実行可能ロジック、またはコードとも呼ばれる)は、コンパイル言語またはインタプリタ言語、あるいは宣言型言語または手続き型言語を含む、任意の形式のプログラミング言語で記述でき、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピュータ環境での使用に適した他のユニットとして、任意の形式で展開することが可能である。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルシステム内のファイルに対応するとは限らない。プログラムは、他のプログラムやデータを保持するファイルの一部(例えば、マークアップ言語の文書に格納された1つ以上のスクリプト)、当該プログラム専用の単一のファイル、または複数の連携ファイル(例えば、1つ以上のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を格納するファイル)に格納することができる。コンピュータプログラムは、1台のコンピュータ、または1つのサイトに配置された、または複数のサイトに分散して配置され、通信ネットワークによって相互に接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することもできる。
【0232】
コンピュータプログラム命令およびデータを格納するのに適したコンピュータ可読媒体には、全ての形態の不揮発性または揮発性のメモリ、媒体、およびメモリデバイスが含まれ、例として、例えばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス;例えば内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスクまたは磁気テープなどの磁気ディスク;光磁気ディスク;ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクが含まれる。プロセッサおよびメモリは、特定用途論理回路によって補完されてもよいし、またはその内部に組み込まれてもよい。サーバは、汎用コンピュータの場合もあれば、特注の特殊用途の電子デバイスの場合もあり、これらの組み合わせである場合もある。
【0233】
実施形態は、バックエンドコンポーネント(例えば、データサーバ)、またはミドルウェアコンポーネント(例えば、アプリケーションサーバ)、またはフロントエンドコンポーネント(例えば、ユーザがこの明細書に記載されている主題の実施形態と対話できるグラフィカルユーザインターフェースまたはWebブラウザを有するクライアントコンピュータ)、または1つ以上のそのようなバックエンド、ミドルウェア、またはフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせ、を含むことができる。システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信の任意の形式または媒体(例えば、通信ネットワーク)によって相互接続されてもよい。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(LAN)およびワイドエリアネットワーク(WAN)(例えば、インターネット)が含まれる。
【0234】
説明した機能は、デジタル電子回路、またはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで実装することができる。本装置は、プログラマブルプロセッサによる実行のために、例えば機械可読記憶装置などの情報担体に有形に具現化されたコンピュータプログラム製品で実装することができ、方法ステップは、命令のプログラムを実行して、入力データを操作し、出力を生成することによって、説明した実装の機能を実行するプログラム可能なプロセッサによって実行することができる。説明した機能は、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受信し、データおよび命令を送信するように結合された少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能な1つ以上のコンピュータプログラムにおいて有利に実装することが可能である。コンピュータプログラムは、特定のアクティビティを実行したり、特定の結果をもたらすために、コンピュータ内で直接的または間接的に使用される命令のセットである。コンピュータプログラムは、コンパイル言語またはインタプリタ言語を含む任意の形式のプログラミング言語で記述することができ、スタンドアロンプログラムまたはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットを含む任意の形式で展開することができる。
【0235】
本開示には多くの具体的な実施形態の詳細が含まれているが、これらは、発明の範囲または特許請求の範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の発明の特定の実施形態に固有の機能の説明として解釈されるべきである。本開示において、個別の実施形態の文脈で説明されている特定の機能は、単一の実施形態で組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で説明されている様々な機能は、複数の実施形態で別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、機能は、特定の組み合わせで作用するものとして上述され、当初はそのように主張されることさえあるが、主張された組み合わせからの1つ以上の機能は、場合によっては組み合わせから削除され、主張された組み合わせが、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションのバリエーションを対象とする場合がある。
【0236】
同様に、図面には特定の順序で動作が描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順序、または順次実行されること、または図示されたすべての動作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。
図1
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【外国語明細書】