IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社半導体エネルギー研究所の特許一覧

<>
  • 特開-表示装置 図1
  • 特開-表示装置 図2
  • 特開-表示装置 図3
  • 特開-表示装置 図4
  • 特開-表示装置 図5
  • 特開-表示装置 図6
  • 特開-表示装置 図7
  • 特開-表示装置 図8
  • 特開-表示装置 図9
  • 特開-表示装置 図10
  • 特開-表示装置 図11
  • 特開-表示装置 図12
  • 特開-表示装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178336
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20231207BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231207BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20231207BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20231207BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20231207BHJP
   H10K 59/123 20230101ALI20231207BHJP
   H10K 59/124 20230101ALI20231207BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
H01L29/78 617T
H01L29/78 618E
H01L29/78 617U
H01L27/146 C
G02F1/1368
H05B33/14 Z
H10K59/123
H10K59/124
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172797
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2022137603の分割
【原出願日】2013-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2012125432
(32)【優先日】2012-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】島 行徳
(72)【発明者】
【氏名】徳永 肇
(57)【要約】
【課題】酸化物半導体を用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制し、信頼性の
高い半導体装置を提供する。
【解決手段】ソース電極層及びドレイン電極層と接する第1の酸化物半導体層と、トラン
ジスタの電流経路(チャネル)となる第2の酸化物半導体層とを含んで構成される半導体
装置を提供する。第1の酸化物半導体層は、ソース電極層及びドレイン電極層の構成元素
がチャネルまで拡散することを抑制するためのバッファ層として機能する。第1の酸化物
半導体層を設けることで、第1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層との界面、及び
、第2の酸化物半導体層中への該構成元素の拡散を抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有し、
前記画素の少なくとも一は、トランジスタと、前記トランジスタと電気的に接続された画素電極と、を有する表示装置であって、
前記トランジスタのゲート電極としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層上に位置し、窒化シリコンを有する第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に位置し、酸化シリコンを有する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層上に位置する第1の酸化物半導体層と、
前記第1の酸化物半導体層上に位置する第2の酸化物半導体層と、
前記第2の酸化物半導体層の上面と接する領域を有し、前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極としての機能を有する第2の導電層と、を有し、
前記第1の酸化物半導体層は、In:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍で、InとGaとZnとを有し、
前記第1の酸化物半導体層は、Snを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Znとを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、1nm以上10nm未満の大きさの結晶を有する領域を有し、
前記第1の絶縁層の膜厚は、前記第2の絶縁層の膜厚より大きく、
前記第2の導電層は、前記画素電極と接する領域を有する、表示装置。
【請求項2】
複数の画素を有し、
前記画素の少なくとも一は、トランジスタと、前記トランジスタと電気的に接続された画素電極と、を有する表示装置であって、
前記トランジスタのゲート電極としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層上に位置し、窒化シリコンを有する第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に位置し、酸化シリコンを有する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層上に位置する第1の酸化物半導体層と、
前記第1の酸化物半導体層上に位置する第2の酸化物半導体層と、
前記第2の酸化物半導体層の上面と接する領域を有し、前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極としての機能を有する第2の導電層と、を有し、
前記第1の酸化物半導体層は、In:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍で、InとGaとZnとを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、In:Ga:Zn=1:1:1またはその近傍で、InとGaとZnとを有し、
前記第1の酸化物半導体層は、Snを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Znとを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、1nm以上10nm未満の大きさの結晶を有する領域を有し、
前記第1の絶縁層の膜厚は、前記第2の絶縁層の膜厚より大きく、
前記第2の導電層は、前記画素電極と接する領域を有する、表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1の酸化物半導体層は、1nm以上10nm未満の大きさの結晶を有する領域を有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等で開示する発明は、半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置
全般を指し、電気光学装置、画像表示装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置で
ある。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が
注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(単に表示装置とも
表記する)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導
体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半
導体が注目されている。
【0004】
例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛、又は、In-Ga-Zn系酸化物半導体を用い
てトランジスタを作製する技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
また、非特許文献1には、組成の異なる酸化物半導体を積層させた構造を含むトランジス
タが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-123861号公報
【特許文献2】特開2007-96055号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Masashi Ono et al., ”Novel High Performance IGZO-TFT with High Mobility over 40 cm2/Vs and High Photostability Incorporated Oxygen Diffusion”, IDW’11 Late-News Paper, pp. 1689-1690
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、酸化物半導体層と該酸化物半導体層に接す
る層との界面に捕獲準位(界面準位ともよぶ)が存在すると、トランジスタの電気特性(
例えば、しきい値電圧、又は、サブスレッショルド係数(S値))の変動の原因となる。
【0009】
例えば、ボトムゲート型のトランジスタにおいて、ソース電極層及びドレイン電極層の構
成元素が酸化物半導体層のバックチャネルに拡散すると、該構成元素が捕獲準位を形成す
ることで、トランジスタの電気特性が変動する。また、酸化物半導体層とゲート絶縁層と
の界面に捕獲準位が存在することで、トランジスタの電気特性の変動を引き起こす場合も
ある。
【0010】
そこで、本発明の一態様は、酸化物半導体を用いた半導体装置において、電気特性の変動
を抑制し、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、酸化物半導体を含有するボトムゲート型のトランジスタにおいて、少
なくとも、ソース電極層及びドレイン電極層と接する第1の酸化物半導体層と、該第1の
酸化物半導体層とゲート絶縁層との間に設けられた第2の酸化物半導体層との積層構造を
有する。上記において、第2の酸化物半導体層をトランジスタの主な電流経路(チャネル
)とし、第1の酸化物半導体層をソース電極層及びドレイン電極層の構成元素の拡散を抑
制するためのバッファ層として用いることで、トランジスタの電気特性の変動を抑制する
ことが可能となる。より具体的には、例えば以下の構成とすることができる。
【0012】
本発明の一態様は、ゲート電極層と、ゲート電極層上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層を
介してゲート電極層と重畳する酸化物半導体積層と、酸化物半導体積層と電気的に接続す
るソース電極層及びドレイン電極層と、を有し、酸化物半導体積層は、ソース電極層及び
ドレイン電極層と接する第1の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層とゲート絶縁層
との間に設けられた第2の酸化物半導体層と、を含み、第1の酸化物半導体層は、少なく
ともインジウム及びガリウムを含み、且つ、インジウムの組成は、ガリウムの組成以下で
あり、第2の酸化物半導体層は、少なくともインジウム及びガリウムを含み、且つ、イン
ジウムの組成は、ガリウムの組成よりも大きく、第1の酸化物半導体層は、ソース電極層
及びドレイン電極層の構成元素を不純物として含む半導体装置である。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、ゲート電極層と、ゲート電極層上のゲート絶縁層と、ゲー
ト絶縁層を介してゲート電極層と重畳する酸化物半導体積層と、酸化物半導体積層と電気
的に接続するソース電極層及びドレイン電極層と、を有し、酸化物半導体積層は、ソース
電極層及びドレイン電極層と接する第1の酸化物半導体層と、ゲート絶縁層と接する第3
の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層と第3の酸化物半導体層の間に設けられた第
2の酸化物半導体層を含み、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層は、少なく
ともインジウム及びガリウムを含み、且つ、インジウムの組成は、ガリウムの組成以下で
あり、第2の酸化物半導体層は、少なくともインジウム及びガリウムを含み、且つ、イン
ジウムの組成は、ガリウムの組成よりも大きく、第1の酸化物半導体層は、ソース電極層
及びドレイン電極層の構成元素を不純物として含む半導体装置である。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、ゲート電極層と、ゲート電極層上のゲート絶縁層と、ゲー
ト絶縁層を介してゲート電極層と重畳する酸化物半導体積層と、酸化物半導体積層と電気
的に接続するソース電極層及びドレイン電極層と、を有し、酸化物半導体積層は、ソース
電極層及びドレイン電極層と接する第1の酸化物半導体層と、ゲート絶縁層と接する第3
の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層と第3の酸化物半導体層の間に設けられた第
2の酸化物半導体層を含み、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層は、少なく
ともインジウム及びガリウムを含み、且つ、インジウムの組成は、ガリウムの組成以下で
あり、第2の酸化物半導体層は、少なくともインジウム及びガリウムを含み、且つ、イン
ジウムの組成は、ガリウムの組成よりも大きく、第1の酸化物半導体層は、ソース電極層
及びドレイン電極層の構成元素を不純物として含み、第3の酸化物半導体層は、ゲート絶
縁層の構成元素を不純物として含む半導体装置である。
【0015】
上記の半導体装置のいずれか一において、ソース電極層及びドレイン電極層は、銅を含む
ことが好ましい。
【0016】
また、上記の半導体装置のいずれか一において、ゲート絶縁層は、窒化シリコン膜を含ん
でいてもよい。
【0017】
本発明の一態様に係る構成の効果は、以下のように説明することができる。但し、以下は
あくまでも一考察に過ぎないことを付記する。
【0018】
本発明の一態様のトランジスタは、ソース電極層及びドレイン電極層と接する第1の酸化
物半導体層と、トランジスタの主な電流経路(チャネル)となる第2の酸化物半導体層と
を含んで構成される。ここで、第1の酸化物半導体層は、ソース電極層及びドレイン電極
層の構成元素がチャネルまで拡散することを抑制するためのバッファ層として機能する。
第1の酸化物半導体層を設けることで、第1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層と
の界面、及び、第2の酸化物半導体層中への該構成元素の拡散を抑制することができる。
【0019】
また、第1の酸化物半導体層に適用する金属酸化物のエネルギーギャップ(バンドギャッ
プ)を第2の酸化物半導体層に適用する金属酸化物のエネルギーギャップよりも大きくす
ることで、第2の酸化物半導体層と第1の酸化物半導体層との間に伝導帯バンドオフセッ
トを形成しうるため好ましい。酸化物半導体積層において伝導帯バンドオフセットが存在
すると、キャリアが第1の酸化物半導体層界面及び第1の酸化物半導体層中を移動せずに
、第2の酸化物半導体層を流れるため、バックチャネル側に金属元素の拡散に起因する捕
獲準位が存在する場合であっても、該捕獲準位の影響を受けにくい。よって、トランジス
タの電気特性を安定化させることができる。
【0020】
また、本発明の一態様のトランジスタは、上述の第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物
半導体層に加えて、第2の酸化物半導体層とゲート絶縁層との間に設けられ、ゲート絶縁
層に接する第3の酸化物半導体層を含んで構成されることがより好ましい。第3の酸化物
半導体層は、第2の酸化物半導体層の構成元素から選択される一又は複数の金属元素を含
んで構成され、第2の酸化物半導体層と同質性を有する。よって、第3の酸化物半導体層
を設けることで、チャネルとして機能する第2の酸化物半導体層のゲート絶縁層側界面を
安定化させることができる。すなわち、第3の酸化物半導体層は、該界面の劣化を防止す
るためのバッファ層として機能する。特に、チャネルのゲート絶縁層側界面でのキャリア
の捕獲を抑制することで、トランジスタの光劣化(例えば、光負バイアス劣化)を低減す
ることができ、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0021】
また、第1の酸化物半導体層と同様に、第3の酸化物半導体層に適用する金属酸化物のエ
ネルギーギャップを第2の酸化物半導体層に適用する金属酸化物のエネルギーギャップよ
りも大きくすることで、第3の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層との間に伝導帯バ
ンドオフセットを形成しうるため好ましい。通常のMISFETにおいてもゲート絶縁層
と半導体との界面には、捕獲準位等が発生し、FETの電気特性を劣化させるが、第3の
酸化物半導体層を設けることで、キャリアがゲート絶縁層から離れた領域を流れる構造(
いわゆる埋め込みチャネル)となるため、上記界面の影響を低減することができる。
【0022】
第1の酸化物半導体、第2の酸化物半導体、及び第3の酸化物半導体として、同一の構成
元素によって構成され、組成の異なる金属酸化物を適用する場合、例えば、第1の酸化物
半導体、第2の酸化物半導体、及び第3の酸化物半導体として、少なくともインジウム及
びガリウムを含有する金属酸化物を用いることができる。ここで、他の金属元素に対する
インジウムの組成の割合が大きいほど、電界効果移動度の高い金属酸化物となり、他の金
属元素に対するガリウムの割合が大きいほど、エネルギーギャップの大きい金属酸化物と
なる。従って、チャネル形成領域となる、第2の酸化物半導体としては、インジウムの組
成がガリウムの組成よりも大きい金属酸化物を用いることが好ましく、バッファ層として
機能する第1の酸化物半導体及び第3の酸化物半導体としては、インジウムの組成がガリ
ウムの組成以下である金属酸化物を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様により、酸化物半導体を含むトランジスタにおいて、電気特性の変動を抑
制することができ、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
図2】半導体装置の一態様を示す平面図、断面図及びバンド図。
図3】半導体装置の作製方法の一例を示す図。
図4】半導体装置の一態様を説明する図。
図5】半導体装置の一態様を説明する図。
図6】半導体装置の一態様を説明する図。
図7】半導体装置の一態様を説明する図。
図8】電子機器を示す図。
図9】電子機器を示す図。
図10】半導体装置の一態様を示す断面図。
図11】半導体装置の一態様を説明する図。
図12】実施例のSIMSの測定結果を示す図。
図13】半導体装置の一態様を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以
下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容
易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈され
るものではない。
【0026】
なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部分には
同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様
の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場
合がある。
【0027】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、又は領域は、明瞭
化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0028】
なお、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は、便宜上用いるもので
あり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書等において発明を特定する
ための事項として固有の名称を示すものではない。
【0029】
また、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で
配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂
直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従
って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0030】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す
【0031】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1乃至図3を用
いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として、酸化物半導体層を有するボ
トムゲート型のトランジスタを示す。
【0032】
図1(A)乃至図1(C)にトランジスタ300の構成例を示す。図1(A)は、トラン
ジスタ300の平面図であり、図1(B)は、図1(A)中の鎖線X1-Y1における断
面図であり、図1(C)は、図1(A)中の鎖線V1-W1における断面図である。
【0033】
トランジスタ300は、絶縁表面を有する基板400上に設けられたゲート電極層402
と、ゲート電極層402上のゲート絶縁層404と、ゲート絶縁層404上に接し、ゲー
ト電極層402と重畳する酸化物半導体積層408と、酸化物半導体積層408と電気的
に接続するソース電極層410a及びドレイン電極層410bと、を含む。なお、ソース
電極層410a及びドレイン電極層410bを覆い、酸化物半導体積層408と接する絶
縁層412をトランジスタ300の構成要素に含めてもよい。
【0034】
トランジスタ300において、酸化物半導体積層408はソース電極層410a及びドレ
イン電極層410bと接する酸化物半導体層408aと、酸化物半導体層408bとゲー
ト絶縁層404との間に設けられた酸化物半導体層408bと、を含んで構成される。
【0035】
酸化物半導体積層408において、酸化物半導体層408bは、トランジスタ300のチ
ャネルを形成する領域である。また、酸化物半導体層408bのバックチャネル側に設け
られた酸化物半導体層408aは、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bの
構成元素が酸化物半導体層408bへと拡散することを防止するバッファ層として機能す
る。すなわち、酸化物半導体層408aは、ソース電極層410a及びドレイン電極層4
10bの構成元素を不純物として含む。該バッファ層を設けることで、トランジスタ30
0のチャネルにおいて捕獲準位が形成されることを抑制することができるため、捕獲準位
に起因するS値の増大を抑制することができる。よって、トランジスタの電気特性のばら
つき、又は経時劣化を抑制して、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0036】
酸化物半導体層408a及び酸化物半導体層408bは、構成元素の異なる酸化物半導体
を用いてもよいし、構成元素を同一とし、両者の組成を異ならせてもよい。但し、トラン
ジスタ300のチャネルとして機能する酸化物半導体層408bとしては、電界効果移動
度の高い酸化物半導体を適用することが好ましい。
【0037】
例えば、酸化物半導体層408a及び酸化物半導体層408bの構成元素を同一とし、少
なくともインジウム及びガリウムを含有する酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体層
408bとしてインジウムの組成がガリウムの組成よりも大きい酸化物半導体を用いるこ
とが好ましく、酸化物半導体層408aとしては、インジウムの組成がガリウムの組成以
下である酸化物半導体を用いることが好ましい。
【0038】
酸化物半導体では、主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、インジウム
の含有率を多くすることによりs軌道のオーバーラップが多くなる傾向がある。よって、
酸化物半導体層408bにおいて、インジウムの組成をガリウムの組成よりも大きくする
ことで、インジウムの組成がガリウムの組成以下である酸化物と比較して高い電界効果移
動度を備えることが可能となる。
【0039】
また、他の金属元素に対するガリウムの割合が大きいほど、エネルギーギャップの大きい
金属酸化物となるため、インジウムの組成をガリウムの組成以下とすることで、酸化物半
導体層408aは酸化物半導体層408bよりも大きなエネルギーギャップを有する。よ
って、酸化物半導体層408bと酸化物半導体層408aとの間に伝導帯バンドオフセッ
トを形成しうるため好ましい。また、ガリウムはインジウムと比較して酸素欠損の形成エ
ネルギーが大きく酸素欠損が生じにくいため、インジウムの組成がガリウムの組成以下で
ある金属酸化物はインジウムの組成がガリウムの組成より大きい金属酸化物と比較して安
定した特性を備える。よって、トランジスタ300のバックチャネル側をより安定化する
ことが可能となる。
【0040】
例えば、酸化物半導体層408a及び酸化物半導体層408bとして、In-Ga-Zn
系酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体層408aには、In:Ga:Zn=1:1
:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Ga:Zn=1:3:2(=1/6:3/6
:2/6)、In:Ga:Zn=2:4:3(=2/9:4/9:3/9)、あるいはI
n:Ga:Zn=1:5:3(=1/9:5/9:3/9)の組成(原子数比)のIn-
Ga-Zn系酸化物やその組成の近傍の金属酸化物を用いることができる。酸化物半導体
層408bには、In:Ga:Zn=3:1:2(=3/6:1/6:2/6)、In:
Ga:Zn=4:2:3(=4/9:2/9:3/9)、In:Ga:Zn=5:1:3
(=5/9:1/9:3/9)、In:Ga:Zn=5:3:4(=5/12:3/12
:4/12)、In:Ga:Zn=6:2:4(=6/12:2/12:4/12)、あ
るいはIn:Ga:Zn=7:1:3(=7/11:1/11:3/11)の組成(原子
数比)のIn-Ga-Zn系酸化物やその組成の近傍の金属酸化物を用いることができる
【0041】
なお、例えば、In、Ga、Znの組成がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=
1)である酸化物の組成が、組成がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の
酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a-A)+(b-B)+(c-C
≦rを満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。
【0042】
なお、酸化物半導体積層408に適用する金属酸化物としては、これらに限られず、必要
とする電気的特性(電界効果移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のもの
を用いればよい。また、必要とする電気的特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度
、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが
好ましい。例えば、ガリウムに代えて他の金属元素を含有してもよい。または、亜鉛を含
まない金属酸化物を用いることも可能である。但し、適用する金属酸化物中に組成として
亜鉛を含む場合、形成される酸化物半導体層を比較的容易に後述するCAAC-OS(C
Axis Aligned Crystalline Oxide Semicond
uctor)膜とすることができるため好ましい。
【0043】
なお、酸化物半導体層は、スパッタリング法によって形成することができ、スパッタリン
グターゲットにインジウムを含有すると成膜時のパーティクルの発生を低減することがで
きる。よって、インジウムを含む酸化物半導体層408a及びインジウムを含む酸化物半
導体層408bとすることがより好ましい。
【0044】
以下では、酸化物半導体層の構造について説明する。
【0045】
酸化物半導体層は、単結晶酸化物半導体層と非単結晶酸化物半導体層とに大別される。非
単結晶酸化物半導体層とは、非晶質酸化物半導体層、微結晶酸化物半導体層、多結晶酸化
物半導体層、CAAC-OS(C Axis Aligned Crystalline
Oxide Semiconductor)膜などをいう。
【0046】
非晶質酸化物半導体層は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶成分を有さない酸
化物半導体層である。微小領域においても結晶部を有さず、膜全体が完全な非晶質構造の
酸化物半導体層が典型である。
【0047】
微結晶酸化物半導体層は、例えば、1nm以上10nm未満の大きさの微結晶(ナノ結晶
ともいう。)を含む。従って、微結晶酸化物半導体層は、非晶質酸化物半導体層よりも原
子配列の規則性が高い。そのため、微結晶酸化物半導体層は、非晶質酸化物半導体層より
も欠陥準位密度が低いという特徴がある。
【0048】
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体層の一つであり、ほとんどの結
晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-O
S膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内
に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC-OS膜は、微結晶酸化物半導体層よりも欠
陥準位密度が低いという特徴がある。以下、CAAC-OS膜について詳細な説明を行う
【0049】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elect
ron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち結
晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CA
AC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0050】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察
)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子
の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸
を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0051】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TE
M観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列しているこ
とを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られな
い。
【0052】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有して
いることがわかる。
【0053】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜
のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが
現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属される
ことから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概
略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0054】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-pl
ane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは
、InGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。InGaZnOの単結晶酸化
物半導体層であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)と
して試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に
帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを5
6°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0055】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不
規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行
な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配
列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0056】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行
った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面また
は上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の形
状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成面
または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0057】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS膜
の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面
近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAA
C-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分
的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0058】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向性
を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍に
ピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0059】
CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動
が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0060】
なお、酸化物半導体層は、例えば、非晶質酸化物半導体層、微結晶酸化物半導体層、CA
AC-OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0061】
CAAC-OS膜は、例えば、多結晶である金属酸化物ターゲットを用い、スパッタリン
グ法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが衝突すると、スパッ
タリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa-b面から劈開し、a-b面に平行な面を
有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離することがある。この場
合、当該平板状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基板に到達することで
、CAAC-OS膜を成膜することができる。
【0062】
また、CAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0063】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制でき
る。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0064】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板付着後にスパッタリング粒子のマイグ
レーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましく
は200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平
板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、
スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0065】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージ
を軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体
積%とする。
【0066】
スパッタリング用金属酸化物ターゲットの一例として、In-Ga-Zn-O化合物ター
ゲットについて以下に示す。
【0067】
InO粉末、GaO粉末およびZnO粉末を所定の比率で混合し、加圧処理後、1
000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn-Ga-Z
n-O化合物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで、所
定のmol数比は、例えば、InO粉末、GaO粉末およびZnO粉末が、2:2
:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2である。なお
、粉末の種類、およびその混合するmol数比は、作製するスパッタリング用ターゲット
によって適宜変更すればよい。
【0068】
なお、酸化物半導体層408aと酸化物半導体層408bとは、異なる結晶性を有してい
てもよい。但し、トランジスタ300のチャネルとして機能する酸化物半導体層408b
には、CAAC-OS膜を適用することが好ましい。また、酸化物半導体層408bがC
AAC-OS膜である場合、酸化物半導体層408b上に接して設けられる酸化物半導体
層408aに、プリカーサの整列が起き、所謂秩序性を持たせることで、酸化物半導体層
408aをCAAC-OS膜とすることができる場合がある。バックチャネル側に設けら
れる酸化物半導体層408aは非晶質酸化物半導体であると、ソース電極層410a及び
ドレイン電極層410b形成時のエッチング処理により酸素欠損が生じ、n型化されやす
い。よって、酸化物半導体層408aに結晶性を有する酸化物半導体を適用することは好
ましい。
【0069】
なお、本実施の形態において、酸化物半導体層408aと酸化物半導体層408bとは同
一の構成元素によって形成された酸化物半導体積層とする。このとき、材料や成膜条件に
よっては、各酸化物半導体層同士の界面が不明確になる場合もある。よって、図1におい
ては、酸化物半導体層408aと酸化物半導体層408bの界面を模式的に点線で図示し
ている。これは以降の各図面においても同様である。
【0070】
図2(A)乃至図2(C)にトランジスタ310の構成例を示す。図2(A)は、トラン
ジスタ310の平面図であり、図2(B)は、図2(A)中の鎖線X2-Y2における断
面図であり、図2(C)は、図2(A)中の鎖線V2-W2における断面図である。図2
(A)乃至図2(C)に示すトランジスタ310は、図1のトランジスタ300と同様に
、絶縁表面を有する基板400上に設けられたゲート電極層402と、ゲート電極層40
2上のゲート絶縁層404と、ゲート絶縁層404と接し、ゲート電極層402と重畳す
る酸化物半導体積層408と、酸化物半導体積層408と電気的に接続するソース電極層
410a及びドレイン電極層410bと、を含む。また、ソース電極層410a及びドレ
イン電極層410bを覆い、酸化物半導体積層408と接する絶縁層412をトランジス
タ310の構成要素としてもよい。
【0071】
トランジスタ310は、酸化物半導体層408bとゲート絶縁層404との間に、酸化物
半導体層408cを有する点において、トランジスタ300と相違する。すなわち、トラ
ンジスタ310では、酸化物半導体積層408が、酸化物半導体層408a、酸化物半導
体層408b及び酸化物半導体層408cの積層構造を含んで構成される。
【0072】
なお、トランジスタ310において、酸化物半導体層408c以外の構成は、トランジス
タ300と同様であり、トランジスタ300についての説明を参酌することができる。
【0073】
トランジスタ310において、チャネルが形成される酸化物半導体層408bと、ゲート
絶縁層404との間に酸化物半導体層408cを設けることで、キャリアがゲート絶縁層
404から離れた領域を流れる構造(いわゆる埋め込みチャネル)となる。よって、ゲー
ト絶縁層404とチャネルとの界面を安定化することができ、該界面に捕獲準位が形成さ
れることを抑制することができる。これにより、トランジスタの劣化、特に光負バイアス
劣化等の光劣化を防止し、信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0074】
インジウムとガリウムを含有する金属酸化物において、他の金属元素に対するガリウムの
組成の割合が大きい程、エネルギーギャップは大きくなる。また、酸化物半導体層408
cと酸化物半導体層408bのバンドギャップの差によって、伝導帯バンドオフセットが
形成される。従って、酸化物半導体層408cとしてインジウムの組成がガリウムの組成
以下である金属酸化物を用いると、酸化物半導体層408bに効果的にチャネルを形成す
ることができるため好ましい。
【0075】
酸化物半導体層408cとして、In-Ga-Zn系酸化物半導体を用いる場合、In:
Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Ga:Zn=1:3:2
(=1/6:3/6:2/6)、In:Ga:Zn=2:4:3(=2/9:4/9:3
/9)、あるいはIn:Ga:Zn=1:5:3(=1/9:5/9:3/9)の組成(
原子数比)のIn-Ga-Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる
。なお、酸化物半導体層408aと酸化物半導体層408cは、ともにインジウムの組成
がガリウムの組成以下である金属酸化物を用いることが好ましい。ここで、酸化物半導体
層408aの組成と、酸化物半導体層408cの組成とは、同一であっても異なっていて
もよい。
【0076】
また、一般的に、酸化物半導体層は、スパッタリング法を用いて成膜されることが多い。
一方で、酸化物半導体層のスパッタリングの際にイオン化された希ガス元素(例えば、ア
ルゴン)や、スパッタリングターゲット表面からはじき飛ばされた粒子が、ゲート絶縁層
などの酸化物半導体層の被形成面となる膜の粒子をはじき飛ばしてしまうことがある。こ
のようにして被形成面となる膜からはじき飛ばされた粒子は、酸化物半導体層に不純物元
素として取り込まれてしまい、特に酸化物半導体層の被形成面近傍には、不純物元素が高
い濃度で取り込まれる恐れがある。又、不純物元素が酸化物半導体層の被形成面近傍に残
存すると、当該酸化物半導体層が高抵抗化してしまい、トランジスタの電気特性の低下の
要因となる。
【0077】
しかしながら、図2(A)乃至図2(C)に示すトランジスタ310においては、チャネ
ルが形成される酸化物半導体層408bと、ゲート絶縁層404との間に酸化物半導体層
408cを有することで、ゲート絶縁層404の構成元素がチャネルまで拡散することを
抑制することができる。すなわち、酸化物半導体層408cは、ゲート絶縁層404の構
成元素(例えば、シリコン)を不純物として含む場合がある。酸化物半導体層408cを
含むことで、トランジスタ310の電気特性をより安定化することができ、信頼性の高い
半導体装置を提供することができる。
【0078】
また、図2(D)は、図2(B)における膜厚方向(D-D’間)のエネルギーバンド図
である。本実施の形態では、酸化物半導体層408a乃至酸化物半導体層408cを、I
n-Ga-Zn系酸化物半導体を用いて形成するものとする。また、酸化物半導体層40
8a及び酸化物半導体層408cには、インジウムの組成が、ガリウムの組成以下である
金属酸化物を適用し、酸化物半導体層408bには、インジウムの組成が、ガリウムの組
成よりも大きい金属酸化物を適用する。これによって本実施の形態で示す酸化物半導体積
層408は、図2(D)に示すエネルギーバンド図のように、所謂埋め込みチャネルを構
成することが可能となる。
【0079】
以下に、図3を用いてトランジスタ310の作製方法の一例を示す。
【0080】
まず、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層402(これと同じ層で形成され
る配線を含む)を形成する。
【0081】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制約はないが、少なく
とも後の熱処理に耐えられる程度の耐熱性を有することが必要となる。例えば、バリウム
ホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラス等のガラス基板、セラミック基板、石英基
板、サファイヤ基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコン等の単結
晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI
基板等を適用することができ、これらの基板に半導体素子が設けられたものを基板400
として用いてもよい。また、基板400上に下地絶縁層を形成してもよい。
【0082】
ゲート電極層402の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニ
ウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金
材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層402としてリン等の不純物元
素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイド等のシ
リサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層402は単層構造としてもよいし、積層構造と
してもよい。ゲート電極層402はテーパ形状としてもよく、例えばテーパ角を15°以
上70°以下とすればよい。ここで、テーパ角とは、テーパ形状を有する層の側面と、当
該層の底面との間の角度を指す。
【0083】
また、ゲート電極層402の材料は、酸化インジウム酸化スズ、酸化タングステンを含む
インジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むイ
ンジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウムスズ酸化物、酸化インジウム酸化亜鉛、酸
化ケイ素を添加したインジウムスズ酸化物等の導電性材料を適用することもできる。
【0084】
または、ゲート電極層402の材料として、窒素を含むIn-Ga-Zn系酸化物、窒素
を含むIn-Sn系酸化物、窒素を含むIn-Ga系酸化物、窒素を含むIn-Zn系酸
化物、窒素を含むSn系酸化物、窒素を含むIn系酸化物、金属窒化物膜(窒化インジウ
ム膜、窒化亜鉛膜、窒化タンタル膜、窒化タングステン膜など)を用いてもよい。これら
の材料は、5電子ボルト以上の仕事関数を有するため、これらの材料を用いてゲート電極
層402を形成することでトランジスタのしきい値電圧をプラスにすることができ、ノー
マリオフのスイッチングトランジスタを実現できる。
【0085】
次いで、ゲート電極層402を覆うようにゲート電極層402上にゲート絶縁層404を
形成する(図3(A)参照)。ゲート絶縁層404としては、プラズマCVD法、スパッ
タリング法等により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化
シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコ
ニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸
化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用い
る。
【0086】
なお、ゲート絶縁層404において、後に形成される酸化物半導体積層408と接する領
域は、酸化物絶縁層であることが好ましく、酸素過剰領域を有することがより好ましい。
ゲート絶縁層404に酸素過剰領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にてゲート絶縁
層404を形成すればよい。又は、成膜後のゲート絶縁層404に酸素を導入して、酸素
過剰領域を形成してもよい。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング
法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることができる。
【0087】
次いで、ゲート絶縁層404上に、酸化物半導体層408cとなる酸化物半導体膜、酸化
物半導体層408bとなる酸化物半導体膜、及び酸化物半導体層408aとなる酸化物半
導体膜を順に成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチング処理によって島状に加工
して、酸化物半導体積層408を形成する(図3(B)参照)。
【0088】
酸化物半導体層408c、酸化物半導体層408b及び酸化物半導体層408aはそれぞ
れ、非晶質酸化物半導体であってもよいし、結晶性酸化物半導体であってもよい。但し、
トランジスタ310のチャネルとして機能する酸化物半導体層408bは結晶性酸化物半
導体とすることが好ましい。なお、非晶質酸化物半導体に熱処理を加えることで、結晶性
酸化物半導体としてもよい。非晶質酸化物半導体を結晶化させる熱処理の温度は、250
℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃以上、さらに好
ましくは550℃以上とする。当該熱処理は、作製工程における他の熱処理と兼ねること
も可能である。
【0089】
各酸化物半導体膜の成膜方法は、スパッタリング法、MBE(Molecular Be
am Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic L
ayer Deposition)法等を適宜用いることができる。
【0090】
酸化物半導体膜を成膜する際、できる限り膜中に含まれる水素濃度を低減させることが好
ましい。水素濃度を低減させるには、例えば、スパッタリング法を用いて成膜を行う場合
には、スパッタリング装置の成膜室内に供給する雰囲気ガスとして、水素、水、水酸基又
は水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、及
び希ガスと酸素との混合ガスを適宜用いる。
【0091】
また、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し
て成膜を行うことで、成膜された酸化物半導体膜の水素濃度を低減させることができる。
成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ
、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、ターボ
分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプは、例えば
、水素分子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化
合物も)等の排気能力が高いため、クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した膜
中に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0092】
なお、ゲート絶縁層404及び酸化物半導体膜は、大気開放せずに連続的に成膜すること
が好ましい。ゲート絶縁層404及び酸化物半導体膜の成膜を大気開放せずに連続的に行
うことで、酸化物半導体膜表面への水素又は水素化合物の付着(例えば、吸着水など)を
防止することができるため、不純物の混入を抑制することができる。
【0093】
また、酸化物半導体膜をスパッタリング法で成膜する場合、成膜に用いる金属酸化物ター
ゲットの相対密度(充填率)は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9
%以下とする。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜される膜
を緻密な膜とすることができる。
【0094】
なお、基板400を高温に保持した状態で酸化物半導体膜を形成することも、酸化物半導
体膜中に含まれうる不純物濃度を低減するのに有効である。基板400を加熱する温度と
しては、150℃以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が200℃以上3
50℃以下とすればよい。また、成膜時に基板を高温で加熱することで、結晶性酸化物半
導体膜を形成することができる。
【0095】
酸化物半導体層(例えば、酸化物半導体層408b)としてCAAC-OS膜を適用する
場合、該CAAC-OS膜を得る方法としては、例えば、成膜温度を200℃以上450
℃以下として酸化物半導体膜の成膜を行い、表面に概略垂直にc軸配向させる方法がある
。または、酸化物半導体膜を薄い膜厚で成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理
を行い、表面に概略垂直にc軸配向させてもよい。または、一層目として薄い膜厚で成膜
した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行い、二層目の成膜を行い、表面に概略垂
直にc軸配向させてもよい。
【0096】
酸化物半導体層408a乃至酸化物半導体層408cに用いる酸化物半導体としては、少
なくともインジウム(In)を含む。特に、インジウムと亜鉛(Zn)を含むことが好ま
しい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすための
スタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。
【0097】
また、上述のように、捕獲準位の影響を低減するためのバッファ層として機能する酸化物
半導体層408a及び酸化物半導体層408cとしては、インジウムの組成がガリウムの
組成以下である金属酸化物を用いることが好ましく、チャネル形成領域となる酸化物半導
体層408bとしては、インジウムの組成がガリウムの組成よりも大きい金属酸化物を用
いることが好ましい。
【0098】
なお、スタビライザーとして、ガリウム(Ga)に代えて、又はガリウム(Ga)に加え
て、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)
のいずれか一種または複数種を有していてもよい。また、他のスタビライザーとして、ラ
ンタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオ
ジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テ
ルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)
、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種また
は複数種を有してもよい。
【0099】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化
物であるIn-Zn系酸化物、In-Mg系酸化物、In-Ga系酸化物、三元系金属の
酸化物であるIn-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Zn系酸化物、In-Sn-Zn
系酸化物、In-Hf-Zn系酸化物、In-La-Zn系酸化物、In-Ce-Zn系
酸化物、In-Pr-Zn系酸化物、In-Nd-Zn系酸化物、In-Sm-Zn系酸
化物、In-Eu-Zn系酸化物、In-Gd-Zn系酸化物、In-Tb-Zn系酸化
物、In-Dy-Zn系酸化物、In-Ho-Zn系酸化物、In-Er-Zn系酸化物
、In-Tm-Zn系酸化物、In-Yb-Zn系酸化物、In-Lu-Zn系酸化物、
四元系金属の酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn系酸化物、In-Hf-Ga-Zn系
酸化物、In-Al-Ga-Zn系酸化物、In-Sn-Al-Zn系酸化物、In-S
n-Hf-Zn系酸化物、In-Hf-Al-Zn系酸化物を用いることができる。
【0100】
例えば、In-Ga-Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物
という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の
金属元素が入っていてもよい。
【0101】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)
で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、MnおよびCoから選ばれ
た一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO
(ZnO)(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0102】
酸化物半導体積層408に対して、膜中に含まれる過剰な水素(水や水酸基を含む)を除
去(脱水化又は脱水素化)するための熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は、3
00℃以上700℃以下、又は基板の歪み点未満とする。熱処理は減圧下又は窒素雰囲気
下などで行うことができる。この熱処理によって、n型の導電性を付与する不純物である
水素を除去することができる。
【0103】
なお、脱水化又は脱水素化のための熱処理は、酸化物半導体膜の成膜後であればトランジ
スタの作製工程においてどのタイミングで行ってもよい。また、脱水化又は脱水素化のた
めの熱処理は、複数回行ってもよく、他の熱処理と兼ねてもよい。
【0104】
熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素など
が含まれないことが好ましい。又は、熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン
、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.
99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)と
することが好ましい。
【0105】
また、熱処理で酸化物半導体層(又は酸化物半導体積層)を加熱した後、加熱温度を維持
、又はその加熱温度から徐冷しながら同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素
ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点
計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で-55℃)以下、好ましくは
1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガス又は
一酸化二窒素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、熱処理装置に導
入する酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸
素ガス又は一酸化二窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以
下)とすることが好ましい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化又は脱
水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成
する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体層を高純度化及びi型
(真性)化することができる。
【0106】
また、脱水化又は脱水素化処理によって酸素が同時に脱離して減少してしまうおそれがあ
るため、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体層に、酸素(少なくとも、酸素ラ
ジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して膜中に酸素を供給しても
よい。
【0107】
脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体層に、酸素を導入して膜中に酸素を供給す
ることによって、酸化物半導体層を高純度化、及びi型(真性)化することができる。高
純度化し、i型(真性)化した酸化物半導体を有するトランジスタは、電気特性変動が抑
制されており、電気的に安定である。
【0108】
酸化物半導体層に酸素導入する場合、酸化物半導体層に直接導入してもよいし、後に形成
される絶縁層を通過して酸化物半導体層へ導入してもよい。酸素(少なくとも、酸素ラジ
カル、酸素原子、酸素イオンのいずれかを含む)の導入方法としては、イオン注入法、イ
オンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることが
できる。また、酸素導入処理には、酸素を含むガスを用いることができる。酸素を含むガ
スとしては、酸素、一酸化二窒素、二酸化窒素、二酸化炭素、一酸化炭素などを用いるこ
とができる。また、酸素導入処理において、酸素を含むガスに希ガスを含ませてもよい。
【0109】
例えば、イオン注入法で酸化物半導体層へ酸素イオンの注入を行う場合、ドーズ量を1×
1013ions/cm以上5×1016ions/cm以下とすればよい。
【0110】
酸化物半導体層への酸素の供給は、酸化物半導体膜の成膜後であれば、そのタイミングは
特に限定されない。また、酸素の導入は複数回行ってもよい。
【0111】
次いで、酸化物半導体積層408上に導電膜を形成し、これを加工してソース電極層41
0a及びドレイン電極層410b(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成する(
図3(C)参照)。
【0112】
ソース電極層410a及びドレイン電極層410bとしては、例えば、Al、Cr、Cu
、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とす
る金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いるこ
とができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、M
o、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン
膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としてもよい。また、ソース電極層410a
及びドレイン電極層410bを、導電性の金属酸化物で形成してもよい。導電性の金属酸
化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO
)、酸化インジウム酸化スズ(In-SnO)、酸化インジウム酸化亜鉛(In
-ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いる
ことができる。
【0113】
また、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bとして窒素を含むIn-Ga-
Zn-O膜、窒素を含むIn-Sn-O膜、窒素を含むIn-Ga-O膜、窒素を含むI
n-Zn-O膜、窒素を含むSn-O膜、窒素を含むIn-O膜等の金属窒化物膜を用い
ることができる。これらの膜は、酸化物半導体積層408と同じ構成元素を含むため、酸
化物半導体積層408との界面を安定化させることができる。
【0114】
なお、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bとして、銅を含む導電膜を適用
すると、配線抵抗を低減することができるため好ましい。一般に、銅は半導体中や酸化シ
リコン膜中で拡散し易く、半導体装置の動作を不安定にし、歩留まりを著しく低下させて
しまう恐れがある。しかしながら、トランジスタ310では、ソース電極層410a及び
ドレイン電極層410bと接して、該電極層の構成元素(ここでは、銅)の拡散を抑制す
るためのバッファ層として機能する酸化物半導体層408aを有するため、銅の拡散によ
るバックチャネル側の捕獲準位の影響を低減、好ましくはなくすことができる。
【0115】
次いで、ソース電極層410a、ドレイン電極層410b及び露出した酸化物半導体積層
408を覆うように、絶縁層412を形成する(図3(D)参照)。
【0116】
絶縁層412としてはプラズマCVD法、スパッタリング法により形成することができ、
酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリ
コン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜等を単層で、又は積層して
用いることができる。但し、絶縁層412として、酸化物絶縁層を形成すると、該酸化物
絶縁層によって酸化物半導体積層408へ酸素を供給することが可能となるため、好まし
い。
【0117】
絶縁層412を形成後、熱処理を行ってもよい。熱処理の温度は、200℃以上が好まし
く、例えば220℃とすればよい。
【0118】
以上によって、本実施の形態のトランジスタ310を形成することができる。
【0119】
本実施の形態で示すトランジスタは、ソース電極層又はドレイン電極層の構成元素がチャ
ネルに拡散することを抑制するバッファ層として機能する第1の酸化物半導体層と、チャ
ネルとして機能する第2の酸化物半導体層と、を含んで構成される。これによって、トラ
ンジスタのバックチャネル側に形成されうる界面準位の影響を低減することができる。ま
た、本実施の形態で示すトランジスタは、チャネルとして機能する酸化物半導体層とゲー
ト絶縁層との間に設けられ、チャネルのゲート絶縁層側界面の劣化を防止するためのバッ
ファ層として機能する第3の酸化物半導体層を含むことがより好ましい。第3の酸化物半
導体層を含むことで、トランジスタの光劣化(例えば、光負バイアス劣化)を低減するこ
とができ、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0120】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0121】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と異なる半導体装置の一形態を、図10を用いて説明す
る。具体的には、実施の形態1で示したトランジスタとゲート絶縁層の構成の異なるトラ
ンジスタについて説明する。
【0122】
図10(A)に、トランジスタ320の構成例を示す。図10(A)に示すトランジスタ
320は、図2のトランジスタ310と同様に、絶縁表面を有する基板400上に設けら
れたゲート電極層402と、ゲート電極層402上のゲート絶縁層403、406と、ゲ
ート絶縁層406と接し、ゲート電極層402と重畳する酸化物半導体積層408と、酸
化物半導体積層408と電気的に接続するソース電極層410a及びドレイン電極層41
0bと、を含む。トランジスタ320において、酸化物半導体積層408は、ゲート絶縁
層406に接する酸化物半導体層408cと、酸化物半導体層408c上に接する酸化物
半導体層408bと、酸化物半導体層408b上に接し、ソース電極層410a及びドレ
イン電極層410bと接する酸化物半導体層408aと、を含む。また、ソース電極層4
10a及びドレイン電極層410bを覆い、酸化物半導体積層408と接する絶縁層41
2をトランジスタ320の構成要素としてもよい。
【0123】
トランジスタ320は、ゲート絶縁層として、ゲート電極層402側から、ゲート絶縁層
403a、ゲート絶縁層403b及びゲート絶縁層403cを含む第1のゲート絶縁層4
03と、第2のゲート絶縁層406との積層構造を含む点で、トランジスタ310と相違
する。
【0124】
なお、トランジスタ320において、ゲート絶縁層以外の構成は、トランジスタ310と
同様であり、トランジスタ310についての説明を参酌することができる。
【0125】
トランジスタ320において、第1のゲート絶縁層403としては窒素を含むシリコン膜
を適用する。窒素を含むシリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電率が高く、同等
の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、ゲート絶縁層を物理的に厚膜化すること
ができる。よって、トランジスタ320の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向
上させて、半導体装置の静電破壊を抑制することができる。
【0126】
また、酸化物半導体積層408と接する第2のゲート絶縁層406としては、酸化シリコ
ン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜等の酸素を含む絶縁層を適用する。第2のゲ
ート絶縁層406は化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む領域(酸素過剰領域)を含む
ことがより好ましい。酸化物半導体積層408と接する絶縁層が酸素過剰領域を含むこと
で、酸化物半導体積層408へ酸素を供給することが可能となり、酸化物半導体積層40
8からの酸素の脱離を防止するとともに酸素欠損を補填することが可能となるためである
。第2のゲート絶縁層406に酸素過剰領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて第
2のゲート絶縁層406を形成すればよい。又は、成膜後の第2のゲート絶縁層406に
酸素を導入して、酸素過剰領域を形成してもよい。
【0127】
第1のゲート絶縁層403に適用する窒素を含むシリコン膜としては、例えば、窒化シリ
コン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜が挙げられるが、酸素に対する窒素の
含有量が多い程高い比誘電率を有するため、窒化シリコン膜を適用することが好ましい。
また、酸化シリコンのエネルギーギャップが8eVであるのに対して窒化シリコンのエネ
ルギーギャップは5.5eVと小さく、それに応じて固有抵抗も小さいため、窒化シリコ
ン膜を用いることでより高いESD(Electro-Static Discharg
e)耐性を付与することが可能となる。なお、本明細書中において、酸化窒化シリコン膜
とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜と
は、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い膜を指す。
【0128】
ゲート電極層402と接するゲート絶縁層403aは、アンモニアの含有量が、少なくと
もゲート絶縁層403bよりも低い窒素を含むシリコン膜とする。アンモニアは、窒素原
子上の孤立電子対の働きにより、金属錯体の配位子となる。よって、例えば、ゲート電極
層402として銅を用いる場合、アンモニアの含有量が多いゲート絶縁層を該ゲート電極
層と接する態様で設けると以下式(1)に示す反応によって、銅がゲート絶縁層中に拡散
する恐れがある。
【0129】
【数1】
【0130】
トランジスタ320では、アンモニアの含有量が低い(少なくとも、ゲート絶縁層403
bよりも低い)ゲート絶縁層403aをゲート電極層402と接する態様で設けることで
、ゲート電極層402の材料(例えば、銅)が第1のゲート絶縁層403中へ拡散するこ
とを抑制することができる。即ち、ゲート絶縁層403aは、ゲート電極層402を構成
する金属材料に対するバリア膜として機能することができる。ゲート絶縁層403aを設
けることで、トランジスタの信頼性をより向上させることができる。
【0131】
ゲート絶縁層403bは、ゲート絶縁層403aよりも厚い膜厚を有し、膜中欠陥が低減
された窒素を含むシリコン膜とする。例えば、ゲート絶縁層403bの膜厚を300nm
以上400nm以下とする。また、電子スピン共鳴法(ESR:Electron Sp
in Resonance)によって計測される信号においてNcセンター(g値が2.
003)に現れる信号のスピン密度が、好ましくは1×1017spins/cm以下
、より好ましくは5×1016spins/cm以下である窒素を含むシリコン膜を適
用する。このように、膜中欠陥が低減された窒素を含むシリコン膜を厚い膜厚(例えば、
300nm以上)で設けることにより、ゲート絶縁層403bのESD耐性を、例えば3
00V以上とすることが可能である。
【0132】
また、ゲート絶縁層403cは、含有水素濃度の低減された窒素を含むシリコン膜とする
。ゲート絶縁層403cの水素濃度は、少なくともゲート絶縁層403bよりも低い濃度
とする。例えば、プラズマCVD法によりゲート絶縁層403cを成膜する場合に、供給
ガス中に含まれる水素濃度をゲート絶縁層403bの成膜に用いる供給ガスより低下させ
ることで、ゲート絶縁層403cの水素濃度をゲート絶縁層403bよりも低減すること
ができる。具体的には、ゲート絶縁層403b及びゲート絶縁層403cとして窒化シリ
コン膜を形成する場合には、ゲート絶縁層403b成膜のための供給ガスよりもアンモニ
ア流量を低減、またはアンモニアを用いずにゲート絶縁層403cを成膜すればよい。
【0133】
ゲート絶縁層403cとして含有水素濃度が低減された窒化シリコン膜を設けることで、
第2のゲート絶縁層406及び酸化物半導体積層408への水素、又は水素化合物(例え
ば、水)の混入を低減することができる。水素は酸化物半導体と結合することによって一
部がドナーとなり、キャリアである電子を生じさせてトランジスタのしきい値電圧をマイ
ナス方向に変動(シフト)させる要因となるため、水素濃度の低減された窒化シリコン膜
をゲート絶縁層403cとして設けることで、トランジスタの電気特性を安定化させるこ
とができる。また、水素濃度の低減された窒化シリコン膜をゲート絶縁層403cとして
設けることで、ゲート絶縁層403bに含有される水素又は水素化合物等の不純物の酸化
物半導体積層408への拡散を防止するバリア膜としての効果も奏する。
【0134】
本実施の形態では、第1のゲート絶縁層403を構成するゲート絶縁層403a、ゲート
絶縁層403b及びゲート絶縁層403cとして窒化シリコン膜を用い、第2のゲート絶
縁層406として酸化窒化シリコン膜を用い、各ゲート絶縁層はプラズマCVD法によっ
て連続的に形成するものとする。具体的には、シラン(SiH)と窒素(N)の混合
ガスを供給してゲート絶縁層403aとなる窒化シリコン膜を成膜した後、供給ガスをシ
ラン(SiH)、窒素(N)及びアンモニア(NH)の混合ガスに切り替えて、ゲ
ート絶縁層403bとなる窒化シリコン膜を成膜し、その後、供給ガスを、シラン(Si
)と窒素(N)の混合ガスに切り替えて、ゲート絶縁層403cとなる窒化シリコ
ン膜を成膜し、その後、供給ガスをシラン(SiH)及び一酸化二窒素(NO)に切
り替えて、第2のゲート絶縁層406となる酸化窒化シリコン膜を成膜する。
【0135】
ゲート絶縁層403aの膜厚は、30nm以上100nm以下、好ましくは30nm以上
50nm以下とすることが好ましい。また、トランジスタの静電破壊対策として設けるゲ
ート絶縁層403bの膜厚は300nm以上400nm以下とすることが好ましく、酸化
物半導体積層408への水素の拡散を防止するバリア膜として機能するゲート絶縁層40
3cの膜厚は、25nm以上150nm以下とすることが好ましい。また、第2のゲート
絶縁層406の膜厚は、25nm以上100nm以下とすることが好ましい。但し、第1
のゲート絶縁層403の膜厚(ゲート絶縁層403a、ゲート絶縁層403b及びゲート
絶縁層403cの膜厚の合計)と、第2のゲート絶縁層406の膜厚の合計を、355n
m以上550nm以下とするように、各ゲート絶縁層の膜厚を適宜調整することが好まし
い。
【0136】
なお、図10(B)に示すトランジスタ330のように、第1のゲート絶縁層403と第
2のゲート絶縁層406との積層を含むゲート絶縁層を、酸化物半導体層408b及び酸
化物半導体層408aの積層よりなる酸化物半導体積層408と組み合わせて用いること
も可能である。
【0137】
本実施の形態で示すトランジスタは、ソース電極層又はドレイン電極層の構成元素がチャ
ネルに拡散することを抑制するバッファ層として機能する第1の酸化物半導体層と、チャ
ネルとして機能する第2の酸化物半導体層と、を含んで構成される。これによって、トラ
ンジスタのバックチャネル側に形成されうる界面準位の影響を低減することができる。ま
た、本実施の形態で示すトランジスタは、チャネルとして機能する酸化物半導体層とゲー
ト絶縁層との間に設けられ、チャネルのゲート絶縁層側界面の劣化を防止するためのバッ
ファ層として機能する第3の酸化物半導体層を含むことがより好ましい。第3の酸化物半
導体層を含むことで、トランジスタの光劣化(例えば、光負バイアス劣化)を低減するこ
とができ、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0138】
また、本実施の形態で示すトランジスタは、ゲート絶縁層として、ゲート電極層の構成元
素(例えば、銅)に対するバリア膜として機能する窒素を含むシリコン膜、厚膜(例えば
、膜厚300nm)の膜中欠陥の低減された窒素を含むシリコン膜、及び、水素濃度が低
減され、水素に対するブロッキング性を有する窒素を含むシリコン膜を含む第1のゲート
絶縁層と、酸素を含む第2のゲート絶縁層との積層構造を有するトランジスタである。よ
って、本実施の形態のトランジスタは、電気特性変動が抑制され、且つ静電破壊が抑制さ
れている。このようなトランジスタを含むことで、信頼性の高い半導体装置を歩留まりよ
く提供することができる。
【0139】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0140】
(実施の形態3)
実施の形態1又は2に示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装
置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部又は全
体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0141】
図4(A)において、基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シ
ール材4005が設けられ、基板4006によって封止されている。図4(A)において
は、基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、I
Cチップ、又は別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された
走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また信号線駆動回
路4003と走査線駆動回路4004を通して画素部4002に与えられる各種信号及び
電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4
018bから供給されている。
【0142】
図4(B)及び図4(C)において、基板4001上に設けられた画素部4002と、走
査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画
素部4002と、走査線駆動回路4004の上に基板4006が設けられている。よって
画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、基板4001とシール材4005と基
板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図4(B)及び(C)において
は、基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、I
Cチップ、又は別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された
信号線駆動回路4003が実装されている。図4(B)及び図4(C)においては、信号
線駆動回路4003と走査線駆動回路4004を通して画素部4002に与えられる各種
信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0143】
また図4(B)及び図4(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、基板
4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を
別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部又は走査線駆動回路の一部のみを
別途形成して実装してもよい。
【0144】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Ch
ip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape A
utomated Bonding)方法などを用いることができる。図4(A)は、C
OG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、
図4(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図4(C
)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0145】
なお、表示装置とは、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントロー
ラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。すなわち、本明細書中におけ
る表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指
す。また、表示素子が封止された状態にあるパネルだけでなく、コネクター、例えばFP
CもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられ
たモジュール、又は表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジ
ュールも全て表示装置に含むものとする。
【0146】
また基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、
実施の形態1又は2に示したトランジスタを適用することができる。
【0147】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(
発光表示素子ともいう)を用いることができる。発光素子は、電流又は電圧によって輝度
が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Lu
minescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インク表示装置(電子ペー
パー)など、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる
【0148】
半導体装置の一形態について、図4及び図5を用いて説明する。図5は、図4(B)のM
-Nにおける断面図に相当する。図5では表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置
の例を示す。
【0149】
但し、表示装置は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010が表示素子と電気
的に接続して構成され、該表示素子としては表示を行うことができれば特に限定されず、
様々な表示素子を用いることができる。
【0150】
図4及び図5で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を
有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018(4018a
、4018b)が有する端子と異方性導電層4019を介して、電気的に接続されている
【0151】
接続端子電極4015は、第1の電極層4034と同じ導電層から形成され、端子電極4
016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導
電層で形成されている。
【0152】
また基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トラン
ジスタを複数有しており、図4及び図5では、画素部4002に含まれるトランジスタ4
010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。
図5では、トランジスタ4010、4011上には絶縁層4032が設けられている。
【0153】
トランジスタ4010、4011としては、実施の形態1又は2に示したトランジスタを
適用することができる。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ310と
同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。トランジスタ4010、4011
は、ボトムゲート構造のトランジスタである。
【0154】
トランジスタ4010、4011は、ソース電極層又はドレイン電極層の構成元素がチャ
ネルに拡散することを抑制するバッファ層として機能する第1の酸化物半導体層と、チャ
ネルとして機能する第2の酸化物半導体層と、チャネルとして機能する酸化物半導体層と
ゲート絶縁層との間に設けられ、チャネルのゲート絶縁層側界面の劣化を防止するための
バッファ層として機能する第3の酸化物半導体層と、を含んで構成される。よって、トラ
ンジスタ4010、4011はバックチャネル側に形成されうる界面準位の影響を低減さ
れるとともに、トランジスタの光劣化(例えば、光負バイアス劣化)を低減された信頼性
の高いトランジスタである。
【0155】
また、駆動回路用のトランジスタ4011の酸化物半導体層のチャネル形成領域と重なる
位置にさらに導電層を設けてもよい。導電層を酸化物半導体層のチャネル形成領域と重な
る位置に設けることによって、トランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低
減することができる。また、導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同
じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる
。また、導電層の電位がフローティング状態であってもよい。
【0156】
また、該導電層は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(トランジスタを含
む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。
導電層の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な
特性が変動することを防止することができる。
【0157】
図5において、液晶素子4013は、第1の電極層4034、第2の電極層4031、及
び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する
絶縁層4038、4033が設けられている。第2の電極層4031は基板4006側に
設けられ、第1の電極層4034と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積
層する構成となっている。
【0158】
第1の電極層4034、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸
化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化
物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物
、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材
料を用いることができる。
【0159】
また、第1の電極層4034、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン
(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(N
b)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタ
ン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、
又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することがで
きる。
【0160】
また、第1の電極層4034、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリ
マーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子として
は、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリン又
はその誘導体、ポリピロール又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体、若しくは
アニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体な
どがあげられる。
【0161】
またスペーサ4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサ
であり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお
球状のスペーサを用いていてもよい。
【0162】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、強誘電性液晶、反強誘
電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、低分子化合物でも高分子化合物
でもよい。これらの液晶材料(液晶組成物)は、条件により、コレステリック相、スメク
チック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0163】
また、液晶層4008に、配向膜を用いないブルー相を発現する液晶組成物を用いてもよ
い。この場合、液晶層4008と、第1の電極層4034及び第2の電極層4031とは
接する構造となる。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していく
と、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は、液晶
及びカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて発現させることができる。また、ブルー
相が発現する温度範囲を広げるために、ブルー相を発現する液晶組成物に重合性モノマー
及び重合開始剤などを添加し、高分子安定化させる処理を行って液晶層を形成することも
できる。ブルー相を発現する液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配
向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビン
グ処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止すること
ができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表
示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0164】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011
Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細
書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0165】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリー
ク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大
きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。本明細書に開示する酸化
物半導体層を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して
1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分であ
る。
【0166】
本明細書に開示する酸化物半導体層を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(
オフ電流値)を低く制御することができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を
長くすることができ、書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度
を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0167】
また、本明細書に開示する酸化物半導体層を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果
移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このようなトランジスタを液晶
表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用する
ドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。また、画素部においても
、このようなトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0168】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-P
lane-Switching)モード、FFS(Fringe Field Swit
ching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned
Micro-cell)モード、OCB(Optical Compensated B
irefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqui
d Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liq
uid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0169】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した
透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、
例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)
モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード
、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる
。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、
液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は
、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である
。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向
に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれ
る方法を用いることができる。
【0170】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射
防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基
板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用
いてもよい。
【0171】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いる
ことができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは
赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)
、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、
色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明
はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用する
こともできる。
【0172】
図11に、図5に示す表示装置において、基板4006に設けられた第2の電極層403
1と電気的に接続するための共通接続部(パッド部)を、基板4001上に形成する例を
示す。
【0173】
共通接続部は、基板4001と基板4006とを接着するためのシール材と重なる位置に
配置され、シール材に含まれる導電性粒子を介して第2の電極層4031と電気的に接続
される。又は、シール材と重ならない箇所(但し、画素部を除く)に共通接続部を設け、
共通接続部に重なるように導電性粒子を含むペーストをシール材とは別途設けて第2の電
極層4031と電気的に接続してもよい。
【0174】
図11(A)は、共通接続部の断面図であり、図11(B)に示す上面図のG1-G2に
相当する。
【0175】
共通電位線491は、ゲート絶縁層4020上に設けられ、図5に示すトランジスタ40
10、4011のソース電極層又はドレイン電極層と同じ材料及び同じ工程で作製される
【0176】
また、共通電位線491は、絶縁層4032で覆われ、絶縁層4032は、共通電位線4
91と重なる位置に複数の開口部を有している。この開口部は、トランジスタ4010の
ソース電極層又はドレイン電極層の一方と、第1の電極層4034とを接続するコンタク
トホールと同じ工程で作製される。
【0177】
また、共通電極492は、絶縁層4032上に設けられ、接続端子電極4015や、画素
部の第1の電極層4034と同じ材料及び同じ工程で作製される。
【0178】
このように、画素部4002のスイッチング素子の作製工程と共通させて共通接続部を作
製することができる。
【0179】
共通電極492は、シール材に含まれる導電性粒子と接触する電極であり、基板4006
の第2の電極層4031と電気的に接続が行われる。
【0180】
また、図11(C)に示すように、共通電位線491を、トランジスタ4010、401
1のゲート電極層と同じ材料、同じ工程で作製してもよい。
【0181】
図11(C)に示す共通接続部において、共通電位線491は、ゲート絶縁層4020及
び絶縁層4032の下層に設けられ、ゲート絶縁層4020及び絶縁層4032は、共通
電位線491と重なる位置に複数の開口部を有する。該開口部は、トランジスタ4010
のソース電極層又はドレイン電極層の一方と第1の電極層4034とを接続するコンタク
トホールと同じ工程で絶縁層4032をエッチングした後、さらにゲート絶縁層4020
を選択的にエッチングすることで形成される。
【0182】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素
子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料
が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機E
L素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0183】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔
がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャ
リア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成
し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このよう
な発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。本実施の形態では、発光素子として有
機EL素子を用いる例を示す。
【0184】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分
類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有
するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー-ア
クセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、
さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利
用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明す
る。
【0185】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そ
して、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出
す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の
面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用す
ることができる。
【0186】
図6(A)(B)、及び図13に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。
【0187】
図6(A)は発光装置の平面図であり、図6(A)中の一点鎖線S1-T1、S2-T2
、及びS3-T3で切断した断面が図6(B)に相当する。また、図13は、図6(A)
の一点鎖線S4-T4で切断した断面図に相当する。なお、図6(A)の平面図において
は、電界発光層542及び第2の電極層543は省略してあり図示していない。
【0188】
図6に示す発光装置は、基板500上に、トランジスタ510、容量素子520、配線層
交差部530を有しており、トランジスタ510は発光素子540と電気的に接続してい
る。なお、図6は基板500を通過して発光素子540からの光を取り出す、下面射出型
構造の発光装置である。
【0189】
トランジスタ510としては、実施の形態1又は2に示したトランジスタを適用すること
ができる。本実施の形態では、実施の形態2で示したトランジスタ330と同様な構造を
有するトランジスタを適用する例を示す。トランジスタ510は、ボトムゲート構造のト
ランジスタである。
【0190】
トランジスタ510はゲート電極層511a、511b、ゲート絶縁層502a、502
b、502cを含むゲート絶縁層502、酸化物半導体層512b、酸化物半導体層51
2aを含む酸化物半導体積層512、ソース電極層又はドレイン電極層として機能する導
電層513a、513bを含む。また、トランジスタ510上には絶縁層525が形成さ
れている。
【0191】
容量素子520は、導電層521a、521b、ゲート絶縁層502、酸化物半導体層5
22b、酸化物半導体層522aを含む酸化物半導体積層522、導電層523を含み、
導電層521a、521bと導電層523とで、ゲート絶縁層502及び酸化物半導体積
層522を挟む構成とすることで容量を形成する。
【0192】
配線層交差部530は、ゲート電極層511a、511bと、導電層533との交差部で
あり、ゲート電極層511a、511bと、導電層533とは、間にゲート絶縁層502
を介して交差する。
【0193】
本実施の形態においては、ゲート電極層511a及び導電層521aとして膜厚30nm
のチタン膜を用い、ゲート電極層511b及び導電層521bとして膜厚200nmの銅
膜を用いる。よって、ゲート電極層はチタン膜と銅膜との積層構造となる。
【0194】
トランジスタ510は、チャネルとして機能する酸化物半導体層512bと、導電層51
3a及び導電層513bの構成元素がチャネルに拡散することを抑制するバッファ層とし
て機能する酸化物半導体層512aとを含んで構成される。よって、トランジスタ510
はバックチャネル側に形成されうる界面準位の影響を低減された、信頼性の高いトランジ
スタである。
【0195】
また、トランジスタ510は、ゲート絶縁層502cとしてアンモニアの含有量の低減さ
れた銅のバリア膜として機能する窒素を含むシリコン膜を含み、ゲート絶縁層502aと
して厚膜(例えば、膜厚300nm)の膜中欠陥の低減された窒素を含むシリコン膜を含
み、ゲート絶縁層502bとして、水素濃度の低減された窒素を含むシリコン膜を有する
トランジスタである。このような構成とすることで、トランジスタ510の電気特性を良
好とすることができ、またトランジスタ510の静電破壊を防止することができる。よっ
て、信頼性の高い半導体装置を歩留まりよく提供することが可能となる。
【0196】
トランジスタ510、容量素子520、及び配線層交差部530上には層間絶縁層504
が形成され、層間絶縁層504上において発光素子540と重畳する領域にカラーフィル
タ層505が設けられている。層間絶縁層504及びカラーフィルタ層505上には平坦
化絶縁層として機能する絶縁層506が設けられている。
【0197】
絶縁層506上に第1の電極層541、電界発光層542、第2の電極層543の順に積
層した積層構造を含む発光素子540が設けられている。発光素子540とトランジスタ
510とは、導電層513aに達する絶縁層506及び層間絶縁層504に形成された開
口において、第1の電極層541及び導電層513aが接することによって電気的に接続
されている。なお、第1の電極層541の一部及び該開口を覆うように隔壁507が設け
られている。
【0198】
絶縁層506には膜厚1500nmの感光性のアクリル膜、隔壁507には膜厚1500
nmの感光性のポリイミド膜を用いることができる。
【0199】
カラーフィルタ層505としては、例えば有彩色の透光性樹脂を用いることができる。有
彩色の透光性樹脂としては、感光性、非感光性の有機樹脂を用いることができるが、感光
性の有機樹脂層を用いるとレジストマスク数を削減することができるため、工程が簡略化
し好ましい。
【0200】
有彩色は、黒、灰、白などの無彩色を除く色であり、カラーフィルタ層は、着色された有
彩色の光のみを透過する材料で形成される。有彩色としては、赤色、緑色、青色などを用
いることができる。また、シアン、マゼンダ、イエロー(黄)などを用いてもよい。着色
された有彩色の光のみを透過するとは、カラーフィルタ層における透過光は、その有彩色
の光の波長にピークを有するということである。カラーフィルタ層は、含ませる着色材料
の濃度と光の透過率の関係に考慮して、最適な膜厚を適宜制御するとよい。例えば、カラ
ーフィルタ層505の膜厚は1500nm以上2000nm以下とすればよい。
【0201】
隔壁507は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材
料を用い、第1の電極層541上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を
持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0202】
電界発光層542は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成さ
れていてもどちらでもよい。
【0203】
発光素子540に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層5
43及び隔壁507上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒
化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。
【0204】
また、発光素子540に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、発光素子
540を覆う有機化合物を含む層を蒸着法により形成してもよい。
【0205】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、
位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよ
い。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により
反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0206】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能であ
る。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙
と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能と
いう利点を有している。
【0207】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と
、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒に複数分散された
ものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒
子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。
なお、第1の粒子又は第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないもの
である。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0208】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものである。カ
ラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0209】
また、平坦化絶縁層として機能する絶縁層506は、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾ
シクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いる
ことができる。また上記有機材料の他に、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、B
PSG(リンボロンガラス)等の低誘電率材料(low-k材料)を用いることができる
。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層506を形成
してもよい。
【0210】
絶縁層506の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、スピ
ンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、スクリーン印刷
、オフセット印刷等を用いることができる。
【0211】
第1の電極層541、第2の電極層543としては、図5に示す表示装置の第1の電極層
4034、第2の電極層4031と同様の材料を適用することができる。
【0212】
本実施の形態においては、図6に示す発光装置は下面射出型なので、第1の電極層541
は透光性、第2の電極層543は反射性を有する。よって、第1の電極層541に金属膜
を用いる場合は透光性を保てる程度膜厚を薄く、第2の電極層543に透光性を有する導
電層を用いる場合は、反射性を有する導電層を積層するとよい。
【0213】
また、駆動回路保護用の保護回路を設けてもよい。保護回路は、非線形素子を用いて構成
することが好ましい。
【0214】
以上のように実施の形態1又は2で示したトランジスタを適用することで、様々な機能を
有する半導体装置を提供することができる。
【0215】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0216】
(実施の形態4)
実施の形態1又は2に示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセ
ンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0217】
図7(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図7(A)はフォ
トセンサの等価回路であり、図7(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0218】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他
方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640
は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレイン
の他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。ト
ランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォ
トセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0219】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体層を用いるトランジスタと明確に
判明できるように、酸化物半導体層を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載して
いる。図7(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は実施の形態1又
は2に示したトランジスタが適用でき、酸化物半導体層を用いるトランジスタである。本
実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ320と同様な構造を有するトラン
ジスタを適用する例を示す。トランジスタ640は、ボトムゲート構造のトランジスタで
ある。
【0220】
図7(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に
示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(素子基板)上に、センサとして機能す
るフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード
602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている
【0221】
トランジスタ640上には絶縁層632、層間絶縁層633、層間絶縁層634が設けら
れている。フォトダイオード602は、層間絶縁層633上に形成された電極層641b
と、電極層641b上に順に積層された第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、
及び第3半導体膜606cと、層間絶縁層634上に設けられ、第1乃至第3の半導体膜
を介して電極層641bと電気的に接続する電極層642と、電極層641bと同じ層に
設けられ、電極層642と電気的に接続する電極層641aと、を有している。
【0222】
電極層641bは、層間絶縁層634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極
層642は電極層641aを介して導電層645と電気的に接続している。導電層645
は、トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード60
2はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0223】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜
606bとして高抵抗な半導体膜(i型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の
導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0224】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルフ
ァスシリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の
不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法に
より形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、S
、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。ま
た、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入
法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等に
より不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。こ
の場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、
又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上5
0nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0225】
第2半導体膜606bは、i型半導体膜(真性半導体膜)であり、アモルファスシリコン
膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモル
ファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン
(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、S
iCl、SiF等を用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、LPCVD法、
気相成長法、スパッタリング法等により行ってもよい。第2半導体膜606bの膜厚は2
00nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0226】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含むアモル
ファスシリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元
素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成す
る。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si
SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物
元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて
該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物
元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にア
モルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッ
タリング法等を用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以
下となるよう形成することが好ましい。
【0227】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cは、ア
モルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモ
ルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半
導体を用いて形成してもよい。
【0228】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型の
フォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、p
in型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602
が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電
型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電層を用
いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0229】
トランジスタ640は、ソース電極層又はドレイン電極層の構成元素がチャネルに拡散す
ることを抑制するバッファ層として機能する第1の酸化物半導体層と、チャネルとして機
能する第2の酸化物半導体層と、チャネルとして機能する酸化物半導体層とゲート絶縁層
631との間に設けられ、チャネルのゲート絶縁層631側界面の劣化を防止するための
バッファ層として機能する第3の酸化物半導体層と、を含んで構成される。よって、トラ
ンジスタ640はバックチャネル側に形成されうる界面準位の影響を低減されるとともに
、トランジスタの光劣化(例えば、光負バイアス劣化)を低減された信頼性の高いトラン
ジスタである。
【0230】
絶縁層632、層間絶縁層633、層間絶縁層634としては、絶縁性材料を用いて、そ
の材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、スピンコート、ディップ、スプ
レー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、スクリーン印刷、オフセット印刷等を用い
て形成することができる。
【0231】
層間絶縁層633、634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁層として機能す
る絶縁層が好ましい。層間絶縁層633、634としては、例えばポリイミド、アクリル
樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機
絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low-
k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等
の単層、又は積層を用いることができる。
【0232】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取
ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いる
ことができる。
【0233】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0234】
(実施の形態5)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用すること
ができる。電子機器としては、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機とも
いう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタ
ルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、遊技機
(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子機器の具体
例を図8に示す。
【0235】
図8(A)は、表示部を有するテーブル9000を示している。テーブル9000は、筐
体9001に表示部9003が組み込まれており、表示部9003により映像を表示する
ことが可能である。なお、4本の脚部9002により筐体9001を支持した構成を示し
ている。また、電力供給のための電源コード9005を筐体9001に有している。
【0236】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9003に用いることが可能であ
り、電子機器に高い信頼性を付与することができる。
【0237】
表示部9003は、タッチ入力機能を有しており、テーブル9000の表示部9003に
表示された表示ボタン9004を指などで触れることで、画面操作や、情報を入力するこ
とができ、また他の家電製品との通信を可能とする、又は制御を可能とすることで、画面
操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、実施の形態
3に示したイメージセンサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9003にタッチ
入力機能を持たせることができる。
【0238】
また、筐体9001に設けられたヒンジによって、表示部9003の画面を床に対して垂
直に立てることもでき、テレビジョン装置としても利用できる。狭い部屋においては、大
きな画面のテレビジョン装置は設置すると自由な空間が狭くなってしまうが、テーブルに
表示部が内蔵されていれば、部屋の空間を有効に利用することができる。
【0239】
図8(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100は、
筐体9101に表示部9103が組み込まれており、表示部9103により映像を表示す
ることが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持した構
成を示している。
【0240】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キー
9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示され
る映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作機
9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0241】
図8(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。テレ
ビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さら
にモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(
送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報
通信を行うことも可能である。
【0242】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9103、9107に用いること
が可能であり、テレビジョン装置、及びリモコン操作機に高い信頼性を付与することがで
きる。
【0243】
図8(C)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キー
ボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。
【0244】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9203に用いることが可能であ
り、コンピュータに高い信頼性を付与することができる。
【0245】
図9(A)及び図9(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。図9(A)は、開
いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部963
1b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り
替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0246】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9631a、表示部9631bに
用いることが可能であり、信頼性の高いタブレット型端末とすることが可能となる。
【0247】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示され
た操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部963
1aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域
がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部963
1aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部96
31aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示
画面として用いることができる。
【0248】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部
をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード
表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで
表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0249】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタ
ッチ入力することもできる。
【0250】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切
り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイ
ッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の
光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサ
だけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内
蔵させてもよい。
【0251】
また、図9(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示して
いるが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の
品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルと
してもよい。
【0252】
図9(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池963
3、充放電制御回路9634を有する。なお、図9(B)では充放電制御回路9634の
一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示し
ている。
【0253】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態に
することができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐
久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0254】
また、この他にも図9(A)及び図9(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(
静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表
示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機
能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することが
できる。
【0255】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、
表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐
体9630の片面又は両面に設けることができ、バッテリー9635の充電を効率的に行
う構成とすることができる。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用
いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0256】
また、図9(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図9(C)に
ブロック図を示し説明する。図9(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、
DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部
9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コン
バータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図9(B)に示す充放電制御回路963
4に対応する箇所となる。
【0257】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。
太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCD
Cコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽
電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ96
37で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部96
31での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー96
35の充電を行う構成とすればよい。
【0258】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧
電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッ
テリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受
信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成
としてもよい。
【0259】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【実施例0260】
本実施例では、酸化物半導体層を積層させたトランジスタにおいて、各酸化物半導体層に
含有されるソース電極層又はドレイン電極層の構成元素の濃度の測定結果を示す。具体的
には、ソース電極層及びドレイン電極層として銅膜を含む電極層を形成し、各酸化物半導
体層における銅濃度の測定した結果を示す。銅濃度は、裏面からのSIMS(Secon
dary Ion Mass Spectrometry)によって測定した。
【0261】
本実施例において、測定に用いたトランジスタの作製方法を以下に説明する。本実施例に
おいては、実施の形態1のトランジスタ300と同様の構成を有するトランジスタを作製
した。以下では、トランジスタ300と同じ符号を用いて説明する。
【0262】
まず、基板400上にゲート電極層402として、膜厚100nmのタングステン膜を形
成した。
【0263】
次いで、ゲート電極層402を覆うゲート絶縁層404として、プラズマCVD法によっ
て膜厚50nmの窒化シリコン膜と膜厚200nmの酸化窒化シリコン膜を連続的に形成
した。
【0264】
窒化シリコン膜は、プラズマCVD装置の処理室の圧力を60Paに制御し、27.12
MHzの高周波電源で150Wの電力を供給して、基板温度を350℃として、シランと
窒素の混合ガス(SiH:N=50sccm:5000sccm)を供給して成膜し
た。なお、該プラズマCVD装置は電極面積が6000cmである平行平板型のプラズ
マCVD装置である。また、酸化窒化シリコン膜の成膜は、同じ処理室内において、圧力
を40Paとし、高周波電源の電力及び基板温度を維持したまま、シランと一酸化二窒素
の混合ガス(SiH:NO=20sccm:3000sccm)を供給して成膜した
【0265】
次いで、ゲート絶縁層404上に、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]の金属酸
化物ターゲットを用いたスパッタリング法により、膜厚10nmの酸化物半導体層408
bを形成した。成膜条件は、酸素50%雰囲気下、圧力0.6Pa、電源電力5kW、基
板温度170℃とした。
【0266】
その後、酸化物半導体層408b上に、In:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]の金
属酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により、膜厚30nmの酸化物半導体層4
08aを形成した。成膜条件は、酸素50%雰囲気下、圧力0.6Pa、電源電力5kW
、基板温度170℃とした。
【0267】
島状の酸化物半導体積層408に加工後、酸化物半導体積層408を窒素雰囲気下で45
0℃、1時間の加熱処理を行った後、窒素及び酸素雰囲気下で450℃、1時間の加熱処
理を行った。
【0268】
次いで、酸化物半導体積層408に接するソース電極層410a及びドレイン電極層41
0bを形成した。
【0269】
本実施例では、ゲート絶縁層404及び酸化物半導体積層408上に、膜厚35nmのチ
タン膜と、膜厚200nmの銅膜を積層させ、該チタン膜及び銅膜の一部を選択的にエッ
チングすることで、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bとした。
【0270】
その後、酸化物半導体積層408、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bを
覆う絶縁層412として、膜厚400nmの酸化窒化シリコン膜を、プラズマCVD法に
よって成膜した。
【0271】
酸化窒化シリコン膜の成膜条件は、プラズマCVD装置の処理室の圧力を200Paに制
御し、27.12MHzの高周波電源で1500Wの電力を供給して、基板温度を220
℃として、シランと一酸化二窒素の混合ガス(SiH:NO=160sccm:40
00sccm)を供給した。
【0272】
窒素及び酸素雰囲気下で300℃、1時間の加熱処理を行った後、平坦化膜として、アク
リル樹脂膜を膜厚1.5μmで形成した。この後、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加
熱処理を行った。
【0273】
以上によって、本実施例のトランジスタを作製した。
【0274】
作製したトランジスタに含まれる酸化物半導体積層408の銅濃度を裏面から(ここでは
、基板400側から)SIMSによって測定した。図12にSIMSの測定結果を示す。
なお、測定は、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bの間の領域(チャネル
が形成される領域)について行った。
【0275】
図12より、酸化物半導体積層408内に、ソース電極層410a及びドレイン電極層4
10bの構成元素である銅の拡散が見られるものの、該銅の拡散は、酸化物半導体層40
8a内にとどまっており、トランジスタの電流経路(チャネル)として機能する酸化物半
導体層408bへは到達していないことが確認された。
【0276】
以上より、酸化物半導体積層408において、電流経路となる酸化物半導体層408bの
バックチャネル側に酸化物半導体層408aを設けることで、該酸化物半導体層408a
をソース電極層410a及びドレイン電極層410bの構成元素の拡散を抑制するための
バッファ層として機能させることが可能であることが示された。よって、酸化物半導体積
層408を含むトランジスタの電気特性の変動を抑制することが可能であることが示唆さ
れる。
【符号の説明】
【0277】
300 トランジスタ
310 トランジスタ
320 トランジスタ
330 トランジスタ
400 基板
402 ゲート電極層
403 ゲート絶縁層
403a ゲート絶縁層
403b ゲート絶縁層
403c ゲート絶縁層
404 ゲート絶縁層
406 ゲート絶縁層
408 酸化物半導体積層
408a 酸化物半導体層
408b 酸化物半導体層
408c 酸化物半導体層
410a ソース電極層
410b ドレイン電極層
412 絶縁層
491 共通電位線
492 共通電極
500 基板
502 ゲート絶縁層
502a ゲート絶縁層
502b ゲート絶縁層
502c ゲート絶縁層
504 層間絶縁層
505 カラーフィルタ層
506 絶縁層
507 隔壁
510 トランジスタ
511a ゲート電極層
511b ゲート電極層
512 酸化物半導体積層
512a 酸化物半導体層
512b 酸化物半導体層
513a 導電層
513b 導電層
520 容量素子
521a 導電層
521b 導電層
522 酸化物半導体積層
522a 酸化物半導体層
522b 酸化物半導体層
523 導電層
525 絶縁層
530 配線層交差部
533 導電層
540 発光素子
541 電極層
542 電界発光層
543 電極層
601 基板
602 フォトダイオード
606a 半導体膜
606b 半導体膜
606c 半導体膜
608 接着層
613 基板
631 ゲート絶縁層
632 絶縁層
633 層間絶縁層
634 層間絶縁層
640 トランジスタ
641a 電極層
641b 電極層
642 電極層
643 導電層
645 導電層
656 トランジスタ
658 フォトダイオードリセット信号線
659 ゲート信号線
671 フォトセンサ出力信号線
672 フォトセンサ基準信号線
4001 基板
4002 画素部
4003 信号線駆動回路
4004 走査線駆動回路
4005 シール材
4006 基板
4008 液晶層
4010 トランジスタ
4011 トランジスタ
4013 液晶素子
4015 接続端子電極
4016 端子電極
4018 FPC
4019 異方性導電層
4020 ゲート絶縁層
4031 電極層
4032 絶縁層
4033 絶縁層
4034 電極層
4035 スペーサ
4038 絶縁層
9000 テーブル
9001 筐体
9002 脚部
9003 表示部
9004 表示ボタン
9005 電源コード
9033 留め具
9034 スイッチ
9035 電源スイッチ
9036 スイッチ
9038 操作スイッチ
9100 テレビジョン装置
9101 筐体
9103 表示部
9105 スタンド
9107 表示部
9109 操作キー
9110 リモコン操作機
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングデバイス
9630 筐体
9631 表示部
9631a 表示部
9631b 表示部
9632a 領域
9632b 領域
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 バッテリー
9636 DCDCコンバータ
9637 コンバータ
9638 操作キー
9639 ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13