(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178301
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム及び処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20231207BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20231207BHJP
B01D 61/08 20060101ALI20231207BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20231207BHJP
B01D 65/06 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C02F1/44 F
B01D61/02 500
B01D61/08
B01D61/58
B01D65/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023163598
(22)【出願日】2023-09-26
(62)【分割の表示】P 2020552969の分割
【原出願日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2018197694
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100230857
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 悠也
(72)【発明者】
【氏名】小野 義宣
(72)【発明者】
【氏名】成田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】水間 翔平
(57)【要約】
【課題】本発明は、エバポレータにかかる濃縮負荷を軽減して、エバポレータを増設することなく、水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液が増えても処理可能とする水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム及びその処理方法を提供する。
【解決手段】水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む被処理液を濃縮側に濃縮する高圧型の逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置によって濃縮された被処理液をさらに濃縮するエバポレータに供給するラインとを有する、水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む被処理液を濃縮側に濃縮する高圧型の逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置によって濃縮された被処理液をさらに濃縮するエバポレータに供給するラインとを有する、水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
【請求項2】
水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む洗浄液によって前記逆浸透膜装置を洗浄する洗浄システムを有する、請求項1に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
【請求項3】
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、該処理システムの一部を、前記逆浸透膜装置を含んで構成される循環系とすることができ、該循環系に水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む洗浄液を循環させることにより、該循環系を前記逆浸透膜装置の逆浸透膜を洗浄する洗浄システムとして利用することができる、請求項1又は2に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
【請求項4】
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、
(a-1)水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液を貯留する液槽と、
(b-1)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-1)該液供給配管の他端が接続された逆浸透膜装置と、
(d-1)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-1)該濃縮水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-1)前記逆浸透膜装置の透過側に一端が接続された透過水配管と、
(g-1)該透過水配管の他端に接続された希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備と、
(h-1)該透過水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置の透過水を供給する透過水戻し配管と
を有し、
前記洗浄システムは、前記液槽に水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を供給し、前記(a-1)~(d-1)及び(e-1)により形成される循環系と、前記(a-1)~(c-1)、(f-1)及び(h-1)により形成される循環系の両循環系に該水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を循環させて、前記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである、請求項3に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
【請求項5】
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、
(a-2)水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液を貯留する液槽と、
(b-2)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-2)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置と、
(d-2)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-2)該濃縮水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-2)前記逆浸透膜装置の透過側に一端が接続された透過水配管と、
(g-2)該透過水配管の途中に配された透過水槽と、
(h-2)該透過水配管の他端に接続された希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備と、
(i-2)前記透過水槽と前記希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備との間に位置する前記透過水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置の透過水を供給する透過水戻し配管と
を有し、
前記洗浄システムは、前記液槽に水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を供給し、前記(a-2)~(d-2)及び(e-2)により形成される循環系と、前記(a-2)~(c-2)、(f-2)、(g-2)及び(i-2)により形成される循環系の両循環系に該水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を循環させて、前記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである、請求項3に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
【請求項6】
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、
(a-3)水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液を貯留する液槽と、
(b-3)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-3)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置(Y)と、
(d-3)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該、逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-3)該濃縮水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置(Y)の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-3)該逆浸透膜装置(Y)の透過側に一端が接続された透過水配管(P)と、
(g-3)該透過水配管(P)の途中に配された透過水槽と、
(h-3)該透過水配管(P)の他端に接続された希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備と、
(i-3)前記逆浸透膜装置(Y)と前記透過水槽との間に位置する前記透過水配管(P)に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置(Y)の透過水を供給する透過水戻し配管(I)と、
(j-3)該透過水戻し配管(I)の途中に配した透過水濃縮水槽と、
(k-3)前記透過水槽と前記希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備との間に位置する前記透過水配管(P)から分岐し、前記逆浸透膜装置(Y)と前記透過水濃縮水槽との間に位置する前記透過水戻し配管(I)に接続する別の透過水戻し配管(II)と、
(l-3)該別の透過水戻し配管(II)の途中に配された別の逆浸透膜装置(Z)と、
(m-3)該別の逆浸透膜装置(Z)の透過側と前記の希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備とを接続する別の透過水配管(Q)とを有し、
前記洗浄システムは、前記液槽に前記逆浸透膜装置(Y)の透過水を前記別の逆浸透膜装置(Z)にて濃縮した濃縮水(X)を供給し、前記(a-3)~(d-3)及び(e-3)により形成される循環系と、前記(a-3)~(c-3)、(f-3)、(i-3)及び(j-3)により形成される循環系の両循環系に前記濃縮水(X)を循環させて、前記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである、請求項3に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
【請求項7】
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、
(a-4)水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液を貯留する液槽と、
(b-4)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-4)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置と、
(d-4)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-4)該濃縮水配管の途中に配された濃縮水槽と、
(f-4)前記逆浸透膜装置と前記濃縮水槽との間に位置する前記濃縮水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と、
(g-4)前記濃縮水槽より下流側に位置する前記濃縮水配管から分岐し、前記濃縮水戻し配管に接続する濃縮水透過配管と、
(h-4)該濃縮水透過配管の途中に配されたナノフィルタ装置と、
(i-4)該濃縮水透過配管の途中に配され、前記ナノフィルタ装置の透過水を貯留するナノフィルタ透過水槽と、
(j-4)前記ナノフィルタ装置の濃縮側に一端が接続され、該ナノフィルタ装置の濃縮水を前記エバポレータに供給するナノフィルタ濃縮水配管と、
(k-4)前記逆浸透膜装置の透過側に一端が接続された透過水配管と、
(l-4)該透過水配管の他端に接続された希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備と、
(m-4)該透過水配管に接続され、前記液槽に透過水を供給する透過水戻し配管と
を有し、
前記洗浄システムは、前記液槽に、水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を供給し、前記(a-4)~(e-4)及び(f-4)~(i-4)により形成される循環系と、前記(a-4)~(c-4)、(k-4)及び(m-4)により形成される循環系の両循環系に該水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を循環させて、前記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである、請求項3に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
【請求項8】
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、
(a-5)水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液を貯留する液槽と、
(b-5)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-5)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置(Y)と、
(d-5)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-5)該濃縮水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置(Y)の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-5)該逆浸透膜装置(Y)の透過側に一端が接続された透過水配管(P)と、
(g-5)該透過水配管(P)の途中に配された透過水槽と、
(h-5)該透過水配管(P)の他端に配された希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備と、
(i-5)前記逆浸透膜装置(Y)と前記透過水槽との間に位置する前記透過水配管(P)に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置(Y)の透過水を供給する透過水戻し配管(I)と、
(j-5)該透過水戻し配管(I)の途中に配した透過水濃縮水槽と、
(k-5)前記透過水槽と前記希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備との間に位置する前記透過水配管(P)から分岐し、前記逆浸透膜装置(Y)と前記透過水濃縮水槽との間に位置する前記透過水戻し配管(I)に接続する別の透過水戻し配管(II)と、
(l-5)該別の透過水戻し配管(II)の途中に配された別の逆浸透膜装置(Z)と、
(m-5)該別の透過水戻し配管(II)の途中に配され、該別の逆浸透膜装置(Z)の濃縮水を処理するナノフィルタ装置と、
(m-5)該別の逆浸透膜装置(Z)の透過側と前記の希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備とを接続する別の透過水配管(Q)と、
(o-5)該ナノフィルタ装置の濃縮側と前記別の透過水配管(Q)とを接続するナノフィルタ濃縮水配管とを有し、
前記洗浄システムは、前記液槽に、前記逆浸透膜装置(Y)の透過水を前記別の逆浸透膜装置(Z)にて濃縮し、さらに前記ナノフィルタ装置を透過させた透過水処理水を供給し、前記(a-5)~(d-5)及び(e-5)により形成される循環系と、前記(a-5)~(c-5)、(f-5)及び(i-5)により形成される循環系の両循環系に前記透過水処理水を循環させて、前記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである、請求項3に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
【請求項9】
前記洗浄システムによって前記液槽から供給される洗浄液のレジスト濃度を測定する手段と、
前記測定したレジスト濃度から洗浄状態を検出する洗浄状態検出手段とを備えた請求項4~8のいずれか1項に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
【請求項10】
水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理方法であって、
エバポレータによって水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む被処理液を濃縮するに当たり、
前記エバポレータの前段に配した逆浸透膜装置によって前記被処理液を濃縮側に濃縮する前記被処理液の濃縮工程を有し、
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理方法が、前記逆浸透膜装置の逆浸透膜の詰まりに応じて、水酸化テトラアルキルアンモニウム新液及び/又は該逆浸透膜装置から生成された透過水を利用して該逆浸透膜を洗浄する洗浄工程を有する、水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶ディスプレイ等の半導体装置の製造分野におけるフォトリソグラフィ工程では、主にポジ型のフォトレジスト(以下、単に、レジストともいう)が使用されている。その現像液には水酸化テトラアルキルアンモニウム(TAAH)を含む溶液(TAAH現像液)が使用されることが多い。TAAHとしてテトラメチルアンモニウム(TMAH)が汎用されている。
TMAH現像液の使用方法は、基板上にレジストを塗布してレジスト膜を形成し、フォトマスクを介してレジスト膜を露光することによりアルカリ溶液可溶のレジスト部分を作製する。それを高アルカリ性のTMAH現像液で溶解除去(現像工程)することでレジストパターンを作る。一般にTMAH現像液にはTMAH濃度が2.38質量%のTMAH水溶液を用いる。
ポジ型レジストの場合、現像工程によって、露光部分がTMAH現像液に対して溶解性が増大し可溶となって除去され、未露光部分のレジストがレジストパターンとして残る。その後、基板上のレジストと反応したTMAH現像液を純水等で洗浄する。この結果、現像廃液は、現像液のTMAH、溶解したレジスト及び水の混合液となる。
【0003】
TMAHは毒物に指定されているため、排水処理が必須となり、工場においてその対応が進められている。このように、TMAHを含むフォトレジスト含有現像廃液(以下、現像廃液ともいう)の処理の需要及び処理の重要性が増している。一部工場では、エバポレータを用いて上記現像廃液を濃縮して減容化し、産業廃棄物処理又は有価物回収として社外取引を行っている。また、生物処理や、電気透析(ED)と樹脂(例えば、イオン交換樹脂)を用いた処理などにより、TMAHを回収し、再利用することも行われている。
また、TMAH含有排水を逆浸透(RO)膜に加圧供給して濃縮する技術(特許文献1参照)や、フォトレジストとTMAHを含むフォトレジスト現像廃液をナノフィルタ(NF)膜を用いて処理することにより、フォトレジストを濃縮側に、TMAHを透過側に分離する技術(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-118282号公報
【特許文献2】特開平11-192481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、現像工程数の増加や、TAAHが微量含まれているだけであってもTAAH排水の処理が必要になること等によってTAAH廃液の処理量は増加しており、エバポレータを用いた濃縮処理量が増加している。そのため、既設のエバポレータの濃縮能力が不足しており、その対策が求められている。
TAAH含有液のような現像廃液の濃縮を、分離膜を用いて行う場合には、レジストによる膜の詰まり(閉塞)が問題となる。膜の詰まりが生じれば、新しい膜に交換することが必要になる。
また近年、高阻止率のRO膜(高圧RO膜等)が上市されており、これを用いるとTAAH及びレジストを高阻止率で処理することが可能となる。しかし高圧RO膜では、従来のRO(中圧~超低圧RO)膜以上にレジストによる膜の閉塞が問題となる。
【0006】
本発明は、エバポレータにかかる濃縮負荷を軽減して、TAAH含有液が増えても、エバポレータを増設することなくTAAH含有液の処理を可能とするTAAH含有液の処理システム及びTAAH含有液の処理方法を提供することを課題とする。それとともに本発明は、エバポレータにかかる濃縮負荷の軽減手段として用いるRO膜を、現像液に溶解したレジスト起因の目詰まりによる処理能力の低下状態や処理不能状態から回復させることが可能なTAAH含有液の処理システム及びTAAH含有液の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決された。
[1]
水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む被処理液を濃縮側に濃縮する高圧型の逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置によって濃縮された被処理液をさらに濃縮するエバポレータに供給するラインとを有する、水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
[2]
水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む洗浄液によって前記逆浸透膜装置を洗浄する洗浄システムを有する[1]に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
[3]
前記の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、該処理システムの一部を、前記逆浸透膜装置を含んで構成される循環系とすることができ、該循環系に水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む洗浄液を循環させることにより、該循環系を前記逆浸透膜装置の逆浸透膜を洗浄する洗浄システムとして利用することができる、[1]又は[2]に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
[4]
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、
(a-1)水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液を貯留する液槽と、
(b-1)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-1)該液供給配管の他端が接続された逆浸透膜装置と、
(d-1)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-1)該濃縮水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-1)前記逆浸透膜装置の透過側に一端が接続された透過水配管と、
(g-1)該透過水配管の他端に接続された希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備と、
(h-1)該透過水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置の透過水を供給する透過水戻し配管と
を有し、
前記洗浄システムは、前記液槽に水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を供給し、前記(a-1)~(d-1)及び(e-1)により形成される循環系と、前記(a-1)~(c-1)、(f-1)及び(h-1)により形成される循環系の両循環系に該水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を循環させて、前記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである、[3]に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
[5]
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、
(a-2)水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液を貯留する液槽と、
(b-2)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-2)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置と、
(d-2)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-2)該濃縮水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-2)前記逆浸透膜装置の透過側に一端が接続された透過水配管と、
(g-2)該透過水配管の途中に配された透過水槽と、
(h-2)該透過水配管の他端に接続された希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備と、
(i-2)前記透過水槽と前記希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備との間に位置する前記透過水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置の透過水を供給する透過水戻し配管と
を有し、
前記洗浄システムは、前記液槽に水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を供給し、前記(a-2)~(d-2)及び(e-2)により形成される循環系と、前記(a-2)~(c-2)、(f-2)、(g-2)及び(i-2)により形成される循環系の両循環系に該水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を循環させて、前記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである、[3]に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
[6]
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、
(a-3)水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液を貯留する液槽と、
(b-3)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-3)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置(Y)と、
(d-3)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-3)該濃縮水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置(Y)の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-3)該逆浸透膜装置(Y)の透過側に一端が接続された透過水配管(P)と、
(g-3)該透過水配管(P)の途中に配された透過水槽と、
(h-3)該透過水配管(P)の他端に接続された希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備と、
(i-3)前記逆浸透膜装置(Y)と前記透過水槽との間に位置する前記透過水配管(P)に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置(Y)の透過水を供給する透過水戻し配管(I)と、
(j-3)該透過水戻し配管(I)の途中に配した透過水濃縮水槽と、
(k-3)前記透過水槽と前記希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備との間に位置する前記透過水配管(P)から分岐し、前記逆浸透膜装置(Y)と前記透過水濃縮水槽との間に位置する前記透過水戻し配管(I)に接続する別の透過水戻し配管(II)と、
(l-3)該別の透過水戻し配管(II)の途中に配された別の逆浸透膜装置(Z)と、
(m-3)該別の逆浸透膜装置(Z)の透過側と前記の希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備とを接続する別の透過水配管(Q)とを有し、
前記洗浄システムは、前記液槽に前記逆浸透膜装置(Y)の透過水を前記別の逆浸透膜装置(Z)にて濃縮した濃縮水(X)を供給し、前記(a-3)~(d-3)及び(e-3)により形成される循環系と、前記(a-3)~(c-3)、(f-3)、(i-3)及び(j-3)により形成される循環系の両循環系に前記濃縮水(X)を循環させて、前記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである、[3]に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
[7]
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、
(a-4)水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液を貯留する液槽と、
(b-4)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-4)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置と、
(d-4)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-4)該濃縮水配管の途中に配された濃縮水槽と、
(f-4)前記逆浸透膜装置と前記濃縮水槽との間に位置する前記濃縮水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と、
(g-4)前記濃縮水槽より下流側に位置する前記濃縮水配管から分岐し、前記濃縮水戻し配管に接続する濃縮水透過配管と、
(h-4)該濃縮水透過配管の途中に配されたナノフィルタ装置と、
(i-4)該濃縮水透過配管の途中に配され、前記ナノフィルタ装置の透過水を貯留するナノフィルタ透過水槽と、
(j-4)前記ナノフィルタ装置の濃縮側に一端が接続され、該ナノフィルタ装置の濃縮水を前記エバポレータに供給するナノフィルタ濃縮水配管と、
(k-4)前記逆浸透膜装置の透過側に一端が接続された透過水配管と、
(l-4)該透過水配管の他端に接続された希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備と、
(m-4)該透過水配管に接続され、前記液槽に透過水を供給する透過水戻し配管と
を有し、
前記洗浄システムは、前記液槽に、水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を供給し、前記(a-4)~(e-4)及び(f-4)~(i-4)により形成される循環系と、前記(a-4)~(c-4)、(k-4)及び(m-4)により形成される循環系の両循環系に該水酸化テトラアルキルアンモニウム新液を循環させて、前記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである、[3]に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
[8]
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、
(a-5)水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液を貯留する液槽と、
(b-5)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-5)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置(Y)と、
(d-5)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-5)該濃縮水配管に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置(Y)の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-5)該逆浸透膜装置(Y)の透過側に一端が接続された透過水配管(P)と、
(g-5)該透過水配管(P)の途中に配された透過水槽と、
(h-5)該透過水配管(P)の他端に配された希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備と、
(i-5)前記逆浸透膜装置(Y)と前記透過水槽との間に位置する前記透過水配管(P)に接続され、前記液槽に前記逆浸透膜装置(Y)の透過水を供給する透過水戻し配管(I)と、
(j-5)該透過水戻し配管(I)の途中に配した透過水濃縮水槽と、
(k-5)前記透過水槽と前記希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備との間に位置する前記透過水配管(P)から分岐し、前記逆浸透膜装置(Y)と前記透過水濃縮水槽との間に位置する前記透過水戻し配管(I)に接続する別の透過水戻し配管(II)と、
(l-5)該別の透過水戻し配管(II)の途中に配された別の逆浸透膜装置(Z)と、
(m-5)該別の透過水戻し配管(II)の途中に配され、該別の逆浸透膜装置(Z)の濃縮水を処理するナノフィルタ装置と、
(n-5)該別の逆浸透膜装置(Z)の透過側と前記の希薄水酸化テトラアルキルアンモニウム排水処理設備とを接続する別の透過水配管(Q)と、
(o-5)該ナノフィルタ装置の濃縮側と前記別の透過水配管(Q)とを接続するナノフィルタ濃縮水配管とを有し、
前記洗浄システムは、前記液槽に、前記逆浸透膜装置(Y)の透過水を前記別の逆浸透膜装置(Z)にて濃縮し、さらに前記ナノフィルタ装置を透過させた透過水処理水を供給し、前記(a-5)~(d-5)及び(e-5)により形成される循環系と、前記(a-5)~(c-5)、(f-5)及び(i-5)により形成される循環系の両循環系に前記透過水処理水を循環させて、前記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである、[3]に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
[9]
前記洗浄システムによって前記液槽から供給される洗浄液のレジスト濃度を測定する手段と、
前記測定したレジスト濃度から洗浄状態を検出する洗浄状態検出手段とを備えた[4]~[8]のいずれかに記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。
[10]
水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理方法であって、
エバポレータによって水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む被処理液を濃縮するに当たり、
前記エバポレータの前段に配した逆浸透膜装置によって前記被処理液を濃縮側に濃縮する前記被処理液の濃縮工程を有し、
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理方法が、前記逆浸透膜装置の逆浸透膜の詰まりに応じて、水酸化テトラアルキルアンモニウム新液及び/又は該逆浸透膜装置から生成された透過水を利用して該逆浸透膜を洗浄する洗浄工程を有する、水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のTAAH含有液の処理システム及び処理方法によれば、エバポレータの前段に前濃縮手段としてRO膜装置が配されることによって、エバポレータにかかる濃縮負荷を軽減できる。これによって、エバポレータを増設することなく、既存のエバポレータによって、今まで以上の量のTAAH含有液の濃縮処理を実現できる。
さらに、前濃縮手段としてのRO膜の給水側に生じるフォトレジストによる目詰まりを、TAAH新液により、及び/又は該逆浸透膜装置によって被処理液を処理して得た透過水を、少なくとも利用して洗浄することで、目詰まりによる処理能力の低下状態や処理不能状態から回復を、低コストで、効率的に解消できる。
【0009】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、下記の記載および添付の図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るTAAH含有液の処理システムの好ましい一実施形態(実施形態1)を示した概略構成図である。
【
図2】第1実施形態のTAAH含有液の処理システムにおけるTAAH含有液(現像廃液)処理時のマスバランスの好ましい一例を示したマスバランス図である。
【
図3】透過流束及び運転圧と、洗浄工程の有無によるTAAH含有液(現像廃液)処理の経過時間との関係図である。
【
図4】洗浄工程のおけるTMAH濃度と洗浄時間との関係図である。
【
図5】純水洗浄工程におけるNa濃度と洗浄時間との関係図である。
【
図6】本発明に係るTAAH含有液の処理システムの好ましい一実施形態(実施形態2)を示した概略構成図である。
【
図7】本発明に係るTAAH含有液の処理システムの好ましい一実施形態(実施形態3)を示した概略構成図である。
【
図8】本発明に係るTAAH含有液の処理システムの好ましい一実施形態(実施形態4)を示した概略構成図である。
【
図9】本発明に係るTAAH含有液の処理システムの好ましい一実施形態(実施形態3)を示した概略構成図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るTAAH含有液の処理システムとして、以下、現像廃液の処理システムの好ましい一実施形態(実施形態1)を、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、現像廃液の処理システム1(1A)には、フォトレジスト工程で生じる現像廃液である被処理液を濃縮するエバポレータ11に供給するラインを備える。被処理液は、TAAH及びフォトレジストを含むものである。以下の
図1~
図9を参照する説明では、一例として被処理液が、TAAHとしてTMAH、及びフォトレジストを含むものを中心に説明するが、被処理液がTMAH以外のTAAHを含む場合も、TMAHを含むものと同様のことがいえる。またフォトレジストには、光露光を用いたレジストのほかに、電子線、X線等のエネルギー線露光のレジストも含むものとする。エバポレータ11の前段には非処理液を濃縮する高圧型の逆浸透膜(RO膜)装置21を有する。このRO膜装置21にて生成された濃縮水をエバポレータ11によって濃縮することが好ましい。
【0012】
具体的には、半導体装置の製造工程等で使用された非処理液を貯蔵(貯留)する液槽31を有する。液槽31の液排出側には、被処理液を供給する液供給配管32を介してRO膜装置21が接続される。液槽31の液排出側に液供給配管32の一端側が接続され、液供給配管32の他端側にRO膜装置21の給水側21Sが接続される。液供給配管32には、配管内の液をRO膜装置21側に送る液移送手段33が配されることが好ましい。液移送手段33は、液を送り出すものであればよく、通常のポンプを用いることができ、例えば圧送ポンプを用いることが好ましい。このように、被処理液供給系30が構成される。この被処理液供給系30は後述する洗浄液供給系30Aにもなる。
【0013】
RO膜装置21の濃縮側21C(濃縮水排出側)には濃縮水配管41を介してエバポレータ11が接続される。具体的には、RO膜装置21の濃縮側21Cに濃縮水配管41の一端側が接続され、濃縮水配管41の他端側がエバポレータ11の供給側に接続される。すなわち、RO膜装置21によって濃縮された濃縮水をエバポレータ11に供給するラインとして濃縮水配管41を有する。濃縮水配管41の途中には、濃縮水を一旦貯蔵する濃縮水槽42が配されることが好ましい。また、濃縮水槽42とエバポレータ11との間の濃縮水配管41には、濃縮水槽42内の濃縮水をエバポレータ11の供給側に移送する濃縮水移送手段43が配されることが好ましい。
【0014】
一方、RO膜装置21と濃縮水槽42との間の濃縮水配管41には、液槽31に濃縮水を供給する濃縮水戻し配管46が接続される。濃縮水戻し配管46には、冷却器91が配されることが好ましい。この冷却器91によって、液移送手段33によって温められた被処理液を冷却する。これによって、液槽31に貯液される液の温度が高くなり過ぎるのを抑えることができる。冷却器91は水冷であっても他の冷媒を用いたものであってもよい。濃縮水の温度を好ましくは常温(20℃±15℃(JIS Z8703))、より好ましくは15~25℃程度に冷却できればよい。濃縮水戻し配管46は、濃縮水配管41からの分岐点付近にバルブ47を有することが好ましい。また、濃縮水配管41は、この分岐点と濃縮水槽42との間にバルブ48を有することが好ましい。被処理液を処理する場合には、バルブ47、48は開度を調整して開ける。一方、洗浄の場合には、バルブ47を開けて、バルブ48を閉じる。このように、液槽31から洗浄液供給系30A、RO膜装置21の濃縮側21C、濃縮水配管41、濃縮水戻し配管46を通って液槽31に戻る濃縮水戻し系40(40A)(濃縮側の循環系)が構成される。
【0015】
RO膜装置21の透過側21T(透過水排出側)には、透過水配管61の一端側を接続し、透過水配管61の他端側は希薄TAAH排水処理設備93に接続することが好ましい。希薄TAAH排水処理設備93とは、希薄TAAH排水を生物処理、吸着除害等で無害化する設備である。透過水配管61の途中には、透過水槽62が配されることが好ましく、さらに、透過水槽62と希薄TAAH排水処理設備93との間の透過水配管61には、透過水槽62内の透過水を移送する透過水移送手段63が配されることが好ましい。透過水移送手段63は、液を送り出すものであればよく、通常のポンプを用いることができ、例えば圧送ポンプを用いることが好ましい。
また、透過水配管61は希薄TAAH排水処理設備93に接続せずに、透過水配管61を流通する液を半導体製造工程に再利用することもできる。また、希薄TAAH排水処理設備93により無害化した液を半導体製造工程に再利用することもできる。
【0016】
一方、RO膜装置21と透過水槽62との間の透過水配管61には、液槽31に透過水を供給する透過水戻し配管66が接続される。透過水戻し配管66は、透過水配管61からの分岐点付近にバルブ67を有することが好ましい。また、透過水配管61は、この分岐点と透過水槽62との間にバルブ68を有することが好ましい。被処理液を処理する場合には、バルブ68は開放し、バルブ67は閉じられる。一方、洗浄の場合には、逆にバルブ67は開放し、バルブ68は閉じられる。このように、液槽31から処理液供給系30A、RO膜装置21の透過側21T、透過水配管61、透過水戻し配管66を通って液槽31に戻る透過水戻し系60(60A)(透過側の循環系)が構成される。これは、後述する洗浄システムとして用いられる。
【0017】
上記RO膜装置21のRO膜21Fは、TMAHの除去率が99.5質量%以上、レジストの除去率が99.5質量%以上であることが好ましい。TMAH除去率は[1-(透過水TMAH濃度/供給水TMAH濃度)]×100%によって定義され、レジスト除去率は[1-(透過水レジスト濃度/供給水レジスト濃度)]×100%によって定義される。各濃度は、RO膜装置21の給水側21S及び透過側21Tにおいて採取配管34,64からサンプルを採取して、滴定装置又は電気泳動装置を用いてTMAH濃度、及び吸光光度計の吸光度指示値を用いてレジスト濃度を測定して求める。
また上記RO膜装置21は、塩類や不純物が濃縮された水(濃縮水)を排出する機構を有し、濃縮水の排出によって加圧側塩濃度の過度の上昇や、膜表面において難溶解性物質(スケール)の生成を抑制しつつ連続的に透過水を得ることができる。
【0018】
さらにRO膜21Fは、被処理液が現像廃液(例えば、pH12以上)のような強アルカリ性溶液に耐性を有することが好ましい。このような高圧型のRO膜としては、ポリアミド膜のRO膜が挙げられる。具体的には、日東電工社製SWC5(商品名)が挙げられる。このRO膜は、メーカー推奨pH範囲は常用pH2~11であり、洗浄時pH1~13であるが、pH12程度の被処理液を給水する連続試験(3620時間(約150日)の連続運転)を行っても材質に変化はなく、膜使用に問題がないことが確認されている。
【0019】
上記現像廃液の処理システム1は、エバポレータ11の前段にRO膜装置21を有することから、RO膜装置21によって被処理液を濃縮することができる。例えば、被処理液を処理した場合、被処理液のTMAH濃度が1質量%の場合、RO膜装置21によって3倍に濃縮して3質量%にし、さらにエバポレータ11によって濃縮して25質量%にする。すなわち、エバポレータの濃縮水量は従来の1/3ですむ。
このように、エバポレータ11によって濃縮する水量が低減されるため、1台のエバポレータ11によって濃縮できる被処理液の処理量を増加させることが可能になる。この結果、装置コストのかかるエバポレータ11を増設することなく、被処理液の処理量を増加させることができるため、低コストにて効率良く被処理液の濃縮処理ができるようになる。
【0020】
上記RO膜装置21のRO膜21Fは、フォトレジストを含む被処理液を長時間にわたって濃縮処理した場合、RO膜21Fの給水側21Sにフォトレジストが付着し、透過水量が減少することがある。このような場合、RO膜装置21のRO膜21Fの給水側21Sを、TMAH新液(TMAHを含有する未使用液)及び/又は該RO膜装置21によって被処理液を処理して得た透過水を、少なくとも利用して洗浄する洗浄システム100(100A)が有効となる。すなわち、洗浄システム100によってRO膜21Fの濃縮側21Cに付着したレジストを除去することができる。この結果、被処理液の処理において低下した透過流束を回復させることができ、透過水量の低下を回復させることができる。
上記洗浄液は、TMAHを含むようにして用いることが好ましい。通常、RO膜21Fの給水側に付着するのは、主に現像によって溶解されたレジストであることから、洗浄液にTMAHを含むことによってレジストを溶解状態にして除去し易くなる。
【0021】
次に、洗浄システムについて説明する。
上記現像廃液の処理システム1Aの場合、洗浄システム100Aは、前述の、被処理液供給系30と共通の洗浄液供給系30A、濃縮水戻し系40A及び透過水戻し系60Aによって構成される。
上記洗浄液供給系30Aは、前述の被処理液供給系30の構成と同様である。濃縮水戻し系40Aは、RO膜装置21に接続し、液槽31に通じるもので、濃縮水配管41及び濃縮水戻し配管46で構成される。なお濃縮水配管41は、RO膜装置21の濃縮側21Cから濃縮水戻し配管46が接続される部分までである。濃縮水戻し配管46には、冷却器91を配することが好ましい。また、透過水戻し系60Aは、RO膜装置の透過側に接続する透過水配管61の一部と、透過水配管61から分岐して液槽31に通じる透過水戻し配管66で構成される。なお透過水配管61は、RO膜装置21の透過側21Tから透過水戻し配管66が接続される部分までである。
このように、洗浄システム100Aは、液槽31を中心に、濃縮水戻し系40Aと透過水戻し系60Aとによる、液槽31に供給したTMAH新液の全量循環系になっている。
【0022】
次に現像廃液の処理システム1(1A)の計測機器について説明する。
液供給配管32には、移送手段33とRO膜装置21との間に、配管内を流れる液を採取する液採取配管34が、バルブ35を介して接続されることが好ましい。また、液供給配管32には、液採取配管34とRO膜装置21との間に圧力計81が配されることが好ましい。
濃縮水配管41には、RO膜装置21と濃縮水槽42との間に、配管内を流れる液を採取する濃縮水採取配管44が接続され、濃縮水採取配管44にバルブ45が配されることが好ましい。また、濃縮水配管41には、濃縮水採取配管44の分岐点とRO膜装置21との間に圧力計82が配されることが好ましい。さらに濃縮水配管41には、濃縮水戻し配管46の濃縮水配管41との分岐点と濃縮水槽42との間に、流量計86が配されることが好ましい。
濃縮水戻し配管46には、濃縮水戻し配管46の濃縮水配管41との分岐点と冷却器91との間に流量計87が配されることが好ましい。
透過水配管61には、RO膜装置21と透過水槽62との間に、配管内を流れる液を採取する透過水採取配管64が接続され、透過水採取配管64にバルブ65が配されることが好ましい。また、透過水配管61には、透過水採取配管64と透過水槽62との間に、流量計88が配されることが好ましい。
【0023】
液採取配管34、濃縮水採取配管44及び透過水採取配管64(以下、採取配管ともいう)には、pH計、TMAH濃度計、レジスト吸光度測定装置、等を接続してもよい。
【0024】
上記液供給配管32、濃縮水配管41、及び透過水配管61内を流れる液は、上記各採取配管34、44、64に配したバルブ35、45、65を開放することによって、各分採取配管34、44、64からサンプルを取得することが可能になる。通常は、各バルブ35、45、65は閉じておき、サンプル採取時に開放する。
各圧力計81、82、83には、一般圧力計、デジタル圧力計、隔膜式圧力計、等を用いることができ、高アルカリ耐性、高圧という観点から隔膜式圧力計が好ましい。例えば、長野計器株式会社製SC型(商品名)が挙げられる。
各流量計86、87、88には、面積式流量計、羽根車式流量計、電磁式流量計、等を用いることができ、構造が簡単であり、材質で耐pHを担保できるという観点から面積式流量計が好ましい。このような流量計として、東京計装株式会社製パージメータ(商品名)が挙げられる。
【0025】
以下、主要構成部品について説明する。
エバポレータ11は、減圧することによって固体又は液体を積極的に蒸発させる機能をもつ装置である。具体的には、蒸気などの熱源によって加温された蒸発缶の内部を、真空ポンプ等で減圧することによって排水の水分を蒸発しやすくする装置であり、一般に排水の減容化などで用いられる装置である。例えば、株式会社ササクラ社製VVCC濃縮装置(商品名)が挙げられる。
【0026】
上記RO膜装置21は特に制限されず、高圧型、中圧型、低圧型、超低圧型のいずれのRO膜装置であってもよいが、上述したようなTMAHの除去率が99.5質量%以上、フォトレジストの除去率が99.5質量%以上である高圧型のRO膜を用いることが好ましい。
【0027】
液槽31は、被処理液としてフォトレジスト含有現像廃液又は洗浄液が貯蔵されるものである。フォトレジスト含有現像廃液は、現像液のTMAH、溶解したフォトレジスト及び水の混合液である。またフォトレジスト含有現像廃液に由来する液も含まれる。フォトレジスト含有現像廃液に由来する液としては、具体的には、RO膜装置21から生成される濃縮水、RO膜装置21から生成される透過水、等が挙げられる。
【0028】
液槽31からRO膜装置21へ溶液を送る液移送手段33には、強アルカリ溶液の現像廃液を送るため、少なくとも流路は耐アルカリ性材料で構成されていることが好ましい。例えば、流路が金属、耐アルカリ材料製の高圧ポンプが挙げられる。例えば、株式会社ニクニ社製プロセスポンプ(商品名)が挙げられる。
【0029】
濃縮水槽42は、RO膜装置21によって生成された濃縮水を一時的に貯蔵する槽であり、現像液を含む液を用いてRO膜21Fを洗浄した場合の洗浄後の液が含まれてもよい。そのため、耐アルカリ性を有することが好ましい。また、RO膜装置の透過水又はRO膜装置の濃縮水を用いてRO膜21Fを洗浄した後の液が含まれてもよい。
【0030】
透過水槽62は、RO膜装置21によって生成された透過水を一時的に貯蔵する槽である。槽内の透過水はTMEH成分の濃度が極めて低く、透過水移送手段63を稼働させて槽内の透過水をそのまま希薄TAAH排水処理設備93に送ることが可能である。
【0031】
液移送手段33は、例えば、圧送ポンプを用いることが好ましい。圧送ポンプは、強アルカリ溶液の現像廃液を含む被処理液を送るため、少なくとも流路やポンプ内部品は耐アルカリ性材料で構成されていることが好ましい。例えば、株式会社ニクニ社製プロセスポンプが挙げられる。
【0032】
濃縮水移送手段43は、例えば、上記液移送手段33と同様の圧送ポンプを用いることが好ましい。
【0033】
透過水移送手段63は、例えば、圧送ポンプを用いることが好ましい。圧送ポンプは、アルカリ溶液の透過水を送るため、少なくとも流路やポンプ内部品は耐アルカリ性材料で構成されていることが好ましい。例えば、株式会社イワキ社製マグネットポンンプ(商品名)が挙げられる。
【0034】
次に、
図1に示した現像廃液の処理システムによる現像廃液の処理方法の好ましい一例を説明する。
現像廃液を処理する場合、液槽31に現像廃液を供給し、液移送手段33によって、液槽31中の現像廃液をRO膜装置21に送り込む。RO膜装置21のRO膜21Fを透過した透過水は、透過水配管61を通して透過水槽62へと移送され、透過水槽62の透過水をさらに透過水移送手段63によって希薄TAAH排水処理設備93に送ることが好ましい。
一方、RO膜装置21によって生成された濃縮水は、濃縮水配管41を通して一部を濃縮水槽42に供給され、濃縮水移送手段43によってエバポレータ11に送って、さらに濃縮する。残りの濃縮水は、濃縮水配管41から濃縮水戻し配管46を通して液槽31に戻す。液槽31に戻した濃縮水と濃縮水槽42に供給した濃縮水の割合は、バルブ47、48の開度を調整し、目的の応じて適宜に調節することができる。図示はしていないが、例えば、流量計86、87の流量値をフィードバックしながらバルブ47、48の開度を調整して所望の流量値に調整することが好ましい。
このようにして、濃縮水の一部を液槽31に戻すことによって、RO膜21Fに供給される水量がRO膜21Fの最低濃縮水量より多くなるようにすることが好ましい。この場合、液移送手段33によって現像廃液が加温されるが、冷却器91によって冷却されるため、液槽31に戻される濃縮水は例えば常温にされることが好ましい。通常、レジスト膜の現像工程では、現像液を加温することや洗浄液の純水を加温することは行われていないため、現像廃液は常温になる。したがって、液槽31に戻す濃縮水が冷却されるため、濃縮水を液槽31に戻しても液槽31内の液温が高くなり過ぎることが避けられる。
【0035】
例えば、現像廃液の処理方法の具体的な一例を、
図2に示したマスバランスによって説明する。以下の流量、質量%、pH等の数値は一例であり、これらの数値に限定されるものではない。
現像廃液は、例えば、TMAH濃度が0.476質量%であり、pHは12以上、レジスト濃度(波長290nmの吸光度、光路長さ10mm)は0.660であり、流量200L/hにて液槽31に供給水(RO原水)として供給される。以下、レジスト濃度は、波長290nmのときの吸光度をいう。また、RO膜装置21によって得られた現像廃液の濃縮水の一部(循環水)、520L/hを上記現像廃液に混合して、RO膜装置21への供給水の水量を720L/hにする。これにより、RO膜装置21の濃縮水が最低濃縮水量(例えば600L/h)以上となる600L/hになるようにし、透過水を120L/hになるようにする。
【0036】
例えば、RO膜装置21に供給される供給水のTMAH濃度は0.989質量%、pHは12以上、レジスト濃度は1.347である。そして、RO膜装置21の濃縮水のTMAH濃度は1.185質量%、pHは12以上、レジスト濃度は1.518である。RO膜装置21の透過水のTMAH濃度は0.003質量%、pHは10.4以上、レジスト濃度は0.000である。
上記濃縮水は、全量を液槽31に戻すのではなく、例えば、520L/hを戻し、残りの80L/hは濃縮水のブロー水として濃縮水槽42に送る。
上記例におけるpH,TMAH濃度、レジスト濃度をまとめると表1のようになる。
【0037】
【0038】
このようにして、常に現像廃液を200L/hを供給し、透過水として120L/h、濃縮水として80L/hを排出することで、残りの濃縮水520L/hを液槽31に戻す。
「現像廃液」200L/hに対して濃縮水槽42に送る濃縮水(濃縮ブロー水:排出側)を80L/hとしたため、200/80=2.5倍濃縮の運転条件となる(レジスト濃度もほぼ2.5倍濃縮になる。)。
上記の場合、2.5倍濃縮を目標にしたため、上記のようなマスバランスになる。このように濃縮水戻し系40によって濃縮水の一部を戻して、RO膜装置21に供給される供給水の流量を最低濃縮水量以上である720L/hに維持することによって、マスバランスをとることが好ましい。
すなわち、RO膜装置21を安定運転させるために必要な水量確保するとともに目標濃縮倍率になるように各液量をバランスさせることが好ましい。なお、上記各流量は一例であって、上記流量値に限定されるものではない。
【0039】
図3に示すように、現像廃液の処理時間の経過とともにRO膜にレジストが詰まるなどして、透過流束は減少し、運転圧は上昇する。そこで、例えば、透過流束及び/又は運転圧がしきい値になったときにRO膜21Fの洗浄を行うことがと好ましい。また、例えば、現像廃液の処理時間が所定時間(例えば、1200時間)を経過したときに、RO膜21Fの洗浄を行うことが好ましい。そして洗浄を行うことによって、透過流束及び運転圧を初期状態に戻すことができる。したがって、RO膜21Fの洗浄は定期的に行うことが好ましい。RO膜21Fの仕様にもよるが、例えば、透過流束が初期状態の60%程度(例えば0.4m/d以下)になった時にRO膜21Fの洗浄を行うことが好ましい。又は運転圧が初期状態の1.5倍程度(例えば1.8MPa以上)になった時にRO膜21Fの洗浄を行うことが好ましい。
【0040】
次に、RO膜装置21のRO膜21Fの洗浄方法の好ましい一例を説明する。
RO膜装置21のRO膜21Fを洗浄する場合、一旦、RO膜装置21の系内の現像廃液をすべて排出する。このとき、濃縮水槽42内の現像廃液を処理した濃縮水及び透過水槽62内の現像廃液を処理した透過水も排出し、各配管も含めて、液槽31、RO膜装置21、濃縮水槽42、透過水槽62のそれぞれの内部を空にする。そして、液槽31にTMAH新液を供給する。次いでバルブ68を閉じ、バルブ67を開放して、透過水戻し系60を開通させる。また、バルブ48を閉じて、バルブ47を開放して、濃縮水戻し系40を開通させる。このように、液槽31から洗浄液供給系30A、RO膜装置21の濃縮側21C、濃縮水配管41、濃縮水戻し配管46を通って液槽31に戻る濃縮水戻し系40を開通させる。それとともに、液槽31から洗浄液供給系30A、RO膜装置21の透過側21T、透過水配管61、透過水戻し配管66を通って液槽31に戻る透過水戻し系60とを開通させて、洗浄液の全量を循環させるようにすることが好ましい。
【0041】
具体的には、まず現像廃液が除去された液槽31にTMAH新液を洗浄液として供給する。この供給量はRO膜21Fの最低濃縮水量以上であることが好ましい。TMAH新液は、レジスト膜現像に使用されていない例えばTMAH濃度が2.38質量%の通常のTMAH現像液を用いることができ、また、これより高濃度のTMAH現像液を用いることもできる。洗浄液におけるTMAH濃度は適宜変更可能である。このTMAH新液を液移送手段33によってRO膜装置21に送り、RO膜21Fの給水側を洗浄する。この場合、TMAH新液を無駄なく使用するため、またRO膜21Fの最低濃縮水量を確保するために、RO膜装置21を透過した洗浄液を液槽31に戻すことが好ましい。それとともに、濃縮側21Cから排出される濃縮水も全量を液槽31に戻すことが好ましい。こうすることで、RO膜装置21に供給される液量をRO膜21Fの最低濃縮水量以上に確保することが好ましい。
【0042】
上記洗浄時間は一例として4時間であることが好ましい。例えば50LのTMAH新液を液槽31に供給しておき、濃縮水戻し系40と、透過水戻し系60とを用いて循環させて液槽31に戻す。このとき、最低濃縮水量が確保されるように、洗浄液を循環させる。そして再び、同様にして洗浄液を循環させる。これを繰り返し4時間行うことが好ましい。上記
図1によって説明した洗浄方法によって4時間洗浄した結果、洗浄時間に対する洗浄液のTMAH濃度及びRO膜装置21への供給水としての洗浄液のレジスト濃度の変化を表2及び
図4に示す。
表2及び
図4に示すように、洗浄液にはTMAH新液としてTMAH濃度が例えば2.50質量%のものを用いる。洗浄開始から例えば0.25時間後には、系内に残っていたTMAH濃度の薄い現像廃液が混入してTMAH濃度が下がることがある。通常、現像液のTMAH濃度は2.38質量%であるから、洗浄液のTMAH濃度が下がることがある。その後はTMAH濃度がほぼ一定になって安定する。
【0043】
洗浄液の流量は、RO膜装置21直前の流量(流量計(図示せず)による測定)がRO膜21Fの最低濃縮水量以上であることが好ましい。例えば、上記濃縮水は、濃縮水のブロー水として濃縮水槽42に送ることなく全量を液槽31に戻す。例えば、濃縮水循環水として600L/hを戻す。さらに、透過水も全量液槽31に戻す(全量循環する)ことが好ましい。このように、濃縮水も透過水も全量循環しても、RO膜21Fの最低濃縮水量が確保されているため、RO膜21Fにおいて高濃縮化する懸念はない。
【0044】
また、RO膜装置21直前の液採取配管34から採取して測定した洗浄液中のレジスト濃度は、洗浄開始時には0であり、洗浄を進めていくに従い高くなるが、表2及び
図4に示すように、洗浄開始から3~4時間後には濃度上昇がほぼ収まる。このようにレジスト濃度の増加がほぼなくなることは、洗浄によってレジスト除去がほとんど進まなくなっていることを意味している。言い換えれば、洗浄によって除去されるレジストが無くなっていることを意味している。すなわち、洗浄ができていることを示している。そのため、洗浄時間は例えば4時間とすることが好ましい。洗浄時間は、洗浄液のTMAH濃度、洗浄液流量等によって変わるが、4時間行えば十分な洗浄効果が得られるといえる。
【0045】
【0046】
上記洗浄は、TMAH新液を用いた洗浄であるため、洗浄後に洗浄に用いた現像液を除去した後に純水洗浄を行う必要はなく、洗浄工程後、すぐに現像廃液の処理を行うことができる。一例として表3に示すように、現像廃液抜きに0.25時間、洗浄液投入に0.25時間、洗浄に4時間、洗浄液抜きに0.25時間が必要であり、合計して4.75時間の洗浄時間が必要になるだけである。一方、洗浄液に強アルカリの水酸化ナトリウム溶液を用いることもできるが、この場合、一例として表3に示すように、洗浄後に純水洗浄を10時間程度行って、系内にナトリウムが残らないようにする必要がある。例えば、現像廃液抜きに0.25時間、洗浄液投入に0.25時間、洗浄に4時間、洗浄液抜きに0.25時間、純水投入に0.25時間、系内純水洗浄に10時間、純水洗浄液抜きに0.25時間が必要であり、合計して15.25時間の洗浄時間が必要になる。
【0047】
【0048】
上記純水洗浄では、ナトリウム濃度をできる限り0質量%に近づけるように、例えば0.005質量%以下にすることが求められる。そのためには、表4及び
図5に示すように、少なくとも10時間程度の純水洗浄が必要になる。ナトリウムイオンは、ごくわずかな量であっても、例えばMOSトランジスタにおいてゲート酸化膜中に存在するとリーク電流を発生させ、トランジスタのスイッチング特性を悪化させることになる。場合によっては、ソース、ドレイン間に電流が常時流れた状態になり、トランジスタとして機能しなくなる。このように、ナトリウムイオンは、半導体装置の性能を劣化させることになるため、一般に、半導体製造工程に戻すことなく、洗浄系内から除去することが必須となっている。
【0049】
【0050】
上記
図1に示した洗浄システム100Aを用いた洗浄を行った場合、洗浄液として、TMAH新液(レジスト濃度0.000)を用いるため、洗浄液のレジスト濃度が現像廃液のように高くならない。洗浄液は、洗浄液透過水を排出すると追加の液が必要になるため、洗浄液のRO膜透過水及び濃縮水も液槽に戻して再利用する。これによって、RO膜21Fの洗浄流量が確保される。また、洗浄液濃縮水はTMAH新液を逆浸透膜装置に通した後の濃縮水であるから、現像廃液処理時に排出される濃縮水よりもレジスト濃度は低くなっている。したがって、TMAH新液と洗浄液透過水と洗浄液濃縮水とを合わせた洗浄液は、洗浄液濃縮水が加わってもレジスト濃度が約1.1と運転時のRO濃縮水より低く、逆浸透膜21Fの濃縮側表面からレジストを除去する能力を十分に有する。以下、洗浄液をRO膜装置21に通して濃縮側21Cから排出された濃縮水を洗浄液濃縮水と称す。
【0051】
なお、RO膜装置21によって生じたTMAH新液の濃縮水を液槽31に戻さない場合、洗浄液量を確保するためにTMAH新液の供給量を多くする必要が生じる。また洗浄時においては、RO膜装置21の濃縮側21Cから生成された洗浄液濃縮水が濃縮水槽42に供給されると、濃縮水槽42に貯液される現像廃液を処理して得た濃縮水の濃度が薄まることになる。そのため、洗浄液濃縮水は液槽31に全量戻すことが好ましい。このようにして、RO膜21Fの最低濃縮水量以上に濃縮水量が排出できるようにRO膜装置21への洗浄液の供給水量を確保することが好ましい。
【0052】
このように本発明によれば、フォトリソグラフィ工程で生じるTAAHを含む現像廃液の処理システムであって、逆浸透膜装置を含んで構成されるシステムの一部を、該逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するための洗浄システムとしても利用する現像廃液の処理システムが提供される。実施形態1において当該処理システムは、
(a-1)フォトリソグラフィ工程で生じる現像廃液を貯留する液槽と、
(b-1)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-1)該液供給配管の他端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する逆浸透膜装置と、
(d-1)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続された濃縮水配管と、
(e-1)該濃縮水配管に接続され、上記液槽に上記逆浸透膜装置の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-1)上記逆浸透膜装置の透過側に一端が接続された透過水配管と、
(g-1)該透過水配管の他端に接続された希薄TAAH排水処理設備と、
(h-1)該透過水配管に接続され、上記液槽に上記逆浸透膜装置の透過水を供給する透過水戻し配管と
を有し、
上記洗浄システムは、上記液槽にTAAH新液を供給し、上記(a-1)~(d-1)及び(e-1)により形成される循環系と、上記(a-1)~(c-1)、(f-1)及び(h-1)により形成される循環系の両循環系に該TAAH新液を循環させて、上記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである。
【0053】
次に、洗浄システム100(100B)を備えたTAAH含有液の処理システムとして現像廃液の処理システム1(1B)の好ましい実施形態(実施形態2)を参照して説明する。
図6に示すように、現像廃液の処理システム1Bは、上述の現像廃液の処理システム1Aにおいて、透過水戻し配管66の分岐位置と、バルブ67、68の配置が変更された以外、現像廃液の処理システム1(1A)と同様なる構成を有する。
すなわち、透過水戻し系60は、透過水槽62の下流側の透過水配管61に配した透過水移送手段63から分岐して液槽31に透過水を供給する。透過水移送手段63の他方には透過水配管61が希薄TAAH排水処理設備93に接続されている。
透過水戻し配管69は、透過水移送手段63の下流側にバルブ70を有することが好ましい。また、透過水移送手段63の下流側の透過水配管61にバルブ71を有することが好ましい。現像廃液を処理する場合には、バルブ71は開放し、バルブ70は閉じられる。一方、洗浄の場合には、逆にバルブ70は開放し、バルブ71は閉じられる。このように、液槽31から洗浄液供給系30B、RO膜装置21の透過側21T、透過水配管61、透過水槽62及び透過水戻し配管69を通って液槽31に戻る透過水戻し系60(60B)(透過側の循環系)が構成される。なお、濃縮水循環系は前述の実施形態1と同様である。また、現像廃液の処理は、現像廃液の処理システム1Aと同様である。
【0054】
上記洗浄システム100Bにおいては、洗浄液として、TMAH新液を用いる。そして洗浄時に透過水槽62に溜めたRO膜装置21を透過した透過水も用いる。そのため、洗浄液のレジスト濃度は例えば0.002であり、レジスト濃度が十分に低い。このように洗浄液透過水を透過水槽62に溜めることによって、洗浄液が不足した場合に、透過水量よりも多く液槽31に供給することで、RO膜装置21の最低濃縮水量を確保することができる。さらに洗浄液は、TMAH新液と洗浄液透過水だけでは十分な流量が確保できないため、洗浄液をRO膜処理した濃縮水も液槽31に戻して再利用する。これによって、液槽31に供給したTMAH新液の全量を効率良く利用することができ、RO膜21Fの最低濃縮水量(洗浄流量)が確保される。
また、濃縮水は洗浄液をRO膜装置21に通した後の洗浄液濃縮水であるため、現像廃液処理時に排出される濃縮水よりもレジスト濃度は格段に低くなる。しかも洗浄液濃縮水は、TMAH新液と洗浄液透過水と合わせて洗浄液とするため、レジストが含まれるが、そのレジスト濃度は現像廃液よりも格段に低くなる。そのため、RO膜21F表面(給水側21S)からレジストを除去する十分な能力を有する。以下、洗浄液をRO膜装置21に通して透過側21Tから排出された透過水を洗浄液透過水と称す。
【0055】
上記のように、洗浄システム100Bに濃縮水戻し系40Bを規定しないと、洗浄液量を確保するために透過水槽62からの透過水の供給量を多くするか、TMAH新液の供給量を多くする必要が生じる。
また濃縮側21Cから生成された洗浄液濃縮水が濃縮水槽42に供給されると濃縮水槽42に貯液される濃縮水は濃度が薄いものになる。そのため、洗浄の場合の濃縮水は液槽31に全量戻すことが好ましい。このようにして、RO膜21Fの最低濃縮水量以上に濃縮水量が排出できるようにRO膜装置21への洗浄液の供給水量を確保することが好ましい。
【0056】
上記洗浄は、TMAH新液及び現像廃液をRO膜装置で処理した透過水を用いた洗浄であるため、洗浄後に純水洗浄を行う必要はなく、洗浄工程後、すぐに現像廃液の処理を行うことができる。
【0057】
上記のように、本発明のTAAH含有液の処理システムとしての現像廃液の処理システムの実施形態2において、現像廃液の処理システムは、
(a-2)フォトリソグラフィ工程で生じる現像廃液を貯留する液槽と、
(b-2)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-2)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置と、
(d-2)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-2)該濃縮水配管に接続され、上記液槽に上記逆浸透膜装置の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-2)上記逆浸透膜装置の透過側に一端が接続された透過水配管と、
(g-2)該透過水配管の途中に配された透過水槽と、
(h-2)該透過水配管の他端に接続された希薄TAAH排水処理設備と、
(i-2)上記透過水槽と上記希薄TAAH排水処理設備との間に位置する上記透過水配管に接続され、上記液槽に上記逆浸透膜装置の透過水を供給する透過水戻し配管と
を有し、
上記洗浄システムは、上記液槽にTAAH新液を供給し、上記(a-2)~(d-2)及び(e-2)により形成される循環系と、上記(a-2)~(c-2)、(f-2)、(g-2)及び(i-2)により形成される循環系の両循環系に該TAAH新液を循環させて、上記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである。
【0058】
次に、洗浄システム100(100C)を備えたTAAH含有液の処理システムとしての現像廃液の処理システム1(1C)の好ましい実施形態(実施形態3)を参照して説明する。
図7に示すように、現像廃液の処理システム1Cは、主に、前述の現像廃液の処理システム1A及び1Bを組み合わせた構成である。すなわち、透過水配管61に配した透過水槽62に接続する別の透過水戻し配管69を配する。別の透過水戻し配管69に、透過水槽62中の透過水を濃縮する別のRO膜装置72と、別のRO膜装置72の濃縮水を一時的に貯液する透過水濃縮水槽73とを配する。
別の透過水戻し配管69は別のRO膜装置72の濃縮側72Cから透過水濃縮水槽73に接続する。別の透過水戻し配管69は、透過水濃縮水槽73に直接接続されてもよく、図示したように、透過水濃縮水槽73の上流側の透過水戻し配管66に接続されてもよい。この透過水戻し配管66は、前述の現像廃液の処理システム1Aの透過水戻し配管66と同様のものであることが好ましい。
この透過水戻し配管66には上記透過水濃縮水槽73が配され、さらに液槽31側に透過水移送手段75が配されることが好ましい。別のRO膜装置72の透過側72Tには別の透過水配管74が希薄TAAH排水処理設備93に接続されることが好ましい。
透過水戻し配管66は、透過水戻し配管66との分岐の下流側にバルブ67を有することが好ましい。また、透過水戻し配管66との分岐の下流側の透過水配管61にバルブ68を有することが好ましい。現像廃液を処理する場合には、バルブ68を開放し、バルブ67を閉じる。またバルブ71を開放し、バルブ70を閉じる。一方、洗浄の場合には、逆にバルブ67を開放し、バルブ68を閉じる。このように、液槽31から洗浄液供給系30C、RO膜装置21の透過側21T、透過水配管61、透過水戻し配管66及び透過水濃縮水槽73を通って液槽31に戻される透過水戻し系60C(透過側の循環系)が構成される。
その他の構成は、現像廃液の処理システム1A、1Bと同様である。また、現像廃液の処理は、現像廃液の処理システム1Aと同様である。
【0059】
上記洗浄システム100Cにおいては、洗浄液として、透過水槽62に溜めた現像廃液のRO膜透過水を用いる。そのため、洗浄液のレジスト濃度は例えば0.027であり、レジスト濃度が十分に低い。しかも、別のRO膜装置72を通すため、透過側72Tに水分が透過され、濃縮側72CにTMAH濃度が高められる。したがって、TMAH濃度が高められた濃縮水が得られる。
また洗浄中にはRO膜装置21を透過した洗浄液透過水も透過水槽62に溜めて、洗浄液として再利用することが好ましい。しかし、洗浄中、洗浄液透過水だけでは十分な流量が確保できないため、洗浄液をRO膜処理した洗浄液濃縮水も液槽31に戻して洗浄液として再利用することが好ましい。これによって、RO膜21Fの最低濃縮水量(洗浄流量)が確保される。
【0060】
また、洗浄液濃縮水は洗浄液をRO膜装置21に通した後の濃縮水であるため、現像廃液処理時に排出される濃縮水よりもレジスト濃度は格段に低くなる。しかも洗浄液濃縮水は、洗浄液透過水と合わせて洗浄液とするため、レジストを含むが、そのレジスト濃度は現像廃液よりも格段に低くなり、RO膜21表面(RO膜21Fの濃縮側21C)からレジストを除去する十分な能力を有する。
【0061】
上記のように、洗浄システム100Cに濃縮水戻し系40Cを設けないと、洗浄液量を確保するために透過水槽62からの透過水の供給量を多くする必要が生じる。
また濃縮側21Cから生成された洗浄液濃縮水が濃縮水槽42に供給されると、現像廃液を処理して得た濃縮水の濃度よりも、濃縮水槽42に貯液される濃縮水は濃度が薄いものになる。そのため、洗浄の場合の濃縮水は液槽31に全量戻すことが好ましい。このようにして、RO膜21Fの最低濃縮水量以上に濃縮水量が排出できるようにRO膜装置21への洗浄液の供給水量を確保することが好ましい。
【0062】
上記洗浄は現像廃液をRO膜装置21で処理した透過水を用いた洗浄であるため、現像廃液の処理システム1C内の洗浄液を除去して純水洗浄を行う必要はなく、洗浄工程後、すぐに現像廃液の処理を行うことができる。
【0063】
上記のように、本発明のTAAH含有液の処理システムとしての現像廃液の処理システムの実施形態3において、現像廃液の処理システムは、
(a-3)フォトリソグラフィ工程で生じる現像廃液を貯留する液槽と、
(b-3)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-3)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置(Y)と、
(d-3)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-3)該濃縮水配管に接続され、上記液槽に上記逆浸透膜装置(Y)の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-3)該逆浸透膜装置(Y)の透過側に一端が接続された透過水配管(P)と、
(g-3)該透過水配管(P)の途中に配された透過水槽と、
(h-3)該透過水配管(P)の他端に接続された希薄TAAH排水処理設備と、
(i-3)上記逆浸透膜装置(Y)と上記透過水槽との間に位置する上記透過水配管(P)に接続され、上記液槽に上記逆浸透膜装置(Y)の透過水を供給する透過水戻し配管(I)と、
(j-3)該透過水戻し配管(I)の途中に配した透過水濃縮水槽と、
(k-3)上記透過水槽と上記希薄TAAH排水処理設備との間に位置する上記透過水配管(P)から分岐し、上記逆浸透膜装置(Y)と上記透過水濃縮水槽との間に位置する上記透過水戻し配管(I)に接続する別の透過水戻し配管(II)と、
(l-3)該別の透過水戻し配管(II)の途中に配された別の逆浸透膜装置(Z)と、
(m-3)該別の逆浸透膜装置(Z)の透過側と上記の希薄TAAH排水処理設備とを接続する別の透過水配管(Q)とを有し、
上記洗浄システムは、上記液槽に上記逆浸透膜装置(Y)の透過水を上記別の逆浸透膜装置(Z)にて濃縮した濃縮水(X)を供給し、上記(a-3)~(d-3)及び(e-3)により形成される循環系と、上記(a-3)~(c-3)、(f-3)、(i-3)及び(j-3)により形成される循環系の両循環系に上記濃縮水(X)を循環させて、上記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである。
【0064】
次に、洗浄システム100(100D)を備えたTAAH含有液の処理システムとしての現像廃液の処理システム1(1D)の好ましい実施形態(実施形態4)を参照して説明する。
図8に示すように、現像廃液の処理システム1Dは、前述の現像廃液の処理システム1Aの濃縮水戻し系40Aと同様の濃縮水戻し系40Dに、濃縮水槽42の濃縮水を濃縮水戻し配管46に供給する濃縮水透過系50を組み込んだ構成である。すなわち、濃縮水透過系50の濃縮水透過配管51は、濃縮水移送手段43とエバポレータ11との間の濃縮水配管41から分岐し、冷却器91と流量計87との間に濃縮水戻し配管46に接続することが好ましい。
濃縮水透過配管51には、濃縮水配管41との分岐側から順に、ナノ濾過(NF)装置52、NF透過水槽53、NF透過水移送手段54を配することが好ましい。また濃縮水透過配管51がNF装置52の透過側に接続し、NF装置52の濃縮側21Cにエバポレータ11に接続する濃縮水配管55を接続することが好ましい。
濃縮水透過配管51は濃縮水配管41との分岐側にバルブ56を配し、濃縮水配管41は濃縮水透過配管51との分岐点よりエバポレータ11側にバルブ57を配することが好ましい。
このように、液槽31から洗浄液供給系30D、RO膜装置21の濃縮側21C、濃縮水配管41及び濃縮水戻し配管46を通って液槽31に戻る濃縮水戻し系40D(濃縮水循環系)が構成される。
その他の構成は、現像廃液の処理システム1Aと同様である。また、現像廃液の処理は、現像廃液の処理システム1Aと同様である。
【0065】
上記洗浄システム100Dで洗浄する場合、洗浄システム100Aと同様に、まず、洗浄システム100D内のすべての液を除いてから、液槽31に洗浄液としてTMAH新液を供給することが好ましい。洗浄時には、濃縮側のバルブ47及びバルブ48を開放する。開放量は適宜調節する。それとともに、バルブ57を閉じ、バルブ56を開放する。同時に、透過側のバルブ68を閉じ、バルブ67を開放する。
上記洗浄システム100Dでは、洗浄液として、TMAH新液を用いるため、TMAH濃度が高く(例えば、2.38質量%)、RO膜21Fのレジスト洗浄性に優れる。しかしTMAH新液だけでは洗浄液としての流量が不足するため、RO膜装置21から排出した洗浄液透過水を用い、さらにRO膜装置21から排出した洗浄液濃縮水も用いる。洗浄液濃縮水は、濃縮水戻し系40Dによってその一部はそのまま液槽31に戻すが、残部は濃縮水層42に溜める。濃縮水槽42に溜めた洗浄液濃縮水は、NF装置52に通す。NF装置52では、レジストが除去されるとともにTMAH水溶液が透過して、濃縮水透過配管51から濃縮水配管46に供給され、液槽31に送られる。そのため、レジスト濃度が低く(例えば、レジスト濃度0.012)、RO膜装置21によってTMAH濃度が高められた液(例えば、TMAH濃度2.21質量%)が液槽31に供給されることになる。このため、洗浄液濃縮水の一部を直接液槽31に供給しても、レジスト濃度が薄まり、TMAH濃度が高くなる。上記系では、TMAHがほとんど除去されず、NF装置52によってレジストが除去されることから、前述の洗浄液濃縮水の全量を液槽31に戻す場合よりはレジスト濃度が低く(例えば、1/99以下に)なる。このように、洗浄液は、洗浄液透過水だけでは十分な流量が確保できないため、洗浄液をRO膜処理した洗浄液濃縮水も液槽31に戻して洗浄液として再利用する。これによって、RO膜21Fの最低濃縮水量(洗浄流量)が確保される。
なお、洗浄液濃縮水はTMAH新液をRO膜装置21に通した後の濃縮水であるから、現像廃液処理時に排出される濃縮水よりもレジスト濃度は低くなっている。したがって、透過水と濃縮水を合わせた洗浄液は、レジスト濃度が十分低く、逆浸透膜表面からレジストを除去する能力を有する。
【0066】
上記洗浄はTMAH新液を用いた洗浄であるため、現像廃液の処理システム1D内の洗浄液を除去して純水洗浄を行う必要はなく、洗浄工程後、すぐに現像廃液の処理を行うことができる。
【0067】
上記のように、本発明のTAAH含有液の処理システムとしての現像廃液の処理システムの実施形態4において、現像廃液の処理システムは、
(a-4)フォトリソグラフィ工程で生じる現像廃液を貯留する液槽と、
(b-4)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-4)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置と、
(d-4)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続された濃縮水配管と、
(e-4)該濃縮水配管の途中に配された濃縮水槽と、
(f-4)上記逆浸透膜と上記濃縮水槽との間に位置する上記濃縮水配管に接続され、上記液槽に上記逆浸透膜装置の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と、
(g-4)上記濃縮水槽と上記エバポレータとの間に位置する上記濃縮水配管から分岐し、上記濃縮水戻し配管に接続する濃縮水透過配管と、
(h-4)該濃縮水透過配管の途中に配されたナノフィルタ装置と、
(i-4)該濃縮水透過配管の途中に配され、上記ナノフィルタ装置の透過水を貯留するナノフィルタ透過水槽と、
(j-4)上記ナノフィルタ装置の濃縮側に一端が接続され、該ナノフィルタ装置の濃縮水を上記エバポレータに供給するナノフィルタ濃縮水配管と、
(k-4)上記逆浸透膜装置の透過側に一端が接続された透過水配管と、
(l-4)該透過水配管の他端に接続された希薄TAAH排水処理設備と、
(m-4)該透過水配管に接続され、上記液槽に透過水を供給する透過水戻し配管と
を有し、
上記洗浄システムは、上記液槽に、TMAH新液を供給し、上記(a-4)~(e-4)及び(f-4)~(i-4)により形成される循環系と、上記(a-4)~(c-4)、(k-4)及び(m-4)により形成される循環系の両循環系に該TMAH新液を循環させて、上記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである。
【0068】
次に、洗浄システム100(100E)を備えたTAAH含有液の処理システムとしての現像廃液の処理システム1(1E)の好ましい実施形態(実施形態5)を参照して説明する。
図9に示すように、現像廃液の処理システム1Eは、前述の現像廃液の処理システム1Cにおいて、透過水移送手段63と透過水濃縮水槽73との間の別の透過水戻し配管69に、透過水移送手段63側から順に、別のRO膜装置72とNF装置76とを配する。
別のRO膜装置72の給水側72Sに透過水槽62中の透過水を供給する別の透過水戻し配管69を接続し、別のRO膜装置72の濃縮側72Cから別の透過水戻し配管69が上記NF装置76の給水側76Sに接続することが好ましい。別のRO膜装置72の透過側72Tには別の透過水配管74を希薄TAAH排水処理設備93に接続することが好ましい。さらにNF装置76の透過側76Tから別の透過水戻し配管69を上記透過水濃縮槽73に接続することが好ましい。NF装置76の濃縮側76Cは別の濃縮水配管77を介して別の透過水配管74に接続することが好ましい。
別の透過水戻し配管69は、図示したように、透過水戻し配管66を介して透過水濃縮水槽73に接続されてもよい。
このように、液槽31から洗浄液供給系30E、RO膜装置21の透過側21T、透過水配管61、透過水戻し配管66及び透過水濃縮水槽73を通って液槽31に戻る透過水戻し系60E(濃縮側の循環系)が構成される。
その他の構成は、現像廃液の処理システム1Cと同様である。現像廃液の処理システム1Eを用いて現像廃液を処理するには、現像廃液の処理システム1Aと同様にバルブ操作を行うことが好ましい。また、洗浄時には、現像配管の透過水を溜めた透過水槽62から透過水を液槽31に送るため、バルブ71を閉じ、バルブ70を開放することが好ましい。そして、透過水濃縮水槽73にNF膜装置76の透過水が溜まった後、またバルブ68を閉じ、バルブ67を開放するがことが好ましい。
【0069】
上記洗浄システム100Eにおいては、洗浄液として、透過水槽62に溜めた現像廃液の透過水を別のRO膜装置72を通し、その濃縮水をさらにNFフィルタ装置76に通し、その透過水を用いることが好ましい。そのため、現像廃液の透過水は、RO膜装置72によって水分が透過側に排出され、TMAHは濃縮側に残るため、TMAH濃度が高められる。また、このTMAH濃度が高められた液がNFフィルタ装置76を通ることから、TMAHは透過し、レジストは除去される。このため、透過水濃縮水槽73には、TMAH濃度が高められ、レジスト濃度が低減された液として洗浄液が供給されることになる。この洗浄液のレジスト濃度は例えば0.001であり、レジスト濃度が十分に低い。また、別のRO膜装置72を通すことによってTMAH濃度が濃縮され、TMAH濃度が低くなり過ぎるのを抑制することができる。洗浄液は、現像廃液の透過水だけでは十分な流量が確保できないため、洗浄液をRO膜処理した洗浄液濃縮水も液槽31に戻して洗浄液として再利用することが好ましい。これによって、RO膜21Fの最低濃縮水量(洗浄流量)が確保される。
また、洗浄液濃縮水は洗浄液をRO膜装置21に通した後の濃縮水であるため、現像廃液処理時に排出される濃縮水よりもレジスト濃度は低くなる。しかも洗浄液濃縮水は、洗浄液透過水と合わせて洗浄液とするため、レジストを含むが、そのレジスト濃度は現像廃液よりも格段に低くなるため、逆浸透膜表面からレジストを除去する十分な能力を有する。
【0070】
上記のように、洗浄システム100Eに濃縮水戻し系40Eを設けないと、洗浄液量を確保するために透過水槽62からの透過水の供給量を多くする必要が生じる。
また濃縮側21Cから生成された洗浄液濃縮水が濃縮水槽42に供給されると、洗浄後の現像廃液の処理時に、濃縮水槽42に溜められる濃縮水の濃度が薄まることになる。そのため、洗浄の場合の濃縮水は液槽31に全量戻すことが好ましい。このようにして、RO膜21Fの最低濃縮水量以上に濃縮水量が排出できるようにRO膜装置21への洗浄液の供給水量を確保することが好ましい。
【0071】
上記洗浄は現像廃液をRO膜装置21で処理した透過水を用いた洗浄であるため、現像廃液の処理システム1E内の洗浄液を除去して純水洗浄を行う必要はなく、洗浄工程後、すぐに現像廃液の処理を行うことができる。
【0072】
上記のように、本発明のTAAH含有液の処理システムとしての現像廃液の処理システムの実施形態5において、現像廃液の処理システムは、
(a-5)フォトリソグラフィ工程で生じる現像廃液を貯留する液槽と、
(b-5)該液槽の液排出側に一端が接続された液供給配管と、
(c-5)該液供給配管の他端に接続された逆浸透膜装置(Y)と、
(d-5)該逆浸透膜装置の濃縮側に一端が接続され、該逆浸透膜装置の濃縮水をエバポレータに供給する濃縮水配管と、
(e-5)該濃縮水配管に接続され、上記液槽に上記逆浸透膜装置(Y)の濃縮水を供給する濃縮水戻し配管と
(f-5)該逆浸透膜装置(Y)の透過側に一端が接続された透過水配管(P)と、
(g-5)該透過水配管(P)の途中に配された透過水槽と、
(h-5)該透過水配管(P)の他端に配された希薄TAAH排水処理設備と、
(i-5)上記逆浸透膜装置(Y)と上記透過水槽との間に位置する上記透過水配管(P)に接続され、上記液槽に上記逆浸透膜装置(Y)の透過水を供給する透過水戻し配管(I)と、
(j-5)該透過水戻し配管(I)の途中に配した透過水濃縮水槽と、
(k-5)上記透過水槽と上記希薄TAAH排水処理設備との間に位置する上記透過水配管(P)から分岐し、上記逆浸透膜装置(Y)と上記透過水濃縮水槽との間に位置する上記透過水戻し配管(I)に接続する別の透過水戻し配管(II)と、
(l-5)該別の透過水戻し配管(II)の途中に配された別の逆浸透膜装置(Z)と、
(m-5)該別の透過水戻し配管(II)の途中に配され、該別の逆浸透膜装置(Z)の濃縮水を処理するナノフィルタ装置と、
(n-5)該別の逆浸透膜装置(Z)の透過側と上記の希薄TAAH排水処理設備とを接続する別の透過水配管(Q)と、
(o-5)該ナノフィルタ装置の濃縮側と上記別の透過水配管(Q)とを接続するナノフィルタ濃縮水配管とを有し、
上記洗浄システムは、上記液槽に、上記逆浸透膜装置(Y)の透過水を上記別の逆浸透膜装置(Z)にて濃縮し、さらに上記ナノフィルタ装置を透過させた透過水処理水を供給し、上記(a-5)~(d-5)及び(e-5)により形成される循環系と、上記(a-5)~(c-5)、(f-5)及び(i-5)により形成される循環系の両循環系に上記透過水処理水を循環させて、上記逆浸透膜装置が有する逆浸透膜を洗浄するシステムである。
【0073】
上記各現像廃液の処理システム1B~1Eにおいて、現像廃液の処理を行う場合、上記現像廃液の処理システム1Aと同様に、液槽31に現像廃液を供給し、液供給配管32を通してRO膜装置21に送る。RO膜装置21によって現像廃液は濃縮水と透過水とに分離される。その濃縮水の一部は濃縮水戻し系40を通じて、冷却器91によって冷却されてから液槽31に戻される。他方、濃縮水の残部は濃縮水配管41を通じて濃縮水槽42に導かれ、エバポレータ11に送られる。現像廃液の処理においては、バルブ操作によって、洗浄液システム側に現像廃液が流れ込まないようにすることが好ましい。例えば、処理システム1Aではバルブ67を閉じ、処理システム1Bではバルブ70を閉じ、処理システム1C、1Eではバルブ67、70を閉じ、処理システム1Dではバルブ56、67を閉じることが好ましい。
【0074】
上記現像廃液の処理システム1Aについては、マスバランスの一例を示したが、他の現像廃液の処理システム1B~1Eについても、RO膜、NF膜等の膜使用に合わせて、適宜、マスバランスを設定することができる。
【0075】
上記各現像廃液の処理システム1A~1Eにおいて、洗浄システム100A~100Eによって液槽31から供給される洗浄液のレジスト濃度を測定する手段を有することが好ましい。例えば、採取配管34からサンプルを取得し、そのサンプルのレジスト濃度を、吸光光度分析法により、例えば前述の分光光度計を用いて測定することが好ましい。そして測定したレジスト濃度から洗浄状態を検出する洗浄状態検出手段(図示せず)を備えることが好ましい。この洗浄状態検出手段は、例えば、レジスト濃度の上記測定値と、洗浄が必要になるレジスト濃度のしきい値とを比較することによって、洗浄工程を行うか否かを判別するものである。
【0076】
上記現像廃液の処理システム1A~1Eについては、RO膜装置21の処理水量、透過水量、運転圧、膜間差圧(給水側圧力と透過側圧力の差)のいずれか一つ以上を測定することによって、RO膜装置21のRO膜21Fの膜詰まり状態を検出することが好ましい。
検出方法としては、RO膜装置21の処理水量は、流量計86~88とによって測定した流量の合計値から求める。透過水量については流量計88によって測定する。また、運転圧については、圧力計81によって測定する。膜間差圧(給水側圧力と透過側圧力の差)は圧力計81及び83によって測定し、その差圧を求める。
【0077】
上記現像廃液の処理システム1A~1Eにおいては、検出したRO膜21Fの膜の詰まり状態からRO膜装置21の洗浄工程への移行の有無を判別し、洗浄工程への移行が必要な場合にはRO膜装置の洗浄工程に移行することが好ましい。
洗浄工程への移行の有無を判別は、処理水量が初期の60質量%程度になった場合、透過水量が初期の60質量%程度になった場合、運転圧が1.8MPa質量%程度になった場合、膜間差圧が1.8MPa程度になった場合の少なくともいずれかに当たる場合に、洗浄工程に移行することが好ましい。
上記現像廃液の処理システム1A、1Bでは、洗浄液にTMAH新液を用いているが、現像廃液の処理システム1C、1Eでは透過水濃縮水槽73にTMAHを含む濃縮水が保管され、現像廃液の処理システム1DではNF透過水槽53にTMAHを含む透過水が保管され、この保管された液を洗浄液に用いることができる。そのため、現像廃液の処理システム1A、1BよりもTMAH新液の使用量が少なくて済む。また、現像廃液の処理システム1C~1Eでは、廃液中のTMAHをできるだけ回収して洗浄液に用いることを目的とし、それを達成している。なお、現像廃液の処理システム1C~1Eにおいても、TMAH新液を用いることは勿論できる。
【0078】
上記RO膜装置やNF膜装置は1段構成であるが、多段構成であってもよい。この場合、RO膜の場合もNF膜の場合も直列に多段に配することが好ましい。多段のRO膜装置のうち少なくとも一段が高圧RO膜装置であることが好ましい。
【実施例0079】
(実施例1)
実施例1は、
図1に示した現像廃液の処理システム1Aを用いて、現像廃液の濃縮処理とRO膜21Fの給水側21Fの洗浄とを行った。RO膜装置21のRO膜21Fに日東電工社製SWC5海淡膜4inch、膜面積37.1m
2を用いた。なお、このRO膜(SWC5)は、前述したように、pH12程度の連続試験3620時間(約150日)の連続運転であっても材質を含めた膜使用に問題はなかったことが確認できている。
現像廃液を処理したときのマスバランスは、バルブ47、48は開度を調整して、前述の
図2に示したのと同様に設定した。
したがって現像廃液を処理する場合には、バルブ47、48は開度を調整して開放し、バルブ68を開放してバルブ67を閉じた。一方、洗浄工程の場合には、バルブ47を開放してバルブ48を閉じ、バルブ67を開放してバルブ68を閉じた。この状態で現像廃液の処理を継続して行い、透過流束が0.4m/dに近づいた時点で1回の洗浄工程を行った。およそ1200時間の現像廃液の処理工程を3回、その間に洗浄工程を2回行った。1回の洗浄工程は、現像廃液を抜く時間、洗浄液の投入時間、洗浄時間、洗浄液を抜く時間を合わせて4.75時間行った。
現像廃液には、実際に半導体製造において排出された現像廃液を用いた。運転圧を1.8MPa以上とした。
上記のように処理条件を設定して、現像廃液の処理を行った。
RO膜装置21の供給側、濃縮側、透過側の各採取配管34,44、64からサンプルを採取して、試験各液(現像廃液、RO膜供給水、RO膜濃縮水、RO膜透過水)のpH、TMAH濃度、レジスト濃度(290nm吸光度)を求めた。その結果を表1に示した。
現像廃液処理の経過時間と透過流束(m/d)の関係を
図3に示した。現像廃液の処理が進むに従い、透過流束が低下した。透過流束が0.4m/d付近になった時点で洗浄工程に移行し、RO膜の洗浄を実施した。なお、洗浄タイミングの設定は任意で構わない。
洗浄工程を行った結果、
図3に示したように、透過流束、運転圧ともに初期状態に回復した。初期状態とは、現像廃液の処理を開始する直前の状態である。また、現像廃液の濃縮処理、洗浄工程を繰り返し行っても、洗浄工程を行うごとに、透過流束、運転圧ともに初期状態に回復した。このように、洗浄工程を定期的に行うことによって、RO膜21Fの処理能力を回復させるとともに、RO膜21Fの寿命を延ばすことが可能になった。
洗浄液にはTMAH新液としてTMAH濃度が2.50質量%のTMAH現像新液を用いた。TMAH現像新液とはフォトレジストの現像工程に用いる未使用のTMAH現像液である。前述の表2に示したように、洗浄開始から例えば0.25時間後には、系内に残っていたTMAH濃度の薄い現像廃液が混入してTMAH濃度が2.20質量%に下がった。例えばTMAH濃度が低い透過水の混入が考えられる。TMAH濃度が下がった以降、ほぼ下がった値に安定した。
洗浄後の洗浄液はTMAHとレジストと水であるため、洗浄工程後は、洗浄液をそのまま濃縮水槽へ流すことができる。
【0080】
(比較例1)
比較例1は、洗浄工程を行わないこと以外、実施例1と同様にして現像廃液の処理を行った。したがって、RO膜装置21の供給側、濃縮側、透過側の各採取配管34,44、64から採取した現像廃液、RO膜供給水、RO膜濃縮水及びRO膜透過水のpH、TMAH濃度及びレジスト濃度(290nm吸光度)は実施例1と同じ値であった。
現像廃液処理の経過時間と透過流束(m/d)の関係を
図3に示した。現像廃液の処理が進むに従い、透過流束が低下した。透過流束が0.4m/d付近になった時点で透過流束の変化が小さくなった。運転圧は、運転圧が1.8MPa付近になった時点で運転圧の変化が少なくなった。
このように、洗浄工程を行わないと、RO膜21Fの処理能力を回復させることができず、RO膜21Fの交換が必要になった。
【0081】
(比較例2)
洗浄液を2.5質量%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用いた以外、実施例1と同様に洗浄を行った、したがって、洗浄時間は4時間とした。洗浄前後の透過流束は、洗浄前が0.422m/dであり、洗浄後が0.685m/dであった。このように2.5質量%NaOH水溶液洗浄であってもTMAH洗浄の場合と同等の結果となった。しかし透過流束は戻るが、NaOHを除去するための純水洗浄が必要になった。純水洗浄は、回収TMAHにナトリウムイオンの影響が出ないように現像廃液と同等の、ナトリウム濃度が0.005質量%以下になるまで実施した(前述の表4及び
図5参照)。純水洗浄は、系内に純水を流しっ放しにして行った。
洗浄時間は、現像廃液抜きに0.25時間、洗浄液投入に0.25時間、洗浄に4時間、洗浄液抜きに0.25時間、純水投入に0.25時間、系内純水洗浄に10時間、純水洗浄液抜きに0.25時間かかり、合計して15.25時間の洗浄時間を要した(前述の表3参照)。
この結果、本発明の現像廃液の処理システムによるTMAHを用いた洗浄の方が、洗浄工程数が少なく、洗浄時間が短く、効率的に低コストに洗浄が行えることがわかった。
【0082】
(実施例2~5)
実施例2は、
図6に示した現像廃液の処理システム1Bを用いて現像廃液の濃縮処理とRO膜21の洗浄工程を行った。洗浄液には、TMAH新液としてTMAH現像新液を用いた。これ以外の条件は実施例1と同様である。
実施例3は、
図7に示した現像廃液の処理システム1Cを用いて現像廃液の濃縮処理とRO膜21の洗浄工程を行った。洗浄液には、RO膜装置21を透過した現像廃液の透過水を別のRO膜装置72によって濃縮した濃縮水用いた。これ以外の条件は実施例1と同様である。
実施例4は、
図8に示した現像廃液の処理システム1Dを用いて現像廃液の濃縮処理とRO膜21の洗浄工程を行った。洗浄液には、TMAH新液としてTMAH現像新液を用いた。これ以外の条件は実施例1と同様である。
実施例5は、
図9に示した現像廃液の処理システム1Eを用いて現像廃液の濃縮処理とRO膜21の洗浄工程を行った。洗浄液には、RO膜装置21を透過した現像廃液の透過水を別のRO膜装置72によって濃縮し、その濃縮水をNF膜装置76に透過した透過水を用いた。これ以外の条件は実施例1と同様である。
実施例4および5のNF膜には、日東電工社製NF.型式NTR・7450用いた。
各実施例1~5の洗浄の結果を表5に示した。
【0083】
表5に示したように、実施例1~5においては、洗浄液のTMAH濃度が2.20~2.38であった。いずれも、RO膜21Fのレジストを洗浄するのに十分なTMAH濃度であった。また、RO膜21Fに供給する直前のレジスト濃度は0.000~0.027であり、いずれも十分に低い値であった。
透過流束は洗浄後、0.68~0.70に回復した。その回復率は、どの液であっても97%以上にほぼ回復しており、本発明の現像廃液の処理システムによるTMAH洗浄は有効であった。
【0084】
【0085】
本発明をその実施例とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0086】
本願は、2018年10月19日に日本国で特許出願された特願2018-197694に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
前記水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システムは、該処理システムの一部を、前記逆浸透膜装置を含んで構成される循環系とすることができ、該循環系に水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む洗浄液を循環させることにより、該循環系を前記逆浸透膜装置の逆浸透膜を洗浄する洗浄システムとして利用することができる、請求項1~3のいずれか1項に記載の水酸化テトラアルキルアンモニウム含有液の処理システム。