(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178329
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】転写シート及び耐候性物品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170718
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2022052587の分割
【原出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】古田 哲
(72)【発明者】
【氏名】杉田 夏生
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 沙織
(72)【発明者】
【氏名】秋田 泰宏
(57)【要約】
【課題】表面保護層及びプライマー層を含む転写層を備える転写シートから被転写体に転写された転写層において、表面保護層とプライマー層との密着性の低下を長期間抑制する。
【解決手段】離型性基材と転写層とを備える転写シートであって、転写層は、表面保護層及びプライマー層を備え、表面保護層は、離型性基材とプライマー層との間に位置し、表面保護層は、硬化樹脂と、第1波長に吸収ピークを有する第1の紫外線吸収剤と、第1波長より長波長の第2波長に吸収ピークを有する第2の紫外線吸収剤と、第2波長より長波長の第3波長に吸収ピークを有する第3の紫外線吸収剤とを含有する、転写シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型性基材と転写層とを備える転写シートであって、
前記転写層は、表面保護層及びプライマー層を備え、
前記表面保護層は、前記離型性基材と前記プライマー層との間に位置し、
前記表面保護層は、硬化樹脂と、第1波長に吸収ピークを有する第1の紫外線吸収剤と、第1波長より長波長の第2波長に吸収ピークを有する第2の紫外線吸収剤と、第2波長より長波長の第3波長に吸収ピークを有する第3の紫外線吸収剤とを含有する、
転写シート。
【請求項2】
第2波長と第1波長との差が、10nm以上であり、
第3波長と第2波長との差が、10nm以上である、
請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
前記第2波長が、310nm以上330nm以下の範囲にある、請求項1又は2に記載の転写シート。
【請求項4】
前記第1波長が、270nm以上300nm以下の範囲にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の転写シート。
【請求項5】
前記第3波長が、340nm以上370nm以下の範囲にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の転写シート。
【請求項6】
前記表面保護層において、前記第2の紫外線吸収剤の含有量が、前記第1の紫外線吸収剤の含有量より多く、且つ前記第3の紫外線吸収剤の含有量より多い、請求項1~5のいずれか一項に記載の転写シート。
【請求項7】
前記第1の紫外線吸収剤、前記第2の紫外線吸収剤及び前記第3の紫外線吸収剤が、それぞれ独立に、トリアジン系紫外線吸収剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の転写シート。
【請求項8】
前記表面保護層が、前記表面保護層に含まれる前記硬化樹脂100質量部に対して、前記第1の紫外線吸収剤、前記第2の紫外線吸収剤、及び前記第3の紫外線吸収剤を合計で0.5質量部以上10質量部以下含有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の転写シート。
【請求項9】
前記表面保護層が、前記表面保護層に含まれる前記硬化樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上3質量部以下の前記第1の紫外線吸収剤と、0.1質量部以上8質量部以下の前記第2の紫外線吸収剤と、0.1質量部以上3質量部以下の前記第3の紫外線吸収剤と、を含有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の転写シート。
【請求項10】
前記プライマー層が、紫外線吸収剤を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の転写シート。
【請求項11】
前記転写層が、意匠層をさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の転写シート。
【請求項12】
前記転写層が、前記離型性基材側とは反対側の表層として、接着層をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の転写シート。
【請求項13】
外装材の表面の少なくとも一部上に前記転写層を転写するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の転写シート。
【請求項14】
被転写体と、
前記被転写体の表面の少なくとも一部上に設けられた表面保護フィルムと
を備える耐候性物品であって、
前記表面保護フィルムが、請求項1~13のいずれか一項に記載の転写シートにおける前記転写層であり、前記転写層における前記表面保護層が、前記耐候性物品の少なくとも一部の表層を構成する、
耐候性物品。
【請求項15】
前記転写層が接着層を備えるか、又は、
前記転写層と前記被転写体との間に接着層が設けられている、
請求項14に記載の耐候性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写シート及び耐候性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の内装材、建築物の外装材、家具、造作部材、家電製品等の物品に耐傷性及び耐汚染性等を付与するために、該物品の表面に表面保護層を設けることが行われている。表面保護層は、例えば、コーティングにより、又は転写シートを用いて形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば屋外で使用される外装材は、直射日光に曝される環境下におかれることがあるため、耐候性に優れることが望ましい。しかしながら、上述した転写シートを用いて被転写体の表面に表面保護層を設けた場合、表面保護層の剥離が生じるなど、耐候性が充分ではない傾向にある。転写シートは、通常、表面保護層及びプライマー層を含む転写層を備える。本開示者らは、耐候性が充分ではない原因が、直射日光に曝される環境下に長期間おかれた後の表面保護層とプライマー層との密着性が充分ではないことに起因することを見出した。
【0005】
本開示の一つの課題は、表面保護層及びプライマー層を含む転写層を備える転写シートから被転写体に転写された転写層において、表面保護層とプライマー層との密着性の低下を長期間抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の転写シートは、離型性基材と転写層とを備え、転写層は、表面保護層及びプライマー層を備え、表面保護層は、離型性基材とプライマー層との間に位置し、表面保護層は、硬化樹脂と、第1波長に吸収ピークを有する第1の紫外線吸収剤と、第1波長より長波長の第2波長に吸収ピークを有する第2の紫外線吸収剤と、第2波長より長波長の第3波長に吸収ピークを有する第3の紫外線吸収剤とを含有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、表面保護層及びプライマー層を含む転写層を備える転写シートから被転写体に転写された転写層において、例えば直射日光に曝される環境下における表面保護層とプライマー層との密着性の低下を長期間抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の転写シートの一実施形態の模式断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の転写シートの一実施形態の模式断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の耐候性物品の一実施形態の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施することが可能であり、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さ及び形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
フィルム及びシートは、相対的に厚さの薄いものから順にフィルム、シートと呼称される場合がある。しかしながら、本開示においては、特に断りのない限り、シートは、フィルムを包含する。
【0011】
以下の説明において、登場する各成分(例えば、樹脂成分、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤及び添加剤)は、特に言及しない限り、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0012】
本開示の転写シートは、離型性基材と転写層とを備える。
転写層は、離型性基材上に、剥離可能に設けられている。
転写層は、表面保護層及びプライマー層を備える。表面保護層は、離型性基材とプライマー層との間に位置する。表面保護層は、例えば、転写層における離型性基材側の表層を構成する。転写層は、接着層をさらに備えてもよい。接着層は、例えば、転写層における離型性基材側とは反対側の表層を構成する。したがって転写層は、表面保護層、プライマー層及び接着層をこの順に備えてもよい。
【0013】
本開示の転写シートにおいて、転写層は、表面保護層、プライマー層及び接着層とは異なる他の層をさらに備えてもよい。他の層としては、例えば意匠層など、公知の層を適宜選択して用いることができる。
【0014】
表面保護層は、硬化樹脂と、第1波長に吸収ピークを有する第1の紫外線吸収剤と、第1波長より長波長の第2波長に吸収ピークを有する第2の紫外線吸収剤と、第2波長より長波長の第3波長に吸収ピークを有する第3の紫外線吸収剤とを含有する。これらの紫外線吸収剤の詳細は、後述する。本開示の転写シートから転写層を被転写体に転写して得られる耐候性物品は、直射日光に曝される環境下において表面保護層とプライマー層との密着性の低下を抑制でき、該環境下で長期間にわたって耐候性を維持できる。
【0015】
プライマー層及び表面保護層を備える耐候性物品において、長期間にわたって耐候性を維持するためには、プライマー層の劣化を抑制する必要がある。したがって、プライマー層の劣化要因の一つと考えられる紫外線を表面保護層でどの程度吸収できるかが重要となる。1種又は2種の紫外線吸収剤を含有する表面保護層は、短期的には紫外線によるプライマー層の劣化を抑制できても、長期的には紫外線による劣化を充分に抑制できない場合があることを、本開示者らは見出した。これは、以下の理由に基づくと推測される。
プライマー層と表面保護層との密着要因の一つとして、プライマー層に含まれるポリマー成分が挙げられる。このポリマー成分が紫外線により劣化すると、プライマー層自体が脆くなり、プライマー層と表面保護層との密着性が弱くなり、プライマー層と表面保護層との界面で剥離が起きると考えられる。これにより、上記物品の耐候性が低下する。例えば、上記物品が長期間にわたり紫外線照射を受けると、プライマー層に含まれるポリマー成分の劣化が少しずつ進行する。
ここで、例えば1種類又は2種類の紫外線吸収剤を表面保護層に多量に添加した場合は、紫外線を充分に吸収しえる。しかしながら、この場合は、紫外線吸収剤のブリードアウトや、表面保護層とプライマー層との密着性、及び表面保護層の透明性の低下が問題となることがある。
このような問題に対して本開示者らは、表面保護層が、それぞれ吸収ピークの波長が異なる少なくとも3種の紫外線吸収剤を含有することにより、上記物品の長期の耐候性を向上できることを見出した。これは、以下の理由に基づくと推測される。上記紫外線吸収剤を3種類以上併用することにより、紫外線の波長域を広範囲にわたってカバーできる。これにより、上記紫外線吸収剤が広範囲の波長域の紫外線を充分に吸収できる。したがって、長期間にわたってプライマー層の紫外線による劣化を抑制できる。結果として、直射日光に曝される環境下で充分長期間にわたって、上記物品は耐候性を維持できる。また、被転写体自体の劣化も抑制できることから、本開示の転写シートは、種々の被転写体に適用することができる。
【0016】
本開示の転写シートの一実施形態の構成を、
図1及び
図2に示す。
図1に示す転写シート1は、離型性基材10と、離型性基材10上に剥離可能に設けられた転写層20と、を備える。転写層20は、表面保護層22及びプライマー層24を離型性基材10の側から厚さ方向にこの順に備える。すなわち、離型性基材10、表面保護層22及びプライマー層24は、
図1の紙面における上下方向となる厚さ方向に、重ねられている。
【0017】
図2に示す転写シート1における転写層20は、接着層26をさらに備える。転写層20は、表面保護層22、プライマー層24及び接着層26を離型性基材10の側から厚さ方向にこの順に備える。すなわち、離型性基材10、表面保護層22、プライマー層24及び接着層26は、
図2の紙面における上下方向となる厚さ方向に、重ねられている。
【0018】
以下、本開示の転写シートの構成について詳細に説明する。
【0019】
本開示の転写シートは、離型性基材を備える。
離型性基材としては、例えば、樹脂成分により構成されるフィルム(以下「樹脂フィルム」ともいう)を使用できる。樹脂成分としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド及びポリカーボネートが挙げられる。本開示において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する。
【0020】
離型性基材としては、ポリエステルフィルム及びポリオレフィンフィルムが好ましい。離型性基材がこれらのフィルムであることにより、例えば、該フィルム上に表面保護層などを容易に形成できる。
【0021】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写シートを製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、PET及びPBTが好ましく、PETがより好ましい。
【0022】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写シートを製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0023】
樹脂フィルムは、延伸フィルムでもよく、未延伸フィルムでもよいが、延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムにおける機械方向(MD)及び/又は幅方向(TD)における延伸倍率は、例えば5倍以上30倍以下である。樹脂フィルムが延伸フィルムであることにより、例えば、転写シートを製造する際の加熱処理に起因する樹脂フィルムの熱収縮や、電離放射線の照射による架橋処理に起因する樹脂フィルムの収縮を抑制でき、転写シートの寸法安定性を高められる。
【0024】
延伸フィルムは、一軸延伸フィルムでもよく、二軸延伸フィルムでもよい。転写シートを製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、二軸延伸フィルムが好ましい。
【0025】
離型性基材は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。離型性基材は、例えば、樹脂フィルムの単層体でもよく、樹脂フィルムの積層体でもよい。樹脂フィルムの積層体は、例えば、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法又はエクストリュージョン法を利用することにより作製できる。
【0026】
離型性基材における表面保護層が設けられる表面には、必要に応じて、公知の離型処理が施されていてもよく、シリコーン樹脂などの離型層が設けられていてもよい。これにより、例えば、転写時における表面保護層と離型性基材との間の離型性を向上できる。
【0027】
離型性基材の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましい200μm以下、より好ましくは150μm以下である。離型性基材が多層構造を有する場合は、多層構造全体で上記厚さの範囲にあることが好ましい。
【0028】
本開示の転写シートにおいて、転写層は表面保護層を備える。
表面保護層は、被転写体上に転写層を必要に応じて接着層を介して転写して得られる耐候性物品の表層を構成する層である。表面保護層は、例えば、被転写体に耐候性を付与する層であり、さらに耐傷性及び耐汚染性を付与する層でもよい。
表面保護層は、離型性基材と接していることが好ましい。
【0029】
表面保護層は、離型性基材上に設けられている。言い換えると、表面保護層は、離型性基材と厚さ方向に重ねられている。一実施形態において、表面保護層は、離型性基材の全面上に設けられている。
【0030】
表面保護層は、硬化樹脂を含有する。
硬化樹脂は、例えば、表面保護層におけるバインダーとして機能する。硬化樹脂としては、例えば、硬化性化合物の硬化物が挙げられる。硬化性化合物の硬化物としては、例えば、電離放射線硬化性化合物の硬化物、及び熱硬化性樹脂の硬化物が挙げられる。表面保護層は、これらの硬化樹脂を2種以上含有してもよい。
【0031】
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和基含有(メタ)アクリル樹脂、不飽和ポリエステル、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノアルキッド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂及びシリコーン樹脂が挙げられる。
【0032】
熱硬化性樹脂とともに、必要に応じて硬化剤が用いられる。不飽和基含有(メタ)アクリル樹脂及び不飽和ポリエステルの場合は、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、又はアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が用いられる。ウレタン樹脂の場合は、例えば、イソシアネート系硬化剤が用いられる。エポキシ樹脂の場合は、例えば、有機アミン系硬化剤が用いられる。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリオールを主剤とし、イソシアネート化合物を硬化剤とする二液硬化型ウレタン樹脂が挙げられる。ポリオールとしては、例えば、(メタ)アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが挙げられる。イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートであり、例えば、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。
【0034】
表面保護層は、一実施形態において、硬化樹脂として熱硬化性樹脂の硬化物を含有し、例えば、イソシアネート系硬化剤による(メタ)アクリルポリオールの架橋硬化物を含有する。
【0035】
電離放射線硬化性化合物は、電離放射線を照射することにより、架橋及び硬化する化合物を意味し、電離放射線硬化性官能基を有する。電離放射線硬化性官能基とは、電離放射線の照射によって架橋する基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びアリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基(エチレン性不飽和基)が挙げられる。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味する。電離放射線としては、例えば、電子線(EB)及び紫外線(UV)が挙げられ、X線及びγ線などの電磁波;α線及びイオン線などの荷電粒子線も挙げられる。表面保護層に紫外線吸収剤を含ませるという観点から、電離放射線としては電子線が好ましい。
【0036】
電離放射線硬化性化合物としては、例えば、電離放射線硬化性化合物として従来慣用されている、重合性モノマー及び重合性オリゴマーが挙げられる。
重合性モノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーがより好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーにおける(メタ)アクリロイル基数は、2以上であり、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
【0037】
重合性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAテトラプロポキシジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレート;並びにこれらの(メタ)アクリレートの、エチレンオキシド変性物、プロピレンオキシド変性物、カプロラクトン変性物、イソシアヌル酸変性物又はプロピオン酸変性物が挙げられる。
【0038】
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンウレタン(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールウレタン(メタ)アクリレート及びアクリル(メタ)アクリレートが挙げられる。重合性オリゴマーにおける(メタ)アクリロイル基数は、2以上であり、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
【0039】
重合性オリゴマーとしては、その他、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、及び主鎖にポリシロキサン結合を有するシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマーも挙げられる。
【0040】
重合性オリゴマーの重量平均分子量は、500以上でもよく、1,000以上でもよく、2,000以上でもよく、10,000以下でもよく、8,000以下でもよく、6,000以下でもよい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0041】
電離放射線硬化性化合物としては、多官能(メタ)アクリレートとともに、塗工時における硬化性組成物の粘度を低下させるなどの目的で、単官能(メタ)アクリレートを適宜併用してもよい。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合は、紫外線硬化性化合物とともに、光重合開始剤及び光重合促進剤から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0043】
表面保護層は、耐熱性、耐擦傷性及び耐汚染性に優れるという観点から、硬化性化合物の硬化物を含有することが好ましく、電離放射線硬化性化合物の硬化物を含有することがより好ましい。電離放射線硬化性化合物の中でも、電子線硬化性化合物は、無溶剤化が可能であり、光重合開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られることから、表面保護層を形成する成分として好ましい。電離放射線硬化性化合物の中でも、重合性オリゴマーが好ましく、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0044】
表面保護層に含まれる全樹脂成分に対して、硬化樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましく80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0045】
表面保護層は、第1波長に吸収ピークを有する第1の紫外線吸収剤と、第1波長より長波長の第2波長に吸収ピークを有する第2の紫外線吸収剤と、第2波長より長波長の第3波長に吸収ピークを有する第3の紫外線吸収剤とを含有する。各吸収ピークは、紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定される吸光度スペクトルに基づく。
【0046】
第1の紫外線吸収剤は、第1波長に吸収ピークを有する。第1波長は、270nm以上300nm以下の範囲にあることが好ましく、270nm以上290nm以下の範囲にあることがより好ましく、270nm以上280nm以下の範囲にあることがさらに好ましい。
【0047】
第2の紫外線吸収剤は、第2波長に吸収ピークを有する。第2波長は、310nm以上330nm以下の範囲にあることが好ましく、310nm以上325nm以下の範囲にあることがより好ましい。
【0048】
第3の紫外線吸収剤は、第3波長に吸収ピークを有する。第3波長は、340nm以上370nm以下の範囲にあることが好ましく、345nm以上365nm以下の範囲にあることがより好ましい。
【0049】
上記吸収ピークは、270nm以上380nm以下の波長域における最大吸収ピークを意味することが好ましい。例えば第1の紫外線吸収剤が上記波長域において複数の吸収ピークを有する場合、最大吸収ピークが270nm以上300nm以下の範囲にあることが好ましい。
【0050】
第2波長と第1波長との差は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上であり、好ましくは60nm以下、より好ましくは55nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
【0051】
第3波長と第2波長との差は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上であり、好ましくは60nm以下、より好ましくは55nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
【0052】
第3波長と第1波長との差は、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは60nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは95nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
【0053】
第1~第3の紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられ、耐候性に優れており吸光度の大きさ及び波長選択性の観点から、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0054】
トリアジン系紫外線吸収剤の中でも、耐候性の観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【0056】
式(1)中、R11は2価の有機基であり、R12は-O-C(=O)R15で表されるアシルオキシ基であり、R13及びR14はそれぞれ独立して1価の有機基であり、R15は水素原子又は1価の有機基であり、n11及びn12はそれぞれ独立して0以上5以下の整数である。R13が複数ある場合、それぞれのR13は同一でも異なっていてもよい。R14が複数ある場合、それぞれのR14は同一でも異なっていてもよい。
【0057】
R11の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基及びアルケニレン基等の脂肪族炭化水素基が挙げられ、耐候性の観点から、アルキレン基が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、耐候性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよく、耐候性の観点から、直鎖状又は分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
【0058】
R13及びR14の1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基及びシクロアルキル基などの脂肪族炭化水素基、アリール基及びアリールアルキル基などの芳香環含有炭化水素基が挙げられ、耐候性の観点から、芳香環含有炭化水素基が好ましく、アリール基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0059】
耐候性の観点から、n11及びn12はそれぞれ0であることが好ましい。
【0060】
R15は、耐候性の観点から、1価の有機基が好ましい。1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基及びシクロアルキル基などの脂肪族炭化水素基、アリール基及びアリールアルキル基などの芳香環含有炭化水素基が挙げられ、耐候性の観点から、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、耐候性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよく、耐候性の観点から、直鎖状又は分岐状が好ましい。
【0061】
【0062】
式(2)中、R21は水素原子又は1価の有機基であり、R22及びR23はそれぞれ独立して水酸基又は1価の有機基であり、n21、n22及びn23はそれぞれ独立して1以上5以下の整数である。R21が複数ある場合、それぞれのR21は同一でも異なっていてもよい。R22が複数ある場合、それぞれのR22は同一でも異なっていてもよい。R23が複数ある場合、それぞれのR23は同一でも異なっていてもよい。
【0063】
R21の1価の有機基としては、式(1)中のR13及びR14の1価の有機基として例示した基が挙げられ、その他、-R24-C(=O)O-R25で表される基が挙げられる。R24は2価の有機基であり、R25は1価の有機基である。R22及びR23の1価の有機基としては、式(1)中のR13及びR14の1価の有機基として例示した基が挙げられ、耐候性の観点から、芳香環含有炭化水素基が好ましく、アリール基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0064】
R24の2価の有機基としては、式(1)中のR11の2価の有機基として例示した基が挙げられ、耐候性の観点から、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、耐候性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよく、耐候性の観点から、直鎖状又は分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
【0065】
R25の1価の有機基としては、式(1)中のR15の1価の有機基として例示した基が挙げられ、耐候性の観点から、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、耐候性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよく、耐候性の観点から、直鎖状又は分岐状が好ましい。
【0066】
n21は2以上でもよく、n22及びn23は、それぞれ1でもよい。この場合、複数のR21の内の一つが水素原子でもよく、R22及びR23が1価の有機基である場合、同じ有機基でもよい。
【0067】
【0068】
式(3)中、R31、R32及びR33はそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基であり、n31、n32及びn33はそれぞれ独立して1以上5以下の整数である。R31が複数ある場合、それぞれのR31は同一でも異なっていてもよい。R32が複数ある場合、それぞれのR31は同一でも異なっていてもよい。R33が複数ある場合、それぞれのR31は同一でも異なっていてもよい。
【0069】
R31、R32及びR33の1価の有機基としては、式(1)中のR13及びR14の1価の有機基として例示した基が挙げられ、その他、-R34-C(=O)O-R35で表される基が挙げられる。R34は2価の有機基であり、R35は1価の有機基である。
【0070】
R34の2価の有機基としては、式(1)中のR11の2価の有機基として例示した基が挙げられ、耐候性の観点から、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、耐候性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよく、耐候性の観点から、直鎖状又は分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
【0071】
R35の1価の有機基としては、式(1)中のR15の1価の有機基として例示した基が挙げられ、耐候性の観点から、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、耐候性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよく、耐候性の観点から、直鎖状又は分岐状が好ましい。
【0072】
n31、n32及びn33は、それぞれ2以上でもよい。この場合、複数のR31の内の一つが水素原子でもよく、複数のR32の内の一つが水素原子でもよく、複数のR33の内の一つが水素原子でもよい。
【0073】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的には、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び下記式で表される化合物が挙げられる。
【0074】
【0075】
表面保護層において、硬化樹脂100質量部に対する、第1の紫外線吸収剤、第2の紫外線吸収剤、及び第3の紫外線吸収剤の合計含有量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。紫外線吸収剤の合計含有量が下限値以上であると、転写層の耐候性を向上できる傾向にある。紫外線吸収剤の合計含有量が上限値以下であると、紫外線吸収剤のブリードアウトによる表面保護層とプライマー層との密着性の低下を抑制できる傾向にある。
【0076】
表面保護層において、硬化樹脂100質量部に対する第1の紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下である。これにより、例えば、耐候性をより向上できる傾向にある。
【0077】
表面保護層において、硬化樹脂100質量部に対する第2の紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。これにより、例えば、耐候性をより向上できる傾向にある。
【0078】
表面保護層において、硬化樹脂100質量部に対する第3の紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下である。これにより、例えば、耐候性をより向上できる傾向にある。
【0079】
表面保護層において、一実施形態において、第2の紫外線吸収剤の含有量が、第1の紫外線吸収剤の含有量より多く、且つ第3の紫外線吸収剤の含有量より多い。これにより、表面保護層が広範囲の波長を吸収することができ、例えば、耐候性をより向上できる傾向にある。
【0080】
表面保護層は、耐候性の観点から、光安定剤を含有してもよい。
光安定剤としては、例えば、芳香族系光安定剤、アミン系光安定剤、有機酸系光安定剤、カテキン系光安定剤及びヒンダードアミン系光安定剤が挙げられ、これらの中でもヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤とは、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格を分子内に含む構造を有する化合物である。
【0081】
光安定剤としては、例えば、表面保護層の硬化樹脂を形成しえる硬化性化合物と重合可能なエチレン性二重結合を有する反応性光安定剤、及び、該硬化性化合物と重合可能なエチレン性二重結合を有さない非反応性光安定剤が挙げられる。エチレン性二重結合は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びアリル基などの官能基が有している。表面保護層は、反応性光安定剤及び非反応性光安定剤から選択される少なくとも1種を含有してもよく、反応性光安定剤及び非反応性光安定剤を含有してもよい。
【0082】
反応性光安定剤は、通常、表面保護層形成時に硬化樹脂系に組み込まれ、固定化されていることから、長期的な効果を発揮できる。非反応性光安定剤は、表面保護層中で移動できることから、即効性を発揮できる。
【0083】
反応性光安定剤中のエチレン性二重結合の数は、1つでもよく、2以上でもよい。
【0084】
エチレン性二重結合を1つ有する反応性光安定剤としては、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン及び4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、CAS番号1010692-24-6の化合物及びCAS番号1010692-21-3の化合物が挙げられる。エチレン性二重結合を2以上有する反応性光安定剤としては、例えば、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、CAS番号1954659-42-7の化合物及びCAS番号1010692-23-5の化合物が挙げられる。
【0085】
非反応性光安定剤としては、例えば、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、及びビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジル)-2-n-ブチルマロネートが挙げられる。
【0086】
表面保護層において、硬化樹脂100質量部に対する光安定剤の含有量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。
【0087】
表面保護層は、光安定剤として、上記反応性光安定剤のみを含有してもよく、上記非反応性光安定剤のみを含有してもよく、上記反応性光安定剤と上記非反応性光安定剤とを含有してもよい。表面保護層における上記反応性光安定剤と上記非反応性光安定剤との質量基準による配合比(反応性光安定剤:非反応性光安定剤)は、例えば、10:0~2:8でもよい。
【0088】
表面保護層は、添加剤を含有してもよい、添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐摩耗性向上剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、消泡剤、難燃剤、可塑剤、粒子及びブロッキング防止剤が挙げられる。
【0089】
表面保護層は、ポリオレフィンを実質的に含有しないことが好ましい。これにより、例えば、表面保護層の耐候性をより良好にできる傾向にある。ポリオレフィンを実質的に含有しないとは、表面保護層に含まれる全樹脂成分に対して、ポリオレフィンの含有割合が、1質量%以下であることを意味し、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
【0090】
本開示の転写シートにおいて、表面保護層は、波長270nm以上300nm以下における吸光度A1が0.3以上であり、波長310nm以上330nm以下における吸光度A2が0.6以上であり、波長340nm以上370nm以下における吸光度A3が0.2以上であることが好ましい。
【0091】
上述したように長期の耐候性の観点から、波長270nm以上300nm以下における吸光度A1に加えて、波長310nm以上330nm以下における吸光度A2及び波長340nm以上370nm以下における吸光度A3を考慮することにより、表面保護層が紫外線を効率よくカットでき、直射日光に曝される環境下における転写層の耐候性をさらに向上できる。
【0092】
吸光度A1は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.35以上であり、例えば0.5以上でもよく、0.7以上でもよい。吸光度A1の上限は特に限定されないが、例えば1.5でもよい。
【0093】
吸光度A2は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上であり、例えば1.0以上でもよく、1.2以上でもよい。吸光度A2の上限は特に限定されないが、例えば3.0でもよい。
【0094】
吸光度A3は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上であり、例えば、0.5以上でもよく、0.7以上でもよい。吸光度A3の上限は特に限定されないが、例えば1.5でもよい。
【0095】
吸光度A1、A2及びA3は、例えば、表面保護層における第1~第3の紫外線吸収剤の含有量、及び表面保護層の厚さにより調整できる。例えば、表面保護層が第1~第3の紫外線吸収剤をそれぞれ含有することにより、吸光度を容易に調整できる。
【0096】
一実施形態において、270nm以上370nm以下の波長域における表面保護層の吸光度は、300nm以上340nm以下の範囲に最大値を含む。これにより、例えば、転写層の長期の耐候性をより向上できる傾向にある。
【0097】
各吸光度は、下記のように測定する。
JIS K0115:2004に準拠した、表面保護層の波長270nm以上300nm以下における吸光度の平均値を、吸光度A1とする。該平均値は、波長270nm以上300nm以下について1nmごとに吸光度を測定した際のこれらの平均値とする。
JIS K0115:2004に準拠した、表面保護層の波長310nm以上330nm以下における吸光度の平均値を、吸光度A2とする。該平均値は、波長310nm以上330nm以下について1nmごとに吸光度を測定した際のこれらの平均値とする。
JIS K0115:2004に準拠した、表面保護層の波長340nm以上370nm以下における吸光度の平均値を、吸光度A3とする。該平均値は、波長340nm以上370nm以下について1nmごとに吸光度を測定した際のこれらの平均値とする。
【0098】
転写シートが備える表面保護層の吸光度は、以下の様にして測定できる。転写シートの転写層の表面保護層よりも外側の層(例えば、プライマー層及び接着層)を、切削しあるいは溶剤などを用いて除去し、残部の積層体の吸光度を測定する。その後、離型性基材単体の吸光度を測定する。残部の積層体の吸光度から離型性基材単体の吸光度を引くことにより、表面保護層の吸光度が得られる。
【0099】
表面保護層は、一実施形態において、硬化性組成物を調製し、該組成物を離型性基材に塗布して未硬化樹脂層を形成し、該未硬化樹脂層を架橋硬化することにより形成できる。架橋硬化の態様は、例えば、熱硬化性樹脂を用いる場合は加熱処理による硬化であり、電離放射線硬化性化合物を用いる場合は電子線及び紫外線等の電離放射線の照射による硬化である。
【0100】
電離放射線として電子線を用いる場合、照射線量は、例えば5kGy以上300kGy以下(0.5Mrad以上30Mrad以下)、好ましくは10kGy以上100kGy以下(1Mrad以上10Mrad以下)である。電離放射線として紫外線を用いる場合は、波長190nm以上380nm以下の紫外線を含む光線を放射してもよい。
【0101】
表面保護層の厚さは、加工性、耐擦傷性及び耐候性のバランスの観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0102】
本開示の転写シートにおいて、転写層は、プライマー層を備える。プライマー層は、例えば、表面保護層と接着層との密着性を向上させること等を目的として、設けることができる。
【0103】
プライマー層は、一実施形態において、樹脂成分を含有する。
樹脂成分としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルポリオール樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ブチラール樹脂、ニトロセルロース及び酢酸セルロースが挙げられる。樹脂成分は、硬化剤による、これらの樹脂の架橋硬化物でもよい。樹脂成分は、例えば、上述した二液硬化型ウレタン樹脂の硬化物でもよい。
【0104】
ウレタン樹脂としては、耐候性及び耐久性という観点から、ポリウレタン高分子鎖中に(メタ)アクリル骨格を有するウレタン樹脂が好ましい。ポリウレタン高分子鎖中に(メタ)アクリル骨格を有するウレタン樹脂としては、例えば、ウレタン成分と(メタ)アクリル成分との共重合体であるウレタン-(メタ)アクリル共重合体、ポリウレタンを構成するポリオール成分又はポリイソシアネート成分としてヒドロキシ基又はイソシアネート基を有する(メタ)アクリル樹脂が用いられた樹脂が挙げられる。これらの中でも、ウレタン-(メタ)アクリル共重合体が好ましく、ウレタン-(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、ウレタン-(メタ)アクリルブロック共重合体が好ましい。
【0105】
プライマー層と表面保護層との密着性という観点から、ウレタン-(メタ)アクリル共重合体は、ポリウレタン高分子鎖中にポリカーボネート骨格又はポリエステル骨格をさらに有してもよい。このようなウレタン-(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、ポリカーボネート系ウレタン成分と(メタ)アクリル成分との共重合体であるポリカーボネート系ウレタン-(メタ)アクリル共重合体、及びポリエステル系ウレタン成分と(メタ)アクリル成分との共重合体であるポリエステル系ウレタン-(メタ)アクリル共重合体が挙げられる。
【0106】
ウレタン-(メタ)アクリル共重合体は、例えば、1分子中に少なくとも2個のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂にポリオール及びポリイソシアネートを反応させる方法(特開平6-100653号公報等参照)や、不飽和二重結合を両末端に有するウレタンプレポリマーに(メタ)アクリルモノマーを反応させる方法(特開平10-1524号公報等参照)によって得ることができる。
【0107】
ウレタンプレポリマーとしては、例えば、ポリカーボネートジオールとジイソシアネートとを反応させて得られるポリカーボネート系ウレタンプレポリマー、及びポリエステルジオールとジイソシアネートとを反応させて得られるポリエステル系ウレタンプレポリマーが挙げられる。ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネート;イソホロンジイソシアネート及び水素添加キシリレンジイソシアネートなどの脂環式系イソシアネートが挙げられる。(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、及びアルキル基の炭素数が1以上6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0108】
ウレタン樹脂としては、具体的には、ポリカーボネート系ウレタン-(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル系ウレタン-(メタ)アクリル共重合体、ポリエーテル系ウレタン-(メタ)アクリル共重合体、及びカプロラクトン系ウレタン-(メタ)アクリル共重合体が挙げられる。これらの樹脂成分は、耐候性、さらには表面保護層と接着層との密着性を向上させる観点から好ましい。
【0109】
ウレタン樹脂において、ウレタン成分/(メタ)アクリル成分(質量比)は、好ましくは20/80以上99/1以下、より好ましくは50/50以上95/5以下、さらに好ましくは70/30以上95/5以下である。これにより、例えば耐候性をより向上できる。ウレタン樹脂における(メタ)アクリル成分の含有量は、ウレタン樹脂の総質量当たり、(メタ)アクリル骨格を構成するモノマー単位が占める割合である。ウレタン樹脂における(メタ)アクリル成分の含有量は、ウレタン樹脂のNMRスペクトルを測定し、全ピーク面積に対する(メタ)アクリル成分に帰属されるピーク面積の割合を求めることによって算出される。
【0110】
ウレタン樹脂の重量平均分子量は、10,000以上でもよく、30,000以上でもよく、また、100,000以下でもよく、80,000以下でもよい。これにより、例えば耐候性をより向上できる。本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。
【0111】
プライマー層における樹脂成分の含有割合は、例えば50質量%以上である。
【0112】
プライマー層は、上述した第1~第3の紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤を含有してもよい。プライマー層は、上述した光安定剤を含有してもよい。プライマー層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0113】
プライマー層が紫外線吸収剤を含有する場合、プライマー層における紫外線吸収剤の含有量は、プライマー層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上でもよく、5質量部以上でもよく、10質量部以上でもよく、50質量部以下でもよく、45質量部以下でもよく、40質量部以下でもよい。
【0114】
プライマー層が光安定剤を含有する場合、プライマー層における光安定剤の含有量は、プライマー層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、0.1量部以上でもよく、0.5質量部以上でもよく、1質量部以上でもよく、10質量部以下でもよく、8質量部以下でもよく、6質量部以下でもよい。
【0115】
プライマー層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。
【0116】
表面保護層とプライマー層との間の密着性を向上させるために、プライマー層の形成前に、表面保護層を表面処理してもよい。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、及びオゾン/紫外線処理が挙げられる。
【0117】
表面保護層とプライマー層との密着性を向上させるために、表面保護層の架橋硬化を半硬化の状態にとどめ、その後、プライマー層用樹脂組成物を半硬化状態の表面保護層に塗布した後、電離放射線を照射して表面保護層を完全硬化させてもよい。
【0118】
表面保護層を硬化させた後に、プライマー層用樹脂組成物を表面保護層上に塗布してプライマー層を形成する場合、プライマー層と表面保護層との密着性を充分高くすることが難しいことがある。このような場合、例えば直射日光に曝される環境下において紫外線照射を受けてプライマー層が劣化すると、プライマー層と表面保護層との剥離が起きやすい。本開示では、上述したようにプライマー層の劣化を長期的に抑制できることから、このような剥離を抑制できる。
【0119】
本開示の転写シートにおいて、転写層は意匠層を備えてもよい。
転写層は、プライマー層と接着層との間に意匠層を備えてもよい。
意匠層は、プライマー層における表面保護層とは反対側の面の一部に配置されていてもよく、全面に配置されていてもよい。意匠層は、プライマー層における表面保護層とは反対側の面の全面を覆う層でもよく、プライマー層における表面保護層とは反対側の面において、絵柄の配置領域と非配置領域とを含むパターン状でもよい。
【0120】
意匠層は、意匠を表示するために設けることができる。意匠層は、例えば、絵柄を有する。絵柄としては、例えば、木材板表面における年輪又は導管溝等を模した木目模様、大理石及び花崗岩等の岩石の表面を模した石目模様、布目又は布状の模様を模した布地模様、皮革表面を模した皮シボ模様、梨地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、幾何学模様、並びに文字、図形、記号、水玉及び花柄等の抽象柄模様が挙げられる。絵柄は、単色無地(いわゆるベタ画像)でもよい。絵柄は、これらの2種以上を含む複合模様でもよい。意匠層は、二以上の層を有してもよい。例えば、意匠層は、着色された第1層と、第1層上に設けられて絵柄を形成する第2層とを有してもよい。
【0121】
意匠層は、例えば、印刷方法又は塗布方法によって形成できる。印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、及びインクジェット印刷が挙げられる。塗布方法としては、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、及びリバースロールコートが挙げられる。他の各層も、例えば、これらの方法によって形成できる。
【0122】
意匠層は、一実施形態において、樹脂成分と着色剤とを含有する。
樹脂成分としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ウレタン-(メタ)アクリル共重合体、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルポリオール樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ブチラール樹脂、ニトロセルロース及び酢酸セルロースが挙げられる。
【0123】
着色剤としては、例えば、顔料及び染料が挙げられる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青及びコバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック及びニッケルアゾ錯体等の有機顔料又は染料;アルミニウム及び真鍮等の、鱗片状箔片からなる金属顔料;並びに二酸化チタン被覆雲母及び塩基性炭酸鉛等の、鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料が挙げられる。
【0124】
意匠層における着色剤の含有量は、意匠層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、5質量部以上でもよく、15質量部以上でもよく、30質量部以上でもよく、200質量部以下でもよく、150質量部以下でもよく、100質量部以下でもよい。
【0125】
意匠層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、可塑剤及び滑剤が挙げられる。意匠層は、耐候性を向上させる観点から、紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤などの耐候剤を含有してもよい。
【0126】
意匠層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。これにより、例えば、意匠性を向上できる。
【0127】
意匠層は、金属薄膜を有してもよい。金属薄膜を構成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、鉄、コバルト、銅、銀、金、白金及び亜鉛、並びにこれらの金属から選択される少なくとも1種を含む合金が挙げられる。合金としては、例えば、真鍮、青銅及びステンレス鋼が挙げられる。金属薄膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法が挙げられる。金属薄膜の厚さは、例えば、0.1μm以上1μm以下である。
接着層が意匠層を兼ねてもよい。
【0128】
本開示の転写シートにおいて、転写層は接着層を備えてもよい。
接着層は、転写シートを被転写体の表面に密着させる機能を有する。一実施形態において、接着層は、転写層における離型性基材側とは反対側の表層を構成する。接着層は、転写後に被転写体と接する層である。これにより、転写層を被転写体に良好に転写して貼付できる。
【0129】
本開示において、転写シートを、接着層が被転写体の表面と接するように被転写体に貼付し、次いで離型性基材を剥離することにより、転写シートから表面保護層及びプライマー層を備える転写層を被転写体上に密着性良く転写できる。
【0130】
接着層に使用できる接着性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、塩素化ゴム、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びスチレン樹脂などの熱融着性樹脂が好ましい。これらの中でも、耐候性の向上という観点から、ポリメチルメタクリレート樹脂などの(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0131】
接着層における接着性樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0132】
接着層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤及び光安定剤等の耐候剤、耐摩耗性向上剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤並びに着色剤が挙げられる。
【0133】
接着層は、耐候剤を含有してもよい。耐候剤の詳細は上述したとおりである。
接着層における紫外線吸収剤の含有量は、接着性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上でもよく、1質量部以上でもよく、3質量部以上でもよく、25質量部以下でもよく、20質量部以下でもよく、15質量部以下でもよい。接着層における光安定剤の含有量は、接着性樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上でもよく、0.5質量部以上でもよく、1質量部以上でもよく、7質量部以下でもよく、5質量部以下でもよい。
【0134】
接着層の厚さは、好ましくは1μm以上であり、好ましくは12μm以下、より好ましくは6μm以下である。これにより、例えば、転写層を被転写体に良好に接着でき、また、優れた透明性を確保できる。
【0135】
接着層の厚さは、プライマー層の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0136】
接着層は、例えば、プライマー層上に、接着層を構成する成分を含む組成物(接着層用組成物)を塗布し、必要に応じて乾燥させることにより形成できる。
【0137】
本開示の転写シートは、接着層上にカバーフィルム(保護フィルム)を備えてもよい。
具体的には、接着層上にカバーフィルムが貼付されていてもよい。これにより、接着層表面を良好に保護でき、転写シートを保管する上で好ましい。転写シートの使用時には、カバーフィルムを接着層から剥がして接着層を露出させ、この接着層を介して被転写体に転写シートを貼付する。
【0138】
カバーフィルムは、例えば、ポリオレフィン等の樹脂成分からなる。
【0139】
本開示の耐候性物品は、被転写体と、該被転写体の表面の少なくとも一部上に設けられた表面保護フィルムとを備える。表面保護フィルムは、本開示の転写シートにおける転写層であり、転写層に含まれる表面保護層が、耐候性物品の少なくとも一部の表層を構成する。
【0140】
一実施形態において、
図3に示すように、耐候性物品2は、被転写体30と、被転写体30の表面上に設けられた転写層20とを備える。
図3の実施形態では、転写層20は、接着層26と、プライマー層24と、表面保護層22とを、被転写体30の側からこの順に備える。したがって、耐候性物品2は、被転写体30上に、接着層26、プライマー層24及び表面保護層22をこの順に備える。離型性基材10は、耐候性物品2を使用する際に剥離されていればよい。
【0141】
被転写体は、本開示の転写シートの転写層が転写される物品である。
被転写体としては、例えば、外装材が挙げられる。本開示の転写シートの転写層が転写された外装材は、屋外で過酷な条件下に曝された後においても、耐候性を良好に維持できる。
【0142】
外装材は、屋外で用いられる成形体、例えば日々直射日光に曝されるために耐候性が求められる用途の成形体である。本開示の転写シートにおける転写層は、耐候性に優れることから、外装材用途に好適である。外装材の形状は特に限定されず、例えば、平板及び曲面板等の板材、立体形状物品、シート又はフィルムが挙げられる。
外装材としては、例えば、樹脂部材、木質部材及び無機部材が挙げられる。
【0143】
樹脂部材としては、例えば、ポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロース樹脂、フェノール樹脂、ゴム等から構成される、シート、板材又は立体形状物品が挙げられる。
【0144】
木質部材としては、例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)及び集成材等の木質繊維板等から構成される、板材又は立体形状物品が挙げられる。
【0145】
無機部材としては、例えば、金属部材及び他の無機部材が挙げられる。金属部材としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅、錫、チタニウム、これらの金属を少なくとも1種含む合金(例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、ジュラルミン、真鍮及び青銅)等から構成される、シート、板材又は立体形状物品が挙げられる。他の無機部材としては、例えば、ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、軽量気泡コンクリート(ALC)板等から構成される、板材又は立体形状物品が挙げられる。
【0146】
外装材としては、例えば、建築構造物の外装材、車両、船舶及び航空機の外装材、産業用機械の外装材、並びに各種レンズが挙げられる。建築構造物の外装材(建材)としては、例えば、外壁、屋根、軒天井、床、柵、玄関ドア及び門扉等の各種扉、窓材、手すり、バルコニーの仕切り板、テラス又はカーポートにおける屋根部材、農業用ハウス、一般道路及び高速道路等における防音壁又は風防壁が挙げられる。車両の外装材としては、例えば、サイドウインドウ、リアウインドウ、ルーフウインドウ、フロントウインドウ及びクォーターウインドウなどの窓材;ヘッドライトカバー、ウインカーランプレンズ、リフレクター;並びにピラーが挙げられる。車両としては、例えば、自動車、鉄道車両、建設機械、及びゴルフカートなどの軽車両が挙げられる。産業用機械の外装材としては、例えば、工作機械における視認用窓材が挙げられる。レンズとしては、例えば、信号機のレンズが挙げられる。
【0147】
外装材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、一実施形態において、0.1mm以上でもよく、0.3mm以上でもよく、0.5mm以上でもよく、10mm以下でもよく、5mmでもよく、3mm以下でもよい。
【0148】
上記被転写体としては、外装材に限定されず、例えば、車両、船舶及び航空機の内装材、建築構造物の内装材、各種ディスプレー装置の前面板、カーブミラー、交通標識、ネームプレートを挙げることもできる。
上記被転写体は、例えば、化粧板などの化粧材でもよい。
【0149】
本開示の耐候性物品は、例えば、本開示の転写シートを用いて、該転写シートの転写層を被転写体の表面の少なくとも一部上に転写することで得られる。本開示の耐候性物品の製造方法は、一実施形態において、本開示の転写シート及び被転写体を準備する工程と、転写シートを、被転写体上に、転写シートにおける転写層が被転写体側を向くようにして配置する工程と、転写シートにおける離型性基材を剥離する工程とを含む。
【0150】
一実施形態において、表面保護層、プライマー層及び接着層を含む転写層を備える本開示の転写シートと、被転写体とを準備し、該転写シートにおける接着層と被転写体の表面とが接するように、該転写シートを被転写体の表面の少なくとも一部上に配置する。
【0151】
一実施形態において、表面保護層及びプライマー層を含む転写層を備える本開示の転写シートと、表面に接着層が設けられた被転写体とを準備し、該転写シートにおける転写層と被転写体上に設けられた接着層とが接するように、該転写シートを被転写体の表面の少なくとも一部上に配置する。被転写体上に設けられた接着層としては、例えば、転写シートの転写層が備えることができる接着層が挙げられる。
【0152】
上記配置は、加熱及び/又は加圧下において行ってもよい。次いで、転写シートにおける離型性基材を転写層から、具体的には表面保護層から剥離する。このようにして、耐候性物品が得られる。転写法としては、例えば、ロール転写法及びプレス転写法などの熱転写法、又はインモールド成形法を採用できる。
【0153】
離型性基材は転写層からすぐに剥離せずに、耐候性物品の保護フィルムとして利用してもよい。そのような場合には、耐候性物品を使用する前に離型性基材を転写層から剥離すればよい。
【0154】
転写シートを被転写体の表面上に配置した後に、更に、得られた耐候性物品を曲げ加工などの加工処理に供してもよい。加工処理は、離型性基材の剥離前又は後のいずれにおいても行ってもよい。
【0155】
本開示の耐候性物品は、例えば、被転写体の形成と転写シートの配置とを同時に行うことにより製造してもよい。例えば、転写シートの接着層上に樹脂を射出させて転写シートと被転写体としての樹脂成形体(射出成形体)とを一体化させる。次いで、離型性基材を転写層から剥離する。この場合、樹脂成形体の形成方法としては、例えば、インモールド成形法、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法及びガスインジェクション成形法などの各種射出成形法が挙げられる。
【0156】
本開示は、例えば以下の[1]~[15]に関する。
[1]離型性基材と転写層とを備える転写シートであって、転写層は、表面保護層及びプライマー層を備え、表面保護層は、離型性基材とプライマー層との間に位置し、表面保護層は、硬化樹脂と、第1波長に吸収ピークを有する第1の紫外線吸収剤と、第1波長より長波長の第2波長に吸収ピークを有する第2の紫外線吸収剤と、第2波長より長波長の第3波長に吸収ピークを有する第3の紫外線吸収剤とを含有する、転写シート。
[2]第2波長と第1波長との差が、10nm以上であり、第3波長と第2波長との差が、10nm以上である、上記[1]に記載の転写シート。
[3]第2波長が、310nm以上330nm以下の範囲にある、上記[1]又は[2]に記載の転写シート。
[4]第1波長が、270nm以上300nm以下の範囲にある、上記[1]~[3]のいずれかに記載の転写シート。
[5]第3波長が、340nm以上370nm以下の範囲にある、上記[1]~[4]のいずれかに記載の転写シート。
[6]表面保護層において、第2の紫外線吸収剤の含有量が、第1の紫外線吸収剤の含有量より多く、且つ第3の紫外線吸収剤の含有量より多い、上記[1]~[5]のいずれかに記載の転写シート。
[7]第1の紫外線吸収剤、第2の紫外線吸収剤及び第3の紫外線吸収剤が、それぞれ独立に、トリアジン系紫外線吸収剤である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の転写シート。
[8]表面保護層が、表面保護層に含まれる硬化樹脂100質量部に対して、第1の紫外線吸収剤、第2の紫外線吸収剤、及び第3の紫外線吸収剤を合計で0.5質量部以上10質量部以下含有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の転写シート。
[9]表面保護層が、表面保護層に含まれる硬化樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上3質量部以下の第1の紫外線吸収剤と、0.1質量部以上8質量部以下の第2の紫外線吸収剤と、0.1質量部以上3質量部以下の第3の紫外線吸収剤と、を含有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の転写シート。
[10]プライマー層が、紫外線吸収剤を含有する、上記[1]~[9]のいずれかに記載の転写シート。
[11]転写層が、意匠層をさらに備える、上記[1]~[10]のいずれかに記載の転写シート。
[12]転写層が、離型性基材側とは反対側の表層として、接着層をさらに備える、上記[1]~[11]のいずれかに記載の転写シート。
[13]外装材の表面の少なくとも一部上に転写層を転写するための、上記[1]~[12]のいずれかに記載の転写シート。
[14]被転写体と、被転写体の表面の少なくとも一部上に設けられた表面保護フィルムとを備える耐候性物品であって、表面保護フィルムが、上記[1]~[13]のいずれかに記載の転写シートにおける転写層であり、転写層における表面保護層が、耐候性物品の少なくとも一部の表層を構成する、耐候性物品。
[15]転写層が接着層を備えるか、又は、転写層と被転写体との間に接着層が設けられている、上記[14]に記載の耐候性物品。
【実施例0157】
以下、実施例に基づき本開示の転写シートをより詳細に説明するが、本開示の転写シートは実施例により何ら限定されない。
【0158】
[実施例1]
離型性基材として、未処理のマットPETフィルム(PET原反ダイアホイル E130-26、三菱ケミカル)を準備した。離型性基材上に、下記電離放射線硬化性樹脂組成物を約5g塗布して未硬化樹脂層を形成し、電子線(加速電圧:175kV、照射線量:5Mrad(50kGy))を照射して未硬化樹脂層を硬化させて、厚さ5μmの表面保護層を形成した。表面保護層に対してコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理後の表面保護層に下記プライマー層用樹脂組成物をグラビア印刷法で約2.5g塗布し乾燥して、厚さ3.5μmのプライマー層を形成した。プライマー層上に熱融着性樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、分子量96000程度)を約5g塗布して厚さ4.5μmの接着層(ヒートシール層)を形成し、常温にて24時間養生した。
【0159】
以上のようにして、転写シートを得た。転写シートは、離型性基材としてのPETフィルムと、該PETフィルム上に設けられた転写層とを備え、該転写層は、表面保護層、プライマー層及び接着層を備える。
【0160】
<電離放射線硬化性樹脂組成物>
・重量平均分子量4,000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー 100質量部
・第1の紫外線吸収剤 0.5質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、
商品名:アデカスタブLA-46、ADEKA社、
吸収ピークの波長:275nm
・第2の紫外線吸収剤 3質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、
商品名:TINUVIN479、BASF社、
吸収ピークの波長:322nm
・第3の紫外線吸収剤 0.5質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、
商品名:TINUVIN477、BASF社、
吸収ピークの波長:356nm
・ヒンダードアミン系反応性光安定剤 3質量部
商品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社
1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル-メタクリレート
【0161】
<プライマー層用樹脂組成物>
・ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体 100質量部
(ウレタン成分/アクリル成分=70/30(質量比))
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤 30質量部
(商品名:Tinuvin479(2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、BASF社)15質量部、
商品名:Tinuvin400(2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、BASF社)15質量部)
・ヒンダードアミン系光安定剤 3.5質量部
(商品名:Tinuvin123(BASF社)、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート)
【0162】
[比較例1]
電離放射線硬化性樹脂組成物における第1の紫外線吸収剤を配合せず、第2の紫外線吸収剤(TINUVIN479)の配合量を1質量部、第3の紫外線吸収剤(TINUVIN477)の配合量を3質量部に変更し、ヒンダードアミン系反応性光安定剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、転写シートを得た。
【0163】
[吸光度]
PETフィルム上に上記と同様の条件で表面保護層を形成して、試験片を作製した。紫外可視近赤外分光光度計(日立製作所社製、商品名:UH-4150)を用いて、JIS K0115:2004に準拠して、試験片に関する各波長域における吸光度を測定した。この吸光度から、PETフィルムの吸光度を引くことにより、上述した「吸光度A1」、「吸光度A2」及び「吸光度A3」を得た。
【0164】
実施例1の転写シートに対応する表面保護層の各吸光度は以下のとおりであった。
吸光度A1:1.2
吸光度A2:1.6
吸光度A3:1.4
【0165】
比較例1の転写シートに対応する表面保護層の各吸光度は以下のとおりであった。
吸光度A1:0.25
吸光度A2:0.6
吸光度A3:1.2
【0166】
[転写]
実施例及び比較例で得られた転写シートと、被転写体として厚さ2mmのポリカーボネート板とを準備した。ポリカーボネート板には、耐候剤は添加されていない。上記転写シートを、130℃に熱したポリカーボネート板の片面に、転写シートの接着層がポリカーボネート板に接するように重ね合わせ、160℃のロールを用いて圧着した。これにより、ポリカーボネート板、接着層、プライマー層、表面保護層及び離型性基材を順に備える、離型性基材付き成形体を得た。次に、転写シートの転写層から離型性基材を剥離して、試験片を得た。上記表面保護層は、試験片の一方側の表層を構成する。
【0167】
[耐候性]
下記の超促進耐候性試験装置を用いて、上記試験片に対して、超促進耐候性試験(下記の照射条件で20時間紫外線を照射した後、下記の結露条件で4時間結露を行う工程を1サイクルとして、該サイクルを繰り返し行う試験)を800時間実施した。
【0168】
<超促進耐候性試験装置>
UVランプ(商品名:M04-L21WB/SUV、岩崎電気社製)、ランプジャケット(商品名:WJ50-SUV、岩崎電気社製)及び照度計(商品名:UVD-365PD、岩崎電気社製)を備えてなる、超促進耐候性試験装置(商品名:アイ スーパー UVテスター SUV-W261」、岩崎電気社製)
<照射条件>
・ブラックパネル温度:63℃
・照度:100mW/cm2
・槽内湿度:50%RH
・時間:20時間
<結露条件>
・照度:0mW/cm2
・槽内湿度:98%RH
・時間:4時間
【0169】
[密着性評価]
上記耐候性試験を800時間行った後に、試験片に対して耐セロテープ試験を行い、表面保護層の剥離の有無を目視で観察して、以下の通り評価した。耐セロテープ試験は、試験片の表面保護層側の表面について、試験面積を1.5cm×1.5cmとして、ニチバン株式会社製のセロハン粘着テープである商品名セロテープ(登録商標)を貼り付け、45度の角度にて手前方向に勢いよく引っぱることにより行った。
○:表面保護層の剥離なし。
△:試験面積の50%未満の領域で表面保護層の剥離が生じた。
×:試験面積の50%以上の領域で表面保護層の剥離が生じた。
結果は以下のとおりであった。
・実施例1:〇
・比較例1:△