(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178373
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】メタルマスク
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231207BHJP
H05K 3/12 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
H01L21/92 604A
H05K3/12 610P
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177610
(22)【出願日】2023-10-13
(62)【分割の表示】P 2022179105の分割
【原出願日】2016-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】石川 樹一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 良弘
(57)【要約】
【課題】
ワーク3上の所定位置に導電性ピラー2を精度よく搭載することができるメタルマスクを提供する。
【解決手段】
本発明は、所定のパターンに対応した通孔12が設けられ、ワーク3上の所定位置に柱状の導電性ピラー2を搭載するメタルマスクを対象とする。通孔12は、マスク本体10の上面で開口して導電性ピラー2を通孔12の内部へ導入案内する導入孔部15と、導入孔部15の下側に設けられて導電性ピラー2を位置決めする保持孔部16とを備えている。そして、導入孔部15の高さ寸法をH3とし、保持孔部16の高さ寸法をH4とするとき、保持孔部16の高さ寸法H4が導入孔部15の高さ寸法H3と同じか、それよりも大きく設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体(10)に所定のパターンに対応した通孔(12)が設けられ、ワーク(3)上の所定位置に柱状の導電性ピラー(2)を搭載するメタルマスクであって、
前記通孔(12)は、前記マスク本体(10)の上面で開口して前記導電性ピラー(2)を前記通孔(12)の内部へ導入案内する導入孔部(15)と、該導入孔部(15)の下側に設けられて前記導電性ピラー(2)を位置決めする保持孔部(16)とを備えており、
前記導入孔部(15)の高さ寸法を(H3)とし、前記保持孔部(16)の高さ寸法を(H4)とするとき、前記保持孔部(16)の高さ寸法(H4)が前記導入孔部(15)の高さ寸法(H3)と同じか、それよりも大きく設定されていることを特徴とするメタルマスク。
【請求項2】
前記導入孔部(15)の高さ寸法(H3)と前記保持孔部(16)の高さ寸法(H4)の寸法比率が、(H3):(H4)=1:1~1:1.5の範囲内に設定されている請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項3】
前記保持孔部(16)は、ストレート孔で形成されており、
前記保持孔部(16)の開口径を(D1)とし、マスク本体(10)の上面における前記導入孔部(15)の開口径を(D2)とするとき、該保持孔部(16)の開口径(D1)は、前記導電性ピラー(2)の直径よりも大きく設定され、前記導入孔部(15)の上端の開口径(D2)は、保持孔部(16)の開口径(D1)よりも大きく設定されている請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項4】
前記マスク本体(10)の下面に、柱状或いはリブ状に形成された支持突起(35)が設けられている請求項1から3のいずれかひとつに記載のメタルマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の配列パターンに対応した通孔に導電性ピラーを落とし込んで、ワーク上の所定位置に導電性ピラーを搭載するためのメタルマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
メタルマスクの一例として、ワーク上の所定位置にはんだからなる導電性ボールを搭載するための配列用マスクは、例えば特許文献1に公知である。係る特許文献1の配列用マスクには、導電性ボールを落とし込むための開口部が複数形成されている。開口部は基板(ワーク)の電極パッドの形成パターンに対応するように設けられている。開口部の上端周縁にはスロープ状のボール誘導部が形成されており、ボール誘導部は、開口部に向かってなだらかに下り傾斜する傾斜面で構成されている。落とし込み時には、配列用マスク上に多数個の導電性ボールを供給し、スキージブラシ等で分散させることにより、ボール誘導部で導電性ボールを開口部へ向かって案内して、導電性ボールを円滑に開口部へと落とし込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、表面実装型のパッケージ化された電子素子などにおいて、回路基板と接続するための電極の形成パターンの高密度化が進んでおり、従来の導電性ボールに替えて、より高アスペクト比(高さ/径の比)で搭載間隔の狭ピッチ化が可能な円柱状の導電性ピラーが採用されつつある。特許文献1の配列用マスクでは、開口部およびボール誘導部の構造を好適化して、導電性ボールを円滑に落とし込めるようにしている。しかし、特許文献1の配列用マスクの構造を円柱状の導電性ピラーの配列用マスクに適用しても、同様の作用は得られない。それは、円柱状の導電性ピラーが開口部(配列通孔)に落ち込むためには、導電性ピラーの一端が開口部に指向していなければならない。さらに、導電性ピラーは一端を開口部に向けた状態でボール誘導部を滑り落ちる必要がある。しかし、なだらかに下り傾斜する傾斜面で形成されるボール誘導部では、導電性ピラーが滑り落ちるのは困難である。また、横臥姿勢の導電性ピラーの周面が開口部に面する状態でボール誘導部を転がり落ちると、開口部に落ち込むことができず導電性ピラーが開口部を塞いでしまい、当該開口部に導電性ピラーを落とし込むことができない。
【0005】
本発明の目的は、ワーク上の所定位置に導電性ピラーを精度よく搭載できるメタルマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の配列パターンに対応した配列通孔12に円柱状の導電性ピラー2を落とし込んで、ワーク3上の所定位置に導電性ピラー2を搭載する配列用マスクを対象とする。配列通孔12は、マスク本体10の表面で開口して導電性ピラー2を配列通孔12の内部へ導入案内する導入孔部15と、導入孔部15の下側に設けられて導電性ピラー2を位置決めする保持孔部16とを備え、導入孔部15の下端と保持孔部16の上端とは滑らかに連続している。導入孔部15は、マスク本体10の表面側に向かって拡開するベルマウス状に形成されており、保持孔部16は、同孔部16の開口径D1が導電性ピラー2の直径よりも僅かに大きく設定されるストレート孔で形成されていることを特徴とする。
【0007】
配列通孔12は、保持孔部16の下側に同孔部16の開口径D1よりも大きな開口径D3を有する逃げ孔部17を備えている構成を採ることができる。
【0008】
導入孔部15と保持孔部16の合計高さ寸法をH1とし、逃げ孔部17の高さ寸法をH2とするとき、前者の高さ寸法H1を後者の高さ寸法H2と同じか、それよりも大きく設定する。
【0009】
導入孔部15の高さ寸法をH3とし、保持孔部16の高さ寸法をH4とするとき、後者の高さ寸法H4を前者の高さ寸法H3と同じか、それよりも大きく設定する。
【0010】
導入孔部15の断面形状の曲率を、導入孔部15の周方向において大小に変化するように形成する。
【0011】
導入孔部15の断面形状の曲率を、一側縁から対向する他側縁に向かって大から小に漸次変化するように形成する。
【0012】
本発明は、所定の配列パターンに対応した配列通孔12に円柱状の導電性ピラー2を振り込むことで、ワーク3上の所定位置に導電性ピラー2を搭載する配列用マスクの製造方法を対象とする。配列用マスクの製造方法においては、母型21の表面に、逃げ孔部17に対応する一次レジスト体24を有する一次パターンレジスト25を設ける一次パターンニング工程と、一次パターンレジスト25の表面に、導入孔部15および保持孔部16に対応する二次レジスト体28を有する二次パターンレジスト29を設ける二次パターンニング工程と、母型21上に、電着金属を電着して電鋳層30を形成する電鋳工程とを含む。電鋳工程において、一次レジスト体24の上端縁を乗り越え、二次レジスト体28の上端縁を乗り越えない範囲で電着金属を電着して、ベルマウス状の導入孔部15を形成することを特徴とする。
【0013】
二次パターンニング工程において、二次レジスト体28の中心軸Q2を、一次レジスト体24の中心軸Q1と同一軸上に位置する状態で二次パターンレジスト29を設ける。
【0014】
二次パターンニング工程において、二次レジスト体28の中心軸Q2を、一次レジスト体24の中心軸Q1に対して偏寄配置した状態で二次パターンレジスト29を設ける。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電性ピラーの配列用マスクにおいては、配列通孔12を構成する導入孔部15と保持孔部16を滑らかに連続させ、導電性ピラー2を導入案内する導入孔部15を、マスク本体10の表面側に向かって拡開するベルマウス状に形成した。このように、ベルマウス状に形成した導入孔部15によれば、導電性ピラー2を配列通孔12へ落とし込む際に、横臥姿勢にある導電性ピラー2を直立姿勢へと姿勢変更させながら、導入孔部15の湾曲面に沿って落下させ、導電性ピラー2を配列通孔12へと導入案内することができる。詳しくは、横臥姿勢にある導電性ピラー2の重心位置が導入孔部15の上端縁を超えて配列通孔12上に位置した時に、配列通孔12上に位置する導電性ピラー2の一端を導入孔部15の上端縁を支点にして下向きに傾動させることができる。これにより、横臥姿勢にある導電性ピラー2を横臥姿勢から直立姿勢へと徐々に姿勢変更できる。さらに、直立姿勢への姿勢変更と同時に、導電性ピラー2を導入孔部15に沿って配列通孔12内へ滑り込ませることができる。従って、本発明の配列用マスクによれば、導電性ピラー2を配列通孔12へと円滑に落とし込むことができるので、ワーク3に対する導電性ピラー2の搭載作業を短時間で終了できる。
【0016】
また、開口径D1を導電性ピラー2の直径よりも僅かに大きく設定したストレート状の保持孔部16によれば、導入孔部15で導入案内されて配列通孔12へと落とし込まれた導電性ピラー2を、保持孔部16の内面で受止めて位置決めできる。従って、本発明の配列用マスクによれば、導電性ピラー2を保持孔部16で的確に位置決めでき、さらに、配列通孔12内における導電性ピラー2の傾きやずれ動きを阻止できるので、ワーク3上の所定位置に導電性ピラー2を精度よく搭載できる。
【0017】
保持孔部16の下側に、同孔部16の開口径D1よりも大きな開口径D3を有する逃げ孔部17を備える配列通孔12によれば、導電性ピラー2と保持孔部16の軸心方向の係合部分の長さを、逃げ孔部17が設けられていない配列通孔12に比べて小さくすることができる。従って、導電性ピラー2をワーク3に対して搭載した後、より少ない移動量でワーク3から配列用マスクを分離できるので、配列用マスクの分離時に導電性ピラー2が傾いたり位置ずれするのを抑制して、ワーク3上の所定位置に導電性ピラー2をより精度よく搭載できる。また、ワーク3上に配列用マスクを載置した時に、ワーク3と配列用マスクとの接触面積を可及的に小さくできる。これにより、配列用マスクをワーク3上に載置することによる配列用マスクおよびワーク3の傷つき等を抑制することができ、配列用マスクの耐久性の向上を図ることができる。さらに、ワーク3上の導電性ピラー2の搭載位置にはフラックスが塗布される場合があるが、このような場合でも、逃げ孔部17によりフラックスが配列用マスクに付着するのを防止して、配列用マスクの洗浄の手間を省くことができる。
【0018】
導入孔部15と保持孔部16の合計高さ寸法H1を、逃げ孔部17の高さ寸法H2と同じか、それよりも大きく設定すると、保持孔部16の下側に逃げ孔部17を設けた場合でも、十分な高さの導入孔部15と保持孔部16を形成することができる。従って、導入孔部15における導電性ピラー2の導入案内作用、および保持孔部16における導電性ピラー2の位置決め作用を的確に発揮させることができる。
【0019】
保持孔部16の高さ寸法H4を、導入孔部15の高さ寸法H3と同じか、それよりも大きく設定すると、保持孔部16における導電性ピラー2の位置保決め作用を可及的に大きく発揮させることができ、ワーク3上の所定位置に導電性ピラー2を精度よく搭載できる。
【0020】
導入孔部15の断面形状の曲率を、導入孔部15の周方向において変化するように形成すると、曲率の小さい部分では、導電性ピラー2の導入案内作用を大きく発揮させ、曲率の大きい部分では、保持孔部16の高さ寸法H4を大きくして、保持孔部16における導電性ピラー2の位置決め作用を大きく発揮させることができる。従って、導入孔部15の周方向において部分的に導電性ピラー2を落とし込みやすくすることができ、さらに落とし込んだ導電性ピラー2を的確に位置決めできる配列通孔12とすることができる。
【0021】
導入孔部15の断面形状の曲率を、一側縁から対向する他側縁に向かって大から小に漸次変化するように形成すると、例えば、曲率の小さい側が同一方向に指向するように配列通孔12を形成することにより、導電性ピラー2の落とし込み時に、スキージを曲率の小さい側から大きい側に向かって移動させることにより、より素早く配列通孔12へ導電性ピラー2を落とし込んで、搭載作業をより短時間で終了できる。
【0022】
本発明に係る導電性ピラーの配列用マスクの製造方法によれば、導入孔部15をベルマウス状に形成するための工程を別途行う必要なく、ベルマウス状の導入孔部15を有する配列通孔12を備えた配列用マスクを製造できる。詳しくは、一次レジスト体24の上端縁を乗り越えて成長する、電鋳金属の成長先端の縁部は四半円弧状に成長する。従って、電鋳工程において、一次レジスト体24の上端縁を乗り越え、しかも二次レジスト体28の上端縁を乗り越えない範囲で電着金属を電着するだけで、ベルマウス状の導入孔部15を形成することができる。従って、配列用マスクの製造過程における作業工程を短縮して、配列用マスクの製造コストの低減を図ることができる。
【0023】
二次パターンニング工程において、二次レジスト体28の中心軸Q2を、一次レジスト体24の中心軸Q1と同一軸状に位置する状態にすると、一次レジスト体24の上端縁を乗り越えて成長する距離を周方向で一様にできるので、導入孔部15の断面形状を周方向において同一に形成することができる。従って、導入孔部15における導電性ピラー2の導入案内作用を周方向において一様に発揮でき、いずれの方向からでも円滑に導電性ピラー2を落とし込むことができる配列通孔12を形成できる。
【0024】
二次パターンニング工程において、二次レジスト体28の中心軸Q2を、一次レジスト体24の中心軸Q1に対して偏寄配置すると、一次レジスト体24の上端縁を乗り越えて成長する距離を周方向で異ならせることができるので、導入孔部15の断面形状を周方向において曲率が大から小に漸次変化するように形成することができる。このとき、乗り越えて成長する距離が長いほど断面形状の曲率は小さくなる。これにより、曲率の小さい側では、導電性ピラー2の導入案内作用を大きく発揮させ、曲率の大きい側では、保持孔部16の高さ寸法H4を大きくして、保持孔部16における導電性ピラー2の位置決め作用を大きく発揮させることができる。従って、導電性ピラー2を落とし込みやすくしながら、落とし込んだ導電性ピラー2を的確に位置決めできる配列通孔12を、電鋳工程を行うだけで容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る導電性ピラーの配列用マスクの要部を示す縦断正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る導電性ピラーの配列用マスクの全体構造を説明するための斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る導電性ピラーの配列用マスクの縦断正面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る導電性ピラーの配列用マスクの製造方法を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る導電性ピラーの配列用マスクの製造方法を示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る導電性ピラーの配列用マスクの要部を示す縦断正面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る導電性ピラーの配列用マスクの要部を示す平面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る導電性ピラーの配列用マスクの製造方法を示す図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る導電性ピラーの配列用マスクの縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
図1から
図3に、本発明に係る
メタルマスクの第1実施形態を示す。
本実施形態では、メタルマスクの厚み方向を上下方向と規定する。なお、本実施形態の
図1から
図3における厚みや幅などの寸法は実際の様子を示したものではなく、それぞれ模式的に示したものである。他の図においても同様である。
導電性ピラーの配列用マスク
として適用されたメタルマスク(以下、単にマスクという)1は、LSIチップの電極ポスト形成における導電性ピラー2の搭載作業において使用される。
図3に示すように、導電性ピラー2は銅からなる円柱状のブロックであり、その直径寸法は80μmであり、高さ寸法は85μmである。
図2において、符号3は、マスク1による導電性ピラー2の搭載対象となるワークであり、このワーク3は、ガラスエポキシ基板のベース4に複数個の半導体チップ5を搭載したのちモールド封止して形成されている。ワーク3の上面には、半導体チップ5を囲むように入出力端子である電極6が所定のパターンで形成されている。なお、ワーク3は、電極ポストの形成後に
図2に一点鎖線で示すダイシングラインに沿ってダイシングされ個々のLSIチップに分割される。
【0027】
マスク1は、ニッケルからなる電着金属を素材として電鋳法によって形成されたマスク本体10と、マスク本体10を囲むように装着された額縁状の枠体11とからなる。マスク本体10の盤面には、電極6の形成パターンに合致する配列パターンに対応する多数独立の配列通孔(通孔)12が形成されている。この配列通孔12に導電性ピラー2を落とし込むことで、ワーク3上の所定位置に導電性ピラー2を搭載できる。枠体11はマスク本体10を補強しており、マスク本体10よりも肉厚の42アロイ、インバー材、スーパーインバー材、SUS430等の低熱線膨張係数の材質からなる。マスク本体10の外周縁に枠体11を接着剤等で接着することにより両者10・11は不離一体的に接合されている。なお、マスク本体10は、ニッケルコバルト等のニッケル合金、銅、その他の電着金属を素材として形成することができる。
【0028】
図1に示すように、配列通孔12は、マスク本体10の表面
(上面)で開口する導入孔部15と、導入孔部15の下側に設けられる保持孔部16とを備えており、導入孔部15の下端と保持孔部16の上端とは滑らかに連続させている。また、配列通孔12は、保持孔部16の下側に逃げ孔部17を備えている。
【0029】
導入孔部15は、マスク本体10の表面側に向かって拡開するベルマウス状に形成されており、配列通孔12に導電性ピラー2を落とし込む際に、導電性ピラー2を配列通孔12内へ導入案内する作用を有する。導入孔部15の断面形状は周方向において同一であり、導入孔部15における導電性ピラー2の導入案内作用を周方向において一様に発揮できる。本実施形態における導入孔部15の断面形状は、真円の四半円弧状に形成されている。
【0030】
保持孔部16は、開口径D1が導電性ピラー2の直径よりも僅かに大きく設定されるストレート孔状に形成されており、配列通孔12に落とし込まれた導電性ピラー2を位置決めする作用を有する。導電性ピラー2の外周面が保持孔部16の内周面と接触することにより傾きやずれ動きが阻止され、導電性ピラー2は位置決めされる。
【0031】
逃げ孔部17は、保持孔部16の開口径D1よりも大きな開口径D3を有するストレート孔状に形成されており、逃げ孔部17の中心軸P2は、保持孔部16の中心軸P1と同一軸上に位置している。本実施形態では、保持孔部16の開口径D1は85μmに設定し、導入孔部15上端の開口径D2は125μmに設定し、逃げ孔部17の開口径D3は145μmに設定した。
【0032】
導入孔部15と保持孔部16の合計高さ寸法H1は、逃げ孔部17の高さ寸法H2よりも大きく設定されており、前者の高さ寸法H1は50μmであり、後者の高さ寸法H2は40μmである。このように、配列通孔12の高さ寸法H1を、逃げ孔部17の高さ寸法H2より大きく設定すると、保持孔部16の下側に逃げ孔部17を設けた場合でも、十分な高さの導入孔部15と保持孔部16を形成することができる。従って、導入孔部15における導電性ピラー2の導入案内作用、および保持孔部16における導電性ピラー2の位置決め作用を的確に発揮させることができる。
【0033】
保持孔部16の高さ寸法H4は、導入孔部15の高さ寸法H3よりも大きく設定されており、後者の高さ寸法H3は20μmであり、前者の高さ寸法H4は30μmである。このように、保持孔部16の高さ寸法H4を、導入孔部15の高さ寸法H3よりも大きく設定すると、保持孔部16における導電性ピラー2の位置決め作用をさらに確実に発揮させることができる。
【0034】
マスク1を用いた導電性ピラー2のワーク3に対する搭載作業は、次のような手順で行われる。なお、この搭載作業は、ピラー供給装置、余剰ピラー回収装置、スキージブラシなどを備えた専用の配列装置によって行われる。ます、ワーク3の電極6の表面にフラックスをスクリーン印刷法により印刷塗布する。フラックスは、電極6の表面を活性化させ、リフロー後の電極6と導電性ピラー2との接合強度の向上を図る目的と、導電性ピラー2の搭載時にフラックスが持つ粘着性により導電性ピラー2を仮固定する目的のために塗布される。
【0035】
次いで、配列通孔12が電極6と一致するように、ワーク3上にマスク1を位置合わせしたうえで、マスク1を載置し固定する。このとき、逃げ孔部17によりワーク3とマスク1との接触面積を可及的に小さくできるので、マスク1をワーク3上に載置することによるマスク1およびワーク3の傷つき等を抑制することができ、マスク1の耐久性の向上を図ることができる。また、逃げ孔部17によりフラックスがマスク1に付着するのを防止して、マスク1の洗浄の手間を省くことができる。
【0036】
次いで、マスク1上に多数個の導電性ピラー2を供給し、スキージブラシを用いてマスク1上で導電性ピラー2を分散させて、それぞれの配列通孔12内に一つずつ導電性ピラー2を落とし込む。配列通孔12への導電性ピラー2を落とし込みは、以下のように行われる。スキージブラシにより分散された横臥姿勢にある導電性ピラー2の重心位置が、導入孔部15の上端縁を超えて配列通孔12上に位置すると、配列通孔12上に位置する導電性ピラー2の一端は、導入孔部15の上端縁を支点にして下向きに傾動する。これにより、横臥姿勢にある導電性ピラー2は横臥姿勢から直立姿勢へと徐々に姿勢変更される。さらに、直立姿勢への姿勢変更と同時に、導電性ピラー2は導入孔部15に沿って配列通孔12内へ滑り込む。これにて、導電性ピラー2は導入孔部15で導入案内されて配列通孔12へと円滑に落とし込まれる。配列通孔12へ落とし込まれた導電性ピラー2は、フラックスによる仮固定に加え、保持孔部16の内面で的確に位置決めされる。
【0037】
導電性ピラー2の落とし込みが終了したら、マスク1上に残存している余剰な導電性ピラー2を回収する。最後に、ワーク3とマスク1の固定を解除し、マスク1を持ち上げて分離することにより、ワーク3への導電性ピラー2の搭載作業が完了する。このとき、逃げ孔部17によって、導電性ピラー2と保持孔部16との係合部分の軸心方向の係合部分の長さを小さくしてあるので、少ない移動量でワーク3からマスク1を分離でき、マスク1の分離時に導電性ピラー2が傾いたり位置ずれするのを抑制できる。
【0038】
図4および
図5は、第1実施形態に係る配列用マスクの製造方法を示す。
(一次パターンニング工程)
図4(a)に示すように、導電性を有する例えばステンレスや真ちゅう製の母型21の表面全体にフォトレジスト層22を形成してから、逃げ孔部17に対応する円状の透光孔を有するガラスマスクからなるパターンフィルム23を密着させる。この状態で、紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行う。ここでのフォトレジスト層22は、ネガタイプのシート状感光性ドライフィルムレジストの一枚ないし数枚をラミネートして熱圧着により形成して、所定の厚みになるようにする。次いで、未露光部分のフォトレジスト層22を溶解除去することにより、
図4(b)に示すように、逃げ孔部17に対応する円盤状の一次レジスト体24を有する一次パターンレジスト25を得る。
【0039】
(二次パターンニング工程)
図4(c)に示すように、一次パターンレジスト25の形成部分を含む母型21の表面全体にフォトレジスト層26を形成し、その上面に保持孔部16に対応する円状の透光孔を有するガラスマスクからなるパターンフィルム27を密着させる。このとき、透光孔の中心と一次レジスト体24の中心軸Q1とが一致するように、パターンフィルム27を密着させる。この状態で、紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行う。ここでのフォトレジスト層26は、先に説明したフォトレジスト層22の形成手法と同様である。次いで、未露光部分のフォトレジスト層26を溶解除去することにより、
図4(d)に示すように、導入孔部15および保持孔部16に対応する円柱状の二次レジスト体28を有する二次パターンレジスト29を得る。なお、パターンフィルム27の透光孔の中心と一次レジスト体24の中心軸Q1とを一致させたので、円柱状の二次レジスト体28の中心軸Q2は、円盤状の一次レジスト体24の中心軸Q1と同一軸状に位置している。
【0040】
(電鋳工程)
上記母型21を建浴された電鋳槽に入れ、
図5(a)に示すように、一次レジスト体24の上端縁を乗り越え、しかも二次レジスト体28の上端縁を乗り越えない範囲で電着金属を電着して、電鋳層30、すなわちマスク本体10となる層を形成する。このとき、一次レジスト体24の上端縁を乗り越え成長する、電鋳金属の成長先端の縁部は四半円弧状に成長するので、母型21上に電着金属を電着するだけで、ベルマウス状の導入孔部15を形成することができる。以上より、導入孔部15をベルマウス状に形成するための工程を別途行う必要なく、ベルマウス状の導入孔部15を有する配列通孔12を備えた配列用マスクを製造できるので、配列用マスクの製造過程における作業工程を短縮して、配列用マスクの製造コストを低減できる。また、二次レジスト体28の中心軸Q2を、一次レジスト体24の中心軸Q1と同一軸状に位置する状態にしたので、導入孔部15の断面形状が周方向において同一な導入孔部15を形成できる。
【0041】
(剥離工程)
図5(b)に示すように、母型21から電鋳層30と、一次および二次パターンレジスト25・29とを剥離したうえで、一次および二次パターンレジスト25・29を溶解除去することにより、
図3に示すマスク本体10を得る。得られたマスク本体10の外周縁に枠体11を接着剤で接着して、両者10・11を不離一体的に接合することにより、配列用マスク1を得る。
【0042】
(第2実施形態)
図6および
図7は、本発明に係る導電性ピラーの配列用マスクの第2実施形態を示す。本実施形態においては、
図6に示すように、逃げ孔部17の中心軸P2に対して、保持孔部16の中心軸P1を偏寄配置し、これに伴い導入孔部15の断面形状の曲率が、一側縁から対向する他側縁に向かって大から小に漸次変化するように形成されている。より詳しくは、導入孔部15の断面形状が周方向において相似状に形成されており、導入孔部15の断面形状の曲率は、
図6に向かって右側の曲率が最も大きく、左側の曲率が最も小さくなっており、導入孔部15の右側から左側に至る中途部は、曲率が大から小へと漸次変化している。導入孔部15の断面形状は、真円の四半円弧状に形成されている。本実施形態における導入孔部15の高さ寸法H3は、最も曲率が小さい位置での寸法とする。他は第1実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施形態においても同じとする。
【0043】
図8は、第2実施形態に係る配列用マスクの製造方法を示す。本実施形態の製造方法における一次パターンニング工程は、第1実施形態で説明した
図4(a)、(b)に示す方法と同様である。
【0044】
(二次パターンニング工程)
図8(a)に示すように、一次パターンレジスト25の形成部分を含む母型21の表面全体にフォトレジスト層26を形成し、その上面に保持孔部16に対応する円状の透光孔を有するガラスマスクからなるパターンフィルム27を密着させる。このとき、透光孔の中心と一次レジスト体24の中心軸Q1とが異なる位置になるように、パターンフィルム27の全体を
図8(a)に向かって右側にずらした状態で密着させる。この状態で、紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行う。ここでのフォトレジスト層26は、先に説明したフォトレジスト層22の形成手法と同様である。次いで、未露光部分のフォトレジスト層26を溶解除去することにより、
図8(b)に示すように、導入孔部15および保持孔部16に対応する円柱状の二次レジスト体28を有する二次パターンレジスト29を得る。なお、パターンフィルム27の透光孔の中心と一次レジスト体24の中心軸Q1とが異なる位置になるようにしたので、二次レジスト体28の中心軸Q2は、一次レジスト体24の中心軸Q1に対して偏寄している。
【0045】
(電鋳工程)
上記母型21を建浴された電鋳槽に入れ、
図8(c)に示すように、一次レジスト体24の上端縁を乗り越え、しかも二次レジスト体28の上端縁を乗り越えない範囲で電着金属を電着して、電鋳層30、すなわちマスク本体10となる層を形成する。このとき、一次レジスト体24の上端縁を乗り越えて成長する、電鋳金属の成長先端の縁部は四半円弧状に成長するので、母型21上に電着金属を電着するだけで、ベルマウス状の導入孔部15を形成することができる。また、母型21の表面から二次レジスト体28までの距離が長いほど、四半円弧の曲率は小さくなるため、
図8(c)に向かって右側に成長する電鋳金属の成長先端の縁部の曲率が小さく、左側に成長する電鋳金属の成長先端の縁部の曲率が大きく形成される。これにより、導入孔部15の断面形状の曲率が周方向において大から小に漸次変化する配列通孔12を、電鋳工程を行うだけで容易に形成できる。また、二次レジスト体28の中心軸Q2を、一次レジスト体24の中心軸Q1に対して偏寄させたので、保持孔部16の中心軸P1を逃げ孔部17の中心軸P2に対して偏寄配置した状態で形成できる。
【0046】
(剥離工程)
図8(d)に示すように、母型21から電鋳層30と、一次および二次パターンレジスト25・29とを剥離したうえで、一次および二次パターンレジスト25・29を溶解除去することにより、
図6に示すマスク本体10を得る。得られたマスク本体10の外周縁に枠体11を接着剤で接着して、両者10・11を不離一体的に接合することにより、配列用マスク1を得る。
【0047】
上記のように、導入孔部15の断面形状を周方向において一側縁から対向する他側縁に向かって大から小に漸次変化するように形成すると、曲率の小さい側では、導電性ピラー2の導入案内作用を大きく発揮させ、曲率の大きい側では、保持孔部16の高さ寸法H4を大きくして、保持孔部16における導電性ピラー2の位置決め作用を大きく発揮させることができる。従って、導入孔部15の周方向において部分的に導電性ピラー2を落とし込みやすくすることができ、さらに落とし込んだ導電性ピラー2を的確に位置決めできる配列通孔12とすることができる。また、曲率の小さい側が同一方向に指向するように配列通孔12を形成することにより、導電性ピラー2の落とし込み時に、スキージを曲率の小さい側から大きい側に向かって移動させることにより、より素早く配列通孔12へ導電性ピラー2を落とし込んで、搭載作業をより短時間で終了できる。
【0048】
本実施形態においては、曲率が一側縁から対向する他側縁に向かって大から小に漸次変化するように形成したが、導入孔部15の周方向において曲率が大きい部分と、曲率が小さい部分とが滑らかに交互に形成されていてもよい。なお、曲率が大きい部分と小さい部分との間は、曲率が大から小へ、あるいは小から大へ漸次変化するように形成するとよい。この場合には、一次パターンニング工程において、逃げ孔部17に対応する透光孔を花弁状に形成したガラスマスクからなるパターンフィルム23を用いて、逃げ孔部17に対応する一次レジスト体24を有する一次パターンレジスト25を形成する。その後の工程は、第1実施形態と同一である。このように、花弁状の一次レジスト体24を形成することで、電鋳工程時に電着金属が一次レジスト体24の上端縁を乗り越え、二次レジスト体28に接触するタイミングを部分的に異ならせることができる。これにより、二次レジスト体28に先に接触した電鋳金属の成長先端の縁部の曲率を大きくでき、その他の部分の成長先端の縁部の曲率を小さくできる。
【0049】
なお、本実施形態の配列用マスク(メタルマスク)は、例えば導電性ボールの配列用マスク、導電性ペーストの印刷層を形成するスクリーン印刷用マスクなどのメタルマスクにも適用することができる。なお、他の各実施形態においても同様であることを補足する。
【0050】
(第3実施形態)
図9は、本発明に係る導電性ピラーの配列用マスクの第3実施形態を示す。本実施形態においては、
図9に示すように、マスク本体10の下面に柱状に形成した複数の支持突起35を、逃げ孔部17を避けるように一体に設けた点が先の第1実施形態と異なる。支持突起35はマスク本体10と同一の金属からなる素材で形成してもよいし、他の金属からなる素材で形成してもよい。また、銅や樹脂などの非磁性体で形成することもできる。このように、マスク本体10の下面に支持突起35を設けたので、ワーク3とマスク1とが接触するのを極力避けることができ、マスク1をワーク3上に載置することによるマスク1およびワーク3の傷つき等をより抑制することができる。また、マスク1の耐久性のより一層の向上を図ることができる。
【0051】
上記の実施形態では、支持突起35は逃げ孔部17を避けるように設けたが、
図2の一点鎖線で示すワーク3のダイシングラインに対応する位置に等間隔おきに設けてもよく、また、ダイシングラインの交点に対応する位置にのみ設けてもよい。支持突起35は柱状に限らず、リブ状に形成することができる。リブ状に形成する場合には、平行に配置される支持突起35の一群を形成してもよいし、支持突起35を格子状に形成してもよい。
【0052】
以上のように、上記各実施形態に係る導電性ピラーの配列用マスクによれば、ベルマウス状に形成した導入孔部15で導電性ピラー2を導入案内して、導電性ピラー2を配列通孔12へと円滑に落とし込むことができるので、ワーク3に対する導電性ピラー2の搭載作業を短時間で終了できる。また、ストレート孔状の保持孔部16で配列通孔12へ落とし込まれた導電性ピラー2を位置決めして、配列通孔12内における導電性ピラー2の傾きやずれ動きを阻止できるので、ワーク3上の所定位置に導電性ピラー2を精度よく搭載できる。
【0053】
上記の各実施形態では、導入孔部15の断面形状は四半円弧状に形成したが、楕円の四半円弧状、あるいは部分外突円弧状であってもよい。逃げ孔部17は、ストレート孔状に限らず、円錐台孔状、段付き孔状に形成することができる。段付き孔状に形成する場合には、一次レジスト体24を2度に分けて階段状に形成すればよい。
【符号の説明】
【0054】
2 導電性ピラー(対象物)
3 ワーク
10 マスク本体
12 通孔(配列通孔)
15 導入孔部
16 保持孔部
17 逃げ孔部
21 母型
24 一次レジスト体
25 一次パターンレジスト
28 二次レジスト体
29 二次パターンレジスト
30 電鋳層
D1 開口径
D3 開口径
H1 導入孔部と保持孔部の合計高さ寸法
H2 逃げ孔部の高さ寸法
H3 導入孔部の高さ寸法
H4 保持孔部の高さ寸法
Q1 一次レジスト体の中心軸
Q2 二次レジスト体の中心軸